19
テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を 確保する仕組みの充実) 平成30年6月7日第3回 医薬品医療機器制度部会 資料1

テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

テーマ②に関する現状について(医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

確保する仕組みの充実)

平成30年6月7日第3回医薬品医療機器制度部会

資料1

Page 2: テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

<医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を確保する仕組みの充実>

① ガバナンスを強化するための「三役」の要件・責任明確化② ガバナンスを強化するための行政措置の見直し③ 適正流通確保に向けた卸売販売業者の規制の見直し

2

1.テーマ②の現状と課題について

2.参考資料

Page 3: テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

①品質保証責任者、安全管理責任者を監督②品質保証責任者、安全管理責任者の報告に基づき措置を決定

総括製造販売責任者(薬機法第17条第1項)(品質管理及び製造販売後安全管理の総括的な責任を負う者)

相互に連携指示

安全管理責任者(GVP省令第4条第2項)

(製造販売後安全管理業務について責任を有する者)

安全管理情報の収集・検討• 医療関係者からの情報• 学会報告、文献報告• 行政・海外当局からの情報

安全性確保措置の立案・実施• 廃棄、回収、販売の停止• 添付文書の改訂• 厚生労働大臣への報告

自己点検の実施

教育訓練の実施

業務の記録及び保管

品質保証責任者(GQP省令第4条第2項)(品質管理業務について

責任を有する者)市場への出荷の管理

製造業者等との取決め

適正な製造管理及び品質管理の確保(製造所監査)

品質等に関する情報及び品質不良等の処理

措置案の報告

③決定した措置の実施を品質保証責任者等に指示④必要があると認める場合、製造販売業者に対し意見を述べる

指示 措置案の報告

医薬品の場合の体制

3

① ガバナンスを強化するための「三役」の要件・責任明確化製造販売業者の「三役」の現状

○ 平成14年、医薬品等の品質管理、安全管理を適正に行うために、製造販売業者に責任者として、「総括製造販売責任者」、「品質保証責任者」及び「安全管理責任者」(いわゆる「三役」)の設置が義務づけられた。

現状

Page 4: テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

製薬企業に対して、製造販売後安全管理業務に関する社内体制、未報告の副作用情報の有無について自主点検を依頼※平成27年2月24日付け安全対策課長通知(「製造販売後安全管理業務に係る社内体制等に関する自主点検について(依頼)」)

報告義務の対象となる副作用を把握していたにもかかわらず、定められた期限内に報告されていなかった。

(1)副作用報告の報告遅延等

承認書上の製造工程と異なる製造方法で製造が行われていた。(2)承認書との齟齬

製薬企業に対して、承認書と製造実態の整合性についての点検を依頼※平成28年1月19日付け審査管理課長通知(「医薬品の製造販売承認書と製造実態の整合性に係る点検の実施について」)

企業の自主点検等により行政が指導は行っているが、法令遵守の確保のためには、三役制度の運用に関し、問題点の洗い出しや改善方策の検討が必要。

平成29年6月26日、三役留意事項通知を発出(※平成30年1月17日、Q&Aを発出) 4

① ガバナンスを強化するための「三役」の要件・責任明確化製販におけるガバナンス(三役留意事項通知の発出とその背景)

○ 三役制度により体制が強化されたにもかかわらず、依然として、法令遵守に問題のある事例が散見されており、三役がその機能を十分に果たしていないことが明らかとなった。

○ このような状況を踏まえ、平成29年6月、「医薬品の製造販売業者における三役の適切な業務実施について」(医薬・生活衛生局長通知)を発出し、三役による管理の改善を図った。

現状

Page 5: テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

1.総括製造販売責任者に関する事項総責の職位等 ⇒ 適切な職務上の位置付け(品責及び安責と同等以上)総責の経営会議等への参加 ⇒ 原則、経営会議等に直接出席(代理出席も可)総責の要件 ⇒ 3年の従事経験(第一種製造販売業)、総合的な理解力及び適正な判断力三役会議等の開催 ⇒ 三役の連携のための定期的な開催

2.三役体制に関する事項三役の役割等の社内の理解 ⇒ 三役の役割や権限の明確化及び社内への周知人的資源の確保 ⇒ 将来的な三役(特に総責)の候補となりうる人材の育成

3.品質管理業務に関する事項製造業者の職員個人の意図的な不正行為を想定した対応

⇒ 定期的な人事異動、内部通報制度の整備等

4.安全確保業務等に関する事項安全管理情報の収集の範囲等

⇒ ①安全管理情報を収集しうる関係者からの報告、②効果的な教育訓練営業所等の点検 ⇒ 安全管理統括部門等の営業所等への直接訪問等 5

① ガバナンスを強化するための「三役」の要件・責任明確化三役留意事項通知の概要

○ 三役留意事項通知では、三役の業務実施に係る今後のあり方を可能な範囲で具体的に示した。○ 今後も、三役留意事項通知の効果を確認するとともに、引き続き、三役の機能を強化するための

対策を検討する必要がある。

現状

Page 6: テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

6

① ガバナンスを強化するための「三役」の要件・責任明確化「三役」の法令・通知における規定/検討が必要な事項について

三役 法律 省令 三役留意事項通知 備考総括製造販売責任者

薬剤師※

(薬機法第17条)ー ・ 3年以上の従事経験

・ 総合的な理解力及び適正な判断力

変更命令の対象(薬機法第73条)

品質保証責任者

- ・ 3年以上の従事経験(GQP省令第4条第3項)

・ 適正な遂行能力(GQP省令第4条第3項)

ー ー

安全管理責任者

- ・ 3年以上の従事経験(GVP省令第4条第2項)

・ 適正な遂行能力(GVP省令第4条第2項)

ー ー

<第一種医薬品製造販売業の場合>

検討が必要な事項等○ 総括製造販売責任者について、従事経験などの資格要件を法令上規定する必要はないか。

○ 品質保証責任者及び安全管理責任者について、現状GQP省令/GVP省令に規定されているが、これを法律上に規定し、総括製造販売責任者との関係性を追記するとともに、それぞれの責務を明確化する必要はないか。

※例外として、刻み生薬等の製造販売業においては、生薬の製造等に関する従事経験を有する者等が、酸素等の医療用ガス類の製造販売業においては、薬学又は化学に関する専門知識を有する者等が、薬剤師に代えて総括製造販売責任者となることが出来る。

Page 7: テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

<医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を確保する仕組みの充実>

① ガバナンスを強化するための「三役」の要件・責任明確化② ガバナンスを強化するための行政措置の見直し③ 適正流通確保に向けた卸売販売業者の規制の見直し

7

1.テーマ②の現状と課題について

2.参考資料

Page 8: テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

<行政行為>①命令行為(私人に対し作為・不作為を命ずるもの)業務改善命令、業務停止命令、解任命令、廃棄命

令 等②形成行為(私人に対し法的地位を設定するもの)免許、免許の取消 等

③確定行為(法律関係を確定させる行為)租税の更正処分、年金受給権の裁定 等

<行政上の義務履行確保>①行政上の強制執行代執行、直接強制、執行罰、行政上の強制徴収

②その他の義務履行確保の制度給付拒否、公表、違反金(加算税・課徴金)

③行政罰行政上の秩序罰(過料)

資料:「行政法Ⅰ[第5版]行政法総論」(塩野宏)を参考に厚労省で作成

行政措置の主な類型・報告命令(69条)・緊急命令(69条の3)・廃棄命令(70条)・回収命令(70条)・検査命令(71条)・改善命令(72条、72条の4等)・中止命令(72条の5)・管理者等変更命令(73条)・業務停止命令(75条、75条の2)・承認取消(74条の2)・許可・登録取消(75条、75条の2)・外国製造医薬品等の製造販売の承認の取消し(75

条の2の2)・医薬品等外国製造業者及び再生医療等製品外国

製造業者の認定の取消し(75条の4)・医療機器等外国製造業者の登録の取消し(75条の5)・過料(91条)

薬機法における対応状況

② ガバナンスを強化するための行政措置の見直し行政措置の主な類型と薬機法における対応状況

8

Page 9: テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

② ガバナンスを強化するための行政措置の見直しガバナンスの観点からみた不正事例の類型

○ 今般発生している薬機法違反の事例については、以下の類型のように、許可業者の役員による適切な監視・監督や、ガバナンス体制の構築がなされていなかったこと等に問題があった。

(1)違法状態にあることを役員として認識しながら、その改善を怠り、漫然と違法行為を継続する類型(2)適切な業務運営体制や管理・監査体制が構築されていないことにより、違法行為を発見又は改善でき

ない類型

現状

収集された副作用情報を管理するシステムや、副作用報告を適時に行う社内体制が構築されていなかった(教育訓練の不足を含む。)ために、副作用情報が報告されることなく放置されることが常態化していた事例販売情報提供に用いる資材を社内で適切にチェックする体制が構築されていなかったために、担当者が独断で不適切な広告資材を作成し、販売情報提供に用いていた事例総括製造販売責任者にその責務を果たせるような権限が与えられていないなど、適切な組織体制が構築されていなかったほか、実効的な内部監査、自己点検の実施等の品質保証に関する社内体制が構築されていなかったために、承認書と異なる製造方法での製造が継続された事例

承認書と異なる製造方法で医薬品の製造が行われていることを役員が認識しながら、これを改善することなく、長期間にわたりそのような製造を継続していた事例一部変更承認が必要であることを役員が認識しながら、改造した医療機器を製造販売していた事例不適切な広告資材であることを役員が認識しながら、漫然と当該資材を用いた広告を行った事例

<具体的な事例>類型(1)

類型(2)

9

Page 10: テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

② ガバナンスを強化するための行政措置の見直し許可業者の役員と管理者・責任者に関する規定の現状

○ 薬機法上、各許可業者は、現場における業務を管理する管理者・責任者を置くこととされており、これらの管理者・責任者に法令等の違反があった場合や、管理者・責任者として不適当と認められる場合には、厚生労働大臣又は都道府県知事は、当該管理者・責任者の変更を命ずることができる。

○ また、許可業者については、法令等の違反があった場合は、業務改善命令・業務停止のほか、業許可の取消しといった処分の対象となるが、役員に対して直接その責任を問うことができる規定は存在しない。

現状

意見申述義務

役員監視・監督

品質管理製造販売後安全管理

総括製造販売責任者

意見尊重義務

- 品質管理等業務に関する遵守事項

- 製造販売業者の業務に関する遵守事項

製造販売業者 - 業務改善命令- 業務停止命令- 許可取消

管理者・責任者の変更命令

直接責任を問える処分規定なし

意見申述義務

役員監視・監督

製造所

製造管理者

意見尊重義務

- 製造業務に関する注意義務

- 製造業者の業務に関する遵守事項

製造業者

10

Page 11: テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

② ガバナンスを強化するための行政措置の見直し欧米の薬事関連法令における役員に関する規定

○ 日本、英国においては、薬事関連法令に違反した役員に対し、刑事裁判手続を経た上での懲役・罰金を課すことができる規定が存在するに留まり、役員個人に対する行政上の責任追及に関する規定は定められていない。

○ 他方、米国においては、FDC法(Federal Food Drug, and Cosmetic Act)において、同法に違反した役員に対し、FDAが行政処分として、民事制裁金(Civil Money Penalty)を課すことができるものとされている。

参考:欧米の薬事関連法令における役員個人の責任追求に関する規定の比較

日本 米国 英国

役員個人に対する行政処分 × 民事制裁金

(Civil Money Penalty) ×

役員個人に対する刑事罰

懲役・罰金(両罰規定) 懲役・罰金 懲役・罰金

このほか、米国においては、役員等の個人が、医薬品の開発・承認等に関して違法行為を行い、有罪判決を受けた場合に、当該役員等の個人に対し、医薬品の承認を受けた者又は承認申請者に対する一切の業務の提供を禁止する処分(Debarment)も存在する。

(注1)

(注1,2)

(注2)

民事制裁金の金額の上限は、FDCAの違反類型ごとに定められており、個人に対する民事制裁金の金額の上限は、279米ドル~11,569,531米ドル(2017年2月3日施行の米連邦規則による調整後の金額)である。

なお、薬機法においては、禁錮以上の刑に処せられ執行を終える等した者や、薬事に関する法令等に違反した者は、一定期間、業許可に関する欠格事由に該当し、欠格事由に該当する申請者(業務を行う役員を含む。)に対しては、業許可を与えないことができるほか、許可業者(業務を行う役員を含む。)が欠格事由に該当する場合は、その許可を取り消すことができる。 11

Page 12: テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

② ガバナンスを強化するための行政措置の見直し許可業者が適切なガバナンス機能を果たすための役員の責務等

検討が必要な事項等○ 医薬品等を取扱う許可業者の役員には、人の生命・身体に直接影響を及ぼす製品を取扱う者の責

任者として、従業員等に対する監視・監督や、適切なガバナンス体制の構築を行うことが求められる。

○ もっとも、現場における業務を管理する管理者・責任者がその責務を果たすことを担保するための措置としては、管理者・責任者に対する変更命令が存在するのに対し、管理者・責任者からの意見申述を受け、適切な対応を行うべき立場にある役員の責任に関する規定は存在しない。

○ このような状況を踏まえ、許可業者が薬機法を遵守して業務を運営するために、役員が果たすべき責務や、そのような責務を果たすことを促すための措置について、どう考えるか。 等

12

Page 13: テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

13

② ガバナンスを強化するための行政措置の見直し広告規制の現状①

「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」医薬品等については、薬機法68条の2に基づき、添付文書など適正使用のために必要となる情

報の提供が適切に実施される必要があり、一方で、不適切な広告により、医薬品等の適正使用に問題が生じないよう、以下、3点について禁止・制限が設けられている。

虚偽・誇大広告の禁止(薬機法第66条)・ 医薬品等の名称、製造方法、効能・効果、性能に関して、虚偽・誇大な記事の広告・記述・流

布を禁止・ 医薬品等の効能・効果、性能に関して、医師等が保証したと誤解されるおそれのある記事の広

告・記述・流布を禁止・ 医薬品等に関して堕胎暗示、わいせつにわたる文書・図画の禁止

特定疾病用医薬品広告の制限(薬機法第67条)・ 医師等の指導下で使用されるべき、がん等の特定疾病用の医薬品に関して、医薬関係者以外

の一般人を対象とする広告を制限

未承認医薬品の広告の禁止(薬機法第68条)・ 未承認医薬品等の名称、製造方法、効能・効果、性能に関する広告の禁止

Page 14: テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

14

② ガバナンスを強化するための行政措置の見直し広告規制の現状②

【広告の該当性】以下の3要件を満たすものをいう。媒体は問わない。(口頭の説明も含む。)

・ 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること・ 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること・ 一般人が認知できる状態であること

【広告の規制基準】・ 医薬品等の品位の保持・ 効能効果等、用法用量等について、承認範囲を超える表現、事実誤認のおそれのある表現の禁止・ 効能効果等又は安全性について保証する表現、最大級の表現等の禁止・ 即効性・持続性等について、医学薬学上認められる範囲を超える表現の禁止・ 本来の効能効果等と認められない又は誤認のおそれのある表現の禁止・ 医薬品等の過量消費又は乱用助長を促す表現の禁止・ 医薬関係者以外の一般人向けの医療用医薬品等の広告の禁止・ 他社の製品のひぼう広告の制限・ 医薬関係者等の推せん表現の禁止・ 不快、不安等の感じを与える表現の制限 等

※「薬事法における医薬品等の広告の該当性」(平成10年9月29日医薬監第148号厚生省医薬安全局監視指導課長通知)

※「医薬品等適正広告基準」(平成29年9月29日薬発0929第4号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)

Page 15: テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

①虚偽・誇大広告に関する事例事例1

高血圧症治療薬の効果に係る臨床研究においてデータ改ざんが行われ、これを基にした学術論文や販売促進用資材が問題となった。

→ 平成26年1月、薬機法第66条第1項違反の疑いにより刑事告発し、東京高裁で係争中。

事例2高血圧症治療薬の効果に係る臨床研究の結果を用いた販売促進用資材等が薬機法第66

条の『誇大広告』に当たるとして、平成27年6月に行政処分(業務改善命令※)。(※業務改善命令の概要)

・ 広告等の審査体制について、外部の有識者等も含めたものに整備し、新規だけではなく過去の資材も審査すること・ 再発防止のため、法規定や業界自主基準を改めて周知徹底し、適切な教育訓練を充実させること。

②無許可医薬品の広告及び販売に関する事例医薬品的効能効果を標榜して未承認薬の広告及び販売を行い、警察に検挙されるケースが多

く確認されている。15

② ガバナンスを強化するための行政措置の見直し広告に関する処分等の事例

○ 売り上げの向上による収益の確保を目的として行われる違法行為としては、広告違反が最たるものであり、国において過去、刑事告発及び行政処分等が行われたものとして以下の事例が挙げられる。

Page 16: テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

16

◆ ディオバンの売上のすべてが不正とは言わないが、不正なデータによってこれを使用するということに至ったという経過もこの中にはかなり含まれていることは間違いないのだから、何らか社会的に還元させることが必要ではないか。(平成25年11月19日 参議院厚生労働委員会)

◆ これだけ日本の保険医療の世界に悪影響を与えて、それだけ捏造した論文でもうけている。それを何らかの形で返してもらうなり、何らかの形で還元させるなり、そのぐらいのことはしてもいいと思う。これは結局、患者さんから吸い上げているわけなのだから、是非よろしくお願いしたい。(平成26年10月15日 衆議院厚生労働委員会)

◆ 嘘をついて、社会的に制裁も受けたとはいえ、結局目的は全部達成されており、売上げ全部持っていっている。あれだけの大きな事件が起こって、結果論として彼らは逃げ得になったということにつき、何らか考えなければならない。 (平成29年4月24日 参議院決算委員会)

【両事例に対する国会における主な指摘事項】

現状

② ガバナンスを強化するための行政措置の見直し薬機法の現状及び不正事例に対する指摘事項について

○ 薬機法においては、虚偽・誇大広告(66条違反)に違反した場合の罰金の水準は最高でも200万円(個人、法人共に)以下の罰金となっている。(薬機法全体の最高額:個人300万円※、法人1億円)※指定薬物に関する部分は除く

○ 違法行為によって不当な利益を得た企業に対しては、その収益を取り上げるべきとの指摘が以下のとおりなされている。

Page 17: テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

② ガバナンスを強化するための行政措置の見直し欧米における違法行為による経済的利得に対する是正措置

○ 欧米においては、薬事関連法規それ自体に経済的利得に対する是正措置が規定されているわけではないが、以下のとおり、薬事関連法規の違反事例に対しても、違法行為による経済的利得に対する是正が図られている。

<米国>刑事罰としての罰金の算定要素に違法行為による経済的利得の接収を含むことが可能である。

<EU>行政罰としての制裁金の算定要素に違法行為による経済的利得の接収を含むことが可能である。

参考:欧米における違法行為による経済的利得に対する是正措置について

米国 EU

違法行為による経済的利得に対する是正 罰金 制裁金

17

Page 18: テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

18

薬機法 医療法 健康増進法 景品表示法 金融商品取引法 特定商取引法

目 的 医薬品等の適正使用の確保患者等の医療機関利用者保護

国民保健の向上 不当な顧客誘引の防止証券市場の公正性・透明性の確保

消費者への適正な情報提供等

違反主体 何人も 何人も 何人も商品・役務を供給する事業者

金融商品取引事業者商品・役務を供給する事業者統括者、勧誘者又は一般連鎖販売業者

規制対象

①医薬品等広告(ウェブサイト等を含む)※顧客誘引性、商品の特定性、認知性の要件を有するもの②記述、流布(論文、雑誌、書籍等)※虚偽誇大違反のみ

医療広告(ウェブサイト等を含む)※患者誘引性、医師・医療機関の特定性の要件を有するもの

健康食品として販売に供する物に関する広告その他表示

自己の供給する商品または役務の取引に関する広告その他表示

金融商品広告その他類似行為通信販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供等に関する広告

対象となる表示事項

・使用、購入を誘引するための効能効果、安全性等【①及び②】・薬事効能表示の有無【①のみ】

患者に、病院や診療所に来て受診することを促すための各種訴求事項

健康保持増進効果等内容または取引条件その他これらの取引に関する事項

利益の見込みに関する事項、契約内容に関する事項

商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件

違反要件

虚偽誇大広告【①及び②】承認前(未承認)医薬品広告【①のみ】一般向け広告(法律:癌治療薬のみ、通知:医療用医薬品全て)【①のみ】公序良俗に反する広告【①及び②】

虚偽誇大広告比較優良広告公序良俗に反する広告体験談の広告治療等の前後写真等の広告決められた項目以外の広告(ウェブサイト等は除く)

著しく事実に相違する表示著しく人を誤認させる表示

優良誤認表示※「品質、規格等」について、実物や競争事業者に係るものよりも著しく優良であると示すこと有利誤認表示※「価格等」について、実物や競争事業者に係るものよりも著しく優良であると示すこと

誇大広告著しく人を誤認させる表示

優良誤認表示※「品質、規格等」について、実物や競争事業者に係るものよりも著しく優良であると示すこと有利誤認表示※「価格等」について、実物や競争事業者に係るものよりも著しく優良であると示すこと

不実証広告規制

なし なし なし あり なし あり

表示すべき事項

なし なし なし なし あり あり

措 置中止命令【承認前(未承認)医薬品広告のみ】、改善命令

中止命令、是正命令勧告命令

措置命令課徴金納付命令

改善命令課徴金納付命令裁判所の禁止又は停止命令

是正指示業務停止命令

○各法律における広告規制の比較表

② ガバナンスを強化するための行政措置の見直し他法令における広告規制との比較

Page 19: テーマ②に関する現状について - 一般社団法人 日本 …...2018/08/04  · テーマ②に関する現状について (医薬品・医療機器等の適切な製造・流通・販売を

19

検討が必要な事項等○ 薬機法の違反事例の中には、経済的利得を主たる目的と考えられるものがあり、これらの違反に対して

は、当該違法行為によって得られた経済的利得を徴収するべきとの指摘がなされている。

○ 欧米においては、違法行為によって得られた経済的利得を徴収することができる罰則、行政処分が存在しており、当該規定が薬事関連法規の違反に対しても適用されている。

○ このような状況を踏まえ、薬機法における経済的利得の確保が目的と考えられる違法行為を抑止するための措置について、どう考えるか。

○ 例示で示した広告違反以外にも、違法な経済的利得に対する対応が求められるようなケースをどうするか。 等

② ガバナンスを強化するための行政措置の見直し薬機法に違反する行為による経済的利得への対応等に関する課題