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研究紀要第223号 G3 -03 情報機器等を効果的に活用する 中学校数学の学習 平成13年2月 岡山県教育センター

情報機器等を効果的に活用する 中学校数学の学習...解を深めていく学習,生徒が実際にデータを集め処 理する学習など,作業的・体験的な活動を取り入れ

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Page 1: 情報機器等を効果的に活用する 中学校数学の学習...解を深めていく学習,生徒が実際にデータを集め処 理する学習など,作業的・体験的な活動を取り入れ

研究紀要第223号

G3-03

情報機器等を効果的に活用する

中学校数学の学習

平成 13 年2月

岡山県教育センター

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ま え が き

岡山県教育センターでは,教育に関する専門的,技術的事項の調査研究,教育職員の研修,教育相

談,教育情報の収集・蓄積・発信等の諸事業を行っております。特に,調査研究におきましては,国

の教育改革の動向と本県の教育課題を踏まえ,幾つかの研究主題を設定し,共同研究・個人研究を行

い,その成果の提供と普及に努めております。

平成14年度から実施される完全学校週5日制に向けて,新学習指導要領も既に告示され,新たな教

育の方向性が示されました。本年度から移行措置が実施され,各学校で新しい学校づくりの取り組み

が推進されています。新教育課程では,「ゆとり」の中で「特色ある教育」を展開し,児童生徒に豊か

な人間性や自ら学び自ら考えるなどの「生きる力」を育成することが課題となっています。

新しい中学校学習指導要領数学には,教科の目標に「数学的活動の楽しさ」が加えられました。こ

れは,教育課程審議会答申の算数・数学の改善の基本方針にある「実生活における様々な事象との関

連を考慮しつつ,ゆとりをもって自ら課題を見つけ,主体的に問題を解決する活動を通して,学ぶこ

との楽しさや充実感を味わいながら学習を進めることができるようにすることを重視する」とあるの

を受けたものです。

数学の学習では,これまで以上に作業的・体験的な学習や問題解決的な学習を重視し,生徒が主体

的に学習を進められるように工夫する必要があります。既に,多くの学校で,学習の中に操作活動,

調査活動を取り入れたり,オープンエンド,オープンアプローチの課題を設定したりするなど,数学

的な活動を生かした学習指導に取り組まれ,成果を上げられていることと思います。

当教育センター数学研究室では,生徒が主体的に学習に取り組めるようにするため,情報機器等を

効果的に活用する中学校数学の学習について研究を進めてまいりました。本研究では,インターネッ

ト,デジタルカメラなどの効果的な活用方法について提案しています。また,インターネットから無

料でダウンロードできる作図ツールやグラフツール,総合的な学習の時間で利用が進んでいるプレゼ

ンテーションソフトの活用についても提案しています。

御高覧の上,御意見,御批判をいただくとともに,この研究が,新学習指導要領を生かす数学の学

習指導のための資料として御活用いただければ幸いです。

終わりになりましたが,この研究を進めるに当たり,御協力をいただきました協力委員の先生方並

びに関係各位に心から御礼申し上げます。

平成 13 年2月

岡山県教育センター所長

國 貞 忠 克

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目 次

Ⅰ はじめに……………………………………………………………………………………………………1

Ⅱ 研究の目的…………………………………………………………………………………………………1

Ⅲ 研究の内容…………………………………………………………………………………………………2

1 インターネットを活用する交流学習…………………………………………………………………2

2 インターネットからダウンロードできるフリーソフトの活用……………………………………2

(1) グラフツール「Grapes」の活用……………………………………………………………………3

(2) 作図ツール「Geometric Constructor」の活用……………………………………………………4

3 デジタルカメラの活用…………………………………………………………………………………5

4 プレゼンテーションソフトの活用……………………………………………………………………5

Ⅳ 実践事例……………………………………………………………………………………………………6

1 インターネットを活用する交流学習…………………………………………………………………6

○ 実践1 第3学年 選択「Four Fours」…………………………………………………………6

○ 実践2 第3学年 選択「タングラム」 …………………………………………………………10

2 インターネットからダウンロードできるフリーソフトの活用……………………………………14

○ 実践3 第2学年 一次関数「グラフで絵をかこう」……………………………………………14

○ 実践4 第2学年 図形の調べ方「合同条件と証明の進め方」…………………………………16

3 デジタルカメラの活用…………………………………………………………………………………18

○ 実践5 第1学年 平面図形「敷き詰め」…………………………………………………………18

○ 実践6 第3学年 関数y=ax2「身の回りにある放物線」…………………………………20

○ 実践7 第3学年 平方根「黄金比の秘密」………………………………………………………22

4 プレゼンテーションソフトの活用……………………………………………………………………26

○ 実践8 第1学年 方程式「単元のまとめ」 ……………………………………………………26

Ⅴ おわりに……………………………………………………………………………………………………29

引用・参考文献及びWebページ……………………………………………………………………………29

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研究の概要 中学校数学の学習を充実させるために,インターネットを活用する交流学習,インターネットからダウン

ロードできるフリーソフトを活用する授業,デジタルカメラを活用する授業,教師が板書する代わりにプレ

ゼンテーションソフトを用いる授業について研究した。その結果,生徒の学習活動が豊かになり,学習に広

がりや深まりが生まれるとともに,生徒の学習意欲も高まることが明らかになった。

キーワード 中学校数学,インターネット,交流学習,フリーソフト,デジタルカメラ,コンピュータ

Ⅰ はじめに

新中学校学習指導要領数学の目標には「数学的活

動の楽しさ」という言葉が加えられた。これまでの

中学校数学の学習は,教科の特徴である系統性や累

積性を重視するあまり,学習内容の理解と技能の定

着に指導が偏りがちであった。そのため,数学の学

習への興味を失ったり,数学を学習する意義に疑問

を持ったりする生徒もいた。これからの学習指導に

おいては,生徒が主体的に学習に取り組み,数学と

日常生活とのかかわりや社会における数学の有用性

に気付くようにすることを大切にする必要がある。

このことを受け,数学的活動を取り入れた授業の

研究を行う中学校も見られ始めた。生徒が具体物を

操作しながら考える学習,作業的な活動を通して理

解を深めていく学習,生徒が実際にデータを集め処

理する学習など,作業的・体験的な活動を取り入れ

た学習の工夫がいろいろとなされている。

一方,数学の学習におけるコンピュータ活用の意

義が見直されてきている。これまで,数学の授業に

おけるコンピュータの活用は,ドリル,チュートリ

アル,シミュレーションなど教師が用意した教材を

生徒が見たり,操作したりして理解を深めていく学

習が主流であった。ところが,それに加えて,生徒

が表計算ソフト,グラフツール,作図ツールなどを

活用して計算やグラフ,図の作成を行い,問題を解

決したり学習成果をまとめたりする学習が見られる

ようになってきた。つまり,生徒の理解や技能の定

着のためだけでなく,考えを進めたりまとめたりす

るための道具としてコンピュータを活用するように

なってきたのである。

ところが,コンピュータの活用は一部の教師に限

られているとの指摘がある。岡山県教育センター(以

下「県教育センター」と言う。)の中学校数学研修講

座のアンケートでも,9割以上がコンピュータを授

業で活用しにくいと答え,その理由として,次のよ

うな点を挙げている。

○ソフトウェアの不足

・教師の授業意図に沿うソフトウェアが無い。

・ソフトウェア購入の予算が不十分である。

○コンピュータを活用する自信のなさ

・機器の使い方に習熟していない。

・ソフトウェアの使い方に習熟していない。

・機器が不具合になったときに対応できない。

・授業の仕方が分からない。

○時間と手間

・コンピュータ教室への移動に手間が掛かる。

・生徒の個人差が大きく,時間をロスする。

・コンピュータを使うだけで時間が掛かる。

○生徒の学習効果

・普段の授業とコンピュータを使った授業のス

タイルに差があり,落ち着かない。

・興味が学習内容よりコンピュータに向く。

・活用に見合う学習効果が実感できない。

以上のことを踏まえ,県教育センターではコンピ

ュータを活用し,生徒が主体的に取り組む中学校数

学の学習について研究することにした。研究を進め

るに当たっては,特に次の点に配慮する。

○数学的活動の楽しさを味わえる学習にすること

○インターネット,デジタルカメラ,プレゼンテ

ーションなどコンピュータの情報機器としての

側面に重点を置いた活用を行うこと

○教師が学習効果を実感できるようにすること

○教師の負担軽減を図ること

Ⅱ 研究の目的

次の授業を提案し,実践を通して効果を検証する。

1 インターネットを活用する交流学習

2 インターネットからダウンロードできるフリー

ソフトを活用する授業

3 デジタルカメラを活用する授業

4 板書の代わりにコンピュータプレゼンテーショ

ンを行う授業

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Ⅲ 研究の内容

1 インターネットを活用する交流学習

岡山情報ハイウェイが整備され,県内の学校の

インターネット接続は着実に進んでいる。インタ

ーネットは情報収集の手段として,また,学校を

外に開く手段として有効である。ここ数年,イン

ターネットを活用して他校,地域,各種施設・団

体と交流学習を行う学校が増えてきた。

そこで,数学の学習において交流学習を実施し,

学習の広がりや深まり,学習意欲の向上等への効

果について研究することにした。ただし,交流学

習はインターネットの活用に熱心な教師が持つ人

的ネットワークに依存する場合が多い。そこで,

本研究では,県教育センター数学研究室が交流を

仲介することにした。これにより,多くの学校が

参加しやすくなり,学校間交流を進めていけると

考えた。また,県教育センターの支援は各学校で

の学習を充実させるためにも有効であると考えた。

交流学習の流れは次の図のとおりである。

①県教育センターがWebページ上に,

学習課題,学習の流れ,教材等を公開

②各学校で授業実践

③実践結果を県教育センターに報告

④結果や感想を,

県教育センターWebページに公開

⑤各学校でWebページを閲覧し,

感想を県教育センターに報告

⑥感想をWebページに掲載

また,①~⑥の各過程における留意点は次のとお

りである。

① ワークシートや教材プリントをインターネッ

トからダウンロードできるようにしておく。

② 学習の流れやワークシートを生徒の実態に合

わせて手直しする。生徒に交流学習について説明

し,学習意欲を高める。また,各自の考えや感想

などが無記名で県教育センターのWebページに

掲載される場合があることを伝える。

③ 教師は,実践結果をまとめ,必要な資料ととも

に県教育センターに電子メールで送る。電子メー

ルによる送付が難しい場合は郵便,ファクシミリ

などを利用する。

④ 個人情報の保護には十分留意する。

⑤ 次時の最初にWebページを閲覧する。閲覧で

きない場合は,印刷したものなどを見せる。

⑥ 個人情報の保護には十分留意する。

本研究では,交流学習をしやすくするため,第

3学年の選択教科としての数学を基本的な交流の

場とした。しかし,学習課題は必修教科としての

数学の課題学習でも扱えるものとし,参加の場を

広げるとともに,第1,2学年でも参加できるこ

とにした。学習課題は1,2学期に各1問ずつ,

計2問出題した。それぞれ2時間扱いとし,2段

階に分けて出題した。なお,授業の詳細は,実践

1,2(pp.6~13)を御覧いただきたい。

2 インターネットからダウンロードできるフリー

ソフトの活用

「Ⅰ はじめに」で述べたように,数学の学習

におけるコンピュータの活用は,ドリルや説明補

助という教師の指導のための活用に,計算,グラ

フ作成,思考補助という生徒の学習支援のための

活用が加わり,幅を広げてきている。作図ツール,

表計算ツール,グラフツールなどを活用し,学習

効果を上げている学校も増えてきた。

しかし,岡山県内における活用はあまり進んで

いるとは言えない。ソフトウェアが高価なこと,

使い方の習熟が大変なこと,授業で活用するには

更に大きな労力が必要なことなどが理由として挙

げられる。

そこで,インターネットから無料でダウンロー

ドでき,その機能と操作性で全国的に活用が広が

っているグラフツール「Grapes」と作図ツール

「Geometric Constructor」の二つのフリーソフト

の使い方及び実践例を提案することにした。

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(1) グラフツール「Grapes」の活用

大阪教育大学附属池田高等学校の友田勝久教

諭が作成したグラフツール。友田教諭が管理して

いるWebページ「VISUAL数学を目指して」

(http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/̃tomodak/)の[GRAPES

への扉] でダウンロードできる。高校生を主な対

象としているが,中学生でも簡単に操作できる。

関数の学習で生徒主体の学習を実施するには,

グラフをかくことが不可欠である。しかし,生徒

のグラフをかく力の差は大きい。グラフツールは

この課題を解決してくれる。傾きや切片をいろい

ろと変えたグラフをかき,一次関数の性質を考察

する学習,グラフで絵をかき,その式や変域を調

べて関数の理解を深める学習など,いろいろな学

習を構想していくことができる。

次に,使い方を簡単に説明する。

① メイン画面

起動すると,次のようなメイン画面が現れる。

この画面の「陽関数の作成」をダブルクリックす

る。

② 式入力タブ

すると,次のような「式入力タブ」が現れる。

式入力の窓でカーソルが点滅しているので,適当

な数字や記号を選んでマウスで入力する。

○入力上の注意

・ 変域を付ける場合は,「( )」の中に入れる。

不等号は,「関数2」の中にある。

・分数係数の場合は文字の前に「×」を入れる。

③ グラフの表示

メイン画面には,次のように式とグラフが表示

される。式をダブルクリックすると,式の訂正が

できる。「目盛りタブ」で格子や目盛りのある無し

を設定する。メモのアイコンをクリックすると,

式の名前も入力できる。

④ グラフ用紙の数値範囲を変更する二つの方法

ア メニューバーの「オプション」をクリックし,

その中の「領域設定」で数値を変更する。

イ 「領域タブ」の「拡大」または「縮小」をク

リックし,マウスで範囲を囲んで行う。

なお,グラフツール「Grapes」を活用した授業

の詳細は,実践3(pp.14~15)を御覧いただきた

い。

陽 関 数 の 作 成

式入力の窓 入力結果の窓

グラフ 式

目盛りタブ

拡大・縮小

のアイコン

x軸の変更

y軸の変更

画 面 の 大 き

さの変更

メ ニ ュ ー バ ー

のオプション

メモの

アイコン

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(2) 作図ツール「Geometric Constructor」の活用

愛知教育大学飯島康之助教授が作成した作図

ツール。飯島助教授のWebページ「飯島研究室」

(http://www.auemath.aichi-edu.ac.jp/teacher

/iijima/iijima.htm)の[GC Forum]でダウンロー

ドできる。ダウンロードの方法をWebページに

図入りで詳しく解説してある。

作図ツールとは「作図,変形,測定,軌跡等を

行えるソフトの総称」1)である。紙にかいた図は

固定的であるが,作図ツールでかいた図は動かす

ことができる。図形学習での活用が効果的で,か

いた図を動かして性質を見付けたり,考える手助

けにしたり,長さや角度を測定して性質を確認し

たりすることができる。

市販の作図ツールはスクールパックで 10~20

万円する。それを無料で利用できるようにした飯

島助教授の功績は大きい。愛知県を中心に活用す

る中学校は多く,実践例やサンプルも豊富である。

次に,主な機能を簡単に紹介する。

① 作 図

次の図に示すとおり,メイン画面のメニューバ

ーで「作図」をクリックし,出てくるメニューの

中から必要な機能を使って作図をする。

2点を結ぶ直線を書く方法を説明する。

ⅰ)メニューの「点」⇒「新しい点の追加」⇒「自

由な新しい点」を選ぶ。

ⅱ)画面上の適当な位置に2点を取る。

ⅲ)メニューの「直線」⇒「2点を結ぶ」を選ぶ。

ⅳ)一方の点を2回クリックし,青色に変える。

ⅴ)もう一方の点を2回クリックすると,直線が

引ける。

ⅰ)

ⅱ)

実際の授業で,生徒に作図させると非常に時間

が掛かる。教師が図を用意しておき,それを使っ

て考察させる形が使いやすい。サンプルがWeb

上で提供されているので大いに活用したい。

② 変 形

下の図は,「平行な2直線上にそれぞれ点A,B

を取り,線分ABの中点Oを通る直線と平行な直

線との交点をP,Qとする」図で,点Pを動かし

て変形させている様子である。動かしたい点にカ

ーソルを移動させると丸印になり,作図の条件を

保持したまま動かせる。ただし,動かせない点も

ある。例えば,点Oは点A,Bの中点で,点A,

Bにより決まる点なので動かせない。この図で動

かせるのは点A,B,Pである。

この機能を使うと,図形の性質を生徒が主体的

に追究していく学習が可能になる。

③ 測 定

次の図に示すとおり,メイン画面のメニューバ

ーで「測定」をクリックし,出てくるメニューの

中から必要な機能を使って測定をする。

線分の長さを求める方法を説明する。

ⅰ)メニューの「距離」⇒「2点」を選ぶ。

ⅱ)一つの点を2回クリックし,青色に変える。

ⅲ)他の点を2回クリックすると,左下に線分の

名前と長さが表示される。

※角度の場合は3点で同じ作業をすると,左下

に角の名前と角度が表示される。

なお,作図ツール「Geometric Constructor」

を活用した授業の詳細は,実践4(pp.16~17)を

御覧いただきたい。

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3 デジタルカメラの活用

コンピュータの更新に併せて,デジタルカメラ

の導入を進める学校は多い。班に1台ずつ用意し,

総合的な学習の時間における取材などに活用され

ている。小学校低学年の実践例も紹介されており,

今後,活用が増えていくと思われる。

本研究では,中学校数学の学習における効果的

な活用方法を考え,実践例を提案することにした。

(1) デジタルカメラの特性

デジタルカメラは学校教育で活用しやすい特性

を多数持つ。主な特性とそのよさを挙げる。

① 撮った画像をその場で確認できる。また,画像

の削除も簡単にできる。

⇒ ○納得するまで,何度でも撮り直せる。

○グループで相談しながら撮影できる。

② 画像をコンピュータで加工できる。

⇒ ○好みの大きさで印刷できる。

○簡単に発表資料を作れる。

○画像の明度を調整し,見やすくできる。

○保存ができ,いつでも活用できる。

③ 画像を簡単にテレビに映せる。

⇒ ○簡単な説明や報告会がすぐにできる。

(2) 数学の学習のおける活用方法

(1)の特性を生かせば,数学でもいろいろな活

用方法が考えられる。本研究では,生徒が数学に

関連した身近な事物を取材し,それを用いて学習

することを提案する。取材する時間によって,次

の三つのパターンで授業を計画した。

① 授業の最後 10 分間+長期休業日+2時間

ⅰ)長期休業日に入る前に,取材についての説明

を聞く。

ⅱ)長期休業日を利用して取材する。

ⅲ)取材した画像を使って発表会をする。

⇒ 実践5(pp.18~19)参照

② 授業の最後 10 分間+放課後・休日+1時間

ⅰ)善事の最後に,取材についての説明を聞く。

ⅱ)放課後または休日を利用して取材する。

ⅲ)取材した画像を使って学習する。

⇒ 実践6(pp.20~21)参照

③ 2時間扱い

ⅰ)授業の最初に,取材についての説明を聞く。

ⅱ)授業中に,校内や学校の近辺を取材する。

ⅲ)取材した画像を使って学習する。

⇒ 実践7(pp.22~25)参照

(3) デジタルカメラ活用上の留意点

デジタルカメラはコンパクトで,比較的頑丈に

できており,生徒にも扱いやすい。その中で,ぜ

ひ考慮しておきたい点を挙げておく。

① 一般的に電池の消耗が速い。

1日に複数の学級が使用する場合は,電池の確

保が必要である。乾電池はコストが大きい。蓄電

池と充電器を用意しておく方が長期的にはローコ

ストになる。新規に購入の際は,できるだけ電池

が長持ちする機種を選定したい。

② データの保存媒体を考慮する必要がある。

フロッピーディスク,スマートメディア,コン

パクトフラッシュ,メモリースティックなどが用

いられる。フロッピーディスクとそれ以外に分け

て特徴をまとめた。新規購入の際は,活用方法に

応じた保存媒体を持つ機種を選定したい。

ア フロッピーディスク

○多くのコンピュータでデータを出入力できる。

○安価で,生徒一人一人に持たせられる。

×容量が小さく,画質は制限される。

×対応している機種が少なく,高価である。

イ スマートメディアなど

×データの出入力は,コンピュータとデジタルカ

メラを直接ケーブルでつなぐか,カード式やフ

ロッピーディスク式のアダプターを用いること

が必要である。

×高価で,グループに1枚が標準と思われる。

○容量が大きく,高画質の画像も多数撮れる。

○いろいろな機能の機種があり,価格帯も広い。

4 プレゼンテーションソフトの活用

中学校の学習では,図表,グラフなどを用いて

学習を進めることが多い。これらをかくには時間

が掛かる。生徒の学習時間を確保するため,掲示

物を用意する教師は多い。しかし,掲示物は傷み

やすく,保存場所も必要になる。

そこで,今後,各学校にコンピュータやビデオ

プロジェクタの配置が進むことも視野に入れ,プ

レゼンテーションソフトの活用を考えた。プレゼ

ンテーションソフトの活用によって,板書する時

間の省力化,修正が簡単なため次年度以降や同学

年の他の教師が使用することも可能などのメリッ

トが考えられる。授業の詳細は実践8(pp.26~28)

を御覧いただきたい。

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<学習の進め方> ○岡山県内3校の3年生が,同じ問題に

取り組みます。

○結果は岡山県教育センターのWeb

ページに公開されます。

★次のような視点で考察させる。

・誤っているものや式を整とんできるものはないか。

・計算の順序が違うだけのものはどれか。

・式は全く異なるが,答えを作る考え方が同じものは

どれか。

(例)A×0で0を作る考え方

・他の式は作れないか。

※ 意 欲 を 持 っ て , 多 様 に 考 え た こ と を 大 切

にし,できる範囲で考察させればよい。

Ⅳ 実践事例 1 インターネットを活用する交流学習

実践1(インターネットを活用する交流学習1:第3学年 選択「F o u r F o u r s 」)

◆本授業の目標 ○クイズ的な問題に取り組むことにより,数学へ

の興味・関心を高める。 ○インターネットを活用して他校の生徒と交流

学習をすることにより,数学の学習を深める。

○演算記号の使い方,四則計算の方法を確認する。

◆学習計画「F o u r f o u r s 」 第1時 4つの4で作ろう0から 10 (1時間) 第2時 4つの4で作ろう 11 から 100(1時間)

◆授業の流れ(2時間扱い) 第1時 <準備物>ワークシート

①学習の進め方と学習課題についての説明を聞こう。

②まず,各自で一とおりの方法を考えてみよう。 ③他の方法はできないか考えてみよう。 ④みんなの考えを出し合おう。 ⑤みんなの考えを整理しよう。

⑥今日の学習をまとめよう。 ⑦県教育センターに成果を送ろう。

<学習課題>

次の式に,+,-,×,÷,かっこ,

√などを加えて,答えが0~10 にな

るようにできるでしょうか。

4 4 4 4 =

★第2時へ

★ワークシートで自己評価をさせる。

★電子メールに添付して送る。困難な場合

は,郵便やファクシミリで送る。

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★ワークシートで自己評価をさせる。

第2時 <準備物>ワークシート,インターネットを見られる環境またはWebページの印刷物

①インターネットで,前時の成果を見よう。

②今日の学習課題の説明を聞こう。

③グループごとに分担して考えよう。

④成果を発表し合おう。

⑤今日の学習をまとめよう。

⑥県教育センターに成果を送ろう。 次時の最初10分間

⑦インターネットで,前時の成果を見てみよう。 ◆生徒の主な感想

<学習課題> 4つの4で,11以上の数は作れるで

しょうか。

<第1時のまとめ> ・奇数が難しかった。7が最後まで残った。で

も全部できて安心。 ・思ったよりも楽しかった。もうちょっと頑張

ればもっとできたかな。7,9が難しかった。

・10以上の数を作ってみたい。

<第2時のまとめ> ・数が大きくなると,こんなに難しくなるとは思

わなかった。 ・いろいろな記号があるのだなあと思った。しか

し,計算していくうちに,頭が痛くなった。 ・今回の問題はけっこう難しかった。

<インターネットを見て> ・一つの答えを出すのにもたくさんの作り方,やり方があるんだってことがよく分かった。自分が一生

懸命考えて作って,もうないだろうと思っても,それ以外にもいろいろな作り方があって驚いた。

逆に,自分しかできてなかった数字があったからうれしかった。 ・ホームページ見させてもらいました。わたしたちの作った[Four fours]が載っていて,とてもビック

リしました。他の中学校の人たちの作品を見て,とても感心しました。もっと難しいものを作ってく

ださい。いつでも受けて立ちます。

★適当なタイミングで,次の記号も使

ってよいことを伝える。

・「^」べき乗

・「!」階乗

・「[ ]」ガウス記号

★電子メールに添付して送る。困難な場合は,

郵便やファクシミリで送る。

★ワークシートに感想を書く。

Page 11: 情報機器等を効果的に活用する 中学校数学の学習...解を深めていく学習,生徒が実際にデータを集め処 理する学習など,作業的・体験的な活動を取り入れ

数 分類 A中学校 B中学校 C中学校①a+a-a-a 4+4-4-4 4+4-4-4 4+4-4-4,√4+√4-√4-√4

②a±a(4+4)-(4+4)4×4-4×4(4-4)+(4-4)

(4+4)-(4+4),4×4-4×4,4÷4-4÷4,4×4÷4-4

4÷√4-4+√4,4×4÷4-4,(4+4)÷4-√4,4×4-4×4,√4÷√4ー4÷4,√4×√4-√4×√4

③0×a (4-4)×4÷4①1+0 4÷4+4-4 4÷4+4-4 4÷4+4-4②2-1 4÷√4-4÷4③a×a÷a÷a4×4÷4÷4 4×4÷4÷4 4×4÷4÷4

④a÷a (4+4-4)÷4 (4×4)÷(4×4),(4+4-4)÷4 (4+4)÷(4+4),(√4×4-4)÷4(√4×√4-√4)÷√4

⑤1×1 (4÷4)×(4÷4) (4÷4)×(4÷4)①1+1 4÷4+4÷4 4÷4+4÷4 4÷4+4÷4

②2+0 4-√4-√4+√4 (4-4)+4÷√4,4-4+4-√4, (4-4)+4÷√4,4-4+4-√4,(4-4)×4+√4,

③4-2 4-(4+4)÷4 4×4÷4-√4 4-√4×4÷4,4×4÷4-√4④6-4 √4+√4+√4-4 √4+√4+√4-4⑤4÷2 (4+4-4)÷√4

⑥8÷4 (√4×√4+4)÷4,√4×√4×√4÷4 √4×√4×√4÷4,(4+4)÷√4÷√4,(4+√4+√4)÷4

⑦16÷8 4×4÷(4+4) 4×4÷(4+4),4×4÷√4÷4①2+1 4÷4+4÷√4 4÷√4+4÷4

②4-1 -4÷4+√4×√4-4÷4+√4+√4

√4×√4-4÷4,-√4×√4÷4+4 ,√4+√4-√4÷√4

√4×√4-4÷4

③5-2 4÷4+4-√4 4÷4+4-√4④6÷2 (√4+√4+√4)÷√4

⑤12÷4 (4+4+4)÷4(4×4-4)÷4

(4+4+4)÷4,(4×4-4)÷4 (4+4+4)÷4,(4×4-4)÷4,(√4×4+4)÷4

①2+2 4-√4+4-√4 √4+√4÷4×4 4×√4÷4+√4,4÷√4+4÷√4

②4+0 4-4+√4+√4,4-4+√4×√4

(4-4)×4+4,√4×√4+4-4 (4-4)×4+4,√4×√4-√4+√4

③6-2 √4+√4+√4-√4 √4+√4+√4-√4

④8-4 4+4-√4-√4,4×4÷√4-4,4×√4-√4×√4

4+4-√4-√4,4×4÷√4-4,4+4-√4×√4,√4+4+√4-4

⑤8÷2 √4×√4×√4÷√4⑥16÷4 4×4÷(√4×√4) (√4+√4)×4÷4⑦√16 √(4+4+4+4)①2+2+1 √4+√4+4÷4 4÷4+√4+√4 4÷4+√4+√4②4+1 √4×√4÷4+4 √4×√4÷4+4,√4×√4+4÷4 √4×√4÷4+4③6-1 4+√4-4÷4 4+√4-4÷4④10÷2 (√4+4+4)÷√4⑤20÷4 (4×4+4)÷4 (4×4+4)÷4 (4×4+4)÷4

①4+2 4×4÷4+√4(4+4)÷4+4

4×4÷4+√4,(4+4)÷4+4,√4×√4+4÷√4

√4+4×4÷4,(4+4)÷4+4,4÷4×√4+4,(√4+√4)÷√4+4

②6+0 4+√4+4-4 √4+4-√4+√4 √4+4+4-4③8-2 √4×√4+4-√4 √4×√4×√4-√4,4-4÷√4+4④3×2 (√4÷√4+√4)×√4⑤12÷2 (4×4-4)÷√4,(4+4+4)÷√4①4+2+1 4+√4+4÷4 4÷4+4+√4②8-1 4+4-4÷4 4+4-4÷4,4×√4-4÷4 4+4-4÷4,4×√4-4÷4③14÷2 (4×4-√4)÷√4①2+2+2+2 √4+√4+√4+√ √4+√4+√4+√4 √4+√4+√4+√4②4+2+2 √4×√4+√4+√4③4+4 4×4÷4+4 4×4÷4+4,√4×√4+√4×√4④8+0 4+4-4+4 4-4+4+4 4+4+4-4,√4×4+4-4⑤16-8 4×4-4-4 4×4-4-4,4×4-4×√4 4×4-4-4⑥4×2 (4+4)÷4×4 (√4+4-4)×4①8+1 4+4+4÷4 4÷4+4+4,4×√4+4÷4 4+4+4÷4,√4×4+4÷4②18÷2 (4×4+√4)÷√4

①8+2 √4×√4×√4+√4,4+4+4÷√4 √4×√4×√4+√4,4÷√4+4×√4,4×4÷√4+√4,(√4+√4)×√4+√4

②2+2+2+4 √4+√4+√4+4 √4+√4+√4+4 √4+√4+√4+4③12-2 4+4+4-√4 4+4+4-√4④16-6 4×4-4-√4 4×4-4-√4 4×4-4-√4⑤20÷2 (4×4+4)÷√4

◆第1時の結果

2

3

8

0

1

 第1時の結果を次表にまとめた。各学校の実践の参考にしていただきたい。表を見ると生徒の考えは多様である。しかし,最初から多様に考えられる生徒は少ない。班や学級での交流を通して,考え方を他の数に応用したり式を少し変形したりするなど多様さが増してくる。ただ,学級全体の学習結果は,生徒各自の学習と学級全体の学習のどちらを重視するかで異なってくる。教師は目標を十分に意識し,いたずらに数を競うことにならないようにしたい。

9

10

4

5

6

7

- 8 -

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9

◆第2時の結果 標準フォントは第2時に生徒が見付けた式,大きいフォントは第2時の後に生徒と教師が見付けた式で,

3校の成果をまとめて表示している。また,網掛けは答えを見付けられなかったものである。

4 4 ÷ ( √ 4 + √ 4 ) =11 4 4 - 4 + [ √ √ 4 ] =41 4!+4!+4!-[√√4] =71

( 4 - 4 ÷ 4 ) × 4 =12 4 4 - 4 ÷ √ 4 =42 (4 × 4 + √ 4 )× 4 =72

4 4 ÷ 4 + √ 4 =13 4 4 - 4 ÷ 4 =43 4!+4!+4!+[√√4] =73

4 × 4 - 4 + √ 4 =14 4 4 × 4 ÷ 4 =44 4 ! + 4 ! + 4 ! + √ 4 =74

4 × 4 - 4 ÷ 4 =15 4 4 + 4 ÷ 4 =45 4 4 4 4 =75

4 × 4 + 4 - 4 =16 4 4 + 4 ÷ √ 4 =46 4 ! + 4 ! + 4 ! + 4 =76

4 × 4 + 4 ÷ 4 =17 4 ! × √ 4 - 4 ÷ 4 =47 4 4 4 4 =77

4 × 4 + 4 - √ 4 =18 ( 4 × 4 - 4 ) × 4 =48 4 4 4 4 =78

4 ! - 4 - 4 ÷ 4 =19 4 ! × √ 4 + 4 ÷ 4 =49 (4!-4)×4-[√√4] =79 ( 4 + 4 ÷ 4 ) × 4 =20 4 ! × √ 4 + 4 ÷ √ 4 =50 ( 4 × 4 + 4 ) × 4 =80

4 ! - 4 + 4 ÷ 4 =21 4!×√4+4-[√√4] =51 (4!-4)×4+[√√4] =81 4 × 4 + 4 + √ 4 =22 4 ! × √ 4 + √ 4 × √ 4 =52 (4 ! - 4 )× 4 + √ 4 =82

4 ! - √ 4 × √ 4 ÷ 4 =23 4!×√4+4+[√√4] =53 4 4 4 4 =83

( 4 × 4 - 4 ) × √ 4 =24 4 ! × √ 4 + 4 + √ 4 =54 4 4 × √ 4 - 4 =84

4 ! + √ 4 × √ 4 ÷ 4 =25 (4!+4)×√4-[√√4] =55 4 4 4 4 =85

( 4 + √ 4 ) × 4 + √ 4 =26 (4 × 4 - √ 4 )× 4 =56 4 4 × √ 4 - √ 4 =86

4 ! + 4 - 4 ÷ 4 =27 (4!+4)×√4+[√√4] =57 4 4 × √ 4 - [ √ √ 4 ] =87

( 4 + 4 ) × 4 - 4 =28 (4 ! + 4 )× √ 4 + √ 4 =58 4 4 + 4 4 =88

4 ! + 4 + 4 ÷ 4 =29 4 4 4 4 =59 4 4 × √ 4 + [ √ √ 4 ] =89

( 4 + 4 ) × 4 - √ 4 =30 4 × 4 × 4 - 4 =60 4 4 × √ 4 + √ 4 =90

( 4 + 4 ) × 4 - [ √ √ 4 ] =31 4 4 4 4 =61 4 ! × 4-4-[√√4] =91 4 × √ 4 × √ 4 × √ 4 =32 4 × 4 × 4 - √ 4 =62 4 4 × √ 4 + 4 =92

( 4 + 4 ) × 4 + [ √ √ 4 ] =33 ( 4 ^ 4 ― 4 ) ÷ 4 =63 4 ! × 4-4+[√√4] =93 ( 4 + 4 ) × 4 + √ 4 =34 4 × 4 × √ 4 × √ 4 =64 4 ! × 4 - 4 ÷ √ 4 =94

(4+√4)^√4-[√√4] =35 ( 4 ^ 4 + 4 ) ÷ 4 =65 4 ! × 4 - 4 ÷ 4 =95

( 4 + 4 ) × 4 + 4 =36 4 × 4 × 4 + √ 4 =66 (4 + √ 4 )× 4 × 4 =96

(4+√4)^√4+[√√4] =37 4 4 + 4!-[√√4] =67 4 ! × 4 + 4 ÷ 4 =97

4 4 - 4 - √ 4 =38 4 × 4 × 4 + 4 =68 4 ! × 4 + 4 - √ 4 =98

4 4 - 4 - [ √ √ 4 ] =39 4 4 + 4!+[√√4] =69 4 ! × 4+4-[√√4] =99 ( 4 + 4 + √ 4 ) × 4 =40 4 ! + 4 ! + 4 ! - √ 4 =70 4 ! × 4 + √ 4 + √ 4 =100

◆考 察 ○第1回目の交流学習ということで,授業への期待といつもと違う雰囲気への戸惑いとの両面が見られた。

しかし,2時間の学習を終えた後の生徒は,一様に数学の学習とインターネットの活用に興味を示した。

会ったことのない他校の生徒にライバル意識や親しみの気持ちを感じる生徒も多かった。 ○第1時の学習課題は適当だったが,第2時は難しすぎた。班で考えてもなかなかはかどらなかった。そ

の中で,未習の記号を紹介したことをきっかけに生徒が[√√4]=1を発見し,学習に活気が戻った。

また,授業後も解決できなかった数に自主的に取り組み,成果を報告に来る生徒もいた。

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★ワークシートで自己

評価をさせる。

実践2(インターネットを活用する交流学習2:第3学年 選択「タングラム」)

◆本授業の目標 ○パズル的な問題に取り組むことにより,数学へ

の興味・関心を高める。 ○インターネットを活用して他校の生徒と交流

学習をすることにより,数学の学習を深める。 ○直観力,想像力,図形感覚などを高める。

◆学習計画「タングラム 」 第1時 タングラムの問題を解こう (1時間)

第2時 タングラムの自作問題を作ろう(1時間)

◆授業の流れ(2時間扱い) 第1時 <準備物>ワークシート,はさみ,のり,

切りはり用のタングラムシート(濃い色用紙)

①学習の進め方と学習課題についての説明を聞こう。

②できたものから,ワークシートにはっていこう。

③友達と答え合わせをしてみよう。

④今日の学習をまとめよう。 <問題>

正方形を下のように7つに分けたパズルを タングラムと言います。旅行先のホテルで, 「タングラム」や家の形をした「The T」と パイプ お酒を いうパズルを見たことがありませんか。 8 飲む人

タングラムの7つの部品を組み合わせてプ リントのような絵を作ってみましょう。たく さんやっているうちに,辺の長さ,角の大き

さなどの図形感覚を養うことができます。 アヒル

レシーブ 猫

長方形 外国の墓 直角二等

辺三角形

タングラムとは,古代中国から伝わ

る知恵のゲームです。7つの部品で決

められた図形を作ります。辺,角など

図形感覚を豊かにします。

★第2時へ

この授業では,生徒の感想のみを

まとめ,県教育センターに送る。

<学習の進め方> ○岡山県内3校の3年生が,同じ問題に取り組

みます。

○結果は岡山県教育センターのWebページ

に公開されます。

ポニー

婦人

キツネ

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11

★ワークシートで自己評価をさせる。

第2時 <準備物>ワークシート,はさみ,のり,切りはり用のタングラムシート(濃い色用紙)

①今日の学習課題の説明を聞こう。

②各自で作り,ワークシートにはって,名前も付けよう。

③問題を出し合い,互いに解き合おう。

④今日の学習をまとめよう。

⑤県教育センターに成果を送ろう。 次時の最初 10 分間

⑥インターネットで,成果を見てみよう。

◆生徒の主な感想

<学習課題> タングラムでオリジナルの問題を作り,学校の友達や

他の学校の友達に出題しよう。

<第1時のまとめ> ・三角形や四角形でいろいろな形ができるのでびっくりした。でも,楽しかった。 ・バラバラのものを形にしたときの達成感は最高によかったが,あまりにも悩みすぎ,頭が痛くな

った。こういうのは苦手だ。 ・頭が軟らかくなった気がする。「こりゃ何だ」というのも多かったが,とても楽しかった。

・楽しく活動できた。上級は一つしかできなかったけど,家でやりたい。 ・自分で新しいものを作るのが楽しみ。

★全員の問題をコピーする。 ★グループを作り,問題を交換し合う。

★数問をピックアップし,拡大コピーしたも

のを黒板に提示する。

★できるだけ透き間ができな

いようにはらせる。

生徒の作品を,電子メールに添付して送る。困

難な場合は,郵便やファクシミリで送る。

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◆課題の答え

<第2時のまとめ> ・人が作ったものを組み合わせて作るのも難しいけれど,自分で考える方が難しくて,一つもよいも

のが作れなかった。 ・自分で作るといろいろなものができるが,「物」として作るのはとても難しい。でも,自分では満足。

・いざ作ってみようとするととても難しく,作った物を無理やりにこじつけようとしたけど,恥ずか

しくてできなかった。 ・自分で作るのは楽しいけれど,簡単なものにしかならない。

<インターネットを見て> ・みんなの作品を集めるとたくさん出てきた。それが世界中に見られていると思うととてもうれしい。 ・他の学校から,自分たちとは全く違った問題が出てきていた。何だか今の時代,自分たちだけで勉強し

ていてはだめなんだという気持ちになってきた。もっと他の問題をやりたい。 ・他の中学校の考えを見ることで,いろいろと勉強になった。また機会があれば考えてみたい。 ・今回の取り組みはとても楽しかったです。でも,少し簡単でした。もっともっともっともっと難しい問

題を待ってます。

8 パイプ ポニー お酒を

飲む人

レシーブ 婦人 アヒル 猫

長方形 外国の墓 キツネ 直角二等辺三角形

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◆生徒が作った問 題

やじるし カタツムリ かれい 冠

キリン ツリー 木 体操選手 チューリップ

◆考 察

○交流学習も2回目であり,生徒は落ち着いて学習に取り組んだ。「校内だけでなく,他校の生徒とも競

い合って頑張るぞ。」という気持ちが前回よりも強く感じられた。その意味で,第1時を感想だけの交流

にしたのは惜しかった。生徒が手作りした解答を送付してもらいWebページに公開すれば,更に学習

意欲を高められた。また,ある学校では第1時の学習課題を基にオリジナル問題を作った生徒がいたが,

それを他の学校にも紹介し,問題例や問題作りの方法例として第2時の導入で使うことも考えられた。 ○思春期の特徴からか,生徒は自信を持てる問題ができないとみんなに紹介しようとしない傾向が見られ

る。授業後の感想を読んでも自信のなさがうかがえる生徒が多い。生徒の問題を教師が認めてやり,自

信を持たせていく指導も大切だが,問題としてのレベルや面白さが不十分な問題でも班や学級に提案し,

みんなですばらしい問題に高めていく学習も必要であろう。他校の生徒を意識せざるを得ない交流学習

は,このような学習を進めるのにも適した学習と言える。

○2回の交流学習を実施して,非常に効果のある学習と感じた。他校の生徒を意識して意欲を高める生徒

は多く,未解決の課題に授業後も取り組む生徒もいた。また,必ずと言ってよいほど他校からは自校で

は出なかった考えが出され,特に,数学が得意な生徒は大きな刺激を受けていた。今後は,県教育セン

ターに送付する資料づくりを生徒が行い,生徒がより主体性を発揮できるようにしたり,電子メールを

使って生徒同士が直接交流したりするなど,交流の充実を図っていきたい。

◆他の教材 「タングラム」と同様のパズルに「The T」がある。「タングラム」より問題の種類が少なく,問題作り

の幅は狭いが,単純なだけに生徒には取り組みやすいかもしれない。基本図形と,問題例を紹介する。

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- - 14

★ワークシートで自己評

価をさせる。

★作品を幾つか紹介し,面白

いアイデアや工夫につい

て解説する。

★二次関数を使う生徒がい

ると思われる。来年への橋

渡しとして触れておく。

★班内で,元絵と印刷したものを回覧して,かきたい絵がかけている

かどうかを確認させるとともに,作品へのコメントを書かせる。

2 インターネットからダウンロードできるフリーソフトの活用

実践3(グラフツール「 Grapes」の活用:第2学年 一次関数「グラフで絵をかこう」)

◆本授業の目標 ○一次関数などのグラフで絵をかくことを通し

て,数学の学習への興味・関心を高める。 ○一次関数などのグラフで絵をかき,それぞれの

グラフの式と変域を求めることができる。 ○一次関数のグラフの傾きと切片についての理

解を深めることができる。

◆学習計画「一次関数 」(太字が本実践) 第一次 一次関数 (2時間)

第二次 一次関数のグラフ (5時間) 第三次 一次関数の式を求めること (3時間) 第四次 一次関数の利用 (3時間) 第五次 二元一次方程式とグラフ (3時間)

第六次 単元のまとめ (2時間)

第七次 グラフで絵をかこう (1時間) ◆授業の流れ(1時間扱い) 前時の最後 10 分間 <準備物>グラフ用紙

○次時の学習課題を聞こう。

本 時

①グラフツール「Grapes」の使い方を練習しよう。

②各自で絵をかいてみよう。

③ファイルを保存しよう。

④印刷をしてみよう。

⑤班内でかきたい絵がかけているかどうか確かめてみよう。

⑥本時のまとめをしよう。

⑦みんなの作品について,先生の紹介と解説を聞こう。

<学習課題>

一次関数などの関数のグラフを使って,コンピュータで

絵をかきます。次時までに下絵をグラフ用紙にかき,それ

ぞれの線の式と変域も分かる範囲でかいてきましょう。

★座標平面の目盛りなどの変え方

★式の入力の仕方と訂正の仕方 ★変域の入れ方 ★ファイルの保存の仕方 ★印刷の仕方 など

★あまりに複雑な絵を

かこうとしている生

徒には,できるだけ単

純化するよう助言す

る。

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◆生徒の作品例

◆生徒の感想

◆考 察 ○グラフで絵をかき,それぞれのグラフの式と変域を求めるという学習であったが,生徒は意欲的に楽し

く学習した。学習を通して,一次関数のグラフの傾きと切片の意味の理解や,関数そのものの意味の理

解は深まったと感じた。しかし,グラフの式を求める能力の差は予想以上に大きく,数本しか式を入力

できなかった生徒もいる。コンピュータ教室での学習ということもあり,TTで行ったが,それでも個

別の支援は大変であった。したがって,この授業を単元末に行うためには,第1学年の内容の復習や

「Grapes」を使う練習を指導計画に位置付けておく必要があろう。他の授業と同様,ソフトウェアの使

い方には多くの生徒がすぐに慣れた。 ○工夫されているが,複雑な絵を用意してきている生徒がいた。しかし,生徒の様子を見ていると,美し

い絵をかけたことよりも,式を間違いなく入力でき,自分が思っていたとおりの絵がかけたことに喜び

を感じる生徒の方が多かった。1時間授業であることも考えると,☆のようなマークや動物の顔を単純

化したものなどに限定した方がよかった。

・りんごを作った。楽しかった。関数で絵をかけるとは不思議な感じ。 ・グラフで絵をかくなんて面白いと思った。しかし,直線だけで絵をかくのは案外難しいと思った。 ・計算を速くできるようにしておけば最後までできたのにと思った。こんなとき,計算力は必要だ。 ・初め変な線が出てきて困った。よく見ると変域のかっこがなかった。楽しくできたのでまたやりたい。

・いろいろな式を入れてみると,いろいろなグラフが出てきた。とても不思議だ。

・曲線を使えると便利だと思った。放物線は左右対称なので使いやすい。

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★改めて,本時に使う機能を紹介し,

実際にやらせてみる。

★各コンピュータに,学習課題の図のファイルをあらかじめ保存しておく。

★アニメのキャラクターや何かのシンボ

ルマーク等,できるだけ具体的な目標を

持って作業するよう助言する。

実践4(作図ツール「 Geometric Constructor 」の活用 :第2学年 図形の調べ方「合同条件と証明の進め方」)

◆本授業の目標

○三角形の合同を利用して図形の性質を証明す

ることにより,三角形の合同の有用性に気付き,

これを図形の性質の証明に積極的に活用しよ

うとする意欲を持つ。 ○三角形の合同を利用して図形の性質を証明す

る方法と基本的な表現方法を理解する。

◆学習計画「図形の調べ方 」(太字が本実践) 第一次 平行線と角 (3時間)

第二次 三角形の角 (3時間) 第三次 三角形の合同 (1時間) 第四次 証明とそのしくみ(3時間) 第五次 合同条件と証明の進め方 (4時間)本時は第 1・2時 第六次 単元のまとめ (1時間)

◆授業の流れ(2時間扱い) 前 時

①作図ツール「Geometric Constructor」の使い方の説明を聞こう。

②自分が好きな絵や図をかいてみよう。

③かいた絵や図を印刷して友達と比べよう。

本 時 <準備物>言えそうなことを書いたカード

①本時の学習課題を聞こう。

②「Geometric Constructor」を起動させ,

学習課題の図を呼び出そう。 ③図の動かし方の説明を聞こう。 長さや角度の調べ方も説明してもらおう。

④図を動かしたり,長さや角度を測ったりしながら,どんなことが 言えるか,できるだけたくさん見付けよう。

<学習課題> 下の図で,m//nとして,m上の点Aとn上

の点Bを結ぶ線分ABの中点をOとする。点

Oを通る直線pが,m,nと交わる点を,そ

れぞれ,P,Qとするとき,下の図でどんな

ことが言えるだろう。

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★理由を聞きながら,カードを整理

していく。 ★「まちがいなく言えそうなもの」

はすべて△APO≡△BQOが

基であることに気付かせる。

★カードを黒板にはっていく。

★ワークシートで自己評価をさせる。

★学級全体で一緒に行う。

★沖合いにいる舟までの距

離を求めたタレスの話 ★最初に見付けられた合同

条件は「1辺とその両端の

角がそれぞれ等しいとき」

だったこと など

⑤見付けたことを発表しよう。

⑥発表したことが言える理由を言ってみよう。

⑦△AOP≡△BOQを証明してみよう。

⑧三角形の合同と証明の関係についての説明や歴史を聞く。

⑨本時のまとめをする。

◆生徒の感想

◆考 察

○他のソフトウェアや機器の使い方に比べて,作図ツールは難しいと感じる生徒が多かった。しかし,第

1時の学習で感覚をつかんだためか,ほとんどの生徒が第2時は簡単な説明で操作でき,また,互いに

使い方を教え合いながら学習課題に取り組んでいた。この授業はコンピュータ教室での授業のためTT

で行った。どうしてもコンピュータの活用に苦手意識を感じる生徒がおり,授業の流れに遅れがちにな

る。理想を言えば,コンピュータを活用する場合は全時間TTが望ましい。

○図を見れば直観的に長さや角の大きさが等しいと分かるのだが,実際に測定機能を使って長さや角の大

きさを測りながら図を動かしていると,より深く納得できるようである。作図ツールは岡山県内でもご

く一部の中学校しか活用していない。せっかくこのようなフリーソフトがあり,教材も提供されている

のだから,積極的に活用を進めたいと改めて感じた。

○問題文に書いてあること ・m//n ・AO=BO ○これまでに学習した定理から言えるもの

・∠APO=∠BQO(平行線の錯角) ・∠PAO=∠QBO(平行線の錯角) ・∠AOP=∠BOQ(対頂角) ○間違いなく言えそうなもの ・PO=QO

・AP=BQ ・△APO=△BQO ・△APO≡△BQO

・証明の仕組みがよく分かった。

・コンピュータを操作する時間が少なかった。もう少しゆっくりやりたかった。

・点Aとか点Pとかを,どのように動かしても平行線は平行のままだし,中点は中点のままだった。そ

うだと言われたらそうなんだけど,やっぱり不思議な気がした。

・自分なりにがんばれた。特に,長さや角の大きさを測定できるところが面白かった。

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★ワークシートで自己評

価をさせる。

★エッシャーの作品を紹介する。

第3学年の修学旅行で訪れる

ハウステンボスのミステリア

ス・エッシャーやチケットのデ

ザインについて話をする。

3 デジタルカメラの活用

実践5(デジタルカメラの活用1:第1学年 平面図形「敷き詰め」)

◆本授業の目標 ○身近にある敷き詰め探しを通して,平面図形の

学習に対する興味・関心を高めるとともに,数

学の学習と地域への関心を高める。 ○合同な図形を用いて平面を敷き詰められるこ

とがあることを知り,身近にある敷き詰めを見

付けることができる。

◆学習計画「平面図形」(太字が本実践) 第一次 敷き詰め (2時間)

第二次 直線と角 (2時間) 第三次 円と弧 (4時間) 第四次 垂線の作図 (2時間) 第五次 垂直二等分線,角の二等分線(3時間) 第六次 単元のまとめ (2時間)

◆授業の流れ(2時間扱い) 前時の最後 10 分間

○「敷き詰め」についての説明を聞こう。 冬季休業

○学校内や地域の敷き詰めをデジタルカメラに撮ってこよう。

第1時

①デジタルカメラのファイルをコンピュータに取り込もう。 写真はスキャナで画像ファイルにしてから,取り込もう。

②発表資料を作ろう。

第2時

③各班三つずつ,印刷物またはコンピュータで発表しよう。

④敷き詰めで絵を描いた人,エッシャーの話を聞こう。

⑤今日のまとめをしよう。

★建物や看板の写真,蜂の巣などを見せる。

★校内の敷き詰めの写真を見せる。

★冬休みの課題として,班ごとに,敷き詰め

の写真を撮ってくることを知らせる。

★写真でもよいことを伝える。

★生徒ではスキャナの

操作が困難な時には,

前もって教師が画像

ファイルにしておく。

★画像をパワーポイントにはり付

けさせ,簡単な説明を付け加えさ

せる。 ★コンピュータによる発表が難し

い場合は,画像を印刷させ,画用

紙等にはったもので発表させる。

★発表を相互評価する。

①見付けた場所 ②敷き詰めの基本図形 ③感想

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◆生徒が集めてきた敷き詰めの例 壁・床・天井の正方形や長方形のタイル,ブロック塀,かわら,格子やひし形の網になったフェンスなど

生徒はいろいろな敷き詰めを集めてきた。その中から幾つかを紹介する。

長方形 正方形 六角形

カギ形 T字形 六角形

直角二等辺三角形 円と八角形に近い形 円と正方形に近い形

◆生徒の感想

◆考 察 ○作業的・体験的な活動を伴う学習がいかに学習意欲を高め,日常生活と数学の結び付きを実感させるか

がよく分かった。班学習にしたこともあり,デジタルカメラの使用,コンピュータへの画像の取り込み,

印刷はスムーズに行えた。ただし,印刷物は大きさに限界があり,また,写真によっては非常に不明瞭

になるため,思ったより見にくいという課題が見付かった。 ○「基本図形が同じ順に並び,面がいくら広がっても敷き詰めていける」という敷き詰めの基本概念を十

分に理解していない生徒が多かった。そのため,発表資料作成時の個別指導とまとめの時間での押さえ

が必要であった。事前の指導を充実させることも考えられるが,本授業でよいと思う。 ○実践7(pp.22~23 参照)黄金比の授業と同じように校内で2時間扱いの授業をした学校があった。授

業時間に実施する方がやりやすいが,生徒が同じようなものしか見付けてこないという課題がある。

・実際に自分たちで探してみることがこんなに楽しいとは思わなかった。

・みんなは僕たちが気付かなかった写真を一杯撮っていた。もっと探せばいいのがあるかもしれない。 ・すぐに見付かると思っていたら思ったよりも少なくて探すのが大変だった。 ・ほとんどのものは敷き詰めでできていることが分かった。意外なものを発見したときは楽しかった。 ・身の回りにこんなにも敷き詰めがあるとは思わなかった。とても面白かった。

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実践6(デジタルカメラの活用2:第3学年 関数y=ax2「身の回りにある放物線」)

◆本授業の目標 ○身の回りには,グラフ,表,式を用いて関数の

考え方で考察できるものがあることを知り,数

学を積極的に活用しようとする意欲を高める。 ○飛んでいるボールの軌跡や噴水の水が放物線

であることに気付き,それを数理的な処理によ

って確かめることができる。

◆学習計画「関数y=ax 2」(太字が本実践) 第一次 関数y=ax2 (2時間) 第二次 関数y=ax2 のグラフ (4時間)

第三次 関数y=ax2 の値の変化 (4時間) 第四次 いろいろな関数 (1時間) 第五次 単元のまとめ (1時間) 第六次 身の回りにある放物線 (1時間)

◆授業の流れ(1時間扱い) 前時の最後 10 分 <準備物>電卓

○噴水やボールが飛んだ軌跡はどんな曲線になっているのだろう。

放課後または休日

○身の回りの放物線をデジタルカメラに撮ってこよう。 本 時

①撮ってきた画像をトレーシングペーパーに印刷しよう。

②グラフ用紙と重ねて,座標を調べよう。

③式がy=ax2のなるかどうか調べよう。

④コンピュータで発表をしよう。

⑤こんなのも放物線!先生の説明を聞こう。

⑥今日のまとめをしよう。

★噴水,ボールのス

トロボ写真など

を見せる。

★トレーシングペーパーは透明なの

で,半分に折れば,放物線の軸,頂

点になるところが簡単に分かる。

★グラフ用紙にあらかじめ座標軸を

書かせておき,それと重ねさせる。

★パラボラアンテナ,懐中電灯の

反射板を見せる。

★瀬戸大橋のつり橋部分が二次

関数であることを紹介する。 ★ワークシートで自己評

価をさせる。

★x=5のときのyの値をよませ,

y=ax2の式を作らせる。他の

点がその式に当てはまるかどう

かを調べさせる。(電卓を利用)

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◆生徒が集めてきた放物線とかいたグラフの例 ◆生徒のワークシート

◆生徒の感想

◆考 察 ○この実践も,学習意欲を高め,日常生活と数学の結び付きを実感させる授業であった。技術・家庭科や

総合的な学習の時間にコンピュータを使う機会が増えたせいか,コンピュータを使ったことに喜びを感

じた生徒も多く,コンピュータの活用はこれからも進めていかなくてはならないと改めて感じた。ちな

みに,瀬戸大橋のような巨大なつり橋では,ケーブルが放物線を描くそうである。

○本実践を,単元の導入として行うか,単元の学習の活用として行うかは検討したい問題である。実践校

では,日常事象の考察には必ず誤差が伴い,それが生徒の学習を困難にすると判断して単元末に行った

が,反省会ではこれだけ意欲を高める授業はぜひ単元の導入でという意見も強かったそうである。筆者

としては,二次関数の理解を基に日常生活との結び付きを学習でき,本単元計画でよかったと考える。

・本当に二次曲線なのかと思いながらやっていたけど,やっていくうちにだんだん興味を持った。 ・身の回りの二次曲線にどんなものがあるか分かった。もっとあると思うので,たくさん調べたい。 ・大変だったけどやりがいのある仕事だった。数学はあまり得意じゃなかったけど,楽しいものだとい

うことが少し分かった。 ・コンピュータを使って勉強したので楽しく学べた。もっと授業に取り入れてやりたいと思った。

・ボールを投げると本当に二次曲線になっていることが分かり,すごいと思った。 ・パラボラアンテナや懐中電灯などは二次曲線の性質をうまく利用して作られており,感心した。 ・身の回りに式で表せるものがたくさんあるんだなあと感じた。

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実践7(デジタルカメラの活用3:第3学年 平方根「黄金比の秘密」)

◆本授業の目標 ○身近なものの形やデザインの美しさの秘密が

数学的に考察できることを知り,数学を積極的

に活用しようとする意欲を高める。 ○バランスがよいと感じる長方形の縦,横の辺の

比や建物の高さの比などは,黄金比に近いこと

を確かめることができる。

◆学習計画「平方根」(太字が本実践) 第一次 平方根 (2時間) 第二次 平方根の近似値 (1時間)

第三次 有理数と無理数 (1時間) 第四次 根号を含んだ式の計算 (7時間) 第五次 単元のまとめ (2時間) 第六次 黄金比の秘密 (2時間)

◆授業の流れ(2時間扱い) 第1時 <準備物>巻き尺や1メートルさし

①どの長方形のバランスが美しいと感じますか。

②選んだ長方形の縦,横の長さの比を求めてみよう。

③美しさには秘密がある。黄金比の話を聞こう。

④校内の黄金比をデジタルカメラに撮ってこよう。 ⑤撮ってきた黄金比を印刷して確かめよう。

第2時

⑥発表資料を作り,発表会をしよう。

⑦黄金比の不思議!先生の説明を聞こう。

⑧今日のまとめをしよう。

★ワークシートで自己評価をさせる。

★オウムガイの写真を見せ,自然界に

も存在することを知らせる。

★A判,B判の紙の縦横の比(白銀比)

についても触れる。

★新書本,たばこ,名刺,テレフォ

ンカードなどに使われているこ

とを知らせる。 ★ミロのビーナス,パルテノン神殿

の写真を見せ,昔から美しい長さ

の比として用いられてきたこと

を知らせる。

★テレフォンカード,名刺,教科書,

ノート,CDケース,カセットテ

ープ,封筒などを見せる。

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◆生徒のワークシートの記述例

◆生徒が集めてきた黄金比の例

コンセントボックス ロッカー 時計台

玄関のドア ロッカー 柱

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◆生徒の感想

◆考 察 ○黄金比については知らない生徒がほとんどで,教師の説明を興味深そうに聞いていた。建築物や美術品

が感性だけで作られているのではなく,裏付けとなる科学的な知識があることには驚きを感じたようだ。

2辺の比の値が約 1.6 になる長方形を探すのは案外難しかった。いろいろな長方形を撮ってきたが,1.2~1.5 のものが多かったようである。やがて,ある班が長方形ではなく,バランスがよいと感じるもの

の長さを測ってみたところ,ほぼ黄金比になっていることを見付けた。そのことを聞いた他の班もすぐ

にバランスのよいと感じるものの長さを調べ始め,最後には,こちらの方が主流になってきた。この実

践も,作業的・体験的な活動を伴う学習がいかに学習意欲を高め,日常生活と数学の結び付きを実感さ

せるかがよく分かる授業であった。 ○本実践の終了後,チボリ公園が話題になった。2学期の校外学習でチボリ公園に行くこともあり,チボ

リ公園で黄金比を探してみたいという要望が生徒から出された。ただし,デジタルカメラは学校に8台

しかないので,授業者の担任している学級がデジタルカメラで取材し,他のクラスは,調べてみたいと

思った場合はスチルカメラで写真を撮り,後にスキャナで取り込むことにした。1学級のみの実践にな

るが,「チボリ公園で黄金比探し」の授業の概要等を説明する。

◆授業の流れ(学級活動1時間,数学1時間) 学級活動 <準備物>チボリ公園のパンフレット,チボリ公園研修計画表

①チボリ公園の班別散策のコースを決めよう。

②散策コースの中で,黄金比を見付けられそうな箇所をチェックしておこう。

③計画書を提出しよう。

校外研修 <準備物>各班に1台のデジタルカメラ

○チボリ公園の黄金比をデジタルカメラに撮ってこよう。

・いろいろなところに8:5があるのを初めて知った。いざ探そうと思ったら難しかった。 ・黄金比は自然界にもあるのが不思議だった。どうしてだろう。 ・身の回りにはたくさん黄金比のものがあることが分かった。今日調べたのはほんのわずかで,もっとたく

さんある。もっと調べてみたいと思った。

・放送室のガラスは 1.3 だった。あまり身の回りには 1.6 がなかった。一番多かったのは 1.3 や 1.4 だと思

う。そうそう見付かるものではないんだと思った。

★チボリ公園研修計画書に,黄金比を見付けられそう

な箇所に印を付けるよう指示する。

★黄金比探しも考えながら,散策コー

スを決定するよう指示する。

★無理のない範囲で,撮って

くるよう伝える。

次時へ

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第1時

①チボリ公園の黄金比発表会をしよう。

②発表資料を作ろう。

アンデルセン像 ③発表しよう。

④今日のまとめをしよう。

◆生徒が見付けてきた黄金比の例 人魚姫像

チボリタワー アンデルセンホール クッケンの噴水 ◆資 料

★ワークシートで自己

評価をさせる。

★2回目の発表会であり,でき

るだけ生徒の主体性を大切

にして,安易に助言しない。

白 銀 比 長方形と,それを半分に折ってでき

る長方形が相似のとき,長方形の2

辺の比を白銀比と言う。代表的なも

のはA判,B判の紙である。

黄 金 比 長方形がそれから短辺を1辺とす

る正方形を切り取ってできる長方

形と相似のとき,長方形の2辺の比

を黄金比と言う。代表は各種カード

で,右の画像は黄金比の例である。

★相互評価させる。

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4 プレゼンテーションソフトの活用

実践8(プレゼンテーションソフトの活用:第1学年 方程式「単元のまとめ」)

◆本授業の目標 ○方程式の学習状況を自己評価し,学習について

自信を持ったり,不十分な点を補ったりしよう

とする意欲を持つことができる。 ○方程式の基礎的・基本的な学習内容を確認する。

◆学習計画「方程式 」(太字が本実践) 第一次 方程式とその解(2時間)

第二次 方程式の解き方(4時間) 第三次 方程式の利用 (4時間) 第四次 単元のまとめ (2時間)本時は第1時

◆授業の流れ(1時間扱い) ※ 単元のまとめは大切であるが,生徒には新鮮味が乏しく意欲が高まりにくい学習になりがちである。

そこで,プレゼンテーションソフトを活用し,変化を付けながらテンポよく明快にまとめを行いたいと

考えた。pp.27~28 にプレゼンテーションのスライドを掲載したので,併せて御覧いただきたい。 本 時 <準備物>プレゼンテーションの配付資料(1ページ6スライド)

①目次【スライド1】

②数量の関係を表す式と方程式【スライド2,3】 ③等式の性質【スライド4,5】 ④基本的な方程式の解き方【スライド6,7,8】 ⑤方程式の利用【スライド9,10,11】 ⑥単元の学習全体を振り返ろう。【スライド 12】 ◆考 察 ○電子紙芝居のイメージで活用した。文字や画像の登場に動きや音を付けたこと,確認問題は原則として

教科書の例題とし基礎・基本に絞ったこと,生徒とのやり取りを大切にして一方的な解説にならないよ

うにしたことなどの工夫で,生徒は意欲的に学習に取り組んだ。 ○スライドを作ることは教師の教材研究や他の教師との情報交換につながることが分かった。一度作って

おけば,微調整で複数学級を指導できることもメリットと言える。可能であれば,自主学習できるよう

に廊下等のコンピュータにファイルを入れておくことも考えられる。

★生徒にはスライドを印刷した資料を配布するが,できるだけ資

料を見ずに学習するよう指示する。ただし,必要があれば随時

書き込みをしたり下線を引いたりしてもよいことを伝える。

★等式の性質を使って

解を求める簡単な例

題を出題し,口答で答

えさせる。

★練習問題をノートにさせる。

★机間指導で個別に支援する。

★学級全体で解決するが,各自のノート

にも書くよう指示する。

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方程式の復習をしよう!

1 方程式

2 1次方程式の解き方

3 1次方程式の応用

○ 数量の関係を表す式○ 等式の性質○ 等式の性質を使った方程式の解き方

○ 移項○ 分母を払う

○ 例1:折り紙の問題○ 例2:くだものの問題○ 例3:速さ・時間・距離の問題

1 数量の関係を表す式

○ 今までの式は,

計算の結果や,自分の考え方を表す式

○ 方程式の単元で学んだ式は,

等号を使って数量の関係を表す式

3x+ 1= 2y左辺 右辺

等式

両辺両辺

方程式とは

等式がなりたつxの値はいくらかな?

式のなかの文字にある値を代入すると成り立つ等式

3x+ 1= 10

方程式

x= 3解解 く

3 等式の性質○ 方程式はどうやったら解けるのかな?

①等式の性質を使う。

3x= 12

X=1はダメ,x=2もダメ,X=3もダメ,

x=4は当てはまる。見つかった!

①文字に値を代入していって,解を見つける。

3Xを3で割ってx。

右辺の12も3で割ればいいぞ。4だ。

X=4だ。解けたぞ!

等式の性質

A = Bならば,

    A+ C= B+ C

    A- C= B- C

    A× C= B× C

 A÷ C= B÷ C

ついでにもう一つ

       B= A

5さあ,いろいろな方程式を解いてみよう!

4x = 18ー 2x

移項

 x = 3解

4x + 2x = 18ー2x + 2x

4x + 2x = 186x = 18

Page 31: 情報機器等を効果的に活用する 中学校数学の学習...解を深めていく学習,生徒が実際にデータを集め処 理する学習など,作業的・体験的な活動を取り入れ

さあ,いろいろな方程式を解いてみよう!

9x ー 5= 2x + 23移項

 x = 4解

7x = 28

9x ー 2x = 23+ 5

7さあ,いろいろな方程式を解いてみよう!

1 1  x ー4=   x3       5

分母をはらう

 1     1(   xー4)×15 = x×15     3          5

5x - 60= 3x

5x - 3x = 602x = 60

x = 30

移項

次は,1次方程式の応用!

[例 1]

折り紙を何人かの子どもに分けるのに,1人に5枚ずつ分けると9枚足りない。また,1人に4枚ずつ分けると15枚余る。子どもの人数と折り紙の枚数を求めなさい。

①何をxで表すか決めよう。 ②方程式をつくろう。

③方程式を解こう。 ④確かめをして,答えを書こう。

9 果物の問題は超基本問題!

[例 2]

1個90円のオレンジと1個140円のりんごを合わせて15個買い,代金の合計を1800円にしたい。オレンジとりんごをそれぞれ何個買えばよいですか。

①何をxで表すか決めよう。 ②方程式をつくろう。

③方程式を解こう。 ④確かめをして,答えを書こう。

10

時間・距離・速さの問題に強くなれ!

[例 3]

弟は学校へ行くために8時に家を出た。兄は弟が出てから4分後に家を出て弟を追いかけた。弟は毎分50m,兄は毎分70mの速さで歩くとすると,兄は家を出てから何分後に弟に追いつきますか。

①何をxで表すか決めよう。 ②方程式をつくろう。

③方程式を解こう。 ④確かめをして,答えを書こう。

11どのくらい理解できていましたか。理解度に合わせて,□の中に,A(完ぺき),B(まあまあ),C(復習が必要)の記号を入れましょう。

全体全体

22 33 44

55 7766

101099 1111

88

12

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Ⅴ おわりに

ここでは,全体を通しての成果と課題や「Ⅳ 実

践事例」で書き切れなかったことをまとめる。

(1) 研究の成果

① 生徒主体の学習を多様に実施できたこと

交流学習は生徒に具体的な学習目標と明確な課

題意識を持たせた。これにより,生徒は学習意欲

を高め,主体的に学習に取り組んだ。

デジタルカメラという取材の道具を手にした生

徒たちは,日常生活に潜む数学探しという課題へ

の興味もあって,班で協力して主体的に取材した。

グラフツールや作図ツールを活用する授業では,

特に,数学の苦手な生徒の意欲の向上が見られた。

これらのツールはグラフや図をかく力の個人差を

埋め,生徒の主体的な学習を引き出したと言える。

このように,情報機器等という道具を教室に持

ち込むことにより,主体的に学習に取り組む雰囲

気が無理なく醸成されたことは大きな成果である。

② 学習に広がりや深まりができたこと

他校と交流する前に,多くの学校が校内での交

流を充実させた。他校との交流が校内の交流を充

実させ,二つの学習が相まって,生徒の学習を広

げ深めることができた。

デジタルカメラを活用する学習は,生徒たちの

目を普段から日常生活の中の数学に向けさせるこ

とにつながった。敷き詰めや噴水の話が学習後の

生徒の話題に上ったり,黄金比の学習がチボリ公

園での黄金比探しに発展していったりした。

グラフツールや作図ツールを活用して操作活動

を授業に取り入れたことは,ねらいどおり,生徒

の思考や理解を深めることにつながった。

このように,情報機器等を活用することにより,

学習に広がりや深まりが生まれてきたことも大き

な成果である。

(2) 今後の課題

① 交流学習の推進

交流学習への参加をWebページで呼び掛けた

が,結局,研究協力校3校のみの参加となった。

実施していることは知っていても,いざ参加する

となると県教育センターへの報告の煩わしさや生

徒が学習課題に興味を持つかという不安感を感じ,

なかなか参加しにくかったとのことであった。

今回の実践で,交流学習の効果については手ご

たえを感じた。今後は,電子メールや電話なども

活用しながら交流学習への参加校を増やし,県内

の交流が進んでいくようにしていきたい。

② デジタルカメラの問題点の解決

デジタルカメラ活用の意義は大きいが,バッテ

リーの消耗の問題,保存媒体の問題の解決は難し

く,本研究では具体的な手だてを何も示せなかっ

た。新規導入校はこれらの点について十分に検討

されると思うが,既に導入している学校が行うべ

き手だてについて研究を進める必要がある。

③ フリーソフトを活用した実践例の開発

フリーソフトを活用した授業は,教師がソフト

ウェアに習熟する必要があるため負担感が大きい。

教師の負担が軽く,生徒の個人差が出にくい授業

を提案しようとしたが,全くなくすことはできな

い。グラフツールや作図ツールのよさを伝えて活

用の意欲を持てるようにするとともに,実践例の

開発と作図ツールの図ファイルをダウンロードで

きるようにすることを進めていく必要がある。

最後になりましたが,お忙しい中,本研究に御協

力くださった笠岡東中学校の吉武明博先生,桜が丘

中学校の羽原功先生,児島中学校の菅崎真次先生,

高梁中学校の菊楽達夫先生を始めとする各中学校数

学科の先生方や授業に協力した生徒の皆さんに心か

ら御礼申し上げます。

○引用・参考文献及びWebページ

1) 飯島康之他編著:コンピュータで数学授業を変えよう,明治図書,p.1,1995

・ 原克彦他共著:はじめよう!総合的な学習小学校編,高陵社書店,1999

・ 友田勝久:VISUAL数学を目指して(http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~tomodak/)

・ 飯島康之:飯島研究室(http://www.auemath.aichi-edu.ac.jp/teacher/iijima/iijima.htm)

・ 川上公一他:岡山大学教育学部附属中学校数学科 Math Cut Studium

(http://www.fuzoku.okayama-u.ac.jp/ml/kyouka/math/math.html)

・ パズル&数学館(http://hp.vector.co.jp/authors/VA010128/math/)

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平成 11・12 年度岡山県教育センター所員研究

中学校数学協力委員会

協力委員

吉武 明博 笠岡市立笠岡東中学校教諭(平成11年度 倉敷市立玉島北中学校教諭)

羽原 功 山陽町立桜が丘中学校教諭

菅崎 真次 倉敷市立児島中学校教諭(平成 12 年度)

菊楽 達夫 高梁市立高梁中学校教諭

なお,岡山県教育センターでは,次の者が本研究に当たった。

金光 一雄 教育経営部指導主事

平成 13 年2月発行

情報機器等を効果的に活用する中学校数学の学習

編集兼発行所 岡山県教育センター

〒703-8278 岡山市古京町二丁目2番 14 号

TEL (086)272-1205

FAX (086)272-1207

URL http://www.edu-c.pref.okayama.jp/