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ブタンの脱水素によるブタジエン製造技術の開発 2019年5月8日 JXTGエネルギー株式会社 2019年度 JPECフォーラム -禁無断転載・複製 ©JXTG Nippon Oil & Energy Corporation All Rights Reserved. 2019-

ブタンの脱水素によるブタジエン製造技術の開発目的 製油所において燃料用途で使用されているブタンを主とする留分を 脱水素することにより,ブタジエンを製造する技術を開発する.

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Page 1: ブタンの脱水素によるブタジエン製造技術の開発目的 製油所において燃料用途で使用されているブタンを主とする留分を 脱水素することにより,ブタジエンを製造する技術を開発する.

ブタンの脱水素によるブタジエン製造技術の開発

2019年5月8日

JXTGエネルギー株式会社

2019年度 JPECフォーラム

-禁無断転載・複製 ©JXTG Nippon Oil & Energy Corporation All Rights Reserved. 2019-

Page 2: ブタンの脱水素によるブタジエン製造技術の開発目的 製油所において燃料用途で使用されているブタンを主とする留分を 脱水素することにより,ブタジエンを製造する技術を開発する.

アジェンダ

1. 背景・目的,開発計画と目標

2. 開発状況 3. まとめ

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目的

製油所において燃料用途で使用されているブタンを主とする留分を 脱水素することにより,ブタジエンを製造する技術を開発する. 価値の低いブタンを高付加価値化することにより, 石油のノーブル・ユース化を推進し,国内製油所の競争力強化を図る.

ブタン

ブタジエン 目的製造プロセス

(脱水素法)

ブタジエン

付加価値 低 (将来余剰基調)

付加価値 高 (将来不足見込み)

(製油所)

原油 (常圧蒸留塔)

(石化工場)

ナフサ (ナフサクラッカー)

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背景

近年,エチレン製造がナフサクラッカー(ナフサの熱分解)から,より安価な エタンクラッカーへとシフト. ナフサクラッカーで生産されていたブタジエンが相対的に減少し. 需給ギャップが拡大する見通し.

0 20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

2008 2012 2016 2020 2024

ブタジエン需要 (主用途:タイヤ用ゴム原料)

エチレン生産量 (ナフサクラッカー由来)

比率

(2009年

を100)

0

20

40

60

80

100

エタン ナフサ

エチレン

水素,メタン等

プロピレン

ブタン,ブテン

C5+

ブタジエン

クラ

ッカ

ーで

の収

率,

%

4

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技術開発の背景

接触改質 (リフォーマー)

流動接触分解 (FCC)

常圧 蒸留塔

C4留分

ノルマルブタン

イソブタン

ノルマルブテン

イソブテン

原油 重質ナフサ

重油

ガソリン (蒸気圧調整)

燃料

アルキレートガソリン (RON 95以上;高オクタン価基材)

メチルエチルケトン (化学品)

プロピレン (化学品)

燃料用途のみ

ETBE (RON110以上;高オクタン価基材)

メタクリル酸メチル (化学品)

・ノルマルブタンは燃料用途の利用に限定 ・シェールガス生産の拡大に伴い,原油由来のブタンのコスト優位性低下 ⇒ ガス燃料余剰

将来余剰が見込まれるブタンをブタジエンへ高付加価値化することで, 石油のノーブル・ユースを推進することが可能

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目標,研究開発計画

本日の発表内容

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【最終目標】 ブタンを主原料として工業的にブタジエンを製造する,反応-再生型ブタン 脱水素プロセスの基本技術を開発する

①高いブタジエン収率(反応器出口で20 wt%以上)と、1再生サイクルあたり 24時間以上の耐久性を兼ね備えた脱水素触媒の開発

②反応器の交互再生により長期連続運転可能なプロセスデザインの作成

【開発計画】

項目 平成28年度 平成29年度 平成30年度

触媒開発

ベンチ装置の設計・製作・導入

プロセス検討/反応条件検討/不純物同定

再生法検討/反応器交互切り替え再生評価

触媒の工業製造検討

プロセスデザイン作成

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アジェンダ

1. 背景・目的,開発計画と目標

2. 開発状況 3. まとめ

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Page 8: ブタンの脱水素によるブタジエン製造技術の開発目的 製油所において燃料用途で使用されているブタンを主とする留分を 脱水素することにより,ブタジエンを製造する技術を開発する.

平成30年度の計画

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年 月

項 目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

平 成 30年 度

③触媒の繰り返し再生検討

④プロセスデザイン作成

①触媒開発

②触媒の工業製造検討

① 触媒開発 (目標:ブタジエン収率20%) 触媒調製法の改良により, PtとSnを高分散化することで, 反応器出口のブタジエン収率を20wt%に到達させる。

② 触媒の工業製造検討 (目標:工業的に製造可能な方法であること) 開発触媒の工業製造検討を実施し, 工業的に製造可能な方法とする。

③ 触媒の繰り返し再生検討 (目標:長期運転が見込めること) 反応器の交互切り替え再生により確認する。

④ プロセスデザイン作成 (目標:商業機の反応器廻りのプロセスデザイン作成) シミュレーションを活用し、商業機における反応器廻りのプロセスデザインを作成する。

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平成30年度の成果

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検討項目 目標 成果

①触媒開発 ブタジエン収率

20%到達

(1)触媒調製法の改良により, 活性点である, PtSnを高分散化させることが可能 (2)高活性かつ劣化抑制が可能な改良触媒は 24時間平均のブタジエン収率が20%に到達

②触媒の工業製造 検討

工業的に製造 可能な方法確立

触媒メーカーにて, 工業的に製造可能な方法で 調製し, ラボ試作品と同等性能を示すことを確認

③触媒の繰り返し 再生検討

長期運転が 見込めること

繰り返し再生試験を行った結果, 初期と同等性能を示すことを確認

④プロセスデザイン 作成

商業機の反応器廻りのプロセス デザイン作成

(1)触媒層内の差圧を実験で確認 (2)商業機の反応器内の流動解析を行い, 反応/ 再生時ともに, 偏流が生じないことを確認 (3)流動解析結果をもとに, 反応器廻りのプロセス デザインを作成

全ての開発項目において、平成30年度の目標を達成

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本開発技術のコンセプト

<コンセプト>

<従来方式>

反応器

ブタン

ブタジエン

触媒

反応器を分割し,条件/触媒を最適化

ブタン

ブタジエン

<新方式>

後段反応器 (ブテン⇒ブタジエン) より高温で劣化しない触媒開発

前段触媒

後段触媒

前段反応器 (ブタン⇒ブテン) ブタン脱水素活性の高い触媒開発

ブタン ブタジエン

②平衡上 高温が有利

①高温だと 触媒失活

より低温に より高温に ブテン

平成28年度にコンセプトを再検討し, 劣化を抑制しつつ,ブタジエン収率を向上

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【前段】 【後段】

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①触媒開発

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Sn分布 (eggshell担持)

Pt分布 (uniform担持)

触媒ペレット断面のEPMA分析

脱水素触媒の外観写真

Ptはuniform担持

Sn粒子

Snを均一担持

【触媒改良】 Pt, Sn粒子を共に均一担持することを検討

Snが外表面に偏在

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①触媒開発

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高活性かつ劣化抑制が可能な改良触媒を用いることで 最終目標(H30年度)であるブタジエン収率20%を達成

5

10

15

20

25

0 6 12 18 24

ブタ

ジエ

ン収

率(反

応器

出口

),%

経過時間,h

H30年度目標 (24h平均)

H29年度目標 (24h平均)

原料:ブタン70%,ブテン30%, 2段反応

現行触媒

Sn分布 (uniform担持)

Pt分布 (uniform担持)

改良触媒のペレット 断面のEPMA分析

Pt, Sn粒子が共に 均一に担持

改良触媒

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②触媒の工業製造検討

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前段、後段触媒ともに, 触媒メーカーにて工業製造検討を実施し, 工業製造品を評価した結果, ラボ試作品と同等性能を示すことが分かった。

ブテ

ン転

化率

(4h後

),%

後段反応 (ブテン脱水素) 原料:ブテン100%,反応温度:Base+50℃

前段反応 (ブタン脱水素) 原料:ブタン100%,反応温度:Base℃

0

10

20

30

40

50

ラボ試作品 @JXTG

工業製造品 @触媒メーカー

0

30

40

50

60

70

ブタ

ン転

化率

(4h後

),%

ラボ試作品 @JXTG

工業製造品 @触媒メーカー

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③触媒の繰り返し再生検討

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前段、後段触媒ともに, 繰り返し再生試験を行った結果, 活性は全く低下せず, 長期運転が見込まれることが分かった。

ブテ

ン転

化率

(4h後

),%

後段反応 (ブテン脱水素) 原料:ブテン100%,反応温度:Base+50℃

前段反応 (ブタン脱水素) 原料:ブタン100%,反応温度:Base℃

0

10

20

30

40

50

新品 0

30

40

50

60

70

ブタ

ン転

化率

(4h後

),%

新品 再生 5回

再生 10回

再生 5回

再生 15回

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④プロセスデザイン作成

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本プロセスの特徴(他の商業プロセスとの相違点):24h毎の反応・再生サイクルかつ減圧反応 スケールアップ上の課題:反応時(減圧) と再生時(微加圧)の差圧が少なく偏流が懸念 反応時ΔP:約4kPa,再生時ΔP:約0.3kPa

触媒層の偏流懸念に対し, ①,②の実施により偏流を検証し, 商業機(反応器廻り)のプロセスデザイン作成に繋げる

①差圧測定(触媒量:1kg程度) 触媒層差圧を測定し,データをCFDに反映

②CFDを用いた流れのシミュレーション 流れ状態を解析し,偏流が生じない条件を 探索.必要に応じて触媒層ΔPを見直し

ラジアルフロー型 反応器

②CFD解析 ①差圧測定

データ反映

プロセスデザイン 作成

懸念される触媒層(後段)の偏流に関する検討に注力.触媒層の差圧測定と CFD解析により,商業機(反応器廻り)のプロセスデザインを作成

触 媒

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④プロセスデザイン作成: 触媒層の差圧測定

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触媒層の差圧測定装置を設計, 製作し, 弊社研究所に導入し, 工業的に製造した触媒を充填し, ガス量を変えた際の差圧を測定した。

エアー導入

触媒層 差圧

触 媒 層

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④プロセスデザイン作成: 触媒層の差圧測定

触媒層の差圧測定結果(実験値)は, エルガン式の計算値と ほぼ同様の挙動を示し, 本実験結果をCFD解析に反映した。

エアー導入

触媒

層の

圧力

損失

,kP

a

エアー流量, Nm3/h

△エルガン式の計算値 ΔP/L=(150μ/dp2)・{(1-ε)2/ε3}・u+(1.75ρ/dp)・{(1-ε)/ε3}・u2

実験値

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④プロセスデザイン作成: 反応器のCFD解析

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触媒層

ガス流れ

触媒層

ラジアルフロー型反応器

商業機の反応器内のCFD解析を行った結果, 反応/再生時ともに, 偏流が生じないことが確認された。

CFD解析結果(反応時) CFD解析結果(再生時)

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④プロセスデザイン作成: 商業機の反応器設計

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商業機の反応器内のCFD解析結果を踏まえ, 反応器廻りのプロセスデザインを作成した。

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④プロセスデザイン作成: プロセスフロー

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反応器周りのプロセスデザインをもとに 商業機の詳細なプロセスフローを構築した。

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アジェンダ

1. 背景・目的,開発計画と目標

2. 開発状況 3. まとめ

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平成30年度の成果まとめ

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検討項目 目標 成果

①触媒開発 ブタジエン収率

20%到達

(1)触媒調製法の改良により, 活性点である, PtSnを高分散化させることが可能 (2)高活性かつ劣化抑制が可能な改良触媒は 24時間平均のブタジエン収率が20%に到達

②触媒の工業製造 検討

工業的に製造 可能な方法確立

触媒メーカーにて, 工業的に製造可能な方法で 調製し, ラボ試作品と同等性能を示すことを確認

③触媒の繰り返し 再生検討

長期運転が 見込めること

繰り返し再生試験を行った結果, 初期と同等性能を示すことを確認

④プロセスデザイン 作成

商業機の反応器廻りのプロセス デザイン作成

(1)触媒層内の差圧を実験で確認 (2)商業機の反応器内の流動解析を行い, 反応/ 再生時ともに, 偏流が生じないことを確認 (3)流動解析結果をもとに, 反応器廻りのプロセス デザインを作成

全ての開発項目において、平成30年度の目標を達成

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本事業(3ヶ年)の総括

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開発項目 目標 成果 達成度

触媒開発 ・ブタジエン収率20%

・単位触媒あたりの活性を向上し, 反応器サイズを小型化 ・アルカリ金属添加によりコーク量低減 ・触媒調製の改良によりPtSn高分散化 ⇒ ブタジエン収率20%達成

100%

ベンチ装置の設計・ 製作・導入

・反応器の交互切り替え再生が 可能なベンチ装置導入

・ベンチ装置導入完了 100%

プロセス検討/ 反応条件検討/

不純物同定

・詳細フローの構築 ・生成物中の不純物同定

・ラジアルフロー型の反応器選択 ・24時間サイクルの再生システム構築 ・過熱スチームによる熱供給方法を選択 ⇒ 詳細フローの構築完了

・ブタジエン組成分析装置を用いて, 生成物中の微量副生物を同定完了

100%

再生法検討/ 反応器交互切り替え

再生評価

・触媒の繰り返し再生検討に より長期運転が見込めること

・繰り返し再生試験の結果, 収率低下は なく, 長期運転が見込めることを確認

100%

触媒の工業製造検討 ・工業的に製造可能な方法を 確立

・委託先の触媒メーカーにて, 工業的に製造可能な方法を確立

100%

プロセスデザイン 作成

・スケールアップの基本コンセ プト策定

・商業機の反応器廻りのプロセ スデザイン作成

・エンジニアリングメーカーとスケール アップ計画を策定 ・CFD解析により偏流がないことを確認 ⇒ 反応器廻りのプロセスデザイン作成

100%

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おわり

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