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平成29年3月 文部科学省国立教育政策研究所教育課程研究センター 全国学力・学習状況調査の調査結果を踏まえた 理科の学習指導の改善・充実に関する指導事例集

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平成29年3月

文部科学省国立教育政策研究所教育課程研究センター

全国学力・学習状況調査の調査結果を踏まえた

理科の学習指導の改善・充実に関する指導事例集

は じ め に

平成27年度の全国学力・学習状況調査においては,理科の調査を平成

24年度に続いて2回目,悉皆調査として初めて実施しました。その結

果,小学校・中学校ともに,平成24年度の調査で見られた課題である

「観察・実験の結果などを整理・分析した上で,解釈・考察し,説明す

ること」について,課題の所在が明確になったことを踏まえ,全国の学

校等における学習指導の改善・充実に資するため,授業づくりの具体的

な方策を示す指導事例集を作成しました。

全国学力・学習状況調査の理科の調査では,主として「活用」に関す

る問題を作成するに当たり,「構想」,「分析(中学校は分析・解釈)」,

「適用」,「改善(中学校は検討・改善)」の4つの視点を設定している

ことから,事例集の構成は,この4つの視点に沿って,授業づくりの方

策を授業実践という形で映像を用いて示しています。

また,小学校及び中学校それぞれの先生方がお互いの指導の実態等を

把握し,小学校と中学校との学びのつながりを意識した授業づくりの改

善を図ることができるよう,小学校と中学校の学習内容の系統性を意識

した事例を複数盛り込んだ上で,小・中学校の事例を一冊にまとめてい

ます。

今後,全国の学校及び教育委員会において,本指導事例集が有効に活

用され,理科の学習指導の改善・充実を図る一助となることを期待して

おります。

結びに,本事例集の作成に当たり,授業の収録等に御協力いただきま

した小中学校の児童生徒及び先生方をはじめ,御協力いただいた方々に

心から感謝の意を表します。

平成29年3月

国立教育政策研究所

教育課程研究センター長

梅 澤 敦

本指導事例集について

本指導事例集は,次の資料で構成されています。

(1)映像資料(DVD4枚組) 小学校6事例,中学校7事例を次のように収録しています。

小学校 Disc 1 小学校 事例1~事例3

小学校 Disc 2 小学校 事例4~事例6

中学校 Disc 1 小学校 事例A~事例D

中学校 Disc 2 小学校 事例E~事例G

(2)資料編(DVD1枚)

(3)解説書(本冊子1冊)

映像資料は,各事例について,次の3つのコンテンツを収録しています。

「はじめに」 事例の概要を説明しています。

「ダイジェスト版」 授業全体を短くまとめています。

「詳細版」 <小学校> 授業のポイントとなる部分を詳しく示しています。

<中学校> 授業全体を詳しく示しています。

「ダイジェスト版」は短時間で各事例の全体像を概観できるように,「詳細版」は各事例の

内容をより深く理解できるように作成しています。研修等の場面に応じて適宜御活用ください。

資料編には,各事例の解説書のほか,授業で御活用いただけるワークシート,動画等のコンテンツ

を収録しています。なお,収録しているコンテンツは事例ごとに異なります。

本指導事例集は,各学校における,理科を担当される先生はもとより,全ての先生方の研修の材料

として,また,各教育委員会における研修会等の資料として活用されることを想定して作成していま

す。映像資料のみ,資料編のみ,解説書のみでも御活用いただくことが可能ですが,3つの資料を併

せて御活用いただくことで,より効果的な資料となります。特に資料編に収められている教材等につ

いては,映像資料と解説書を基に,授業の趣旨や学習指導の改善・充実のためのポイント等を十分に

理解した上で御活用いただくことで,より効果的な指導に役立てることができます。

【本指導事例集活用に際しての注意事項】本指導事例集は,教育委員会や学校での研修会や各先生方の日々の教育活動(授業や教材研究等)

に御活用いただくことを目的として作成したものです。著作権法等を遵守して有効に御活用ください。

なお,本映像資料の作成に当たり御協力いただいた学校,授業者及び児童生徒等の肖像権保護等の

観点から,映像資料の複製・転載(ネットワーク等への掲載を含む)等を固く禁じます。また,資料

編及び解説書についても,本指導事例集の作成目的を超えた複製・転載(ネットワーク等への掲載を

含む)等を固く禁じます。

目 次

第3学年 昆虫と植物

つかまえてきた生物は昆虫なのだろうか

第4学年 金属,水,空気と温度

水は熱せられたところからどのように温まるのだろうか

第5学年 振り子の運動振り子の1往復する時間は何によって変わるのだろうか

第5学年 流水の働き

実際の川で大雨のとき,土地の様子はどのように変化するのだろうか

第5学年 天気の変化

3日後の天気と気温はどうなるのだろうか

第6学年 水溶液の性質

塩酸にアルミニウムを入れ,液を蒸発させて残った白い粉は,アルミニウムなのだろうか

1

9

17

25

33

41

第1学年 音の世界

音の高低や大小は何に関係するのだろうか

第1学年 身の回りの物質とその性質物質の性質に着目して5種類の白い粉末を区別しよう

第2学年 電磁誘導と発電無接点充電器で電流が得られる仕組みを説明しよう

第2学年 消化と吸収の仕組み

キウイフルーツが物質を分解する働きを探ろう

第3学年 自然の恵みと災害

モデルを使った実験から竜巻が起こる仕組みと条件を考え,防災や減災に生かそう

第3学年 化学変化と電池

木炭電池を改良しよう

第3学年 日周運動と地球の自転

地球の自転と天体の動きを考えよう

49

57

65

73

81

89

97

小   

学   

中   

学   

事例1

事例A

事例B

事例C

事例D

事例E

事例F

事例G

事例2

事例3

事例4

事例5

事例6

本指導事例集(冊子)の見方

本指導事例集(冊子)の見方

事例に関連する学習指導要領の領域・

内容を示しています。

平成27年度全国学力・学習状況調査の

解説資料や報告書に基づき,「分析結果

と課題」,「学習指導に当たって」の項目

から,事例に関連する内容を記載してい

ます。

全国学力・学習状況調査の調査結果で

見られた課題を解決するために大切と考

えられる点や工夫した点等を記述してい

ます。

(1)本時の目標

(2)主な学習活動

(3)本事例の特徴

「3.本指導事例では」で述べた内

容を具体化した本事例の特徴を示して

います。

(4)展開例

映像資料に収録した授業を指導上

の留意点や評価等とともに記述して

います。また,授業の各場面で「活

用の視点」等に照らして大切と考え

られる事項を「指導のポイント」と

して示しています。

※ 本指導事例集では,次の資料については略称を用いています。これらの資料は国立教育政策研究所の

Webページに掲載しています。

資料 略称

平成27年度全国学力・学習状況調査【小学校】解説資料解説資料

同 【中学校】解説資料

解説資料で示されている

「活用の視点」等を表し

ています。

1.関連する学習指導要領の内容

2.平成27年度全国学力・学習状況調査の結果から

3.本指導事例では

5.本時:○○○○

なお,小学校の事例においては

「6.本事例における指導の工夫等」

の項目と対応する箇所を

として示しています。

指導の工夫

(1)単元の目標

(2)単元の評価規準

(3)単元の指導計画

配当時間と学習内容を示しています。

学習内容については,小学校では「主

な学習活動」,中学校では「学習の課題」

と「主な観察や実験など」として記載

しています。

「5.本時」で記載した「指導のポイ

ント」や本事例での具体的な指導の工夫

等について詳しく記述しています。

授業作りの参考となるよう,本事例を

通して見られた児童生徒の姿や,様々な

授業展開の方法などを記述しています。

資料 略称

平成27年度全国学力・学習状況調査 【小学校】報告書 報告書同 【中学校】報告書

4.単元:○○○ (全○時間)

6.本事例における指導の工夫等

7.本事例を振り返って

1

〔第3学年〕 B (1) 昆虫と植物

【分析結果と課題】

○ 学習を通して獲得した知識を実際の自然や日常生活の事物・現象に適用して考察

することに課題

植物の適した栽培場所を判断する場合において,植物の成長の様子と日光の当たり方を適用

して考察することに課題がある。〔2(5)正答率44.4%〕〔報告書P.44~P.45〕

【学習指導に当たって】

○ 学習を通して獲得した知識を実際の自然や日常生活に当てはめて考えることがで

きるようにする

植物の適した栽培場所を判断する場合において,植物の成長の様子と日光の当たり方を適用し

て考察するには,それまでの学習を通して獲得した知識を実際の自然や日常生活の事物・現象に

当てはめて考える必要がある。

指導に当たっては,例えば,日光の当たり方の違いによって同じ種類の植物でも成長の様子に

違いが見られることを捉えたり,アサガオなどの栽培経験から植物を育てる際には,鉢を日光が

よく当たる場所に置くようにしたことを想起したりするなどの学習活動が考えられる。また,本

設問のように,学校園等で教材として異なる種類の植物を栽培する際には,教師が栽培場所を決

めるのではなく,学級全体で植物の生育の仕方と日光の当たり方や日陰のでき方を考えながら,

栽培場所について話し合うなどの機会を持つことも大切である。このように,日頃から身の回り

で見られる自然や日常生活の事物・現象について,これまでに学習した内容を適用して考えられ

るようにすることが重要である。〔報告書P.45〕

2.平成27年度全国学力・学習状況調査の調査結果から

3.本指導事例では

適用事例1 つかまえてきた生物は昆虫なのだろうか

1.関連する学習指導要領の内容

○ 獲得した知識を当てはめて考えることに必要感を生む活動を設定したり,獲得

した知識を再確認し,解決の見通しを持つことができるようにしたりする

学習を通して獲得した知識を身近な自然や日常生活に当てはめて考えることができるようにす

るためには,学習を通して獲得した知識を身の回りの事物・現象に当てはめて考える場を指導過

程に意図的,計画的に設定することが大切である。その際,児童にとって獲得した知識を当ては

めて考えることに必要感を生む活動を設定したり,獲得した知識を再確認し,解決の見通しを持

つことができるようにしたりするなど,児童の学びが主体的なものになるようにすることが重要

である。そうすることで,学んだことが実際の自然に当てはまることや日常生活に役立てられる

ことを実感し,理科の学習に対する有用感を育むことが期待できる。そこで,本指導事例では,

自分たちの住む地域の昆虫図鑑をつくることを目的とした活動を設定している。自分で採取して

きた生物が昆虫かどうかを調べるために,これまで獲得した知識である昆虫の特徴や,透明容器

やチャック付ポリ袋などを使って生物を固定して観察しやすくする方法,生物の腹側を観察する

と特徴がわかりやすいなどの観察の視点を確認し,昆虫の体のつくりの特徴を身近にすむ生物

に当てはめて考えることができるようにしている。

小学校 

第3学年

事例1

小学校

小 学 校

2

(1)単元の目標

身近な昆虫や植物について興味・関心を持って追究する活動を通して,昆虫や植物の成長過程

と体のつくりを比較する能力を育てるとともに,それらについての理解を図り,生物を愛護する

態度を育て,昆虫や植物の成長のきまりや体のつくりについての見方や考え方を持つことができ

るようにする。

(2)単元の評価規準

(3)単元の指導計画(全22時間)

動活習学な主次

第一次 植物の成長と体のつくり

(10時間) 【問題】ホウセンカやヒマワリは,どのように育っていくのだろうか。

■ホウセンカやヒマワリの育ち方について予想し,話し合う。

■種子のまき方と世話の仕方を知る。

■ホウセンカなどを種子から栽培し,成長の順序を継続して調べる。

■観察結果を基に,わかったことを話し合い,まとめる。

【結論】植物の育ち方には,一定の順序がある。

■植物の土の中の様子について話し合う。

【問題】植物の体は,どのような部分からできているのだろうか。

■ホウセンカやヒマワリの体のつくりについて予想し,話し合う。

■複数の植物の体のつくりを比較しながら調べる。

■観察結果を基に,わかったことを話し合い,まとめる。

【結論】植物の体は,根,茎及び葉からできている。

第二次 チョウの成長と体のつくり

(7時間) 【問題】モンシロチョウの幼虫は卵から出た後,どのように育って成虫になるのだろうか。

■観察結果を基に,わかったことを話し合い,まとめる。

■モンシロチョウの育ち方について予想し,話し合う。

■モンシロチョウの卵や幼虫を探して飼育し,成長の順序を継続して調べる。

4.単元:昆虫と植物 (全22時間)

自然事象への科学的な思考・表現 観察・実験の技能

自然事象についての解理・識知度態・欲意・心関

①身近な昆虫や植物に興 ①昆虫同士や植物同士を ①昆虫の飼育や植物の栽 ①昆虫の育ち方には一定

味・関心を持ち,進ん 比較して,差異点や共 培をしながら,虫眼鏡 の順序があり,その体

でそれらの成長のきま 通点について予想や仮 等の器具を適切に使っ は頭,胸及び腹からで

りや体のつくりを調べ 説を持ち,表現してい て,その活動や成長を きていることを理解し

ようとしている。 る。 観察している。 ている。

②身近な昆虫や植物に愛 ②昆虫同士や植物同士を ②昆虫や植物の体のつく ②植物の育ち方には一定

情を持って,探したり 比較して,差異点や共 りや育ち方を観察し, の順序があり,その体

育てたりしようとして 通点を考察し,自分の その過程や結果を記録 は根,茎及び葉からで

いる。 考えを表現している。 している。 きていることを理解し

ている。

小学校 

第3学年

事例1

小学校

小 学 校

3

【結論】モンシロチョウの幼虫は,卵から出た後,蛹になって成虫になる。

【問題】モンシロチョウの体は,どのようなつくりになっているのだろうか。

■モンシロチョウの体のつくりについて予想し,話し合う。

■飼育しているモンシロチョウの体のつくりを調べる。

■観察結果を基に,わかったことを話し合い,まとめる。

【結論】モンシロチョウの体は,頭・胸・腹からできていて,胸には6本のあしがあり,は

ねがついている。

【問題】他の生物の体のつくりでモンシロチョウと似ているところはどこだろうか。

■他の生物の体のつくりでモンシロチョウと似ているところについて予想し,話し合う。

■予想した体のつくりを基にして,視点を持って観察し,観察カードに記録する。

■観察結果を基に,わかったことを話し合い,まとめる。

【結論】体が三つの部分からできていて,胸にあしが6本ある生物が多いが,体が二つの部

分からできている生物やあしが多くある生物もいる。

第三次 昆虫の成長と体のつくり

(5時間) 【問題】育てている昆虫の仲間は,どのように育って成虫になるのだろうか。

■飼育している昆虫の仲間の育ち方について予想し,話し合う。

■飼育している昆虫の仲間の体のつくりを調べる。

■観察結果を基に,わかったことを話し合い,まとめる。

【結論】昆虫には,蛹にならず成虫になるものもある。

【問題】つかまえてきた生物は昆虫なのだろうか。

■児童一人一人が採取してきた生物が昆虫と判断できる理由について全体で話し合う。

■採取してきた生物の体のつくりを調べる。

■採取してきた生物の体のつくりから,その生物が昆虫かどうかをまとめる。

【結論】○○は,~の理由で昆虫であった。◇◇は,~の理由で昆虫ではなかった。

本時(5/5)

小学校 

第3学年

事例1

小学校

小 学 校

4

動活習学な主)2(標目の時本)1(

採取してきた生物を観察し,昆虫の体のつくり

の特徴に当てはめながら昆虫かどうかを確認し,

判断した自分の考えを表現することができる。

(3)本事例の特徴

(4)展開例

学習活動◆ 指導・支援,留意点

□ 評価規準等

<前時までの様子>

モンシロチョウを卵から育て,継続して観察することを通して,モンシロチョウの成長の過

程や体のつくりを確認している。さらに,飼育している生物や校庭の生物を観察することを通

して,「あしが6本ある」,「体が頭・胸・腹からできている」,「胸にあしやはねがついて

いる」という共通点を持つ生物が昆虫であるという考えを持っている。また,モンシロチョウ

と同じように「卵→幼虫→蛹→成虫」と成長する生物や,蛹の時期のない生物がいることも確

認している。

本時の前には,「昆虫図鑑」を作成するために,身近な場所にすんでいる生物の中で昆虫で

あると思う生物を採取している。

1.問題の設定

■生物を採取してきた目的を確認し,把握する。■教師が採取してきたダンゴムシ,アリグモ,ア

リを見て,昆虫の仲間であるかどうかを話し合う。

1.問題の設定

2.予想の確認

3.検証計画の立案

4.観察,結果の整理,考察

5.考察した内容の話合い

6.結論の導出

7.振り返り

本事例は,「つかまえてきた生物は昆虫なのだろうか」という問題に対して,採取してきた生物

について,学習を通して獲得した昆虫の体のつくりの特徴(①頭・胸・腹からできている,②あし

は6本ある,③6本のあしは胸の部分にある)を適用して昆虫かどうかを判断し,判断が難しい生

物について学級全体で話し合う際に,根拠を示しながら説明するようにしている。

本事例の指導のポイントとして,獲得した知識を当てはめて考えることに必要感を生む活動を設

定したり,獲得した知識を再確認し,解決の見通しを持つことができるようにしたりするように授

業を構成している。

指導のポイントを達成するための工夫として,目的を明確にして観察場面を設定することで,主

体的に学習に向かう意欲を高めるようにしている。また,判断の妥当性を問いかけることで,獲得

した知識を適用して解決する問題を見いだせるようにしたり,獲得した知識や方法,観察の視点等

を再確認し,根拠を持った判断につなげたりできるようにしている。

詳細版の場面

5.本時:昆虫の成長

指導の工夫(1)

指導の工夫(2)

小学校 

第3学年

事例1

小学校

小 学 校

5

・このアリはあしが8本もある。・アリの写真を見ると,アリはあしが6本だか

ら,あしが8本のアリは昆虫ではない。・自分たちが採ってきた生物は昆虫なのかどうか,詳しく調べたい。

問題:つかまえてきた生物は昆虫なのだろうか。

2.予想の確認

■児童一人一人が採取してきた生物が昆虫であると考えた理由について全体で話し合う。

バッタは,体 コオロギは, ハサミムシは,が頭・胸・腹 あ し が 6 本 あ し が 6 本からできてい あったと思う あって昆虫だて,胸には6 けど,体は頭・ と思う。本のあしがあ 胸・腹からでるから昆虫だ きていたかどと思う。 うかわからな

い。

3.検証計画の立案

■これまでの学習を基に観察や記録の方法を考える。

◆採取してきた生物は飼育ケースに入れておくが,観察する際には,大きさの異なる透

透明容器に入 虫眼鏡を使う タブレットPC 明容器や虫眼鏡等を準備し,生物の大きされて調べると,と,小さな生 で写真を撮っ や観察の目的に応じて自由に選択できるよ腹側の体のつ 物でも大きく て,昆虫の特 うにしておく。その際には,昆虫が容器内くりがよくわ 見ることがで 徴をかいてお を動いたときに体に傷がつかないようにすかると思う。 きると思う。 くと,説明す るために,適切な大きさの容器を選ぶこと

え使にきとる ができるようにする。また,はねのある生ると思う。 物を観察する際は,はねを軽く指で挟んで

観察するように助言する。

◆昆虫の体のつくりを確認することができるように,昆虫の体のつくりの特徴をまとめたものを掲示するようにする。

4.観察,結果の整理,考察

■生物を透明容器やチャック付ポリ袋に入れて観察す ◆昆虫であると判断した根拠を示しながら説る。 明できるようにするためには,どのような

指導のポイント<適用>

獲得した知識を再確認し,解決の見通しを持つことができるようにする

採取してきた生物が昆虫かどうかを判断するために,これまでの学習を通して獲得した「昆虫の体のつくり」についての知識や,観察の方法や視点等を再確認する場を設定することが大切である。本事例では,検証計画の立案の際に,

昆虫の体のつくりの三つの特徴を確認することができるように指導している。また,目的に応じて虫眼鏡を使用したり,腹側から観察したりするとよいことを確認している。

指導のポイント<適用>

獲得した知識を当てはめて考えることに必要感を生む活動を設定する

学習を通して獲得した知識を身近な自然や日常生活に当てはめて考えることができるようにするためには,学習を通して獲得した知識を身の回りの事物・現象に当てはめて考える場を指導過程に意図的,計画的に設定することが大切である。本事例では,アリと間違いやすいア

リグモの写真を提示し,昆虫の特徴が当てはまるかを確認した上で,昆虫かどうかを判断するためには,詳しく観察する必要があることを捉えられるようにしている。判断の妥当性を問いかける

指導の工夫(1)

指導の工夫(3)

小学校 

第3学年

事例1

小学校

小 学 校

6

■昆虫かどうかを判断した根拠がわかるようにタブ 記録を残すことで昆虫かどうかについてわレットPCで撮影する。 かりやすく説明できるかを考えられるよう

■撮影した画像に根拠をかき込む。 にする。■タブレットPCで撮影した画像を見ながら,観察結

果を整理したり考察したりする。 ◆毒やとげのある生物が存在するので,児童が観察する生物は必ず事前に把握し安全に配慮する必要がある。

◆虫眼鏡については,使い方や注意を掲示して正しく安全に使用できるようにする。

◆これまでに学習した昆虫の特徴を適用して,調べている生物の観察結果を基に,昆虫かどうかを判断できるようにする。

バッタを透明 コオロギは, ハサミムシは, ◆タブレットPCやデジタルカメラで撮影した容器に入れる 力が強くて動 チャック付ポ 画像に観察した事実を記入できるようにすると,体のつく くので,虫眼 リ袋に入れる ことで,観察した事実を児童同士で共有できりがよくわか 鏡では見にく と,体のつくり るようにする。る。説明する い。写真も撮 が よ く わ かために写真を りにくい。 る。小さいの撮っておこう。 で,虫眼鏡で観

察しよう。

5.考察した内容の話合い

■昆虫だと判断した理由を明確にして説明する。 ◆昆虫かどうかわからない生物について,学級全体で話し合うようにする。

バッタは,体 コオロギは, ハサミムシは, ◆観察結果を黒板に掲示して,採取してきた生が頭・胸・腹 体が頭・胸・ 体が頭・胸・ 物が昆虫かどうかを学級全体で確認できるよからできてい 腹からできて 腹からできて うにする。て,胸に6本 いて,胸に6 いて,胸にはのあしがあっ 本 の あ し が ねと6本のあ ◆結論を導き出すために,観察から得られた結たので昆虫だ あったので昆 しがあったの 果と考察した内容,また,学級全体で話しと思う。 虫だと思う。 で昆虫だと思 合った内容を基に判断できるようにする。

う。□採取してきた生物を観察し,昆虫の体のつく

りの特徴に当てはめながら昆虫かどうかを確認し,判断した自分の考えを表現することが

6.結論の導出 できている。(科学的な思考・表現 発言分析・記述分析)■採取してきた生物の体のつくりから,その生物

が昆虫かどうかをまとめる。

・ハサミムシは体が頭・胸・腹からできていて,胸に6本のあしがあるので,昆虫である。

・バッタとコオロギも頭・胸・腹からできていて,胸に6本のあしがあるので,昆虫である。

結論:○○は,~の理由で昆虫であった。◇◇は,~の理由で昆虫ではなかった。

7.振り返り

■本時の振り返りを行う。 ◆観察した生物は,生物を愛護する態度を育てるために,学習後には自然に返すようにする。

判断した内容をかき込む

指導の工夫(4)

小学校 

第3学年

事例1

小学校

小 学 校

7

(1)目的を明確にした観察場面を設定することで,主体的に学習に向かう意欲を高める学ぶことに興味・関心を持ち,主体的に学習に向かう意欲を高めるためには,学級全体で取り

組む活動を設定し,児童一人一人が観察の目的を明確に持つことが大切である。本事例では,昆虫図鑑をつくることをきっかけとして,あらかじめ昆虫であると考えて採取し

てきた生物が昆虫かどうかを調べるための観察となるようにした。また,児童一人一人がそれぞれ一匹の生物を責任を持って観察し,昆虫かどうかを判断する状況を設定し,主体的に学習に向かう意欲を高められるようにした。

(2)判断の妥当性を問いかけることで,獲得した知識を適用して解決する問題を見いだ

せるようにする児童がこれまで獲得した知識を適用して実際の自然や

日常生活において解決する問題を見いだすことができるようにするためには,問題を設定する際に児童の判断の妥当性を問いかける働きかけが考えられる。本事例では,採取してきた生物について,昆虫の体の

つくりの特徴(①頭・胸・腹からできている,②あしは6本ある,③6本のあしは胸の部分にある)に当てはめながら,昆虫かどうかを検討できるようにした。その際,昆虫かどうかを正しく判断するためには,より丁寧に観察する必要があるという意識を高めるために,一見すると昆虫であるアリに見えるアリグモを提示した。

(3)獲得した知識や方法,観察の視点等を再確認し,根拠を持った判断につなげる根拠を持って判断できるようにするためには,

児童が観察をする前にこれまでの学習で獲得した知識を再確認することが大切である。本事例では,観察した生物が昆虫かどうか

を判断するために,昆虫の体のつくりについての獲得した知識が必要になる。そのため,導入の段階でいくつかの生物を提示し,昆虫かどうかを児童に問う中で,昆虫かどうかを判断する三つの特徴を再確認し,共通理解を図るようにした。そうすることで,昆虫かどうかを判断する根拠を話し合うことにつながる。また,観察するための道具や視点等,これまで獲得した観察の技能も必要となる。観察の計画

を立てる際に,透明容器やチャック付ポリ袋に入れると観察しやすいことや虫眼鏡で観察することを共通理解できるようにした。さらに,体の三つの部分やあしについて観察するためには腹側から観察するとよくわかるという観察の視点を再確認した。

(4)観察した事実を共有し,考察した内容の話合いを促す児童一人一人が観察した事実をグループや

学級全体で検討しやすくするためには,タブレットPCで撮影した写真を共有するなどの工夫をして,観察した事実を全体で確認できるようにすることが大切である。

本事例では,昆虫かどうかを判断しにくい生物を取り上げ,その生物を撮影した写真を共有して,グループや学級全体で事実を確認し,昆虫かどうかを検討できるようにした。昆虫の体のつくりがどのようになっているのかをタブレットPCの画像にかき込んで示すことで,昆虫かどうかを判断する三つの特徴について検討する話合いができるようにした。なお,タブレットPCがない環境でも,観察する生物をあらかじめデジタルカメラなどで撮影

して印刷しておくことで,同じように展開することができる。

チャック付ポリ袋を

用いた観察

虫眼鏡を用いた観察

提示したアリグモ提示したアリ

6.本事例における指導の工夫等

考察した内容を全体で発表観察した事実を

グループで検討

小学校 

第3学年

事例1

小学校

小 学 校

8

(1)獲得した知識を実際の自然や日常生活に当てはめて考える

本事例では,昆虫の体のつくりを学習した後,「昆虫だと思う生物をつかまえてこよう」とい

う活動を行った。これまでに全員で学んだ昆虫だけではなく,児童が校庭や公園等の実際の自然

において採取してきた生物に対しても,昆虫の体は「頭・胸・腹からできている」,「あしは6

本ある」,「あしは胸の部分にある」という体のつくりの三つの特徴を適用させる姿が見られ

た。

児童の実態や地域の実情に合わせ,昆虫図鑑や昆虫マップを作成する活動を取り入れながら学

んだことを適用する本事例のような場を設定すると,児童が目的意識を持って学びに向かうこと

ができる。

さらに,本事例後,本事例で観察した昆虫以外にも昆虫の特徴を当てはめて考えてみたいと考

える児童や,身近な自然において昆虫と出会う場面があると,あしの本数や体の三つの部分を調

べ,昆虫かどうかを判断しようとする児童が見られた。

(2)獲得した知識を適用して解決する問題を見いだす

児童が学習を通して獲得した知識を適用し,昆虫と思う生物を採取してきたが,さらに細部ま

で観察することに目的意識を持つことができるように,昆虫かどうかの判断が難しいアリグモを

提示した。まず,昆虫ではないことを明確に捉えることができる「ダンゴムシ」,次に「アリ」

によく似ているが体の部分やあしの本数が昆虫とは異なる「アリグモ」,最後に昆虫であること

を明確に捉えることができる「アリ」を提示した。児童は,アリとアリグモの二つの生物を比較

することを通して,「一見すると昆虫だと思ったものが,昆虫ではなかった」と問題意識を持ち

始めた。昆虫を採取した時には「この生物は昆虫だ」と思っていた児童も,「自分がつかまえた

生物が昆虫かどうかを判断するには,もっと詳しく観察する必要がある」という目的意識を持

ち,児童の中に観察する必然性を持たせることができたと考えられる。

授業開始時には「つかまえてきた生物は昆虫だ」と考えていた児童が,判断の妥当性を問われ

ることにより「昆虫かどうかは詳しく観察する必要がある」と問題意識を持つことになった。観

察後には「詳しく観察した結果,昆虫であることがはっきりとわかった」というように,自らの

学びを振り返り,学びの高まりを自己評価する姿が授業の終末で発言となって表れていた。

また,昆虫かどうかの判断が難しい生物を比較する場を設定することで,これまでの学習で獲

得した昆虫かどうかの判断の根拠となる知識や観察の視点や技能を確認することができた。

さらに,「アリ」と「アリグモ」のように判断がすぐにはできない生物を児童の実態や地域の

実情に合わせて提示すると,観察に対する必然性を持たせることができる。また,カマキリやカ

ブトムシなどの甲虫類等の昆虫ではある

が,頭,胸,腹の形がモンシロチョウなど

既習の昆虫と異なる生物を提示することで

観察に対する必然性を持たせることも考え

られる。

7.本事例を振り返って

振り返りのノート

小学校 

第3学年

事例1

小学校

小 学 校

9

〔第4学年〕 A (2) 金属,水,空気と温度

【分析結果と課題】

○ 実験結果を基に自分の考えを記述することに課題

熱膨張が小さい金属について,グラフを基に考察して分析し,他と比較して解釈した内容を

記述することに課題がある。〔1(3)正答率63.0%〕〔報告書P.28~P.29〕

【学習指導に当たって】

○ 事実と解釈したことを示して判断の根拠や理由を説明できるようにする

考察したことや判断した根拠や理由を説明する際には,観察,実験の結果を基に事実と解釈の

両方を示す必要があることを理解することが大切である。

指導に当たっては,表現したことを振り返り,事実の捉えは適切か,解釈した内容は問題と正

対しているかなどを確認すると同時に,事実と解釈の両方を表現することがより的確な説明にな

ることを捉えられるように指導することが大切である。例えば,電磁石の働きと巻数との関係を

調べ,考察する際には,「電磁石の働きが強くなった」という判断した内容を表現するだけでは

不十分であり,判断に至った根拠や理由を確認していくことが重要である。「グラフから,巻数

が多くなると持ち上がるクリップの数が増えるので,巻数が多くなると電磁石の働きが強くなる

といえる。」などのように,考えの根拠となる事実と,事実を基に解釈したことの両方を表現す

る必要があることを確認するなどの学習活動が考えられる。〔報告書P.29〕

1.関連する学習指導要領の内容

2.平成27年度全国学力・学習状況調査の調査結果から

事例2 水は熱せられたところからどのように温まるのだろうか 分析

3.本指導事例では

○ 実験で得られた結果から全体的な傾向を読み取り,原因と結果を関係付けながら考

察する場を設定する

事実と解釈したことを示して判断の根拠や理由を説明できるようにするためには,一つの実

験結果だけではなく,複数の実験で得られた結果から全体的な傾向を読み取り,原因と結果を

関係付けながら考察する場を設定することが大切である。そこで,本指導事例では,仮説を基

に行った複数の実験の結果を全体で共有し,各グループが行った実験の妥当性を確認するとと

もに,実験結果の傾向を読み取る場面を設定している。

児童一人一人が原因と結果を関係付けながら考察するためには,児童の考えを板書で構造化

し明確にすることが大切である。そこで,本指導事例では,児童がそれまでに学習した内容や

日常生活で経験したことを振り返りながら,根拠のある予想や仮説を発想し,視点を明確にし

て実験できるようにするとともに,思考の流れを可視化できるよう,色分けをしたりすること

で,構造的に示して板書するようにしている。

小学校 

第4学年

事例2

小学校

小 学 校

10

(1)単元の目標

金属,水及び空気の性質について興味・関心を持って追究する活動を通して,温度の変化と金

属,水及び空気の温まり方や体積の変化とを関係付ける能力を育てるとともに,それらについて

の理解を図り,金属,水及び空気の性質についての見方や考え方を持つことができるようにす

る。

(2)単元の評価規準

(3)単元の指導計画(温まり方の違い 全6時間)

動活習学な主次

第一次 金属の温まり方

(2時間) ■日常生活で物を温めた経験を振り返りながら,金属,空気,水の温まり方について気付

いたことを話し合う。

【問題】金属は熱せられたところからどのように全体が温まるのだろうか。

■金属の棒や板を熱したときの温まり方について,生活経験を基に予想や仮説を持つ。

■実験方法を考え,実験する。

■実験結果を基に,金属の温まり方について考え,発表する。

【結論】金属は,熱せられたところから順に温まっていく。

第二次 空気の温まり方

(2時間) ■暖房している教室の天井付近と床付近の空気の温度を測る。

【問題】空気は熱せられたところからどのように全体が温まるのだろうか。

■ビーカー内の空気を熱したときの温まり方について,金属の温まり方や生活経験を基

に予想や仮説を持つ。

4.単元:金属,水,空気と温度 (全24時間)

自然事象への科学的な思考・表現 観察・実験の技能

自然事象についての解理・識知度態・欲意・心関

①金属,水及び空気を温 ①金属,水及び空気の体 ①加熱器具などを安全に ①金属,水及び空気は,

②物の温まり方の特徴を いて予想や仮説を持ち, ②金属,水及び空気の体 や空気は熱せられた部

適用し,身の回りの現 表現している。 積変化の様子や温まり 分が移動して全体が温

象を見直そうとしてい ②金属,水及び空気の体 方の特徴や,水の状態 まることを理解してい

る。 積変化の様子,温まり 変化を調べ,その過程 る。

方と温度変化や,水蒸 や結果を記録してい ③水は,温度によって水

気や氷に姿を変える水 る。 蒸気や氷に変わること

。るいてし解理を化変度温と化変態状の

が積体とるなに氷が水④,し察考てけ付係関を

てし解理をとこるえ増てし現表をえ考の分自

。るい。るい

めたり冷やしたりした

ときの現象に興味・関

心を持ち,進んでそれ

らの性質を調べようと

している。

小学校 

第4学年

事例2

小学校

小 学 校

積変化の様子,温まり

方と温度変化や,水蒸

気や氷に姿を変える水

の状態変化と温度を関

係付けて,それらにつ

 温めたり冷やしたりす

 ると,その体積が変わ

 ることを理解している。

②金属は熱せられた部分

 から順に温まるが,水

操作し,金属,水及び

空気の体積変化や温ま

り方の特徴を調べる実

験やものづくりをして

いる。

11

■実験方法を考え,実験する。

■実験結果を基に,空気の温まり方について考え,発表する。

【結論】空気は熱せられたところから温まり,温まった空気はそのまま真っ直ぐ上がって

いく。上がった温かい空気は横に広がるように移動し,上の方の全体が温まってい

く。上の方が温まると,下の方へと温まっていき,やがて全体が温まる。

第三次 水の温まり方

(2時間) 【問題】水は熱せられたところからどのように全体が温まるのだろうか。

■ビーカーに入った水を熱したときの温まり方について,金属や空気の温まり方や生活経

験を基に予想や仮説を持つ。

■実験方法を考え,実験する。

■実験結果を基に,水の温まり方について考え,発表する。

【結論】水は熱せられたところから温まり,温まった水はそのまま真っ直ぐ上がっていく。

上がった温かい水は横に広がるように移動し,上の方の全体が温まっていく。上の

方が温まると,下の方へと温まっていき,やがて全体が温まる。

動活習学な主)2(標目の時本)1(

温度変化と水の温まり方を関係付けて考察し,

自分の考えを表現することができる。

(3)本事例の特徴

1.前時の振り返り

2.問題の設定

3.予想

4.検証計画の立案

5.実験

6.結果の共有

7.考察

8.結論の導出

本事例は,「水は熱せられたところからどのように温まるのだろうか」という問題に対して,事

実として得られた水の「動き」と「温度変化」を調べた二つの実験結果と,それらを根拠とした解

釈の両方で水の温まり方を説明している。

本事例の指導のポイントとして,実験で得られた結果から全体的な傾向を読み取り,原因と結果

を関係付けながら考察したり,言葉でまとめて説明したりする場を設定している。

指導のポイントを達成するための工夫として,既習事項や生活経験を振り返り,根拠のある予想

や仮説を発想できるようにしている。また,原因と結果を関係付けながら考察できるように,実験

で得られた結果から全体的な傾向を読み取ることができるようにしている。さらに,事実と解釈を

分けて考えられるように結果のみを記録するワークシートを用意したり,実験結果を整理して構造

的に示したりすることにより,二つの実験結果を基に考察できるようにしている。

本時(1・2/2)

5.本時:水の温まり方

小学校 

第4学年

事例2

小学校

小 学 校

12

(4)展開例

学習活動◆

指導・支援,留意点

評価規準等

<前時までの様子>

「空気は熱せられたところからどのように温まるのだろうか」という問題に対して,金属の温まり方や生活経験を基にして,「熱せられたところから順に温まる」という予想や「上の方から温まる」という予想を持ち,ビーカー内の空気の温まり方を調べた。実験結果から「空気は熱せられたところから温まり,温まった空気はそのまま真っ直ぐ上がっていく。上がった温かい空気は横に広がるように移動し,上の方の全体が温まっていく。上の方が温まると,下の方へと温まっていき,やがて全体が温まる。」という結論をつくりだしている。

1.前時の振り返り

■金属や空気の温まり方について学習したことを確認する。

2.問題の設定

生,りたしに基を論結や果結験実のでま時前◆。るす認確を題問の時本■活経験を想起したりしながら,根拠のある予想や仮説を発想できるようにする。

問題:水は熱せられたところからどのように温まるのだろうか。

3.予想

■ビーカーに入った水を熱したときの温まり方について金属や空気の温まり方や生活経験を基に予想や仮説を持つ。

水は,空気のように自 水は,金属のように目に由に動くことができる 見えるので,水は金属のので,熱せられたとこ ように熱せられたところろから上がっていき, から順に熱が伝わりなが上から順に温まってい ら温まっていくと思う。くと思う。

4.検証計画の立案

■予想を確かめるための実験方法を考え,発表する。

■予想と一致した場合の結果の見通しを考え,発表する。

<水の動き> <温度変化>空気の動き方を線香 空気の温まり方を示温の煙で調べたよう テープで調べたように,に,水に絵の具を入 水に示温テープを入れれて,水の動きを調 て,温度の変化を調べよべよう。 う。

詳細版の場面

指導のポイント<分析>

実験で得られた結果から全体的な傾向を読み取り,原因と結果を関係付けながら考察する場を設定する

水の温まり方について,判断の根拠や理由を説明できるようにするためには,水の温度変化だけではなく,熱せられた水の動きを調べた実験結果からも全体的な傾向を読み取り,二つの事実をあわせて捉え,それらの事実を根拠に説明することが大切である。

指導の工夫(2)

指導の工夫(1)

小学校 

第4学年

事例2

小学校

小 学 校

13

5.実験

■必要な器具を用意して,考えた方法で実験する。 ◆火の扱いや器具の使用について指導し,安全に配慮する。

◆実験がうまくいかなかったり,予想と異なる結果が得られたりした場合は,実験方法を振り返り,実験を再度行うように促す。

■実験結果をワークシートに記入する。

6.結果の共有

■各グループの実験結果を確認し,全体的な傾向示掲をトーシクーワためとまにとごプールグ◆。る取み読を

し,共有を図る。

絵の具は熱せられた 示温テープは上から下にところから上に動 徐々に色が変わった。き,横に広がって,下に動いた。

7.考察

■実験結果を基に考えられることを言葉でまとめ,ノートに書く。

絵の具の動きを

観察する

示温テープの色の変化を

観察する

また,原因と結果を関係付けながら考察するためには,初めに,生活経験や既習事項である金属や空気の温まり方を振り返り,それを基に根拠のある予想や仮説を発想することで,「水の動き」と「温度変化」の両方を調べることに必要感を持たせることが大切である。

全体的な傾向を読み取る

指導のポイント<分析>

実験で得られた結果から全体的な傾向を読み取り,原因と結果を関係付けながら考察する場を設定する

動きについての

実験方法を発表する

温度変化についての

実験方法を発表する

指導の工夫(4)

指導の工夫(5)

指導の工夫(3)

小学校 

第4学年

事例2

小学校

小 学 校

14

絵の具は上に動き, 示温テープは上から下に横に広がって,下に 徐々に色が変わったの動いたので,水は熱 で,上から下へと温まるせられたところから と考えられる。上に動き,横に広がって,下に動くと考えられる。

水は熱せられたところから上に動いて,上から下へ全体が温まると考えられる。

8.結論の導出

■結論をまとめ,ノートに書く。 ◆それぞれのグループの実験結果と考察から,本時の問題に対する結論を導き出せるようにする。

□温度変化と水の温まり方を関係付けて考察し,自分の考えを表現している。(科学的な思考・表現 発言分析・記述分析)

結論:水は,空気のように熱せられたところから上に動いて,上から下へ全体が温まる。

(1)既習事項や生活経験を振り返り,根拠がある予想や仮説を発想できるようにする

根拠がある予想や仮説を発想できるようにするためには,それまでに学習した内容や日常生活

で経験したことを振り返りながら考えられるようにすることが大切である。

本事例では,これまでに学習した金属や空気の温まり方を振り返る場を設定し,「水は金属と

同じように目に見えるから,金属と同じような温まり方をすると思う」,「水は空気のように自

由に動くことができるから,空気と同じような温まり方をすると思う」と根拠のある予想を持つ

ことができるようにした。

二つの事実を基に解釈し,

考察できるよう促す

6.本事例における指導の工夫等

原因と結果を関係付けながら考察するためには,板書において,水の「動き」と「温度変化」に関する記述を明確に分けて示し,それぞれの実験結果と考察の関係,対応する思考の流れが明確になるように示すことが大切である。例えば,調べている内容ごとに色分けをしたり,表で示したりすることが考えられる。この学習場面では,「絵の具は熱せら

れたところから上に動き,横に広がって,下に動いた」という事実と,「示温テープの色が上から変化した」という二つの事実を確認することが大切である。その上で二つの事実を基に,水が熱せられたところからどのように温まるのかを解釈し,言葉でまとめるようにしている。

小学校 

第4学年

事例2

小学校

小 学 校

15

(2)予想した内容を確認し,視点を明確にして実験を行うことができるようにする

視点を明確にした実験を行うことができるようにす

るためには,何を明らかにすることが必要なのかを捉

えて実験を構想することが大切である。

本事例では,水の温まり方について児童一人一人が

予想した内容を全体で話し合うことで,予想が「金属

のように熱が伝わるのか」,あるいは,「空気のよう

に熱せられたところが動くのか」ということに問題が

焦点化されるようにした。そこでは,熱せられた水が

動くのか動かないのかを明らかにすることで,予想を確かめることができることを捉え,示温テー

プを使ってビーカー内の水の温度変化を調べることに加えて,絵の具を用いて水の動きについて

も調べるようにした。

(3)実験結果を整理して構造的に示すことにより,二つの実験結果を基に考察できるよ

うにする

二つの実験結果を基に自分の予想したこ

とを振り返りながら考察できるようにする

ためには,それぞれの実験結果とそれぞれ

の結果からいえることを区別して記載し,

思考の流れに沿った板書にすることが考え

られる。

本事例では,水の温まる様子が金属と同じように温まると予想した内容と,空気と同じように

温まると予想した内容を分けて板書するようにした。それぞれの予想や実験の視点,実験結果ま

でを構造的に示すことで,事実としての実験結果を基にした考察ができるようにした。

(4)事実と解釈を分けて考えられるように,結果のみを記録するワークシートを用意する

児童は実験結果を記録するとき,解釈したことも結果に含

めて書いてしまうことがしばしば見られる。そこで,結果で

ある事実と解釈を分けて捉えられるようにするために,実験

結果のみを記録するワークシートを作成し,解釈した内容は

ワークシートとは別にノートに書くようにした。

本事例では,水が温まる様子や水が動く様子を矢印で記録

していくのではなく,示温テープの色が変わる様子や絵の具

の様子を実験の「はじめ」「なか」「おわり」の三つの場面

に分けて記録するようにした。

(5)原因と結果を関係付けながら考察できるように,全体的な傾向を読み取ることがで

きるようにする

事実と解釈したことを示して判断の根拠や理由を説明できるようにするためには,実験で得ら

実験結果を構造的に示し,考察を促す

予想を基に調べる視点を明確にする

実験結果のみを記録する

ワークシート

小学校 

第4学年

事例2

小学校

小 学 校

16

れた結果から全体的な傾向を読み取り,原因と結果を関係付けながら考察したり,判断した根拠

や理由を言葉でまとめて相手にわかりやすく説明したりする場を設定することが大切である。

本事例では,水の温まる様子について,絵の具が動く様子を観察することで「熱せられた水は

上の方へ動いていく」,また,示温テープの色の変化を観察することで「温度は上の方から順に

高くなる」と解釈できるようにした。実験ごとに得られた結果と解釈した内容を学級全体で確認

しながら,「水は熱せられたところから上に動き,まわるように上から下へ温まる」という結論

を導き出すようにした。

(1)実験で得られた結果から全体的な傾向を読み取り,判断の根拠とする

本事例では,水の「動き」と「温度変化」を調べる二

つの実験を各グループで行った。実験後は,実験結果を

記録したワークシートを二つの実験ごとに分けて移動黒

板に掲示した。他のグループの実験結果も確認すること

で,同じ結果が得られていたのか,実験が正しく行われ

ていたのかなどの妥当性を検討しながら「絵の具は上に

動き,横に広がって,下に行った」,「示温テープは,

上から下に徐々に色が変化した」という傾向を読み取る

ことができていた。そこで確認された傾向は,その後の

考察する際の判断の根拠となっていた。

(2)原因と結果を関係付けながら考察したり,言葉でまとめて説明したりする

本事例では,絵の具の動きを観察して水の動きを調

べる実験においては,「絵の具は上に動き,横に広がっ

て,下に動いた」という結果から「水は熱せられたと

ころから,上に動き,回るように温まる」と考察し

た。しかし,絵の具の動きからは水の温度や温まる様

子については解釈することはできないことを確認し,

実験内容と実験結果を再度振り返り,実験結果から考

えられることのみでまとめるようにした。

示温テープの色の変化を観察して水の温度変化を調

べる実験においては,「示温テープは,上から下に徐々に色が変化した」という結果から「水は

上から下へ温まる」と考察した。さらに,温度変化だけに着目した考察の内容に対して,絵の具

の様子を調べた結果から水の動きにも着目して考察できることを確認した。このような指導の工

夫を基に,「水は熱せられたところから上に動いて,上から下へ全体が温まる」と言葉でまとめ

ることができた。

水の温度変化を記録したワークシート

児童が記入したノート

7.本事例を振り返って小学校 

第4学年

事例2

小学校

小 学 校

17

〔第5学年〕 A (2) 振り子の運動

【分析結果と課題】

○ 実験結果を基に自分の考えを改善することに課題

水の温まり方を考察するために,実験結果を基に自分の考えを改善することに課題がある。

〔3(3)正答率51.9%〕〔報告書P.51~P.52〕

【学習指導に当たって】

○ 自分の予想と実験結果を照らし合わせ,より妥当な考えに改善できるようにする

実験結果を基により妥当な考えに改善するには,実験前の自分の予想と実験で得られた結果を

照らし合わせ,自分の予想が確認されたのか検討することが大切である。

指導に当たっては,本設問のように,温度計の温度が高くなる順番を実験結果の表から読み取

り,自分の予想と照らし合わせる活動を行うことが考えられる。自分の予想が実験結果と一致し

ない場合には,より妥当な考えに改善するために,予想を振り返り,見直し,再検討したり,他

者の予想を振り返ったりすることで,自らの考えを修正し,結果から適切に考察できるようにす

ることが大切である。〔報告書P.52〕

1.関連する学習指導要領の内容

2.平成27年度全国学力・学習状況調査の調査結果から

事例3 振り子の1往復する時間は何によって変わるのだろうか 改善

3.本指導事例では

○ 予想や実験方法を再検討し,より妥当な考えや実験方法に改善する話合いの場を設

定する

自分の予想と実験結果を照らし合わせ,より妥当な考えに改善できるようにするためには,

予想や実験方法を再検討し,より妥当な考えや実験方法に改善する話合いの場を設定すること

が大切である。そこで,本指導事例では,同じ予想を確かめるための実験を行ったにもかかわ

らず実験結果に違いが生じるなどして,実験結果から予想したことや調べようとしていること

を確かめることができなかった状況を捉え,実験方法を再検討し,より妥当な実験方法に改善

する話合いの場を設定している。

主体的に学ぶためには,児童が活動の目的を明確に持って取り組めるようにすることが大切

である。そこで,本指導事例では,実験の際には児童が立てた予想ごとにグループをつくるこ

とで,協力しながら自分の予想を確かめるための実験を計画したり行ったりできるようにして

いる。そして,実験後には他のグループが行った実験の結果と比べながら話し合い,結論をつ

くりだせるように授業を構成している。その際,実験結果の比較を容易に行うことができるよ

うに,グラフを提示するなどの工夫を行うようにしている。また,自分たちが行った実験だけ

でなく,他のグループが行った実験を行う機会を確保し,複数の結果をあわせて結論をつくり

だすことで実感を伴った理解を促すようにしている。

小学校 

第5学年

事例3

小学校

小 学 校

18

(1)単元の目標

振り子の運動の規則性について興味・関心を持って追究する活動を通して,振り子の運動の規

則性について条件を制御して調べる能力を育てるとともに,それらについての理解を図り,振り

子の運動の規則性についての見方や考え方を持つことができるようにする。

(2)単元の評価規準

(3)単元の指導計画(全9時間)

動活習学な主次

第一次 振り子の運動の規則性

(6時間) 【問題】曲に合わせて動くメトロノームのような振り子をつくることができるだろうか。

■糸の先に粘土を付けたものを鉄製スタンドにつるし,糸の長さや粘土の重さ,振れ幅

などを調整しながら曲に合わせて動く振り子をつくる。

【結論】糸の長さや粘土の重さ,振れ幅などを調整すると,振り子の1往復する時間が変

わり,曲に合わせて動く振り子をつくることができる。

■振り子の1往復する時間が変わる要因について話し合う。

【問題】振り子の1往復する時間は何によって変わるのだろうか。

■振り子の1往復する時間は,振り子の長さ,おもりの重さ,振れ幅のいずれの要因が関

係しているのか,これまでの生活経験や既習事項を基に予想や仮説を持つ。

■予想した内容ごとにグループになり,振り子の1往復する時間を変える要因を調べる

実験方法を考える。

■グループごとに考えた実験方法を確認し,結果の見通しを持つ。

■振り子の1往復する時間を変える要因を調べる実験を予想した内容ごとのグループで行

■実験結果を表やグラフにまとめる。

■他のグループの実験結果を確認し,全てのグループの実験結果からいえることを確認す

る。

本時(6/6)

4.単元:振り子の運動 (全9時間)

自然事象への科学的な思考・表現 観察・実験の技能

自然事象についての解理・識知度態・欲意・心関

①振り子の運動の変化に ①振り子の運動の変化と ①振り子の運動の規則性 ①糸につるしたおもりが

興味・関心を持ち,自 その要因について予想 を調べる工夫をし,そ 1往復する時間は,お

ら振り子の運動の規則 や仮説を持ち,条件に れぞれの実験装置を的 もりの重さなどによっ

性を調べようとしてい 着目して実験を計画し, 確に操作し,安全で計 ては変わらないが,糸

る。 表現している。 画的に実験やものづく の長さによって変わる

②振り子の運動の規則性 ②振り子の運動の変化と りをしている。 ことを理解している。

を適用してものづくり その要因を関係付けて ②振り子の運動の規則性

をしたり,その規則性 考察し,自分の考えを を調べ,その過程や結

を利用した物の工夫を 表現している。 果を定量的に記録して

。るいしとうよしりたし直見

ている。

う。

小学校 

第5学年

事例3

小学校

小 学 校

19

■同じ予想を確かめるための実験にもかかわらず結果に違いが生じる場合は,それぞれの

実験方法を確認した上で,予想を確かめる実験方法になっているかどうかを検討し,再

実験する。

■自分が取り組んでいない他の実験をして,他のグループの実験結果を確かめる。

■実験結果を基に,振り子の1往復する時間を変える要因について考え,発表する。

【結論】振り子の1往復する時間は,振り子の長さによって変わる。

第二次 振り子の運動の規則性を用いたものづくり

(3時間) 【問題】振り子のきまりを利用して,1往復する時間が1秒の振り子や曲に合わせて動く振

り子をつくることができるだろうか。

■これまでの学習を基に,どの要因を変えて振り子を調整すればよいかを考える。

■振り子の長さによって振り子の1往復する時間について調べ,ものづくりをする。

【結論】振り子の長さを調整することで,振り子の1往復する時間を変えることができ,

1秒で動く振り子や曲に合わせて動く振り子をつくることができる。

動活習学な主)2(標目の時本)1(

振り子の運動の変化とその要因を関係付けて考

察し,自分の考えを表現することができる。

(3)本事例の特徴

1.問題の確認2.予想の確認3.実験方法の確認4.実験5.結果の整理6.結果の確認7.実験方法の吟味8.再実験9.他の実験の実施10.考察11.考察した内容の発表12.結論の導出

5.本時:振り子の運動の変化とその要因

本事例では,「振り子の1往復する時間は何によって変わるのだろうか」という問題に対して,

おもりの重さによって変わると予想した実験において実験結果が異なるグループが存在したことか

ら,実験方法を改善して再実験を行っている。

本事例の指導のポイントとして,振り子の1往復する時間を変える要因を調べるために構想した

実験について,得られた実験結果からは確かな結論が見いだせなかったことを受けて実験方法を再

検討し,より妥当な実験方法に改善する話合いの場を設定している。話合いでは,振り子の長さを

変えると振り子の1往復する時間が変わった結果を基に,おもりを下につなげてつるすと,重さと

同時に振り子の長さも変わってしまうという考えを見いだして,実験方法を再検討し,おもりを1

か所にかためてつるす方法に改善できるように展開している。

指導のポイントを達成するための工夫として,振り子の1往復する時間を変える要因として予想

した内容(おもりの重さ,振り子の長さ,振れ幅)を確かめるための実験を,同じ予想をした児童

が集まったグループごとにそれぞれの実験を並行して行うように授業を展開している。実験後には

それぞれのグループの実験結果をグラフで提示するなどして,複数の実験結果を比較し,検討でき

るようにして,結果の違いに気付くことができるようにしている。

小学校 

第5学年

事例3

小学校

小 学 校

20

(4)展開例

学習活動◆ 指導・支援,留意点

□ 評価規準等

<前時までの様子>

手づくりメトロノームをつくり,メトロノームを振りながら,音楽に合うように1往復す

る時間を調整していく活動を通して,「振り子が1往復するのにかかる時間は,おもりの重

さ,振れ幅,振り子の長さなどを変えることで,調整することができそうだ」という見通し

を持った。そこで,振り子の1往復する時間を変える要因について調べるため,条件を制御

して実験を行うという考え方を働かせて実験方法を考えている。

1.問題の確認

■前時までに見いだした問題を全員で確認する。

問題:振り子の1往復する時間は何によって変わるのだろうか。

2.予想の確認

■前時に立てた予想を説明する。 ◆前時に児童一人一人が立てた予想を内容別に分けて提示する。

おもりの重さ 振れ幅で変わ 振り子の長さで変わると思 ると思う。 で変わると思

。う。う

3.実験方法の確認

■計画した実験方法について説明する。 ◆実験後の話合い活動を円滑に進めるために,自分の考えた実験以外の方法についても捉え,把握できるようにする。

おもりの重さ 振れ幅を変え 振り子の長さ

実験の条件を明確に説明できるようにする。

4.実験

■必要な実験器具を用意して,グループごとに考 ◆児童が主体的に実験を進めるために,必要な。るすにうよるきで備準で分自を具器験実。るす験実で法方たえ

◆誤差を少なくするために複数回の実験を行うように指導する。

詳細版の場面

指導の工夫(1)

小学校 

第5学年

事例3

小学校

小 学 校

21

5.結果の整理

■実験結果を表やグラフにまとめる。 ◆それぞれのグループの実験結果を共有できるようにするため,グラフや表にまとめられるようにする。

◆横軸を確かめる要因として変化させた条件,縦軸をそれに伴って変化した振り子が1往復する時間とすることで,原因と結果の関係で捉えられるようにする。

6.結果の確認

■全てのグループが行った実験の結果からいえるラグ,しにうよるきで観概でび並横をフラグ◆。るす認確をとこ

フの形状で結果が異なることを捉えやすいようにする。

おもりの重さを 振れ幅を変え 振り子の長さを変えたグルー たグループの 変えたグルー ◆方法を改善したり結果を基により妥当な考プの結果は, 結果は,角度 プの結果は, えに改善したりすることができるように,重さを変えて を変えてもだ 長さを変える おもりを下につなげてつるすと振り子の長もだいたい1 いたい1往復 と長くなるに さが変わっていることに気付かずにいた場往復の時間が の時間が同じ つれて1往復 合,おもりを1か所にかためてつるして実験同じくらいに くらいになっ の時間が長く したグループや振り子の長さを変えて調べたなっている。 ている。 なっている。 グループと話し合う場を確保する。

◆結果の異なる二つの実験がどのように行われたのかがわかるように,実験器具を二つ並べて比較できるようにする。

<おもりの重さを変えた実験結果がグループによって異なった場合の展開例>

■グループによって実験結果が異なることを確認する。

おもりの重さを変えて実験をしたグループのおもり1個のときの1往復の時間は同じなのに,おもりが2個,3個となるとグループによって時間が違っている。

7.実験方法の吟味

■結果の違いについて考えるため,おもりの重さを変えて実験をしたグループの実験がどのようにして行われたのかを確認する。

■結果の異なる二つの実験の様子からおもりのつるし方について話し合う。

指導のポイント<改善>

予想や実験方法を再検討し,より妥当な実験方法に改善する話合いの場を設定する

おもりの重さによって振り子の1往復する時間が変わるだろうという予想を基に実験を考え,実験結果から考察を行うためには,実験方法が予想を正しく検証するものになっているかを検討することが大切である。そのためには,「おもりの重さ」を

1往復する時間を変える要因と予想して実験計画を立てて実験を行ったにもかかわらず,グループによって結果が違っている状況を捉え,それぞれのグループの実験方法について確認したり,結果の違いがどのようにして生じたのかについて話し合ったりする場を設定する必要がある。

つるし方の違いによる影響を

話し合う

指導の工夫(2)

小学校 

第5学年

事例3

小学校

小 学 校

22

おもりのつるし方が違っている。おもりのつるし方で振り子の長さも変わってしまっているのかもしれない。

8.再実験

■おもりのつるし方を改善し,再実験をして確かめる。

おもりの重さだけを変える実験だったにもかかわらず,おもりを下につなげてつるすと,おもりの重さだけではなく,振り子の長さも変えてしまっていた。

9.他の実験の実施

■自分が取り組んでいない他の実験をして,他のグループの実験結果を確かめる。 ◆ただ単に他の実験を体験するのではなく,よ

り多くの結果を得て,複数の実験結果を基に考察するためであることを意識できるように助言する。

おもりの重さ 振れ幅を変え 振り子の長さを変えて実験 て実験してみ を変えて実験してみると, ると,どの角 してみると,どの重さでも 度でも1往復 長さによって1往復する時 する時間はだ 1往復する時間はだいたい いたい同じに 間が変わる。同じになる。 なる。

10.考察

■実験結果から,振り子の1往復する時間を変える要因について考える。

振れ幅やおもりの重さを変えた実験ではグラフを見ても変化がないので,振り子が1往復する時間に関係がないと考えられる。振り子の長さを変えた実験ではグラフを見ても変化が大きかったので,振り子の1往復する時間に関係がある

てけ付係関を因要のそと化変の動運の子り振□と考えられる。考察し,自分の考えを表現している。(科学的な思考・表現 発言分析・記述分析)

11.考察した内容の発表

■考察した内容を発表し,全体で確認する。

12.結論の導出

■全体で確認した考察の内容を基に結論として確認する。

結論:振り子の1往復する時間は,振り子の長さによって変わる。

指導のポイント<改善>

予想を再検討し,より妥当な考えに改善する話合いの場を設定する

振り子の1往復する時間が何によって変わるのかについての予想を基に実験方法を考え,結果から考察を行うためには,一つの実験結果からだけでなく全ての実験結果から考察を行うことが大切である。そのためには,他のグループの実験

結果を情報として得るだけではなく,全ての実験を実際に行って結果を確認した上で考察を行うことができるように,自分が行った以外の実験を行うことができる場を設定する必要がある。

指導の工夫(3)

指導の工夫(4)小学校 

第5学年

事例3

小学校

小 学 校

23

(1)予想別のグループで実験する展開で,考えの異なる他者との話合いを促す

自らの考えを広げ深め,より妥当なものにするためには,考えの異なる他者との話合いが大切

である。

本事例では,振り子の1往復する時間を変える要因(おもりの重さ,振り子の長さ,振れ幅)

について,同じ予想をした児童で構成したグループごとに,その要因を確かめるための実験を並

行して行うように授業を展開した。そして,他のグループが行った実験の結果を含めて,それぞ

れの実験結果を比較し,検討できるようにした。そうすることで,振り子の1往復する時間を変

える要因を「おもりの重さ」と予想したグループは,グループによって結果が異なったことと

「振り子の長さ」の実験結果をあわせて考えられるようにした。また,「おもりの重さ」と予想

したグループの実験結果に違いが生じたことについて,その原因を話し合うことで,自らの実験

方法を吟味し,より妥当な実験方法に改善できるようにした。おもりを下につなげてつるした実

験だけでおもりの重さを変えると1往復する時間が長くなったと判断するのではなく,振り子の

長さを変えて実験した児童との話合いを通じて,おもりのつるし方によって振り子の長さも同時に

変わってしまっていることに気付くことができるようにした。

(2)実験結果をグラフで提示し,複数の実験結果を比較できるようにする

複数の実験結果を容易に比較することができるようにするためには,グラフでまとめた実験結

果を提示するなどして,視覚的に差異点や共通点を見いだしやすくすることが大切である。

本事例では,おもりの重さや振れ幅,振り子の長さを変えて調べる実験の方法別にシールの色

を統一するようにし,黒板には調べた方法ごとに並べて掲示するようにした。

(3)改善した方法で再実験する場を確保し,その妥当性を確かめられるようにする

話合いによって改善した実験方法の妥当性を確かめられるようにするためには,改善した実験

方法で再実験できる場を確保することが大切である。

本事例では,同じ予想に基づく実験の結果が異なったことから,それぞれの実験方法を確認し

た上で,実験方法の改善に取り組むようにした。その際,それぞれの実験方法を詳しく説明する

場面を設定することで,結果が異なった要因が明らかになるようにした。そして,改善するポイ

ントを明確にした上で再実験を行い,改善した実験方法の妥当性を確かめられるようにした。

(4)他のグループが行った方法で実験する機会を確保し,実感を伴った理解を促す

複数の実験結果から結論を導き出し,実感を伴った理解を促すためには,一つの方法による実

験だけではなく,他のグループが行った方法で実験する機会を確保することが大切である。

本事例では,おもりの重さを変える実験方法の改善を行った後,複数の実験結果を基に考察す

る前に,他のグループが行った実験を行うことができるようにした。

(1)おもりの重さを変える場合のおもりのつるし方について,実験方法を改善する

「振り子の1往復する時間は何によって変わるのだろうか」という問題に対して,おもりの重

さ,振れ幅,振り子の長さという予想が出された。おもりの重さと予想した児童が多数だったた

6.本事例における指導の工夫等

7.本事例を振り返って

小学校 

第5学年

事例3

小学校

小 学 校

24

めに,おもりの重さについては複数のグループが実験に取り組んだ。変化させる条件と変化させ

ない条件について確認を行うことで,どのグループも振れ幅や振り子の長さは変えずにおもりの

重さだけを変えて実験を行うという計画を立てることができた。

しかし,実験方法を考える段階では,おもりのつるし方までは検討するに至らなかったため,

「おもりを下につなげてつるす」,「1か所にかためてつるす」というように,グループによっ

ておもりのつるし方に違いが生じた。

実験後には,実験結果の違いについて話し合うこととなった。振り子の長さを変えたグループ

のグラフの傾きが大きいのに対して,おもりの重さを変えたグループのグラフを見ると,小さな

傾きがあるものと傾きがないものがあった。このような違いが生じた原因について話し合った結果,

実験方法を吟味することになった。

二つのグループの実験方法を器具を並べな

がら比較すると,おもりのつるし方に違いが

あることがわかった。全体で話し合う中で,

振り子の長さを変えて実験を行った児童が,

おもりを下につなげてつるすと振り子の長さ

も同時に変わってしまっていることに気が付

いた。

そこで,おもりのつるし方を下につなげて

つるす方法から1か所にかためてつるすとい

う方法に改善して全員で再実験を行ったとこ

ろ,おもりを増やしても結果がほとんど変わ

らないという結果を得ることができた。この

ことから,おもりを下につなげてつるす方法

は,おもりの重さだけを変える実験計画であっ

たにもかかわらず,振り子の長さも変えてし

まっていたということに気が付くことができ,条件を制御しながら実験をすることの重要性を再

認識することができた。

(2)他のグループが行った方法で実験することで,理解を深める

自分たちの予想を確かめる実験だけでなく,他のグループの実験結果を確認した後で,実際に

他のグループが行った実験を行う機会を確保した。おもりの重さ,振り子の長さ,振れ幅といっ

た自分が予想したもの以外の全ての実験を実際に行い,その結果を確認することで,振り子の動

きを実際に体感しながら,「振り子の1往復する時間は何によって変わるのだろうか」という問

題について考察を行う姿が見られた。

振り子の長さが振り子の1往復する時間に与える影響を実際に体感して比較することで,振れ

幅やおもりの重さを変化させたときに得られる「振り子の1往復する時間がほとんど変化しな

い」ということについて実感を伴って理解することができたと考えられる。

また,自分の予想を基にして計画した実

験からだけでなく,複数の実験から得られ

た結果を基に考察することで,「振り子の

1往復する時間は,振り子の長さによって

変わる」ということについての理解を深め

ることができたと考えられる。

児童が記入したワークシート

おもりを下につなげて

つるしたグループ

おもりを1か所にかためて

つるしたグループ

おもりの重さを変えた実験結果の違い

小学校 

第5学年

事例3

小学校

小 学 校

25

〔第5学年〕 B (3) 流水の働き

【分析結果と課題】○ 学習した内容を適用して考えることに課題

振り子の運動の規則性を的確に捉え,振り子時計の調整の仕方に適用することに課題がある。

○ 予想が一致した場合に得られる結果を見通して実験を構想することに課題水の温まり方の予想が一致した場合に得られる結果を見通して実験を構想することに課題が

ある。〔3(2)正答率54.2%〕〔報告書P.49~P.50〕

【学習指導に当たって】○ 学習を通して獲得した知識と身の回りの事物・現象とを関係付けて捉えられるよ

うにする学習を通して獲得した知識を他の場面や他の文脈で適用するためには,獲得した知識と実際の

自然や日常生活に見られる事物・現象とを関係付けて捉えられるようにすることが大切である。

本設問〔1(2)〕のように,振り子時計が遅れないようにするための方法を考える際には,時

計の進み方を今より速くしなければならないことに気付き,振り子が1往復する時間を短くする

ことを考える必要がある。また,学習したことを基に,振り子が1往復する時間を短くするため

に,振り子の長さを短くすること,さらに,振り子の長さを短くすることは,振り子時計のおも

りを軸に沿って上げることと同じであることを捉える必要がある。〔報告書P.26〕

○ 実験結果を見通しながら実験を計画できるようにする問題点を把握し,解決の方向性を構想するためには,予想が一致した場合に得られる結果を見

通して実験を計画することが大切である。

指導に当たっては,例えば,水の温まり方を予想し,本設問〔3(2)〕のように3本の温度計

を用いた実験方法を考える学習活動が考えられる。その際,どのような順番で温度計の温度が高

くなるか実験を開始する前に結果の見通しを持ち,その内容を発表したり説明したりするなどの

学習活動が大切である。それにより,自分の考えと異なる他者の予想に対しても,結果の見通し

を持つこととなる。予想が異なるにもかかわらず結果の見通しが同じになるのであれば,予想を

確かめることができないことに気付き,実験前に実験方法を修正できるようにすることが大切で

ある。〔報告書P.50〕

3.本指導事例では

1.関連する学習指導要領の内容

事例4実際の川で大雨のとき,土地の様子はどのように変化するのだろうか

2.平成27年度全国学力・学習状況調査の調査結果から

構想適用

○ 学習を通して獲得した知識を適用して考える場を設定する学習を通して獲得した知識と身の回りの事物・現象とを関係付けて捉えられるようにするた

めには,獲得した知識を適用して考える場を設定することが大切である。そこで,本指導事例

では,問題を解決する際に前時までの学習内容を振り返ることで,身に付けた知識を適用して

考えられるようにしている。

○ 一人一人が実験方法を構想して実験計画を立てることや,その方法で実験を行う場を設定する

実験結果を見通しながら実験を計画できるようにするためには,児童一人一人が実験方法を

構想して実験計画を立てることや,その方法で実験を行う場を設定することが大切である。そ

こで,本指導事例では,前時までの実験方法を基に予想が一致した場合に得られる結果を見通

しながら児童一人一人が実験方法を考えるようにしている。また,他者と意見交換したり議論

したりすることで,自分の実験方法を修正したり,よりよい実験方法を構想したりすることが

できるようにしている。

〔1(2)正答率61.4%〕〔報告書P.25~P.26〕

小学校 

第5学年

事例4

小学校

小 学 校

26

(1)単元の目標

地面を流れる水や川の働きについて興味・関心を持って追究する活動を通して,流水の働きと

土地の変化の関係について条件を制御して調べる能力を育てるとともに,それらについての理解

を図り,流水の働きと土地の変化の関係についての見方や考え方を持つことができるようにす

る。

(2)単元の評価規準

(3)単元の指導計画(全14時間)

次 主な学習活動

第一次 水の流れる様子や地面の変化

(4時間) 【問題】流れる水にはどのような働きがあるのだろうか。

■雨が降っているときや雨が降った直後の川や土の様子等を見て,水の流れや濁った水が

流れている様子について話し合う。

■土山等に水を流したときの水の流れる様子や地面の様子の変化を調べる。

■実験結果を基に,わかったことを話し合い,まとめる。

【結論】流れる水には,土地を侵食し,石や土などを運び,堆積させる働きがある。

第二次 川の上流と下流の様子の違い

(5時間) 【問題】流れる場所によって,川の様子にはどのような違いがあるのだろうか。

■流れる場所による川の様子の変化について予想や仮説を持つ。

■川の流域の地形の様子や川原の石の変化を調べる。

■実験結果を基に,わかったことを話し合い,まとめる。

4.単元:流水の働き (全14時間)

自然事象への科学的な思考・表現 観察・実験の技能

自然事象についての解理・識知度態・欲意・心関

①地面を流れる水や川の ①流れる水と土地の変化 ①流れる水の速さや量の ①流れる水には,土地を

流れの様子,川の上流 の関係について予想や 変化を調べる工夫をし, 侵食したり,石や土な

と下流の川原の石の違 仮説を持ち,条件に着 モデル実験の装置を操 どを運搬したり堆積さ

いに興味・関心を持ち, 目して実験を計画し, 作し,計画的に実験を せたりする働きがある

自ら流れる水と土地の 表現している。 している。 ことを理解している。

変化の関係を調べよう ②流れる水と土地の変化 ②安全で計画的に野外観 ②川の上流と下流によっ

としている。 を関係付けたり,野外 察を行ったり,映像資 て川原の石の大きさや

の大きさを感じ,川や 実際の川に当てはめた ③流れる水と土地の変化 ③雨の降り方によって,

土地の様子を調べよう りして考察し,自分の の関係について調べ, 流れる水の速さや水の

としている。 考えを表現している。 その過程や結果を記録 量が変わり,増水によ

している。 り土地の様子が大きく

変化する場合があるこ

とを理解している。

料等を活用して調べた

りしている。小学校 

第5学年

事例4

小学校

小 学 校

②増水で土地が変化する

 ことなどから自然の力

での観察やモデル実験

で見いだしたきまりを

形に違いがあることを

理解している。

27

は広く,角ばった大きな石は流れていくうちに,削られて丸くて小さな石になる。

第三次 大雨のときの土地の様子の変化

(5時間) 【問題】大雨になり,一度に流れる水の量が増えると,土地の様子はどのように変化するの

だろうか。

■まっすぐな川で流れる水の量が増えたときの土地の様子の変化について予想や仮説を持

つ。

■まっすぐな水の流れで水の量が増えたときの土の削られ方について流水実験装置を使っ

て調べる。

■実験結果を基に,わかったことを話し合い,まとめる。

【結論】一度に流れる水の量が多い方が土地を削ったり,土や砂を運んだりする働きが大き

くなり,土地が大きく変化する。

【問題】実際の川では土地の様子はどのように変化するのだろうか。

■カーブのある川での土地の様子の変化について予想や仮説を持つ。

■カーブのある水の流れでの土の削られ方について流水実験装置を使って調べる。

■実験結果を基に,わかったことを話し合い,まとめる。

【結論】カーブのある川では,カーブの外側の方が多く削られ,内側には土や砂がたまる。

【問題】実際の川で大雨のとき,土地の様子はどのように変化するのだろうか。

■カーブのある川で大雨のときの土地の様子の変化について予想や仮説を持つ。

■カーブのある水の流れで水の量が増えたときの土の削られ方について流水実験装置を使って

調べる。

■実験結果を基に,わかったことを話し合い,まとめる。

【結論】大雨になるとカーブの内側も削られる。また,カーブの外側では,より多く削られ

る。そして,削られた土は,より多く運ばれる。

動活習学な主)2(標目の時本)1(

流れる水の働きと土地の様子の変化を関係付

け,野外での観察やモデル実験で見いだしたきま

りを増水時の実際の川に当てはめて考察し,自分

の考えを表現することができる。

1.前時の振り返り

2.問題の確認

3.予想

4.検証計画の立案

5.検証計画の話合い

6.実験

7.結果の整理,考察

8.結果や考察した内容の共有

9.考察した内容の発表

10.結論の導出

本時(4・5/5)

5.本時:増水による土地の様子の変化

【結論】土地の傾きが大きい上流から平らな下流になるにつれ,流れは緩やかになり,川幅

小学校 

第5学年

事例4

小学校

小 学 校

28

(3)本事例の特徴

(4)展開例

学習活動◆ 指導・支援,留意点

□ 評価規準等

<前時までの様子>

前時までに児童は,土山や流水実験装置に水を流す活動を通して「流れる水には,土地を削

り,石や土等を運び,堆積させる働きがあること」や「流れる場所によって川の様子には違い

があること」を学んでいる。また,前時までには「まっすぐな川では,一度に流れる水の量が

多い方が土地を削ったり,土や砂を運んだりする働きが大きくなり,土地の様子の変化に違い

がある」ことや「カーブのある実際の川の流れでは,カーブの外側の方がより削られ,内側の

方が土や砂がたまる」という考えを獲得している。

1.前時の振り返り

■前時に見いだした問題を確認する。 ◆実際の川の航空写真を提示することにより,カーブのある川をイメージできるようにする。

2.問題の確認

問題:実際の川で大雨のとき,土地の様子はどのように変化するのだろうか。

3.予想

■大雨のとき,実際の川の流れでは,土地の様子 ◆前時に行ったモデル実験におけるカーブの内はどうなるのか予想や仮説を持つ。 側,外側の写真を提示することにより,カー

ブの内側,外側に視点を当てた予想を持つことができるようにする。

一度に流 曲がって 曲がって 曲がって ◆児童の立てた予想をカーブの「内側」,「外側」れる水の いるとカー いるとカー いるとカー をキーワードとして板書することにより,一人量が増え ブの外側 ブの内側 ブの内側 一人が自分の予想を整理できるようにする。ると土や が削られ に土や砂 に土や砂砂がたく たから, がたまった がたまったさん流さ 大雨のと けれど, けれど,れたから, きもカー 大雨のと 大雨のと大雨のと ブの外側 きはカー きは内側きはカー が多く削 ブの内側 には土やブの内側 られて, が削られ 砂がたま

本事例では,「実際の川で大雨のとき,土地の様子はどのように変化するのだろうか」という問

題に対して,前時までに学習を通して獲得した「流れる水の働き」に関する知識を実際の川が増水

したときの土地の様子の変化に当てはめて予想し,モデル実験を構想している。

本事例の指導のポイントとして,学習を通して獲得した知識を適用して考える場を設定した上

で,児童一人一人が実験方法を構想して実験計画を立てることや,その方法で実験を行う場を設定

している。

指導のポイントを達成するための工夫として,前時の学習を振り返る場を設定して学習のつなが

りの意識化を図ったり,他者との話合いを通してより確かな検証方法を構想できるようにしたりし

ている。

詳細版の場面

指導のポイント<適用>

学習を通して獲得した知識を適用して考える場を設定する

指導の工夫(1)

指導の工夫(2)

小学校 

第5学年

事例4

小学校

小 学 校

29

たあとに土や砂がたまると思う。

4.検証計画の立案

■予想を基に,実験を計画する。

川のカー 川の上の 川のカー 流水実験ブの外側, 方とカー ブの外側, 装置にた内側に違 ブの外側, 内側に楊 こ糸を張っう色のカ 内側に違 枝を立て, て川幅のラーサン う色のカ 川幅の変 変化を調ドを混ぜ, ラーサンド 化を調べ べる。下側にた を混ぜ, る。まったカ カーブのラーサンド 内側にたを調べる。 まったカ

ラーサンドの色を調べる。

5.検証計画の話合い

■検証計画を他者と共有する。

◆児童が構想した実験方法を板書でまとめ,同じ実験方法ごとに集まって実験できるようにグループを編成する。

6.実験

■考えた方法で実験をするための準備をする。 ◆カラーサンド,楊枝等を準備して児童が構想した内容で実験できるようにする。

■流水実験装置に水を流して,水の流れる様子や土の削られ方をグループで調べる。 ◆タブレット端末を準備することにより,実験

の様子を記録し,後で再生して繰り返し確認できるようにする。

前時までに学習した,まっすぐな流れの川やカーブのある川の流れの学習を適用して,大雨のときの土地の様子の変化を予想するには,前時の学習を振り返り,学習のつながりの意識化を図ることが大切である。

そのためには,前時までの実験結果を写真で全体に提示したり,ワークシートに前時までの実験画像を貼付したりするなどして,今までの学習で獲得した知識を振り返ることができるようにする。

指導のポイント<構想>

一人一人が実験方法を構想して実験計画を立てることや,その方法で実験を行う場を設定する

カーブのある川が増水したときの土

地の様子の変化について調べる実験を

計画できるようにするには,児童一人

一人が実験方法を構想して実験計画を

立てる場を設定することが大切である。

そのためには,どのような予想を確

かめるために実験するのかを明らかに

した上で,まっすぐな川で流れる水の

量が増えたときの土地の様子の変化を

調べた前時の学習を想起して,実験方

法を考えられるようにする。

検証計画を他者と共有する

指導の工夫(3)

指導の工夫(4)

小学校 

第5学年

事例4

小学校

小 学 校

30

7.結果の整理,考察

■実験で得られた結果をノートに記録し,ホワイ ◆ワークシートに水の流れる様子や土の削られよにとこるけ設を欄るす録記で葉言や図を方。るめとまにドーボト

り,細部まで丁寧に観察することができるようにする。

カーブの カーブの 下流の方 カーブの外側のカ 内側に置 が楊枝が 内側よりラーサン いたカラー 流された。 外側の方ドが多く サンドは 内側も外 が川幅が流された 下にたまっ 側も削ら 広がった。が,内側 た。上 に れたが, 内側も削も流され 置いたカ 外側の方 られた。た。 ラーサン がより深

ドは内側 く削られと外側に た。たまった。

8.結果や考察した内容の共有

■実験方法の異なるグループの実験結果について話し合う。

◆他のグループと実験結果を交流する時間を確大雨のときは, 大雨のときは, 大雨のときは 保することにより,多様な検証方法による実カーブの外側 カーブの内側 土や砂がたく 験結果を基に考察し,より妥当な結論をつくも内側も削ら より外側の方 さん運ばれる。 りだすことができるようにする。れ,流れる水 が多く削られ 土や砂が削らの働きが大き る。 れたところに

も積度一うも。るなくる。

9.考察した内容の発表

■考察した内容を発表する。

10.結論の導出

■結論をまとめ,ノートに書く。

結論:大雨のときは,カーブの外側も内側も削られ,内側より外側の方が削られる。また,削られたところにも,もう一度土や砂が積もる。

■学習で得られた考えを実際の川へ適用して考 □流れる水の働きと土地の様子の変化を関係付たしだい見で験実ルデモや察観ので外野,け。るす明説,え

きまりを増水時の実際の川に当てはめて考察し,自分の考えを表現している。(科学的な思考・表現 発言分析・記述分析)

カラーサンドと楊枝を用いて

調べる

指導の工夫(5)

小学校 

第5学年

事例4

小学校

小 学 校

31

(1)前時の学習を振り返る場を設定し,学習のつながりを意識できるようにする

児童の思考の流れに沿った学習を展開し,学習のつながりを意識できるようにするためには,

前時の学習で見いだした新たな疑問や問題等を振り返り,共有できる場を設定することが大切で

ある。

本事例では,カーブのある川での土地の様子の変化を調べた学習を振り返ることで「通常の川

の流れでは,外側が削られて内側が積もったから,大雨のときはどうなるのかな」,「大雨にな

るともっと川幅が広がるのだろうか」などの考えを共有することにより,「カーブのある実際の

川で大雨のとき,土地の様子はどのように変化するのだろうか」という学級全体の問題として設

定した。

(2)前時までの学習内容を提示し,獲得した知識を適用した予想を引きだす

学習で獲得した知識を適用した予想や仮説を引きだすためには,実験結果を写真で全体に提示

したり,前時に記録したワークシートを振り返る場を設定したりして,前時までの学習内容を振

り返ることが大切である。

本事例では,大雨のときの実際の川の流れによる土地の様子の変化について予想する場におい

て,まっすぐな川で流れる水の量が増えたときやカーブのある川での土地の様子の変化を調べる

実験結果から得られた知識を基に考えられるようにした。

(3)他者との話合いにより,より確かな実験方法を構想できるようにする

前時までに獲得した実験方法を振り返り,児童自らが構想した実験方法をより確かなものにす

るためには,他者との話合いの場を設定することが大切である。

本事例では,前時のカーブのある川での土地の様子の変化を調べる実験方法を適用し,個人で

実験方法を考えた後に,学級全体で話し合う場を設定することにより,考えた実験方法が検証可

能かを検討したり,どのような予想を確かめるための実験なのかを明確にしたりするなどして,

実験方法についての妥当性を検討し,よりよい実験方法を構想できるようにした。

(4)方法別のグループをつくり,個人が構想した多様な実験方法を生かす

児童が発想した多様な考えを生かし,主体的に学習を進めるためには,児童が発想した実験方

法別にグループをつくり,その方法で実験を行えるようにすることが考えられる。

本事例では,「実際の川で大雨のとき,土地の様子はどのように変化するのだろうか」という

問題に対して,個人が考えた検証方法について学級全体で話し合い,その妥当性を検討した上

で,同じ実験方法別にグループを編成し,実験を行うようにした。

(5)実験結果を共有する場を設定し,多面的に分析して考察できるようにする

問題解決を通して自らの考えを広げ深めるためには,一つの実験方法から得られた結果だけで

なく,異なる方法で得られた実験結果を共有し,多面的に分析して考察できるようにすることが

考えられる。

6.本事例における指導の工夫等

小学校 

第5学年

事例4

小学校

小 学 校

32

本事例では,実験方法の異なる他のグループが行った実験の結果についてホワイトボードにま

とめたものを見ながら話し合った。また,タブレットPCで撮影した動画を再生して確認できる

ようにした。

振り返りと話合いにより,学習で獲得した知識を適用して問題を解決する

本事例では,問題を見いだす場面や,予想や仮説を発想する場面,解決の方法を構想する場面

において,前時までの学習を振り返る時間を設定した。まっすぐな川で流れる水の量が増えたと

きの土地の様子の変化を調べる学習では,川岸が侵食され,川幅が広がることを捉え,多数の児

童が,カーブのある実際の川ではどのように土地の様子は変化するのだろうかという問題を見い

だした。次に,カーブのある川での土地の様子の変化を調べる学習では,内側には土砂が堆積

し,外側は侵食されることを捉え,「実際の川で大雨のとき,土地の様子はどのように変化する

のだろうか」という学級全体の問題が設定された。このような過程を経て設定された問題であっ

たこと,また,前時までの実験結果について記録した写真を全体で確認したり,児童一人一人の

ワークシートにも貼付したりすることによって,学習を振り返ることができるようにしたこと

で,これまでの学習を通して獲得した知識を根拠に予想や仮説を発想する児童の姿が見られた。

さらに,自分の予想が正しかった際にはどのような結果になる

のかについてワークシートに記述し,その記述を基に,他者と検

証方法について検討する場を設けることにより,検証可能かを判

断したり,よりよい実験方法を発想したりしながら,検証方法

を構想する姿が見られた。

そして,児童が構想した方法別にグループを編成することに

より,児童自らが考えた検証方法で主体的に実験を行うことを

可能とした。その結果,自らの問題解決のために他のグループ

の実験結果と自らの実験結果を比較したいという欲求が生まれ,

異なる実験方法のグループと主体的に実験結果を共有し,考察す

る姿が見られた。

まっすぐな川で流れる水の量が増えたときの土地の

様子の変化について調べたことを根拠に予想した記述

7.本事例を振り返って

カーブのある川での土地の様子の変化について

調べたことを根拠に予想した記述

前時までの実験方法を適用

小学校 

第5学年

事例4

小学校

小 学 校

33

〔第5学年〕 B (4) 天気の変化

【分析結果と課題】

○ 学習を通して獲得した知識を実際の自然や日常生活の事物・現象に適用して考察

することに課題

植物の適した栽培場所を判断する場合において,植物の成長の様子と日光の当たり方を適用

して考察することに課題がある。〔2(5)正答率44.4%〕〔報告書P.44~P.45〕

【学習指導に当たって】

○ 学習を通して獲得した知識を実際の自然や日常生活に当てはめて考えることがで

きるようにする

植物の適した栽培場所を判断する場合において,植物の成長の様子と日光の当たり方を適用し

て考察するには,それまでの学習を通して獲得した知識を実際の自然や日常生活の事物・現象に

当てはめて考える必要がある。

指導に当たっては,例えば,日光の当たり方の違いによって同じ種類の植物でも成長の様子に

違いが見られることを捉えたり,アサガオなどの栽培経験から植物を育てる際には,鉢を日光が

よく当たる場所に置くようにしたことを想起したりするなどの学習活動が考えられる。また,本

設問のように,学校園等で教材として異なる種類の植物を栽培する際には,教師が栽培場所を決

めるのではなく,学級全体で植物の生育の仕方と日光の当たり方や日陰のでき方を考えながら,

栽培場所について話し合うなどの機会を持つことも大切である。このように,日頃から身の回り

で見られる自然や日常生活の事物・現象について,これまでに学習した内容を適用して考えられ

るようにすることが重要である。〔報告書P.45〕

適用

2.平成27年度全国学力・学習状況調査の調査結果から

事例5 3日後の天気と気温はどうなるのだろうか

1.関連する学習指導要領の内容

3.本指導事例では

○ 学習を通して獲得した知識・技能を適用して解決できる問題を設定する

学習を通して獲得した知識を身近な自然や日常生活の事物・現象に当てはめて考えることが

できるようにするためには,獲得した知識・技能を適用して解決できる問題を設定することが

大切である。本指導事例では,本時に至るまでに,翌日の天気を予想する活動を通して,天気

の変化の規則性に関する知識を獲得している。本時では,「翌日よりもさらに先の天気を予想

してみたい」という意欲を喚起しながら,獲得した天気の変化の規則性に関する知識や第4学

年の学習内容である「天気によって1日の気温の変化の仕方に違いがあること」を適用して解

決できる問題を設定している。

小学校 

第5学年

事例5

小学校

小 学 校

34

(1)単元の目標

天気の変化について興味・関心を持って追究する活動を通して,気象情報を生活に活用する能

力を育てるとともに,それらについての理解を図り,天気の変化についての見方や考え方を持つ

ことができるようにする。

(2)単元の評価規準

(3)単元の指導計画(全12時間)

次 主な学習活動

第一次 雲と天気の変化

(3時間) 【問題】雲の様子は,天気と関係があるのだろうか。

■天気と雲の関係について予想し,話し合う。

■雲の形や色,量,動いている方向等の雲を見る視点を整理する。

■地上の風向きや上空の雲の動きから雲が近付いて来そうな方角に注目し,雲の様子につ

いて時間をおいて数回調べる。

■調べた結果を基に,わかったことを話し合い,まとめる。

【結論】雲の量や動きは,天気の変化と関係がある。

第二次 気象情報と天気の予想

(6時間) 【問題】気象情報を活用すれば,天気や気温の変化を予想できるのだろうか。

■雲と天気の変化の規則性に視点を当てて,天気や気温の予想について見通しを持つ。

■翌日の天気や気温を予想するための情報収集の方法や気象情報の活用の仕方を考え,共

有する。

天気や気温の予想(1回目)

■天気や気温の予想に必要な情報を収集し,翌日の天気や気温を予想する。

■天気や気温を予想した翌日に,実際の天気と気温が予想どおりか確かめる。

■天気や気温の予想と実際の結果を振り返りながら,予想の仕方を改善する。

4.単元:天気の変化 (全12時間)

自然事象への科学的な思考・表現 観察・実験の技能

自然事象についての解理・識知度態・欲意・心関

①天気の変化等の気象情 ①天気の変化と雲の量や ①雲の様子を観察するな ①雲の量や動きは,天気

報に興味・関心を持 動きなどの関係につい ど天気の変化を調べる の変化と関係があるこ

ち,自ら雲の量や動き て予想や仮説を持ち, 工夫をし,気象衛星や とについて理解してい

を観測したり,気象情 条件に着目して観察を インターネットなどを る。

報を収集したりして天 計画し,表現している。 活用して計画的に情報 ②天気の変化は,映像等

②雲の様子や気象情報を 考察し,自分の考えを 測し,その過程や結果 ている。

基にした天気の予想を 表現している。 を記録している。

日常生活で活用しよう

としている。

気を予想しようとして ②天気の変化と雲の量や を収集している。 の気象情報を用いて予

いる。 動きなどを関係付けて ②雲の量や動きなどを観 想できることを理解し

小学校 

第5学年

事例5

小学校

小 学 校

35

天気や気温の予想(2回目)

■1回目の振り返りを生かして,翌日の天気や気温を予想する。

■天気や気温を予想した翌日に,実際の天気と気温が予想どおりか確かめる。

■天気や気温の予想と実際の結果を振り返りながら,天気はおよそ西から東へ変化してい

くという規則性をまとめる。

天気や気温の予想(3回目)

■天気はおよそ西から東へ変化していくという規則性を用いて,翌日の天気や気温を予想

する。

■天気と気温を予想した翌日に,実際の天気と気温が予想どおりか確かめる。

■数日間の天気や気温を振り返り,天気の変化の大まかな規則性を確認する。

【結論】天気は,およそ西から東へと変化し,雲画像や雨雲レーダー,アメダスなどの気象

情報を用いて予想することができる。

【問題】3日後の天気と気温はどうなるのだろうか。

■3日後の天気と気温を予想するための方法を考え,話し合う。

■3日後の天気と気温を予想するために必要な気象情報を収集する。

■収集した情報を基に考察して,3日後の天気と気温を予想する。

■予想した天気と気温について,自分の考えを根拠とともに発表する。

(第三次 台風に関すること 3時間 省略)

動活習学な主)2(標目の時本)1(

3日後の天気の予想に興味を持ち,自ら進んで

気象情報を収集し,予想することができる。

(3)本事例の特徴

1.問題の設定

2.解決方法の見通し

3.情報の収集

4.情報の共有

5.天気の予想

6.予想した天気についての話合い

7.振り返り

8.実際の天気の確認

本時(6/6)

5.本時:気象情報を用いて天気の変化を予想する

本事例は,「3日後の天気と気温はどうなるのだろうか」という問題に対して,タブレットPC

を活用して必要な気象情報を収集する技能や,学習を通して獲得した天気の変化の規則性に関する

知識を適用して考え,天気を予想している。

本事例の指導のポイントとして,「翌日よりもさらに先の天気を予想してみたい」という意欲を

指導のポイントを達成するための工夫として,獲得した知識・技能を振り返る場を設定し,見通

しを持って解決できるようにしたり,ICT機器を活用して多様な情報や考えを交流できるように

したりしている。

喚起しながら,獲得した天気の変化の規則性に関する知識や第4学年の学習内容である「天気によっ

て1日の気温の変化の仕方に違いがあること」を適用して解決できる問題を設定している。

小学校 

第5学年

事例5

小学校

小 学 校

36

雲レーダーで調べれば,予想することができ

(4)展開例

学習活動◆ 指導・支援,留意点

□ 評価規準等

<前時までの様子>

翌日の天気や気温を予想する活動を3回行い,雲の量や動きは天気の変化と関係があるこ

と,天気はおよそ西から東へ変化していくという規則性があることを理解している。また,天

気や気温を予想するために必要な雲画像や雨雲レーダーなどの情報をタブレットPCを用いて

調べ,調べた情報を累積したり,自分の考えをタブレットPCの画像にかき込んだりする技能

を身に付けている。

1.問題の設定

■前時までに学習した内容を全体で確認する。

■数日後の天気と気温について話し合い,問題を設定する。

◆天気と気温を予想することで,第4学年の学習内容である「天気によって1日の気温の変化の仕方に違いがあること」も適用しながら考えられるようにする。

問題:3日後の天気と気温はどうなるのだろうか。

2.解決方法の見通し

■3日後の天気と気温を予想するための方法を考 ◆予想する時間が翌日よりも先になった分,こが要必る見を雲の囲範い広の西もりよでまれ。う合し話,え

あることに気付いた児童の考えを学級全体で・1日分の雲の動きを基に考えると,3日後の 共有できるようにする。天気を予想するには,さらに西の遠くの雲を見ればよいと思う。

・雲の動きや速さは雲画像,雨雲かどうかは雨

。う思とる

前時までに学習した内容を

全体で確認する

詳細版の場面

指導の工夫(1)

指導のポイント<適用>

獲得した知識や技能を活用して解決できる問題を設定する

児童が,天気はおよそ西から東へ変化していくという規則性に関する知識や,気象情報を収集する技能を適用して問題解決をすることができるようにするために,日常生活と関連のある問題を設定することが大切である。

そのために,前時までよりもさらに遠くの雲の様子等の情報が必要になる3日後の天気を予想する状況を提示し,問題を設定する。

気象情報やその活用の仕方について整理す◆3日後の天気と気温を予想するために必要な

。る

指導の工夫(3)

指導の工夫(2)

小学校 

第5学年

事例5

小学校

小 学 校

37

◆解決方法の見通しを,タブレットPCの画面を使って説明できるようにするために,タブレットPCの画面を電子黒板等に表示できるようにする。

3.情報の収集

■3日後の天気と気温を予想するために必要な気 ◆タブレットPCを用意し,必要な情報を個人収てし担分でプールグやアペ,りたし集収で。るす集収を報情象

集したりすることができるようにする。・気象情報等が掲載されているホームページか

ら,気象衛星の雲画像,雨雲レーダー,アメ ◆情報が収集できない児童がいた場合は,グダスなどの情報を収集する。 ループや学級全体で相談する場を確保し,必

要な情報を収集できるようにする。

◆持ち寄った複数の情報を見せ合いながら互いの考えを説明し合う場を設定する。

4.情報の共有

■3日後の天気と気温を予想するために必要な気 ◆雨雲レーダーのデータには,日本周辺の範囲象情報や,収集した情報から考えたことを共有 に限定されているものがあることを伝え,範

広,はにるす断判をかうどか雲雨が雲の外囲。るす範囲の雲画像における雲の色で判断できることに気付くことができるように指導する。

◆児童一人一人が収集した情報や考えを共有するために,タブレットPCに考えをかき込むことができるようにする。

5.天気の予想

■天気と気温の予想に適した気象情報や天気の変化の規

,にうよるきで討検を拠根のそと想予の気天◆3,し討検を性則い合話の想予でプールグ温気と気天の後日 をする場を設定す

。る想予が人一人一をする。

■獲得した知識と収集した情報を基に考察して, ◆天気の予想とその根拠が一致しているかを確。るすにうよるきで認。るす想予を気天

6.予想した天気についての話合い

■予想した天気と気温について,自分の考えを根拠とともに発表する。 ◆児童一人一人の予想を明確にして,話合いに

臨むことができるようにするために,各自の・1日分の雲の動く距離を考えると,3日分で ネームカードを黒板に示した予想ごとに掲出は(電子黒板の画像を指しながら)このあた する場を設定する。りを見ればいいと思う。そうすると,ほとん

グループで情報を収集するタブレットPCに気付いた

ことをかき込む

ICT機器を使って解決方法を

発表する

3日後の天気と気温を予想する

グループでの共有 学級全体での共有

解決方法を学級全体に

発表する

指導の工夫(4)

指導の工夫(3)

小学校 

第5学年

事例5

小学校

小 学 校

38

7.振り返り

調べることで,3日後の天気と気温を予想することができた。

小学校 

第5学年

事例5

小学校

小 学 校

 ど雲がかかっていないから晴れだと思う。・(電子黒板の画像を指しながら)このあたり にかかっている雲は,色が濃いので雨雲だと 考えられる。だから3日後の天気は雨だと思 う。・明日も明後日も晴れそうだから,3日後の気 温は高く,27℃ぐらいだと思う。・このごろの気温は,曇りの日でも25℃ぐらい 続いている。3日後の気温も,25℃前後だと 思う。

◆予想の根拠となる情報や自分の考えを電子黒 板に表示し,学級全体で確認できるようにす る。

◆これまでの学習を生かし,自分なりの根拠を 持って天気の予想をすることができたか,本 時の学習を振り返る場を設定する。

◆今後の日常生活において活用する知識を促す ために,3日後の実際の天気と気温を学級全 体で確認する。

□3日後の天気の予想に興味を持ち,自ら進ん で気象情報を収集し,予想することができて いる。 (自然事象への関心・意欲・態度            発言分析・記述分析)

根拠とともに予想した天気を

発表する

本時の学習の振り返りを

発表する

実際の天気を

学級全体で確認する

■今日の学習の振り返りをノートに書き,発表す る。

■実際の天気と気温を確認する。

・雲が動く速さや雨雲の可能性を

・雲の量を調べると,やっぱ り晴れだといえる。・予想どおりにならなかった 原因は何だろう。

8.実際の天気の確認

39

学習を通して獲得した天気の変化の規則性に関する知識や必要な情報を収集する技能を適用で

きるようにするためには,実際に天気を予想する場を設定することが大切である。

日後の天気を予想する学習を通して,「雲を見れば天気が予想できる」,「西の空を見れば天気

起しながら,3日後の天気と気温を予想する活動を設定した。

の規則性に関する知識や,天気を予想するために必要な情報を収集する技能とその活用の仕方に

していく」という天気の変化の規則性や,タブレットPCを用いて調べた雲画像や雨雲レーダー

などの天気を予想するために必要な情報,1日後の天気を予想したときに調べた範囲等について

がりの違いに気付き,獲得した知識・技能をどのように適用すれば解決することができるかとい

う見通しを持つことができるようにした。

ることができるようにするためには,タブレットPCや電子黒板の活用が考えられる。

して他の児童と共有したりすることができるようにするために,タブレットPCを活用した。ま

た,収集した情報や自分の考えを学級全体で共有するために,電子黒板を活用した。そうするこ

られるようにした。

本事例では,前時までに雲の観察(色や形,動きなど)や気象情報を活用して,数時間後や1

を予想することができる」などの見通しを持つことができるようにした。また,実際には雨を降

らせる雲とそうではない雲があることを学習した。この学習を通して,本時では児童の意欲を喚

小学校 

第5学年

事例5

小学校

小 学 校

6.本事例における指導の工夫等

(1)天気を予想する場を設定し,獲得した知識・技能を適用できるようにする

(2)獲得した知識・技能を振り返る場を設定し,見通しを持って解決できるようにする

(3)ICT機器を活用して,多様な情報や考えを交流できるようにする

(4)ネームカードを用い,一人一人の考えを明らかにする

○ 本事例で利用しているウェブサイト等

 一人一人が見通しを持って解決できるようにするためには,学習を通して獲得した天気の変化

ついて振り返る活動を設定することが大切である。

振り返った。そうすることで,児童がこれまでの問題と本時の問題における時間的・空間的な広

 本事例では,前時までに獲得した「雲はおよそ西から東へ動き,天気もおよそ西から東へ変化

 児童が問題の解決に必要な情報を収集したり,その情報をグループや学級全体で共有したりす

 本事例では,収集した情報を累積し,拡大して表示したり,自分の考えをかき込んだり,移動

とで,児童が多様な情報を基に考え,グループや学級全体での話合いを通して自らの考えを深め

 話合い活動を充実させるためには,まず児童一人一人の考えを明らかにして学級全体で共有す

ることが必要である。そのためには,それぞれの考えを照らし合わせ,考えの違いに気付かせる

ことで結論を導くための話合い活動に必要感を持たせることが大切である。

・気象庁(防災情報) http://www.jma.go.jp/

・日本気象協会(防災情報) http://www.tenki.jp/

・ウェザーニュース http://weathernews.jp/

・Yahoo!天気・災害 http://weather.yahoo.co.jp/

 本事例では,児童一人一人が予想した3日後の天気と気温について,各自の予想をネームカー

ドを用いて黒板に示し,学級全体で一覧できるようにした。児童一人一人の考えの違いから,根

拠の違いを明らかにしていくことで,学級全体で話し合うことができるようにした。

40

(1)学習を通して獲得した知識・技能を適用する

本単元では,自分たちが住む地域の天気と気温を予想する活動を繰り返し行った。本時までに

児童は,実際に空の様子を観察することで,自分たちの目で観察できる範囲の雲の様子を基に数

時間後の天気を予想し,雲の動きを見れば天気を予想できるのではないかと考えた。天気だけで

なく気温も予想することで,第4学年の学習内容である「天気によって1日の気温の変化の仕方

に違いがあること」も適用できるようにした。次に,より広い範囲の雲の動きを調べれば,さら

に先の時間の天気を予想することができるのではないかという見通しを持ち,1日後の天気を予

想する活動を行った。目視できる範囲より遠くの雲の動きを調べるために,気象情報を活用でき

ることに気付かせ,必要な情報を自分で収集することができるようにした。また,その活動を3

回繰り返すことで,雲はおよそ西から東に動き,天気もおよそ西から東に変化していくという規

則性を見いだし,それを適用すれば自分たちで天気を予想することができるのではないかという

考えを持つようになった。

本事例では,学習を通して獲得した知識・技能を適用して

解決できる問題として,3日後の天気と気温を予想する場を

設定した。児童は,これまでより西の広い範囲の雲の動きを

知ることが必要であることに気付き,雲画像や雨雲レーダー

の情報を活用すれば天気の予想ができるのではないかという

考えを持ち,見通しを持って活動することができたと考えら

れる。天気の予想の場面では,時間的・空間的な広がりを意

識しながら,自分が調べた情報だけでなく他の児童と共有し

た複数の情報を根拠にして,3日後の天気と気温を予想し,

自分の考えを表現することができた。

(2)ICT機器を活用して問題を解決する

本事例では,天気の予想に必要な情報を収集したり共有したりするために,タブレットPCや

電子黒板等のICT機器を活用した。情報収集は新聞記事でも行うことができるが,気象衛星の

雲画像や雨雲レーダー,アメダスの風向・風力等の複数の情報について,最新のものを重ねあわ

せながら活用するためにタブレットPCなどを活用した。また,タブレットPCの活用は,分担

して情報を収集したり,複数の情報を持ち寄って並べて見比べてみたり,収集した情報に自分の

考えを直接かき込んだりすることに有効であった。さらに,電子黒板の活用は,情報収集の方法

やその活用の仕方,互いの考えなどを学級全体で共有することに効果的であった。

ICT機器の活用においては,情報収集の技能に

関する児童の実態を踏まえて指導することが大切で

ある。本事例では,観察した空の様子を写真や動画

で記録したり,インターネットで調べた情報を保

存・累積したり,自分の考えをかき込んだりする技

能を適宜指導した。また,情報収集が苦手な児童に

ついては,教師がいくつかの情報をリストアップし

ておいたり,ペアで情報収集できるようにしたりす

るなどの支援を行った。

予想をかき込んだワークシート

考えをかき込んだタブレットPC

7.本事例を振り返って

小学校 

第5学年

事例5

小学校

小 学 校

41

〔第6学年〕 A (2) 水溶液の性質

【分析結果と課題】

○ 実験結果を基に自分の考えを改善することに課題

水の温まり方を考察するために,実験結果を基に自分の考えを改善することに課題がある。

【学習指導に当たって】

○ 自分の予想と実験結果を照らし合わせ,より妥当な考えに改善できるようにする

実験結果を基により妥当な考えに改善するには,実験前の自分の予想と実験で得られた結果を

照らし合わせ,自分の予想が確認されたのか検討することが大切である。

指導に当たっては,本設問のように,温度計の温度が高くなる順番を実験結果の表から読み取

り,自分の予想と照らし合わせる活動を行うことが考えられる。自分の予想が実験結果と一致し

ない場合には,より妥当な考えに改善するために,予想を振り返り,見直し,再検討したり,他

者の予想を振り返ったりすることで,自らの考えを修正し,結果から適切に考察できるようにす

ることが大切である。〔報告書P.52〕

1.関連する学習指導要領の内容

2.平成27年度全国学力・学習状況調査の調査結果から

事例6 塩酸にアルミニウムを入れ,液を蒸発させて残った白い粉は,アルミニウムなのだろうか 改善

3.本指導事例では

○ 複数の実験結果を基に考え,より妥当な考えをつくりだす話合いの場を設定する

より妥当な考えに改善するためには,一つの実験結果だけではなく複数の実験結果を基に多

面的に分析し考察することが大切である。そこで,本指導事例では,児童一人一人が自らの予

想や仮説を基に質的変化や量的変化,時間的変化に着目して発想した解決の方法で実験する場

を設定し,各自が行った多様な実験から検証することができるようにしている。

より妥当な考えに改善するためには,他者の考えを捉え,自己の考えを広げ深めることが大

切である。そこで,本指導事例では,実験前には誰がどのような予想をして,どのような実験

方法で取り組もうとしているのか,実験後にはどのような結果が得られて,どのように分析し

て考察したのかを共有できるようにしている。そして,実験後には,まずは得られた結果を分

析して考察した自分の判断をグループ内で話し合って吟味し,次に,他の実験方法で取り組ん

だグループと実験結果や考察した内容を話し合って自分の判断を再検討し,学級全体で確認す

るといった段階的な話合いの場を設定している。

〔3(3)正答率51.9%〕〔報告書P.51~P.52〕

小学校 

第6学年

事例6

小学校

小 学 校

42

(1)単元の目標

いろいろな水溶液の性質や金属を変化させる様子について興味・関心を持って追究する活動を

通して,水溶液の性質について推論する能力を育てるとともに,それらについての理解を図り,

水溶液の性質や働きについての見方や考え方を持つことができるようにする。

(2)単元の評価規準

(3)単元の指導計画(全10時間)

動活習学な主次

第一次 気体が溶けた水溶液とリトマス紙の変化

(6時間) ■5つの水溶液について,諸感覚や既習事項を使って,特徴を調べる。

【問題】炭酸水には,何が溶けているのだろうか。

■炭酸水から出る泡の正体について予想や仮説を持つ。

■実験方法を考え,実験する。

■実験結果を基に,炭酸水から出る泡の正体について考え,発表する。

【結論】炭酸水には,二酸化炭素が溶けている。

【問題】5つの水溶液はどのように仲間分けすることができるのだろうか。

■5つの水溶液の液性についてリトマス紙で調べる。

【結論】炭酸水と塩酸は酸性,石灰水とアンモニア水はアルカリ性,食塩水は中性である。

第二次 金属を変化させる水溶液

(4時間) ■うすい塩酸にアルミニウムを入れたときの変化について調べる。

【問題】アルミニウムは塩酸の中にあるのだろうか。

■うすい塩酸にアルミニウムを溶かした液を蒸発させたときの様子について,これまでの

生活経験や既習事項を基に予想や仮説を持つ。

■実験方法を考え,実験する。

■実験結果を基に,溶けたアルミニウムが塩酸の中にあるかどうかを考え,発表する。

【結論】うすい塩酸にアルミニウムが溶けた液を蒸発させると,アルミニウムかどうかはわ

からない白い粉が出てきた。

4.単元:水溶液の性質 (全10時間)

自然事象への科学的な思考・表現 観察・実験の技能

自然事象についての解理・識知度態・欲意・心関

①いろいろな水溶液の液 ①水溶液の性質や働きに ①水溶液の性質を調べる ①水溶液には,酸性,ア

性や溶けている物及び ついて予想や仮説を持 工夫をし,リトマス紙 ルカリ性及び中性のも

や加熱器具等を適切に

使って,安全に実験を

している。

きを調べようとしてい ついて,自ら行った実 ②水溶液の性質を調べ, けているものがあるこ

る。 験の結果と予想や仮説 その過程や結果を記録 とを理解している。

②水溶液の性質や働きを を照らし合わせて推論 している。 ③水溶液には,金属を変

こるあがのもるせさ化現表をえ考の分自,しあにり回の身,し用適

。るいてし解理をと。るいてしとうそ直見を液溶水る

している。

小学校 

第6学年

事例6

小学校

小 学 校

金属を変化させる様子

に興味・関心を持ち,

自ら水溶液の性質や働

 ち,推論しながら追求

 し,表現している。

②水溶液の性質や働きに

 のがあることを理解し

 ている。

②水溶液には,期待が溶

43

【問題】塩酸にアルミニウムを入れ,液を蒸発させて残った白い粉は,アルミニウムなのだ

ろうか。

■実験方法を考え,結果の見通しを持つ。

■前時に見いだした問題を確認し,予想や実験方法,結果の見通しを話し合う。

■考えた方法で実験を行い,結果を整理して話し合う。

■話し合ったことを基に,より妥当な考えをつくりだす。

【結論】白い粉は,アルミニウムではなく,別の性質の物に変化したと考えられる。

動活習学な主)2(標目の時本)1(

金属が溶けた水溶液を蒸発させて残った白い粉

について,自ら行った実験結果と予想や仮説を照

らし合わせて推論し,自分の考えを表現すること

ができる。

(3)本事例の特徴

1.問題の確認

2.実験方法の発表

3.実験

4.結果の整理,考察

5.結果や考察した内容の共有

6.考察した内容についての話合い

7.考察した内容の改善

8.改善した考察内容の発表

9.結論の導出

10.振り返り

本事例では,「塩酸にアルミニウムを入れ,液を蒸発させて残った白い粉は,アルミニウムなの

だろうか」という問題に対して,アルミニウムかどうかを調べた複数の実験結果を基に分析し,よ

り妥当な考えをつくりだして考察している。

本事例の指導のポイントとして,一つの実験結果だけではなく複数の実験結果を基に考え,個人

だけではなく学級全体でより妥当な考えをつくりだす話合いの場を設定している。

指導のポイントを達成するための工夫として,複線型の展開により,考えを広げ深めたり,全て

の実験結果を示し,多面的に分析して考察したりできるようにしている。

本時(4/4)

5.本時:金属を変化させる水溶液

小学校 

第6学年

事例6

小学校

小 学 校

44

(4)展開例

学習活動◆ 指導・支援,留意点

□ 評価規準等

<前時までの様子>

塩酸にアルミニウムを入れた液を蒸発させると,白い粉が出てきた様子を観察し,元のアルミニウムと比較しながら,「塩酸にアルミニウムを入れ,液を蒸発させて残った白い粉は,アルミニウムなのだろうか」という問題を設定した。白い粉がアルミニウムかどうかを判断するための検証方法について,これまでの学習で獲得したアルミニウムの性質を基に一人一人が実験方法を考え,同じ実験方法を計画した児童が集まったグループで,実験方法について話し合い,グループごとにホワイトボードにまとめている。また,自分の予想が確かめられた場合の実験結果について見通しを持っている。

1.問題の確認

■前時までの学習で見いだした問題を全体で確認する。

問題:塩酸にアルミニウムを入れ,液を蒸発させて残った白い粉は,アルミニウムなのだろうか。

2.実験方法の発表

■児童一人一人が考えとムウニミルアとるれら得が果結なうよのど◆方に基を法方験実たよるきで験実てっ持をし通見かのるきで断判話でプールグの別法験実の合場たし致一が想予,にめたるすにうーボトイワホ,い合し

。るす認確ていつに果結内験実ためとまにド容を全体で発表し,

,にめたるめ進に滑円を動活い合話の後験実◆。るす有共自分の考えた実験以外の方法についても捉え,把握できるようにする。

■予想と一致した場合の実験結果について見通しを持つ。

<重さ> <電気> <磁石> <水> <塩酸>アルミニ アルミニ アルミニ アルミニ アルミニウムであ ウムであ ウムであ ウムであ ウムであれば,重 れば,電 れば,磁 れば,水 れば,泡さは変わ 気を通す 石に引き に溶けな を出してらないと と思う。 付けられ いと思う。 溶けると思う。 ないと思 思う。

う。

3.実験

■必要な器具を準備し,実験する。 ◆児童が主体的に実験を進めるために,考えた方法での実験に必要な器具を準備するように

<重さ> <電気> <磁石> <水> <塩酸> する。元のアル 白い粉に 白い粉に 白い粉が 白い粉がミニウム 電気を通 磁石を近 水に溶け 塩酸にどカップと し,豆電 付け,引 るかを調 のように白い粉の 球が光る き付けら べる。 溶けるか重さを量 かを調べ れるかを を調べる。り,同じ る。 調べる。重さかを調べる。

実験方法と結果の見通しを

発表する

詳細版の場面

指導のポイント<改善>

複数の実験結果を基に考え,より妥当な考えをつくりだす話合いの場を設定する

指導の工夫(1)

小学校 

第6学年

事例6

小学校

小 学 校

45

4.結果の整理,考察

■実験で得られた結果を整理して,グループで確認し合う。

<重さ> <電気> <磁石> <水> <塩酸>豆電球は 水に溶け 泡を出さ白い粉の

重さは, 光らなかっ た。 ずに溶け0.3gだっ た。 た。た。

■実験結果を基に個人でアルミニウムかどうかを判断し,ノートに書く。

<重さ> <電気> <磁石> <水> <塩酸>白い粉は 白い粉は 白い粉は 白い粉は 白い粉は元のアル 電気が通 アルミニ 水に溶け 塩酸に泡ミニウム らなかっ ウムと同 たので,ア を出さず ◆実験結果を正確に捉えられるようにするためカップより たので,ア じく,磁 ルミニウ に溶けた に,個人で捉えた事実をグループ内で話し合重くなっ ルミニウ 石に引き ムではな ので,ア い,確認できるようにする。ていたの ムではな 付けられ いと考え ルミニウで,アル いと考え なかった られる。 ムではな ◆実験結果を基に分析して考察できるようにすミニウム られる。 ので,ア いと考え るために,実験結果と自らの予想を照らし合ではない ルミニウ られる。 わせて,予想と一致していたかどうかを考えと考えら ムである られるようにする。れる。 と考えら

れる。 ◆考察した内容を確かめるために,個人で考察した内容をグループで話し合う場を確保する。

■実験結果からいえることを言葉でまとめ,ホワイトボードに記入する。

5.結果や考察した内容の共有

■実験結果と考察した内容を他のグループと話し し察考がプールグだん組り取で法方験実の他◆。う合 た内容を把握するために,他のグループの場

所へ移動して話し合う場を確保する。

6.考察した内容についての話合い

■各グループの実験結果や考察した内容を確認す 内たし察考と果結験実たれら得でプールグ各◆。る 容を記したホワイトボードを黒板に貼り,比

較できるようにする。

白い粉がアルミニウムかどうかにつ

いて,より妥当な考えに改善して判断

できるようにするために,実験後に,

多様な実験方法による複数の結果を基

に考えられるようにすることが大切で

ある。

そのためには,白い粉を水に溶かし

たときの様子や重さの変化,電気を通

すか通さないかなど,児童がこれまで

に学習したアルミニウムの性質を基に

して発想した解決の方法を生かし,そ

れらの方法による実験を行い,それぞ

れの実験結果を比較しながら検討でき

るようにする。

電気グループの実験 磁石グループの実験

磁石を近付けても引き付けられなかった。

小学校 

第6学年

事例6

小学校

小 学 校

46

■他のグループが行った実験の妥当性について話し合う。

アルミニウム以外にも 他の実験の結果からも磁石に引き付けられな 白い粉はアルミニウムい物がある。 でないと判断してよさ

そう。

7.考察した内容の改善

■他のグループが行った実験の結果や考察した内容を踏まえて,改善した考察内容をノートに書く。

アルミニウムであると アルミニウムではない判断したけれど,アルミニウム以外にも磁石

別の性質の物に変わったと考えられる。

に引き付けられない物があるので,白い粉が磁石に引き付けられないからといって白い粉がアルミニウムであるとはいえない。

8.改善した考察内容の発表

■改善した考察内容を全体で発表する。 □金属が溶けた水溶液を蒸発させて残った白い粉について,自ら行った実験結果と予想や仮説を照らし合わせて推論し,自分の考えを表

他の実験の結果とあわせて考えると,白い粉は 現することができている。アルミニウムではない別の性質の物に変わったと (科学的な思考・表現 発言分析・記述分析)考えられる。

9.結論の導出

■考察した内容を基に,問題に対する答えを結論としてまとめる。

結論:白い粉は,アルミニウムではなく,別の性質の物に変化したと考えられる。

10.振り返り

■今日の学習の振り返りをノートに書き,発表 ◆複数のグループが同じ実験を行ったり,グループりよ,でとこるすりたっ行を験実う違にとごする。

妥当な考えに改善できることの価値を学級全一つの実験結果だけではなく,他の実験結果を 体で共有できるようにする。重ねあわせることで,よくわからなかったこと

めたるえ捉に的観客をスセロプの考思のら自◆。たきでがとこるべ調もに,学習の過程を振り返って変容を自覚する学習場面を確保する。

指導のポイント<改善>

複数の実験結果を基に考え,より妥当な考えをつくりだす話合いの場を設定する

白い粉がアルミニウムかどうかについて,磁石に引き付けられるか引き付けられないかで調べた児童が,白い粉がアルミニウムではない別の物に変化したことを捉えるために,重さの変化や電気を通すか通さないかなど他の方法で調べたグループの結果や考察した内容を基に話し合う場を確保することが大切である。そうすることで,一つの実験結果だけではなく,複数の実験方法による結果と重ねあわせて判断し,磁石に引き付けられない物はアルミニウム以外にもあることから,「白い粉はアルミニウムではないと考えられる」というより妥当な考えに改善することができる。

改善した考察内容を

記入する

指導の工夫(2)

指導の工夫(3)

指導の工夫(4)

指導の工夫(5)

小学校 

第6学年

事例6

小学校

小 学 校

47

(1)複線型の展開により,考えを広げ深められるようにする

自然の事物・現象と他者の考察した内容から考えを広げ深められるようにするためには,実験

方法別にグループを構成し,同時並行的に展開することが考えられる。

本事例では,アルミニウムの性質に基づいて発想した5種類の方法に分かれて実験を行い,実

験後には,他のグループの実験結果と考察した内容も確認できるようにした。

(2)全ての実験結果を示し,多面的に分析して考察できるようにする

より妥当な考えをつくりだすためには,全ての実験結果と考察した内容を共有できるようにし

て,自ら行った実験の結果だけで分析して考察し判断するのではなく,多様な方法で取り組んだ

実験の結果も踏まえて判断できるようにすることが大切である。

本事例では,各グループで使用したホワイトボードを黒板に貼って示すことで実験結果と考察

した内容の共有化を図った。ホワイトボードには,「予想」,「実験方法」,「結果の見通

し」,「結果」,「考察した内容」などの要素ごとに書く場所を決め,さらに,色を変えて書く

ようにすることで,他のグループの児童が見たときに内容を捉えやすいようにした。このように

全ての実験結果を示すことで,磁石で調べた児童は他の方法で取り組んだ実験の結果を基に「白

い粉はアルミニウムではないと考えられる」と判断を変え,磁石以外の方法で調べた児童は自ら

行った実験以外の結果でも同じ判断ができることから自らの判断に自信を深め,「全てをあわせ

て考えると白い粉はアルミニウムではないと考えられる」というより妥当な考えをつくりだせる

ようにした。

(3)考察した内容の違いを明らかにし,話合いの必要感を生む

考えを広げ深めるための他者との話合いでは,他者との考えの違いを明らかにし,話合いの必

要感を生むことが大切である。

本事例では,実験方法の異なる各グループが判断した際に根拠とした事実と,その事実から解

釈した内容を学級全体で確認し,白い粉がアルミニウムかどうかの判断の違いを明らかにした。

(4)発想した考えを価値付けし,主体的に学ぶ態度を育成する

主体的に学ぶ態度を育成するために,児童が発想した考えを学習展開の中で価値付けするよう

にすることが大切である。児童が発想する実験方法には,実験により予想を確かめることができ

ないなど妥当性に欠けるものもあるが,実験の安全性について検討した上で実施できるようにし

た。

本事例では,白い粉がアルミニウムかどうかを判断する実験方法として「アルミニウムは磁石

に引き付けられない」という既習事項を生かした発想に対して,予想を確かめるための適切な方

法ではなかったが,検証計画の立案の時点で検討・修正を行わず,その発想を認め,まずは発想

した方法による実験を実施するようにした。また,この実験により白い粉が磁石に引き付けられ

る鉄ではないことを明らかにしたという価値付けをし,主体的に学ぶ態度の育成を図った。

(5)学習を振り返る場を設定し,身に付いた問題解決の能力を自覚できるようにする

身に付いた問題解決の能力を自覚するためには,自らの思考のプロセスなどを客観的に捉えて

自らの学びを振り返る場を設定することが大切である。

本事例では,「個人での考察」,「同じ方法で実験したグループ内で話し合った後の考察」,

「異なる方法で実験した結果とあわせて全体で話し合った後の考察」のように,考察する機会を

複数回設定することで,その考察内容の変容を自ら振り返って見取ることができるようにし,考

察を重ねるたびにより妥当な考えに更新されていることを実感できるようにした。

6.本事例における指導の工夫等

小学校 

第6学年

事例6

小学校

小 学 校

48

(1)複数の実験結果を基に考えを深め,より妥当な考えをつくりだす

本事例では,磁石に引き付けられるか引き付けられないかで白い粉がアルミニウムかどうかを

判断すると発想した児童が,白い粉が磁石に引き付けられないという実験結果を基に,白い粉は

アルミニウムであると判断した。しかし,他の方法による実験結果からは,白い粉はアルミニウ

ムではないという考えが出され,判断が揺らぐことになった。学級全体での話合いで,他の実験

方法で取り組んだ児童からは,磁石に引き付けられない物はアルミニウム以外にもあるという考

えから,磁石で調べることの妥当性について意見が出された。これを受けて,磁石で調べた児童

は,磁石に引き付けられない物はアルミニウム以外にも存在することに気付き,白い粉が磁石に

引き付けられなかったからといってアルミニウムであると判断することはできないと考えるに至っ

た。

また,他の実験方法で調べた児童は,既習事項である重さの変化や,電気を通すか通さないか

の違いなどの物質による性質の違いを基に検証方法を考え,その結果から現時点では白い粉はア

ルミニウムではないという判断がより妥当な考えとして合意形成された。

その後,全ての実験結果から判断できる内容を考察としてまとめるように促すことで,学級全

体で話し合ったことを受けて考察をし直す姿が見られた。

学級全体では,自分たちで調べた実験の結果だけではな

く,他の実験の結果もあわせて判断することで,白い粉は

アルミニウムではない別の性質の物に変わったと考えられ

るというより妥当な考えをつくりだすことができた。

また,本事例では,段階的に話合いの対象を広げ,考え

を広げ深めるように展開していることから,「個人での考

察」,「同じ方法で実験したグループ内で話し合った後の

考察」,「異なる方法で実験した結果とあわせて全体で話

し合った後の考察」があり,その考察内容の変容を自ら振

り返って見取ることでき,学びの高まりを自己評価する姿

が授業の振り返りの発言となって表れていた。

(2)実験結果と考察した内容について,実験方法の異なる他のグループと話し合う本事例では,得られた結果や考察した内容について,「実験方法の同じグループ内」,「同じ

実験方法の他のグループ」,「異なる実験方法のグループ」と段階的に対象を広げて話し合うこ

とで,学級全体の前では発言が苦手な児童が同じ実験の他グループの児童と話し合うことで自信

を深め,別の実験方法のグループや学級全体の前で発言できた。

また,本時の実験は,比較的危険性が低く短時間で終わる内容であったため,結果の整理と考

察を終えたグループから他のグループの場所に移動し,実験結果や考察した内容を話し合った

り,自らその実験を行ったりすることで主体的に学習が進められるように授業を構成した。ただ

し,児童が立ち歩くと危険が予想される実験の場合は,実験を行う時間と話し合う時間を決め

て,実験が終わるまでは席を離れないように指導することも大切である。

考察した内容の変容

7.本事例を振り返って

小学校 

第6学年

事例6

小学校

小 学 校

49

中学校理科 第1学年

〔第1分野〕(1) 身近な物理現象 ア 光と音 (ウ) 音の性質

【分析結果と課題】

○ 課題を解決するために,予想や仮説を立ててそれを検証する実験を計画すること

に課題

・ コップに水を注ぐときの音の高さを決める要因が,「空気の部分の長さ」であるか,又は「水

の部分の長さ」であるか,を確かめる実験を,結果を予想して計画することに課題がある。

〔6(2)正答率30.4%〕〔報告書P.70〕

【学習指導に当たって】

○ 予想や仮説を立ててそれを検証する実験を計画する

・ 予想や仮説を立ててそれを検証する実験を計画する際には,小学校で培った問題解決の能

力を踏まえて指導に当たることが大切である。小学校第3学年では差異点や共通点に気付い

たり比較したりする能力,第4学年では変化とその要因とを関係付ける能力,第5学年では

変える条件(変化させる要因)と変えない条件(変化させない要因)を区別しながら観察,実

験などを計画する際に必要な条件を制御する能力,第6学年では要因や規則性,関係を推論

する能力を育成している。〔報告書P.51〕

○ 要因が複数挙げられる実験を計画する際,それぞれの要因に対応する実験の結果

を予想できるようにする

・ 要因(独立変数)が複数挙げられる場合には,挙げた要因の妥当性を検討して実験を計画

する際に,それぞれの要因に対応する実験の結果を予想できるようにすることは大切である。

〔解説資料P.54〕

○ 仮説を設定し,検証する実験を計画できるようにする

・ 二つの仮説を設定し,それぞれの仮説を検証する実験を計画する学習場面を設定すること

が考えられる。

・ 設定した仮説を検証した結果,その仮説が成立しなかった場合にも意味があることに留意

して指導することが,科学的に探究する能力の基礎を育てる上で大切である。

〔解説資料P.54〕

○ 小学校で身に付けた問題解決の能力を活用して,課題解決に取り組む

・ 小学校で学習した比較,関係付け,条件制御などの問題解決の能力を活用して課題解決に

取り組むために,小学校での学習を復習する場面を設定している。

○ 弦をはじいたときの音の高低や大小に関係する要因を,個別に考えて抽出し,班

で協働的に検討して改善し,仮説を設定し実験を計画する

・ 弦をはじいたときの音の高低や大小を変化させると考えられる要因を,まず,個別に考え

て抽出し,変える要因と変えない要因に着目して,班で協働的に仮説を設定し実験の計画を

立てる場面を設定している。

事例A 音の高低や大小は何に関係するのだろうか

2.平成27年度全国学力・学習状況調査の調査結果から

1.関連する学習指導要領の内容

3.本指導事例では

構想

日常生活との関連

問題の発見・課題の把握

中学校 

第1学年

事例A第1分野

中学校

中 学 校

50

,めか確をとこるわ伝を中気空が音,い行を験うよし究)間時1(

。るきで摘指を因要るす係かうろだの)間時2(

,てい用をターュピンコやプーコスロシオ○2/1時本

(1)単元の目標

音についての観察,実験を通して,音は物体の振動によって生じ,その振動が空気中などを伝わ

ること,音の高低や大小は,発音体の振動の振幅と振動数に関係することを見いだし指摘できる。

(2)単元の評価規準

自然事象への科学的な思考・表現 観察・実験の技能

自然事象についての

関心・意欲・態度 知識・理解

音に関する事物・現 音に関する事物・現 音に関する観察,実 音について基本的な

象に進んで関わり,そ 象の中に問題を見いだ 験についての基本操作 仕組みと規則性につい

れらを科学的に探究し し,目的意識を持って を習得するとともに, て基本的な概念を理解

ようとするとともに, 観察,実験などを行い, 観察,実験などの計画 し,知識を身に付けて

事象を日常生活との関 音の大きさや高さを決 的な実施,結果の記録 いる。

わりでみようとする。 める要因について自ら や整理などの仕方を身

の考えをまとめ,表現 に付けている。

している。

(3)単元の指導計画(全4時間)

次 学習の課題 主な観察や実験など

第一次 音が出るときは,物体はどのよ ○ 発振器に接続したスピーカーや太鼓,おん

(1時間) うになっているのだろう さなどの観察,実験を通して,物体が振動し

ているときに音が発生していることを指摘で

きる。

第二次 音の伝わり方や速さについて探 ○ 二つの標準おんさの共鳴現象や真空鈴の実

音が聞こえるためには,空気など音を伝える

物質の存在が必要であることを説明できる。

第三次 音の高低や大小は何に関係する ○ モノコードを使って,音の高低や大小に関

音を波形で表示し,音の高低と振動数,音の

大小と振幅が関連することを指摘できる。

(1)本時の目標 (2)主な学習活動

モノコードを使って音の高低や大小を調べる実験

を行い,音の高低や大小を変化させる要因を指摘

できる。

小学校で学習した比較や関係付け,条件制御などの

問題解決の能力を活用して,実験を計画し課題を

解決できる。

1.問題の発見・課題の把握

2.要因の抽出・仮説の設定

3.実験の計画

4.観察・実験

5.結果と考察

6.課題解決の振り返り

4.単元:音の世界 (全4時間)

5.本時:音の高低や大小は何に関係するのだろうか

中学校 

第1学年

事例A第1分野

中学校

中 学 校

51

(3)本事例の特徴

(4)展開例

◆ 指導・支援,留意点

学習活動 ○ 主に指導に生かす評価

◎ 指導に生かすとともに記録し総括に用いる評価

モノコードの演奏から,音の高低や

大小の違いを見いだし,課題を把握す

る。

○ 1本の弦で,音の高低や大小を変化させて楽曲を演奏

できることに着目して,本時の問題を見いだしている。

【自然事象への関心・意欲・態度】

音の高低や大小の変化の原因として

考えられる要因(長さ,太さ,張る強

さ,はじく強さ,材質)を挙げて,仮

説を設定する。

◆ 閉じ込めた空気に力を加え,その体積や圧し返す力の

変化を調べる実験を提示して,小学校で身に付けた「関

係付け」について復習させ,音の高低や大小に関係する

と考えられる要因に着目できるようにする。その際,「弦

の何に関係していますか」などと発問し,弦についての

要因に着目できるようにする。

◆ 一人一人の考えを区別するために,班の人数分の色(黄

色,桃色,水色,黄緑色など)の付箋紙を配布する。

◆ 1枚の付箋紙に一つの要因を書き出すように指示する。

① 生徒自ら問題を見いだして,主体的に課題解決に取り組む。

② 小学校で身に付けた問題解決の能力を活用しながら,原因として考えられる複数の要因を抽出し,

それらを基に仮説を設定し,実験を計画する。

③ 日常生活や社会と関連した学習で,理科を学ぶ意義や有用性を実感する。

指導のポイント1 「問題の発見・課題の把握」

主体的に課題解決に取り組む。

◆ モノコードの琴柱を利用せずに弦をはじいて音を出

した場合と,手元を隠し琴柱の位置を変えたり,弦の

はじき方を変えたりして音を出した場合とを比較して

提示することで,生徒自らが音の高低や大小に関する

問題を見いだすことができるようにする。

1.問題の発見・課題の把握

2.要因の抽出・仮説の設定 指導のポイント2 「構想」

自然の事物・現象を,変化すること(従属変数)と,その

原因として考えられる要因(独立変数)の関係として捉え,

原因として考えられる複数の要因を抽出し,それらを基

に仮説を設定し,実験を計画する。

◆ 班ごとに一人一人の付箋紙の色を決めて,個別に要

因を抽出できるようにする。

◆ 個別に書き出した付箋紙を,班ごとに配布したホワ

イトボード上で分類し,仮説を設定できるようにする。

◆ 小学校で学習した条件制御の学習を提示して,変え

る要因と変えない要因を制御した実験を計画できるよ

うにする。

中学校 

第1学年

事例A第1分野

中学校

中 学 校

52

間机かうどかるいてれらめ進が験実てし意留に点の次◆。るす

◆ 習得した知識・技能や生活経験を根拠に,周りの生徒

と相談せずに個別に考えて要因を書き出すように指示する。

◆ 抽出した要因を書き出した個別の付箋紙を,配布した

ホワイトボード上に貼り付けて共有させた後,それぞれ

の要因の妥当性を検討して分類し,仮説を設定できるよ

うにする。

◆ 本時の「学習の見通し」を提示することで,課題解決

への見通しを持つことができるようにする。

◆ 仮説を検証する実験を計画できるようにするために,

小学校で学習した「振り子の運動の規則性」を調べる実

仮説を検証する実験を,小学校で身 験の条件を制御する例を提示する。

に付けた「条件制御」の能力を生かし

て計画する。 ◆ 実験計画を立てることができていない生徒に対して,

「変える要因と変えない要因に着目しましょう。」と机間

指導を行う。

○ 変える要因と変えない要因に着目して,実験を計画で

きている。 【科学的な思考・表現】

◆ 生徒が抽出した要因を基に設定した複数の仮説につい

て,担当する仮説を決めさせ,責任を持って実験を計画

することができるようにする。その後,次の①~④のよ

個別に実験を計画した後,班で実験 うな手順で協働的に学習できるように指導する。

の計画を検討して改善する。 ① 班の中で担当する仮説を決め,その仮説を検証する

実験を計画する。

② 他の班と交流して,同じ仮説の実験計画を立案した生徒

同士が検討して改善し合う。

③ それぞれが担当した仮説を確かめる実験計画を班の

中で共有する。

④ 班で考えた実験計画を発表し,学級全体で共有する。

◆ 他の班の音と混同しないように,モノコードを置く位

置に留意するように指示する。

設定した仮説を検証する実験を実施

指導する。

・要因を制御できているか。

・どの仮説を調べようとしている実験なのか。

○ 要因を制御して,実験を行っている。

【観察・実験の技能】

◆ 「結果を記述する」,「課題に対する」という二つの視

点を示して,考察できるようにする。

結果を分析して解釈し,課題に正対

した考察をする。 ◯ 「結果を記述する」,「課題に対する」という二つの視

点を踏まえて表現している。 【科学的な思考・表現】

3.実験の計画

5.結果と考察

4.観察・実験

中学校 

第1学年

事例A第1分野

中学校

中 学 校

53

】現表・考思な的学科【。るいて

◎ モノコードを使って音の高低や大小を調べる実験を行

い,音の高低や大小を変化させる要因を指摘できている。

【科学的な思考・表現】

◎ 小学校で学習した比較や関係付け,条件制御などの問

題解決の能力を活用して,実験を計画し課題を解決でき

課題解決の過程を振り返り,理科を

学ぶ意義や有用性を実感する。

◆ 「一番高い音が出る弦はどれだと考えられますか。学

習したことを基に考えましょう。」と発問し,生徒に予

想させてから,演示実験を行う。

(1)問題解決の能力を活用する工夫

小学校第4学年の「加える力と空気の体積変化」で学

習した「関係付け」を取り上げて,音の高低や大小に関

係する要因を抽出できるようにする(図1)。また,実

験を計画する際には,小学校第5学年の「振り子の運動」

で学習した「条件制御」を取り上げて,変える要因と変

えない要因に着目しながら実験の計画を立てることがで

きるようにする。図2は,「関係付け」と「条件制御」

の板書例である。

図2 「関係付け」,「条件制御」の板書例

指導のポイント3 「日常生活との関連」

日常生活や社会と関連した学習で,理科を学ぶ意義や

有用性を実感する。

◆ 生徒にとって親しみのある「糸電話」を利用した楽

器(ストリングラフィー)を演奏して,日常生活や社

会で用いられている楽器と理科の授業で学習した内容

を関連付けて捉えることができるようにする。

6.本事例における指導の工夫等

6.課題解決の振り返り

図1 小学校で学習した問題解決の復習

中学校 

第1学年

事例A第1分野

中学校

中 学 校

54

(2)科学的に探究する過程を示したワークシート例自然の事物・現象を科学的に探究する

活動は固定的なものではないが,問題の把握,仮説の設定,資料の収集,実験による検証,結果の分析や解釈,結論の導出などが考えられる。本事例で活用したワークシートには,科学的に探究する過程の一つの例として次の①~⑥を示している(図3)。

なお,複数の仮説を検証するための実験計画を記録できるように,計画1~4の欄を設けている。

① 問題の発見② 課題の設定③ 要因の抽出

小学校理科で学習した「関係付け」

の能力を活用して,個別に考えて抽出した要因を付箋紙に記述する。

④ 実験の計画と結果

小学校理科で学習した「条件制御」の能力を活用して,実験の計画を記述する。

⑤ 考察「結果を記述する」,「課題に対す

る」という二つの視点を踏まえて思考・

表現する。⑥ 振り返り

科学的に探究した過程を振り返る。

なお,図3のワークシートは指導事例集のDVDに同梱している。

(3)協働的な学習を進める工夫生徒が抽出した要因を基に設定した複数の仮説につ

いて,担当する仮説を決めて,責任を持って実験を計画することができるようにする。そのためには,次の

①~④のような手順で協働的に進めることが考えられる。なお,複数の仮説について,担当する仮説を決めて

実験を計画することによって,限られた時間の中で科

学的に探究する活動を充実することができる。

① 班の中で,担当する仮説を決めて,その仮説を検証する実験を計画する(図4)。

② 他の班と交流して,同じ仮説の実験計画を立案し

た生徒同士が検討して改善し合う(図5)。③ 班の中で,担当した四つの仮説を検証する実験

計画を共有する(図6)。

④ 班で考えた実験計画を発表し,学級全体で共有する(図6)。

図4 担当する仮説を決める場面

図5 他の班と交流する場面

図6 班や学級全体で共有する場面

図3 科学的に探究する過程を示したワークシート例

中学校 

第1学年

事例A第1分野

中学校

中 学 校

55

(1)生徒自ら問題を見いだして,主体的に課題解決に取り組むことができるようにする

<指導の意義>

生徒自ら問題を見いだすことは,自然の事物・現象に進んで関わり,目的意識を持って観察,

実験を行い,主体的に課題解決に取り組む上で大切である。

<本事例の特徴>

生徒自ら問題を見いだして,主体的に課題解決に取り組むことができるようにするために,

モノコードの琴柱を利用せずに弦をはじいて音を出した場合と,手元を隠し琴柱の位置を変え

たり弦のはじき方を変えたりして音を出した場合を比較して提示することで,生徒自らが音の

高低や大小に関する問題を見いだすことができるようにした。

<生徒の反応>

授業後に,抽出した要因から仮説を設定する際に学習したことを根拠にすることができた程

度を,「① 当てはまらない ② どちらかというと当てはまらない ③ どちらかというと当て

はまる ④ 当てはまる」の4件法で調査した。その結果,「④ 当てはまる」と回答した生徒

の割合は46%,「③ どちらかというと当てはまる」と回答した生徒の割合は44%となり,肯定

的な回答は合わせて90%であった。

また,「本授業で学んだことや強く印象に残ったことを書きましょう」と質問したところ,「自

分たちで計画を立ててみると実験を行うときに頭で覚えているので実験しやすかったです。弦

の長さを変えるとなぜ高低が変わるか不思議でした。家に帰ってピアノで確かめてみたいで

す。」,「この学習でギターやバイオリンなどの弦楽器の仕組みも分かったので音楽にも楽器に

も興味が持てそう。」,「自分たちで実験の計画を立て,実験をすることで,変える条件と変え

ない条件を意識しながら実験ができた。今回見つけた音が高くなる条件をすべてそろえると一

番高い音が出ると思う。この考え方は,現象が何に関係するかを見つける他の実験のときにも

使うことができると思う。」,「今回は弦で実験をしたけど,弦以外の楽器ですると関係する要

因は同じなのか,また,弦の固さや温度,素材を変えると音の高さはどうなるかやってみたい。」

などと記述しており,主体的に課題解決に取り組もうとする姿勢が認められる。

(2)小学校で身に付けた問題解決の能力を活用しながら,原因として考えられる複数の

要因を抽出し,それらを基に仮説を設定し,実験を計画する。

<指導の意義>

観察,実験を計画する学習活動の充実を図るために,小学校で学習した比較,関係付け,条

件制御などの問題解決の能力を活用して課題解決に取り組むことは大切である。また,実験を

計画する際に,個別に考えて実験を計画させた上で,学級や班の中で視点を持って対話をした

り,教え合ったりすることは大切である。

<本事例の特徴>

本事例では,弦をはじいたときの音の高低や大小に関係すると考えられる要因を個別に抽

出し,班で分類して整理した後に,抽出した複数の要因を基に仮説を設定する学習場面を設定

した。その際,担当する仮説を決めて,責任を持って実験計画を立てた。そして,同じ仮説を

検証する実験計画を立てた生徒同士が集まり,検討して改善した。その検討して改善した実験

計画を班の中で確認した後,実験計画を学級全体で発表し,共有した。

7.本事例を振り返って

中学校 

第1学年

事例A第1分野

中学校

中 学 校

56

<生徒の反応>

授業後に,「変える要因」と「変えない要因」を意識しながら,仮説を検証する実験を計画

することができた程度を,「① 当てはまらない ② どちらかというと当てはまらない ③ ど

ちらかというと当てはまる ④ 当てはまる」の4件法で調査した。その結果,「④ 当てはま

る」と回答した生徒の割合は61%,「③ どちらかというと当てはまる」と回答した生徒の割合

は29%となり,肯定的な回答は合わせて90%であった。

また,「小学校で身に付けた問題解決の能力について感想を書きましょう」と質問したとこ

ろ,「小学校のことが中学校でも生きると感じました。小学校の理科の上に中学校の理科があ

るので,これからは何かを考えるときは小学校で学んだことが使えるのでは,と頭においてお

きたいです。」,「今回,自らが計画を立て実験をすることで,なぜ,その結果になるかが分か

りやすく,考察がしやすかった。また,条件を制御することで,小学校のころの復習にもなっ

たので良かった。」などと記述しており,実験を計画する際に,小学校で身に付けた問題解決

の能力を活用することができていたと考えられる。

「関係付け,条件制御などの問題解決の能力を活用できましたか」と質問したところ,「自

分たちで実験の計画を立て,実験をすることで,変える条件と変えない条件を意識しながら実

験ができた。今回見付けた音が高くなる条件を全てそろえると一番高い音が出ると思う。この

考え方は,現象が何に関係するかを見付ける他の実験のときにも使うことができると思う。」

などと記述しており,関係付け,条件制御などの問題解決の能力を活用できており,今回の学

習を次回の科学的に探究する学習に生かそうとしている。

「学級や班の中で検討して改善したことについて感想を書きましょう」と質問したところ,

「自分たちで計画を立てて実験していくことで『もう少しこうした方がよいのではないか』な

どのアイデアが出てきたので,実験が正確にできた気がする。このようにみんなでアイデアを

出しながら実験計画を立てると,他にもまだ音の高さに関係があるものが出てくるのではない

かと思う。」などと記述しており,生徒は学級や班の中で協働的に検討して改善することで適

切かつ深く探究できると認識している。

中学校 

第1学年

事例A第1分野

中学校

中 学 校

57

中学校理科 第1学年

〔第1分野〕(2) 身の回りの物質 ア 物質のすがた (ア) 身の回りの物質とその性質

【分析結果と課題】

○ 課題に正対した対照実験を計画することに課題

・ 炭酸水素ナトリウムが二酸化炭素の発生に関係していることを特定するための対照実験を

計画することに課題がある。〔1(5)正答率52.5%〕〔報告書P.32〕

【学習指導に当たって】

○ 主体的で協働的な学習を充実して科学的な探究ができるようにする

・ 班で各自の考えを説明する時間を確保したり,ホワイトボードなどにまとめて共有したり

する学習場面を設定することが考えられる。

・ 机間指導を行い,必要に応じて生徒自身の考えを検討して改善するきっかけとなるように

助言や問い返しをすることなどが大切である。〔解説資料P.23〕

○ 日常生活や社会に関わる場面の中に問題を見いだして課題を設定する

・ 解決の必然性がある場面を提示して動機付けを行うとともに,問題を見いだして課題を設

定して,科学的な探究に主体的に取り組むようにしている。

○ 小学校の知識・技能を活用して物質を区別する方法を考え,課題解決の見通しを持つ

・ 小学校で学習した物質の調べ方の知識・技能を活用し,「5種類の白い粉末の物質の性質が

分かれば区別できそうだ」という見通しを持つ場面を設定している。

○ 課題を解決する必要性や目的意識を持って,新たな知識・技能を習得する

・ 課題解決の過程を把握して見通しを持つことによって,必要性を認識し目的意識を持って

新たな知識・技能を習得できるように授業を構成している。

○ 白い粉末を区別する実験を計画し,検討して改善する

・ 科学的な探究に主体的に取り組む上で,根拠を明らかにして自分の考えを他者に伝え,対

話を通して,検討して改善しながら課題解決を行うことが大切である。根拠を示しながら個

別の考えをまとめて班で話し合い,班同士の交流を通して実験計画を検討して改善できるよ

うにしている。

・ 「効率(手順ができるだけ少なくなるように実験を計画する)」の視点から実験計画を検討し

て改善し,実験中でも必要に応じて検討して改善できるように机間指導をしている。

事例B 物質の性質に着目して5種類の白い粉末を区別しよう

2.平成27年度全国学力・学習状況調査の調査結果から

1.関連する学習指導要領の内容

3.本指導事例では

構想

課題解決の見通し 知識・技能の習得

問題の発見・課題の設定

中学校 

第1学年

事例B第1分野

中学校

中 学 校

58

解理・識知度態・欲意・心関

。るす得習を法方作操3/1時本

溶のへ水「るあで法方るべ調を質性の質物○3/2時本

」方け3/3時本

のミゴ,べ調を質性のクッチスラプるあにりうよべ調を)間時1(

(1)単元の目標

身の回りの物質はいろいろな性質を持っていることを理解し,それらの性質に着目して物質を

分類できることを観察,実験を通して見いだすとともに,加熱の仕方や実験器具の操作,実験結

果の記録の仕方などの技能を身に付ける。

(2)単元の評価規準

自然事象への科学的な思考・表現 観察・実験の技能

自然事象についての

身近な白色の粉末の 身近な白色の粉末の 実験器具の操作など 身近な白色の粉末の

性質に関する事物・現象 性質に関する事物・現 観察,実験の基礎操作 固有の性質について理

に進んで関わり,それ 象の中に問題を見いだ を習得するとともに, 解するとともに,それ

らを科学的に探究する し,目的意識を持って 物質を区別する実験を らを基に物質を見分け

とともに,事象を日常 観察,実験を計画して 安全,確実に実施し, る方法を身に付けてい

生活との関わりでみよ 行い,物質の固有の性 結果の記録や整理の仕 る。

うとする。 質について自らの考え 方を身に付けている。

を導き,表現している。

(3)単元の指導計画(全8時間)

次 学習の課題 主な観察や実験など

第一次 物質を見分けるには,どのような ○ 身の回りの様々な物質を観察し,区別する

(1時間) 方法があるだろうか 方法について考えてまとめる。

第二次 金属と金属でない物質の性質の ○ 身の回りの金属製品を調べ,金属に共通の

(3時間) 違いを調べよう(1時間) 性質を見いだして非金属の性質と比較する。

さまざまな金属を見分けよう ○ 金属には固有の密度があることに着目し,

(2時間) 体積と質量を測定して身近な金属を区別する。

第三次 物質の性質に着目して5種類の白い ○ 白い粉末を加熱したときの変化の様子を調

(3時間) 粉末を区別しよう べるために,マッチとガスバーナーの安全な

,「リトマス紙を使った水溶液の性質」,

「加熱したときの様子」を基に,5種類の白

い粉末を区別する。

第四次 身の回りのプラスチックの性質 ○ 今までの物質の調べ方を活用して,身の回

分別やリサイクルと関連付けて捉える。

4.単元:身の回りの物質とその性質 (全8時間)

中学校 

第1学年

事例B第1分野

中学校

中 学 校

59

(1)本時の目標 (2)主な学習活動

ラムネ菓子を作る物質(材料)を区別するとい

う課題を設定して,物質の性質に関する知識や実

験の技能を習得・活用するとともに,「安全・確実・

効率」の視点を基に実験を計画して課題を解決で

きる。

(3)本事例の特徴

(4)展開例

◆ 指導・支援,留意点

学習活動 ○ 主に指導に生かす評価

◎ 指導に生かすとともに記録し総括に用いる評価

ラムネ菓子を作るための4種類の物質

(材料)を知り,提示された場面から問

題を見いだす。

第1・2時

1.問題の発見・課題の設定

2.課題解決の見通し

3.必要性を認識し目的意識を持った

知識・技能の習得

第3時

4.物質を区別するための観察・実験の

計画

5.物質を区別するための観察・実験

6.結果の分析・解釈

7.まとめ

① 一つの題材のまとまりの中で,知識・技能を習得し,思考力・表現力が高まるように,生徒が「必

要性を認識し目的意識を持って知識・技能を習得する場面」と「思考・表現する場面」を適切に設

定する。具体的には,見いだした問題を基に課題を設定し,その課題を解決するための知識・技能

を習得した後,それらを活用して主体的・協働的に課題を解決する場面を設定する。

② 知識・技能を活用しようとする意識を高めるために,学習内容に関する日常生活や社会におい

て解決の必要性を認識し目的意識を持てる場面を提示し,課題を設定できるようにする。具体的

には,生徒にとって身近なラムネ菓子の材料を題材とした場面の中に問題を見いだし,物質を区

別するという課題を設定できるようにする。

③ 物質を区別するために,「物質の性質」に着目するとともに,「安全・確実・効率」の視点を持って

実験を計画できるようにする。その際,樹形図などの思考ツールを利用して個別に実験の計画を

考えた後に,その考えを班で共有し,「物質の性質」と「安全・確実・効率」を基に検討して改善で

きるようにする。

指導のポイント1 「問題の発見・課題の設定」

問題を見いだして,課題解決に主体的に取り組む。

◆ 主体的に探究する意欲を高めるために,学習内容に関係す

る日常生活や社会の中の場面を提示し,生徒が問題を見いだ

して課題を設定し,解決する意義が持てるようにする。

◆ 提示する場面は,生徒にとって目新しく,しかも解決の必

要性を認識し目的意識や見通しが持てるとともに,知識・技

能を総合して活用できるようにすることが大切である。

1.問題の発見・課題の設定

5.本時:物質の性質に着目して5種類の白い粉末を区別しよう

中学校 

第1学年

事例B第1分野

中学校

中 学 校

60

◆ 解決の必要性を認識し目的意識を持てる場面を提示し,

生徒の興味・関心を高めて,問題を見いだして課題を設

定できるようにする。

○ 提示された場面の中に問題を見いだし,課題を設定し

ようとしている。 【自然事象への関心・意欲・態度】

課題解決の過程を把握し,学習活動

の見通しを持つとともに,解決に必要

な知識・技能を把握する。

○ 課題解決までの過程を考え,学習活動を把握しようと

している。 【自然事象への関心・意欲・態度】

白い粉末を区別するために,安全

に加熱をする方法やガラス器具の扱い

方についての技能を習得する。

○ マッチやガスバーナー,ガラス器具を安全に正しく扱

うことができている。 【観察・実験の技能】

◆ 5種類の物質を次に示す四つの方法で調べ,物質の固

次に,5種類の物質を四つの方法で 有の性質を見いだせるようにする。

調べる実験を行って結果を表にまと ・見た目や手触り

め,結果から5種類の物質の固有の性 ・水への溶け方

質についてまとめる。 ・水溶液の性質(リトマス紙の反応)

・加熱した時の変化

○ 5種類の物質を区別する固有の性質を指摘できている。

【自然事象についての知識・理解】

3.必要性を認識し目的意識を

持った知識・技能の習得

2.課題解決の見通し 指導のポイント2 「課題解決の見通し」

見通しを持って粘り強く課題解決に取り組む。

◆ 課題解決の見通しを持たせるために,「物質を区別す

るためには,何を知っていれば良いですか。」などと,

解決に必要な知識・技能や課題解決の過程を問いかけ

ながら板書して示す。

◆ 課題解決に必要な知識・技能を抽出するとともに,

新たに習得する必要がある知識・技能を把握できるよ

うにするために,「学習した金属を区別する方法は,白

い粉末を区別する際には使えるでしょうか。」などと問

いかける。

指導のポイント3 「知識・技能の習得」

必要性を認識し目的意識を持って知識・技能を習得する。

◆ 常に課題に正対した学習活動が行えるように,「課題

解決のどこでガスバーナーが必要ですか」,「ガスバーナー

を課題解決の中でどのように使う必要がありますか」など

と習得の必要性や目的を問いかける。

中学校 

第1学年

事例B第1分野

中学校

中 学 校

61

学習した知識・技能を活用して,物

質を区別する実験を個別に考えた後,

班で検討して改善する。

◆ 前時に学習したそれぞれの物質が持つ固有の性質を復

習し,本時は物質を区別するための観察,実験を計画す

ることを告げる。

◆ ワークシートにまとめたそれぞれの班の実験計画を,

タブレット端末で撮影して学級全体で共有し,「安全・確

実・効率」の視点から,実験の計画を検討して改善させる。

○ 物質の性質に着目して5種類の白い粉末を区別するた

めの実験計画を樹形図に表すことができている。

【科学的な思考・表現】

○ 「安全・確実・効率」の視点から,実験の計画を検討

して改善しようとしている。 【科学的な思考・表現】

◆ 「計画に沿って安全に留意して実験を行っているか」,

「結果を根拠として物質を区別しているか」と問いかけ

計画に従って実験を行い,結果を表 ながら机間指導を行い,実験の進行状況を把握する。

にまとめる。

◆ 新たな操作が必要になったり,不必要な操作が出てき

たりした場合は,適宜,実験の計画を変更するよう伝え

る。

○ 「安全・確実・効率」の視点から,実験の計画を見直

し,検討して改善しようとしている。

【科学的な思考・表現】

◆ A~Eの物質を区別した結果を,実験結果の表と樹形

図を使いながら,班や学級全体で発表し合わせ,検討し

物質の固有の性質を基に実験結果を て改善できるようにする。

分析・解釈して,課題に正対した考察

を行って物質を区別する。 ◆ 白い粉末を区別した結果の正誤を確認するためのデジ

タルコンテンツを提示して,A~Eの物質を特定させる。

5.物質を区別するための観察・実験

6.結果の分析・解釈

指導のポイント4 「構想」

基礎的・基本的な知識・技能を活用して,観察,実験

を計画する。

◆ 観察,実験を計画し,その計画を検討して改善できるよう

にするために,「安全・確実・効率」の視点を示すとともに,

思考を可視化して考えの共有を促進することができる樹形

図などの思考ツールを活用する。

4.物質を区別するための

観察・実験の計画

中学校 

第1学年

事例B第1分野

中学校

中 学 校

62

◎ ラムネ菓子を作る物質(材料)を区別するという課題

を設定して,物質の性質に関する知識や実験の技能を習

得・活用するとともに,「安全・確実・効率」の視点を基

に実験を計画して課題を解決できている。

【科学的な思考・表現】

○ 課題を解決できたという達成感を抱き,理科を学ぶこ

との意義や有用性を実感している。

【自然事象への関心・意欲・態度】

◆ 「物質には共通する性質や固有の性質がある」,「固有

の性質を基に物質を区別できる」ことをまとめる。

本時のまとめを行う。

(1)観察,実験の材料等

<5種類の白い粉末>

○食塩 ○クエン酸 ○砂糖 ○デンプン ○炭酸水素ナトリウム

<実験器具>

○試験管 ○ガラス棒 ○リトマス紙 ○アルミカップ ○薬さじ ○三脚 ○マッチ

○ガスバーナー ○燃えかす入れ

<その他>

○タブレット端末 ○電子黒板

(2)課題解決の見通しを持たせる板書の工夫

生徒が見通しを持って課題解決ができるようにする

ために,本事例では,生徒に問いかけて,黒板の左側

に課題解決の過程を明示し(図1),生徒がいつでも課

題解決の過程を確認できるようにした。

(3)情報を共有するツールとしてのタブレット端末の活用

個別の考えや班の考えを共有し,

検討・改善を行う学習活動は,考えを

深めたり広げたりする上で大切である。

本事例では,樹形図で示した実験計画

をタブレット端末で撮影し,瞬時に電

子黒板上で共有することで,効率的に

他の班と自分の班の計画を比較し検討・

改善ができるようにした(図2)。

6.本事例における指導の工夫等

7.まとめ

図1 見通しを板書して明示

図2 計画を共有し検討・改善

中学校 

第1学年

事例B第1分野

中学校

中 学 校

63

(4)白い粉末を区別した結果の正誤を確認するためのデジタルコンテンツ

白い粉末を区別した結果の正誤を短時間で確認するた

め,クイズ形式のデジタルコンテンツを作成して活用し

た。区別した物質を指摘させながら,一つずつ確認する

ことで,物質を区別することができたという達成感を抱

くことができるようにした(図3)。なお,家庭科室等

で実際にラムネ菓子を作って確認することも考えられる。

なお,図3のデジタルコンテンツは指導事例集の

DVDに同梱している。

(1)日常生活や社会に関わる場面の中に問題を見いだして課題を設定する

<指導の意義>

解決の必要性がある場面を提示して動機付けを行うとともに,問題を見いだして課題を設定

することは,生徒の知識・技能を日常生活や社会に活用しようとする意識を高め,科学的な探

究に主体的に取り組む上で大切である。

<本事例の特徴>

本事例では,生徒にとって身近で関

心を持ちやすいラムネ菓子を題材にし,

ラムネ菓子を自宅の台所で作ろうとし

た際に,容器に取り分けた材料が区別

できなくなったという日常生活で起こ

る可能性のある文脈を提示し(図4),

課題を設定した。

<生徒の反応>

授業後に,理科で学んだ知識・技能が日常生活で役に立つと思った程度を,「① 全く思わな

かった ② あまり思わなかった ③ 少し思った ④ すごく思った」の4件法で調査した。

その結果,「④ すごく思った」と回答した生徒の割合が50%,「③ 少し思った」と回答した生

徒の割合が46%となり,肯定的な回答は合わせて96%であった。

また,「本授業で学んだことや印象に残ったことを書きましょう」と質問したところ,「生活

の中で役立つ内容で,やはり理科は便利だと思った。」,「日常生活で起こりそうなことから授

業が始まったので,課題を最後までやってみたいと思った。」,「理科の実験は,授業全体の流

れも,実験の手順もしっかり考えてすることで,内容を理解することができた。」などと記述

しており,有用性を実感するとともに,主体的に科学的な探究を行う意欲を喚起できていると

考えられる。

7.本事例を振り返って

図3 デジタルコンテンツで確認

図4 提示した日常生活で起こる可能性のある文脈

中学校 

第1学年

事例B第1分野

中学校

中 学 校

64

(2)必要性を認識し目的意識を持って知識・技能を習得する

<指導の意義>

課題解決の過程を生徒自身が見通して,新たな知識・技能の必要性に気付くことは,目的意

識を持って知識・技能を習得することにつながり,知識・技能を活用する上で大切である。

<本事例の特徴>

本事例では,5種類の物質を区別するためには,それぞれの物質の性質を知り,その知識を

活用して実験を計画すればよいことを認識できるようにした。具体的には,生徒に問いかけて,

黒板に課題解決までの過程を明示したり,課題解決のための知識・技能の必要性を認識し目的

意識を持って習得したりできるようにした。

<生徒の反応>

授業後に,「課題を解決する過程で,できるようになったことは何ですか」と質問したとこ

ろ,「最初に学んだ性質を使うと一つ一つ違う粉に分けることができた。これからも他のこと

と関連付けて解決していきたい。」,「それぞれの白い粉には性質があり,見た目では区別でき

なくても性質の違いが出る実験をすれば区別できるようになった。」などと記述しており,習

得した知識・技能を活用できたと考えられる。

(3)物質の固有の性質と「安全・確実・効率」の視点を持った構想と検討・改善

<指導の意義>

実験計画を構想し,その計画を検討・改善する際には,物質の固有の性質と「安全・確実・効率」

の視点を持たせることは大切である。

<本事例の特徴>

本事例では,実験の計画を立てる前

に,物質の固有の性質に着目すること

と,「安全・確実・効率」の視点を学級

全体で確認した(図5)。

また,計画の効率(手順の数)を把

握でき,思考を可視化して共有できる

樹形図を用いて,実験の計画を表すよ

うに指示した。

<生徒の反応>

授業後に,実験計画を立てて検討・改善することの大切さの程度を,「① 全く思わなかった

② あまり思わなかった ③ 少し思った ④ すごく思った」の4件法で調査した。その結果,

「④ すごく思った」と回答した生徒の割合が82%,「③ 少し思った」と回答した生徒の割合

が12%となり,肯定的な回答は合わせて94%であった。

また,「白い粉を区別する実験を自分で計画し,班で話し合って計画を改善したときの感想

を書きましょう」と質問したところ,「自分の計画と比較して,もっと正確で効率のいい実験

ができてよかったと思う。」,「自分の計画が,もっとより良いものになり,やはり,自分一人

の考えよりみんなで考えることが考えの質を高めるのだなと感じた。」などと記述しており,

班で話し合い,計画を検討・改善することの大切さを実感していると考えられる。

図5 視点の明示と確認

中学校 

第1学年

事例B第1分野

中学校

中 学 校

65

中学校理科 第2学年

〔第1分野〕(3) 電流とその利用 イ 電流と磁界 (ウ) 電磁誘導と発電

【分析結果と課題】

○ 理科で学習したことが関係する科学技術について,電磁誘導に関する科学的な概念を使用して説明することに課題・ 電磁誘導を利用した技術の仕組みを示す場面において,コイルと磁石の相互運動で誘導電

流が得られるという知識を活用して,回路のスイッチの入り切りによる磁界の変化を説明す

ることに課題がある。〔5(2)正答率57.1%〕〔報告書P.62~P.63〕

【学習指導に当たって】

○ 理科で学習したことが関係する科学技術について,科学的な概念を使用して考えたり説明したりできるようにする・ 例えば「電磁誘導と発電」の学習では,電磁誘導を利用した製品(非接触型ICカードや

無接点充電器など)の仕組みについて,科学的な概念を使用して考えたり説明したりすること

を,単元を通して取り組む課題として設定したり,単元の終わりに設定したりすることが考

えられる。

・ 個別に考えた後に,班や学級で互いの考えを共有して検討・改善することが大切である。

〔報告書P.63~P.66〕

○ 見いだした問題を基に,単元を通して取り組む課題を設定する・ 無接点充電式の電動歯ブラシを用いて,充電器と歯ブラシが導線でつながれていないのに,

歯ブラシのLEDが点灯するなど,習得した知識・技能や経験では説明できない現象を提示

することで,不思議に思ったり疑問を抱いたりするようにしている。

・ 本事例では,見いだした問題を基に,単元を通して取り組む課題を設定し,「必要性を認

識し目的意識を持って知識・技能を習得する場面」と「思考・判断・表現する場面」を適切

に設計し,単元を通して取り組む課題を常に意識させながら探究を支援することで,主体的

に粘り強く課題解決に取り組むことができるようにしている。

○ 日常生活で利用されている科学技術から,理科を学ぶ意義や有用性を実感する・ 国内外の様々な調査から,生徒が理科を学ぶ意義や有用性を実感していないことなどが課

題となっている。そのため,科学技術が日常生活や社会を豊かにしていることや安全性の向

上に役立っていること,理科で学習することが様々な職業と関係していることなど,日常生

活や社会との関連を重視して改善を図ることは大切である。本事例では,日常生活で利用さ

れている無接点充電器や非接触型ICカードなどの科学技術を取り上げ,その仕組みについ

て科学的に探究できるようにしている。

○ 自他の考えを検討して改善する・ 自らの考えを広げ深めるために,課題に対する考えを個別に表現した後に,班や学級全体

で互いの考えを共有して検討・改善し,解決する学習場面を設定している。その際,検討す

る余地があると認識したり,自信がないと表明したりした生徒の考えを基に,自他の考えを

班や学級全体で協力してよりよいものに練り上げていけるように留意している。

事例C 無接点充電器で電流が得られる仕組みを説明しよう

2.平成27年度全国学力・学習状況調査の調査結果から

1.関連する学習指導要領の内容

3.本指導事例では

適用

習得と活用

検討・改善

理科を学ぶ意義や有用性

中学校 

第2学年

事例C第1分野

中学校

中 学 校

66

電いてし現表をえ考,べ日のどな電充点接無

術技学科の中の活生常。るいてれさ用利で活生常

とこるいてれさ用利に知の流交や導誘磁電持を心関に術技学科る

をみ組仕のそ,り知を充点接無,し用活を識よし究探に的学科,ち

理のていつにみ組仕の電。るすとう

。るす現再を象現る時本

(1)単元の目標

磁石とコイルを用いた実験を行い,コイルや磁石を動かすことにより電流が得られることを見

いだすとともに,誘導電流を得る発電機はモーターと同じ仕組みであることや,直流と交流の違

いを説明できる。

日常生活や社会と関連付けながら,電磁誘導や交流について学ぶ意義や有用性を実感できる。

(2)単元の評価規準

自然事象への科学的な思考・表現 観察・実験の技能

自然事象についての

関心・意欲・態度 知識・理解

電磁誘導や交流に関 電磁誘導や交流に関 電磁誘導や交流に関 電磁誘導や交流に関

する事物・現象に進ん する事物・現象につい する実験についての基 する基本的な概念を理

で関わり,科学的に探 て,実験を通してその 本操作を身に付けてい 解し,知識を身に付け

究しようとする。 規則性や性質などを調 る。 ている。

磁誘導や交流が日

解している。

考えを表現している。

(3)単元の指導計画(全4時間)

次 学習の課題 主な観察や実験など

第一次 無接点充電器で電動歯ブラシが ○ 無接点充電式の電動歯ブラシを用いて,充

(2時間) 充電される様子を観察しよう 電器と電動歯ブラシが導線でつながれていな

いのに,電動歯ブラシのLEDが点灯するこ

とに問題を見いだす。

無接点充電器で豆電球を点灯さ ○ 導線をコイルにしてつないだ豆電球を無接

せよう 点充電器で点灯させて電流が得られることを

確認するとともに,電動歯ブラシの中にコイ

ルがあることに気付く。

誘導電流の大きさや向きについ ○ 磁石またはコイルを動かす向きや磁極を変

て調べよう えることにより誘導電流の向きが変わること,

さらに,磁石またはコイルを速く動かしたり,

磁石の強さを強くしたり,コイルの巻数を多

くしたりすると,誘導電流が大きくなること

を見いだす。

手回し発電機の仕組みを説明し ○ 誘導電流を得る発電機はモーターと同じ仕

よう 組みであることを,装置を実際に動かし,相

互に関連付けて捉える。

第二次 交流の性質を調べよう 〇 オシロスコープやLED,乾電池などを用

(1時間) いて,直流と交流の違いを理解する。

第三次 無接点充電器で電流が得られる ○ 前時までの実験で使用したコイルや乾電池

(1時間) 仕組みを説明しよう などを使って,無接点充電器で電流が得られ

4.単元:電磁誘導と発電 (全4時間)

中学校 

第2学年

事例C第1分野

中学校

中 学 校

67

(1)本時の目標 (2)主な学習活動

習得した「電流がつくる磁界」,「電磁誘導」,「交流」

の知識・技能を活用して,無接点充電器で電流が

得られる仕組みを説明できる。

(3)本事例の特徴

(4)展開例

◆ 指導・支援,留意点

学習活動 ○ 主に指導に生かす評価

◎ 指導に生かすとともに記録し総括に用いる評価

無接点充電器で電動歯ブラシのLED

が点灯する様子を見て,単元を通して

取り組む課題を確認する。

◆ 電動歯ブラシと無接点充電器が離れていても,電動歯

ブラシのLED点灯する様子を提示することで,問題を

見いださせ,単元を通して取り組む課題を解決しようと

する意欲を喚起する。

なお,次の第1時~第3時までの様子を回想シーンと

して挿入している。

第1時:単元を通して取り組む課題を設定する様子

第2時:電磁誘導の実験に取り組む様子

第3時:交流の性質を調べる様子

◆ 課題解決の見通しを持たせるために,「学習の見通し」

本時の学習活動を確認し,課題解決 を提示し,説明する。

への見通しを持つ。

1.単元を通して取り組む課題の確認

2.課題解決の見通し

3.習得した知識・技能の復習

4.習得した知識・技能を活用したモデル

による説明

5.課題の解決

6.課題解決の振り返り

① 必要性を認識し目的意識を持って知識・技能を習得したり,習得した知識・技能を活用して主体的に

粘り強く課題解決に取り組んだりする。

② 無接点充電器で電流が得られる仕組みについての考えを,モデルを使ったり,図や文章でまとめ

たりして表現する。原因として考えられる複数の要因を基に仮説を設定し,検証する実験を計画

する。

③ 自らの考えや他者の考えを班や学級全体で検討して改善する。

④ 理科を学ぶ意義や有用性を実感する。

指導のポイント1 「習得と活用」

習得した知識・技能を活用して主体的に粘り強く課題

解決に取り組む。

◆ 生徒が見いだした問題を基に,単元を通して取り組

む課題を設定し,「必要性を認識し目的意識を持って知

識・技能を習得する場面」と「思考・判断・表現する

場面」を適切に設計する。

1.単元を通して取り組む課題

の確認

5.本時:無接点充電器で電流が得られる仕組みを説明しよう

2.課題解決の見通し

中学校 

第2学年

事例C第1分野

中学校

中 学 校

68

○ 単元を通して取り組む課題を解決しようとする。

【自然事象への関心・意欲・態度】

◆ 見通しを持って粘り強く課題解決ができるようにする

ために,必要性を認識し目的意識を持って習得した「電流

習得した知識・技能を復習する。 がつくる磁界」,「電磁誘導」,「交流」の知識・技能を観察,

実験の様子を提示しながら復習できるようにする。

○ 「電流がつくる磁界」,「電磁誘導」,「交流」に関する

基本的な概念を理解し,知識・技能を身に付けている。

【自然事象についての知識・理解】

【観察・実験の技能】

無接点充電器の内部の構造を知り,

無接点充電器で電流が得られる仕組み

を,モデルを使って表現する。

◆ 単元を通して取り組む課題「無接点充電器で電流が得

られる仕組みを説明しよう」を,本時で取り組む課題「下

のコイルに交流を流すと上のコイルで電流が得られる仕

組みを説明しよう」と具体的に示すことで,課題を解決

しやすくする。

◆ コイルや乾電池などを使ったモデル実験を行い,目に

見えない電流やそれにともなう磁界の変化をイメージし

やすいように工夫する。その際,無接点充電とモデルの

対応関係を認識できるようにする。具体的には,乾電池

の向きを入れ替えることで交流に見立てる。また,検流

計を豆電球(LED)に見立てるように説明する。

○ 無接点充電器のモデルを操作して,電流を得ることが

できている。 【観察・実験の技能】

3.習得した知識・技能の復習

学習の見通し

1 学習したことの確認

2 学習したことを活用してモデル実験

3 学習したことを活用して説明

(1) 個人で考える

(2) 班で検討・改善する

(3) 学級で検討・改善する

4 課題解決を振り返る

4.習得した知識・技能を活用

したモデルによる説明

指導のポイント2 「適用」

無接点充電器で電流が得られる現象を説明する場面に

おいて,電磁誘導や交流の知識・技能を活用する。

◆ 電磁誘導や交流を学習した際に使用したコイルや乾

電池などを使って,誘導電流を得るモデル実験に取り

組む場面を設定する。

◆ 無接点充電器の構造を模式図で示し,コイルや乾電

池などとの対応関係を示す。

中学校 

第2学年

事例C第1分野

中学校

中 学 校

69

】現表・考思な的学科【。るい

個別に,課題に対する考えを図や文

章でワークシートに表現する。

班で個別の考えを共有し検討・改善 ○ 電磁誘導や交流などの知識・技能を活用し,無接点充

して,図や文章で表現する。 電器で電流が得られる仕組みについて考え,表現している。

【科学的な思考・表現】

◆ 班の中での教え合いや話合いをしやすくために,個別

の考えについての自信の程度を割合(自信度 )で表させる。※

○ 自他の考えを他者と対話しながら検討して改善して表

現している。 【科学的な思考・表現】

◆ 概念を整理し再構築できるようにするために,個別に

学級で班の考えを共有し検討・改善 図や文章で表現する場面を設定する。

して,課題を解決する。

◎ 習得した「電流がつくる磁界」,「電磁誘導」,「交流」

の知識・技能と班や学級で検討・改善して得た視点を基

に,無接点充電器で電流が得られる仕組みを説明できて

班や学級で検討・改善する前後の自

らの考えを比較して,考えが広がった

り深まったりしたことを自覚する。

○ 理科を学ぶ意義や有用性を実感しようとしている。

【自然事象への関心・意欲・態度】

※「自信度」については6(3)を参照

6.課題解決の振り返り

5.課題の解決 指導のポイント3 「検討・改善」

自らの考えや他者の考えを班や学級全体で検討して

改善する。

◆ 習得した電磁誘導や交流の知識・技能と,モデル実

験で得た電流やそれにともなう磁界の変化の様子を根

拠にして,検討・改善するように指示する。

◆ 検討する余地があると認識したり,自信がないと表

明したりした生徒の考えを基に,自他の考えを班や学

級全体で協力してよりよいものに練り上げていけるよ

うに留意する。

指導のポイント4 「理科を学ぶ意義や有用性」

理科を学ぶ意義や有用性を実感する。

◆ 無接点充電の技術を利用した製品を取り上げて,習

得した「電磁誘導」や「交流」の知識・技能を活用し

て探究するなど,日常生活や社会において問題を見い

だし,課題を設定して解決する授業を設計する。

◆ 班や学級で検討・改善する前後の自らの考えを比較

して振り返り,考えの広がりや深まりを自覚できるよ

うにする。

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事例C第1分野

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中 学 校

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(1)単元を通して取り組む課題の解決の過程を俯瞰できる板書例

図1は,本事例の板書例である。本事例では,単元を通して解決する課題を設定して,「必要性

を認識し目的意識を持って知識・技能を習得する場面」と「思考・判断・表現する場面」を適切に

設計した。板書の左上には,習得した知識・技能を示した。右上には,見通しを持って粘り強く課

題解決するために,「学習のめあて」と「学習の見通し」を示した。板書の下の部分には,本時の

課題と,学級全体で検討・改善してまとめた考えを示した。

(2)導線を輪にしてつないだ豆電球を充電器で点灯させる実験

右の図2は,導線を輪にしてつないだ豆電球を,電動歯

ブラシのLEDと導線に見立てたモデルである。「導線を輪

にしてネックレスのようにつなげた豆電球を,無接点充電器

で点灯させてみましょう。」と問いかけ,生徒が点灯させよ

うと試行錯誤する場面を設定した。本事例の授業では,5分

ほどで充電器の軸に導線をコイル状に巻き付けて点灯させる

ことができた班が現れ,それを参考にして他の班も点灯させる

ことができた。生徒は,点灯できたことを喜ぶとともに,「何

でつくの?不思議・・・」などと疑問を抱いたり問題を見い

だしたりしていた。図2 電動歯ブラシのLEDのモデル

図1 単元を通して取り組む課題の解決の過程を俯瞰できる板書例

6.本事例における指導の工夫等

中学校 

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事例C第1分野

中学校

中 学 校

71

(3)話合いを活性化させる「自信度計」

本事例では,話合いを活性化させる補助的な道具

として「自信度計」を開発して用いた(図3)。自分

の考えに対する自信の度合いを,0~100%で他者に

表示するものである。

(4)「はじめの考え」と「検討して改善した後の考え」を比較

主体的な課題解決を行うためには,自己の感情や行動を統制する能力,自らの思考の過程など

を客観的に捉える力など,いわゆる「メタ認知」を高めることが大切である。本事例では,図4

のワークシートに示すように,生徒が「はじめの考え」と「検討して改善した後の考え」を比較

できるように工夫した。最下段に,学習活動の振り返りとして,「『はじめの考え』と『検討・改

善した後の考え』を比較して感じたことや思ったこと」を書く箇所を設けた。班や学級で検討・

改善の前後の自らの考えを見比べることで,考えの深まりや広がりを自覚できるようにした。

なお,図4のワークシートは指導事例集のDVDに同梱している。

図3 開発した自信度計

図4 「はじめの考え」と「検討して改善した後の考え」を比較

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中 学 校

72

(1)主体的に粘り強く課題解決に取り組み,自他の考えを検討して改善する<指導の意義>

自ら学ぶ意欲を育てるためには,自然の事物・現象に進んで関わり,生徒が主体的に疑問を

抱き,自らの課題意識を持って探究することが大切である。また,多面的で深い理解に至るた

めには,他者との対話により思考を広げ深めていくことが大切である。

<本事例の特徴>

考えを検討して改善する場面では,補助的な道具として「自信度計」を用い,検討する余地が

あると認識したり,自信がないと表明したりした生徒の考えを基に,自他の考えを班や学級全

体で協力してよりよいものに練り上げていけるように留意した。

<生徒の反応>

第1時(課題設定)の授業後の振り返りでは,「導線がつながっていないのに,なぜ電球が

つくのかとても不思議だ。」,「早く課題を解決したい。」などと記述している。第4時(課題解

決)の振り返りでは,「習ったことを使って課題が解決できて,楽しかった。」,「はじめは分か

らなかったけど,班や学級で話し合ったらよく分かったのでうれしかった。」,「一人で考えて

も分からないけど,みんなで考えれば分かるようになった。」などと記述している。このこと

から,生徒は主体的に粘り強く課題解決に取り組んでいたと考えられる。

また,「班で検討・改善していくと(自分の考えの)細かいところが違っていたり,もっと

よりよい言い方があったりすることに気付いて,もっと簡単で分かりやすい説明に直すことが

できて良かった。」,「私ははじめ,鉄心を電流が伝わって上のコイルに流れたと思っていたけど,

班で検討・改善したら,下のコイルの磁界が変化していて,上のコイルで電磁誘導が起きるこ

とが分かった。」などと記述している。このことから,生徒は自らの考えが広がったり深まっ

たりしたことを自覚できたと考えられる。

(2)理科を学ぶ意義や有用性を実感する<指導の意義>

生徒の将来との関わりの中で,理科を学ぶ意義や有用性を実感することは,様々な課題に自立

的に対応していくために大切である。しかし,国内外の様々な調査から,生徒が理科を学ぶ意義

や有用性を実感していないことなどが課題となっている。そのため,科学技術が日常生活や社会

を豊かにしていることや安全性の向上に役立っていること,理科で学習することが様々な職業と

関係していることなど,日常生活や社会との関連を重視して改善を図ることは大切である。

<本事例の特徴>

本事例では,日常生活で利用されている無接点充電器や非接触型ICカードなどの科学技術

を取り上げ,問題を見いだして科学的に探究する際に,習得した「電磁誘導」や「交流」の知

識・技能を活用して課題を解決する授業を設計した。さらに,メタ認知を高めるために,ワー

クシートで「はじめの考え」と「検討・改善した後の考え」を比較できるようにした。

<生徒の反応>

授業後の振り返りでは,「普段使っている電動歯ブラシやスマートフォンなどが,理科で習っ

たことを応用して導線と導線がふれていなくても充電できる理由が分かった。」,「電車やコン

ビニで使うカードが使える理由もよく分かった。この仕組みでこれからいろいろなものが便利

になっていくと思った。」,「今までは電化製品は電気を流したら動くことが当たり前で,それ

がどのような仕組みで動いているのかは気にしたことがなかったので,この単元の学習をして

電化製品の仕組みに興味を持った。他の電化製品の仕組みも自分で考えてみたい。」,「身近に

ある電化製品の仕組みを実験したりみんなで話し合ったりすることで,課題についてしっかり

と考えることができた。」などと記述している。また,「『はじめの考え』と『検討・改善した

後の考え』を比較して感じたことや思ったこと」については,「検討・改善した後の考えでは,

自分でも納得できて説明できるようになった。」,「はじめは不安だったけど,話し合っている

とだんだん自分の言葉で説明できるようになって自信がつくことが分かった。」などと記述し

ている。生徒は理科を学ぶ意義や有用性を実感していたと考えられる。

7.本事例を振り返って

本事例では,見いだした問題を基に,単元を通して解決する課題を設定し,「必要性を認識し

目的意識を持って知識・技能を習得する場面」と「思考・判断・表現する場面」を適切に設計

することで,主体的に粘り強く課題解決に取り組むことができるようにした。また,互いの

中学校 

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事例C第1分野

中学校

中 学 校

73

【分析結果と課題】

○ 問題を見いだし,「適切な課題」をつくることに課題

・ キウイフルーツの上に置いたゼリーの崩れ方の違いから問題を見いだし,「適切な課題」を

つくることに課題がある。〔7(3)正答率58.0%〕〔報告書P.80〕

【学習指導に当たって】

○ 自然の事物・現象から問題を見いだし,適切に課題づくりができるようにする

・ 見いだした問題をそのまま課題に当てはめるのではなく,原因として考えられる要因を挙

げるなど,視点を明確にして解決の見通しを持った課題づくりを行う学習場面を設定するこ

とが考えられる。

・ 生徒が観察する自然の事物・現象によって,生徒が持つ疑問や見いだす問題は異なるので,

指導のねらいに応じて提示する自然の事物・現象に留意することが大切である。

〔報告書P.80~P.81〕

○ キウイフルーツの部位によって物質を分解する働きに違いが見られることから,

疑問を持ち,問題を見いだして,解決の見通しを持った課題をつくる

・ 自然の事物・現象から見いだした問題を基に,適切に課題づくりができるようにすることは,

学習意欲を高め,科学的に探究する能力の基礎と態度を育成する上で大切である。本事例は,

初めて課題づくりに取り組む生徒に対して,適切に課題づくりができるよう,その過程を

段階的に丁寧に指導している。

・ 日常生活で身近なキウイフルーツを使って,キウイフルーツが粉末の乾燥卵白を分解する

事物・現象に進んで関わることで,生徒の興味・関心を高めるようにしている。また,輪切りに

したキウイフルーツに乾燥卵白を振りかけて,その変化の様子の観察を通してキウイフルーツ

の部位によって物質を分解する働きが違うことに気付くことができるようにしている。

・ 観察から見付けた疑問を発表する学習場面では,生徒が主体的に学ぶ姿勢を引き出すために,

生徒の疑問を受けとめている。

・ 見通しを持って課題を解決できるように,自然の事物・現象を「変化すること(従属変数)」

と「その要因(独立変数)」の視点で捉えて,問題を見いだす場面を設定している。

・ 「課題づくりのポイント」を提示して,個別に考えて課題をつくらせた後,それぞれがつくった

課題に対して「課題づくりのポイント」を基に,班と学級全体で検討して改善し,課題をつくる

ことができるようにしている。

中学校理科 第2学年

〔第2分野〕 (3) 動物の生活と生物の変遷 イ 動物の体のつくりと働き (ア) 生命を維持する働き

事例D キウイフルーツが物質を分解する働きを探ろう

2.平成27年度全国学力・学習状況調査の調査結果から

1.関連する学習指導要領の内容

3.本指導事例では

構想

中学校 

第2学年

事例D第2分野

中学校

中 学 校

74

解理・識知度態・欲意・心関

をンプンデがゼーラミア,い行を験実,察観うよし)間時3(

たれ入うよえ考てし通

(1)単元の目標

生命を維持する働きの中で,消化・吸収を担う消化器官について,そのつくりと働きに興味・

関心を持ち,物質を分解する働きを調べる実験などを行うことを通して,課題をつくり,結果を

分析して解釈する能力を育成するとともに,動物の体が必要な物質を取り入れている仕組みを

観察,実験の結果と関連付けて説明できる。

(2)単元の評価規準

自然事象への科学的な思考・表現 観察・実験の技能

自然事象についての

消化と吸収の働きに 消化と吸収の働きに 消化と吸収の働きに 消化や吸収の働きに

関する事物・現象に 関する事物・現象の中 関する観察,実験の基本 関する基本的な概念や

進んで関わり,それら に問題を見いだし,目的 操 作 を 習 得 す る と 規則性を理解し,知識

を科学的に探究しよう 意識を持って観察,実験 ともに,観察,実験の を身に付けている。

とする。 などを行い,自らの 計画的な実施,結果の

考えをまとめ,表現して 記録の仕方などを身に

いる。 付けている。

(3)単元の指導計画(全6時間)

次 学習の課題 主な観察や実験など

第一次 消化器官の中で食物が変化する ○ ミジンコの消化器官の観察から,消化器官

(1時間) ことを調べ,消化器官で起こって の中で食物が変化することを予想し,単元を

いることを予想しよう 通して解決することを明らかにする。

第二次 消化と吸収の仕組みを知り,説明 ○ だ液に含まれる消化酵素の働きを調べる

麦芽糖などに分解する働きがあることを知り,

デンプンの分解について実験を 人体には消化酵素があり,それによって取り

食物が吸収しやすい物質に分解される

ことを理解し,説明する。

タ ン パ ク 質 や 脂 肪 の 分 解 に

ついて知ろう

第三次 キウイフルーツが物質を分解 ○ キウイフルーツが物質を分解する働きを

(2時間) する働きを探ろう 持つことに気付き,見いだした問題から解決

本時1/2 の見通しを持った課題をつくり,解決する。

4.単元:消化と吸収の仕組み (全6時間)

中学校 

第2学年

事例D第2分野

中学校

中 学 校

75

(1)本時の目標 (2)主な学習活動

消化酵素による物質を分解する働きに関する

知識・技能を活用して,キウイフルーツには

タンパク質(乾燥卵白)を分解する働きがある

ことに気付き,キウイフルーツの部位により,その

働きに違いが見られることから問題を見いだして,

解決の見通しを持った課題をつくり,表現できる。

(3)本事例の特徴

(4)展開例

◆ 指導・支援,留意点

学習活動 ○ 主に指導に生かす評価

◎ 指導に生かすとともに記録し総括に用いる評価

輪切りにしたキウイフルーツの上に

乾 燥 卵 白 を 振 り か け , キ ウ イ

フルーツがタンパク質を分解する

ことを観察する。

◆ 習得した知識と関連付けて,物質を分解する働きを持つ

果物があることを理解できるように説明する。

そのために,タンパク質を分解する消化酵素と同じ働きを

持つキウイフルーツを扱う。

1.自然の事物・現象の観察

2.疑問の発見

3.問題の発見

4.課題づくり

5.自然の事物・現象の変化を確認

6.本時のまとめ

指導のポイント1「構想」

課題づくりにつながる自然の事物・現象の観察,実験

をする。

◆ 生徒の興味・関心を引き出すために,進んで教材に

関わる学習場面を設定する。

◆ 観察では,「変化すること(従属変数)」と「その要因

(独立変数)」を見いだしやすい教材を提示する。

◆ 部位が明確になるように輪切りにしたキウイ

フルーツを使い,短時間で変化が分かるように粉末の

乾燥卵白を振りかける観察,実験を行うことで,部位

によって物質を分解する働きが違うこと(従属変数)に

気付くことができるようにする。

① 課題づくりにつながる自然の事物・現象の観察,実験をする。

② 自然の事物・現象に進んで関わり,疑問を持つ。

③ 自然の事物・現象を「変化すること(従属変数)」と「その要因(独立変数)」の関係で捉えて,

問題を見いだす。

④ 「課題づくりのポイント」を基に課題をつくる。

1.自然の事物・現象の観察

5.本時:キウイフルーツが物質を分解する働きを探ろう

中学校 

第2学年

事例D第2分野

中学校

中 学 校

76

◆ 乾燥卵白を触って調べることの大切さを伝える。

一方で,アレルギーのある生徒は触らないように

注意する。

◆ キウイフルーツが乾燥卵白を分解する様子を微速度

撮影した動画で提示する。

キウイフルーツが乾燥卵白を分解

する事物・現象に基づいて,疑問を

書き出す。

◆ 生徒が挙げた疑問を板書して整理する。

○ 観察した自然の事物・現象に基づいた疑問を挙げ

ようとしている。 【自然事象への関心・意欲・態度】

「変化すること(従属変数)」と「その

要因(独立変数)」で捉え,問題を見い

だす。

◆ 「変化すること(従属変数)」と「その要因(独立変数)」

の関係を捉えられるように項目ごとに整理する。

◆ 班で「その要因(独立変数)」を考えることを指示する。

その際,「要因(独立変数)」を抽出できていない生徒に

は,輪切りにしたキウイフルーツに振りかけた乾燥卵白

のとけ方の様子を観察するように助言する。

○ キウイフルーツが乾燥卵白を分解する事物・現象から

「変化すること(従属変数)」と「その要因(独立変数)」

を記述している。 【科学的な思考・表現】

指導のポイント2「構想」

観察した自然の事物・現象に基づいて疑問を見いだす。

◆ 乾燥卵白の変化に注目して,疑問を個別に数多く書く

ように促す。

◆ 生徒が主体的に取り組むことができるように,生徒

一人一人の疑問を受けとめる。

3.問題の発見 指導のポイント3「構想」

自然の事物・現象を「変化すること(従属変数)」と「その

要因(独立変数)」の関係で捉えて,問題を見いだす。

◆ はじめに,「変化すること(従属変数)」を全体で確認

する。

◆ 次に,「その要因(独立変数)」を班で抽出し,全体で

確認する。

◆ そして,解決の見通しを持った課題をつくるために,

自然の事物・現象を「変化すること(従属変数)」と「その

要因(独立変数)」の関係で整理して捉えるようにする。

2.疑問の発見

中学校 

第2学年

事例D第2分野

中学校

中 学 校

77

示指にうよるす善改てし討検で班,を題課たえ考に別個◆。るす

「課題づくりのポイント」を基に,

個別に課題を考え,それを基に班で

検討して改善する。

さらに,「課題づくりのポイント」 ◆ 「課題づくりのポイント」を提示する。その際,見い

を基に学級全体で課題を検討して改善 だした問題から個別に課題をつくるように指示する。

する。

◆ 課題を検討して改善することができない班には,教員と

三つのポイントを一つ一つ確認しながら,課題を検討して

改善できるように促す。

◆ 適切な課題をつくるために「課題づくりのポイント」を

基に,学級全体で解決する課題を検討して改善するように

指示する。

◎ 消化酵素による物質を分解する働きに関する知識・

技能を活用して,キウイフルーツにはタンパク質(乾燥

卵白)を分解する働きがあることに気付き,キウイ

フルーツの部位により,その働きに違いが見られること

から問題を見いだして,解決の見通しを持った課題をつ

くり,表現できている。 【科学的な思考・表現】

◆ 再度,班で行った実験を観察することで,動画で見た

班で行った実験で,動画で見た 様子と同じ結果が出ていることを実感できるようにして,

様子と同じ結果が出ているかを確認 次の時間で行う仮説の設定と実験の計画での学習意欲を

する。 更に高めるようにする。

4.課題づくり 指導のポイント4「構想」

「課題づくりのポイント」を基に課題をつくる。

◆ 本事例の課題づくりでは,「課題づくりのポイント」

を次のように示す。

1.観察の事実に基づいている

2.「変化すること(従属変数)」と「その要因(独立変数)」

を含んでいる

3.実証が可能である(自分たちで観察,実験をして調べる

ことができる)

5.自然の事物・現象の変化を確認

中学校 

第2学年

事例D第2分野

中学校

中 学 校

78

◆ 次の課題づくりのとき,三つのポイントを想起できる

ように,本時のまとめに「課題づくりのポイント」を書き

留めておくように指示する。

(1)課題づくりに重点化した授業生徒はこれまでに課題づくりの経験がないため,本事例では課題づくりに1時間をかけている。

課題づくりの過程を一つ一つ丁寧に指導することで,生徒が解決する見通しを持ち,観察の事実に

基づいて,疑問から科学的に探究する課題をつくることができるように学習場面を計画している。

自然の事物・現象に対する生徒の気付きは多様であり,その中には思いつきの場合もある。

そこで,適切に自然の事物・現象を観察できるように微速度撮影した動画を全員で視聴し,観察の

事実に基づいた疑問を持つことができるようにしている。次に疑問から,自然の事物・現象を

「変化したこと(従属変数)」と「その要因(独立変数)」で捉えて問題を見いだし,課題をつくる

ようにしている。このような学習を積み重ねることで,生徒が自ら課題をつくるという科学的に

探究する能力の基礎と態度を育成することができると考えている。

(2)観察,実験の教材の工夫本事例では,タンパク質の例として乾燥卵白を取り上げた。タンパク質の例としてゼリー状に

したゼラチンを使用した場合,目で変化が確認できるまでに数時間を要するが,乾燥卵白を使用

すると20分程度で変化を把握できる。乾燥卵白を乳鉢ですり,細かくすることで変化が確認でき

る時間を短くすることも可能である。さらに,乾燥卵白を振りかける量を少なくするとより短時間

で結果が分かる。このようにして部位によって物質を分解する働きが異なることが,授業の終わり

にはっきりと確認できるように工夫している。

このように日常生活で入手できる教材を使い,短時間で部位によって物質を分解する働きが

異なること(従属変数)に気付くことができるという利点を生かして,学習場面を設定している。

その際,キウイフルーツや乾燥卵白に触れ,自然の事物・現象に進んで関わることで,学習意欲を

喚起できるようにしている。また,食物アレルギーに対して注意することにも留意している。

なお,本事例で使ったキウイフルーツが乾燥卵白を分解する働きを調べる実験に関係する

微速度撮影した動画を指導事例集のDVDに同梱している。また,課題づくりの授業における

指導のポイントに関する追加資料は指導事例集のDVDに同梱している。

(3)教員が疑問を受け止め,生徒の学習意欲を高める指導キウイフルーツが乾燥卵白を分解する現象に対して生徒が興味・関心を持つように,個別に

疑問を書き出す学習場面を設定している。その際,疑問はできるだけたくさん書くように指示

する。そして,出された疑問を教員が全て受け止めることで,自然の事物・現象に対する疑問を

解決したいという学習意欲を喚起できるように配慮している。さらに,学級全体で生徒が抱いた

疑問を整理する過程では,自分の考えと他者の考えを比較したり,観察の事実と関係付けしたり

することで,自分が抱かなかった疑問にも気付くようにして学習意欲を高めるように工夫している。

(4)疑問から問題を見いだす指導疑問から問題を見いだす過程において,生徒が解決の見通しを持つことができるようにする

ために,自然の事物・現象を「変化すること(従属変数)」と「その要因(独立変数)」の関係で

捉えるようにしている。その際,「要因(独立変数)」を抽出できていない生徒には,観察することを

促し,「変化すること(従属変数)」を明らかにして,「その要因(独立変数)」が何かを挙げるように

助言する。

6.本事例における指導の工夫等

6.本時のまとめ

中学校 

第2学年

事例D第2分野

中学校

中 学 校

79

(5)「課題づくりのポイント」の提示三つのポイントを提示することで,生徒自らが課題をつくることを支援している。三つの

ポイントを提示し,個別に課題づくりをする場面,個別につくった課題が適切かを班や学級全体で

検討して改善する場面で,観察,実験の事実に基づき解決可能な科学的に探究する課題をつくる

ことを目指している。三つのポイントは,「観察した事実に基づいている【客観性】」,「『変化する

こと(従属変数)』と『その要因(独立変数)』を含んでいる【関係性】」,「実証が可能である【実証性】」

であり,課題を考える際の指針としている。

(6)自然の事物・現象を確認し,次時の課題解決の意欲を高める指導の工夫授業の最後には,映像で見た自然の事物・現象の変化を実際に確認する場面を設定している。

これにより,映像で見た現象が実際に起こることを実感することができ,自然の事物・現象に

興味・関心を更に持つようになり,次の時間に行われる仮説の設定や実験の計画の場面でも,

生徒が学習意欲を高めて取り組むことができるようにしている。

(1)課題づくりにつながる自然の事物・現象の観察,実験をする<指導の意義>

観察,実験を通して自然の事物・現象に進んで関わることは,生徒が主体的に疑問を見付ける

ために不可欠であり,学習意欲を喚起する点から大切なことである。その際,課題づくりにつながる

ように,変化すること(従属変数)とその要因(独立変数)を見いだすことができるような教材を

用意することが大切である。

<本事例の特徴>

本事例では,キウイフルーツが乾燥卵白を分解するはたらきが部位によって異なることに着目

できるよう微速度撮影した動画を用意し,生徒が興味・関心を高め,疑問を持ち,解決したいと思う

ことができる学習場面を設定した。

<生徒の反応>

生徒たちは,キウイフルーツに意外な性質があることに驚きを感じ,声を上げて,現象に

興味を示している生徒が印象的であった。身近な素材を用いることは,生徒の興味・関心を

高めると確認できた。また,微速度撮影した動画を見て,キウイフルーツが乾燥卵白を分解する

はたらきが部位によって異なることに着目できた。

(2)自然の事物・現象に進んで関わり,疑問を持つ<指導の意義>

自然の事物・現象から見いだした問題を基に,生徒自ら適切に課題づくりができるように

するために,まず,自然の事物・現象に進んで関わり疑問を持つ学習場面を設定することが大切

である。

<本事例の特徴>

本事例では,生徒が自然の事物・現象に進んで関わり疑問を持つ学習場面を設定し,できる

だけ多くの疑問を見いだすことができるように指導した。その際,生徒が自分の考えが認め

られたと感じられるように,教員が様々な疑問を受け止め,生徒が課題づくりに前向きになる

ように留意した。

<生徒の反応>

疑問を見付ける場面では,生徒は,「なぜ種子の所は,とけていないのか?」,「なぜキウイ

フルーツの皮の部位は乾燥卵白が残っているのか?」などの疑問を持った。生徒の疑問を受け

止めることで,生徒が進んで発言することができ,観察の事実に基づいた複数の疑問を見いだす

ことができた。

7.本事例を振り返って

中学校 

第2学年

事例D第2分野

中学校

中 学 校

80

(3)「変化すること(従属変数)」と「その要因(独立変数)」の関係で捉えて,問題を見いだす

<指導の意義>

生徒自ら課題をつくる学習活動では,自然の事物・現象の中から「変化すること(従属変数)」

と「その要因(独立変数)」を明らかにして問題を見いだすことが大切である。

<本事例の特徴>

本事例では,生徒の疑問から,自然の事物・現象を「変化すること(従属変数)」と「その

要因(独立変数)」の関係で捉えられるように項目ごとに整理し,問題を見いだす学習場面を

設定した。

<生徒の反応>

ここでは,生徒が見いだした疑問を基に「変化すること(従属変数)」を,「乾燥卵白のとけ方が

違う」とし,「その要因(独立変数)」は,「部位による働き」や「成分」などが挙げられた。

問題を見いだすことで,解決の見通しを持った課題づくりにつながると考えられる。

(4)「課題づくりのポイント」を基に課題をつくる<指導の意義>

生徒自ら課題をつくる学習活動では,観察,実験した事実に基づき,解決の見通しを持った

課題を設定することが大切である。

<本事例の特徴>

本事例では,「課題づくりのポイント」として客観性,関係性,実証性の視点を示した。それら

を基に個別に課題づくりを行った後,班で生徒同士の話合いにより検討して改善した。その際,

客観性と関係性については踏まえているが,実証性については踏まえきれていなかったので,

「自分たちで観察,実験をして解決することができる課題ですか」と問いかけて,実証が可能

な課題になるよう助言した。

<生徒の反応>

授業の前後に,課題づくりの学習に対する意識の程度を調査した。その結果,「教員が提示

する課題と,生徒自らがつくる課題とでは,学習意欲が向上するのはどちらか」という問いに

対しては,「教員が提示する課題」と回答した生徒の割合は,授業前が29%,授業後が18%,「生徒

自らがつくる課題」と回答した生徒の割合は,授業前26%,授業後61%,「どちらともいえない」

と回答した生徒の割合は,授業前45%,授業後21%であった。授業前に比べて授業後では「生徒

自らがつくる課題の方が,学習意欲が向上する」という回答が多かった。その理由としては

「自分で課題をつくって,課題を解決することに達成感がある」という回答が多かった。科学的に

探究する過程で,生徒の興味・関心を向上させるには,生徒自らが課題づくりをすることが有効

であると考えられる。また,一部の生徒の理由の記述からは,自ら課題をつくることの困難さを

感じていることが見受けられた。これは生徒が自ら課題をつくることに慣れていないことが

考えられる。

一方で「教員が提示する課題と,生徒自らつくる課題とでは,学習内容を理解しやすいのは

どちらか」という問いに対しては,「教員が提示する課題」と回答した生徒の割合は,授業前58%,

授業後64%,「生徒自らがつくる課題」と回答した生徒の割合は,授業前16%,授業後18%,

「どちらともいえない」と回答した生徒の割合は,授業前26%,授業後18%であった。「教員が

提示した課題」と答える生徒が,授業前と授業後でともに多かった。その理由としては,「教員が

提示する課題は整理されている」という回答が目立った。

課題づくりの経験を積み,生徒が課題をつくることに慣れてくると,問題を見いだす過程に

おいて,「変化すること(従属変数)」と「その要因(独立変数)」を意識して課題をつくり,仮説を

設定する場面までたどり着くことが期待できる。学年が進行していく中で,このような授業場面

に生徒が数多く触れることにより,適切な課題をつくることができるようになると期待している。

中学校 

第2学年

事例D第2分野

中学校

中 学 校

81

中学校理科 第3学年

〔第1分野〕(6) 化学変化とイオン ア 水溶液とイオン (ウ) 化学変化と電池

【分析結果と課題】○ 課題に正対した対照実験を計画することに課題

・ 炭酸水素ナトリウムが二酸化炭素の発生に関係していることを特定するための対照実験を

計画することに課題がある。〔1(5)正答率52.5%〕〔報告書P.32〕

○ 基礎的・基本的な知識・技能を活用し,グラフ・資料などに基づいて,自らの考えや他者の考えを検討して改善することに課題・ 熱による分解の知識を活用して,他者の考えを検討して改善し,炭酸水素ナトリウムとク

エン酸の混合物を加熱したときの化学変化を説明することに課題がある。

〔1(6)正答率58.2%〕〔報告書P.35〕

【学習指導に当たって】○ 課題に正対した対照実験を計画できるようにする・ 対照実験を計画するためには,調べたい条件以外は全て同じ条件にすることが必要である。

その際,課題に正対した条件を設定することが大切である。〔報告書P.32~P.34〕

○ 協働的な学習を充実して主体的に探究できるようにする・ 協働的な学習を行って,教え合いや意見交換を充実することは,一人では気付かなかった

考えを深めたり広めたりすることができるので,主体的に探究する上で大切である。

〔解説資料P.23〕

○ 3年間の学習の集大成として,科学的に探究する全ての過程に主体的に取り組む・ 自然の事物・現象を科学的に探究する活動では,問題の把握,仮説の設定,資料の収集,

実験による検証,結果の分析や解釈,結論の導出などが考えられるが,これらは決して固定

的なものではなく,問題の内容や性質,あるいは生徒の発達の段階に応じて,ある部分を重

点的に扱ったり,適宜省略したりするといった工夫が必要である。一方,本事例では,3年

間の学習の集大成として,全ての過程で主体的で探究的な活動を十分行えるようにしている。

○ イオンや電池,電流等の知識・技能を活用して,仮説を検証するための実験を計画する・ 科学的に探究する能力の基礎と態度を育成するために,光電池用モーターの回転が乾電池

よりも木炭電池の方が遅い現象を比較して提示し,木炭電池を改良したいという意欲を高め

て,生徒の主体的な課題づくり,習得した知識・技能を活用した仮説の設定,検証実験の計

画,結果の分析・解釈などの課題解決に取り組めるようにしている。

○ 自他の考えを協働的に検討・改善して,自己の考えを広げ深める・ 生徒同士の対話,教員や先達の考え方を手掛かりに考えることを通じて,自己の考えを広

げ深めるには,まず個別に考えた後にその考えを説明した上で,互いに検討して改善するこ

とが大切である。そこで,「実験の結果を記述しているか」,「課題に対する考察になってい

るか」などの視点を持った対話を充実して,自他の考察を検討・改善する学習を行い,自らの

考えを広げ深めることができるように授業を設計している。

事例E 木炭電池を改良しよう

2.平成27年度全国学力・学習状況調査の調査結果から

1.関連する学習指導要領の内容

3.本指導事例では

構想 検討・改善

中学校 

第3学年

事例E第1分野

中学校

中 学 校

82

(1)単元の目標

電解質水溶液と2種類の金属などを用いた実験を行い,電流が取り出せることを見いだすとともに,

化学エネルギーが電気エネルギーに変換されていることを例を挙げて説明できる。

(2)単元の評価規準

自然事象への科学的な思考・表現 観察・実験の技能

自然事象についての

関心・意欲・態度 知識・理解

化学変化と電池に関す 化学変化と電池に関す 電池に関する観察, 電池は,化学エネル

る事物・現象に進んで関 る事物・現象の中に問題 実験の基本操作を習得 ギーが電気エネルギー

わり,それらを科学的に を見いだし,目的意識を するとともに,観察, に変換されていること

探究しようとするととも 持って観察,実験などを行 実験の計画的な実施, などについて,基本的

に,事象を日常生活との い,化学変化による電流の 結果の記録や整理などの な概念を理解し,知識

関わりでみようとする。 取り出しなどについて,イ 仕方を身に付けている。 を身に付けている。

オンのモデルと関連付けた

自らの考えをまとめ表現し

ている。

(3)単元の指導計画(全6時間)

次 学習の課題 主な観察や実験など

第一次 電解質水溶液と金属板から電流 ○ 電解質水溶液と2種類の金属などを用いて

部の回路に電流が流れることを見いだす。

第二次 木炭電池を改良しよう ○ 仮説を検証する実験を自ら考え,進んで探

(2時間) 究する態度を養うため,備長炭を電極として

本時1/2 用いた木炭電池など,身近なものを用いた電

本時2/2 池の実験を行い,電極の表面積や電解質水溶

液の濃度などが電圧や電流などに与える影響

を主体的に探究する。

第三次 電池の中で起こる化学変化をイ ○ 電池の電極での電子の授受をイオンのモデ

(1時間) オンのモデルで表して,説明しよう ルで表し,電極で生じた電子が外部の回路に

電流として流れることを理解する。また,電

池においては化学エネルギーが電気エネルギー

に変換されていることを理解する。

第四次 身のまわりの電池や電池の開発 ○ 日常生活や社会では,乾電池,鉛蓄電池,燃料

(1時間) の歴史を調べよう 電池など,様々な電池が使われていることを知る。

4.単元:化学変化と電池 (全6時間)

外たし続接に極電,い行を験実るくつを池電うそ出り取を)間時2(

中学校 

第3学年

事例E第1分野

中学校

中 学 校

83

(1)本時の目標 (2)主な学習活動

生徒自らが見いだした問題を基に,「光電池用

モーターを速く回転させるためには,木炭電池を

どのように改良したらよいのだろうか」という課題

を設定し,習得した知識・技能を活用して,主体的

に課題解決に取り組み,個別の考察を班で検討して

改善する活動を通して,木炭電池の起電力に関係

している要因を説明できるとともに,科学的に探究

する能力の基礎と態度を身に付ける。

(3)本事例の特徴

(4)展開例

◆ 指導・支援,留意点

学習活動 ○ 主に指導に生かす評価

◎ 指導に生かすとともに記録し総括に用いる評価

木炭電池と乾電池に接続した光電池

用モーターの回転する速さを比較し,

その違いから気付いたことを整理して

問題を明らかにする。

◆ 木炭電池に接続した光電池用モーターの回転の速さが

乾電池に接続した光電池用モーターの回転の速さより遅

くなるように,食塩水の濃度を調節する。

◆ 前時の学習を復習し,乾電池の構造を確認させた後,

木炭電池の材料を確認しながら演示実験をすることで,

アルミニウムはくの大きさ,食塩の濃度,ペーパータオ

ルの枚数などに注目させる。

○ 光電池用モーターの回転の違いから気付いたことを整

理して,木炭電池の問題を見いだしている。

【自然事象への関心・意欲・態度】

第1時

1.問題の発見

2.課題の設定

3.仮説の設定

4.実験の計画

第2時

5.観察・実験

6.結果を個別に分析・解釈

7.個別の考察を班で検討・改善

① 科学的に探究する全ての過程に主体的に取り組む。

② 原因として考えられる複数の要因を基に仮説を設定し,検証する実験を計画する。

③ 「実験結果を根拠にした考察になっているか」,「課題に正対した考察になっているか」という

視点を基に,個別の考察を班や学級全体で検討して改善する。

④ 話合いや教え合いを通して,一人では気付かなかった考えに気付き,自分の考えを広げ深める。

指導のポイント1 「科学的に探究する学習」

科学的に探究する全ての過程に主体的に取り組む。

◆ 「問題の発見,課題の設定,仮説の設定,実験の計

画,観察・実験,結果を個別に分析・解釈,個別の考

察を班で検討・改善」などの科学的に探究する全ての

過程に主体的に取り組めるようにするために,2単位

時間を連続して確保する。

◆ 動機付けの場面で,乾電池と木炭電池に接続したそ

れぞれのモーターの回転の速さを比較する実験を演示

し,生徒自らが問題を見いだすようにする。

1.問題の発見

5.本時:木炭電池を改良しよう

中学校 

第3学年

事例E第1分野

中学校

中 学 校

84

出き書を点良改てえ考に別個にずせ談相と徒生のり周◆。るす

◆ 見いだした問題から課題を設定できるようにするため

に,次の三つの視点を示す。

見いだした問題を基に課題を設定す ・比較して観察した事実(客観性)

る。 ・理科室で実験が可能(実証性)

・変化すること(従属変数)とその要因(独立変数)

◆ 木炭電池を改良して乾電池の電圧に近づけたいという

意欲を引き出し,課題の設定に結び付ける。

○ 気付いたことから問題を見いだし課題を設定している。

【自然事象への関心・意欲・態度】

木炭電池の改良点を個別に考え,班

で改良点の妥当性を検討して改善し,

仮説を設定する。

◆ 一人一人の考えを区別するために,班の人数分の色(黄

色,桃色,水色,黄緑色など)の付箋紙を配布する。

個別に考えた改良点を付箋紙に書 ◆ 1枚の付箋紙に書き出す改良点は一つにするよう指示

き,ホワイトボードに貼り付けて分類 する。

これまでに習得した知識・技能を根 すように指示する。その際,習得した知識・技能を根拠

拠にして,改良点の妥当性を班で検討 に,改良点を書き出すように指示する。

して改善し,仮説を設定する。

◆ 抽出した改良点を書き出した個別の付箋紙を,班に一

枚のホワイトボードに貼り付けて,それぞれの改良点の

妥当性を検討したり,分類・整理したりしてから,仮説

を設定する。

○ 習得した知識・技能を活用して,木炭電池の改良する要因

を挙げている。 【科学的な思考・表現】

◆ 仮説を検証するための実験を,以下の三つの視点を示

して,班ごとに計画させる。

仮説を検証するための実験を計画する。 ・理科室で実験ができる内容であること

・条件制御に留意すること

・課題に正対すること

○ 仮説を検証するための実験を,「実証性」,「条件制御」,

「課題に正対」の三つの視点を基に計画している。

【科学的な思考・表現】

指導のポイント2 「構想」

原因として考えられる複数の要因を抽出し,それらの

妥当性を習得した知識や技能を基に検討して,仮説を設定し

検証する実験を計画する。

◆ 木炭電池を改良するための要因を個別に考えて挙げ

た後,習得した知識・技能を基に,それらの要因の妥

当性を班で検討して改善し,課題に対して仮説を設定

できるようにする。

4.実験の計画

3.仮説の設定

2.課題の設定

中学校 

第3学年

事例E第1分野

中学校

中 学 校

85

おてし成作めじからあを画動るなと準基のさ速の転回◆。るめとまに表

・識知たし得習,し定設を題課ういと」かうろだのいよ。るす表発に体全

◆ 第1時に班で計画した実験を行う前に,課題を再確認

するよう告げる。

計画に従って実験を行い,結果を

き,班に1台のタブレットPCで示す。

○ 計画に従って実験を行い,木炭電池に接続した光電池

用モーターの回転する速さを動画と比較して記録している。

【観察・実験の技能】

実験の結果を根拠にして,個別に

分析して解釈し考察する。

「実験の結果を記述しているか」「課

題に対する考察になっているか」など

の視点で,一人一人の考察を検討して

改善する。

◆ 班の中で,ノートを回覧した後に,検討して改善する

余地があると考えられる人の考察を丁寧にアドバイスし

合うことで自他の考えを広げ深める。

◎ 生徒自らが見いだした問題を基に,「光電池用モーターを

個別の考察を班で検討して改善し, 速く回転させるためには,木炭電池をどのように改良したら

技能を活用して,主体的に課題解決に取り組み,個別の

考察を班で検討して改善する活動を通して,木炭電池の

起電力に関係している要因を説明できている。

【科学的な思考・表現】

指導のポイント3 「検討・改善」

「実験結果を根拠にした考察になっているか」,「課題に正対

した考察になっているか」という視点を基に,個別の考察を

班や学級全体で検討して改善する。

◆ 「実験の結果を記述しているか」,「課題に対する考

察になっているか」という視点を示すとともに,机間

指導を行い,自らの考えや他者の考えに対して,多面

的,総合的に思考して検討・改善が進んでいるかに留

意する。

指導のポイント4 「協働的な学習の充実」

話合いや教え合いを通して,一人では気付かなかった

考えに気付き,自分の考えを広げ深める。

◆ 個別の考察を表現した後に,協働的な学習を充実す

るために,話合い,教え合いの意義を伝えるとともに,

修正のアドバイスが欲しいと表明した生徒の考察を基

に,検討して改善するよう留意する。

6.結果を個別に分析・解釈

5.観察・実験

7.個別の考察を班で検討・改善

中学校 

第3学年

事例E第1分野

中学校

中 学 校

86

(1)観察,実験の材料等<木炭電池>

○備長炭 ○アルミニウムはく ○ペーパータオル ○食塩<特に気を付けること>

○備長炭は硬いため,専用のこぎりで切断すると良い。○ペーパータオルとアルミニウムはくを木炭に巻くときは,隙間をつくらないようにする。○食塩水の濃度だけでなく,気温により起電力に影響があることに注意する。

(2)協働的な学習の充実を意識したノート指導自らの考えがどのように変わったのか(変化の過程)を明らかにするとともに,班で検討して

改善する意義や有用性を自覚できるようにすることが大切である。そのために,考察のポイント(実験の結果・課題に対する考察)を意識させ,自らの考えを書いた後に,個別の考察を班で検討して改善できるようにする。その際,ノートに記述した自らの考えを消さずに,新たな考えについては色を変えて追記することが考えられる(図1)。

(3)付箋紙とホワイトボードを活用した要因抽出の指導生徒が木炭電池を改良するための要因を抽出できるようにするためには,木炭とアルミニウム

はくと電解質水溶液で起電力が生じるというように,対象となるものをしっかりと理解させることが大切である。

本事例では,演示実験により実物を示すことで,木炭電池の改良点(改良するための要因)がある程度限られていることを明らかにして,木炭電池の改良点(改良するための要因)を考えやすくしている。

また,生徒一人一人の考えを共有するために,班の人数分の色(黄色,桃色,水色,黄緑色など)の付箋紙を配布する。図2のように,ホワイトボード上で考えを分類して,習得した知識・技能を基にその妥当性を検討する。図3は,各班のホワイトボードを,検証する仮説ごとに掲示している様子である。

図1 ノートの記載例

図2 付箋紙に記述した要因の分類 図3 ホワイトボードを掲示している様子

6.本事例における指導の工夫等

中学校 

第3学年

事例E第1分野

中学校

中 学 校

87

(4)回転の速さを調べるための基準

光電池用モーターの回転の速さを調べるための基準を示すと良い(図4)。

レベル0:止まっている(0.0V)

レベル1:乾電池よりとても遅い(0.3V)

レベル2:乾電池より少し遅い(0.6V)

レベル3:乾電池並みに速い(1.5V)

回路に電圧計をつないで電圧を測定することも考

えられるが,回路の複雑さや木炭電池の安定性,中

学生の技能や時間的な制約などから安定した結果が

出にくいことがある。そこで,生徒が回転の速さを

区別する基準を動画で確認できるデジタルコンテンツ

を作成することなどが考えられる。

なお,図4のデジタルコンテンツは指導事例集のDVDに同梱している。

(1)3年間の学習の集大成として,科学的に探究する全ての過程に主体的に取り組む<指導の意義>

科学的な思考力・表現力の育成を図る観点から,自然の事物・現象の中に問題を見いだし,

目的意識を持って観察,実験を主体的に行い,課題を解決するなど,科学的に探究する学習活動

を重視することは大切である。また,自然の事物・現象を科学的に探究する活動では,問題の把

握,仮説の設定,資料の収集,実験による検証,結果の分析や解釈,結論の導出などが考えられ

るが,これらは決して固定的なものではなく,問題の内容や性質,あるいは生徒の発達の段階に

応じて,ある部分を重点的に扱ったり,適宜省略したりするといった工夫が必要である。

<本事例の特徴>

本事例では,3年間の学習の集大成として,科学的に探究する過程のそれぞれにおいて生徒

が主体となって取り組むことができるように授業を設計した。特に授業の初めの問題を見いだ

す学習場面では,乾電池と木炭電池に接続したそれぞれのモーターの回転の速さを比較する演

示実験を行い,木炭電池に接続した光電池用モーターは,乾電池に接続したときよりも回転の

速さが遅かったので,乾電池のように速く回転させたいという問題を見いだし,意欲的に探究

できるようにした。

<生徒の反応>

授業後に,木炭電池を改良したいと思った程度を,「① 全く思わなかった ② あまり思わ

なかった ③ 少し思った ④ すごく思った」の4件法で調査した。その結果,「④ すごく思った」

と回答した生徒の割合が38%,「③ 少し思った」と回答した生徒の割合が52%となり,肯定的

な回答は合わせて90%であった。

また,「本授業で学んだことや強く印象に残ったことを書きましょう」と質問したところ,「普

段の実験よりも,原因から仮説を考えたり,それによって実験方法を工夫したりと生徒主体で

楽しかった。」,「この学習で,自分達で何かを(解決)する力が付いたので良かったと思います。

これからの普段の授業でもこの学習で学んだこと,得たことを忘れないで取り組んでいきたい

と思います。」,「自分達でいろいろ考えて,自分達が主体になって実験を計画してできたのが

よかった。」などと記述しており,生徒が主体的に課題を解決することの価値を見いだしてい

ると考えられる。

(2)個別の考えを班で分類・整理して,仮説を検証するための実験を計画する<指導の意義>

課題解決のために探究する学習活動には,問題を見いだし観察,実験を計画する学習活動,

観察,実験の結果を分析し解釈する学習活動,科学的な概念を使用して考えたり説明したりす

る学習活動などが考えられる。その際,問題を見いだし観察,実験を計画する学習活動の充実

を図ることは,生徒が自然の事物・現象に進んで関わるためにも大切である。

7.本事例を振り返って

図4 回転の速さの基準を示す動画

中学校 

第3学年

事例E第1分野

中学校

中 学 校

88

<本事例の特徴>

本事例では,個別に考えた木炭電池の改良点を付箋紙に書き出してから,それらの改良点を

班でホワイトボード上に分類して整理する学習場面を設定した。

<生徒の反応>

授業後に,個別の考えを班で分類・整理して仮説を設定する学習について良かったことを多

肢選択で調査したところ,「自分の考えが検討材料になったことが良かった」と回答した生徒

の割合が53%,「班の話合いにいつもより関われたことが良かった」と回答した生徒の割合が

55%,「いつもより自分から実験に関われたことが良かった」と回答した生徒の割合が38%,「『あ

れも関係しているかもしれない』といろいろ考えることが良かった」と回答した生徒の割合が

60%であった。

また,「本授業で学んだことや強く印象に残ったことを書きましょう」と質問したところ,

「付箋紙に書いたり,みんなの意見が分かったりして,自分が気付かなかったことも気付けた

ので良かった。」,「一人一人の考えの付箋紙を貼ることで,自分以外の人の視点から課題を見

ることができた。」,「今までは,自分から意見を言うことは無かったが,今回の授業で自分か

ら意見が言えるようになった。」,「いつもは,仮説を自分の言葉で考える前に諦めていたけれ

ど,この方法で『ちゃんと自分の言葉で考えてみよう』という気持ちになれた。」,「いつもの

話合いだと他の人の意見にすぐ頼ってしまっていたが,付箋紙を使った仮説の発表は,自分で

もよく考えなくてはいけなかったので,とても自分のためになった。」と記述しており,個別

の考えを班で分類・整理して,仮説を検証するための実験を計画する学習の価値を見いだして

いると考えられる。

(3)視点を持って協働的な学習を行い,自他の考察を検討して改善する<指導の意義>

教員と生徒や生徒同士が,視点を持って対話をして,自他の考察を検討して改善することは,

自然の事物・現象を多面的で深く理解させるために大切である。

<本事例の特徴>

本事例では,「実験の結果を記述しているか」,「課題に対する考察になっているか」という視

点を持った対話を充実して,自他の考察を検討・改善する学習を行い,自らの考えを広げ深める

ことができるように授業を設計した。具体的には,個別の考察をノートに記述した後,班でノー

トを回覧し,互いの考察を共有した。その後,自分の考察を検討して欲しいと表明した生徒の考

察を丁寧にアドバイスし合った。

<生徒の反応>

授業後に,「実験の結果を記述しているか」,「課題に対する考察になっているか」という視

点で,個別の考察を班や学級全体で検討して改善する学習について良かったことを多肢選択で調

査したところ,「いつもより自分の考察に自信が持てたことが良かった。」と回答した生徒の割合

が50%,「考察の書き方がいつもよりよく分かったことが良かった。」と回答した生徒の割合が48%,

「話合いや教え合いを通じて,一人では気付かなかった考えに気付き,自分の考えを広げ深める

ことができることが良かった。」と回答した生徒の割合が68%であった。

また,「本授業で学んだことや強く印象に残ったことを書きましょう」と質問したところ,

生徒は,「考察の教え合いがすごく良かったし,付箋紙に書いてホワイトボードに貼るのも

一人一人の意見が入っていて良かったと思う。」,「自分の考えを持つことは大事だけど,自分

と違う考えを持っている人がいたら,どうしてそう考えるのかということを考えることが大事

だということを学んだ。もし,考えても分からなかったら,本人に聞いて,どうしてそう考え

たのかを理解することで,自分にもそういう考え方ができるようになると思った。」と記述し

ており,視点を持って自他の考察を検討して改善する良さを見いだしていると考えられる。

中学校 

第3学年

事例E第1分野

中学校

中 学 校

89

1.関連する学習指導要領の内容

事例F 地球の自転と天体の動きを考えよう

中学校理科 第3学年

〔第2分野〕 (6) 地球と宇宙 ア 天体の動きと地球の自転・公転 (ア) 日周運動と自転

2.平成27年度全国学力・学習状況調査の調査結果から

【分析結果と課題】

○ 観察した事実と関係付けながら情報を考察して分析することに課題・ 方位を判断するために,観察した事実と関係付けながら情報を考察して分析することに

課題がある。〔小学校4(1)正答率41.1%〕〔小学校報告書P.62〕○ 実験を計画することに課題

・ 一定の時間に多くの雨が降る現象は,「上空と地上の気温差」が関係しているという予想を検証するために,異なる四つの方法を比較し,原因を探る実験を計画することに課題がある。

〔3(2)正答率39.6%〕〔報告書P.50〕

【学習指導に当たって】

○ 方位を捉えながら月や星を観察することができるようにする・ 月や星の見える方位を判断するためには,日頃から生活している場所での方位を感覚的に

捉えておき,観察時には方位磁針を用いて方位を正確に調べた上で観察することが大切である。・ 例えば,教室で方位磁針を使って東西南北の方位を確認した上で,教室の壁面などに方位を

掲示しながら,「窓は南,黒板は西,廊下は北」などのように日常的に方位を意識できる環境の工夫が考えられる。〔小学校報告書P.62〕

○ 予想を確かめる実験を計画できるようにする・ 指導に当たっては,予想を確かめる実験を計画する際,はじめに変化することの原因として

考えられる要因(独立変数)を全て挙げ,それらの妥当性を検討するようにする。次に,挙げた要因(独立変数)を変える条件と変えない条件に整理して,実験を計画する学習場面を設定することが考えられる。〔報告書P.51〕

○ 北半球における太陽の1日の動きを調べた学習で習得した知識・技能を活用して,南半球における太陽の1日の動きを調べる・ 北半球における太陽の1日の動き方と,その理由を復習することで,南半球における太陽の

1日の動きを予想する際の根拠に役立てられるようにしている。○ 透明半球を利用して太陽の1日の動きを継続的に観察したり,モデルを使った実験

で太陽の1日の動きを記録したりすることなどを通して,時間概念と空間概念の形成を図る・ 透明半球を利用して太陽の1日の動きを継続的に観察することで,時間の経過に伴って位置

を変えることについて実感を伴った理解を促すようにしている。・ 地球上の任意の地点における太陽の観察を可能にするため,地球儀と小型の透明半球を使用

したモデルを使った実験を行うようにしている。・ モデルを使って地球を俯瞰する観察者の視点で,太陽の高度を捉えることができるように

している。○ 太陽の1日の動きに関する共通点や相違点から新たな問題を見いだし,要因を

抽出して条件を制御した実験を計画する・ 地球上の複数の場所で観察した結果から,共通点や相違点を見いだす中で,観察場所によって

太陽高度に違いが生じることに気付かせ,その要因を考えて確かめる実験を計画できるようにしている。

3.本指導事例では

適用

モデルを使った実験

構想

中学校 

第3学年

事例F第2分野

中学校

中 学 校

90

解理・識知度態・欲意・心関

察観をかのく動が色景にうよのど,でとこるすかの

(1)単元の目標

日周運動と地球の自転に関する事物・現象に興味・関心を持ち,透明半球などを用いて天体の

日周運動を調べる観察とモデルを使った実験を行い,その観察記録と実験の結果を基に,日周運動

と地球の自転とを関連付けて説明できる。

(2)単元の評価規準

自然事象への科学的な思考・表現 観察・実験の技能

自然事象についての

日 周 運 動 と地 球の 日 周 運 動 と地 球の 天 体 の 日周 運動 に 日周運動と地球の

自転に関する事物・ 自転に関する事物・ 関する観察などの基本 自転との関連について

現象に関心を持ち,身の 現象の中に問題を見い 操 作 を 習 得 す る と 基本的な概念や原理・

回りの現象と関連付け だし,目的意識を持って ともに,観察の計画的 法則を理解し,知識を

て,科学的に探究しよ 観察,実験などを行い, な実施,結果の記録や 身に付けている。

うとしている。 日周運動と地球の自転 整理などの仕方を身に

との関連などについて 付けている。

自らの考えをまとめ,

表現している。

(3)単元の指導計画(全5時間)

次 学習の課題 主な観察や実験など

第一次 太陽の位置と動きはどのように ○ 太陽の日周運動を調べるための観察に

(2時間) 表したらよいのか おける透明半球への記録の仕方を習得する。

地球がどのように動くと,太陽は ○ 紙コップの底に開けた穴から外の景色を

東から西へ動いているように見える のぞき,自分が時計回りと反時計回りに回転

する。

第二次 太陽の1日の動きの観察記録 ○ 太陽の1日の動きを,観察記録から考察

(3時間) から考えられることは何か する。

本時3/3

春分・秋分の頃,北半球では ○ 北半球における太陽の1日の動きを調べる

太陽の1日の通り道はどのように ため,地球儀とライト,小型の透明半球を

なるのか 使ってモデルを使った実験を行う。

春分・秋分の頃,南半球では ○ 南半球における太陽の1日の動きを調べる

太陽の1日の通り道はどのように ため,北半球と同様な実験を行う。

なるのか

4.単元:日周運動と地球の自転 (全5時間)

中学校 

第3学年

事例F第2分野

中学校

中 学 校

91

(1)本時の目標 (2)主な学習活動

北半球の太陽の1日の動きに関する学習で習得

した知識・技能を活用して,南半球の太陽の1日の

動きを予想し,モデルを使った実験の結果を基に

説明できる。

(3)本事例の特徴

(4)展開例

◆ 指導・支援,留意点

学習活動 ○ 主に指導に生かす評価

◎ 指導に生かすとともに記録し総括に用いる評価

北半球における太陽の1日の動きと

自転との関係を確かめる。

◆ 北半球における太陽の1日の動きと,そのように見える

理由について確認する。

◆ 南半球における太陽の1日の動きに対する興味・

生徒にとって身近な人の話から 関心を引き出すため,ニュージーランド出身のALT

問題を見いだし,課題を設定する。 からの話を聞く場面を設定する。

◆ 住宅の模型に,大型の透明半球をかぶせて方位を

確認し,北半球では太陽が通らない北向きの場所が暖かい

という疑問を引き出すようにする。

5.本時:地球の自転と天体の動きを考えよう

1.習得した知識の確認

2.問題の発見・課題の設定

3.予想

4.モデルを使った実験の実施

5.考察

6.新たな問題の発見と考察

① 習得した知識・技能を活用して,南半球における太陽の1日の動きを予想する。

② 時間概念と空間概念の形成を図るために,モデルを使った実験を行い,北半球から南半球へ

観察場所を移動して,南半球の太陽の1日の動きについて考察する。

③ 南半球の複数の観察場所における太陽の1日の動きに関する共通点や相違点を考察する中で,

新たな問題を見いだし,要因を抽出して条件を制御した実験を計画する。

1.習得した知識の確認 指導のポイント1 「適用」

習得した知識・技能を活用する。

◆ 課題の解決に関係する学習内容を復習する場面を

設定し,北半球の太陽の1日の動きに関する学習で習得

した知識・技能を活用して,南半球における太陽の

1日の動きを予想できるようにする。

2.問題の発見・課題の設定

中学校 

第3学年

事例F第2分野

中学校

中 学 校

92

◆ 生徒が見いだした問題を基にして,本時の課題を設定

する。

◆ 習得した知識・技能を基に,根拠を明らかにして予想

北半球における太陽の1日の動きや するように助言し,予想を明確にして実験に取り組める

自転との関係を基にして,南半球に ようにする。

おける太陽の1日の動きを予想する。

○ 習得した知識・技能を根拠に南半球における太陽の

1日の動きを予想している。 【科学的な思考・表現】

予想を確かめるために,北半球での

太陽の1日の動きを調べたときの

方法を使って実験する。

◆ 日本を含む北半球で行った実験の経験を踏まえて取り

組むように助言する。

◆ 理科室を暗くするので,安全に留意することを確認

する。

◆ 各班が南半球のどこを選択したのかが一覧できる

ように,世界地図に目印(磁石)を付けるように指示する。

◆ 太陽の動き方を,ニュージーランドは黒色の線と

矢印で,各班で選んだもう一か所は赤色の線と矢印で表現

するよう指示する。

3.予想

指導のポイント2 「モデルを使った実験」

時間概念と空間概念の形成を図るためにモデルを

使った実験を行う。

◆ 南半球における太陽の1日の動きを調べるために,

太陽と地球のモデルを使った実験を行い,南半球に

おける太陽の1日の動きについて,北半球の場合と比較

して,共通点や相違点を考察することで,時間概念と

空間概念の形成を図る。

4.モデルを使った実験の実施

中学校 

第3学年

事例F第2分野

中学校

中 学 校

93

◆ 実験後,各班から集めた透明半球を一覧できるように,

各班の実験結果を分析して解釈し, 実物投影機でスクリーンに提示する。

課題に対する考察を個別に考えて, ◆ 考察の視点を基に文章を書くように促す。

班で検討する。

○ 考察の視点を基に,南半球の太陽の1日の通り道に

ついて分析して解釈している。 【科学的な思考・表現】

各班の考察を全体で検討する中で,

観察する地点によって太陽の高度が

違うという問題を見いだし,その要因

(緯度や経度)を抽出し,実験方法を

計画する。

計画した方法に従って行われた ◆ 平面の半円を複数枚重ね,立体としての地球を考え

実験の動画を見て,太陽の高度に られるようなモデルを提示する。

影響を与える要因を考察する。 ◆ 天体の動きについて,さらに興味・関心を高める

ために,地球の外から地球を眺めたモデルで空白になって

いる地点(赤道と両極)を確認し,その地点で実験を行えば

結果がどうなるか,習得した知識を基に考えられるように

問いかける。

◎ 北半球の太陽の1日の動きに関する学習で習得した

知識・技能を活用して,南半球の太陽の1日の動きを

予想し,モデルを使った実験の結果を基に説明できて

いる。 【科学的な思考・表現】

6.新たな問題の発見と考察

5.考察

“考察の視点”

① 課題に対する考察にする。

② 結果を基に記述する。

指導のポイント3 「構想」

観察場所によって太陽の高度が異なるという問題を

見いだし,原因として考えられる要因を抽出して,実験を

計画する。

◆ 太陽の高度に着目した班の考察を取り上げ,南半球

でも観察場所によって太陽の高度が異なるという

問題を見いだすことができるようにする。

◆ 太陽の高度に影響するのは緯度か経度かについて

確かめる実験を,条件を制御して計画できるように

する。

◆ 実験を計画する場面のみを重点的に扱う。

中学校 

第3学年

事例F第2分野

中学校

中 学 校

94

(1)年間を通じた太陽の日周運動の観察

透明半球を使った観察の技能を確実に習得できるように

するためには,実際の観察を繰り返すことが大切である。

そこで,夏至,秋分,冬至と年間を通じて太陽の日周運動の

観察をすることにしている。

また,同時刻に緯度が違う場所で,透明半球を使って

太陽の日周運動を観察した記録を収集して,はじめに各場所

における太陽の動き方を比較し,次に南中高度の違いに

ついて比較して考察できるように指導している(図1)。

(2)モデルを使った実験

本事例のモデルを使った実験の準備物は,以下のとおりである。

地球儀(直径30cm),ライト(LED),ライトを載せる台(高さ

約22cm),小型の透明半球(直径7cm),透明なシート(方位

と東西の線と南北の線を印刷したシートを,一辺が10cmの

正方形に切ったもの)(図2)

透明なシートを透明半球に取り付ける。その際,透明な

シートの東西の線と南北の線の交点と,透明半球の中心を

合わせる。そして,透明半球の中心を観察者の位置として,

地球儀上の観察場所に置く(図3)。

モデルを使った実験では,地球儀とライトの間は約130cmの距離とする(図4)。このようにして,

ライトが地球儀のほぼ半分を照らし,宇宙空間で太陽の光が地球の半分を照らしていることをモデル

で表すようにしている。なお,透明なシートの印刷原稿は指導事例集のDVDに同梱している。

(3)問題を見いだす場面の設定の工夫

本事例では,ニュージーランド出身のALTが,ニュージーランドの自宅の間取りについて映像

で紹介し,生徒が問題を見いだすことができるようにしている。具体的には,ニュージーランド

では北向きのリビングと庭が日当たりがよく,暖かいことを示している。生徒たちは,

ニュージーランドの家の特徴が,日本(北半球)の家の特徴と違うということに疑問を持ち,

「南半球における太陽の1日の通り道が,日本(北半球)と異なり,太陽が北の空を通るのでは

ないか」という問題を見いだすことができるようにしている。

6.本事例における指導の工夫等

図2 透明なシートと透明半球

図1 緯度が違う二つの場所での記録

図3 地球儀と透明半球 図4 地球儀とライトの配置

中学校 

第3学年

事例F第2分野

中学校

中 学 校

95

(4)自然の事物・現象の共通点や相違点から新たな問題を見いだす

自然の事物・現象の中には,変化すること(従属変数)とその要因(独立変数)の関係として

は捉えられない場合がある。この場合には,自然の事物・現象の共通点や相違点を見いだすような

観察,実験を行い,課題を解決する中で新たな問題を見いだす学習場面を設定することが考え

られる。

本事例では,まず南半球における太陽の1日の通り道について,モデルを使った実験で共通点や

相違点を明らかにできるようにする。その中で,「南半球の太陽の1日の通り道は,東から昇り,

北の空を通って西へ沈む」ことは,観察場所を変えても共通していると理解できるようにする。

次に,北半球と同様に南半球でも観察場所によって太陽の高度が異なることに気付かせ,太陽の

高度と緯度の関係について問題を見いだすことができるようにする。その際,小学校で学んだ

条件制御を想起しながら実験を計画できるようにする。なお,この授業では実験を計画する場面

のみを重点的に扱うことにしている。ニュージーランド,フィジー,アルゼンチンの太陽の1日

の動きをモデルを使った実験で調べたデジタルコンテンツと授業で使用したワークシートは指導

事例集のDVDに同梱している。

(5)地球の外の視点から太陽の高度の違いを考えるモデル

画用紙で作った複数枚の半円を用意し,その直径を地球の地軸に

見立てて重ね合わせた。半円の直径を軸に回転することで立体的に

表すことができるモデルを作成し,使用している(図5)。

このモデルを使うことで,太陽の高度に影響を与えるのは,緯度で

あることを,観察者の視点を地球の外に移動して捉えることができる

ようにしている。

(1)習得した知識・技能を活用して,南半球における太陽の1日の動きを明らかにする

<指導の意義>

自然の事物・現象についての理解を深める上で,習得した知識・技能を活用することは大切

である。

<本事例の特徴>

生徒は本時までに,北半球では太陽が東から出て南の空を通り西に沈むこと,そのように

見える太陽の動きは地球の自転による見かけの動きであること,地球の自転は北極方向から

見ると反時計回りであること,観察する地点によって太陽の南中高度が変化することを学んで

いる。本事例では,これらの後に南半球における太陽の1日の動きを扱い,習得した知識・技能

を活用して,太陽の日周運動について理解を深める授業を設計した。

<生徒の反応>

予想の場面では,「北半球であっても南半球であっても,地球の自転方向が変わらないから

太陽の出る方位と沈む方位は同じ」と予想する生徒と,「北半球とは反対の動きになる」と予想

する生徒が,ほぼ同じ人数であった。このことから,生徒が習得した知識と関連付けて予想する

ことの難しさが表れていた。一方,このように複数の予想が出されたことでモデルを使った

実験で解決することの必要性は高まった。

北半球の学習で身に付けたモデルを使った実験の技能は,南半球での同様な実験に活用

されており,観察,実験を行う際に円滑に取り組むことができた。

7.本事例を振り返って

図5 地球の外の視点から考えるモデル

中学校 

第3学年

事例F第2分野

中学校

中 学 校

96

(2)観察者の視点(位置)を変えるモデルを使った実験を行うことで,時間概念と空間概念

の形成を図る

<指導の意義>

天体の位置関係や運動について扱う際には,観察者の視点(位置)を変え,条件を制御しながら

モデルを使った実験に取り組み,時間概念と空間概念の形成を図ることが大切である。

<本事例の特徴>

本事例では,観察者の視点(位置)を変えてモデルを使った実験を行うために,「北半球での

太陽の1日の動き」を調べる学習で習得した知識・技能を基に,「南半球における太陽の1日の

動き」について明らかにする授業を設計した。その際,日の出から日の入りまでの時間の経過を

再現できるように,地球の自転と同じ方向に地球儀を回転させて透明半球に太陽の位置を記録

させた。

また,緯度と太陽の高度との関係を見いだすために,緯度と経度について条件を制御した

モデルを使った実験を計画できるようにした。

<生徒の反応>

授業前と授業後に,太陽の動きや高度について調べるモデルを使った実験で,観測者の視点

(位置)を変えて考えることの意識の程度を「① 当てはまらない ② どちらかといえば当て

はまらない ③ どちらかといえば当てはまる ④ 当てはまる」の4件法で調査した。その

結果,「太陽の動きや高度について,地球上から見た視点で考えることができる」について,

「③ どちらかといえば当てはまる」と「④ 当てはまる」を合わせた肯定的な回答をした生徒の

割合が,授業前の66%から授業後の88%へと増加した。また,「太陽の動きや高度について,

地球の外から見た視点で考えることができる」について,肯定的な回答をした生徒の割合が,

授業前の56%から授業後の88%へと増加した。

(3)自然の事物・現象の共通点や相違点を整理する中で,新たな問題を見いだし,要因を

抽出して条件を制御した実験を計画する

<指導の意義>

天体の動きのように,広大な空間を扱う自然の事物・現象を学習する際には,生徒の認識で

きる範囲での観察から始め,その範囲を徐々に拡大していく中で,問題を見いだし,要因を

抽出して条件を制御した実験を計画していくことが大切である。

<本事例の特徴>

本事例では,日本の地上から見た太陽の1日の動き,北半球の様々な地点から見た太陽の

1日の動き,南半球の様々な地点から見た太陽の1日の動きについて,それぞれの事例を関連

付けて考えることで,地球上では太陽が東から西に動くように見えるという共通点と,太陽は

北半球では南の空を通るが,南半球では北の空を通るという相違点と,場所によって太陽の高度

が変わるという相違点を整理した。その上で,場所によって太陽の高度が変わるという問題を

見いだすことができるようにした。そして,太陽の高度が変わる要因が地球上の緯度か経度かを

予想し,条件を制御した実験を計画することができるようにした。

<生徒の反応>

授業前と授業後に,「自分の予想を基に観察や実験の計画を立てているか」という視点で,

「① 当てはまらない ② どちらかといえば当てはまらない ③ どちらかといえば当てはまる

④ 当てはまる」の4件法で調査した。その結果,「③ どちらかといえば当てはまる」と

「④ 当てはまる」の肯定的な回答をした生徒の割合が,授業前の75%から授業後の89%へと増加

した。

中学校 

第3学年

事例F第2分野

中学校

中 学 校

97

事例G

中学校理科 第3学年

〔第2分野〕 (7) 自然と人間 イ 自然の恵みと災害 (ア) 自然の恵みと災害

【分析結果と課題】

○ モデルとの対応に課題

・ モデルを使った実験で空気を徐々に抜いて気圧を変化させる操作が,上昇している飛行機の

状況と対応していると認識することに課題がある。〔2(4)正答率62.7%〕〔報告書P.45〕

○ 雲の成因に関する考察を検討して改善することに課題

・ 雲の成因に関する知識を活用して,資料を基に他者の考察を検討して改善し,水の状態変化

と関連付けて雲の成因を正しく説明することに課題がある。

〔2(3)正答率14.9%〕〔報告書P.43〕

【学習指導に当たって】

○ 自然の事物・現象とモデルの対応を認識できるようにする

・ モデルを使った実験を行う際,実験の装置や操作が自然の事物・現象の何と対応している

かを明らかにする学習場面を設定することが考えられる。〔報告書P.46〕

○ 多面的,総合的に思考できるようにする

・ 例えば,天気図や地形の断面図,気温や湿度などの複数の資料を使って,島の上空だけに

雲ができる理由を多面的,総合的に考察する学習場面が考えられる。その際,状態変化の概念が

形成できていない生徒がいると考えられるので,水の状態変化や大気圧など関連する知識を

整理しておくことが大切である。〔報告書P.43〕

○ 自然の事物・現象とモデルの対応を認識して,モデルを使った実験を行う

・ 竜巻という現象を調べるためのモデルを使った実験の実施とその考察において,竜巻と

モデルの対応関係を,図や表を使いながら整理することで,空気の流れに着目して竜巻が起こる

仕組みと条件を考えられるようにしている。

○ 自然と人間の関わり方について適切に判断する能力と態度を育成する

・ 竜巻が起こりそうなときの行動指針について,竜巻に関する知識とモデルを使った実験の

結果から得られた科学的な根拠を基に,状況に即して班で議論し,他の班の発表を聞いた上で

つくり上げるようにしている。これらの学習を通して,自然と人間の関わり方について,

科学的な根拠に基づいて多面的,総合的に思考し,適切に判断する能力と態度を育成している。

モデルを使った実験から竜巻が起こる仕組みと条件を考え,防災や減災に生かそう

2.平成27年度全国学力・学習状況調査の調査結果から

1.関連する学習指導要領の内容

3.本指導事例では

分析・解釈 防災や減災の行動指針

中学校 

第3学年

事例G第2分野

中学校

中 学 校

98

解理・識知度態・欲意・心関

。るめとまてべ調をかるあがのもなうよのどうよべ調)間時2(

(1)単元の目標

自然の恵みと災害について興味・関心を持ち,自然の恵みと災害に関する具体的な事例を

調べたり,モデルを使った実験などを行ったりして,これらの結果を多面的,総合的に捉えて,

自然の恵みと災害について説明し,自然と人間の関わり方について適切に判断する能力と態度を

身に付ける。

(2)単元の評価規準

自然事象への科学的な思考・表現 観察・実験の技能

自然事象についての

自然の恵みと災害に 自然の恵みと災害に 自然の恵みと災害に 自然の恵みと災害に

関する具体的な事例に ついて調べ,自然を 関する具体的な事例の ついて理解し,自然と

進んで関わり,それらを 多 面 的 , 総 合 的 に 調査やモデルを使った 人 間 の 関 わ り 方 に

科学的に探究しようと 捉えて,自然と人間の 実験などを行い,結果 ついて認識している。

するとともに,自然と 関わり方について, の記録や整理,資料の

人 間 の 関 わ り 方 に 自らの考えをまとめ, 活用の仕方などを身に

ついて進んで思考し 判断し表現している。 付けている。

判断しようとしている。

(3)単元の指導計画(全6時間)

次 学習の課題 主な観察や実験など

第一次 大地の変動による恵みと災害を ○ 大地の変動による恵みや災害について,

第二次 竜巻が起こりそうなとき,どの ○ 竜巻について調べ,モデルを使った実験を

(2時間) ように行動したらよいか,科学的な 通して空気の流れを考え,それらを基に竜巻が

本時2/2 根拠を基に考えよう 起こりそうなときの行動指針を考える。

第三次 自分たちの住む地域の自然の ○ 自分たちの住む地域の自然の恵みや災害に

(2時間) 恵みと災害について調べ,これから ついて調べ,自然の恵みを将来も持続させる

の自分の行動指針を考えよう ために,また,災害による被害を防ぐために,

自分たちに何ができるかを考える。

4.単元:自然の恵みと災害 (全6時間)

中学校 

第3学年

事例G第2分野

中学校

中 学 校

99

。るすにうよく付気に性要必るえ考をかいよばれす。るす

(1)本時の目標 (2)主な学習活動

竜巻についてのモデルを使った実験を行い,

その結果と竜巻の事例の調査結果を踏まえ,

竜巻が起こる条件や前兆とされている現象から,

被害を最小限にするための行動指針をつくり,

表現できる。

(3)本事例の特徴

(4)展開例

◆ 指導・支援,留意点

学習活動 ○ 主に指導に生かす評価

◎ 指導に生かすとともに記録し総括に用いる評価

◆ 竜巻の被害が大きいことや,季節や場所によらず起こる

前時に調べた竜巻の知識について 可能性があることを確認し,本時の学習内容につなげる

確認する。 ようにする。

○ 竜巻の特徴について理解している。

【自然事象についての知識・理解】

◆ 条件がそろえば,竜巻がいつでもどこでも起こる

問題を発見し,本時の課題を把握 可能性があることから,竜巻が起こったときにどう対応

◆ 単元(第二次)の課題と,前回の課題を提示した上で,

本時の課題を示す。

5.本時:モデルを使った実験から竜巻が起こる仕組みと条件を考え,防災や減災に生かそう

1.前時の確認

2.問題の発見・課題の把握

3.モデルを使った実験方法の確認

4.実験の実施と結果の整理

5.考察1(モデルと自然の事物・現象の対応)

6.考察2(防災や減災の視点)

① 自然の事物・現象とモデルの対応を認識して,モデルを使った実験を行う。

② 図書やインターネットなどで調べた竜巻の知識などと,モデルを使った実験で明らかにした

竜巻が起こる仕組みと条件を基に,防災や減災の視点から行動指針を多面的,総合的に思考し,

自然と人間の関わり方について適切に判断する能力と態度を育成する。

1.前時の確認

2.問題の発見・課題の把握

中学校 

第3学年

事例G第2分野

中学校

中 学 校

100

てし摘指をかるいてし応対にうよのど,がみ組仕るくつ。るえ考をかの

】現表・考思な的学科【。るい

装置の構造など,実験の説明を聞き,

安全面について確認する。

◆ ペットボトルの切れ込みの違いが実験のポイント

となるので,実験装置の構造と,実験方法をスライドで

大きく示す。

◆ ドライアイスは低温なので,直接手で触らず,必ず

手袋を着けて扱うことを確認する。

◆ 実験を行う際,ペットボトルの切れ込みの違い,掃除機

のスイッチを入れるとき,入れないときをそれぞれ比較

して調べるように指示する。

◆ ドライアイスを安全に扱っているか確認する。

モデルを使った実験を行い,空気の

流れを横からと上からの視点で結果を ◆ 二つの実験装置を比較しながら,水滴の動きを矢印

整理する。 などで表現するように指示する。

○ 実験を行い,空気の流れを横からと上からの二つの

視点で整理し記録している。 【観察・実験の技能】

◆ モデルを使った実験における空気の流れに「上昇の

流れ」と「回転の流れ」があることを確認し,それぞれの

実験の結果から,竜巻の空気の流れ 流れについて,モデルと竜巻との対応を図と表で整理

には「上昇の流れ」と「回転の流れ」 する。

があることを確認し,それぞれの

流れがモデルと実際の竜巻において, ○ モデルを使った実験から「上昇の流れ」と「回転の流れ」

どのように存在し,どう対応している に気付き,モデルと実際の竜巻では,それぞれの流れを

指導のポイント1 「分析・解釈」

自然の事物・現象とモデルの対応を認識して,モデルを

使った実験を行う。

◆ モデルを使った実験において,竜巻とモデルの対応

関係を認識できるようにするために,図や表を使って,

空気の流れの視点から竜巻が起こる仕組みを考え

られるようにする。

4.実験の実施と結果の整理

5.考察1(モデルと自然の事物・

現象の対応)

3.モデルを使った実験方法の確認

中学校 

第3学年

事例G第2分野

中学校

中 学 校

101

実験結果と実際の竜巻との対応を

整理した表や,前時で調べたことを

基に,竜巻が起こりそうな時の行動

指針を班で話し合う。

◆ 竜巻が起こる条件から起こりそうな現象を考えるとき

班で話し合ったことを発表する。 には,モデルを使った実験の結果から明らかにした

その後,他の班の考察と個別の考察と 「上昇の流れ」と「回転の流れ」を基に考察するように

を比較した上で,個別の行動指針を検 指示する。

討して改善する。 ◆ 最後に,全体で考察したことを踏まえて,様々な視点

から個人としての行動指針をもう一度考えるように指示

する。

◆ これからの生活の中で,実際に竜巻が起こりそうな

ときに,今回つくった行動指針を思い出し,身を守るのに

役立てるように促す。

◎ 竜巻についてのモデルを使った実験を行い,その結果と

竜巻の事例の調査結果を踏まえ,竜巻が起こる条件や前兆

とされている現象から,被害を最小限にするための行動

指針をつくり,表現できている。【科学的な思考・表現】

(1)竜巻について調べる学習の実施

自然の恵みと災害の学習では,具体的な事例の調査などから得られた情報を多面的,総合的に

捉えて,自然と人間の関わり方について考察することが大切である。その際,生徒たちは自然の

災害について詳しく知らないことや,経験がなくイメージできないことがあることを踏まえた

上で,図書館,科学館などを利用したり情報通信ネットワークを通して得られる多様な情報を活用

指導のポイント2 「防災や減災の行動指針」

自然と人間の関わり方という見方・考え方を持つと

ともに,竜巻などの自然災害の被害を最小限にするための

方策を考察し判断する。

◆ 自然と人間の関わり方について適切に判断する

能力と態度を育成するために,竜巻に関する知識や,

モデルを使った実験で明らかにした竜巻が起こる

仕組みと条件を基に,竜巻が起こりそうなときの行動

指針を考えることができるようにする。

6.考察2(防災や減災の視点)

6.本事例における指導の工夫等

中学校 

第3学年

事例G第2分野

中学校

中 学 校

102

したりすることが考えられる。

そこで,前時に「竜巻とはどのようなものだろうか」という課題を設定し,竜巻について自分で

疑問に思ったことを挙げ,それについて学校図書館の資料を用いて調べる学習を行っている。

また,竜巻について興味・関心を持てるようにするために,導入で事前に用意した竜巻の動画や

画像を提示している。そして,竜巻についての疑問を出し合い,竜巻についてどのようなことを

調べるかを設定してから,資料を用いて調べている。

中学校の学校図書館の利用に当たっては,司書に対して,このような学習活動に対応できる

ように,事前に竜巻に関する資料の収集や図書の整理の協力を依頼している。また,気象庁の

ウェブサイトにある竜巻に関するパンフレット類をダウンロードして印刷し,生徒がすぐに

読めるようにしている。

(2)単元の課題と本時の課題の関係の整理

自然の災害に対して,科学的な根拠を基に自分の行動を考える

学習では,学習のつながりを意識して進めることが大切である。

そこで,生徒が学習全体を見通すことができるように,単元の

課題(第二次)と,それを受けて具体的に取り組む各時間の課題を

図1のように視覚的に提示し,単元と本時の課題を構造的に捉え

られるようにしている。 図1 課題のスライド

(3)竜巻についてのモデルを使った実験

<準備物>

ペットボトル(1.5L)2本,ビーカー(50mL),蒸発皿,ビーカー

を固定する容器,小型掃除機,ドライアイス,手袋

凹凸のない耐圧用のペットボトルを用い,底部を切って取り

除く。2本のペットボトルのうち,一方は,側面の2か所に

切れ込みを入れ,切れ込みの部分を外側に向ける。もう一方は,

均等に8か所に空気の通り道を作る(図2)。

ビーカーの上に蒸発皿を置いた際に転倒を防ぐために,

ビーカーを固定する容器を用いる。

<手順>

① 温めた水を入れたビーカーを,ビーカーを固定する容器に入れる。次に,その上に

ドライアイスを入れた蒸発皿を置く。

② ①の装置に,2か所に切れ込みがあるペットボトルをかぶせて置き,掃除機でペットボ

トルの口からペットボトル内の空気を吸い込む。

③ 8か所に切れ込みがあるペットボトルでも②と同様の操作をして,二つのペットボトル

内で起こる空気の流れを比較する。

<モデルを使った実験を行う上での留意点>

掃除機のスイッチの入・切,ペットボトルの切れ込みの違いによって竜巻の起こり方に

違いがあるかを観察する。

ドライアイスは,昇華して空気を冷やすことで発生する水滴により空気の流れを見やすく

するために使っている。気温や湿度などの条件によっては十分な量の水滴の発生が継続しない

ことがある。そこで,ドライアイスに熱を供給し,ペットボトル内の空気に水蒸気を供給する

ために,ドライアイスの下に温めた水の入ったビーカーを置いている。なお,ビーカーを

固定する容器は,発泡ポリスチレン製でビーカー内の水を冷めにくくしている。

図2 二つの実験装置

中学校 

第3学年

事例G第2分野

中学校

中 学 校

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モデルは竜巻を完全に再現しているものではないため,必ずしも対応ができるものばかり

ではない。例えば,本事例では,ペットボトルを利用して円筒形の狭い空間にすることによって,

はっきりした上昇や回転の流れをつくる働きを持たせたが,自然界でこれに対応するものは

ない。このような,モデルの限界についても触れておく必要がある。

<安全面の配慮>

ドライアイスは低温なので,直接触ると危険である。そのためドライアイスを触る時は,

手袋を使うことを伝える。

(4)竜巻とそのモデルを使った実験との対応を明確にする工夫

自然の事物・現象とモデルの対応を認識できるようにすることは,自然の事物・現象について

の原理や法則を理解する上で大切である。そこで,本時では「上昇の流れ」と「回転の流れ」に

ついて,竜巻とモデルとの対応を図と表を使って整理している。表では,「モデル」と「自然界」

において,「上昇の流れ」と「回転の流れ」のそれぞれの流れを起こしているものをまとめている。

また,竜巻の図とモデルを使った実験の図で「上昇の流れ」を起こしているもの同士を赤色の線で,

「回転の流れ」を起こしているもの同士を青色の線でつなぎ,それぞれの対応を視覚的に理解

できるようにする。

また,モデルを使った実験で空気の流れを見やすくするために,ドライアイスを使って空気を

冷やして水滴を発生させていることについては,実験前に説明している。

なお,実験の結果を整理する図と,積乱雲と竜巻の図は指導事例集のDVDに同梱している。

(5)防災や減災に対する行動指針を具体的に表現する工夫

「考察2」では,竜巻が起こりそうな時の行動指針を作り上げていく学習場面を設定した。

そこで,どのように行動指針を作っていけば良いかを考えるための視点として,次のAから

Cの視点を提示している。

A「竜巻が起こる条件や前兆とされている現象」を考える。

B「実際に竜巻が起こったときの現象と被害」を考える。

C「竜巻が起こりそうなとき,とるべき行動」を考える。

また,行動指針を考える際,これまでに学習した竜巻に関する知識と,モデルを使った実験で

明らかにした竜巻が起こる仕組みと条件を基にして考えることを伝えている。例えば,Aの視点

については,モデルを使った実験で明らかにした竜巻が起こる仕組みと条件(上昇気流と風向が

異なる風が起きるなど)を想起できるよう助言している。

(1)自然の事物・現象とモデルの対応を認識して,モデルを使った実験を行う

<指導の意義>

再現したり実験したりすることが困難な事物・現象について,モデルを使った実験を行う際

には,自然の事物・現象とモデルの対応を認識できるようにすることが大切である。

<本事例の特徴>

本事例では,竜巻の空気の流れができる条件として,「上昇の流れ」「回転の流れ」の二つの

流れがあることに気付くことができるように,モデルを使った実験を行った。それを基に,「上昇

の流れ」「回転の流れ」を起こしているものについてモデルと自然界の竜巻との対応関係を認識

できるようにして,竜巻が起こる仕組みと条件を考えた。

7.本事例を振り返って 中学校 

第3学年

事例G第2分野

中学校

中 学 校

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<生徒の反応>

授業後のアンケート調査において,モデルを使った実験について,生徒は,「簡略化されて

いるのでわかりやすい」,「現象をモデルにすることで,イメージがわきやすくなり,理解が

深まる」,「条件の変更がしやすいので,対照実験もしやすい」などと感想を述べており,

モデルを使うことの良さと,自然の事物・現象とモデルの対応を認識しながら現象を理解

することの効果を実感していたようである。

(2)自然と人間の関わり方という見方・考え方を持つとともに,竜巻などの自然災害の

被害を最小限にする方策を考察し判断する。

<指導の意義>

「自然と人間」の学習では,自然環境の保全や自然の恵みや災害などについて扱い,自然と

人間の関わり方について認識を深め,科学的に考察し判断する態度を養うことを主なねらいと

している。その際,自然と人間の関わり方を適切に判断するために,科学的な根拠に基づいて

考察することが大切である。

<本事例の特徴>

本事例では,前時に竜巻について図書やインターネットで調べた情報と,本時で考察した

モデルを使った実験で明らかにした竜巻が起こる仕組みと条件を科学的な根拠として,竜巻が

起こりそうな時にどのような行動をとるべきかという「行動指針」を考えた。このことは,理科の

学習が日常生活や社会に深く関わっていることを実感させることにつながる。

<生徒の反応>

単元の学習の前後で,災害に備える必要性に気付くためには,科学的な知識・技能を日常生活

に生かすことが大切だと思う程度を,「① 当てはまる ② どちらかといえば当てはまる

③ どちらかといえば当てはまらない ④ 当てはまらない」の4件法で調査した。その結果,

学習前では,肯定的に回答した生徒の割合が80%(① 当てはまるが23% ② どちらかといえば

当てはまるが57%)であった。学習後では,肯定的に回答した生徒の割合が96%(① 当てはまる

が33% ② どちらかといえば当てはまるが63%)であり上昇した。

また授業後の生徒の感想では,「学んだことを生かすことで,理科の楽しさや大切さを知り,

災害に備える必要性にも気づけるから」,「例えば地震,竜巻,台風などの特徴や被害を知る

ことで,何をどのくらい備えておけばよいのかがわかる」などの記述があり,理科の学習が

日常生活や社会と関わり,理科を学ぶ意義を認識することができたと考えられる。

中学校 

第3学年

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中学校

中 学 校

「全国学力・学習状況調査の調査結果を踏まえた

理科の学習指導の改善・充実に関する指導事例集」の作成に携わった者

国立教育政策研究所 教育課程研究センター

梅澤 敦 教育課程研究センター長

佐藤 弘毅 研究開発部長

山中 謙司 研究開発部 学力調査官・教育課程調査官

藤本 義博 研究開発部 学力調査官・教育課程調査官

鈴木 康浩 研究開発部 学力調査官・教育課程調査官

鳴川 哲也 研究開発部 教育課程調査官・学力調査官

清原 洋一 文部科学省初等中等教育局主任視学官(研究開発部 教育課程調査官)

藤枝 秀樹 研究開発部 教育課程調査官・学力調査官

野内 頼一 研究開発部 教育課程調査官・学力調査官

遠山 一郎 研究開発部 教育課程調査官

小久保智史 研究開発部 学力調査課長

笠原 丈史 研究開発部 学力調査課

関谷 香織 研究開発部 学力調査課

瀧山 聡美 研究開発部 学力調査課

多田 尚平 研究開発部 学力調査課

間嶋 哲 研究開発部 学力調査課

磯田 佑美 研究開発部 学力調査専門職

大越聡一郎 研究開発部 学力調査専門職

鈴木 友梨 研究開発部 学力調査専門職

辻本 亜希 研究開発部 学力調査専門職

野稲 聡志 研究開発部 学力調査専門職

向井 智映 研究開発部 教育課程専門職

<これまでに作成に携わった者(職名等は当時)>

佐藤 有正 研究開発部 学力調査課長

臼井 基之 研究開発部 学力調査課

小倉 弘一 研究開発部 学力調査課

齋藤 優子 研究開発部 学力調査専門職

佐藤 友梨 研究開発部 学力調査専門職

全国学力・学習状況調査の調査結果を踏まえた

理科の学習指導の改善・充実に関する指導事例集

平成29年(2017年)3月

発行者 国立教育政策研究所

住 所 〒100-8951

東京都千代田区霞が関3丁目2番2号

電 話 03-6733-6833(代表)