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1 大崎市個人情報保護条例の解釈と運用 第1章 総則 第1条(目的)関係 (目的) 第1条 この条例は,個人情報を保護することが個人の尊厳の維持を図るために必要 不可欠であることに鑑み,個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めるとと もに,市が保有する個人情報の開示請求等の権利を保障することにより公正で民主 的な市政の実現を図り,もって市民の基本的人権を擁護することを目的とする。 (趣旨) 本条は,この条例の目的を明らかにするとともに,本市の個人情報保護制度につ いての基本的な考え方を示したものであり,条例の解釈及び運用の指針となるもの である。 (解釈) 1 市民のプライバシー意識は着実に高まりを見せており,プライバシーの権利の内 容についても,従来の生活プライバシー的な「他人に知られたくない権利」「ひと りにしておいてもらう権利」にとどまらない,より積極的で包括的な理解が求めら れるようになってきた。これが「自己に関する情報の流れをコントロ-ルできる権 利」(自己情報コントロ-ル権)としての考え方である。そして,こうした新たな プライバシー権に関するとらえ方こそが,現代社会において人々が自立的な生活を 守り,人格の自由な形成・発展と個人の尊厳を維持していく上でふさわしいもので あることが改めて認識されるようになってきた。 本条は,以上のような基本的な認識に立って個人情報の必要性を自覚し,条例の 制定目的を規定したものである。すなわち前段では,まず個人情報を保護すること が個人の尊厳を維持するために欠かせないものであることを確認し,次いで中段で は,条例で個人情報の適正な取扱いに関する必要な事項を定めるとともに,自己情 報コントロ-ル権としての開示請求権等を保障することにより,公正で民主的な市 政の実現を図ることを明らかにしている。そして後段の結びにおいては,このよう な条例上の施策を通じて,権利主体である市民の基本的人権を擁護していくことが 本条例の究極の目的であることを明らかにしている。 2 「個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項」とは,まず個人情報の収集,保管,

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大崎市個人情報保護条例の解釈と運用

第1章 総則

第1条(目的)関係

(目的)

第1条 この条例は,個人情報を保護することが個人の尊厳の維持を図るために必要

不可欠であることに鑑み,個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項を定めるとと

もに,市が保有する個人情報の開示請求等の権利を保障することにより公正で民主

的な市政の実現を図り,もって市民の基本的人権を擁護することを目的とする。

(趣旨)

本条は,この条例の目的を明らかにするとともに,本市の個人情報保護制度につ

いての基本的な考え方を示したものであり,条例の解釈及び運用の指針となるもの

である。

(解釈)

1 市民のプライバシー意識は着実に高まりを見せており,プライバシーの権利の内

容についても,従来の生活プライバシー的な「他人に知られたくない権利」「ひと

りにしておいてもらう権利」にとどまらない,より積極的で包括的な理解が求めら

れるようになってきた。これが「自己に関する情報の流れをコントロ-ルできる権

利」(自己情報コントロ-ル権)としての考え方である。そして,こうした新たな

プライバシー権に関するとらえ方こそが,現代社会において人々が自立的な生活を

守り,人格の自由な形成・発展と個人の尊厳を維持していく上でふさわしいもので

あることが改めて認識されるようになってきた。

本条は,以上のような基本的な認識に立って個人情報の必要性を自覚し,条例の

制定目的を規定したものである。すなわち前段では,まず個人情報を保護すること

が個人の尊厳を維持するために欠かせないものであることを確認し,次いで中段で

は,条例で個人情報の適正な取扱いに関する必要な事項を定めるとともに,自己情

報コントロ-ル権としての開示請求権等を保障することにより,公正で民主的な市

政の実現を図ることを明らかにしている。そして後段の結びにおいては,このよう

な条例上の施策を通じて,権利主体である市民の基本的人権を擁護していくことが

本条例の究極の目的であることを明らかにしている。

2 「個人情報の適正な取扱いに関し必要な事項」とは,まず個人情報の収集,保管,

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利用をする実施機関,出資団体,事業者,権利主体である市民のそれぞれの基本的

責務を明らかにし,この責務に基づいて市が実施することを義務付けられた,(1)

個人情報の収集,保管,利用についてのさまざまな制限や手続,(2)個人情報を

取り扱う業務及び個人情報ファイルの登録簿の公開と個人情報保護制度の実施状

況の公表,(3)実施機関に対する助言と監視の機能をもつ個人情報保護審査会の

設置,(4)事業者に対する市長の指導と勧告等,この条例で定める個人情報保護

のために必要な一連の事項をいう。

3 「個人情報の開示請求等の権利」とは,プライバシー権の積極的な側面として具

体的に保障された,自己情報の開示請求権,訂正請求権及び利用停止請求権の3つ

の権利をいう。

なお,これらの請求が拒否されたときは,行政不服審査法(平成26年法律第6

8号)による審査請求をすることができる。

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第2条(定義)関係

(定義)

第2条 この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるとこ

ろによる。

(1) 実施機関 市長,公営企業管理者,教育委員会,選挙管理委員会,監査委

員,農業委員会,固定資産評価審査委員会及び議会並びに大崎市土地開発公社(以

下「公社」という。)をいう。

(2) 個人情報 個人に関する情報であって,次のいずれかに該当するものをい

う。

ア 当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等(文書,図画若しくは電

磁的記録(電磁的方式(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識

することができない方式をいう。)で作られている記録をいう。以下同じ。)に

記載され,若しくは記録され,又は音声,動作その他の方法を用いて表された一

切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識

別することができるもの(他の情報と照合することができ,それにより特定の個

人を識別することができることとなるものを含む。)

イ 個人識別符号が含まれるもの

(3) 個人識別符号 次のいずれかに該当する文字,番号,記号その他の符号の

うち,実施機関が定めるものをいう。

ア 特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した

文字,番号,記号その他の符号であって,当該特定の個人を識別することができ

るもの

イ 個人に提供される役務の利用若しくは個人に販売される商品の購入に関し

割り当てられ,又は個人に発行されるカードその他の書類に記載され,若しくは

電磁的方式(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することが

できない方式をいう。)により記録された文字,番号,記号その他の符号であっ

て,その利用者若しくは購入者又は発行を受ける者ごとに異なるものとなるよう

に割り当てられ,又は記載され,若しくは記録されることにより,特定の利用者

若しくは購入者又は発行を受ける者を識別することができるもの

(4) 要配慮個人情報 本人の人種,信条,社会的身分,病歴,犯罪の経歴,犯

罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別,偏見その他の不利益が

生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして実施機関が定める記述

等が含まれる個人情報をいう。

(5) 保有個人情報 実施機関の職員(公社にあっては役員を含む。以下同じ。)

が職務上作成し,又は取得した個人情報であって,当該実施機関の職員が組織的

に利用するものとして,当該実施機関が保有しているものをいう。ただし,公文

書(大崎市情報公開条例(平成19年大崎市条例第3号)第2条第2号に規定す

る公文書をいう。以下同じ。)に記録されているものに限る。

(6) 特定個人情報 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用

等に関する法律(平成25年法律第27号。以下「番号法」という。)第2条第

5項に規定する個人番号(個人番号に対応し,当該個人番号に代わって用いられ

る番号,記号その他の符号であって,住民票コード(住民基本台帳法(昭和42

年法律第81号)第7条第13号に規定する住民票コードをいう。)以外のもの

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を含む。)をその内容に含む個人情報をいう。

(7) 保有特定個人情報 保有個人情報のうち特定個人情報をいう。

(8) 情報提供等記録 保有特定個人情報のうち,番号法第23条第1項及び第

2項に規定する記録に記録されたものをいう。

(9) 個人情報ファイル 保有個人情報を含む情報の集合物であって,次に掲げ

るものをいう。

ア 一定の事務の目的を達成するために特定の保有個人情報を電子計算機を用い

て検索することができるように体系的に構成したもの

イ アに掲げるもののほか,一定の事務の目的を達成するために氏名,生年月日

その他の記述等又は個人識別符号により特定の保有個人情報を容易に検索する

ことができるように体系的に構成したもの

(10) 個人情報の保管等 個人情報の収集,保管及び利用をいう。

(11) 事業者 事業を営む法人その他の団体(国,独立行政法人等(独立行政

法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第59号)第2

条第1項に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。),地方公共団体,公社

及び地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2

条第1項に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)を除く。以下「法人

等」という。)又は事業を営む個人をいう。

(12) 本人 個人情報によって識別される特定の個人をいう。

(趣旨)

本条は,この条例における基本的な用語の意義について定義したものである。

(解釈)

1 第1号関係「実施機関」

(1) 「実施機関」とは,地方自治法(昭和22年法律第67号)及び地方公営

企業法(昭和27年法律第292号)並びに公有地の拡大の推進に関する法律(昭

和47年法律第66号)により独立して事務を管理し,執行する権限を有する機

関並びに議会をいい,各実施機関の行政組織関係規則等,定款等により定められ

ている本庁各課,総合支所及び附属機関等の全体を含む。

(2) 「公営企業管理者」とは病院事業管理者をいい,水道事業に関しては,管

理者を設置せず市長自ら管理していることから,市長としての実施機関に含まれ

るものであること。

(3) 社会福祉事務所長,建築主事は,一定の事務について独自の権限を有する

が,個人情報保護については,市長を実施機関とするものである。

(4) 「実施機関」は,この条例に基づく事務を自らの判断と責任において誠実

に管理し,及び執行する義務を負うものである。

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2 第2号関係「個人情報」

(1)「個人に関する情報」とは,氏名,住所,性別,生年月日,顔画像等個人を

識別する情報に限られず,個人の身体,財産,職種,肩書等の属性に関して,事

実,判断,評価を表す全ての情報であり,評価情報,刊行物等によって公にされ

ている情報や,映像,音声による情報も含まれ,暗号化等によって秘匿化されて

いるかどうかを問わない。

また,次の情報も含まれるものである。

ア 事業を営む個人の当該事業に関する情報

事業を営む主体が個人であり,個人事業主の当該事業に関する情報と個人に

関する情報とを判然と区分することが困難であることなどから,保護対象にな

るものである。

イ 法人等の役員に関する情報

法人等の役員は,法人に代わって当該法人等の行為を行うことから,法人等

の役員に関する情報は,法人等の情報の一部と考えられるものの,個人に関す

る情報としての側面も併せ持つことから,保護対象になるものである。

また,個人に関する情報であれば,住所,国籍にかかわらず,外国人を含

むあらゆる個人の情報が保護対象になるものである。

(2)「文書,図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式,磁気的方式そ

の他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。)で作られている

記録をいう。)」とは,条例の対象となる行政文書の範囲を情報の記録媒体の面か

ら定めたものであり,具体的には次のとおりである。

ア 文書 起案文書,供覧文書,復命書,台帳,帳票類,刊行物等

イ 図画 地図,図面,設計図等

ウ 電磁的記録(電磁的方式(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によって

は認識することができない方式をいう。)で作られている記録をいう。)とは,

具体的には,磁気テープ,磁気ディスク,録音テープ等をいう。

(3) 死者に関する情報については,死者に権利能力がないため,自己に関する

個人情報の開示請求権等を行使できないが,死者の個人情報の不適正な取扱いが

死者の名誉をき損したり,遺族等生存する個人の権利利益を害するおそれもある

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こと,保有している個人情報の主体がその後死者となったかどうかは必ずしも分

別できないことから「個人情報」から除外しない。

(4) 「特定の個人を識別することができるもの」とは,当該情報に含まれる氏

名,住所,生年月日,個人別に付された番号等により,当該情報の本人である特

定の個人が誰であるかを識別することができることをいう。

(5) 「(他の情報と照合することができ,それにより特定の個人を識別するこ

とができることとなるものを含む。)」とは,当該情報のみでは特定の個人を識別

できないが,他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができ

ることをいう。なお,他の情報との照合について,その照合が容易か困難かは要

件ではない。また,「他の情報」には,公知の情報や,一般人が通常入手し得る

情報は含まれるが,特別の調査をすれば入手し得るような情報については含まれ

ない。

3 第3号関係「個人識別符号」

(1) 「個人識別符号」とは,当該情報単体から特定の個人を識別できるものと

して行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律施行令(平成15年政令第

548号。)第3条及び行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律施行規

則(平成29年総務省令第19号。)第2条から第4条に規定されており,以下

の内容となる。

(ア)DNA,顔,虹彩,掌紋,歩行の態様,手指の静脈,指紋・掌紋を電子計

算機の用に供するために変換した符号

(イ)旅券番号,基礎年金番号,運転免許証番号,住民票コード,個人番号,各

種保険証等の文字・番号・記号その他の符号

4 第4号関係「要配慮個人情報」

(1) 「人種」とは,人種,世系又は民族的若しくは種族的出身を広く意味する。

なお,単純な国籍や「外国人」という情報は法的地位であり,それだけでは人種

には含まない。また,肌の色は,人種を推知させる情報に過ぎないため,人種に

は含まない。

(2) 「信条」とは,個人の基本的なものの見方や考え方を意味し,思想と信仰

を含むものである。

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(3) 「社会的身分」とは,ある個人にその境遇として固着していて,一生の間,

自らの力によって容易にそれから脱し得ないような地位を意味し,単なる職業的

地位や学歴は含まれない。

(4) 「病歴」とは病気に罹患した経歴を意味するもので,特定の病歴を示した

部分(例:特定の個人ががんに罹患している,統合失調症を患っている等)が該

当する。

(5) 「犯罪の経歴」とは,前科,すなわち有罪の判決を受けこれが確定した事

実が該当する。

(6) 「犯罪により害を被った事実」とは,身体的被害,精神的被害及び金銭的

被害の別を問わず,犯罪の被害を受けた事実を意味する。具体的には,刑罰法令

に規定される構成要件に該当し得る行為のうち,刑事事件に関する手続に着手さ

れたものが該当する。

(7) 「実施機関が定める記述等」とは,大崎市個人情報保護条例施行規則第2

条の3に規定するものをいう。

5 第5号関係「保有個人情報」

(1) 「実施機関の職員」とは,一般職であるか特別職であるか,常勤であるか

非常勤であるかを問わず,地方公務員法(昭和25年法律第261号)第3条に

規定する者であり,市長,議会,行政委員会の委員,監査委員,附属機関の委員

及び公営企業管理者のほか,実施機関の職務上の指揮監督権限に服するすべての

職員をいうことから,公社においても他の実施機関と同様の扱いとして,役員も

含むとしている。

(2) 「職務上作成し,又は取得した」とは,実施機関の職員が職務の遂行者と

しての公的立場において作成し,又は取得したという趣旨である。

この場合,「職務」には,地方自治法第180条の2又は第180条の7の規

定により実施機関若しくは実施機関の職員が受任し,又は補助執行している事務

を含むものである。

ただし,実施機関の職員が,地方公務員等共済組合法(昭和37年法律第15

2号)第18条第1項の規定により従事している宮城県市町村職員共済組合,大

崎市職員互助会に関する条例(平成18年大崎市条例第57号)第8条の規定に

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より従事している大崎市職員互助会等の実施機関以外の団体の事務に従事して

いる場合の当該事務は含まれない。

(3) 「職員が組織的に利用するもの」とは,作成又は取得に関与した職員個人

の段階のものではなく,組織としての共用文書の実質を備えた状態,すなわち,

実施機関において職務上必要なものとして利用されている状態のものをいう。

(4) 「実施機関が保有しているもの」とは,個人情報の利用,提供,廃棄等に

ついて決定する権限を有し,事実上当該情報を各実施機関が文書取扱規程等に基

づき公的に支配していることをいう。

したがって,実施機関の職員が個人的に作成し,又は取得したメモや参考資料

等は,通常は公的支配に属さないものでありそれ自体は公文書に含まれないが,

他の公文書に添付された場合は公文書として条例の対象となる。

(5) 「公文書」とは大崎市情報公開条例第2条第2号に規定する「公文書」で

ある。

(参考)大崎市情報公開条例(第2条第2号)

(2) 公文書 実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図

画及び電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては

認識することができない方式で作られた記録をいう。)であって,当該

実施機関の職員が組織的に用いるものとして,当該実施機関が保有して

いるものをいう。ただし,次に掲げるものを除く。

ア 官報,公報,白書,新聞,雑誌,書籍その他不特定多数の者に販売

することを目的として発行されるもの

イ 図書館その他市の機関において,歴史的又は文化的な資料として特別

な管理がされているもの

6 第6号関係「特定個人情報」

(1) 「番号法第2条第5項に規定する個人番号」とは,住民基本台帳法(昭

和42年法律第81号)第7条第13号に規定する住民票コードを変換して得

られる番号であって,当該住民票コードが記載された住民票に係る者を識別す

るために指定されるものをいう。

(2) 「個人番号に対応し,当該個人番号に代わって用いられる番号,記号そ

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の他の符号であって,住民票コード・・・以外のものを含む」とは,個人番号

を規則的に変換した番号などをいい,個人番号自体が漏えいする場合と同様の

リスクがあることから,個人番号と同様に取り扱うものである。

(3) 番号法第2条では,特定個人情報は個人番号を含む個人情報と定義され,

個人情報の保護に関する法律等に規定する生存する個人の情報のみを対象と

している。一方,条例第2条第2号では,死者に関する情報を含めて個人情報

として定義しており,特定個人情報においても死者の情報を保護の対象とすべ

き趣旨に変わりはないものである。このことから,本号で規定する特定個人情

報は,死者に関する情報を含めて取り扱うものである。

7 第8号関係「情報提供等記録」

「情報提供等記録」とは,番号法に基づき特定個人情報の情報連携を行った際

に記録する情報照会者・提供者の名称や照会・提供された特定個人情報の項目等

に関する情報をいう。

8 第9号関係「個人情報ファイル」

(1) 「一定の事務」とは,個人情報ファイルを保有する実施機関の所掌事務の

一部又は全部であって,当該個人情報ファイルの作成目的となる特定の事務をい

う。

(2) 「検索することができるように体系的に構成したもの」とはいわゆる名簿

や台帳のように,氏名,生年月日,住所等の一定の項目や様式で作成されたもの

など,特定の保有個人情報を検索することができるように体系的に構成したもの

をいう。

(3) アに掲げる個人情報ファイルは電子計算機処理に係るものである。

(4) イに掲げる個人情報ファイルは手作業処理によるものであり,氏名五十音

や住所ごとに並べた個票や台帳等のことである。

9 第10号関係「個人情報の保管等」

本号は,個人情報を取り扱う一連の過程を,収集,保管,利用という三つの形態

に分類し,これらを「保管等」という字句で総称することとしたものであり,取得,

保有,保存,使用など類似の概念も含まれるものである。

10 第11号関係「事業者」

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(1) 「事業者」とは,営利,非営利を問わず,事業を営む法人その他の団体(国

及び地方公共団体を除く。)又は事業を営む個人をいう。

(2) 「法人その他の団体」とは,法人のほか,いわゆる権利能力なき社団(法

人ではないものの団体としての規約及び一定の組織を有し,かつ,代表者の定め

のある団体)などを含む。

(3) 「国,独立行政法人等(独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関す

る法律(平成15年法律第59号)第2条第1項に規定する独立行政法人等をい

う。以下同じ。),地方公共団体,公社及び地方独立行政法人(地方独立行政法人

法(平成15年法律第118号)第2条第1項に規定する地方独立行政法人をい

う。以下同じ。)を除く」とは,その保有する個人情報の保護について,自らの

権限と責任において施策を講じるべきであることなどから,「法人その他の団体」

から除いているものである。

(4) 「事業」とは,地方税法(昭和25年法律第226号)第72条の2第8

項から第10項までに掲げる事業,農業,林業等のほか,およそ事業と称するこ

とができるすべてのものをいい,営利,非営利を問わないものとする。

(運用)

1 本条第2号に規定する個人情報を例示するとおおむね次のとおりである。

情報項目 項目別内容

1 個人番号

2 個人識別符号(個

人番号を除く)

3 識別番号(個人識

別符号を除く)

4 氏名等

1 個人番号

2 ①DNA,顔,虹彩,声紋,歩行の態様,手指

の静脈,指紋・掌紋を電子計算機の用に供するた

めに変換した符号

②旅券番号,基礎年金番号,運転免許番号,住

民票コード,各種保険証等の文字・番号・記号そ

の他符号

3 整理番号,受験番号,免許番号,許可番号等

4 氏名(氏又は名のみの場合を含む。),通称(芸

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5 性別

6 年齢,生年月日等

7 住所,電話番号等

8 本籍,国籍等

9 その他

名),ペンネーム等

5 男・女の表示

6 年齢,生年月日,干支等

7 住所,電話番号,居所,居住区域名,住所歴等

8 本籍,本籍所在地,国籍,外国人であること等

9 指紋,声紋,顔写真,印鑑等

1 親族関係

2 婚姻歴

3 家庭状況

4 その他

1 養子縁組,離縁,認知,姻族関係等

2 婚姻の事実・時期,離婚の事実・時期,婚姻期

間等

3 世帯主との関係,同居・別居の別,父子・母子

家庭であること,扶養関係,家族構成,里親・里

子であること等

4 食生活の内容等衣食住に関すること等

1 その他 1 健康診断,診療等の事業及びそれに関する業務

とは関係ない方法により知り得た身長,体重,血

圧,脈拍,体温,体力,運動能力等

1 職業,職歴等

2 学業,学歴等

3 資格

4 賞罰

5 成績,評価等

6 その他

1 会社名,勤務先,所属,就職・退職年度(年月

日),在職期間,昇格・降格,配置転換,解雇・

停職等の処分,事業名,職位,職名等

2 卒業・在学校名,退学・休学・停学等,入学・

卒業年度,在学年度,卒業成績,クラブ活動等

3 理容師,調理師等の資格

4 叙位叙勲,表彰,反則金等

5 各種試験の結果,勤務評定等

6 役職名,自治会等での活動状況

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1 財産,収入等

2 納税額

3 公的扶助

4 その他

1 年間収入の額,月収,不動産の所在・評価額,

債権・債務額,預金の額等

2 各種税の納税額等

3 生活保護受給の有無等

4 絵画・骨とう品・彫刻等の保有状況等

その他

1 趣味

2 その他

1 旅行・読書・釣り等の趣味,色彩・インテリア

等の好み,酒・コーヒー・たばこなどの嗜好等

2 癖等

個 人

1 人種

2 信条

3 社会的身分

4 病歴

5 犯罪の経歴

6 犯罪により害を被

った事実

7 心身の機能の障害

があること

8 健康診断等の結果

9 保健指導・診療・

調剤が行われたこ

10 刑事事件に関する

手続が行われたこと

1 人種,世系又は民族的若しくは種族的出身(例:

アイヌ,在日韓国人・朝鮮人)

2 基本的なものの見方・考え方。思想・信仰を含

3 個人にその境遇として固着していて一生自力で

脱し得ないような地位(例:被差別部落出身,嫡

出子・非嫡出子の別)

4 病気に罹患した経歴

5 前科,すなわち有罪の判決を受け確定した事実

6 犯罪の被害(身体的,精神的,金銭的)を受け

た事実

7 身体障害,知的障害,精神障害,発達障害,特

定疾患・難病

8 健康診断,人間ドック,特定健康診査,ストレ

スチェック,遺伝子検査等の結果等

9 保健指導の内容,診療記録,調剤録,薬剤服用

歴,お薬手帳記載情報等

10 本人を被疑者又は被告人として逮捕,捜索,差

押え,勾留,公訴の提起その他の刑事事件に関す

る手続

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11 少年の保護事件に

関する手続が行わ

れたこと

11 本人を非行少年又はその疑いのある者として調

査,観護措置,審判,保護処分その他の少年保護

事件に関する手続

2 保護の対象を具体的に明示することは困難であり,個人情報を「個人に関

する情報であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等によ

り特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ,

それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」と

客観的かつ幅広く規定したところである。

しかし,この「個人識別情報」のすべてが自己情報コントロール権の対象

になり得るとしても,必ずしもこの「個人識別情報」のすべてが実質プライ

バシーに当たるとは言えないと考えられる。

このため,制度の運用に当たっては,プライバシー保護の実効性の確保を

第一義に考え,実質プライバシーの重視を指針とするものとする。

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第3条(実施機関等の責務)関係

(実施機関等の責務)

第3条 実施機関は,個人情報の保管等をするときは,個人情報に係る基本的人権の

侵害を防止するための措置を講ずるとともに,あらゆる施策を通じて個人情報の保

護に努めなければならない。

2 実施機関の職員は,職務に関して知り得た個人情報の内容をみだりに他人に知ら

せ,又は不当な目的に使用してはならない。その職を退いた後も,同様とする。

3 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和

60年法律第88号)第26条第1項に規定する労働者派遣契約に基づき実施機関

に派遣された者(以下「派遣労働者」という。)又は派遣労働者であった者は,当

該労働者派遣契約に基づく業務に関して知り得た個人情報の内容をみだりに他人

に知らせ,又は不当な目的に使用してはならない。

(趣旨)

本条は,この条例の目的を達成するために実施機関等が果たすべき責務について

規定したものである

(解釈)

1 本条は条例全体を通じて実施機関等が負うべき一般的な責務について規定した

もので,具体的な制限については第2章以降で内容が定められている。

2 「個人情報に係る基本的人権の侵害を防止するための措置」とは,第1条の趣旨

に照らし,個人情報の適正な取扱いについて必要な事項を収集,保管,利用等の諸

原則に沿って着実に実施するとともに,開示請求等の権利を保障する等,積極的な

保護措置を講ずることが,その中核をなすものと解される。

3 「あらゆる施策」とは,この条例の具体的事項に基づく個人情報保護措置のみで

なく,実施機関の事業を通じて行われる個人情報保護のためのすべての施策を含む

ものであり,職員の意識の啓発,事務改善等はその一例である。

4 「実施機関の職員」とは,第2条第3号の解釈における「実施機関の職員」と同

義である。

5 「職務に関して知り得た個人情報」とは,職員が自己の職務の執行に関連して知

り得た個人情報はもとより,担当外の個人情報であっても職務に関連して知り得た

ものを含む。

6 「みだりに他人に知らせ」とは,個人情報を他人に知らせることが自己の権限に

属すか否かにかかわらず,正当な理由なくして知らせる場合をいう。

7 「不当な目的」とは,自己の利益とすることを目的としたり,他人の正当な権利

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利益を侵そうとする目的をいい,社会通念に照らして,妥当性を欠くものをいう。

8 地方公務員法第34条第1項の守秘義務と「職務に関して知り得た個人情報」と

の関係

(1) 地方公務員法第34条第1項の守秘義務は,職員が職務上知り得た秘密を

守るべき服務規律を定めたものであり,守るべき「秘密」とは,「一般的に了知

されていない事実であって,それを一般に了知させることが一定の利益の侵害に

なると客観的に考えられるものをいう。」(いわゆる実質秘)とされている。

(2) 本条にいう「職務に関して知り得た個人情報」とは,(1)の実質秘に該

当するか否かにかかわらず,職務に関して知り得た個人情報のすべてをいうもの

である。これは,当該制度によって保護されるべき個人情報の範囲を広くとらえ,

個人情報の取扱いに伴う市民等の不安感を解消し,個人の権利利益の保護に当た

ろうとする趣旨である。

9 この規定により,地方公務員法による守秘義務が適用されない非常勤職員の特別

職及び派遣労働者についても,新たに個人情報に係る守秘義務が課せられたことに

なる。

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第4条(事業者の責務)関係

(事業者の責務)

第4条 事業者は,その事業の実施に当たって個人情報の保管等をするときは,個人

情報の保護の重要性を認識し,個人情報に係る基本的人権の侵害を防止するための

措置を講ずるとともに,個人情報の保護に関する市の施策に協力しなければならな

い。

(趣旨)

本条は,事業者が個人情報を取り扱う際に遵守すべき責務を明らかにしたものであ

る。

なお,事業者については,個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。

以下「個人情報保護法」という。)第2条第5項に規定する個人情報取扱事業者に該

当する場合には,同法の規定が適用されるため,同法及び各省庁等が策定する「個人

情報の保護に関するガイドライン」に即して個人情報の保護に取り組む必要がある。

(解釈)

1 本条は,事業者がその事業の実施に当たって個人情報の保管等をするときは,個

人情報を保護することの重要性を認識し,実施機関と同様に個人情報に係る基本的

人権の侵害を防止するために必要な措置を講ずべきことを定めている。

2 本条は,また,プライバシー保護に関する市の取組みに協力すべきことを事業者

の責務として明らかにしており,「市の施策に協力」とは,個人情報の適正な取扱

いや個人情報の開示請求等の保障に関する市の施策や事業に協力することをいう。

3 個人情報保護法との関係については,各省庁等が策定する「個人情報の保護に関

するガイドライン」に即して個人情報の保護に取り組む必要があり,また,同法第

2条第5項に規定する個人情報取扱事業者に該当する場合には,同法の規定が適用

されるものであるが,本条は市の施策に協力する義務を付加したものである。

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第5条(出資団体等の責務)関係

(出資団体等の責務)

第5条 市から出資,出えん又は補助金の交付を受けた団体(公社を除く。)のうち

実施機関が定めるものは,個人情報の保管等をするときは,個人情報の保護の重要

性を認識し,個人情報に係る基本的人権の侵害を防止するため,実施機関に準じた

措置を講ずるよう努めなければならない。

(趣旨)

本条は,この条例の目的を達成するために実施機関と密接な関係にある出資団体

等が果たすべき責務について規定したものである。

(解釈)

1 「市から出資,出えん又は補助金の交付を受けた団体(公社を除く。)のうち実

施機関が定めるもの」とは次の要件に該当する団体をいう(大崎市個人情報保護条例

施行規則(平成19年大崎市規則第17号。以下「施行規則」という。)第3条)。

(1) 資本金又は基本財産(基金を含む。)の額のうちに市からの出資又は出え

んの額の占める割合が2分の1以上の出資団体等

(2) 市から一会計年度において受けた補助金等の合計額が,当該会計年度にお

ける当該補助金に係る事業の総事業費のうちに占める割合が2分の1以上であ

る出資団体等

2 本条は,市から出資,出えん又は補助の交付を受けた団体のうち実施機関が定め

るものが実施機関に近似した公共的性格を有する団体であることから,個人情報の

取扱いに当たっては,前条で規定する事業者には含まれるものの,一般の民間事業

者より厳しい保護措置が必要であると考え,実施機関に準じた義務を負うことを定

めたものである。

(参考)「実施機関が定めるもの」

(株)まちづくり古川

(株)アクアライト台町

(株)醸室

(株)大崎市三本木振興公社

(株)池月道の駅

鳴子まちづくり(株)

(株)オニコウベ

(株)たじり穂波公社

3 「個人情報に係る基本的人権の侵害を防止するため,実施機関に準じた措置を講

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ずる」とは,第1条の趣旨に照らし,個人情報の適正な取扱いについて必要な事項

を収集,保管,利用等の諸原則に沿って着実に実施するとともに,開示請求等の制

度を創設すること等,積極的な保護措置を講ずることが,その中核をなすものと解

される。

(運用)

実施機関は,当該団体の性格や活動内容に応じて必要な措置を講ずることができ

るよう指導するものとする。

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第6条(市民の責務)関係

(市民の責務)

第6条 市民は,相互に個人情報の保護の重要性を認識し,個人情報の取扱いに当た

っては,個人の権利利益を侵害することのないよう努めるとともに,個人情報の保

護に関する市の施策に協力しなければならない。

(趣旨)

本条は,この条例の運用に当たって市民が守るべき責務について規定したもので

ある。

(解釈)

1 本条は,権利主体である市民が相互に個人情報の重要性を認識すべきこと,及び

市民に対して市が行う個人情報の保護施策に協力すべきことを定めたものである。

2 「相互に個人情報の保護の重要性を認識し」とは,この条例によって個人情報を

保護されている市民が相互に個人情報というものの重要性について認識し,尊重し

合うことを言い表したものである。

プライバシーの保護は,いうまでもなく市民一人一人の個人情報に関する基本的

人権が擁護されることであるが,それは単に実施機関や事業者等による個人情報の

保管等の制限によるのみでなく,市民が日常的にお互いの個人情報の重要性につい

て認識し合うことが,制度の円滑な運用と条例の目的達成に不可欠の前提条件であ

ることを再確認したものである。

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第7条(適用上の注意)関係

(適用上の注意)

第7条 この条例の適用に当たっては,事業者及び市民の権利と自由を不当に侵害す

ることがあってはならない。

(趣旨)

本条は,この条例の運用に関する注意事項を規定したものである。

(解釈)

本条は,この条例の運用に当たり,民間事業者等の営業の自由等との関連及び個

人の人格上の権利・利益と社会公共の利益との関連等を十分考慮し,不当にこれら

の権利と自由が侵害されることのないよう注意し,その適正な運用がなされること

を期したものである。

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第2章 個人情報の保管等の制限

第8条(保管等の一般的制限)関係

(保管等の一般的制限)

第8条 実施機関は,個人情報の保管等をするときは,その所掌する事務を遂行する

ため必要な場合に限り,かつ,その利用の目的をできる限り特定しなければならな

い。

2 実施機関は,前項の規定により特定された利用の目的(以下「利用目的」という。)

の達成に必要な範囲を超えて,個人情報の保管等をしてはならない。

3 実施機関は,要配慮個人情報の保管等をしてはならない。

4 前項の規定にかかわらず,実施機関は,次の各号のいずれかに該当するときは,

要配慮個人情報の保管等をすることができる。

(1) 法令又は条例の定めがあるとき。

(2) 本人の同意があるとき。

(3) 人の生命,身体又は財産の保護のために必要がある場合であって,本人の同

意を得ることが困難であるとき。

(4) 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合で

あって,本人の同意を得ることが困難であるとき。

(5) 前各号に掲げるもののほか,第41条に規定する大崎市個人情報保護審査会

(同条第1項を除き,以下「審査会」という。)の意見を聴いて,相当の理由があ

ると実施機関が認めるとき。

5 実施機関は,利用目的を変更する場合には,変更前の利用目的と相当の関連性を

有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。

(趣旨)

本条は,実施機関が個人情報の保管等をするときの一般的な制限事項について規

定したものである。

(解釈)

1 第1項及び第2項関係

(1) 第1項及び第2項は,実施機関が個人情報の保管等をするときは,その所

掌事務の遂行に必要な場合において,必要最小限の利用目的を定めた上で,その

範囲内で行われなければならないこと,すなわち実施機関による個人情報の収

集,保管,利用すべての段階に一定の制限を加えるものである。

(2) 「所掌する事務」とは,それぞれの実施機関が法令に基づいて行う本来的

な事務であり,地方自治法第2条第3項及び第9項に定める事務をいう。

2 第3項関係

(1) 本項は,原則として実施機関が要配慮個人情報の保管等をしてはならない

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旨を定めたものである。

この場合における「要配慮個人情報」とは,他人によって保有されることを本

人が知ったならば,不安又は精神的な苦痛を感じることが当然である種類の個人

情報をいい,通常これらの情報の保管等については,憲法に保障された基本的人

権を侵害するおそれがあることから,他の個人情報より強い保護が与えられるも

のである。

3 第4項関係

(1) 本項は,実施機関が要配慮個人情報の保管等をする際の例外規定を定めた

ものである。

(2) 「法令」とは,法律,政令,省令その他の命令をいう。

(3) 要配慮個人情報の保管等が法令で認められている例としては,次のような

ものがある。

ア 公職選挙法(昭和25年法律第100号)第11条第3項(受刑者の本籍地

の市町村からの事実関係の通知)

イ 地方公務員法第16条(法令に基づく欠格条項の照会)

(4) 「人の生命,身体又は財産の保護のために必要がある場合」とは,火災,

地震等の災害による生命,身体又は財産の損失のおそれのほか,犯罪等の人為的

な危険から個人を守るためのことをいう。

(5) 「公衆衛生の向上」とは,健康増進施策の立案や疫学調査の利用等に関す

ることをいう。

(6) 「児童の健全な育成の推進のため」とは,具体的には児童生徒の不登校や

不良行為等について関係機関から当該児童についての情報を取得したことや,児

童虐待の恐れのある家庭情報に関して関係機関から情報を取得した内容も含む。

4 第5項関係

(1) 「変更前の利用目的と相当の関連性を有する」とは,当初の利用目的から,

想定することが困難でない程度の関連性を有することであり,相当の関連性を有

するかの判断については,当初の利用目的とされていた事務の内容や利用目的の

変更理由などを勘案し,個別に行う必要がある。

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(2) 「合理的に認められる範囲」とは,社会通念に照らして,客観的に合理的

と認められる範囲のことである。その範囲を超えた利用は,目的変更としては認

められず,目的外利用となる。(第11条参照)

(3) 本項に該当する例としては,許認可の審査のために提出された申請書を当

該許認可に係る統計作成の目的で利用する場合がある。

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第9条(個人情報取扱業務等の登録等)関係

(個人情報取扱業務等の登録等)

第9条 実施機関は,個人情報の保管等に係る業務(以下「個人情報取扱業務」とい

う。)を新たに開始しようとするときは,あらかじめ,次に掲げる事項を記載し,

個人情報業務登録簿に登録しなければならない。

(1) 個人情報取扱業務の名称

(2) 個人情報取扱業務の目的

(3) 個人情報取扱業務の対象者

(4) 個人情報の収集の方法及び時期

(5) 個人情報の内容

(6) 要配慮個人情報の有無

(7) 業務委託の有無

(8) 前各号に掲げるもののほか,実施機関が定める事項

2 実施機関は,個人情報ファイルを保有しようとするときは,あらかじめ,次に掲

げる事項を記載し,個人情報ファイル登録簿に登録しなければならない。

(1) 個人情報ファイルに係る業務の名称

(2) 個人情報ファイルの名称

(3) 個人情報ファイルの利用目的

(4) 個人情報ファイルの対象者

(5) 個人情報の収集の方法及び時期

(6) 個人情報ファイルの内容

(7) 要配慮個人情報の有無

(8) 個人情報ファイルに係る業務委託の有無

(9) 前各号に掲げるもののほか,実施機関が定める事項

3 前項の規定は,次に掲げる個人情報ファイルには,適用しない。

(1) 専ら試験的な電子計算機処理の用に供するための個人情報ファイル

(2) 前項の規定による登録に係る個人情報ファイルに記録されている個人情報

の全部又は一部を記録した個人情報ファイルであって,その利用目的及び内容が

当該登録に係るこれらの事項の範囲内のもの

(3) 1年以内に消去することとなる個人情報のみを記録する個人情報ファイル

(4) 資料その他の物品若しくは金銭の送付又は業務上必要な連絡のために利用

する個人情報を記録した個人情報ファイルであって,送付又は連絡の相手方の氏

名,住所その他の送付又は連絡に必要な事項のみを記録するもの

(5) 本人の数が実施機関が定める数に満たない個人情報ファイル

4 実施機関は,個人情報業務登録簿に登録している業務又は個人情報ファイル登録

簿に登録している個人情報ファイルを廃止し,又は変更するときは,あらかじめそ

の旨を登録しなければならない。

5 前各項の規定にかかわらず,実施機関は,緊急かつやむを得ないときは,個人情

報取扱業務の開始,廃止若しくは変更又は個人情報ファイルの保有,廃止若しくは

変更の事実があった日以後において前各項の登録をすることができる。

6 市長は,各実施機関の個人情報業務登録簿及び個人情報ファイル登録簿を取りま

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とめ,公表するものとする。ただし,存在しているか否かを公表するだけで,第1

8条各号に規定する不開示情報を公開することとなる個人情報ファイルについて

は,この限りでない。

(趣旨)

本条は,実施機関が行う個人情報の保管等に係る業務及び実施機関が保有する個

人情報ファイルの登録について規定したものである。

(解釈)

1 第1項関係

(1) 本項は,個人情報の保管等をする場合は,実施機関ごとにそれぞれ管理す

るとともに,個人情報の内容,収集先,利用状況等を明確化することにより,個

人情報の適正な取扱いを担保していくため,実施機関が個人情報の保管等に係る

業務を開始しようとするときは,第1号から第7号に掲げる事項をあらかじめ登

録しなければならない旨を定めたものである。この場合の登録は,個人情報業務

登録簿(施行規則様式第1号)により行う(施行規則第4条)。

(2) 個人情報取扱業務及び第2項の規定による個人情報ファイルの登録によ

り,実施機関による個人情報の保管等の状況を明らかにするとともに,実施機関

は個人情報の保護措置をより的確に講ずることができるものである。

(3) 実施機関が個人情報取扱業務を実施機関以外のものに委託(公の施設の管

理を指定管理者に行わせることを含む。)する場合は,実施機関が個人情報を直

接取り扱うものではないが,実施機関の業務として行われるものであるため,本

項の登録の対象となる。

2 第2項関係

(1) 本項は,実施機関が個人情報ファイルを保有しようとする場合は,あらか

じめ登録しなければならない旨を定めたものである。この場合の登録は,個人情

報ファイル登録簿(施行規則様式第2号)により行う。

(2) 個人情報ファイルは実施機関による個人情報の取扱いの状況や開示請求等

の対象をより具体的に示すものであり,本条の規定により,個人情報業務登録簿

とともに常に最新かつ正確な状態にしておかなければならない。

(3) 実施機関が個人情報ファイルの保有を実施機関以外のものに委託(公の施

設の管理に関して指定管理者に管理させることを含む。)する場合については,

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第1項の解釈と同様である。

3 第3項関係

(1) 本項は,個人情報ファイルについて,保有期間が短期間のものや,既に登

録されているものと重複することなどの理由により,登録の対象としない個人情

報ファイルを定めたものである。なお,これらの個人情報ファイルは「登録」の

対象とならないだけであって,他の個人情報ファイルと同様に適正に管理しなけ

ればならないことは当然である。

(2) 「専ら試験的な電子計算機処理の用に供するための個人情報ファイル」と

は,電子計算機処理のシステムが適性に作動するか否かを試験するための電子計

算機処理に使用する個人情報ファイルである。あくまで電算システムそのものの

試験であって,一部地域や対象者を抽出して行う実験的業務は含まない。

(3) 「前項の規定による登録に係る個人情報ファイルに記録されている個人情

報の全部又は一部を記録した個人情報ファイルであって,その利用目的及び内容

が当該登録に係るこれらの事項の範囲内のもの」とは,既に個人情報ファイル登

録簿に登録している個人情報ファイルの作業用の写しやバックアップ用の写し

などのことである。これらの個人情報ファイルは,元の個人情報ファイルについ

てすでに登録しているため,対象としない。なお,元の個人情報ファイルの登録

内容の範囲を超えて利用する場合(例えば,利用目的,対象者又は記録項目など

の範囲を追加する場合)には,改めて登録しなければならないが,利用目的を追

加する場合は,目的外利用との関係にも注意しなければならない。

(4) 「1年以内に消去することとなる個人情報のみを記録する個人情報ファイ

ル」

「消去」とは,情報をすべて消すことのほか,個人識別性を失わせることも含

む。原本を消去してもバックアップ用に写しを作成して引き続き保有する場合は

「消去」することにはならない。また,作成当初は1年以内に消去する予定のも

のでも,途中で保有期間を延長して1年以上保有することとなるものは,速やか

に登録しなければならない。

(5) 「資料その他の物品若しくは金銭の送付又は業務上必要な連絡のために利

用する個人情報を記録した個人情報ファイルであって,送付又は連絡の相手方の

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氏名,住所その他の送付又は連絡に必要な事項のみを記録するもの」

「金銭の送付」には,現金書留による場合に限らず口座振込等を含む。「送付

又は連絡に必要な事項」とは,相手方の口座番号,電話番号,メールアドレス等

である。

(6) 「本人の数が実施機関が定める数に満たない個人情報ファイル」

ア 施行規則で定める「本人の数」は100人である。したがって個人情報ファ

イルに記載される本人の数が100人に満たないものは,個人情報ファイル登

録簿の登録義務はないが,対象者数を固定せず常に加除により本人の数が変わ

るものについては,ある時点で捉えるのではなく,100人を越えることが想

定できるものは当然に登録するものである。

イ 本来一つの個人情報ファイルであるものを媒体を分けて分割した場合は,当

該分割した個々の個人情報ファイルに記録される本人の数を合計して計算す

るものとする。

4 第4項関係

本項は,個人情報業務登録簿及び個人情報ファイル登録簿について,廃止又は変

更するときは,あらかじめ登録しなければならないことを規定したものである。変

更の場合は追記又は項目削除等をし,個人情報取扱業務の廃止又は個人情報ファイ

ルの消去又は保有をやめる場合はあらかじめ予定年月日を登録する。

5 第5項関係

本項は事前登録の例外を定めたものである。すなわち,実施機関は「緊急やむを

得ないとき」については,業務が開始又は変更された日以後において登録を行うこ

とができるものである。「緊急やむを得ないとき」とは,実施機関が当初予定して

いない突発的な業務が発生し,緊急を要するため,事前に登録ができないような場

合を指す。

6 第6項関係

(1) 本項本文の公表は,市民等に実施機関が保管等をする個人情報の存在を周

知させ,自己情報の開示請求等の前提としても重要な意義を有するものであるた

め,原則として市長が各実施機関の分を取りまとめて公表することとしたもので

ある。したがって,各実施機関は個人情報業務登録簿及び個人情報ファイル登録

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簿を作成し,市長に提出するものとする。

(2) 本項ただし書は,高度の秘密性を有する個人情報ファイルの存在に配慮し

たものである。当該個人情報ファイルの存否を明らかにしないことの意義は,第

21条に規定する開示請求等に対する存否応答拒否と同義であるが,第21条は

保有個人情報の本人に対しての不開示であり,本項ただし書は公にすることに対

しての不開示であることに留意しなければならない。該当するかどうかについて

は,個人情報ファイル登録簿を原則公表としていることの趣旨を踏まえ,慎重に

判断しなければならない。

(3) 本項ただし書に該当する個人情報ファイルであっても,実施機関は当該個

人情報ファイルの登録簿を作成し,管理するものとする。このとき,当該個人情

報ファイル登録簿は,市長の取りまとめ及び公表の対象にはならないが,その件

数のみ市長に報告するものとする。

(運用)

1 登録の方法

本条の登録は「個人情報業務登録簿及び個人情報ファイル登録簿記載要領」に基

づき,主管課ごとに行うものとする。

2 登録簿の管理及び閲覧

「個人情報業務登録簿」及び「個人情報ファイル登録簿」は,総務部市政情報課で

取りまとめて管理し,公表は,市政情報センター(以下「センター」という。)で

行う。

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第10条(収集の制限)関係

(収集の制限)

第10条 実施機関は,個人情報の保有をするに当たっては,次に掲げる事項を明ら

かにして本人から直接収集しなければならない。

(1) 業務の名称及び法令又は条例の根拠

(2) 業務の目的

(3) 個人情報の内容

(4) 個人情報の利用目的

(5) 前各号に掲げるもののほか,実施機関が定める事項

2 前項の規定にかかわらず,実施機関は,次の各号のいずれかに該当するときは,

個人情報を本人以外のものから収集することができる。

(1) 本人以外のものからの収集について法令又は条例の定めがあるとき。

(2) 個人の生命,健康,生活又は財産等を保護するため,緊急かつやむを得な

い理由があるとき。

(3) 出版,報道等により公にされた個人情報を収集するとき。

(4) 本人の同意があるとき。

(5) 他の実施機関から次条第2項各号のいずれかに該当する提供を受けて収集

するとき。

(6) 前各号に掲げるもののほか,審査会の意見を聴いて,相当の理由があると

実施機関が認めるとき。

3 法令又は条例の規定により,本人が申請行為その他これに類する行為を行うとき

は,第1項の規定により収集がなされたものとみなす。

(趣旨)

本条は,実施機関が個人情報を収集するときの原則を定めるとともに,収集目的,

収集方法及び収集する個人情報の種類別に制限を設けたものである。

(解釈)

1 第1項関係

(1) 本項は,実施機関が個人情報を収集する際に,その目的を明らかにした上

で本人から直接収集するという原則を定めたものである。また,収集する個人情

報の範囲は,利用目的の達成に必要最小限としなければならないことは当然であ

る(第8条参照)。

(2) 「収集」とは,実施機関が当該実施機関以外のものから個人情報を入手す

ることをいい,入手の形態又は方法は問わない(口頭による場合を含む。)。

(3) 「本人から直接収集」とは,実施機関が本人から直接収集する場合のほか,

届出書,申請書等を本人の使者等を介して,又は本人の所属団体や市町村等を経

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由して受け取る場合も含むものである。また,法定代理人からの被代理人に関す

る情報の収集は,本人からの直接収集とみなす。なお,本人から提出されたもの

であれば,密封された内申書,学業成績証明書など本人がそこに記録された情報

の内容を承知していない場合でも,本人からの直接収集となるものである。

(4) 個人情報がみだりに取り扱われ,個人が不測の権利利益侵害を被ることを

未然に防止するためには,まず,「個人情報の利用目的」が明確にされ,以後,

その利用目的に沿って適切に取り扱われることが必要である。「個人情報の利用

目的」を明らかにすることは,個人情報がどのような事務の用に供され,どのよ

うな目的に使われるかをできるだけ具体的,個別的に特定することを求める趣旨

であり,利用目的の特定の程度を実施機関の恣意的判断に委ねるものではない。

(5) 「実施機関が定める事項」には,次のようなものが考えられる。

ア 個人情報の管理責任者

イ 個人情報の利用の方法

ウ 目的外利用等をすることについての本人の同意

2 第2項関係

(1) 個人情報の収集は,第1項の規定により原則として本人から直接収集する

ことになっているが,本項では第1号から第6号に掲げる場合に限って個人情報

を本人以外のものから収集することができることとしている。

(2) 第1号関係

ア 「法令」とは,第8条第3項における解釈と同義である。

イ 「法令に定めのあるとき」とは,法令の規定により,本人以外のものに対し

て,実施機関への個人情報の提供を義務付けている場合(以下「義務規定」と

いう。)又は実施機関の裁量により,本人以外のものから個人情報を収集し得

る根拠となると解釈される場合(以下「できる規定」という。)をいう。なお,

法令において,義務規定又はできる規定として定められている具体例として

は,次のとおりであるが,本号に基づき収集することができる個人情報の範囲

は,法令の規定の趣旨により認められる範囲に限定されるものである。

(ア) 「義務規定」による収集の例

・地方税法第325条(所得税又は法人税に関する書類の供覧等)

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・地方税法第479条(道府県たばこ税に関する書類の供覧等)

・生活保護法(昭和25年法律第144号)第29条第2項(別表第一に掲

げる情報に関する書類の閲覧等)

(イ) 「できる規定」による収集の例

・公営住宅法(昭和26年法律第193号)第34条(収入状況の報告の請

求等)

・児童手当法(昭和46年法律第73号)第28条(資料の提供等)

・地方税法第298条(徴税吏員の市町村民税に関する調査に係る質問検査

権)

(3) 第2号関係

ア 「緊急かつやむを得ない理由があるとき」とは,災害その他これに類すると

きで時間的余裕がなく,かつ,本人以外のものから収集することについて相当

な理由があることをいう。

イ 緊急性があるときに本人収集の原則を貫くことは,かえって人の生命,身体,

財産の保護を欠くおそれがあるため,本人からの直接収集の原則の例外とした

ものである。

(4) 第3号関係

「出版,報道等により公にされた個人情報」とは,出版物によって既に公にさ

れている資料から誰でも知ることができる個人情報,若しくは報道等によって既

に公にされている個人情報をいう。

(5) 第4号関係

ア 「本人の同意があるとき」とは,原則として,第三者から収集することにつ

いて,本人の署名,捺印のある同意書の提示があるなど明確な意思表示のある

場合をいう。ただし,軽易な場合については,口頭による同意であっても差し

支えないものとするが,その場合は,口頭による同意があった旨など経過を記

録 しておくものとする。

イ 本人が所属する団体からの推薦又は申請等に本人の個人情報が含まれてい

る場合であって,本人の同意があると客観的に判断ができるときには,本号に

該当するものであること。

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(6) 第5号関係

「他の実施機関から第11条第2項各号のいずれかに該当する提供を受けて

収集するとき」とは,第11条第2項(利用及び提供の制限)の規定に基づいて

他の実施機関の目的外利用により,個人情報を収集する場合には,目的外利用の

時点で判断がなされており,改めて収集制限を課す必要が無いことから除外して

いるものである。

(7) 第6号関係

本号は,本項の適用除外の第1号から第5号までに該当しない場合で,大崎市

個人情報保護審査会(以下「審査会」という。)の意見を聴いた上で,実施機関

が本人以外から収集する必要があると判断したときは,本人からの直接収集の原

則の例外とする趣旨である。なお,「相当な理由」があるかどうかの判断は,実

施機関が審査会に本人以外からの収集の必要性や理由を示し,意見を聴いた上

で,行う必要がある。

3 第3項関係

(1) 本項は,法令等の規定により本人が申請行為その他これに類する行為を行

う場合については,第1項の規定に基づいて本人から直接収集されたものとみな

す規定である。

(2) 法令等の規定に基づいて行う本人の申請行為は,本人の意思と判断に基づ

き,しかも内容を了知したうえで行われる行為であることから,第1項の本人直

接収集の要件を満たしているものとして扱うものである。

(3) 「申請行為その他これに類する行為」とは,法令又は条例に基づく申請,届

出,公述の申立等であり,具体例としては次のようなものがある。

ア 戸籍法(昭和22年法律第224号)第49条の規定に基づく出生届

イ 住民基本台帳法第21条の規定に基づく住民としての地位の変更に関する

届出

ウ 大崎市子ども医療費の助成に関する条例(平成18年大崎市条例

第155号)第5条の規定に基づく受給資格の登録申請

エ 大崎市心身障害者医療費の助成に関する条例(平成18年大崎市

条例第168号)第5条の規定に基づく受給資格の登録申請

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(運用)

本人から直接個人情報を収集する形態には,書面による場合や口頭による場合が

あるが,口頭の場合には,必ずしも収集した個人情報のすべてが保有されるわけで

はない。これに対して,書面による収集の場合には,申請書等,本人が書面に記載

して提出するものは,その多くが保有されることとなると考えられることから,本

人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を収集する場合は,当該書面又は

別紙として利用目的を明示することが望ましい。なお,オンラインにより申請等を

受ける場合も同様である。

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第11条(利用及び提供の制限)関係

(利用及び提供の制限)

第11条 実施機関は,利用目的以外の目的のために保有個人情報の利用(以下「目

的外利用」という。)又は実施機関以外のものへの提供(以下「外部提供」という。)

をしてはならない。

2 前項の規定にかかわらず,実施機関は,次の各号のいずれかに該当するときは,

保有個人情報(保有特定個人情報を除く。)を目的外利用又は外部提供(以下「目

的外利用等」という。)することができる。

(1) 目的外利用等について法令又は条例の定めがあるとき。

(2) 個人の生命,健康,生活又は財産等を保護するため,緊急かつやむを得な

い理由があるとき。

(3) 本人の同意があるとき,又は本人に提供するとき。

(4) 出版,報道等により公にされているとき。

(5) 前各号に掲げるもののほか,審査会の意見を聴いて,相当の理由があると

実施機関が認めるとき。

3 第1項の規定にかかわらず,実施機関は,個人の生命,健康,生活又は財産等を

保護するために必要であって,本人の同意があり,又は本人の同意を得ることが困

難であるときは,保有特定個人情報(情報提供等記録を除く。)を目的外利用する

ことができる。

4 実施機関は目的外利用等をしようとするときは,その旨を個人情報業務登録簿及

び個人情報ファイル登録簿に登録しなければならない。

5 実施機関は,目的外利用等をしたときは,実施機関が別に定める場合を除き,そ

の事実を本人へ通知しなければならない。

6 実施機関は,外部提供する場合において,必要に応じ,提供を受けるものに対し,

当該提供に係る保有個人情報について,その利用の目的若しくは方法の制限その他

必要な制限を付し,又はその漏えいの防止その他の個人情報の適切な管理のために

必要な措置を講ずることを求めなければならない。

(趣旨)

本条は,実施機関が保有個人情報を利用目的の範囲を超えて実施機関内,他の実

施機関及び実施機関以外のものに提供する場合の制限事項等について規定したも

のである。

(解釈)

1 第1項関係

(1) 保有個人情報は,原則として利用目的の範囲内で利用されなければならな

い(目的明確化の原則)ことを規定したものである。

(2) 「利用」とは,実施機関が当該実施機関内で保有個人情報を取り扱うこと

をいう。例としては,市長部局のある課で保有している保有個人情報を市長部局

の他の課で使用する場合等があげられる。

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(3) 「実施機関以外のもの」とは,第2条第1号に規定する「実施機関」以外

のものをいう。

(4) 「提供」とは,実施機関が当該実施機関以外のものへ保有個人情報を提供

することをいい,次のような例が挙げられる。なお,実施機関が個人情報取扱業

務を委託し,又は公の施設の管理を指定管理者に行わせるに当たって,委託先又

は指定管理者に当該業務に係る保有個人情報を提供する場合は,事業実施主体又

は公の施設の設置者が実施機関であり,委託先は実施機関に代わって業務を遂行

し,又は指定管理者は実施機関の公の施設の管理の権限を代行するものであると

ともに,第14条で実施機関に委託先又は指定管理者に対する当該業務で取り扱

う保有個人情報の監督義務が課せられていることから,本条にいう「提供」には

該当しないものとする。

ア 教育委員会のある課で保有している保有個人情報を市長部局の他の課で使

用する場合

イ 市長部局のある課で保有している保有個人情報を国若しくは他の地方公共

団体に提供する場合又は実施機関以外の市の機関に提供する場合

2 第2項関係

保有個人情報を他の目的に利用する場合には,プライバシー保護の観点からごく

限られた場合のみに認められるべきである。本項は,こうした原則の下に第1号か

ら第5号に掲げる場合を除いて実施機関が利用目的の範囲を超えて保有個人情報

を利用することを禁止したものである。

(1) 第1号関係

ア 「法令」とは,第8条第3項における解釈と同義である。

イ 「法令又は条例の定めがあるとき」とは,法令又は条例の規定又は解釈によ

り保有個人情報の目的外の利用又は提供が義務付けられている場合等をいう

が,「照会することができる」,「報告を求めることができる」等提供が強制

的に義務付けられていないものについては,個人の権利利益を侵害することが

ないかどうかを慎重に判断して対応する必要がある。

(ア) 提供が義務付けられている例

・民事訴訟法(平成8年法律第109号)第223条(裁判所からの文書提

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出命令)

・会計検査院法(昭和22年法律第73号)第26条(会計検査院からの帳

簿等の提出要求)

・地方自治法第100条第1項(議会からの記録提出請求)

・住民基本台帳法第10条(選挙人名簿の登録等に関する選挙管理委員会

の通知)

・公職選挙法第29条第1項(市長と市の選挙管理委員会との相互通報)

・地方税法第294条第3項(市長が,他の市町村の住民基本台帳に記録さ

れている者を知ったときの当該他の市町村の長への通知)

(イ) 提供が強制的に義務付けられていない例

・刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第197条第2項(犯罪捜査の

ための必要事項の照会)及び同法第507条(裁判の執行に関して必要な

事項の照会)

・民事訴訟法第186条(裁判のための必要な調査の嘱託)

・弁護士法(昭和24年法律第205号)第23条の2(受任している事件

について,弁護士の職務を行うための必要な事項の照会)

(2) 第2号関係

「緊急やむを得ない理由があるとき」とは,第10条第2項第2号における解

釈と同義であり,市民病院で保有する患者の診療録等を当該患者の診療等のた

めに大学,研究機関等に提供する場合などがこれに該当する。

(3) 第3号関係

ア 「本人の同意があるとき」とは,保有個人情報の目的外の利用又は提供が行

われることについて,本人が文書若しくは口頭により同意している場合又は客

観的に同意していることが明らかになっている場合をいう。なお,この場合は,

事前に保有個人情報の目的外の利用又は提供の内容を具体的に明示して本人

の同意を得る必要がある。また,本人の同意が限定的になされたときは,その

限定された範囲内で目的外の利用又は提供が認められるものである。こうした

ことから,目的外の利用又は提供については,あらかじめ個人情報の収集の段

階で予想される事項についての同意を得ておくことが適当である。客観的に同

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意していることが明らかになっている場合の例としては,意思能力を有しない

幼児又は成年被後見人の保有個人情報を法定代理人の同意のもとで目的外に

利用又は提供する場合等が挙げられる。

イ 口頭による同意の場合は,その旨を記録をしておくものとする。

ウ 「本人に提供するとき」とは,実施機関の判断により本人に提供する場合を

いい,第16条の規定による本人からの開示請求に応じて開示する場合は含ま

れない。

エ 本号を適用するということは,本人に目的外利用等についての諾否を求める

ことであり,同意・不同意両方の意見があることを当然に想定しなければなら

ない。つまり,目的外利用等において,対象者全員の保有個人情報を目的外利

用等する必要があると実施機関が判断する場合には,本号ではなく,第5号の

規定により,審査会の意見を聴かなければならない。

(4) 第4号関係

「出版,報道等により公にされているとき」とは,第10条第2項第4号の解

釈と同義である。

(5) 第5号関係

ア 本項第1号から第4号までに該当しない場合であって,実施機関が保有個人

情報を目的外に利用又は提供する必要があると判断したときは,審査会の意見

を聴いた上で目的外利用及び提供の禁止の例外事項とすることができること

としたものである。

イ 「審査会の意見を聴いて,相当の理由があると実施機関が認めるとき」とは,

実施機関が保有個人情報を目的外利用等することについて審査会の意見を聴

き,その結果当該目的外利用等が公益上必要であると判断した場合をいう。

ウ 本号を適用する場合には,目的外利用等の必要性及び第1号から第4号まで

に該当しないものであることを事前に検証しなければならない。例えば,目的

外利用等について,必ずしも対象者全員の保有個人情報ではなく,本人同意が

得られた部分のみで足りる場合には,本人同意の規定を優先すべきものであ

る。

3 第3項関係

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本項は,番号法により,実施機関が保有する特定個人情報については,その要保

護性に照らし,目的外利用は生命等保護のため必要な場合に限定されることを規定

したものである。ただし,情報提供等記録については,生命等保護のため必要な場

合が想定されないことから,目的外の利用が全面的に禁止されるものである。なお,

特定個人情報は,番号法第19条各号のいずれかに該当する場合を除き,提供して

はならない。

4 第4項関係

本項は,実施機関が目的外利用又は外部提供をする場合は,個人情報業務登録簿

及び個人情報ファイル登録簿に登録しなければならない旨を規定したものである。

5 第5項関係

(1) 本項は,実施機関が目的外利用等をしたときは,実施機関が別に定める場

合を除いて,速やかにその事実を本人に通知しなければならないことを定めたも

のである。

(2) 「実施機関が別に定める場合」とは,次に掲げる場合をいう(施行規則第

7条第1項)。

ア 目的外利用等について法令又は条例の定めがあるとき。

イ 本人の同意があるとき。

ウ 出版,報道等により公にされているとき。

エ その他審査会の意見を聴いて,相当の理由があると実施機関が認めるとき。

(3) 本人への通知は,保有個人情報目的外利用(外部提供)通知書(施行規則

様式第3号)により行う。ただし,やむを得ない理由があるときは,口頭又は告

示により行うものとする(施行規則第7条第2項)。

6 第6項関係

(1) 「必要に応じ」とは,提供する保有個人情報の内容,提供の形態及び提供

先の利用目的,利用方法,保護措置の状況等を総合的に判断するものである。

(2) 「その他必要な制限」とは,保有個人情報の取扱者の限定,利用後の廃

棄,返却,取扱状況の報告などが考えられる。

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第12条(適正な維持管理)関係

(適正な維持管理)

第12条 実施機関は,個人情報の保有をするときは,個人情報の保護を図るため個

人情報管理責任者を定めるとともに,次に掲げる事項について必要な措置を講ずる

ことにより,個人情報について適正な維持管理を行わなければならない。

(1) 保有個人情報は,利用目的の達成に必要な範囲内で,正確かつ最新のもの

とすること。

(2) 保有個人情報の紛失,破壊,改ざん,き損,漏えいその他の事故を防止す

ること。

(3) 保有個人情報の保有が必要でなくなったときは,速やかに廃棄し,又は消

去すること。

2 前項第3号の規定にかかわらず,当該保有個人情報のうち,歴史的又は文化的な

価値を有するものとして保存する必要があると実施機関が認めるときは,廃棄し,

又は消去しないことができる。

(趣旨)

本条は,実施機関が保有個人情報の管理を適正に行うためには,保有個人情報の

漏えい,滅失及びき損の防止等のための必要な措置を講じ,安全性を確保すること

及び実施機関が適正に事務を遂行するためには,保有個人情報の正確性を確保する

ことが必要であることから定めたものである。

(解釈)

1 第1項関係

(1) 本項は,実施機関が個人情報の保有をするときは個人情報管理責任者を定

めるとともに,個人情報の適正な維持管理を図るために第1号から第3号までに

掲げる事項について,必要な措置を講じなければならないことを定めたものであ

る。

(2) 「個人情報管理責任者」は,課長の職にある者をもって充てる(施行規則

第8条)。具体的には次の者をいう。

ア 大崎市事務分掌規則(平成18年大崎市規則第3号)第2条に規定する課の

長,第3条第1項に規定する社会福祉事務所の事務を分掌する課の長及び第4

条に規定する会計課及び検査課の長

イ 大崎市病院事業組織規程(平成20年大崎市病院管理規程第15号)第3条

に規定する病院経営管理部の課の長,第5条に規定する科,室等の長

ウ 大崎市水道部事務分掌規程(平成18年大崎市水道管理規程第1号)第2条

に規定する課の長

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エ 大崎市教育委員会行政組織規則(平成18年大崎市教育委員会規則第6号)

第8条に規定する課の長,第12条に規定する支局及び支所の長,第13条に

規定する幼稚園,小学校及び中学校の長,第15条に規定する公民館の長並び

に第16条に規定する図書館の長

オ 大崎市選挙管理委員会規程(平成18年大崎市選挙管理委員会告示第1号)

第16条に規定する事務局及び支局の長

カ 大崎市公平委員会処務規則(平成18年大崎市公平委員会規則第4号)第2

条第3項に規定する書記長

キ 大崎市監査委員事務局規程(平成18年大崎市監査委員訓令第1号)第3条

に規定する事務局長

ク 大崎市農業委員会規程(平成20年大崎市農業委員会告示第2号)第30条

第1項に規定する事務局長及び事務所長

ケ 大崎市固定資産評価審査委員会条例(平成18年大崎市条例第42号)第3

条に規定する書記のうち課長職

コ 大崎市議会事務局処務規程(平成18年大崎市議会訓令甲第1号)第3条に

規定する事務局長

(3) 個人情報管理責任者は,主として個人情報の保管等の管理責任を負うもの

で,専ら実施機関内部における維持管理上の責任者として位置付けたものであ

る。

2 第2項関係

保有個人情報の保有が必要でなくなったときは,速やかに廃棄すべきではある

が,歴史的又は文化的価値を持つ資料で,その保存を目的とする施設等において保

存されることとなる保有個人情報についてはこの限りではないことを定めたもの

である。

(運用)

1 正確かつ最新なものとして維持管理する保有個人情報

第1項第1号で求められる「正確かつ最新なもの」は,あくまでも当該保有個人

情報に係る業務を実施していくために必要な範囲内のものである。したがって,当

然のことながら業務に関連して過去の記録を一定期間保存しておくもの(審議会名

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簿,予防接種問診票等),過去の記録に基づき,又はそれを利用して行う事務に関

するもの(保健師,ケースワーカーの相談記録等)については,最新でない記録が

そのまま保管されることがありうる。そこで,名簿等についてもその作成時点を明

記しておくことが望ましい。

2 実施機関は,「正確かつ最新なものとする」ために必要な措置としては,次のよ

うな措置を講じるものとする。

ア 個人情報を収集又は保有するときには,その情報に関する疑問点を解決してお

く。

イ 保有個人情報の保有に至る記録又は入力の誤りが生じないようチェック体制

を整える。

ウ 長期間保有している保有個人情報は,その情報の最新性を確保してから使用す

るとともに,保有途中でのデータ更新等の適切な措置を講じる。

エ 目的外の利用又は外部提供の禁止の例外として使用する保有個人情報は,利用

時に本人又は情報提供元に内容の変更がないかどうかの確認を取るようにする

などの配慮が必要である。

3 文書取扱規程との関係

第1項第3号の運用に当たっては,大崎市文書取扱規程(平成18年大崎市訓令

甲第11号)に基づく保存期間に従って保有個人情報を保管するものとする。し

たがって,条例上は文書取扱規程に基づく保存期間の経過をもって「保有個人情

報の保管等が必要でなくなったとき」として扱う。

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第13条(電子計算組織による処理の制限)関係

(電子計算組織による処理の制限)

第13条 実施機関は,個人情報取扱業務を電子計算組織を使用して処理する場合に

あっては,公益上の必要があり,かつ,個人情報の保護措置が取られているときを

除き,当該電子計算組織を実施機関以外のものと通信回線を用いて結合してはなら

ない。

2 実施機関は,前項の規定により実施機関以外のものと結合しようとするときは,

あらかじめ審査会の意見を聴かなければならない。

(趣旨)

本条は,実施機関以外と通信回線を用いて結合する場合の手続について規定した

ものである。

(解釈)

1 第1項関係

(1) 本項は,公益上の必要があり,個人の権利利益が侵害されるおそれがない

ような保護措置が執られている場合以外は,実施機関以外へのオンライン結合に

よる保有個人情報の提供を行うことができない旨を規定したものである。

(2) 「電子計算組織」とは,汎用電子計算機又はこれに類する機能を持つ機器

でオフィスコンピュータ,パーソナルコンピュータ若しくはワードプロセッサ等

をいう。

(3) 「公益上の必要」とは,オンライン結合という方法を用いて提供すること

に関して,市民等への行政サービス又は公共の福祉の向上等のための必要性をい

う。

(4) 「個人情報の保護措置」とは,当該結合先の保護措置のみならず,結合に

利用する通信回線についてのセキュリティも含まれる。

(5) 「実施機関以外のもの」とは,第11条第1項の解釈と同義である。した

がって,実施機関内部又は実施機関相互の必要なオンライン結合は本条の対象と

なるものではない。これは,実施機関であれば本条例による保護措置が確保され

ていることによるものであるが,実施機関内部又は実施機関相互のオンライン結

合であっても,当該保護措置の確認をすることは当然である。

(6) 「通信回線」とは,電話回線,光ファイバ-回線,無線回線等の通信回線

をいう。

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(7) 「結合」とはオンライン結合をいい,相手方が必要に応じていつでも保有

個人情報を入手できる状態になっていることをいう。したがって,電子メール送

信のように,電気通信回線で結ばれていても,通常相手方からのアクセスができ

ず,特定の時期に相手方にデータを送信するだけの場合は,該当しない。

3 第2項関係

本項は,実施機関が電子計算組織を実施機関以外のものと結合しようとするとき

は,個人情報保護の観点から慎重な取扱いをするためにその可否について事前に審

査会の意見を聴くことを要件としたものである。なお,オンライン結合後に,提供

する保有個人情報の項目の追加,提供先等を変更する場合についても審査会の意見

を聴くものとする。

(運用)

1 実施機関以外のものとのオンライン結合は,実施機関内すべての電子計算組織の

セキュリティに影響することが想定できるため,実施機関は,オンライン結合しよ

うとするときは,電算管理の担当課と十分協議しなければならない。

2 オンライン結合について,審査会の意見を聴く場合において,オンライン結合

後に提供する保有個人情報の項目の追加,提供先等の変更があらかじめ想定される

ときは,当該変更についても併せて審査会の意見を聴くこともできるものとする。

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第14条(委託等に伴う措置)関係

(委託等に伴う措置)

第14条 実施機関は,個人情報取扱業務の全部若しくは一部を実施機関以外のもの

に委託するとき,又は公の施設(地方自治法(昭和22年法律第67号)第244

条第1項に規定する公の施設をいう。以下同じ。)の管理を指定管理者(同法第2

44条の2第3項に規定する指定管理者をいう。以下同じ。)に行わせるときは,

個人情報の適正な維持管理について必要な措置を講じさせなければならない。

(趣旨)

本条は,実施機関が委託等(個人情報取扱業務を実施機関以外のものに委託する

こと及び公の施設の管理を指定管理者に行わせることをいう。以下同じ。)をする

場合に,保有個人情報の漏えい等を防止するため,当該委託等を受けた者(以下「受

託者等」という。)は,必要な個人情報の保護措置を講じなければならないことを

定めたものである。

(解釈)

1 本条は,実施機関の義務として,委託等をするときは,保有個人情報の漏えい防

止等の適正な維持管理について,受託者等に具体的な措置を求めるものである。

2 「実施機関以外のもの」とは,第11条第1項の解釈と同義である

3 「委託」とは,個人情報取扱業務の処理のすべて又は一部を実施機関以外のもの

へ依頼する契約のすべてをいい,一般に委託と称されるもののほか,印刷,筆耕及

び翻訳等の契約並びに使用料の収納の委託等の公法上の契約も含まれる。ただし,

地方自治法第252条の14から第252条の16までの規定により市の事務の

一部を他の地方公共団体に委託する場合は含まない。

具体例としては,次のようなものなどがある。

(1) 公金の収納,徴収に関する委託

(2) アンケート調査又は世論調査に関する委託

(3) 電算処理業務の委託

(4) 通知書等の封入・封かん作業の委託

(5) 公共事業に伴う用地補償業務等の委託

(6) コンピュータ関連機器の保守管理業務等

4 「個人情報の適正な維持管理について必要な措置」とは,受託者又は指定管理者

を選定するに当たっては,個人情報の保護に関して安全確保措置が講じられている

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ものを慎重に選定すること,委託契約又は指定管理者と締結する協定において契約

書,協定書,確認書,覚書その他これらに類する書類(以下「契約書等」という。)

に秘密の保持,安全確保,従事者への教育研修等委託又は公の施設の管理に係る個

人情報の保護について必要な事項を明記し,受託者又は指定管理者に対して必要な

個人情報の保護義務を契約書等で課すことなどをいう。

5 委託等については,実施機関の内部的な事務処理としてとらえるものであり,委

託等の業務の範囲内で受託者等に対して保有個人情報を手渡す行為は,条例に規定

する「実施機関以外のものに対する提供」(外部提供)とはならない。

このことから,受託者等に渡した保有個人情報に関して万一滅失,き損等の事故

が生じた場合においても,条例に基づく対外的な責任は第一義的には実施機関が負

うものである。ただし,事故に際しては,実施機関は,受託者等に損害賠償を求め,

あるいは契約を解除するなど制裁的措置をとることになる。

(運用)

実施機関が本条の規定に基づいて受託者等に対して必要な措置を講じる場合は,

別に定める「個人情報取扱業務の委託基準」に基づき,契約の中で次のような事項

を明らかにすることにより行うものとする。

(1) 秘密保持に関する事項

(2) 再委託の禁止又は制限に関する事項

(3) 指示目的外の使用及び第三者への提供の禁止に関する事項

(4) データの複写及び複製の禁止に関する事項

(5) 事故発生時における報告義務に関する事項

(6) データの委託及び搬送に関する事項

(7) データの保管及び廃棄に関する事項

(8) その他

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第15条(委託を受けたもの等の義務)関係

(委託を受けたもの等の義務)

第15条 実施機関から個人情報取扱業務の全部若しくは一部の委託を受けたもの

又は公の施設の管理を行う指定管理者は,当該委託又は管理に係る業務(以下「受

託業務等」という。)の範囲内で,個人情報の保護について実施機関と同様の義務

を負うものとする。

2 受託業務等に従事している者又は従事していた者は,当該受託業務等に関して知

り得た個人情報の内容をみだりに他人に知らせ,又は不当な目的に使用してはなら

ない。

(趣旨)

本条は,個人情報取扱業務を実施機関から受託したもの若しくは公の施設の管理を

行う指定管理者又は当該受託又は管理の事務に従事している者若しくは従事してい

た者が,当該事務を行うに当たって取り扱う個人情報に対して負わなければならない

義務について定めたものである。

(解釈)

1 第1項関係

(1) 本項は,受託者等が,受託業務等の範囲内では個人情報の保護について実

施機関と同様の具体的義務を負うことを定めたものである。

(2) 「実施機関と同様の義務」とは,原則的には第2章「個人情報の保管等の

制限」に規定されている実施機関の義務を指しており,主として,保管をはじめ

として個人情報を取り扱う際の一般的制限,収集の制限,利用及び提供の制限及

び個人情報の適正な維持管理上の義務等があげられる。

2 第2項関係

(1) 本項は,受託業務等に従事している者又は従事していた者は,実施機関の

個人情報を取り扱うことについて実施機関の職員と異なるところはなく,当該個

人情報の保護に関し直接的な責任を有することから,第3条第2項の実施機関の

職員と同様の義務を負うことを明らかにしたものである。

(2) 「従事している者又は従事していた者」とは,実施機関から委託を受けた

個人情報取扱業務又は公の施設の管理の事務に直接従事している者又は従事し

ていた者をいい,雇用形態を問わず,直接又は間接に事業主の統制監督の下に当

該事務に従事する者は従事者に含まれる。例えば,派遣社員やアルバイト又は従

事者がさらに自分の補助として使用している者等受託者との契約によらない雇

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人であっても当該事務に従事している場合等は,従事者に含まれる。また,直接

事務に従事していなくとも,指揮監督権限を有する立場にあり,委託又は公の施

設の管理に係る個人情報に関与することができる者は,従事者に含まれる。

(3) 「当該受託業務等に関して知り得た個人情報の内容をみだりに他人に知ら

せ,又は不当な目的に使用してはならない。」とは,第3条第2項の解釈と同義

である。

(運用)

「受託業務等に従事している者又は従事していた者」には,当該業務に関して知

り得た個人情報についての守秘義務のほか,第8章に規定する罰則の対象にもなる

ため,実施機関は委託等をする場合には,受託者等に対して守秘義務並びに罰則の

対象者及び対象となる行為等について周知するものとする。

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第3章 個人情報の開示等の請求

第1節 開示

第16条(開示請求権)関係

(開示請求権)

第16条 何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対し,当該実施機関

の保有する自己を本人とする保有個人情報の開示を請求することができる。

2 未成年者又は成年被後見人の法定代理人(以下単に「法定代理人」という。)(保

有特定個人情報にあっては,法定代理人又は本人の委任による代理人(以下これら

を総称して「代理人」という。))は,本人に代わって前項の規定による開示の請

求をすることができる。

3 保有個人情報のうち,死者を本人とする保有個人情報について,次に掲げる者(以

下「遺族」という。)は,この条例の定めるところにより,実施機関に対し,当該

実施機関の保有する当該保有個人情報の開示を請求することができる。

(1) 当該保有個人情報に係る本人の配偶者又は子

(2) 前号に掲げる者がない場合にあっては,当該保有個人情報に係る本人の血

族である父母

(3) 前2号に掲げる者がない場合にあっては,当該保有個人情報に係る本人の

血族である祖父母,孫又は兄弟姉妹

(趣旨)

本条は,自己に関する保有個人情報の開示請求を権利として何人にも認めるとと

もに,未成年又は成年被後見人及び死者の保有個人情報について開示請求できる者

を定めたものである。

(解釈)

1 第1項関係

(1) 本項は,何人も,自己に関する保有個人情報の開示を請求することができ

ることを定めたものである。

(2) 「何人も」とは,自然人すべてをいい,実施機関に自己に関する情報が保

有されている限り,市民に限らず他市町村の者や外国人も含まれる。

(3) 「自己を本人とする保有個人情報」とは,自分がその情報の本人となって

いる場合の情報をいい,開示請求をすることができるのは,本人の保有個人情報

に限られる。したがって,保有個人情報の本人の配偶者や家族等であっても,開

示請求することはできない。

2 第2項関係

(1) 本項は,代理で開示請求をすることができる者を未成年者又は成年被後見

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人の法定代理人に限るとしたものである。これは,開示請求が保有個人情報の本

人からの請求に対する当該本人への開示を前提としたものであり,本人が請求し

得る場合には,広く本人以外に代理請求を認めることは,本人の権利利益を損な

うおそれがあると認められることによるものである。

ただし,保有特定個人情報については,番号法による情報提供ネットワークの

導入に伴い不正な情報提供等がなされる懸念があり得ることから,開示請求,訂

正請求及び利用停止請求といった本人参加の権利の実質的な保障が重要である。

このため,その権利が容易に行使できるよう,番号法では情報提供等記録開示シ

ステムを整備して情報提供等の記録の開示等が容易に行われるようにするとと

もに,インターネット接続が困難で,かつ書面請求も困難な者についても容易に

開示請求権等を行使できるよう必要な措置を講ずるものとしている。このことか

ら,保有特定個人情報については,本人の委任による代理請求を認めるものであ

る。

(2) 「未成年者」とは,年齢が満20年に達しない者をいう。ただし,婚姻し

た者を除く(民法(明治29年法律第89号)第4条及び第753条)。

(3) 「成年被後見人」とは,後見開始の審判を受けた者をいう(民法第8条)。

(4) 「法定代理人」とは,民法上の法定代理人をいい,未成年者の場合は第一

次的には親権者(民法第818条),第二次的には未成年後見人(第839条)

であり,成年被後見人の場合は成年後見人(民法第843条)である。

(5) 「本人の委任による代理人」(以下「任意代理人」という。)とは,本人の

意思に基づいて開示請求等を代理する権限を委任された者をいう。

(6) 「本人に代わって前項の規定による開示の請求をすることができる」とは,

法定代理人が当該未成年又は成年被後見人に代わって行う開示の請求及び任意

代理人が行う開示の請求は,本人に代わって法定代理人及び任意代理人(以下総

称して「代理人」という。)が意思表示をなすことをいい,結果として,その効

果は,本人に帰属する。

なお,未成年者又は成年被後見人であっても,自ら開示請求をすることができ

る場合は,これを妨げるものではない。したがって,本人と法定代理人が重複し

て開示請求することができるものである。

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3 第3項関係

(1) 本項は,死者を本人とする保有個人情報の開示請求をすることができる者

を遺族に限るとしたものである。これは,開示請求を広く認めることは,死者の

権利利益を損なうおそれがあると認められることによるものである。死者の保有

個人情報の開示請求については,前述のとおり極力限定する必要性から民法上の

法定相続人を参考とし,かつ,生前の故人とより密接な関係にあると推測できる

者及び法定相続順位に考慮し,一定の者がいる場合には,その他の者は認めない

ように,段階的に範囲を限定した上で認めるものである。

(2) 「当該保有個人情報に係る本人の配偶者」とは,保有個人情報の本人であ

る死者と法律上の婚姻関係にある配偶者であり,婚姻意思をもって夫婦共同生活

を行い,社会的には夫婦と認められているにもかかわらず,法の定める婚姻の届

出手続を了していないなどのいわゆる内縁関係にあるものは,その関係を証明す

るのが困難であることから含まないものとする。

(3) 「子」とは,法律上の子をいう。

(4) 「前号に掲げる者がない場合」とは,それぞれ前号に掲げる者が元から存

在しない又は死亡していることをいい,遠隔地に居住していてその場にはいない

という場合等は含まない。したがって,死者の保有個人情報について,第1号に

規定する者がいる場合には,第2号及び第3号に規定する者は当該保有個人情報

の開示請求はできない。

(5) 「血族である」とは,自然血族及び法律上血縁が擬制される法定血族(養

親)をいう。

(6) 本項は,各号の間では死者の保有個人情報に係る開示請求権の優位性を規

定するものであるが,同一の号内においての優位性はない。例えば,第1号に規

定する「子」が複数いる場合は「子」全員に開示請求権を認めるものである。

(運用)

保有特定個人情報の開示請求については,例えば,個人番号を除いた個人情報を

開示請求すれば足りる場合に,任意代理人による開示請求を認めてもらいたいとの

理由から,必要な範囲を超えて開示請求が行われることも考えられる。社会保障・

税番号制度においては,情報提供ネットワークの導入に伴い,開示請求による本人

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参加の権利を実質的に保障することを重要とし,容易に権利行使ができるよう任意

代理人からの開示請求を認めることとしている。この趣旨から逸脱することのない

よう,請求者が求める内容をよく確認するなどして,適切に開示請求が行われるよ

う運用しなければならない。

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第17条(開示請求の手続)関係

(開示請求の手続)

第17条 前条の規定による開示の請求(以下「開示請求」という。)は,次に掲げ

る事項を記載した書面(以下「開示請求書」という。)を実施機関に提出してしな

ければならない。

(1) 開示請求をする者の氏名及び住所

(2) 開示請求に係る保有個人情報を特定するに足りる事項

(3) 前2号に掲げるもののほか,実施機関が定める事項

2 前項の場合において,開示請求をする者は,実施機関が定める方法により,開示

請求に係る保有個人情報の本人であること(前条第2項の規定による開示請求にあ

っては,開示請求に係る保有個人情報の本人の法定代理人(保有特定個人情報にあ

っては,代理人)であること,同条第3項の規定による開示請求にあっては,開示

請求に係る保有個人情報の本人の遺族であること)を明らかにしなければならな

い。

3 実施機関は,開示請求書に形式上の不備があると認めるときは,開示請求をした

者(以下「開示請求者」という。)に対し,相当の期間を定めて,その補正を求め

ることができる。この場合において,実施機関は,開示請求者に対し,補正の参考

となる情報を提供するよう努めなければならない。

(趣旨)

本条は,個人情報の開示請求に関する具体的手続を規定したものである。

(解釈)

1 第1項関係

(1) 保有個人情報の開示請求は,開示請求の権利の行使として,実施機関に保

有個人情報の開示の諾否の決定という行政処分を法的に求める手続であり,場合

によっては,審査請求又は行政事件訴訟になることも予想されるため,事実関係

を明確にしておく必要性から書面により行うこととしたものである。

(2) 本条各号は,請求書に記載すべき必要的記載事項であり,これらの記載は,

開示請求をする際の要件となるものである。開示請求は原則として保有個人情報

開示請求書(施行規則様式第4号)によるものとするが,必ずしも同様式による

ことを要せず,本条各号に掲げる事項の記載があればよいものとする。

ア 「氏名及び住所」は,実際に請求行為を行う者の氏名及び住所をいう。した

がって,法定代理人による開示請求の場合は,当該法定代理人の氏名又は法人

の名称及び住所又は法人の所在地をいう。

イ 「開示請求に係る保有個人情報を特定するに足りる事項」とは,開示請求を

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受けた実施機関の職員が,当該開示請求に係る保有個人情報を特定するために

必要な事務の名称及び内容等をいう。

ウ 「実施機関が定める事項」とは,具体的には,保有個人情報開示請求書中に

定める事項をいう。

2 第2項関係

(1) 本項は,保有個人情報の開示請求が条例によりその権利を認められた本人

若しくはその法定代理人(保有特定個人情報にあっては,代理人)又は遺族以外

の者により行われることを防ぐために,必要な手続を定めたものである。

(2) 請求をする者は,本人,法定代理人(保有特定個人情報にあっては,代理

人)又は遺族であることを明らかにするため,開示請求権を有する者であること

を確実に証明することができるものを提示又は提出しなければならない(施行規

則第10条)。

(3) 法定代理人による開示請求の場合は,法定代理人の身分を明らかにする書

類のほか,被代理人が未成年者又は成年被後見人であること及び請求を行おうと

する者がその親権者,未成年後見人又は成年後見人であることを証明する書類の

提示又は提出が必要となるものである。

(4) 任意代理人による開示請求の場合は,任意代理人の身分を明らかにする書

類のほか,請求を行おうとする者が本人の意思に基づいて委任された者であるこ

とを証明する書類の提示又は提出が必要となるものである。

(5) 死者の保有個人情報の遺族による開示請求の場合は,遺族の身分を明ら

かにする書類のほか,保有個人情報の本人が死者であること及び当該死者の遺族

であることを証明する書類の提示又は提出が必要となるものである。

3 第3項関係

(1) 「形式上の不備があると認めるとき」とは,請求事項に記載漏れがある場

合や,「開示請求に係る保有個人情報を特定するに足りる事項」の記載が不十分

であって,特定することができない場合等をいう。

(2) 本条例に基づく保有個人情報の開示請求は大崎市行政手続条例(平成18

年大崎市条例第15号)第2条第4号にいう「申請」に該当する。同条例第9条

第2項では「申請をしようとする者又は申請者の求めに応じ」申請に必要な情報

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の提供に努めることを規定していることに対し,本項では請求者から求めがなく

ても,補正の参考となる情報の提供に努める努力義務がある。

(運用)

1 請求の受付窓口

開示請求等の受付は,原則としてセンター又は市政情報コーナー(以下「個人情

報窓口」という。)で行う。開示請求に係る保有個人情報を取り扱う主管課に問合

せがあった場合には,内容についての相談に応じるとともに,直接請求書が提出さ

れた場合には形式審査をして受付するものとする。

2 郵送による請求の扱い

郵送による開示請求については,遠隔地に居住していること,病気等により個人

情報窓口に赴くことができないこと,その他やむを得ないと認められる場合のみ認

めるものとする。なお,電話,ファクシミリ及び電子メールによる開示請求は,本

人確認が困難であることなどから認めないものである。

3 開示請求に係る具体的な事務の取扱いについては,大崎市個人情報保護事務取扱

要綱(以下「事務取扱要綱」という。)に定めるところにより行うものとする。

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第18条(保有個人情報の開示義務)関係

(保有個人情報の開示義務)

第18条 実施機関は,開示請求があったときは,開示請求に係る保有個人情報に次

の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが含まれている場

合を除き,開示請求者に対し,当該保有個人情報を開示しなければならない。

(第1号から第8号までは別記)

(趣旨)

1 本条は,開示請求があったときは,不開示情報が含まれている場合以外は,実施

機関には当該保有個人情報を本人に開示しなければならない義務が生じることを

定めたものである。

2 本条の基本的な考え方は,開示請求する者の請求する権利と,開示請求に係る保

有個人情報に含まれる他の個人又は法人その他の団体の権利利益及び公益との調

和を図ることにある。

(解釈)

1 開示請求に対しては,原則としてすべて開示すべきであるが,開示請求に係る保有

個人情報に他の個人に関する情報が含まれている場合又は行政の公正な執行を通

して公共の利益を確保するような合理的な理由があるときなどには,限定的に開示

しないことができることとしたものである。

2 「次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが含まれて

いる場合を除き・・・開示しなければならない」とは,実施機関に対して開示する

かどうかの裁量を認めたものではなく,本項各号のいずれかに該当しない限りは,

実施機関に保有個人情報の開示義務が生じるものである。

(運用)

1 本条と地方公務員法上の守秘義務との関係

(1) 地方公務員法第34条第1項は,守秘義務を公務員の服務規律の一つとし

て定めているが,本項における不開示情報は,保有個人情報の本人への原則開示

の例外として定めたものであり,両者は,その趣旨,目的を異にしているため,

不開示情報と保有個人情報に関する守秘義務が一致するものではない。

(2) 地方公務員法第34条第1項等の守秘義務によって保護される秘密は必ず

しも公的な秘密に限られるものではなく,市税の課税額等のような個人的秘密も

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含まれる。しかし,開示請求に係る保有個人情報が法律上の守秘義務に該当する

場合であって,しかも,それが個人的秘密を保護するためのものである場合には,

本人に対して開示を拒む理由がないことになる。したがって,本人の開示の請求

を拒否できるのは,当該保有個人情報が公的秘密を保護するために,たとえ本人

であっても開示を禁止していることが明らかな場合をいう。

(3) 開示請求があった保有個人情報を開示するかどうか検討する場合は,地

方公務員法上の守秘義務にいう秘密であるか否かにかかわらず,本項において列

挙した不開示情報に該当するか否かを個別に判断することになる。

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第18条第1号(法令秘の個人情報)関係

(1) 法令又は条例の規定により開示することができないとされている情報

(趣旨)

本号は,法令又は他の条例により開示することができないとされている個人情報

は,開示しないことができることを規定したものである。

(解釈)

1 「法令」とは,第8条第3項における解釈と同義である。

2 「開示することができないとされている情報」とは,法令が明文の規定をもって

本人に開示することを禁止している情報のほか,法令の趣旨,目的等に照らして,

本人に開示することを禁止している情報と解釈される場合を含む。ただし,当該法

令の規定が,保有個人情報の本人以外の第三者に対する開示を禁止している場合

は,本号には該当しないものである。

3 本号に該当する情報が含まれていると考えられる情報の例

(1) 労働組合法(昭和24年法律第174号)第21条第1項に基づく労働委

員会の会議録(公益上必要があると認めて公開したときを除く。)

(2) 公害紛争処理法(昭和45年法律第108号)第37条,第42条の11

に基づく公害紛争処理に係る調停等の会議資料

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第18条第2号(他の個人情報)関係

(2) 開示請求に係る保有個人情報の本人(第16条第3項の規定による開示請

求にあっては当該開示請求者を含む。以下同じ。)以外の個人に関する情報(事

業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,当該情報に含まれる

氏名,生年月日その他の記述等により開示請求に係る本人以外の特定の個人を識

別することができるもの(他の情報と照合することにより,開示請求者以外の特

定の個人を識別することができることとなるものを含む。)若しくは個人識別符

号が含まれるもの又は当該本人以外の特定の個人を識別することはできないが,

開示することにより,なお開示請求に係る本人以外の個人の権利利益を害するお

それのあるもの。ただし,次に掲げる情報を除く。

ア 法令若しくは条例の規定により又は慣行として当該本人が知ることができ,

又は知ることが予定されている情報

イ 人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,開示することが必要である

と認められる情報

ウ 当該個人が公務員等(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2条第

1項に規定する国家公務員(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)

第2条第4項に規定する行政執行法人の役員及び職員を除く。),独立行政法

人等の役員及び職員,地方公務員法(昭和25年法律第261号)第2条に規

定する地方公務員,公社の職員並びに地方独立行政法人の役員及び職員をい

う。)である場合において,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるとき

は,当該情報のうち,当該公務員等の職,氏名及び当該職務遂行の内容に係る

部分

(趣旨)

1 本号は,開示請求に係る保有個人情報の本人以外の個人の権利利益を保護する観

点から,当該本人以外の特定の個人が識別され,又は識別され得るような情報が含

まれている保有個人情報については,開示をしないことを定めたものであり,併せ

て当該本人以外の特定の個人を識別することはできないが,開示することにより,

なお個人の権利利益が害されるおそれのある情報が含まれている保有個人情報に

ついても開示をしないことを定めたものである。

2 本号ただし書は,個人の権利利益を保護する観点からは不開示とする必要のない

ものや,公益上開示する必要性が認められる情報,又は当該個人が公務員等(国家

公務員,独立行政法人等の役員及び職員,地方公務員,公社の職員並びに地方独立

行政法人の役員及び職員をいう。)である場合において,当該情報がその職務の遂

行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当該公務員等の職,氏名及び職務遂

行の内容に係る部分については,不開示情報に該当しないこととしたものである。

(解釈)

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1 「開示請求に係る保有個人情報の本人(第16条第3項の規定による開示請求に

あっては当該開示請求者を含む。以下同じ。)以外の個人に関する情報」

この場合の「本人」とは「開示請求に係る保有個人情報の本人」及び遺族による

開示請求の場合には当該「開示請求をした遺族」をいう。代理人による開示請求の

場合は,当該未成年者又は成年被後見人及び委任をした者が「本人」であり,代理

人は「本人」に含まれない。仮に代理人が開示請求をした保有個人情報に当該代理

人個人に関する情報が含まれる場合は,「本人以外の個人に関する情報」に該当す

る。

2 「個人に関する情報」とは,第2条第2号の「個人に関する情報」の解釈と同義

であり,通常個人を識別する際に用いられる氏名,住所,生年月日等の基本的事項

はもとより,思想,信条,信心の状況,病歴,成績,職歴,家族状況,親族関係,

所得,財産等の個人に関するすべての情報をいう。また,個人に関する情報であれ

ば,住所,国籍にかかわらず,外国人を含むあらゆる個人の情報が対象になる。

3 「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は,個人に関する情報としての側面

を持つものの,事業に関する情報であるので,法人等に関する情報と同様の基準に

より,不開示情報に該当するか否かを判断することが適当であることから,本号の

個人に関する情報から除外したものである。

4 「その他の記述等」は,第2条第2号の解釈と同義である。

5 「本人以外の特定の個人を識別することができるもの」とは,当該情報から当該

本人以外の特定の個人が識別できるものであり,氏名を含んでいる場合のほか,住

所,役職名,個人別に付された番号等により本人が識別できる場合も含まれる。

6「他の情報と照合することにより,開示請求者以外の特定の個人を識別することが

できることとなるもの」とは,当該情報のみでは当該本人以外の特定の個人を識別

できないが,他の情報と照合することにより,当該本人以外の特定の個人を識別す

ることができることとなるものをいう。なお,「他の情報」には,公知の情報や,

一般人が通常入手し得る情報が含まれるが,特別の調査をすれば入手し得るような

情報については含まれない。

7 「特定の個人を識別することはできないが,開示することにより,なお開示請求

に係る本人以外の個人の権利利益を害するおそれがあるもの」

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例えば,個人の著作物であって個人識別性が認められない未発表の研究論文等の

情報が該当するものである。つまり,仮に個人識別性のない保有個人情報であって

も,開示することにより,個人の権利利益が害されるおそれのあるものがあれば,

これを不開示とする合理的な必要性が認められるので,加えて不開示情報として明

示したものである。この判断は,本人等以外の個人の正当な利益を侵害することに

なるか否かで行うものである。この場合には,両者の関係及び保有個人情報の内容

等を十分考慮して,個別に判断しなければならない。

8 本制度にいう「個人の権利利益」は,個人のプライバシーから社会生活上の利益

そして経済的利益に至る幅広いものと考えられている。したがって,本人等以外の

個人に関する情報を第三者である開示請求者に明らかにすることは不利益になる

ため,開示しないこととなる。

9 他の個人情報が含まれている情報の例

(1) 農地紛争処理に関する記録

(2) 市民からの対人関係に関する相談記録

(3) 市民相談記録

(4) 学校事故報告

10 ア関係

(1) 「法令若しくは条例の規定により(当該本人が知ることができ,又は知る

ことが予定されている情報)」

法令の規定により何人でも閲覧することができると定められている個人に関

する情報のほか,本人等が知ることができると定められている個人に関する情報

は,その部分については本人等が容易に入手できる情報であるから,不開示情報

には該当しないということであり,閲覧を利害関係人にのみに限って認めている

ものは含まない。

なお,法令に何人でもと規定されていても,請求の目的等により制限されてい

る場合は,実質的には何人にも閲覧を認めるという趣旨でないと解されるので,

この規定には該当しない。

(2) 「慣行として(当該本人が知ることができ,又は知ることが予定されてい

る情報)」

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一般に公表されている,又は公表することが予定されている情報であり,これ

を開示しても,個人の権利利益を害するものではないと認識される情報又は個人

の権利利益を害するおそれがあるとしても,受忍すべき範囲内にとどまると考え

られるものが該当するものである。例えば,被表彰者の氏名,市主催で行われる

懇談会等に出席した相手方の職,氏名などがこれに当たるものである。その他こ

の情報に該当するものとしては,次のようなものがある。

ア 公表することを目的として作成された情報

イ 当該個人が公表されることについて了承し,又は公表されることを前提とし

て提供した情報

ウ 個人が自主的に公表した資料等から何人でも知り得る情報

エ 従来から慣行上公表している情報であって,公表しても社会通念上,個人の

プライバシーを侵害するおそれがないと認められるもの

11 イ関係

「開示することが必要であると認められる情報」

(1) 開示することにより侵害される当該本人以外の個人の権利利益よりも,当

該本人を含む人の生命,健康,生活又は財産を保護する必要性が上回るときには,

当該本人以外の個人に関する情報を開示する必要性と正当性が認められること

から,不開示情報から除くこととしたものである。開示することが必要かどうか

の判断は,不開示により保護される第三者の利益と開示により保護される利益に

ついて,個別の事案に応じて慎重に比較衡量した上で判断することになる。

なお,人の生命,健康等に現実に被害が発生している場合に限らず,将来的に

これらが侵害される可能性が高い場合も含まれる。

(2) 本号ただし書の規定により開示しようとする場合には,当該第三者の権利

利益を保護するため,開示決定に先立ち,第23条第2項第1号の規定により,

当該本人等以外の第三者に対して意見を聴かなければならない。

12 ウ関係

「公務員等・・・である場合において,当該情報がその職務の遂行に係る情報で

あるときは,当該情報のうち,当該公務員等の職,氏名及び当該職務遂行の内容に

係る部分」

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(1) 公務員等といえども,個人としての権利利益を保護される必要がある一方,

説明責任の観点から,公務員等の職務遂行に係る情報のうち公務員等の職,氏名

及び職務遂行の内容に係る部分を,不開示情報から除くこととしたものである。

(2) 独立行政法人等は,国とは別の法人格を有するが,従来,国の一部を構成

していたものであり,現在も国から事務事業等の委託を受ける等,公益性の高い

事務事業を遂行しているとともに,独立行政法人等の保有する個人情報の保護に

関する法律の成立に伴い,独立行政法人に対しても,その保有する個人情報の適

正な取り扱いが義務付けられているものである。また,地方独立行政法人法の成

立を受け,今後,各地方公共団体で設立され,又は設立を検討することになると

考えられるが,その構成及び取り扱う事務事業の性質は,独立行政法人等と同様

であるとともに,個人情報保護法において,地方公共団体に対し,地方独立行政

法人の保有する個人情報の適正な取扱いの確保のため,必要な措置を講ずること

に努めなければならないとされている。このことから,独立行政法人等は国と,

地方独立行政法人は地方公共団体と同列の機関として位置付け,取扱いを同じく

したものである。

(3) 「職」とは,当該公務員等の属する組織の名称と職名(役職名,補職名を

含む。)をいう。

(4) 「当該職務遂行の内容に係る部分」とは,公務員等がその機関の一員とし

て,その担当する職務を遂行する場合における当該活動についての情報をいうも

のであり,公務員等の住所,電話番号,学歴,健康状態等明らかに個人に関する

情報であるものや,勤務態度,勤務成績,処分歴等職務に関する情報ではあるが

職員等としての身分取扱いに係る情報などは,「職務の遂行に係る情報」には当

たらない。

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第18条第3号(法人等情報)関係

(3) 法人等に関する情報又は開示請求者以外の事業を営む個人の当該事業に関

する情報が含まれている場合であって,開示することにより,当該法人等又は当

該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益が損われると認められるもの。た

だし,人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,開示することが必要であ

ると認められる情報を除く。

(趣旨)

1 本号は,法人等又は事業を営む個人の事業活動の自由を原則として保障しよう

とする趣旨であり,開示することにより法人等又は事業を営む個人の権利,競争

上の地位その他正当な利益を損なうおそれがある情報が記録されている保有個

人情報については,開示をしないことを定めたものである。

2 本号ただし書は,人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,開示するこ

とが必要であると認められる情報が記録されている保有個人情報については,法

人等に関する情報で本号本文に該当する場合であっても,不開示情報には該当し

ないこととしたものである。

(解釈)

1 「法人等」

本号の「法人等」とは第2条第6号と同様である。

2 「開示請求者以外の事業を営む個人」

(1) 「開示請求者以外の」という限定が付されているのは,開示請求者自身が,

事業を営む個人であることがありうるが,その場合には,本人の「事業を営む個

人の当該事業に関する情報」を不開示にする必要がないためである。

(2) 「事業を営む個人」については,個人に関する情報としての側面を持つも

のの,事業に関する情報であるので,法人等に関する情報と同様の基準により,

不開示情報に該当するか否かを判断することが適当であることから,本号で規定

しているものである。当該情報に該当するものとしては,事業内容,事業用資産,

事業所得等の事業活動に直接関係する情報であり,当該事業活動と直接関係のな

い事業者個人に関する情報は,本項第2号の規定より判断する。

3 「当該事業に関する情報」

ここでいう事業は,営利・非営利を問わず,事業活動に関する一切の情報をいう。

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4 「権利,競争上の地位その他正当な利益が損なわれると認められるもの」

該当する情報としては,次のようなものがあるが,不利益を被っても「正当な利

益」を侵害されたとはいえない場合は該当しない。

(1) 生産技術,営業,販売上のノウハウに関する情報であって,開示すること

により,法人等又は事業を営む個人の事業活動が損なわれると認められるもの

(2) 経営法人,経理,人事等の事業活動を行う上での内部管理に属する情報で

あって,開示することにより,法人等又は事業を営む個人の事業活動が損なわれ

ると認められるもの

(3) その他開示することにより,法人等又は事業を営む個人の名誉,社会的評

価,社会活動の自由等が損なわれると認められるもの

5 「開示することが必要であると認められる情報」

(1) 開示することにより侵害される法人等又は事業を営む個人の権利利益より

も,人の生命,健康,生活又は財産を保護する必要性が上回るときには,当該情

報を開示する必要性と正当性が認められることから,不開示情報から除くことと

したものである。開示するかどうかの判断は,不開示により保護される利益と開

示により保護される利益について,個別の事案に応じて慎重に比較衡量した上

で,判断することになる。

なお,人の生命,健康等に現実に被害が発生している場合に限らず,人の生命

等に対する危害又は侵害の未然防止,拡大防止又は再発防止のため,開示するこ

とが必要であると認められる情報も含まれる。

(2) 本号ただし書の規定により開示しようとする場合には,開示決定に先立ち,

第23条第2項第1号の規定により,当該法人等又は事業を営む個人に対して意

見を聴かなければならない。

6 本号に該当する情報が含まれると考えられる情報の例

(1) 会社の内部管理重要事項を記録した不当労働行為事件調書

(2) 訴訟関係資料

(3) 労働争議関係資料

(4) 消費生活相談の記録

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第18条第4号(犯罪予防等関係情報)関係

(4) 開示することにより,犯罪の予防又は捜査,人の生命,健康,生活又は財

産の保護その他の公共の安全と秩序の維持に支障が生ずると認められる情報

(趣旨)

本号は,市が公共の安全と秩序を維持し,市民等の安全を確保する基本的責任を

有していることから,開示することにより,公共の安全と秩序の維持に支障が生ず

るおそれのある保有個人情報は,開示しないことを定めたものである。

(解釈)

1 「犯罪の予防」

刑事犯であると行政犯であるとを問わず,犯罪行為の発生を未然に防止すること

をいう。

なお,市民の防犯意識の啓発等防犯活動に関する情報のうち,開示しても犯罪を

誘発し,又は犯罪の実行を容易にするおそれがない防犯活動に関する情報について

は,本号に該当しない。

2 「犯罪の捜査」

捜査機関が犯罪があると思料するときに,公訴の提起などのために犯人及び証拠

を発見・収集・保全することをいう。

3 「その他の公共の安全と秩序の維持」には,刑事訴訟法以外の特別法により,臨

検・捜索・差押え,告発等が規定され,犯罪の予防・捜査とも関連し,刑事司法手

続に準ずるものと考えられる犯則事件の調査,独占禁止法違反の調査等や犯罪の予

防・捜査に密接に関連する破壊的団体(無差別大量殺人行為を行った団体を含む。)

の規制,暴力団員による不当な行為の防止,つきまとい等の規制,強制退去手続も

含まれる。

また,開示することにより,テロ等の人の生命,身体,財産等への不法な侵害や,

特定の建造物又はシステムへの不法な侵入・破壊を招くおそれがあるなど,犯罪を

誘発し,又は犯罪の実行を容易にするおそれがある情報や被疑者・被告人の留置・

勾留に関する施設保安に支障が生ずるおそれがある情報も,本号に該当する。

4 本号に該当する情報の例

(1) 現に捜査(暴力団員による不当な行為の防止等犯罪の予防・捜査に密接に

関連する活動を含む。)中の事件に関する情報で,開示することにより,当該捜

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査に支障を及ぼすおそれのあるもの

(2) 公共の安全と秩序を侵害する行為を行うおそれがある団体等に対する情報

収集活動に関する情報で,開示することにより,当該活動に支障が生ずるおそれ

のあるもの

(3) 開示することにより,犯罪の被害者,捜査の参考人又は情報提供者等が特

定され,その結果これらの人々の生命,身体,財産等に不法な侵害が加えられる

おそれがある情報

(4) 捜査の手法,技術,態勢,方針等に関する情報で,開示することにより,

将来の捜査に支障が生じ,又は将来の犯行を容易にするおそれのあるもの

(5) 犯罪の予防,鎮圧に関する手法,技術,態勢,方針等に関する情報で,開

示することにより,将来の犯行を容易にし,又は犯罪の鎮圧を困難ならしめるお

それのあるもの

(6) 犯罪行為の手口,技術等に関する情報であって,開示することにより,当

該手口,技術等を模倣するなど将来の犯罪を誘発し,又は犯罪の実行を容易にす

るおそれのあるもの

(7) 犯罪行為の対象となるおそれのある人,施設,システム等の行動予定,所

在地,警備・保安体制,構造等に関する情報であって,開示することにより,当

該人,施設,システム等に対する犯罪行為を誘発し,又は犯罪の実行を容易にす

るおそれのある情報

(8) 被疑者・被告人の留置・勾留に関する情報であって,開示することにより,

被留置者の逃亡等留置・勾留業務に支障が生ずるおそれがある情報

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第18条第5号(意思形成過程情報)関係

(5) 市,公社又は国等(国,独立行政法人等,他の地方公共団体,地方独立行

政法人その他の公共団体をいう。以下同じ。)の事務事業に係る意思形成過程に

おいて行われる市の機関内部若しくは機関相互の間若しくは公社内部又は市の機

関,公社及び国等の機関の相互の間における審議,検討,調査,研究等に関する

情報であって,開示することにより,当該事務事業又は同種の事務事業に係る意

思形成に著しい支障が生じると認められるもの

(趣旨)

本号は,開示することにより,市,公社又は国等の事務事業に係る意思形成過程

に支障が生ずるおそれのある情報については,開示しないことを定めたものであ

る。

これは,市,公社又は国等の最終的な意思は,機関内部での調査,研究,企画,

調整,検討又は関係機関との審議,協議等を繰り返しながら形成されるのが一般的

であり,このような最終的な意思決定に至る過程における情報は,開示することに

より,開示請求者本人に無用の誤解を与え,又は無用の混乱を招くおそれがあり,

また,機関内部の会議等における自由な意見交換,情報交換が阻害されるおそれが

あることによるものである。

こうしたことから,このような事務事業又は将来の同種の事務事業に係る意思形

成に支障が生ずると認められる情報については,開示しないこととしたものであ

る。

(解釈)

1 「その他の公共団体」とは,次のものをいう。

(1) 土地改良区,土地区画整理組合等の公共組合

(2) 地方住宅供給公社,地方道路公社及び港務局

(3) その他国又は地方公共団体が出資し,又は構成員となっている法人で,そ

の法人の設立の趣旨,目的等からみて,国,独立行政法人等,地方公共団体,公

社又は地方独立行政法人の行う事務事業に準ずるような公共性の高い事務を行

うもの

2 「事務事業に係る意思形成過程」

事務事業において,個別の事案については決裁等の事務手続は終了しているが,

いまだ当該事務事業の最終意思決定が終了していない段階をいう。

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3 「市の機関」

市の執行機関,議会及びこれらの補助機関のほか執行機関の附属機関を含むもの

である。

4 「審議,検討,調査,研究等に関する情報」

市内部又は市,公社,国等の相互の間において実施している事務事業の最終的な

意思形成が終了するまでの間に行う機関内部又は機関相互間の審議,検討,調査,

研究等に関する情報のほか,会議,協議文書等による照会,回答等において実施機

関が作成し,又は取得した情報をいう。

5 「開示することにより,当該事務事業又は同種の事務事業に係る意思形成に著し

い支障が生じると認められるもの」

(1) 最終的な意思決定までの一段階にある情報であって,開示することにより,

開示請求者本人に無用の誤解を与え,又は無用の混乱を招くおそれのあるもの

(2) 行政内部の各種会議,意見交換の記録等で,開示することにより,行政内

部の自由な意見交換又は情報交換が妨げられるおそれのある情報

(3) 調査,試験研究等の結果又は統一的に公にする必要のある計画,検討案等

で,開示することにより,開示請求者本人等の特定の者に不当な利益又は不利益

を与えると認められる情報

(4) 審議,検討,調査,研究等のために収集した資料等で開示することにより,

行政内部の審議等に必要な資料等を得ることが困難になるおそれのある情報

(5) その他開示することにより,当該事務事業又は将来の同種の事務事業に係

る意思形成に支障が生ずるおそれのある情報

6 意思形成過程情報に関する情報の例

(1) 各種表彰候補者の選考に関する検討資料や選考調書

(2) 生活保護の決定に係る調書類

7 本号は,意思形成過程における審議,検討,調査,研究等に関する情報を開示す

ることによって,当該又は同種の意思形成に著しい支障が生じる場合に限られるも

のである。したがって,意思形成後の事務事業の執行過程において支障が生ずるお

それのある場合は,次号(事業執行過程情報)において判断するものである。

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第18条第6号(事業執行過程情報)関係

(6) 市の機関,公社又は国等の機関が行う事務事業に関する情報であって,開

示することにより,次に掲げるおそれその他当該事務事業の性質上,当該事務事

業若しくは同種の事務事業の目的が達成できなくなり,又はこれらの事務事業の

公正若しくは円滑な執行に支障が生ずるおそれのあるもの

ア 監査,検査,取締り,試験又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し,

正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易に

し,若しくはその発見を困難にするおそれ

イ 契約,交渉又は争訟に係る事務に関し,市,公社又は国等の財産上の利益又

は当事者としての地位を不当に害するおそれ

ウ 指導,評価,選考,判定,診断等に係る事務に関し,当該事務若しくは将来

の同種の事務の目的が達成できなくなり,又はこれらの事務の公正若しくは円

滑な執行に支障が生ずるおそれ

エ 調査研究に係る事務に関し,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するお

それ

オ 人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障が生ずるおそ

カ 独立行政法人等,市若しくは他の地方公共団体が経営する企業又は地方独立

行政法人に係る事業に関し,その企業経営上の正当な利益を害するおそれ

(趣旨)

本号は,開示することにより市,公社又は国等が行う事務事業の公正又は円滑な

執行の確保に支障が生ずるおそれのある情報については,開示しないことを定めた

ものである。

(解釈)

1 「事務事業に関する情報」とは,当該事務事業に直接かかわる情報だけでなく,

当該事務事業の実施に影響を与える関連情報を含む。

2 「次に掲げるおそれ」とは,市の機関,公社又は国等の機関が行う事務事業に関

する情報について,開示することにより生ずる典型的な支障を具体的に示したもの

であるが,開示することによる支障はこれらに限定されるものではなく,このほか

の事務事業についても「当該事務事業若しくは同種の事務事業の目的が達成できな

くなり,又はこれらの事務事業の公正若しくは円滑な執行に支障が生ずるおそれ」

の要件に該当する場合は,不開示とされる。

3 「当該事務事業若しくは同種の事務事業の目的が達成できなくなり,又はこれら

の事務事業の公正若しくは円滑な執行に支障が生ずるおそれのある」情報とは,次

のようなものをいう。

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(1) 開示することにより,当該事務事業を実施する目的,意味が失われる情報

(2) 開示することにより,経費が著しく増大し,又は当該事務事業の実施が大

幅に遅れるなど行政が著しく混乱する情報

(3) 開示することにより,特定の者に不当な利益又は不利益を与えるおそれの

ある情報

(4) 国等の事務に関して市に協議されている情報で,国等においても当該事務

に関する情報を開示していないもの

(5) 国等からの依頼,委託等による調査等で,当該依頼,委託等の中に国等の

承認なしに公表してはならない旨の条件が付されているもの

(6) 国等からの依頼,委託等による行政の実態調査で,国等において公表する

まで公表してはならない旨の指示がある情報

(7) 全国を通じて統一的に公表する必要性が認められる情報

(8) その他開示することにより,当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業

の目的が達成できなくなり,又はこれらの事務事業の公正若しくは円滑な執行に

支障が生ずるおそれのある情報

4 ア関係

(1) 「監査,検査,取締り」とは,市又は国等の機関が権限に基づいて行う検

査,指導監査,取締り等をいう。具体的には,次の事務をいう。

ア 「監査」とは,主として監察的見地から,事務事業の執行又は財産の状況の

正否を調べることをいう。

イ 「検査」とは,法令の執行確保,会計経理の適正確保,物資の規格,等級の

証明等のために帳簿書類その他の物件等を調べることをいう。

ウ 「取締り」とは,行政上の目的による一定の行為の禁止又は制限について適

法及び適正な状態を確保することをいい,巡視,監視等の事務も含む。

(2) 「試験」とは,人の知識,能力等又は物の性能等を試すことをいい,市又

は国等が行う資格試験,入学試験,採用試験等がある。

(3) 「租税の賦課又は徴収」とは,行政目的のために国税や地方税を割り当て

て負担させたり,取り立てたりすることをいう。

(4) 当該事務に該当する情報の例

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税務調査,滞納者に対する今後の処理方針,監査方針

5 イ関係

(1) 「契約」とは,相手方との意思表示の合致により法律行為を成立させるこ

とをいう。

(2) 「交渉」とは,当事者が,対等の立場において相互の利害関係事項に関し,

一定の結論を得るために協議,調整などの折衝を行うことをいい,具体的には,

補償,賠償に係る交渉,用地交渉,企業誘致に係る交渉,労務上の交渉等がある。

(3) 「争訟」とは,訴訟及び行政不服審査法その他の法律に基づく不服申立て

をいう。

(4) 「不当に害するおそれ」とは,開示のもたらす支障が「不当」と判断でき

る場合に例外的に不開示とするものであり,具体的には,支障が重大で,不開示

とすることに合理性が認められる場合等に限定されることになる。

(5) 当該事務に該当する情報の例

公共用地等買収計画に係る処理方針,補償金の内容・金額等,争訟の方針(準

備書面,証人申請案等)

6 ウ関係

(1) 当該事務には,民間の法人等が行い,実施機関が保有しているものも含む。

(2) 「指導」とは,学力,能力,技術等の向上や生活状態,健康状態等の改善

のために行う指導又はこれらに類するものをいう。

(3) 「評価」とは,学業成績,勤務状況,功績等,個人の能力,性格,適性等

についての内容を判断し,見定めることをいう。

(4) 「選考」とは,個人の知識,能力,資質等の調査などに基づき,特定の職

業等の適任者を選任すること又はこれらに類することをいう。

(5) 「判定」とは,個人の知識,能力,資力,適性,技術等について,専門的

知識又は一定の基準に基づき試験,審査,検査等を行い,その結果から判断を行

うことをいう。

(6) 「診断等」とは,診断,相談及び推薦をいう。

ア 「診断」とは,疾病や健康状態等について,医学的見地から診察,検査等を

行うことをいう。

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イ 「相談」とは,生活,健康等に関する照会を受け,専門的見地等から相談を

行ったり,所見を述べたりすることをいう。

ウ 「推薦」とは,個人に何らかの利益をもたらす目的で評価を行うこという。

(7) 当該事務に該当する情報の例

ア 精神障害者関係記録

イ 採用試験等における面接者の心証等

ウ 生活保護ケースファイルその他社会福祉関係個別ファイルにおける担当者

の意見,今後の方針等

エ 選考試験における採点基準が分かる採点後の論文等

オ 調査書,内申書

カ カルテ,医師の意見書等

キ 面接関係書類

ク 児童相談所が作成する児童相談記録

ケ 各種貸付決定に関する書類

コ 各種表彰等の推薦資料

7 エ関係

(1) 「調査研究」とは,試験研究機関等における技術開発及び発明等に関する

調査,研究,試験等をいう。

なお,一般的に実施機関において行われる審議等のための調査・研究は,第5

号の「審議,検討,協議等に関する情報」で判断し,取締りや契約,選考等の各

種事務に付随して行われる調査は,各種事務に該当する。

(2) 当該事務に該当する情報の例

ア 動植物の生態調査及び研究

イ 遺跡等の発掘調査

ウ 知的所有権に関する情報又は調査研究途中段階の記録等

8 オ関係

(1) 「人事管理」とは,職員の任免,懲戒,給与,採用・配置,評定,学歴,

研修その他職員の身分や能力等の管理に関することをいう。

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(2) 人事管理に関する情報の中には,勤務評定や,人事異動,昇格等の人事構

想を開示することにより,公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがある

ものがあり,このような情報を不開示とするものである。

(3) 当該事務に該当する情報の例

職員の勤務評定

9 カ関係

(1) 「独立行政法人等,市若しくは他の地方公共団体が経営する企業に係る

事業」とは,地方公営企業法等の適用される事業をいい,独立行政法人等又は地

方独立行政法人に係る事業と併せて,企業経営という事業の性質上,第3号の法

人等に関する情報と同様の考え方から,その正当な利益を保護する必要があり,

これを害するおそれがあるものを不開示とするものである。

(2) 「企業経営上の正当な利益を害するおそれ」とは,法令等又は社会通念に

照らし,企業を経営するに当たって有すると考えられる正当な利益が害されるお

それがある場合をいう。

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第18条第7号(未成年等情報)関係

(7) 第16条第2項の規定により開示請求がなされた保有個人情報であって,

開示することにより当該保有個人情報の本人の利益に反すると認められるもの

(趣旨)

本号は,未成年者若しくは成年被後見人に代わって法定代理人が,又は本人に代

わって任意代理人が行った開示請求に係る保有個人情報について,開示することに

より当該保有個人情報の本人である未成年者若しくは未成年後見人又は当該本人

の権利利益を害するおそれがあると認められるものについては,開示しないことを

定めたものである。

(解釈)

1 「第16条第2項の規定により開示請求がなされた保有個人情報」

未成年者若しくは成年被後見人の法定代理人又は任意代理人により開示請求が

なされた保有個人情報である。

2 「当該保有個人情報の本人の利益に反すると認められるもの」

当該保有個人情報の性質,開示に至る状況や経過などから,客観的に判断して,

未成年者本人等と開示請求者との利益が相反するおそれがある情報をいい,具体的

には,次のようなものが考えられる。

(1) 法定代理人から虐待を受けている未成年者の児童相談記録,調査記録及び

一時保護した児童の状況等の記録等

(2) 法定代理人が未成年者等に対する権利侵害について刑事上の責任を問われ

ている場合等で,当該権利侵害に係る未成年者等の個人情報が記録されているも

3 「利益に反する」ことがあるかどうかの判断は,当該保有個人情報の性質,開示

に至る状況や経過などを総合的に勘案し,客観的に判断するものである。なお,本

号に該当する場合又は本号に該当しない場合であっても,他の不開示情報に該当す

る場合には,不開示とされることとなる。

(運用)

任意代理人による開示請求の場合にあっては,保有個人情報の本人の権利利益を

害するおそれがあるかどうかを客観的に判断できない場合等には,必要に応じて電

話等で本人の意思を確認し,本号の適用性を検討するものとする。

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第18条第8号(死者の情報)関係

(8) 第16条第3項の規定により開示請求がなされた死者を本人とする保有個

人情報であって,開示することが社会通念上適切でないと認められるもの

(趣旨)

本号は,死者の遺族により開示請求がなされた場合について,一定の遺族に開示

請求権を認めながらも,なお不開示とすることができる情報を定めたものである。

(解釈)

「社会通念上適切でない」とは,生前において秘密である旨の意思表示があった

ことが明確に判断できる場合などがこれに該当すると考えられる。

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第19条(部分開示)関係

(部分開示)

第19条 実施機関は,開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場

合において,不開示情報に該当する部分を容易に,かつ,開示請求の趣旨を損なわ

ない程度に区分して除くことができるときは,開示請求者に対し,当該部分を除い

た部分につき開示しなければならない。

2 開示請求に係る保有個人情報に前条第2号の情報(開示請求に係る本人以外の特

定の個人を識別することができるものに限る。)が含まれている場合において,当

該情報のうち,氏名,生年月日その他の開示請求者以外の特定の個人を識別するこ

とができることとなる記述等及び個人識別符号の部分を除くことにより,開示して

も,開示請求者以外の個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるとき

は,当該部分を除いた部分は,同号の情報に含まれないものとみなして,前項の規

定を適用する。

(趣旨)

本項は,原則開示の趣旨から,開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が記録

されている場合において,全体を不開示とするのではなく,開示可能な部分につい

ては開示すべき旨を定めたものである。

(解釈)

1 第1項関係

(1) 「容易に」とは,開示請求に係る保有個人情報の不開示情報が記録されて

いる部分とそれ以外の部分とを分離するに当たって,公文書を損傷することな

く,かつ,過大な経費や時間等が必要にならないことをいう。ただし,文書が大

量であり区分に多大な時間と労力を要する場合は該当しない。

(2) 「請求の趣旨を損なわない程度に」とは,不開示とする部分の保有個人情

報を除いて開示しても,開示請求者の趣旨の一部又は全部が充足される必要があ

ることをいう。

(3) 開示請求に係る保有個人情報のうち,不開示情報が記録されている部分の

分離について「容易に,かつ,開示請求の趣旨を損なわない程度に」区分して除

くことができないときは部分開示義務はない。例えば,不開示情報に該当する部

分とそうでない部分の区分の見極めが困難な場合や,電磁的記録の場合など区分

が技術的に困難な場合が該当する。

2 第2項関係

(1) 個人識別性のある部分を除けば,残りの部分を開示しても開示請求者以外

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の個人の権利利益を侵害するおそれがないと認められるときは,これを不開示に

する意義は乏しく,第1項の趣旨にそって部分開示とすることを定めたものであ

る。

(2) 個人識別性のある部分を除いても,なお,開示請求者以外の個人の権利利

益が侵害されるおそれがあるときは,前条第2号に該当し,不開示情報となる。

(3) 「みなして」という表現は,理論的には個人に関する情報であるが,個人

に関する情報とは取り扱わないこととしているためである。

(運用)

1 部分開示の方法

(1) 本人開示が認められない部分に覆いをするか,又は開示ができる部分を複

写したものをもって開示に供するものとする。

なお,開示が認められない部分が別ページに記載されており,取り外しが可能

である場合は,その部分を取り外して残りの部分のみ開示に供する。

(2) 開示請求者にとっては,不開示とされた箇所と分量も有用な情報であるこ

とも少なくない。したがって,実施機関は,電磁的記録など,不開示とした箇所

と分量が識別できない形で開示する場合は,当該箇所と分量を開示請求者に知ら

せる等努めるものとする。

2 決定について

(1) 開示請求に係る保有個人情報のうち,不開示情報が記録されている部分を

除いて開示する場合は当該保有個人情報の一部を開示する旨の決定をする。な

お,対象となる保有個人情報が大量であるため,決定はできるが,開示のための

準備に時間がかかる場合には,開示の日時について開示請求者と協議して理解を

得ること。

(2) 開示請求に係る保有個人情報のうち,不開示情報が記録されている部分の

分離について「容易に,かつ,開示請求の趣旨を損なわない程度に」区分して除

くことができないときは当該保有個人情報については全部を不開示とする旨の

決定をする。

3 電磁的記録に記録されている保有個人情報は,保存している媒体の種類ごとに,

閲覧,視聴又は写しの交付等を行うが,開示することが技術的に困難なとき,又は

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プログラムの変更等に多額の経費が見込まれるときは,可能な方法により行うもの

とする。なお,電磁的記録の部分開示をする場合は,開示ができる部分とできない

部分とが適当な方法により容易に区分できるときには,たとえば,開示ができない

部分を特定の記号に置き換え,又は表示されないようにするなど,開示ができない

部分について閲覧又は視聴ができない措置を講じ,開示ができる部分についてのみ

開示を行うものとする。

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第20条(裁量的開示)関係

(裁量的開示)

第20条 実施機関は,開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場

合であっても,個人の権利利益を保護するため特に必要があると認めるときは,開

示請求者に対し,当該保有個人情報を開示することができる。

(趣旨)

本条は,開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合であって

も,個人の権利利益を保護するため特に必要があると認めるときは,開示請求者に対

し,当該保有個人情報を開示することができることを定めたものである。

(解釈)

1 「個人の権利利益を保護するため特に必要があると認めるとき」とは,実施機関

は,開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合であっても,不

開示情報の規定によって保護される利益と個人の権利利益を保護する必要性を個

別の事案に応じて慎重に比較衡量して判断し,個人の権利利益保護上,開示するこ

との利益が優越し,特に開示する必要があると認めるときに,当該保有個人情報を

開示することができることとするものである

2 開示請求者の保有個人情報に,開示請求者以外の第三者の情報が含まれる場合

は,当該第三者の権利利益の保護に配慮するために,第23条第2項第2号の規定

により,当該第三者の意見を聴かなければならない。

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第21条(保有個人情報の存否に関する情報)関係

(保有個人情報の存否に関する情報)

第21条 開示請求に対し,当該開示請求に係る保有個人情報が存在しているか否か

を答えるだけで,不開示情報を開示することとなるときは,実施機関は,当該保有

個人情報の存否を明らかにしないで,当該開示請求を拒否することができる。

(趣旨)

開示請求に対しては,通常,当該開示請求に係る保有個人情報の存否を明らかに

し,開示決定等をすべきであるが,情報の性質により,当該保有個人情報が存在す

る又は存在するが不開示情報に当たると回答しただけで,不開示情報として保護す

べき利益が害される場合もあることから,保有個人情報の存否を明らかにしないで

開示請求を拒否することができることを定めたものである。

(解釈)

1 「当該開示請求に係る保有個人情報が存在しているか否かを答えるだけで,不開

示情報を開示することとなるとき」とは,開示請求者に対し,保有個人情報が存在

する,存在するが不開示情報に当たる又は存在しないと回答するだけで不開示情報

を開示した場合と同様の結果をもたらし,不開示情報として保護すべき利益が害さ

れる場合をいう

2 本条を適用して開示請求を拒否すべき保有個人情報は,実際に存在するか否かに

かかわらず,常に存否を明らかにしないで開示請求を拒否するものである。したが

って,存在するときには開示請求を拒否し,存在しないときには不存在の決定をす

るというものではない。

3 本条に該当する事例としては,次のようなものが考えられる。

(1) 特定の病歴に関する情報

(2) 表彰候補者に関する情報

(3) 捜査関係事項の照会回答に関する情報

(運用)

1 本条により開示請求を拒否する場合は,第22条第1項の規定に基づき開示請求

を拒否する決定を行うこととなる。当該決定は,行政処分に当たるものであるから,

実施機関は,この決定に際し,必要にして十分な拒否理由を提示することが義務付

けられ,また,この決定に不服のあるものは,行政不服審査法の規定による審査請

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求及び行政事件訴訟法の規定に基づく訴訟により救済の道が開かれているもので

ある。

2 存否応答拒否については,例外的な規定であること,また,個人情報という情報

の性質上,本人の関与が予定されており,適用に当たっては厳格に解釈し,その誤

用又は濫用を防止しなければならない。

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第22条(開示請求に対する決定等)関係

(開示請求に対する決定等)

第22条 実施機関は,開示請求があった日から起算して15日以内に,開示請求に

係る保有個人情報の全部若しくは一部を開示する旨の決定,当該保有個人情報を開

示しない旨の決定,前条の規定により開示請求を拒否する旨の決定又は当該保有個

人情報を保有していない旨の決定(以下「開示決定等」と総称する。)をしなけれ

ばならない。ただし,第17条第3項の規定により補正を求めた場合にあっては,

当該補正に要した日数は,当該期間に算入しない。

2 実施機関は,開示決定等をしたときは,開示請求者に対し,速やかに決定の内容

及び開示の実施に関し実施機関が定める事項を書面により通知しなければならな

い。ただし,開示請求書の受理後直ちに開示する場合は,この限りでない。

3 実施機関は,開示請求に係る保有個人情報の全部を開示する旨の決定以外の開示

決定等をしたときは,その理由(その理由がなくなる期日をあらかじめ明示するこ

とができるときは,その理由及び期日)を前項の書面に具体的に記載しなければな

らない。

4 実施機関は,事務処理上の困難その他正当な理由により第1項に規定する期間内

に同項の決定をすることができないときは,同項に規定する期間を45日以内に限

り延長することができる。この場合において,開示請求に係る保有個人情報が著し

く大量であり,事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがあることを理由に期間の

延長をするときは,実施機関は,開示請求に係る保有個人情報のうち相当の部分に

つき当該期間内に開示決定等をし,残りの保有個人情報については,当該延長期間

内に開示決定等をするものとする。

5 前項の規定により第1項に規定する期間を延長する場合は,実施機関は,開示請

求者に対し,延長の期間及び延長する理由を書面により通知しなければならない。

(趣旨)

本条は,保有個人情報の開示請求に対する決定等及びその手続について規定した

ものである。

(解釈)

1 第1項関係

(1) 本項においては,開示請求に対する決定等は,より迅速に行われることが

望ましいことから,実施機関に対し,開示請求があった日から起算して15日以

内に開示請求に対する決定等を行うことを義務付けたものである。

(2) 「開示請求があった日」とは,個人情報窓口等において開示請求書を受付

した日をもって取り扱うものとする。

(3) 「開示請求があった日から起算して15日以内」の末日が市の休日(大崎

市の休日を定める条例(平成18年大崎市条例第2号)第1条第1項に規定する

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市の休日をいう。)に当たるときは,その翌日をもって満了日とする。

2 第2項関係

本項は,実施機関が開示決定等をしたときは,速やかに当該開示決定等の内容を

開示請求者に通知しなければならないことを規定したものである。

3 第3項関係

(1) 本項は,実施機関が請求の全部を開示する決定以外の決定をした場合には,

請求者に対する不利益処分になることから,前項の規定による通知書にその理由

を明らかにしなければならないことを義務付けたものである。

(2) 「その理由がなくなる期日をあらかじめ明示することができるとき」とは,

おおむね1年以内において一定の期間が経過することにより,第18条各号に該

当する理由が消滅することが確実であり,開示請求に係る保有個人情報を開示す

ることができるようになる期日があらかじめ明示できる場合をいう。

なお,この期日の明示は,請求対象となった保有個人情報が開示できるように

なる期日を教示するものであり,その期日に当該保有個人情報を開示することを

意味するものではないことから,請求者は,その期日以後に改めて当該保有個人

情報の開示を請求しなければならない。

4 第4項関係

(1) 本項では,実施機関は原則として第1項に規定する期間内に開示決定等を

しなければならないが,事務処理上の困難その他正当な理由があるときは,その

期間を45日以内に限り延長することができるものとしている。

(2) 「事務処理上の困難その他正当な理由」とは,次のような場合をいう。

ア 開示請求に係る保有個人情報が大量かつその内容が複雑であるため,期間

内に開示・不開示の決定をすることが困難であるとき。

イ 開示請求に係る保有個人情報に第三者に関する情報が記録されている場合

で,第三者への意見聴取に時間を要し,期間内に開示・不開示の決定をするこ

とが困難であるとき。

ウ 裁判や国の監査等のため,保有個人情報を市以外の機関へ提出中の場合で,

期間内に開示・不開示の決定をすることが困難であるとき。

エ 年末年始等執務を行わない時期に当たり,期間内に開示・不開示の決定をす

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ることが困難であるとき。

オ 天災・事故等により,期間内に開示・不開示の決定をすることが困難である

とき。

(3) 実施機関は,開示決定等の期間を延長するときは,その期間及び理由を速

やかに開示請求者に対して通知しなければならない。このときの通知は,保有個

人情報開示決定期間延長通知書(施行規則様式第10号)により行う(施行規則

第11条第2項)。

(4) 「開示請求に係る保有個人情報のうち相当の部分につき当該期間内に開示

決定等をし,残りの保有個人情報については,当該延長期間内に開示決定等をす

る」

ア 開示請求に係る保有個人情報が大量であることを理由に期間延長をすると

きは,開示請求があった日から起算して15日以内に,一旦,開示請求に係る

保有個人情報の一部について,開示決定等をすることができる。

イ 「相当の部分」とは,開示請求者が優先的に開示を求める部分,開示請求の

趣旨に合う部分又は開示請求があった日から起算して15日以内に決定でき

る部分などをいう。

(参考)開示決定等までの期限

(5) 通知書の発送は,所定の期間内に決定等ができないことが確実になった時

点において直ちに行うことが適当である。

(運用)

開示請求日 15日目 45日目

期間延長なし

延長(大量の場合)

延長(大量以外)

開示決定等をする

延長決定をした上で

相当部分について

開示決定等をする

開示決定等をする

残りの部分について

開示決定等をする

期間延長決定をする

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1 一部又は全部不開示のときの理由記載

この理由の記載の仕方は,単に「第●●条第●●号に該当するため」との記載で

は不十分であり瑕疵ある行政処分となるので,少なくとも事実認定と法令の適用が

必要であり,「開示の請求のあった保有個人情報には,●●が記録されており,こ

れを開示すると●●に著しい支障を生ずると認められるため,第●●条●●号に該

当する」等のように請求者においてその理由が明らかに理解できるように記載しな

ければならない。

2 開示決定等の期間の延長

主管課は,事務処理上の困難その他正当な理由により開示請求に対する決定等の

期間を延長する場合には,期間内に決定できないやむを得ない理由を具体的に記載

して,開示請求者に通知しなければならない。

3 開示決定等に係る具体的な事務の取扱いについては,事務取扱要綱に定めるとこ

ろにより行うものとする。

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第23条(第三者に対する意見書提出の機会の付与等)関係

(第三者に対する意見書提出の機会の付与等)

第23条 開示請求に係る保有個人情報に市,公社,国,独立行政法人等,他の地方

公共団体,地方独立行政法人及び開示請求者以外のもの(以下この条,第38条,

第40条及び第48条において「第三者」という。)に関する情報が含まれている

ときは,実施機関は開示決定等をするに当たって,当該情報に係る第三者に対し,

当該第三者に関する情報の内容その他実施機関が別に定める事項を通知して,意見

書を提出する機会を与えることができる。

2 実施機関は,次の各号のいずれかに該当するときは,開示請求に係る保有個人情

報の全部又は一部を開示する旨の決定(以下「開示決定」という。)に先立ち,当

該第三者に対し,開示請求に係る当該第三者に関する情報の内容その他実施機関が

別に定める事項を書面により通知して,意見書を提出する機会を与えなければなら

ない。ただし,当該第三者の所在が判明しない場合は,この限りでない。

(1) 第三者に関する情報が含まれている保有個人情報を開示しようとする場合

であって,当該第三者に関する情報が第18条第2号イ又は第3号ただし書に規

定する情報に該当すると認められるとき。

(2) 第三者に関する情報が含まれている保有個人情報を第20条の規定により

開示しようとするとき。

3 実施機関は,前2項の規定により意見書の提出の機会を与えられた第三者が当該

第三者に関する情報の開示に反対の意思を表示した意見書を提出した場合におい

て,開示決定をするときは,開示決定の日と開示を実施する日との間に2週間を置

かなければならない。この場合において,実施機関は,開示決定後直ちに,当該意

見書(第37条の2及び第38条において「反対意見書」という。)を提示した第

三者に対し,開示決定をした旨及びその理由並びに開示を実施する日を書面により

通知しなければならない。

4 前項の規定にかかわらず,実施機関は,正当な理由があるときは,同項に規定す

る期間を延長することができる。

(趣旨)

本条は,開示請求に係る保有個人情報に第三者に関する情報が記録されていると

きに,当該第三者の権利利益を保護し開示の是非の判断の適正を期するために,開

示決定等の前に第三者に対して意見書提出の機会を付与すること及び開示決定を

行う場合に当該第三者が開示の実施前に開示決定を争う機会を保障するための措

置について定めたものである。

(解釈)

1 第1項関係

(1) この項は,自己情報の開示請求に係る公文書に記録された保有個人情報に,

第三者の情報が含まれている場合において,実施機関が開示・不開示の判断の参

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考とするために,必要と認めるときに第三者の意見書を提出する機会を付与する

ことを定めたものである。

(2) 国及び地方公共団体等については,本条の第三者から除かれているので,

本条は適用されないが,意見を聴く必要がないとしているのではなく,「第三者」

として,私人と同様の手続的な保障を図る必要性が乏しく,意見を聴く必要があ

るときは,適宜の方法により意見を求めるものである。

(3) 「意見書」とは,施行規則第12条第2項で定める保有個人情報の開示に

係る意見書(施行規則様式第12号)をいう。

2 第2項関係

(1) 本項は,次の場合において,第三者の権利利益侵害のおそれがあるため,

適正手続の観点から,第三者の意見書を提出する機会を義務付けることを定めた

ものである。

ア 開示請求に係る保有個人情報に,不開示情報に該当する第三者である個人の

情報が含まれている場合において,人の生命,健康等を保護するため開示しよ

うとするとき(第18条第2号イ)。

イ 開示請求に係る保有個人情報に,不開示情報に該当する第三者である法人の

情報が含まれている場合において,人の生命,健康等を保護するため開示しよ

うとするとき(第18条第3号ただし書)。

ウ 開示請求に係る保有個人情報に,不開示情報に該当する第三者の情報が含ま

れている場合において,第三者の権利利益と開示することにより保護される個

人権利利益との比較衡量により開示しようとするとき(第20条)。

(2) 「当該第三者の所在が判明しない場合は,この限りでない。」とは,第三

者の所在について,実施機関が合理的な努力を行ったにもかかわらず,当該第三

者の所在が判明しない場合には,手続の円滑な実施の妨げとなることを避けるた

め定めたものである。

3 第3項関係

(1) 本項は,前2項の規定により意見書提出の機会を与えられた第三者が反対

意見書を提出した場合であって,第三者の意に反して開示するときには,保護さ

れるべき第三者の権利利益の救済は極めて困難となり,当該処分は第三者に対す

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る不利益処分となるため,争訟の機会を保障するため,開示決定の日と開示を実

施する日との間に2週間の期間を置くとともに,開示決定後直ちに,当該第三者

に対し,開示決定をした旨及びその理由,開示を実施する日を書面に通知しなけ

ればならないこととしたものである。

(2) 「開示に反対の意思を表示した意見書を提出した場合」とは,意見書にお

いて,当該第三者が開示を望まない旨の趣旨が明らかにされた場合をいう。

(3) 期間については,すでに第三者の意見を聴いていること,開示請求者の開

示を受ける権利と第三者の争訟機会の確保の調整から2週間としている。ただ

し,反対の意思を表示しないときまでに,当該期間を確保する必要性はない。

(4) 「その理由」とは,第三者に係る情報が不開示情報に該当しないことと判

断した理由を記載することとなるが,開示することとした部分すべてについての

理由を記載する必要はなく,当該第三者に係る情報を開示することとした理由の

みを記載すれば足りる。

(5) 「開示を実施する日」とは,開示決定の時点では確定日とならないので,

開示を実施することが見込まれる日でよい。

(6) 「書面」とは,施行規則第12条第3項で定める保有個人情報の開示を決

定した旨の通知書(施行規則様式第13号)をいう。

(運用)

1 開示・不開示の判断は,あくまでも当該第三者に関する情報が不開示基準に該当

するかどうか否かによって行われるものであり,実施機関は第三者の意見に拘束さ

れるものではない。

2 行政不服審査法及び行政事件訴訟法上,執行不停止の原則が採られており,開示

決定を争おうとする第三者は,審査請求又は訴訟を提起すると同時に,開示決定処

分の執行停止の申立てをする必要があるが,執行停止の申立てについては,行政不

服審査法上,教示義務はなく,当該申立てをせず開示されることで第三者の権利利

益救済は不可能となるため,運用手続等において,実質的に執行停止制度の教示が

行われるような措置を講ずることについても配慮する必要がある。

3 第三者照会は,文書により行うことが適切であるが,第三者照会を行うことで開

示請求者の権利利益を害するおそれもあることから,照会に当たっては開示請求者

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が特定されるなどの不利益が生じないよう,慎重な運用が必要である。

4 意見書にどのような内容を記載するかについては,第三者の判断に委ねられて

いるが,単に開示に賛成か反対かを記載するだけでは意見書を提出する意義に乏し

く,できる限り実施機関の開示・不開示の判断に資するような情報の提供が望まれ

る。なお,意見書には,意見の内容を裏付ける資料を添付することができる。

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第24条(開示の実施)関係

(開示の実施)

第24条 保有個人情報の開示は,実施機関が第22条第2項の規定による通知書に

より指定する日時及び場所において行う。

2 保有個人情報の開示は,文書又は図画については閲覧若しくは写しの交付によ

り,電磁的記録についてはその種別,情報化の進展状況等を勘案して実施機関が別

に定める方法により行うものとする。

3 前項の閲覧の方法による保有個人情報の開示にあっては,実施機関は,当該保有

個人情報が記録された公文書を汚損し,又は破損するおそれがあると認めるときそ

の他正当な理由があるときは,同項の規定にかかわらず,その写しにより,これを

行うことができる。

(趣旨)

本条は,実施機関が全部又は一部を開示する決定をした場合の保有個人情報の開

示の方法及び手続について規定したものである。

(解釈)

1 第1項関係

保有個人情報の開示日時及び場所は,主管課があらかじめ開示請求者と協議の上

で定めるものとする。

2 第3項関係

(1) 本項は,公文書の原本そのものを開示することに支障があるときは,第2

項の例外として,その写しを開示の対象とすることができる旨を規定したもので

ある。

(2) 「公文書を汚損し,又は破損するおそれがあると認めるとき」とは,公文

書の形態,形状から当該公文書を汚損し,又は破損する可能性が高い場合をいう。

(3) 「その他相当の理由があるとき」とは,次のような場合をいう。

ア 台帳など,日常業務に使用している公文書に記録されている保有個人情報で

あって,原本を開示することにより事務に支障が生ずる場合

イ 第19条の規定により部分開示を行う場合

ウ その他保有個人情報の管理上相当の理由がある場合

(運用)

保有個人情報の開示は,原則として個人情報窓口又は主管課で行うものとし,開

示等の決定を行った主管課の職員が,当該保有個人情報を持参し,個人情報窓口の

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職員の立ち会いのもと,請求者から開示等決定通知書及び本人確認書類等の提示を

受け,行うものとする。

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第25条(開示請求の特例)関係

(開示請求の特例)

第25条 実施機関が別に定める保有個人情報については,第17条の規定にかかわ

らず,書面の提出に代えて口頭により開示請求をすることができる。

2 実施機関は,前項の規定により口頭による開示請求があったときは,当該実施機

関が別に定める方法により直ちに開示しなければならない。

(趣旨)

本条は,開示請求者の負担軽減等を図るため,第17条第1項の規定にかかわら

ず口頭による開示請求を認めることを定めたものである。

(解釈)

1 第1項関係

(1) 「実施機関が別に定める保有個人情報」とは,実施機関が施行規則第14

条の規定により告示したものをいう。

(2) 「書面の提出に代えて」とは,開示請求について,第17条の開示請求書

の提出を要しないということである。

(3) 口頭により開示請求が認められる保有個人情報は,その内容が定型的であ

らかじめ開示するかどうかの判断を一律に行うことが可能で,開示請求が大量に

見込まれるものをいう。

2 第2項関係

実施機関は,口頭による開示請求を認める保有個人情報については,あらかじめ

開示をするかどうかの判断が行われていることから,開示請求があったときには,

直ちに開示することとしたものである。

(運用)

1 口頭による開示請求の場合の本人の確認は,試験結果等に係るものについては,

受験票等で行うものとする。

2 電話による開示請求は認められないものである。

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第26条(他の法令等による開示の実施との調整)関係

(他の法令等による開示の実施との調整)

第26条 この節の規定は,他の法令又は条例(大崎市情報公開条例を除く。)の規

定により,開示請求者に対し開示請求に係る保有個人情報(保有特定個人情報を除

く。)が第24条第2項及び前条第2項に規定する方法と同一の方法で開示するこ

ととされている場合(開示の期間が定められている場合にあっては,当該期間内に

限る。)には,当該同一の方法で開示することとされている保有個人情報について

は,適用しない。ただし,当該他の法令又は条例の規定に一定の場合には開示をし

ない旨の定めがあるときは,この限りでない。

2 他の法令又は条例の規定に定める開示の方法が縦覧であるときは,当該縦覧を第

24条第2項の閲覧とみなして,前項の規定を適用する。

(趣旨)

本条は,この条例と他の法令による開示の実施との調整について定めたものであ

り,他の法令の規定により,開示請求者に対し第24条第2項及び第25条第2項

に規定する方法と同一の方法で開示することとされている場合には,当該同一の方

法による開示に係る保有個人情報については,適用しないことを定めたものであ

る。

(解釈)

1 「法令」とは,第8条第4項の解釈と同義である。

2 「大崎市情報公開条例を除く」とは,本条例と情報公開条例のいずれの制度にお

いても,自己に関する個人情報が記録された公文書の開示請求ができることを教示

したものである。ただし,両制度はその趣旨,目的を異にしていることから,請求

者は目的に応じた使い分けが必要となるものである。

3 開示請求に係る個人情報について,他の法令の規定により,開示請求者に対し第

24条第2項及び第25条第2項に規定する方法と同一の方法で,開示することと

されている場合には,同一の方法による開示に係る保有個人情報については,適用

しないこととするものである。ただし,他の法令の規定で閲覧等の期間,対象者を

開示請求に係る保有個人情報の本人以外の者に限定している場合,開示の方法又は

閲覧等をすることができる保有個人情報の範囲等を限定している場合において,他

の法令が直接定めていない事項については,この条例の定めるところによることと

なるが,当該他の法令の趣旨を踏まえて,開示請求に係る保有個人情報を開示する

かどうかの決定をすることになる。

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4 「保有特定個人情報を除く」とは,保有特定個人情報については,本条例と他の

法令のいずれかの制度においても,自己に関する特定個人情報が記録された公文書

の開示請求ができることを教示したものである。これは他の法令等により同一の方

法による開示や情報提供等記録開示システムによる開示が認められている場合で

あっても,保有特定個人情報については,本人参加の権利の実質的な保障が重要で

あり,市民の利便性の向上に資するため,本条例の開示請求も認めるものである。

5 他の法令の規定により開示を行う主体には,開示請求に係る行政機関のみなら

ず,他の行政機関,独立行政法人,特殊法人,認可法人その他の主体も含まれる。

6 開示等の手続について別に定めがあるものとしては,次のようなものがある。

(1) 閲覧

ア 住民基本台帳法第11条の2第1項(住民基本台帳の一部の写しの閲覧)

イ 住居表示に関する法律(昭和37年法律第119号)第9条第2項(住居表

示台帳の閲覧)

ウ 行政不服審査法第38条第1項(審査請求人等による提出書類等の閲覧等)

エ 公職選挙法第28条の2第1項(登録の確認及び政治活動を目的とした選挙

人名簿の抄本の閲覧)

(2) 縦覧

ア 地方税法第416条第1項(固定資産課税台帳の縦覧)

(3) 写しの交付制度

ア 住民基本台帳法第12条第1項(住民票の写しの交付)

イ 戸籍法第10条第1項(戸籍謄本等の交付)

(運用)

他の法令又は条例の規定による閲覧等においては,閲覧等の請求者の範囲,閲覧

等の期間,閲覧等をすることができる保有個人情報の範囲について限定している場

合又は閲覧等の手続について定めているだけで,保有個人情報が記録された謄本,

抄本等の交付について何ら規定していない場合があるが,このような場合における

法令又は条例と第3章第1節との調整は,次により行うものとする。ただし,保有

特定個人情報については,この限りでない。

(1) 請求者の範囲を限定している場合

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ア 他の法令又は条例に定められている請求者が,開示請求に係る保有個人情報

の本人,その法定代理人又は遺族である場合については,当該法令又は条例の

規定により閲覧等をすることができるので,第3章第1節の規定は,適用され

ない。

イ 他の法令又は条例に定められている請求者が,自己に関する保有個人情報の

開示請求をすることができる者以外のものである場合については,他の法令又

は条例の規定により閲覧等をすることができる場合に該当しないから,本節の

規定により保有個人情報の開示請求をすることができる。

(2) 閲覧等の期間を限定している場合

ア 他の法令又は条例で閲覧等の期間を限定している場合には,当該期間内につ

いては,当該法令又は条例の規定により閲覧等をすることができるので,本節

の規定は,適用されない。

イ 当該期間の前後については,他の法令又は条例の規定により閲覧等を受ける

ことができる場合に該当しないから,本節の規定により保有個人情報の開示請

求をすることができる。

(3) 閲覧等ができる保有個人情報の範囲を限定している場合

ア 他の法令又は条例で閲覧等ができる保有個人情報の範囲を限定している場

合には,限定して認められている保有個人情報の閲覧等については,当該法令

の規定により閲覧等ができるので,本節の規定は,適用されない。

イ 限定されている範囲以外の保有個人情報の閲覧等については,他の法令又は

条例の規定により閲覧等を受けることができる場合に該当しないから,本節の

規定により保有個人情報の開示請求をすることができる。

(4) 閲覧又は縦覧の手続についてのみ定められており,謄本,抄本等の交付に

関する規定のない場合

ア 保有個人情報が記録された公文書の閲覧については,他の法令又は条例の規

定により手続が定められていることになるので,本節の規定は,適用されない。

イ 保有個人情報が記録された公文書の写しの交付については,他の法令又は条

例の規定により閲覧等をすることができる場合に該当しないので,本節の規定

により当該保有個人情報が記録された公文書の写しの交付を申請することが

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できる。

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第27条(手数料等)関係

(手数料等)

第27条 保有個人情報の開示に係る手数料は,無料とする。

2 開示請求又は第48条第1項の閲覧等の求めにより,文書又は図画の写しの交付

その他の物品の供与を受ける者は,実施機関が定めるところにより,当該供与に要

する費用を負担しなければならない。

(趣旨)

本条は,この条例による保有個人情報の開示に係る費用負担について規定したも

のである。

(解釈)

1 第1項関係

(1) この条例の規定に基づいて行う保有個人情報の開示に係る手数料について

は無料とする旨を規定したものである。

(2) 本項の規定により手数料が無料となるのは,自己情報コントロール権を保

障するためであり,この条例の規定に基づいて行う保有個人情報の開示に係る手

数料に限定される。

2 第2項関係

(1) 「その他物品の供与」とは,電磁的記録等を複写した複製物を供与するこ

とをいう。「供与に要する費用」とは,当該個人情報を記載した公文書を複写機

等によって複写することに要する経費並びに写し及び物品の送付に要する郵送

料をいう。

(2) 写しの作成に要する費用は,公文書の写し等に対して負担しなければなら

ない費用(平成18年大崎市告示第129号)による。

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第2節 訂正

第28条(訂正請求権)関係

(訂正請求権)

第28条 何人も,自己を本人とする保有個人情報の内容が事実でないと認めるとき

は,この条例の定めるところにより,当該保有個人情報を保有する実施機関に対し,

当該保有個人情報の訂正(追加又は削除を含む。以下同じ。)を請求することがで

きる。ただし,当該保有個人情報の訂正に関して他の法令又は条例の規定により特

別の手続が定められているときは,この限りでない。

2 法定代理人(保有特定個人情報にあっては,代理人)は,本人に代わって前項の

規定による訂正の請求をすることができる。

3 保有個人情報のうち,死者を本人とする保有個人情報について,遺族は,当該保

有個人情報の内容が事実でないと認めるときは,この条例の定めるところにより,

当該保有個人情報を保有する実施機関に対し,当該保有個人情報の訂正を請求する

ことができる。ただし,当該保有個人情報の訂正に関して他の法令又は条例の規定

により特別の手続が定められているときは,この限りでない。

(趣旨)

本条は,何人も自己情報について事実の記載に誤りがあるときは,訂正を請求す

ることができる権利を有することを規定したものである。

(解釈)

1 第1項関係

(1) 本項は,何人も,自己に関する保有個人情報の訂正を請求することができ

ることを定めたものである。

(2) 「事実」とは,住所,氏名等の個人の身上事項をはじめ,個別の事実につ

いて客観的に判断できる事項をいう。

(3) 「事実でない」とは,事実と保有個人情報との間に不一致があり,記載さ

れている情報が,個別の事実記録として誤っていることをいう。

(4) 「訂正」とは,事実に合致していない個人情報の記録を修正し事実に合致

させることをいい,一部の記録の加筆又は削除により記録内容をより正確にする

ことを含む。

(5) 本条に基づく訂正の請求の対象は,「事実」に限られる。したがって,個

別の事実以外の評価や意見等の個人の判断内容の記載については,訂正の請求の

対象とならない。しかし,古い情報の最新情報への訂正(追加を含む)など,不

完全情報の是正・補完については,請求の対象になると解される。

また,評価,意見等自体でなく,それらの判断の基礎になった事実の記載に関

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しても,それが個別の事実であって客観的に判断できるものである限り,事実誤

認の是正のほか,誤った事実記載の削除訂正を求め得るものと解される。

他方,公簿によって容易に確認できる基本事実の誤りに関しては,本条の訂正

請求によるまでもなく,通常業務の窓口処理として対応することが望ましい。

(6) 「他の法令又は条例の規定により特別の手続が定められているとき」とは,

他の法令又は条例に基づく訂正制度が本条に基づく訂正請求に優先することを

定めたものである。

(7) 他の法令又は条例に基づく訂正制度の例

ア 住民基本台帳法第14条第2項(誤記又は記載漏れの申出)

イ 戸籍法第113条,第114条及び第116条(不適法な記載等の訂正)

ウ 公職選挙法第27条第3項(選挙人名簿の訂正)

2 第2項関係

本項は,開示請求の場合と同様に,未成年者及び成年被後見人の法定代理人又は

任意代理人(保有特定個人情報に限る。)が当該未成年者若しくは成年被後見人又

は委任した本人に代わって訂正請求を行うことができる旨を定めたものである。

代理人が開示を受けた保有個人情報の訂正請求は,当該保有個人情報の本人も行

うことができるとともに,当該保有個人情報の本人が開示を受けた保有個人情報の

訂正請求は,代理人も行うことができる

3 第3項関係

本項は,開示請求の場合と同様に,遺族に限り,死者の保有個人情報の訂正請求

を行うことができる旨を定めたものである。「遺族」とは,第16条第3項に規定

する遺族である。

(運用)

事実の記載に誤りがあるときで,個別的に精査していく場合は,次のような内訳

にすべきと解される。

(1) まさに訂正請求者の自己情報に当たる事実であること。

(2) 見方として記述された事実状況全体ではなく,個々に捉えられうる個別事

実であること。

(3) 記載されていない個別事実の追記要求(書き足しの求め)が認められるの

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は,その追記の現記載自体が誤りといえる不備の場合に限られること。

(4) 個別事実の記載の「誤り」につき,請求者・審査請求人が決定的な証拠資

料を提出したか,または比較的容易に真否の事実認定がなされうること。

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第29条(訂正請求の手続)関係

(訂正請求の手続)

第29条 前条の規定による訂正の請求(以下「訂正請求」という。)は,次に掲げ

る事項を記載した書面(以下「訂正請求書」という。)を実施機関に提出してしな

ければならない。

(1) 訂正請求をする者の氏名及び住所

(2) 訂正請求に係る保有個人情報を特定するに足りる事項

(3) 訂正請求の趣旨及び理由

(4) 前3号に掲げるもののほか,実施機関が定める事項

2 前項の場合において,訂正請求をする者は,実施機関が定める方法により,訂正

請求に係る保有個人情報の本人であること(前条第2項の規定による訂正請求にあ

っては,訂正請求に係る保有個人情報の本人の法定代理人(保有特定個人情報にあ

っては,代理人)であること,同条第3項の規定による訂正請求にあっては,訂正

請求に係る保有個人情報の本人の遺族であること)を明らかにしなければならな

い。

3 実施機関は,訂正請求書に形式上の不備があると認めるときは,訂正請求をした

者(以下「訂正請求者」という。)に対し,相当の期間を定めて,その補正を求め

ることができる。この場合において,実施機関は,訂正請求者に対し,補正の参考

となる情報を提供するよう努めなければならない。

(趣旨)

本条は,保有個人情報の訂正請求に関する具体的手続を規定したものである。

(解釈)

1 第1項関係

(1) 保有個人情報の訂正請求は,訂正請求の権利の行使として,実施機関に保

有個人情報の訂正の諾否の決定という行政処分を法的に求める手続であり,場合

によっては,審査請求又は行政事件訴訟になることも予想されるため,事実関係

を明確にしておく必要性から書面により行うこととしたものである。

(2) 本条各号は,請求書に記載すべき必要的記載事項であり,これらの記載は,

実施機関が請求書を受理する際の要件となるものである。請求は原則として保有

個人情報訂正請求書(施行規則様式第14号)によるものとするが,必ずしも同

様式によることを要せず,本条各号に掲げる事項の記載があればよいものとす

る。

(3) 訂正請求をする者は,保有個人情報が事実でないことを立証するに足りる

資料を提出しなければならない(施行規則第15条第2項)。

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(4) 「訂正請求の趣旨及び理由」の記載を要求しているのは,どのように訂正

することを望んでいるのか,請求者が主張する正確な事実は何か等,請求の趣旨

が明確であることが不可欠であるとともに,請求者がその事実を不正確と考える

根拠を示すことが必要なためである。

(5) 各号関係

ア 第1号関係

「氏名及び住所」は,実際に請求を行う者の氏名及び住所をいう。したがっ

て,法定代理人による訂正請求の場合は,当該法定代理人の氏名又は法人の名

称及び住所又は法人の所在地をいう。

イ 第2号関係

「訂正請求に係る保有個人情報を特定するに足りる事項」とは,訂正請求に

係る保有個人情報が記録されている行政文書を特定するために必要な事項を

いう。

ウ 第3号関係

「訂正請求の趣旨及び理由」とは,保有個人情報に記録されている個人情報

のうち訂正を求める部分の記載内容をいう。

エ 第4号関係

「実施機関が定める事項」とは,具体的には,保有個人情報訂正請求書中に

定める事項をいう。

2 第2項関係

請求をしようとする者は,本人又は代理人であることを明らかにするため,運転

免許証,旅券その他これらに準ずる書類であって,本人又は代理人であることを確

実に証明することができるものを提示又は提出しなければならない(施行規則15

条第3項)。

3 第3項関係

(1) 「形式上の不備があると認めるとき」とは,請求事項に記載漏れがある場

合や,「訂正請求に係る保有個人情報を特定するに足りる事項」の記載が不十分

であって,特定することができない場合等をいう。

(2) 本条例に基づく保有個人情報の訂正請求は大崎市行政手続条例第2条第4

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号にいう「申請」に該当する。同条例第9条第2項では「申請をしようとする者

又は申請者の求めに応じ」申請に必要な情報の提供に努めることを規定している

ことに対し,本項では請求者から求めがなくても,補正の参考となる情報の提供

に努める努力義務がある点に注意する必要がある。

(運用)

請求の受付事務については開示請求の例による。

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第30条(訂正義務)関係

(訂正義務)

第30条 実施機関は,訂正請求があった場合において,当該訂正請求に理由がある

と認めるときは,当該訂正請求に係る保有個人情報の利用目的の達成に必要な範囲

内で,当該保有個人情報の訂正をしなければならない。

(趣旨)

本条は,本人の保有個人情報に係る訂正請求があったときは,実施機関は事実の

確認等の調査を行い,利用目的の達成に必要な範囲内で訂正しなければならないこ

とを定めたものである。

(解釈)

1 「当該訂正請求に理由があると認めるとき」とは,訂正請求に係る保有個人情報

について,実施機関の調査の結果,提出又は提示された書類等のとおり,当該保有

個人情報に誤りがあったことが判明し,客観的に正誤の判断を行ったうえで,事実

と合致していないと実施機関が認めることをいう。

2 「保有個人情報の利用目的の達成に必要な範囲内」とは,例えば,過去の特定時

点における事実を記録しておく必要がある場合には,現在の事実に合致するように

訂正する必要はないことになる。また,訂正請求者がより詳細に記載することを請

求した場合であっても,利用目的との関係において訂正請求の趣旨に沿うまでの内

容を記載する必要がない場合には,当該請求を拒否することができる。

3 実施機関は,事実の記載の誤りを確認したときは,訂正の権限がないとき,その

他利用目的が達成できなくなる等,訂正しないことについて正当な理由があるとき

を除き,訂正する義務を負うものである。

4 本条例に基づく訂正の対象は,訂正請求に係る保有個人情報自体であって,当該

保有個人情報に基づいてなされた行政処分の停止や取消しにまで及ぶものではな

い。したがって,訂正することによる当該行政処分の効力への影響については個別

に判断して対応するものである。

(運用)

実施機関は,第12条第1項第1号の規定により,保有個人情報の正確性を保つ

ことが求められていることから,訂正請求によらずとも,保有個人情報に誤りがあ

ると認めるときは,利用目的の達成に必要な範囲内で,随時,正確なものに訂正し

なければならない。

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第31条(訂正請求に対する決定等)関係

(訂正請求に対する決定等)

第31条 実施機関は,訂正請求があった日から起算して15日以内に,訂正請求に

係る保有個人情報の全部若しくは一部を訂正する旨の決定,当該保有個人情報を訂

正しない旨の決定,第21条の規定を準用して訂正請求を拒否する旨の決定又は当

該保有個人情報を保有していない旨の決定(以下「訂正決定等」と総称する。)を

しなければならない。ただし,第29条第3項の規定により補正を求めた場合にあ

っては,当該補正に要した日数は,これらの期間に算入しない。

2 実施機関は,前項の決定をしたときは,訂正請求者に対し,速やかに決定の内容

を書面により通知しなければならない。

3 実施機関は,訂正請求に係る保有個人情報の全部を訂正する旨の決定以外の訂正

決定等をしたときは,前項の書面にその理由(期間の経過により訂正することがで

き,かつ,その時期を明示することができるときは,その期日及び理由)を付記し

なければならない。

4 実施機関は,事務処理上の困難その他正当な理由により第1項に規定する期間内

に同項の決定をすることができないときは,同項に規定する期間を45日以内に限

り延長することができる。この場合において,訂正請求に係る保有個人情報が著し

く大量であり,事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがあることを理由に期間の

延長をするときは,実施機関は,訂正請求に係る保有個人情報のうち相当の部分に

つき当該期間内に訂正決定等をし,残りの保有個人情報については,当該延長期間

内に訂正決定等をするものとする。

5 前項の規定により第1項に規定する期間を延長する場合は,実施機関は,訂正請

求者に対し,延長の期間及び延長する理由を書面により通知しなければならない。

(趣旨)

本条は,保有個人情報の訂正請求に対する決定等及びその手続について規定した

ものである。

(解釈)

1 第1項関係

(1) 本項においては,訂正請求に対する決定等は,より迅速に行われることが

望ましいことから,実施機関に対し,訂正請求があった日から起算して15日以

内に訂正請求に対する決定等を行うことを義務付けたものである。

(2) 「訂正請求があった日」とは,個人情報窓口等において訂正請求書を受付

した日をもって取り扱うものとする。

(3) 「訂正請求があった日から起算して15日以内」の末日が市の休日(大崎

市の休日を定める条例(平成18年大崎市条例第2号)第1条第1項に規定する

市の休日をいう。)に当たるときは,その翌日をもって満了日とする。

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2 第2項関係

(1) 本項は,実施機関が訂正決定等をしたときは,速やかに当該訂正決定等の

内容を訂正請求者に通知しなければならないことを規定したものである。

(2) 訂正請求者への通知は,それぞれの決定等の区分に応じて行う(施行規則

第16条第1項)。

3 第3項関係

(1) 本項は,実施機関が請求の全部を訂正する決定以外の決定をした場合には,

請求者に対する不利益処分になることから,前項の規定による通知書にその理由

を明らかにしなければならないことを義務付けたものである。

(2) 「期間の経過により訂正することができ,かつ,その時期を明示すること

ができるとき」とは,おおむね1年以内において一定の期間が経過することによ

り,訂正をしない理由が消滅することが確実であり,訂正請求に係る保有個人情

報を訂正することができるようになる期日があらかじめ明示できる場合をいう。

なお,この期日の明示は,請求対象となった保有個人情報が訂正できるように

なる期日を教示するものであり,その期日に当該保有個人情報を訂正することを

意味するものではないことから,請求者は,その期日以後に改めて当該保有個人

情報の訂正を請求しなければならない。

4 第4項関係

(1) 本項では,実施機関は原則として第1項に規定する期間内に訂正決定等を

しなければならないが,事務処理上の困難その他正当な理由があるときは,その

期間を45日以内に限り延長することができるものとしている。

(2) 「事務処理上の困難その他正当な理由」とは,次のような場合をいう。

ア 訂正請求に係る保有個人情報が大量かつその内容が複雑であるため,期間

内に訂正・不訂正の決定をすることが困難であるとき。

イ 訂正請求に係る保有個人情報に第三者に関する情報が記録されている場合

で,第三者への意見聴取に時間を要し,期間内に訂正・不訂正の決定をするこ

とが困難であるとき。

ウ 裁判や国の監査等のため,保有個人情報を市以外の機関へ提出中の場合で,

期間内に訂正・不訂正の決定をすることが困難であるとき。

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エ 年末年始等執務を行わない時期に当たり,期間内に訂正・不訂正の決定をす

ることが困難であるとき。

オ 天災・事故等により,期間内に訂正・不訂正の決定をすることが困難である

とき。

(3) 実施機関は,訂正決定等の期間を延長するときは,その期間及び理由を速

やかに訂正請求者に対して通知しなければならない。このときの通知は,保有個

人情報訂正決定期間延長通知書(施行規則様式第18号)により行う(施行規則

第16条第2項)。

(4) 「訂正請求に係る保有個人情報のうち相当の部分につき当該期間内に訂正

決定等をし,残りの保有個人情報については,当該延長期間内に訂正決定等をす

る」

ア 訂正請求に係る保有個人情報が大量であることを理由に期間延長をすると

きは,訂正請求があった日から起算して15日以内に,一旦,訂正請求に係る

保有個人情報の一部について,訂正決定等をすることができる。

イ 「相当の部分」とは,訂正請求者が優先的に訂正を求める部分,訂正請求の

趣旨に合う部分又は訂正請求があった日から起算して15日以内に決定でき

る部分などをいう。

(5) 通知書の発送は,所定の期間内に決定等ができないことが確実になった時

点において直ちに行うことが適当である。

(運用)

本条の運用については開示請求に対する決定等の例による。

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第32条(保有個人情報の提供先への通知)関係

(保有個人情報の提供先への通知)

第32条 実施機関は,訂正決定に基づく保有個人情報の訂正の実施をした場合にお

いて,必要があると認めるときは,当該保有個人情報の提供先(情報提供等記録に

あっては,総務大臣及び番号法第19条第7号に規定する情報照会者又は情報提供

者(当該訂正に係る同法第23条第1項及び第2項に規定する記録に記録された者

であって,当該実施機関以外の者に限る。))に対し,遅滞なく,その旨を書面に

より通知するものとする。

(趣旨)

本条は,実施機関が訂正請求に係る保有個人情報の訂正を実施した場合におい

て,必要があると認めるときに,当該保有個人情報の提供先(情報提供等記録にあ

っては,総務大臣及び番号法第19条第7号に規定する情報照会者又は情報提供

者)に対し,訂正をした旨及び訂正の内容等を通知することとしたものである。

(解釈)

1 実施機関が訂正請求に係る保有個人情報について,訂正決定に基づき全部又は一

部の訂正を実施したときに,その旨を提供先に通知しなければ,提供先において訂

正前の誤った個人情報を基にした行為(処分)等がなされるおそれがあることから,

当該保有個人情報の提供先に対して,必要に応じ,訂正内容等を通知することにし

たものである。

2 「必要があると認めるとき」とは,訂正を実施した保有個人情報の内容,提供方

法,提供先における利用目的や利用方法等を勘案して,実施機関が個別に判断する

こととなる。

3 「情報提供等記録にあっては,総務大臣及び番号法第19条第7号に規定する情

報照会者又は情報提供者」とは,情報提供等記録は誰かから提供してもらうもので

はないため,情報提供等記録を訂正した場合には,提供先ではなく,同じく情報提

供等記録を管理する総務大臣及び情報照会者又は情報提供者に通知する必要があ

ることを定めたものである。

4 「当該訂正に係る同法第23条第1項及び第2項に規定する記録に記録された者

であって,当該実施機関以外の者に限る」とは,実施機関は情報照会者又は情報提

供者に該当するからこそ情報提供等記録を保有しているものであり,情報提供等記

録を訂正する場合は,当該実施機関が情報照会者である場合は情報提供者及び総務

大臣に,当該実施機関が情報提供者である場合は情報照会者及び総務大臣に通知す

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109

る必要があるため,当該実施機関以外のものに限るとしたものである。

5 提供先への通知については,保有個人情報訂正通知書(施行規則様式第19号)

によるものとする。

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第3節 利用停止

第33条(利用停止請求権)関係

(利用停止の請求権)

第33条 何人も,自己を本人とする保有個人情報(情報提供等記録を除く。以下こ

の節において同じ。)が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは,この条例

の定めるところにより,当該保有個人情報を保有する実施機関に対し,当該各号に

定める措置を請求することができる。ただし,当該保有個人情報の利用の停止,消

去又は提供の停止(以下「利用停止」という。)に関して他の法令又は条例の規定

により特別の手続が定められているときは,この限りでない。

(1) 第8条の規定に違反して保有されているとき,第10条第1項及び第2項

の規定に違反して本人以外から収集されているとき,当該保有個人情報が第11

条第1項から第3項までの規定に違反して目的外利用されているとき,番号法第

20条の規定に違反して収集され,若しくは保管されているとき,又は番号法第

28条の規定に違反して作成された特定個人情報ファイル(番号法第2条第9項

に規定する特定個人情報ファイルをいう。)に記録されているとき 当該保有個

人情報の利用の停止又は消去

(2) 第11条第1項及び第2項又は番号法第19条の規定に違反して外部提供

されているとき 当該保有個人情報の提供の停止

2 法定代理人(保有特定個人情報にあっては,代理人)は,本人に代わって前項の

規定による利用停止の請求をすることができる。

3 保有個人情報のうち,死者を本人とする保有個人情報について,遺族は,当該保

有個人情報が第1項各号のいずれかに該当すると認めるときは,この条例の定める

ところにより,当該保有個人情報を保有する実施機関に対し,当該各号に定める措

置を請求することができる。ただし,当該保有個人情報の利用停止に関して他の法

令又は条例の規定により特別の手続が定められているときは,この限りでない。

(趣旨)

本条は,何人も自己情報についてこの条例の規定に違反して取り扱われていると

認める場合において,当該保有個人情報(情報提供等記録を除く。)の利用の停止

又は消去,提供の停止を請求できる権利を定めたものである。

(解釈)

1 第1項関係

(1) 「情報提供等記録を除く」

情報提供等記録については,情報提供ネットワークシステムにおいて自動保存

されるものであり,適法に取得されたものでないときや利用制限・提供制限の規

定に違反しているときが想定されない。また仮にそのような状態で保有されてい

るとしても,不正な情報提供を行わせず,かつ適法な情報連携を安定的に情報提

供ネットワークシステムにおいて実現するためには,不法・不正な提供がなされ

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ていないか,システム運用上支障の生じる提供がなされていないかなどを確認す

るために,情報提供等記録を利用し続ける必要性が極めて高い。さらに,情報提

供等記録以外の保有特定個人情報については利用停止請求も引き続き認めてお

り,また情報提供等記録についても不適法な取扱いを行った者に対しては番号法

の規定により個人情報保護委員会が指導等を行うこととされ,不適法な取扱いが

なされているときの措置は,利用停止請求を認めなくても妥当性を欠くものでは

ない。したがって,情報提供等記録については,利用停止請求に係る規定を適用

除外としているものである。

(2) 「次の各号のいずれかに該当すると認めるとき」とは,次のいずれかに該

当すると認めるときである。

ア 第1号関係

(ア) 「第8条の規定に違反して保有されているとき」とは,実施機関が,

その所掌する事務の目的達成に必要最小限の範囲を超えて個人情報を収集,

保管,利用したとき又は,法令,条例の定めがあるとき,その他審査会の意

見を聴いて,相当の理由があると実施機関が認める場合を除き,個人の思想,

信条,宗教に関する事項及び人種,民族及び犯罪その他社会的差別を引き起

こすおそれのある事項を収集,保管,利用したときをいう。

(イ) 「第10条第1項の規定に違反して本人以外から収集されているとき」

とは,あらかじめ同項に規定されている,業務の名称及び法令又は条例の根

拠(第1号),業務の目的(第2号),保有個人情報の内容(第3号),保有

個人情報の利用目的(第4号)等を本人に明らかにしないで保有個人情報を

収集したときをいう。

(ウ) 「第10条第2項の規定に違反して本人以外から収集されているとき」

とは,本人以外のものからの収集について法令又は条例の定めがあるとき

(第1号),個人の生命,健康,生活又は財産等を保護するため,緊急かつ

やむを得ない理由があるとき(第2号),出版,報道等により公にされた個

人情報を収集するとき(第3号),本人の同意があるとき(第4号),他の実

施機関から第11条第2項各号のいずれかに該当する提供を受けて収集す

るとき(第5号)その他審査会の意見を聴いて,相当の理由があると実施機

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関が認めるとき(第6号)を除いて,本人以外のものから個人情報を収集し

たときをいう。

(エ) 「第11条第1項から第3項までの規定に違反して目的外利用されて

いるとき」とは,目的外利用について法令又は条例の定めがあるとき(第2

項第1号),個人の生命,健康,生活又は財産等を保護するため,緊急かつ

やむを得ない理由があるとき(第2項第2号),本人の同意があるとき(第

2項第3号),出版,報道等により公にされているとき(第2項第4号),そ

の他審査会の意見を聴いて,相当の理由があると実施機関が認めるとき(第

2項第5号),保有特定個人情報(情報提供等記録を除く。)で個人の生命,

健康,生活又は財産等を保護するために必要であって,本人の同意があり,

又は本人の同意を得ることが困難であるとき(第3項)を除いて,実施機関

が保有個人情報を目的外利用したときをいう。

(オ) 「目的外利用がされているとき」とは,目的外利用が現に継続又は反

復して行われている場合のほか,目的外利用の決定後であっていまだ実施さ

れていない場合や,近い将来に利用が行われる可能性が高い場合における未

然防止的な利用停止の請求を含むものと解される。

(カ) 「番号法第20条の規定に違反して収集され,若しくは保管されてい

るとき」とは,例えば個人番号利用事務等実施者の職員として個人番号利用

事務等に携わる者が,その事務に必要な範囲を超えて,個人番号を収集する

など,不正に特定個人情報が収集・保管されているときをいう。

(キ) 「番号法第28条の規定に違反して作成された特定個人情報ファイル

(番号法第2条第9項に規定する特定個人情報ファイルをいう。)に記録さ

れているとき」とは,個人番号利用事務等実施者その他個人番号利用事務等

において従事する職員が,個人番号を取り扱うことを許された範囲を超えて

作成した特定個人情報ファイルに特定個人情報が記録されているときをい

う。

イ 第2号関係

(ア) 「第11条第1項及び第2項の規定に違反して外部提供されていると

き」とは,外部提供について法令又は条例の定めがあるとき(第2項第1号),

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個人の生命,健康,生活又は財産等を保護するため,緊急かつやむを得ない

理由があるとき(第2項第2号),本人の同意があるとき(第2項第3号),

出版,報道等により公にされているとき(第2項第4号),その他審査会の

意見を聴いて,相当の理由があると実施機関が認めるとき(第2項第5号)

を除いて,実施機関が保有個人情報を外部提供したときをいう。

(イ) 「番号法第19条の規定に違反して外部提供されているとき」とは,

特定個人情報の提供は番号法第19条各号に掲げる場合を除き禁止されて

おり,これに違反して実施機関が提供したときをいう。

(2) 「当該各号に定める措置」とは,次の措置をいう。

ア 「利用の停止」とは,当該保有個人情報の利用を止めることであり,この場

合,保有個人情報自体を消去することは要しない。

イ 「消去」とは,公文書からその保有個人情報を消すこと又は保有個人情報が

記録された公文書自体を廃棄すること等である。なお,訂正請求における「削

除」との相違は,誤っている部分だけを消すのが「削除」であるのに対し,利

用停止請求における「消去」は,正しい部分を含め情報の存在自体を消してし

まうことである。

ウ 「提供の停止」とは,継続的又は定期的に提供することを止めることである。

エ 請求者は,第1号の違反について請求する場合には,「利用の停止を求める」,

「消去を求める」,「利用の停止及び消去を求める」というように求める措置の

内容を選択することができる。

(3) 「他の法令又は条例の規定により特別の手続が定められているとき」とは,

他の法令又は条例に基づく利用停止制度が本条に基づく利用停止請求に優先す

ることを定めたものである。

2 第2項から第3項関係

第28条第2項から第3項の解釈と同義である。

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第34条(利用停止請求の手続)関係

(利用停止請求の手続)

第34条 前条の規定による利用停止の請求(以下「利用停止請求」という。)は,

次に掲げる事項を記載した書面(以下「利用停止請求書」という。)を実施機関に

提出してしなければならない。

(1) 利用停止請求をする者の氏名及び住所

(2) 利用停止請求に係る保有個人情報を特定するに足りる事項

(3) 利用停止請求の趣旨及び理由

(4) 前3号に掲げるもののほか,実施機関が定める事項

2 前項の場合において,利用停止請求をする者は,実施機関が定める方法により,

利用停止請求に係る保有個人情報の本人であること(前条第2項の規定による利用

停止請求にあっては,利用停止請求に係る保有個人情報の本人の法定代理人(保有

特定個人情報にあっては,代理人)であること,同条第3項の規定による利用停止

請求にあっては,利用停止請求に係る保有個人情報の本人の遺族であること)を明

らかにしなければならない。

3 実施機関は,利用停止請求書に形式上の不備があると認めるときは,利用停止請

求をした者(以下「利用停止請求者」という。)に対し,相当の期間を定めて,そ

の補正を求めることができる。この場合において,実施機関は,請求者に対し,補

正の参考となる情報を提供するよう努めなければならない。

(趣旨)

本条は,保有個人情報の利用停止請求に関する具体的手続を規定したものであ

る。

(解釈)

1 第1項関係

(1) 保有個人情報の利用停止請求は,利用停止請求の権利の行使として,実施

機関に保有個人情報の利用停止の諾否の決定という行政処分を法的に求める手

続であり,場合によっては,審査請求又は行政事件訴訟になることも予想される

ため,事実関係を明確にしておく必要性から書面により行うこととしたものであ

る。

(2) 本条各号は,請求書に記載すべき必要的記載事項であり,これらの記載は,

実施機関が請求書を受理する際の要件となるものである。請求は原則として保有

個人情報利用停止請求書(施行規則様式第20号)によるものとするが,必ずし

も同様式によることを要せず,本条各号に掲げる事項の記載があればよいものと

する。

(3) 利用停止請求には,実施機関の請求に係る保有個人情報の取扱いがこの条

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例に違反していると認められる具体的な理由を提示する必要がある。

(4) 各号関係

第29条第1項第1号から第4号までの解釈と同義である。

2 第2項関係

請求をしようとする者は,本人又は代理人であることを明らかにするため,運転

免許証,旅券その他これらに準ずる書類であって,本人又は代理人であることを確

実に証明することができるものを提示又は提出しなければならない(施行規則第1

8条第2項)。

3 第3項関係

(1) 「形式上の不備があると認めるとき」とは,請求事項に記載漏れがある場

合や,「利用停止請求に係る保有個人情報を特定するに足りる事項」の記載が不

十分であって,特定することができない場合等をいう。

(2) 本条例に基づく保有個人情報の利用停止の請求は大崎市行政手続条例第2

条第4号にいう「申請」に該当する。同条例第9条第2項では「申請をしようと

する者又は申請者の求めに応じ」申請に必要な情報の提供に努めることを規定し

ていることに対し,本項では請求者から求めがなくても,補正の参考となる情報

の提供に努める努力義務がある点に注意する必要がある。

(運用)

請求の受付事務については開示請求の例による。

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第35条(利用停止義務)関係

(利用停止義務)

第35条 実施機関は,利用停止請求があった場合において,当該利用停止請求に理

由があると認めるときは,当該実施機関における個人情報の適正な取扱いを確保す

るために必要な限度で,当該利用停止請求に係る保有個人情報の利用停止をしなけ

ればならない。ただし,当該保有個人情報の利用停止をすることにより,当該保有

個人情報の利用目的に係る事務の性質上,当該事務の適正な遂行に著しい支障を及

ぼすおそれがあると認められるときは,この限りでない。

(趣旨)

本条は,本人の保有個人情報に係る利用停止請求があったときは,実施機関は,

一定の場合を除き,利用停止請求に理由があると認めるときは,保有個人情報の適

正な取り扱いを確保するために必要な限度で,利用停止請求に係る保有個人情報の

利用停止をしなければならない義務について定めたものである。

(解釈)

1 利用停止請求があった場合は,請求に係る保有個人情報について,実施機関が各

規定に違反した取扱いがなされているか否かの事実を利用停止請求者,実施機関の

職員その他の関係者に対して説明を求めること,又は必要な資料の提出若しくは提

示を求めること等の必要な調査を行い,できる限り具体的資料,事実を確認する必

要がある。また,必要に応じ,第三者の意見を聴くことも必要な調査に含まれるも

のである。

2 「利用停止請求に理由があると認めるとき」とは,当該利用停止請求に利用停止

を行うに足る正当な理由がある場合をいう。具体的には,実施機関が必要な調査を

行った結果,利用停止請求に係る保有個人情報の取扱いが,この条例の規定に違反

して取り扱われていることが判明したときをいう。

3 「当該実施機関における個人情報の適正な取扱いを確保するため」とは,実施機

関が保有個人情報を取り扱う上で遵守しなければならない規律のことであり,「必

要な限度で」とは,利用停止は,適法でない保有個人情報の取扱いを是正するため

に必要な範囲内で行われることであり,請求者が保有個人情報の消去を請求した場

合であっても,利用の停止を行えば,適正な取扱いを確保できる場合には,利用の

停止を行えば足り,消去するまでの必要はないとのことである。

4 「利用停止をしなければならない」とは,適法な利用停止請求があった場合は,

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実施機関は,利用停止請求に係る保有個人情報を原則として利用停止しなければな

らない義務があることを明らかにしたものである。

5 「当該保有個人情報の利用停止をすることにより,当該保有個人情報の利用目的

に係る事務の性質上,当該事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあると

認められるとき」とは,保有個人情報の取扱いの実体のほか,利用停止を行うこと

により保護される本人の権利利益と,利用停止を行うことにより損なわれる公共の

利益との比較衡量を行った上で判断されるべきものである。

なお「著しい支障を及ぼすおそれがあると認められるとき」とは,単に事務上の

支障があるだけでは足りず,利用停止をすることにより事務の目的が達成し得なく

なってしまう場合など,利用停止を行わないことが社会通念上正当であると客観的

に判断される場合をいう。

6 本条例に基づく利用停止の対象は,利用停止請求に係る保有個人情報自体であっ

て,当該保有個人情報に基づいてなされた行政処分の停止や取消しにまで及ぶもの

ではない。したがって,利用停止することによる当該行政処分の効力への影響につ

いては個別に判断して対応するものである。

(運用)

利用停止請求は,当該請求に係る保有個人情報についてのみ及ぶものであり,実

施機関はその限度において利用停止義務を負うことになるが,実施機関は,複数の

保有個人情報を一斉に取り扱っているのが通例であり,利用停止請求に基づき個人

情報の利用停止を行った場合に,それと同様に取り扱われている他の保有個人情報

について当然に利用停止義務を負うものではないが,この場合でも,実施機関は,

当該実施機関における保有個人情報の適正な取扱いを確保する観点から,自主的に

他の保有個人情報の取扱いを見直す必要がある。

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第36条(利用停止請求に対する決定等)関係

(利用停止請求に対する決定等)

第36条 実施機関は,利用停止請求があった日から起算して15日以内に,利用停

止請求に係る保有個人情報の全部若しくは一部を利用停止する旨の決定,当該保有

個人情報を利用停止しない旨の決定,第21条の規定を準用して利用停止請求を拒

否する旨の決定又は当該保有個人情報を保有していない旨の決定(以下「利用停止

決定等」と総称する。)をしなければならない。ただし,第34条第3項の規定に

より補正を求めた場合にあっては,当該補正に要した日数は,これらの期間に算入

しない。

2 実施機関は,前項の決定をしたときは,利用停止請求者に対し,速やかに決定の

内容を書面により通知しなければならない。

3 実施機関は,利用停止請求に係る保有個人情報の全部を利用停止する旨以外の利

用停止決定等をしたときは,前項の書面にその理由(期間の経過により利用停止す

ることができ,かつ,その時期を明示することができるときは,その期日及び理由)

を付記しなければならない。

4 実施機関は,事務処理上の困難その他正当な理由により第1項に規定する期間内

に同項の決定をすることができないときは,同項に規定する期間を45日以内に限

り延長することができる。この場合において,利用停止請求に係る保有個人情報が

著しく大量であり,事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがあることを理由に期

間の延長をするときは,実施機関は,利用停止請求に係る保有個人情報のうち相当

の部分につき当該期間内に利用停止決定等をし,残りの保有個人情報については,

当該延長期間内に利用停止決定等をするものとする。

5 前項の規定により第1項に規定する期間を延長する場合は,実施機関は,利用停

止請求者に対し,延長の期間及び延長する理由を書面により通知しなければならな

い。

(趣旨)

本条は,保有個人情報の利用停止請求に対する決定等及びその手続について規定

したものである。

(解釈)

1 第1項関係

(1) 本項においては,利用停止請求に対する決定等は,より迅速に行われるこ

とが望ましいことから,実施機関に対し,利用停止請求があった日から起算して

15日以内に利用停止請求に対する決定等を行うことを義務付けたものである。

(2) 「利用停止請求があった日」とは,個人情報窓口等において訂正請求書を

受付した日をもって取り扱うものとする。

(3) 「利用停止請求があった日から起算して15日以内」の末日が市の休日(大

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崎市の休日を定める条例第1条第1項に規定する市の休日をいう。)に当たると

きは,その翌日をもって満了日とする。

2 第2項関係

(1) 本項は,実施機関が利用停止決定等をしたときは,速やかに当該利用停止

決定等の内容を利用停止請求者に通知しなければならないことを規定したもの

である。

(2) 利用停止請求者への通知は,それぞれの決定等の区分に応じて行う(施行

規則第19条第1項)。

3 第3項関係

(1) 本項は,実施機関が請求の全部を利用停止する決定以外の決定をした場合

には,請求者に対する不利益処分になることから,前項の規定による通知書にそ

の理由を明らかにしなければならないことを義務付けたものである。

(2) 「期間の経過により利用停止することができ,かつ,その時期を明示する

ことができるとき」とは,おおむね1年以内において一定の期間が経過すること

により,利用停止をしない理由が消滅することが確実であり,利用停止請求に係

る保有個人情報を利用停止することができるようになる期日があらかじめ明示

できる場合をいう。

なお,この期日の明示は,請求対象となった保有個人情報が利用停止できるよ

うになる期日を教示するものであり,その期日に当該保有個人情報を利用停止す

ることを意味するものではないことから,請求者は,その期日以後に改めて当該

保有個人情報の利用停止を請求しなければならない。

4 第4項関係

(1) 本項では,実施機関は原則として前項に規定する期間内に決定等をしなけ

ればならないが,事務処理上の困難その他正当な理由があるときは,その期間を

45日以内に限り延長することができるものとしている。

(2) 「事務処理上の困難その他正当な理由」とは,次のような場合をいう。

ア 利用停止請求に係る保有個人情報が大量かつその内容が複雑であるため,

期間内に利用停止・不利用停止の決定をすることが困難であるとき。

イ 利用停止請求に係る保有個人情報に第三者に関する情報が記録されている

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場合で,第三者への意見聴取に時間を要し,期間内に利用停止・不利用停止の

決定をすることが困難であるとき。

ウ 裁判や国の監査等のため,保有個人情報を市以外の機関へ提出中の場合で,

期間内に利用停止・不利用停止の決定をすることが困難であるとき。

エ 年末年始等執務を行わない時期に当たり,期間内に利用停止・不利用停止の

決定をすることが困難であるとき。

オ 天災・事故等により,期間内に利用停止・不利用停止の決定をすることが困

難であるとき。

(3) 実施機関は,利用停止決定等の期間を延長するときは,その期間及び理由

を速やかに利用停止請求者に対して通知しなければならない。このときの通知

は,保有個人情報利用停止決定期間延長通知書(施行規則様式第24号)により

行う(施行規則第19条第2項)。

(4) 「利用停止請求に係る保有個人情報のうち相当の部分につき当該期間内に

利用停止決定等をし,残りの保有個人情報については,当該延長期間内に利用停

止決定等をする」

ア 利用停止請求に係る保有個人情報が大量であることを理由に期間延長をす

るときは,利用停止請求があった日から起算して15日以内に,一旦,利用停

止請求に係る保有個人情報の一部について,利用停止決定等をしなければなら

ないということである。

イ 「相当の部分」とは,利用停止請求者が優先的に利用停止を求める部分,利

用停止請求の趣旨に合う部分又は利用停止請求があった日から起算して15

日以内に決定できる部分などをいう。

(5) 通知書の発送は,所定の期間内に決定等ができないことが確実になった時

点において直ちに行うことが適当である。

(運用)

本条の運用については開示請求に対する決定等の例による。

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第4章 審査請求等

第37条(審査請求)関係

(審査請求)

第37条 実施機関がした開示決定等,訂正決定等若しくは利用停止決定等又は実施

機関に対する開示請求,訂正請求若しくは利用停止請求(以下「開示請求等」とい

う。)に係る不作為について不服がある者は,実施機関に対して審査請求

をすることができる。

2 開示決定等,訂正決定等若しくは利用停止決定等又は開示請求等に係る不作為に

係る審査請求については,行政不服審査法(平成26年法律第68号)第9条第1

項の規定は,適用しない。

(趣旨)

1 本条第1項は,実施機関がした開示決定等,訂正決定等若しくは利用停止決定等

又は実施機関に対する開示請求,訂正請求若しくは利用停止請求に係る不作為につ

いて不服がある者は,行政不服審査法による審査請求をすることができるものであ

り,本条は,これを定めたものである。

2 本条第2項は,行政不服審査法第9条第1項で規定するいわゆる審理員による審

理手続は行わず,審査会が審理を担うこととしたものである。

(解釈)

1 この条例では,第2条第1号で定義している実施機関を行政庁と位置付け,実施

機関の処分について不服がある者は,行政不服審査法による審査請求をすることが

できることを規定したものである。

2 行政不服審査法第9条第1項ただし書にある「条例に基づく処分について特別の

定めがある場合・・・この限りでない。」の規定により,審理員は置かず,審査会

が審理を担うこととしたものである。

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第37条の2(審査会への諮問等)関係

(審査会への諮問等)

第37条の2 開示決定等,訂正決定等若しくは利用停止決定等又は開示請求等に係

る不作為について審査請求があったときは,当該審査請求に対する裁決をすべき実

施機関(議会を除く。以下次条において同じ。)は,次の各号のいずれかに該当す

る場合を除き,審査会に諮問しなければならない。

(1) 審査請求が不適法であり,却下するとき。

(2) 裁決で,審査請求の全部を認容し,当該審査請求に係る保有個人情報の全

部を開示することとするとき。ただし,当該開示決定等について反対意見書が提

出されているときを除く。

(3) 裁決で,審査請求の全部を認容し,当該審査請求に係る保有個人情報の

訂正をすることとするとき。

(4) 裁決で,審査請求の全部を認容し,当該審査請求に係る保有個人情報の

利用停止をすることとするとき。

2 前項の場合において,同項の実施機関は,審査会に対し,審議に必要な資料を提

出するものとする。

3 議会は,第1項の審査請求があったときは,必要に応じて審査会に諮問すること

ができる。この場合において,前項の規定を準用する。

(趣旨)

1 本条第1項は,開示決定等,訂正決定等若しくは利用停止決定等又は開示請求等

に係る不作為について,行政不服審査法に基づく審査請求があった場合には,公正

かつ客観的な判断を確保するため,当該審査請求に対する裁決をすべき実施機関に

対し,審査会に諮問することを義務付けたものである。

2 本条第2項は,説明責任の観点から実施機関は,審査会に対し諮問する場合,審

議に必要な資料を提出することとしたものである。

(解釈)

1 「大崎市個人情報保護審査会」は,市長の附属機関であるが,地方自治法第14

7条の規定により,市長には市の統轄代表権があり,一つの執行機関の附属機関と

して設けられた審議会が他の執行機関の諮問に応じ審議することもできる(地方自

治法第138条の4関係昭和33年12月8日行政実例)。

2 第1項関係

(1) 本項の実施機関には,病院事業管理者は含まない。病院事業管理者につい

ては,地方自治法上の独立の執行機関とはされておらず,あくまでも市長の補助

機関としてとどまっていることから,病院事業管理者が行った開示決定等に対す

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る審査請求は,上級行政庁である市長に対する審査請求によって行われるもので

ある。

(2) 「審査請求があったとき」とは,開示決定等に対して開示請求者が審査請

求を行った場合のほか,開示決定等に対して利害関係を有するものが審査請求を

行った場合を含む。

(3) 「裁決」とは,審査請求に対する審査庁の裁断行為をいう。病院事業管理

者が行った開示決定等,訂正決定等及び利用停止決定等に係る市長に対する審査

請求については,市長が行う審査庁としての裁断行為をいう。

(4) 議会を除くとしていることについては,第3項を参照。「当該審査請求に

対する裁決すべき実施機関(議会を除く。以下次条において同じ。)」とは,議会

は地方自治法上議決機関であることから,諮問を義務付ける実施機関から除くも

のである。

(5) 「次の各号のいずれかに該当する場合を除き」とは,審査会に諮問するこ

との意義に乏しいものである。

ア 第1号関係

「審査請求が不適法であり,却下するとき」とは,行政不服審査法に基づく

審査請求が,次に掲げる場合などで,審査の結果,却下される場合をいう。

(ア) 審査請求が法定の期間(処分があったことを知った日の翌日から起算

して3か月以内)を経過した後になされたとき。

(イ) 審査請求の資格のないものからなされたとき。

(ウ) 審査請求書の記載事項(行政不服審査法第19条)が不備なため,補

正を命じてもこれに応じなかったとき。

イ 第2号,第3号及び第4号関係

この場合は,開示,訂正又は利用停止請求の全部を認容することとなるため,

審査会の判断を仰ぐ必要はないということである。

3 第2項関係

「審議に必要な資料を提出するものとする。」とは,実施機関の説明責任と審議

の迅速化の観点から,諮問する場合は,次に掲げる書類を提出するものとする。

(1) 審査請求書(写し)

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(2) 保有個人情報開示請求書,訂正請求書又は利用停止請求書(写し)

(3) 決定通知書(写し)

(4) 審査請求に係る経過説明書

(5) 当該諮問に係る事案の概要書

(6) 開示決定等に係る保有個人情報の内容及び当該開示決定等を判断した理由

を分類し,整理した資料

(7) 行政不服審査法第29条に基づき処分庁から徴した弁明書(写し)

(8) 行政不服審査法第30条に基づき審査請求人等から提出された反論書等

(写し)

(9) その他必要な書類(開示決定等に係る公文書の写し等)

4 第3項関係

「議会は,第1項の審査請求があったときは,必要に応じて審査会に諮問するこ

とができる」とは,市民の知る権利を保障する観点から,審査請求があったときは

議会にあっても審査会のような機関に諮問すべきものであるが,議会は地方自治法

上附属機関を設置できず,また1に記したとおり審査会が執行機関たる市長の附属

機関として設置されたものであることから,法的な義務はないものの,実際上の運

用は審査会に諮問すべきという意味の規定である。

(運用)

1 審査請求に関する具体的な事務取扱いについては,事務取扱要綱に定めるところ

により行うものとする。

2 地方自治法第96条第12号に「普通地方公共団体がその当事者である審査請求

その他の不服申立て」が議決事件として規定されているが,この規定は,普通地方

公共団体が自ら審査請求その他の不服申立てを行う場合という趣旨であり,本条に

よる市に対する不服申立てに議会の議決は要しないものである。

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第38条(諮問をした旨の通知)関係

(諮問をした旨の通知)

第38条 前条第1項又は第3項の規定により諮問をした実施機関又は議会(以下

「諮問実施機関」という。)は,次に掲げるものに対し,諮問をした旨を通知しな

ければならない。

(1) 審査請求人及び参加人

(2) 開示請求者,訂正請求者又は利用停止請求者(これらの者が審査請求人又

は参加人である場合を除く。)

(3) 当該審査請求に係る開示決定等について,反対意見書を提出した第三者(当

該第三者が審査請求人又は参加人である場合を除く。)

(趣旨)

本条は,諮問実施機関が審査会に対し諮問をした場合は,説明責任の観点から,

関係者に諮問をした旨を通知する義務があることを定めたものである。

(解釈)

1 第1号関係

(1) 「審査請求人」になり得る者は,次に掲げる者である。

ア 開示請求,訂正請求及び利用停止請求をした者本人

イ 開示請求をした者への開示決定若しくは部分開示決定に対して,自己に関わ

る情報が記録されていることを理由に審査請求をした第三者

(2) 「参加人」とは,行政不服審査法第13条の規定により,審査庁の許可を

得て,又は審査庁の求めによって審査請求手続に参加する利害関係人であり,審

査請求人と利害を一にするか,反対利害関係を有するか否かを問わない。

2 第2号関係

第2号の規定は,第三者からの審査請求を想定した規定である。したがって,開

示請求者に対してなされた開示決定(全部開示決定及び部分開示決定)に対して,

自己に関する情報が記載されている第三者が当該決定に審査請求をした場合に適

用される。なお,開示請求者が審査請求を行い,又は審査請求手続に参加していれ

ば,本号ではなく,第1号で通知される。

3 第3号関係

「反対意見書を提出した第三者」とは,開示請求に係る保有個人情報に,開示請

求者以外の第三者に関する情報が記録されている場合には,第23条の規定により

当該第三者には意見書を提出する機会が与えられるが,当該保有個人情報の開示に

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反対の意思を表示した意見書を提出した第三者をいう。主には,開示請求者が不開

示決定又は部分開示決定を受けて審査請求をした場合が想定できる。意見書を提出

している場合でも,開示決定等に対して審査請求をしていたり,既に審査請求手続

に参加している場合には第1号により通知される。

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第39条(答申の尊重)関係

(答申の尊重)

第39条 諮問実施機関は,審査会の答申があったときは,その答申を尊重して,第

37条の2第1項の審査請求についての裁決を行わなければならない。

(趣旨)

本条は,諮問実施機関に対し,諮問に対する答申があったときは,審査会の答申

を尊重して,審査請求に係る裁決を行うことを義務付けたものである。

(解釈)

「答申を尊重して」とは,諮問実施機関は,審査会が実質上の救済機関として機

能するよう設置されたものであることに鑑み,その答申を尊重して審査請求に対す

る裁決を行わなければならないということである。

(運用)

1 答申どおり審査請求に対する裁決を行わなかった場合は,諮問実施機関は,審査

会に対し,その理由を説明しなければならない。

2 審査請求に対する具体的な事務取扱いについては,事務取扱要綱に定めるところ

により行うものとする。

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第40条(第三者からの審査請求を棄却する場合における手続)関係

(第三者からの審査請求を棄却する場合における手続)

第40条 第23条第3項及び第4項の規定は,次の各号のいずれかに該当する裁決

をする場合について準用する。

(1) 開示決定に対する第三者からの審査請求を却下し,又は棄却する裁決

(2) 審査請求に係る開示決定等(開示請求に係る保有個人情報の全部を開示す

る旨の決定を除く。)を変更し,当該開示決定等に係る保有個人情報を開示する

旨の裁決(第三者である参加人が当該第三者に関する情報の開示に反対の意思を

表示している場合に限る。)

(趣旨)

本条は,第三者に関する情報が記載されている公文書の開示決定に対する当該第

三者からの審査請求を却下し,若しくは棄却する場合又は開示決定等を変更して当

該開示決定等に係る保有個人情報を開示する場合に,当該第三者に訴訟提起の機会

を確保するために定めたものである。

(解釈)

1 「第23条第3項及び第4項の規定は・・・について準用する」とは,本条第1

号及び第2号に掲げる裁決をする場合には,実施機関は,当該裁決の日と開示の実

施の日との間に2週間を置かなければならないこと,正当な理由があるときは,期

間を延長することができること,また,実施機関は,開示決定後直ちに,当該意見

書を提出した第三者に対し,開示決定をした旨及びその理由並びに開示を実施する

日を書面により通知しなければならないことをいう。

2 「開示決定に対する第三者からの審査請求を却下し,又は棄却する裁決」をする

場合に準用するのは,開示決定の取消しを求める第三者が審査請求をした場合は,

審査請求を却下又は棄却する裁決がなされて直ちに開示がされれば,開示決定に対

する取消訴訟を提起する機会を失してしまうことになるため,裁決と開示の実施日

との間に相当の期間を置く必要があるためである。

3 「審査請求(開示請求に係る保有個人情報の全部を開示する旨の決定を除く。)

に係る開示決定等を変更し,当該開示決定等に係る保有個人情報を開示する旨の裁

決」をする場合に準用するのは,不開示決定が請求者によって争われ,不開示決定

を変更し保有個人情報を開示する旨の決定がなされた場合においても,第三者に開

示の実施前に,開示する旨の決定を争う機会を保障する必要があるためである。た

だし,開示決定等に対する審査請求において,第三者が参加人となり,開示に反対

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の意思を表示している場合以外は,出訴の便宜を図るため,開示の実施を遅らせる

ことを正当化する根拠は必ずしも十分とはいえない。すなわち,速やかな開示実施

を求める審査請求人の立場も考慮すれば,開示の実施を遅らせることを正当化する

ためには,不開示決定に対する審査請求において,当該第三者が,参加人となって

不開示決定を擁護していたことが必要という考えに立って,そのような場合に限

り,第23条第3項及び第4項を準用することとしている。

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第5章 個人情報保護審査会

第41条(個人情報保護審査会)~第51条(委任)関係

(個人情報保護審査会)

第41条 次に掲げる事項を所掌するため大崎市個人情報保護審査会を置く。

(1) 諮問実施機関の諮問に応じ,審査請求について調査審議すること。

(2) 第8条第4項第5号,第10条第2項第6号,第11条第2項第5号及び

第13条第2項の規定による実施機関の諮問に応じ,当該事項について調査審議

すること。

(3) 実施機関の諮問に応じ,番号法第28条第1項に規定する事項について調

査審議すること。

(4) 前3号に規定するもののほか,実施機関の諮問に応じ,個人情報保護制度

に関する重要事項について調査審議すること。

2 審査会は,前項に規定するもののほか,個人情報保護制度の運営に関する重要事

項について,実施機関に意見を述べることができる。

(組織)

第42条 審査会は,委員5人以内をもって組織する。

2 委員は,学識経験を有する者のうちから,市長が委嘱する。

3 委員の任期は,2年とする。ただし,補欠の委員の任期は,前任者の残任期間と

する。

4 委員は,再任されることができる。

5 委員は,職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も,同様

とする。

(会長等)

第43条 審査会に会長を置き,委員の互選によって定める。

2 会長は,会務を総理し,審査会を代表する。

3 会長に事故があるとき,又は会長が欠けたときは,あらかじめ会長が指名する委

員が,その職務を代理する。

(会議)

第44条 審査会の会議は,会長が招集し,その議長となる。

2 審査会の会議は,委員の半数以上の出席がなければ開くことができない。

3 審査会の議事は,出席した委員の過半数で決し,可否同数のときは,議長の決す

るところによる。

(審査会の調査権限)

第45条 審査会は,必要があると認めるときは,諮問実施機関に対し,開示決定等,

訂正決定等若しくは利用停止決定等又は開示請求等に係る不作為に係る保有個人

情報の提示を求めることができる。この場合においては,何人も,審査会に対し,

その提示された保有個人情報の開示を求めることができない。

2 諮問実施機関は,審査会から前項の規定による求めがあったときは,これを拒ん

ではならない。

3 審査会は,第37条の2第2項の規定により提出された資料のほか,必要がある

と認めるときは,諮問実施機関に対し,開示決定等,訂正決定等又は利用停止決定

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等に係る保有個人情報の内容及び開示決定等,訂正決定等又は利用停止決定等を判

断した理由を審査会の指定する方法により分類し,又は整理した資料を作成し,審

査会に提出するよう求めることができる。

4 第1項及び前項に定めるもののほか,審査会は,審査請求に係る事件に関し,審

査請求人,参加人又は諮問実施機関(以下「審査請求人等」という。)に意見書又

は資料の提出を求めること,適当と認めるものにその知っている事実を陳述させ又

は鑑定を求めることその他必要な調査をすることができる。

(意見の陳述)

第46条 審査会は,審査請求人等から申立てがあったときは,当該審査請求人等に

口頭で意見を述べる機会を与えなければならない。ただし,審査請求人等の所在そ

の他の事情により当該意見を述べる機会を与えることが困難であると認められる

ときは,この限りでない。

2 前項本文の場合においては,審査請求人又は参加人は,審査会の承認を得て,補

佐人とともに出席することができる。

(意見書等の提出)

第47条 審査請求人等は,審査会に対し,意見書又は資料を提出することができる。

ただし,審査会が意見書又は資料を提出すべき相当の期間を定めたときは,その期

間内にこれを提出しなければならない。

(提出資料の閲覧等)

第48条 審査請求人等は,審査会に対し,審査会に提出された意見書若しくは資料

の閲覧又はそれらの写しの交付(以下この条において「閲覧等」という。)を求め

ることができる。この場合において,審査会は,第三者の利益を害するおそれがあ

ると認めるとき,その他正当な理由があるときでなければ,その閲覧等を拒むこと

ができない。

2 審査会は,閲覧等について,日時及び場所を指定することができる。

(調査審議の会議の非公開)

第49条 第41条第1項第1号の規定による調査審議を行う審査会の会議は,公開

しない。

(答申書の送付等)

第50条 審査会は,諮問に対する答申をしたとき,又は第41条第2項の規定によ

り意見を述べたときは,その内容を公表するものとする。

2 審査会は,前項に規定する答申が第41条第1項第1号の規定によるものである

場合においては,答申書の写しを審査請求人及び参加人に送付するものとする。

(委任)

第51条 この章に定めるもののほか,審査会の運営に関し必要な事項は,会長が審

査会に諮って定める。

(趣旨)

1 本章は,審査会の設置,組織,運営等について定めたものである。

2 第41条は,第37条の2第1項の規定等による実施機関の諮問事項その他の個

人情報の保護に関する事項を調査審議するため,市長の附属機関としての審査会を

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置くとともに,個人情報の保護制度に関する重要事項について,実施機関に建議で

きることとしたものである。

3 第42条から第51条までは,審査会の組織,任期,会長,会議,審査会の調査

権限,意見の陳述,意見書等の提出,提出資料の閲覧等,調査審議の会議の非公開,

答申書の公表等,秘密の保持及び会長への委任について定めたものである。

(解釈)

1 第41条関係

(1) 「諮問実施機関の諮問に応じ」とは,市長若しくは実施機関(病院事業管

理者を除く。)又は議会すべての実施機関の諮問ということである。審査会は,

市長の附属機関として設置するものであるが,市長以外の実施機関からの諮問に

対しても調査審議を行うものである。

(2) 「個人情報保護制度の運営に関する重要事項」とは,個人情報保護制度の

基本的な事項の改正,制度運営上の基本的な改善を図る必要な事項等をいう。

(3) 審査会の権限に属せられた事項を具体的に列挙すると次のとおりとなる。

ア 行政不服審査法の規定に基づく審査請求があった場合の実施機関の諮問に

基づく審査(第37条の2第1項及び第3項)

イ 実施機関の個人情報の取扱いに関して意見を述べるもの

(ア) 要配慮個人情報の保管等(第8条第4項第5号)

(イ) 本人以外のものからの個人情報の収集(第10条第2項第6号)

(ウ) 保有個人情報を取り扱う事務の目的以外の利用及び提供(第11条第

2項第5号)

(エ) 電子計算組織の実施機関以外のものとのオンライン結合(第13条第

2項)

ウ 番号法の規定に基づく特定個人情報保護評価に関して意見を述べるもの

2 第42条関係

市長の附属機関である審査会の委員は,地方公務員法第3条第3項第2号の規定

により,特別職に該当することから,同法第34条の守秘義務を負わないが,審査

会の機能,権限(不開示情報が記録された公文書を直接見分するいわゆるインカメ

ラ審理の権限が与えられていることなど)に鑑み,本条第5項により守秘義務を負

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うこととしている。また,この守秘義務に違反して秘密を漏らした者は,第64条

に規定する罰則の対象となる。

3 第43条関係

(1) 審査会は合議制機関であるが,会務を総理し,審査会を代表する会長を定

めておく必要がある。その選定方法については,市長の任命によるのではなく,

委員の互選方式によることとしている。

(2) 会長の職務代理者の選定方法については,会長の指名によることとしてい

る。会長の事故は何時発生するか予測しがたいので,会長の選定後直ちに職務代

理者を指名する必要がある。

4 第44条関係

本条は,審査会の会議運営について定めたものである。

5 第45条関係

(1) 第1項関係

審査会は,開示決定等,訂正決定等又は利用停止決定等の審査請求について,

諮問実施機関から諮問があった場合において,審査会において迅速で適切な判断

が行えるようにするため,審査会委員が審査請求に係る保有個人情報が記録され

た公文書を実際に見て,不開示とする理由となる情報が記録されているかの判断

や開示範囲が適切であるか,不訂正とした実施機関の判断や一部訂正の場合の訂

正範囲が適切であるか,又は不利用停止とした実施機関の判断や一部の利用停止

をした場合の利用停止範囲が適切であるか等について審理する(インカメラ審

理)ことが適当であることから,審査会は,必要があると認めるときは,「開示

決定等,訂正決定等又は利用停止決定等に係る保有個人情報」そのものについて

諮問実施機関に対し,提示を求めることができることとしたものである。

(2) 第2項関係

本項は,諮問実施機関に対し,審査会から前項の規定による求めがあったとき

は,審議の公平性の観点から必ず当該保有個人情報が記録された公文書を提出し

なければならない義務を課したものである。

(3) 第3項関係

「必要があると認めるとき」とは,当該保有個人情報の性質,取り扱う事務の

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目的,当該事案の証拠等に照らし,審査会が当該保有個人情報が記録されている

公文書を実際に見分したとしてもなお生ずる適切な判断の困難性がある場合を

いう。

なお,第4項については,第2項の場合と異なり諮問実施機関が審査会の求め

に応じる旨の義務規定はないが,このことをもって,第4項による審査会の求め

を拒否するか否かの判断を諮問実施機関の裁量に委ねる趣旨と解することは適

切ではない。条例が,審査会に第4項の権限を付与した以上,諮問実施機関はそ

の求めに応ずるべきである。

(4) 第4項関係

「その他必要な調査」とは,審査会が審議するために必要な実地調査を行うこ

と,専門家から意見を聴取することなど審査会が審議の参考とするためにする調

査をいう。

6 第46条関係

(1) 第1項関係

ア 本項は,審査会において,審査請求人等が意見を述べる機会が与えられてい

ることを定めたものである。

イ 審査会の調査審議は,その取り扱う事件の性質に照らし,また,簡易迅速な

権利利益の救済を確保するため,職権に基づき,書面を中心に行うことを原則

としている。本項は,この書面審理の例外として,適正な判断を行うための資

料が審査会に十分に集まるようにするとともに,審査請求人等に必要な主張立

証の機会を与えるようにするため,審査請求人等が審査会に対して口頭意見陳

述を求めることができることを規定したもので,行政不服審査法第31条第1

項と同様の趣旨によるものである。諮問実施機関も審査請求人等に含まれるの

で,この権利が保障される。なお,本条の規定は「対質」請求権まで保障して

いるとは解されない。(「対質」:訴訟上,同時に数人の証人を在廷させて同一

事項について尋問し,あるいは1人の証人の証言を聞かせた上で他の証人にそ

の真偽を確認し,また不一致な部分につき弁明討論させること。)

ウ 口頭意見陳述の機会を与えたが,正当な理由なく出席しない場合,又は所在

その他の事情により連絡が取れない等で意見を述べる機会を与えることが困

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難である場合には,口頭意見陳述を聴かずに,審査会で審査・答申することに

なる。

(2) 第2項関係

ア 本項は審査会の承認の下に,口頭意見陳述の際の補佐人の出席について定め

たものである。

イ 「補佐人」とは,行政不服審査法第31条第3項に規定する「補佐人」と同

義であり,自然科学的・人文科学的な専門知識をもって審査請求人若しくは参

加人を援助できる者又は審査請求人若しくは参加人が言語障害や日本語を話

せない場合に陳述を補佐する者等をいうものである。なお,審査会は,補佐人

の出席を承認する場合にも,合理的な範囲にその人数を制限することができ

る。

ウ 口頭意見陳述を申し立てることができるのは「審査請求人等」であるから,

諮問実施機関も含まれるが,補佐人とともに出席し得るのは,「審査請求人又

は参加人」であり,諮問実施機関は含まれない。諮問実施機関の場合,その必

要性があるとは認められないからである。

7 第47条関係

(1) 「意見書又は資料を提出することができる」とは,審査請求人等が,審査

会に対し,意見書又は資料を提出することができる権利を付与したものである。

(2) 意見書の提出権は,前条の口頭意見陳述権とともに,審査請求人の重要な

権利を構成するが,これを保障する理由は,意見陳述権と同様,審査請求人等の

権利・利益の保護(弁明・反論の機会の付与)と適正な審査の実現(審査会への

十分な資料の提供)である。

(3) 「相当の期間」とは,意見書・資料を準備・提出するのに一般に合理的に

必要と考えられる期間をいい,意見書等の提出期間が短かすぎてその提出ができ

なかった場合には,審査請求人等はこれを裁決の違法事由と主張し得るものであ

る。

8 第48条関係

(1) 「審査会に提出された意見書若しくは資料」とは,第45条第3項の規定

により審査会が諮問実施機関に作成及び提出を求めた「資料」及び第47条の規

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定により審査請求人等が提出した「意見書又は資料」を指す。なお,第45条第

1項の規定により開示決定等に係る保有個人情報が記録された公文書が提出さ

れていても,当該公文書はその開示の是非が争われているのであり,審査会の調

査審議手続において当該公文書の閲覧を求めることは当然できない。

(2) 審査会が閲覧・複写を拒むことができるのは,「第三者の利益を害するお

それがあると認めるとき,その他正当な理由があるとき」である。ここでいう第

三者は,審査会に提出された意見書・資料にその情報が含まれる第三者であり,

第23条が定める開示決定等に係る保有個人情報に自己の情報が含まれている

第三者と同一であるとは限らないので,第23条の意見書提出の機会とは別に,

事前の意見表明の機会が付与されるべきである。

(3) 「第三者の利益を害する」とは,例えば,個人のプライバシーを侵害した

り,法人の営業上の秘密が明らかになり正当な利益が損なわれたりする場合であ

り,「その他正当な理由があるとき」とは,行政上の秘密の場合のほか,閲覧請

求が権利濫用の場合を含む。

(4) 本条の閲覧請求権は,審査会の調査審議手続における主張立証の便宜のた

めに認められているものであるから,審査会の答申後は,閲覧を求めることはで

きない

(5) 意見書等を閲覧に供するときは,事件の調査審議に支障が生じないよう,

その日時及び場所を指定することができる。ただし,審査請求人等が十分な主

張・立証をすることができるようにするという本条の趣旨を損なわない範囲にお

いて指定しなければならない。

9 第49条関係

実施機関からの諮問に基づいて行われる審査請求に係る審査会の調査審議の手

続が,実施機関の開示決定等,訂正決定等又は利用停止等決定等の処理の適否につ

いて行われるものであり,公開することにより,個人情報等不開示情報が公になる

ことがあり得ること等から,非公開としたものである。

10 第50条関係

本条は,審査会が答申をしたときには,審査請求人と参加人に答申書の写しを送

付し,答申の内容を一般に公表すべきことを定めたものである。

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(1) 答申書の送付・答申の内容公表の時期については,本条には明記されてい

ないが,第三者的な不服審査機関としての審査会の性格,審査請求人が諮問機関

の裁決の日まで答申の存在を知らなかったということがないようにすべきこと,

裁決を不服とする訴訟提起のための資料の提供などの点を考えると,答申日若し

くは答申日から遅滞なく,送付や公表を行うものとする。

(2) 公表の対象を答申書自体ではなく「答申の内容」としているのは,答申の

中に,審査請求人や参加人の氏名・住所等,公表することが不適当なものが含ま

れている場合にこれらを除いて行うためである。

11 第51条関係

本条は,本章の審査会の運営に関し,第41条から第50条までの規定のほか,

必要な事項は,会長が審査会に諮って定めるということである。

(運用)

審査会の庶務は,総務部市政情報課が担当する。

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第6章 事業者に対する指導等

第52条(事業者に対する指導等)関係

(事業者に対する指導等)

第52条 実施機関は,事業者の個人情報の保護について普及啓発に努めるととも

に,必要に応じ事業者に対し指導及び助言を行うものとする。

(趣旨)

本条は,事業者に対し指導及び助言を行うことについて規定したものである。

(解釈)

1 個人情報に関する市民の基本的人権を擁護していくためには,実施機関等公的部

門だけでなく民間事業者等が取り扱う個人情報についても,総合的な保護を図って

いく必要がある。

民間部門に対する個人情報の保護対策を講じる上では,憲法で保障された「営業

の自由」との十分な調整を図らなければならず,自ずと規制の内容,度合いにも制

限が生じざるを得ないことから,行政指導によることになる。

2 「普及啓発に努めるとともに,必要に応じ,事業者に対し指導及び助言を行う」

とは,次の事項などをいう。

(1) 事業者を対象とした個人情報保護に関する研修会や講習会の開催

(2) 事業者を対象とした個人情報保護に関するパンフレット等の配布

(3) 事業者からの個人情報保護に関する相談への対応等

(4) 是正勧告に至らない一般的な指導及び助言の実施

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第53条 削除

第54条 削除

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第55条(苦情相談の処理)関係

(苦情相談の処理)

第55条 実施機関は,事業者の個人情報の取扱いについて苦情の相談があったとき

は,適切かつ迅速な処理に努めるものとする。

(趣旨)

本条は,事業者の保有する個人情報の取扱いに関する苦情相談について,市長は

適切かつ迅速に対処すべきことを定めたものである。

(解釈)

1 本条における苦情相談は,事業者の個人情報の取扱い全般に関するものであり,

その相談者については制限がない。

2 苦情相談は,その方法を問わず書面でも口頭でもよく,また,その形式も問わな

い。

3 「適切かつ迅速な処理に努める」とは,苦情相談の個別具体的な内容に沿うよう

な方法で調査等を行い,より早い解決に努めることをいう。

(運用)

1 苦情相談の窓口は,個人情報窓口となるが,必要に応じて関係担当課の協力を得

て処理するものとする。

2 市民からの苦情相談等には十分な任意調査を行い,その結果個人の権利利益が侵

害されるおそれが大きいと判断されるときには,事業者に説明や必要な資料の提出

を求め事実の確認を行うものとする。

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第7章 雑則

第56条(他の法令との調整等)関係

(他の法令との調整等)

第56条 第3章,第4章及び次章の規定は,保有個人情報のうち次に掲げるものに

ついては,適用しない。

(1) 統計法(平成19年法律第53号)第2条第6項に規定する基幹統計調査

及び同条第7項に規定する一般統計調査に係る調査票情報(同条第11項に規定

する調査票情報をいう。)に含まれる個人情報

(2) 統計法第2条第8項に規定する事業所母集団データベースに含まれる個人

情報

(3) 統計法第2条第1項に規定する行政機関(以下この号において「行政機関」

という。)が同法第29条第1項の規定により他の行政機関から提供を受けた同

法第2条第10項に規定する行政記録情報に含まれる個人情報

(4) 統計調査条例(平成4年宮城県条例第15号)第2条第1項に規定する県

統計調査に係る調査票情報に含まれる個人情報

2 第3章の規定は,前項各号に掲げる個人情報を除き,法律の規定により行政機関

の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)第4章の規定

の適用を受けないこととされる個人情報(特定個人情報を除く。)については,適

用しない。

3 この条例の規定は,市の図書館その他の施設において,現に市民の利用に供する

ことを目的としている個人情報については,適用しない。

(趣旨)

1 第1項は,統計法等に基づき取り扱われる個人情報については,必要な個人情報

の保護措置が十分とられていることから,第3章,第4章及び第8章を適用しない

ことを定めたものである。

2 第2項は,法律の規定により行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律

(平成15年法律第58号。以下「行政機関個人情報保護法」という。)の規定の

適用を受けないこととされている保有個人情報(保有特定個人情報を除く。)につ

いては,第3章を適用しないことを定めたものである。

3 第3項は,市の図書館等で一般に利用に供することを目的としている個人情報に

ついての,適用除外について定めたものである。

(解釈)

1 第1項関係

(1) 統計法等においては,次のような保護措置がとられている。

ア 個人が識別されない方法で個人情報が取り扱われている。

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イ 秘密の保護が図られている。

ウ 目的外使用が禁止されている。

エ その他適正管理の措置等がとられている。

(2) 各号関係

ア 第1号関係

「統計法(平成19年法律第53号)第2条第6項に規定する基幹統計調査」

とは,国勢統計,国民経済計算及び国の行政機関が作成する統計のうち重要な

ものとして総務大臣が指定する基幹統計の作成を目的とする統計調査をいい,

「同条第7項に規定する一般統計調査」とは,国の行政機関が行う統計調査の

うち基幹統計調査以外のものをいう。基幹統計調査には,次のようなものがあ

る。

(ア) 国勢調査(総務省の実施に係るもの)

(イ) 工業統計調査(経済産業省の実施に係るもの)

(ウ) 学校基本調査(文部科学省の実施に係るもの)

イ 第2号関係

「統計法第2条第8項に規定する事業所母集団データベース」とは,事業所

に関する情報の集合物であって,それらの情報を電子計算機を用いて検索する

ことができるように体系的に構成したものをいう。

ウ 第3号関係

「統計法第29条第1項の規定により他の行政機関から提供を受けた同法

第2条第10項に規定する行政記録情報」とは,国の行政機関が,他の行政機

関から提供を受けた行政記録情報を利用して統計を作成するに際して,当該統

計の作成事務の一部を県に委託した場合における当該行政記録情報をいう。

エ 第4号関係

「統計調査条例(平成4年宮城県条例第15号)第2条第1項に規定する県

統計調査」とは,県が統計の作成を目的として個人又は法人その他の団体に対

し事実の報告を求めることにより行う調査をいう。

(3) 本項で各章の適用を除外しているのは,専ら統計調査に使用される場合に

限っているので,統計以外の行政目的などに使用される場合には,各章の規定が

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適用されるものである。

2 第2項関係

法律の規定により独自の完結した体系的な開示等の制度がある個人情報につい

ては,当該法律により行政機関個人情報保護法の規定の適用を受けないこととされ

ており,本条例においても,当該個人情報に係る開示等の手続は当該法律に定める

制度により行うべきものとして第3章の適用除外とするものである。

なお,特定個人情報については,番号法において情報提供等記録開示システムに

よる開示と,他の法令による開示とを重ねて認めており,本項には該当しないもの

である。

3 第3項関係

(1) 「その他の施設」とは,図書,資料,刊行物等の一般への閲覧を事務事業

として行っている施設をいう(建物の一部が閲覧コーナーとなっているような場

合も含む。)。

(2) 「市民の利用に供することを目的としている個人情報」には,図書館等が

閲覧以外の一般行政事務で取得し,又は作成した個人情報は含まれない。したが

って,これらについてはこの条例の規定が適用されることとなる。

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第57条(苦情の処理)関係

(苦情の処理)

第57条 実施機関は,当該実施機関の個人情報の取扱いについて苦情があったとき

は,適切かつ迅速な処理に努めるものとする。

(趣旨)

本条は,実施機関の保有する個人情報の取扱いに関する苦情について,実施機関

は適切かつ迅速に対処すべきことを定めたものである。

(解釈)

1 本条における苦情とは,実施機関の個人情報の取扱い全般に関するものであり,

その申出者については制限がない。

2 苦情の申出は,その方法を問わず書面でも口頭でもよく,また,その形式も問わ

ない。

3 「適切かつ迅速な処理に努める」とは,苦情の個別具体的な内容に沿うような方

法で調査等を行い,より早い解決に努めることをいう。

(運用)

1 苦情相談の窓口である個人情報窓口は,関係担当課等との必要な連絡調整に当た

るものとする。

2 苦情相談に係る事務の取扱いについては,事務取扱要綱による。

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第58条(実施状況の公表)関係

(実施状況の公表)

第58条 市長は,毎年度,各実施機関における個人情報保護制度の実施状況を取り

まとめ,これを公表しなければならない。

(趣旨)

本条は,制度の公正な運営を確保するため,実施機関に対し,この条例の運用状

況について公表することを義務付けたものである。

(運用)

1 実施機関は,毎年この条例の運用状況を広く公表することにより,市民の理解と

信頼を深め,制度のより公正な運営を図るものである。

2 実施状況の公表は,市の広報紙及びウェブサイトに登載並びに市政情報センタ

ー・市政情報コーナーに資料を設置することにより行うものとする(施行規則第2

1条)。

3 公表する事項については,次に掲げる事項をいう。

(1) 個人情報取扱業務及び個人情報ファイルの登録件数

(2) 保有個人情報の開示請求件数

(3) 保有個人情報の開示請求内容

(4) 開示決定等件数

(5) 審査請求の件数

(6) 審査請求の内容及びその処理状況

(7) 前各号に掲げるもののほか,市長が公表すべきと認める事項

4 本条に基づく公表とは別に,審査会に対しても,本条例の運用状況について適宜

に報告することが求められる。

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第59条(国又は他の地方公共団体との協力)関係

(国又は他の地方公共団体との協力)

第59条 市長は,個人情報の取扱いに関し,市民の基本的人権を擁護するため必要

があると認めるときは,国若しくは他の地方公共団体に協力を要請し,又は国若し

くは他の地方公共団体の協力の要請に応ずるものとする。

(趣旨)

本条は,市長が市民の基本的人権を擁護するために必要があるときは,国,他の

地方公共団体に対して,適切な措置を取るように要請し,又は協力の要請に応ずる

旨を規定したものである。

(解釈)

1 本条例の所期の目的を貫徹していくためには,国又は他の地方公共団体との関係

や,市域を越える民間事業者の事業活動などについても,個人情報保護施策の対象

としなければならない。そのためには,国や他の地方公共団体の協力を得て,総合

的に個人情報保護施策を実施していく必要がある。国又は他の地方公共団体との協

力は,次のようなことなどから必要となるものである。

(1) 事業者が行う個人情報の取扱いが市域を超えて広範囲に及んでいる実態が

あること。

(2) 条例の効力に地域的限界があること。

2 「協力」が必要となる内容には,次のようなものなどがある。

(1) 国に対するものの例

ア 事業者団体等に対する関係省庁の指導等

イ 必要な情報交換

(2) 他の地方公共団体に対するものの例

ア 他の地方公共団体の区域内に事務所又は事業所を有する事業者に関する調

イ 他の地方公共団体の区域内に事務所又は事業所を有する事業者に対する不

適正な行為の是正指導等

ウ 必要な情報交換

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第60条(委任)関係

(委任)

第60条 この条例の施行に関し必要な事項は,実施機関が定める。

(趣旨)

本条は,この条例の施行に関し必要な事項は,各実施機関がそれぞれ規則等により

定めることとしたものである。

(運用)

1 この条例の施行に当たっては,実施機関によって制度の運営に相違が生ずること

のないよう十分留意する必要があるとともに,各実施機関が規則等を制定し,又は

改正する場合には,実施機関相互間で十分に連絡調整を図るものとする。

2 本条により市長が定めた規則等は,次のとおりである。

大崎市個人情報保護条例施行規則

大崎市個人情報保護事務取扱要綱

大崎市個人情報保護条例の解釈と運用

公文書の写し等に対して負担しなければならない費用の告示

個人情報取扱事務の委託基準

個人情報業務登録簿記載要領

個人情報ファイル登録簿記載要領

3 本条により実施機関によって定められた規則等は次のとおりである。

大崎市議会個人情報保護条例施行規則

大崎市教育委員会個人情報保護条例施行規則

大崎市農業委員会個人情報保護条例施行規程

大崎市選挙管理委員会個人情報保護条例施行規程

大崎市固定資産評価審査委員会個人情報保護条例施行規程

大崎市監査委員個人情報保護条例施行規程

大崎市水道事業個人情報保護条例施行規程

大崎市病院事業個人情報保護条例施行規程

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第8章 罰則

第61条関係

第61条 実施機関の職員若しくは職員であった者,派遣労働者若しくは派遣労働者

であった者又は受託業務等に従事している者若しくは従事していた者が,正当な理

由がないのに,生存する個人の秘密に属する事項が記録された第2条第9号アに係

る個人情報ファイル(その全部又は一部を複製し,又は加工したものを含む。)を

提供したときは,2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

(趣旨)

本条は,実施機関の職員若しくは職員であった者,派遣労働者若しくは派遣労働

者であった者又は実施機関から委託を受けた個人情報取扱業務若しくは公の施設

の管理の事務に従事している者若しくは従事していた者が,正当な理由なく,生存

する個人の秘密に属する事項が記録された個人情報ファイルのうち電算処理ファ

イルを提供したときに,罰則を科すこととしたものである。

(解釈)

1 本条で定める罰則は,故意による行為のみを対象とし,過失による行為は対象と

しない(刑法(明治40年4月24日法律第45号)第38条第1項)。なお,第

8章で定める本条以外の罰則についても同様である。

2 「実施機関の職員」とは,第2条第1号で定義している「実施機関」の職員であ

る。一般職であるか特別職であるか,常勤であるか非常勤であるかを問わず,地方

公務員法第3条に規定する者である。

3 「受託業務等に従事している者若しくは従事していた者」とは,当該受託業務作

業等に直接的に従事する者又は従事していた者であるが,運搬に携わる者,従事者

等の管理者等,当該受託業務に係る保有個人情報に関与できる職・地位にあり,実

際に関与する者も含まれるものである。

4 「正当な理由がないのに」とは,個人情報取扱業務の性質上,当該業務とは何ら

関わりがないものへ提供する等,提供した理由に社会通念上妥当と認められる理由

がないことをいう。具体的には,実施機関の職員が第11条の規定に違反して提供

した場合のうち,個人情報を取り扱う事務の性質上,業務とは全く関連がないもの

へ提供した場合や,受託業務又は公の施設の管理の事務に従事する者が第15条第

2項の守秘義務又は委託契約における契約事項に違反して提供した場合等をいう。

5 「個人の秘密に属する事項」とは,地方公務員法にいう「秘密」と同義であり,

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一般的に了知されていない事実であって,それを了知させることが一定の利益の侵

害になると客観的に考えられるもの,いわゆる実質秘密と解するものである。実質

秘か否かの判断に当たっては,当該保有個人情報の内容,収集及び利用目的,保有

個人情報が記録されている公文書の性質等に照らし,個別に判断することになる。

6 「第2条第7号アに係る個人情報ファイル」とは,一定の事務の目的を達成する

ために特定の保有個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体

系的に構成したものをいう。

7 「複製」とは,電子計算機処理に係る個人情報ファイルを電磁的記録媒体にコピ

ーすることなどをいう。

「加工」とは,個人情報ファイルの内容の一部に変更を加えたり,一部を抜き出

すことなどをいう。

8 「提供したときは」とは,個人情報ファイルをオンラインで送付すること,個人

情報ファイルをダウンロードした媒体を提供すること,個人情報ファイルを取り扱

うパソコンをアクセス権限のない者に操作させて提供することも含むものである。

9 この条の罰則の量刑を「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」としたこと

は,個人の秘密に属する事項が記録された公文書の中でも,特定の個人を容易に検

索することができるように体系的に構成されている公文書は,他の公文書と比べ,

正当な理由もなく提供され,漏えいした場合には,個々人に与える被害は最も甚大

なものとなり,被害の広範性を招くとともに社会に与える影響も大きいことから,

地方公務員法第60条の守秘義務違反に対する罰則の量刑を加重し,行政機関個人

情報保護法第53条と同様とするものとして,地方自治法第14条第3項の規定に

おいて条例上の限度とされている量刑を科すものである。

(運用)

本条の罰則で想定される具体例としては,本条に規定する者が,個人の秘密に属

する事項が記載されたデータベースを記録媒体に複写して,業務上必要がない者に

提供した場合が挙げられる。

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第62条関係

第62条 前条に規定する者が,その業務に関して知り得た生存する個人の保有個人

情報を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供し,又は盗用したとき

は,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

(趣旨)

本条は,前条に規定する者が,その業務に関して知り得た生存する個人の保有個

人情報を自己又は第三者の不正な利益を図る目的で提供し,又は盗用した場合に,

罰則を科すこととしたものである。

(解釈)

1 「前条に規定する者」とは,「実施機関の職員若しくは職員であった者又は受託

業務等に従事している者若しくは従事していた者」である。

2 「業務に関して知り得た生存する個人の保有個人情報」とは,個人情報の取扱い

に従事していない場合であっても,その業務に関して知り得た生存する個人の保有

個人情報を含むものである。また,その対象は「生存する個人の保有個人情報」全

般であり,「生存する個人の秘密に属する事項」に限定されない。

3 「自己又は第三者の不正な利益を図る目的で提供し,又は盗用」とは,保有個人

情報を「不正な利益を図る目的」で提供又は盗用することを要件としているもので

ある。

なお,第3条第2項又は第15条第2項に違反して個人情報をみだりに他人に知

らせたとしても「不正な利益を図る目的」がなければ本条は適用されないが,その

場合は,地方公務員法第60条の守秘義務違反として処罰される可能性はある。

4 本条の罰則の量刑を「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」としたことは,

業務に関して知り得た公文書に記録されている個人情報については,個人の秘密に

関わるものであるか否かを問わず,不正な利益を図る目的で利用又は提供(盗用)

される行為は,本市の個人情報の適正な取扱いに対する信頼を著しく損なうほか,

個人の秘密に属する個人情報である場合は,個人に与える被害は大きいものである

ことから,行政機関個人情報保護法第54条の罰則の量刑と同様とするものであ

る。

(運用)

本条の罰則で想定される具体例としては,次のようなものである。

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(1) 職員又は受託業者が,職務上知り得た他人の氏名・住所・電話番号を名簿

業者に売却した場合

(2) 職員が,自己が管理する個人データを複写して,退職後の起業に利用した

場合

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第63条関係

第63条 実施機関の職員がその職権を濫用して,専らその職務の用以外の用に供す

る目的で生存する個人の秘密に属する事項が記録された文書,図画又は電磁的記録

を収集したときは,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

(趣旨)

本条は,実施機関の職員が職権を濫用して,専らその職務の用以外の用に供する

目的で生存する個人の秘密に属する事項が記録された文書等を収集した場合に,罰

則を科すこととしたものである。

(解釈)

1 本条で定める罰則は,職権濫用行為を対象とすることから,その主体は実施機関

の職員のみである

2 「職権」とは,実施機関の職員が有する職務権限である。

3 「職権を乱用して」とは,職務権限を違法・不当に行使すること,又は職権行使

に仮託して違法・不当な行為を行うことなどをいう。

4 「専ら職務の用以外の用に供する目的で」としているのは,収集行為のうち,刑

罰を科すに値する害悪を伴う行為に限定するということで,職務を遂行する上での

収集に逸脱があるが,職務熱心であるが故に行った行為などについては,本条の適

用はなく,このような行為は懲戒処分等で対応するものである。

5 「収集」行為は,実施機関内又は各実施機関相互間での収集に限らず,国,他の

地方公共団体,関係機関又は第三者等から収集した場合も含み,公文書に記録され

たものに限られないことから,有形的な物件を収集する行為で,収集する意思をも

って行う行為が対象となる。ただし,閲覧により生存する個人の秘密に属する事項

を知ることのみでは収集に当たらない。

6 この条の罰則の量刑を「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」としたことは,

職権を濫用し,実質秘に相当する個人情報を収集することは,条例の各規範を著し

く損なうとともに,本市の個人情報の適正な取扱いに対する信頼を著しく損なうも

のであることから,行政機関個人情報保護法第55条の罰則の量刑と同様とするも

のである。

(運用)

本条の罰則で想定される具体例としては,職員が,個人的興味を満たす目的で,

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自己の職務を装って,他の課に保管されている特定の人に関する健康診断結果や相

談内容を複写した場合等が挙げられる。

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第64条関係

第64条 第42条第5項の規定に違反して秘密を漏らした者は,1年以下の懲役又

は50万円以下の罰金に処する。

(趣旨)

本条は,個人情報保護審査会委員の守秘義務違反に対する罰則を定めるものであ

る。

(解釈)

審査会の委員は,その審議の場合において,審査請求事案では,個人の秘密に属

する事項に係る保有個人情報やその他の不開示情報をインカメラで審査すること

ができるともに,条例の各諮問事項等の審議でも,その審理の過程において,職務

上様々な秘密を知り得ることになることから,この場合の「秘密」は個人の秘密の

みならず,職務上知り得た秘密も対象とされる。

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第65条関係

第65条 偽りその他不正の手段により,開示決定に基づく生存する個人の保有個人

情報の開示を受けた者は,5万円以下の過料に処する。

(趣旨)

本条は,この条例で定める保有個人情報の開示請求権の適正な行使を担保するた

め,偽りその他不正の手段により,開示決定に基づく保有個人情報の開示又は第2

5条の規定に基づく口頭による開示請求により開示を受けた者に対して,過料を科

すことを定めたものである。

(解釈)

1 「偽りその他不正の手段」とは,保有個人情報の開示を受ける手段で真実でない

又は不正なものをいい,例えば,開示請求の際に本人等であることを証明するため

に必要な書類を偽造又は盗用する等により,他人になりすまして,保有個人情報の

開示を受けた場合などが想定される。また,その他の不正手段には,脅迫,賄賂を

渡すなどにより開示を受けることなども含まれる。

2 「開示決定に基づく生存する個人の保有個人情報の開示を受けた者」とは,この

条例の規定により開示請求を行い,当該請求に係る個人情報の全部又は一部を開示

する旨の決定に基づき,実際に当該個人情報を閲覧し,又は写しの交付を受けた者

若しくは口頭による開示請求により,直ちに個人情報の開示を受けた者のことをい

い,他の法令又は条例の規定に基づき開示を受けた者は含まない。

3 この条の罰則の量刑を「5万円以下の過料」としたことは,偽りその他不正な手

段により開示を受けた場合には,当該行政目的のために定められた厳格な開示制度

の秩序を侵害するものであり,開示手続の適正化を担保する必要性が認められるこ

とから,秩序罰である過料を科すものとして,行政機関個人情報保護法第57条の

罰則の量刑と衡量し,地方自治法第14条第3項において条例上の限度とされてい

る量刑を科すものである。