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「林業の6次産業化、雇用創出を目指す 木質バイオマス発電所」 取組の「創意工夫」 林道整備による木材の集荷量確保、伐採量・木質ペレット買取価格・発電規模の設定など、内子町森林組合 をはじめとする地元林業事業者との連携により、ビジネスモデルや事業を構築することで、持続可能な発電所 運営を実現できているものと考えられる。また、豊富な専門家、設計業者のアドバイス・協力を得ることで、 有効な技術等の導入、原料と設備との相性の見極めにつながっている。 取組内容 土地利用、立地条件を考える ・森林地帯 バイオマスの定量・通年確保 ・地元林業事業者と連携し、林道整備により集荷量を確保 有効な技術(専門家)を探す ・小型熱電併給システム 事業パートナーを発掘する ・木質バイオマス発電所の整備実績の豊富な専門家、設計業者 身の丈に合った事業規模、収支計算 ・発電量を収量等から算出し、採算可能な規模の発電所を建設 エネルギー等のカスケード利用 ・バイナリー発電(熱エネルギーを活用し売電へ) 入口・出口との活発なコミュニケーション ・内子町森林組合と議論し、伐採量や木質ペレットの 買取価格、発電規模を設定 研究開発機能を持ち、自ら日々研究する ・バイオマス原料と設備との相性の見極め 他のモデルへの応用 ・町内に第 2 発電所を建設予定 事業をうまく回すためのパートナーシップ、ネットワーク 発電所では、地域の未利用材の有効活用を目指し、建設前より内子町森林組合をはじめとする地元林業事業 者と連携して、スムーズな集荷に向けて林道整備を進めてきた。 また、建設前に、内子町森林組合と共に、地域の木材の賦存量、木材を集荷する人材の数、運搬費用、生産 量による木質ペレット価格(量が多いほど高額となる傾向)の差など、 諸条件を考慮した上で、伐採量や木質 ペレットの買取価格、発電規模(1115kW)を十分議論し設定したことも、採算可能な発電所の運営を実現 できた要因の1つだという。現在、()内藤鋼業では、熱エネルギーを直接活用できる用途を模索しながら、 地域内での第2発電所の建設を目指している。 発電所の建設は、木材の伐採量や木質ペレット生産量を拡大することになるため、収益の確保に加えて、集荷 役や工場の作業員など、地方の中山間部における新たな雇用を創出できる貴重な機会になります。今後も、林 業活性化と地域の雇用創出につながる発電所の運営を目指します」(内藤昌典さん) Point 木質ペレットの安定供給を目指し、地域の企業と森林組合等が連携し、木質バイオマス発電所を整備。 木質バイオマスと設備との相性の見極めと、FIT による売電量確保のため、半年間の試運転を実施。 林業活性化と地域の雇用創出を目指し、第2発電所の建設も視野に入れる。 事業スキーム図 地元企業等による出資に加えて、地元の伊予銀行からの融資を受けて設立 取組の概要間 間 間 、システムの間 間 間 など 愛媛県のほぼ中央に位置する内子町では、 2006 年策定の「バイオマスタウン構想」を皮切りに、町内の官民施設 においてペレット燃料機器が導入されるようになった。しかし、木質ペレットは重油と併用されるため、原油価格 をはじめとする世界のエネルギー情勢に需要や販売価格が大きく左右される傾向にあり、また、ペレットボイラー は需要が冬季に限定されるというデメリットもあるため、地域における木質ペレットの安定供給に課題があった。 そこで、木質ペレット工場を運営する()内藤 鋼業の代表取締役を務める内藤昌典さんは、木 質ペレットの安定供給が期待できるものとして、 木質バイオマス発電所に着目。地元の森林組合 や専門家、エンジニアリング企業等の連携によ り、地元の木材団地の隣接地に「内子バイオマ ス発電所」を木質ペレット工場(新設)とセット で建設し、 2019 4 月より本格稼働している。 事業がうまく回る秘訣 発電所では、木質バイオマス発電所の整備実績の豊富な専門家と設計業者よりアドバイス・協力を受けて、小型 熱電併給システム(CHP)とバイナリー発電装置(熱エネルギーを利用する発電装置)を導入して発電を行い、一 般家庭の約 2,500 世帯分を電力会社へ売電している。 発電所の根幹をなす熱電併給システムはドイツ製で、 国内での導入実績はまだ多くなかった。加えて、投入す る木質ペレット原料のスギは含水率が高い、熱効率が低 い、燃焼を阻害するクリンカー(灰の焼魂)やタールが 発生しやすいなど、バイオマス燃料とするには課題の多 い樹種である。そのため、運転ノウハウの構築に向けて 半年間の試運転を行ったという。 連続運転ができないままの状態で売電を開始すると、売 電量を十分確保できないことで、採算が取れなくなる懸念 があります。また、外国製の設備なので、元々想定してい る木質ペレットがスギ原料のものとは性質が大きく異なるた め、設備との相性を見極める必要もあります。 そのため、安定して連続運転できるまで、準備期間を十 分設けるようにしました」(内藤昌典さん) 内子バイオマス発電(合)/(有)内藤鋼業【愛媛県内子町】 木質ペレットの安定供給を目指し、木質バイオマス発電所を整備。 地元林業事業者と連携して、林道整備を実施し、採算可能な発電所運営にかかる条件を設定。 林業活性化と地域の雇用創出を目指し、第2発電所の建設も視野に入れる。 事業者プロフィール 名:有限会社内藤鋼業 立:1990 年(創業 1960 年) 地:愛媛県喜多郡内子町五十崎甲 2126 番地1 L:0893-44-3063 者:代表取締役 内藤昌典 従業員数:20 事業内容:ペレット製造・販売、ペレット機器販売 P:http://www.naito-kogyo.co.jp/ ※なお、内藤氏は、内子バイオマス発電合同会社(所在地:愛媛県喜多郡内子町寺村 2478 1)の所長も兼任する。 運転安定化を確認するまでの十分な準備期間を設け、地域の木質バイオマス と設備との相性の見極めと、FIT による売電量確保を実現。 内子バイオマス発電所の外観 及び施設構成 内子バイオマス発電所の概略図。燃料となる木質ペレットは、内子町とその周辺地域 から集めた地域の未利用材を活用し、隣接する木質ペレット工場で加工される。

内子バイオマス発電(合)/(有)内藤鋼業【愛媛県内子町 ......内子バイオマス発電(合)/(有)内藤鋼業【愛媛県内子町】 木質ペレットの安定供給を目指し、木質バイオマス発電所を整備。

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Page 1: 内子バイオマス発電(合)/(有)内藤鋼業【愛媛県内子町 ......内子バイオマス発電(合)/(有)内藤鋼業【愛媛県内子町】 木質ペレットの安定供給を目指し、木質バイオマス発電所を整備。

「林業の6次産業化、雇用創出を目指す 木質バイオマス発電所」

取組の「創意工夫」

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林道整備による木材の集荷量確保、伐採量・木質ペレット買取価格・発電規模の設定など、内子町森林組合をはじめとする地元林業事業者との連携により、ビジネスモデルや事業を構築することで、持続可能な発電所運営を実現できているものと考えられる。また、豊富な専門家、設計業者のアドバイス・協力を得ることで、有効な技術等の導入、原料と設備との相性の見極めにつながっている。

取組内容 ビジネスモデル

土地利用、立地条件を考える ・森林地帯 バイオマスの定量・通年確保 ・地元林業事業者と連携し、林道整備により集荷量を確保 有効な技術(専門家)を探す ・小型熱電併給システム 事業パートナーを発掘する ・木質バイオマス発電所の整備実績の豊富な専門家、設計業者 身の丈に合った事業規模、収支計算 ・発電量を収量等から算出し、採算可能な規模の発電所を建設

事業の構築

エネルギー等のカスケード利用 ・バイナリー発電(熱エネルギーを活用し売電へ)

入口・出口との活発なコミュニケーション ・内子町森林組合と議論し、伐採量や木質ペレットの 買取価格、発電規模を設定

研究開発機能を持ち、自ら日々研究する ・バイオマス原料と設備との相性の見極め 継続 他のモデルへの応用 ・町内に第2発電所を建設予定

事業をうまく回すためのパートナーシップ、ネットワーク

発電所では、地域の未利用材の有効活用を目指し、建設前より内子町森林組合をはじめとする地元林業事業者と連携して、スムーズな集荷に向けて林道整備を進めてきた。 また、建設前に、内子町森林組合と共に、地域の木材の賦存量、木材を集荷する人材の数、運搬費用、生産量による木質ペレット価格(量が多いほど高額となる傾向)の差など、諸条件を考慮した上で、伐採量や木質ペレットの買取価格、発電規模(1115kW)を十分議論し設定したことも、採算可能な発電所の運営を実現できた要因の1つだという。現在、(有)内藤鋼業では、熱エネルギーを直接活用できる用途を模索しながら、地域内での第2発電所の建設を目指している。 「発電所の建設は、木材の伐採量や木質ペレット生産量を拡大することになるため、収益の確保に加えて、集荷役や工場の作業員など、地方の中山間部における新たな雇用を創出できる貴重な機会になります。今後も、林業活性化と地域の雇用創出につながる発電所の運営を目指します」(内藤昌典さん)

Point ● 木質ペレットの安定供給を目指し、地域の企業と森林組合等が連携し、木質バイオマス発電所を整備。 ● 木質バイオマスと設備との相性の見極めと、FITによる売電量確保のため、半年間の試運転を実施。 ● 林業活性化と地域の雇用創出を目指し、第2発電所の建設も視野に入れる。

事業スキーム図 地元企業等による出資に加えて、地元の伊予銀行からの融資を受けて設立

取組の概要間 間 間 、システムの間 間 間 など

愛媛県のほぼ中央に位置する内子町では、2006年策定の「バイオマスタウン構想」を皮切りに、町内の官民施設においてペレット燃料機器が導入されるようになった。しかし、木質ペレットは重油と併用されるため、原油価格をはじめとする世界のエネルギー情勢に需要や販売価格が大きく左右される傾向にあり、また、ペレットボイラーは需要が冬季に限定されるというデメリットもあるため、地域における木質ペレットの安定供給に課題があった。 そこで、木質ペレット工場を運営する(有)内藤鋼業の代表取締役を務める内藤昌典さんは、木質ペレットの安定供給が期待できるものとして、木質バイオマス発電所に着目。地元の森林組合や専門家、エンジニアリング企業等の連携により、地元の木材団地の隣接地に「内子バイオマス発電所」を木質ペレット工場(新設)とセットで建設し、2019年 4月より本格稼働している。

事業がうまく回る秘訣

発電所では、木質バイオマス発電所の整備実績の豊富な専門家と設計業者よりアドバイス・協力を受けて、小型熱電併給システム(CHP)とバイナリー発電装置(熱エネルギーを利用する発電装置)を導入して発電を行い、一般家庭の約 2,500世帯分を電力会社へ売電している。 発電所の根幹をなす熱電併給システムはドイツ製で、国内での導入実績はまだ多くなかった。加えて、投入する木質ペレット原料のスギは含水率が高い、熱効率が低い、燃焼を阻害するクリンカー(灰の焼魂)やタールが発生しやすいなど、バイオマス燃料とするには課題の多い樹種である。そのため、運転ノウハウの構築に向けて半年間の試運転を行ったという。 「連続運転ができないままの状態で売電を開始すると、売電量を十分確保できないことで、採算が取れなくなる懸念があります。また、外国製の設備なので、元々想定している木質ペレットがスギ原料のものとは性質が大きく異なるため、設備との相性を見極める必要もあります。 そのため、安定して連続運転できるまで、準備期間を十分設けるようにしました」(内藤昌典さん)

内子バイオマス発電(合)/(有)内藤鋼業【愛媛県内子町】

木質ペレットの安定供給を目指し、木質バイオマス発電所を整備。

地元林業事業者と連携して、林道整備を実施し、採算可能な発電所運営にかかる条件を設定。

林業活性化と地域の雇用創出を目指し、第2発電所の建設も視野に入れる。

事業者プロフィール 企 業 名:有限会社内藤鋼業 設 立:1990年(創業 1960年) 所 在 地:愛媛県喜多郡内子町五十崎甲 2126番地1 T E L:0893-44-3063 代 表 者:代表取締役 内藤昌典 従業員数:20名 事業内容:ペレット製造・販売、ペレット機器販売 H P:http://www.naito-kogyo.co.jp/ ※なお、内藤氏は、内子バイオマス発電合同会社(所在地:愛媛県喜多郡内子町寺村 2478番 1)の所長も兼任する。

運転安定化を確認するまでの十分な準備期間を設け、地域の木質バイオマス

と設備との相性の見極めと、FIT による売電量確保を実現。

内子バイオマス発電所の外観及び施設構成

内子バイオマス発電所の概略図。燃料となる木質ペレットは、内子町とその周辺地域から集めた地域の未利用材を活用し、隣接する木質ペレット工場で加工される。