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(平成 24 年度広島県委託業務「NPT 体制等貢献事業」) ひろしまレポート -核軍縮・核不拡散・核セキュリティを巡る動向:20102012 年- 平成 25 3 公益財団法人 日本国際問題研究所 軍縮・不拡散促進センター

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(平成 24年度広島県委託業務「NPT体制等貢献事業」)

ひろしまレポート

-核軍縮・核不拡散・核セキュリティを巡る動向:2010~2012年-

平成 25年 3月

公益財団法人 日本国際問題研究所

軍縮・不拡散促進センター

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ひろしまレポート

- 核軍縮・核不拡散・核セキュリティを巡る動向:2010~2012年 -

目次

序文

------------------------------------------------------------------------1

報告書 ------------------------------------------------------------------------5

1. 核軍縮 ------------------------------------------------------------------------5

2. 核不拡散 -----------------------------------------------------------------------33

3. 核セキュリティ

-----------------------------------------------------------------------46

評価書 -----------------------------------------------------------------------57

1. 各国の評点状況 -----------------------------------------------------------------------59

2. 国別評価 -----------------------------------------------------------------------62

(評価一覧)

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1

序文

(1) 目的

『ひろしまレポート』は、平成24年度に広島県から委託を受け、(公財)日本国際問題研究所が実施

した「NPT体制等貢献事業」の調査・研究の成果である。

2009年4月のオバマ米大統領によるプラハ演説で一気に高まった「核兵器のない世界」に向けたモ

メンタムは、勢いを失いつつある。核兵器の数は、6万発以上にのぼった冷戦期のピーク時と比較す

れば、現在は3分の1程の2万発規模にまで削減されてきているものの、核兵器廃絶の見通しは依然

として立たないばかりか、逆に核兵器を巡る状況は複雑化している。2010年4月には米露間で新戦略

兵器削減条約(新START)が成立し、翌月の核不拡散条約(NPT)運用検討会議は最終文書を採択し

て成功裏に終了した。その一方で、新START後の米露核軍縮交渉は依然として開始されず、他の核兵

器(保有)国も核兵器の一層の削減に踏み切る気配は見えない。「包括的核実験禁止条約(CTBT)の

早期発効」や「兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の即時交渉開始と早期妥結」の目標は、

長年繰り返されるばかりで進展の兆しはない。北朝鮮及びイランは、核(兵器)能力を磐石のものと

しつつあるようにみえる。核セキュリティは強化されてきたが、取組の不十分な国などを衝いて核テ

ロが現実化するとの懸念は消えていない。核軍縮、核不拡散、核セキュリティの課題が拡大・深刻化

する一方で、その解決に向けた取組は遅々として進んでいない。

こうした中、核兵器の廃絶に向けた取組を進めるにあたっては、まずは核軍縮、核不拡散、核セキ

ュリティに関する具体的な措置と、これへの各国の取組の現状と問題点を明らかにすることが必要と

なる。これらを調査・分析して「報告書」及び「評価書」にまとめ、人類史上初の核兵器の惨劇に見

舞われた広島から発信すること、これにより政策決定者、専門家及び市民社会における議論を喚起し、

核兵器のない世界に向けた様々な動きを後押しすることが、本事業の目的である。

(2) 実施方法

(a) 調査、分析及び評価する具体的措置

まず、本事業で取り上げる具体的な措置については、以下の4つの文書に盛り込まれたものを軸に

選定した。

2010年NPT運用検討会議で採択された最終文書に含まれた行動計画と1995年中東決議

の実施、

核不拡散・核軍縮国際委員会(ICNND)の提言、

2012年NPT運用検討会議の準備委員会で日本が提出した提案、及び

平和市長会議の「核兵器廃絶決議」

核軍縮、核不拡散、核セキュリティについては国内外で様々な提案がなされてきたが、2010年NPT

運用検討会議にてコンセンサスで採択された最終文書に盛り込まれた「64項目の行動計画」(action

plans)は最も重要な文書の一つであることは間違いない。NPTは、核軍縮、核不拡散、原子力平和

利用を三本柱とする条約であり、その締約国は190カ国にのぼる。「64項目の行動計画」は、その締約

国のコンセンサスで採択したものであり、各国はその実施に当たって、少なくとも政治的な責務を負

うと考えられるからである。他方、まさにコンセンサスでの採択が目指されるからこそ、最終的な「行

動計画」は様々な妥協や取引の結果となり、内容的に不十分な面もある。このため「核兵器廃絶のロ

ードマップ」策定に係る広島及び日本の取組への貢献という観点から、平和市長会議の決議、日豪両

政府のイニシアティブによるICNNDの提言、並びに日本が2012年NPT運用検討会議準備委員会で行

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った具体的提案(日本が共同提案国となったものも含む)を併せて取り上げることとした。

最終的には、次のような措置について調査、分析及び評価を行った。

核軍縮

核兵器の保有数

核兵器のない世界へのコミットメント

核兵器の削減

安全保障戦略・政策における核兵器の役割及び重要性の一層の低減

警戒態勢の低減・解除、核兵器発射を決定するための時間を長くする措置

CTBTと核実験

FMCT

核兵器に関する透明性

核兵器削減における検証措置の実施

不可逆性

軍縮・不拡散教育の実施、市民社会との連携

核不拡散

核不拡散義務の受諾と遵守

国際原子力機関(IAEA)保障措置

IAEAへの協力

原子力関連資機材・技術などに関する適切な輸出管理の実施

原子力平和利用の透明性

核セキュリティ

兵器利用可能な核分裂性物質の保有量

核セキュリティ・原子力安全に係る諸条約などへの加入、参加、国内体制への反映

核セキュリティの最高水準の維持・向上に向けた取組

(b) 対象国

本事業では、核問題における重要性や地理的要素などを勘案し、以下の19カ国について調査、分析

及び評価を行った。

NPT上の5核兵器国:中国、フランス、ロシア、英国、米国

NPT非締約国:インド、イスラエル、パキスタン

非核兵器国:イラン、シリア、豪州、ブラジル、ドイツ、日本、韓国、南アフリカ、スウェ

ーデン、スイス

その他:北朝鮮

(北朝鮮:NPT締約国は、1993年及び2003年の北朝鮮によるNPT脱退宣言に対して同国の条

約上の地位に関する解釈を明確にしていない一方で、北朝鮮は、2006年、2009年、2013年

の3度にわたって核実験を行い、核兵器の保有を明言しているため、「その他」として整理)

(c) 調査、分析及び評価の方法

2010年NPT運用検討会議終了後から2012年末までの動向を中心に、各国政府の公式見解(NPT運

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用検討プロセス、国連総会、IAEA総会、ジュネーブ軍縮会議などでの演説及び作業文書、その他政

府発表の文書)をはじめとする公開資料を用いて調査、分析及び評価を行った。

評価については、項目ごとに可能な限り客観性に留意した評価基準を設定し、これに基づいて各国

の取組や動向を採点した。

本事業の研究委員会(同委員会の詳細は(3)実施体制に記載)は、各国のパフォーマンスを採点する

難しさ、限界及びリスクを認識しつつ、優先課題や緊急性についての議論を促すべく核問題への関心

を高めるために、こうしたアプローチが有益であると考えた。

各具体的措置には、それぞれの分野(核軍縮、不拡散、核セキュリティ)内での重要性を反映して、

異なる配点がなされた。なお、この「重要性」の程度は、本事業の研究委員会による検討を通じて決

定された。他方、それぞれの分野に与えられた「最高評点」の程度は、他の分野との相対的な重要性

の軽重を意味するものではない。つまり、核軍縮(最高評点101点)は、核不拡散(最高評点44点)

あるいは核セキュリティ(最高評点41点)の2倍以上重要だと研究委員会が考えているわけではない。

各分野は、それぞれの性格などが異なることもあり、相対評価は各々の分野内でなされた。また、

たとえば核軍縮と不拡散については、核兵器(保有)国と非核兵器国の間で比較することは容易では

ないことから、ここでもそれぞれのカテゴリーの中で他国との比較を示すこととした。

「核兵器の保有数」(核軍縮)及び「兵器利用可能な核分裂性物質の保有量」(核セキュリティ)に

ついては、より多くの核兵器または核分裂性物質を保有する国は、その削減あるいはセキュリティ確

保により大きな責任があるとの考えにより、多いほどマイナスの評価とした。研究委員会は、「数」あ

るいは「量」が唯一の決定的な要因ではなく、核軍縮、不拡散及び核セキュリティにはミサイル防衛、

生物・化学兵器、あるいは通常兵器の不均衡などといった他の要因も影響を与えることを十分に認識

している。しかしながら、そうした要因は、客観的(無論、相対的なものではあるが)な評価基準の

設が難しいこともあり、これらを評価項目には加えなかった。

本事業で示された「評点」は各国の核軍縮、不拡散及び核セキュリティに関するパフォーマンスを

指標的に示したものであり、性格の異なる要素について厳密な数的比較を試みたものではない。

(3) 実施体制

各対象国の核軍縮などに向けた取組状況の調査・分析・評価を実施し、「報告書」及び「評価書」を

作成する実施体制として、研究委員会が設置された。同委員会は、2012年度内に4回の会合を開催し、

それらの内容などにつき議論を行った。

研究委員会のメンバーは下記のとおりである。

主 査:阿部信泰(日本国際問題研究所 軍縮・不拡散促進センター所長)

研究委員:秋山信将(一橋大学教授)

川崎哲(ピースボート共同代表)

菊地昌廣(核物質管理センター理事)

黒澤満(大阪女学院大学教授)

水本和実(広島市立大学広島平和研究所副所長)

戸﨑洋史(日本国際問題研究所 軍縮・不拡散促進センター主任研究員)

岡田美保(日本国際問題研究所 軍縮・不拡散促進センター研究員)

作成された「報告書」のドラフトに対して、核軍縮、核不拡散及び核セキュリティの分野において

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第一線で活躍する、下記の国内外の著名な研究者や実務家より貴重なコメント及び指摘を頂いた。

アレクセイ・アルバトフ(Dr. Alexey G. Arbatov、世界経済国際関係研究所国際安全保障セ

ンター所長)

川口順子(参議院議員)

ウィリアム・ポッター(Dr. William C. Potter、モントレー国際大学ジェームス・マーティ

ン不拡散研究センター所長)

ジョン・シンプソン(Professor John Simpson、サウサンプトン大学名誉教授)

梅林宏道(長崎大学核兵器廃絶研究センター教授)

※※※

本事業の実施に当たり、核問題に関してこれまでに類似の評価プロジェクトを実施してきたモント

レー国際大学ジェームス・マーティン不拡散研究センター( James Martin Center for

Nonproliferation Studies)、核脅威イニシアティブ(Nuclear Threat Initiative)、リーチング・クリ

ティカル・ウィル(Reaching Critical Will)、ストックホルム国際平和研究所(Stockholm

International Peace Research Institute)から、貴重な助言を受けた。また報告書の執筆に当たり、

西田充(外務省)及び堀部純子(IAEA)の両氏から事実関係などに関するコメントを頂いた。記し

て謝意を表する。

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報告書※

― 核軍縮、核不拡散及び核セキュリティを巡る動向:2010~2012年 ―

1.核軍縮

(1) 核兵器の保有数(推計)

本報告書執筆時点で、核兵器の保有を公表しているのは8カ国である。このうち、中国、フランス、

ロシア、英国及び米国は、核不拡散条約(NPT)第9条3項で「1967年1月1日前に核兵器その他の

核爆発装置を製造しかつ爆発させた国」と定義される「核兵器国」(nuclear-weapon state)であり、

この条約の下で核兵器の保有が認められている。これら5核兵器国の他に、核爆発実験を実施し、核

兵器の保有を公表しているのは、NPT非締約国のインド及びパキスタン、並びにNPTからの脱退を

1993年及び2003年に宣言した北朝鮮である。もう一つのNPT非締約国であるイスラエルは、核兵器

の保有を肯定も否定もしない「曖昧政策」を維持しているが、核兵器を保有していると広く考えられ

ている(イスラエルによる核爆発実験の実施は、これまでのところ確認されていない)。本報告書では、

NPT上の核兵器国以外に、核兵器の保有を公表しているか、あるいは核兵器を保有しているとみられ

る上記の4カ国を「核兵器保有国」(nuclear-armed states)と称する。

中国を除く4核兵器国は核兵器の配備数や将来的な核兵器の保有数に関する上限などを明らかにし

ているものの、核兵器(保有)国はいずれも、自国が持つ核兵器の総数(配備、非配備、廃棄待ちな

ど含む。)を公表しているわけではない。表1-1に挙げる各国の核兵器保有数は、欧米の有力な民間研

究機関による推計に基づくものである。世界には依然として約2万発の核兵器が存在しており、その

うちの90%以上が米国及びロシアの2カ国が保有している。

※ 「報告書」は、戸﨑洋史により執筆された。

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表1-1:核兵器保有数(推計、2012年1月)

核保有数 内訳 (核弾頭数) (運搬手段)

米国 ~8,000 退役/廃棄待ち 3,100

運用可能 4,900 非配備核弾頭 2,750

配備核弾頭 2,150 非戦略核弾頭 200

戦略核弾頭 1,950 大陸間弾道ミサイル(ICBM) 500 500

潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM) 1,152 288

戦略爆撃機 300 60

ロシア ~10,000 退役/廃棄待ち 5,500 (非戦略核弾頭 2,000)

運用可能 4,500 非配備核弾頭 2,700 (非戦略核弾頭 2,000発)

配備核弾頭 ~1,800 戦略核弾頭 ~1,800 ICBM 1,087 322

SLBM 352 144

戦略爆撃機 300 72

イギリス 225 配備核弾頭 160 SLBM 225 48

フランス ~300 配備核弾頭 290 SLBM 240 48

攻撃機(含;艦載機) 50 50

中国 ~240 地上発射中長射程弾道ミサイル 130 130

SLBM 48 48

攻撃機 40 20

巡航ミサイル n/a 150~350

インド 80〜100 地上発射弾道ミサイル

海上発射弾道ミサイル

攻撃機

パキスタン 90〜110 地上発射弾道ミサイル

攻撃機

巡航ミサイル

イスラエル 〜80 弾道ミサイル

攻撃機

北朝鮮 ?

世界 19,000 (配備核弾頭) 4,400

出典) SIPRI Yearbook 2012: Armaments, Disarmament and International Security (Oxford: Oxford University Press, 2012), chapter 7より作成

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(2) 核兵器のない世界へのコミットメント

a) 核兵器(保有)国のコミットメント

NPT前文では、「核軍備競争の停止をできる限り早期に達成し、及び核軍備の縮小の方向で効果的

な措置をとる意図を宣言し、この目的の達成についてすべての国が協力することを要請」している。

また同条約第6条では、「各締約国は、核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措

置につき、並びに厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約に

ついて、誠実に交渉を行うことを約束する」と定められている。2000年のNPT運用検討会議で採択さ

れた最終文書では、「核兵器の全廃を達成するとの核兵器国による明確な約束」が明記された。

国際社会において、「核兵器の廃絶」あるいは「核兵器のない世界」の目標に公然と反対する国はな

い。2009年4月にオバマ米大統領がプラハで「核兵器のない世界の平和及び安全保障を追求するとの

米国のコミットメント」1を表明した後、5核兵器国はNPT運用検討プロセスやジュネーブ軍縮会議

(CD)などの場で、この目標に繰り返し言及している。同年9月に採択された安保理決議1887では、

「NPTの目標に沿って、国際的な安定を推進する方法において、またすべての国の安全が損なわれな

いことの原則に基づいて、すべてにとってより安全な世界を模索すること、並びに核兵器のない世界

に向けた条件を構築することを決意」2すると謳われた。2012年NPT準備委員会でも改めて、「すべて

にとってより安全な世界を模索すること、NPTの目標に従って核兵器のない世界のための条件を構築

することの目標に対するコミットメントを再確認」した3。

5核兵器国以外では、インドは長く、「期限付き、普遍的、非差別的、段階的かつ検証可能な方法で

の核軍縮」を主張し4、パキスタンも、グループ21あるいは非同盟運動(NAM)諸国が求める核兵器

禁止条約の締結が核軍縮における最優先課題であると主張している5。イスラエルは、中東の安全保障

環境、並びに生物・化学兵器の拡散状況などからNPTへの加入を拒否しつつ、1980年以来、核兵器の

みならず他の大量破壊兵器(WMD)をも禁止する中東非WMD地帯について、その設置を求める国連

総会決議には賛成している。北朝鮮は、六者会合で合意された「共同声明」(2005年9月)において、

「すべての核兵器及び既存の核計画を放棄すること、並びにNPT及び国際原子力機関(IAEA)保障

措置に早期に復帰することを約束」6したが、2009年1月には「米国の北朝鮮に対する敵対政策や核

の威嚇が根本的になくならない限り、核兵器を先に差し出すことはないだろう」7と述べ、2010年4

月には「他の核兵器国と同等の立場で、国際的な核軍縮の努力に参加する」8との立場を表明している。

1 “Remarks by President Barack Obama,” Prague, Czech Republic, April 5, 2009, http://www.whitehouse.

gov/the_press_office/Remarks-By-President-Barack-Obama-In-Prague-As-Delivered/.

2 S/RES/1887, 24 September 2009.

3 “Statement by the People’s Republic of China, France, the Russian Federation, the United Kingdom of

Great Britain and Northern Ireland, and the United States of America to the 2012 Non-Proliferation Treaty

Preparatory Committee,” May 3, 2012, http://vienna.usmission.gov/120503p5.html.

4 “Statement by Mr. L K Advani, Honourable Member of Parliament and Member of the Indian Delegation,”

The 67th Session of the First Committee of the General Assembly, New York, 11 October 2012などを参照。

5 “Statement by Ambassador Zamir Akram, Permanent Representative of Pakistan to the UN and Other

International Organizations on Nuclear Disarmament at the Conference on Disarmament,” Geneva, 22 May

2012.

6 “Joint Statement of the Fourth Round of the Six-Party Talks,” Beijing, 19 September 2005, http://www.

mofa.go.jp/region/asia-paci/n_korea/6party/joint0509.html.

7 “DPRK Foreign Ministry's Spokesman Dismisses U.S. Wrong Assertion,” KCNA, January 13, 2009,

http://www.kcna.co.jp/item/2009/200901/news13/20090113-13ee.html.

8 “Foreign Ministry Issues Memorandum on N-Issue,” Korean News, April 21, 2010, http://www.kcna.co.jp/

item/2010/201004/news21/20100421-27ee.html.

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b) 国連総会決議の投票行動

核兵器の廃絶に向けた動きが進まない中で、非核兵器国も、様々な形で核軍縮に関するコミットメ

ントを示すとともに、核兵器(保有)国に核軍縮の実施を求めてきた。そうした取組の一つの象徴と

して、国連総会決議の提案が挙げられよう。核軍縮全般に関しては、ここ10年以上にわたって、日本

がイニシアティブを取る「核兵器の全面的廃絶に向けた共同行動(United action towards the total

elimination of nuclear weapons)」、新アジェンダ連合(NAC)が提案する「核兵器のない世界に向

けて:核軍縮コミットメントの履行の加速(Towards a nuclear-weapon-free world: accelerating the

implementation of nuclear disarmament commitments)」、非同盟運動(NAM)諸国による「核軍

縮(Nuclear disarmament)」が採択されてきた(決議のタイトルは、いずれも2012年のもの)。これ

らの3つの決議について、本報告書での調査対象国に関する2012年国連総会での投票行動は下記のと

おりである。

「核兵器の全面的廃絶に向けた共同行動」

提案:豪、独、日、スイス、米など

賛成174、反対1(北朝鮮)、棄権13(ブラジル、中、印、イラン、イスラエル、パキスタン、

シリアなど)

「核兵器のない世界に向けて:核軍縮コミットメントの履行の加速」

提案:ブラジル、南ア、スウェーデンなどNAC諸国

賛成175、反対6(仏、印、イスラエル、露、英、米)、棄権5(中、パキスタンなど)

「核軍縮」

提案:イランなどNAM諸国

賛成124、反対44(豪、仏、独、イスラエル、スイス、英、米など)、棄権18(印、日、パ

キスタン、韓、露、南ア、スウェーデン、など)

また決議「核兵器の威嚇または使用に関する国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見のフォローアッ

プ(Follow-up to the advisory opinion of the International Court of Justice on the Legality of the

Threat or Use of Nuclear Weapons)」では、「核兵器禁止条約の早期締結を導く多国間交渉の開始に

よって」NPT第6条の義務を実行するよう求めている9。この決議は2012年国連総会において、賛成

135、反対22(仏、独、イスラエル、露、米など)、棄権26(豪、日、韓など)で採択された(英国は

欠席)。なお、日本は第一委員会で、「核兵器の使用が国際法の哲学的基盤である人道主義の精神に従

うものではないと考えている」こと、「核軍縮を導く交渉を誠実に行い、かつ完結させる義務があると

のICJの判事の結論を支持する」こと、「他方で核軍縮・不拡散の着実な進展を達成するためには現実

的な措置が必要であると考えている」ことと、その投票理由を説明した10。核兵器禁止条約に関して

は、NGOの核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が各国の対応について報告書をまとめているが、

これによると、本調査対象国のうち、核兵器禁止条約を「Don’t support(支持していない)」がフラ

9 核兵器禁止条約に関しては、潘基文・国連事務総長が2008年10月の演説で、核軍縮に関する5項目提案の一つ

として「核兵器禁止条約の交渉に関する検討」を含めたことで、国際的な関心が高まった。潘基文・国連事務総

長の5項目提案( 2008年 10月)については、Ban Ki-Moon, “Five Steps to a Nuclear-Free World,”

Guardian,November 23, 2008, http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2008/nov/23/nuclear-disarmament-

united-nations.

10 “Explanation of Vote by Japan: ‘Follow-up to the advisory opinion of the International Court of Justice on

the Legality of the Threat or Use of Nuclear Weapons.’”

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ンス、イスラエル、ロシア、英国、米国、また「On the fence(態度を決めかねている)」が豪州、ド

イツ、日本、韓国となっている11。

核兵器禁止条約については、2010年NPT運用検討会議の最終文書で、「会議は、国連事務総長の核

軍縮のための5項目に注目する。それは特に、強力な検証システムに支えられた、核兵器禁止条約あ

るいは個別の相互に補強し合う諸文書の枠組みの交渉の検討を提案している」と言及された。NPT運

用検討プロセスで採択された文書において、「核兵器禁止条約」の文言が含まれたのは、初めてであ

った。また2012年NPT準備委員会の議長サマリーでは、「多くの締約国は、核兵器禁止条約を含め、

期限を伴う核兵器の完全な廃絶のため、段階的計画の交渉の必要性を強調した」とされた。

c) その他のイニシアティブ

核軍縮に関する近年の注目すべき動きとしては、日豪のイニシアティブで発足し、両国を含め10カ

国12で構成される核軍縮・不拡散分野における地域横断的な有志国グループの「軍縮・不拡散イニシ

アティブ(NPDI)」の発足とその活動が挙げられる。NPDIは、2010年NPT運用検討会議で採択され

た行動計画の履行促進を目的に設立され、2012年NPT準備委員会でも核戦力の透明性の問題を含む4

本の作業文書を提出した。2012年9月に行われたNPDI第5回外相会議では、2013年NPT準備委員会

にNPDIとして提出する6本の作業文書の項目(包括的核実験禁止条約(CTBT)、非戦略核兵器、核

兵器の役割低減、輸出管理、非核兵器地帯、核兵器国への保障措置拡大)とその分担に合意するなど13、

核軍縮・不拡散の促進に向けて積極的な活動を続けている。

また、2012年NPT準備委員会において16カ国が核兵器の人道的側面に関する共同声明を発表したこ

と14、並びにノルウェーが2013年3月にこの問題に焦点を当てた会議を主催すると発表したことが注

目された。核兵器の人道的側面については、2010年NPT運用検討会議の最終文書で、「あらゆる核兵

器の使用がもたらす壊滅的な人道的結果に対する重大な懸念を表明し、国際人道法を含む適用可能な

国際法をすべての国家が常に遵守する必要性を確認する」と言及されていた。

この共同声明において、上述の16カ国は、「すべての国家は、核兵器を違法化し、核兵器のない世

界を達成するための努力を強化しなければならない」と主張し、NPTの「運用検討のサイクルにおい

て、核兵器の人道的結果について徹底的に取り組むことが不可欠である」とした。これら16カ国はま

た、国連総会第一委員会に提出すべく、この問題に関する共同声明を作成した。ブラジル、南アフリ

カ、スイスを含む34の共同提案国(及びバチカン)は、その声明で、改めて「核兵器を違法化し、核

兵器のない世界を達成するための努力を強化する」よう求めた15。またノルウェーは、2013年の会議

11 Tim Wright, “Towards a Treaty Banning Nuclear Weapons: A Guide to Government Position on a Nuclear

Weapons Convention,” International Campaign to Abolish Nuclear Weapons, January 2012.

12 参加国は日本、豪州、ドイツ、オランダ、ポーランド、カナダ、チリ、メキシコ、トルコ、UAE。

13 「軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)第5回外相会合(概要と評価)」外務省、2012年9月26日、http://

www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/npdi/5th1209/gh.html 。 “Non-Proliferation and Disarmament Initiative 5th

Ministerial Meeting Joint Statement,” New York, 26 September 2012, http://www.mofa.go.jp/

policy/un/disarmament/arms/npdi_5th_statement.html.

14 “Joint Statement on The Humanitarian Dimension of Nuclear Disarmament,” 2012 NPT PrepCom, 2 May

2012. 共同声明参加国は、オーストリア、チリ、コスタリカ、デンマーク、バチカン、エジプト、インドネシア、

アイルランド、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ナイジェリア、ノルウェー、フィリピン、南アフリ

カ、スイス。

15 “Joint Statement on the Humanitarian Dimension of Nuclear Weapons,” 67th Session of the United

Nations General Assembly First Committee, New York, 22 October 2010. 日本は、「現実的アプローチとして

我が国は核抑止力の下で自国の安全を確保することが必要と考えており,このような我が国の安全保障政策の考

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の目的について、「核爆発の事態における、即時の人道上の影響、長期的な影響及び結果並びに適切な

人道的対応を提供するための準備の実際に状況について議論する場を構築する」ことだとしている。

核兵器国も、核兵器の人道的結果の問題に関するこうした動きを注視しているようにみえる。たと

えば、米国は2010年の核態勢見直し(NPR)報告で、「米国は、米国あるいは同盟国・パートナーの

死活的な利益を防衛するために極端な状況(in extreme circumstances)においてのみ、核兵器の使

用を検討するであろう」16とし、英国も2012年準備委員会で、核兵器の使用は他の兵器の使用を管理

する国際人道法と同様の原則によって規律されること、またICJ勧告的意見が核兵器の使用をいかな

る状況においても違反であるとの議論を否定していることに言及している17。2012年NPT準備委員会

の議長サマリーでは、「多くの締約国は、核兵器のいかなる使用または使用の威嚇も、国際人道法の基

本的なルールに合致しないとの懸念を表明した。いくつかの核兵器国は、それぞれの国家政策の下で、

いかなる核兵器の使用も適用可能な国際人道法に従って、極端な状況においてのみ検討されると説明

した」として、議論の状況がまとめられた。

(3) 核兵器の削減

a) 核兵器削減の動向

核兵器の廃絶という目標に向けた最も重要な措置の一つは、当然ながら既存の核兵器を削減してい

くことである。現在、法的拘束力のある条約の下で核兵器の削減を実施しているのは、米国及びロシ

アである。両国は、配備戦略核弾頭を6,000発の規模に削減することを定めた戦略兵器削減条約

(START、1991年7月署名、1994年12月発効)、同じく3,000〜3,500発の規模への削減を定めた

STARTⅡ(1993年1月署名、未発効)並びに(実戦)配備戦略核弾頭数を1,700〜2,200発の規模と

する戦略攻撃能力削減条約(SORT、2002年5月署名、2003年6月発効)を経て、2010年4月に新

STARTに署名した。新STARTは2011年2月に発効した。米露は新STARTの下で、条約発効から7年

後の2018年までに、それぞれの配備戦略(核)運搬手段(大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発

射弾道ミサイル(SLBM)及び戦略爆撃機)を700基、配備・非配備戦略(核)運搬手段を800基、配

備戦略(核)弾頭を1,550発の規模に削減するとの義務を負っている。この上限を超える戦略(核)

運搬手段については廃棄が義務付けられているが、核弾頭については過去の米露(ソ)核軍備管理条

約と同じく、廃棄・解体についての義務は規定されていない。

新STARTの下での削減状況は、米国務省のホームページで定期的に公表されている(表1-2を参照)。

え方と必ずしも合致しない内容が含まれていたことから共同声明への参加を見合わせたこと」が日本での会議で

説明された。「第67回国連総会第一委員会及びオスロ会議に関するNGOとの意見交換会(概要)」外務省、2012

年11月21日、http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kaku/ngo_1211.html。

16 U.S. Department of Defense, Nuclear Posture Review Report (NPR), April 2010, p. 16.

17 “Statement by Ambassador Jo Adamson, UK Ambassador to the Conference on Disarmament,” Cluster

I—Disarmament, 2012 Preparatory Committee for the Nuclear Non-Proliferation Treaty, Vienna, 3 May

2012.

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表1-2:新STARTの下での米露の戦略(核)戦力

条 約

上 の

上限

米国 ロシア

年月 2011.2 2011.9 2012.3 2012.9 2011.2 2011.9 2012.3 2012.9

配備戦略(核)弾頭 1,550 1,800 1,790 1,737 1,722 1,537 1,566 1,492 1,499

配備戦略(核)運搬手段 700 882 822 812 806 521 516 494 491

配備・非配備戦略(核)運搬手段 800 1,124 1,043 1,040 1,034 865 871 881 884

出典)U.S. Department of State, “New START Treaty Aggregate Numbers of Strategic Offensive Arms,” Fact

Sheet, October 25, 2011, http://www.state.gov/t/avc/rls/176096.htm; U.S. Department of State, “New START

Treaty Aggregate Numbers of Strategic Offensive Arms,” Fact Sheet, April 6, 2012, http://www.state.gov/

t/avc/rls/178058.htm; U.S. Department of State, “New START Treaty Aggregate Numbers of Strategic

Offensive Arms,” Fact Sheet, October 3, 2012, http://www.state.gov/t/avc/rls/198582.htm.

なお、上記の表に挙げられた米露の戦略(核)戦力に関する数字は、新STARTで規定された戦略(核)

運搬手段・弾頭の計算方法18によるものであり、米露の戦略核戦力の実体を必ずしも正確に表してい

るわけではない。

新START後の米露間の核兵器削減について、オバマ大統領は同条約署名の直後に、「非配備の兵器

を含む、戦略兵器及び戦術兵器双方の削減に関するロシアとの交渉を追求することを望む」19と述べ

た。しかしながら、そうした交渉は2012年末の時点で開始されておらず、米露ともに核兵器削減に関

する具体的な提案も行っていない。そこには、米露両国で2012年に大統領選挙が行われたことに加え

て、ロシアが削減に積極的ではないことが影響を与えたように見受けられる。ロシアは、特に米国の

ミサイル防衛欧州配備計画に強く反発し、可能性は低いとはいえ新STARTからの脱退を示唆すること

もある。また、非戦略核兵器に関しては、米国に対して数的に優位にあること、あるいは劣勢な通常

戦力を補完する兵器として重視しているとみられることが、その削減へのロシアの消極的な姿勢に現

れている。

上述のように、米露はともに、保有する核兵器の総数を明らかにしているわけではないが、米国は

2010年に、2009年9月末時点で5,113発の核弾頭(退役し廃棄される核弾頭数は含まれない)を保有

していること(ピーク時である1967年の3万1255発と比べると、84%削減)、非戦略核兵器の数は1991

年9月30日から90%低下していること、1994年から2009年の間に8,748発の核弾頭を解体したことを

明らかにした20。ロシアは、2012年NPT準備委員会で、非戦略核兵器の保有量は1991年のそれの25%

の規模に削減されていること、ロシアのすべての非戦略核兵器は配備されておらず、国内の中央貯蔵

施設に保管されていることを明らかにした21。

18 新STARTでは、ICBM及びSLBMについては実際に配備されている弾頭数(核弾頭以外の弾頭も含む)が数え

られるのに対して、戦略爆撃機については、(実際は6〜20発を搭載しているが)1機に1発の核弾頭が搭載さ

れているとして計算される。

19 “Remarks by President Obama and President Medvedev of Russia at New START Treaty Signing

Ceremony and Press Conference,” Prague, Czech Republic, April 10, 2010, http://www.whitehouse.gov/

the-press-office/remarks-president-obama-and-president-medvedev-russia-new-start-treaty-signing-cere.

20 Department of Defense, “Increasing Transparency in the U.S. Nuclear Weapons Stockpile,” Fact Sheet,

May 3, 2010.

21 “Statement by the Delegation of the Russian Federation at the first session of the Preparatory Committee

for the 2015 Nuclear Non-Proliferation Treaty Review Conference: Cluster 1 (nuclear disarmament),”

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英国はピーク時に350発(推計)の核兵器を保有していたとみられるが、冷戦後、一方的措置とし

て核兵器を削減してきた。また核運搬手段についても、SLBMのみにするとした。ヘイグ英外相は、

2010年5月26日の下院での答弁で、英国の配備核弾頭数を公表していた160発に維持しつつ、保有す

る核弾頭数の上限については225発とする方針を明らかにした22。2010年10月に公表された「戦略防

衛・安全保障見直し」(SDSR)報告では、そのさらなる削減の方針が示され、各戦略原潜に搭載する

核弾頭を48発から40発に削減すること、運用可能な弾頭(Operationally available warheads)のた

めの必要数を(160発ではなく)120発以下とすること、2020年代半ばまでに核兵器ストックパイル

を(225発ではなく)180発以下とすることとした23。英国はその後、削減計画が予定より早く実施さ

れ、2015年NPT運用検討会議までに、運用可能な弾頭が120に削減される見込みだとしている24。

フランスも冷戦後、ピーク時に540発(推計)を保有した核弾頭の削減、あるいは地上配備弾道ミ

サイルの廃棄など、核兵器の一方的削減を実施してきた。2008年にはサルコジ大統領が、保有する核

弾頭の総数を最大で300発にすると述べ25、また2010年NPT運用検討会議ではフランスが予備の核弾

頭を保持していないことを明らかにしている26。その後、フランスは核兵器保有数の削減、あるいは

その計画を新たに示しているわけではないが、2012年NPT準備委員会では、航空機搭載の核戦力を3

分の1に削減したこと、過去15年間で核弾頭数は半減したこと、また保有する核兵器が300発以下で

あることを明らかにした27。

5核兵器国の中で、核兵器の配備数や保有数、あるいは削減計画など、具体的な姿を全く公表して

いないのが中国である。中国は、国家安全保障に必要な最小限のレベルの核兵器を保有していること、

核兵器の開発に最大限の抑制を行ってきたことなどを、これまでも繰り返し述べてきた28。また民間

研究機関などの分析でも、中国が核兵器を数的に増加させているわけではないとの見方が主流である。

他方、少なくとも現状では、中国は核兵器の削減には着手していないとみられている。中国は「最大

の核軍備」を保有する国々、すなわち米露が核兵器削減を先導すべきだと強調した上で、「条件が整え

ば」他の核兵器国は核軍縮に関する多国間の交渉に参加すべきだとしている29。しかしながら、米露

の核兵器が具体的にどの程度の規模に削減された場合に中国が多国間核削減プロセスに参加するかは

明言していない。

インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の状況はいずれも明確ではないが、少なくとも核兵器(能

Vienna, May 2012.

22 “Britain's Nuclear Arsenal Is 225 Warheads, Reveals William Hague,” Guardian, 26 May 2010,

http://www.guardian.co.uk/world/2010/may/26/uk-nuclear-weapons-stockpile-warheads.

23 “Securing Britain in an Age of Uncertainty: The Strategic Defence and Security Review,” Presented to

Parliament by the Prime Minister by Command of Her Majesty, October 2010, p. 38.

24 “Statement by Ambassador Jo Adamson, UK Ambassador to the Conference on Disarmament,” Cluster

I—Disarmament, 2012 Preparatory Committee for the Nuclear Non-Proliferation Treaty, Vienna, 3 May

2012.

25 “French President Nicolas Sarkozy Nuclear Policy Speech, March 2008,” Presentation of Le Terrible in

Cherbourg, 21 March 2008, http://www.acronym.org.uk/proliferation-challenges/nuclear-weapons-

possessors/ france/ french-president-nicolas-sarkozy-nuclear-policy-speech-march-2008?page=3.

26 NPT/CONF.2010/WP/33, 14 April 2010.

27 “Statement by the Head of the French Delegation,” General Debate, First Meeting of the Preparatory

Committee for the 2015 NPT Review Conference, Vienna, 30 April-11 May 2012.

28 “Statement by H.E. Mr. Wu Haitao, Chinese Ambassador for Disarmament Affairs on the Issue of Nuclear

Disarmament,” at the First Session of the Preparatory Committee for the 2015 Review Conference of the

Nuclear Non-Proliferation Treaty, Vienna, May 3, 2012.

29 Ibid.

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13

力)を削減しているとの分析は見当たらず、これらの国はその具体的な削減計画を示しているわけで

もない。

b) 核戦力の強化・近代化

核兵器の削減を進めてきた米国、ロシア、英国、フランスは、他方で核兵器あるいは核兵器関連イ

ンフラの近代化にも従事してきた。

米国は2010年のNPRで、新型核弾頭を開発しないものの、既存の核弾頭については安全性、保安性、

信頼性(safe, secure and reliable)を確実にするためのオプションを検討すること30、将来の核兵器

のない世界という究極的な目標を持ちつつも、安全で、適切に保全され、確実かつ効果的なストック

パイルを維持すべく、核ストックパイルの管理、寿命延長計画、核インフラや人的資源の育成を行う

との方針を明らかにした31。核兵器関連インフラの近代化は、抑止力を維持しつつ核兵器の大幅削減

を可能にするものと位置づけられている。戦略運搬手段については、延命措置や近代化措置などが講

じられるとともに、新規開発の可能性に関する検討が行われている32。また、プルトニウムピットの

生産施設(Chemical and Metallurgy Research Replacement)を建設する計画も進められてきた。

オバマ政権は新START批准の承認を上院に諮るのに先立ち、運搬プラットフォームの維持、安全で保

全され、かつ信頼できる米国の核兵器ストックパイルの維持、並びに核兵器コンプレックスの近代化

のための包括的な計画に関する非公開の報告書を議会に提出した。そこでは、核運搬手段の近代化の

ために今後10年間に1,000億ドルを投資すること、核兵器関連インフラの近代化に今後10年間に800

億ドルを投資することなどの計画が明記されている33。

ロシアは、老朽化したICBM及びSLBMの更新に向けた開発を進めてきたが、ICBMについては2005

年に単弾頭のRS-12M(Topol、SS-27)、また2011年にはその多弾頭型であるRS-24(Yars、SS-27 Mode

2)の配備をそれぞれ開始したとみられている。2007年に進水したボレイ級弾道ミサイル搭載原子力

潜水艦(SSBN)に搭載される新型SLBMのRSM-56(Bulava、SS-NX-30)についても、2012年前

半に配備が開始されたようである。ロシアは、ミサイル防衛網の突破を企図して機動性弾頭(MaRV)

を新型ICBM及びSLBMに搭載しているともみられている。またプーチン首相(当時)は2012年2月

に、今後10年で400基以上の新型ICBM及びSLBM並びに8隻の弾道ミサイル原潜を配備するといっ

た方針を示している34。さらに、カラカエフ戦略ロケット軍司令官は、ロシアがSS-18の後継となる新

型ICBMを2018年までに建造するであろうと発言した35。この新型ICBMには、1基に10個の核弾頭

が搭載可能であるとされ、先行使用、あるいは対兵力打撃に使用される可能性を高めるものになると

の懸念もある。

30 Nuclear Posture Review Report, pp. 38-39.

31 Ibid., p. 37.

32 Amy F. Woolf, “Modernizing the Triad on a Tight Budget,” Arms Control Today, Vol. 41, No. 1

(January/February 2012), p. 8-13.

33 そのサマリーとして、“The New START Treaty—Maintaining a Strong Nuclear Deterrence” http://www.

whitehouse.gov/sites/default/files/New%20START%20section%201251%20fact%20sheet.pdf. 米国の核戦力

の近代化に関しては、Tom Z. Collina, “Fact Sheet: U.S. Nuclear Modernization Programs” (Arms Control

Association, November 4, 2011) http://www.armscontrol.org/factsheets/USNuclear Modernizationも参照。

34 Vladimir Putin, “Being Strong: National Security Guarantees for Russia,” Rossiiskaya Gazeta, 20

February 2012, http://premier.gov.ru/eng/events/news/18185/.

35 “Russia to Build New ICBM by 2018 - SMF Chief,” RIANovosti, 3 September 2012, http://en.rian.ru/

mlitary_news/ 20120903/175742805.html.

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英国は、SLBMを搭載するSSBNの更新に向けた建造を計画しているが、財政赤字削減の必要性な

どから、取得計画、設計及び隻数に関する最終的な決定を4年間延期して2016年に行うとしている36。

フランスの核戦力及び核兵器関連インフラの近代化の動向は明確ではないが、4隻の新型の弾道ミサ

イル搭載原潜を配備している(最新の配備は2010年)。また英仏は、核爆発実験を実施することなく

核弾頭の安全性を実証するためのプロジェクトについて協力するとの協定を2010年11月に結んだ37。

中国は、少なくとも運搬手段の近代化を積極的に推進している。戦略核戦力に関しては、残存性の

強化を主眼として、固体燃料移動式の新型ICBM・DF-31Aの配備を開始するとともに、新型SLBM・

JL-2の開発を継続している。米国防総省が公表した中国の軍事力に関する報告書(2012年)では、

SLBMを搭載する晋級SSBNの開発が進み、早ければ2年以内に初期的な運用能力を持つと分析され

ている38。さらに、中国が多弾頭式のICBM・DF-41の開発を進めているとの見方もある。こうした戦

略核戦力の強化は、中国の核戦力の規模、あるいは核戦略を少なからず変容させる可能性を持つもの

といえる。中国はまた、移動式で核・通常兵器両用の短距離弾道ミサイル(SRBM)及び準中距離弾

道ミサイル(MRBM)の増強を継続してきた。

核兵器保有国の中ではパキスタンが、核ストックパイルの増加を最も積極的に推進しているとみら

れる。パキスタンは、再処理施設と2基のプルトニウム生産炉を建設中であり39、兵器利用可能なプ

ルトニウムの生産能力の強化も企図しているようである。パキスタンは、4基目の軍事用原子炉の建

設を急ピッチで進めており、これが完成すれば、その核兵器の年間製造能力は現在の7〜14発から19

〜26発に倍増するとの分析もある40。インドの核兵器数も漸増しているが、米印原子力協力協定の締

結を端緒として他国との原子力平和利用に関する協力が進み、その中で民生用原子炉で用いられる核

燃料の供給を受けることになれば、自国で産出されるウランを軍事目的により多く振り向けることが

可能になるとの懸念もある。

北朝鮮については、2007年10月に六者会合で合意された「共同声明の実施のための第二段階の措置」

に従って、5メガワット実験炉、再処理工場(放射化学研究所)及び核燃料棒製造施設(いずれも寧

辺)の無能力化が実施されたが(ただし、8割程度実施したところで中断)、その裏で秘密裏にウラン

濃縮施設の建設を進めていたとみられる。2010年10月には、ヘッカー米スタンフォード大学教授を招

待して、「平和目的」と主張するウラン濃縮施設を公開した。北朝鮮によるウラン濃縮活動の実態は明

らかではないが、公開したもの以外にもウラン濃縮施設を建設し、そこで高濃縮ウラン(HEU)を生

産しているとすれば、核弾頭の増加が可能になりかねない。北朝鮮が弾道ミサイルに搭載可能な核弾

頭の小型化に成功しているか否かは不明だが、そのための取組を継続しているとみられる。

4核兵器保有国は、いずれも核弾頭搭載可能な運搬手段を保有するとともに、さらなる開発を進め

ている。インドは、2011年11月に地上発射弾道ミサイル・アグニ4(射程距離3,500km)の発射実験

に成功したのに続き、2012年4月には中国全土を射程に収める地上発射弾道ミサイル・アグニ5(同

36 “Securing Britain in an Age of Uncertainty: The Strategic Defence and Security Review,” Presented to

Parliament by the Prime Minister by Command of Her Majesty, October 2010, p. 38.

37 Adrian Croft and Emmanuel Jarry, “France, UK agree to unprecedented military cooperation,” Reuters,

November 1, 2010, http://www.reuters.com/article/2010/11/02/britain-france-idUSLAG00638720101102

38 Office of the Secretary of Defense, Annual Report to Congress: Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China, May 2012, p. 23.

39 Hans M. Kristensen and Robert S. Norris, “Pakistan’s Nuclear Forces, 2011,” Bulletin of the Atomic Scientists, Vol. 67, No. 4 (July/August 2011), p. 91.

40 David Albright and Paul Brannan, “Pakistan Doubling Rate of Making Nuclear Weapons: Time for

Pakistan to Reverse Course,” ISIS Imagery Brief, May 16, 2011.

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5,000km)の発射実験に成功した。またインドは、弾道ミサイル搭載原潜の開発も継続しており、2012

年7月31日にはシン首相が、SLBMの開発に初めて成功したと発言した41。パキスタンは、地上配備

弾道ミサイルのシャヒーン2(同2,000km)、シャヒーン1A(同2,500-3,000 km)などの開発を進め

ている。またイスラエルは地上発射弾道ミサイルのジェリコ3(同5,000km?)を配備したと伝えら

れている。イスラエルについては2012年6月、核弾頭搭載可能な巡航ミサイルを積載できる潜水艦を、

現在までにドイツから4隻、2017年までにさらに2隻を供与されると報じられた42。北朝鮮も弾道ミ

サイルの長射程化に取り組んでいる。人工衛星発射と称した2012年4月のミサイル実験は失敗したが、

同年12月には再び「銀河3号」を北西部東倉里の「西海衛星発射場」から打ち上げ、「衛星」を軌道

に到達させた。これは、北朝鮮のICBM取得に向けた取組の大きなブレイクスルーといえる。また、

北朝鮮はすでに、核弾頭を搭載可能なノドンMRBMを100~200基程度配備しているとみられる。

(4) 安全保障戦略・政策における核兵器の役割及び重要性の一層の低減

a) 宣言政策の動向

2010年NPT運用検討会議の最終文書では、「すべての軍事上・安全保障上の概念、ドクトリン及び

政策における核兵器の役割及び重要性の一層の低減」が求められた。ただ、安全保障戦略・政策にお

ける核兵器の役割及び重要性を核兵器(保有)国がどのように認識しているかについて、客観的に判

断することは容易ではない。一つの手がかりは各国が公表する宣言政策だが、これが実際の運用政策

と異なることも少なくない。そうした制約を踏まえつつ、本報告書では、主として核兵器(保有)国

の宣言政策を基に調査・分析を試みる。

国家安全保障における核兵器の重要性の低下を最も強く認識しているのは、おそらく米国であろう。

冷戦期のソ連のように、米国に比肩する核・通常戦力を持つ国はなく、とりわけ米国の通常戦力は他

国に圧倒的な優越を誇っているからである。2001年の NPRでブッシュ政権が示した攻撃(核・非核)、

防御、防衛インフラからなる「新しい三本柱」は、核兵器への依存を低減しつつ抑止力を向上させる

ことを企図したものとされた43。オバマ政権による 2010 年 NPR では、「新しい三本柱」という言葉

は使われていないが、核兵器の役割及び数を低減させつつ地域抑止を強化するため、効果的なミサイ

ル防衛、WMD 対抗能力、通常パワープロジェクション能力、統合された指揮・統制などで構成され

る「地域的安全保障アーキテクチャ」(regional security architecture)を強化するとした44。

また 2010 年 NPR では、現時点で米国の核兵器の「唯一の目的」(sole purpose)を核攻撃の抑止

であると宣言する用意はないとしつつも、そのような政策を採りうるような状況を構築するために努

める45としたうえで、「米国の核兵器の基本的な役割(fundamental role)は、核兵器が存在する限

り続くであろうが、米国及び同盟国・パートナーに対する核攻撃を抑止することである」46とした。

米国の核戦力はこれまで、通常攻撃、あるいは非核 WMD(生物・化学兵器)攻撃に対する抑止力と

41 “India quietly gate crashes into submarine-launched ballistic missiles club?” Time of India, July 31, 2012,

http://articles.timesofindia.indiatimes.com/2012-07-31/india/32960409_1_agni-v-slbms-ins-arihant.

42 “Israel Deploys Nuclear Weapons on German-Built Submarines,” Spiegel, 3 June 2012, http://www.

spiegel.de/international/world/israel-deploys-nuclear-weapons-on-german-submarines-a-836671.html.

43 2001年のNPRは非公表だが、米シンクタンクのホームページに、リークされた報告書の抜粋が掲載されてい

る(www.fas.org/blog/ssp/united.../NPR2001re.pdf)。

44 Nuclear Posture Review Report, pp. 32-33.

45 Ibid., p. 16.

46 Ibid., p. 15.

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しても位置づけられていたが、2010 年 NPR では「これらに対応するための米国の核兵器の役割は、

大きく低下してきた」とし、「米国は、非核攻撃の抑止における核兵器の役割を低減し続けるであろう」

47ともしている(消極的安全保証との関係については後述)。

オバマ大統領は、2012年3月の核セキュリティサミット(ソウル)において、米国は新しい核弾頭

を開発せず、核兵器に新たな軍事的ミッションを追求しないとの方針を改めて確認した48。また米国

は2012年のNPT準備委員会で、核兵器の役割を低減するために、さらなるステップを取ることができ、

またそうすべきだと発言している49。そのための取組の一つに挙げられるのが、2011年夏頃に着手さ

れた、核兵器のターゲティングを含む運用政策に関する見直し作業であろう。この見直しを通じて、

核兵器の数と役割を低減するためのオプションが提示されるのではないかと期待されているが50、本

報告書執筆時点ではその具体的な内容は明らかではない。

ロシアは冷戦後、米国とは逆に安全保障における核兵器への依存を高めているようである。多分に

プロパガンダの色彩が強かったとはいえ、冷戦期のソ連は核兵器の先行不使用を宣言していたが、

1993年のロシア軍事ドクトリンでは核兵器の先行使用の可能性が示唆され、2000年4月及び2010年

2月の軍事ドクトリンでは、先行使用の可能性が明記された。さらに、2010年2月の軍事ドクトリン

では、「自国及び同盟国への核兵器その他のWMDの使用並びにロシアの国家の存続自体が脅威にさら

される場合、通常兵器を用いたロシア連邦への攻撃に対して、核兵器を使用する権利を留保する」51と

している。そこには、冷戦後のロシアの通常戦力の弱体化、ワルシャワ条約機構の解消と旧ソ連諸国

の独立に伴う戦略的縦深性の低下、さらには北大西洋条約機構(NATO)東方拡大の進展に対して、

ロシアが特に通常戦力の劣勢を核兵器で補完したいという意図が伺える。本報告書執筆時点では、ロ

シアの安全保障政策における核兵器の役割に関する大きな変更の兆候はみられない。

英国は、2010年のSDSRにおいて、「最も極端な脅威を抑止する究極的な手段として、最小限で効果

的な核抑止力」を維持すること、「NATO同盟国の防衛を含む自衛の極端な状況においてのみ核兵器の

使用を検討する」ことという、冷戦後の核政策を改めて明記した52。こうした英国の核政策は、2012

年NPT準備委員会でも確認されている53。

フランスの核抑止に関する宣言政策は、2008年に公表された「国防・安全保障白書」に概略が示さ

47 Ibid.

48 “Remarks by President Obama at Hankuk University,” Seoul, March 26, 2012, http://www.whitehouse.

gov/the-press-office/2012/03/26/remarks-president-obama-hankuk-university.

49 “Statement by Ambassador Laura Kennedy, Permanent Representative of the United States to the

Conference on Disarmament, Department State, United States of America,” Cluster 1 Special Issue, First

Session of the Preparatory Committee, 2015 Review Conference of the State Parties to the Treaty on the

Non-Proliferation of Nuclear Weapons, Vienna, May 4, 2012.

50 Hans M. Kristensen and Robert S. Norris, “Reviewing Nuclear Guidance: Putting Obama’s Words into

Action,” Arms Control Today, Vol.41, No.9 (November 2011), https://www.armscontrol.org/

act/2011_11/Reviewing_Nuclear_Guidance_Putting_Obama_Words_Into_Action.

51 “The Military Doctrine of the Russian Federation Approved by Russian Federation Presidential Edict,”

February 5, 2010 (unofficial translation), http://carnegieendowment.org/files/2010russia_military_

doctrine.pdf.

52 “Securing Britain in an Age of Uncertainty: The Strategic Defence and Security Review,” Presented to

Parliament by the Prime Minister by Command of Her Majesty, October 2010, p. 37.

53 “General Statement by Ambassador Jo Adamson, UK Ambassador to the Conference on Disarmament,

Head of the United Kingdom Delegation,” at the 2012 Preparatory Committee for the Nuclear

Non-Proliferation Treaty, Vienna, 30 April 2012; “Cluster 1 by Ambassador Jo Adamson, UK Ambassador to

the Conference on Disarmament, Head of the United Kingdom Delegation,” at the 2012 Preparatory

Committee for the Nuclear Non-Proliferation Treaty, Vienna, 3 May 2012.

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れている。これによると、核抑止は「国家安全保障及び独立を究極的に保証するもの」であり、「完全

に防御的(strictly defensive)」だとしている54。またフランスは、「厳格に十分なレベルで核戦力を

維持し続ける」とし、それは「安全保障に合致する可能な限り最小限のレベル」だとしている55。他

方、「いかなる方向及び態様からであれ、国の死活的な利益に対する国家主導の侵略を防止する」56と

しており、現在に至るまで先行不使用政策、あるいは「唯一の目的」を採用していない。またフラン

スは、「その核兵器の使用は自衛の極端な状況においてのみ想起される」としているが、同時に「抑止

政策の枠組みの中で、核の警告を伝える能力を有している」57ともしている。

中国は、1964年に核実験を実施し、核兵器の保有を公表した後、一貫して核兵器の先行不使用及び

無条件の消極的安全保証を宣言するとともに、他国も同様の宣言を行うべきだとし、相互先行不使用

条約の交渉・締結を求めてきた。後述のように、中国は、平時には核弾頭と運搬手段とを切り離して

保管しているとみられる。中国は、「最小限抑止」という言葉は用いていないが、その核兵器は純粋

に防御的、報復的なものであると繰り返し述べてきた。2008年の国防白書では、中国が核攻撃に晒さ

れれば、第二砲兵師団の核ミサイル軍は敵に対して決然たる報復を行うであろうとしている58。他方、

中国の先行不使用政策に対しては、中国の核戦力が通常戦力による対兵力打撃を受ける場合、あるい

は通常攻撃によって死活的に重要な国益が脅かされる場合でも、その核兵器を使用しないかといった

点で、信頼性に対する疑念も示されている59。

インドは、1998年5月の核爆発実験実施後、その核政策についてたびたび言及してきたが、1999

年及び2003年の核ドクトリンでは、「信頼性のある最小限核抑止政策」を採用していること、先行不

使用、及び非核兵器国に対する不使用にコミットしていることを明らかにした。ただし、「インド領域

またはインド軍への生物または化学兵器による大規模な攻撃の場合には、インドは核兵器による報復

のオプションを維持」60するともしている。これに対して、通常戦力でインドに劣勢なパキスタンは、

先行不使用を宣言していない。

曖昧政策を維持するイスラエルは、当然ながら安全保障戦略・政策における核兵器の役割について

も言及していない。ただ、少なくとも核兵器の保有を否定しないことで、潜在的敵国がイスラエルに

対する行動に慎重となるよう期待していると思われる。

最後に北朝鮮は、その「核軍事力の任務」について、「核兵器が半島及び他の世界から廃絶される

までの間、国への侵略や攻撃を抑止し撃退すること」61としている。とりわけ米国の「敵対政策」に

対する抑止力であることを強調し、そうした政策が続く限り、北朝鮮は核抑止力を強化するとしてい

54 The French White Paper on Defence and National Security, 2008, p. 64.

55 Ibid., p. 162.

56 Ibid., p. 64.

57 Ibid., p. 65.

58 Information Office of the State Council of the People’s Republic of China, “China’s National Defense in

2008.”

59 Hans Kristensen, “China Defense White Paper Describes Nuclear Escalation,” FAS Strategic Security

Blog, January 23, 2009, http://www.fas.org/blog/ssp/2009/01/chinapaper.php; Jing-dong Yuan, “Chinese

Perspectives of the Utility of Nuclear Weapons: Prospects and Potential Problems in Disarmament,”

Proliferation Papers, Spring 2010, p. 18.

60 Prime Minister’s Office, “Cabinet Committee on Security Reviews Progress in Operationalizing India ’s

Nuclear Doctrine,” Press Releases, 4 January 2003, http://pib.nic.in/archieve/lreleng/lyr2003/rjan2003/

04012003/r040120033.html.

61 “Foreign Ministry Issues Memorandum on N-Issue,” Korean News, April 21, 2010, http://www.kcna.co.jp/

item/ 2010/ 201004/news21/20100421-27ee.html.

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る。

b) 消極的安全保証

5核兵器国のうち、非核兵器国に対して無条件の消極的安全保証を宣言しているのは中国だけであ

る。また非同盟諸国を中心とする非核兵器国からは、核兵器国に対して法的拘束力のある消極的安全

保証を求める主張がなされてきたが、これに賛成する核兵器国も中国のみであり、他の核兵器国は、

非核兵器地帯条約議定書への批准の場合を除き、否定的である。こうした中で、核兵器国は、消極的

安全保証に関する一方的宣言を行ってきた。

米国はこれまで、米国または同盟国に対する非核兵器国の侵略その他の攻撃が、核兵器国と連携あ

るいは同盟して実施される場合には、消極的安全保証の提供を留保するとしてきた。また、生物・化

学兵器を保有する非核兵器国への核兵器の使用可能性についても、時にこれを示唆する発言が政府高

官などからなされてきた。そうした米国の政策は、2010年NPRで大きな変更が加えられ、「米国は、

NPTの当事国であり、かつ核不拡散義務を遵守する非核兵器国に対しては、核兵器の使用、あるいは

使用の威嚇を行わないと宣言することによって、『消極的安全保証』を強化する用意がある」62こと、

つまり原則として、核兵器以外のWMDを保有する非核兵器国についても、核不拡散義務を遵守する

限り、核兵器の使用、または使用の威嚇を行わないことが明記された。NPRでは、「消極的安全保証

の対象となる国が生物・化学兵器を使用すれば、通常兵器による壊滅的な対応に直面するであろう」63

として通常抑止への依存を高める方針が示されているが、同時に、生物兵器の進歩や拡散の際には、

消極的安全保証の内容を調整する権利を留保するとしている64。消極的安全保証の対象から外れる核

兵器保有国、並びに核不拡散義務を遵守していない国に対しては、「通常あるいは生物・化学攻撃の抑

止にあたって、米国の核兵器が依然として役割を果たす狭い範囲の事態(narrow range of

contingencies)が残る」65ともしている。

英国も、米国と同様に、核兵器国と同盟関係にあるか、核兵器国と連携して攻撃する場合を除き、

非核兵器国に対して核兵器の使用または使用の威嚇を行わないとの消極的安全保証を宣言してきたが、

2010年SDSRでは、やはり米国と同様に、核不拡散義務に違反している場合を除き、NPT締約国であ

る非核兵器国に対しては、核兵器の使用または使用の威嚇を行わないという方針への変更が示された

66。他方、核兵器以外のWMDとの関係については、現状では英国及びその重要な国益の直接的な脅威

ではないものの、それらの将来の脅威、開発及び拡散によって必要となるのであれば、消極的安全保

証について再検討する権利を留保するとしている67。

ロシア及びフランスは、1995年にそれぞれが行った消極的安全保証に関する宣言の内容を現在も維

持しており、核兵器国と同盟関係にある非核兵器国による攻撃の場合を除いて、NPT締約国である非

核兵器国に対して核兵器を使用または使用の威嚇を行わないとしている。

非核兵器地帯条約に付属する議定書では、核兵器国に対して法的拘束力のある消極的安全保証の提

62 Nuclear Posture Review Report, p. 15.

63 Ibid., p. 16.

64 Ibid.

65 Ibid.

66 “Securing Britain in an Age of Uncertainty: The Strategic Defence and Security Review,” Presented to

Parliament by the Prime Minister by Command of Her Majesty, October 2010, pp. 37-38.

67 Ibid.

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供が規定されている。しかしながら、表1-3に示すように、本報告書執筆時点で、5核兵器国すべての

批准を得たのはラテンアメリカ及びカリブ核兵器禁止条約議定書のみである。

表1-3:消極的安全保証に関する非核兵器地帯条約議定書への核兵器国の署名・批准状況

ロシア

米国

フランス

中国

イギリス

1 ラテンアメリカ及びカリブ核兵器禁止条約(トラテロルコ条約) ○ ○ ○ ○ ○

2 南太平洋非核地帯条約(ラロトンガ条約) ○ △ ○ ○ ○

3 東南アジア非核兵器地帯条約(バンコク条約)

4 アフリカ非核兵器地帯条約(ペリンダバ条約) ○ △ ◯ ○ ○

5 中央アジア非核兵器地帯条約

○:批准 △:署名

米国は、南太平洋非核地帯条約及びアフリカ非核兵器地帯条約の議定書について、長く批准を先送

りしてきた。オバマ政権はこれらの批准に向けて2011年5月に上院に送付したが68、現在に至るまで

上院での審議は開始されていない。

東南アジア非核兵器地帯条約議定書については、5核兵器国のいずれも署名していない。核兵器国

は東南アジア諸国と2011年11月に協議を行い、議定書への署名・発効に必要な措置をとることで合意

し、2012年7月12日には5核兵器国による議定書への署名が予定されていた。しかしながら、署名の

直前に、フランス、ロシア及び英国が議定書に対する留保を示し、東南アジア諸国がその内容を検討

する時間がなかったとして、署名式は延期された69。これら3カ国が示した条件は、消極的安全保証、

並びに非核兵器地帯に大陸棚及び排他的経済水域が含まれることに関するものであり、米国も3カ国

による説明を支持した70。中国については、2012年4月の東南アジア諸国連合(ASEAN)サミット

議長声明によれば、ASEANとの間で交渉された合意覚書において中国の懸念に対処されたという。

ただ、どのような問題がカバーされたかには言及されていない71。

中央アジア非核兵器地帯条約についても、5核兵器国はいずれも署名していない。このうち、フラ

ンス、米国及び英国は、域内諸国とロシアとの集団安全保障条約(1992年のタシケント集団安全保障

条約)が非核兵器地帯条約の規定よりも優先される可能性があること、これによりロシアによる地帯

内への核兵器の配備が容認される可能性があることを問題視している。

条約ではないものの、モンゴルによる非核の地位に関する宣言について、2012年9月に5核兵器国

は、その地位を公式に認めること、並びにモンゴルに対して核兵器を使用しないことについて、モン

ゴルとの政治宣言に署名した72。ただし、この宣言はあくまでも「政治的」なものであり、消極的安

全保証も法的拘束力のあるものではない。

68 U.S. White House, “Statement on Nuclear Free Zones in Asia and Africa,” May 2, 2011,

http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2011/05/02/statement-nuclear-free-zones-asia-and-africa.

69 “Four Powers Not Ready to Back Southeast Asia Nuke-Free Zone Treaty,” Global Security Newswire, July

9, 2012, http://www.nti.org/gsn/article/four-powers-not-ready-back-nuke-free-zone-treaty/.

70 “SE Asian Nuclear Protocol Falters,” Arms Control Today, Vol. 42, No. 7 (September 2012), p. 6.

71 Ibid.

72 “Mongolia Recognized as Nuclear-Free Zone,” Arms Control Today, Vol. 42, No. 8 (October 2012), p. 6.

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※※※

消極的安全保証は、NPTの文脈で、核兵器の取得を放棄する非核兵器国がその不平等性を緩和する

ことを目的の一つとして、NPT上の核兵器国に提供を求めるものである。NPT外の核兵器保有国によ

る消極的安全保証に賛意を示すことは、その国をNPT上の核兵器国と同等の地位にあるものと認める

ことになりかねないとの点には留意する必要がある。逆に、NPT外の核兵器保有国による消極的安全

保証の宣言には、その核兵器保有の正当性を認知させること、あるいは「責任ある核兵器(保有)国」

であることをアピールすることなどが目的に含まれていると考えられる。

インドは、2003年核ドクトリンで、非核兵器国には核兵器を使用しないことをコミットしている。

ただ、「インド領域やインド軍への生物・化学兵器による大規模な攻撃の場合、インドは核兵器によ

る報復のオプションを維持する」ともしている73。パキスタンは、非核兵器国に対する無条件の消極

的安全保証を宣言してきた74。さらに北朝鮮も、「侵略や攻撃において核兵器国と共同していない限

りにおいて、非核国に対して核兵器を使用したり、核兵器で威嚇したりしない政策を維持してきた」75

としている。

c) 拡大核抑止への依存

安全保障戦略・政策における核兵器の役割及び重要性の低減は、核兵器(保有)国に限られた問題

ではない。米国の核抑止はその同盟国にも延伸されており、そうした同盟国の安全保障戦略・政策に

は拡大(核)抑止(核の傘)が織り込まれているからである。また、米国では、核兵器の大幅削減や、

核戦略・政策における核兵器の重要性の低減のための措置に反対する理由の一つとして、拡大核抑止

の信頼性を低下させかねないとの懸念がたびたび挙げられていることにも留意すべきであろう。

米国は2010年NPRで、「拡大抑止の提供などを含めた同盟国・パートナーとの安全保障関係は、潜

在的な脅威の抑止だけでなく、不拡散の目標に資するという点でも重要」76だとしている。そのうえ

で、「米国の核兵器は、地域諸国が核兵器を保有する限り、その抑止に役割を果たすが、NPR、弾道

ミサイル防衛見直し報告(BMDR)及び四年期国防見直し報告(QDR)は、それらの国への抑止や同

盟国・パートナーへの再保証を達成する非核の手段への依存を高めるという米国の熱望を反映してい

る」77と記されている。「同盟国・友好国との鍵となるイニシアティブ」として挙げられた構成要素

も、「米国の核兵器(戦術攻撃・爆撃機、戦略爆撃機)を前方に展開する能力の保持」を除くと、ミ

サイル防衛を含む通常戦力、同盟国・友好国との協議、監視・偵察能力の開発・配備など、非核の分

野がほとんどを占めている78。

米国が核の傘を提供している主要な国は、NATO諸国、日本、韓国及び豪州である。このうち、ま

ずNATOとの関係では、2012年5月にNATOが公表した「抑止・防衛態勢見直し」(DDPR)におい

73 “Cabinet Committee on Security Reviews on Progress in operationalizing India’s Nuclear Doctrine” Prime

Minister Office of India, 4 January 2003, http://pib.nic.in/archieve/lreleng/lyr2003/rjan2003/04012003/

r040120033.html.

74 “Statement by Pakistan: Themantic Debate on Negative Security Assurances (NSAs),” CD Plenary

Meeting, 12 June 2012でも、このことが確認されている。

75 “Foreign Ministry Issues Memorandum on N-Issue,” Korean News, April 21, 2010, http://www.kcna.co.jp/

item/2010/201004/news21/20100421-27ee.html.

76 Nuclear Posture Review Report, p. 31.

77 Ibid., p. 28.

78 Ibid., pp. 33-35.

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て、「核兵器はNATOの抑止・防衛能力の中心的な構成要素である」こと、「核兵器が存在する限り、

NATOは核の同盟であり続ける」こと、「同盟国の最高の安全の保証は、同盟、とりわけ米国の戦略

核戦力により提供され、英仏の独立した戦略核戦力は…同盟国の全体的な抑止及び安全保障に貢献す

る」ことなどが改めて確認された79。米国は現在も、ドイツを含む欧州NATOの5カ国に航空機搭載

の重力落下式核爆弾を150~200発配備し、そうした国々との核シェアリングを継続している。米国は

これを、「同盟の団結、並びに再保証の提供に貢献」80するものと位置づけている。他方でDDPRで

は、ロシアの行動と相互的な方法で、NATOに割り当てられた前方配備非戦略核兵器の大幅削減につ

いて検討することも明記されている81。

北東アジアでは、核兵器(能力)を保有する中国及び北朝鮮の動向により、安全保障環境が不安定

化したため、日本及び韓国は、米国が提供する拡大(核)抑止の信頼性の維持、あるいは再保証への

関心を高めてきた。韓国との関係では、2009年6月16日の首脳会談で合意された「米韓未来ビジョン」

において、拡大抑止の強化が言及された82。また2010年10月には、拡大抑止政策委員会の設置に合意

した。さらに米韓は、2012年12月、核危機のシナリオにおける拡大抑止のコンセプト、危機における

意思決定、運用の要件を検討するとの目的で、2011年に続き2回目となる机上演習を行った83。

日本との関係では、2007年5月に日米安全保障協議委員会(2+2)が公表した「同盟の変革:日米

の安全保障及び防衛協力の進展」でも明記されたように、「あらゆる種類の米国の軍事力(核及び非核

の双方の打撃力及び防衛能力を含む)が拡大抑止の中核を形成」している84。2010年12月の新防衛大

綱では、「核兵器の脅威に対しては、長期的課題である核兵器のない世界の実現へ向けて、核軍縮・

不拡散のための取組に積極的・能動的な役割を果たしていく。同時に、現実に核兵器が存在する間は、

核抑止力を中心とする米国の拡大抑止は不可欠であり、その信頼性の維持・強化のために米国と緊密

に協力していくとともに、併せて弾道ミサイル防衛や国民保護を含む我が国自身の取組により適切に

対応する」85ことが改めて確認された。なお日本は国会で2009年3月、「『平成十七年度以降に係る

防衛計画の大綱』は、『核兵器の脅威に対しては、米国の核抑止力に依存する。』」とだけ述べてい

る。この表現は、日本に対し核兵器による攻撃があった場合は、米国の核兵器で報復する可能性を表

明することによって、そのような攻撃を抑止することを意図すると同時に、核兵器以外の生物兵器、

化学兵器、通常兵器による攻撃に対しては、米国の核兵器による報復のオプションを米国が維持する

ことを日本は期待していないということを表明したものか」との質問に対して、「政府としては、日

米安保体制の下、米国が有する核戦力と通常戦力の総和としての軍事力が、我が国に対する核兵器に

79 North Atlantic Treaty Organization, “Deterrence and Defense Posture Review,” May 20, 2012, http://www.

nato.int/cps/en/natolive/official_texts_87597.htm?mode=pressrelease.

80 Nuclear Posture Review Report, p. 32.

81 North Atlantic Treaty Organization, “Deterrence and Defense Posture Review.”

82 “Joint Vision for the Alliance of the United States of American and the Republic of Korea,” June 16, 2009,

http://www.whitehouse.gov/the_press_office/Joint-vision-for-the-alliance-of-the-United-States-of-America-a

nd-the-Republic-of-Korea/.

83 “U.S., South Korea Participate in Nuke Deterrence Exercise,” American Forces Press Service, December 5,

2012, http://www.defense.gov//news/newsarticle.aspx?id=118716.

84 “Alliance Transformation: Advancing United States-Japan Security and Defense Cooperation,” Joint

Statement of the Security Consultative Committee, May 1, 2007, http://www.mofa.go.jp/region/n-america/

us/security/scc/joint0705.html.

85 「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱について」2010年12月17日。

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よるものを含む攻撃を抑止するものと考えている」と答弁した86。2010年2月には、日米間で拡大抑

止に関する協議のための会合が開始され、現在に至っている。

米国と太平洋安全保障条約(ANZUS条約)を締結している豪州は、2009年の国防白書で、「核兵器

が存在する限り、豪州に対する核攻撃を抑止するために、米国の核戦力に依存できる。豪州の歴代政

権下における防衛政策は、米国との同盟の下で拡大核抑止によって可能となる豪州の防護の価値を認

めてきた。この防護は、安定と信頼への確信を与え、長年にわたって、より重大で高価な防衛の選択

肢を豪州が検討する必要性を取り除いてきた」87と評価している。

(5) 警戒態勢の低減・解除、核兵器発射を決定するための時間を長くするための措置

米露は、冷戦期より、警報即発射(LOW:敵が核攻撃の実施を決定また着手しているが、それが弾

道ミサイルの発射や爆撃機の発進などの形で実際に開始される前に、敵に対して行う核攻撃)、あるい

は攻撃下発射(LUA:敵による核攻撃開始の警報を受けて、その核兵器が着弾(first impact)する

前に、敵に対して行う核攻撃)という、高い警戒態勢を維持してきた。オバマ大統領は就任前、核兵

器発射前の警戒態勢を緩和し、発射に係る決定の時間を延ばすための相互的で検証可能な方法をロシ

アと検討すると述べていたが88、2010年NPRでは、将来的な可能性として「大統領が決定するまでの

時間の最大化」(maximizing presidential decision time)を検討するとしつつ、引き続き、戦略爆撃

機については常時の警戒態勢から外す(off full-time alert)一方で、すべてのICBMは警戒態勢(alert)、

また海洋任務に就いている大多数のSSBNは常時(at any given time)発射できる態勢に置くとした89。

ロシアは警戒態勢の現状を明らかにしていないが、配備ICBM及び基地内の潜水艦に搭載された

SLBMについてはLOWの態勢を維持しているとみられている90。ロシアの非戦略核兵器については、

ロシアが言うように中央貯蔵所に通常は保管されているとすれば、これらは警戒態勢下には置かれて

いないことになる。

英国は、SSBNの常時パトロールを継続しているが、搭載ミサイルは照準を外し、発射は数日前に

通告(several days “notice to fire”)91するという1998年の「戦略防衛見直し報告」で示された態勢

(Continuous at Sea Deterrence)を継続している。フランスは1992年及び1996年に核の2つの構成

要素について警戒レベルを低減した92。ただ、SSBNの常時パトロールを継続しており、警戒態勢の

具体的な態様については明らかにしていない。

中国は、2008年の国防白書によれば、平時には「いかなる国にも照準を当てておらず(not aimed at

86 「衆議院議員辻元清美君提出核兵器問題等に関する質問に対する答弁書」2009年3月19日、http://www.

shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b171202.htm。

87 Department of Defence, Australian Government, Defending Australia in the Asia Pacific Century: Force 2030, 2009, p. 50.

88 “Arms Control Today 2008 Presidential Q&A: President-elect Barack Obama,” Arms Control Today, Vol.

38, No. 10 (December 2008), http://www.armscontrol.org/2008election.

89 Nuclear Posture Review Report, pp. 25-26. ただし、LOWは想定されていないと見られる(Eliminating

Nuclear Threats: A Practical Agenda for Global Policymakers, Report of the International Commission on

Nuclear Non-Proliferation and Disarmament (ICNND Report), 2009, p. 27)。

90 ICNND Report, p. 27.

91 United Kingdom, Strategic Defence Review, Presented to Parliament by the Secretaty of State for Defence

by Command of Her Majesty, July 1998, para. 66 and 68.

92 France TNP, “Adapting operational features of French forces,” http://www.francetnp2010.fr/spip.php?

article91.

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any countries)」、「中国が核の脅威にさらされた場合、第二砲兵師団の核ミサイル戦力は警戒態勢に

入り、敵が中国に対して核兵器を使用するのを抑止するために核の反撃の準備を行う」93としている。

中国が公表しているわけではないが、通常は核弾頭が運搬手段と切り離して保管されており、即時発

射の態勢は採られていないと見られている。中国がどの程度の時間で核兵器の発射準備を完了できる

か、またその後はどのような警戒態勢が採られるかについては不明である。中国が新型SSBNを配備

した場合にSLBMと核弾頭が切り離されて搭載されるのか否か、あるいは先制攻撃に脆弱と考えられ

る固定式のDF-41が配備されても低い警戒態勢を維持し続けるのかといった点も、今後注視する必要

があろう。なお、5核兵器国は2000年に核兵器の照準解除に合意している。

インド、パキスタン、イスラエル及び北朝鮮の状況は明らかではないものの、平時おける警戒態勢

のレベルは低いと考えられる。このうちインド及びパキスタンについては、核弾頭と運搬手段とを切

り離して保管されているとみられる。また北朝鮮については、核弾頭を運搬手段に搭載できるよう小

型化に成功しているか否かは不明である。

(6) CTBTと核実験

a) CTBT を巡る動向

1996年に署名開放されたCTBTは、2012年12月時点で157カ国が批准しているものの、依然として

発効していない。条約の発効に必要な国として特定された44カ国(発効要件国)のうち、5カ国が未

批准(米、中、イスラエル、イラン、エジプト)、3カ国が未署名(印、パ、北朝鮮)だからである(本

調査対象国に関しては、この他にシリアが未署名)。核兵器(保有)国のうち、CTBTを批准したのは

フランス、ロシア及び英国のみであり、英仏は核実験場も閉鎖している。

米国については、1999年に上院で批准の承認が否決され、ブッシュ政権は批准を追求しない方針を

明確にした。しかしながら、オバマ大統領は2009年のプラハ演説で、CTBTの批准に向けて取り組む

と明言した。オバマ政権は、議会における批准承認を得るための努力を続けていると繰り返したが、

1期目に上院に批准承認を求めることはできなかった。

5核兵器国のもう一つの未批准国である中国は、2003年9月、CTBTの批准に向けて全国人民代表

大会(全人代)に議案を提出したことを明らかにした。しかしながら、その全人代では、条約批准に

向けた審議は依然として行われていないようであり、批准も実現していない。なお中国は、2012年

NPT準備委員会では、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会の準備作業に積極的に参加

していること、国内実施のための準備作業を着実に促進していることを述べている94。

NPT非締約国のうち、CTBT未批准のイスラエルは、2011年の国連総会第一委員会で、CTBTO準

備委員会での検証制度の構築に向けた作業に貢献していると述べたが、自国の批准の可能性などにつ

いては言及していない95。CDにおけるCTBTの採択(1996年8月)に反対したインドは、その後も条

約への署名の意思を示していない。インドは1998年の国連総会で、「CTBTの発効を妨げない」と発言

しているが、これは発効要件国の中で最後に批准するとの意思を示したとも解釈できる。パキスタン

93 Information Office of the State Council of the People’s Republic of China, “China’s National Defense in

2008.”

94 “Statement by H.E. Mr. Wu Haitao, Chinese Ambassador for Disarmament Affairs on the Issue of Nuclear

Disarmament,” at the First Session of the Preparatory Committee for the 2015 Review Conference of the

Nuclear Non-Proliferation Treaty, Vienna, May 3, 2012.

95 “Statement by Mr. Eyal Propper, Director, Arms Control Department, Ministry of Foreign Affairs, Israel,”

First Committee, 66th Session of the General Assembly, United Nations, New York, 4 October 2011.

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は、インドのCTBT署名を自国による署名の条件にしている。

CTBTの発効に向けては、2年毎に発効促進会議が開催されるとともに、批准国などによる発効促

進のための活動が行われてきた。2011年9月の第7回発効促進会議では、2009年9月から2011年8

月までの間に、発効要件国に対する二国間の取組(豪、仏、独、日、露、英など)、それ以外の国に対

する二国間の取組(豪、仏、独、英など)、グローバルレベルでの多国間の取組(豪、仏、独、日、露、

スイス、英など)、地域レベルでの多国間の取組(豪、仏、独、英など)がなされたとする文書が示さ

れた96。また2012年9月には、豪州、日本、スウェーデンなどの共催で第6回CTBTフレンズ外相会

合が開催され、約80カ国が参加し、「CTBTを署名及び批准していないすべての国、特に発効要件国に

対して、ただちに署名及び批准するよう要請」する共同声明を発表した97。

CTBTは未発効だが、発効時に検証措置が有効に機能するよう整備することが条約で求められてい

る。このうち、国際監視制度(IMS)ステーションの設置については、本調査対象国に関しては、豪

州、ブラジル、フランス、ドイツ、日本、韓国、ロシア、南アフリカ、英国、米国、スウェーデン、

スイスにおいて、指定された(ほぼ)すべてについて認証が終わっている。中国及びイランについて

は、上述の国々より進展が少し遅れている98。現地査察のための運用手引書の作成については、5核

兵器国、イラン、豪州、イスラエル、ブラジル、ドイツ、日本が議論に積極的に参加しているとされ

る。

最後に、調査対象国によるCTBTO準備委員会への分担金(2011年)の支払い状況については、下

記のとおりである99。

全額支払い(Fully paid):豪、ブラジル、中、仏、独、イスラエル、日、韓、露、南ア、スイス、

英、スウェーデン

一部支払い(Partially paid):米

投票権停止(Voting right suspended):イラン

b) 核実験の実施

5核兵器国は、いずれも核爆発実験のモラトリアムを宣言している。フランス、ロシア及び英国は

CTBTを批准し、中国及び米国も署名しているが、署名国はウィーン条約法条約第18条により、条約

の当事国とならない意図を明らかにする時までの間は「条約の趣旨及び目的を失わせることとなるよ

うな行為を行わないようにする義務」が適用されることになるため、条約は未発効だが署名国は核爆

発実験の実施を法的に禁止されていると解釈できる。

他方で米国は、核兵器の安全性及び信頼性の維持を目的として、爆発を伴わない実験―CTBTに違

反するものではない―を発展させ、実施してきた。米国の国家核安全保障局(NNSA)は、そうした

実験の実施状況を四半期ごとに公表している100。未臨界実験については、2011年第二四半期での実施

96 CTBT-Art.XIV/2011/4/Rev.1, 19 September 2011.

97 “Joint Ministerial Statement on the CTBT,” New York, September 27, 2012, http://www.ctbto.org/

fileadmin/user_upload/statements/CTBT_Joint_Ministerial_Statement_27_September_2012.pdf.

98 Preparatory Commission for the Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty Organizationのホームページ

「Station Profile」http://www.ctbto.org/verification-regime/station-profiles/ を参照。

99 “CTBTO Member States’ Payment As at 31-Dec-2011,” http://www.ctbto.org/fileadmin/user_upload/

treasury/31Dec2011_Member_States_payments_01.pdf.

100 NNSA, “Stockpile Stewardship Program Quarterly Experiments,” http://nnsa.energy.gov/ourmission/

managingthestockpile/sspquarterlyを参照。

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を最後に、2012年第三四半期まで実施されていなかったが、NNSAは2012年12月にこれを実施した

と発表した。またNNSAは、強力なX線を発生させる装置「Zマシン」を用いて超高温、超高圧の核爆

発に近い状態をつくり、核兵器の材料となるプルトニウムの反応を調べるという新しいタイプの実験

方法を開発し、これを用いた実験を実施している。

他の核兵器国の状況は明らかではないが、ロシアについては、2004年に旧核実験場のノバヤゼムリ

ャで一連の未臨界実験を実施したこと101、また2012年10月にはノバヤゼムリャで未臨界実験を再開す

る可能性があること102がそれぞれ報じられた。

5核兵器国以外ではインド及びパキスタンが、1998年5月の核爆発実験後、モラトリアムを宣言し、

現在に至るまでこれを維持している。核兵器の保有の有無を公表していないイスラエルは、核爆発実

験の実施の可能性についても言及していない。

2006年及び2009年に核爆発実験を実施した北朝鮮は、2012年4月の長距離弾道ミサイル発射実験

失敗後、3度目の核爆発実験に踏み切るのではないかとみられた。北朝鮮は、その後の外務省報道官

声明で、「核実験のような軍事的措置」は予定したことがないとした上で、核・ミサイル開発に対する

米国の制裁圧力が続けば「やむを得ず自衛的見地から対応措置を取らなければならなくなる」と述べ、

米国の対応次第では3度目の核実験を強行する可能性を示唆した103。

(7) FMCT

1995年NPT運用検討・延長会議で採択された「原則及び目標」では、CDにおける兵器用核分裂性

物質生産禁止条約(FMCT)の即時交渉開始及び早期締結が目標に掲げられた。しかしながら、CD

では現在に至るまで実質的な条約交渉が開始されていない。条約交渉を行う特別委員会の設置を盛り

込んだ作業計画の採択が、ほぼ毎年にわたって、CDのコンセンサスルールの下でブロックされてきた

からである。そこには様々な要因が絡んできたが、現状における最大の障害は、パキスタンが兵器用

核分裂性物質の生産禁止のみならず既存のストックをも条約交渉の対象に含めるよう強く主張し、こ

れが受け入れられない限りは作業計画の採択に反対するとの姿勢を維持していることである。2012年

の会期でも議長国のエジプトが調停案を示したが、3月にパキスタンが既存のストックの削減が含ま

れないFMCT交渉は受け入れられないとして反対したため、作業計画は採択できなかった。パキスタ

ンの姿勢は、米印原子力協力協定の締結、さらには原子力供給国グループ(NSG)におけるインドへ

の適用例外化(IAEA包括的保障措置の適用免除など)の決定以降、一層強硬なものとなっている104。

101 “Russia Has Conducted Subcritical Nuclear Tests This Year, Atomic Energy Official Says,” Global Security Newswire, August 12, 2004, http://www.nti.org/gsn/article/russia-has-conducted-subcritical-

nuclear-tests-this-year-atomic-energy-official-says/.

102 “Russia May Resume Subcritical Atomic Testing: Sources,” Global Security Newswire, October 1, 2012,

http://www.nti.org/gsn/article/russia-may-resume-subcritical-atomic-testing-sources/.

103 “Declaration of G8 Summit Pulling up DPRK over Satellite Launch Refuted,” KCNA, May 22, 2012,

http://www.kcna.co.jp/item/2012/201205/news22/20120522-22ee.html.

104 パキスタンは、兵器用核分裂性物質の量でインドに劣る中で、インドが米国などとの原子力協力の下で平和

目的のウラン燃料を海外から調達できるようになれば、インドは国産のウランを軍事目的に利用できるようにな

り、二国間の核兵器能力に関する格差の固定化につながることを懸念している。パキスタンのアクラム大使は、

2010年1月に、「もし将来の生産のみを禁止する条約を交渉しようとするのであれば、[印パ間の]不均衡や

imbalanceは永久に凍結される。それはclear and present dangerである」と述べている(“Pakistan Seen

Undermining Prospects for Fissile Material Pact,” Global Security Newswire, January 27, 2010,

http://gsn.nti.org/gsn/nw_20100127_4214.php)。パキスタンは、NSGにおいてインドに与えられたのと同様の

ウェーバーがパキスタンに与えられれば、懸念への対処となりうるとも述べている。

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なお、パキスタンは兵器用HEUの生産を継続しているのに加えて、4基目のプルトニウム生産用の原

子炉の建設などプルトニウム生産施設の拡大を継続しており、兵器用核分裂性物質の増加が懸念され

ている。

パキスタンを除く核兵器(保有)国のうち、米国、ロシア、英国、フランスはCDにおけるFMCT

の早期交渉開始を積極的に主張している。これら4カ国はいずれも、条約成立までの間の兵器用核分

裂性物質生産モラトリアムを宣言しており、その生産停止の状況は以下のとおりである。

米:兵器用HEUについては1964年以降、また兵器用プルトニウムについては1988年以降、生産

していない

露:2010年4月に最後の兵器級プルトニウム生産用の原子炉(ADE-2、クラスノヤルスク)を停

止。米露は2003年3月に、ロシアのプルトニウム生産原子炉を閉鎖することで合意していた105

英:1995年以来、公式のモラトリアムを維持

仏:プルトニウムの生産は1992年に中止。HEUは1996年以来、兵器用としては生産されていな

い。兵器用核分裂性物質の生産施設も解体のステップが採られている

中国、インド及びイスラエルも、新規生産の禁止を定めるFMCT交渉開始に賛成しているが、西側

核兵器国ほどの積極性を示しているわけではない。中国は、現状では兵器用核分裂性物質を生産して

いないと考えられているが、生産モラトリアムは宣言しておらず、2010年NPT運用検討会議でもモラ

トリアムに強く反対した。このため、中国はFMCT交渉に消極的でパキスタンの影に隠れているので

はないかとの見方もある106。パキスタンはもちろん、インド、イスラエルもモラトリアムを宣言して

おらず、その生産状況は必ずしも明らかではない。北朝鮮は、ウラン濃縮施設について、建設中の軽

水炉の燃料として使用する低濃縮ウラン(LEU)を生産するためのものだと主張しているが、実際の

目的、あるいはさらなるウラン濃縮施設の有無については疑念も残る。

条約交渉開始の見通しが立たない状況の中で、西側諸国などは、その打開策を模索している。日豪

が主催した2011年2月、3月及び5~6月のFMCTに関する専門家会合(5~6月の会合には約45カ

国が出席)では、検証措置の枠組み、あるいは技術的側面についての議論が行われた107。外務省のホ

ームページによれば、豪州、フランス、ドイツ、日本、韓国、スウェーデン、英国、米国などからは

会議に専門家が派遣された。また2011年の国連総会決議「核兵器または他の核爆発装置用核分裂性物

質生産禁止条約」(A/RES/66/44)を踏まえ、2012年5月と8月、NPDIのメンバー国であるドイツと

オランダが、FMCTにおける技術的作業を促進し交渉開始を支援するため、ジュネーブで科学専門家

会合を開催した(8月の会合には57カ国が出席)108。

(8) 核兵器(核弾頭、運搬手段、兵器用核分裂性物質、核戦略・政策)に関する透明性

核兵器に関する透明性の向上は、核軍縮の推進に極めて重要である。他方で、透明性の向上は潜在

的な敵国に有利な情報を提供することにも繋がりかねない。核兵器は、保有国が国家安全保障上、最

105 “Russia Shuts Last Weapons-Grade Plutonium Reactor,” Reuters, April 15, 2010, http://www.

reuters.com/article/idUSTRE63E1VW20100415.

106 Andrea Berger, “Finding the Right Home for FMCT Talks,” Arms Control Today, Vol. 42, No. 8 (October

2012), p. 9.

107 会議の報告は、軍縮会議にそれぞれ、CD/1906, 14 March 2011; CD/1909, 27 May 2011; CD/1917, 2

September 2011として提出された。

108 会議の報告は、軍縮会議にそれぞれ、CD/1935, 26 June 2011; CD/1943, 13 September 2012として提出され

た。

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も重要な兵器の一つと位置づけており、その透明性の程度も限定的なものになってきた。

米露は、新START第7条、同議定書第2部及び第4部にしたがい、核危機削減センター(NRRC)

を通じて戦略攻撃兵器に関する詳細なデータの通告を行っている。これにより、二国間では相互の戦

略攻撃兵器について高い透明性が確保される。他方、これらのデータは、配備・非配備戦略運搬手段

及び配備戦略(核)弾頭の総数を除き、一般には公表されていない。STARTの下では、米露が運搬手

段のタイプごとの配備数及び搭載弾頭数までを公表していたが109、新STARTの下では米国のみが配

備・非配備の運搬手段についてタイプ別の数を公表するに留まっており110、国際社会への透明性とい

う観点からは後退しているともいえよう。

米国は、一方的措置として、自国の核兵器に関する透明性の向上を図ってきた。国防総省は2010年

5月に、2009年9月30日時点の米国の核兵器ストックパイルが5,113個の核弾頭で構成されているこ

と、1994~2009年の間に8,748発の核弾頭を廃棄したこと、並びに1991年9月末から2009年9月末の

間に非戦略核兵器を90パーセント削減したことなどを初めて公表した111。なお、「ストックパイルに

ある核兵器の数」には、退役し解体待ちの核兵器の数は含まれないとの補足的説明がなされており、

これらを含め、米国が現在保有する核兵器の総数は明らかにはされていない。またエネルギー省は、

1944〜2009年のプルトニウム生産及び使用について、2012年6月に報告書を公表している112。HEU

については、2001年1月に、1945〜1996年の生産、取得、使用活動に関する報告書が113、さらに2006

年には1996~2004年のHEUのインベントリーに関する報告書がそれぞれ公表されている114。

核政策に関しては、オバマ政権が2010年にNPRの全文を公表した(クリントン及びブッシュ両政権

の下で策定されたNPRは非公開とされ、政府高官などによる概要の説明、国防白書への概要の記述が

なされたのみ)。NPRには、当然ながら運用政策の詳細などが含まれているわけではないが、その核

戦略・抑止政策、核戦力や核兵器インフラなどに関する将来の方向性などが示されている。

ロシアは、保有する核戦力及び兵器用核分裂性物質などに関する情報を公表していない。核戦略・

政策についても、2010年2月の軍事ドクトリンで概要が言及されたものの、米国の詳細さには遠く及

ばない。

英国及びフランスは、上述のように、それぞれの核兵器削減の目標として上限となる保有数を公表

している。核戦略については、英国についてはSDSRで、またフランスについては防衛白書で、その

109 STARTで最後に公表されたデータは、U.S. Department of State, “START Aggregate Numbers of Strategic

Offensive Arms (As of July 1, 2009),” Fact Sheet, http://www.fas.org/programs/ssp/nukes/

armscontrol/aggregate2009.pdf.

110 米国が公表したデータ(2012年9月時点)については、U.S. Department of State, “New START Treaty

Aggregate Numbers of Strategic Offensive Arms,” Fact Sheet, November 2012, http://www.state.gov/t/avc/

rls/201216.htm.

111 DOD Background Briefing with Senior Defense Official from the Pentagon, Washington D.C., May 3,

2010; Department of Defense, “Increasing Transparency in the U.S. Nuclear Weapons Stockpile,” Fact Sheet,

May 3, 2010, http://www.defense.gov/news/d20100503stockpile.pdf.

112 National Nuclear Security Administration, “The United States Plutonium Balance, 1944-2009,” June

2012. これは、1996年2月に公表された報告書 “Plutonium: The First 50 Years”をアップデートしたものであ

る。

113 U.S. Department of Energy, National Nuclear Security Administration, and Office of the Deputy

Administrator for Defense program, “Highly Enriched Uranium: Striking a Balance—A Historical Report on

the United States Highly Enriched Uranium Production, Acquisition, and Utilization Activities from 1945

through September 30, 1996,” January 2001.

114 U.S. Department of Energy, "Highly Enriched Uranium Inventory: Amounts of Highly Enriched

Uranium in the United States," January 2006

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概略が触れられている。英国は2006年12月、核抑止の将来に関する白書を発表した115。核分裂性物質

に関しては、英国が、軍事用プルトニウムの保有量について1998年及び(フォローアップとして)2000

年に、またHEUの総量について2006年に、それぞれ公表している116。フランスは、民生用HEUのみ

を公表している117。

5核兵器国の中で、核兵器を巡る透明性が最も低いと批判されているのが中国である。他の核兵器

国とは異なり、保有する核兵器の数、あるいは核弾頭を搭載する運搬手段の種類や数など、核兵器の

能力について具体的な姿を一切明らかにしていないためである。2004年4月には、「核兵器国の中で

最も小規模な核戦力(smallest nuclear arsenal)を保有している」118とのファクトシートが出された

ものの、その後もこれ以上の情報は示されていない。中国は、2010年NPT運用検討会議でも透明性に

反対の意思を表明した。中国は、能力よりも意図に関する透明性が重要であるとし、核兵器の先行不

使用、あるいは非核兵器国に対する消極的安全保証といった宣言を重視している。また上述のように、

2008年国防白書では、核の脅威に直面した場合の第二砲兵師団の対応が記述されている。

インド、パキスタン、北朝鮮は、いずれもその核兵器能力(核弾頭数、運搬手段の数・種類、兵器

用核分裂性物質の保有量など)に関して公表していない。インドは2003年に核ドクトリンを公表した

が、他の2カ国は時折政府あるいは関係者などが談話などの形で断片的に核政策の一端を述べるに留

まっている。イスラエルは、繰り返しになるが核兵器の保有の有無について明言しないという政策を

維持している。

2010年のNPT運用検討会議で採択された最終文書において、核兵器国は核軍縮に向けた具体的な措

置の進展に関して2014年準備委員会で報告するよう求められるとともに(行動5)、信頼醸成措置とし

て、可及的速やかに標準化された報告フォームに合意するよう奨励することが明記された(行動21)。

これを受ける形で、NPDIは2012年準備委員会に、作業文書「核兵器の透明性」119を提出した。この

作業文書には、大別すれば、核弾頭、運搬手段、兵器用核分裂性物質、核戦略・政策について報告を

行うためのテンプレート案が添付されていた。

2010年NPT運用検討会議に先立ち、5核兵器国は英国の提案で、2009年9月に核軍縮及び不拡散

問題に向けた信頼醸成措置に関する会議を開催した。その声明では、核に関する用語の定義、並びに

核ドクトリン及び核能力についての情報を共有することで相互理解を高めるための方法を検討したこ

となどを明らかにした120。

5核兵器国は、2011年6月(パリ)及び2012年6月(ワシントン)の国連安保理常任理事国(P5)

会議でも、透明性及び相互信頼の問題を含む核軍縮・不拡散問題を議論した。2012年6月のP5会議

115 “The Future of the United Kindom’s Nuclear Deterrent, Cm 6994,” Presented to Parliament by the

Secretary of State for Defence and the Secretary of State for Foreing and Commonwealth Affairs by

Command of Her Majesty, December 2006.

116 UK Ministry of Defence, “Plutonium and Aldermaston: A Historical Account,” 2000, http://

fissilematerials.org/library/mod00.pdf; UK Ministry of Defence, “Historical Accounting for UK Defence:

Highly Enriched Uranium,” March 2006.

117 International Panel on Fissile Materials (IPFM), “Global Fissile Material Report 2011: Nuclear Weapons

and Fisile Material Stockpile and Production,” International Panel on Fissile Materials, January 2012, p. 8.

118 Ministry of Foreign Affairs of the People’s Republic of China, “Fact Sheet: China: Nuclear Disarmament

and Reduction of [Nuclear Weapons]”, 27 April 2004, http://www.fmprc.gov.cn/eng/wjb/zzjg/jks/cjjk/2622/

t93539.htm.

119 NPT/CONF.2015/PC.I/WP.12, 20 April 2012.

120 “P5 Statement on Disarmament And Non-Proliferation Issues,” 4 September 2009, http://ukinaustria.fco.

gov.uk/en/news/?view=News&id=20804873.

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では、NPDIが提案した標準の報告フォームについて検討を行った。また5核兵器国は、重要な核関

連の用語について定義集(glossary of definitions)を作成する作業グループ(中国が座長を務める。)

の作業計画に関して合意した121。

(9) 核兵器削減における検証措置の実施

核兵器削減の検証措置は、現状では、米露核軍縮条約の下での実施に限定されている。新START

の下では、自国の検証技術手段(NTM)、包括的なデータベース、短い通告による現地査察及び展示

が検証措置として定められている。現地査察には2つのタイプがあり、ICBM基地、潜水艦基地、空

軍基地で実施されるタイプ1査察では、配備・非配備戦略攻撃兵器の数とタイプ、配備ICBM及び配

備SLBMに搭載された弾頭の数、配備戦略爆撃機に搭載された核兵器の数に関して、申告されたデー

タの正確さが確認される。タイプ2査察では、非配備戦略攻撃兵器の数、タイプ、技術的特徴に関す

る申告されたデータの正確性の確認、戦略攻撃兵器の転換・廃棄の確認、並びに宣言された施設が違

法に使用されていないかの確認がなされる。米露はそれぞれ、1年間にタイプ1査察を10回まで、タ

イプ2査察を8回まで実施できる。現地査察は2011年4月に開始され、翌年2月までにそれぞれ18

回の査察(1年間で最大限に認められている査察数)が行われるなど、新STARTの検証措置は順調に

履行されている122。とはいえ、新STARTでカバーされている検証の範囲は、核軍縮全般のプロセスを

考えると限定的ではある。

核兵器の廃棄に関する研究については、1996〜2002年まで、米国、ロシア及びIAEAが、核兵器か

ら取り出された核分裂性物質のIAEAによる検証に関して、技術的・法的枠組みの研究を行った。ま

たIAEAは、米露の余剰プルトニウムに対する検証を行うことで米露とともに検討を進めてきたが、

機微なサイトへのIAEAへのアクセスをいかに管理するかという問題が残っている。英国とノルウェ

ーは、2007年以来、核兵器の廃棄に関する検証措置の研究を、検証研究・訓練・情報センター(VERTIC、

英国)と核研究センター(ノルウェー)を参加させつつ進めてきた123。両国は2010年NPT運用検討会

議に作業文書を提出し、将来の核軍縮検証レジームに関する技術的及び手続き的な挑戦を調査するた

めになされた3年間の検討結果を報告した124。また英国は2012年NPT準備委員会で、2010年に「管

理されたアクセス」(managed access)の演習を主催したこと、2011年12月にノルウェーと技術面に

焦点を当てたワークショップを開催したこと、2012年4月に英国・ノルウェー・イニシアティブの結

果及び教訓をP5と共有する会合を開催したことなどを報告した125。

米国及び英国は、軍事目的に必要ないと判断した核分裂性物質(英国はプルトニウムのみ)をIAEA

に申告している。英国は軍事目的に必要ないと宣言したプルトニウムを欧州原子力共同体

(EURATOM)の保障措置下に、米国はそうした核分裂性物質(一部)をIAEA保障措置下に置いて

121 “A Joint Statement Issued by China, France, Great Britain, Russia, and the United States of America at

the Conclusion of the Third P5 Conference: Implementing the NPT June 27-29, 2012 in Washington, DC,”

http://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2012/06/194292.htm.

122 U.S. Department of State, “New START Treaty Implementation Update,” Fact Sheet, May 17, 2012,

http://www.state.gov/t/avc/rls/183335.htm.

123 その研究成果については、David Cliff, Hassan Elbahtimy and Andreas Persbo, “Verifying Warhead

Dismantlement: Past, Present, Future,” VERTIC Research Reports, No. 9 (September 2010).

124 NPT/CONF.2010/WP.41, 26 April 2010.

125 “Statement by Ambassador Jo Adamson to the First Preparatory Committee for the Ninth Review

Conference of the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons: Vienna, 30 April-11 May 2012,” 3

May 2012.

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いる。他の核兵器(保有)国については、そのような申告あるいは保障措置の適用は行っていない。

(10) 不可逆性

米露(ソ)による新STARTでは、過去に締結された主要な二国間核軍備管理条約と同様に、条約で

規定された上限を超える戦略(核)運搬手段については検証を伴う解体・廃棄が定められている。核

弾頭の解体・廃棄については条約上の義務ではないが、両国は一方的措置として退役した核弾頭の解

体・廃棄を部分的に実施してきた。

その正確な規模や全体像について両国は公表していないが、それでも米国からは多くの情報が提供

されてきた。NNSAが2010年に公表したファクトシートによれば、米国は1994~2009年までに8,748

発の核弾頭を廃棄している。またNNSA戦略プラン(2011年5月)には、2012年までにB53核弾頭の

廃棄を完了すること、2009年以前に退役したすべての弾頭を2022年までに廃棄する計画であることが

記されている126。またNNSAは2012年12月、2012会計年度の核ストックパイルの廃棄について、目

標の112%を達成したと発表した127。

軍事(核兵器)目的に必要ないと判断された核分裂性物質の廃棄もしくは平和目的への転換に関し

ては、米国は、209トンのHEUを防衛目的からの余剰であるとし、LEUに希釈し、民生用原子炉など

で使用すること、このうち119トンのHEUを既にLEUに希釈したことを公表した128。米国は2012年9

月のIAEA総会では、「130トン以上の余剰HEUをLEUに希釈してきた」ことを明らかにした129。余剰

プルトニウムについては、2011年7月に発効した米露間のプルトニウム管理・処分協定(PMDA)に

基づき、34トンをウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料に転換して処分することとなって

いる。NNSAは、サウスカロライナ州のサバンナリバー・サイトに3つの施設(余剰核兵器のコアの

解体、MOX燃料製造、廃棄物固化ビル)を建設する予定だとしている130。

ロシアについては、核弾頭や兵器用核分裂性物質生産施設などの解体・廃棄に関する公式の情報は

公表はなされていない。民間の研究者は、2011年の時点で、ロシアの3,000の戦略核弾頭、1,600~3,000

発の非戦略核弾頭が解体待ちだと見積もっている131。民間団体の核分裂性物質国際パネル(IPFM)

によれば、ロシアは年間200~300発の核弾頭を解体している。またロシアは、加えてさらに200発の

核弾頭を解体しているが、これは再製造された弾頭と交換している132。

米国のルーガー前上院議員は2012年9月に、協調的脅威削減計画(CTR)の成果として、ロシアに

おける核関連の廃棄について、以下にように公表した133。

126 NNSA, The National Nuclear Security Administration Strategic Plan, May 2011, p 8.

127 NNSA, “NNSA Exceeds 2012 Goal for Nuclear Weapons Dismantlements,” December 3, 2012, http://nnsa.

energy.gov/mediaroom/pressreleases/dismantlements120312.

128 NNSA, “Surplus U.S. Highly Enriched Uranium (HEU) Disposition,” http://www.nnsa.energy.gov/

aboutus/ourprograms/nonproliferation/programoffices/fissilematerialsdisposition/surplusheudisposition.

129 “U.S. Statement Delivered by Secretary of Energy Steven Chu,” 2012 IAEA General Conference, Vienna,

September 17, 2012.

130 NNSA, “Plutonium Disposition,” http://www.nnsa.energy.gov/aboutus/ourprograms/nonproliferation/

programoffices/fissilematerialsdisposition/plutoniumdisposition.

131 Hans M. Kristensen and Robert S. Norris, “Russian Nuclear Forces, 2011,” Bulletin of the Atomic Scientists, Vol. 68, No. 3 (2011), p. 68.

132 International Panel on Fissile Materials, “Global Fissile Material Report 2011: Nuclear Weapons and

Fisile Material Stockpile and Production,” International Panel on Fissile Materials, January 2012, p. 5.

133 “Lugar Announces Latest Elimination of Weapons of Mass Destructions through Nunn-Lugar,” Press

Release, September 11, 2012, http://lugar.senate.gov/news/record.cfm?id=337587&&.

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7,659発の戦略核弾頭を不活性化

902基のICBMを破壊、498のICBMサイロを廃棄、191基のICBM移動式発射機を破壊

155機の爆撃機を廃棄、906基の空対地ミサイルを破壊

492基のSLBM発射機を廃棄、684基のSLBMを廃棄、33隻の弾道ミサイル発射可能な原潜を破壊

194の核実験トンネルを廃棄

584の核兵器輸送列車の保安

24の核兵器貯蔵施設のセキュリティを更新

HEUに関しては、「メガトンからメガワットへ(Megatons to Megawatts)」プログラムの下で、

1993~2012年までに、ロシアの核兵器から取り出された450トンのHEUがLEUに転換され、米国に

売却された。2013年までに、総計500トンのロシアのHEUがLEUに転換される134。上述のように、

ロシアは兵器用核分裂性物質の生産を停止し、その生産施設もほぼ閉鎖されたジェレズノゴスク

(Zheleznogorsk)再処理プラントは、ADE-2プルトニウム生産炉(2010年に閉鎖)からの最後の使

用済燃料の再処理を2012年に完了する予定135であるものの、その解体・廃棄に関する計画は示されて

いない。

米露二国間での余剰の兵器用核分裂性物質の処理については、両国が2000年に締結した上述の

PMDA、並びに2010年4月の同協定議定書が2011年7月に発効した。両国の核兵器の削減によって生

じた余剰プルトニウム各34トンをMOX燃料化して民生用原子炉で使用し処分するというものである

が、財政的・法的問題により進展していなかった。余剰プルトニウムはIAEAによる監視及び査察の

対象となるが、そのための手法が米・露・IAEAの間で検討されている。プルトニウムの廃棄開始は

2018年が予定されている136。

英国は、退役した核弾頭(WE177及びSLBM用弾頭を含む)の解体を行ってきた137。解体核弾頭か

ら抽出された余剰の核分裂性物質は、EURATOMの保障措置下に置かれてきた。余剰HEUについて

は原子力潜水艦の燃料として使用されているとされるが、その量や割合などは公表されていない。な

お英国は、兵器用プルトニウムのすべての生産施設を既に閉鎖している。また1962年以来、英国は自

らの核実験場を有していない(実験は米国の実験場にて実施されていた。)

フランスは、核弾頭の廃棄の状況、並びに軍事目的に必要ないと判断された核分裂性物質の量や取

り扱いについて公表していない。兵器用核分裂性物質生産施設であるマルクールの再処理施設及びピ

エールラットの濃縮施設については、2008年までに閉鎖・解体されたことが公表されている138。また

フランスは、南太平洋の核実験場を1996年1月の地下核実験を最後に閉鎖した。

中国、インド、パキスタン、イスラエルについては、核弾頭や核兵器関連施設の解体などに関する

134 USEC, “Megatons to Megawatts, Program Status,” http://www.usec.com/russian-contracts/megatons-

megawatts.

135 IPFM, “Global Fissile Material Report 2011,” p. 18.

136 Office of the Spokesman, U.S. Department of State, “2000 Plutonium Management and Disposition

Agreement,” April 13, 2010, http://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2010/04/140097.htm; “U.S., Russia Sign Deal to

Cut Plutonium Stocks,” Reuters, April 14, 2010 http://in.reuters.com/article/worldNews/idINIndia-

47667620100413.

137 See “Disarmament Measures Taken by NPT Nuclear Weapon State,” Nuclear Threat Initiative, Updated

in August 2011, http://www.nti.org/media/pdfs/disarmament_measures_taken_by_npt_nuclear_weapon_

states.pdf?=1340643721&_=1340643721.

138 “General Statement by the Head of the French Delegation,” at the 2012 Preparatory Committee for the

Nuclear Non-Proliferation Treaty, Vienna, 30 April 2012.

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情報を公表しておらず、不可逆性のための措置を実施しているかは不明である。

北朝鮮は、六者会合で採択された「共同声明の実施のための第二段階の措置」(2007年10月)に従

って、寧辺にあるプルトニウム生産関連施設の閉鎖及び無能力化作業を行った。無能力化作業は2008

年8月中旬に中断された後、再開されていないが、その時点で11のうち8の工程は完了していたとさ

れ139、現状では少なくともそれらを用いたプルトニウムの生産は行われていないとみられている。

(11) 軍縮・不拡散教育の実施、市民社会との連携

軍縮・不拡散教育及び市民社会との連携についての取組や実績に関して、ほとんどの国は情報を提

供していない。国連加盟国はその実施状況を報告することが求められてきたが、2004~2010年までに

報告が提出されたのは28回(21カ国)にすぎない140。2012年7月に公表された国連事務総長報告141で

も、報告を提出したのは9カ国(うち、本調査対象国の中では日本のみ)に留まっていると指摘され

た。

2012年のNPT準備委員会では、NPDIが提出した作業文書で、軍縮・不拡散教育の積極的な促進に

対するコミットメント、被爆者の経験を若い世代に伝えることの重要性、並びにグッド・プラクティ

スとしてカナダ、日本、オランダ、ポーランドによる軍縮・不拡散教育の具体例が示されている142。

また日本・オーストリアの作業文書では、軍縮・不拡散教育に関する両国の取組が紹介されている143。

この作業文書では、日本が、2012年8月に長崎で国際機関や市民社会などと軍縮・不拡散教育グロー

バルフォーラムを開催することなどが紹介された。

2012年の国連総会では、軍縮・不拡散教育に関する決議(共同提案国は豪州、ブラジル、ドイツ、

インド、日本、パキスタン、英国など)が投票無しで採択された。

近年のNPT運用検討会議及びその準備委員会、並びに国連総会第一委員会では、NGOなどが参加

可能なサイドイベントが開催されている。2010年NPT運用検討会議では豪州、フランス、日本、ロシ

ア、南アフリカ、スイス、英国、米国などが、2012年NPT準備委員会では日本、ロシア、スイス、英

国、米国などが、また2012年の第一委員会ではスイス、日本などが、そうしたサイドイベントを開催

した144。

139 Peter Crail, “North Korea Moves to Restart Key Nuclear Plant,” Arms Control Today, Vol. 38, No. 8

(October 2008), http://armscontrol.org/act/2008_10/DPRKrestart.

140 Gaulhar Mukhatzhanova, “Iplication of the Conclusions and Recommendations for Follow-On Actions

Adopted at the 2010 NPT Review Conference Disarmament Actions 1-22: Monitoring Report,” Monterey

Institute of International Affairs, April 2012, p. 64.

141 A/67/138, 12 July 2012.

142 NPT/CONF.2015/PC.I/WP.14, 20 April 2012.

143 NPT/CONF.2015/PC.I/WP.11, 19 April 2012.

144 リーチング・クリティカル・ウィルのレポート(NPT News in Review (2010); NPT News in Review (2012);

First Committee Monitor (2012))を参照した。

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2.核不拡散

(1) 核不拡散義務の受諾と遵守

a) NPT への加入

国連に加盟する194カ国のうち、核不拡散体制の礎石とも称される核不拡散条約(NPT)の締約国

は190を数える(北朝鮮を含む)。2011年7月に独立して国連に加盟した南スーダン(核兵器は保有し

ていない)を除けば、その未加入国は、1998年に核実験を実施し、核兵器の保有を公表したインド及

びパキスタン、並びに核兵器を保有していると広く考えられているイスラエルのみである。

2010年NPT運用検討会議の最終文書では、条約の普遍的な加入を促進するために努力するよう締約

国に求めた(行動23)。しかしながら、これら3カ国が近い将来、非核兵器国としてNPTに加入する

とは考え難い。インドは、NPT成立当初より、差別的な条約だとして加入する意思がないことを繰り

返し明らかにしてきた。パキスタンは、インドがNPTに署名すれば自国も署名するとの方針を示して

いたが、2010年2月に外務省報道官が、「そのポジションは古いものとなった」とし、「我々は条約に

署名できない。…印パ間に通常戦力の不均衡があれば、我々の核抑止への依存は明らかに高まる」と

述べた上で、パキスタンが核兵器国と認知される場合にのみNPTに参加すると明言した145。イスラエ

ルは、1990年代前半に行われた中東和平プロセスの軍備管理・地域安全保障作業部会(ACRS)にお

いて、イラン及びイラクを含むすべての中東諸国と和平協定に署名した2年後に、中東非核兵器地帯

の議論を開始し、NPT加入を検討すると提案した146。しかしながら、中東和平プロセスは進展せず、

後述するイラン核問題などもあり、イスラエルによるNPT加入の可能性は少なくとも現状では高くは

ない。

1985年にNPTに加入した北朝鮮は、1993年3月及び2003年1月の二度にわたって条約からの脱退

を表明した。北朝鮮自身はもはやNPTの締約国ではないという立場を主張しているが、NPT締約国は

北朝鮮の条約上の地位に関する解釈を明確にしていない。北朝鮮は、2005年9月の第4回六者会合で

採択された共同声明において、NPT及び国際原子力機関(IAEA)保障措置協定に早期に復帰するこ

とに合意している。しかしながら北朝鮮は、当面は核兵器を放棄する意思がないことも明言しており

(本報告書1.(2) a)参照)、さらに2012年4月には、憲法の前文に、自らを「核兵器保有国

(nuclear-armed state)」であるとも明示している147。

NPTからの脱退は条約第10条に規定された締約国の権利だが、西側諸国などは脱退が核兵器取得の

抜け道とならないような施策の発展を模索している。2009年9月に採択された国連安保理決議1887

では、「NPTの当事国が脱退の通知に対して集団的に対応する方式の確定についてのNPTの運用検討

過程で行われている議論に留意しながら、NPT第10条に従い国家によって行われた通知に記載された

事態を含み、NPTからの国家の脱退通知に遅滞なく対応することを約束し、また、国際法の下で、NPT

の脱退以前に行われた同条約違反に国家は責任を有し続けることを確認する」こと、「国家に対し、核

輸出の条件として、受益国が、IAEAの保障措置協定を終了し、脱退し、あるいは不遵守がIAEAの理

事会によって発見された場合には、供給国はその終了、不遵守または脱退以前に提供された核物質及

145 “Pakistan Rules Out Joining Nonproliferation Treaty,” Global Security Newswire, February 23, 2010,

http://www.nti.org/gsn/article/pakistan-rules-out-joining-nonproliferation-treaty/.

146 Emily Laudau, “Egypt and Israel in ACRS: Bilateral Concerns in a Regional Arms Control Process,”

Memorandum, Jaffee Center for Strategic Studies, No. 59 (June 2001), p. 20.

147 “We ARE a nuclear power: North Korea's chilling claim in new constitution,” Mail Online, 31 May 2012,

http://www.dailymail.co.uk/news/article-2152718/New-constitution-declares-North-Korea-nuclear-armed-na

tion-indomitable-military-power.html より引用。

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び施設、またそのような物質あるいは施設の使用を通じて生産されたいかなる特別な核物質の返還を

要請する権利を有することに受益国が同意することを、輸出の条件として、求めることを奨励する」

こととされたが148、この決議に法的拘束力はない。 2010年NPT運用検討会議及び2012年NPT準備委

員会でも脱退への対応が議論されたが、NPT締約国の意見が収斂していないことは、多くの国が、脱

退通告の事態に際して、NPT締約国である間に提供された核物質や原子力関連資機材技術を引き続き

保障措置下に置くこと、あるいはそれらを使用できないようにすることを含め、NPT第10条に関する

一層の議論を求めたのに対して、いくつかの国は、脱退の主権国の利益を再解釈あるいは制限する努

力を支持しなかったとまとめた2012年NPT準備委員会の議長サマリー149からも明らかであろう。

b) NPT 第1条及び第2条、並びに不拡散に関する安保理決議の遵守

NPT第1条は、核兵器国に対して、非核兵器国への核兵器やその管理の移譲の禁止、並びに製造、

取得及び管理の取得についての援助、奨励または勧誘の禁止を定めている。また第2条では、核兵器

またはその管理の受領の禁止、製造・取得の禁止、並びに製造にかかる援助の要求・受領の禁止を締

約国である非核兵器国に義務付けている。なおNPT第3条1項では、非核兵器国にIAEA包括的保障

措置の受諾を、また2項では締約国に原子力関連資機材に関する輸出管理の実施を規定している(第

3条の実施状況などについては後述)。

現在に至るまで、NPT第1条または第2条への違反が国連を含む国際社会において公式に認定され

た締約国はない。無論これは、ほぼすべての締約国が義務を遵守していることによるものだが、NPT

違反の有無に関する判断についての規定が条約には定められていないということも少なからず影響し

ていよう。

NPT脱退を宣言した北朝鮮に関しては、脱退が法的に無効であるとすれば、あるいは脱退の宣言以

前に核兵器を保有していたとすれば、その核兵器の取得は第2条に違反する行為となる。北朝鮮に対

しては、国連安保理決議1718(2006年10月)で、憲章第7章の下での決定として、「北朝鮮が、すべ

ての核兵器及び既存の核計画を、完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で放棄すること、核兵

器の不拡散に関する条約の下で締約国に課される義務及びIAEA保障措置協定(IAEA INFCIR/403)

に定める条件に厳格に従って行動すること、並びに、これらの要求に加え、透明性についての措置

(IAEAが要求し、かつ、必要と認める個人、書類、設備及び施設へのアクセスを含む。)をIAEAに

提供すること」150を明記した。しかしながら北朝鮮は、そうした義務の履行には応じていない。

イランは、現状では核兵器を取得していないと考えられており、そうであればNPT第2条には違反

していないといえる。米国務省の報告でも、北朝鮮については、「2003年のNPT脱退宣言前に、NPT

第2条及び第3条並びにIAEA保障措置協定の義務に違反した」151としているのに対して、イランに

ついては、「NPT、IAEA保障措置協定及び関連する国連安保理決議に違反している」152としているも

のの、第2条違反には言及していない。

148 S/RES/1887, 24 September 2009.

149 NPT/CONF.2015/PC.I/WP.53, 10 May 2012.

150 S/RES/1718, 14 October 2006. 2009年4月の北朝鮮による核実験に対して採択された安保理決議1874(2009

年6月)でも、「北朝鮮に対し、関連する安全保障理事会決議(特に決議第1718号(2006年10月))の義務を

直ちにかつ完全に遵守すること」などが要求された。

151 U.S. Department of State, “Adherence to and Compliance with Arms Control, Nonproliferation and

Disarmament Agreements and Commitments,” August 2011, p. 22.

152 Ibid., p. 20.

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イランは、たとえばサレヒ外相が2012年2月にジュネーブ軍縮会議(CD)で、「イランは核兵器に

は何の栄光も誇りも、力も感じてない」、「核兵器の製造、保有、使用などは大きな罪だ」とし、「正当

性を欠き、無益で有害だ」153とも述べているように、核兵器取得の意思がないことを繰り返し強調し

てきた。しかしながら、イラン核問題に関する累次のIAEA報告では、イランが核兵器開発を疑わせ

る活動を行っていたとみられること、その疑惑を解明するためのイランの協力が不十分であることな

どが指摘されている。イランに対しては、国連安保理決議1737(2006年12月)で、憲章第7章下の

決定として、「研究開発を含むあらゆる濃縮関連・再処理活動」、「重水を減速材とした研究用反応炉の

建設を含むあらゆる重水関係プロジェクトにおける活動」の中止が明記された154。しかしながら、イ

ランはこれに応じる様子はなく、IAEA報告によれば、イランは逆に濃縮ウランの生産、遠心分離機

のさらなる設置、重水炉の建設などを継続している155。

最後に、インド及びパキスタンに対しては、両国の1998年5月の核実験を受けて、両国に対してさ

らなる核実験を実施しないこと、核兵器開発計画を中止し、核兵器を配備しないこと、兵器用核分裂

性物質の生産を中止すること、NPT及び包括的核実験禁止条約(CTBT)に遅滞なく加入することな

どを求める安保理決議1172(1998年6月)が採択された。しかしながら、印パは核実験モラトリアム

など一部を除き、この決議の要求に従っていない。

c) 非核兵器地帯の設置

非核兵器地帯条約は、これまでにラテンアメリカ(トラテロルコ条約)、南太平洋(ラロトンガ条約)、

東南アジア(バンコク条約)、アフリカ(ペリンダバ条約)、中央アジア(中央アジア非核兵器地帯条

約)で成立し、いずれも発効している。またモンゴルは、1992年に国連総会で自国の領域を一国非核

兵器地帯とする旨宣言し、1998年の国連総会ではモンゴルの「非核の地位」に関する宣言を歓迎する

決議156が採択された。ラテンアメリカ、東南アジア及び中央アジアの非核兵器地帯条約に関しては、

域内のすべての非核兵器国が締約国となっている。

それぞれの条約には、成立した地域の特異性や域内諸国の関心を反映した条項が含まれてきたが、

共通するのは、域内における「核兵器の完全な不存在」を規定していることである。域内の国家が核

兵器を取得しないというだけではなく、その領域内に第三国が核兵器を配備すること(NPTでは禁止

されていない)も禁止されている157。現在に至るまで、いずれの条約に関しても、締約国がこれに反

して核兵器の取得を模索しているという兆候はない。

上記以外の地域でも、非核兵器地帯の新たな設置が地域諸国から(中東、また1998年までの南アジ

ア)、あるいは民間レベル(北東アジア)で提案されている。このうち中東については、中東非核兵器

153 “Statement by H.E. Dr. Ali Akbar Salehi, the Minister for Foreign Affairs of the Islamic Republic of Iran,”

before the Conference on Disarmament, Geneva, 28 February 2012.

154 A/RES/1737, 23 December 2006. イラン核問題に関してその後採択された安保理決議1803(2008年3月)

及び1929(2010年6月)でも、同様のことが要求された。

155 たとえば、GOV/2012/37, 30 August 2012を参照。

156 53/77D, 4 December 1998.

157 中央アジア非核兵器地帯条約については、「同条約の発効以前に締結している国際条約の下での締約国の権

利・義務に影響を与えるものではない」との規定がある。域内諸国とロシアとの集団安全保障条約(1992年のタ

シケント集団安全保障条約)が非核兵器地帯条約の規定よりも優先される可能性があること、これによりロシア

が地帯内に核兵器を配備することが容認される可能性があることから、「核兵器の不存在」が確保されない状況

が生起しうるとの懸念もある。

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地帯の設置を求める国連総会決議が1980年以降、コンセンサスで採択されてきた158。またイスラエル

のNPT未加入を問題視するアラブ諸国は、NPT運用検討会議などの場でも非核兵器地帯の設置を繰り

返し求めてきた。そうした主張は、1995年NPT運用検討・延長会議で採択された中東決議、2000年

運用検討会議の最終文書にも反映されてきたが、2010年NPT運用検討会議の最終文書では、中東非大

量破壊兵器(WMD)地帯の設置に向けて、すべての地域諸国が参加する国際会議(中東会議)を2012

年に開催することが明記された。

しかしながら、2010年運用検討会議の終了直後から、中東会議の開催は極めて難しいタスクである

ことが、改めて認識された。イスラエルが、イスラエルを名指しする一方でイランに言及していない

最終文書を「欠陥があり偽善的だ」として強く批判するとともに、「NPTの非締約国として、イスラ

エルは(運用検討)会議の決定による義務を負うことはない」159とし、中東会議への不参加を示唆し

たためである。米国のトウシャー国務次官は運用検討会議の終了に際して、「最終文書でのイスラエル

の名指しによって、米国がイスラエルの会議出席の条件を整えることができるかどうかははなはだ疑

問だ」160と述べ、ジョーンズ大統領補佐官も、「2012年の会議の共催国として、米国はすべての国が

出席できる場合にだけ、会議が確実に開かれるようにする。…イスラエルが不当に名指しされたため、

2012年の会議に中東地域の重要国がすべて出席するかどうかは疑問である」と発言した161。

ファシリテーターの任命も難航した。最終的にフィンランドのラーヤバ外務次官が任命され、同国

が会議のホスト国になることが決まったのは、運用検討会議から1年以上が経過した2011年10月であ

った。ラーヤバ大使はその後、2012年NPT準備委員会の時点で、関係国などとの100を超える協議を

行ったこと、議論は前向き(constructive manner)になされたことに触れつつ、「会議の議題、モダ

リティ及び手続き事項をまとめるために、一層の協議が必要だ」とも認めた162。この時点で、イスラ

エル及びイランが参加の意思を明言していなかった。

その後も、ラーヤバ大使による関係諸国との協議をはじめとして、会議の開催に向けた努力が続け

られた。2012年9月のIAEA総会では、西側諸国などの要請により、中東会議の開催に向けた好まし

い状況をつくるべく、前年に引き続いてアラブ諸国がイスラエル核問題に関する決議を提案しなかっ

た。さらに2012年11月に欧州の民間研究機関が開催した会議で、イランのソリターニIAEA大使が、

中東会議への参加の意向を明言した163。しかしながら、11月23日、米国務省より「中東の現下の状況

並びに地域諸国が受諾可能な条件に合意できなかったことにより、会議を開催できない」ことが発表

された164。ラーヤバ大使は、会議の可能な限り早期の開催のため努力を継続するとし、「できるだけ

158 2012年も決議「中東における非核兵器地帯の設置(Establishment of a nuclear-weapon-free zone in the

region of the Middle East)」(A/RES/67/28, 3 December 2011)はコンセンサスで採択された。

159 “Statement by Government of Israel on NPT Review Conference Middle East Resolution,” 29 May 2010,

Israel Ministry of Foreign Affairs, http://www.mfa.gov.il/MFA/Government/Communiques/2010/Statement_

Government_Israel_NPT_Review_Conference_29-May-2010.

160 Ellen Tauscher, “United States Closing Statement at the 2010 NPT Review Conference,” New York City,

May 28, 2010, http://www.state.gov/t/us/142370.htm.

161 “Statement by the National Security Advisor, General James L. Jones, on the Non-Proliferation Treaty

Review Conference,” May 28, 2010, http://www.whitehouse.gov/the-press-office/statement-national-security-

advisor-general-james-l-jones-non-proliferation-treaty-.

162 “Report of the Facilitator to the First Session of the Preparatory Committee for the 2015 Conference of

the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons,” 8 May 2012.

163 “Iran Pledges to Attend Planned WMD Summit,” Global Security Newswire, November 6, 2012,

http://www.nti.org/gsn/article/iran-israel-join-informal-gathering-eye-wmd-summit/.

164 Victoria Nuland, Department Spokesperson, Office of the Spokesperson, “2012 Conference on a Middle

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早期に多国間の協議を行うよう提案する」と述べたが165、2012年末の時点で中東会議開催の見通しは

立っていない。

(2) IAEA保障措置(NPT非核兵器国)

a) IAEA 保障措置協定の締結

核物質が平和目的から核兵器及び核爆発装置へと転用されるのを防止・探知するために、NPT第3

条1項で、NPT非核兵器国はIAEAと包括的保障措置協定を締結し、その保障措置を受諾することが

義務付けられている。現在までに、NPT締約国である非核兵器国のうち、依然として13カ国166が包括

的保障措置協定を締結していない。

1990年代前半のイラク及び北朝鮮核問題を契機として1997年に採択された追加議定書については、

NPT上はNPT非核兵器国による締結が義務づけられているわけではない。しかしながら、未申告活動

の防止と探知にきわめて重要な役割を担うとして、IAEAや西側諸国などは各国による締結を積極的

に求めてきた。2010年NPT運用検討会議の最終文書でも、追加議定書の未締結国に対して早期に締結

すること、発効までの間は暫定的に実施することを求めた(行動28)。NPT締約国である非核兵器国

のうち、2012年11月時点で114カ国が追加議定書を批准している。

包括的保障措置協定及び追加議定書の下での保障措置を一定期間にわたって受け入れ、IAEAによ

って「保障措置下にある核物質の転用」及び「未申告の核物質及び原子力活動」が存在する兆候がな

い旨の「拡大結論」がなされた非核兵器国については、包括的保障措置協定と追加議定書で定められ

た検証手段を効率的に組み合わせた統合保障措置が適用される。

本調査対象国のうち、NPT締約国である非核兵器国に関して、包括的保障措置協定及び追加議定書

の署名・批准状況、並びに統合保障措置への移行状況は、表2-1のとおりである。

表2-1:NPT締約国である非核兵器国のIAEA保障措置協定の締結・実施状況(2011年12月末時点)

豪州

ブラジル

イラン

シリア

韓国

ドイツ

日本

南アフリカ

北朝鮮

スウェーデン

スイス

包括的保障措置協定 発 効 発 効 発 効 発 効 発 効 発 効 発 効 発 効 発 効 * 発 効 発 効

追加議定書 発 効 署 名 発 効 発 効 発 効 発 効 発 効 発 効

拡大結論 ○ ○ ○ ○ ○ ○

統合保障措置 ○ ○ ○ ○ ○

* ただし、1993年のNPT脱退表明後、北朝鮮はその受諾を拒否している

出典)IAEA, “Safeguards Statement for 2011,” pp. 13-17.

East Zone Free of Weapons of Mass Destruction (MEWMDFZ),” Press Statement, November 23, 2012,

http://www.state.gov/r/pa/prs/ps/2012/11/200987.htm.

165 Ministry for Foreign Affairs of Finland. “Helsinki Middle East Conference,” Press Releases, November 24,

2012, http://formin.finland.fi/public/default.aspx?contentid=263448&nodeid=15145&contentlan=2&culture=

en-US.

166 その13カ国は、いずれも少量の核物質しか保有していないか、原子力活動を行っていない国である。

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追加議定書を締結していないブラジルは、2010年のNPT運用検討会議で、同議定書はNPTが基盤

とする義務のバランス、あるいは核の「取引の一部ではない」こと、核軍縮が進んでいない中で「核

兵器を放棄すると明確、信頼でき、かつ検証可能なコミットメントを行っている非核兵器国に、さら

に強化された検証措置の実施を期待するのはフェアではない」ことなどを主張した167。ブラジルは、

2012年のIAEA総会でも類似の主張を行なっている168。

b) 未解決の保障措置協定違反の事例

IAEA憲章では、保障措置協定に基づく締約国への査察の結果、同協定違反(non-compliance)を

決定した場合、IAEA「理事会は、その違反をすべての加盟国並びに国際連合の安全保障理事会及び

総会に報告しなければならない」(第12条C)と規定している。本報告書執筆時点で、IAEAにより保

障措置協定違反の決定が下され、解決に至っていないのは、北朝鮮、イラン及びシリアのケースであ

る。

北朝鮮のケースでは、1992年4月の包括的保障措置協定発効後に実施された特定査察で、北朝鮮が

IAEAに報告した以上のプルトニウムを抽出した疑いがあること、2つの未申告核施設が存在するこ

となどが発覚した。IAEAは1993年2月に未申告施設への特別査察を要求したが、北朝鮮はその受け

入れを拒否しただけでなく、3月にはNPTからの脱退を通告した。これを受けてIAEAは、1993年4

月に、北朝鮮による保障措置協定違反を安保理に報告した。以降、IAEAは包括的保障措置協定の下

で必要とされる査察を北朝鮮に対して実施できていない。北朝鮮は、1994年10月の米朝枠組み合意の

下で、寧辺の核施設の凍結についてIAEA査察官による監視(包括的保障措置協定に基づくものでは

ない)を認めていたが、2002年12月に査察員の国外退去を求め、以後2007年7月まで、核活動の監

視は行われなかった。その後北朝鮮は、六者会合で2007年2月に合意された「共同声明の実施のため

の初期段階の措置」に従い、同年7月、寧辺の核施設の活動停止及び封印などに関するIAEA査察官

による監視(包括的保障措置協定に基づくものではない)を認めた。しかしながら、2009年4月に、

寧辺の核施設の監視手段を撤去するとともに、再びIAEA査察官の国外退去を求めた。以来、現在に

至るまで、北朝鮮の核活動に対する監視は実施されていない169。

イランについては、2002年8月、反体制派組織のイラン抵抗国民評議会(NCRI)による告発から、

IAEAに未申告の施設(アラクの重水製造施設及びナタンズのウラン濃縮施設)を建設していたこと

が明らかになった。さらに、包括的保障措置協定に基づくIAEA査察の結果、イランが長期間にわた

って、IAEAに未申告でウラン濃縮やプルトニウム分離などを行っていたことが判明した。

イランは2003年12月、英仏独(EU-3)との交渉で合意した追加議定書への署名を行い、その暫定

実施を認めた。しかしながら、EU-3とイランの交渉が2005年8月に決裂し、イランが停止していた

ウラン濃縮関連活動を再開したことを受けて、IAEA理事会は9月に、イランによるIAEA保障措置協

定違反を認定する決議を採択した。イランが2006年1月に追加議定書の暫定実施を停止するとともに、

ウラン濃縮活動を再開したのを受けて、IAEA理事会は同年2月に、IAEA事務局長に対して、イラン

167 “Statement by Ambassador Antonio Guerreiro, Brazil,” 8th Review Conference of the Treaty on

Non-Proliferation of Nuclear Weapons, Main Committee II, 10 May 2010.

168 “Statement by Brazil at the 56th General Conference of the IAEA Delivered by H.E. Ambassador Laercio

Antonio Vinhas,” September 2012.

169 たとえば、GOV/2012/36-GC(56)/11, 30 August 2012を参照。

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核問題の国連安保理への報告を要請する決議170を採択した。

イランは、ウラン濃縮活動を含め、申告した核活動に対する包括的保障措置協定の下での査察を現

在に至るまで受諾している。しかしながら、2011年の「保障措置実施声明(Safeguards Statement)」

でも述べているように、IAEAは「イランが申告した核施設及びLOF(施設外の場所)における申告

された核物質が転用されていないことは検証しているが、…追加議定書が実施されていないことを含

む必要な協力をイランが提供していないことにより、未申告の核物質や活動がないという信頼できる

保証を提供することはできず、イランのすべての核物質が平和的活動にあると結論付けることはでき

なかった」171とした。また2011年11月のIAEA報告によれば、イランが核爆発装置の開発に関連する

活動を実施していたことを示す、IAEAが得た情報の詳細な分析が報告されたが、イランはIAEAが求

める疑惑の解明に資するような情報の十分な提供を依然として行っていない172。特に、核兵器に用い

られる高性能爆薬の実験が行われていたとの疑いのあるパルチン軍事基地に関して、2012年8月の

IAEA報告によれば、イランはIAEAからの質問に回答せず、IAEAが求めるサイトへのアクセスを拒

否するとともに、効果的な検証を実施するためのIAEAの能力を大きく阻害する、証拠隠滅とみられ

るような活動を実施してきた173。またイランについては、保障措置協定の補助取極の修正規則3.1

(modified Code 3.1 of the Subsidiary Arrangements:新しい施設の設計情報のを建設の決定または

認可からすぐにIAEAに提供しなければならないと規定)も実施していないと、2012年8月のIAEA

報告で指摘された174。

シリアについては、イスラエルの空爆により破壊されたダイル・アッザウル(Dair Alzour)のサイ

トが、IAEAに未申告で秘密裏に建設されていた原子炉であったとの疑いが強まった。シリアはこれ

を否定しているものの、2011年6月のIAEA理事会で、破壊された施設に関するシリアの説明が証拠

に裏付けられていないこと、IAEAの度重なる協力要請にシリアが応じていないこと、「原子炉だった

可能性が非常に高く、申告されるべきだった」(補助取極の修正規則3.1に違反)と結論付けたこと、

申告された核物質が平和的活動内に留まっているか結論付けることはできないことから、「深刻な懸念」

(serious concern)を表明するとともに、未申告の原子炉建設などがIAEA保障措置協定違反にあた

るとして、安保理に報告することが決議された175。2012年8月のIAEA報告では、破壊された原子炉

が北朝鮮の支援により建設された黒鉛減速炉だったとの情報が他の加盟国などから提供されたこと、

未解決の問題に関してIAEAに完全に協力するようシリアに求めていることなどが改めて記されてい

る176。

(3) IAEA保障措置(核兵器国、NPT非締約国)

NPTは核兵器国に対して、IAEA包括的保障措置協定の締結を義務付けてはいない。しかしながら、

170 GOV/2006/14, 4 February 2006.

171 IAEA, Safeguards Statement for 2011, p. 7.

172 GOV/2011/65, 8 November 2011.

173 GOV/2012/37, 30 August 2012. また米シンクタンクの科学・国際安全保障研究所(ISIS)は、パルチン軍事

基地の衛星写真を定期的に入手して、分析を試みている。2012年7月のISIS報告によれば、証拠隠滅とみられる

活動が続いているという (David Albright and Robert Avagyan, “Activity at Parching Explosive Testing Site

Continues: Time is Running for a Sound IAEA Inspection,” ISIS Imagery Brief, July 2, 2012).

174 GOV/2012/37, 30 August 2012.

175 GOV/2011/41, 9 June 2011.

176 GOV/2012/42, 30 August 2012.

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NPTの不平等性を緩和するとの観点から、核兵器国は平和目的だと申告した原子力施設及び核分裂性

物質に対するIAEA保障措置の自発的適用を行ってきた。IAEAは、各核兵器国がIAEAに提出した保

障措置対象の施設のリスト(eligible list)の中から施設を選んで査察を実施し、平和目的の活動から

転用されていないことを検証する。核兵器国がIAEAに提示するリストの範囲と内容は、各国の判断

により異なっている。また、核兵器国が対象施設をリストに加えたり、リストから削除したりするこ

とも可能である。IAEA保障措置の自発的適用は、あくまでも「自発的」な措置であり、IAEAも非核

兵器国に適用される保障措置とは異なり、その完全性や正確性を重視しているわけではない。

すべての核兵器国は、追加議定書も締結している。たしかに、核兵器国が追加議定書の下で受諾し

ているのは、主として核物質・資機材の輸出入に関するIAEAへの報告であり、非核兵器国に対して

課されているような包括的で完全な情報の提供、あるいは補完的アクセスの受け入れが義務付けられ

ているわけではない。それでも、核兵器国による追加議定書の締結は、非核兵器国との義務の不平等

性を不十分ながらも緩和するだけでなく、核兵器国からも提供される情報によって国家あるいは非国

家主体の未申告活動がIAEAによって探知される可能性が高まるという重要性を持っている。

2011年IAEA年次報告によれば、2011年に保障措置下にあった、あるいは保障措置を受けた核物質

を含む核兵器国の施設の数及び種類は下記のとおりである177。IAEAは査察の回数については公表し

ていないが、保障措置に詳しい専門家によれば、核兵器国の中では英国が他の核兵器国を上回る数の

査察を受けているという。

中国:発電炉1、研究炉1、濃縮施設1

フランス:燃料製造プラント1、再処理プラント1、濃縮施設1

ロシア:分離貯蔵施設1

英国:濃縮施設1、分離貯蔵施設3

米国:分離貯蔵施設1

IAEAは、核兵器国が自発的適用を認めている施設の数については公表していないが、2012年NPT

準備委員会では、フランスがすべての民生用核施設は欧州原子力委員会(EURATOM)またはIAEA

の保障措置下にあることを明らかにしている178。また米国は、300近くの原子力施設を保障措置対象

の施設のリストに含め、2011年には追加議定書の下で370以上の活動をIAEAに申告したこと、また

2010年NPT運用検討会議以降、追加議定書の下でIAEAによる2回の補完的アクセスをホストしたこ

とを、2012年NPT準備委員会で述べた179。なお、核兵器国の中で補完的アクセスが実施されたのは米

国だけである。またフランス、英国及び米国がそれぞれIAEAと締結する追加議定書には補完的アク

セスについて規定されているが、中国及びロシアのそれには補完的アクセスの規定は含まれていない。

NPT非締約国は、いずれもINFCIRC/66タイプの保障措置協定を締結しており、当該国が協定対象

施設と申告した施設にはIAEAによる査察が行われている。2011年IAEA年次報告によれば、2011年に

保障措置下にあった、あるいは保障措置を受けた核物質を含むNPT非締約国の施設の数及び種類は下

177 GC(56)/2/Annex, Table A24.

178 “Statement by Mr ean-Hugues Simon-Michel, Ambassador, Permanent Representative of France to the

Conference on Disarmament, Head of the French Delegation,” Cluster 2, First Session of the Preparatory

Committee for the 2015 Review Conference, Vienna, 30 April-11 May 2012.

179 “Statement by Chargé d’Affaires Robert A. Wood, Acting U.S. Permanent Representative to the

International Organizations in Vienna, Department of State, United States of America,” Cluster 2, First

Session of the Preparatory Committee, 2015 Review Conference of the States Parties to the Treaty on

theNon-Proliferation of Nuclear Weapons, May 7, 2012.

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記のとおりである(査察回数などについては非公表)。

インド:発電炉6、燃料製造プラント2、再処理プラント1、分離貯蔵施設1

イスラエル:研究炉1

パキスタン:発電炉3、研究炉2

追加議定書に関しては、インドが2009年5月に署名したものの批准しておらず、イスラエル及びパ

キスタンは未署名である。インドは、米印原子力協力協定の交渉過程で、運転中・建設中の原子炉22

基のうち14基を平和目的のものと特定し、段階的にIAEA保障措置下に置くとしたが、既存の高速増

殖炉は保障措置の適用外とすること、インドが将来建設する原子炉や高速増殖炉が民生用か否かにつ

いてはインドが判断することとしている。

(4) IAEAとの協力

IAEA保障措置の強化策として最も重視されているものの一つが、追加議定書の普遍化である。2010

年NPT運用検討会議の最終文書でも、追加議定書の未締約国による早期の締結、並びに議定書発効ま

での間の暫定的な実施を求めている(行動28)。

本調査対象国のうち、豪州、フランス、日本、韓国、スウェーデン、英国及び米国(並びに欧州連

合(EU))などは、包括的保障措置に加えて、追加議定書の下での保障措置が、現在のIAEA保障措

置システムのスタンダードあるいは「不可欠な部分(integral part)」だと主張している180。中国は、

ここまで踏み込んだ発言は行っていないものの、包括的保障措置協定と追加議定書の普遍化を促進す

ることが必要だと述べている。スイスは、より厳格な保障措置は手続的な部分において負担を高めう

るものだとの懸念を示しつつ、IAEA保障措置システムをいかに最適化しうるかの検討に関するプロ

セスを開始したと述べている181。他方、ブラジル、ロシア、南アフリカなどは、追加議定書の不拡散

における重要性は認めつつも、その適用はあくまでも自発的になされるべきだとしている。

日本をはじめとする西側諸国は、追加議定書未締結国へのアウトリーチ活動を積極的に実施してき

た。また日本、豪州、ドイツなどがメンバーの軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)は作業文書で、

追加議定書署名の支持のために必要な知識の提供を含め、同議定書の促進にコミットしていること、

並びに関連する技術支援の提供のために特定地域に適合するセミナーやアウトリーチ活動を提案して

いることを報告した182。

こうしたアウトリーチ活動に加えて、日本及び米国がそれぞれ締結した最近の二国間原子力協力協

定には、協力の要件として、相手国による追加議定書の締結を含めるものが見られる。なお原子力供

給国グループ(NSG)では2011年6月、濃縮・再処理施設、設備及び技術の移転について、NPTへ

の加入及び条約の義務の遵守に加えて、包括的保障措置協定及び追加議定書の発効(またはこれらが

未発効の場合はIAEAとの協力によりIAEA理事会により承認された適切な保障措置協定(核物質計量

管理の地域的な取極を含む)を履行している場合)を条件の一つに含めるなどのガイドラインの修正

が合意された。

保障措置技術の研究・開発について、IAEAは、「2010~11年核検証のための研究開発プログラム

180 2012年準備委員会における各国の演説を参照。

181 “Statement by Ambassador Benno Laggner, Switzerland,” Cluster 2, First Session of the Preparatory

Committee, 2015 Review Conference of the States Parties to the Treaty on theNon-Proliferation of Nuclear

Weapons, Vienna, May 7, 2012.

182 NPT/CONF.2015/PC.I/WP.37, 27 April 2012.

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42

(Research and Development Programme for Nuclear Verification 2010-2011)」の実施にあたって

加盟国支援プログラム(MSSPs)に依存してきた。2011年末時点で、IAEAとの21の支援プログラム

が実施された183。本調査対象国のうち、豪州、ブラジル、中国、フランス、ドイツ、日本、韓国、ロ

シア、南アフリカ、スウェーデン、英国、米国がプログラムに参加した。IAEAは2012年に、今後2

年間のプログラムを公表したが、前年までのプログラムと同じ21カ国が参加し、24のプロジェクトが

実施される184。これらプロジェクトにおいて本調査対象国が参加するタスクの件数は、米国が58、英

国が31、フランスが27、ドイツが23、日本が14、スウェーデンが13、韓国が12、ロシアが11、豪州

が8、ブラジルが8、南アフリカが4、中国が3である185。

最後に、IAEAへの特別拠出金(extrabudgetary contribution)については、EU、フランス、ドイ

ツ、日本、韓国、ロシア、英国及び米国が行っている。

(5) 原子力関連資機材・技術などに関する適切な輸出管理の実施

NPT第3条2項では、「各締約国は、(a)原料物質若しくは特殊核分裂性物質又は(b)特殊核分

裂性物質の処理、使用若しくは生産のために特に設計され若しくは作成された設備若しくは資材を、

この条の規定によって必要とされる保障措置が当該原料物質又は当該特殊核分裂性物質について適用

されない限り、平和的目的のためいかなる非核兵器国にも供給しないことを約束する」ことが規定さ

れている。また2010年NPT運用検討会議の最終文書では、多国間で交渉され合意されたガイドライン

及び了解事項を自国の輸出管理の発展に活用するよう奨励された(行動36)。

日本は、NSGをはじめとするすべての国際的な輸出管理レジーム186に参加するとともに、国内実施

制度(立法措置及び実施体制)を整備している。またリスト規制に加えて、リスト規制品以外でも貨

物や技術がWMDや通常兵器の開発、製造などに使用される恐れがある場合に適用されるキャッチオ

ール規制を実施するなど、先端的な輸出管理を実施してきた。その日本の輸出管理制度では、輸出管

理に関する国際的な条約及び4つの国際的なレジームに参加し、大量破壊兵器(WMD)キャッチオ

ール規制を実施している国を「ホワイト国」と指定して、キャッチオール規制の対象外としている。

このうち、「ホワイト国」(27カ国)に含まれる本調査対象国は、豪州、フランス、ドイツ、韓国、ス

ウェーデン、スイス、英国、米国であり、こうした国々はいずれも日本と同様に国内実施制度を整備

し、原子力関連の輸出管理を着実かつ適切に実施してきたと評価できよう。また上述のように、日本

及び米国がそれぞれ締結した最近の二国間原子力協力協定には、協力の要件として、相手国による追

加議定書の締結を含めるものが見られる。

これら以外の本調査対象国の中で、NSGメンバー国はブラジル、中国、ロシア、南アフリカである。

これら4カ国も、キャッチオールの実施を含め、輸出管理に係る国内実施体制を確立している187。こ

のうち輸出管理の実施状況について時折懸念が表明されるのが、ロシア及び中国である。たとえば米

183 IAEA, IAEA Annual Report 2011, July 2011, p. 93.

184 IAEA, Development and Implementation Support Programme for Nuclear Verification 2012-2013, http://www.bnl.gov/ispo/docs/pdf/D-IS_ProgrammeForNuclearVerification_2012-2013.pdf.

185 Ibid. 複数国参加のタスクについては、各国にいずれも1件として計上している。またタスクの重要性、予算

規模などは考慮せず、たんに件数のみを列挙している。

186 NSGに加えて、オーストラリア・グループ(AG)、ミサイル技術管理レジーム(MTCR)、及びワッセナー・

アレンジメント(WA)。

187 南アフリカは、核兵器を含む大量破壊兵器及びその運搬手段に関する資機材・技術について、キャッチオー

ル規制を課している。

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43

国は、「ロシアの組織は多くの民生プログラムに対する原子力の装備及び技術の重要な供給者である」

188として、不拡散上のリスクを示唆している。また中国に関しては、パキスタンと2010年4月に合意

した2基の原子炉の輸出189が、NSGガイドラインに違反するのではないかとの批判がある(中国は、

NSG参加以前に合意された協力には適用されないという、いわゆる祖父条項(grandfarther clouse)

によりNSGガイドライン違反ではないと主張している)。加えて、米国の報告書によれば、「民間及び

国営企業を含む中国の組織は、WMD関連の拡散活動への従事を続けている」と指摘されている190。

安保理制裁委員会の専門家パネルの報告書では、北朝鮮が関与する禁制品などの移転に、大連港をは

じめとする中国の港湾などが利用されているとの指摘もなされており191、輸出管理制度の適切かつ厳

格な実施がなされているかには疑問が残る。

NPT非締約国3カ国も、いずれもキャッチオールの実施を含む輸出管理制度を確立している。この

うちインドについては、NSGにおいて、そのメンバー国化が議論されている。その背景には、インド

がNSGガイドラインに沿った輸出管理制度を整備していること、インドからの不法移転の可能性も低

いと考えられていること、インドを国際的な核不拡散体制のメインストリームに取り込むこと、並び

にインドは有望な原子力市場でもあることが挙げられる。他方で、インドのメンバー国化は、インド

を事実上、「核兵器国」として位置づけることになるのではないかとの懸念もある。パキスタンについ

ては、カーン・ネットワーク(核の闇市場)の存在が明らかとなった。カーン・ネットワークからは、

イラン、北朝鮮、リビアなどへウラン濃縮に係る資機材や技術をはじめとする核兵器関連技術が流出

したとみられている。パキスタンは政府の関与を否定しているが、そうだとすれば、「歴史上初めて、

核兵器にとってカギとなるすべて―供給ネットワーク、物質、濃縮技術、弾頭のデザイン―が国家の

監督や管理から外れたことを示しており」192、事態はより深刻だとの分析もある。その後、パキスタ

ンが輸出管理制度やその実施を実際にどの程度厳格化できているのかは、必ずしも明らかではない。

北朝鮮、イラン及びシリアという拡散懸念国が、輸出管理の実効的な国内実施体制を整備している

か、本報告書執筆時点で明らかにすることはできなかった。他方、これら3カ国は、WMDやミサイ

ルの拡散に関する協力を行っていると広く考えられている。たとえば北朝鮮は、シリアにおける黒鉛

減速炉の秘密裏の建設を支援していた疑いが消えていない。2012年9月には、北朝鮮とイランがエネ

ルギー、環境、情報、農業、食糧などの分野で科学技術協力を進めるとの協定を締結したが、WMD

やミサイルといった分野での協力の深化にもつながりかねないと懸念されている193。

北朝鮮及びイランの核問題との関連では、それぞれについて採択された国連安保理決議で、すべて

の国連加盟国に対して、核兵器を含むWMD関連の計画に資する品目、資材、機材、物品及び技術な

どの移転の防止が義務付けられている。その実施状況に関しては2012年6月に、安保理制裁委員会の

188 “Unclassified Report to Congress on the Acquisition of Technology Relating to Weapons of Mass

Destruction and Advanced Conventional Munitions, Covering 1 January to 31 December 2011,” http://www.

fas.org/irp/threat/wmd-acq2011.pdf.

189 “China to Build Reactors in Pakistan,” Financial Times, April 28, 2010, http://www.ft.com/

cms/s/0/cf731b28-52d2-11df-a192-00144feab49a.html, accessed on May 6, 2010.

190 “Unclassified Report to Congress on the Acquisition of Technology Relating to Weapons of Mass

Destruction and Advanced Conventional Munitions.”

191 “Report of the Panel of Experts established pursuant to resolution 1874 (2009),” S/2012/422, 14 June

2012.

192 Christopher Clary, “Dr. Khan’s Nuclear WalMart,” Disarmament Diplomacy, No. 76 (March/April 2004),

p. 31.

193 “Iran, North Korea Seen Deepening Nuke, Missile Collaboration,” Global Security Newswire, September

20, 2012, http://www.nti.org/gsn/article/iran-north-korea-seen-deepening-nuke-missile-collaboration/.

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専門家パネルがそれぞれ報告書を公表した194。報告書には、イラン及び北朝鮮が決議に違反して禁止

された品目などを輸出入する試み、あるいは不法移転に対する国際社会の阻止の事例について、その

一端が記されている。このうち、北朝鮮との関係では、加盟国による3件の移転阻止の報告(うち1

件は米国による移転阻止の試み)、フランス及び南アフリカによる臨検などの事例、北朝鮮による禁制

品の取引に関するドイツ、日本、英国の報告、北朝鮮への奢侈品(luxury goods)の移転事例に関す

る日本の報告などに加えて、シリア向けの弾道ミサイル関連資機材や化学兵器関連資機材の移転の事

例などで中国の大連港が経由地となっていたことなどが記された。国連加盟国による報告書の提出状

況については、イラン問題については60%の加盟国が報告せず、北朝鮮問題では2012年3月時点で93

カ国(48%)による報告に留まっている。

報告書に記載された事例の他にも、たとえば、中国が2011年夏、弾道ミサイル運搬用の大型特殊車

両4台を、国連安保理決議1874(対北朝鮮制裁決議)に違反して北朝鮮に輸出していた疑いがあるこ

と、2010~2011年にかけてシンガポール、韓国及びマレーシアで、イラン向けとみられる核関連資機

材が押収されたこと195といった事例が報道されている。さらに、2012年8月、北朝鮮が遠心分離器に

も利用可能な高強度アルミニウムを中国経由でミャンマーに輸出しようとし、日米協力の下で日本が

押収していたことが報道された196。

輸出管理の強化にもかかわらず、不法な移転を完璧に防止することが難しいとすれば、そうした移

転・輸送を阻止する取組が必要となる。米国が2003年5月に提唱した「拡散に対する安全保障構想

(PSI)」に関しては、オペレーション専門家会合に参加する日本、米国、英国、豪州、フランス、ド

イツ、ロシア、韓国など21カ国にイスラエル、スイス、スウェーデンなどを加えた102カ国(2012年

11月現在)が、その活動の基本原則や目的に対する支持を表明し、PSIの活動に参加・協力している197。

PSIの実際の阻止活動については、インテリジェンス情報が深く絡むこともあり、明らかにされるこ

とは少ないが、北朝鮮あるいはイランが関係するWMD関連資機材などの移転を阻止したケースなど

が時折報道されてきた。加えて、PSIの下では、阻止訓練の実施・参加、あるいはアウトリーチ活動

の実施を通じて、阻止能力の強化が図られてきた。これまでに豪州、フランス、ドイツ、日本、韓国、

英国、米国などが阻止訓練を主催しており、2012年には日本及び米国が、それぞれ訓練を主催した。

(6) 原子力平和利用の透明性

平和目的の原子力活動が核兵器への転用を意図したものではないことを示すための措置には、上述

のようなIAEA保障措置の受諾に加えて、自国の原子力活動及び今後の計画を明らかにするなど透明

性の向上が挙げられる。追加議定書を締結する国は、核燃料サイクルの開発に関連する10年間の全般

194 “Report of the Panel of Experts established pursuant to resolution 1929 (2010),” S/2012/395, 12 June

2012; “Report of the Panel of Experts established pursuant to resolution 1874 (2009),” S/2012/422, 14 June

2012.

195 “Iran-Bound Atomic Components Intercepted: Diplomats,” Global Security Newswire, March 17, 2011,

http://www.nti.org/gsn/article/iran-bound-atomic-components-intercepted-diplomats/; “Seized Sensitive

Cargo Was Bound For Iran, Malaysia Says,” Global Security Newswire, March 17, 2011, http://www.nti.org/

gsn/article/seized-sensitive-cargo-was-bound-for-iran-malaysia-says/. 中国は安保理の北朝鮮制裁委員会で、中

国から輸出されたのは「木材運搬車」だと主張とされる(『共同通信』2012年12月1日、http://sankei.jp. msn.com/

world/news/121201/kor12120110290001-n1.htm)。

196 「大量破壊兵器の関連資機材 北朝鮮、ミャンマーに輸出」『朝日新聞』2012年11月24日。

197 Bureau of International Security and Nonproliferation, US Department of State, “Proliferation Security

Initiative Participants,” November 20, 2012, http://www.state.gov/t/isn/c27732.htm.

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的な計画(核燃料サイクル関連の研究開発活動の計画を含む)をIAEAに報告することが義務付けら

れている。主要な原子力推進国も、原子力発電炉の建設計画をはじめとして、中長期的な原子力開発

計画を公表しており198、日本も以前は「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」、2005年10

月にはその名称を変更して原子力政策大綱を策定するなどして、透明性向上のための取組を行ってき

た199。他方、原子力計画を公表していないものの核活動を行っている(とみられる)国(イスラエル、

北朝鮮、シリア)、あるいは原子力計画を公表しているもののその計画や能力・技術にそぐわない核関

連活動を行っている(とみられる)国(イラン)に対しては、核兵器拡散への懸念が持たれる可能性

がある。

透明性の観点では、1997年に合意された「プルトニウム管理指針(Guidelines for the Management

of Plutonium)」(INFCIRC/549)の下でなされるプルトニウム保有量のIAEAへの報告も重要である。

5核兵器国及びベルギー、独、日、スイスが共通のフォーマットで民生用分離プルトニウムなど(す

べての原子力平和利用活動におけるすべてのプルトニウム及び当該国政府によりもはや防衛目的に不

要とされた後のその他のプルトニウムの管理に適用される)の量を毎年報告している。9カ国はいず

れも毎年、報告を公表している。2012年12月時点で、ベルギー、中国、フランス、ロシア、日本、英

国及びスイスが2011年末の状況に関する報告を既に行った。またフランス、ドイツ及び英国は、プル

トニウムだけでなく高濃縮ウラン(HEU)の量も報告している。中国は、2010年の報告では、民生

用未照射プルトニウム(civil unirradiated plutonium)の量をゼロとしていたが、2011年の報告では

13.8kgと報告していることが注目される。

豪州、ブラジル、イラン、韓国、南アフリカ、スウェーデンについても、保有量を公表しているか、

あるいは少なくともIAEAに申告している核分裂性物質に関しては保障措置が適用されているという

意味で透明性が確保されていると言える。

最後に、自国で行っている原子力関連の研究成果の公表を透明性の一環として捉えることもできよ

う。一例として、2012年の核物質管理学会(INMM)年次大会で発表された論文(総数404)を本調

査対象国の国別の数でみると、米国が299、日本が34、韓国が24、ロシアが15、英国が9、ドイツが

8、スウェーデンが6、南アフリカが3、豪州が3、フランスが2、イスラエルが2、ブラジルが1、

パキスタンが1であった(2カ国以上にまたがる共同研究については、それぞれの参加国に1件とし

て加えている)200。

198 主要国の原子力発電を含む原子力開発の現状及び今後の計画については、世界原子力協会(World Nuclear

Association)のホームページ(http://world-nuclear.org/)にも概要がまとめられている。

199 日本は新原子力政策大綱の策定に関する議論を進めてきたが、福島原発事故を受けて一時中断した検討を

2011年8月に再開した。

200 核物質管理センターから提供された情報。

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3.核セキュリティ

核セキュリティ及び原子力安全に関する取組や措置は、国際的及び地域的になされるものはもちろ

ん、各国がそれぞれの施設において実施するものもきわめて多岐にわたる。加えて、特に国内実施状

況については、各国が置かれている安全保障環境、あるいは原子力平和利用の動向といった要素も加

味して検討しなければ、適切な評価をなしえないという難しさがある。このため国内実施に関する部

分の調査は今後の研究課題とし、本報告書では、核分裂性物質の保有量、条約や国際取極の参加状況、

国際的な協力や取組などへの参加状況を主として取り上げ、調査、分析を行った。

(1) 兵器利用可能な核分裂性物質の保有量

国際核分裂性物質パネル(IPFM)によれば、本調査対象国が保有する、兵器利用可能な核分裂性

物質の保有量(推計)は、表3-1のとおりである。高濃縮ウラン(HEU)及び兵器級プルトニウムと

もに、世界の保有量の9割以上を米露が占めている。

兵器利用可能な核分裂性物質の保有は、それだけ核セキュリティ上のリスクを高めることになるた

め、施設における厳格な管理をはじめとする核セキュリティ措置の実施及びその強化に対する責務も

増す。その観点から、兵器利用可能な核分裂性物質の保有量並びにその貯蔵施設の数は、核セキュリ

ティに係る取組の重要な評価の対象である。保有量及び貯蔵施設数については、必ずしもすべての国

が公表しているわけではない。このうち、保有量については、IPFMが毎年、各国の保有量の推計を

まとめた「世界核分裂性物質報告」を発表している。他方、貯蔵施設数に関しては、信頼しうるデー

タを得ることは難しかった。このため本事業では、「2011年世界核分裂性物質報告」を基に各国の保

有量について評価を行うこととした。

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表 3-1:兵器利用可能な核分裂性物質の保有量(推計、2011 年)

[単位:MT]

高濃縮ウラン

兵器利用

可能なスト

ックパイル

艦船用

(未照射)

艦船用

(照射済

み)

民生用

余剰(ほと

んどは希

釈用)

兵器用プルト

ニウム

軍事用ストッ

クパイル

軍事目

的から

の余剰

追加的

な戦略

ストック

パイル

原子炉級プ

ルトニウム

国内にあ

る民生用

ストック

パイル

(2010年

12月)

国外にあ

る民生用

ストック

パイル

(2010年

12月)

ロシア 737±120 616 20 10 20 71 128±8 88 34 6 48.4 48.4

米国 610 260 130 100 20 100 91.9 38 53.9

フランス 30.6 26±6 4.6 6±1 6 56 56

中国 16±4 16 1.8±0.5 1.8 0.01

イギリス 21.2 11.7 8.1 1.4 7.6 3.2 4.4 87.7 86.8 0.9

パキスタン 2.75 2.75±1 0.14 0.14

インド 2.0±0.8 2 4.72 0.52 4.2 0.24 0.24

イスラエル 0.3 0.3 0.82±0.15 0.82

北朝鮮 0.03 0.03

ドイツ 7.6 2 5.6

日本 44.9 9.9 35

スイス <0.05

ベルギー <0.05

その他 20 20.2 10.7 10.7

出典)International Panel on Fissile Materials, “Global Fissile Material Report 2011: Nuclear Weapons and Fissile Material Stockpile and Production,” International

Panel on Fissile Materials, January 2012; 「プルトニウム管理指針(Guidelines for the Management of Plutonium)」(INFCIRC/549)の下の各参加国のIAEAへの報告。

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(2) 核セキュリティ・原子力安全に係る諸条約などへの加入、参加、国内体制への反映

原子力活動の拡大により、核セキュリティ・原子力安全に関する国際的な枠組みへの参加と、規定

された義務やコミットメントの国内実施体制への反映は、これまで以上に重要なものとなっている。

2010年の核不拡散条約(NPT)運用検討会議の最終文書では、核物質防護条約及び改正条約(行動42)、

核テロ防止条約(行動45)、原子力安全条約、原子力事故早期通報条約、使用済燃料管理及び放射性

廃棄物管理の安全に関する条約、及び原子力事故援助条約(行動59)などへの早期加入をNPT締約国

に求めている。報告書執筆時点での、本調査対象国によるこれら諸条約への署名・批准状況は、表3-2

のとおりである。

表3-2:核セキュリティ・原子力安全に関する主要な条約への署名・批准状況 [○批准 △署名]

中国

フランス

ロシア

米国

英国

インド

イスラエル

パキスタン

北朝鮮

イラン

シリア

豪州

ブラジル

ドイツ

日本

韓国

南アフリカ

スウェーデン

スイス

核物質防護条約 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

改正核物質防護条約(未発効) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

核テロ防止条約 ○ △ ○ △ ○ ○ △ ○ ○ ○ ○ △ ○ △ ○

原子力安全条約 ○ ○ ○ ○ ○ ○ △ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

原子力事故早期通報条約 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ △ ○ △ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

使用済燃料管理及び放射

性廃棄物管理の安全に関

する条約

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

原子力事故援助条約 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ △ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

核物質及び原子力施設の物理的防護に関しては、2005年7月に採択された改正核物質防護条約の早

期発効が重要な課題の一つに位置づけられている。従来の核物質防護条約(1979年10月採択、1987

年2月発効)では、国際輸送中の核物質に対する一定水準の防護措置の確保などが締約国に義務付け

られていた。しかしながら、これだけでは十分ではなかったとして、改正条約では、条約に基づく物

理的防護の対象を、平和目的に使用される核物質の国内における使用、貯蔵及び輸送、並びに原子力

施設に拡大すること、核物質及び原子力施設に対する妨害破壊行為も犯罪化することが義務付けられ

た。

物理的防護に関しては、上記の条約に加えて、国際原子力機関(IAEA)が発行するガイドライン

に準拠した物理的防護に関する国内体制を整備し、一連の措置を講じることが求められている。IAEA

は、1977年にガイドライン「核物質の物理的防護(Physical Protection of Nuclear Material)」の第

1次改訂版(INFCIRC/225/Rev.1)を発行した後、改訂を重ね、2011年1月には「核物質及び原子力

施設の物理的防護に関する核セキュリティ勧告(Nuclear Security Recommendations on Physical

Protection of Nuclear Material and Nuclear Facilities)」として第5次改訂版(INFCIRC/225/Rev.5)

を発行した201。なお、INFCIRC/225自体は法的拘束力のある文書ではないが、国内法、二国間原子力

201 第4次改訂版のタイトルは「核物質及び核施設の物理的防護(Physical Protection of Nuclear Material and

Nuclear Facilities)」で、原子力施設が物理的防護の対象に含まれることが明示化された。また第5次改訂版の

タイトルが「核セキュリティ勧告」とされたのは、IAEAが発行している一連のガイダンス文書である核セキュ

リティ・シリーズの第13号として発行されたためである。

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協力協定、IAEAプロジェクトあるいは供給協定などの国際取極に義務として含められた場合には、

法的拘束力を有する。

2012年に開催された核セキュリティサミット、NPT準備委員会、あるいはIAEA総会において、

INFCIRC/225/Rev.5の国内実施体制への反映に向けて検討・作業を進めていることを明らかにしたの

は、豪州、ブラジル、ドイツ、日本、韓国、南アフリカ、スイス、米国である。インドは2012年核セ

キュリティサミットで、「INFCIRC/225/Rev.5に含まれる勧告を支持する」と述べたが、その国内実

施体制への反映については言明していない。

この他の調査対象国については、適当な情報を得ることはできなかった。ただ、フランス、スウェ

ーデン及び英国は後述するようにIAEAの国際核防護諮問サービス(IPPAS)ミッションを受け入れ

ている。IPPASミッションでは核物質防護条約やINFCIRC/225/Rev.5を含む文書に照らして核セキュ

リティの実施状況についての評価を行うことから、こうした国々はINFCIRC/225/Rev.5の国内実施体

制への反映を進めていると考えられる202。上記に挙げた条約では、核セキュリティ・原子力安全に関

する立法措置や制度の確立など国内実施体制の整備を締約国に義務付けている。本調査対象国の多く

は、そうした国内実施体制をすでに確立してきた203。核脅威イニシアティブ(NTI)が作成した「NTI

核物質セキュリティ・インデックス」では、北朝鮮には独立した規制当局が設置されていないこと、

核物質のセキュリティに関する国内法についてはイラン、北朝鮮及びシリアで制定されていないこと、

ブラジル及びイスラエルでは必ずしも十分な立法措置がなされていないことなどが指摘された204。日

本に関しても原子力安全・保安院の規制当局としての独立性の問題が指摘されたが、福島原発事故の

教訓を踏まえ、2012年9月に原子力規制庁が発足した。

核セキュリティについては、パキスタンの核(兵器)関連施設がアルカイダやタリバンの影響力が

強い「トライバル・エリア」の近くにあると見られ、施設に対する攻撃、あるいは核兵器や核物質な

どが盗取される可能性が懸念されてきた。パキスタンは、IAEA(また核兵器関連施設などについて

はおそらく米国)の支援などを受けつつ核セキュリティを強化してきた。カル・パキスタン外相は、

パキスタンが広範囲な物理的防護措置を講じるとともに、大量破壊兵器(WMD)テロに対処するた

めの技術的ソリューション、職責プログラム(personnel responsibility programmes)及び情報能力

を発展させており、核兵器や核施設などの安全は確保されていると発言した205。ただ、とりわけ核兵

器、核兵器関連施設・物質についてパキスタンが具体的にどのような施策を講じているかについては

明らかではない206。

(3) 核セキュリティの最高水準の維持・向上に向けた取組

米国は2010年4月、47カ国の首脳を集めて開催されたワシントン核セキュリティサミットを主催し

202 核セキュリティの専門家へのインタビュー。

203 IAEAのホームページには、本調査対象国のうち、ブラジル、中国、フランス、ドイツ、インド、イラン、日

本、韓国、パキスタン、ロシア、南アフリカ、スウェーデン、スイス、シリア、英国、米国について、国内実施

体制を含む原子力関連の情報が掲載されている。 IAEA, “Country Nuclear Power Profiles,” http://www-

pub.iaea.org/MTCD/Publications/PDF/CNPP2011_CD/pages/countryprofiles.htm.

204 Nuclear Threat Initiative, “NTI Nuclear Materials Security Index: Building a Framework for Assurance,

Accountability, and Action,” January 2012.

205 “Pakistan’s nuclear programme fully secure: FM Khar,” Dawn, 29 September 2012, http://dawn.com/

2012/09/29/pakistans-nuclear-programme-fully-secure-fm-khar/.

206 パキスタンの核セキュリティに関する取組については、Pakistan Nuclear Regulatory Authority, “Nuclear

Security Action Plan (NSAP),” http://www.pnra.org/nsap.asp などを参照。

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た。このサミットでは、各参加国が核セキュリティの強化に関するコミットメントを表明した。その

直後に開催された2010年NPT運用検討会議の最終文書でも、核物質及び施設のセキュリティ及び物理

的防護を最高に可能な水準に維持することが求められた(行動40)。

2012年3月にソウルで行われた第2回核セキュリティサミットには53カ国が参加し、参加国は第1

回サミットで行ったコミットメントの進捗状況を報告した207。その概略はソウル・サミット準備事務

局(Seoul Summit Preparatory Secretariat)によりまとめられている208。核セキュリティに係る措

置は多岐にわたるが、本報告書では、その中から、国際協力が求められるものをいくつか取り上げ、

核セキュリティの最高水準の維持・向上に向けた取組の状況を概観する。

a) 民生利用における HEU の最小限化

高濃縮ウラン(HEU)は、研究炉あるいはアイソトープ生産炉といった民生目的でも用いられてき

たが、盗取や不法取引などにより流出すれば、国家のみならず非国家主体でも核兵器の製造が可能に

なりかねない。こうした問題への懸念を背景に、米国が2004年に提唱して開始された地球的脅威削減

イニシアティブ(GTRI)は、世界の民生用サイトにある米露起源のHEUなどの両国への返還、並び

にHEUを使用する原子炉の低濃縮ウラン(LEU)用への転換を進めるというものであった。2010年

NPT運用検討会議の最終文書では、「技術的及び経済的に実施可能な場合に、自発的ベースで、民生

用のストック及び利用における高濃縮ウランの一層の最小限化を関係国に奨励する」(行動61)とさ

れた。2012年3月のソウル核セキュリティサミットでも、そのコミュニケで、以下のように言及され

た。

「我々は、各国が、医療用アイソトープの供給が保証されることの必要性を考慮し、実行可

能な場合、技術的及び経済的に高濃縮ウラン燃料を利用する原子炉を低濃縮ウラン燃料を利

用する原子炉に転換することも含め、高濃縮ウラン使用の最小化のための措置をとることを

奨励し、そのような立場にある国については2013年末までに高濃縮ウランの使用の最小化を

目指す自発的で具体的な行動を発表することを奨励する。また、我々は、各国が、低濃縮ウ

ラン燃料の使用及びアイソトープ生産のような商用の利用において目標設定を促進するこ

とを奨励し、これに関連し、研究実験炉の転換を支援するための高密度の低濃縮ウラン燃料

に関する国際協力を歓迎する。」

ソウル核セキュリティサミットに先立つ2012年1月、オーストリア、ノルウェー、核脅威イニシア

ティブ(NTI)の共催(及びIAEAとの協力)で、HEUの最小限化に関する第2回国際シンポジウム

207 各国の国別報告書(National Progress Report)は、 2012年核セキュリティサミットのホームページ、

“Information on National Progress of NSS Participating States” http://www.thenuclearsecuritysummit.org/

eng_media/speeches/speeches_list.jspに掲載されている。

208 The Seoul Nuclear Security Summit Preparatory Secretariat, “Highlights of Achievements and

Commitments by Participating States as stated in National Progress Reports and National Statements,”

2012 Seoul Nuclear Security Summit, March 23-24, 2012, Seoul, http://www.thenuclearsecuritysummit.org/

userfiles/Highlights%20of%20the%20Seoul%20Nuclear%20Security%20Summit(120403).pdf. また、日本原

子力研究開発機構「ソウル核セキュリティサミットの開催」『核不拡散ニュース』No. 180(2012年4月27日)、

http://www.jaea.go.jp/04/np/nnp_news/0180.html に、各国の取組が取りまとめられており、本報告書では同記

事も参照して執筆した。これらに加えて、Robert Golan-Vilella, Michaelle Marchesano and Sarah Williams,

“The 2010 Nuclear Security Summit: A Status Report,” An Arms Control Association and Partnership for

Global Security Report, April 2011; Michaelle Cann, Keksey Davenport and Margaret Balza, “The 2010

Nuclear Security Summit: Assessment of National Commitments,” An Arms Control Association and

Partnership for Global Security Report, Updated and Revised March 20, 2012も参照。

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が開催された209。会議の概要並びに共催国の政策提言は、2012年NPT準備委員会に作業文書として提

出された210。

GTRIの下では、IPFMによれば、2011年末の時点で、24カ国から1,240kgのHEU(うち15カ国か

ら米国起源のすべてのHEU、またソ連起源のHEUを供給された7カ国から980kgのHEU)が除去さ

れた211。また米国の国家核安全保障局(NNSA)のファクトシート(2012年12月11日)によれば、

3,500kgのHEU及びプルトニウム(米国起源のHEUが1,260kg、ロシア起源のHEU及びプルトニウム

が1,900kg)が除去され、22の国・地域(ブラジル、韓国、スウェーデンなど)に存在したすべての

HEUが取り除かれた212。豪州、ドイツ、日本などからの返還も進められている。NNSAの別のファク

トシート(2012年12月11日)によれば、オバマ大統領の2009年のプラハ演説以降、12カ国(中国、

日本、ロシア、米国など)の20のHEU研究炉がLEUを用いるものに転換あるいは閉鎖された213。GTRI

の開始以降、上記に挙げた国に加えて豪州、ドイツ、フランス、南アフリカなどで、HEUを燃料とす

る82の研究炉が転換または閉鎖された。

ソウル核セキュリティサミットでは、HEU利用の最小限化に関する進捗状況、並びに今後のコミッ

トメントなどに関して、参加国からさらに以下のような取組が言及された。

豪州: HEUの起源国への返還

中国、ロシア、南アフリカ:原子炉のLEU用への転換、またはその実現可能性の検討

米国:原子炉の燃料として使用するために、10.5トンのHEUをLEUに転換;核兵器削減プロセ

スの一環として、米露のプルトニウム廃棄;HEU及び原子炉の転換支援

ブラジル、イスラエルなど:HEUの返還、あるいはLEUを燃料とする原子炉への転換

フランス、韓国:HEUの代替となる高密度LEU燃料パウダー生産技術の開発214

ベルギー、フランス、オランダ、米国(共同声明):医療用アイソトープ生産のためのHEU使用

の最小限化、2015年までにモリブデン-99(Mo-99)を生産するすべての欧州の施設をLEU燃料

を使用するものに転換215

209 “Summary of the 2nd International Symposium on HEU Minimization,” January 25, 2012, http://www.

nti.org/analysis/articles/summary-2nd-international-symposium-minimization-highly-enriched-uranium-he

u/.

210 NPT/CONF.2014/PC.I/WP.1, 15 March 2012.

211 IPFM, p. 12.

212 National Nuclear Security Administrative, “GTRI: Removing Vulnerable Civilian Nuclear and

Radiological Material,” Fact Sheet, December 11, 2012, http://nnsa.energy.gov/mediaroom/factsheets/gtri-

remove.

213 National Nuclear Security Administrative, “GTRI: Reducing Nuclear Threats,” Fact Sheet, November 7,

2012, http://nnsa.energy.gov/mediaroom/factsheets/reducingthreats.

214 2012年3月、ベルギー、フランス、韓国及び米国は、研究炉でのHEU燃料からLEU燃料への転換を行う努力

の一環として、高密度LEU燃料の共同開発プロジェクトを実施すると発表した。 “Joint Statement on

Quadrilateral Cooperation on High-density Low-enriched Uranium Fuel Production,” March 26, 2012,

http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2012/03/26/joint-statement-quadrilateral-cooperation-high-densi

ty-low-enriched-uran. また日本原子力研究開発機構も、HEUを使用することなくMo-99を生産する"plasma

sintering" processの開発を進めている( “Japan Devises HEU-Free Medical Isotope Production Method,”

Global Security Newswire, November 28, 2012, http://www.nti.org/gsn/article/japan-devises-heu-free-

medical-isotope-production-method/)。

215 “Belgium-France-Netherlands-United States Joint Statement: Minimization of HEU and the Reliable

Supply of Medical Radioisotopes,” March 26, 2012, http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2012/03/26/

belgium-france-netherlands-united-states-joint-statement-minimization-he.

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b) 不正取引の防止

国家あるいは非国家主体への核物質の不法な移転を防止するために、その保有国は、施設内での計

量管理を含む厳格な管理から不法取引の探知・阻止までの幅広いスペクトラムにわたり、様々な措置

の効果的な実施が求められる。ソウル核セキュリティサミットのコミュニケでは、そうした措置とし

て、核物質その他放射性物質の国内検査や国境での検知の分野における技術的な能力の強化、違反行

為の訴追のための法、情報、財政といったツールの一層の活用、IAEA不正取引データベース(ITDB)

プログラムへの参加、規制管理外の核・放射性物質に関する情報の提供、核物質などの取引の違反行

為に関与した個人に関する国家間、並びに国際刑事警察機構(INTERPOL)及び世界税関機構(WCO)

などとの情報共有などが挙げられた。

核・放射性物質の不法取引及び他の不正な活動に関するITDBは、1995年に構築されて以来、IAEA

によって維持されてきた。2012年11月現在、豪州、ブラジル、中国、フランス、ドイツ、インド、イ

ラン、イスラエル、日本、韓国、パキスタン、ロシア、南アフリカ、スウェーデン、スイス、英国、

米国を含む118カ国が参加し、情報を提供している。IAEAによれば、2011年末までの累計で2,164、

2011年だけで147の事件が報告された216。2011年に報告された事例の内訳は下記のとおりだが、この

うち4件についてはHEUに関するものであった。

核物質または放射線源の不法所持及び売却の企て:20件

放射線源の盗難または紛失:31件

管理されていない物質の発見、核物質・放射線源などの未承認の移動・貯蔵:96件

不法な移転の阻止は、基本的には各国がそれぞれの責任で行うものだが、核テロに対する脅威認識

がとりわけ高い米国は、自国の港湾などでの阻止に加えて、「第二防衛線」(SLD)計画の下で、ロシ

ア含む旧ソ連諸国や他の重要な国の国境、空港及び港湾(約450のサイト)に放射線探知装置を設置

した217。またメガポート・イニシアティブでは、世界の主要な港湾における核物質及び他の放射性物

質の探知能力の強化に向けた取組を進めている。このうち、メガポート・イニシアティブについては、

イスラエル、パキスタン、韓国、英国などの34の港湾で装置の設置が完了し、中国や日本などの港湾

で実施過程にある218。

核分裂性物質の検知は、放射性物質のそれと比べて技術的なハードルが高いとされており、米国や

日本などが、より効果的な検知技術の構築に向けて研究・開発を継続している219。また英国も、核・

放射性物質の探知における最先端の技術の共有を考えているという220。

2007年8月には、米国でいわゆる100%スキャニング法が成立し、2012年7月までに米国向けのす

べてのコンテナを外国の港から出港する前にスキャンすること、並びにスキャンされていないコンテ

216 IAEA Annual Report 2011, pp. 81-82.

217 National Nuclear Security Administrative, “Core Program,” NNSA homepage, http://nnsa.energy.gov/

aboutus/ourprograms/nonproliferation/programoffices/internationalmaterialprotectionandcooperation/-4.

218 National Nuclear Security Administration, “NNSA's Second Line of Defense Program,” Fact Sheet,

February 1, 2011, http://nnsa.energy.gov/mediaroom/factsheets/nnsassecondlineofdefenseprogram.

219 Jonathan Medalia, “Detection of Nuclear Weapons and Materials: Science, Technologies, Observations,”

Congressional Research Service (June 4, 2010); Bart Elias, “Screening and Securing Air Cargo: Background

and Issues for Congress,” CRS Report for Congress, December 2, 2011, p.13を参照。

220 ソウル核セキュリティサミットにおける英国のNational Progress Report。2012年11月には、そのプロトタ

イプが試験段階にあると報じられた(Oliver Wright, “Dirty bomb terror threat breakthrough: British

scientists build machine to detect smuggling of nuclear materials,” Independent, 1 November 2012,

http://www.independent.co.uk/news/uk/crime/dirty-bomb-terror-threat-breakthrough-british-scientists-buil

d-machine-to-detect-smuggling-of-nuclear-materials-8273751.html)。

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ナは米国への荷揚げを禁止することが定められた。2009年12月には、検査機器の開発の遅れ、あるい

は設置にかかるコストの問題などから、この法律の施行を2年間延期すると発表された。しかしなが

ら、その後も問題の解決は遅れているようであり、米国内、あるいはEUなどからも、100%スキャニ

ングの実現可能性を疑問視する見方が少なくないようである221。

c) 国際評価ミッションの受け入れ

IAEAによる国際評価ミッションのうち、国際核防護諮問サービス(IPPAS)は、加盟国の原子力

活動の核・放射性物質の防護に関する体制を核物質防護条約(改正条約を含む)や関連する勧告文書

(核セキュリティ・シリーズ第13番(INFCIRC/225/Rev.5)及び第14番)に照らして評価するという

ものである222。1996年から2012年6月末までの間に55のミッションが37ヵ国で実施された(13カ国

における14のフォローアップ・ミッションを含む)223。2011年にはフランス、スウェーデン及び英国

がIPPASの評価使節団受け入れ224、豪州、フィンランド、韓国、ルーマニア及び米国が今後の受け入

れの意思を表明している(豪州及び韓国が2013年に受け入れを計画)。また、フランスは、2013年に

国際評価ミッションの教訓についての国際ワークショップをIAEAと共同で行うとしている225。

d) IAEA 核セキュリティ計画及び核セキュリティ基金

IAEA理事会は2002年3月、核テロ防止のために実施すべき事業計画として3カ年の「核セキュリテ

ィ計画」(Nuclear Security Plan)を承認した。2009年8月には、2010〜2013年の第3次活動計画226

が承認され、実施されている。またIAEAは、2002年に核セキュリティ計画の実施のための「核セキ

ュリティ基金」(NSF)を設立し、IAEA加盟国の自発的な資金供与を求めてきた227。

IAEA年次報告(2011年)によれば、16カ国(中国、フランス、ドイツ、日本、韓国、スウェーデ

ン、ロシア、英国、米国など)及びEUが特別拠出金(extrabudgetary funding)を供与するなどし

て、2011年におけるNSFの歳入は1,800万ユーロとなった228。

e) 技術開発―核鑑識

核セキュリティに係る技術開発は、原子力施設あるいは輸送時の核物質に対する物理的防護能力の

強化、国境における核物質などの密輸検知能力の向上などをはじめとして、幅広い分野で行われてい

るが、その最も重要なものの一つとして取り組まれているのが核鑑識技術である。これは、核物質、

221 Douglas P. Guarino, “Senate Action to Repeal Nuclear Detection Mandate Possible in Lame Duck,”

Global Security Newswire, October 26, 2012, http://www.nti.org/gsn/article/senate-action-repeal-nuclear-

detection-mandate-possible-lame-duck/.

222 IAEA, “International Physical Protection Advisory Service (IPPAS),” http://www-ns.iaea.org/security/

ippas.aspを参照。

223 GOV/2012/41-GC(56)/15, 31 July 2012, p. 8.

224 “IAEA Annual Report 2011,” p. 80.

225 “Statement by Mr. Jean-Hugues Simon-Michel, Ambassador, Permanent Representative of France to the

Conference on Disarmament,” Cluster 3, First Session of the Preparatory Committee for the 2015 Nuclear

Non-Proliferation Treaty Review Conference, Vienna, 30 April-11 May 2012.

226 GOV/2009/54-GC(53)/18, 17 August 2009.

227 そこには、核セキュリティにおけるIAEAの役割の増大にもかかわらず、諸プログラムの実施の多くについて

外部拠出金に依存せざるを得ない、不安定な予算状況に直面しているという問題点も潜んでいる。

228 “IAEA Annual Report 2011,” p. 82.

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あるいは爆発後の残留放射性物質から、核物質の出自、履歴、輸送経路などの特定を目的としたもの

である。ソウル核セキュリティサミットのコミュニケでは、「…我々は、各国が相互に、またIAEAと

共同で核鑑識能力を開発し、強化するために取り組むことを奨励する。これに関連して、各国は共通

の定義及び基準の策定を通じて伝統的手法と核鑑識の双方を融合させ、また適切な場合には研究に取

組、情報及びベスト・プラクティスを共有することができる。また我々は、核鑑識を前進させるため

の技術及び人的資源の開発の双方に関する国際協力の重要性を強調する」とされた。

1996年に設立された「核密輸国際技術ワーキンググループ」は、その後「核鑑識に関する国際技術

ワーキンググループ(ITWG)」と名称を変え、核鑑識技術の開発、共通の手法や技術の提供を目的と

して活動を継続している。2010年6~7月に開催されたITWG-15には米国、英国、フランス、ドイツ、

日本、豪州、韓国、スウェーデン、パキスタン、イスラエルなどが、また2011年6月のITWG-16には

これらに加えてロシア及び南アフリカが参加した229。またIAEAでも、「Coordinated Research Project」

の下で、2008年5月から2012年6月まで、「核・放射性物質の不法取引における核鑑識の適用」に関

する研究開発プロジェクトを実施した230。

IAEAは2012年2月27日から3月6日まで、「核鑑識手法に関する国際ワークショップ」を米国で開

催し、核鑑識の訓練に13カ国(ブラジル、中国、日本、ロシア、南アフリカ、韓国、米国など)が参

加した231。日本も、核鑑識に関する研究開発促進の目的の一つとして、2010年10月に「核鑑識に関す

る国際ワークショップ」を開催している。

f) キャパシティ・ビルディング及びアウトリーチ活動

ワシントン及びソウルでの核セキュリティサミットでは、自国及び地域諸国が核セキュリティに係

る様々な訓練を受けることで核セキュリティ能力を向上させることを目的とした中心的拠点(COE)

について、ブラジル(Nuclear Security Support Center)、中国(National Nuclear Security

Technology Center)、フランス(International Institute of Nuclear Energy)、インド(Global Center

for Nuclear Energy Partnership)、日本(Integrated Support Center for Nuclear Nonproliferation

and Security under the JAEA(日本原子力研究開発機構))、韓国、ロシア(Krasnoyarsk Regional

Training Center)、南アフリカ、パキスタン(Nuclear Security Training Center)、スイス、英国

(National Nuclear Center of Excellence232)、米国などが設立あるいは設立を支援する旨表明した。

またフランスやスウェーデンは、EU・CBRN(化学、生物、放射性物質、核)リスク低減COE(EU

Centers of Excellence on CBRN risk mitigation)の発展を積極的に支援していると述べた。他方で、

事前調整がなされることなく同一地域内で同様のセンターが複数設置、あるいは設置が予定されるケ

ースもあるとの問題点も指摘されてきた。このため、活動の重複の回避、情報交換、専門家交流、訓

練教材のシェアなどを目的として、センター間のグローバルなネットワークの設立が2012年に合意さ

れた。

229 ITWG-16の概略は、 “16th Annual Meeting of the Nuclear Forensics International Technical Working

Group (ITWG), Kyiv, Ukraine, June 14-17, 2011,” http://www.pnsp-state.net/FileRepository/Documents/

ITWG_16.pdf.

230 IAEA, “Coordinated Research Activities: Annual Report and Statistics for 2011 Supplement,” August

2012.

231 “NNSA, IAEA Offer Nuclear Forensics Training,” Global Security Newswire, March 9, 2012, http://www.

nti.org/gsn/article/nnsa-iaea-offer-nuclear-forensics-training/.

232 政権交代後、2010年末にこの構想は終了されたため、設立されていない。

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核セキュリティに関する国際会議も活発に行われてきた。ソウル核セキュリティサミットなどで表

明された2012年の主要な国際会議の開催予定としては、下記のようなものがあげられた。

米国:「第1回核セキュリティに関する国際規制当局者会議」(International Regulators

Conference on Nuclear Security)を2012年12月に主催

スウェーデン:2012年4月に「第2回INTERPOL放射性物質及び核物質の取引とテロリズムの

分析に関する会議」の主催を計画

さらに、2013年7月にはIAEAの「核セキュリティに関する国際会議」が、2014年にはオランダで

第3回核セキュリティサミットが、それぞれ開催される予定である。

この他に、ソウル核セキュリティサミットでは、豪州、日本などがアウトリーチ活動の実施を報告

している。

g) 国際的な取組への参加

2001年9月の米国における9・11テロ以降、核テロに対する脅威認識が急速に高まっていった。その

中で、核兵器を含む大量破壊兵器(WMD)テロ対策の国際的な実施のための取組や協力の重要性も

高まった。1991年に米国が打ち出した協調的脅威削減プログラム(CTR)は、米露(ソ)軍備管理の

履行支援を含む旧ソ連非核化支援を主眼として開始されたが、核弾頭の廃棄、兵器級核分裂性物質の

管理・処分、科学者・技術者の雇用促進などといった取組は、非国家主体による核兵器あるいは兵器

利用可能な核分裂性物質の取得を防止することにも資するものと位置づけられ、現在も継続されてい

る233。旧ソ連非核化支援プロジェクトには、これを主導する米国に加えて、フランス、ドイツ、日本、

英国などが参加した。また国際科学技術センター(ISTC)には、日本、韓国、米国、欧州連合(EU)

などがメンバー国となっている。

2002年のG8カナナスキス・サミットでは「大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG8グローバル・

パートナーシップ」(G8GP)が合意され、G8メンバー国(フランス、ドイツ、日本、英国、米国、

ロシアなど)に加えて、ドナー参加国(donor participants)として豪州、韓国、スウェーデン、ス

イスなどが参加し、ロシアにおける非核化支援を中心としたプロジェクトが行われてきた。2012年末

時点でG8GPは25のパートナーに拡大し、2012年からの10年間に米国は100億円を拠出する計画だと

いう234。

2006年7月のG8サンクトペテルブルク・サミットでは、米露両大統領が「核テロリズムに対抗す

るためのグローバル・イニシアティブ(GICNT)」を提唱し、合意された。GICNTの第1回会合は2006

年10月にモロッコで開催され、G8諸国、豪州、中国、カザフスタン及びトルコが当初参加国として参

加し、「原則に関する声明」(Statement of Principles)を採択した。その後、「原則に関する声明」の

受け入れ国は拡大し、豪州、中国、フランス、ドイツ、インド、イスラエル、日本、韓国、パキスタ

ン、ロシア、スウェーデン、スイス、英国、米国など85カ国(及び4国際機関のオブザーバー)とな

233 なお、米露間の協定が2013年に期限を迎えるCTRについては、ロシアが、国家機密の保全の重要性を強調し

つつ、財政的な支援は必要ないと主張して、プログラムを延長する考えがないとの意思を示している。“Russia

Quits Nunn-Lugar Program,” RIA Novosti, October 10, 2012, http://en.ria.ru/mlitary_news/20121010/

176527879.html.

234 “Global Partnership Against the Spread of Weapons and Materials of Mass Destruction (‘10 Plus 10 Over

10 Program’)” NTI , http://www.nti.org/treaties-and-regimes/global-partnership-against-spread-weapons-

and-materials-mass-destruction-10-plus-10-over-10-program/. なお、2012年12月14日にメキシコが新たに参

加した(ラテンアメリカ諸国で初めて)。

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56

っている235。

表3-3:国際的な取組への参加状況

中国

フランス

ロシア

米国

イギリス

インド

イスラエル

パキスタン

豪州

ドイツ

日本

韓国

スウェーデン

スイス

ソ連非核化支援プロジェクト ○ ○ ○ ○ ○

国際科学技術センター(ISTC) ○ ○ ○ ○

G8グローバル・パートナーシップ(G8GP) ○ ○ ○ ○ ○ ○

核テロリズムに対抗するための

グローバル・イニシアティブ(GICNT) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

235 米国務省ホームページ(http://www.state.gov/t/isn/c37083.htm)を参照。GICNTの重要な多国間会合、ワ

ークショップ及び演習については、米国務省のホームページ(http://www.state.gov/documents/organization/

172982.pdf)も参照。

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57

評価書※

はじめに

本報告書は、2010 年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議終了後から 2012 年末までの動向を

中心に、原則として各国政府の公式見解(NPT 運用検討プロセス、国連総会、国際原子力機関(IAEA)

総会、ジュネーブ軍縮会議などでの演説及び作業文書、その他政府発表の文書)をはじめとする公

開資料を用いて行った調査・分析結果をもとに、核軍縮、核不拡散、核セキュリティ分野における

各国の取組状況を分析・評価し、これを数値化することを試みたものである。

この分野における各国の取組状況を評価すると言っても、そもそも核兵器国と非核兵器国とでは、

核兵器への関わり方が異なることからも分かるように、様々な立場にある国すべてを同一のものさ

しで評価することは困難である。

そこで、本事業では、例えば核兵器国については、核兵器の削減をプラスに評価しつつ、核兵器

の保有数をマイナスに評価する一方で、非核兵器国については、かかる評価を適用しないこととす

るなど、国を一定のグループに区分し、そのグループごとに配分される評点やそれを合計した最高

評点自体が異なる方法を採った。

このような方法で評価を行うことにより、最高評点が異なる国同士の比較はできないものの、配

点の大きい(重要度の高い)項目について一貫した政策・行動を採り続けている、あるいは重要な

貢献を行っている国(またはその逆)を適切に評価するとともに、いかなる国がどの分野について

行動を改善する余地があるのかといったことを明らかにすることとした。

(1)評価方法

本事業の対象国をNPT加盟の有無、核兵器保有の有無に従って、(1)核兵器国(中国、フラン

ス、ロシア、イギリス、アメリカの5カ国)、(2)NPT非締約国(インド、イスラエル、パキスタ

ンの3カ国)、(3)非核兵器国(イラン、シリア、オーストラリア、ブラジル、ドイツ、日本、韓

国、南アフリカ、スウェーデン、スイスの10カ国)の3グループに分けた上で、グループごとに

①核軍縮、②核不拡散、③核セキュリティの各分野の評価項目を定め、9つの区分での採点及び評

価を行った。

なお、北朝鮮については、(1)~(3)とは別に「その他」として整理した。NPT 締約国は、1993 年

及び 2003年の北朝鮮による NPT脱退宣言に対して同国の条約上の地位に関する解釈を明確にして

いない一方で、北朝鮮は、2006 年、2009 年、2013 年の 3 度にわたって核実験を行い、核兵器の保

有を明言しているためである。

※ 「評価書」は、岡田美保により作成された。

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58

【区分別最高評点一覧】 (単位:点)

グループ

分野

(1) 核兵器国 (2) NPT 非締約国 (3) 非核兵器国 その他

中国、 フランス、 ロシア、 イ

ギリス、アメリカ(5 カ国)

インド、イスラエル、パキス

タン (3 カ国)

イラン、 シリア、オーストラリア、

ブラジル、 ドイツ、 日本、

韓国、 南アフリカ、 スウェー

デン、スイス(10 カ国)

北朝鮮

① 核軍縮 101 98 43 98

② 核不拡散 44 47 58 58

③ 核セキュリティ 41 41 41 41

(2)取りまとめ

(a) 各国の評点状況

グループごとの採点結果を分野別にグラフにして示した。

(b) 国別評価

国別の評価を実施し、各国の分野別の評価の内訳を示した。

さらに、核兵器国については、①核軍縮の分野において、核軍縮促進のための6つのポイ

ント(ⅰ. 核兵器保有数、ⅱ. 核兵器削減状況、ⅲ. 「核兵器のない世界」に向けた取組(コ

ミットメント)、ⅳ. 運用政策、ⅴ. 関連条約の署名・批准状況、ⅵ. 透明性)を整理し、各

ポイントに対応する項目の評価をレーダーチャート(クモの巣グラフ)の形で示すことによ

り、より多角的な分析を行った。

(c) その他

国別評価の評点内訳等の「-」は、評価対象外の項目であり、採点からは除いた。

【6つのポイントと評価項目の関係】

6つのポイント 評価項目

ⅰ 核兵器保有数 核兵器の保有数

ⅱ 核兵器削減状況 核兵器の削減状況

ⅲ 「核兵器のない世界」に向

けた取組(コミットメント)

核兵器のない世界に向けた取組、軍縮・不拡散教育・市

民社会との連携

ⅳ 運用政策 核兵器の役割低減、警戒態勢の緩和

ⅴ 関連条約の署名・批准状況 包括的核実験禁止条約(CTBT)、兵器用核分裂性物質生

産禁止条約(FMCT)

ⅵ 透明性 検証措置、不可逆性

(3)今後の取組

本事業では、核兵器国、NPT非締約国及び核兵器の拡散が懸念される国についてはすべての該

当国を調査対象としたが、それ以外の非核保有国については、当面、主な取組が見られる8か国(オ

ーストラリア、ブラジル、ドイツ、日本、韓国、南アフリカ、スウェーデン、スイス)を対象とした。

今後、核兵器を巡る世界情勢も踏まえながら、必要に応じて、調査対象国の拡大や評価方法の改善

を図ることとする。

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59

1.各国の評点状況

(1)核兵器国

①核軍縮

②核不拡散

③核セキュリティ

アメリカ 31.5

イギリス 35

ロシア 24

フランス 28

中国 21

0 20 40 60 80 100

アメリカ 41

イギリス 41

ロシア 36

フランス 41

中国 31

0 10 20 30 40 50

アメリカ 25

イギリス 22

ロシア 17

フランス 21

中国 19

0 10 20 30 40

最高評点:101 点

最高評点:44 点

最高評点:41 点

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60

(2)NPT 非締約国

①核軍縮

②核不拡散

③核セキュリティ

パキスタン 7

イスラエル 9

インド 16

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

パキスタン 6

イスラエル 12

インド 13

0 10 20 30 40 50

パキスタン 14

イスラエル 16

インド 14

0 10 20 30 40

最高評点:98 点

最高評点:47 点

最高評点:41 点

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61

(3)非核兵器国

①核軍縮

②核不拡散

③核セキュリティ

スイス 29 スウェーデン 28 南アフリカ 26 韓国 25 日本 30 ドイツ 24 ブラジル 27 オーストラリア 28 シリア 15 イラン 18

0 10 20 30 40 50

スイス 44 スウェーデン 49 南アフリカ 46 韓国 51 日本 53 ドイツ 53 ブラジル 40 オーストラリア 54 シリア 18 イラン 20

0 10 20 30 40 50 60

スイス 22

スウェーデン 36

南アフリカ 29

韓国 35

日本 29

ドイツ 32

ブラジル 25

オーストラリア 34

シリア 4

イラン 8

0 10 20 30 40

最高評点:58 点

最高評点:41 点

最高評点:43 点

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62

2.国別評価

【核兵器国】

核兵器国① 中 国

1.総合評価

中国は、2012 年 1 月時点で約 240 発の核弾頭を保有しており、核戦力のさらなる増強を進めて

いる。中国は、米露に比べれば保有数は少ないものの、現段階では削減及び透明性に取り組んでい

ない。他方、核不拡散分野では、輸出管理の国内体制が相対的に弱く、核セキュリティ分野では、

兵器級核分裂性物質の保有などを反映した評価となった。

2.評点内訳

(1)核軍縮

項目 観点別評価 評点

核兵器の保有数 (核兵器国) -10/-20 21/101

核兵器のない世界へ

のコミットメント

国連総会での投票行動 4/6

核兵器禁止条約決議への投票行動 2/2

重要な政策意図の表明 0/3

削減状況

過去 5 年間における核兵器削減の実施 0/15

核兵器の削減に関する具体的な計画 0/3

核兵器能力の強化・近代化傾向 2/4

役割低減

安全保障戦略・戦略における位置付け 1/8

唯一の目的・先行不使用の宣言 3/3

消極的安全保証 2/2

非核兵器地帯条約・議定書の署名・批准 3/3

警戒態勢の低減 3/4

包括的核実験禁止条

約(CTBT)

署名・批准 2/4

発効までの核実験モラトリアム 2/3

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)

準備委員会への協力・貢献

1/2

検証体制構築への貢献 1/2

核実験 2/3

兵器用核分裂性物質

生 産 禁 止 条 約

(FMCT))

早期交渉開始への取組 1/5

条約成立までの生産モラトリアム 1/3

検証措置発展への貢献 0/2

透明性 1/6

検証措置 核兵器の削減に対する検証の受入・履行 0/3

核兵器の削減検証の研究開発努力 0/1

核分裂性物質に対する IAEA 査察受入 0/3

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63

不可逆性

弾頭・運搬手段の廃棄・廃棄計画 0/3

核関連施設の閉鎖・平和目的転換 0/2

軍事目的に不要な物質の廃棄・転換 0/2

軍縮・不拡散教育 0/4

(2)核不拡散

不拡散義務の遵守 NPT 加盟 10/10 31/44

第1条(核兵器国の義務)、第2条(非

核兵器国の義務)、関連安保理決議の遵

7/7

非核兵器地帯条約への署名・批准 -

保障措置

(非核兵器国)

包括的保障措置協定の遵守 -

追加議定書の署名・批准・実施 -

統合保障措置への移行状況 -

保障措置協定の遵守 -

保障措置(核兵器

国・非 NPT)

平和目的施設への保障措置の適用 3/3

追加議定書の署名・批准 3/4

IAEA との協力 保障措置強化に向けた努力 1/3

IAEA への特別拠出金 0/1

輸出管理措置 国内実施体制の整備 3/5

追加議定書締結の条件化 0/2

北朝鮮・イランに対する安保理決議履行 1/3

拡散に対する安全保障構想(PSI)への

参加

0/2

原子力平和利用の透

明性

平和利用活動に関する報告 2/2

プルトニウム管理に関する報告 1/2

(3)核セキュリティ

物質量・貯蔵施設数 -9/-16 19/41

条約加入・国内体制 核物質防護条約、改正条約 3/3

核テロ防止条約 2/2

原子力安全条約 2/2

原子力事故早期通報条約 2/2

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理

の安全に関する条約

2/2

原子力事故又は放射線緊急事態の場合

における援助に関する条約

2/2

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64

IAEAガイドライン「核物質・原子力

施設の物理的防護に関する核セキュリ

ティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)の反

0/4

国内実施体制 4/4

安全水準維持 高濃縮ウラン(HEU)最小限化 3/4

物質不法取引防止措置の履行 4/5

IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れ 0/2

核セキュリティ基金 2/2

核鑑識技術の調査・開発 0/2

アウトリーチ活動 1/2

協調的脅威削減プログラム(CTR)、G8

グローバル・パートナーシップ(G8GP)、

核テロに対抗するためのグローバル・イ

ニシアティブ(GICNT)、国際科学技術

センター(ISTC)、核セキュリティ・サ

ミットなどへの積極性

1/3

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65

核兵器国② フランス

1.総合評価

フランスは、2012 年 1 月時点で約 300 発の核弾頭を保有しており、核戦力の削減に取り組むと

同時に、削減した核戦力の抑止力を維持するために運用面での効率化を図っている。核不拡散分野

では、IAEA 体制への貢献度や輸出管理制度の整備状況、核セキュリティ分野では、兵器級核分裂

性物質の保有量は多いものの,各種の枠組みへの関与等が評価を押し上げている。

2.評点内訳

(1)核軍縮

項目 観点別評価 評点

核兵器の保有数 (核兵器国) -10/-20 28/101

核兵器のない世界

へのコミットメン

国連総会での投票行動 2/6

核兵器禁止条約決議への投票行動 0/2

重要な政策意図の表明 0/3

削減状況

過去 5 年間における核兵器削減の実施 2/15

核兵器の削減に関する具体的な計画 0/3

核兵器能力の強化・近代化傾向 3/4

役割低減

安全保障戦略・戦略における位置付け 1/8

唯一の目的・先行不使用の宣言 0/3

消極的安全保証 1/2

非核兵器地帯条約・議定書の署名・批准 3/3

警戒態勢の低減 2/4

包括的核実験禁止

条約(CTBT)

署名・批准 4/4

発効までの核実験モラトリアム 3/3

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)

準備委員会への協力・貢献

2/2

検証体制構築への貢献 2/2

核実験 2/3

兵器用核分裂性物

質生産禁止条約

(FMCT)

早期交渉開始への取組 3/5

条約成立までの生産モラトリアム 2/3

検証措置発展への貢献 1/2

透明性 2/6

検証措置 核兵器の削減に対する検証の受入・履行 0/3

核兵器の削減検証の研究開発努力 0/1

核分裂性物質に対する IAEA 査察受入 0/3

不可逆性

弾頭・運搬手段の廃棄・廃棄計画 1/3

核関連施設の閉鎖・平和目的転換 1/2

軍事目的に不要な物質の廃棄・転換 0/2

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66

軍縮・不拡散教育 1/4

(2)核不拡散

不拡散義務の遵守 NPT 加盟 10/10 41/44

第1条(核兵器国の義務)、第2条(非

核兵器国の義務)、関連安保理決議の遵

7/7

非核兵器地帯条約への署名・批准 -

保障措置

(非核兵器国)

包括的保障措置協定の遵守 -

追加議定書の署名・批准・実施 -

統合保障措置への移行状況 -

保障措置協定の遵守 -

保障措置(核兵器

国・非 NPT)

平和目的施設への保障措置の適用 3/3

追加議定書の署名・批准 3/4

IAEA との協力 保障措置強化に向けた努力 3/3

IAEA への特別拠出金 1/1

輸出管理措置 国内実施体制の整備 5/5

追加議定書締結の条件化 0/2

北朝鮮・イランに対する安保理決議履行 3/3

拡散に対する安全保障構想(PSI)への

参加

2/2

原子力平和利用の

透明性

平和利用活動に関する報告 2/2

プルトニウム管理に関する報告 2/2

(3)核セキュリティ

物質量・貯蔵施設数 -12/-16 21/41

条約加入・国内体制 核物質防護条約、改正条約 2/3

核テロ防止条約 1/2

原子力安全条約 2/2

原子力事故早期通報条約 2/2

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理

の安全に関する条約

2/2

原子力事故又は放射線緊急事態の場合

における援助に関する条約

2/2

IAEAガイドライン「核物質・原子力

施設の物理的防護に関する核セキュリ

ティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)の反

2/4

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67

国内実施体制 1/4

安全水準維持 高濃縮ウラン(HEU)最小限化 4/4

物質不法取引防止措置の履行 4/5

IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れ 2/2

核セキュリティ基金 2/2

核鑑識技術の調査・開発 2/2

アウトリーチ活動 2/2

協調的脅威削減プログラム(CTR)、G8

グローバル・パートナーシップ(G8GP)、

核テロに対抗するためのグローバル・イ

ニシアティブ(GICNT)、国際科学技術

センター(ISTC)、核セキュリティ・サ

ミットなどへの積極性

3/3

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68

核兵器国③ ロシア

1.総合評価

ロシアは、2012 年 1 月時点で約 10,000 発の核弾頭を保有する最大の核兵器国であるが、米国と

ともに新戦略兵器削減条約(新 START)下で核戦力の削減を進めると同時に、米国及び北大西洋

条約機構(NATO)の進めるミサイル防衛計画に対応した多弾頭核戦力の質的向上を図っている。

核不拡散分野では、IAEA 体制への貢献度、核セキュリティ分野では、兵器級核分裂性物質の保有

量の多さ等を反映した評価となった。

2.評点内訳

(1)核軍縮

項目 観点別評価 評点

核兵器の保有数 (核兵器国) -20/-20 24/101

核兵器のない世界

へのコミットメン

国連総会での投票行動 3/6

核兵器禁止条約決議への投票行動 0/2

重要な政策意図の表明 0/3

削減状況

過去 5 年間における核兵器削減の実施 5/15

核兵器の削減に関する具体的な計画 0/3

核兵器能力の強化・近代化傾向 3/4

役割低減

安全保障戦略・戦略における位置付け 1/8

唯一の目的・先行不使用の宣言 0/3

消極的安全保証 1/2

非核兵器地帯条約・議定書の署名・批

2/3

警戒態勢の低減 1/4

包括的核実験禁止

条約(CTBT)

署名・批准 4/4

発効までの核実験モラトリアム 2/3

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)

準備委員会への協力・貢献

2/2

検証体制構築への貢献 2/2

核実験 2/3

兵器用核分裂性物

質 生 産 禁 止 条 約

(FMCT)

早期交渉開始への取組 1/5

条約成立までの生産モラトリアム 3/3

検証措置発展への貢献 0/2

透明性 2/6

検証措置 核兵器の削減に対する検証の受入・履

3/3

核兵器の削減検証の研究開発努力 0/1

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69

核分裂性物質に対する IAEA 査察受入 0/3

不可逆性

弾頭・運搬手段の廃棄・廃棄計画 3/3

核関連施設の閉鎖・平和目的転換 1/2

軍事目的に不要な物質の廃棄・転換 2/2

軍縮・不拡散教育 1/4

(2)核不拡散

不拡散義務の遵守 NPT 加盟 10/10 36/44

第1条(核兵器国の義務)、第2条(非

核兵器国の義務)、関連安保理決議の遵

7/7

非核兵器地帯条約への署名・批准 -

保障措置

(非核兵器国)

包括的保障措置協定の遵守 -

追加議定書の署名・批准・実施 -

統合保障措置への移行状況 -

保障措置協定の遵守 -

保障措置(核兵器

国・非 NPT)

平和目的施設への保障措置の適用 3/3

追加議定書の署名・批准 3/4

IAEA との協力 保障措置強化に向けた努力 1/3

IAEA への特別拠出金 1/1

輸出管理措置 国内実施体制の整備 4/5

追加議定書締結の条件化 0/2

北朝鮮・イランに対する安保理決議履行 2/3

拡散に対する安全保障構想(PSI)への

参加

2/2

原子力平和利用の

透明性

平和利用活動に関する報告 2/2

プルトニウム管理に関する報告 1/2

(3)核セキュリティ

物質量・貯蔵施設

-16/-16 17/41

条約加入・国内体

核物質防護条約、改正条約 3/3

核テロ防止条約 2/2

原子力安全条約 2/2

原子力事故早期通報条約 2/2

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理

の安全に関する条約

2/2

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70

原子力事故又は放射線緊急事態の場合

における援助に関する条約

2/2

IAEAガイドライン「核物質・原子力

施設の物理的防護に関する核セキュリ

ティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)の反

0/4

国内実施体制 4/4

安全水準維持 高濃縮ウラン(HEU)最小限化 4/4

物質不法取引防止措置の履行 4/5

IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れ 0/2

核セキュリティ基金 2/2

核鑑識技術の調査・開発 2/2

アウトリーチ活動 1/2

協調的脅威削減プログラム(CTR)、G8

グローバル・パートナーシップ(G8GP)、

核テロに対抗するためのグローバル・イ

ニシアティブ(GICNT)、国際科学技術

センター(ISTC)、核セキュリティ・サ

ミットなどへの積極性

3/3

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71

核兵器国④ イギリス

1.総合評価

イギリスは、2012 年 1 月時点で約 225 発の核弾頭を保有しており、数的な削減を進めてきたほ

か、運搬手段を潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)のみに限定するとともにさらなる削減への具体

的な計画を有している。保有数、削減状況等全ポイントにおいてバランス良く評点を重ね、核軍縮

では高い評点であった。

核不拡散分野では、IAEA 体制への貢献度や輸出管理国内体制の整備状況などを反映して、核セ

キュリティ分野では、兵器級核分裂性物質保有量のほか各種取組への関与の積極性を反映して、い

ずれも高い評点だった。

2.評点内訳

(1)核軍縮

項目 観点別評価 評点

核兵器の保有数 (核兵器国) -10/-20 35/101

核兵器のない世界

へのコミットメン

国連総会での投票行動 2/6

核兵器禁止条約決議への投票行動 0/2

重要な政策意図の表明 0/3

削減状況

過去 5 年間における核兵器削減の実施 4/15

核兵器の削減に関する具体的な計画 0/3

核兵器能力の強化・近代化傾向 3/4

役割低減

安全保障戦略・戦略における位置付け 1/8

唯一の目的・先行不使用の宣言 0/3

消極的安全保証 1/2

非核兵器地帯条約・議定書の署名・批准 3/3

警戒態勢の低減 2/4

包括的核実験禁止

条約(CTBT)

署名・批准 4/4

発効までの核実験モラトリアム 2/3

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)

準備委員会への協力・貢献

1/2

検証体制構築への貢献 2/2

核実験 2/3

兵器用核分裂性物

質生産禁止条約

(FMCT)

早期交渉開始への取組 3/5

条約成立までの生産モラトリアム 2/3

検証措置発展への貢献 1/2

透明性 5/6

検証措置 核兵器の削減に対する検証の受入・履行 0/3

核兵器の削減検証の研究開発努力 1/1

核分裂性物質に対する IAEA 査察受入 1/3

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72

不可逆性

弾頭・運搬手段の廃棄・廃棄計画 1/3

核関連施設の閉鎖・平和目的転換 1/2

軍事目的に不要な物質の廃棄・転換 1/2

軍縮・不拡散教育 2/4

(2)核不拡散

不拡散義務の遵守 NPT 加盟 10/10 41/44

第1条(核兵器国の義務)、第2条(非

核兵器国の義務)、関連安保理決議の遵

7/7

非核兵器地帯条約への署名・批准 -

保障措置

(非核兵器国)

包括的保障措置協定の遵守 -

追加議定書の署名・批准・実施 -

統合保障措置への移行状況 -

保障措置協定の遵守 -

保障措置(核兵器

国・非 NPT)

平和目的施設への保障措置の適用 3/3

追加議定書の署名・批准 3/4

IAEA との協力 保障措置強化に向けた努力 3/3

IAEA への特別拠出金 1/1

輸出管理措置 国内実施体制の整備 5/5

追加議定書締結の条件化 0/2

北朝鮮・イランに対する安保理決議履行 3/3

拡散に対する安全保障構想(PSI)への

参加

2/2

原子力平和利用の

透明性

平和利用活動に関する報告 2/2

プルトニウム管理に関する報告 2/2

(3)核セキュリティ

物質量・貯蔵施設

-12/-16 22/41

条約加入・国内体

核物質防護条約、改正条約 3/3

核テロ防止条約 2/2

原子力安全条約 2/2

原子力事故早期通報条約 2/2

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理

の安全に関する条約

2/2

原子力事故又は放射線緊急事態の場合

における援助に関する条約

2/2

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73

IAEAガイドライン「核物質・原子力

施設の物理的防護に関する核セキュリ

ティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)の反

2/4

国内実施体制 4/4

安全水準維持 高濃縮ウラン(HEU)最小限化 0/4

物質不法取引防止措置の履行 4/5

IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れ 2/2

核セキュリティ基金 2/2

核鑑識技術の調査・開発 2/2

アウトリーチ活動 2/2

協調的脅威削減プログラム(CTR)、G8

グローバル・パートナーシップ(G8GP)、

核テロに対抗するためのグローバル・イ

ニシアティブ(GICNT)、国際科学技術

センター(ISTC)、核セキュリティ・サ

ミットなどへの積極性

3/3

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74

核兵器国⑤ 米 国

1.総合評価

米国は、2012 年 1 月時点で約 8,000 発の核弾頭を保有する第二の核兵器国であるが、ロシアとと

もに新 START 条約の下で戦略(核)兵器の削減を進めている。さらなる削減の意向を表明する一

方で、核戦力の安全性及び信頼性を維持するための核兵器インフラの近代化を模索、戦略運搬手段

の更新に向けた研究・開発計画を維持するなど、核戦力の維持・強化にも積極的である。核軍縮で

はこうした二面性があるものの、核不拡散分野では IAEA への貢献度や輸出管理体制の信頼性の

高さを反映して、また、核セキュリティ分野では、地球的規模脅威削減イニシアティブ(GTRI)な

どの枠組み構築への積極性、2012 年 4 月の初の核セキュリティ・サミット開催などを反映して、高

い評点となった。

2.評点内訳

(1)核軍縮

項目 観点別評価 評点

核兵器の保有数 (核兵器国) -19/-20 31.5/101

核兵器のない世界

へのコミットメン

国連総会での投票行動 2/6

核兵器禁止条約決議への投票行動 0/2

重要な政策意図の表明 1/3

削減状況

過去 5 年間における核兵器削減の実施 5/15

核兵器の削減に関する具体的な計画 1/3

核兵器能力の強化・近代化傾向 3/4

役割低減

安全保障戦略・戦略における位置付け 1/8

唯一の目的・先行不使用の宣言 2/3

消極的安全保証 1/2

非核兵器地帯条約・議定書の署名・批准 1/3

警戒態勢の低減 1/4

包括的核実験禁止

条約(CTBT)

署名・批准 2/4

発効までの核実験モラトリアム 2/3

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)

準備委員会への協力・貢献

0.5/2

検証体制構築への貢献 2/2

核実験 2/3

兵器用核分裂性物

質生産禁止条約

(FMCT)

早期交渉開始への取組 3/5

条約成立までの生産モラトリアム 2/3

検証措置発展への貢献 1/2

透明性 5/6

検証措置 核兵器の削減に対する検証の受入・履行 3/3

核兵器の削減検証の研究開発努力 1/1

Page 79: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

75

核分裂性物質に対する IAEA 査察受入 1/3

不可逆性

弾頭・運搬手段の廃棄・廃棄計画 3/3

核関連施設の閉鎖・平和目的転換 1/2

軍事目的に不要な物質の廃棄・転換 2/2

軍縮・不拡散教育 2/4

(2)核不拡散

不拡散義務の遵守 NPT 加盟 10/10 41/44

第1条(核兵器国の義務)、第2条(非

核兵器国の義務)、関連安保理決議の遵

7/7

非核兵器地帯条約への署名・批准 -

保障措置

(非核兵器国)

包括的保障措置協定の遵守 -

追加議定書の署名・批准・実施 -

統合保障措置への移行状況 -

保障措置協定の遵守 -

保障措置(核兵器

国・非 NPT)

平和目的施設への保障措置の適用 3/3

追加議定書の署名・批准 3/4

IAEA との協力 保障措置強化に向けた努力 3/3

IAEA への特別拠出金 1/1

輸出管理措置 国内実施体制の整備 5/5

追加議定書締結の条件化 1/2

北朝鮮・イランに対する安保理決議履行 3/3

拡散に対する安全保障構想(PSI)への

参加

2/2

原子力平和利用の

透明性

平和利用活動に関する報告 2/2

プルトニウム管理に関する報告 1/2

(3)核セキュリティ

物質量・貯蔵施設

-12/-16 25/41

条約加入・国内体

核物質防護条約、改正条約 2/3

核テロ防止条約 1/2

原子力安全条約 2/2

原子力事故早期通報条約 2/2

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理

の安全に関する条約

2/2

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76

原子力事故又は放射線緊急事態の場合

における援助に関する条約

2/2

IAEAガイドライン「核物質・原子力

施設の物理的防護に関する核セキュリ

ティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)の反

2/4

国内実施体制 4/4

安全水準維持 高濃縮ウラン(HEU)最小限化 4/4

物質不法取引防止措置の履行 5/5

IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れ 2/2

核セキュリティ基金 2/2

核鑑識技術の調査・開発 2/2

アウトリーチ活動 2/2

協調的脅威削減プログラム(CTR)、G8

グローバル・パートナーシップ(G8GP)、

核テロに対抗するためのグローバル・イ

ニシアティブ(GICNT)、国際科学技術

センター(ISTC)、核セキュリティ・サ

ミットなどへの積極性

3/3

Page 81: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

77

《参考》核軍縮促進のための6ポイントの核兵器国の取組状況

核軍縮を促進するためには、核兵器国による核兵器の削減や運用政策の変更、核軍縮につながる

多国間枠組みへの積極的な関与、「核兵器なき世界」へ向けた取組(コミットメント)の強化、核戦

力等に関する透明性の推進が不可欠である。これらのポイントについて各核兵器国の取組状況をレ

ーダーチャートで示すと下記のようになる。中国については、削減への取組及び透明性、フランス

については透明性、ロシア及び米国については核戦力の更なる削減について改善の余地があると言

えよう。イギリスについては、全体的にバランスのとれた形で核軍縮に取り組んでいることが窺え

る。

中国

フランス

0

50

100 保有数

削減状況

コミットメント

運用政策

署名・批准状況

透明性

0

50

100 保有数

削減状況

コミットメント

運用政策

署名・批准状況

透明性

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78

ロシア

イギリス

米国

0

50

100 保有数

削減状況

コミットメント

運用政策

署名・批准状況

透明性

0

50

100 保有数

削減状況

コミットメント

運用政策

署名・批准状況

透明性

0

50

100 保有数

削減状況

コミットメント

運用政策

署名・批准状況

透明性

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79

NPT 非締約国① インド

1.総合評価

インドは、NPT の枠外にとどまりつつ、2012 年 1 月時点で約 80-100 発程度の核弾頭を保有して

いるとみられ、削減には未着手である。また、包括的核実験禁止条約(CTBT)発効までの核実験

モラトリアムは行っているものの未署名である。核不拡散については、輸出管理の国内措置など部

分的には評価できる点もあるものの IAEA との保障措置協定には消極的であることなどから低めの

評点にとどまる一方、核セキュリティにおけるパフォーマンスは相対的に高くなっている。

2.評点内訳

(1)核軍縮

項目 観点別評価 評点

核兵器の保有数 (核兵器国) -6/-20 16/98

核兵器のない世界

へのコミットメン

国連総会での投票行動 2/6

核兵器禁止条約決議への投票行動 2/2

重要な政策意図の表明 0/3

削減状況

過去 5 年間における核兵器削減の実施 0/15

核兵器の削減に関する具体的な計画 0/3

核兵器能力の強化・近代化傾向 2/4

役割低減

安全保障戦略・戦略における位置付け 1/8

唯一の目的・先行不使用の宣言 3/3

消極的安全保証 2/2

非核兵器地帯条約・議定書の署名・批准 -

警戒態勢の低減 3/4

包括的核実験禁止

条約(CTBT)

署名・批准 0/4

発効までの核実験モラトリアム 2/3

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)

準備委員会への協力・貢献

0/2

検証体制構築への貢献 0/2

核実験 2/3

兵器用核分裂性物

質生産禁止条約

(FMCT)

早期交渉開始への取組 1/5

条約成立までの生産モラトリアム 0/3

検証措置発展への貢献 0/2

透明性 1/6

検証措置 核兵器の削減に対する検証の受入・履行 0/3

核兵器の削減検証の研究開発努力 0/1

核分裂性物質に対する IAEA 査察受入 0/3

不可逆性 弾頭・運搬手段の廃棄・廃棄計画 0/3

Page 84: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

80

核関連施設の閉鎖・平和目的転換 0/2

軍事目的に不要な物質の廃棄・転換 0/2

軍縮・不拡散教育 1/4

(2)核不拡散

不拡散義務の遵守 NPT 加盟 0/10 13/47

第1条(核兵器国の義務)、第2条(非

核兵器国の義務)、関連安保理決議の遵

2/7

非核兵器地帯条約への署名・批准 0/3

保障措置

(非核兵器国)

包括的保障措置協定の遵守 -

追加議定書の署名・批准・実施 -

統合保障措置への移行状況 -

保障措置協定の遵守 -

保障措置(核兵器

国・非 NPT)

平和目的施設への保障措置の適用 2/3

追加議定書の署名・批准 1/4

IAEA との協力 保障措置強化に向けた努力 0/3

IAEA への特別拠出金 0/1

輸出管理措置 国内実施体制の整備 4/5

追加議定書締結の条件化 0/2

北朝鮮・イランに対する安保理決議履行 2/3

拡散に対する安全保障構想(PSI)への

参加

0/2

原子力平和利用の

透明性

平和利用活動に関する報告 2/2

プルトニウム管理に関する報告 0/2

(3)核セキュリティ

物質量・貯蔵施設

-7/-16 14/41

条約加入・国内体

核物質防護条約、改正条約 3/3

核テロ防止条約 2/2

原子力安全条約 2/2

原子力事故早期通報条約 2/2

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理

の安全に関する条約

0/2

原子力事故又は放射線緊急事態の場合

における援助に関する条約

2/2

IAEAガイドライン「核物質・原子力 0/4

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81

施設の物理的防護に関する核セキュリ

ティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)の反

国内実施体制 4/4

安全水準維持 高濃縮ウラン(HEU)最小限化 0/4

物質不法取引防止措置の履行 4/5

IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れ 0/2

核セキュリティ基金 0/2

核鑑識技術の調査・開発 0/2

アウトリーチ活動 1/2

協調的脅威削減プログラム(CTR)、G8

グローバル・パートナーシップ(G8GP)、

核テロに対抗するためのグローバル・イ

ニシアティブ(GICNT)、国際科学技術

センター(ISTC)、核セキュリティ・サ

ミットなどへの積極性

1/3

Page 86: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

82

NPT 非締約国② イスラエル

1.総合評価

イスラエルは NPT 未加盟国であるものの、イスラエル政府は、自国の核保有について一貫して

「核の不透明性」政策(核保有を肯定も否定もしない政策)をとっているが、80 発程度の核兵器を

保有していると推測されているため、核軍縮に関する評点は低いものにとどまった。核不拡散につ

いても、評点は低かったものの、核セキュリティにおけるパフォーマンスは相対的に高かった。

2.評点内訳

(1)核軍縮

項目 観点別評価 評点

核兵器の保有数 (核兵器国) -6/-20 9/98

核兵器のない世界

へのコミットメン

国連総会での投票行動 1/6

核兵器禁止条約決議への投票行動 0/2

重要な政策意図の表明 0/3

削減状況

過去 5 年間における核兵器削減の実施 0/15

核兵器の削減に関する具体的な計画 0/3

核兵器能力の強化・近代化傾向 2/4

役割低減

安全保障戦略・戦略における位置付け 1/8

唯一の目的・先行不使用の宣言 0/3

消極的安全保証 0/2

非核兵器地帯条約・議定書の署名・批准 -

警戒態勢の低減 2/4

包括的核実験禁止

条約(CTBT)

署名・批准 2/4

発効までの核実験モラトリアム 0/3

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)

準備委員会への協力・貢献

1/2

検証体制構築への貢献 2/2

核実験 2/3

兵器用核分裂性物

質生産禁止条約

(FMCT)

早期交渉開始への取組 1/5

条約成立までの生産モラトリアム 0/3

検証措置発展への貢献 0/2

透明性 0/6

検証措置 核兵器の削減に対する検証の受入・履行 0/3

核兵器の削減検証の研究開発努力 0/1

核分裂性物質に対する IAEA 査察受入 0/3

不可逆性

弾頭・運搬手段の廃棄・廃棄計画 0/3

核関連施設の閉鎖・平和目的転換 0/2

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83

軍事目的に不要な物質の廃棄・転換 0/2

軍縮・不拡散教育 1/4

(2)核不拡散

不拡散義務の遵守 NPT 加盟 0/10 12/47

第1条(核兵器国の義務)、第2条(非

核兵器国の義務)、関連安保理決議の遵

3/7

非核兵器地帯条約への署名・批准 0/3

保障措置

(非核兵器国)

包括的保障措置協定の遵守 -

追加議定書の署名・批准・実施 -

統合保障措置への移行状況 -

保障措置協定の遵守 -

保障措置(核兵器

国・非 NPT)

平和目的施設への保障措置の適用 1/3

追加議定書の署名・批准 0/4

IAEA との協力 保障措置強化に向けた努力 0/3

IAEA への特別拠出金 0/1

輸出管理措置 国内実施体制の整備 5/5

追加議定書締結の条件化 0/2

北朝鮮・イランに対する安保理決議履行 2/3

拡散に対する安全保障構想(PSI)への

参加

1/2

原子力平和利用の

透明性

平和利用活動に関する報告 0/2

プルトニウム管理に関する報告 0/2

(3)核セキュリティ

物質量・貯蔵施設

-6/-16 16/41

条約加入・国内体

核物質防護条約、改正条約 3/3

核テロ防止条約 1/2

原子力安全条約 1/2

原子力事故早期通報条約 2/2

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理

の安全に関する条約

0/2

原子力事故又は放射線緊急事態の場合

における援助に関する条約

2/2

IAEAガイドライン「核物質・原子力

施設の物理的防護に関する核セキュリ

0/4

Page 88: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

84

ティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)の反

国内実施体制 3/4

安全水準維持 高濃縮ウラン(HEU)最小限化 3/4

物質不法取引防止措置の履行 4/5

IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れ 0/2

核セキュリティ基金 0/2

核鑑識技術の調査・開発 2/2

アウトリーチ活動 0/2

協調的脅威削減プログラム(CTR)、G8

グローバル・パートナーシップ(G8GP)、

核テロに対抗するためのグローバル・イ

ニシアティブ(GICNT)、国際科学技術

センター(ISTC)、核セキュリティ・サ

ミットなどへの積極性

1/3

Page 89: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

85

NPT 非締約国③ パキスタン

1.総合評価

パキスタンは、自国の安全保障上 NPT に加盟することはないとして NPT の枠外にとどまりつつ、

2012 年 1 月時点で 90-110 発程度の核弾頭を保有しているとみられ、削減には未着手である。また、

包括的核実験禁止条約(CTBT)発効までの核実験モラトリアムは行っているものの条約には未署

名であることや低い透明性などから、核軍縮における評点は低かった。核不拡散についても、輸出

管理の国内措置の不十分さなどから評点が低かった一方、核セキュリティに対するパフォーマンス

は相対的に高かった。

2.評点内訳

(1)核軍縮

項目 観点別評価 評点

核兵器の保有数 (核兵器国) -8/-20 7/98

核兵器のない世界

へのコミットメン

国連総会での投票行動 3/6

核兵器禁止条約決議への投票行動 2/2

重要な政策意図の表明 0/3

削減状況

過去 5 年間における核兵器削減の実施 0/15

核兵器の削減に関する具体的な計画 0/3

核兵器能力の強化・近代化傾向 0/4

役割低減

安全保障戦略・戦略における位置付け 1/8

唯一の目的・先行不使用の宣言 0/3

消極的安全保証 2/2

非核兵器地帯条約・議定書の署名・批准 -

警戒態勢の低減 3/4

包括的核実験禁止

条約(CTBT)

署名・批准 0/4

発効までの核実験モラトリアム 2/3

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)

準備委員会への協力・貢献

0/2

検証体制構築への貢献 0/2

核実験 2/3

兵器用核分裂性物

質生産禁止条約

(FMCT)

早期交渉開始への取組 0/5

条約成立までの生産モラトリアム 0/3

検証措置発展への貢献 0/2

透明性 0/6

検証措置 核兵器の削減に対する検証の受入・履行 0/3

核兵器の削減検証の研究開発努力 0/1

核分裂性物質に対する IAEA 査察受入 0/3

不可逆性 弾頭・運搬手段の廃棄・廃棄計画 0/3

Page 90: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

86

核関連施設の閉鎖・平和目的転換 0/2

軍事目的に不要な物質の廃棄・転換 0/2

軍縮・不拡散教育 0/4

(2)核不拡散

不拡散義務の遵守 NPT 加盟 0/10 6/47

第1条(核兵器国の義務)、第2条(非

核兵器国の義務)、関連安保理決議の遵

2/7

非核兵器地帯条約への署名・批准 0/3

保障措置

(非核兵器国)

包括的保障措置協定の遵守 -

追加議定書の署名・批准・実施 -

統合保障措置への移行状況 -

保障措置協定の遵守 -

保障措置(核兵器

国・非 NPT)

平和目的施設への保障措置の適用 1/3

追加議定書の署名・批准 0/4

IAEA との協力 保障措置強化に向けた努力 0/3

IAEA への特別拠出金 0/1

輸出管理措置 国内実施体制の整備 1/5

追加議定書締結の条件化 0/2

北朝鮮・イランに対する安保理決議履行 0/3

拡散に対する安全保障構想(PSI)への

参加

0/2

原子力平和利用の

透明性

平和利用活動に関する報告 2/2

プルトニウム管理に関する報告 0/2

(3)核セキュリティ

物質量・貯蔵施設

-6/-16 14/41

条約加入・国内体

核物質防護条約、改正条約 2/3

核テロ防止条約 0/2

原子力安全条約 2/2

原子力事故早期通報条約 2/2

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理

の安全に関する条約

0/2

原子力事故又は放射線緊急事態の場合

における援助に関する条約

2/2

IAEAガイドライン「核物質・原子力 0/4

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87

施設の物理的防護に関する核セキュリ

ティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)の反

国内実施体制 4/4

安全水準維持 高濃縮ウラン(HEU)最小限化 0/4

物質不法取引防止措置の履行 4/5

IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れ 0/2

核セキュリティ基金 0/2

核鑑識技術の調査・開発 2/2

アウトリーチ活動 1/2

協調的脅威削減プログラム(CTR)、G8

グローバル・パートナーシップ(G8GP)、

核テロに対抗するためのグローバル・イ

ニシアティブ(GICNT)、国際科学技術

センター(ISTC)、核セキュリティ・サ

ミットなどへの積極性

1/3

Page 92: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

88

【非核兵器国】

非核兵器国① イラン

1.総合評価

イランは 1970 年に非核兵器国として NPT に加盟し、その後 IAEA と包括的保障措置協定も締結

したものの、少なくとも 1990 年代以降、核の闇市場からウラン濃縮技術などを調達して IAEA に

未申告の施設を建設し、また IAEA に未申告でウラン濃縮やプルトニウム分離などを行なっていた

ことが判明している。イランは核兵器取得の意思はないと主張、濃縮・再処理技術の取得も NPT

では禁じられていないとして濃縮活動を続けている。核軍縮、核不拡散、核セキュリティに深刻な

打撃を与えているといえよう。

2.評点内訳

(1)核軍縮

項目 観点別評価 評点

核兵器の保有数 (核兵器国) - 18/43

核兵器のない世界

へのコミットメン

国連総会での投票行動 5/6

核兵器禁止条約決議への投票行動 2/2

重要な政策意図の表明 0/3

削減状況

過去 5 年間における核兵器削減の実施 -

核兵器の削減に関する具体的な計画 -

核兵器能力の強化・近代化傾向 -

役割低減

安全保障戦略・戦略における位置付け 8/8

唯一の目的・先行不使用の宣言 -

消極的安全保証 -

非核兵器地帯条約・議定書の署名・批准 -

警戒態勢の低減 -

包括的核実験禁止

条約(CTBT)

署名・批准 2/4

発効までの核実験モラトリアム -

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)

準備委員会への協力・貢献

0/2

検証体制構築への貢献 1/2

核実験 -

兵器用核分裂性物

質生産禁止条約

(FMCT)

早期交渉開始への取組 0/5

条約成立までの生産モラトリアム -

検証措置発展への貢献 0/2

透明性 -

検証措置 核兵器の削減に対する検証の受入・履行 -

核兵器の削減検証の研究開発努力 0/1

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89

核分裂性物質に対する IAEA 査察受入 -

不可逆性

弾頭・運搬手段の廃棄・廃棄計画 0/2

核関連施設の閉鎖・平和目的転換 0/2

軍事目的に不要な物質の廃棄・転換 -

軍縮・不拡散教育 0/4

(2)核不拡散

不拡散義務の遵守 NPT 加盟 10/10 20/58

第1条(核兵器国の義務)、第2条(非

核兵器国の義務)、関連安保理決議の遵

3/7

非核兵器地帯条約への署名・批准 0/3

保障措置

(非核兵器国)

包括的保障措置協定の遵守 4/4

追加議定書の署名・批准・実施 1/5

統合保障措置への移行状況 0/4

保障措置協定の遵守 0/5

保障措置(核兵器

国・非 NPT)

平和目的施設への保障措置の適用 -

追加議定書の署名・批准 -

IAEA との協力 保障措置強化に向けた努力 0/3

IAEA への特別拠出金 0/1

輸出管理措置 国内実施体制の整備 0/5

追加議定書締結の条件化 0/2

北朝鮮・イランに対する安保理決議履行 0/3

拡散に対する安全保障構想(PSI)への

参加

0/2

原子力平和利用の

透明性

平和利用活動に関する報告 1/2

プルトニウム管理に関する報告 1/2

(3)核セキュリティ

物質量・貯蔵施設

0/-16 8/41

条約加入・国内体

核物質防護条約、改正条約 0/3

核テロ防止条約 0/2

原子力安全条約 0/2

原子力事故早期通報条約 2/2

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理

の安全に関する条約

0/2

Page 94: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

90

原子力事故又は放射線緊急事態の場合

における援助に関する条約

2/2

IAEAガイドライン「核物質・原子力

施設の物理的防護に関する核セキュリ

ティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)の反

0/4

国内実施体制 2/4

安全水準維持 高濃縮ウラン(HEU)最小限化 0/4

物質不法取引防止措置の履行 2/5

IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れ 0/2

核セキュリティ基金 0/2

核鑑識技術の調査・開発 0/2

アウトリーチ活動 0/2

協調的脅威削減プログラム(CTR)、G8

グローバル・パートナーシップ(G8GP)、

核テロに対抗するためのグローバル・イ

ニシアティブ(GICNT)、国際科学技術

センター(ISTC)、核セキュリティ・サ

ミットなどへの積極性

0/3

Page 95: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

91

非核兵器国② シリア

1.総合評価

シリアは、NPT 加盟国として原子力を平和利用しつつ、国連総会などの場における核軍縮関連の

決議には積極的に関与しており、核軍縮での評点は比較的高くなっている。とはいえ、IAEA 追加

議定書は未締結であるほか、2007 年に国籍不明機の爆撃によって破壊されたシリア国内の施設が、

IAEA に申告されるべき原子炉であった可能性を後に指摘されており、核不拡散分野、核セキュリ

ティ分野では低い評点となった。

2.評点内訳

(1)核軍縮

項目 観点別評価 評点

核兵器の保有数 (核兵器国) - 15/43

核兵器のない世界

へのコミットメン

国連総会での投票行動 5/6

核兵器禁止条約決議への投票行動 2/2

重要な政策意図の表明 0/3

削減状況

過去 5 年間における核兵器削減の実施 -

核兵器の削減に関する具体的な計画 -

核兵器能力の強化・近代化傾向 -

役割低減

安全保障戦略・戦略における位置付け 8/8

唯一の目的・先行不使用の宣言 -

消極的安全保証 -

非核兵器地帯条約・議定書の署名・批准 -

警戒態勢の低減 -

包括的核実験禁止

条約(CTBT)

署名・批准 0/4

発効までの核実験モラトリアム -

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)

準備委員会への協力・貢献

0/2

検証体制構築への貢献 0/2

核実験 -

兵器用核分裂性物

質生産禁止条約

(FMCT)

早期交渉開始への取組 0/5

条約成立までの生産モラトリアム -

検証措置発展への貢献 0/2

透明性 -

検証措置 核兵器の削減に対する検証の受入・履行 -

核兵器の削減検証の研究開発努力 0/1

核分裂性物質に対する IAEA 査察受入 -

不可逆性

弾頭・運搬手段の廃棄・廃棄計画 0/2

核関連施設の閉鎖・平和目的転換 0/2

Page 96: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

92

軍事目的に不要な物質の廃棄・転換 -

軍縮・不拡散教育 0/4

(2)核不拡散

不拡散義務の遵守 NPT 加盟 10/10 18/58

第1条(核兵器国の義務)、第2条(非

核兵器国の義務)、関連安保理決議の遵

4/7

非核兵器地帯条約への署名・批准 0/3

保障措置

(非核兵器国)

包括的保障措置協定の遵守 4/4

追加議定書の署名・批准・実施 0/5

統合保障措置への移行状況 0/4

保障措置協定の遵守 0/5

保障措置(核兵器

国・非 NPT)

平和目的施設への保障措置の適用 -

追加議定書の署名・批准 -

IAEA との協力 保障措置強化に向けた努力 0/3

IAEA への特別拠出金 0/1

輸出管理措置 国内実施体制の整備 0/5

追加議定書締結の条件化 0/2

北朝鮮・イランに対する安保理決議履行 0/3

拡散に対する安全保障構想(PSI)への

参加

0/2

原子力平和利用の

透明性

平和利用活動に関する報告 0/2

プルトニウム管理に関する報告 0/2

(3)核セキュリティ

物質量・貯蔵施設

0/-16 4/41

条約加入・国内体

核物質防護条約、改正条約 0/3

核テロ防止条約 0/2

原子力安全条約 0/2

原子力事故早期通報条約 1/2

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理

の安全に関する条約

0/2

原子力事故又は放射線緊急事態の場合

における援助に関する条約

1/2

IAEAガイドライン「核物質・原子力

施設の物理的防護に関する核セキュリ

0/4

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93

ティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)の反

国内実施体制 2/4

安全水準維持 高濃縮ウラン(HEU)最小限化 0/4

物質不法取引防止措置の履行 0/5

IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れ 0/2

核セキュリティ基金 0/2

核鑑識技術の調査・開発 0/2

アウトリーチ活動 0/2

協調的脅威削減プログラム(CTR)、G8

グローバル・パートナーシップ(G8GP)、

核テロに対抗するためのグローバル・イ

ニシアティブ(GICNT)、国際科学技術

センター(ISTC)、核セキュリティ・サ

ミットなどへの積極性

0/3

Page 98: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

94

非核兵器国③ オーストラリア

1.総合評価

オーストラリアは、国連総会等における核軍縮関連決議にも積極的に関与しているものの、安全

保障上は米国の核を含む拡大抑止の下にあることなどを核軍縮分野の評価に加味した。核不拡散分

野では、非核兵器地帯条約への積極的な関与から、核セキュリティ分野でも、関連諸条約・諸措置

の着実な実施などから、高い評点となった。

2.評点内訳

(1)核軍縮

項目 観点別評価 評点

核兵器の保有数 (核兵器国) - 28/43

核兵器のない世界

へのコミットメン

国連総会での投票行動 4/6

核兵器禁止条約決議への投票行動 1/2

重要な政策意図の表明 1/3

削減状況

過去 5 年間における核兵器削減の実施 -

核兵器の削減に関する具体的な計画 -

核兵器能力の強化・近代化傾向 -

役割低減

安全保障戦略・戦略における位置付け 5/8

唯一の目的・先行不使用の宣言 -

消極的安全保証 -

非核兵器地帯条約・議定書の署名・批准 -

警戒態勢の低減 -

包括的核実験禁止

条約(CTBT)

署名・批准 4/4

発効までの核実験モラトリアム -

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)

準備委員会への協力・貢献

2/2

検証体制構築への貢献 2/2

核実験 -

兵器用核分裂性物

質生産禁止条約

(FMCT)

早期交渉開始への取組 4/5

条約成立までの生産モラトリアム -

検証措置発展への貢献 1/2

透明性 -

検証措置 核兵器の削減に対する検証の受入・履行 -

核兵器の削減検証の研究開発努力 0/1

核分裂性物質に対する IAEA 査察受入 -

不可逆性

弾頭・運搬手段の廃棄・廃棄計画 1/2

核関連施設の閉鎖・平和目的転換 1/2

Page 99: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

95

軍事目的に不要な物質の廃棄・転換 -

軍縮・不拡散教育 2/4

(2)不拡散

不拡散義務の遵守 NPT 加盟 10/10 54/58

第1条(核兵器国の義務)、第2条(非

核兵器国の義務)、関連安保理決議の遵

7/7

非核兵器地帯条約への署名・批准 3/3

保障措置

(非核兵器国)

包括的保障措置協定の遵守 4/4

追加議定書の署名・批准・実施 5/5

統合保障措置への移行状況 4/4

保障措置協定の遵守 5/5

保障措置(核兵器

国・非 NPT)

平和目的施設への保障措置の適用 -

追加議定書の署名・批准 -

IAEA との協力 保障措置強化に向けた努力 3/3

IAEA への特別拠出金 0/1

輸出管理措置 国内実施体制の整備 5/5

追加議定書締結の条件化 0/2

北朝鮮・イランに対する安保理決議履行 3/3

拡散に対する安全保障構想(PSI)への

参加

2/2

原子力平和利用の

透明性

平和利用活動に関する報告 2/2

プルトニウム管理に関する報告 1/2

(3)核セキュリティ

物質量・貯蔵施設

0/-16 34/41

条約加入・国内体

核物質防護条約、改正条約 3/3

核テロ防止条約 2/2

原子力安全条約 2/2

原子力事故早期通報条約 2/2

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理

の安全に関する条約

2/2

原子力事故又は放射線緊急事態の場合

における援助に関する条約

2/2

IAEAガイドライン「核物質・原子力

施設の物理的防護に関する核セキュリ

ティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)の反

2/4

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96

国内実施体制 4/4

安全水準維持 高濃縮ウラン(HEU)最小限化 4/4

物質不法取引防止措置の履行 4/5

IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れ 2/2

核セキュリティ基金 0/2

核鑑識技術の調査・開発 2/2

アウトリーチ活動 1/2

協調的脅威削減プログラム(CTR)、G8

グローバル・パートナーシップ(G8GP)、

核テロに対抗するためのグローバル・イ

ニシアティブ(GICNT)、国際科学技術

センター(ISTC)、核セキュリティ・サ

ミットなどへの積極性

2/3

Page 101: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

97

非核兵器国④ ブラジル

1.総合評価

ブラジルは、国連総会等の場における核軍縮関連の決議に積極的に関与していることなどから核

軍縮では比較的高い評点であったが、核不拡散では、IAEA の保障措置への関与が不十分であるこ

と、核セキュリティでは IAEA 核セキュリティ監視団を受け入れていないことなどを反映して低い

評点にとどまった。

2.評点内訳

(1)核軍縮

項目 観点別評価 評点

核兵器の保有数 (核兵器国) - 27/43

核兵器のない世界

へのコミットメン

国連総会での投票行動 5/6

核兵器禁止条約決議への投票行動 2/2

重要な政策意図の表明 1/3

削減状況

過去 5 年間における核兵器削減の実施 -

核兵器の削減に関する具体的な計画 -

核兵器能力の強化・近代化傾向 -

役割低減

安全保障戦略・戦略における位置付け 8/8

唯一の目的・先行不使用の宣言 -

消極的安全保証 -

非核兵器地帯条約・議定書の署名・批准 -

警戒態勢の低減 -

包括的核実験禁止

条約(CTBT)

署名・批准 4/4

発効までの核実験モラトリアム -

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)

準備委員会への協力・貢献

1/2

検証体制構築への貢献 2/2

核実験 -

兵器用核分裂性物

質生産禁止条約

(FMCT)

早期交渉開始への取組 3/5

条約成立までの生産モラトリアム -

検証措置発展への貢献 0/2

透明性 -

検証措置 核兵器の削減に対する検証の受入・履行 -

核兵器の削減検証の研究開発努力 0/1

核分裂性物質に対する IAEA 査察受入 -

不可逆性

弾頭・運搬手段の廃棄・廃棄計画 0/2

核関連施設の閉鎖・平和目的転換 0/2

Page 102: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

98

軍事目的に不要な物質の廃棄・転換 -

軍縮・不拡散教育 1/4

(2)不拡散

不拡散義務の遵守 NPT 加盟 10/10 40/58

第1条(核兵器国の義務)、第2条(非

核兵器国の義務)、関連安保理決議の遵

7/7

非核兵器地帯条約への署名・批准 3/3

保障措置

(非核兵器国)

包括的保障措置協定の遵守 4/4

追加議定書の署名・批准・実施 0/5

統合保障措置への移行状況 0/4

保障措置協定の遵守 5/5

保障措置(核兵器

国・非 NPT)

平和目的施設への保障措置の適用 -

追加議定書の署名・批准 -

IAEA との協力 保障措置強化に向けた努力 1/3

IAEA への特別拠出金 0/1

輸出管理措置 国内実施体制の整備 5/5

追加議定書締結の条件化 0/2

北朝鮮・イランに対する安保理決議履行 2/3

拡散に対する安全保障構想(PSI)への

参加

0/2

原子力平和利用の

透明性

平和利用活動に関する報告 2/2

プルトニウム管理に関する報告 1/2

(3)核セキュリティ

物質量・貯蔵施設

0/-16 25/41

条約加入・国内体

核物質防護条約、改正条約 2/3

核テロ防止条約 2/2

原子力安全条約 2/2

原子力事故早期通報条約 2/2

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理

の安全に関する条約

2/2

原子力事故又は放射線緊急事態の場合

における援助に関する条約

2/2

IAEAガイドライン「核物質・原子力

施設の物理的防護に関する核セキュリ

ティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)の反

2/4

Page 103: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

99

国内実施体制 3/4

安全水準維持 高濃縮ウラン(HEU)最小限化 3/4

物質不法取引防止措置の履行 4/5

IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れ 0/2

核セキュリティ基金 0/2

核鑑識技術の調査・開発 0/2

アウトリーチ活動 1/2

協調的脅威削減プログラム(CTR)、G8

グローバル・パートナーシップ(G8GP)、

核テロに対抗するためのグローバル・イ

ニシアティブ(GICNT)、国際科学技術

センター(ISTC)、核セキュリティ・サ

ミットなどへの積極性

0/3

Page 104: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

100

非核兵器国⑤ ドイツ

1.総合評価

ドイツは、核兵器への依存を減じるべく、NATO諸国の中では主導的立場をとってはいるものの、

依然として米国の核を含む拡大抑止の下にあることには変わりなく、核軍縮ではあまり振るわなか

ったが、核不拡散では IAEA への協力姿勢などを反映して高い評点だった。

2.評点内訳

(1)核軍縮

項目 観点別評価 評点

核兵器の保有数 (核兵器国) - 24/43

核兵器のない世界

へのコミットメン

国連総会での投票行動 4/6

核兵器禁止条約決議への投票行動 0/2

重要な政策意図の表明 1/3

削減状況

過去 5 年間における核兵器削減の実施 -

核兵器の削減に関する具体的な計画 -

核兵器能力の強化・近代化傾向 -

役割低減

安全保障戦略・戦略における位置付け 3/8

唯一の目的・先行不使用の宣言 -

消極的安全保証 -

非核兵器地帯条約・議定書の署名・批准 -

警戒態勢の低減 -

包括的核実験禁止

条約(CTBT)

署名・批准 4/4

発効までの核実験モラトリアム -

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)

準備委員会への協力・貢献

1/2

検証体制構築への貢献 2/2

核実験 -

兵器用核分裂性物

質生産禁止条約

(FMCT)

早期交渉開始への取組 4/5

条約成立までの生産モラトリアム -

検証措置発展への貢献 1/2

透明性 -

検証措置 核兵器の削減に対する検証の受入・履行 -

核兵器の削減検証の研究開発努力 0/1

核分裂性物質に対する IAEA 査察受入 -

不可逆性

弾頭・運搬手段の廃棄・廃棄計画 1/2

核関連施設の閉鎖・平和目的転換 1/2

軍事目的に不要な物質の廃棄・転換 -

Page 105: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

101

軍縮・不拡散教育 2/4

(2)不拡散

不拡散義務の遵守 NPT 加盟 10/10 53/58

第1条(核兵器国の義務)、第2条(非

核兵器国の義務)、関連安保理決議の遵

7/7

非核兵器地帯条約への署名・批准 0/3

保障措置

(非核兵器国)

包括的保障措置協定の遵守 4/4

追加議定書の署名・批准・実施 5/5

統合保障措置への移行状況 4/4

保障措置協定の遵守 5/5

保障措置(核兵器

国・非 NPT)

平和目的施設への保障措置の適用 -

追加議定書の署名・批准 -

IAEA との協力 保障措置強化に向けた努力 3/3

IAEA への特別拠出金 1/1

輸出管理措置 国内実施体制の整備 5/5

追加議定書締結の条件化 0/2

北朝鮮・イランに対する安保理決議履行 3/3

拡散に対する安全保障構想(PSI)への

参加

2/2

原子力平和利用の

透明性

平和利用活動に関する報告 2/2

プルトニウム管理に関する報告 2/2

(3)核セキュリティ

物質量・貯蔵施設

-4/-16 32/41

条約加入・国内体

核物質防護条約、改正条約 3/3

核テロ防止条約 2/2

原子力安全条約 2/2

原子力事故早期通報条約 2/2

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理

の安全に関する条約

2/2

原子力事故又は放射線緊急事態の場合

における援助に関する条約

2/2

IAEAガイドライン「核物質・原子力

施設の物理的防護に関する核セキュリ

ティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)の反

2/4

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102

国内実施体制 4/4

安全水準維持 高濃縮ウラン(HEU)最小限化 4/4

物質不法取引防止措置の履行 4/5

IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れ 0/2

核セキュリティ基金 2/2

核鑑識技術の調査・開発 2/2

アウトリーチ活動 2/2

協調的脅威削減プログラム(CTR)、G8

グローバル・パートナーシップ(G8GP)、

核テロに対抗するためのグローバル・イ

ニシアティブ(GICNT)、国際科学技術

センター(ISTC)、核セキュリティ・サ

ミットなどへの積極性

3/3

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103

非核兵器国⑥ 日 本

1.総合評価

日本は、安全保障面では、核兵器を含む米国の拡大抑止に依存しながらも、非核兵器国として、

また、唯一の被爆国として、国連をはじめとする多国間枠組みの中で核軍縮を積極的に推進する立

場をとり続けてきた。また、IAEA の保障措置を着実に受け入れ履行しながら原子力の平和利用を

推進し、また輸出管理を厳格に行いながら原子力輸出を行ってきた。こうした積極性を反映して、

核軍縮、核不拡散における日本の評点は比較的高かった。核セキュリティ分野では、関連する諸条

約や新たな枠組みには積極的に取り組んでいるものの、原子炉級プルトニウムの保有量が多いこと

などを反映して、低めの評価となった。

2.評点内訳

(1)核軍縮

項目 観点別評価 評点

核兵器の保有数 (核兵器国) - 30/43

核兵器のない世界

へのコミットメン

国連総会での投票行動 5/6

核兵器禁止条約決議への投票行動 1/2

重要な政策意図の表明 1/3

削減状況

過去 5 年間における核兵器削減の実施 -

核兵器の削減に関する具体的な計画 -

核兵器能力の強化・近代化傾向 -

役割低減

安全保障戦略・戦略における位置付け 5/8

唯一の目的・先行不使用の宣言 -

消極的安全保証 -

非核兵器地帯条約・議定書の署名・批准 -

警戒態勢の低減 -

包括的核実験禁止

条約(CTBT)

署名・批准 4/4

発効までの核実験モラトリアム -

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)

準備委員会への協力・貢献

2/2

検証体制構築への貢献 2/2

核実験 -

兵器用核分裂性物

質生産禁止条約

(FMCT)

早期交渉開始への取組 4/5

条約成立までの生産モラトリアム -

検証措置発展への貢献 1/2

透明性 -

検証措置 核兵器の削減に対する検証の受入・履行 -

核兵器の削減検証の研究開発努力 0/1

核分裂性物質に対する IAEA 査察受入 -

不可逆性 弾頭・運搬手段の廃棄・廃棄計画 1/2

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104

核関連施設の閉鎖・平和目的転換 1/2

軍事目的に不要な物質の廃棄・転換 -

軍縮・不拡散教育 3/4

(2)核不拡散

不拡散義務の遵守 NPT 加盟 10/10 53/58

第1条(核兵器国の義務)、第2条(非

核兵器国の義務)、関連安保理決議の遵

7/7

非核兵器地帯条約への署名・批准 0/3

保障措置

(非核兵器国)

包括的保障措置協定の遵守 4/4

追加議定書の署名・批准・実施 5/5

統合保障措置への移行状況 4/4

保障措置協定の遵守 5/5

保障措置(核兵器

国・非 NPT)

平和目的施設への保障措置の適用 -

追加議定書の署名・批准 -

IAEA との協力 保障措置強化に向けた努力 3/3

IAEA への特別拠出金 1/1

輸出管理措置 国内実施体制の整備 5/5

追加議定書締結の条件化 1/2

北朝鮮・イランに対する安保理決議履行 3/3

拡散に対する安全保障構想(PSI)への

参加

2/2

原子力平和利用の

透明性

平和利用活動に関する報告 2/2

プルトニウム管理に関する報告 1/2

(3)核セキュリティ

物質量・貯蔵施設

-6/-16 29/41

条約加入・国内体

核物質防護条約、改正条約 2/3

核テロ防止条約 2/2

原子力安全条約 2/2

原子力事故早期通報条約 2/2

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理

の安全に関する条約

2/2

原子力事故又は放射線緊急事態の場合 2/2

Page 109: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

105

における援助に関する条約

IAEAガイドライン「核物質・原子力

施設の物理的防護に関する核セキュリ

ティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)の反

2/4

国内実施体制 4/4

安全水準維持 高濃縮ウラン(HEU)最小限化 4/4

物質不法取引防止措置の履行 4/5

IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れ 0/2

核セキュリティ基金 2/2

核鑑識技術の調査・開発 2/2

アウトリーチ活動 2/2

協調的脅威削減プログラム(CTR)、G8

グローバル・パートナーシップ(G8GP)、

核テロに対抗するためのグローバル・イ

ニシアティブ(GICNT)、国際科学技術

センター(ISTC)、核セキュリティ・サ

ミットなどへの積極性

3/3

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106

非核兵器国⑦ 韓 国

1.総合評価

韓国は、国連総会等の場における核軍縮関連の決議には積極的に関与しているものの、北朝鮮の

核開発計画の進行もあり、「核兵器のない世界」に向けたイニシァティブを明確にはしていないこと

などから、核軍縮での評点は低かったものの、核不拡散では、IAEA との協力体制への貢献、核セ

キュリティ分野でも諸条約・諸措置の着実な実施を反映して、高い評点を獲得した。

2.評点内訳

(1)核軍縮

項目 観点別評価 評点

核兵器の保有数 (核兵器国) - 25/43

核兵器のない世界

へのコミットメン

国連総会での投票行動 5/6

核兵器禁止条約決議への投票行動 1/2

重要な政策意図の表明 0/3

削減状況

過去 5 年間における核兵器削減の実施 -

核兵器の削減に関する具体的な計画 -

核兵器能力の強化・近代化傾向 -

役割低減

安全保障戦略・戦略における位置付け 5/8

唯一の目的・先行不使用の宣言 -

消極的安全保証 -

非核兵器地帯条約・議定書の署名・批准 -

警戒態勢の低減 -

包括的核実験禁止

条約(CTBT)

署名・批准 4/4

発効までの核実験モラトリアム -

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)

準備委員会への協力・貢献

2/2

検証体制構築への貢献 1/2

核実験 -

兵器用核分裂性物

質生産禁止条約

(FMCT)

早期交渉開始への取組 3/5

条約成立までの生産モラトリアム -

検証措置発展への貢献 1/2

透明性 -

検証措置 核兵器の削減に対する検証の受入・履行 -

核兵器の削減検証の研究開発努力 0/1

核分裂性物質に対する IAEA 査察受入 -

不可逆性

弾頭・運搬手段の廃棄・廃棄計画 1/2

核関連施設の閉鎖・平和目的転換 1/2

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107

軍事目的に不要な物質の廃棄・転換 -

軍縮・不拡散教育 1/4

(2)核不拡散

不拡散義務の遵守 NPT 加盟 10/10 51/58

第1条(核兵器国の義務)、第2条(非

核兵器国の義務)、関連安保理決議の遵

7/7

非核兵器地帯条約への署名・批准 0/3

保障措置

(非核兵器国)

包括的保障措置協定の遵守 4/4

追加議定書の署名・批准・実施 5/5

統合保障措置への移行状況 4/4

保障措置協定の遵守 5/5

保障措置(核兵器

国・非 NPT)

平和目的施設への保障措置の適用 -

追加議定書の署名・批准 -

IAEA との協力 保障措置強化に向けた努力 2/3

IAEA への特別拠出金 1/1

輸出管理措置 国内実施体制の整備 5/5

追加議定書締結の条件化 0/2

北朝鮮・イランに対する安保理決議履行 3/3

拡散に対する安全保障構想(PSI)への

参加

2/2

原子力平和利用の

透明性

平和利用活動に関する報告 2/2

プルトニウム管理に関する報告 1/2

(3)核セキュリティ

物質量・貯蔵施設数 0/-16 35/41

条約加入・国内体制 核物質防護条約、改正条約 2/3

核テロ防止条約 1/2

原子力安全条約 2/2

原子力事故早期通報条約 2/2

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理

の安全に関する条約

2/2

原子力事故又は放射線緊急事態の場合

における援助に関する条約

2/2

IAEAガイドライン「核物質・原子力

施設の物理的防護に関する核セキュリ

ティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)の反

2/4

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108

国内実施体制 4/4

安全水準維持 高濃縮ウラン(HEU)最小限化 4/4

物質不法取引防止措置の履行 4/5

IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れ 2/2

核セキュリティ基金 2/2

核鑑識技術の調査・開発 2/2

アウトリーチ活動 2/2

協調的脅威削減プログラム(CTR)、G8

グローバル・パートナーシップ(G8GP)、

核テロに対抗するためのグローバル・イ

ニシアティブ(GICNT)、国際科学技術

センター(ISTC)、核セキュリティ・サ

ミットなどへの積極性

2/3

Page 113: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

109

非核兵器国⑧ 南アフリカ共和国

1.総合評価

南アフリカ共和国は、保有していた核兵器(すでに完成させていた核兵器6発と、製造途中だっ

た1発)を放棄して 1991年に非核兵器国として NPT 加盟国となった。以後、非同盟運動諸国(NAM)

あるいは新アジェンダ連合(NAC)の一員として核軍縮に関連する国連総会決議に積極的に関与し

ているものの、IAEA の保障措置への関与が不十分であることや拡散に対する安全保障構想(PSI)

に不参加であること、IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れていないことなどから、核不拡散、

核セキュリティ分野での評点は振るわなかった。

2.評点内訳

(1)核軍縮

項目 観点別評価 評点

核兵器の保有数 (核兵器国) - 26/43

核兵器のない世界

へのコミットメン

国連総会での投票行動 5/6

核兵器禁止条約決議への投票行動 2/2

重要な政策意図の表明 1/3

削減状況

過去 5 年間における核兵器削減の実施 -

核兵器の削減に関する具体的な計画 -

核兵器能力の強化・近代化傾向 -

役割低減

安全保障戦略・戦略における位置付け 8/8

唯一の目的・先行不使用の宣言 -

消極的安全保証 -

非核兵器地帯条約・議定書の署名・批准 -

警戒態勢の低減 -

包括的核実験禁止

条約(CTBT)

署名・批准 4/4

発効までの核実験モラトリアム -

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)

準備委員会への協力・貢献

1/2

検証体制構築への貢献 1/2

核実験 -

兵器用核分裂性物

質生産禁止条約

(FMCT)

早期交渉開始への取組 3/5

条約成立までの生産モラトリアム -

検証措置発展への貢献 0/2

透明性 -

検証措置 核兵器の削減に対する検証の受入・履行 -

核兵器の削減検証の研究開発努力 0/1

核分裂性物質に対する IAEA 査察受入 -

不可逆性 弾頭・運搬手段の廃棄・廃棄計画 0/2

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110

核関連施設の閉鎖・平和目的転換 0/2

軍事目的に不要な物質の廃棄・転換 -

軍縮・不拡散教育 1/4

(2)核不拡散

不拡散義務の遵守 NPT 加盟 10/10 46/58

第1条(核兵器国の義務)、第2条(非

核兵器国の義務)、関連安保理決議の遵

7/7

非核兵器地帯条約への署名・批准 3/3

保障措置

(非核兵器国)

包括的保障措置協定の遵守 4/4

追加議定書の署名・批准・実施 5/5

統合保障措置への移行状況 0/4

保障措置協定の遵守 5/5

保障措置(核兵器

国・非 NPT)

平和目的施設への保障措置の適用 -

追加議定書の署名・批准 -

IAEA との協力 保障措置強化に向けた努力 1/3

IAEA への特別拠出金 0/1

輸出管理措置 国内実施体制の整備 5/5

追加議定書締結の条件化 0/2

北朝鮮・イランに対する安保理決議履行 3/3

拡散に対する安全保障構想(PSI)への

参加

0/2

原子力平和利用の

透明性

平和利用活動に関する報告 2/2

プルトニウム管理に関する報告 1/2

(3)核セキュリティ

物質量・貯蔵施設

0/-16 29/41

条約加入・国内体

核物質防護条約、改正条約 2/3

核テロ防止条約 2/2

原子力安全条約 2/2

原子力事故早期通報条約 2/2

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理

の安全に関する条約

2/2

原子力事故又は放射線緊急事態の場合

における援助に関する条約

2/2

IAEAガイドライン「核物質・原子力 2/4

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111

施設の物理的防護に関する核セキュリ

ティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)の反

国内実施体制 4/4

安全水準維持 高濃縮ウラン(HEU)最小限化 4/4

物質不法取引防止措置の履行 4/5

IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れ 0/2

核セキュリティ基金 0/2

核鑑識技術の調査・開発 2/2

アウトリーチ活動 1/2

協調的脅威削減プログラム(CTR)、G8

グローバル・パートナーシップ(G8GP)、

核テロに対抗するためのグローバル・イ

ニシアティブ(GICNT)、国際科学技術

センター(ISTC)、核セキュリティ・サ

ミットなどへの積極性

0/3

Page 116: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

112

非核兵器国⑨ スウェーデン

1.総合評価

スウェーデンは、国連等における核軍縮関連の投票行動における積極性などから、核軍縮分野で

は比較的高い評点を獲得した一方、核不拡散分野では、非核兵器地帯条約や IAEA への特別拠出金

への不関与のため評点は振るわなかった。他方、核セキュリティ分野では、諸条約・諸措置の着実

な実施を反映して高い評点であった。

2.評点内訳

(1)核軍縮

項目 観点別評価 評点

核兵器の保有数 (核兵器国) - 28/43

核兵器のない世界

へのコミットメン

国連総会での投票行動 5/6

核兵器禁止条約決議への投票行動 2/2

重要な政策意図の表明 0/3

削減状況

過去 5 年間における核兵器削減の実施 -

核兵器の削減に関する具体的な計画 -

核兵器能力の強化・近代化傾向 -

役割低減

安全保障戦略・戦略における位置付け 8/8

唯一の目的・先行不使用の宣言 -

消極的安全保証 -

非核兵器地帯条約・議定書の署名・批准 -

警戒態勢の低減 -

包括的核実験禁止

条約(CTBT)

署名・批准 4/4

発効までの核実験モラトリアム -

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)

準備委員会への協力・貢献

1/2

検証体制構築への貢献 1/2

核実験 -

兵器用核分裂性物

質生産禁止条約

(FMCT)

早期交渉開始への取組 3/5

条約成立までの生産モラトリアム -

検証措置発展への貢献 1/2

透明性 -

検証措置 核兵器の削減に対する検証の受入・履行 -

核兵器の削減検証の研究開発努力 0/1

核分裂性物質に対する IAEA 査察受入 -

不可逆性

弾頭・運搬手段の廃棄・廃棄計画 1/2

核関連施設の閉鎖・平和目的転換 1/2

Page 117: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

113

軍事目的に不要な物質の廃棄・転換 -

軍縮・不拡散教育 1/4

(2)核不拡散

不拡散義務の遵守 NPT 加盟 10/10 49/58

第1条(核兵器国の義務)、第2条(非

核兵器国の義務)、関連安保理決議の遵

7/7

非核兵器地帯条約への署名・批准 0/3

保障措置

(非核兵器国)

包括的保障措置協定の遵守 4/4

追加議定書の署名・批准・実施 5/5

統合保障措置への移行状況 4/4

保障措置協定の遵守 5/5

保障措置(核兵器

国・非 NPT)

平和目的施設への保障措置の適用 -

追加議定書の署名・批准 -

IAEA との協力 保障措置強化に向けた努力 2/3

IAEA への特別拠出金 0/1

輸出管理措置 国内実施体制の整備 5/5

追加議定書締結の条件化 0/2

北朝鮮・イランに対する安保理決議履行 3/3

拡散に対する安全保障構想(PSI)への

参加

1/2

原子力平和利用の

透明性

平和利用活動に関する報告 2/2

プルトニウム管理に関する報告 1/2

(3)核セキュリティ

物質量・貯蔵施設数 0/-16 36/41

条約加入・国内体制 核物質防護条約、改正条約 3/3

核テロ防止条約 1/2

原子力安全条約 2/2

原子力事故早期通報条約 2/2

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理

の安全に関する条約

2/2

原子力事故又は放射線緊急事態の場合

における援助に関する条約

2/2

IAEAガイドライン「核物質・原子力

施設の物理的防護に関する核セキュリ

ティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)の反

2/4

Page 118: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

114

国内実施体制 4/4

安全水準維持 高濃縮ウラン(HEU)最小限化 4/4

物質不法取引防止措置の履行 4/5

IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れ 2/2

核セキュリティ基金 2/2

核鑑識技術の調査・開発 2/2

アウトリーチ活動 2/2

協調的脅威削減プログラム(CTR)、G8

グローバル・パートナーシップ(G8GP)、

核テロに対抗するためのグローバル・イ

ニシアティブ(GICNT)、国際科学技術

センター(ISTC)、核セキュリティ・サ

ミットなどへの積極性

2/3

Page 119: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

115

非核兵器国⑩ スイス

1.総合評価

スイスは、安全保障政策上核兵器への依存をしておらず、様々な核軍縮関連の措置に積極的に取

り組んでいることから高い評点を獲得した。核不拡散、核セキュリティにおいては、わずかながら

プルトニウムを保有していることなどから相対的に低めの評点にとどまった。

2.評点内訳

(1)核軍縮

項目 観点別評価 評点

核兵器の保有数 (核兵器国) - 29/43

核兵器のない世界

へのコミットメン

国連総会での投票行動 4/6

核兵器禁止条約決議への投票行動 2/2

重要な政策意図の表明 1/3

削減状況

過去 5 年間における核兵器削減の実施 -

核兵器の削減に関する具体的な計画 -

核兵器能力の強化・近代化傾向 -

役割低減

安全保障戦略・戦略における位置付け 8/8

唯一の目的・先行不使用の宣言 -

消極的安全保証 -

非核兵器地帯条約・議定書の署名・批准 -

警戒態勢の低減 -

包括的核実験禁止

条約(CTBT)

署名・批准 4/4

発効までの核実験モラトリアム -

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)

準備委員会への協力・貢献

1/2

検証体制構築への貢献 1/2

核実験 -

兵器用核分裂性物

質生産禁止条約

(FMCT)

早期交渉開始への取組 3/5

条約成立までの生産モラトリアム -

検証措置発展への貢献 0/2

透明性 -

検証措置 核兵器の削減に対する検証の受入・履行 -

核兵器の削減検証の研究開発努力 0/1

核分裂性物質に対する IAEA 査察受入 -

不可逆性

弾頭・運搬手段の廃棄・廃棄計画 1/2

核関連施設の閉鎖・平和目的転換 1/2

軍事目的に不要な物質の廃棄・転換 -

Page 120: f KrÞÏîº - 広島県公式ホームページ...3 #Ý è0 Éß « \4)r IAEA )r ª×¿îÈ37) 1 ^][b 1 lg 8 e i Qb Ú ; Ó$Î/²b e i>' cLu\M 6ä2( q #Ý8Z1* ( Ò lg 0Û o / WS 0Û

116

軍縮・不拡散教育 3/4

(2)核不拡散

不拡散義務の遵守 NPT 加盟 10/10 44/58

第1条(核兵器国の義務)、第2条(非

核兵器国の義務)、関連安保理決議の遵

7/7

非核兵器地帯条約への署名・批准 0/3

保障措置

(非核兵器国)

包括的保障措置協定の遵守 4/4

追加議定書の署名・批准・実施 5/5

統合保障措置への移行状況 0/4

保障措置協定の遵守 5/5

保障措置(核兵器

国・非 NPT)

平和目的施設への保障措置の適用 -

追加議定書の署名・批准 -

IAEA との協力 保障措置強化に向けた努力 1/3

IAEA への特別拠出金 0/1

輸出管理措置 国内実施体制の整備 5/5

追加議定書締結の条件化 0/2

北朝鮮・イランに対する安保理決議履行 3/3

拡散に対する安全保障構想(PSI)への

参加

1/2

原子力平和利用の

透明性

平和利用活動に関する報告 2/2

プルトニウム管理に関する報告 1/2

(3)核セキュリティ

物質量・貯蔵施設

-4/-16 22/41

条約加入・国内体

核物質防護条約、改正条約 3/3

核テロ防止条約 2/2

原子力安全条約 2/2

原子力事故早期通報条約 2/2

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理

の安全に関する条約

2/2

原子力事故又は放射線緊急事態の場合

における援助に関する条約

2/2

IAEAガイドライン「核物質・原子力

施設の物理的防護に関する核セキュリ

ティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)の反

2/4

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117

国内実施体制 4/4

安全水準維持 高濃縮ウラン(HEU)最小限化 0/4

物質不法取引防止措置の履行 4/5

IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れ 0/2

核セキュリティ基金 0/2

核鑑識技術の調査・開発 0/2

アウトリーチ活動 1/2

協調的脅威削減プログラム(CTR)、G8

グローバル・パートナーシップ(G8GP)、

核テロに対抗するためのグローバル・イ

ニシアティブ(GICNT)、国際科学技術

センター(ISTC)、核セキュリティ・サ

ミットなどへの積極性

2/3

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118

【その他】

北朝鮮

1.総合評価

北朝鮮は、1985 年に NPT に加盟したものの、核開発疑惑をめぐる交渉の中で脱退宣言を数次に

わたって行っただけでなく、2002 年以降はウラン濃縮計画の示唆、核実験の実施等、NPT 体制を

揺るがす行動を取り続けている。北朝鮮が保有する核兵器の数や核分裂性物質の保有量は定かでは

ないものの、放棄する動きは依然として見られていない。NPT や国連安保理決議、包括的核実験禁

止条約(CTBT)等の重要な国際規範、関係各国との約束を反故にしている北朝鮮の評点は、核軍

縮のみならず核不拡散、核セキュリティのいずれにおいてもの分野においても評点は振るわなかっ

た。

2.評点内訳

(1)核軍縮(NPT非締約国グループの評価項目)

項目 観点別評価 評点

核兵器の保有数 (核兵器国) -5/-20 7/98

核兵器のない世界

へのコミットメン

国連総会での投票行動 4/6

核兵器禁止条約決議への投票行動 2/2

重要な政策意図の表明 0/3

削減状況

過去 5 年間における核兵器削減の実施 0/15

核兵器の削減に関する具体的な計画 0/3

核兵器能力の強化・近代化傾向 0/4

役割低減

安全保障戦略・戦略における位置付け 1/8

唯一の目的・先行不使用の宣言 0/3

消極的安全保証 1/2

非核兵器地帯条約・議定書の署名・批准 -

警戒態勢の低減 3/4

包括的核実験禁止

条約(CTBT)

署名・批准 0/4

発効までの核実験モラトリアム 0/3

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)

準備委員会への協力・貢献

0/2

検証体制構築への貢献 0/2

核実験 0/3

兵器用核分裂性物

質生産禁止条約

(FMCT)

早期交渉開始への取組 0/5

条約成立までの生産モラトリアム 0/3

検証措置発展への貢献 0/2

透明性 0/6

検証措置 核兵器の削減に対する検証の受入・履行 0/3

核兵器の削減検証の研究開発努力 0/1

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119

核分裂性物質に対する IAEA 査察受入 0/3

不可逆性

弾頭・運搬手段の廃棄・廃棄計画 0/3

核関連施設の閉鎖・平和目的転換 1/2

軍事目的に不要な物質の廃棄・転換 0/2

軍縮・不拡散教育 0/4

(2)核不拡散(非核兵器国グループの評価項目)

不拡散義務の遵守 NPT 加盟 0/10 4/58

第1条(核兵器国の義務)、第2条(非

核兵器国の義務)、関連安保理決議の遵

0/7

非核兵器地帯条約への署名・批准 0/3

保障措置

(非核兵器国)

包括的保障措置協定の遵守 4/4

追加議定書の署名・批准・実施 0/5

統合保障措置への移行状況 0/4

保障措置協定の遵守 0/5

保障措置(核兵器

国・非 NPT)

平和目的施設への保障措置の適用 -

追加議定書の署名・批准 -

IAEA との協力 保障措置強化に向けた努力 0/3

IAEA への特別拠出金 0/1

輸出管理措置 国内実施体制の整備 0/5

追加議定書締結の条件化 0/2

北朝鮮・イランに対する安保理決議履行 0/3

拡散に対する安全保障構想(PSI)への

参加

0/2

原子力平和利用の

透明性

平和利用活動に関する報告 0/2

プルトニウム管理に関する報告 0/2

(3)核セキュリティ

物質量・貯蔵施設

-4/-16 -2/41

条約加入・国内体

核物質防護条約、改正条約 0/3

核テロ防止条約 0/2

原子力安全条約 0/2

原子力事故早期通報条約 1/2

使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理

の安全に関する条約

0/2

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120

原子力事故又は放射線緊急事態の場合

における援助に関する条約

0/2

IAEAガイドライン「核物質・原子力

施設の物理的防護に関する核セキュリ

ティ勧告」(INFCIRC/225/Rev.5)の反

0/4

国内実施体制 1/4

安全水準維持 高濃縮ウラン(HEU)最小限化 0/4

物質不法取引防止措置の履行 0/5

IAEA 核セキュリティ監視団の受け入れ 0/2

核セキュリティ基金 0/2

核鑑識技術の調査・開発 0/2

アウトリーチ活動 0/2

協調的脅威削減プログラム(CTR)、G8

グローバル・パートナーシップ(G8GP)、

核テロに対抗するためのグローバル・イ

ニシアティブ(GICNT)、国際科学技術

センター(ISTC)、核セキュリティ・サ

ミットなどへの積極性

0/3

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121

略語表

略語 英語表記 日本語表記

AG Australia Group オーストラリア・グループ

ANZUS Australia, New Zealand, United

States Security Treaty 太平洋安全保障条約

BMD Ballistic Missile Defense 弾道ミサイル防衛

BMDR Ballistic Missile Defense Review 弾道ミサイル防衛見直し報告

BWC Biological Weapons Convention 生物・毒素兵器禁止条約

CD Conference on Disarmament ジュネーブ軍縮会議

COE Center of Excellence 中心的拠点

CTBT Comprehensive Nuclear-Test-Ban

Treaty 包括的核実験禁止条約

CTBTO CTBT Organization 包括的核実験禁止条約機関

CTR Cooperative Threat Reduction 協調的脅威削減

CWC Chemical Weapons Convention 化学兵器禁止条約

DDPR Deterrence and Defense Posture

Review 抑止・防衛態勢見直し

EU European Union 欧州連合

EURATOM European Atomic Energy

Communities 欧州原子力共同体

FMCT Fissile Material Cut-Off Treaty 兵器用核分裂性物質生産禁止条約

G8GP G8 Global Partnership G8グローバルパートナーシップ

GICNT Global Initiative to Combat Nuclear

Terrorism

核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシア

ティブ

GTRI Global Threat Reduction Initiative グローバル脅威削減イニシアティブ

HEU Highly Enriched Uranium 高濃縮ウラン

IAEA International Atomic Energy

Agency 国際原子力機関

ICAN International Campaign to Abolosh

Nuclear Weapons 核兵器廃絶国際キャンペーン

ICBM Inter-Continental Ballistic Missile 大陸間弾道ミサイル

ICJ International Court of Justice 国際司法裁判所

ICNND

International Commission on

Nuclear Non-proliferation and

Disarmament

核不拡散・核軍縮に関する国際委員会

IMS International Monitoring System 国際監視制度

INTERPOL International Criminal Police

Organization 国際刑事警察機構

IPFM International Panel on Fissile

Materials 核分裂性物質国際パネル

IPPAS International Physical Protection

Advisory Service 国際核防護諮問サービス

ISTC International Science and

Technology Center 国際科学技術センター

ITDB Illicit Trafficking Database IAEA不正取引データベース

ITWG Nuclear Forensics International

Technical Working Group 核鑑識に関する国際技術ワーキンググループ

LEU Low Enriched Uranium 低濃縮ウラン

LOF Locations outside Facilities 施設外の場所

LOW Launch on Warning 警報即発射

LUA Launch under Attack 攻撃下発射

MaRV Maneuverable Reentry Vehicle 機動性弾頭

MD Missile Defense ミサイル防衛

MIRV Multiple Independently-targetable

Reentry Vehicle 複数個別誘導弾頭

MRBM Medium-Range Ballistic Missile 準中距離弾道ミサイル

MSSP Member State Support Programme 加盟国支援プログラム

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122

MTCR Missile Technology Control Regime ミサイル技術管理レジーム

NAC New Agenda Coalition 新アジェンダ連合

NAM Non-Aligned Movement 非同盟運動

NATO North Atlantic Treaty Organization 北大西洋条約機構

NNSA National Nuclear Security

Administration 国家核安全保障局

NPR Nuclear Posture Review 核態勢見直し報告

NPDI Non-Proliferation and Disarmament

Initiative 軍縮・不拡散イニシアティブ

NPT Nuclear Non-Proliferation Treaty 核兵器不拡散条約

NRRC Nuclear Risk Reduction Center 核危機削減センター

NSF Nuclear Security Fund 核セキュリティ基金

NSG Nuclear Suppliers Group 原子力供給国グループ

NTI Nuclear Threat Initiative 核脅威イニシアティブ

NTM National Technical Means 国内の検証技術

PSI Proliferation Security Initiative 拡散に対する安全保障構想

QDR Quadrennial Defense Review 四年期国防見直し報告

SDSR Strategic Defence and Security

Review 戦略防衛・安全保障見直し

SLBM Submarine Launched Ballistic

Missile 潜水艦発射弾道ミサイル

SLD Second Line of Defense 第二防衛線

SORT Strategic Offensive Reductions

Treaty 戦略攻撃能力削減条約

SRBM Short-Range Ballistic Missile 短距離弾道ミサイル

SSBN Ballistic Missile Submarine

Nuclear-Powered 弾道ミサイル搭載原子力潜水艦

START Strategic Arms Reduction Treaty

(Talks) 戦略兵器削減条約(交渉)

WA Wassenaar Arrangement ワッセナー・アレンジメント

WCO World Customs Organization 世界税関機構

WMD Weapons of Mass Destruction 大量破壊兵器