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プロジェクトとは - tac-school.co.jpPMO(ピーエムオー:Project Management Office:プロジェクトマネジメントオフィス)は、複数 のプロジェクトを同時に管理する組織で、すべてのプロジェクトが円滑に運営されるための業務を担

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プロジェクトとプロジェクトの

立上げ

1

プロジェクトとは

1-1

1-1-1 プロジェクトとは

1-1-2 プロジェクトの制約

1-1-3 プロジェクトマネジメント

1-1-4 プロジェクト・ライフサイクル

1-1-5 IT開発モデル

1-1-6 プロジェクトにおける役割と責任

1-1-7 プロジェクトの組織構造の特徴

プロジェクトとは

1-1

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プロジェクトと定常業務1仕事は「プロジェクトの仕事」と「プロジェクトではない仕事」のどちらかに分けることができます。

たとえば、保険会社では既にある保険商品を販売したり、保険契約に該当する事象が発生した場

合に対応したりする仕事は「プロジェクトではない仕事」です。プロジェクトではない仕事は、定常業務やライン業務などと呼ばれます。それに対して、新しい保険商品を開発し、そのしくみを作り上げる仕事は、独自の成果を産み出す特別な仕事です。このような特別な仕事をプロジェクトと

呼び、定常業務とは区別しています。プロジェクトには、開始と終了があり、達成すべき最終目標

があります。

プロジェクトの特性2プロジェクトには、有期性、独自性、明確な目的があるという特性があります。

● 有期性始まりと終わりがあることを有期性といいます。たとえば、ソフトウェアの開発導入プロジェクトでは、ソフトウェア開発の始まりから実際に利用現場へ導入される終わりまでの、開始日と終了日が

あります。

● 独自性プロジェクトでは、個々に異なる成果物を産出します。たとえば、保険会社では新しい保険商品を

作り上げるプロジェクトが複数あったとしても、それぞれのプロジェクトでつくる保険商品は異なる

ものです。このような唯一無二(ユニーク)な成果物を産出する特性を独自性といいます。

● 明確な目的があるプロジェクトには明確な目的があります。多くの場合、ある期限までに、基準を満たした品質で成果をあげることが目的になります。新しい保険商品を作り上げる例では、事前に定めた発売日まで

に新しい保険の内容を定めるだけでなく、それを受付し、不備なく適用できるようなシステムを作

り上げることが目的となります。

1-1-1 プロジェクトとは

「プロジェクトマネジメント」を習得するには、そもそも「プロジェクト」とは何かを知らないと始まりません。すべてのプロジェクトに共通の特徴である「有期性」と「独自性」など、定常業務との違いから理解しましょう。

学習ポイント

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プロジェクトとは

プロジェクトとプロジェクトの

立上げ

1

1-1

定常業務3プロジェクトに対して、企業の目的のために恒久的に行われる業務を定常業務といいます。定常

業務も、企業の戦略やビジネスの目的を達成するために、それぞれの役割や目的を持って構成さ

れた組織により遂行されるという意味では、プロジェクトと同じ特性があります。ただし、定常業務

がプロジェクトと大きく異なるのは、定常業務には継続性や反復性があるということです。限られた期間の中で、独自の成果物を構築するプロジェクトとは、その構成や運用方法についても異なり

ます。

プロジェクトと定常業務の見分け方4プロジェクトには有期性と独自性があり、定常業務には継続性と反復性があります。一方、 プロ

ジェクトと定常業務には、次の図に示すように人により遂行される、資源の制約がある、成果物を産出する、達成目標があるといった共通点があります。これらの特性が明確に表れない業務もありますが、その業務のプロジェクトと定常業務のどちらの

性質が大きいかを把握し、プロジェクトに適した業務か、定常業務として実施すべき業務かを見分

けます。

●有期性●独自性

プロジェクト

●継続性●反復性

定常業務

●人により遂行される●資源の制約がある●成果物を産出する●達成目標がある

共通点

プロジェクトと定常業務

プロジェクトの特徴である「有期性」と「独自性」がプロジェクトマネジメントに大きな影響を与えています

プロジェクトはこれまで誰もやったことのない作業なので手順書がありません。また、開始時に成

果物のイメージも明確ではありません。したがってどのような作業を行い、何をもって完成とする

かの基準を事前に作っておくことがとても重要になります。

プロマネからのアドバイス ❶

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プロジェクトとは

プロジェクトとプロジェクトの

立上げ

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1-1-6 プロジェクトにおける役割と責任

プロジェクトはチームで目標達成を目指して活動していくため、関わる人物の役割と責任を明確にすることが重要です。規模に応じて同一人物が複数の役割を担うこともありますが、どのような役割が必要なのかを認識しておきましょう。

学習ポイント

プロジェクトにおける役割1プロジェクトにおける役割には次のようなものがあります。

● スポンサー/チャンピオン/オーナープロジェクトスポンサーは、プロジェクトに対するハイレベル※の要求を決定し、予算の承認、スケ

ジュールベースラインの承認を行う人物または組織です。スポンサーやプロジェクトチャンピオン、

プロジェクトオーナーと呼ばれる場合もあります。状況に応じてプロジェクトの中止を決定する役

割も担います。

● プロジェクトマネージャプロジェクトマネージャは、プロジェクトチームの全体責任者として、チームを統率してプロジェクト

の目標達成を担う役割と責任があります。予算の範囲内で、スケジュールに沿って、求められる成

果を出します。成果に対する品質責任もあります。

● ステークホルダーステークホルダーは、プロジェクトの目標達成に影響を与えるすべての個人や組織です。特に大き

な役割は、詳細な要求事項を提供することです。ハイレベルな要求はスポンサーから提供されます

が、具体的な要件として固めていくためにはステークホルダーからの要求をインプットにします。シ

ステム開発プロジェクトでは、システムを利用するユーザー部門の管理者であったり、システム部

門の担当者であったり、さまざまな人物や組織がステークホルダーになります。既得権益を守りが

ちな人物、専門家の見地から理想を押し付ける人物など、プロジェクトマネージャは各ステークホ

ルダーの特徴を理解してマネジメントすることが求められます。

なお、大規模なプロジェクトでは、利害関係の調整のために、ステークホルダーを集めたステアリン

グコミッティ※を形成することがあります。

ハイレベル「概算」や「概要」、「概観」という意味で高水準という意味ではない。

ステアリングコミッティ大規模なプロジェクトの場合に設置されるプロジェクト運営委員会。利害関係の調整を行う。

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KPI(ケーピーアイ:Key Performance Indicator:重要業績評価指標)組織にとって活動が目標に対してどの程度実行されているか、定量的に計測するための重要な管理指標。「2-2-1」で説明。

アーンド・バリュー分析プロジェクトの進捗状況と成果の価値を評価する管理手法。詳細は「4-3-1」で説明。

● プロジェクトコーディネータプロジェクトコーディネータは、プロジェクトマネージャのサポート役です。プロジェクトマネージャ

はプロジェクトの目標達成に責任を持ちますが、目標達成に向けて解決する必要のあるすべての

問題を詳細に把握して管理することは容易ではありません。特に組織横断的なメンバーで構成さ

れるようなプロジェクトでは組織単位での調整事項も発生しがちです。そこで、プロジェクトコー

ディネータがさまざまな問題解決や組織単位の調整などを行い、プロジェクトマネージャを支援しま

す。

● プロジェクトスケジューラプロジェクトスケジューラまたは単にスケジューラは、スケジュールの策定と維持、アーンド・バ

リュー分析※によるパフォーマンス測定など、スケジュールに関する管理タスクを担う人物です。プ

ロジェクト規模や状況により、プロジェクトマネージャやプロジェクトコーディネータの役割に含めた

り、切り離して別の人物に担当させたりします。

● プロジェクトチームプロジェクトチームは、専門家集団としてプロジェクトの各タスクを遂行し、成果物を作成するチー

ムです。規模に応じて、チームを複数に分け、各チームリーダーを配置することが一般的です。チー

ムリーダーはチームメンバーに作業を指示したり、作業を進める上での相談に乗ったりするなど、

チームを統率し、チームに求められている目標を達成させることが役割と責任になります。

● PMOPMO(ピーエムオー:Project Management Office:プロジェクトマネジメントオフィス)は、複数

のプロジェクトを同時に管理する組織で、すべてのプロジェクトが円滑に運営されるための業務を担

うのが役割です。具体的にはプロジェクトのガバナンス(統制)を確立したり、プロジェクトマネジメン

トの標準やプロセスを定めたり、KPI※やパラメータを策定したり、有用なツールを提供したり、横断

的複数プロジェクト間のリソース調整を行ったりして、各プロジェクト活動を支援します。また、大規

模なプロジェクトの場合は、プロジェクト内にPMOを設置することがあります。この場合のPMOは

組織的にプロジェクトコーディネータの役割を担い、プロジェクトマネージャを支援します。

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プロジェクトとは

プロジェクトとプロジェクトの

立上げ

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プロジェクトにおける役割一覧2プロジェクトにおける役割を一覧にしてまとめると、次の表のようになります。実務的には同一人

物が複数の役割を担うことがよくあります。

役割名称 主な役割・特徴などスポンサー/チャンピオン/オーナー プロジェクト予算やハイレベルな要求の承認を行う

プロジェクトマネージャ チームマネジメント、スコープ管理、リスク管理、スケジュール管理などを統括する

ステークホルダー 関係者として提案や要求を提供するプロジェクトコーディネータ プロジェクトマネージャのサポート役プロジェクトスケジューラ スケジュール策定、タイムライン変更の伝達を担う

プロジェクトチーム専門家集団としてプロジェクトを遂行し、成果物を作る。チームは指示を出すリーダーと作業を進めるメンバーで構成されることが多い。

PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)

標準化、ガバナンスの確立、各種ツール提供、複数プロジェクト間のリソース調整など、プロジェクトの円滑な遂行のための支援活動を行う。

プロジェクトにおける役割

役割と責任の明確化がプロジェクト運営の要(かなめ)

プロジェクトチームが「人」で構成されることはいうまでもありませんが、各担当者が「当事者意識」

を持ってタスクを遂行できるかどうかがプロジェクト運営の要です。

一人のプロジェクトマネージャだけにすべての責任があるような運営では、現実的にはチームはう

まく回りません。メンバーの一人ひとりが「やらされ感」ではなく、「当事者意識」を持ち自分の仕

事に責任を持って作業を進められるように、実務では全員の役割と責任を明確化することが重要

です。本書のProject+で扱う役割がすべてではありません。

プロマネからのアドバイス ❹

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プロジェクトの母体組織1プロジェクトを実行させる組織を母体組織と呼びます。たとえば、保険会社の新商品開発プロジェクトの場合では、保険会社がプロジェクトの母体組織になります。プロジェクトは、母体組織の定常業

務とは完全に独立した業務になりますが、現実には母体組織からさまざまな影響を受けています。

定常業務とプロジェクト業務はどちらも企業活動においては重要であり、バランスが求められます。

同じ従業員によって組織が構成されるため、プロジェクトの組織構造についても定常業務を担う組

織とのバランスを考慮し、プロジェクトに専任させるか兼任とするかを判断する必要があります。

プロジェクトの組織構造2プロジェクトチームをどのように構成するかは、プロジェクトの内容によって異なります。たとえば、

保険会社の新商品開発プロジェクトにおいて、母体組織の商品企画を担当する部署や情報システ

ムを担当する部署からメンバーが選ばれ、プロジェクト組織を編成することがあります。プロジェク

ト組織は、プロジェクト期間中のみに存在する一時的組織です。主なプロジェクトの組織構造には、

機能型組織、プロジェクト型組織、マトリックス型組織があります。プロジェクトの円滑な運営のた

めには、次の点が実行される組織構造であることが重要です。

● 迅速な意思決定● 担当者への迅速かつ正確な指示● プロジェクト目標に向かって、まい進させる動機付け

どの組織構造のプロジェクトでも、プロジェクトマネージャはこれらの組織運営のポイントを踏まえ

てマネジメントすることが必要です。

● 機能型組織機能型組織は製造、販売といった専門の機能分野ごと(職能別)に編成された従来の部門の中からメンバーを集めてプロジェクトチームを編成する組織です。それぞれの機能分野の専門性が強く

求められるプロジェクトで採用されます。プロジェクトメンバーは従来の部門に在籍したまま、定常

業務との兼務となります。プロジェクトマネージャはプロジェクトメンバーの確保や人事評価といっ

た権限がないか、あっても部門の長の権限が優先されます。このため、専門分野のスキルを持つメ

ンバーの取り合いなどの利害対立が発生することがあります。なお、機能型組織ではプロジェクト

1-1-7 プロジェクトの組織構造の特徴

プロジェクトの母体組織や代表的なプロジェクトの組織構造の特性を理解し、採用すべき組織構造を選定するための長所と短所を整理しましょう。また、一般的な三階層の組織構造についても理解しておきましょう。

学習ポイント

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プロジェクトとは

プロジェクトとプロジェクトの

立上げ

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1-1

マネージャの専任者を置かず、部門の長が兼務することもあります。

取締役会

部門Y 部門Z部門X

社長

メンバー メンバー メンバー

メンバー

メンバーメンバー

メンバー

メンバー

メンバー プロジェクト

機能型組織

● プロジェクト型組織プロジェクト型組織は、母体組織の内外から専任メンバーを調達し、通常組織から独立させてプロジェクトの業務に専念させる組織構造です。プロジェクトが終了したら解散するという特徴があり

ます。プロジェクトマネージャは独立性と強い権限を有し、予算の使用や、プロジェクトメンバーの

確保や人事評価などの権限を持ちます。

プロジェクトマネージャの意思決定が速いという長所があると同時に、プロジェクトメンバーの専任

性という特徴を活かし、プロジェクトチーム全体で高いモチベーションを維持できます。一方、プロ

ジェクト型組織は有期性であるため、メンバーの育成や経験の蓄積による組織力の向上が難しい

という短所があります。

プロジェクトマネージャ 2

リーダー リーダー

メンバー

メンバー

メンバー

メンバー

メンバー

メンバー

プロジェクトマネージャ 1

リーダー リーダー

メンバー

メンバー

メンバー

プロジェクトA プロジェクトB

取締役会 社長

メンバー

メンバー

メンバー

プロジェクト型組織

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● マトリックス型組織プロジェクトメンバーが従来の部門に所属したまま参画する機能型組織と専任のプロジェクトマ

ネージャを置くプロジェクト型組織の長所をあわせ持つ組織構造をマトリックス型組織と呼びます。マトリックス型組織は、プロジェクトマネージャが持つ人事権などの権限が強い順に、強いマトリックス型、バランス・マトリックス型、弱いマトリックス型の3つに分類されます。

複数の部門からの混成メンバーでプロジェクトの組織が編成されるので、機能型組織と同様に複

合的な問題の解決をしやすくなります。ただ、各メンバーは定常業務と兼任であるため、プロジェク

トマネージャはメンバーの仕事量について、所属部門との調整が必要になります。マトリックス型組

織では、プロジェクトメンバーには所属部門からの指揮命令系統とプロジェクトマネージャからの指

揮命令系統の2つが存在し、所属部門の長とプロジェクトマネージャの両者へ報告が必要です。

部門 Y 部門 Z部門 X

プロジェクトマネージャ 1

プロジェクトマネージャ 2

メンバー

メンバー

メンバー

メンバー

メンバー

メンバー

メンバー

メンバー

メンバー

取締役会 社長

マトリックス型組織

● 組織構造の長所と短所機能型組織、プロジェクト型組織、マトリックス型組織にはそれぞれ長所と短所があります。プロ

ジェクトの特徴を考慮して、最適な組織構造を決定することが重要になります。次に、各組織構造

の特徴を表でまとめます。

機能型 弱いマトリックス型

バランス・マトリックス型

強いマトリックス型 プロジェクト型

プロジェクトマネージャの権限 弱orなし 弱 中 中or高 高

メンバーの従来の部門との関わり 兼任 兼任 兼任or専任 兼任or専任 専任

プロジェクトマネージャの人事権 弱orなし 弱 中 中or高 高or

すべてあり

プロジェクト予算管理

従来の部門の長

従来の部門の長 複合的 プロジェクト

マネージャプロジェクトマネージャ

各組織構造の特徴

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プロジェクトとは

プロジェクトとプロジェクトの

立上げ

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オフショアリング/ニアショアリングアウトソーシングの委託先が海外企業の場合はオフショアリング、国内地方企業の場合はニアショアリングという。

アウトソーシング自社で行う業務の一部について、他社のサービスを利用して外部に委託すること。

長所 短所

機能型・メンバーの高い専門性の発揮・従来の指揮命令系統は変わらない・プロジェクト終了後もメンバーは残る

・プロジェクトマネージャの意思決定が遅くなりがち・課題の対応優先度について従来の組織間で調整が必要

マトリックス型・メンバーの高い専門性の発揮・プロジェクトマネージャの意思決定が速い・プロジェクト終了後もメンバーは残る

・兼任メンバーの仕事量の調整が必要・指揮命令系統や人事評価が煩雑になる・課題の対応優先度について従来の組織間で調整が必要

プロジェクト型

・プロジェクトマネージャの意思決定が速い・専任のメンバーで構成される・課題の対応優先度をプロジェクト単独で判断可能

・機能型組織と比較して専門性が低い・プロジェクト終了と同時にチームは解散する

各組織構造の長所と短所

三階層の組織構造3プロジェクトに関与する母体組織は一つとは限りません。一般に、ITプロジェクトではプロジェクト

マネジメントに高い専門性を必要とするため、プロジェクトの大部分をアウトソーシング(外部委

託)することがよくあります。さらに、技術的な専門分野を持つ外部ベンダー企業の参画、予算の

関係から国内地方企業の参画(ニアショアリング※)や海外企業の参画(オフショアリング※)もあ

ります。

主にシステム開発業務を担う情報サービス企業においては、顧客からシステム開発業務の委託を

受け、協力会社とともにプロジェクトチームを編成し、それぞれ利用者、開発者、協力者の立場で

プロジェクトに関与します。これをプロジェクトに関与する三階層の組織構造と呼びます。

プロジェクトマネージャ

プロジェクトチームメンバー

プロジェクトチームマネージャ

プロジェクトチームメンバー

プロジェクトマネージャ

プロジェクトチームメンバー

顧客のプロジェクトチーム

プロジェクト実行組織としてのプロジェクトチーム

外部の協力会社のプロジェクトチーム

ベンダー企業がシステム開発を受託してプロジェクトを実行する二階層の組織構造

協力会社も含めた三階層の組織構造

本書で扱うプロジェクト遂行体制の典型

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本書で扱う典型的な ITプロジェクトは、顧客から「ある情報システム」を受注して開発活動をする

ベンダー企業のプロジェクトです。ベンダー企業は専任のプロジェクトチームメンバーで構成される

プロジェクト型組織を作りますが、一部の開発業務は協力会社に発注し、三階層の組織構造になり

ます。三階層の組織構造では、顧客、ベンダー企業、協力会社のそれぞれがプロジェクトチームを

編成します。

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答 え

確認問題

プロジェクトとは

プロジェクトとプロジェクトの

立上げ

1

①独自②反復③資源(リソース)④プロジェクトマネジメント⑤ポートフォリオマネジメント⑥プログラム⑦プロジェクト・ライフサイクル⑧適応型ライフサイクル⑨計画⑩ウォーターフォールモデル⑪反復アプローチ⑫デイリースタンドアップミーティング⑬バーンダウンチャート⑭スクラムレトロスペクティブ⑮プロジェクトスポンサー(スポンサー、プロジェクトチャンピオン、プロジェクトオーナー)⑯PMO⑰プロジェクト型組織

次の に当てはまる言葉を答えてください。

1 1. プロジェクトには、有期性、 ① 性、明確な目的があるという特性があります。

1 2. 定常業務には継続性と ② 性があります。

1 3. プロジェクトの実行に欠かせない要員やコンピューターなどの ③ も一般的な制約です。

1 4. ④ とは、プロジェクトの目標を予定どおりに達成できるように管理していくことです。

1 5. 企業のプロジェクトマネジメントにおいても、複数のプロジェクトの収益性を考慮し、利益の最大化

を図るマネジメントが注目され、プロジェクトの ⑤ と呼ばれています。

1 6. ⑥ は最終的な目標が共通する複数のプロジェクトを統合的に扱う上位概念になります。

1 7. プロジェクトの開始から終了までの経由する一連のフェーズの集まりを ⑦ といいます。

1 8. ⑧ は、非常に短いスパンでプロジェクト要件の変化に適応しながら実行していくプロジェ

クト・ライフサイクルです。

1 9. PMBOK®Guideでは立上げ、 ⑨ 、実行、終結、監視・コントロールの5つのプロジェクトマ

ネジメント・プロセス群が定義されています。

1 10. ⑩ とは、開発をいくつかの工程に分けて滝が流れるように、一方向に順次実行していく、

最も代表的な開発モデルです。

1 11. アジャイル開発の代表的な開発モデルのスクラムでは、1週間から1か月ぐらいのスプリントと呼ぶ

開発サイクル期間を設けて ⑪ で開発を行います。

1 12. ⑫ は、毎日立ったまま手短に行うミーティングで、メンバー全員が「昨日は何をしたか」、

「今日は何をする予定か」、「目標を達成するために、障害となっていることはないか」の3つの質

問に回答します。

1 13. ⑬ は、残作業を示す日次推移グラフです。

1 14. スプリントレビューが終わり、次のスプリント計画が始まるまでの間に、人・関係・プロセス・ツール

の観点から ⑭ (振り返り)を行います。

1 15. ⑮ は、プロジェクトに対するハイレベルの要求を決定し、予算の承認、スケジュールベース

ラインの承認を行う人物または組織です。

1 16. ⑯ はプロジェクトのガバナンスを確立したり、標準を定めたり、有用なツールを提供したり、

プロジェクト横断的なリソース調整を行ったりして各プロジェクト活動を支援します。

1 17. ⑰ は、母体組織の内外から専任メンバーを調達し、通常組織から独立させてプロジェクト

の業務に専念させる組織構造です。

1-1 プロジェクトとは

1-1

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プロジェクトの準備・立上げ

プロジェクトとプロジェクトの

立上げ

1章末問題

正解は「ビジネスケース」です。ビジネスケースとは、プロジェクト立上げを検討するための企画書で、プロジェクトとして投資するかどうか、経営者が判断する材料が記述されます。プロジェクト憲章は、プロジェクトに関する重要で根本的な取り決め、基本的な方針や施策を記述したドキュメントです。SOW(作業範囲記述書)は、プロジェクトの作業範囲を記述するもので、内容としてはビジネス・ニーズ、主要な成果物、スコープ、戦略などを含めます。NDA(秘密保持契約)は、業務で知り得た機密情報について、守秘義務を遵守し、万が一情報漏洩によって損失を与えた場合の賠償請求の取り決めを行う契約書です。

Ab

正解は「自律チーム」です。アジャイル開発では、日々の変化に柔軟に対応していくため、組織・チーム全体が自律して成長できることが必要です。この特徴は自律チームや自己組織化と呼ばれています。フェーズゲートは、各工程の終了基準を前もって明確に定義し、その基準に達しない場合は次の工程に進めないようにすることです。スプリント計画は、どのプロダクトバックログアイテムを開発するかを明確にするスプリントごとの計画です。デイリースタンドアップミーティングは、立ったまま手短に行う毎日のミーティングのことです。

Aⓐ

プロジェクトの投資効果について記述されている、プロジェクトの立上げを検討するための企画書は、次のうちどれですか。

a. プロジェクト憲章 b. ビジネスケース

c. SOW

d. NDA

Q2

日々の変化に柔軟に対応していくため、組織・チーム全体が自律して成長するというアジャイル開発の特徴を表す言葉は、次のうちどれですか。

a. 自律チーム b. フェーズゲート

c. スプリント計画 d. デイリースタンドアップミーティング

Q1

1-2

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