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現場力アップで世界ブランドを目指す ナルビー 5S は文化となり“8S”へ進展 43 闘う! カイゼン カイゼン カイゼン 戦士 戦士 戦士 工場管理 202008 1 会社名 ㈱ナルビー 所在地 <本社>〒 272-0115 千葉県市川市富浜 2-12-18 3F <四街道工場>〒 284-0012 千葉県四街道市物井 598-46 設  立 1943 年 従業員数 30 名 事業内容 ナイフ・スクレーパーなど工業用・業務用・家庭用刃物の 製造・販売 清掃道具のスクレーパーの定番ブ ランドとしてその名が知られるナル ビー(千葉県市川市)は、工場移転を きっかけにそれまでほぼ手つかずだ った5S 活動を開始した。十数年間 の取組みにより自社の文化となった 5 S 活 動 は、2019 年、「 節 約・ 整 備・習慣」の3つの S を加えた“8 S”に進展。現場力の向上など早く もその効果が出始めている。5S 活 動に始まる現場改善が進んだことで、 同社の構想にあった熱処理工程の昼 夜連続稼働も実現できた。世界市場 でのブランド化を目標に掲げる同社 は、8S を軸とする改善活動をさら に推し進める。 ナルビーの皆さん

カイゼン - Nikkan...闘 う!カイゼン戦士 2 Vol.66 No.10 工場管理 一貫生産で業界定番の スクレーパーをつくり出す 千葉県市川市を拠点とするナルビーは、前身の

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Page 1: カイゼン - Nikkan...闘 う!カイゼン戦士 2 Vol.66 No.10 工場管理 一貫生産で業界定番の スクレーパーをつくり出す 千葉県市川市を拠点とするナルビーは、前身の

会 社 概 要

現場力アップで世界ブランドを目指す ナルビー

5Sは文化となり“8S”へ進展

43闘う!カイゼン戦士カイゼン戦士カイゼンカイゼンカイゼン戦士戦士戦士

工場管理 2020/08 1

会 社 名 ㈱ナルビー所 在 地 <本社>〒272-0115 千葉県市川市富浜2-12-18 3F     <四街道工場>〒284-0012 千葉県四街道市物井598-46設  立 1943年従業員数 30名事業内容 ナイフ・スクレーパーなど工業用・業務用・家庭用刃物の

製造・販売

 清掃道具のスクレーパーの定番ブランドとしてその名が知られるナルビー(千葉県市川市)は、工場移転をきっかけにそれまでほぼ手つかずだった5S活動を開始した。十数年間の取組みにより自社の文化となった5S活動は、2019年、「節約・整備・習慣」の3つのSを加えた“8S”に進展。現場力の向上など早くもその効果が出始めている。5S活動に始まる現場改善が進んだことで、同社の構想にあった熱処理工程の昼夜連続稼働も実現できた。世界市場でのブランド化を目標に掲げる同社は、8Sを軸とする改善活動をさらに推し進める。

ナルビーの皆さん

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闘う!カイゼン戦士

Vol.66 No.10 工場管理2

一貫生産で業界定番の スクレーパーをつくり出す

千葉県市川市を拠点とするナルビーは、前身の古川バリカン・枝切バサミ製作所を1897年に創業して以来、一貫して刃物の製造や販売に携わってきた。現在は工業用・業務用ナイフやスクレーパーを主力製品として、プレス加工から熱処理、刃付け・研磨までの刃物製造の全工程をすべて自社で完結させる一貫生産を行う。同社製品で特に好評を得ているのが、ガラスや

タイルの汚れをそぎ落とすのに利用されるスクレーパーだ。同社の業務用ガラススクレーパーはビルメンテナンスやハウスクリーニングなどの清掃業界では定番品として知られており、国内シェアは約 90%を誇る。刃先を回転させて収納できるガラススクレーパー「ナピカ」シリーズと、スライドカバー式の大型スクレーパー「S-PRO」はそれぞれ1992年度、2010年度のグッドデザイン賞を受賞した。一方で、今年 5月にはこれまでOEM生産などで製造してきたBtoC製品分野を強化する方針を打ち出し、6月にはDIY・アウトドア用途の自社ブランドナイフを発売。100年以上の歴史で培った技術力と、近年注力する改善活動を土台として、新たな領域への挑戦も仕掛けている。

工場移転をきっかけに 5Sを始動

2000年代初め、同社は将来を見据え、本社機能のみ千葉県市川市に残して工場移転を決意。2002

年に同県四街道市で四街道工場を設立し、07年には生産拠点の完全移転を完了させた。古川昇代表取締役社長は、自身が35年ほど前に

4代目として会社を引き継ぐ以前から、同社が抱える課題を問題視していたという。「現場ではいわゆる属人的な働き方がなされていました。各従業員に高いスキルは備わっているのですが、組織としての統制がとれていない状況が続いていたのです」。また、製造部四街道工場の西野正一工場長は移転前の同社工場の様子を、「整理整頓などはほぼ行われておらず、狭く乱雑な状態でした。われわれもまたそれを問題視しておらず、その状況にどっぷりとはまっている状態でした」と話す。この状況を脱するべく、当時、古川社長の主導でTQC活動の導入やISO取得を目指す勉強会などが試みられたが、現場には定着しなかった。転機となったのは前述の工場移転だ。同社の5S活動はその移転とほぼ同時期に始まった。「今思えば、あの時が当社のターニングポイントでした」(西野工場長)。移転先は四街道市内の工業団地。近隣に他社工場が軒を連ねる環境に変わり、他社の従業員とコミュニケーションをとる機会が増えていった。その中で、当時、工場移転業務の中心役を担っていた西野工場長は、しっかりあいさつする、清潔な作業着を身につけるといった基本事項の重要性に改めて気づかされたという。「工場の様子も外部の目にさらされるようになりました。工場の整理整頓や清掃などの必要性も考え始める中で、『5Sは良い製品を提供するためにも不可欠だ』との思いに至りました」(西野工場長)。

同社のガラススクレーパーはグッドデザイン賞を受賞 5S活動で設置した整理棚には各種砥石が整然と並ぶ