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システム制御工学 A 資料 12 8 フィードバック制御系の設計 2 PID 補償 (P.197) 張山昌論

システム制御工学A 資料12...過渡特性 Ts 整定時間:出力が最終値の±5%に収まるまでの時間 定常特性 ステップ応答(P.146)における過渡特性と定常特性

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システム制御工学A資料 12

8章 フィードバック制御系の設計 2 PID補償(P.197)

張山昌論

Page 2: システム制御工学A 資料12...過渡特性 Ts 整定時間:出力が最終値の±5%に収まるまでの時間 定常特性 ステップ応答(P.146)における過渡特性と定常特性

今日の内容

nフィードバック制御系の設計(8章)

Ø周波数領域での設計

・ゲイン・位相進み・遅れ補償

・PID補償

Ø根軌跡を用いた設計法 テスト範囲外です

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3

PID補償による制御系設計

入力

X(s) Y(s)+

-出力

Gp(s)制御対象

KP

1

1TIs

TDs

+

++e

PID調節器

KP:比例ゲイン,TI:積分時間,TD:微分時間

÷÷ø

öççè

æ++ sTsT

K DI

P11

偏差eの比例(Proportional), 積分(Integral), 微分(Derivative)により操作量uを決定

u

比例

積分

微分

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4

P補償器

入力

X(s) Y(s)+

-出力

Gp(s)制御対象

KP

1

1TIs

TDs

+

++e

u

PK比例

積分

微分

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書き換えられたP補償器(ゲイン補償と同じ)

Gp(s) 入力

X(s) Y(s)+

-出力

Kp

P補償器 制御対象

(開ループ伝達関数)=Kp Gp(s)

(dBゲイン) = 20 log | Kp Gp(jω) |= 20 log Kp + 20 log |Gp(jω)|

制御対象のdBゲイン

P補償器のdBゲイン

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6

P補償の効果

gdb 0

+

-

ωc

ωc’

+20logKp

φ0

-180 PM

•dBゲインは 20logKp 変化

•位相特性は変化無し

Kp>1⇒ 20logKp >0😊低域ゲイン向上 (定常偏差小)😊ωc大 (速応性向上)

😩 PM減少 (安定性劣化)

Kp>1の場合

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P補償の問題点

nP補償だけではステップ入力に対する定常偏差を0にできない

nゲイン Kpを大きくしすぎる ⇒ 不安定

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過渡特性

Ts 整定時間:出力が最終値の±5%に収まるまでの時間

定常特性

ステップ応答(P.146)における過渡特性と定常特性

1.0

時間t入力

出力

8

偏差e=0→制御値=0 でも,まだ値は動いている(速度は0でない)

P制御は,「現在」の偏差を0にするように制御する

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PI補償器:定常特性の改善

入力

X(s) Y(s)+

-出力

Gp(s)制御対象

KP

1

1TIs

TDs

+

++e

u

÷÷ø

öççè

æ+

sTK

IP

11比例

積分

微分

比例要素(P)と積分要素(I)の組合せ

TI: 積分時間

目的: 定常特性の改善(定常特性を0にできる)

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書き換えられたPI補償器

入力

X(s) Y(s)+

-出力

PI補償器1

TI s+1 Gp(s) KP

PI補償の特長

l積分動作⇒偏差Eが積分され操作量Uに反映⇒ 偏差が0になって落ち着くまで継続

E(s) U(s)

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過渡特性

Ts 整定時間

定常特性

ステップ応答(P.146)における過渡特性と定常特性

1.0

時間t入力

出力

11

積分制御は,「過去から現在まで」の偏差の和を0に制御

積分区間T現在時刻

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特に低域ゲインを増加⇒ 定常偏差を少なくする

PI補償器の周波数特性

gdb

-90

0

20log KP

φ

1/TI

-20dB/dec

ω[rad/s]

1/TI

dBゲ

イン

位相

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PI補償の効果

ωc

gdbω

φω

-180°

0

0

PM

PI補償後

PI補償後

20 log Kp

低域のゲイン大幅に向上⇒ 定常偏差0に

-90度

オリジナル

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PI補償器の効果をみてみる

復習 直結型フィードバックシステムの定常偏差

入力R(s) C(s)

+-

出力G(s)

E(s)

e = limt→∞

e(t) = lims→0

sE(s) = lims→0

s R(s)1+ G(s)

e = lims→0

s R(s)1+ G(s)

= 11+ G(0)

特に,定常位置偏差の場合,入力R(s)=1/s(単位ステップ)

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PI補償器の効果をみる例題

入力R(s) C(s)

+-

出力補償器

Gp(s) E(s)

Gp(s)=1

s +1制御対象を とする.

補償器として,P補償,PI補償を用いた場合の定常位置偏差を比較せよ

Gc(s)

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続き

Gc(s) = K p G(s) = Gc(s)Gp (s) = K p1

s +1

P補償の場合

開ループ伝達関数は

Gc(s) = KP 1+ 1TI s

⎛⎝⎜

⎞⎠⎟

= KPTI s +1

TI s⎛⎝⎜

⎞⎠⎟

G(s) = Gc(s)Gp (s) = K pTI +1TI s

⎛⎝⎜

⎞⎠⎟

1s +1

PI補償の場合

開ループ伝達関数は

ちなみに,伝達関数の分母の

sの項の次数がj⇒ j-1型の伝達関数

(0型)

(1型)

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続き

P補償の場合

PI補償の場合

G(0) = K p1

0 +1= K p

e = 11+ G(0)

= 11+∞

= 0

e = 11+ G(0)

= 11+ K p

定常位置偏差

定常位置偏差

G(0) = K pTI +1TI × 0

⎛⎝⎜

⎞⎠⎟

10 +1

= ∞

定常位置偏差⇒開ループ伝達関数が1次型以上の場合0

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PD補償器: 速応性の向上

入力

X(s) Y(s)+

-出力

Gp(s)制御対象

KP

1

1TIs

TDs

+

++e

u

( )sTK DP +1比例

積分

微分

TD: 微分時間

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書き換えられたPD補償器

入力

X(s) Y(s)+

-出力

PD補償器

+1 Gp(s) KP

PD補償の特長 → 即応性

l微分動作⇒偏差Eが増加(減少)しつつある⇒先を見越して,操作量Uを大きく(小さく)する⇒ 偏差の変化を抑え,目標値にすばやく一致

E(s) U(s)TD s

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20

PD補償器の周波数特性

gdb

0

90

20log KP

φ

1/TD

20dB/dec

ω[rad/s]

ω[rad/s]1/TD

dBゲ

イン

位相 中域以降の位相を進ませる

⇒ 安定性を保つ

中域以降ゲイン向上⇒ 過渡特性の改善

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PD補償の効果

ωc

gdbω

φω

-180°

0

0

PM

PD補償後

PD補償後

20 log Kp 中域のゲイン大幅に向上⇒ 過渡特性向上

(速応性・減衰性)

PM

中低域の位相増加⇒ PMを減少させない⇒ 安定性維持

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PID補償による制御系設計

入力

X(s) Y(s)+

-出力

Gp(s)制御対象

KP

1

1TIs

TDs

+

++e

PID調節器

KP:比例ゲイン,TI:積分時間,TD:微分時間

÷÷ø

öççè

æ++ sTsT

K DI

P11

偏差eの比例(Proportional), 積分(Integral), 微分(Derivative)により操作量uを決定

u

比例

積分

微分

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PID補償器の周波数特性

gdb

-90

+90

20log KP

φ

1/TI

-20dB/decω[rad/s]

ω[rad/s]

1/TD

dBゲ

イン

位相

20dB/dec

1/TD 1/TI

0

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25

PID補償の効果

ωc

gdbω

φω

-180°

0

0

PM

PID補償後

PID補償後

20 log Kp

低域・中域のゲイン大幅に向上⇒ 定常特性,過渡特性

共に改善

中低域の位相増加⇒ PMを減少させない⇒ 安定性維持

オリジナル

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PIDの効果を確かめる例題

(s+1)(s+10)10

PID補償のパラメータ: KP=2.75, KI=2.5, KD=0.25PI補償のパラメータ : KP=1, KI=1P補償のパラメータ : KP=10

入力

X(s) Y(s)+

-出力

Gp(s)制御対象

KP

1

1TIs

TDs

+

++e

u

比例

積分

微分

制御対象 GP(s)=

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ステップ応答

1

0.5

00 2 4

PI

PIDP

時刻 t [s]

y(t)

目標値1

PID, PI ⇒ 積分の効果で

定常偏差0PID⇒微分効果で

過渡特性改善

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PD補償の演習(P.217 8・3改)

1. ゲイン補償Gc(s)=Kのみでは安定化することができないことを,ボード線図の位相特性から説明せよ

2. PD補償Gc(s)=Kp(1+TDs)を用いたとき,系を安定にするKP,TDを求めよ

3. PD補償を用いたとき,単位ステップの外乱に対して定常偏差を0.2以下にするKPを求めよ

教科書P.217 図8・45について次の問に答えよ

ここではラウスの安定性判別を

使ってみましょう

R(s) C(s) +

- + +

D(s)

Gc(s) 1s2 (s + 2)

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3の補足:外乱に対する定常偏差

入力

R(s) C(s)+

-出力+ +

外乱D(s)

復習

補償要素 制御対象

Gc(s) 1s2 (s + 2)

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基本伝達関数のまとめ

伝達関数 KsK

s

1

(1+sT)1+sT

ωn2

S2+2ξωns+ωn2 e-Ls

ボード線図のゲイン

ボード線図の位相

ナイキスト線図

ステップ

応答

-20dB/dec

1/T1/T

20dB/dec ωco=ωn0

-40dB/dec

0

-π2

1/T

0

1/T 00

-π/2

ReIm

1

Im

10 1

Im

1Im

K

-20dB/dec

0

-π2

Re

Im

t0

t

1/K

20dB/dec

0

π2

Re

Im

t0 0T

63%

t0 t0 tL0

復習

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解答1

0

-π2

1/0.5=2

Gc(s)=Kのとき開ループ伝達関数は

sssK

ssK

5.01115.0

)2(2 +=

+

2個の積分系と1個の1次遅れ⇒位相特性は?

0

-π2

1/0.5K 0

-π2

1 -π

-3π2

2

位相余裕が なので,{安定/不安定}

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解答2 まずは特性方程式!

322 2)2(1)1()(

ssTsKK

ssDPDPPsTKsG

+

+

+=´+=

01)(1 322=+=+

+

+

ssTsKK DPPsG

02 23 =+++ PDP KTsKss

開ループ伝達関数G(s)は

特性方程式は

特性方程式: (伝達関数の分母)=0 とする方程式

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解答2つづき

PaaK

KTK

P

DP

K

a

KTK

P

P

DP

=-

=-=-

02

20201

221

0

0201

( ) 0,021 >>-= PDP KTKa 0,21 >> PD KT

ラウス配列は

ラウスの安定判別条件(左1列目の符号)

(奇数番目の係数)

(偶数番目の係数)

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解答3

G1 = Gc(s) = KP (1+ TDs) G2 = Gp (s) = 1s2 (s+2) ssD 1)( =

2.01)()()(1

)(lim

0£=

ïþ

ïýü

ïî

ïíì

÷÷ø

öççè

æ

+-

®Ppc

p

s KsD

sGsGsG

s

pK£5

外乱に対する 定常偏差の大きさは