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2007 20 3 19

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エクアドルの投資環境調査

2007年

平成20年3月

平成1 9年度

第5号

戦 略 的 鉱 物 資 源確 保 事 業 報 告 書

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は じ め に

戦略的鉱物資源確保事業は、高い鉱物資源ポテンシャルが指摘されているにもかかわらず、鉱業制

度の安定性、環境問題、先住民・地域住民問題等の政治的社会的リスクが顕在化しているため、現状

では探鉱開発投資が停滞している国/地域において、その投資阻害要因を特定し、実際に投資を行う際

の留意点等を調査し、とりまとめを行う事業である。

本報告書は、エクアドルの投資環境について資源機構リマ事務所が現地コンサルタントの協力を得

て作成したものである。本報告書が関係各位の参考になれば幸甚である。

平成20年3月

独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構

企画調査部

おことわり:本報告書の内容は、必ずしも独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構と

しての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってお

りますが、本報告書の内容に誤りのある可能性もあります。本報告書に基づきとられた行動の

帰結につき、独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構及び執筆者は何ら責任を負いか

ねます。

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目 次

第一章 エクアドルの概要 ------------------------------------------------------------------ 1

1. 政治・行政事情 ---------------------------------------------------------------------- 1

2. 経済事情 ----------------------------------------------------------------------------- 4

2-1 近年の経済動向 ------------------------------------------------------------------ 4

2-2 近の経済指標 ------------------------------------------------------------------ 5

2-3 貿易状況 ------------------------------------------------------------------------ 7

2-4 投資動向 ------------------------------------------------------------------------- 8

第二章 エクアドルの鉱業 ----------------------------------------------------------------- 11

1. 鉱業市場動向 ----------------------------------------------------------------------- 11

1-1 エクアドル経済における鉱業の位置づけ ------------------------------------------- 11

1-2 鉱業生産・輸出状況 ------------------------------------------------------------- 12

1-3 鉱業投資動向 ------------------------------------------------------------------- 13

2. 鉱業政策・行政 --------------------------------------------------------------------- 14

2-1 鉱業政策動向 ------------------------------------------------------------------- 14

2-2 鉱業行政組織 ------------------------------------------------------------------- 16

3. 鉱業権の概要と鉱業権取得に必要な許認可制度 ----------------------------------------- 19

3-1 鉱業権の概要 ------------------------------------------------------------------- 19

3-2 環境規制 ------------------------------------------------------------------------ 22

3-3 労働安全上の行政手続き --------------------------------------------------------- 22

3-4 鉱区図の管理形態と入手方法 ----------------------------------------------------- 23

4. 鉱業税制 ---------------------------------------------------------------------------- 23

5. 外国投資に係わる諸手続き ----------------------------------------------------------- 24

6. 社会・環境事情 --------------------------------------------------------------------- 25

6-1 鉱業と地域社会との関係 --------------------------------------------------------- 25

6-2 鉱業に係わるNGO(特に環境NGO)の動向 -------------------------------------------- 25

6-3 労働事情 ------------------------------------------------------------------------ 26

6-4 インフラ事情 ------------------------------------------------------------------- 26

7. エクアドルの地質概要 -------------------------------------------------------------- 28

8. 探鉱開発動向 ----------------------------------------------------------------------- 29

9. エクアドル進出外国企業の投資環境評価 ----------------------------------------------- 30

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第一章 エクアドルの概要

1. 政治・行政事情

近年の政治・行政動向

エクアドルは、1960 年代より、大統領は失脚または軍による「 高評議会」にとってかわられ、暫定

的な政権交代が繰り返されるという状況におかれていたが、1979 年、軍政は終わりをつげ民政移管が

実施された。

総選挙により大統領となったハイメ・ロルドスは飛行機事故死したが、その後3回の選挙で選出され

た各大統領は任期 4 年を全うし、一応安定した政権による推移であったといえよう。しかし、1996 年、

ポピュリズム「ロルドス党」のアブダラ・ブカランが大統領になってからは、2006 年までの 10 年間に 6

人の大統領が入れ替わるという極めて不安定な政情が続いてきた。

ブカラン政権は、買収・賄賂などの腐敗行政に対する全国的な大統領退陣運動が起り、新政権発足

後わずか6か月で、大統領及び側近がパナマに政治亡命して崩壊した。国会は憲法規定の副大統領の昇

格を認めず、次期大統領選までの1年半の臨時大統領としてファビアン・アラルコン国会議長を任命し

た。

1998 年、元キト市長のジャミール・マワが直接選挙で大統領に選出され、 大の外交懸案であった

ペルーとの和平合意を達成した(当時のペルー大統領はアルベルト・フジモリ)。一方、経済面では債務

超過に陥った民間銀行の再建、各種補助金の廃止、税制改革、燃料値上げなどの財政赤字対策措置を

とったが、ハイパーインフレを起すなど、経済は大混乱に陥った。

2000 年 1 月 9 日、マワ大統領はエクアドル現地通貨のスクレを廃棄、米ドル通貨経済への移行を発

表したが、同年 1 月 21 日、政府の政治・経済政策に反対する先住民団体と一部陸軍将校がキトに集結、

国会を占拠し、無血クーデタの形でマワ大統領を辞任に追いやった。国会は副大統領のグスターボ・ノ

ボアの大統領昇格を承認した。この先住民団体が行動を起こしたことは、先住民が団結して政治に台

等する初めての機会となり、以後 Pachakutik という政党を組織し、活発な政治活動を展開することに

なる。

ノボア大統領は、マワ政権の経済政策を引き継ぎ、3 月には、外国企業の進出を促進することを基本

とした米ドル通貨経済改革基本法を国会で通過させ、4 月 1 日より米ドル通貨経済への移行を実現し、

IMFの構造改革案を受け入れ、合意を取り付けた。

2001 年には、長年懸案となっていた、原油輸送力強化のための第二パイプライン建設を、国際石油

メジャー連合と*BOT スキームで締結し、原油輸送の安定と輸出増を可能にするなど、米ドル通貨経済

の安定化政策を固めた。

2002 年の大統領選挙では、2000 年 1 月の無血クーデタの首謀者の一人である元大佐ルシオ・グティ

エレスが立候補し、既成政党・伝統政権に愛想をつかした一般大衆の票を集めて大統領に選出された。

大統領就任時は、クリーンな政治をモットーに、既成政党と袂を分かち、IMF の勧告を受け入れてスタ

ンバイ・クレジットも引き出し、国際金融機関からの融資も再開された。

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しかしながら、常に勢力政党の圧力下での行政であり、専制的・場当たり的な政策から、2005 年に

入り学生、知識層、一部マスコミがグティエレス大統領“独裁者”なりとのキャンペーンを繰り広げ、

大統領退陣の運動が高まり、グティエレス大統領はブラジルに政治亡命して政権を放棄した。国会は

直ちに副大統領のアルフレッド・パラシオの大統領昇格を承認した。

パラシオ大統領は、政情の長期安定化を 優先課題として、憲法改正、司法改革、選挙法の改正(国

会議員数の見直し、二院制の導入)などを国民投票にかけ、2007 年の次期政権から、これまでの汚職・

腐敗の構図を取り払い、新しい体制でエクアドルの立て直しを目指す改革案を国会に提出したが、既

成政党の反対で審議未了のまま任期を終えた。

2006 年 8 月の大統領選挙では、元副大統領であったレオン・ロルドス(中道左派)、エクアドル 大

のバナナ輸出企業であるノボアグループの宗主アルバロ・ノボア(保守、3 回目の大統領選出馬)、サ

ン・フランシスコ大学経済学教授でパラシオ政権において経済・財務大臣を経験したラファエル・コ

レアなどが名乗りを上げた。

選挙線序盤は、ロルドスとノボアが 有力候補とみられていたが、コレア候補は、勢力政党による

国会運営、行政への介入、国家管理当局支配が腐敗の根源であり、これらのシステムを改革するため

には、制憲会議を設立して憲法を改正、豊かな資源を有するエクアドルが、国民全体が受益できる国

民主体の社会をつくりあげなければならないと、新しいビジョンを掲げてアピールして票を伸ばし、

2006 年 8 月 15 日の選挙では、ノボアに次ぐ 2 位を獲得した。11 月 26 日の決戦投票では、確固たる政

治・経済政策をもたず、貧民救済・失業者ゼロを喚き続けるノボア候補を抑え、新しい国造りを目指

す革新的で行動的なコレア候補が、大差をつけて当選し、2007年1月15日に就任した。

コレア大統領は、これまでの米国との政治・経済依存から脱し、南米域内の連携強化、経済市場の

育成、また、アジアとの貿易拡大等を指向し、具体的には、米国との FTA 交渉の中止、2010 年に到来

するマンタ米軍基地貸与の打ち切り、民間石油開発契約の見直し等の経済政策を打ち出した。

大統領就任式には、ベネズエラ、ボリビア、ニカラグア、イランなどの左派系の国家党首も出席し、

国際社会や報道機関等は、南米に新たな社会主義国家誕生か、などと報道した。

コレア大統領は、選挙公約に基づき、3 月 11 日に制憲会議議員選挙を行うとの大統領令 002 を発布

した。しかし、国会承認の遅れ、 高選挙裁判所による国会議員 65 名の罷免、 高裁判所人事など、

問題が続出し、半年遅れとなったが、9 月 30 日制憲会議議員選挙の実施にこぎつけた。選挙結果は、

コレア大統領支持グループ Acuerdo Pais が 130 議席の過半数を上回る 80議席を占め、獲得投票数でも

71%で、圧倒的な支持を受けた。制憲会議は、エクアドルの近代化に貢献したエロイ・アルファロ元大

統領の出身地であるマナビ州のモンテクリスティに新会議場を建設し、憲法改正、国政改革に伴う法

令改正などの討議採択が 12 月 3 日から始まり、2008 年 5 月末まで(2 か月延長のオプション)行われる。

制憲会議は、大統領をこえる 大の権限を有する機関で、12 月 3 日に会議が設定されると同時に現

国会を停止、憲法改正及び国会に代わりその権限を行使し、13 人で構成される 10 の分科会を設け審議

を開始した。

コレア大統領は就任後の1年間で、多数の政策を実行したが、主な内容は以下のとおり。

・月1回の定期閣僚会議を地方で開催し、地域住民との対話を通じて政策に反映させる。

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・公務員の給与額の上限は、大統領報酬を越えないこととする。

・ベネズエラとの間で、Napo 原油の精油委託、ディーゼル及びナフサのバーター取引、石油公社鉱

区用掘削塔の借り入れなどの契約調印。

・米軍との合同演習の中止。2009 年に到来するマンタ米軍基地貸与契約を更新しないことを公表、

11月のアジア諸国公式訪問で、中国企業にマンタ空港運営のコンセッション供与を示唆。

・石油価格の高騰による民間石油開発企業の利益を徴税するため、これまでの 50%を、10 月より 99%

に引き上げた。

・民間石油開発企業に対する、政府の直接関与・コントロールを強化するため契約の見直し交渉を

開始した。

・2007 年 11 月、1992 年に脱退した Opec に再加盟。ベネズエラやアラブ諸国との石油政策に関する

連携を強化した。

・鉱業開発に関しては、地域社会・環境 NGO の抗議運動で、負傷者が出るなどの事態となり、

EcuaCorrienteの MiradorプロジェクトとAscendant Copperの Juninプロジェクトに対して、鉱業活

動一時停止の措置をとった。

また、クエンカ南部 Quimusacocha 金鉱開発では、水源汚染問題で、Iamgold に対して、承認されて

いた鉱業権の 23%を取り消した。このような開発企業と地域社会との摩擦問題は、鉱業法の不備に

あるとして、2008年には、鉱業法を改正することとした。

・2007 年末、制憲会議で、資産税、農地税、相続・贈与税、送金税等の改正が承認され、そのなか

で鉱業を含む資源開発企業に特別利益が発生した場合、その70%納付も義務づけられた。

新憲法は、制憲会議で採択されれば、45 日以内に国民投票で賛否を問い、承認されれば発布となる。

コレア大統領支持グループの Acuerdo Pais が制憲会議議員の過半数を占めているので、新憲法が承認

される可能性が強いことから、経済界、法曹界などから、社会主義の方向に進む恐れがあるとして危

惧する声があがっている。

今後のスケジュールは、2008年 5月末までに制憲会議にて新憲法を採択、7月に国民投票で賛否を問

い、10-11 月の国会議員選挙、2009 年 1月の新国会開設となっている。現在のところ、コレア大統領は

新憲法発布まで政権維持を表明しているが、その後、大統領を辞任して、2008 年中に大統領選挙が行

われる可能性もある。

2008 年に入り、 低賃金の大幅引き上げ(170$から 200$)、米国との特恵契約の更新問題、新税制定

など、コレア政権の政策に対する反対声明が相次ぎ、今後の政治動向は流動的である。

*BOT :Building, Operation and Transfer

政府が、民間企業に発注して推進する国家プロジェクトの契約形態。

民間企業が自己資金で建設・施工し、契約期間中は操業・経営を行い、契約終了とともに、

所有権が政府に移管される。通常、契約期間は20~30年と長期となる。

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2. 経済事情

2-1 近年の経済動向

1990 年代後半、エクアドル経済は多額の財政赤字に加え、国際原油価格の低迷から厳しい経済状況

に直面した。1998 年 8 月に発足したマワ大統領政権は、各種の増税や公社の民営化等により経済再建

に取り組んだが、1998-1999 年にエクアドルを襲った経済危機のなか、主な市中銀行の閉鎖が相次ぎ、

一部の倒産銀行を国有化し、預金の保証をするなど、金融の安定策を図ったが、現地通貨スクレの下

落を収束できず、2000 年には、1970 年代にアンデス諸国 6 か国で締結した域内産業促進のためのアン

デス協定を無視し、独立国としては初めてである米ドル通貨経済への移行を発表した。

マワ大統領は、その直後に経済政策に対する抗議運動で失脚したが、これを引き継いだノボア大統

領が米ドル通貨経済を実現し、外国資本導入を基本とする産業開発基本法(トローレ法 2)を成立させた。

このドル通貨政策は IMF などの国際金融機関の支援を取り付け、原油価格の上昇したこともあり、2001

年には経済は安定化に向った。また原油輸出増を実現するため、懸案であった国際石油メジャー連合

によるBOTスキームでの第二パイプライン建設(同パイプライン使用による原油輸出は2003年 9月から

開始)を行うなど安定経済基盤の構築に努力した。

1998-1999 年のハイパーインフレによる現地通貨スクレの下落により 2001-2002 年は入超(主に車両の

輸入増)、金利の上昇、ドル通貨切り替えが生む物価の上昇、失業者増による出稼ぎ移民の増加など負

の部分が目立ったが、2年後からは年々インフレも収拾し、2004年には米国並みの2.0%となった。

ここ数年の国際原油価格の上昇は、エクアドルの国家財政を改善させ、その他輸出産品も好調で、

国際収支は 2003 年以降黒字が続いてきている。原油輸出代金は、バレル当たりの固定価格(但し毎年予

算編成時に見直し)で一般歳入に組み入れられ、価格上昇による利益は特別会計に積み立てられ、対外

債務の返済に当てる政策が取られていることから、対外債務は減少しつつあり、2003 年末の 115 億$か

ら2007年6月末には103億$となっている(出典:中央銀行Movimiento de la Deuda Externa Publica)。

原油輸出以外の主な輸出産品は、バナナ、冷凍エビ、切花、缶詰などが好調。また、貿易外では国

外出稼ぎ者の祖国送金額が2004年の 16億$から 2007年には 30億$に達し、原油輸出に次ぐ外貨を稼ぎ

だしている。

対日貿易では、日本への輸出はバナナが全体の 50%以上を占め、これにスポットの原油、カカオ、コ

ーヒー等が続く。日本からの輸入は乗用車、トラック・バス、建設機械等が主体である。

2007年 1月コレア政権が誕生。米国との依存経済(2006年の輸出の約55%が米国市場向け)を軽減する

政策を打ち出し、FTA 交渉の打ち切り、ベネズエラとの関係強化、中国国営企業の石油開発認可など、

かなり左翼的な経済政策を進めたことから、先行き不安により先進諸国からの投資は 2006 年に続き低

調であった。しかし、国際原油価格の高騰、冷凍エビや切花の輸出が伸びたこともあり、国際貿易は

引き続き黒字を維持した。

エクアドルは、米国の麻薬撲滅政策に協力する見返りとして、米国向けエクアドル産品の関税免除

特恵(Atpdea)を受けているが、この期限が 2008 年 2 月に到来する。独自路線を歩み始めた国に対して、

ブッシュ政権がこの特恵措置を更新するかどうかは不透明である。コレア大統領は、当国自らが麻薬

対策を強化し、コロンビア麻薬の密輸ルート遮断のために多大の努力を払っており、特恵措置更新は

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当然としているが、仮に、米国が更新打ち切り、エクアドル産品に対して輸入関税を課すことになれ

ば、切花、農産物・水産加工品等の輸出産品には大きな影響が出ることは明らかであり、企業の倒産、

失業者の増加が心配される。

政府は、2007 年 11 月に国内産業の保護・育成のために輸入の減少を図り、安価な工業製品や食料品

に対して関税引き上げ措置を行い、一方、南米諸国との貿易拡大を模索している状況にある。

一方、エクアドル国内の金融界は、貸出金利の高め誘導で、安定してきているが、中小企業に対す

る貸し渋りにより、経済の正常な発展を阻害しているとして、政府は、国内金融政策を担当する中央

銀行や銀行・保険監督局への直接関与を強め、市中銀行の金利引下げに努力している。また、国家金

融公団(Corporacion Financiera Nacional)や農業・牧畜開発公社(Banco Nacional de Fomento)に資金を

注入し、低金利貸付け政策を打ち出したところである。

2-2 近の経済指標

経済成長率(GDPべース)

2000年 2.8%

2001年 5.1%

2002年 3.4%

2003年 3.0%

2004年 7.9%

2005年 4.7%

2006年 4.3%

2007年 2.6%

出典:中央銀行

外貨準備高(単位:百万$)

2003年 1,160

2004年 1,437

2005年 2,147

2006年 2,023

2007年6月 3,204

出典:中央銀行

公的対外債務残高(単位:億$)

2000年 109.9

2001年 113.4

2002年 113.4

2003年 114.8

2004年 110.6

2005年 108.5

2006年 102.1

2007年6月 103.7

出典:中央銀行 Movimiento de la Deuda Externa Pública

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 年

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為替

自由為替市場を維持。2000年4月米ドル通貨に移行後為替レートの変動なし。

民間銀行金利

貸出金利(%) 預金金利

2005年 10.77~10.80 6.33~6.81

2006年 10.63~11.38 6.65~6.77 貸出金利は貸出期間1年

預金金利は1年定期

普通預金金利は2006年 1.56~1.77%で推移

出典:中央銀行 Tasas de Interés: Operaciones Activas (Pasivas)de Bancos Privados

インフレ率

2000年 96.1

2001年 22.4

2002年 9.4

2003年 6.1

2004年 2.0

2005年 3.1

2006年 2.9

2007年 3.3

(2000年4月1日に米ドル通貨経済へ移行)

出典:国家統計局 Instituto Nacional de Estadistica y Censo Variacion Porcentural Anual del Indice General Nacional

石油関連資料

(1,000バレル)

原油生産量 石油公社 民間企業

2000年 146,209 85,047 61,162

2001年 148,726 82,979 65,817

2002年 143,758 80,775 62,984

2003年 143,518 74,514 79,004

2004年 192,315 71,948 120,368

2005年 194,172 70,977 123,200

2006年 195,562 90,438 105,214

(1,000バレル)(100万$)($/バレル)

原油輸出量 原油輸出額 平均単価

2000年 85,197 2,144 24.87

2001年 89,907 1,722 19.16

2002年 84,263 1,839 21.82

2003年 92,442 2,372 25.66

2004年 129,409 3,899 30.13

2005年 131,595 5,397 41.01

2006年 136,634 6,934 50.75

出典:中央銀行

0

20

40

60

80

100

120

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 年

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2-3 貿易状況

輸出

(FOB 百万$)

総額 石油 石油製品 バナナ 冷凍エビ 水産加工品

2000年 4,926 2,144 298 821 286 235

2001年 4,678 1,722 178 866 281 272

2002年 5,036 1,839 216 966 252 346

2003年 6,223 2,372 235 1,101 298 412

2004年 7,753 3,899 335 1,023 330 373

2005年 10,100 5,397 437 1,083 458 498

2006年 12,728 6,934 611 1,213 588 575

金属製品 切花 鮮魚 カカオ豆 コーヒー豆

2000年 136 194 72 38 22

2001年 188 238 87 55 15

2002年 143 290 216 91 10

2003年 286 309 87 120 11

2004年 209 355 82 103 15

2005年 352 398 114 118 25

2006年 593 436 128 143 31

石油製品:重油、モーターオイル、その他石油精製品

金属製品:ノックダウン車、家電等

輸入

(CIF、百万$)

総額 消費財 燃料 原材料 資本財

2000年 3,721 821 298 1,658 942

2001年 5,362 1,419 297 1,983 1,661

2002年 6,431 1,802 284 2,320 2,022

2003年 6,703 1,875 810 2,221 1,798

2004年 8,226 2,191 1,138 2,640 2,055

2005年 10,287 2,511 1,814 3,242 2,713

2006年 12,114 2,763 2,541 3,804 3,002

出典:中央銀行

日本の対エクアドル商品別輸入

(百万$)

2005年 2006年

食料品 108.8 132.1

エビ 6.9 6.2

果物(バナナ中心) 51.9 58.5

野菜(冷凍ブロッコリ中心) 10.4 11.6

原料品 10.8 12.1

鉱物性燃料 0.0 20.4

原油 0.0 20.4

化学製品 1.2 2.5

繊維製品 0.5 0.4

非金属鉱物製品 0.1 0.0

金属及び同製品 0.0 0.1

機械機器 0.4 0.3

その他 17.3 13.9

ユーカリチップ 16.2 12.3

総 額 139.1 181.8

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日本の対エクアドル商品別輸出

(百万$)

2005年 2006年

食料品 0.1 0.5

繊維及び同製品 0.5 6.2

化学製品 5.0 5.4

非金属鉱物製品 0.4 0.4

金属及び同製品 8.9 6.3

鉄鋼 6.2 4.0

金属製品 2.6 2.1

一般機械 64.5 86.5

原動機 48.0 83.9

事務用機械 0.5 0.4

建設用・鉱山機械 2.3 3.4

ポンプ遠心分離機 4.4 5.5

役務機械 1.4 2.4

電気機器 11.6 16.9

輸送用機器 230.8 298.3

乗用車 101.1 139.0

バス・トラック 78.8 97.8

自動車の部分品 38.5 43.4

二輪自動車 1.7 2.3

船舶 0.0 0.0

精密機器 1.0 1.9

その他 19.4 18.5

総 額 342.2 434.7

2-4 投資動向

1998-1999 年にかけての経済不安で、外国投資は減り、事業活動の停止・撤退などが相次いだが、

2000 年以降は、米ドル通貨への移行、外資導入を 優先する産業開発基本法の発令、IMF 等国際金融機

関の支援などにより、投資資環境も好転し、外国企業による投資も増加してきた。

特記される外国企業の投資は、2003 年に締結された BOT スキームでの国際石油メジャーによる第二

パイプラインの建設で、これにより原油輸送が確立されたことと同時に価格の上昇もあり、アマゾン

地域の石油探査・採掘意欲が高まり、各社とも積極的な投資を行った。しかし、その投資額は、契約

に基づき石油公社に報告され把握されてはいるが公表されない。石油関連以外の外国投資の実績は、

2000 年の米ドル通貨経済移行と、為替管理が実質自由化され、外国投資の中央銀行への登録(外貨売

却)義務が撤廃されたことにより、把握することは困難である。

政府のプロジェクトの民営化プロセスは遅延気味ではあるが、近年、キト新空港の建設、グアヤキ

ル及びマンタ国際港の運営委託、BOT スキームでの水力発電所建設などが、民間企業により進められて

おり、外国投資状況は好転してきた。

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参考資料

外国投資の業種別内訳

(2004年度、百万$)

農業・漁業 41

石油・鉱業 903

製造業 37

電力、ガス及び上水道部門 6

建設業 31

商業 50

輸送・倉庫・通信 52

その他サービス業等 40

合計 1,160

外国投資の国別内訳

(2004年度、百万$)

カナダ 303

米国 310

アンデス3か国 12

メルコスル 55

パナマ 62

ヨーロッパ 172

ドイツ 21

スペイン 49

フランス 44

イタリア 49

オランダ 6

日本 1

カリブ諸国 105

その他 76

合計 1,160

出典:中央銀行 Balanza de Pagoによりアンデス共同体が取りまとめたデータ。しかし2006年より中央銀行は外国直接

投資データ集計を中止した。

カントリーリスク

汚職ランキング

2006年:163か国中 138位

2007年:163か国中 150位

出典:Transparency International

エクアドルより下位にはカザフスタン、ジンバウエ、バングラデシュ、ベネズエラ、ウズベキスタン等

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国際競争力ランキング

国際競争力 131か国中 94位 2006年

ビジネス競争力 131か国中 102位

国際競争力 131か国中 103位 2007年

ビジネス競争力 131か国中 98位

出典:World Economic Forum

公的債務評価

長期債務評価 B Standard and Poors

短期債務評価 C

Fitch Rating 長期債務評価 CCC

Moody´s 長期債務評価 Caa2

出典:Weekly Analysis No. 47

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第二章 エクアドルの鉱業

1. 鉱業市場動向

1-1 エクアドル経済における鉱業の位置づけ

エクアドル経済は、原油輸出が開始されるまでは、農水産物などの一次産品を輸出の柱としてきた

が、1972 年にアマゾン原油の輸出が始まり、政府は、原油代金を担保に多額の対外借款を導入し、電

力、道路、通信、海上輸送等のインフラ整備による経済の振興政策を推進してきた。

エクアドルは、資源ポテンシャルは高く、探鉱・開発の余地があると考えられていたが、1620 年に

スペイン王の命令で、それまで金の選鉱に使われていた水銀の鉱山を閉鎖し、また水銀の輸入も禁止

して以来 1985 年まで、政府は鉱山開発には特に介入せず、また、1970 年代に締結されたアンデス協定

による外国資本の規制もあり、外国企業による特記すべき探鉱・開発は行われてこなかった。

フェブレス・コルデロ政権の 1985 年に、 初の鉱業法が制定され、鉱業開発振興政策に着手した。

1991 年 5 月に全面改定の新鉱業法を制定。その後米ドル通貨経済に移行すると同時に、産業開発基本

法(トローレ法 2)を制定、外国投資の自由化・優遇措置を盛り込んだ改定鉱業法を 2000 年 8 月に発布、

2001 年 4 月には同施行細則を定める等、全面的な法整備を行った。この結果、エクアドルの鉱業法は

主要鉱業国と比較して遜色はなく、南米の中でも評価が高く、外資にとっては魅力のある鉱業法とな

った。

鉱業法の整備、米ドル通貨経済の安定化、近隣諸国と比較して良好な治安状況、それに 近の国際

金属価格の高騰もあり、金・銅を対象とした探鉱・開発プロジェクトが活発化した。

2007 年 1 月に就任したコレア大統領は、エクアドルの石油や金属資源等の天然資源は国の資産であ

ることを明確にして、政府の、資源開発への直接介入・管理を強化する政策を発表した。石油開発企

業に対しては、同年 10 月に、契約時の国際価格を超える利益の 99%を国庫に納付させるという強硬な

行政措置をとった。

鉱業部門では、政府は鉱業資源が石油に次ぐ国家資産であることを認識し、2005 年から活発化した、

鉱業開発に対する地域住民や環境NGOの反対運動に対応して、既に鉱業権益を認可ずみの一部外国企業

に対して、鉱業活動の一時停止措置をとり、現鉱業法の全面的改正を行なうと発表した。

現鉱業法は、外資を呼び込むことのみを主眼としたもので、環境影響評価が義務づけられているも

のの、地域住民の権利保護、自然環境保護などの規定がなく、法令上の不備があり、政府の直接関与

を強化した改正鉱業法を、2008 年の早い時期に発布するとしている。2008 年に入って、鉱業当局は、

現在鉱業活動を行っている民間企業の代表、鉱業会議所、地域住民との対話を開始し、鉱業法改正の

草案作りに着手した。

コレア大統領は当初、鉱業開発推進には消極的であったが、民間企業の探査・探鉱の調査結果や、

近年の国際金属価格の高騰、鉱業会議所等の提言もあり、政府は、金属資源を石油に次ぐ財政源とす

るために、鉱業開発を、国家プロジェクトとして積極的に推進する方針に転換した。

しかし、鉱業法改正により、これまでの外国企業優遇措置が削られ、民間企業に課される負担が高

まり、新規開発やプロジェクト推進に影響を与える可能性がある。

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2007 年 11 月のコレア大統領の中国公式訪問では、政府ミッションに鉱業会議所会頭および

EcuaCorriente社長を同行させ、中国政府の鉱業関係者との会談を持った。

中国政府は、EcuaCorriente の Mirador 鉱山の銅鉱石の全量買付けを条件として、鉱石輸送用鉄道の

建設と、ボリバル港改良工事に13億$の融資のLetter of Intentionに署名した。

1-2 鉱業生産・輸出状況

<鉱業生産>

金:中央銀行に登録された統計はないが、鉱業会議所が会員のアンケートにより集計した金の産

出量。

( kg )

1995年 7,410

1996年 7,208

1997年 3,069

1998年 1,474

1999年 2,069

2000年 2,871

2001年 3,005

2002年 2,750

2003年 4,819

2004年 5,128

2005年 5,338

しかし、アンケート無回答や非合法な砂金鉱床からの産出もあることから、鉱業会議所は、年

間産出量を約9~10tと推定している。

主な金鉱山の現在までの産出推定量

Zaruma-Partovelo 60t 1980年以降

Ponce Enriquez 70t 1982年以降

Nambija 60t 1982年以降

Condor山脈 20t 1998年以降

出典:Transandes Servicios Mineros「Mining in Ecuador」

金は、国内需要の貴金属加工・歯科用として使用され、一部は非合法で輸出されていると推測

される。

銅:第一次・第二次大戦時、特需として約10万tの生産があったがそれ以降生産なし。

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005年

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<輸出状況>

金、銅、その他鉱石の正規輸出なし。

<金属資源資産>

鉱業会議所が取りまとめた、2007年初頭の国際価格で算出したエクアドル金属資源資産。

億ドル

銅 1,672

モリブデン 262

金 225

銀 17

なお、同資料では石油資産を2,266億$としている。

出典:Cámara de Minería del Ecuador

Impacto Potencial de la Minería Industrial Formal en el Ecuador

1-3 鉱業投資動向

鉱業法・開発環境の整備等により、2002 年頃より国内外の鉱業投資の意欲が高まり、2006 年までに、

約 30 社のジュニア企業がエクアドル国内に設立され、外資による活発な探査・探鉱活動が開始された。

鉱業会議所による2005-2007年の鉱業投資推定額は5千万$/年、2008年は、EcuaCorrienteの Mirador

鉱山の採掘準備活動開始や、Iamgold の Quimsacocha 金鉱山での本格的に F/S が始まること、鉱業法改

正後の探査・探鉱活動の活発化も期待され、投資額は飛躍的に伸び1億$を超えると予想される。

新規外国企業の、設立資本金・増資などの直接投資は、これまでと同様に中央銀行に登録されるが、

2000 年 4 月、米ドル通貨経済に移行後、外国から持ち込まれる資機材・運転資金については管理する

機関がなく、実際の鉱業投資額を把握するのは困難な状況であり、鉱業会議所は会員に対するアンケ

ート集計で、鉱業投資額を推定している。

今後の投資状況では、Aurelian Resources は Condor 鉱区で 1,370 万 oz の金埋蔵量を確認、また、ク

エンカ市南部の Quimsacocha 鉱区では Iamgold が豊富な金鉱を把握、また、2009年には Mirador プロジ

ェクトの EcuaCorriente が、5 億$を新規に投資して、銅精錬工場建設に着手するなど、鉱業投資は増加

するものと予想される。

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2. 鉱業政策・行政

2-1 鉱業政策動向

1985 年に 初の鉱業法(旧法)が制定され、その後 1991 年 5 月に全面的に改定(新法)し、先願方式、

税制上の優遇措置等が盛り込まれた。2000 年 4 月、米ドル通貨経済が導入され、同年 8 月、産業開発

基本法(トローレ法 2)により鉱業の一層の振興を目的に大幅な改定を行い、更に 2001 年 4 月に鉱業法

改定一般施行細則が発布され今日に至っている。

しかしながら、法制上の整備は行われたものの、政権の相次ぐ交代があり、政情不安定の状況のな

かでは、積極的な鉱業行政は進められず、鉱業法に則った鉱業権の付与・維持等の手続き上の業務に

限られていた。

2005 年 4 月より、政権を引き継いだアルフレッド・パラシオ大統領は、重要課題のひとつとして、

鉱業振興政策を打ち出したことから、鉱業行政当局も、開発推進のための機能を強めた。一方で、国

際金属価格の高騰により、鉱業権益を有する主に外国開発企業は、外資をもって探査・探鉱活動を開

始したが、同時に地域住民や環境 NGO の鉱業開発反対運動が多発し、2006 年、政府は鉱業法改正まで

EcuaCorriente ミラドール銅鉱山の活動停止行政措置を下した。Ascendant Copper のフニン銅鉱山では、

鉱業開発賛成・反対派に分かれた地域住民間の紛争、環境 NGO による反対運動などから、Ascendant

Copper は鉱区にさえ入ることができず、探査活動も停止する状況となった。2007 年 8 月には、探鉱実

施前の環境影響評価調査団が鉱区に入ろうとして、反対グループと衝突し、治安当局が出動したが、

負傷者数名が出る事態となり、政府は同鉱山についても、鉱業活動停止命令を下した。

2007 年 1 月、コレア政権が誕生し、自然保護専門家アルベルト・アコスタがエネルギー・鉱山大臣

に就任し、自然保護を 重点におき、鉱山活動の規制を強めたため、鉱業活動は一時的に停止状態と

なり、各社は鉱業法改正まで静観する状況となった。しかし、コレア大統領は、2007 年 7 月、エクア

ドルの金属資源の規模を認識し、石油に次ぐ資源として活性化を図るための政策に着手した。

先ず、アコスタ エネルギー・鉱山大臣の辞任を承認、省を鉱山・石油省と電力省に分割、国務大

臣、労働大臣、石油公社総裁などを歴任したガロ・チリボガを鉱山・石油大臣に任命し、コレア大統

領は鉱業開発を積極的に推進する基本方針を発表した。

現行の鉱業法は、進出企業を優先しているが、政府が、鉱業活動に直接関与(Participación )し、コ

ントロールを強化して、自然保護と地域社会の調和を図り、国庫収入増を目指した鉱業法改正を模索

している。

改正案の骨子は以下のとおり。

・ロイヤルティの復活

1991 年の鉱業法ではロイヤルティ 3%が課されていたが、2000 年 8 月の鉱業法改定で撤廃された。

開発企業は、労働法・税法上で規定される従業員利益配当15%、法人所得税(従業員利益配当を

除いた純利益の25%)を差し引いた63.75%が純利益となり、外国企業であれば全額無税で送金が可能

であった。

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政府は、ロイヤルティを 低 5%、 高 30%で検討しているようだが、鉱業界は売上代金の 3%が

限度であると主張している。しかし、2008年 1月 1日に施行された税法改正で、突然、天然資源の

国際価格高騰による特別利益には 70%課税するとされたため、ロイヤルティ復活問題は棚上げにな

っている状況。

・権益維持費(パテント料)の引き上げ

現行、鉱区ヘクタール当たり1$から16$であり、権益者にとって負担にならないため、早期に鉱

業開発に着手しなければならない基準まで引き上げる。

・鉱業権益の有効期間

現行 高30年だが、2年間開発活動を行なわない場合は鉱業権の取り消し。

・投資金額の報告義務

鉱業権益は、政府との契約書ではなく、単に鉱業ライセンスとして認可されているため、石油

開発と同様の契約書締結形式を導入し、開発投資の報告義務も検討している。

一方、上記鉱業法改正案を固める前に、鉱業当局は現地で、小規模金鉱山での河川汚染・労働問題、

Junin や Mirador プロジェクトでの抗議運動、水源保護問題が起きている Quimsacocha 等、諸問題の実

情の把握に努めている。

小規模金鉱山が集中している Portovelo においては鉱業討論会、クエンカ市では地域住民との集会を

開催し、水源・河川汚染など懸念される問題点を聴取するなど、鉱業法改正に反映すべき地域社会・

自然保護対策などの基本的問題点の洗いあげを行っている。

また、近代的な鉱山開発について国民の理解を深めるために、2007 年 9 月にキト市で、カナダ、チ

リ、ペルー等の金属資源国の専門家を招聘し、開発企業関連、地域住民、環境 NGO、マスコミ、一般の

自由参加で、国際鉱業フォーラムを開催、河川汚染問題に関する国際フォーラムを 2008 年初めに、ク

エンカ市で開催を予定するなど、近代鉱業が、国益のみならず、自然環境破壊を 小限に食い止め、

地域住民に雇用の機会を与え、生活環境の向上に貢献することの理解を高める啓蒙活動も開始した。

実施策では、コレア大統領は、前政権までに認可された鉱業権益は、砕石鉱区も含め 4,112 件あり、

そのなかで、パテント 料未払い及び放棄されたままの未開発鉱区の権益取り消しを鉱業当局に命令し

た。2007 年には、村落がある地域は鉱業鉱区対象外とする、鉱業法一部改正も行い、地域住民の権利

を保証した。

2008 年の鉱業法改正によって、鉱業優遇措置は殆ど撤廃されることから、外国資本による新規鉱業

開発事業はある程度は低迷するものと予想されるが、法令整備により、自然保護を基盤に、地域住民

と協調しつつ鉱業開発が可能となれば、健全且つ安定した活動が保証され、新規投資も増大するもの

と期待される。

しかし、2008年 1月 1日施行の税法改正により、天然資源の国際価格上昇による特別利益に70%が課

されることになったことから、鉱業進出企業は、政府政策に対し、この新税見直しを訴えており、今

後の成り行きが注目される。

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国家鉱業局 Santiago Correa 局長のコメントによれば、コレア大統領は、国政改革を第一義としてい

るが、鉱業開発は、政府の重要案件であるため、制憲会議で、早い時期に審議を開始し、その後引き

継ぐ新国会において新鉱業法が制定されるであろう。

2-2 鉱業行政組織

鉱山・石油省(Ministerio de Minas y Petróleos)

元エネルギー・鉱山省が、2007 年 7 月に電力部門を切り離し、鉱山・石油省となり、ガロ・チリボ

ガ大臣の下に、鉱業、石油、環境保護部門がおかれ、鉱山部門では、ホセ・セラノ鉱業次官が、政策

の策定、実施、管理などを統括し、以下の下部組織が遂行にあたる。

鉱業次官室(Subsecretaría de Minas)

鉱業行政を統括

国家鉱業局 (Dirección Nacional de Minería)

鉱業活動に係わる以下の業務を担当。下部組織として8地方鉱業局を置き統括する。また、地域社会

と開発企業間の仲介役としての役割も果たす。

・鉱業権の付与、失効など、鉱業権に係わる管理業務

・鉱業関連情報の統一システムの開発・管理

・鉱業分野の投資・生産などの統計管理

・鉱業権益者の活動監視

・環境影響評価の受理及び管理計画の実施

・鉱業活動の指導・監督

地方鉱業局(Direcciones Regionales de Minería)

ピチンチャ地方鉱業局 所在地:キト

(カルチ、インバブーラ、エスメラルダス、コトパクシ、スクンビ

オ、オレジャーナ、ナポ、パスタサも管轄)

アスワイ地方鉱業局 所在地:クエンカ

(モロナ・サンティアゴ、カニャルも管轄)

グアヤス地方鉱業局 所在地:グアヤキル

(マナビ、ロス・リオス、ガラパゴスも管轄)

ロハ地方鉱業局 所在地:ロハ

チンボラソ地方鉱業局 所在地:リオバンバ

(トゥングラワ、ボリバルも管轄)

エル・オロ地方鉱業局 所在地:マチャラ

サモラ・チンチペ地方鉱業局 所在地:サモラ

現在、スクンビオ、ナポ、オレジャーナ、パスタサを管轄するアマゾン地方鉱業局の新設を企画中。

国家地質管理局(Servicio Geológico Nacional)

・全国地質調査と地質図の作成

・テーマ毎の地質情報の収集・解析・分類

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・国土利用計画のための地質情報の提供

鉱区台帳(Catastro Minero)

www.minasypetroleos.gov.ec をダウンロードして閲覧可能。

国家鉱業環境保護局 (Dirección Nacional de Protección Ambiental Minera)

鉱山・石油省の環境保護次官室の下部組織として、鉱業に係わる環境保護局が新設され、サモラと

ピチンチャ州に地方支局が置かれた。

鉱業と環境保護に係わる業務、開発企業から提出される環境影響評価を審査する。

エクアドル鉱業会議所(Cámara de Minería del Ecuador)

鉱業の発展をサポートする民間の機関として、1979年に設立された。

探査、採掘、選鉱、精錬、販売等民間の鉱業活動全般の支援をする。

鉱業活動を目的として会社設立すれば、鉱業会議所の会員になることが義務づけられる。法人・

個人を合わせ約300のメンバー会員がいる。

本会議所の重要な使命の一つはメンバー会員の既得権の保護である。

・鉱業情報(法制、技術等)の提供

・国内外での鉱業イベントの企画

・定期刊行物「Minería」の発行

・会議所としての政府に対する提言、鉱業に関する会員の意見聴取

・会議室・図書館利用サービスの提供

(鉱業会議所が発行した資料を添付。)

エクアドル小規模鉱業会議所(Cámara de la Pequeña Minería del Ecuador)

伝統的な小規模金鉱が集中するエル・オロ州の Portovelo に本部を置く砂金採掘業者の団体で、主

に会員の採掘権利の保証、法制上の待遇改善など、また、採掘から発生する河川汚染問題に対する

採掘業者への啓蒙運動なども行なっている。キトを本部とする鉱業会議所とは組織関係はなく、独

立した団体。しかし、小規模鉱業の要求を政府にアピールするために、2008年 1月、鉱業会議所と

提携することで合意した。

ピチンチャ地質・鉱山・石油・環境技師協会

(Colegio de Ingenieros Geólogos, Minas, Petróleos y Ambiental de Pichincha)

民間の地質・鉱山・石油・環境技師が登録する団体で、専門家集団として、政府の政策に対する

提言や、場合によっては抗議運動も行なう。この技師協会のなかに、地質・鉱山技師懇談会があり、

定期的に集会を持ち鉱業に関する意見・情報交換を行なっている。

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18

鉱業

行政

組織

体制

(2007年

11月

現在

鉱山

・石油大臣室

\

石油

次官室

鉱業

次官室

国家

鉱業局

環境

保護次官室

地方鉱業局

アスワイ

グアヤス

チンボラソ

エル・オロ

ロハ

ピチンチャ

サモラ

アマゾン

鉱業環境保護局

地質管理局

石油環境保護局

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3. 鉱業権の概要と鉱業権取得に必要な許認可制度

3-1 鉱業権の概要

<鉱業権>

・鉱業権とは, 石油法、放射性物質法及び医薬鉱物法などの規定を除き、取得者に与えられた鉱物を探

査・採掘・精錬・販売する独占的な権利。

・鉱区出願は先願方式で提出順位で優先的に鉱区の鉱業権が付与される。

・鉱業権は、一つの資産かつ不動産の権利であり、土地の所有権とは異なる独立した権利。鉱区の権

利から生ずる財産権は譲渡、抵当権設定も可能で、一般的に家族的財産相続権を除き、全ての取引ま

たは契約が可能。

・鉱業権は、物理的に分割または集積することが可能。

・鉱業権者はその鉱区内で鉱業活動に必要な設備の設置・建設、水の利用、インフラの利用も可能。

また、第三者に害を与えない条件で、水路の変更も可能。

・政府は、鉱山労働者の健康や生命の保護を命ずる場合及び国家防衛上の必要による場合を除き、鉱

業権を有する鉱業活動の中止を命ずることは不可。

2007 年、政府は現鉱業法の全面的改正を行なうことを発表し、チリ、ペルー、カナダ等の鉱業・法

律専門家等より情報収集に務めており、2008 年には改正鉱業法が発布されるので、上記、鉱業権の内

容も変更となる可能性がある。

<国籍要件>

鉱業法において個人・法人、エクアドル国民と外国人を問わず鉱業権を付与。

<面積>

鉱区権の 小単位は1鉱区ヘクタールで、 大は5,000鉱区ヘクタール。

1鉱区ヘクタールは地球中心を頂点とし、底面を地上の100m四方の面積とした倒立角錐状の体積。

鉱区台帳座標はUTM座標を使用。

<鉱業権の有効期間>

高30年間、但し期限到来前の申請により更に30年まで延長可能。

<支出義務>

法令上規定無し。

<鉱業権取得手続>

鉱業権取得のための鉱区の申請書は、国家鉱業局指定の書式に、下記の事項を記入し、必要書類を

添付して、国内外の個人・法人の申請者が、所轄の地方鉱業局に提出する。平日の9時から午後1時ま

でが受付時間。

・願書(DATOS DE PETICIONARIO)

・出願者氏名(個人名或いは法人名)

・身分証明証番号またはRUC(納税番号)、パスポート番号

・住所、電話・Fax番号

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・代表者又は法定代理人(氏名、身分証明証番号、職位)

・顧問弁護士(氏名、身分証明証、弁護士登録番号、司法私書箱)

・技術顧問(氏名、身分証明証、資格、所属学会)

・鉱区の申請(SOLICITUD DE CONCESION MINERA)

・コード番号

・地域名

・申請鉱区の所在地(州、郡、教区等)

・鉱区座標(UTM)

・地形図、地図名、縮尺

・鉱物種(金属、非金属、建設材、鉱業残渣等の分類)

・申請鉱区ヘクタール数

・権利期間

・申請料100$の振込み領収書(指定銀行)

・環境影響調査報告書を提出する義務を履行し、鉱業活動に係わる環境規制施行細則の規定に従

うとの念書

・必要な場合、鉱業活動開始前に、鉱業法に従い諸情報を収集し、それを所轄の地方鉱業局に提

出する義務を果たすという念書

・法人の場合は公正証書化した会社設立書

・出願者、代表者又は法定代理人、顧問弁護士、技師顧問の身分証明証の写し

・顧問弁護士は弁護士会が発行した証明書、技術技師は所属学会が発行した証明書の写し

・共有鉱区の願書については、共通代理人を任命したとの公正証書化した任命書

地方鉱業局長は、鉱区台帳で申請鉱区に重複などの問題がなく、申請書類にも不備がない場合、2

日以内に決定書を出す。出願者はこの通達の日から5日以内に出頭し、鉱区付与に必要な鉱区につい

ての適格性証明書から 5 日以内に出頭し、鉱区付与に必要な鉱区についての適格性証明書に署名する。

出願者は適格性証明書の署名日から起算して 15 日以内に、鉱区申請書の提出日からその年の 12

月 31 日までの鉱区維持費の支払いを行い、振込み領収証を支払日から 5 日以内に所轄の地方鉱業

局に提出する。

地方鉱業局長は、鉱区維持費の支払い領収証の提出日から5日以内に、鉱業権権利書を付与する。

参考資料: Transandes Servicios Mineros S.A が 2007 年 8 月に取得した鉱業権益(Titulo

de Conseción Minera)のコピーを添付。

<鉱区維持料>

・鉱業権者は鉱区維持料として、各鉱区ヘクタールあたり、前金で毎年3月に下記金額を支払う。

1~ 3年 1$/年

4~ 6年 2$/年

7~ 9年 4$/年

10~12年 8$/年

13年目以降 16$/年

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<採掘・商業生産>

・採掘・商業生産開始に先立ち、鉱業権者は地方鉱業局に商業生産開始の宣言書を提出する義務

を有する。宣言書には下記事項を明記し、宣言書は公正証書化を要する。鉱業当局認証の鉱業コ

ンサルタントが作成した環境影響評価報告書とその承認証明書生産を行う地域の鉱区座標鉱区維

持料の支払い証明書本社が所在する自治体(州都)の鉱業会議所の加盟と会費の納入の証明書商業

生産の開始日

・採掘・商業生産の対象になっていない鉱区は、鉱区維持料を支払うことで権益を保持できる。

・採掘・商業生産開始後、毎年定額(16$/鉱区ヘクタール)の生産認可料を支払う。

・採掘・商業生産期間、鉱業権者は、国家鉱業局の技術指針に沿った監査済み年次生産報告書を

翌年3月31日までに所轄の地方鉱業局に提出する義務を有する。

・年次生産報告書の監査は、国家鉱業局に登録されたコンサルタントと契約して実施し、報告書

には技術顧問の署名も必要。費用は全額鉱業権者の負担。

<鉱業権の消滅>

鉱業権の消滅は下記の場合

期限の満了

維持料の不払いによる失効

削減と放棄

無効(第三者の告訴による認定)

失効:地方鉱業局長の裁定書をもって宣告。この裁定書は、鉱業権者に通達され、この後不服

の申し立て等は不可。

無効:地方鉱業局長は第三者より告訴を受理・認定すると、その旨を鉱業権者に通達。鉱業権者

は通達日から 10 日以内に反論可能。鉱業権者は裁定の無効通知に対して、裁定書公布後 5

日以内に上告することが可能で、国家鉱業局長が上訴書を受領後15日以内に裁決を行う。

<鉱業権の譲渡制限>

鉱業権の譲渡に対する特別の制限はないが、一般の不動産の譲渡と同じ手続きで、鉱業権移転の

契約書が登記所で記帳され、地方鉱業局に提出されて終了する。政府は、鉱業権益の投機的運用を排

除し、非活動権益の消滅宣言などの規制を検討中であり、鉱業法改正で鉱業権の譲渡制限が強化され

る可能性がある。

<政府の権益持分>

鉱業法改正で盛り込まれる可能性あり。

・参考

2006年までに認可された鉱業権益(建設用砕石鉱区も含む)

件数 4,112件

面積 2,800万ha

鉱業活動面積 16.6%

出典:国家鉱業局

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3-2 環境規制

国の森林資源及び防災のための森林と植生保護地域での鉱業開発は、認可がおりれば可能であるが、

国家資産である自然保護区 (Patrimonio Nacional de Áreas Naturales)での鉱業活動は認められていない。

探鉱以後の各ステージでは、鉱業活動に係わる環境規制施行細則(政令 625、1997 年 9月 12日付け官

報151号)に従い規制を受ける。

鉱業権者が、環境管理を行うために必要な調査は下記の三種類に分類される。

(1)環境影響予備評価

国の森林資産及び防災のための森林と植生 (Patrimonio Forestal del Estado y de Bosques y

Vegetación Protectores)保護地域での鉱業活動には環境省の事前承認が必要

森林・植生保護地域図

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環境影響予備評価は、環境省の環境規制施行細則に従い作成され、90日以内に報告書が出され

る。環境省の承認前の鉱業活動は禁止されている。

環境省の報告書は鉱山・石油省環境保護次官の認可が必要。

(環境影響予備評価の承認取得は非常に難しく、鉱区規模を規制されることなどからも、保護指

定地域における鉱山開発は困難)

(2)環境影響評価

・探鉱、採掘、選鉱、精錬の各事業活動開始前に鉱業次官に提出。

鉱業環境保護局にて審査。

・鉱業活動による環境破壊対策(予防、軽減、補填、回復)とそのための予算措置を記載した環境

管理計画の作成

・環境保護次官の認可が必要

(3)環境監査

・鉱業権者は、商業生産開始時点から操業終了するまで、毎年環境監査報告書を鉱業次官に提

出しなければならない。

・鉱業環境保護局が環境管理計画と各種義務の履行状況を審査し、その後の鉱業活動を監督する。

・鉱業権者が操業を終了する場合は、その終了の6カ月前に環境監査報告書を提出。

3-3 労働安全上の行政手続き

労働安全上の行政手続きは特に必要なし。

鉱業活動上の労働安全規定は、エクアドル労働法(Codigo de Trabajo)に従う。しかし、鉱業当局は

鉱業権者に対して、国際的に適用されている鉱業労働安全措置を取るよう指導している。

3-4 鉱区図の管理形態と入手方法

・鉱山・石油省の地質管理局(Servicio Geológico Nacional)で管理。

・鉱区図のハードコピーは国家鉱業局長あて文書にて申請すれば入手可能。

・インターネットのアクセス:www.minasypetroloes.gov.ecをダウンロードしてCatastro Mineroか

ら閲覧。

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4. 鉱業税制

税率 備考

法人所得税 25% 従業員利益配当15%を除く純利益に課税

特別法人税 (70%) 2008年1月の税法改正で、天然資源の国際価格上昇に

よる特別利益に70%の特別税が課されることになった

が施行されていない。

源泉徴収税 1% 法人対象に、全ての国内取引 に課税

外国送金税 0.5% 全ての外国送金に対して送金額の0.5%

(2008年1月より施行)

関税 輸入関税 5% 一般機材

(2007年5月に鉱業関連機材の優遇措置撤廃)

輸出関税 無し

付加価値税(IVA) 12%

従業員利益配当 15% 税引き前利益の15%

ロイヤルティ - 無し

鉱区維持料 - 1~16$/鉱区ヘクタール

配当税 - 無し

原価償却 - 機材、資材、備品 年 10%

車両 年 20%

建物 年 5%

通信・IT機器 年 3.3%

経費の繰越制度 - 探査・探鉱期間の累積経費は採掘・生産開

始後4年間に亘り経費計上可能

減耗控除 - 無し

税制の安定性 - 法令改正毎に新規定が適用される

鉱業税制の地域還元システム - 法制上の規定無し 地域社会との合意書のなかに地域

還元策がもりこまれる。

その他の課税 - 市税

不動産取得・不動産税

車両取得・車検税

会社監督局納付金

事業活動登録税

鉱業会議所会費

二重課税 - 日本はエクアドルと二重課税回避協定あり

(タックス・クレジット制度)

5. 外国投資に係わる諸手続き

事業活動を行うには、エクアドル国内に法人組織を設立しなければならない(Domiciliación)。鉱業

活動においても同様で会社法に従い組織(有限会社、株式会社、合弁会社)を設立し、この組織を通じて

外国投資を実行することになる。外国投資に対する規制はなく国内投資と同様に扱われるが、外国投

資による資本金・増資額は中央銀行に登録する。

会社設立手続き

外国投資による会社設立の手続きは、一般の会社設立の手続きと概ね同じで、外資企業に対する

規制は撤廃されている。

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・弁護士を起用して、会社設立書及び本社の代表取締役会の委任状を会社監督局(Superintendencia

de Compañía)に提出する。会社設立書は定款に相当するもので、事業内容、資本金、株主・役

員構成等を明記。

会社監督局による会社設立書及び委任状の承認は約1か月でおりる。

・承認された会社設立書及び委任状を、会社所在地の登記所に登録、約1週間を要する。登記所の

登録日が事業活動発動日となる。

・登記所に登録済みの会社設立書及び委任状を公証人事務所で公正証書化する。

・公正証書化された会社設立書をもって下記の手続きを行う。

―税務当局(Servicio de Rantas Internas)に企業の納税番号(RUC)の申請(RUC は諸税の申告・納税

に不可欠)

―事業活動の管轄当局に登録(鉱業の場合国家鉱業局)

―会社所在地の市庁に登録(地方税納付のため)

―事業活動の関連会議所に登録(鉱業の場合鉱業会議所)

―資本金が外国投資の場合中央銀行に登録

・会社代表者が外国人の場合、エクアドルでの法的責務を果たすために、永住権のビザと身分証

明証(Cédula de Identidad)を取得しなければならない。永住ビザは、公正証書化した委任状を持

って、国務省 外人局(Derección de Extrangería)に申請する。ビザと身分証明証取得までに 2 か

月ほど要する。

外国投資優遇措置

外国投資に対する優遇措置はなく、全て国内投資と同じ扱いである。

鉱業部門では、特殊車両・部品、鉱業資機材、分析機器等の輸入関税及び付加価値税免除の優遇

措置が適用されていたが、2007 年 5 月、国家法務局(Procuraduria General del Estado)は、民間の

一般機材輸入と同様扱いにする命令を出した。

6. 社会・環境事情

6-1 鉱業と地域社会との関係

エクアドルでは、古くから小規模金鉱採掘は行われていたが、本格的な鉱業開発が行われ始めたの

は、2000年に外国企業に対する規制が撤廃され、国際金属価格が上昇し始めた2002年頃からである。

Junin 鉱山は、1991 年から 1997 年にかけて実施された MMJA/JICA の資源開発協力基礎調査で発見さ

れたが、鉱業活動に反対する地域住民の抗議運動によって、探鉱段階で引き上げる事態となった。こ

のプロジェクトはその後、Ascendant Copper が権益を取得したが、地域住民と環境 NGO の激しい反対運

動が繰り返され、政府は、Ascendant Copperに対して鉱業活動停止の行政措置をとるに至った。

EcuaCorrienteが権益をもつ銅鉱山Miradorでは、2006年の初めに過激な環境NGOの反対運動が起き、地

元に駐屯している軍と衝突する事件も発生し、政府は、鉱業活動の一時中止命令を出した。しかし、同

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社は、自然破壊を 小限におさえる鉱山開発によって、雇用機会の提供、道路・上水道のインフラ整備

など、地域社会に貢献できることを理解させる努力をした結果、既に地域住民と合意に達している。

上記 Junin 及び Mirador プロジェクトの鉱業活動停止措置は、2007 年 12 月、解除になり、今後ロ

ー・プロフィールを維持しながら、鉱業活動を続ける。

Iamgold が権益をもつ Quimsacocha 金鉱山プロジェクトでは、水源保護を求めて、クエンカ市民や地

域住民が反対運動を展開した。鉱業当局の調査結果、鉱区の一部を水源保護地域として確保する必要

があるとの報告書がだされ、鉱区の23%削減の行政措置をとり、Iamgoldが受け入れ解決した。

鉱業開発に対する地域住民の抗議運動の原因は、鉱業当局が自然保護、地域社会還元等を重要視せ

ず、無秩序に鉱業権益を認可してきたところに問題があり、開発企業に対して、事業活動前に地域住

民との対話を通じて合意に達するよう指導している。現在、審議されている鉱業法改正には、地元住

民との合意書提出が義務づけられることもありうる。

6-2 鉱業に係わるNGO(特に環境NGO)の動向

エクアドルは、地球上で も生物多様性に富む国のひとつであり、自然保護指定地が国土の 4 分の 1

を占めている。そのため、政府は様々な国際機関から自然環境保護のための援助を受けており、また、

多数の環境NGOが登録されている。そのなかでも、鉱山活動における環境NGOの動向は、地域住民を扇

動するなどの、純粋な自然環境保護の活動を超えた過激な鉱業活動反対運動に繋がっている面もある。

Mirador 鉱山開発プロジェクトでは、地域社会への利益還元策をとることで地域住民との合意に達し

ていたにもかかわらず、環境NGO主動の反対運動が発生した。これを防ぐために、地域社会に詳しく、

環境NGOにも対応できる専門家を、プロジェクト推進中も現地に駐在させることが必要である。

エクアドルの鉱山資源の大部分は、未開発の森林地帯にあり、先住民部落もあることから、環境 NGO

の目標になりやすいが、開発企業が環境規制を遵守し、環境影響評価の承認をとれば、環境NGOの不法

な抗議運動に対して、治安当局による排除命令要請などの手段もあるので、毅然とした対応が必要で

ある。第二パイプライン施設工事中に、国際環境NGOメンバーが入国し、抗議運動を行ったが、国外退

去措置を取った例がある。

エクアドル全般をみた場合、アマゾン地区で石油開発を行っている国際石油メジャーは、環境NGOに

よる過激な抗議運動は受けておらず、鉱業分野でも十分な地域社会対策を講ずることにより、環境 NGO

の抗議運動を軽減することはできるといえよう。

6-3 労働事情

2001 年 11 月に行われた国勢調査では、全労働人口は 367 万人で、この内 7割近くがキト、グアヤキ

ル等の都市圏に集中している。産業別では、一次産業から二次・三次産業へのシフトが進み、商業や

サービス業従事者が も多い。

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産業別労働人口

(万人) (%)

農牧・漁業 28.2 7.7

石油・鉱業 1.8 0.5

製造業 61.1 16.6

建設業 23.5 6.4

商業 102.7 28.0

その他サービス業等 150.0 40.8

総計 367.3 100.0

出典:統計局(Instituto Nacional de Estadistica y Censo)

1998年の金融危機以降、失業者が急増し、失業率はここ数年9%前後で推移している、この影響で、

スペイン、イタリア、米国等に、約40万人が出稼ぎ移住をしている。

失業率

1999年 14.4%

2000年 9.0%

2001年 10.9%

2002年 9.2%

2003年 11.5%

2004年 8.6%

2005年 7.9%

2006年 9.0%

出典:中央銀行

低賃金の推移

2002年 128.58$

2003年 137.91$

2004年 143.63$

2005年 150.00$

2006年 160.00$

2007年 170.00$

2008年 200.00$

労働条件

労働時間

40時間/週 週5日勤務(月~金)1日8時間労働

18歳以下 7時間 勤務時間外労働禁止

時間外手当 休日・祭日 深夜 100%増し

勤務時間外 50%増し

女性雇用 男性と同条件ただし妊娠中解雇禁止 出産休暇3ヵ月

有給休暇 15日/年 6年目より1日増し 高30日

社会保険 全員付保 企業負担12.15% 労働者負担9.35%

退職積立金 平均給与1カ月を毎年社会保険庁に納付

労働契約 毎年更新 試用期間3ヵ月

法定ボーナス 年2回(9月と12月)平均給与1カ月分

解雇 労働法規定による

※ 移民法により、1 企業の外国人雇用は、人数、給与額共に全体の 20%以内との規制がある。これ

は鉱業にも適用され、また鉱業局が人選する鉱山学部の研修生受け入れ義務もある。

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

14.0%

16.0%

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 年

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6-4 インフラ事情

空路事情

首都キト市並びにグワヤキル市から各州都への便があり、空路による移動条件は良好である。小

型機チャーターも可能。

道路事情

キトから北方 50km に位置する Junin 鉱山は首都にも近く、エクアドルの山間部を縦断するパンア

メリカン道路に接しており、同鉱山の道路インフラ状況は良好である。

Junin 鉱山を除く主要鉱山は、エクアドル南部に集中する。この地域は、1942 年以来国境紛争のた

びにペルーとの戦闘を交えた歴史もあるために、道路・電力等のインフラ整備は遅れていたが、ペル

ーとの和平締結に伴い、国際機関、日本を含む先進国等の援助により、道路建設・保全、国境沿いの

架橋等、インフラ整備が進みつつある。

アンデス東面には、中央に位置するプヨ市からサモラ市に繋がる縦断道路もあるが、一部架橋が

不足している。

電力事情

Junin 鉱山は国内高圧配電網に隣接している。一方、南部地方は日本政府の円借款による地方配電網

整備計画が進められ、鉱業開発に貢献するものと期待される。しかしながら、現在の発電能力、配電サ

ービス状況から判断すれば、精錬(Fundicíón)ステージでは独自の電力供給基地をもつべきである。

港湾事情

エクアドルの太平洋岸には、北からエスメラルダス、マンタ、グワヤキル、ボリバルの4港があり、

キトより北部の鉱山からの鉱物輸出はエスメラルダス港、南部からの鉱物輸出はボリバル港となるが、

いずれも国際港としての機能を持っている。

Mirador プロジェクトの EcuaCorriente は、ボリバル港を積み出し港とし指定し、専用レール施設

と港改良工事を予定している。

Junin プロジェクトの Ascendant Copper は、エスメラルダス港を積み出し港としているが、キト市

経由の輸送を避け、新たにキニンデ市経由エスメラルダス港を結ぶ道路建設を企画中である。

通信事情

周波管理局(Dirección Nacional de Frecuencia)が民間企業の周波数を認可する。また、民間衛星利

用の通信設備の設置も可能で、通信事情については特に支障はない。一方、携帯電話網も全国をカバ

ーしつつあり、近い将来通信システムの整備が進むものと期待される。

郵便事情

郵便事情は悪く、公営郵便サービスよりも、宅配便または地元ロジスティック契約等を利用すべ

きである。

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7. エクアドルの地質概要

エクアドルは、安定地塊(ギアナ盾状地、ブラジル盾状地)の西縁に形成された、狭長な地向斜帯(ア

ンデス変動帯)に属し、断層・褶曲運動、激しい火成活動などの影響により、かなり複雑な地質構造をな

している。

地向斜帯全域にわたる地殻変動により、海岸線近くにアンデス山系が隆起し、山系西側は狭い海岸地

帯となり、山系東部には、広大なアマゾン大平原が形成されている。

このため、当国の地質・構造は、海岸地帯、山岳(アンデス)地帯、東都地帯に大別される。

海岸地帯(Costa)は、アンデス山系の西麓から太平洋岸に到る地域で、標高 300m 以下の平地を形成し、

海岸段丘などが発達している。この地域には、主に第三系、第四系が分布しているが、一部に、基盤

をなす古生界、白亜紀の変質火山砕屑岩類、白亜紀~第三紀初期に貫入した酸性貫入岩類も露出して

いる。

古生界は片麻岩~変成度の低い準片岩からなり、グワヤキル東南方の第四紀層中に、地窓状に露出してい

る他、マチャラ(Machala)東方に、北東-南西の方向性を有して存在している。

白亜系は、グワヤキル西方に分布し、下部の海底火山活動による火山岩、火山砕屑物と、上部の通常堆積物

に区分される。

第三系は、北部ではアンデス山系西部山脈に接し、南部ではチュンゴン(Chongon)、コロンチェ

(Colonche)山脈の南方の白亜紀に接して、この中間ではダウレ(Daule)河流域に累積している。

第四紀層は、広大な海成段丘、洪積扇状地、グワヤス(Guayas)河沿いに発達する沖積平原、北部エスメラル

ダ(Esmeralda)付近に存在する現世火山溶岩などからなる。

貫入岩類の分布は極めて少なく、第三紀中に数ケ所、細粒花花崗閃緑岩の貫入が知られており、白亜紀

末と第三紀中期の貫入と推定されているが、詳細は不明である。

山岳地帯(Sierra)は、標高 3,000m 以上のアンデス山系で、西部山系(Cordiners Occidental)とレアル山系

(Cordillers Real)が、30~40km の間隔で南北に平行に走り、これら両山系の間に、中問盆地

(Intrcordilleran Depression)が形成されている。

西部山系には、変質火山砕屑岩類、堆積岩類からなるジュラ系~白亜紀層が広範に発達し、その東側には、

石灰岩の薄層を挾在する、安山岩、凝灰岩、珪質頁岩からなる上部白亜系が分布している。

8. 探鉱開発動向

エクアドルにおける探鉱開発の対象は金、銅、プラチナに限定される。金のポテンシャルは高く、

歴史的に 16 世紀から南部のサルマ地方では金採掘が行われ、現在でも続けられている。また、国土の

4分の1を占める自然保護指定地域には豊富な金・銅等の鉱脈があることも確認されている。

現在まで、カナダを中心とする 30 社にのぼるジュニア企業が探査・探鉱を行ってきており、カナダ

の業界紙には、エクアドルの探鉱に関する肯定的記事が頻繁に掲載されている。

近年の金属資源の国際価格上昇を背景に、鉱業開発が活発になってきており、各企業はこれまで以

上に開発予算を増やすものと予想される。

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2005-2006年新設企業数

2005年 2006年

銅 国内企業

(外国 企業なし)

3 4

金・銀 国内・外国企業 48 49

その他金属 国内・外国企業 6 7

出典: 会社監督局(Superintendencia de Compañia)

主な開発プロジェクト

(1) Mirador

エクアドル南東部の Zamora-Chinchipe 州の Corriente カッパーベルトと呼ばれる地帯(東西約

20km、南北約 60km)に位置する、ポーフィリー型の銅・金鉱床である。現在、EcuaCorriente が権

益を保有し、2005 年 4月に Pre F/S 終了、同年 12月に環境影響評価(EIA)を提出したが、その後、

開発プロジェクトが拡大したので、新たな環境影響評価作成中。

その操業規模は、露天掘りにより、当初 2.5 万 t/日の粗鋼量(産銅量約 6 万 t/年、産金量約

1t/年)を計画したが、その後、9万t/日まで引きあげた。F/S調査による鉱量は4.4億t(銅0.61%、

19g/t)初期生産投資額は5億ドル。

現在、EcuaCorriente は、資本参加、鉱石購入に興味を持つメジャー企業を含む複数社と交渉

中だが、その成否に拘わらず、自己資金でプロジェクトを推進する。

更に、Corriente カッパーベルト内には、本鉱床以外に有望な鉱床・鉱微地(San Carlos,

Panantza 等)が多数確認されており、Mirador 鉱床の開発に続き、これらの探鉱・開発も活発化す

る見通しである。

(2) Junin

首都キトの北方約 50km に位置する、斑岩型の銅・モリブデン鉱床で、資源開発協力基礎調査

により発見された。1997 年に終了した同調査では、予想鉱量 3.2 億 t(銅 0.71%、モリブデン

0.026%)としている。

権益をもつ Ascendant Copper は、探鉱に着手したが、地域住民や環境 NGO の激しい反対運動が

起こり、一時活動停止の行政措置がとられた。

2007年末、この措置が解除され、F/Sと環境影響評価の作成を予定している。

Ascendant Copper 独自の鉱量評価によれば、推定鉱量 9.8 億 t(銅 0.89%、モリブデン 0.04%)と

報告している。

(3) Quimsacocha

Cuenca 市南部に位置する浅熱水性の金・銀・銅鉱床で、鉱脈型鉱床を主体とする。Iamgold が

権益をもち、ボーリング調査を実施中である。

2005年10月、ボーリングに基づく鉱量評価によると、鉱量2,250万t(金3.9g/t、銀25g/t、銅

0.16%)、このうち高品位は、鉱量 850 万 t(金 6.8g/t、銀 42g/t、銅 0.24%)である。金属量ベース

では、金279万oz、銀1,820万oz。ところが、2005年頃から、クエンカ市民や地域住民による水

源保護のための開発反対運動が起こり、2007 年に鉱業当局は、Iamgold 鉱区のうち水源地帯 23%

を削減する処分を行った。同社はこの処分を受け入れ現在F/S作成中である。

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(4) Condor

エクアドル南東部のZamora-Chinchipe州のCondor地区の権益を保有するAurelian Resourcesは、

2003年から本格的なボーリングによる探査を開始し 2007年始めに金属量ベースで 1,400 万 oz の

南米三番目規模の金鉱脈を発見したと発表した。現在本格F/S作成中。

(5) Zaruma

ペルーとの国境に接する El Oro 州や Loja 州に鉱区をもつ、Dynasty Metals は、斑岩型の銅・金

鉱床を対象に、広範意の探査を続けているが特にZaruma鉱床は有望と発表した。

図 エクアドルの地質および主要プロジェクト

9. エクアドル進出外国企業の投資環境評価

2003 年頃から、エクアドルで積極的に鉱業活動を行っているのは、カナダを中心としたジュニア企

業であり、Anglo、Newmont、Noranda、BHP Billiton、Teck、Goldfields のようなメジャー企業は、エク

アドルの金属資源に興味を示さず、鉱業活動は行なわず、現地代理店をおいて情報収集をしているの

みである。

鉱業開発プロジェクトを推進している主なジュニア企業

企業名 鉱山名

Ascendant Copper Junin

Ecuagold(Ascendant Copperの別会社) Chaucha

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Cornerstone Yanacocha

Internacional Minerals Corp. Rio Blanco

Iamgold Quimsacocha

Iamgold Victoria de Patete

Lowell Watintza

Lowell Gualaquiza

Dynasty Metals Zaruma

EcuaCorriente Mirador

EcuaCorriente El Paquil

Aurelian Resources Fruta de Norte

Aurelian Resources Yansatza

Aurelian Resources Las Peñas

出典: 国家鉱業局

これらジュニア企業は、既に鉱業権益を取得し、自己資金をもって探査・探鉱開発プロジェクトを

推進中である。特に、EcuaCorrienteは、今後5億$を投入し、2~3年後の開山を目指している。他の企

業は、探鉱・F/S ステージにあり、鉱業法改正があっても、そのまま鉱業活動を継続すると判断される。

2007 年、コレア政権になり、米国との政治・経済依存から離れ、南米諸国特にベネズエラへの接近

などから、社会主義への移行かとの危惧もあったため、投資リスクが高まったとして、外国企業の投

資・進出は低迷した。

政府の石油進出企業への介入、一部鉱業開発企業の活動停止措置などから、特に、石油・鉱業部門

の外国投資は落ち込んだ。2008 年は、新憲法発布、法令改正などがあり、当分の間この状況は続くも

のと思われる。

しかしながら、政府プロジェクトのなかで、既契約のキト新空港建設、国際港民営化後の港湾

整備、BOTスキームによる大規模水力発電所建設などは、外国投資を導入して順調に進められている。

エクアドルの投資環境評価の低さは、政情不安定、法制の不備、米ドル経済によるコスト高などに

よるものだが、新憲法発布、法令改正、国家監査機関の確立、対外債務返済の履行などを通じて、国

の評価が上がれば、進出企業の投資意欲も高まり、外国投資環境も好転すると期待される。

一方、米国との FTA 交渉打ち切り、更に、2008 年 2 月に到来する関税免除特恵の更新中止となれば、

今後、国内産業に与える悪影響は避けられず、このような、マイナス要因を、進出外国企業がどのよ

うに評価するかはよめない状況にある。

鉱業関連法一覧

鉱業法 (1991年5月31日発布)

Ley de Mineria

鉱業法 改定(トローレ法2 2000年8月18日官報144)

De las Reformas a la Ley de Minería

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鉱業法改定一般施行細則(行政法令第1415号2001年4月17日官報307)

Reglamento Ambiental de Actividades Mineras

鉱業安全法(行政法令第3934号1996年7月30日官報999)

Reglamento de Seguridad Minera

鉱業活動に係わる環境規制施行細則(行政法令第625号1997年9月12日官報151)

Reglamento General Sustitutivo del Reglamento General de la Ley de Minería

環境管理法(法律第37号1999年7月30日官報245)

Ley de Gestión Ambiental

環境管理法を除き、Corporación de Estudios y Publicaciones発行のLey de Minería,

Reglamento y Legislacion conexaに収められている。

参考資料

鉱山・石油省

www.minasypetroleos,gov.ec

鉱業会議所

www.cme.org.ec

中央銀行 Informacion Estadistica Mensual August 31, 2007 No. 1866

www.bce.fin.ec

統計局 Instituto Nacional de Estadistica y Censo

www.inec.gov.ec

「エクアドル共和国の資源開発環境」

JOGMECリマ事務所 2004年3月

「エクアドル資源開発環境調査」

Morfo Asociados Cia Ltda 2006年1月

「Ley Reformatoría para la Equidad Tributaría del Ecuador」

( 2007年12月29日官報 242 )

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平成 19 年度戦略的鉱物資源確保事業報告書 第5号

エクアドルの投資環境調査 2007 年

平成 20 年 3 月 発行

発行: 金属資源開発本部 企画調査部

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