10
ؾձจDʢۀԠ༻෦ʣ IEEJ Transactions on Industry Applications Vol.136 No.11 pp.891–900 DOI: 10.1541/ieejias.136.891 ԁٴܗͼιϨϊΠυܕ࣓ք߹ඇ৮څτϥϯεͱ ڞ༻Մͳ Hc ܕτϥϯεͷճ࿏ղੳͱධՁ ੜһ ඇձһ ਗ਼ਫଠ ੜһ ྋଠ һ The Circuit Analysis and Performance Evaluation of an Hc type Magnetic Coupling Contactless Power Transformer that is Compatible with Both Solenoid and Circular Type Transformers Jun Yamada , Student Member, Ryotaro Shimizu , Non-member, Ryota Kobayashi , Student Member, Yasuyoshi Kaneko , Member ʢ2016 4 14 डɼ2016 6 28 डʣ There are two types of the transformers in a contactless power transfer system: solenoid type (H-shaped) and cir- cular type transformers. These two types of transformers are not compatible because their magnetic field structures are dierent. An Hc type transformer that is compatible with both transformer types has been proposed. The Hc type receiver adds a central magnetic pole by dividing the winding coil of the H-shaped receiver. The Hc type receiver can change the magnetic field structure by changing the connections of the divided windings and can receive power from both types of transmitters. In this study, we conducted a circuit analysis and evaluated the performance of the Hc type transformer. Ωʔϫʔυɿඇ৮څɼؾಈɼτϥϯεɼޓɼɼՁճ࿏ Keywords: contactless power transfer, electric vehicle, transformer, compatible, eciency, equivalent circuit 1. Ίʹ ڥੴ༉ރͳͲͷഎܠΒɼԽੴ೩ྉͷґ ଘΛݮΔΊʹɼՈఉελϯυͰόοςϦʔ ʹΔϓϥάΠϯϋΠϒϦουಈʢPHVʣ ؾಈʢEVʣΕΔɻࡏݱɼPHV EV ͷ څؾέʔϒϧΛ༻ΔίϯμΫςΟϒओ ɼརศɾอकͳͲͷ؍Βඇ৮څ (1) (2) ΕΓɼڀݚ։ΜʹͳΘΕΔ (3) ɻ ͷதͰಛʹ༻ԽਐΜͰΔ࣓ք߹ܕͷؾ༻ඇ৮څஔૹଆͱडଆͷʹඞཁͳ ΊɼஔͷΪϟοϓมಈલࠨޙӈͷҐஔΕʹΑ Δڐ༰ғͷେߴͳͷٻΊΒΕΔɻ·ɼ kW ΫϥεͷΛૹΔΊ࿙Ӯ࣓քେੜΔ ͱ༧ΕΔɻ࿙Ӯ࣓քثػࢠਓମͷӨ ڹݒ೦ΕΔΊɼซ౼ݕͳΕͳΒͳɻ ۄ˟ 338-8570 ·ࡩࢢԼେٱ255 Saitama University 255, Shimo-Okubo, Sakura-ku, Saitama 338-8570, Japan ؾಈଆͱଆʹઃஔΕΔඇ৮څ෦ʢτϥ ϯεʣʹɼιϨϊΠυ ܕʢSolenoid רɼܗίΞଆ ר(4) ɼ H ܕ(5) ɼPolarized type (6) ͱݺΕΔʣͱԁܗʢCircular type (7) (8) ɼԁܗίΞยଆ ר(9) ͱݺΕΔʣͷ 2 Δɻ ιϨϊΠυܕɼಛʹ࣓ۃ෦Λு H ܕτϥϯεখ ܕԽɼΪϟοϓԽɼӈͷҐஔΕڐ༰ʹ༏ ΕɼԁܗͰ࿙Ӯ࣓քͷڧখͰ༏ΕΔɻ2 ͷܗঢ়ͷτϥϯε࣓քߏҟͳΔΊޓͳ ͷ··ͰڅͰͳɻறதͱߦதͳͲར༻ ڥʹԠޙࠓڞ༻ΕΔՄΔɼޓ ͷͰେͳ՝ͱͳΔɻ ͷΛղΔΊɼιϨϊΠυٴܕͼԁܗτϥϯ εͱޓͷΔτϥϯεߏ Auckland ΒఏҊ ΕΔɻDDQP (10) ɼBPP (11) (12) ͱݺΕΔτϥϯεΛɼड ଆʹઃஔΔͱͰɼૹଆʹιϨϊΠυܕͷ࣓քߏ ͱಉ DD ΔԁܗͷτϥϯεΛ༻څՄͱ ͳΔɻෳͷԁܗίΠϧΛॏͶͷҟͳΔ࣓ଋΛ ΔߏͱͳΔɼίΠϧͷସ ڞৼίϯσϯαͷબఆ๏ͳͲෆͳΔɻΕʹର ஶΒɼ H ܕτϥϯεΛுίΞɾרߏΛɼ c 2016 The Institute of Electrical Engineers of Japan. 891

円形及びソレノイド型磁界結合方式非接触給電トランスと 共 …akt.ees.saitama-u.ac.jp/2016paper/136_891.pdfVol.136 No.11 pp.891–900 DOI: 10.1541/ieejias.136.891

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

電気学会論文誌 D(産業応用部門誌)IEEJ Transactions on Industry ApplicationsVol.136 No.11 pp.891–900 DOI: 10.1541/ieejias.136.891

論 文

円形及びソレノイド型磁界結合方式非接触給電トランスと共用可能なHc型トランスの回路解析と性能評価

学生員 山田 潤∗ 非会員 清水良太郎∗

学生員 小林 涼太∗ 正 員 金子 裕良∗

The Circuit Analysis and Performance Evaluation of an Hc type Magnetic CouplingContactless Power Transformer that is Compatible with

Both Solenoid and Circular Type Transformers

Jun Yamada∗, Student Member, Ryotaro Shimizu∗, Non-member, Ryota Kobayashi∗, Student Member,

Yasuyoshi Kaneko∗, Member

(2016年4月14日受付,2016年6月28日再受付)

There are two types of the transformers in a contactless power transfer system: solenoid type (H-shaped) and cir-

cular type transformers. These two types of transformers are not compatible because their magnetic field structures

are different. An Hc type transformer that is compatible with both transformer types has been proposed. The Hc type

receiver adds a central magnetic pole by dividing the winding coil of the H-shaped receiver. The Hc type receiver can

change the magnetic field structure by changing the connections of the divided windings and can receive power from

both types of transmitters. In this study, we conducted a circuit analysis and evaluated the performance of the Hc type

transformer.

キーワード:非接触給電,電気自動車,トランス,互換性,効率,等価回路

Keywords: contactless power transfer, electric vehicle, transformer, compatible, efficiency, equivalent circuit

1. はじめに

環境問題や石油枯渇問題などの背景から,化石燃料の依存度を軽減するために,家庭や充電スタンドでバッテリーに充電するプラグインハイブリッド自動車(PHV)や電気自動車(EV)が注目されている。現在,PHVや EVへの

給電は電気ケーブルを用いるコンダクティブ方式が主流だが,利便性・保守性などの観点から非接触給電方式 (1) (2)が注目されており,研究開発が盛んにおこなわれている (3)。その中で特に実用化が進んでいる磁界結合型の電気自動

車用非接触給電装置は送電側と受電側の間に空隙が必要なため,装置間のギャップ長変動や前後左右の位置ずれによる許容範囲の大きい高効率なものが求められる。また,kW

クラスの電力を伝送するため漏洩電磁界が大きく発生する

ことが予想される。漏洩電磁界は電子機器や人体への影響が懸念されるため,併せて検討しなければならない。

∗ 埼玉大学〒338-8570 さいたま市桜区下大久保 255Saitama University255, Shimo-Okubo, Sakura-ku, Saitama 338-8570, Japan

電気自動車側と地上側に設置される非接触給電部(トラ

ンス)には,ソレノイド型(Solenoid巻,角形コア両側巻 (4),H 型 (5),Polarized type (6)とも呼ばれる)と円形(Circular

type (7) (8),円形コア片側巻 (9)とも呼ばれる)の 2方式ある。

ソレノイド型,特に磁極部分を拡張したH型トランスは小型軽量化,長ギャップ化,左右方向の位置ずれ許容量に優れ,円形では漏洩電磁界の強度が小さい点で優れている。2

つの形状のトランスは磁界構造が異なるため互換性がなく

そのままでは給電できない。駐車中と走行中など利用環境に応じて今後両方式が共用される可能性があるが,互換性の上で大きな課題となっている。この問題を解決するため,ソレノイド型及び円形トラン

スと互換性のあるトランス構造がAuckland大学から提案されている。DDQP (10),BPP (11) (12)と呼ばれるトランスを,受電側に設置することで,送電側にソレノイド型の磁界構造と同じ DDあるいは円形のトランスを用いても給電可能と

なる。複数の円形コイルを重ねて向きの異なる磁束を効率良く鎖交させる構造となっているが,コイルの切替えや共振コンデンサの選定方法など不明な点がある。これに対し著者らは,H型トランスを拡張したコア・巻線構造を持ち,

c© 2016 The Institute of Electrical Engineers of Japan. 891

Hc型トランスの性能評価(山田潤,他)

H型及び円形トランスと互換性のあるHc型トランスを提案している (13)。Hc型トランスは従来の H型トランスのコイルを 2分割し,中央部に磁極を追加し,円形トランスとの給電を可能にしている。H型トランスと給電する場合は

2分割したコイル間の接続を変更するだけで磁界構造が変更できるのが特徴である。しかし,Hc型トランスは 2分割したコイルが近接した配置をしているため,設計する上で必要な相互結合を考慮した回路解析や,実用化を考慮した

電源周波数帯域での性能比較が不十分であった。本稿では,一次直列二次並列コンデンサ方式の非接触給

電システムの基礎検討として,提案している Hc型トラン

スと同サイズの円形とH型トランス間との給電特性を明らかにするとともに,回路解析を行い,理論的な観点からHc

型トランスの性能評価をする。

2. 非接触給電トランスについて

〈2・1〉 給電トランスの種類 磁界結合型の非接触給電トランスには,円形とソレノイド型トランスがあり,Fig. 1

に示す通り,コア・巻線方式の違いから磁界構造が異なる。円形トランスはコイルの中心から垂直に貫く磁界構造をしているため,位置ずれに弱く,トランス径の半分程度の位置ずれでコイルに磁束が貫かず,給電できなくなる。ソレ

ノイド型トランスはコイルに並行する磁界構造をしているため,左右の位置ずれが起きても磁束を鎖交させることができ,より大きな位置ずれでも給電することができる。しかし,両トランス間では磁界構造が異なるため給電ができ

ない。

〈2・2〉 Hc型非接触給電トランスの構造 円形及びソ

レノイド型トランスと互換性のある車載側 Hc型非接触給電トランスについて,Fig. 2に寸法を示す。Hc型トランスはソレノイド型磁界構造で磁極部分を拡張したH型トランス (14)を基に改良し,H型トランスのコイル部分を左右に 2

分割することで両方式と互換性を保つ構造となっている。給電時の磁界構造は Fig. 3の通りとなる。Hc型トランス

とH型トランス間で給電する場合は,Fig. 3(a)のように,H

型トランスと並行した磁界を発生させ,従来のH型同様に

水平方向に磁束を鎖交することで Hc型トランスと給電を行っている。また,円形トランスと給電する際には Fig. 3(b)

のようにトランス中央から噴水状に磁界を発生させ,Hc型

トランスの中央磁極から磁束を鎖交することで給電を行っている。

〈2・3〉 Hc型非接触給電トランスの回路構成 Hc型

トランスを用いた一次直列二次並列コンデンサ方式(SP方式)の非接触給電トランス構成について Fig. 4に示す。高周波電源に f0 = 85 kHzの方形波フルブリッジインバータを用い,二次側整流回路には全波整流回路を用いる。二次

トランスの分割したコイルの接続方式は Fig. 4(a)の直列接続と,Fig. 4(b)の並列接続の 2方式が考えられる。

Hc型トランスはコイルが左右に 2分割されているため,

本来は Fig. 4の構成であるが,分割されているコイルが高

(a) Solenoid type

(b) Circular type

Fig. 1. Magnetic field by winding methods.

Fig. 2. Dimensions of Hc core receiver.

(a) H-shaped core transmitter

and Hc core receiver

(b) Circuler core transmitter

and Hc core receiver

Fig. 3. Magnetic field (Hc core reciever).

い磁界結合で結ばれているため,従来は一つのコイルとみ

なして検討されてきた。しかし,位置ずれなどによるパラメータ変動が大きく,コイルに流れる電流の偏りなどもトランス設計時には考慮する必要がある。このため,ここでは分割された状態で回路解析を行う。

3. 回路解析

Hc型トランスは,コイルを 2分割しているため,回路上

892 IEEJ Trans. IA, Vol.136, No.11, 2016

Hc型トランスの性能評価(山田潤,他)

(a) Series circuit

(b) Parallel circuit

Fig. 4. Contactless power transfer systems with Hc typereceiver.

(a) Series circuit (b) Parallel circuit

Fig. 5. Coil connection patterns of transformer part.

は 3巻線トランスである。Hc型トランスの分割コイルを直並列接続した場合について考える。回路図を Fig. 5に示

す。2次側に Hc トランスの設置を想定している。インダクタンスの式は一般的に (1)式として表すことができる。⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎣

V1

V2α

V2β

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎦ = jωL

⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎣I1

I2α

I2β

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎦ = jω

⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎣L1 M12α M12β

M12α L2α M2α2β

M12β M2α2β L2β

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎦⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎣

I1

I2α

I2β

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎦· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (1)

〈3・1〉 直列接続時の回路 直列接続時の回路図はFig. 5(a)となる。直列に接続しているためV2 = V2α + V2β,I2 = I2α = I2β が成り立つ。(1)式より電圧 V2α,V2β,電流I2α,I2βをまとめると (2)式として直列接続時のインダクタ

ンス行列 Lsが整理できる。⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎣V1

V2

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎦ = jωLS

⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎣I1

I2

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎦ = jω

⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎣L′1 M′

M′ L′2

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎦⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎣I1

I2

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎦= jω

⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎣ L1 M12α + M12β

M12α + M12β L2α + L2β + 2M2α2β

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎦⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎣I1

I2

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎦· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (2)

(2)式より,等価的な自己インダクタンス L1′,L2

′,相互インダクタンス M′ が決まる。また,L2α,L2β の巻線抵抗を r2α,r2β とした場合,等価的な巻線抵抗 r2

′ は,以下の(3)式となる。

r′2 = r2α + r2β · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (3)

(2),(3)式より,等価的に 1つの巻線の L2′,r2

′ として表せるため,直列接続の 3巻線トランスは,従来同様の 2

巻線トランスとして扱うことができる。さらに,本節では 3巻線トランスを解析したが,3巻線以上の場合でも同様の計算を行うことで 2巻線トランスとして扱うことができる。

〈3・2〉 並列接続時の回路 並列接続時の回路図は

Fig. 5(b)となる。(1)式より V の式から I の式に変形すると (4)式となる。Δijは Lの余因子である。

⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎣I1

I2α

I2β

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎦ = L−1

⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎣V1

V2α

V2β

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎦ = 1|L|

⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎣Δ11 Δ21 Δ31

Δ12 Δ22 Δ32

Δ13 Δ23 Δ33

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎦⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎣

V1

V2α

V2β

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎦· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (4)

並列に接続しているため V2 = V2α = V2β,I2 = I2α + I2β

の条件が成り立つ。(4)式より V2α,V2β,I2α,I2βを整理すると (5)式となる。

⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎣I1

I2

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎦ = 1|L|

⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎣ Δ11 Δ21 + Δ31

Δ12 + Δ13 Δ22 + Δ23 + Δ32 + Δ33

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎦⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎣V1

V2

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎦· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (5)

(5)式の I の式から V の式へ変形すると,(6)式より,インダクタンス行列 Lpを求めることができる。⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎣V1

V2

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎦ = jωLP

⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎣I1

I2

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎦ = jω

⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎣ L′1 M′

M′ L′2

⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎦ · · · · · · · · · · · · (6)

⎧⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎨⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎪⎩

L′1 = L1 −(M12α − M12β

)2

L2α + L2β − 2M2α2β

L′2 =L2αL2β − M2

2α2β

L2α + L2β − 2M2α2β

M′ =

(L2α − M2α2β

)M12β +

(L2β − M2α2β

)M12α

L2α + L2β − 2M2α2β

また,等価的な巻線抵抗 r2′ は,以下の (7)式となる。

r′2 =r2αr2β

r2α + r2β· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (7)

(6),(7)式より,等価的に 1つの巻線として表せるため,並列接続時においても,従来同様に 2巻線トランスとして

扱うことができる。また,(2),(6)式より,直列接続時の L1

′ は変化しないが,並列接続時の L1

′ には,1次と 2次の相互インダクタンスの項が含まれている。M12α = M12β の場合は L1 とな

るが,位置ずれ等により M12α = M12β の関係が成り立たなくなった場合に値が変化する。つまり,L1

′の値によって決定していたコンデンサ値とのずれが生じ,力率,効率に影響を与えることがわかる。

〈3・3〉 Hc 型トランスの回路 2 分割されたコイル

893 IEEJ Trans. IA, Vol.136, No.11, 2016

Hc型トランスの性能評価(山田潤,他)

Coil1,Coil2が同形状(L2α = L2β),かつ標準状態(M12α =

M12β)を基本形状として検討する。それぞれのコイルを直列・並列で接続したときのインダクタンス行列Ls,Lpは(8)式,結合係数 kは,(9)式として整理される。

LS =

⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎣ L1 2M12α

2M12α 2(L2α + M2α2β

)⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎦ , LP =

⎡⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎣ L1 M12α

M12α12

(L2α + M2α2β

)⎤⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎦

· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (8)

k =2M12α√

2L1

(L2α + M2α2β

) · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · (9)

コンデンサCS,CPや負荷抵抗の導出は,(8),(9)式を用いて計算を行う。

4. トランス効率の導出,コンデンサの決定

〈4・1〉 トランス効率の導出 Hc型トランスを用いたSP方式の回路構成について,一次側インバータから負荷抵抗 RLまでの間を T型等価回路として表すと,Fig. 6として

表せる。一次に直列コンデンサ CS を,二次に並列コンデンサ CP を設置した回路となっている。実際の給電トランスでは,フェライトコアとリッツ線を用いると鉄損を表すr0 と巻線抵抗 r1,r2

′ は電源周波数 f0 においてトランスの

リアクタンス ωM′,ωL1′,ωL2

′ に比べ十分小さい。従って,抵抗成分を省略した回路で検討を進める。また,整流回路と平滑コンデンサを省略し,抵抗負荷 RLはCPと並列で接続した回路で考える。

まず二次側の並列コンデンサCP の値は,電源周波数 f0(= ω0/π)において二次側コイルの自己インダクタンス L2

と共振するように,一次側の直列コンデンサ Csの値は電源力率が 1となるように (10)式の値に決める。

1ω0CP

= ω0L′2,1ω0CS

= ω0L′1(1 − k2

)· · · · · · · ·(10)

この時,VIN と VL,IIN と IL は,以下の (11)式の値となり,理想変圧器と等価となる。また,電源から見た入力イ

ンピーダンスは (12)式で表される。

VIN =M′

L′2VL, IIN =

L′2M′

IL · · · · · · · · · · · · · · · · · · ·(11)

ZIN =

(M′

L′2

)2

RL · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · ·(12)

続いて,銅損のみを考慮したトランス部効率 ηは (13)式,トランス効率の最大値 ηmax と,その時の負荷抵抗(最適負荷)RLmax はそれぞれ (14),(15)式となる。

η =RLIL

2

r1I12 + r′2I2

2 + RLIL2=

RL

r1

(L′2M′

)2

+ r′2

⎧⎪⎪⎨⎪⎪⎩1 +

(RL

ωL′2

)2⎫⎪⎪⎬⎪⎪⎭ + RL

· · · · · · · · · · · · · · · · · · ·(13)

ηmax =1

1 +2r′2ωL′2

√(L′2M′

)2 r1

r′2+ 1

· · · · · · · · · · · · · · ·(14)

Fig. 6. Detailed Equivalent circuit.

Table 1. 2nd coil inductance by transmitter type and coilconnection.

RL max = ωL′2

√(L′2M′

)2 r1

r′2+ 1 · · · · · · · · · · · · · · · · · ·(15)

また,(14),(15) 式の最大効率と負荷抵抗は,k と Q

(Q1 = ω0L′1/r1,Q2 = ω0L′2/r′2)を用いて表すことができ (15),

以下 (16),(17)式となる。

ηmax =1

1 +2

k√

Q1Q2

· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · ·(16)

RL max =r′2Q2

k

√Q2

Q1· · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · · ·(17)

〈4・2〉 コンデンサの決定 コンデンサCPは,(10)式より L2

′によって決定されるが,(8)式より,接続方式によって L2

′が異なる。さらに,Fig. 3より一次側が円形トランス

の場合,Coil1,Coil2に鎖交する相対的な磁束の向きが逆になるため,Coil1,Coil2の相互インダクタンス M2α2β 符号が反転する。これらのことから,回路の接続方式や一次側のトランスによる L2

′ の違いについて整理するとTable 1

となる。コンデンサ CP の決定にあたっては,入出力特性が大きく変化しないよう,一次側のトランス形状に関わらず L′2の差異が小さいことが望ましい。よって,Table 1より H型

との給電では並列接続に,円形との給電では直列接続として Hc型トランスのコイル接続をCP と共に切り替える。

5. シミュレーションによる検証

回路解析で導出した理論式の妥当性を検証するため,接続方式を変えてトランス定数の比較を行った。トランスの各パラメータを Table 2に示す。一次側トランスは H型と

円形の 2パターンを測定し,さらに一次側H型トランスでは,標準状態のほか,x方向の位置ずれ 100 mmとした場合の二か所で測定した。二次側の Hc型トランスは分割されたコイル毎に測定した。H型と円形の標準状態において,

分割されたコイルを直並列接続して測定した値と,Table 2

から算出した理論値と比較をした。結果を Table 3に示す。インダクタンスや結合係数などの各値は,理論値と測定結

果がほぼ一致しており,導出式の妥当性が確認できた。

894 IEEJ Trans. IA, Vol.136, No.11, 2016

Hc型トランスの性能評価(山田潤,他)

Table 2. Parameters of coil inductance and resistance.

Table 3. Comparison of measured values and theoreti-cal values.

(a) Primary: H-shaped core

(b) Primary: Circular core

次に,位置ずれ時について,シミュレーション比較を行った。一次側は H 型トランス,二次側は Hc 型トランスと

し,標準状態と x方向の位置ずれ 100 mmとした場合の二種類の比較をした。Hc 型トランスの分割されたコイルは並列接続とした。シミュレーションソフトに PSIMを用いた。簡略化のため正弦波入力,整流器損失を 0とした。コ

ンデンサ,負荷抵抗は標準状態で最適値となるよう設計し(CS = 0.0532 μF,CP = 0.593 μF,RL = 11.2Ω),3 kW給電を行った。2巻線トランスとした場合の等価的な回路パラメータとシミュレーション結果を Table 4に示す。標準

状態では,理論値,シミュレーション値ともに効率が一致した。位置ずれでは,理論とシミュレーションともに低下している。これは位置ずれによりトランスの各パラメータが変化したため,等価的なインダクタンスや結合係数が低下

し,効率が悪化したことがわかる。また,シミュレーションでは標準状態と同じコンデンサと負荷を使用しているため,理論効率とは厳密には異なるが,傾向は同様である。次に,位置ずれによる電圧・電流を確認する。一次側を比

較すると,位置ずれでVINが低下し IINが増加している。これは,kが低下したことでZINが減少し,VINが低下した。理論値では,標準状態で 11.7Ω,x = 100 mmでは 7.7Ωであることから明らかである。シミュレーション結果では,標準

状態で 11.7Ωとなり理論値と等しいのに対し,x = 100 mm

では 5.5Ωとなり理論値より低い。これは,位置ずれ時も標準状態と同じ RL (= 11.2Ω)で給電を行ったためである。

二次側を比較すると,V2,ID は位置ずれ時も変わらない。

Table 4. Equivalent curcuit parameters and simulationresults.(a) Equivalent circuit parameters (b) Simulation results

(a) H-shaped core (b) Circular core

Fig. 7. Transformer dimensions.

Table 5. Parameters of experiments.

これは,出力が 3 kW一定であるためである。ただし,二次側コイルの電流 I2α,I2β に違いがみられ,標準状態では電

流差異が 0.57 Aに対し,位置ずれ時では 2.44 Aとなった。これは,分割されたコイルが並列接続であり,かつ M12α,M12βに偏りが発生したことで二次側の誘導起電力に差が発生し,電流の差異が発生した。

6. 給電実験

〈6・1〉 実験概要 Hc型トランスとの給電特性を確認

するため,Fig. 7のH型及び円形トランス (16)を用いて給電実験を行った。互換性を確認するために,形状はHc型トランスと同程度とした。Table 5に示すトランス定数を基にコン

デンサ,負荷抵抗を決定した。Fig. 4の回路において,電源

895 IEEJ Trans. IA, Vol.136, No.11, 2016

Hc型トランスの性能評価(山田潤,他)

周波数 85 kHz,インバータ出力 VIN < 350 V,IIN < 35 Aかつトランス効率 ηTR > 90%の範囲で抵抗負荷 RLに 3.0 kW

給電を行い,トランス効率とトランス各部の電圧・電流値,及び漏洩電界強度を測定した。一次側が円形トランスの場

合,コンデンサCSを分割した回路を用いて実験を行った。円形トランスは L1が大きいため,一次側トランスにかかる電圧 V1 が過大となり,コンデンサCSや一次巻線の絶縁が問題となるため分割した。トランス効率は,ギャップ長変

動による特性と位置ずれによる特性について評価した。また,トランス各部の電圧・電流について,位置ずれ特性を評価した。コンデンサCS,CPや負荷抵抗 RLは,トランス

形状やギャップ長毎に最適値に設計をして実験をした。位置ずれ時においては標準状態のCS,CP,RL と同条件とした。また,地上側にも Hc型トランスを設置する可能性も考慮し,Hc型トランス同士の給電特性も併せて実験した。

接続方式は,H型トランスとの給電と同様の接続方式として並列接続とした。

〈6・2〉 ギャップ変動特性 Fig. 8にギャップ変動時の給電効率を示す。効率一次側 H型,二次側 Hc型トランス(H型–Hc型)と,Hc型同士の給電効率は,H型同士とほ

ぼ同等の特性を示した。また,円形–Hc型は,円形同士に近い給電特性を示し,効率低下は約 1%であった。Hc型は

H型に近い形状であるため,結合係数 kの低下は少ないが,対円形との給電では形状差異が大きいため kがより低下する。円形との給電効率を上げるためには,より円形に近い磁界構造にする必要がある。例えば,Hc 型トランスは H

型のコイルを前後に分割しているが,左右方向にも同様のコイルを設け,噴水状に磁束が発生しやすい構造も有効である。

〈6・3〉 位置ずれ特性 ギャップ 150 mm,100 mmの位置ずれ時の給電効率を Fig. 9,Fig. 10に,各部の電圧・電

Fig. 8. Efficiency by gap change.

(a) x direction (b) y direction

Fig. 9. Efficiency by misalignment (gap: 150 mm).

(a) x direction (b) y direction

Fig. 10. Efficiency by misalignment (gap: 100 mm).

896 IEEJ Trans. IA, Vol.136, No.11, 2016

Hc型トランスの性能評価(山田潤,他)

(a) x direction (b) y direction

Fig. 11. Voltage and Current by misalignment (Primary: H-shaped, Secondary: Hc core, gap: 150 mm).

(a) x direction (b) y direction

Fig. 12. Voltage and Current by misalignment (Primary: H-shaped, Secondary: Hc core, gap: 100 mm).

(a) x direction (b) y direction

Fig. 13. Voltage and Current by misalignment (Primary: Circular, Secondary: Hc core, gap: 100 mm).

流を Fig. 11,Fig. 12,Fig. 13に示す。トランスの対称性から H型,Hc型トランスは,x � 0,y � 0の範囲で,円形

トランスは r � 0の範囲で位置ずれさせて測定した。また,ギャップ 150 mmの円形–Hc型の給電では,IIN が 35 Aを超えてしまうため,ギャップ 100 mmのみ測定した。ギャップ 150 mmでは,H型–Hc型と Hc型トランス同

士の給電を行い,H型同士の給電効率と比較した。結果をFig. 9に示す。また,各部の電圧・電流について,H型–Hc

型の結果を Fig. 11に示す。Fig. 9より,標準状態では,効率に差異は見られなかった。位置ずれ時では,効率低下は

平均 1%程度であり,H型同士と同様の特性である。Hc型同士の給電で,x方向の効率低下幅が大きいが,並列接続により L2’が変化し,その結果二次側の共振がずれてしまったことが影響したと考えられる。また,Fig. 11より,一次

側の電圧 VINは位置ずれで低下し,二次側の電圧 V2は一定となった。VINが低下した理由は,kが低下したことよりイ

897 IEEJ Trans. IA, Vol.136, No.11, 2016

Hc型トランスの性能評価(山田潤,他)

(a) Primary: H-shaped core (gap 150 mm) (b) Primary: Circular core (gap 100 mm)

Fig. 14. Leak electric field of the transformers.

ンピーダンスが減少したためである。V2が一定となった理

由は,出力一定としたためである。I2α,I2βの電流差異をみると,y方向への位置ずれでは 0.6 A未満で偏りがほぼないが,x方向への位置ずれでは,差異が大きく,x = 100 mm

で 2.7 Aとなった。位置ずれで M12α,M12β に偏りが発生

したことで二次側の誘導起電力に差が発生し,シミュレーションと同様,電流の差異が発生したと考えられる。ギャップ 100 mmでは,H型トランスとの性能比較に加

え,円形トランスとの比較も行った。結果を Fig. 10 に示

す。また,各部の電圧・電流について,H型–Hc型の結果をFig. 12に,円形–Hc型の結果を Fig. 13に示す。Fig. 10より,対 H型トランスとの給電比較では,ギャップ 150 mm

と同様,H型同士と同様の特性を示した。位置ずれ時の特性は,ギャップ 150 mmの給電効率ほどの差異は見られず,ほぼ同等である。Fig. 12より,トランスの電圧も,ギャップ 150 mmと同様の特性を示し,VINは位置ずれで減少,V2

は一定となった。I2α,I2βの電流差異もギャップ 150 mmと同様の傾向を示し,y方向への位置ずれでは 1 A未満で偏りがほぼなく,x方向では差異が大きく,x = 100 mmで 6.7 A

となった。

対円形との比較において,円形–Hc型は標準状態の給電効率が約 94.0%と高い効率を維持している。位置ずれ時の効率は,円形同士と同程度の傾向を示し,共用可能であることが言える。y方向への位置ずれで効率低下幅が小さい

理由は,Hc型トランスの位置ずれに強い方向であるため,低下が抑えられたと考えられる。また,Fig. 13より,位置ずれ時において VINと V2 の特性をみると,VINが低下,V2

が一定となり,対 H型との給電特性と傾向は同等である。

また,対 H型との給電とは異なり二次側コイルに流れる電流 I2 が一定で電流の偏りはない。これは,Hc型トランスの分割されているコイルが直列に接続しているためである。

7. 漏洩電界

〈7・1〉 実験概要 漏洩電界は電子機器へ影響を及ぼすため,電波法(施行規則第 46条の 2)で基準値が定められている。実験には全面電波吸収体である電波暗室で行い,

測定器は直径 60 cmのループアンテナを用いた。ループア

ンテナは標準状態のトランス間の中心から水平方向に 3 m

離れた距離に設置し,漏洩電界強度の絶対値が最大となる位置に配置した。電波法では,設備から 10 m離れた距離の磁界強度が基準となっているため,測定距離を 3 mに換算した。また,磁界強度を電界強度に換算して比較を行った。

〈7・2〉 漏洩電界強度の比較 Fig. 14に一次側:H型(ギャップ 150 mm),一次側:円形(ギャップ 100 mm)における給電時の漏洩電界強度を示す。図中の破線は漏洩電界の基準値を示している。測定した方向は,漏洩電界が最も高

い状態となる方向であり,H型–Hc型は x方向,円形–Hc型は y方向である。また,ギャップ 150 mmの円形–Hc型の給電では,IINが 35 Aを超えてしまうため,ギャップ 100 mm

で比較をした。

Fig. 14(a)より,基本波において,H型–Hc型はH型同士給電結果との差が 1 dB以下であり,ほぼ同等である。同様に Hc型トランス同士の漏洩電界も測定したところ,H型

同士との差は 1 dB未満となり,H型トランス同士とほぼ同等であった。

Fig. 14(b)では,円形–Hc型は円形同士の結果に近い特性を示している。基本波を比較した場合,円形同士より 4.1 dB

高いが,一次側と二次側のトランス形状差異により結合係数が低下したことで,漏洩電界が増加したと考えられる。このように,ソレノイド型及び円形とも Hc型トランスとの給電では,相対するトランスの特性に近い特性が得ら

れることが分かった。また,今回実験は構造による違いを明らかにするため,特に漏洩電界対策を行っていない。このため,全ての組み合わせで電波法の基準値を上回っているが,基本波の低減にはキャンセルコイル (17)の設置,高調

波の低減にはインバータ電源のパルス幅制御やリアクトルの挿入 (18)等の対策が有効である。

8. ま と め

本論文では,基礎検討として,同サイズのH型及び円形

トランスと給電可能な Hc型トランスの給電特性を明らかにするとともに,複数コイルの回路解析を行い,理論的な観点から Hc型トランスの性能評価を行った。複数コイル

を直並列接続した場合のインダクタンスを導出し,1対 1

898 IEEJ Trans. IA, Vol.136, No.11, 2016

Hc型トランスの性能評価(山田潤,他)

のトランスとして等価的に表されることを確認した。さらに,シミュレーションを行い,理論式の妥当性を確認した。また,給電実験からHc型トランスの給電特性について確

認した。その結果,相対するトランスに合わせた磁界構造

となるよう回路設計することで,対円形では円形同士,対H型ではH型同士の給電効率に近い特性が得られることを確認した。コイルを並列接続した場合,並列したコイルと相対するトランスとの相互結合に偏りが生じたことで,二

次側コイルの電流が変化するとともに効率に影響を与えることを理論的な観点から明らかにした。漏洩電界強度の測定では,H型–Hc型とH型同士は,ほ

ぼ同等の電界強度を示した。円形–Hc型は円形同士と近い特性を示した。構造差異により増加した漏洩電界は約 4 dB

であった。Hc型トランスとの給電では,相対するトランスの特性に近い特性が得られることが分かったが,いずれの

条件においても漏洩電界は基準値を上回っているため対策が必要である。今後,接続方法を変更せずに給電できるよう,インダク

タンスの差異を減らした,より互換性の高い形状・サイズ

の検討や,効率向上に向けて,提案した理論式を用いてコイルおよび磁極の追加などトランス構造を改良すると共に,漏洩電磁界の低減対策を追加した場合の比較についても検討する予定である。

文 献

( 1) JSAE: “The Handbook of Automotive Engineering No.10: Design (EV ·Hybrid Vehicles)”, JSAE, pp.322–336 (2011) (in Japanese)自動車技術会:「自動車技術ハンドブック 10©設計(EV・ハイブリッド)編」,自動車技術会, pp.322–336 (2011)

( 2) IEEJ: “Battery System Technology”, Ohmsha, Ltd., pp.236–264 (2012)電気学会・移動体用エネルギーストレージシステム技術調査専門委員会編:「電池システム技術」,オーム社, pp.236–264 (2012)

( 3) S. Abe: “Technology Trends of Contactless Power Transfer Systemsfor Electric Vehicle and Plug-in Hybrid Electric Vehicle”, IEEJ Journal,Vol.133, No.1, pp.25–27 (2013) (in Japanese)阿部 茂:「EV・PHEV用非接触給電の技術動向」,電学誌, Vol.133,No.1, pp.25–27 (2013)

( 4) T. Iwata, N. Ehara, Y. Kaneko, S. Abe, T. Yasuda, and Ida: “Comparison ofcharacteristic by Transformer Winding Method of Contactless Power Trans-fer Systems for Electric Vehicle”, The Paper of Technical Meeting on Semi-conductor Power Converter (SPC), IEEJ, SPC-09-39, pp.109–114 (2009) (inJapanese)岩田卓也・江原夏樹・金子裕良・阿部 茂・保田富夫・井田和彦:「電気自動車用非接触給電装置のトランス巻線方式による特性比較」,電学半導体電力変換研資, SPC-09-39, pp.109–114 (2009)

( 5) M. Chigira, Y. Nagatsuka, Y. Kaneko, S. Abe, T. Yasuda, and A. Suzuki:“Small-size Light-weight Transformer with New Core Structure for Con-tactless Power Transfer System of Electric Vehicle”, The Paper of Techni-cal Meeting on Semiconductor Power Converter (SPC), IEEJ, SPC-11-48,pp.139–144 (2011) (in Japanese)千明将人・長塚裕一・金子裕良・阿部 茂・保田富夫・鈴木 明:「新コア構造による電気自動車用非接触給電装置トランスの小型軽量化」,電学半導体電力変換研資, SPC-11-48, pp.139–144 (2011)

( 6) M. Budhia, G.A. Covic, and J.T. Boys: “A New Magnetic Coupler for In-ductive Power Transfer Electric Vehicle Charging Systems”, IEEE IECON2010, pp.2481–2486 (2010)

( 7) C.-S. Wang, O.H. Stielau, and G.A. Covic: “Design consideration for acontactless electric vehicle battery charger”, IEEE Trans. Ind. Electronics,Vol.52, No.5, pp.1308–1314 (2005)

( 8) R. Kluth and J. Ziegner: “Inductive charging—simplifying the charge toenable mass adoption”, EVS26 International Battery, Hybrid and Fuel Cell

Electric Vehicle Symposium, Los Angeles (2012)( 9) Y. Kamiya, Y. Daisho, and H. Matsuki: “Inductive Power Supply System for

Electric-driven Vehicles”, IEEJ Journal, Vol.128, No.12, pp.804–807 (2008)(in Japanese)紙屋雄史・大聖泰弘・松木英敏:「電動車両用非接触急速充電システム」,電学誌, Vol.128, No.12, pp.804–807 (2008)

(10) M. Chigira, Y. Nagatsuka, Y. Kaneko, S. Abe, T. Yasuda, and A. Suzuki:“Novel Core Structure and Iron-loss Modeling for Contactless Power Trans-fer System of Electric Vehicle”, IEEJ Trans. on IA, Vol.132, No.1, pp.123–124 (2012)

(11) G.A. Covic, M.L.G. Kissin, D. Kacprzak, N. Clausen, and H. Hao: “A Bipo-lar Primary Pad Topology for EV Stationary Charging and Highway Powerby Inductive Coupling”, IEEE ECCE 2011, pp.1832–1838 (2011)

(12) A. Zaheer, D. Kacprzak, and G.A. Covic: “A Bipolar Receiver Pad ina lumped IPT System for Electric Vehicle Charging Applications”, IEEEECCE 2012, pp.283–290 (2012)

(13) R. Shimizu, Y. Kaneko, and S. Abe: “A New Hc Core Transmitter of aContactless Power Transfer System that is Compatible with Circular CoreReceivers and H-Shaped Core Receivers”, EDPC 2013, Nuremberg, P369 -375 (Oct 29 - 30, 2013)

(14) Y. Sato, H. Takanashi, Y. Kaneko, S. Abe, T. Yasuda, and A. Suzuki: “ALarge Air Gap Transformer of Contactless Power Transfer System for Elec-tric Vehicle”, National Convention Record, IEE Japan, 4-205 (2002) (inJapanese)佐藤亨耶・高梨浩也・金子裕良・阿部茂・保田富夫・鈴木 明:「電気自動車用非接触給電トランスの長ギャップ化」,電学全大, 4-205 (2012)

(15) T. Tohi and Y. Kaneko, and S. Abe: “Maximum Efficiency of ContactlessPower Transfer Systems using k and Q”, IEEJ Trans. IA, Vol.132, No.1,pp.123–124 (2012) (in Japanese)遠井敬大・金子裕良・阿部 茂:「非接触給電の最大効率の結合係数 k とコイルの Q による表現」,電学論 D, Vol.132, No.1, pp.123–124(2012)

(16) Y. Mita, Y. Kaneko and S. Abe: “Comparison of Charge Zone Between H-shaped Transformer and Circular Transformer of Contactless Power TransferSystem for Electric Vehicle”, The papers of Technical Meeting on VehicleTechnology, IEEJ, VT-13-005, pp.25–30 (2013) (in Japanese)三田祐輔・金子裕良・阿部 茂:「電気自動車用非接触給電の H 型トランスと円形トランスの給電可能範囲の比較」, 電学自動車研資,VT-13-005, pp.25–30 (2013)

(17) S. Lee, W. Lee, J. Huh, H. Kim, C. Park, G. Cho, and C. Rim: “Active EMFcancellation method for I-type pickup of On-Line Electric Vehicles”, IEEEApplied Power Electronics Conference and Exposition (APEC), pp.1980–1983 (2011)

(18) M. Jo, Y. Kaneko, and S. Abe: “Methods for Reducing Leakage Elec-tric Field of a Wireless Power Transfer System for Electric Vehicles”,ECCE2014, Pittsburgh, pp.1762–1769 (2014)

山 田 潤 (学生員) 1980 年 1 月 18 日生。2002 年 3 月茨

城大学工学部システム工学科卒業。2004 年 3 月

同大学大学院理工学研究科博士前期課程システム

工学専攻修了。同年(株)富士テクニカルリサー

チ入社。2007 年衆議院事務局入局。2015 年 4月

埼玉大学理工学研究科博士後期課程に進学。主に

非接触給電システムの研究に従事。

清 水 良太郎 (非会員) 1991 年 3 月 30 日生。2013 年 3 月埼

玉大学工学部電気電子システム工学科卒業。2015

年 3月同大学大学院理工学研究科博士前期課程数

理電子情報系専攻修了。同年トヨタ自動車(株)

入社。

899 IEEJ Trans. IA, Vol.136, No.11, 2016

Hc型トランスの性能評価(山田潤,他)

小 林 涼 太 (学生員) 1991年 9月 1日生。2014年 3月埼玉

大学工学部電気電子システム工学科卒業。同年 4

月同大学大学院理工学研究科博士前期課程数理電

子情報系専攻に進学。主に非接触給電システムの

研究に従事。

金 子 裕 良 (正員) 1965 年 6 月 22 日生。1987 年 3 月埼玉

大学工学部電気科卒業。1989年 3月同大学大学院

修士課程卒業。同年新日本製鐵(株)入社。1990

年 4 月埼玉大学工学部助手。1995 年 2 月同大学

総合情報処理センター講師。2000 年 4 月工学部

講師。2008 年 4 月同大学大学院理工学研究科准

教授。2014 年 4 月教授。現在電気機器の制御お

よび産業用ロボットの知的情報処理・制御の研究

に従事。工学博士。IEEE,溶接学会各会員。

900 IEEJ Trans. IA, Vol.136, No.11, 2016