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ウニ卵の発生に及ぼす重金属の影響

村上 哲英 ・早 川 昌志 ・藤 井 利 武

原 武仁 ・伊丹 義 明 ・岸 田 昭

西 田 勇

(岡山大学医学部第一生理学教室)

(昭和50年10月4日 受稿)

近年の急激 な産業の発達 は,急 激な産業廃棄物 の

増加 を伴 っている.し か も,生 活廃棄物 も含め,こ

れ ら産業廃棄物 の処理に関す る研究は,な いが しろ

に されてい る感 が深 い.最 近,重 金属による汚染,

特 に,水 銀,カ ドミウム,ク ロム或は砒素等 によ る

中毒事件が各処 に発生 し,世 の注 目を浴びるように

なった.こ れ ら重金属塩の発生源は,工 場の産業廃

棄物で あった り,或 は廃鉱 か らの浸出物 であった り

である.そ して,直 接人体 に異変が認め られてか ら

対策が考え られてい る現状 であ り,こ の後進性が明

日の人間の生存 を脅か しているわ けである.

我 々は決 して産業の発展 を否定す る者 ではない.

む しろ,資 源 の少な い我国においては益々産業の発

展 を促進 しなければならない と考 える.そ して,産

業の発展よ り先行 して,産 業廃棄物の処理 に関す る

研究 を進展 させるために,こ の研究 を開始 したので

あ る.

良 く知 られているように,ウ ニの受精卵 は温度 を

一定 に保てば,ほ ぼ完全な同調分裂 をくり返 して発

生が進行す る.し か も,細 胞 が大 きく,分 裂装置の

消長 や分裂溝の陥入等 を顕微鏡下 で直接観察 が可能

である.又,材 料 が豊富で,も し,生 化学 的な分析

が必要 ならば,多 量の同一細胞周期の細胞 を得 るこ

とが出来 る.更 に,金 属製のバケツで採取 した海水

では発生が阻害 され る程,種 々の物理化学 的な刺激

に対 して極めて敏感 に反応 す る.精 子の運動 も顕微

鏡下で観察が可能 であ り,精 子の運動の阻害,受 精

の阻害,発 生段階での阻害 を区別 して観察 すること

が出来 る.変 体速度が速 く,従 って,奇 形 の出現 を

48時 間以内に発生の段階で追跡 出来 る.ウ ニは広 く

世界の海に分布 してお り,ウ ニ卵 を材料 として行 わ

れた研究が豊富 で,他 の研究分野 との関連 が密接 で

あ り,種(species)と 実験条件 を一定 にすれ ば,同

一実験 結果 が得 られ,世 界中の研究者 との情報 の交

換 を容 易に行 うことが出来 ると思われる.し か し,

ウニ卵の発生 に及ぼす重金属塩の影響 に関す る研究

は2, 3の 金属塩 を除いて は稀であ り,特 に環境汚

染の面か ら追求 された報告 は甚だ少ない.

この報告は,人 類の生存 に影響が大 きい と云 われ

て い る重金 属Hg, Pb, Cu, Cd, As, Sn, Cr,

Mn, Ni及 びZnの10種 の塩化物及 び酢酸塩 を用 い,

これ らの金属塩 が海水中に溶存す る場合,ウ ニ卵の

発生の阻害 についての濃度閾値 を判定 し,又,閾 値

並 びに閾値下 の濃度で2種 の重金属塩を作 用 させ,

ウニ卵の発生 阻害作用に対 して,相 乗作用或 は相殺

作用が認め られるか否かを調べ た ものであ る.そ の

結果,廃 水中でウニ卵の発生 を調べ ることによ り,

廃水の毒性 を判定す る一助 となることがわか った.

更 に,重 金属塩 の発生阻害作 用を如何 にして無毒化

す るかの手掛 りを探 るために,先 ず,生 活廃水 と併

用 して作用 させた場合 どの様な変化 が現われ るか を

調べ た結果 を纒 めた ものであ る.

ここに得 られた結果 が,重 金属塩 が海産生物の産

生 に どの様に影響す るか,又,食 物連鎖 によ り人体

に摂取 された場合の影響 を推察す る一助 ともな り,

且 つ,重 金属塩によ る環境汚染を如何 にす れば無毒

化す る ことが出来 るかの方法 を開発す る指針 ともな

れば幸 いで ある.

材料及び方法

この実験 は1972年7月 よ り1975年8月 にかけて行

った ものである.こ の実験 に用 いた ウニは全て,岡

山県玉 野市渋川周辺 で採集 された もので ある.夏 期

にはサ ンシ ョオウニ(Temnopleurus toreumatics)

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40  村 上 哲 英

を用 い,恒 温 室 の 温 度 を25℃ に保 った.又,冬 期 に

は バ フ ン ウニ(Hemicentrotus pulcherrimus)を

用 い,恒 温 室 の温 度 を15℃ に保 って 実験 を行 った.

ウニ卵 は ウ ニ の体 腔 内 に1mlの0.5MKClを 注 入 し

排 卵 させ,或 は電 気 刺 激 に よ って 排 卵 させ た.得 ら

れ た未 受精 卵 は数 回 濾 過 海水 で 自然 放置 に よ る沈 澱

洗 滌を行 った もの を用 い た.精 子 は1mlの0.5MKCl

で 放 精 させ,い わ ゆ るdry spermと して冷 蔵 庫 に

保 存 し,使 用 に際 して,海 水 で稀 釈 して用 い た.受

精 率 は 常 に98%以 上 の 卵 を使 用 した.受 精 率 や 発 生

段 階 の 計数 は卵200個 を基 準 と した.発 生 を進 行 させ

る海 水 は1つ は変 型Herbst氏 人 工 海 水 を使 用 した.

そ の組 成 は, NaCl-2.7%, KCl-0.07%, CaCl2

-0 .12%, MgCl2-0.46%, NaHCO3-0.05%で,

ガ ラ ス 蒸 溜 水 に 溶 解 さ せ た もの で あ る.し か し,

Herbst氏 人工 海 水 中では,受 精 や初期卵割 は天然

海水 中 と差がな く進行す るが, blastula期 か ら以後

は次 第に発生の進行 に遅延 が生 じ, pluteus期 に入

る頃か ら死滅す ることが多い.従 って,骨 格形成 の

始 るpluteus期 での奇形の有無を調べ るためには,

天然海水 を濾紙で濾過 した濾過海水を使用 した.

Fig. 1•@ The main stages of early development of the sea urchin embryo. The 8 cell stage i

s formed in about 2h after fertilization, the swimming blastula about 8h and the

pluteus about 24h later.

1. unfertilized egg, 2. fertilized egg, fertilization membrane was elevated. 3

. 2 cell stage, 4. 4 cell stage 5. 8 cell stage 6. morula stage

7. early blastula 8. just hatching blastula 9. swimming blastula 10 . gastrula 11

. prism shaped pluteus. bonification is biginning 12, 13 pluteus 14 A

pollo shaped malformation 15. exogastrula

金 属 塩 は全 て 試薬 特 級 を使 用 した.塩 濃 度 は最 終

濃度 が10-4M~10-8Mに な るよ うに人 工 海 水 又 は濾

過 海 水 に 溶 解 して 用 い た. PbCl2, Pb-acetate,

CrCl3, As2O3は 海水 中 に完 全 に は 溶 解 せ ず 沈 澱 を

生 じて い る.従 って, 10-4Mで は飽 和 溶 液 で あ り,

これ ら4種 の 塩 溶液 を使 用 した場 合 に は, 10-5M以

下 の溶 液 は,飽 和溶 液 の1/10以 下 とな る.又, Cu

Cl2, Cu-acetate, SnCl2, Sn-acetateは10-4Mの

濃度 で は白 濁 を生 じて い るが, 10-5M以 下 の濃 度 で

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ウニ卵 の発生 に及ぼす重金属 の影響  41

は白濁 は認 められなか った.他 の金属塩は全 て海水

に可溶で あった.

末 受精卵 を上記 の各濃度の溶液 で,受 精前10分 間

前処理 して,加 精,加 精後5分 で受精膜の隆起 した

卵の百分率 を求めて受精率の測定,加 精後2時 間 し

て発生率(8細 胞期)の 測定,加 精後8時 間で再 び発

生率(swimming blastula期)の 測定 を行 う.加精

後24時, 48時間 に夫 々pluteus期 への発生の進行の

状態 と奇形の有無 を調べた.判 定に用いた発生段階

を図1に 示 した.又,受 精率 の測定 と同時 に精子の

運動 も観察 し,精 子の運動に及 ぼす影響 を調べた.

更に,受 精率,発 生率の悪い金属塩については,前

処理 を行 わず,加 精 して5分 後 に,こ れ らの金属塩

溶液を作用 させて発生の進行 に及ぼす影響 を調べ た.

又,こ の実験 で発生学上 の奇形 として出現 した外嚢

胚(exogastrula)及 び ア ポ ロ型 奇 形 は 写 真1, 2

に 示 して あ る.

更に,発 生 を完全に阻害す る濃度が各金属塩 につ

いて判明す るので,こ の濃度 を発生 阻害の閾 値とし,

2種 の金属塩 を同時に作用 させ る実験 を試 みた.即

ち,閾 値並 びに閾値下 の濃度で2種 の金属を組合せ

て作用 させ,ウ ニ卵の発生阻害作用に対 して,相 乗

作用或は相殺作用があ るか否か を調べた.

Table 1•@ Effect of heavy metal ion on the development of Temnopleurus eggs in Herbst's

artificial seawater.

又,ウ ニ卵 の 発生 阻害 作用 の 著 しい, Hg, Cu,

Cd, Znに ついて,無 毒化の方法 を探索す る一歩 と

して,生 活廃棄物の蓄積 している海岸のヘ ドロを採

集 し,同 量の海水 と攪拌 し放置,濾 紙で もって濾過

し,ヘ ドロの濾過海水 を得る.こ の中で ウニ卵の発

生 を調べた ところ, pluteus期 に至 るまで,何 等の

阻害作用が認め られなか ったので,こ のヘ ドロ海水

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村 上 哲 英

Photo. 1  The malformation in heavy metal ion

1. Exogastrula in mercury-acetate

2. lnhibition of bonification in cadmium-acetate

3. 4. Apollo shaped malformation

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ウニ卵 の発生 に及 ぼす重金属の影響  43

Table 2•@ Effect of heavy metal ion on the development of Hemicentrotus egg in filtered sea

water.

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44  村 上 哲 英

に上記 の4種 の 重 金属 塩 溶 液 を加 え,受 精 前10分 間

前 処理 後,加 精 して 発生 を進 行 させ る既 述 の 方 法 に

従 って,発 生 に及 ぼ す影 響 を調 べ た.

結 果

Herbst氏 人工 海 水 中 で サ ン シ ョオ ウ ニの 受 精卵

を発生 させ た場 合 の各 金 属 塩 化 物 の影 響 を表1に 示

す.尚,人 工 海 水 中 で飼 育 した 対照 は全 て98%以 上

swimming blastula期 まで 発 生 は 進 行 し て い る.

HgCl2, CuCl2の10-4M溶 液 中 で は精 子 の 運動 が停

止 し,従 って,受 精 そ の もの が 阻 害 され て い る.

10-5Mと な る と精 子 の 運 動 阻害 は猶 認 め られ るが,

HgCl2で は 不完 全 なが ら受精膜の 隆起 が あ る. CuCl2

で は受 精 膜 の 隆起 は な い が, 2分 裂 へ と発 生 は遅 れ

な が ら進 行 して 行 く.又, ZnCl2の 場 合 は,受 精 後

作 用 させ る と10-4Mで も発 生 は遅 れ な が ら進 行 す る.

HgCl2, CuCl2の 場 合 も,受 精 後 作用 させ る と, 10-6M

で発 生 の 進 行 は対 照 と差 がな くな る.

今,バ フ ン ウニ を用 い て,濾 過 海水 中で 発 生 を進

行 させ た場 合 の 各 種重 金 属 の 塩 化物 及 び酢 酸 塩 の影

響 を調 べ た結 果 を表2に 示 す.我 々 が海 水 を採 水 し

た 海域 に は,三 井 金属 日比 製 錬 所,三 菱 金 属 直 島製

錬 所,水 島 コ ン ビナ ー ト,坂 出 コ ン ビナ ー ト等 が あ

り,正 常 海 水 と云 つ て も,何 等 か の汚 染 は充 分 考 慮

しな け れ ば な らな い が,ウ ニの 発生 に 関 して は正 常

で あ り,汚 染 の 進 行 は そ こ迄 は現 在 の とこ ろ達 して

いな い. pluteus期 ま で 飼 育 す る と, CdCl2, Cd

acetate共 に, swimming blastula期 で発 生 が 停止

し,や 膨ゝ 潤 した型 で ゆ っ く り遊 泳 して い るが,骨

格 形 成 は 全 く認 め られ な い. Cd塩 は10-4Mの 濃度

にお い て も,受 精 や初 期 卵 割 に は何等 の影 響 も与 え

ない の に対 し,骨 格形 成 とい う特 別 なCa代 謝 の 開

始 を阻害 して い る ことが わ か る.又, Cu塩 も10-6M,

Hg塩 で は10-7M以 上 の 濃 度 で はpluteus期 へ の進

行 を阻害 し て い る.又, Hg, Cr, Niで は10-6M,

10-5Mで ア ポ ロ型 の奇 形 が 生 じた.

同 じ く,サ ン シ ョオ ウニ を用 いて,上 記 と同 様 の

実 験 を行 っ た と ころ,バ フ ン ウ ニの場 合(表2)と

類 似 した成 績 が 得 られ た. Hg, CuとZnの 塩化 物,

酢 酸塩 共 に10-4~10-6Mの 濃 度 で初 期 発 生 を著 し く

阻害 して お り, Pb, Cdは 初 期 発 生 に は阻 害 作 用 は

少 な い が, pluteus期 に な る と影響 を受 け,特 にCd

は 骨格 形 成 を阻 害 し,以 後 の 発 生 が 進 行 しな い.

Hgで は10-7M, Znで は10-5~10-6Mの 濃 度 で外 嚢

胚(exogastrula)型 の 奇 形 が 現 れ, Cr, Niで は

10-5Mの 濃度 で ア ポ ロ型 の奇 形 が 生 じた.

Table 3•@ Subthreshold concentration of he

avy metal ion on the development

of sea urchin eggs

表1及 び2か ら,重金属塩 を単独 に作用 させた場合

ウニ卵の発生を完全 に阻止 させ る濃度閾値 を求 める

ことが出来 る.そ の閾値 を表3に 示す.即 ちこの濃

度 で作用 させた場合 はpluteus型 幼生 まで発生が進

行せず,発 生のいず れかの段階で阻害作用或 は遅延

作用が生 じてい るわけである.又,こ の濃度閾値の

1/10を 作用 させ ると,正 常 海水 中 で発生 している

対照 と差がない ことを示す.

今,も し, 2種 の重金属塩の間にウニ卵 の発生阻

害作用 に対 して相殺作用があれば,閾 値の濃度或 は

それ以上で も阻害作用が軽減 され るであろ うし,も

し相乗作用があれば閾値下の濃度で も阻害作用 が現

れ ることが予想 されるわ けであ る.そ こで, 7種 類

の重金属 を2種 類づつ組合せて,計21の 組合せの実

験 を行つた.用 いた重金属間に相殺作 用が現 れた例

は1つ も認め られず,阻 害作用の著 しく現 れた例 を

表4 (1-7)に 示 した. Hgに 関 して はCu, Cd,

Znと 組せ た場合 に特に阻害作用が強 く現れ, Hgと

Crの 組合せ で はHgが10-7M, Crが10-6M以 上 の

濃度でblastula期 及 びpluteus期 にな ると遅 延 が

生 じて来 る. HgとMnの 組合せで は, Hgが10-6M,

Mnが10-5Mの 場合 にblastula期 以後 に遅 延 が生

じ, HgとNiの 組合 せではHgが10-6M, Niが10-5M

の濃度で矢張 りblastula期 以後 に発生 の遅れ が生 じ,

pluteus期 においてアポロ型の奇形 が現 れた.又,

Cuと 組 合 せ た場合には表 に示 したCd, Zu以 外に

も, CuとCrの 組合せでは10-6Mの 濃度でpluteus

に遅延 が生 じ, CuとMn及 びCuとNiの 組合せの

場合 に も10-6Mの 濃度 でpluteus期 に遅延 を生 じ,

共 に アポ ロ型 の奇形が認め られた. Cdと 組合せ た

場合 には, Cr, Mn, Ni共 に10-5Mでblastula期

以後の発 生 に遅延が生 じ, pluteusに 入 った幼生 に

はアポ ロ型の奇形が現れてい る. CrとNi, Zn , Mn

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ウニ卵の発生 に及ぼす重金属 の影響  45

Table 4•@ Effect of two metal ion combination on the development

of Temnopleurus eggs in filtered seawater.

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46  村 上 哲 英

とNi, Znと の 組合 せ で は10-5Mの 濃 度 でblastula

期 以 後 に発 生 の遅 延 が生 じ, exogastrula型 の奇 形

や アポ ロ型 の奇 形 がpluteus期 に 入 る加 精 後24時 間

で 認 め られ た.要 約 す る と,ウ ニ卵 の発 生 の 遅 延 や

奇 形 の 発生 率 の 高 く現 れ る金 属 はHg, Cd, Cu, Zn

で,こ れ らが組 合 され た場 合 発 生 の 阻害 作 用 が 強 く

現 れ る こと が わか った.

7

Table 5  Effect of heavy metal ions in filtered sewage.

1

2

3

さて,生 活廃水によって生 じたヘ ドロは,メ タン

ガスの発生や,時 としては硫化水素 の発生 を伴い異

臭を放 ち,し ばしば公害問題 として取 り上 げられて

い ることは周知の通 りである.今回採取 した場所 は,

玉野市 日比町の廃水溝 が海 に注 ぐ所 で,ヘ ドロを採

取 した周辺 には,小 形 のケガキ,マ ガキ,カ ニ類,

フナ クイムシ等が生棲 してお り,夏 期 には海草類 の

生存 はな く,干潮 時 には腐敗臭 を放 っていた.このヘ

ドロを正 常 海 水 と1:1(容 量)の 比 で 混 合 攪 拌 し

た濾 液 にHg, Cu, Cd, Znの 酢 酸 塩 を10-4~10-8M

の濃 度 に溶 解 させ,こ の 中 で ウ ニ卵 の発 生 を進 行 さ

せ た.ヘ ドロ濾 液 中 で は,ウ ニ卵 の発 生 には, pluteus

期 に至 る まで,正 常 海 水 中 の 発生 と差 異 は認 め られ

なか っ た.重 金属 を単 独 に作 用 させ た場 合 の 成 績 を

表5(1-4)に 示 して あ る.又, 2種 の金 属 を組

合 せ た成 績 の 内,阻 害 作 用 の 著 し く現 れ た もの を表

5(5-8)に 示 して あ る.ヘ ドロ濾 液 中 に重 金 属

塩 を含 む場 合 に は,表5(1-4)に 示 して あ る よ

うに, Cdを 除 き他 の 金 属 は,表1,表2, 4,と

比 べ,阻 害 作 用 の 濃度 閾 値 が1/10に 低 下 して い る.

Cdに つ いて はpluteus型 幼 生 にお い て,骨 格 形 成

が認 め られ るよ うに な った こ とは興 味 深 い.又,い

ず れ の 重 金属 を作 用 させ て も, exogastrulaや ア ポ

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ウニ卵 の発生 に及ぼす重金属の影響  47

ロ型の奇形の発生 がな くな っている.

4

5

6

7

8

又,こ れ ら4種 の重金属 を2種 類づつ組合せヘ ド

ロ濾液で発生を進行 させ ると,重 金属のみの組合せ

よ りも,ヘ ドロ濾液 を加 えた方が,阻 害作用或は遅

延 作 用が 濃度閾値で示す と1/10に なってい る.た

だ, Cdを 含 む組合せの場合,正 常海水 中で は骨格

形成が阻害 される濃度 において も,ヘ ドロ濾液を加

えることによ って,そ の阻害作用が失 われてい るこ

と,並 びにexogastrulaや アポ ロ型奇形の出現が認

められない ことは注 目され ることである.

考 察

微量 の重 金属 は正 常 な生 体に も存在 し,例 えば

Zn, Cu, Mnの よ うに呼吸系や代謝系の酵 素の活性

の中心 とな ってい る場合 もある.し か し,近 代の産

業 の急激な発達によ って,多 量の重金属が産業廃棄

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48  村 上 哲 英

物 と して投 棄 され る よ うに な る と,生 物 の生 存 は重

金 属 の蓄 積 を来 た し,そ の毒 性 に よ って著 し く脅 か

され る よ うに な って 来 る.こ れ ら重金 属 と ア ミノ酸,

蛋 白や 核 酸 等 との結 合 様 式 はFreeman (1973)1)に

よ って 総 説 され て い る よ うに, amino基, carboxyl

基, peptide, O (peptide)原 子, N (peptide)原

子, O (hydroxyl)原 子,或 は-SH基 等 個 々 に つ い

て詳 細 な 研究 が され て お り,重 金 属 に よ る阻害 作 用

の 作 用機 序 につ いて は 分 子 生物 学 的 レ ベル で 次 第 に

明 らか にな りつ つ あ る.

一 方,ミ トコ ン ド リア,神 経細 胞,ウ ニ卵 や 精 子,

原 生 動 物 や赤 血 球 等 に 対 す る重 金 属 の影 響 に関 す る

研 究 は,椙 山(1950)2), Maniloff, Coleman & Miller

(1970)3), Bryan (1971)4), Morisawa. & Mori (1972)5),

Thrasher (1973)6), Falchuk, Fawcett & Vallee

(1975)7)等 に よ って 報 告 され て い る.こ れ らを要 約

す る と,精 子 に対 して は, Hgは 運 動 を阻 害 し, Zn

は精 子 の 尾 部 と中 間 部 に, Cuは 中 間 部 の み に と り

込 まれ, FeとZnは 尾 部 の 微 小 管蛋 白 と結 合 す る.

Cuを 作 用 させ る と受 精 膜 の 隆 起 が 抑 制 され,こ の

よ うな場 合 に は,し ば しば 多精 現 象 が 現 れ,分 裂 は

正 常 に 進 行 しな くな る.ミ トコ ン ド リア膜 のKと

Mgの 透 適性 に対 し, ZnとCdは 促進 的 に作 用 す る.

神 経 軸 索 の興 奮 性 に対 して は, Hg, Cu, Pb等 は抑

制 的 に 作 用 し,赤 血 球 の 凝 血 はHg, Cu, NiとZn

を加 え る と μMの 濃度 で生 じ易 くな り,且 つ溶 血 現

象 も現 れ て 来 る. Hg,特 に 有機 水 銀 は能 動 輸送 を抑

制 し, Hg, Pbは 血 球 か らのKの 溶 出 を起 す.又,

Hg, Cu, NiとZnはglucoseやglycerolの 透 過 性

を抑 制す る.多 くの海 産 動物 は10~100ppmのCuイ

オ ン溶 液 中 で は2時 間 以 内 に死 滅 し,ウ ニ卵 の発 生

で はZnの0.06ppmの 濃 度 でpluteus期 に25%も の

奇 形 が生 じ る. Cuは0.01ppm以 上 の 濃 度 で ウニの

幼 生 の生 長 を抑 制す る.魚 類 はCuで0.002ppm, Zn

で0.003ppmの 濃 度 を探 知 し,逃 走 す る等 で あ る.

一 方 ,水 質汚 濁 の面 か ら,ウ ニ卵 の発 生 に及 ぼす

重 金 属 の影響 を調べ た報 告 に は,西 田(1972)8),沢 田

(1972)9),西 田 ・村 上(1973, 1974)10,13),沢田 ・日高

(1973)11)沢 田 ・大 津(1974)12)小 林(1970, 1971,

1972, 1973, 1974)15-19)等 が あ る.こ れ ら に よ る

と,自 然 海 水 中 に 含 ま れ て い る重 金 属 の 濃 度 と14),

ウ ニ卵 の 発 生 を阻害 す る濃 度 閾値 との間 には,金 属

の種 類 に よ って は,す で にそ の 極 限 に達 しつ ゝあ る

もの もあ り,重 金 属 に よ る海 水 汚染 の脅 威 を改 め て

認 識 しな けれ ば な らな い と述 べ て い る.

今回 の 我 々 の 実験 で 確 め られ た よ うに,海 水 に殆

ん ど不 溶 なPb, Cr,難 溶 なCu, Snに お い て も,

発 生 の阻 害 や 奇形 の 出現 が認 め られ る こ とか ら,有

害 重 金 属 の 投 棄 に は,今 一層 の細 心 の注 意 が必 要 で

あ り,完 全 な 無 毒化 の方 法 を早 急 に開 発 し な けれ ば

な らな い こ とが わ か る.

ほ とん どの重 金 属 は10ppm以 上 の濃 度 で ウ ニ卵 の

発 生 を完 全 に阻害 し,更 にHg, Cu, Cd, Znに 関

して は1ppm以 下 の濃 度 で も発生 の異 状 が起 る.そ

して, 2種 の 金 属 を組 合 せ て 作 用 させ る と,相 乗 作

用 の み が現 わ れ る こ とか ら も,こ れ ら重 金 属 が,海

産生 物 の産 生 を妨 げ る ばか りで な く,食 物 連 鎖 に よ

って,我 々人類 に摂 取 され た場 合 に起 るで あ ろ う様

々 の現 象 に対 して,強 い警 告 を発 しな けれ ば な らな

い と考 え る.

子供 の頃 よ く唱 った “海 は広 い な,大 きい な” の

思 想 か ら1日 も早 く脱 却 した い もの で あ る.

結 論

バ フ ンウ ニ及 びサ ン シ ョオ ウニ の 発生 に及 ぼす 重

金 属 の影 響 を調 べ,下 記 の よ うな 結果 を得 た.

1. 重 金 属 の塩 化 物 をHerbst氏 人 工 海水 中 に溶

解 した 中で ウニ卵 の発 生 をblastula期 ま で行 うと,

Hg, Cuは10-6M, Znは10-5M, Cr, Niは10-4M

以 上 の 濃 度 で発 生 の 阻害 作 用 が 認 め られ た.

2. 重 金 属 の 塩 化物 及 び酢 酸 塩 を濾 過 海 水 に 溶解

し, pluteus期 まで発 生 を行 うと,塩 化物,酢 酸 塩

の 間 に 差 は な く, Hg, Cuは10-7M, Cdは10-6M,

Pb, Ni, Znは10-5M, Crは10-4M以 上 の 濃 度 で 発

生 の完 全 な阻 害 が認 め られ た. Mnは10-3Mで 発 生

の 抑制 が現 れ た.

Cdは10-4Mの 濃 度で もswimming blastula期 ま

で は 何等 の発 生 阻 害 を示 さな いに も拘 らず, pluteus

とな り骨格 形 成 が始 ま る時 期 か ら発 生 の 阻 害 作 用 が

強 く現 れ,そ れ以 後 の 発生 は進 行 しない. Hg, Cr,

Niは10-5Mの 濃 度 で ア ポ ロ型 の奇 形 を生 じ, Hgは

10-7Mでexogastrulaが 生 じた.

従 って ウニ卵 の発 生 を完 全 に阻害す る濃 度 閾 値 は

Hgで10-6M, Cu, Cr, Ni, Znで10-5M, Cdは

pluteus期 に お いて10-6M, Mnは10-3Mで あ る.

3. 2の 重金 属 を組 合 せ て ウニ卵 に作 用 させ ,発

生 に及 ぼ す 影響 を調 べ た と ころ,相 殺 的 に作 用 した

例 はな く,全 て,相 乗 作 用 が 現 れ た.特 に, Hg, Cu,

Cd, Znを 組 合 せ た 場 合 に,発 生 の 阻害 作 用 は 強 く

現 れ, exogastrulaや アポ ロ型 の 奇 形 の 出 現 率 も高

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ウニ卵 の発生 に及 ぼす重 金属 の影響  49

い.

4. 海岸 の ヘ ドロの濾 液 中 で ウニ卵 の発 生 を行 う

と, pluteus期 ま で に は,何 等 の 影 響 も認 め られ な

か った.し か し,こ の ヘ ド ロ濾 液 にHg, Cd, Cu,

Znの 酢酸 塩 を単 独 で 溶解 させ て ウニ卵 の 発 生 に 及

ぼす 影 響 を 調 べ た と ころ, HgとCuは 受 精 の段 階

か らの 阻害 が 濾 過 海 水 中 の 阻害 作 用 よ りも1/10の

濃 度,即 ち10-6Mの 濃 度 で 現 れ た. Cd溶 液 中 で の

骨 格形 成 の阻 害 は ヘ ドロ濾 液 中 で は消 失 した.

5. ヘ ドロ濾 液 中 に て, Hg, Cu, Cd, Znの 酢 酸

塩 を2種 組合せ てウニ卵に作用 させ ると,相 乗作用

のみが認め られた.し か し,奇 形の出現率 は低下 し,

Cdと 組合せた場合 には骨格形 成の阻害 は失 われた.

本研究を行 うに当 り,文 部省科学研究費,昭 和47

年度,総 合研究(B)藤 山虎也班,昭 和48年 度,特 定

研究(1),藤 山虎也班,昭 和49年 度,特 定研究(1),藤

山虎也班,並 びに昭和48年 度,山 陽放 送学術 文化財

団研究助成金 を受 けた.こ こに記 して感謝 の意を表

します.

参 考 文献

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50  村 上 哲 英

The effects of heavy metals on developing sea urchin eggs.

Tetuhide H. MURAKAMI, Masashi HAYAKAWA, Toshitake FUJII, Takehito HARA,

Yoshiaki ITAMI, Akira KISHIDA, and Isamu NISIDA.

(Department of Physiology, Okayama University Medical School)

The effects of heavy metals, such as Hg, Pb, Cu, Cd, As, Sn, Cr, Mn, Ni and Zn on

the two developing sea urchin eggs. Temnopleurus and Hemicentrotus were invostigated. The

results obtained were as follows.

1. The development of fertilized eggs was inhibited when embryos were exposed to 10-6M

of HgCl2 and CuCl2 and to 10-4M of CrCl2 and NiCl2 in Herbst's artificial seawater from

fertilization until the formation of the blastula larva.

2. Chlorate and acetate of heavy metals were dissolved in filtered seawater. The morpho

logical differences of embryo were not observed until the formation of the pluteus larva in the two

solutions. Inhibitory effects were observed when embryos were exposed to seawater at concent

rations of 107M of Hg and Cu, to 10-6M of Cd, and to 10-5M of Pb, Ni and Zn. At a concent

ration of 10-4M of Cd there were no visible effects until the appearance of swimming blastula

larva, but larva development was strongly inhibited at time of bonification from pluteus larva,

and there was no further later development. In 10-6M Hg, Cr, and Ni, the larvae were

structural abnonal and shaped like Apollo. In 10-7M of Hg exogastrula embryos were produced.

3. Threshold concentration of complete inhibition on the early development of sea urchin

embryos was at 10-6M of Hg, 10-5M of Cu, Cr, Ni, and Zn, 10-3M of Mn. In the case of

Cd 10-5M, complete inhibition didn't occur until the pluteus larva stage.

4. Only additive effects were obtained on the developing sea urchin eggs when two heavy

metals were combined in filtered seawater. A high frequency of morphological abnormalities

were formed such as exogastrula and Apollo shaped pluteus especially in coupling of Hg and Cu

or Cd and Zn.

5. There were no visible effects in filtered sewage from fertilization to the formation of

the pluteus larva. When embryos were exposed to acetate salts of Hg, Cu, Cd, and Zn in

filtered sewage, there were 10 fold inhibitory effects on development. But formation of skeleton in

the pluteus larva was found in filtered sewage containing Cd.

6. Only additive effects were observed on sea urchin embryo when combined with Hg, Cu,

Cd, and Zn in filterd sewage. But the abnormalities were decreased in all cases. Inhibition of

bonification were reduced in mixture of Cd and filtered sewage.