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ガイドラインと感染管理活動 201311217回感染症リスクマネジメント作戦講座 亀田総合病院 地域感染症疫学・予防センター 吉田 眞紀子 1

ガイドラインと感染管理活動ガイドラインと感染管理活動 2013年11月21日 第7回感染症リスクマネジメント作戦講座 亀田総合病院 地域感染症疫学・予防センター本日のゴール

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ガイドラインと感染管理活動

2013年11月21日 第7回感染症リスクマネジメント作戦講座

亀田総合病院

地域感染症疫学・予防センター 吉田 眞紀子

1

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本日のゴール

• 感染対策ガイドラインの使い方がわかる

• ガイドラインを現場で実践できる

• リスクアセスメントに基づいた感染対策ができる

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本日のメニュー

I. そもそも、ガイドラインとは

II. ガイドラインのエビデンス

III. 感染対策ガイドライン in the world

IV. ガイドラインから院内マニュアルへのブリッジング

V. ガイドラインの実践 空気予防策

VI. リスクアセスメントに基づく感染対策

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そもそも、ガイドラインとは? • ガイドラインは「標準」である

• 国際的に標準的な方法とされている根拠に基づいたEBM の手順に則って作成する。

–根拠を明示しないでコンセンサスに基づく方法は、できる限り採用しない

– しかし、高いレベルのエビデンスだけで構築することは不可能

–その分野の専門家のコンセンサスもふくまれる

• 作成の目的を明確にする

• エビデンスレベルの分類、ガイドラインの質の評価を行う

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ガイドラインは「使えない」?!

• 丸暗記したり、そのまま自施設に導入するものではない

• 考え方を理解し、自施設のマニュアルを作成する

• 対策に迷ったときは、ガイドラインに戻る

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まずは、エビデンスを押さえる

• Evidence based medicine (EBM)

• 経験や直感に頼らず、科学的根拠に基づいて行う

エビデンスのレベル

Ⅰ システマティック・レビュー/RCTメタアナリシス 複数のランダム化比較試験

Ⅱ ランダム化比較試験

Ⅲ 非ランダム化比較試験

Ⅳ 分析疫学(コホート研究・症例対照研究)

Ⅴ 症例報告、ケースシリーズ

Ⅵ 患者データに基づかない専門委員会や専門家の意見

診療ガイドライン作成の手引き2007 http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/glgl/glgl.pdf 6

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ガイドラインは万能?No! • カテゴリーⅠA

– 実施が強く推奨され、十分に計画された実験的または疫学的研究による強力な裏づけがある。

• カテゴリーⅠB – 実施が強く推奨される。強力な根拠と示唆的な証拠に基づいているか、または当該分野の専門家によって有効と見なされたもの。

• カテゴリーⅡ – 多くの病院での実施が提案される。示唆的な臨床的研究、疫学的研究、強力な理論的根拠がある。

• 勧告なし(未解決問題) – 有効性に関する十分な証拠またはコンセンサスが得られていない方法。

Guideline methodology, CDC http://www.cdc.gov/hicpac/pdf/guidelines/2009-10-29HICPAC_GuidelineMethodsFINAL.pdf 7

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ガイドラインとの正しいつきあい方

• ガイドラインとマニュアルの違いを理解する

ガイドライン マニュアル

作成・編集 国、自治体、学会 施設単位

適応範囲 広く普及 施設単位

特徴 総論・指針 手引き書、作業手順 作業レベルまで言及

根拠 公表論文、エビデンスレベルを示す

ガイドラインや指針

目標 「院内感染を減らす」

感染対策の徹底 業務の効率化・標準化 8

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本日のメニュー

I. そもそも、ガイドラインとは

II. ガイドラインのエビデンス

III. 感染対策ガイドライン in the world

IV. ガイドラインから院内マニュアルへのブリッジング

V. ガイドラインの実践 空気予防策

VI. リスクアセスメントに基づく感染対策

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ガイドラインのエビデンスをのぞく

「血管内留置カテーテル関連感染防止ガイドライン、2011、CDC」

1. 末梢カテーテルの交換

2. 皮膚の前処置

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血管内留置カテーテル関連感染防止ガイドライン、2011、CDC

1.末梢カテーテルの交換

• 成人において感染及び静脈炎のリスクを低下させるために72~96 時間間隔より頻回に末梢カテーテルを交換する必要はない カテゴリーIB

2002年のガイドラインでは、「少なくとも72〜96 時間毎に交換すること」とされていた

• 成人において症状がある場合にのみ末梢カテーテルを交換することに関するエビデンスはなく勧告はできない未解決問題

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エビデンス:コクランレビュー

• 72~96時間毎にカテーテルを交換する意義を見つけ出すことはできなかった

• 臨床上必要なときにのみ交換とポリシーを変更することにより、利益面が向上し、患者にとってもルート交換による痛みから開放される。

Clinically-indicated replacement versus routine replacement of peripheral venous catheters, Joan Webster, et al., 2010, CD007798. The Cochrane Library

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血管内留置カテーテル関連感染防止ガイドライン、2011、CDC

2.皮膚の前処置

• 中心静脈カテーテル挿入前とドレッシング交換時に>0.5%クロルヘキシジンアルコール製剤で皮膚を前処置する。 (IA)

以前は「2%クロルヘキシジンが望ましいが、

ヨードチンキやアルコールの代用も差し支えない」(1A)だった

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Chlorhexidine compared with povidone-iodine solution for vascular catheter-site care: a meta-analysis.

14 Chaiyakunapruk N, Veenstra DL, Lipsky BA, Saint S. Chlorhexidine compared with povidone-iodine solution for vascular catheter-site care: a meta-analysis. Ann Intern Med 2002; 136:792–801.

2% CHG

0.5% CHG

0.5% CHG

1% CHG

CHG:クロルヘキシジン グルコン酸塩

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本日のメニュー

I. そもそも、ガイドラインとは

II. ガイドラインのエビデンス

III. 感染対策ガイドライン in the world

IV. ガイドラインから院内マニュアルへのブリッジング

V. ガイドラインの実践 空気予防策

VI. リスクアセスメントに基づく感染対策

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感染管理に関するガイドライン in the world

• WHOガイドライン:公衆衛生上問題となるテーマに関するガイドライン

• CDCガイドライン:米国疾患予防管理センター(CDC)が作成。多くの最新医学論文を根拠とした勧告

• DHガイドライン:英国保健省作成

• HISガイドライン:英国院内感染学会作成

• 医療機関等における院内感染対策について:厚生労働省通知

• 病院感染対策ガイドライン:国公立大学付属病院感染対策協議会作成(2012年改訂)

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医療ケアにおける手指衛生のWHOガイドライン(2009)

• 医療における手指衛生のエビデンスの紹介と明確な勧告

• 手指衛生に関連する科学的根拠

• 手指衛生の方法と結果の評価方法

• 手指衛生、スキンケア、手袋の使用についての勧告

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医療関連感染対策ガイドライン 米国CDC

• 手指衛生のためのガイドライン 2002

• 環境感染管理のためのガイドライン 2003

• 院内肺炎防止ガイドライン 2004

• 多剤耐性微生物の管理 2006

• 隔離予防策のためのガイドライン 2007

• 医療施設における消毒と滅菌のガイドライン 2008

• 尿路感染防止ガイドライン 2009

• ノロウイルスガイドライン 2011

• 血管内カテーテル感染防止ガイドライン 2011

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血管内カテーテル感染防止ガイドライン2011

• 中心静脈カテーテルや末梢動脈カテーテル挿入前およびドレッシング交換時の皮膚消毒にクロルヘキシジン濃度が0.5%を超えるアルコール製剤を使用する 1A

• カテーテルの挿入や管理を行う医療従事者の教育や訓練 1A

• 中心静脈カテーテル挿入中に実施するマキシマルバリアプリコーション 1B

• 感染予防の手法として中心静脈カテーテルの定期的な交換を避ける 1B

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医療施設における消毒と滅菌のガイドライン 2008、CDC

• 器具の使用用途及びそれらが関与する感染リスクの程度によって器具や物品をクリティカル器具・セミクリティカル器具・ノンクリティカル器具に分類し、消毒・滅菌方法を選択することを勧告

• 内視鏡について洗浄・消毒・リンス・乾燥・保管の具体的な勧告

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病院感染対策ガイドライン:国公立大学付属病院感染対策協議会作成

(2012年改訂)、日本

• 標準予防策および経路別予防策

• デバイス関連感染対策

• プリオン対策

• ワクチンガイドライン

• 歯科における感染対策ガイドライン

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病院感染対策ガイドライン 改訂版 じほう 3570円

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「医療施設における院内感染(病院感染)の防止について」厚生労働省医政局指導課

2011.6.17

• 院内に感染制御チームを設けること

• 感染制御チームは日常からラウンドなどを行ってチームで活動を行うこと

• 地域ネットワークを活用すること

• アウトブレイクには早期に対応すること

• 他に、多剤耐性グラム陰性菌感染制御のためのポジションペーパーなど、学会が作成するものがある

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Page 23: ガイドラインと感染管理活動ガイドラインと感染管理活動 2013年11月21日 第7回感染症リスクマネジメント作戦講座 亀田総合病院 地域感染症疫学・予防センター本日のゴール

日本の法律も遵守しよう

• 医療施設における院内感染の防止について

• 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律

• 食品衛生法

• 薬事法

• 廃棄物の処理及び清祥に関する法律

• 労働安全衛生規則

• 学校保健安全法

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本日のメニュー

I. そもそも、ガイドラインとは

II. ガイドラインのエビデンス

III. 感染対策ガイドライン in the world

IV. ガイドラインから院内マニュアルへのブリッジング

V. ガイドラインの実践 空気予防策

VI. リスクアセスメントに基づく感染対策

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隔離予防策のためのガイドライン 2007、CDC

• 医療従事者および患者の安全の確保

• 標準予防策を基本に、接触・飛沫・空気予防策を追加

• 病院感染(hospital infection)から医療関連感染 (HAI; healthcare associated infection)へ

–在宅・外来・長期療養施設

• 標準予防策に咳エチケット・安全な注射手技・脊椎穿刺の項を追加

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標準予防策 Standard precaution

• ユニバーサルプリコーション(1991,OSHA)に始まった考え方

– ユニバーサルプリコーション:血液由来の病原体が医療従事者に伝播する危険性を減らすためにデザインされた、血液と体液防御策を普遍的(全ての患者)に実施する予防策

• 全ての患者に適応される

• 汗を除く全ての血液、体液、分泌物、排泄物、傷のある皮膚、粘膜は伝播しうる病原体を含んでいると考える

• 手指衛生、医療行為により予測される曝露を想定して、手袋、ガウン、マスク、ゴーグル、フェイスシールドを使用する

• 安全な注射手技・呼吸器衛生・咳エチケットを含む 26

Page 27: ガイドラインと感染管理活動ガイドラインと感染管理活動 2013年11月21日 第7回感染症リスクマネジメント作戦講座 亀田総合病院 地域感染症疫学・予防センター本日のゴール

標準予防策と主な適応感染症

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標準予防策

空気 予防策

接触 予防策

飛沫 予防策

経路別予防策

+咳エチケット

+安全な注射手技

+腰椎穿刺対策

結核・麻疹・水痘 インフルエンザ・風疹 ・マイコプラズマ

MRSA・ノロウイルス・疥癬

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ガイドラインからマニュアルへ 予防策 伝播経路 病原体 PPE 環境

標準 予防策

必要時

フェイスシールド・ガウン

手指衛生

接触 予防策

医療者の手、ケア器具

MRSA、ノロウイルス、

クロストリジウム ディフィシル、疥癬

ガウン、手袋 個室対応、コホート対応

飛沫 予防策

飛沫の吸入 インフルエンザ、百日咳、マイコプラズマ、髄膜炎菌

サージカルマスク

コホート対応

(空気の制御は不要)

空気 予防策

飛沫核の吸入

結核菌、麻疹ウイルス、水痘ウイルス

N95マスク 陰圧部屋対応

使用期間中は陰圧チェック

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本日のメニュー

I. そもそも、ガイドラインとは

II. ガイドラインのエビデンス

III. 感染対策ガイドライン in the world

IV. ガイドラインから院内マニュアルへのブリッジング

V. ガイドラインの実践 空気予防策

VI. リスクアセスメントに基づく感染対策

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医療環境における結核菌の伝播予防のためのガイドライン、2005、CDC

空気感染予防策(airborne infection precautions)

• 空気中に浮遊して長距離でも感染性を維持する病原体の伝播

• 医療者はN95マスクを着用

• フィットテストで十分にフィットするマスクを選ぶ

• 1年に1回の教育

• 使用前は毎回シールチェック

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医療環境における結核菌の伝播予防のためのガイドライン、2005、CDC

空気感染隔離室(airborne infection isolation room)

• 室内は陰圧(スモークテスト)

• 空気は病室から直接建物外部へ排気、あるいはHEPAフィルタを通じて再循環

• 症状がある、あるいは治療が完了していない患者に対して使用する

スモークテストの様子 31

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N95マスク フィットテストはなぜ行う?

• 目的:どの呼吸器防護具が使用者に十分にフィットするか使用者の知識を確実なものにするために行う

• 頻度:入職時、配属転換時、年1回

①安全のため:医療従事者自身を守り、院内感染を防ぐ

②トレーニングのため:正しい着用方法を身につける

③自分に合ったN95マスクを確認する

④使用毎に、シールチェックを行う

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N95マスク フィットテストの種類

• 定性的フィットテスト

– フードをかぶり、サッカリンの甘みを感じるか調べる

–簡単、安価であるが、客観性に欠ける

• 定量的フィットテスト

–マスク内外の粉塵量を測定し、漏れ率を数値で示す

–正確な数値でフィット率を測定できるが、機械は高額

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Page 34: ガイドラインと感染管理活動ガイドラインと感染管理活動 2013年11月21日 第7回感染症リスクマネジメント作戦講座 亀田総合病院 地域感染症疫学・予防センター本日のゴール

N95フィットテスト

• 修了証を渡すなど、医療従事者本人が記録をもつ

• 目的

理解すべき内容の確認

自分に合ったN95マスクの種類の確認

最終フィットテスト実施日の記録

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本日のメニュー

I. そもそも、ガイドラインとは

II. ガイドラインのエビデンス

III. 感染対策ガイドライン in the world

IV. ガイドラインから院内マニュアルへのブリッジング

V. ガイドラインの実践 空気予防策

VI. リスクアセスメントに基づく感染対策

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Page 36: ガイドラインと感染管理活動ガイドラインと感染管理活動 2013年11月21日 第7回感染症リスクマネジメント作戦講座 亀田総合病院 地域感染症疫学・予防センター本日のゴール

医療関連感染ゼロをめざす

戦略

リーダーシップ

オペレーション

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素早く、効果的に、着実に実行する能力

中・長期的対策を示す司令塔

リスクアセスメントに基づくシナリオ

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ガイドブックが勧めるICT活動

• マニュアルの整備

• 教育

• サーベイランス

• 介入

• 抗菌薬適正使用

• コンサルテーション

• 職業感染曝露の防止

• ICTラウンド

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Page 38: ガイドラインと感染管理活動ガイドラインと感染管理活動 2013年11月21日 第7回感染症リスクマネジメント作戦講座 亀田総合病院 地域感染症疫学・予防センター本日のゴール

できることには限りがある

• 感染対策に使えるお金には限りがある

• 対応するスタッフには限りがある

• 病院の構造は、必ずしも感染対策にとって良くできているとは言えない

• 感染対策にウルトラCは存在しない

• 感染対策に近道は存在しない

• そもそも、感染対策にはそれほど多くの選択肢があるわけではない

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対策の改善に必要な仕組みを構築する

• 構造 – 多部署介入型 – プログラムマネジメント – Policy/ procedure

• 感染対策のフォーカス – リスクに基づくプランの構築

• リスクを減少させるための戦略のデザイン – ケアバンドル

• 評価 – サーベイランス – ゴール設定

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どの感染対策を実施するか

どうやって、選んでいますか?

–始めやすいから

–お金がかからないから

–本に書いてあるから

–多くの施設で行われているから

→本に記載されている項目全てを、同時に、同じ力で行うことは不可能

→施設の規模や背景により、必要な対策は同じではないはず 40

Page 41: ガイドラインと感染管理活動ガイドラインと感染管理活動 2013年11月21日 第7回感染症リスクマネジメント作戦講座 亀田総合病院 地域感染症疫学・予防センター本日のゴール

リスクアセスメントを実行する

• 感染対策はここから始まる – リスクアセスメントは少なくとも1年に1回実施

–短期計画・中長期計画

–サーベイランスの選択

• チームで実行する –病院疫学者(リーダーシップ)

–感染対策担当者(ICD、ICP)

– ICTメンバー

• リスクの優先順位と記録

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リスクアセスメントによる優先順位

「必要な対策に重点を置いた活動をしているか?」

• 対策に優先順位を付ける

• リスクアセスメント・ツールを活用する

• 優先すべきリスクと選択の理由を明確にする

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リスクアセスメントによる優先順位

• 全てを優先しない。そうしないと、どれも完遂できない

• 優先順位を決めるためのツールを活用する

• 優先すべきリスクと選択の理由を文書化し、理由を明確にする

• 対象とするエリアを意識する

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Page 44: ガイドラインと感染管理活動ガイドラインと感染管理活動 2013年11月21日 第7回感染症リスクマネジメント作戦講座 亀田総合病院 地域感染症疫学・予防センター本日のゴール

リスクアセスメント項目

• 看護、治療に関連する項目

• サーベイランスデータの解析

• 感染指標の解析

• 治療に関連する環境

• 建築・改修

• 手指衛生やPPEへのアクセス

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Page 45: ガイドラインと感染管理活動ガイドラインと感染管理活動 2013年11月21日 第7回感染症リスクマネジメント作戦講座 亀田総合病院 地域感染症疫学・予防センター本日のゴール

リスクアセスメントの手順

• 問題となり得る感染症・汚染・曝露を3つのカテゴリーで評価する

• 起きやすさ

• インパクト

• 現存する仕組み・システム

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リスクアセスメントの手順

• リスクの抽出

–薬剤耐性菌

–予防策

–医療関連感染

–院内マニュアル

–環境

–職業感染

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Page 47: ガイドラインと感染管理活動ガイドラインと感染管理活動 2013年11月21日 第7回感染症リスクマネジメント作戦講座 亀田総合病院 地域感染症疫学・予防センター本日のゴール

リスクアセスメントの手順

• 起きやすさ

–既知のリスク

–過去の記録

–論文

• インパクト

• 現存する仕組み・システム

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リスクアセスメントの手順

• 起きやすさ

• インパクト

–生命への危機

–業務中断・停止

–信頼の失墜

–経済的ダメージ

–法的問題

• 現存する仕組み・システム

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Page 49: ガイドラインと感染管理活動ガイドラインと感染管理活動 2013年11月21日 第7回感染症リスクマネジメント作戦講座 亀田総合病院 地域感染症疫学・予防センター本日のゴール

リスクアセスメントの手順

• 起きやすさ

• インパクト

• 現存する仕組み・システム

–現在のプラン・改善策

– トレーニング

–バックアップシステム

–市中・公衆衛生資源

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リスクアセスメント・ツール

リスク 問題点・課題

起きやすさ インパクトの大きさ

対策 システム

合計

4 3 2 1 0 5 4 3 2 1 5 4 3 2 1

環境

レジオネラ症

注射液の汚染

スタッフ

結核曝露

針刺し

HAI

CLABSI 50

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起きやすさ 4 頻繁に発生

3 時々発生

2 発生する

1 ほとんど発生しない

0 発生しない

インパクトの大きさ 5 致命的

4 重大

3 入院の延長

2 治療・費用に影響

1 治療・費用に軽度に影響

対策・システム・備え 5 存在しない

4 きわめて乏しい

3 存在する

2 良い

1 完璧 51

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プログレスレポート リスクと優先順位

リスクアセスメント結果 「接触予防策」

ゴール (大きな方向性)それぞれのリスクに対して設定

「手指衛生実施の向上」

目標 (数値化できる) 達成目標

「直接観察法で6ヶ月後80%以上」

対策 目標に達成するためのステップ

「キャンペーン実施」

評価 それぞれの目標に対して設定

進行・解析 進行状況 次のステップ 52

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まとめ:リスクアセスメントの利点

• リスクを数値化できる

• 対策の根拠・理由を明確にし、文章化できる

• 対策に対して理解が得られやすい

• 必要な投資が具体的に交渉できる

• 問題解決志向であり、特定の部門や個人への言及を回避できる

• 外部評価に使える

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感染対策のPDCAサイクル

•直接観察法による手指衛生モニタリング

•アルコールジェル増設

•ハンドソープ・ペーパータオルの増設

•アルコールジェルの増設

•ポスター啓蒙

•手指衛生遵守率を10%向上

•対象:外科病棟

Plan Do

Check Action

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感染対策のクオリティ・マネジメント

• リスクアセスメントに基づいている

–根拠が明確である

– コンセンサスが得られている

• PDCAサイクルが機能している

–記録でPDCAをたどることができる

「PDCAサイクルは概念ではなく、医療の質改善のための業務手順書」

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まとめ

• ガイドラインはエビデンスに基づいて作成されている

• 各医療機関の院内感染対策マニュアルは、ガイドラインと自施設の規模・資源・状況に基づいて作成される

• リスクアセスメントに基づく感染対策はクオリティマネジメントを可能にする

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