49
2 1 2

エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

農研機構シンポジウム

エコフィード利用畜産物の新たな展開

-エコフィード認証制度を食品

残渣の活用につなげるために-

平成 23年 12月8日

主催 独立行政法人

農業・食品産業技術総合研究機構

畜 産 草 地 研 究 所

協賛 (社)日本科学飼料協会

(社)中央畜産会

畜産草地研究所

23 – 5

資 料

Page 2: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

資料の取り扱いについて

本講演に掲載した資料の取り扱いについては、複写、転載および引用の際には、原

著者の了解を得た上で利用されたい。

Page 3: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

目 次

ページ

基調講演

1. エコフィードと日本の畜産 ~レビューとこれから~・・・・・・・・・・ 4 畜産・飼料調査所 御影庵 阿部亮

2. 原産地認証制度(海外の事例に学ぶ) ・・・・・・・・・・・・・・・・ 別途

日本大学生物資源科学部 川手督也 一般講演 3. エコフィード認証制度について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

日本科学飼料協会 米持千里 4. エコフィード利用畜産物認証制度について ・・・・・・・・・・・・・・ 22

名古屋大学生命農学研究科 淡路和則 5. エコフィードの安全確保について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

(独)農林水産消費安全技術センター 山谷昭一 話題提供 6.洗米排水の飼料利用技術とその展開 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40

食協株式会社商品開発部 立川 健治

7.エコフィードを活用した鶏肉生産 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42

千葉県千葉農業事務所(前千葉県畜産総合研究センター)松本友紀子 8.DDGSについて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44

全農 飼料畜産中央研究所 内田江一郎

- 1 -

Page 4: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

議事次第

挨拶

松本光人((独)農業・食品産業技術総合研究機構理事)

来賓挨拶(農林水産省生産局畜産部畜産振興課)

特別講演

1. エコフィードと日本の畜産 ~レビューとこれから~ 畜産・飼料調査所 御影庵 阿部亮

2. 原産地認証制度(海外の事例に学ぶ) 日本大学生物資源科学部 川手督也

一般講演 3. エコフィード認証制度について

日本科学飼料協会 米持千里 4. エコフィード利用畜産物認証制度について

名古屋大学生命農学研究科 淡路和則 5. エコフィードの安全確保について

(独)農林水産消費安全技術センター 山谷昭一 休 憩

話題提供 6.洗米排水の飼料利用技術とその展開

食協株式会社商品開発部 立川 健治 7.エコフィードを活用した鶏肉生産

千葉県千葉農業事務所(前千葉県畜産総合研究センター)松本友紀子 8.DDGSについて

全農 飼料畜産中央研究所 内田江一郎 パネルディスカッション

※傍聴される皆様への注意事項

・指定した場所以外には立ち入らないこと

・携帯電話、PHS、ポケットベル等の電源は、必ず切って傍聴すること

・傍聴中は静粛を旨とし、以下の行為を慎むこと

会議中の発言に対する賛否の表明または拍手

傍聴中の入退席(ただし、やむを得ない場合を除く)

会場においてのカメラ、ビデオカメラ、ICレコーダーワイヤレスマイク等の使用

新聞、雑誌その他講演に関連のない書籍等の読書

飲食および喫煙

・銃砲刀剣類その他危険なものを議場に持ち込まないこと

・その他、事務局職員の指示に従うこと

- 2 - - 3 -

Page 5: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

議事次第

挨拶

松本光人((独)農業・食品産業技術総合研究機構理事)

来賓挨拶(農林水産省生産局畜産部畜産振興課)

特別講演

1. エコフィードと日本の畜産 ~レビューとこれから~ 畜産・飼料調査所 御影庵 阿部亮

2. 原産地認証制度(海外の事例に学ぶ) 日本大学生物資源科学部 川手督也

一般講演 3. エコフィード認証制度について

日本科学飼料協会 米持千里 4. エコフィード利用畜産物認証制度について

名古屋大学生命農学研究科 淡路和則 5. エコフィードの安全確保について

(独)農林水産消費安全技術センター 山谷昭一 休 憩

話題提供 6.洗米排水の飼料利用技術とその展開

食協株式会社商品開発部 立川 健治 7.エコフィードを活用した鶏肉生産

千葉県千葉農業事務所(前千葉県畜産総合研究センター)松本友紀子 8.DDGSについて

全農 飼料畜産中央研究所 内田江一郎 パネルディスカッション

※傍聴される皆様への注意事項

・指定した場所以外には立ち入らないこと

・携帯電話、PHS、ポケットベル等の電源は、必ず切って傍聴すること

・傍聴中は静粛を旨とし、以下の行為を慎むこと

会議中の発言に対する賛否の表明または拍手

傍聴中の入退席(ただし、やむを得ない場合を除く)

会場においてのカメラ、ビデオカメラ、ICレコーダーワイヤレスマイク等の使用

新聞、雑誌その他講演に関連のない書籍等の読書

飲食および喫煙

・銃砲刀剣類その他危険なものを議場に持ち込まないこと

・その他、事務局職員の指示に従うこと

特別講演

- 2 - - 3 -

Page 6: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

- 1 -

エコフイードと日本の畜産 ~レビューとこれから~

阿部 亮

Ⅰ. 平成14年7月 飼料問題懇談会 「今後の飼料政策の展開方向」

平成13年のBSEの発生等を背景に平成14年4月に「食と農の再生プラン」が策定

されたが、これを踏まえ農林水産省では飼料問題懇談会において、今後の新たな飼料政策

の枠組みを定めた。その中には、「食品廃棄物等のリサイクル促進」が謳われている。エ

コフイードを含めて、現在の種々の飼料政策はこのプランを基礎としている。その主要な

内容は以下のとうりである。

1)自給飼料の増産(稲発酵飼料の利用拡大、飼料生産の外部化促進、放牧の推進等)

2)流通飼料の合理化(安全な配合飼料供給体制の促進、配合飼料工場の集約化等配合

飼料製造・供給体制の合理化)

3)飼料の安全性確保(飼料の安全性に関するリスク管理体制の強化、トレーサビリテ

イ・飼料給与履歴データベース開発、飼料製造段階での安全対策の強化)

4)資源循環型畜産の推進(食品廃棄物のリサイクルの促進)

5)セーフテイネットとしての備蓄事業の再検討(備蓄水準の見直しを検討)

この、「今後の飼料政策の展開方向」の策定から来年は10年を経過する。現在、約1

0年を迎えようとしている段階で、エコフイード利用がどのように推進されてきたかを見、

それを踏まえて今後のあり方を考えてみたい。

Ⅱ. エコフイードの進捗状況

1)行政施策(平成18年度以降)

◎食品循環資源の排出実態・利用意向調査

◎エコフイード優良事例の調査

◎モデル地区の選定・重点活動(地域に特色ある食品残さの利用)

◎安全性確保ガイドラインの作成とPR・普及

◎全国シンポジウムの開催

◎エコフイードへの理解醸成のための取り組み(各地域におけるシンポジウムの開催、全

国各ブロックにおける行動会議の開催)

◎エコフイード利用畜産物の評価(豚、産卵鶏、肉用鶏)

◎飼料化施設と利用農家とのマッチングによる飼料化促進

◎エコフイード栄養価特性評価法の開発(近赤外分光光度計の利用)

◎エコフイードを組み込んだ飼料設計プログラムの開発

◎配合飼料原料としてのエコフイード利用促進

◎エコフイード認証制度の制定

◎エコフイード利用畜産物の認証制度の制定

<これらに関連するソフト and ハードの事業に対する財政的な支援の実施>

- 4 - - 5 -

Page 7: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

- 2 -

2)エコフイード生産・供給事業者数の推移(表1)

平成 18年 19年 21年 22年 23年

事業所数 141 171 197 255 276対象家畜別事業所数

牛 54 75 87 104 117豚 72 99 113 162 169鶏 24 38 46 57 60飼料化手法別価格 円/kg乾燥 - 22.6 25.8 25.0 24.8サイレージ 18.7 21.1 18.0 24.4リキッド 5.5 5.8 6.3 6.7

平成21年度のエコフイード原料別事業者数

食品製造副産物 酒粕類(焼酎粕、ビール粕等) 38糟糠類(トウフ粕、醤油粕等) 41農産物加工残さ(ジュース粕等)26パン屑・菓子屑 39その他(複数混合) 67

余剰食品(売れ残り食品、厨芥等) 47動物性原料(魚かす等) 18

*データは各年、1月とか6月とかの年度途中の集計

(農林水産省生産局畜産振興課)

- 4 - - 5 -

Page 8: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

- 3 -

3)食品循環資源の飼料化等リサイクル率の推移(表2)

平成16年 平成18年 平成19年

食品産業総排出量 千トン 11,358 11,352 11,343

食品製造業

排出量 千トン 4,898 4,947 4,928

飼料化率% 27 38 39

肥料化率% 36 34 31

食品卸売業

排出量 千トン 751 743 736

飼料化率% 20 28 13

肥料化率% 15 28 41

食品小売業

排出量 千トン 2,604 2,620 2,630

飼料化率% 11 9 8

肥料化率% 9 17 20

外食産業

排出量 3,104 3,042 3,048

飼料化率% 5 4 5

肥料化率% 5 10 4

(配合飼料供給安定機構)

<考察と課題>

農林水産省は平成19年度の飼料自給率25%を平成27年には35%に上昇させるべ

く、種々の方策を検討しているが、濃厚飼料については、エコフイードと飼料用米の増産

と利用拡大が期待されている。エコフイードについては、平成18年度の食品循環資源の

飼料化率22%を平成27年度には45%、実数で約500万トン(平成18年度は約2

50万トン)を目指している。ここでは、目標達成のための課題について、「エコフイー

ドの生産と利用の現在の姿」を見ながら、「食品循環資源の排出側の課題」と「畜産農家

側の課題」について考えてみる。

1)エコフイードの生産と利用の現在の姿(養豚について)

(1)リキッドフイード

①大手のスーパマーケットと大規模養豚業が連携し、リサイクルループの形成までを行う。

②複数の食品製造・流通業からの素材を特定のエコフイード製造業が収集・飼料化し、大

規模養豚業に供給する。

③食品流通業傘下でリキッド飼料を生産し、それを域内の養豚農家に供給する。

④ミルクホエー等の特定原料を養豚農家が利用しブランド豚肉を生産

- 4 -

⑤農協が地域内の食品関連事業者から野菜残さ等の素材を収集し、リキッド飼料を製造し

て域内の比較的規模の小さな複数の養豚農家に飼料を供給する。

⑥調理クズ、余剰食品等を養豚農家が自ら収集、煮沸して給与する。

(2)乾燥飼料

①企業が大都市の食品循環資源を広域・大量に収集し乾燥飼料を生産し畜産農家・農場に

に供給する。

②食品製造業が規格外品等をオンサイトで飼料化し、域内の養豚農家に供給する。

③廃棄物処理業が乾燥施設を持ち、域内の養豚農家に供給する。

⑤養豚農家が乾燥施設を持ち自家利用

⑥数戸の養豚農家が簡易な乾燥施設を設置し、地場の醤油粕、酒粕等を乾燥し共同利用す

る。

⑦パンクズ、菓子屑等を乾燥し乾燥単体飼料を配合飼料工場、畜産農家に供給する。

⑧NPO法人が地域の都市厨芥等を収集し、乾燥して養豚農家に供給する。

⑨コンビニエンスストアーのセントラルキッチンからのパンの耳、野菜クズ等から乾燥飼

料を生産し大規模養豚農家に供給する。

◎多様な形態が存在する。それぞれに抱える問題・課題は異なる。

◎リサイクルのループを排出側(食品流通業、食品製造業)と養豚業が食品加工業を交え

て形成する形が生まれてきている。

◎形態によって給与飼料中のエコフイードの利用割合、飼料調製方法、飼料給与方法が異

なる。乾燥飼料の給与ではエコフイードが5~20%、残りが配合飼料という姿。

◎エコフイードを用いたブランド豚肉が各地で散見され、報道されるようになってきた。

◎食品製造業がオンサイトで乾燥飼料を生産し、域内の養豚農家がそれを利用するという

形が増加の傾向にある。

◎現在の企業の努力を評価し、継続・発展のための支援を地域の環境の中で行う

◎新規の起業においては地域の特性を考えながら、自治体が積極的に地域バイオマスと地

域畜産の融合、そして異業種の連携を中小企業同友会等を介して推進してゆく。

◎エコフイードを利用した地域の特徴ある豚肉をさらに生産し、市民がそれを評価するシ

ステム(仕組み)を工夫する。

2)食品循環資源の排出側の課題

(1)飼料利用できる食品循環資源、特に食品製造副産物については、「利用できるもの

は既に利用し尽くしている、ない」という人と、「そうではない、まだまだある」

という人がいる。筆者も十勝という農業圏にいて、「未だ未だある。しかし、その

利用にはやはりハードルがある」と感じている。

(2)食品循環資源を再生利用するに当たっては次のような問題がある。カッコ内は食品

製造業と外食産業のそれぞれの課題の回答比率%である(農林水産省大臣官房統計

部)。

①異物の除去・分別(21-26) ②保管場所・臭気対策(30-41)

③再生コスト(30-30) ④再生品利用先確保(26-21)

- 6 - - 7 -

Page 9: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

- 4 -

⑤農協が地域内の食品関連事業者から野菜残さ等の素材を収集し、リキッド飼料を製造し

て域内の比較的規模の小さな複数の養豚農家に飼料を供給する。

⑥調理クズ、余剰食品等を養豚農家が自ら収集、煮沸して給与する。

(2)乾燥飼料

①企業が大都市の食品循環資源を広域・大量に収集し乾燥飼料を生産し畜産農家・農場に

に供給する。

②食品製造業が規格外品等をオンサイトで飼料化し、域内の養豚農家に供給する。

③廃棄物処理業が乾燥施設を持ち、域内の養豚農家に供給する。

⑤養豚農家が乾燥施設を持ち自家利用

⑥数戸の養豚農家が簡易な乾燥施設を設置し、地場の醤油粕、酒粕等を乾燥し共同利用す

る。

⑦パンクズ、菓子屑等を乾燥し乾燥単体飼料を配合飼料工場、畜産農家に供給する。

⑧NPO法人が地域の都市厨芥等を収集し、乾燥して養豚農家に供給する。

⑨コンビニエンスストアーのセントラルキッチンからのパンの耳、野菜クズ等から乾燥飼

料を生産し大規模養豚農家に供給する。

◎多様な形態が存在する。それぞれに抱える問題・課題は異なる。

◎リサイクルのループを排出側(食品流通業、食品製造業)と養豚業が食品加工業を交え

て形成する形が生まれてきている。

◎形態によって給与飼料中のエコフイードの利用割合、飼料調製方法、飼料給与方法が異

なる。乾燥飼料の給与ではエコフイードが5~20%、残りが配合飼料という姿。

◎エコフイードを用いたブランド豚肉が各地で散見され、報道されるようになってきた。

◎食品製造業がオンサイトで乾燥飼料を生産し、域内の養豚農家がそれを利用するという

形が増加の傾向にある。

◎現在の企業の努力を評価し、継続・発展のための支援を地域の環境の中で行う

◎新規の起業においては地域の特性を考えながら、自治体が積極的に地域バイオマスと地

域畜産の融合、そして異業種の連携を中小企業同友会等を介して推進してゆく。

◎エコフイードを利用した地域の特徴ある豚肉をさらに生産し、市民がそれを評価するシ

ステム(仕組み)を工夫する。

2)食品循環資源の排出側の課題

(1)飼料利用できる食品循環資源、特に食品製造副産物については、「利用できるもの

は既に利用し尽くしている、ない」という人と、「そうではない、まだまだある」

という人がいる。筆者も十勝という農業圏にいて、「未だ未だある。しかし、その

利用にはやはりハードルがある」と感じている。

(2)食品循環資源を再生利用するに当たっては次のような問題がある。カッコ内は食品

製造業と外食産業のそれぞれの課題の回答比率%である(農林水産省大臣官房統計

部)。

①異物の除去・分別(21-26) ②保管場所・臭気対策(30-41)

③再生コスト(30-30) ④再生品利用先確保(26-21)

- 6 - - 7 -

Page 10: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

- 5 -

⑤再生利用技術(13-6) ⑥品質・安全性確保(13-19)

⑦食品・利用者との連携(20-22) ⑧処理・運搬共同化(13-16)

⑧公的助成(22-22) ⑨周辺住民の承諾(5-5)

(3)それでは、食品循環資源のエコフイードへの再生利用を促進するために、上記の諸

課題をどのように克服してゆけば再生率は上昇するのだろうか、ここでは、農林水

産省食品総合局の島津久樹氏(食品リサイクル課長補佐)の資料から引用紹介する

(平成18年度中央畜産技術研修会・飼料)

①廃棄物処理施設を設置する際の最大の問題は、周辺住民同意を得ることであるが、「循

環型社会の形成」や「国際貢献」といった大義名分があれば、同意を得やすいのではな

いか。

②地域の食品リサイクルを推進するリーダー的存在を育成することが必要。

③市町村における処理料金が安価に設定されていることが、再生利用取り組みの阻害要因

となっている。

④地方自治体との連携により、再生利用コストを軽減できないか。

⑤地方自治体が策定する廃棄物処理計画へ食品リサイクルを反映させてゆくことが必要

⑥食品関連事業者の範囲を福祉施設や学校等にまで拡大する等、官需を創出することによ

り、地域ぐるみで食品リサイクルの取り組みが生まれやすくなる。

⑦市町村との連携による食品リサイクルの事業モデルを作り、普及させてゆくことが必要

⑧食品関連事業者によって、食品リサイクルに対する認識や意欲に大きな格差がある。

⑨地方自治体間における廃棄物の分別基準や処理料金の差が、食品関連事業者の認識や意

欲の格差の一因となっている。

⑩再生利用等へのインセンテイブを与えるため、再生利用等に取り組んでいる食品関連事

業者に対し、実施率目標を達成した食品関連事業者名の公表等何らかのメリット措置が

必要

⑪再生利用製品の品質に着目した認定制度が必要

⑫再生利用事業者や再生利用方法の情報、他社の取り組みの優良事例等、行政側からの一

層の情報提供が必要

⑬再生利用を進めるためには、再生利用製品の利用者を確保することが重要であり、行政

において、食品関連事業者と再生利用製品の利用者とのマッチングを行えないか。

⑭処理設備の整備に係わる行政の金融支援の拡充が必要

⑮食品リサイクルを地域作りや地域活性化につながるものとして、バイオマス交付金を活

用した地域再生事業ができないか。

3)畜産農家側の問題と課題

(1)下表(表3)に見られるように養豚農家の収益性は低下の傾向にある。養豚農家の

収益性は主に枝肉価格と生産費に左右されるが、平成18~20年度は枝肉価格は

堅調に推移したものの、配合飼料価格の上昇により生産費が増加したために収益性

は低下している。平成21年度は枝肉価格の低下により収益性が低下している(農

林水産省生産局)。

- 8 - - 9 -

Page 11: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

- 6 -

(表3)

平成 17年 18年 19年 20年 21年

肥育豚所得、円/頭 6,304 4,863 4,813 3,144 2,547生産費 円/頭 29,498 31,140 33,723 35,134 -飼料費/生産費% 63.0 62.6 63.4 67.4 -飼養戸数 千戸 - 7.8 7.6 7.2 6.9(* 6.0)

(農林水産省生産局畜産部) *は平成23年2月現在

(2)生産費の増加は平成18年度後半からのトウモロコシ価格の高騰を主な原因として

いる。豚肥育用配合飼料1kgの価格は18年が62.6円、20年が68.2円、

22年が55.4円であるが、23年6月には60.5円と再び高値となっている。

平成18年のエコフイード乾燥飼料の平均販売価格はkg当たり25.9円である。

常識的にはより多くエコフイードを利用することによって、生産費の減少を招来す

ることが出来ると考えてよいであろう。しかし、その利用率は決して高いとは言え

ない。

(3)何故だろうか。日本養豚協会が平成19年度に調査した結果、「養豚農家における

エコフイード非利用の理由」(表4)は以下のとうりで、原材料のまとまった入手

が困難、つまり、手に入りづらいが、約50%を占める。使い勝手が良いものが近

くで手にはいれば利用すると考えてよいであろう。養豚農家数は減少基調にあるが、

エコフイード供給の環境を近間で整えることによって、需要は未だ未だ伸びる、そ

ういう生産環境に日本の養豚はあると考えたい。

養豚農家のエコフイード非利用の理由(表4)

原材料のまとまった入手が困難 47.8% 安全性に対する不安 29.8%

栄養面で不安定 32.6% 肉質低下懸念 28.8% 運搬・乾燥等の経費負担

25.8%、労働力不足 33.4% イメージによる豚肉消費低下懸念 14.9%

(日本養豚協会、平成19年度)

(4)畜産農家のエコフイードの利用推進と飼料構造を考える場合、「飼料の成分・栄養

価」、「生産費(飼料価格)」、「使い勝手」そして、「日本の飼料自給率の向上」を

総合的に考えながら、飼料のベストミックスという視点・展望を持つことが重要で

あろう。ここで、飼料自給率の向上、というのはトウモロコシ価格の変動等、海外

の経済情勢に振り回されない、緩衝能の高い飼料構造の構築を意味する。

より直裁に言うならば養豚用飼料の場合には配合飼料とエコフイードの融合、共存

共栄である。この点に関して、乾燥飼料をイメージしながらいくつかの事を考えて

みる。

- 8 - - 9 -

Page 12: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

- 7 -

①乾燥エコフイード飼料利用の太宗は配合飼料の一部をエコフイードで代替するという形

態であるが、これにはいくつかの形がある。

ア)エコフイード乾燥飼料を飼槽中または給餌ラインに流し込む。

イ)配合飼料輸送車に乾燥エコフイードをトップドレスし、農家の飼料タンクに流し込

む。

ウ)乾燥エコフイードを手給餌する。

エ)配合飼料工場で乾燥エコフイードを配合原料として使用する。

現状では、ア)とウ)が主流であろうか、筆者が山口県の養豚農家の人達と話しをした

際にはエ)を望む声が多かった。

②配合飼料に畜産農家側でエコフイード乾燥飼料を外付けする場合には、アミノ酸・ミネ

ラル・ビタミンの要求量を考えると自ずと添加の限界がある。20%が限界とする人も

いる。それ以上だと、添加剤(アミノ酸・ミネラル・ビタミン)の購入を考えねばなら

ず、そうなると安価なエコフイードではなくなる。

③理想的には、エコフイードの生産の場面でアミノ酸・微量要素にまで気を配った素材の

配合で飼料を生産し、より多くの給与量水準を目指すか、あるいは配合飼料の原料とし

て利用し、栄養素バランスのとれた飼料を養豚農家に供給するかである。

④同時に飼料メーカの営業マンがコンサルタントとしてエコフイード利用の支援をすると

いう形を望めるならば、それも素敵なことである。平成20年度の研究会(平成20年

度自給飼料利用研究会、エコフイード全国シンポジウム)では、協同飼料株式会社の小

池徳治氏が「リサイクルループ構築による豚肉販売」のテーマの講演の中で、リキッド

フイーデングにおける飼料メーカーの役割として、「飼料原料の安全性の確保(アドバ

イス)」、「200種くらいの食品残さの栄養成分値測定」、「肥育各ステージの栄養計算」、

「ベースミックスの設計・製造供給(不足栄養の補償)」、「肉質チェック」をあげてお

られる。

⑤新参者としてのエコフイードと配合飼料の協調あるいは競合に関しての議論は日本の電

力のベストミックス化の論議と重なる所がある。日本の電力業界が自然エネルギーを利

用して生産した電力を送電網の中により多く取り込むべきだとする論議である。環境問

題、畜産農家の持続的な経営の維持、飼料自給率の向上と緩衝能ある飼料構造構築、地

産地消等々を総合的に考えながら、畜産農家、配合飼料業界、エコフイード関連事業者

が連携・協力する姿が望まれる。

- 10 - - 11 -

Page 13: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

- 8 -

Ⅲ. 食品循環資源の飼料化・給与技術に関する試験研究と実用的な技術の進展

1)品質・栄養価等食品循環資源の飼料給与についての当初の不安要素(克服しなければ

ならなかった事) (表5)

酪農家(非利用の理由に占める%)

品質が不安 21.8% 水分が多い等利用が困難 9.4%

生産される乳質に不安 20.4%

養豚農家(非利用の理由に占める%)

安全性の面で不安 29.8% 栄養面で不安定 32.6%

肉質低下がある 28.8% イメージによる豚肉消費の恐れ 14.9%

肉用牛肥育農家(非利用の理由に占める%)

安全性の面で不安 20.7% 栄養面で不安 25.3%

肉質低下懸念 14.9%

(中央酪農会議、日本養豚協会、全国肉牛事業協同組合)

2)近年におけるエコフイード利用における試験研究・技術開発の概要

(1)ここ数年の間に研究対象・事業対象となっている素材

・都市厨芥混合物(乾燥飼料、リキッド飼料、高デンプン質飼料、高脂肪・高タンパク

質飼料)

・カボチャ加工残さ ・菓子クズ ・ジャガイモ食品製造副産物(ポテトピール等)

・規格外ナガイモ ・ラッキョウ漬け ・スイートコーン残さ

・茶殻 ・ナットウ煮豆 ・トウフ粕 ・クズ米 ・醤油粕

・焼酎粕 ・干しイモ残さ ・梅酒漬け梅 ・モヤシクズ ・ウドン等麺類

・サツマイモ茎葉 ・規格外バレイショ ・洗米排水 ・野菜クズ ・ビール粕

・規格外ニンジン ・ナガイモカット残さ ・デンプン粕 ・泡盛もろみ酢粕

・デンプン粕 ・ビール蒸留廃液(酵母) ・リンゴ粕

(2)試験研究・実用事業化の項目

①飼料の特性評価

・飼料分析:一般成分、アミノ酸、脂肪酸、ミネラル、ビタミン

・消化率、栄養価(TDN含量)

②飼養試験

・採食性(乾物摂取量)

・肥育成績、泌乳成績

・枝肉成績、乳質

・肉質評価

③都市厨芥の成分含量の変動と成分変動を伴う食品残さの給与技術

④配合飼料との混合比率と飼養試験成績、混合割合の検討

⑤豚の軟脂発生と給与飼料中の粗脂肪含量および豚肉の脂肪酸組成・融点との関係分析

- 10 - - 11 -

Page 14: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

- 9 -

⑥リキッド飼料の調製と保存方法

⑦リキッド飼料の配管内流量調節等システムの最適化

⑧高水分材料を用いた乳牛用発酵飼料の製造と品質調査および飼養試験

⑨食品循環資源の化学組成の簡易定量法(近赤外分析、NIR)の検討

⑩豚用飼料給与ソフトウエアーの作成と配布

⑪肉質(豚脂肪の質)の光ファイバー近赤外分析法の開発

⑫飼料化の方法と温室効果ガス排出量の関係

⑬未利用資源飼料化の経営経済的な評価

⑭エコフイード利用型豚肉に対する消費者イメージと嗜好性

当初懸念されたエコフイード利用に関する問題の多くは、以上の試験研究の成果をうまく

利用する事によって、克服出来る状況にある考えてよいであろう。

これらの成果、あるいは成果の応用方法についての周知徹底、広報をいかに、広く深く浸

透させるかが課題である。

Ⅳ. 飼料の製造方法

1)国内の事業所においては以下のような手法でのエコフイード製造が行われている。

(1)乾熱乾燥法

熱風乾燥方式が多い。熱源としては電気、ガス、重油が用いられることが多いが、

メタン発酵装置を兼ね備えて、その燃焼熱を利用する事業者もいる、その他に、廃

プラスチックを燃焼させてその熱を利用する所もある。

(2)減圧乾燥法

装置内全体を減圧状態にすることによって低温で材料の水分を蒸発させることが出

来る。エネルギーの節約と蛋白質の熱変性防止という利点を持つ。

(3)ボイル乾燥法

蒸気による間接的な加熱乾燥法である。迅速な昇温によって材料が煮沸状態となり

、ボイルしながら脱水が進行する。乾燥後に脱油(圧搾)する設備も備えている。

(4)発酵乾燥法

好気性高温細菌(バチルス属)を添加し、60~70℃に燃料を用いた加熱を行い

ながら、微生物による有機物分解作用を促進させ、その後に80℃に加温して乾燥

するという方法である。

(5)油温脱水法

通称はテンプラ方式である。食品残さを高温の廃食用油によって脱水・乾燥し、そ

の後で脱脂し、乾燥飼料を得る。日量数十トン単位での食品循環支援の飼料化が行

われている。

(6)リキッドフイード調製

①大型タンクに牛乳等の液体飼料を保存し、これにパンクズ、麺類、ピザ、納豆等

を混合し、さらに配合飼料を混合してパイプラインで豚に給餌する方式と、

②調理クズ、野菜、パン、麺類、米飯等の食品循環資源を、分別→混合→粉砕→加

- 10 -

熱殺菌→冷却→乳酸発酵させ、ヨーグルト状の液状飼料をタンクローリーで養豚

農家に配送する方式の二つが主流である。

(7)発酵飼料の製造(サイレージ化)

乳牛または肉用牛の飼料として製造される。トウフ粕、ビール粕、ジュース粕等の

食品残さ混合物、またはこれに乾草、牧草サイレージ、あるいはトウモロコシサイ

レージを混合し、フレコンバックに充填して、脱気し、一定期間乳酸発酵させた後、

畜産農家に配送する。

乾燥飼料の調製に当たってはエネルギー源の問題がついて回る。メタン発酵装置の併設、

自治体の焼却施設の廃熱利用、廃プラチックの熱源としての利用、廃材の乾留ガスの熱

利用等、検討が必要である。

地域の異業種の交流の中、地域産業コンプレックスでの問題解決が期待される。

Ⅴ. 最後に、期待を込めて

1)資源循環型社会の一つの形としてエコフイードをフイードベストミックス構造の中に

位置付け、それだけではなく、動物福祉にも配慮した、「エコフイードとアニマルウ

エルフェアー結合型」の畜産物を生産し、市民の共感を得ながら、持続的な畜産を展

開する。この形は数年前に長野県が提案している。

2)下記に筆者が見聞した限りの中での、いくつかの例を示すが、このような銘柄・ブラ

ンドの畜産物を地域社会の中で確立し、商品力ある畜産物をエコフイードを用いて作

ってゆく。

<ホエー豚、はまポーク、讃岐夢豚、優とん、犬鳴ポーク、ヨーグル豚等>

3)エコフイード事業の現在の多様性を維持する。それが緩衝能の高い日本の畜産業を作

ってゆくことに繋がる。

4)行政、試験研究がエコフイードについて、ともに現段階の課題と問題点を整理し、こ

れから10年間の新たな道のりを計画する。

5)エコフイードを核として地域産業コンプレックスを形成し、雇用の拡大をも含めて地

域社会の活性化に貢献する。

6)地域での取り組みにおいては、排出素材の特性、飼料化方式、家畜への給与法、経済

的な評価等についての指導・助言のできる「スーパーバイザー」を必要とする。その

ようなヒト有無がこれからのエコフイードの盛衰に大きな影響力を持つ。そのような

ヒトの養成を行うこと、また既存のスーパーバイザーの活躍に期待する。

7)エコフイードを食育教育の一つの柱として教育界が位置づけるようにするため、エコ

フイードに関係する人達の積極的な日常活動が望まれる。

- 12 - - 13 -

Page 15: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

- 10 -

熱殺菌→冷却→乳酸発酵させ、ヨーグルト状の液状飼料をタンクローリーで養豚

農家に配送する方式の二つが主流である。

(7)発酵飼料の製造(サイレージ化)

乳牛または肉用牛の飼料として製造される。トウフ粕、ビール粕、ジュース粕等の

食品残さ混合物、またはこれに乾草、牧草サイレージ、あるいはトウモロコシサイ

レージを混合し、フレコンバックに充填して、脱気し、一定期間乳酸発酵させた後、

畜産農家に配送する。

乾燥飼料の調製に当たってはエネルギー源の問題がついて回る。メタン発酵装置の併設、

自治体の焼却施設の廃熱利用、廃プラチックの熱源としての利用、廃材の乾留ガスの熱

利用等、検討が必要である。

地域の異業種の交流の中、地域産業コンプレックスでの問題解決が期待される。

Ⅴ. 最後に、期待を込めて

1)資源循環型社会の一つの形としてエコフイードをフイードベストミックス構造の中に

位置付け、それだけではなく、動物福祉にも配慮した、「エコフイードとアニマルウ

エルフェアー結合型」の畜産物を生産し、市民の共感を得ながら、持続的な畜産を展

開する。この形は数年前に長野県が提案している。

2)下記に筆者が見聞した限りの中での、いくつかの例を示すが、このような銘柄・ブラ

ンドの畜産物を地域社会の中で確立し、商品力ある畜産物をエコフイードを用いて作

ってゆく。

<ホエー豚、はまポーク、讃岐夢豚、優とん、犬鳴ポーク、ヨーグル豚等>

3)エコフイード事業の現在の多様性を維持する。それが緩衝能の高い日本の畜産業を作

ってゆくことに繋がる。

4)行政、試験研究がエコフイードについて、ともに現段階の課題と問題点を整理し、こ

れから10年間の新たな道のりを計画する。

5)エコフイードを核として地域産業コンプレックスを形成し、雇用の拡大をも含めて地

域社会の活性化に貢献する。

6)地域での取り組みにおいては、排出素材の特性、飼料化方式、家畜への給与法、経済

的な評価等についての指導・助言のできる「スーパーバイザー」を必要とする。その

ようなヒト有無がこれからのエコフイードの盛衰に大きな影響力を持つ。そのような

ヒトの養成を行うこと、また既存のスーパーバイザーの活躍に期待する。

7)エコフイードを食育教育の一つの柱として教育界が位置づけるようにするため、エコ

フイードに関係する人達の積極的な日常活動が望まれる。

- 12 - - 13 -

Page 16: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

- 14 - - 15 -

Page 17: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

- 14 - - 15 -

一般講演

Page 18: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

1

社団法人 日本科学飼料協会 米持千里

2

3 製造するエコフィードの栄養成分や特性の把握

2 食品循環資源の利用率

1 ガイドラインにしたがって適切な製造管理、品質管理体制がとられている

「エコフィード」 として認証し、食品循環資源の飼料化の促進と、安心かつ安定的な利用を図る

3

ガイドラインにしたがって適切な製造管理、品質管理体制がとられている

4

エコフィード特有のリスク

✔ 不適切な保管や輸送による腐敗や変敗、細菌やウイルスなどの病原微生物による汚染

✔ 包装容器や食器、箸、爪楊枝などの異物混入

✔ 洗剤、殺虫剤などの化学物質などの混入

✔ 大臣確認を受けていない動物由来たんぱく質の混入

✔ これまで飼料製造の経験がない異業種の参入

食品残さ等利用飼料における安全性確保のためのガイドライン(平成18年3月制定)

- 16 - - 17 -

Page 19: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

5

原料の排出元・収集業者

✔ 飼料製造業者と原料排出元の契約 (排出する食品循環資源が飼料原料として使用されるとの認識を共有する)

✔ 排出元等での異物混入の防止や適切な分別の徹底

✔ 収集容器の洗浄や消毒

✔ 保管・輸送時における腐敗、カビ・病原微生物汚染等の防止措置(保冷車の使用、輸送移動時間の短縮化…)

6

製造業者

✔ 原料受入時の変敗や異物分別の確認

✔ 病原微生物汚染対策(適切な加熱等)

✔ 品質管理の励行

✔ 飼料業務管理規則の策定

✔ 排出先における原料取扱い状況の確認

✔ 帳簿の記載と保管(製品のトレースに必要な製造記録、排出元、譲渡し先・数量・年月日など)

7

使用する畜産農家

✔ 害鳥や害虫の侵入を防止するための適切な保管

✔ 栄養成分を把握して適切な割合で速やかに使用する

✔ 使用年月日、使用場所、使用した畜種、使用量、購入先、飼料の名称等の記録の記載と保管

✔ 自ら製造する場合には、製造業者に対して要求される各項目も適用される

8

食品残さ等利用飼料における安全性確保のためのガイドラインに基づいて飼料の製造管理、品質管理体制がとられている

飼料業務管理規則: 原材料の保管、製造の手順、製造工程の管理手法、品質管理の手法を具体的に記載したもの

食品残さの排出元との契約: 分別の徹底、飼料原料としての品質を確保するための努力義務など

記録の作成とその保管体制の構築: 製品の品質向上や、事故の防止、万一、事故が発生した場合の的確な対応を取るために必要となる製造に関する記録の保管

FAMICによる工程管理等の確認: 余剰食品、調理残さ、食べ残しなどを原料とした飼料

- 16 - - 17 -

Page 20: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

9

食品製造副産物: 米ヌカ、ふすま、麦ヌカ、コーングルテンミール、コーンスチープリカー、バレイショでん粉かす、ビートパルプ、バガス、酒かす、焼酎かす、醤油かす、ビールかす、野菜や果物の搾りかす、茶かす、コーヒーかす、豆腐かす、パン屑、菓子屑、野菜のカット屑、冷凍食品や乳製品の加工時の整形くず

余剰食品 調理残さ 食べ残し

食品循環資源の利用率

国内で発生した食品循環資源 : 20%以上

国内で発生した推進食品循環資源 : 5%以上

食品製造副産物: 米ヌカ、ふすま、麦ヌカ、コーングルテンミール、コーンスチープリカー、バレイショでん粉かす、ビートパルプ、バガス、酒かす、焼酎かす、醤油かす、ビールかす、野菜や果物の搾りかす、茶かす、コーヒーかす、豆腐かす、パン屑、菓子屑、野菜のカット屑、冷凍食品や乳製品の加工時の整形くず

余剰食品 調理残さ 食べ残し

十分に飼料化が進んでいない食品循環資源の利用を推進する10

自らが製造・販売するエコフィードが持つ栄養成分や特性を十分に把握している

11

精米や精麦 米ヌカ、ふすま

搾油 大豆油粕、ナタネ油粕

でん粉製造 コーングルテンミール

飲料製造 酒かす、焼酎粕、ビール粕、

野菜や果物の搾り粕、茶粕、コーヒー粕など

豆腐かす、パン屑、菓子屑、醤油かす

野菜のカット屑、冷凍食品や乳製品の加工時の整形屑

ふすま脱脂米ヌカ 大豆油粕 ビール粕 パン屑

12

調理残さ (食品の調理に伴って発生したもの)

事業系調理残さ (事業所由来)

家庭調理残さ (一般家庭由来)

食べ残し (食卓に出されたのち、食べ残されたもの)

事業系食べ残し

家庭食べ残し

- 18 - - 19 -

Page 21: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

13

そのまま(粉砕のみ)

乾燥処理

湿式処理

油温減圧脱水乾燥

ボイル乾燥 発酵乾燥

乾熱乾燥 真空乾燥

気流乾燥 減圧乾燥

リキッドフィーディング

発酵リキッドフィーディング1.0 

16.0 21.0  20.0  18.0 

12.0  10.0 4.0  4.0 

1.0  1.0  1.0 0

10

20

30

<0.1 ~2.4 ~4.7 ~7 ~9.3 ~11.6 ~13.9 ~16.2 ~18.6 ~20.8 ~23.1 ~25.414

1.0  3.0 7.0 

21.0 29.0 

13.0  11.0 7.0  6.0  4.0  1.0  1.0 

0

10

20

30

2.5~5.1 ~7.7 ~10.3 ~12.9 ~15.5 ~18.1 ~20.7 ~23.3 ~25.9 ~28.5 ~31.1 ~33.7

CP含量の分布

粗脂肪含量の分布

15

豚のCP消化率(%)への製造時の乾燥温度の影響

87.581.1

60.7

0

20

40

60

80

100

91.7℃ 108.5℃ 125.1℃

75.2  77.0 

59.8 

0

20

40

60

80

100

86.5℃ 99.7℃ 125.2℃

B: パンくず (40%)米ヌカ (10%)野菜くず (30%)残飯 (20%)

B: パンくず (40%)米ヌカ (10%)野菜くず (30%)残飯 (20%)

A: パンくず (40%)米ヌカ (10%)野菜くず (50%)

A: パンくず (40%)米ヌカ (10%)野菜くず (50%)

16

自らが製造・販売するエコフィードが持つ栄養成分や特性を十分に把握

利用する畜産農家に的確に伝達

エコフィードの適切な利用

- 18 - - 19 -

Page 22: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

17

製造業者 日本科学飼料協会エコフィード認証運営委員会

自己チェック 書類確認

事前申請

18

製造業者 日本科学飼料協会エコフィード認証運営委員会

自己チェック 書類確認

事前申請

確認結果通知

各種資料

書類審査

(必要に応じて現地調査)

正式申請

認証証

エコフィードの商標とマークの使用

FAMIC

余剰食品、調理残さ、食べ残しなどを原料とした飼料

確認調査依頼

ガイドラインへの遵守状況の確認調査 確認結果通知書

ホームページに業者名や製品名を公表

19

✔ パン屑(食パンの耳等) 3

✔ 乾麺 1

✔ お茶かす、豆腐かす、醤油かす、タピオカでんぷん粕

✔ パン屑、米飯、惣菜、弁当のおかず部分、野菜・野菜くず

✔ 食品製造副産物、余剰食品、外食産業の調理残さ等

✔ 菓子屑と国産大豆粕等を使用した配合飼料 40

57 (13事業所)この他に、事前確認済のもの5製品(5事業所)

20

食品循環資源利用率●%

エコフィード認証第●●号

「エコフィード」は、(社)配合飼料供給安定機構が商標権を保有しています

認証マークについても(社)中央畜産会が商標権を保有しています

- 20 - - 21 -

Page 23: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

21

◎ 食品残さ利用飼料の安全性確保のためのガイドライン、Q&A、解説

配合飼料供給安定機構 http://mf-kikou.lin.gr.jp/topics/guide_top.htm

◎ 食品残さ飼料(エコフィード)の利用を進めるために配合飼料供給安定機構 http://mf-kikou.lin.gr.jp/topics/pdf/leaf.pdf

◎ エコフィードを利用したTMR製造利用マニュアル配合飼料供給安定機構 http://mf-kikou.lin.gr.jp/topics/tmr_man.htm

◎ エコフィード認証制度について日本科学飼料協会 http://kashikyo.lin.gr.jp/ecofeed/eco.html

22

◎ 豚用エコフィード飼料設計プログラム畜産草地研究所 http://www.nilgs.affrc.go.jp/prog/ecofeed.html

23

- 20 - - 21 -

Page 24: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

エコフィード利用畜産物認証制度について

淡路和則(名古屋大学)

エコフィード利用畜産物認証制度

• 認証エコフィードを給与した家畜から得られる 畜産物及びその加工品を認証

• 認証マークを貼付する

• 畜産物の生産、加工、流通等に関わる事業者及び消費者の

エコフィード利用推進の取り組みに対する社会の認識を深め、エコフィードの利活用を推進する

<目的等>

- 22 - - 23 -

Page 25: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

エコフィードの認証マーク

エコフィード(飼料) エコフィード利用畜産物

チェーン認証としての考え方

分別・収集

飼料化

混合・調製

利用(給与)

生産物(家畜)

商品流通

と畜・解体

エコフィード認証

チェーンとしての認証

カット

加工

エコフィード利用畜産物認証

加工

- 22 - - 23 -

Page 26: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

エコフィードに関連する認証制度について(概要)

畜産農家

エコフィードを適正に配合した飼料を家畜に給与し、畜産物を生産

給与

食品産業 飼料化施設

食品循環資源の適正な分別・保管等

飼料の適正な製造・保管及び栄養成分の維持等

食品産業

原料の収集・運搬

販売・消費

副産物・余剰品等

一定の基準(食品循環資源利用率、栄養成分等)を満たすものを「エコフィード」として認証

認証機関

加工(飼料化)

一定の基準(食品循環資源の利用率や栄養成分等)を満たす飼料を「エコフィード」として認証することで、食品リサイクルへの関心と理解を深めることを目的とし、平成21年3月から運用を開始しました。

(社)日本科学飼料協会

販売

エコフィードの取組を消費者までつなげることで、取組に対する社会の認識と理解を深めることを目的とし、一定の基準を満たした畜産物を「エコフィード利用畜産物」として認証する制度の運用を平成23年5月より開始します。

特定された流通経路で畜産物を流通(加工)、販売

一定の基準(給与計画に基づくエコフィードの給与、販売までのルート特定等)を満たすものを「エコフィード利用畜産物」として認証

認証機関

エコフィード認証制度

エコフィード利用畜産物認証制度

【エコフィード認証】 ・ エコフィードの名称利用 ・ 認証マークの使用

(社)中央畜産会

【エコフィード利用畜産物認証】 ・ エコフィードの名称利用 ・ 認証マークの使用

対象商品

• エコフィードを給与した家畜から得られた畜産物及びその加工品

家畜から得られた食用に供される生産物の総称 –生鮮品:食肉、生乳、卵等 –一次加工品:ハム、ソーセージ、バター、チーズ等 –二次加工品:ハンバーグ、アイスクリーム、オムライス等

食用に供されるものを広く含む

- 24 - - 25 -

Page 27: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

申請者

• 畜産物もしくはその加工食品を販売する者または製造・販売を委託する者(実施要綱第6の(1))

申請できる者を幅広く含む • 申請者が一括して許諾契約を締結(実施要綱第3の(1))

認証されたエコフィード利用畜産物の生産 から 加工・流通に係わる者は、申請者以外でもマー クの貼付が可能

開始と認証数

• 「エコフィード利用畜産物認証制度実施要綱」 平成23年5月30日 申請受付開始

• 認証実績

–第1号 総菜パン 山崎製パン(株) –第2号 豚精肉 (有)ブライトピック –第3号 豚精肉 (有)ブライトピック千葉

- 24 - - 25 -

Page 28: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

申請、更新の概要

• 申請先 中央畜産会 • 申請書類 申請書、商品概要書、エコフィード給与計画書 • 申請手数料 申請料金 21,000円(消費税込み) 認証料金 1商品(基本料金) 52,500円 2商品以上 10,500円/商品 追加

• 有効期間 認証の日から3年間

• 更新 更新料金 1商品(基本料金) 31,500円 2商品以上 3,150円/商品 追加

認証までの手続きの流れ

① 申請 ② エコフィード利用畜産物運営委員会による審査 ③ 商標及び認証マークの利用に関する許諾契約 ④ 認証書交付

- 26 - - 27 -

Page 29: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

認証の基準

• エコフィードの製造、保管及び使用等について「食品残さ等利用飼料の安全性確保のためのガイドライン」を遵守

• エコフィード給与計画が適正であり、その計画に基づきエコフィードが給与されていることが確認できる

→ 運営委員会が蓄積された知見や給与試験等の結果等 に基づいて判断

食肉:全飼養期間(誕生からと畜場出荷まで)の 概ね3分の1以上の期間 乳、卵:乳又は卵が生産される概ね10日前以前から • 提出された商品概要書に基づいて製造され、エコフィード利用畜産物が使用されている

• 他の商品と区分され、生産から流通、販売に至るまでの流通ルートが特定されている

申請に必要な書類等

• エコフィード利用畜産物認証申請書 添付: ① 認証を受けようとするエコフィード利用畜産物について

② 農場における認証エコフィードの保管及び使用状況

③ エコフィードの給与計画

④ 商品概要書

⑤ 生産から流通、販売の特定状況について

- 26 - - 27 -

Page 30: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

申請単位

• 「商品群」 –ウインナーソーセージ – フランクフルトソーセージ –ガーリックソーセージ –ハーブソーセージ etc.

–ハムサンド –ハムカツサンド – ソーセージロール –ハンバーガー

「ソーセージ」

「調理パン」(例)

生産から販売に至る流通ルートの特定

• 生産段階 – 食肉~ロットを分離して出荷、と畜 – 生乳~バルククーラー、集乳車、貯乳タンクの専用化

• 加工・製造段階 – 製造ラインの分離 – 製造時間の区分・分離(同一ラインの場合)

• 流通段階 – 表示、小分け用の箱等 – 伝票等での確認

• 販売段階 – 表示、トレイ等 – 置き場所等の区画を分離

- 28 - - 29 -

Page 31: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

エコフィード利用畜産物認証制度の仕組み

認証を受けようとする申請者は、認証を受けようとする商品等の流通ルートを特定し、「商品概要書」、「エコフィード給与計画書」を添付して認証機関に申請

申請

流通ルートを特定

申請者 (畜産物等を販売する者または製造・販売を委託する者)

審査(有識者等を委員とする運営委員会を設置し審査) ●認証基準(※)がクリアされているか ・エコフィードの給与計画が妥当か ・流通ルートの特定と他の商品と明確に区分し管理する手法が妥当か等を審査 なお、必要に応じて、ヒアリングや現地調査等を実施

認証機関【社団法人中央畜産会】

【対象】エコフィードが給与された家畜から得られた畜産物及びその加工食品(畜産物等)

(1)家畜に給与するエコフィードの給与計画が、これまでに蓄積された知見や給与試験 の結果等に照らし、妥当であると判断できるとともに、給与計画に基づき給与している ことが確認できること (2)認証を受けようとする商品等ごとに区分して、その生産から流通・販売までの流通 ルートが特定していることが確認できること 等

(※)認証基準

エコフィードマーク及び エコフィード商標の利用(表示)を許諾(契約)

認証書

の交付

- 28 - - 29 -

Page 32: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

エコフィードの安全確保について

独立行政法人農林水産消費安全技術センター

山 谷 昭 一

FAM IC

FAM IC

FAM IC

食品残さ飼料化の取り組み

• 食料・農業・農村基本計画 (平成17年3月25日閣議決定)

• 飼料自給率向上戦略会議 (平成17年5月12日設置)

• 全国食品残さ飼料化行動会議 (平成17年6月16日設置)

• 安全確保ガイドライン検討会 (平成17年10月4日設置)

- 30 - - 31 -

Page 33: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

3

安全確保ガイドラインの検討

平成17年10月に、学識経験者(4名)、消費者団体(3名)、畜産生産者(1名)、飼料製造団体等(3名)、肥飼料検査所(当時・2名)

及び農林水産省で構成した検討委員会を設置し、ワーキンググループでの検討を含め延べ6回の検討会を開催し、18年3月に成案を得た。 18年8月、これをもとにしたガイドライ

ンが農林水産省消費・安全局長から関係者に通知された。

原料排出元(責任の明確化)

農家

製造業者適正な製造、品質管理、製品の保管、出荷、帳簿の整備、農水大臣へ届け出の提出等

適正な使用、帳簿の記載等

収集業者

契約

契約

分別の徹底適正な原料の運搬、保管等

迅速な使用など

安全確保ガイドラインの全体概要図

迅速な収集、かびの発生・腐敗したものの除去など

迅速な製造、適切な加熱、成分分析の実施など

・排出元での確認

・排出元の教育・要請

専用容器による運搬

- 30 - - 31 -

Page 34: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

認証制度と安全性の確保

○エコフィード認証→安全性の確保が目的ではない。→「安全であること」を認証の対象とはしない。→「安全であること」は認証の前提である。

(社)日本科学飼料協会(エコフィード認証運営委員会)

書 類 確 認

エコフィード認証制度(申請から認証まで)のフロー図

(独)農林水産消費安全技術センター(FAMIC)

※「食品残さ等利用飼料の安全性確保のためのガイドライン」(平成18年8月30日付け18消安第6074号農林水産省消費・安全局長通知。)の遵守について確認。

申 請

飼料製造事業者

「安全性確認」の依頼

安全確保ガイドラインの遵守の確認

書類審査

申請内容審査

現地調査

認 証

自己診断(チェック・リスト)

製造する飼料の概要

名称及びマークの利用

安全性確認の依頼

確認結果の通知

確認の内容1 原料排出元での分別 5 出荷における対策2 原料の保管・輸送の方法 6 品質管理3 原料受入及び製造の基準 7 製造等管理体制4 帳簿の記載 8 飼料製造業者届の確認

立入調査

- 32 - - 33 -

Page 35: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

FAMICの確認対象→主として余剰食品や調理残さを原料としてエコフィードを製造する事業場

1 食品製造副産物等 米ぬか、酒かす、しょうちゅうかす、しょう油かす、でん粉かす、ビールかす、ふすま、麦ぬか、コーングルテンミール、果汁かす、とうふかす、パン屑、ビートパルプ、バガス、茶かす、糖蜜、コーンスチープリカー等食品の製造で得られる副産物及び野菜カット屑等加工屑。

2 余剰食品 飯、パン、麺類、とうふ、野菜、菓子、牛乳、アイスクリーム、総菜、ジュース、弁当、水産加工品等食品として製造されたが、食品として利用されなかったもの。

3 調理残さ

3-1 事業系

3-2 家庭系

調理に伴い発生する残さ。

食事を提供する事業場から排出される残さ。

一般家庭から排出される残さ。

4 食べ残し

4-1 事業系

4-2 家庭系

調理されたものが食用に供された後、食べ残されたもの。

食事を提供する事業場で発生する食べ残し。

一般家庭で発生する食べ残し。

飼料安全法の規制対象

安全確保ガイドラインの特徴

飼料の製造業者、輸入業者、販売業者、使用者

【ガイドライン】・排出元の責任の明確化・製造業者、収集業者、排出元の契約締結・排出元での確認

- 32 - - 33 -

Page 36: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

・排出物の種類及び収集までの保管期間に応じた、かびの発生及び腐敗を防止する対策をとる。

排出元の責任の明確化

・分別の徹底を図る。

・目視による確認の困難な洗剤等の混入も防止する。

・カラス等からの隔離及び異物の混入を防止するため、原則として蓋付きの専用容器に入れる。

・原料として不適切と認められたものは、飼料原料として排出しない。

飼料製造業者と排出元は、「排出元の責任」、「保管条件」、「飼料原料としての品質確保のための努力義務」等について契約を締結する。

排出元との契約対象→余剰食品、調理残さ、食べ残し

排出元との契約対象→生残飯

・畜産農家は排出元と直接契約を締結する。

・他の畜産農家と契約を締結している排出元からは収集しない。

- 34 - - 35 -

Page 37: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

飼料製造業者は、排出元に定期的に出向いて契約内容の遵守状況について確認する。

排出元での確認

排出元の教育・要請等

・飼料製造業者は、契約締結に際して、異物分別等の具体的手法等について排出元に対して必要に応じて教育を行う。

・分別状況等に不適切な事例が認められた場合には、分別等の徹底を改めて要請するとともに、必要に応じて教育又は原料の受入停止等の措置を行う。

安全確保ガイドライン概要図

原料排出元

(責任の明確化)(分別の徹底)・異物の除去

・かびの発生、腐敗したものの除去

収集業者

・迅速な収集

契約の締結 契約の締結

製造業者

・迅速な製造・適切な加熱

・排出元での確認・排出元の教育・要請

専用容器による運搬

- 34 - - 35 -

Page 38: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

原 料 排出元での分別 収集時の分別

1 食品製造副産物等 ほ乳動物由来たん白質、家きん由来たん白質、魚介類由来たん白質(乳・乳製品、卵・卵製品、大臣確認を受けたものを除く)を原料としない。

かびの発生及び腐敗が認められるものは原料としない(全般)。

2 余剰食品 包装品にあっては、包装資材を極力除去する。

事業系調理残さ

事業系食べ残し

家庭調理残さ

及び食べ残し

調理器具の破片等の異物を除去し、専用容器に分別する。病原微生物汚染の蓋然性が高いものは原料としない。

調理残さに比べ有害なものが混入する可能性が高いことから、有害物質を確実に除去できる場合以外は使用しないこと。具体的には、たばこ等の混入がなく、はし、つまようじを除去し、専用容器で分別する。

事業系に比べて多種の異物が混入する可能性が高く、安全性の確保が難しいものは原料としない。

原料排出元の状況を確認し、不適切なものは収集の対象としない。

原料の収集、分別の条件

原料の運搬、保管の条件

余剰食品、調理残さ、食べ残し及び野菜カット屑等加工屑並びに腐敗しやすい食品製造副産物を原料とする場合には、以下により運搬及び保管を行う。

1 排出元での保管は極力短くし、迅速に収集する。

2 運搬に際しては、病原微生物汚染を防止する観点からカラス等から隔離及び異物の混入を防止するため蓋付きの専用容器に入れる。

原料の運搬、保管の条件

3 運搬は、保冷車で行うことが望ましい。保冷車を用いない場合は、極力移動距離を短くし、腐敗、脂質の酸化等の品質劣化を防止する。4 専用容器は、使用後洗浄又は消毒する。

5 運搬した原料は、出来るだけ早く製造・使用し、一時保管は保冷庫又は冷暗所で保管する。6 食べ残しは、長期保管しない。

製造の条件

原 料 受入時の分別 病原微生物対策

A飼料の製造 配合飼料原料、添加物の使用

食品製造副産物等

余剰食品

事業系調理残さ及び事業系食べ残し

かびの発生、腐敗等が認められるものは原料としてはならない(全般)。

原料収集時に分別出来なかった包装資材を分別除去する。

原料収集時に分別出来なかった金属異異物、はし、つまようじを除去する。

生肉等の混入の可能性があるものは、70℃、30分以上加熱。ない場合も防止の観点から加熱処理を推奨する。

ほ乳動物由来たん白質、家きん由来たん白質、魚介類由来たん白質、(乳・乳製品、卵・卵製品、大臣確認を受けたものを除く)を原料としない。

配合飼料の原料を製造する場合は、粉末乾燥処理後、水分を13.5%以下とする。

抗酸化剤、防かび剤等を使用する場合は飼料添加物を使用しなければならない。

製造管理体制飼料を製造等する場合は、飼料業務管理規定を策定し、原料の収集から製造、さらに製品の品質管理、製品の表示、帳簿の記載等を行う。

- 36 - - 37 -

Page 39: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

原料の運搬、保管の条件

3 運搬は、保冷車で行うことが望ましい。保冷車を用いない場合は、極力移動距離を短くし、腐敗、脂質の酸化等の品質劣化を防止する。4 専用容器は、使用後洗浄又は消毒する。

5 運搬した原料は、出来るだけ早く製造・使用し、一時保管は保冷庫又は冷暗所で保管する。6 食べ残しは、長期保管しない。

製造の条件

原 料 受入時の分別 病原微生物対策

A飼料の製造 配合飼料原料、添加物の使用

食品製造副産物等

余剰食品

事業系調理残さ及び事業系食べ残し

かびの発生、腐敗等が認められるものは原料としてはならない(全般)。

原料収集時に分別出来なかった包装資材を分別除去する。

原料収集時に分別出来なかった金属異異物、はし、つまようじを除去する。

生肉等の混入の可能性があるものは、70℃、30分以上加熱。ない場合も防止の観点から加熱処理を推奨する。

ほ乳動物由来たん白質、家きん由来たん白質、魚介類由来たん白質、(乳・乳製品、卵・卵製品、大臣確認を受けたものを除く)を原料としない。

配合飼料の原料を製造する場合は、粉末乾燥処理後、水分を13.5%以下とする。

抗酸化剤、防かび剤等を使用する場合は飼料添加物を使用しなければならない。

製造管理体制飼料を製造等する場合は、飼料業務管理規定を策定し、原料の収集から製造、さらに製品の品質管理、製品の表示、帳簿の記載等を行う。

- 36 - - 37 -

Page 40: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

製品の保管、出荷の条件

1 製品は、カラス等からの隔離又は異物の混入を防止するため、紙袋、トランスバック等密閉容器に保管する。

2 水分含量等製品の状況に応じた温度管理を行い保管することとするが、可能な限り早く出荷する。

3 ほ乳動物由来たん白質、家きん由来たん白質、魚介類由来たん白質(乳・乳製品、卵・卵製品、大臣確認を受けたものを除く)を含む飼料は、豚用又は家きん用以外に出荷してはならない。4 A飼料の輸送は、A飼料専用の容器を使用する。

動物由来たん白質又は動物由来たん白質を原料とする飼料の成分規格

動物性原料 由来飼料利用

牛 豚 鶏 魚

乳、卵、ゼラチン 全動物 ○ ○ ○ ○

魚粉 魚 × ○ ○ ○

血粉、血しょうたん白牛 × × × ×

豚・馬・鶏 × ○ ○ ○

肉骨粉、骨粉 全動物 × × × ×

豚肉骨粉 豚 × ○ ○ ○

チキンミール、羽毛粉 鶏 × ○ ○ ○

蒸製骨粉、加水分解たん白 豚・鶏 × ○ ○ ○

原料混合肉骨粉 豚&鶏 × ○ ○ ○

食品残さ 全動物 × ○ ○ ×

骨灰、骨炭 全動物 ○ ○ ○ ○

- 38 - - 39 -

Page 41: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

話題提供

- 38 - - 39 -

Page 42: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

洗米排水の飼料利用技術とその展開 立川健治 荻野暁史*

食協株式会社 *畜産草地研究所 炊飯などの米の加工において水を流しながら研ぎ洗う洗米操作が行われ、この時に米の

糊粉層に多く含まれるタンパク質、脂質、ミネラルなどの良質な栄養素が精米重量の約2%

流出しています。当社の調査によると国内の洗米排水量は1日あたり約17万トン(TD

N換算で年間12万トン)と推定されます。これは国産飼料原料の約4分の1に相当し、

これを利用することで飼料自給率を大きく向上できます。 本日は、洗米排水を飼料利用するための効率的な回収・鮮度保持方法、豚用リキッド飼

料原料としての栄養価、給与による増体と肉質への影響、さらには環境影響評価について

報告させて頂きます。 1.洗米排水の飼料価値とコスト比較 洗米排水中固形分の栄養価はトウモロコシや小麦と同水準にあり、消化率も高く、可消

化養分総量(TDN)は97.2%と優れています。洗米排水の水分を配合飼料と同じ1

3%に換算し、その売価を配合飼料の半値(一般的なエコフィード価格)に設定すると、

その成分あたりの単価はトウモロコシ、小麦、大豆粕より安価であることが示されました。 2.洗米排水の回収・飼料化システムと環境影響評価

大型炊飯施設や米加工施設に超節水型洗米装置、濃縮装置、加熱減菌装置、貯留タンク、

有機酸添加装置を導入することにより、固形分濃度20%の濃厚洗米排水の回収が可能に

なります。またこの洗米排水は常温で7日間保管しても微生物学的品質において飼料とし

て安全な水準に維持できます。また洗米排水を飼料化した場合のCO2等の温室効果ガス発

生量は、浄化処理した場合の3分の1以下に抑えられることが分かりました。 3.給与豚の発育成績と肉質評価 みたけ食品工業株式会社様(埼玉県、武内社長)と全国畜産農業協同組合連合会様(栃

木県、内谷場長)のご協力を頂き、前者から排出される洗米排水を後者へ搬送し、これを

0%、10%、20%配合したリキッド飼料を180頭の肥育豚に2カ月間給与して発育

と肉質に及ぼす影響を調べました。洗米排水を給与した豚の増体量と飼料要求率は無添加

対照区に比べて優れ、パネラー38名でロース肉を食味した結果、洗米排水を給与した豚

の方が、やわらかさ、多汁性、香りにおいて高い評価を得ました。 4.飼料化による資源循環の事業化構想 洗米排水の排出側である大型炊飯施設や米加工施設には、排水処理コストの大幅な低減、

- 40 - - 41 -

Page 43: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

洗米排水の飼料利用技術とその展開 立川健治 荻野暁史*

食協株式会社 *畜産草地研究所 炊飯などの米の加工において水を流しながら研ぎ洗う洗米操作が行われ、この時に米の

糊粉層に多く含まれるタンパク質、脂質、ミネラルなどの良質な栄養素が精米重量の約2%

流出しています。当社の調査によると国内の洗米排水量は1日あたり約17万トン(TD

N換算で年間12万トン)と推定されます。これは国産飼料原料の約4分の1に相当し、

これを利用することで飼料自給率を大きく向上できます。 本日は、洗米排水を飼料利用するための効率的な回収・鮮度保持方法、豚用リキッド飼

料原料としての栄養価、給与による増体と肉質への影響、さらには環境影響評価について

報告させて頂きます。 1.洗米排水の飼料価値とコスト比較 洗米排水中固形分の栄養価はトウモロコシや小麦と同水準にあり、消化率も高く、可消

化養分総量(TDN)は97.2%と優れています。洗米排水の水分を配合飼料と同じ1

3%に換算し、その売価を配合飼料の半値(一般的なエコフィード価格)に設定すると、

その成分あたりの単価はトウモロコシ、小麦、大豆粕より安価であることが示されました。 2.洗米排水の回収・飼料化システムと環境影響評価

大型炊飯施設や米加工施設に超節水型洗米装置、濃縮装置、加熱減菌装置、貯留タンク、

有機酸添加装置を導入することにより、固形分濃度20%の濃厚洗米排水の回収が可能に

なります。またこの洗米排水は常温で7日間保管しても微生物学的品質において飼料とし

て安全な水準に維持できます。また洗米排水を飼料化した場合のCO2等の温室効果ガス発

生量は、浄化処理した場合の3分の1以下に抑えられることが分かりました。 3.給与豚の発育成績と肉質評価 みたけ食品工業株式会社様(埼玉県、武内社長)と全国畜産農業協同組合連合会様(栃

木県、内谷場長)のご協力を頂き、前者から排出される洗米排水を後者へ搬送し、これを

0%、10%、20%配合したリキッド飼料を180頭の肥育豚に2カ月間給与して発育

と肉質に及ぼす影響を調べました。洗米排水を給与した豚の増体量と飼料要求率は無添加

対照区に比べて優れ、パネラー38名でロース肉を食味した結果、洗米排水を給与した豚

の方が、やわらかさ、多汁性、香りにおいて高い評価を得ました。 4.飼料化による資源循環の事業化構想 洗米排水の排出側である大型炊飯施設や米加工施設には、排水処理コストの大幅な低減、

その処理量が軽減することによる生産能力のアップ、洗米排水の有価販売のメリットがあ

り、受入側である養豚農家には、飼料コストの低減、良質で安価な飼料の確保、豚の肉質

が向上するメリットがあります。 洗米排水飼料化システムに掛かる初期投資、ランニングコスト、排出側の生産量、運搬

費用から流通可能圏域を試算すると、排出側と受入側の双方が経済的メリットとなる範囲

は95kmと推定されました。立地条件としては都市周辺部に大型養豚農家をもつ東京、

大阪、名古屋、札幌などが有望と思われます。今後は、エコフィード認証制度やエコフィ

ード利用畜産物認証制度も活用して、このシステムを全国に普及させたいと考えています。

洗米排水飼料化による資源循環

- 40 - - 41 -

Page 44: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

【事例紹介】

エコフィードを活用した鶏肉生産

千葉県畜産総合研究センター 養豚養鶏研究室

輸入穀物の価格が不安定な現状下、食品残さの飼料化の動きは各地で盛んになり家畜の

種類を問わず関心が高まっている。農林水産省ではこれら飼料の安全性を確保するために、

「食品残さ等利用飼料の安全性確保のためのガイドライン」を制定し具体的な対応などを

定めた。我々もコンビニエンスストアから大量に排出される消費期限切れの食品を飼料化

したエコフィードを肉用鶏に給与し、鶏肉生産の実証試験ならびに生産された鶏肉の理化

学的特性などの評価を行い、輸入穀類にかわる飼料原料として肉用鶏(ブロイラー)飼料

にどの程度利用が可能かを検討した。

供試したエコフィードは、コンビニエンスストアから保冷車で衛生的に収集された消費

期限切れの食品を、弁当のおかず、惣菜、調理パン、具入り麺などの高脂麺、おでん・串

物、サラダ、中華まん、ケーキ・菓子類などの高タンパク質・高脂脂質の素材(以下H)、

ご飯類、低脂麺、菓子パンの低タンパク質・低脂質の素材(以下L)に、原料の段階で分

別し加熱乾燥したものである。エコフィードの成分値を表1に示した。また、供試鶏はブ

ロイラー(チャンキー)で、試験1から試験5まで5回の給与試験を行った。

表 1 エコフィードの成分値 水分 粗タンパク質 粗脂肪 NFE 粗繊維 粗灰分 代謝率 ME

現物中(%) (%) (kcal/kg)

H 9.9 20.6 21.4 39.9 4.4 3.7 80.2 4170 L 10.3 8.6 3.8 72.4 1.9 3.0 88.5 3640

脂肪酸割合(%)

飽和 不飽和 一価 多価 H 26.8 73.2 48.9 24.3 L 31.9 67.9 45.1 22.8

試験1ではHを飼料の配合原料とし、その配合割合により3つの処理群(15%、7.5%、

0%:対照)を設定し、雄鶏と雌鶏に分けて実施した。1群3反復、1反復は雄 11 羽、雌 12

羽とした。発育は雌雄ともにエコフィード給与の2群が対照群よりも良好な成績であった。

肉質成績では、雌雄ともにせん断力価で差が認められ、エコフィードの配合割合の増加に

伴い、肉が柔らかくなる傾向を示した。また、鶏肉中の脂肪酸組成はエコフィードの配合

割合に併行してオレイン酸が増加し、リノール酸が減少したことから、エコフィードの利

用により柔らかく、特徴ある鶏肉の生産の可能性が考えられる結果が得られた。また、H

の配合割合を増加させると給餌ラインが詰まる可能性が示唆されたため適度な流動性を持

たせる目的で、試験2以降はLとの併用で試験を行った。

試験2では農家で簡易に利用できる方法として、市販飼料に上乗せ給与する試験を行っ

- 42 - - 43 -

Page 45: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

【事例紹介】

エコフィードを活用した鶏肉生産

千葉県畜産総合研究センター 養豚養鶏研究室

輸入穀物の価格が不安定な現状下、食品残さの飼料化の動きは各地で盛んになり家畜の

種類を問わず関心が高まっている。農林水産省ではこれら飼料の安全性を確保するために、

「食品残さ等利用飼料の安全性確保のためのガイドライン」を制定し具体的な対応などを

定めた。我々もコンビニエンスストアから大量に排出される消費期限切れの食品を飼料化

したエコフィードを肉用鶏に給与し、鶏肉生産の実証試験ならびに生産された鶏肉の理化

学的特性などの評価を行い、輸入穀類にかわる飼料原料として肉用鶏(ブロイラー)飼料

にどの程度利用が可能かを検討した。

供試したエコフィードは、コンビニエンスストアから保冷車で衛生的に収集された消費

期限切れの食品を、弁当のおかず、惣菜、調理パン、具入り麺などの高脂麺、おでん・串

物、サラダ、中華まん、ケーキ・菓子類などの高タンパク質・高脂脂質の素材(以下H)、

ご飯類、低脂麺、菓子パンの低タンパク質・低脂質の素材(以下L)に、原料の段階で分

別し加熱乾燥したものである。エコフィードの成分値を表1に示した。また、供試鶏はブ

ロイラー(チャンキー)で、試験1から試験5まで5回の給与試験を行った。

表 1 エコフィードの成分値 水分 粗タンパク質 粗脂肪 NFE 粗繊維 粗灰分 代謝率 ME

現物中(%) (%) (kcal/kg)

H 9.9 20.6 21.4 39.9 4.4 3.7 80.2 4170 L 10.3 8.6 3.8 72.4 1.9 3.0 88.5 3640

脂肪酸割合(%)

飽和 不飽和 一価 多価 H 26.8 73.2 48.9 24.3 L 31.9 67.9 45.1 22.8

試験1ではHを飼料の配合原料とし、その配合割合により3つの処理群(15%、7.5%、

0%:対照)を設定し、雄鶏と雌鶏に分けて実施した。1群3反復、1反復は雄 11 羽、雌 12

羽とした。発育は雌雄ともにエコフィード給与の2群が対照群よりも良好な成績であった。

肉質成績では、雌雄ともにせん断力価で差が認められ、エコフィードの配合割合の増加に

伴い、肉が柔らかくなる傾向を示した。また、鶏肉中の脂肪酸組成はエコフィードの配合

割合に併行してオレイン酸が増加し、リノール酸が減少したことから、エコフィードの利

用により柔らかく、特徴ある鶏肉の生産の可能性が考えられる結果が得られた。また、H

の配合割合を増加させると給餌ラインが詰まる可能性が示唆されたため適度な流動性を持

たせる目的で、試験2以降はLとの併用で試験を行った。

試験2では農家で簡易に利用できる方法として、市販飼料に上乗せ給与する試験を行っ

た。HとLの上乗せ給与割合により3つの処理群(H15%・L5%、H10%・L5%、H0%・

L0%:対照)を設定し、雄鶏と雌鶏に分けて実施した。1群3反復、1反復は雄8羽、雌

9羽とした。雄はエコフィード上乗せ給与群の発育が対照群よりも劣る傾向を示し、上乗

せ割合を減らしての検討が必要であると考えられた。雌は H10%・L5%群の発育が良好で、

この割合までの上乗せ給与は可能である。また、雄と雌では、エコフィードの配合が発育

に及ぼす影響が異なることが明らかとなった。肉質成績では、試験1と同様に雌雄ともに

せん断力価で差が認められ、エコフィードの配合割合の増加に伴い、肉が柔らかくなる傾

向を示した。

試験3、試験4では、エコフィードの配合割合を増やし配合の上限の検討を行った。試

験3ではエコフィードを H15%・L5%まで配合した実験を行ったが明確な上限値が得られ

なかった。そこで試験4ではさらに配合割合を増やし、HとLの配合割合により3つの処

理群(H20%・L5%、H15%・L5%、H0%・L0%:対照)を設定した。1群3反復、1反復

雄 13 羽、雌 13 羽とした。雄は H20%・L5%群の発育が他の2群より劣り、H15%・L5%群が対照群より良好な発育を示したことから、H15%・L5%程度の配合が適切であると推察

された。雌は H20%・L5%の配合でも対照群と同等の成績を示した。肉質成績では、雌雄

ともにせん断力価で差が認められ、エコフィードの配合割合の増加に伴い、肉が柔らかく

なる傾向を示した。 試験4の結果からブロイラーの飼料として、今回の試験よりも配合割合をさらに増加す

ることは有効でないと考えられたため、試験5では試験4のデータの再現性の確認と、季

節性による影響を検討するため、試験4の冬期(11 月~1月)における試験と時期を変更

し、夏期(5月~7月)の給与試験とした。試験5は、試験4と同様の処理群を設定し、

1群3反復、1反復雄 12 羽、雌 12 羽とした。発育、肉質は雄、雌ともに、試験4とほぼ

同様の結果を示した。また、冬期と夏期の発育、肉質には、エコフィード給与による影響

はみられず、エコフィードは季節を問わず利用可能であることが明らかとなった。また、

鶏肉中の脂肪酸組成は試験1と同様の傾向を示し、エコフィードの配合割合に併行してオ

レイン酸が増加し、リノール酸が減少した。

以上の結果から、エコフィードはブロイラー飼料原料として、雄は H15%・L5%(化学

成分としては、粗タンパク質 17.6%、粗脂肪 17.0%、ME4,038kcal/kg)、雌は H20%・L5%(化学成分としては、粗タンパク質 18.3%、粗脂肪 17.9%、ME4,064kcal/kg)までの配合

であれば十分に利用が可能と考える。また、肉質は、いずれの試験においても雌雄ともに、

エコフィードの配合割合の増加に伴いせん断力価が低い値を示し、脂肪酸組成は、雌雄と

もにエコフィードの配合割合の増加に伴いオレイン酸が増加し、リノール酸が減少したこ

とから、エコフィードの利用により柔らかく、特徴ある鶏肉の生産の可能性が考えられる

結果が得られた。肉用鶏へのエコフィード給与は、飼料自給率の向上と、飼料コストの低

減に寄与するものと考えられる。

なお、今回事例紹介したブロイラーへのエコフィード給与試験は、平成19~21年度

リサイクル飼料利用畜産物の評価調査事業の課題として実施した成績である。

- 42 - - 43 -

Page 46: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

表.米国産DDGSの分析結果(2010) (%)

州 会社 DM CP FAT 繊維 灰分 NFE 炭水化物 ADF 澱粉 食塩

イリノイ 1 88.2 24.6 9.2 7.2 5.5 41.8 48.9 9.6 4.8 0.25

〃 2 88.1 25.6 10.5 6.6 3.9 41.6 48.1 10.5 5.1 0.23

インディアナ 3 90.0 24.6 9.9 7.0 3.8 44.8 51.8 9.8 7.5 0.28

〃 4 87.5 27.3 8.6 7.4 3.9 40.4 47.7 11.5 5.7 0.28

アイオア 5 89.6 25.5 10.7 7.2 4.4 41.8 49.1 8.8 3.5 0.32

〃 6 91.2 25.6 10.9 7.3 4.1 43.4 50.7 11.1 4.9 0.29

ミシガン 7 89.8 26.0 8.4 7.5 4.7 43.2 50.8 10.8 3.9 0.25

ミネソタ 8 88.8 27.0 8.6 6.9 4.3 42.1 49.0 10.3 4.0 0.37

〃 9 88.3 26.3 11.1 9.9 3.9 40.2 47.0 11.6 3.3 0.32

ニューヨーク 10 87.5 26.0 9.1 7.7 4.7 40.1 47.8 10.8 3.4 0.26

サウスダコタ 11 91.0 28.0 11.2 6.5 4.3 41.1 47.5 10.1 4.8 0.23

〃 12 90.0 26.2 10.0 6.8 3.7 43.3 50.0 10.4 5.8 0.23

〃 13 88.8 24.8 9.4 7.6 4.1 43.0 50.6 10.5 5.5 0.25

89.1 26.0 9.8 7.3 4.2 42.1 49.2 10.4 4.8 0.3

1.23 1.03 1.00 0.85 0.48 1.42 1.51 0.77 1.19 0.04

91.2 28.0 11.2 9.9 5.5 44.8 51.8 11.6 7.5 0.4

87.5 24.6 8.4 6.5 3.7 40.1 47.0 8.8 3.3 0.2

University of Minnesota 2010 http://www.ddgs.umn.edu/profiles-current.htmから改変

平均

最大

最小

標準偏差

農研機構シンポジウム パネルディスカッション 「エコフィード認証制度を食品残渣の活用につなげるために」

全農 飼料畜産中央研究所 研究開発課 笠間乳肉牛研究所 内田江一郎 1.DDGS DDGS(Dried Distillers Grains with Solubles )と言われ、エタノール精製時の製造副産

物で、その工程は①とうもろこしを粉砕、加水・加熱して原液(糖化液)を作り②次にこ

の原液にアルコールを生産する酵母などで発酵③発酵終了後、蒸留・ろ過工程で純度の高

いエタノールが作られる④蒸留残渣固形物を遠心分離で固形分と液(シロップ:Solubles)に分離⑤この固形分に一部シロップを戻し乾燥してできるのが DDGS である。この工程で

は、原料とうもろこしの 1/3のエタノール、1/3の CO2、1/3の DDGS ができる。アメリカ

での DDGS の生産量は、2008 年 23,970 千 t、2009 年は 3,050 万 t、2010 年では 3,300 万

t の発生があり、日本でも 2007 年度に約 12 万 t、2008 年度では約 24 万 t 、2009 年度約

28 万 t が輸入されており、その約 90%がアメリカからの輸入によるものである。 表.年次別DDGSの輸入量の推移(t)年 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011(9月)全体 5,315 5,116 9,379 16,182 14,999 23,338 66,788 118,190 238,457 275,742 273,425 280,903アメリカ 866 945 2,200 2,969 3,074 5,335 43,589 105,779 216,499 248,991 243,540 261,794アメリカ割合(%) 16.3 18.5 23.5 18.3 20.5 22.9 65.3 89.5 90.8 90.3 89.1 93.2出展:貿易統計(財務省) 2.DDGS の栄養成分 前述のとおり、とうもろこし成分の 1/3 の DDGS が生産されることから、単純には、澱

粉以外の成分が単純に約 3 倍になる。201 年のミネソタ大学の全米各地の DDGS 工場で生

産されて DDGS 成分の平均値は DM89.1%、CP26.0%、FAT9.8%、ASH7.3%、ADF10.4%、

澱粉 4.8%となっている。家畜飼料としての特徴としては、①蛋白含量が高い②脂肪含量が

高い③非フィチン態リン割合が高い④第一胃非分解性蛋白率が比較的高い⑤NDF の第一胃

分解性も比較的高い⑤リジン含量が低いなどがあげられる。 3.DDGS の家畜用飼料としての利用 アメリカ Dr.R.Wisner の報告によると、アメリカでの家畜用飼料としては、肉牛が約 54%、

- 44 - - 45 -

Page 47: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

表.米国産DDGSの分析結果(2010) (%)

州 会社 DM CP FAT 繊維 灰分 NFE 炭水化物 ADF 澱粉 食塩

イリノイ 1 88.2 24.6 9.2 7.2 5.5 41.8 48.9 9.6 4.8 0.25

〃 2 88.1 25.6 10.5 6.6 3.9 41.6 48.1 10.5 5.1 0.23

インディアナ 3 90.0 24.6 9.9 7.0 3.8 44.8 51.8 9.8 7.5 0.28

〃 4 87.5 27.3 8.6 7.4 3.9 40.4 47.7 11.5 5.7 0.28

アイオア 5 89.6 25.5 10.7 7.2 4.4 41.8 49.1 8.8 3.5 0.32

〃 6 91.2 25.6 10.9 7.3 4.1 43.4 50.7 11.1 4.9 0.29

ミシガン 7 89.8 26.0 8.4 7.5 4.7 43.2 50.8 10.8 3.9 0.25

ミネソタ 8 88.8 27.0 8.6 6.9 4.3 42.1 49.0 10.3 4.0 0.37

〃 9 88.3 26.3 11.1 9.9 3.9 40.2 47.0 11.6 3.3 0.32

ニューヨーク 10 87.5 26.0 9.1 7.7 4.7 40.1 47.8 10.8 3.4 0.26

サウスダコタ 11 91.0 28.0 11.2 6.5 4.3 41.1 47.5 10.1 4.8 0.23

〃 12 90.0 26.2 10.0 6.8 3.7 43.3 50.0 10.4 5.8 0.23

〃 13 88.8 24.8 9.4 7.6 4.1 43.0 50.6 10.5 5.5 0.25

89.1 26.0 9.8 7.3 4.2 42.1 49.2 10.4 4.8 0.3

1.23 1.03 1.00 0.85 0.48 1.42 1.51 0.77 1.19 0.04

91.2 28.0 11.2 9.9 5.5 44.8 51.8 11.6 7.5 0.4

87.5 24.6 8.4 6.5 3.7 40.1 47.0 8.8 3.3 0.2

University of Minnesota 2010 http://www.ddgs.umn.edu/profiles-current.htmから改変

平均

最大

最小

標準偏差

農研機構シンポジウム パネルディスカッション 「エコフィード認証制度を食品残渣の活用につなげるために」

全農 飼料畜産中央研究所 研究開発課 笠間乳肉牛研究所 内田江一郎 1.DDGS DDGS(Dried Distillers Grains with Solubles )と言われ、エタノール精製時の製造副産

物で、その工程は①とうもろこしを粉砕、加水・加熱して原液(糖化液)を作り②次にこ

の原液にアルコールを生産する酵母などで発酵③発酵終了後、蒸留・ろ過工程で純度の高

いエタノールが作られる④蒸留残渣固形物を遠心分離で固形分と液(シロップ:Solubles)に分離⑤この固形分に一部シロップを戻し乾燥してできるのが DDGS である。この工程で

は、原料とうもろこしの 1/3のエタノール、1/3の CO2、1/3の DDGS ができる。アメリカ

での DDGS の生産量は、2008 年 23,970 千 t、2009 年は 3,050 万 t、2010 年では 3,300 万

t の発生があり、日本でも 2007 年度に約 12 万 t、2008 年度では約 24 万 t 、2009 年度約

28 万 t が輸入されており、その約 90%がアメリカからの輸入によるものである。 表.年次別DDGSの輸入量の推移(t)年 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011(9月)全体 5,315 5,116 9,379 16,182 14,999 23,338 66,788 118,190 238,457 275,742 273,425 280,903アメリカ 866 945 2,200 2,969 3,074 5,335 43,589 105,779 216,499 248,991 243,540 261,794アメリカ割合(%) 16.3 18.5 23.5 18.3 20.5 22.9 65.3 89.5 90.8 90.3 89.1 93.2出展:貿易統計(財務省) 2.DDGS の栄養成分 前述のとおり、とうもろこし成分の 1/3 の DDGS が生産されることから、単純には、澱

粉以外の成分が単純に約 3 倍になる。201 年のミネソタ大学の全米各地の DDGS 工場で生

産されて DDGS 成分の平均値は DM89.1%、CP26.0%、FAT9.8%、ASH7.3%、ADF10.4%、

澱粉 4.8%となっている。家畜飼料としての特徴としては、①蛋白含量が高い②脂肪含量が

高い③非フィチン態リン割合が高い④第一胃非分解性蛋白率が比較的高い⑤NDF の第一胃

分解性も比較的高い⑤リジン含量が低いなどがあげられる。 3.DDGS の家畜用飼料としての利用 アメリカ Dr.R.Wisner の報告によると、アメリカでの家畜用飼料としては、肉牛が約 54%、

表.DDGSの家畜用飼料としての利用割合(%)養鶏 養豚 乳牛 肉牛

アメリカ 5.6 6.9 33.7 53.7日本 44.3 14.0 32.0 9.7アメリカはMRC Ag agricultural marketing Dr.R Wisner日本は飼料月報(農水省)から作成

乳牛が約 34%、養豚が約 7%、養鶏が約 7%となっている。一方、日本(農水省 飼料月報)

では養鶏が約 44%、乳牛が約 32%、養豚が約 14%、肉牛が約 10%となっている。 4.乳牛用飼料への DDGS の利用 乳牛用飼料としては、CP が高く、第一胃非分解性たんぱく質が高いことからたんぱく質

飼料原料としては有効な飼料原料である。一方、脂肪含量が高く、多給による脂肪低下が

懸念される。アメリカでのこれまでの試験結果では給与 TMR 中上限を 20%程度としてい

る。国内の試験でも生田(兵庫県農林水産技術センター)の試験結果では TMR 中 15% の給与で、4%FCM 乳量が有意に増加したと報告している。また、アメリカ Janicek らの試

験結果では、DDGS の給与量を増やすことで、牛乳中 CLA(共役リノール酸)濃度が高ま

ったと報告している。

5.肉牛飼料への DDGS の利用 肉牛飼料としては、脂肪割合・たんぱく質割合が高いことから有効な原料であるが、DDGS中のβカロテン含量が高いことから、肉牛用飼料への多給への懸念がある。全農で過去行

った飼養試験結果では、乳用種肥育用配合飼料中に 10%、交雑種・和牛肥育用配合飼料中

に 15%添加しても、発育増体成績・肉質に特に問題はなく、むしろ良好な結果であった。

なお、乳用種肥育用配合飼料中が 10%と、交雑・和牛肥育用飼料に比べ低いかった理由は、

乳用種肥育用配合飼料の多くは、その配合飼料の形態がペレット(ペレット+フレーク)

と、DDGS を多配すると、ペレット品質の低下が懸念されるためである。

表.Janicekらによる泌乳試験結果

DDGS給与割合 対照区 10% 20% 30% P値DMI kg/d 21.4 22.4 23.0 24.0 <0.01

乳量 kg/d 27.4 28.5 29.3 30.6

3.5%FCM乳量 kg/d 28.0 29.1 30.4 31.2

FCM/DMI 1.30 1.29 1.34 1.29

乳脂肪 % 3.70 3.64 3.73 3.55

乳脂肪 kg/d 1.00 1.03 1.09 1.10

乳蛋白 % 3.18 3.19 3.16 3.14

乳蛋白 kg/d 0.86 0.91 0.92 0.95

MUN mg/dl 15.6 15.2 14.7 14.7 <0.01

B.N.Janicek et al ,J.Dairy Sci.91.2008

表.Janicekら泌乳試験の牛乳中脂肪酸組成対照区 10% 20% 30% P値

C10:0 1.27 1.18 1.45 1.40C12:0 2.21 2.16 2.29 2.38C14:0 9.04 9.08 8.39 8.53C16:0 29.5 28.8 31.4 25.1C16:1 1.66 1.51 1.26 1.43C18:0 15.5 15.1 15 14.6C18:1t-9 2.02 2.22 3.19 3.31 <0.01C18:1c-9 24 24.6 24.6 24.8CLA c-9,t-11 0.34 0.55 0.80 0.98 <0.01C18:2 2.96 3.82 4.78 5.59 <0.01B.N.Janicek et al ,J.Dairy Sci.91.2008

表.肥育用配合飼料へのDDGS配合割合試験結果(全農 飼料畜産中央研究所.2009)

配合中DDGS 割合 0 7.5 10 0 7.5 15 0 7.5 15試験開始体重(kg) 329 331 334 339 343 345 314 312 315試験終了時体重(kg) 848 876 877 829 816 848 816 833 852D.G.(kg) 1.27 1.33 1.33 0.97 0.94 1.00 0.85 0.89 0.91枝肉重量(kg) 499 512 518 513 494 530 527 539 542

ロース面積(cm2) 44.6 43.1 46.3 48.7 47.4 46.7 69.7 64.7 65.2

BMS 2.1 2.1 2.6 3.4 3.4 3.1 5.6 6.4 6.6上物率(%) 0 0 42.9 85.7 42.9 57.1 62.5 75.0 71.4上物率は乳用種・交雑は3等級、黒毛は4等級以上

乳用種去勢肥育 交雑種去勢肥育 黒毛去勢肥育

- 44 - - 45 -

Page 48: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品
Page 49: エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制 …農研機構シンポジウム エコフィード利用畜産物の新たな展開 -エコフィード認証制度を食品

資料の取り扱いについて

本講演に掲載した資料の取り扱いについては、複写、転載および引用の際には、原

著者の了解を得た上で利用されたい。

農研機構シンポジウム

エコフィード利用畜産物の新たな展開

-エコフィード認証制度を食品残渣の活用につなげるために-

印   刷 平成 23 年 12 月8日 

発   行 平成 23 年 12 月8日

編集・発行 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構

      畜産草地研究所 企画管理部 業務推進室

      〒 305-0901 茨城県つくば市池の台2

      電話 029-838-8249 FAX 029-838-8606

印 刷 所 松枝印刷株式会社