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表層土壌評価基本図の開発と自然由来重金属類評価への適用
地圏資源環境研究部門
地圏環境リスク研究グループ 川辺能成
本日の講演内容
・ はじめに・ 表層土壌評価基本図の概要
→ 試料採取→ 分析項目→ 基本構成
・ 表層土壌評価基本図による評価事例→ 5県(宮城、鳥取、富山、茨城、高知)の評価→ 沖縄県における概況調査→ 河川堆積物(地球化学図)との比較→ 東日本大震災津波堆積物との比較
・ まとめ、今後の展開
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本日の講演内容
・ はじめに・ 表層土壌評価基本図の概要
→ 試料採取→ 分析項目→ 基本構成
・ 表層土壌評価基本図による評価事例→ 5県(宮城、鳥取、富山、茨城、高知)の評価→ 沖縄県における概況調査→ 河川堆積物(地球化学図)との比較→ 東日本大震災津波堆積物との比較
・ まとめ、今後の展開
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表層土壌評価基本図整備の背景
土壌・地下水汚染の事例増加 ← 土壌汚染対策法の施行人為汚染→産業起因の汚染(重金属類、有機化合物など)自然起源→重金属類(鉱山などバックグラウンドが高い)
建設工事で発生する土砂等
鉱山周辺、下流 温泉、地熱
場所
0
100
200
300
400
500
TCE
PCE ベ
ンゼン
cisDCE
1,1DCE
1,1,1TC
A
1,2DCA
DCM
1,1,2TC
A
四塩化炭素
鉛フッ素
ヒ素
六価クロム
水銀
シアン
ホウ素
セレン
カドミウム
件数
2009年度 2010年度
2010年4月 改正土壌汚染対策法→自然由来も対象
重金属類の超過件数の増加
有害物質別の基準不適合事例数(環境省水・大気環境局資料をもとに作成)
有機化合物 重金属類
5
自然由来の重金属類汚染の特徴
・汚染度(濃度)はそれほど大きくない(基準10倍まで)・広域な範囲の場合もある。・判別が困難な場合もある。
対策困難
技術的、コスト等の問題
リスク評価に基づいた対策、管理の必要性
土壌汚染等のリスクを客観的に評価できるシステム開発⇒GERAS(地圏環境リスク評価システム)の開発(2001年~)
地圏環境における重金属類のバックグラウンドの把握⇒表層土壌評価基本図の整備(宮城県:2006年~)
6
GERAS(地圏環境リスク評価システム)の開発
土壌環境
地下水
化学物質 陸水
深層
大気
土壌環境
地下水
化学物質 陸水
深層
大気
GERAS-1
GERAS-2
GERAS-3
概念型モデル(フェーズⅠ)
サイト型モデル(フェーズⅡ)
詳細型モデル(フェーズⅢ)
土壌汚染の有無を診断スクリーニング的な評価最小限の入力データ環境基準値の設定
汚染リスクの大小を判断対象サイトに固有のリスクを明示概況調査による入力データ浄化目標値の算定
複合汚染(鉱物油,VOCs,重金属)対応土壌汚染のリスクを数値化時間的,空間的なリスクを表示詳細調査により入力データ将来予測,浄化効果の定量化
https://unit.aist.go.jp/georesenv/georisk/japanese/home/home_geras.html7
地圏環境における重金属類のバックグラウンド把握
地球化学図(ひ素)
産総研(今井ら2004)
河川堆積物を対象として全国展開
土壌・地質汚染評価図
産総研(丸茂ら2003ほか)
地質単元の詳細評価姉崎、仙台(1/5万)
8
特定地域の調査表層土壌
試料の化学分析含有量,溶出量化学形態など
重金属類の分布特性
地質調査・観測
表層土壌評価基本図の整備
2008年 宮城県、鳥取県2012年 富山県2014年 茨城県2017年 高知県
CD-ROM版
Google Earth
表層土壌をターゲットにした地球化学図はわが国ではほとんど整備されていない。
9
人健康影響のリスク評価
本日の講演内容
10
・ はじめに
・ 表層土壌評価基本図の概要→ 試料採取→ 分析項目→ 基本構成
・ 表層土壌評価基本図による評価事例→ 5県(宮城、鳥取、富山、茨城、高知)の評価→ 沖縄県における概況調査→ 河川堆積物(地球化学図)との比較→ 東日本大震災津波堆積物との比較
・ まとめ、今後の展開
試料採取地点の選定 1
5km
5km
5万分の1地形図
5万分の1土壌図
土壌種ごとの情報整備
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12
As
Pb
Zn
elution ratio
Cambisol
Histosol
fluvisol
褐色森林泥炭低地
11
試料採取地点の選定 2
標高データ等を基に流域解析を実施
流域ごとの情報整備
上流上流
下流下流
上流上流
下流下流
12
試料採取方法
試料採取地点
13
枯葉や落葉が堆積した層(腐葉土)
有機質層
無機質層(母岩層)
風化影響の強い層
環境影響の強い層
地表
排除
採取
枯葉や落葉が堆積した層(腐葉土)
有機質層
無機質層(母岩層)
風化影響の強い層
環境影響の強い層
地表
排除
採取
試験・評価項目
溶出試験含有量試験(1N塩酸溶出試験) 環告19 号(環境省,2003)溶出量試験(水溶出試験)環告18 号(環境省,2003)
重金属元素:B,Al, Cr, Mn, Fe, Ni, Cu, Zn, As,Se, Cd, Sb, Pb, U
陰イオン成分:F, Cl, SO4, PO4
全含有量分析全含有量分析 エネルギー分散型蛍光X 線装置
酸化物:SiO2, Al2O3, TiO2, T-Fe2O3, MgO, CaO,Na2O, K2O
重金属元素: Cr, Mn, Ni, Cu, Zn, As, Se, Cd, Pb,Sb, U
その他 pH、 EC(電気伝導率)、リン酸吸収係数,全有機炭素量
14
試験・評価項目 重金属類の人体リスク評価
含有量や溶出値等のデータAs溶出量分布[ppb]
人体への健康影響
呼吸と共に吸引
口から摂取
皮膚から吸収
大気
農作物・家畜
汚染土地下水
流出
吸収・蓄積
飲料水飛散
直接
人体への健康影響
呼吸と共に吸引
口から摂取
皮膚から吸収
大気
農作物・家畜
汚染土地下水
流出
吸収・蓄積
飲料水飛散
直接
暴露評価
土壌中重金属類の人への摂取経路
許容摂取量等と比較TDI、RfDなど
As_TDI[%]As_TDI[%]
Asの許容摂取量に対する割合15
表層土壌評価基本図でわかること
16
詳細地域における重金属類濃度
地図上の調べたい場所を選択
CD-ROM版
17
Google Earth版
詳細地域における重金属類濃度
18
重金属類分布図、リスク評価図
調べたい元素をクリック
コンター図統計学的データ度数分布図
CD-ROM版
19
重金属類分布図、リスク評価図
Google Earth版
調べたい元素にチェック
20
採集ポイント
・コンターについて逆距離加重 (Inverse Distance Weighted: IDW)⇒サンプリング位置から遠くなるにつれて影響が小さくなる
サンプリングポイント近傍では影響度が高くなる。
本日の講演内容
21
・ はじめに・ 表層土壌評価基本図の概要
→ 試料採取→ 分析項目→ 基本構成
・ 表層土壌評価基本図による評価事例→ 5県(宮城、鳥取、富山、茨城、高知)の評価→ 沖縄県における概況調査→ 河川堆積物(地球化学図)との比較→ 東日本大震災津波堆積物との比較
・ まとめ、今後の展開
宮城県における重金属類の分布図
As全含有量
As溶出量
Pb全含有量
Pb溶出量
22
宮城県における重金属類のリスク評価図
As Pb
TDI(耐容一日摂取量)に対する割合
AsやPbについていくつかの地点で環境基準値を超過してい
たが暴露を基にしたリスク評価において人の健康影響が懸念される地域はなかった。
23
富山県における重金属類の分布図およびそのリスク
Cd全含有量
Cd溶出量
Cdリスク
高知県における重金属類の分布図およびそのリスク
Cr全含有量
Pb全含有量
ppm ppm
ppm
Pbリスク
25
Crリスク %RfD %TDI
26
沖縄県における土壌中重金属類について
0
5
10
15
20
0‐2
2‐4
4‐6
6‐8
8‐10
10‐12
12‐14
14‐16
16‐18
18‐20
頻度
溶出量μg/L
鉛
0
5
10
15
20
0‐10
10‐20
20‐30
30‐40
40‐50
50‐60
60‐70
70‐80
80‐90
90‐100
100‐110
110‐120
120‐130
130‐140
140‐150
150<
頻度
含有量mg/kg
鉛
溶出量[mg/L]
含有量[mg/kg]
溶出量[mg/L]
含有量[mg/kg]
溶出量[mg/L]
含有量[mg/kg]
範囲 QL-0.018 0.030-3.1 QL-0.014 1.5-260 QL-0.001 0.02-2.8
幾何平均 0.0031 0.60 0.0017 13 -* 0.11
幾何標準偏差 0.52 0.53 0.56 0.62 -* 1.0
ひ素 鉛 カドミウム
沖縄県で採取した土壌中の重金属類含有量および溶出量の統計値
ひ素および鉛の含有量、溶出量の度数分布
27
・含有量分布について、大まかには河川堆積物と類似・土壌と河川堆積物では濃度レベルが異なる
→物質移行が見込まれる地域で土壌中に濃集する傾向大→河川などを介して二次的に付加されたものは下流域に分
布し、水溶出値が高く出る傾向にある。
河川堆積物と土壌重金属類分布の違い
28
津波堆積物と土壌重金属類分布の比較
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9694
93
90 87
86 85 84
8380
7877
76
68 6765 62
6056
54
48
47 45
43 4037
35 323130
2927
2625
2322
2120
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98
65
3 1
1918
16
1412
0
10
20
30
40
50
60
70
80
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30
Arsenic
Frequency
Content [mg/kg]
0
10
20
30
40
50
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70
Lead
Frequency
Content [mg/kg]
ひ素 鉛
ヒ素 鉛 カドミウム 全クロム
濃度範囲 QL-0.059 QL-0.14 QL-0.0067 QL-0.037幾何平均 0.0024 0.0015 0.0010 0.0012幾何標準偏差 2.7 2.4 1.2 1.7濃度範囲 0.19-30 0.7-770 QL-5.9 QL-33幾何平均 1.1 6.7 0.064 1.7幾何標準偏差 2.6 2.9 3.9 2.3
項目
溶出値
[mg/dm3]
含有量[mg/kg]
津波堆積物中の重金属類の溶出値および含有量
津波堆積物中の重金属類度数分布図
29
津波堆積物と土壌重金属類分布の比較(宮城県)
0 5 10 15 20 25 300
5
10
15
20
25
As_水溶出値
As[ppb]
poin
t nu
mber
As_tsunami As_soil
0 10 20 90 1000
5
10
15
20
25
Pb_水溶出値
poin
t num
ber
Pb[ppb]
Pb_tsunami Pb_soil
0 5 10 15 20 25 30 350
5
10
15
20
25
As_含有量値(1M塩酸溶出値)
poin
t num
ber
As[mg/kg]
As_tsunami As_soil
0 10 20 30 40 50 60 70 80 900
5
10
15
20
Pb_含有量値(1M塩酸溶出値)
poin
t num
ber
Pb[mg/kg]
Pb_tsunami Pb_soil
沿岸域に分布する既存土壌および津波堆積物からのヒ素・鉛に関する水溶出量,含有量のヒストグラム
30
津波堆積物と土壌重金属類分布の比較(宮城県)
津波浸水域におけるヒ素の水溶出量値の分布
土壌 津波堆積物
・含有量は表層土壌の方がやや高い・溶出量は表層土壌と同程度(ひ素)から低い値(鉛)
・ひ素については、高溶出量を示す土壌および津波堆積物の分布位置はほぼ一致する傾向
本日の講演内容
・ はじめに・ 表層土壌評価基本図の概要
→ 試料採取→ 分析項目→ 基本構成
・ 表層土壌評価基本図による評価事例→ 5県(宮城、鳥取、富山、茨城、高知)の評価→ 河川堆積物(地球化学図)との比較→ 東日本大震災津波堆積物との比較
・ まとめ、今後の展開
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まとめ
表層土壌評価基本図
32
⇒含有量が高い地域と溶出量が高い地域は必ずしも一致しない。
⇒溶出量については、河川の影響を大きく受ける地域が存在する。
⇒地域ごとで重金属類の分布傾向に相違がある。⇒土壌種により重金属類の蓄積や溶出に多少傾向性が
認められた。⇒リスク評価ではほとんどの場所でリスクは小さい⇒リスクが大きいと判断された場所は、鉱山周辺など特異
的な場所であり、居住地域ではなかった。
土地の有効利用のための立地リスク診断自然起源と人為起源汚染の判別リスクコミュニケーション
33
まとめ
・含有量分布について、大まかには河川堆積物と類似・土壌と河川堆積物では濃度レベルが異なる
→物質移行が見込まれる地域で土壌中に濃集する傾向大→河川などを介して二次的に付加されたものは下流域に分
布し、水溶出値が高く出る傾向にある。
河川堆積物との比較
・含有量は表層土壌の方がやや高い・溶出量は表層土壌と同程度(ひ素)から低い値(鉛)
・ひ素については、高溶出量を示す土壌および津波堆積物の分布位置はほぼ一致する傾向
津波堆積物との比較
・土砂災害や洪水および津波発生時における普及目安・堆積物等の処理・管理等の方針のための参照値
今後の展開
・県単位の出版から地方毎の出版へと方針変更
・平野部は詳細のまま、山間部を流域地質を中心にやや粗く
詳細な調査ができればそれに越したことはないが、時間がかかりすぎ、予算も限られる。
34
今後の展開
CD出版(表層土壌評価基本図の公開) WEB配信のみへ移行
・KML(GoogleEarthdata)・Shape (GISdata)※MAPの公開、ポイント位置は非公表
35
CD-ROM版 https://www.gsj.jp/Map/JP/soils_assessment.htmlGoogleKMZ版 https://staff.aist.go.jp/j.hara/
ご清聴ありがとうございました。
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