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概要 モーション シミュレーションとは何でしょうか?どのような問題を解析できるのでしょうか?それは製品設計 プロセスにどのようなメリットをもたらすでしょうか?本書ではこれらの問題を説明し、モーション シミュレー ションで解析できる事例を見ていきます。また、CAE設計ツールとしてのモーション シミュレーションの実設計 への適用例を紹介します。 モーション シミュレーションを 理解する ホワイトペーパー

モーション シミュレーションを 理解するcad.weblike.jp/3d-solidworks/Whitepaper/SIM_Motion...図7:エクササイズマシンの設計にもモーション シミュレーションを適用することでステッ

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概要

モーション シミュレーションとは何でしょうか?どのような問題を解析できるのでしょうか?それは製品設計プロセスにどのようなメリットをもたらすでしょうか?本書ではこれらの問題を説明し、モーション シミュレーションで解析できる事例を見ていきます。また、CAE設計ツールとしてのモーション シミュレーションの実設計への適用例を紹介します。

モーション シミュレーションを

理解する

ホ ワ イト ペ ー パ ー

はじめに

1980年代、CAE(Computer-aided Engineering)手法が設計開発に利用されはじめた頃、FEA(Finite Element Analysis)は広範に普及した最初のシミュレーションツールにとして知られるようになりました。以来、FEAは、新製品の構造的性能を調べる設計エンジニアを助け、時間のかかる高価な試作品の多くを、CADモデル上で実行する安価なコンピュータシミュレーションに置き換えてきました。

今日、機械製品の複雑化と、新製品を市場により早く投入するための厳しい競争から、エンジニアはシミュレーションの範囲をFEA以外にも拡大しなければならないという大きなプレッシャーに直面しています。FEAを使って構造的性能をシミュレートすることに加えて、新製品のキネマティクスやダイナミクスについても、物理的試作品を構築する前に理解しておく必要があるのです。

モーション シミュレーションは剛体力学とも言われ、シミュレーションによるこれらの問題へのアプローチを提供します。その利用は急速に広がっています。そのため、モーションシミュレーションとは何か?どのような問題を解析できるか?製品設計プロセスにどのようなメリットがあるか?等、設計エンジニアの興味も高まっています。

モーション シミュレーションによる機構解析と統合

たとえば、楕円をトレースする楕円コンパスの設計をしているとします。 CAD アセンブリで合致を定義すれば、モデルをアニメーションして機構を構成する部品がどのように動くかを確認することができます(図1)。アセンブリアニメーションではアセンブリ構成部品の相対的な動きを表示することができますが、動きの速度は関係なくタイミングも任意です。速度、加速度、ジョイントの反力、動力要件等を調べるには、より強力なツールが必要となります。このようなケースでモーション シミュレーションが役に立つのです。

図1:CADのアニメーション機能でシミュレートした楕円コンパスの様々な位置

モーション シミュレーションは、可動機構に含まれるあらゆる構成部品の位置、速度、加速度、を含むキネマティクス、およびジョイント反力、慣性力、動力要件を含むダイナミクス に関する全ての定量的情報を提供します。さらに、モーション シミュレーションを実行するのに必要なものはすべてCADアセンブリモデルに既に定義されており、これをモーション シミュレーション プログラムに移すだけでほとんど時間をかけずにモーション シミュレーションの結果を得ることができる点が多くのケースで重要になります。

前述の楕円コンパスの場合、設計者はモーターの速度、トレースする点、 見たいモーション結果を指定するだけです。それ以外はユーザーが介入することなくプログラムがすべて自動的に処理します。モーション シミュレーション プログラムはCAD部品の材料プロパティを使って機構部品の慣性プロパティを定義し、CADアセンブリ合致条件をキネマティック ジョイントに変換します。その後機構の動きを表す方程式を自動的に作成します。

モーション シミュレーションは、可動機構

に含まれるあらゆる構成部品の位置、速度、

加速度、を含むキネマティクス、およびジョ

イント反力、慣性力、動力要件を含むダイナ

ミクス に関する全ての定量的情報を提供

します。

モーション シミュレーションを理解する 2

FEAで解析する弾性体構造とは異なり、機構は自由度のほとんどない剛体部品で構成されるアセンブリとして表されます。数値ソルバーが動きの方程式をきわめて短時間で処理し、結果としてすべての構成部品の変位、速度、加速度、ジョイント反力、慣性力、および動きを維持するのに必要な動力に関する全ての情報が出力されます(図2)。

図2:モーション シミュレータにより計算された線形速度およびモーターの動力条件

図3に示す反転スライダ機構の動きのシミュレーションは、機械のキネマティクスの教科書によく登場する運動です。ここでの目標は、クランクが一定の速度で回転する際のロッキングアームの角速度と加速度を求めることです。この問題の解析手法にはいくつかありますが、学生が最もよく使用するのは複素数を使用した手法です。しかしながら、このような問題を「手作業」で求めるには膨大な計算が必要で、表計算ソフトを使ったとしても速度および加速度プロットを作成するには1-2時間を要するでしょう。そして、スライダの形状が変更されれば、すべてをやり直さねばならず、大学生にとって興味深い課題となりますが実際の製品開発では全く非実用的と言えます。 モーション シミュレーション ソフトウェアは、既にCADアセンブリモデルに含まれているデータを使ってこの反転スライダの動きをほぼ瞬時にシミュレートすることができます。

図3:ロッキングアームの角速度を計算するための反転スライダ機構のシミュレーション

モーション シミュレーション プログラムは

CAD部品の材料プロパティを使って機構部品

の慣性プロパティを定義し、CADアセンブリ

合致条件をキネマティック ジョイントに変

換します。

モーション シミュレーションを理解する 3

モーション シミュレーションは干渉もチェックします。そしてこれはCADのアセンブリ アニメーションの干渉チェックとは大きく異なるプロセスです。モーション シミュレーションは干渉チェックをリアルタイムに実行し、すべての機構部品の正確な空間および時間位置と正確な干渉ボリュームを計算します。さらに、図4に示すクイックリターン機構のように形状を変更しても、ソフトウェアは全ての結果を数秒で更新し、動きに関するあらゆる結果をグラフとして、または任意の表形式で表示します。

図4:スライダと従動リンク間の干渉を簡単に検出し、修正可能

エンジニアは前述の楕円コンパスのような単純な機構は2Dで表現することができます。これらは手作業で解析するのは困難で時間がかかるものの、解析の方法が存在するからです。しかしながら、3D機構の場合、図5に示すような単純なものであったとしても、確立された解析手法は存在しません。しかしモーション シミュレーションは2D、3Dを問わず複雑な機構でも処理できるよう設計されているため、このような問題も数秒で簡単に解析できます。 機構に多数の剛体リンク、ばね、ダンパー、接触ペアが含まれていても、 解析時間にほとんど影響しません。たとえば、図6に示したスノーモービルのフロントサスペンション、図7のエクササイズマシン、図8のCDドライブなどの動きも、反転スライダと同じ簡単さでシミュレートすることができます。

図6:スノーモービルのフロントサスペンションは、ばねやダンパーを含む多数のリンクで

構成されている

図5:シンプルな3D機構も「手作業で」計算すると非常に難しいが、モーション シミュレ

ーションはきわめて簡単

モーション シミュレーションは干渉チェッ

クをリアルタイムに実行し、すべての機構

部品の正確な空間および時間位置と正確な

干渉ボリュームを計算します。

機構解析に加えて、モーション シミュレー

ションにより得られた動きの軌跡をCADジオ

メトリに変換して、メカニズム(機構)の統合

ができます。

モーション シミュレーションを理解する 4

図7:エクササイズマシンの設計にもモーション シミュレーションを適用することでステッ

パーの動きの軌跡を最適化し、ユーザーの生成する力を計算することができる

図8:CDドライブは複雑な機構だがモーション シミュレーションを使って簡単に解析できる

機構解析に加えて、製品開発者はモーション シミュレーションにより動きの軌跡をCADジオメトリに変換しそれを使って新しい部品を作成するといった、メカニズム(機構)の統合を行うこともできます。図9に例題を示します。この設計には、スライダをガイドレールに沿って動かすカムが含まれており、モーション シミュレーションを使ってそのカムの輪郭を生成します。ユーザーは希望するスライダの位置を時間ベースで指定し、回転するブランク カム(円形の板)上のスライダの動きをトレースします。そしてこのトレースのパスをCADジオメトリに変換し、図10に示すようなカム輪郭を作成します。

図9:変位の関数を適用し、スライダをガイドレールに沿って移動させる

図10:スライダの移動を回転する円形の板でトレースし、カムの輪郭(板上の溝で示

される)を作成

モーション シミュレーションを理解する 5

設計者はモーションの軌跡をたとえば図11に示すような工業用ロボットのモーションを検証するのにも使用できます。物理的なテストをすることなく、ツールパスを検査し、ロボットの大きさを選択したり動力条件を求めるのに必要な情報を取得することができます。

図11:工業用ロボットをシミュレーションし、様々な位置情報を確認することにより物理的

テストを行わなくてもツールパスを作成することができる

モーション シミュレーションを適用するもう一つの重要なポイントは、動いているボディ間の衝突により生じるモーションに関するものです。衝突するボディの弾性について一定の仮定を行う必要はありますが、モーション シミュレーションは図12のように一時的な接触を起こす構成部品を含む機構に対しても正確な結果を生成することができます。

図12:モーション シミュレーションでは衝撃と接触もシミュレートできます。たとえば、

バルブリフト機構のカムとフォロワー(ロッカー) 間にできるギャップを調べるのにも適用

可能です。

モーション シミュレーションをFEAとあわせて使用する

機構シミュレーションにおいてモーション シミュレーションとFEAがどのように連携するかを理解する上で、各ツールのベースとなる基本的な前提条件を理解することは役立ちます。

FEA は構造解析のための数値解析テクニックであり構造体を理解するための主要なCAEアプローチとなっています。FEAは図13のブラケットのように、しっかりと支持されたあらゆる弾性体の挙動を解析できます。弾性とはオブジェクトが変形可能であることを意味します。静的な荷重を与えることにより、ブラケットは新しい、変形した形状となり、そのまま動きのない状態を維持します。動的な荷重を与えるとブラケットは釣り合った位置で振動します。 FEA では静的または動的な荷重を与えたブラケットの変位、ひずみ、応力、振動を解析することができます。

図13:しっかりと支持されたブラケットは変形せずに動くことはできない

設計者は、工業用ロボットのモーションを検

証するためにモーション解析の結果としての

軌跡情報を使用することができます。

機構(メカニズム)シミュレーションにおいて

モーション シミュレーションとFEAがどのよ

うに連携するかを理解する上で、各ツールの

ベースとなる基本的な前提条件を理解するこ

とは役立ちます。

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対照的に、部分的に支持されたオブジェクト、たとえばブラケットに取り付けられたフライホイール(図14)は変形せずに動くことができます。フライホイールは剛体として動くことができるため、この装置は構造体ではなく機構と分類できます。フライホイールの動きを調べるのにはモーション シミュレーションを使用します。フライホイールを剛体として扱う場合応力やひずみは計算できません(詳しくは付録1をご覧ください)。

図14:フライホイールはベースに取り付けられているヒンジを中心に剛体として回転

(上)。剛体のモーション(下)が含まれることからこの装置は機構と分類される。

図15に示された2つの装置の例で示すように構造体と機構(メカニズム)の違いは一目ではわかりません。どちらの装置にも動かないベース部にヒンジで接続されたスイングアームがあります。右側のものはばねでアームとベースがつながっています。ばねのない方が機構です。スイングアームは自由に回転できるためです。ヒンジを中心に回転するか、釣り合った位置で振動するかに関わらず、アームが動くときに装置のどの部分も変形せずにすみます。アームが剛体のモーションを示すため左側の装置は機構であると分類されます。この装置の動きはモーション シミュレーションで調べることができます。

図15:左側の装置のスイングアームは変形せずに動くことが可能なため、これは機構となる。

右側の装置でアームを動かそうとすると、ばねが変形するのでこれは構造体となる。

ばねの追加によりこの装置の性質は変化します。なぜならばアームはばねを変形させることなく動かすことができないからです。連続したアームの動きで唯一可能なのは釣り合った位置での振動です。アームの動きにはばねの変形が伴い、これにより右側の装置は構造体であると分類されます。FEAはアームの振動を解析することができ、必要であれば、弾性体として扱われるばねおよびその他の部品内のひずみや応力を計算することも可能です。(モーション シミュレーションとFEAの違いについてさらに詳しい情報は付録2を参照してください)。

モーション シミュレーションによる解析終了後、設計エンジニアが変形および/または応力解析を機構を構成する部品に対して行いたい場合、選択した部品にFEAを適用して構造解析を行う必要があります。

構造体と機構(メカニズム)の違いは一目みた

だけではわからないかもしれません。

「連成」シミュレーションによってFEAで適

用すべき荷重を自動的に定義し、手動でのセ

ットアップにありがちなあて推量やミスを解

消することができます。

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モーション シミュレーションの結果は、FEAを使って行う構造解析で必要となる、機構内のリンクに対するジョイント反力と慣性力で構成される入力データとして使用できます。モーション シミュレーションはこれらの値をFEAを後でおこなうかどうかに関わらず常に生成します。ジョイント反力と慣性力は当然つり合いがとれているわけで、メカニズムにより発生した釣り合い荷重をFEAに転送することにより、解析プログラムは、構造体として処理します。

モーション シミュレーションからFEAへのデータ転送は手作業で行うこともできますが、モーション シミュレーション ソフトウェアがFEAに結果を自動的にエクスポートできれば最高の結果が得られるはずです。このような方法で使われる場合、モーション シミュレーションとFEAは「連成」シミュレーションと呼ばれる解析を実行します。これによりFEAの荷重は自動的に定義され、手作業での設定にありがちなあて推量やミスをなくすことができます。

図16のクランク機構の例は連成シミュレーションを示したものです。ここでは、設計エンジニアは接続ロッド内の最大応力を調べようとしています。

図16:モーション シミュレーションにより結合ロッドの両端の反力を調べます。ロッドに

対する慣性力も計算されます。

モーション シミュレーションとFEAを組み合わせて使う手順は次の通りです:

1. モーション シミュレーションを使って、スタディに選択した動きの範囲内での全ての構成部品に対する変位、速度、加速度、ジョイント反力、慣性力を調べます。このステップでは、全ての機構リンクは剛体として扱われます。図16のプロットは、クランクを1回転する間の接続ロッドのジョイント反力を示したものです。

2. 接続ロッドのジョイントの反力が最大となる機構の位置を探します。解析エンジニアが最大反力に注目するのは接続ロッドに生じる最大応力は荷重が最大の時の解析結果に示されるからです。しかし必要に応じて、図17に示す通り、複数の位置を選択することが可能です。

図17:接続ロッドに作用する力 - 両端の反力と慣性力 - はクランクシャフト機構の任意の数

の位置に対して求めることができます。

解析エンジニアが最大反力に注目するのは、

接続ロッドに生じる最大応力は荷重が最大の

時の解析結果に示されるからです。

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3. これらの反力とCADアセンブリからの慣性力を接続ロッドのCAD部品モデルに適用します。

4. アセンブリから分離された接続ロッドに適用される荷重は図18に示されるようにジョイント反力と慣性力です。ダランベールの法則によれば、これらの荷重は釣り合っており、接続ロッドを静的荷重下の構造体として扱うことができます。

図18:ダランベールの法則によれば、ジョイント反力は慣性力と釣り合っています。

5. 釣り合う静荷重を与えられた接続ロッドに、弾性材料特性を適用し、FEAによる静解析を実行します。FEAは構造解析によって変形、ひずみ、応力を求めます(図19)。

図19:接続ロッドはFEAを適用できる構造体として認識され、応力計算できます。

モーション シミュレーションと試験

モーション シミュレーションでは実験の時間履歴データをインポートすることができます。これにより、既存の機構の動きを簡単に再現し、すべてのジョイント反力、慣性効果、動力消費その他を含め完全に解析することが可能です。同様に、解析関数で定義した入力をもとに機構を解析することも可能です。

図20:コントロールアームの動作実験データを入力し、モーションシミュレーションでサ

スペンションを動かす。

たとえば、図20のような自動車のサスペンションの場合、モーション シミュレーションにより、タイヤが縁石に当たった後、サスペンションに対する振動が消えるのはいつか?ストラットに必要なダンピングの大きさは?コントロールアームとブッシングに生じる応力は?といった、典型的な疑問に答えることができます。

CAD、モーション シミュレーション、FEAの統合

モーション シミュレーションとFEAはどちらもCADアセンブリモデルを解析の必要条件として使用します。これら3つのツールに共通の、統合された環境を使用することによりCAD、モーション シミュレーション、FEA間のデータ交換が効率的に行えます。統合により、中間フィルフォーマットを使ったデータ転送など、スタンドアロン アプリケーションにありがちな面倒な作業を回避できます。さらに、CADインターフェイスを使用するのではなく、CADに統合されたモーション シミュレーションを使用することにより、モーション シミュレーション モデルをセットアップするのに必要な手間も大幅に削減できます。

モーション シミュレーションとFEAはどちら

もCADアセンブリモデルを解析の必要条件と

して使用します。

モーション シミュレーションを理解する 9

前述のように、材料特性とCADアセンブリの合致はモーション シミュレーション モデルを作成する際に「再利用」できます。モーション シミュレーションの結果であるモーション軌跡をCADジオメトリに戻すこともできます。しかしこれは統合されたソフトウェア環境でしか実現することはできません。さらに、CADとの統合によりシミュレーション モデルのデータとシミュレーションの結果をCADアセンブリ モデルとあわせて保存できるため、モーション シミュレーション用モデルのデータベースを管理する手間もありません。 加えて、CADに対するすべての変更はモーション シミュレーションおよびFEAと完全に関連性を持っています。

SolidWorks® CAD プログラムと SolidWorks Simulation (FEA)、SolidWorks Motion(モーション シミュレーション)アドインは、統合されたシミュレーション ツールとして最先端の組み合わせです。完全な統合が可能となったのはSolidWorks、SolidWorks Simulation、SolidWorks Motion がすべてネイティブ Windows® アプリケーションであるためです。これらはすべてWindowsオペレーティング システム専用に開発され、他のOSから移植されたものではありません。Windowsに完全に準拠しているため、他のWindowsアプリケーションとの互換性も保証されています。

市場をリードするFEAプログラム、SolidWorks Simulationは、図21に示すCADと緊密に連携した製品設計ツールとしてその大きな価値を長年にわたり実証してきました。SolidWorks Motion を加えることにより、新しい製品に対する一層完全なシミュレーションが可能となり、製品開発に必要な試作品の数を削減するのに役立ちます(図21)。

SolidWorks CAD

SolidWorks CAD

図21:CADとFEAを設計ツールとして使用した設計プロセス。

図22:CADとFEAとあわせて、モーション シミュレーションを使用することにより設計プ

ロセスを強化。

SolidWorks Simulation

FEA

SolidWorks Motion Motion Simulation

SolidWorks Simulation

FEA

SolidWorks CAD プログラムと SolidWorks Simulation (FEA)、SolidWorks Motion(モーシ

ョン シミュレーション)アドインは、

統合されたシミュレーション ツールとして

最先端の組み合わせです。

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ユーザー事例

TigercatTigercat (www.tigercat.com)はスキッダ、フォワーダ、フェラーバンチャ等の林業用機械の大手メーカーであり、SolidWorksを使って図23のフェラーバンチャのヘッドを設計しました。同社のエンジニアはその機能を SolidWorks Motion と SolidWorks Simulationでシミュレートしました。Tigercat によれば、この複雑な機構のモーション、ダイナミクス、応力をシミュレートすることで、実験用試作を1回に削減することができ、試作品の試験によりシミュレーション結果が正しいことが完全に確認されたということです。

図23:オンタリオ州ブランフォードのTigercatのフェラーバンチャのヘッドはSolidWorksで設計し、SolidWorks MotionとSolidWorks Simulationを使ってシミュレーションされました。

FANUC Robotics America Inc.FANUC Robotics (www.fanucrobotics.com) は 様々な産業において労働を最適化し、コストを削減し、品質を改善し、製造の無駄をなくすロボティクス製品を製造しています。顧客がこれらのメリットを実現できるよう、FANUCは図24に示すような様々なサイズのロボティクスツールを提供しており、顧客は自社のアプリケーションに適したサイズの製品を選択しなければなりません。その選択には、指定したツールパスに沿ってロボットのパフォーマンスを分析する必要があり、SolidWorks Motion を使ったシミュレーションによりその分析、選択作業が格段に簡単になります。

図24:ミシガン州ロチェスター ヒルのFANUC ROBOTICS AMERICAが製造する工業用

ロボット

複雑な機構のモーション、ダイナミクス、

応力をシミュレートすることで、実験用試作

を1回に削減することができました。

Ward Machine ToolWard Machine Tool (www.wardcnc.com) はアルミホイール用のカスタム旋盤チャック、ロータリーアクチュエータ、特殊加工治具等を製造しています。 Wardのエンジニアはいままで製造されたことのない、カスタム製品を設計しており、新しい設計が動作するかどうかを製造に送る前に検証する手段としてシミュレーションが欠かせないものだと考えています。たとえば、同社は図25に示すデュアルアクチュエータ/マルチレンジ アルミホイール旋盤チャックを試作品を全く製造せずに開発しました。Ward はSolidWorksと SolidWorks Motionの使用により、約 $45,000 のコスト削減を実現し、試験にかかる期間をそれまでの試作品を使った試験プロセスの10%に削減しました。

図25:ミシガン州ファウラーヴィルのWard Machine Toolは旋盤用チャックを設計、シミュ

レートしました。

SyncronessSyncroness (www.syncroness.com) はエクササイズマシンからレーザーシステムまで、お客様との密接な作業を通じて製品を開発する企業です。Synchroness は SolidWorks Motion と SolidWorks Simulation を使って図26に示すシザーズリフトの4本リンケージシステムを最適化しました。Syncronessによれば、開発チームはほとんどトレーニングを受けずにモーション シミュレーションを行い、ダウンタイムなしに開発を行ったということです。Syncroness はシミュレーションの使用により迅速な設計繰り返しが可能になり、お客様に対しても優れた可視化ツールとして活用でき、全体として設計の成功に重要な役割を果たしたということです。

図26:このリフティングプラットフォームはコロラド州ウェストミンスターのSyncronessがSolidWorks Motion、SolidWorks Simulationを使って設計したものです。

SolidWorksと SolidWorks Motionの使用

により、約 $45,000 のコスト削減を実現し、

試験にかかる期間をそれまでの試作品を使っ

た試験プロセスの10%に削減しました。

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付録1:剛体のモーション

オブジェクトが変形せずに動くことができるとき、剛体モーションがある、あるいは剛体モードであるといいます。剛体モーションの存在により対象物はメカニズムとして分類されます。

図27にボールジョイントを示します。ベースは動かせません。このようなジョイントには3つの剛体モーションがあると言えます。3つの独立した方向に動くことができるからです。3つの独立した変数は自由度とも呼ばれ、この機構の位置を説明します。

図27:このボールジョイント機構は3つの剛体モーションを持つキネマティック ペアです。

図28は動かないベースプレート上をスライドするプレートを示しています。この機構にも3つの剛体モーションがあります。スライドするプレートは変形することなく2つの方向に移動でき、1つの方向に回転できるからです。ここでも、3つの自由度により機構の位置が説明できます。

図28:このスライドするプレートの機構には3つの剛体モーションがあります。

図29に示された4本リンクは1つの剛体モーションを持ちます。1つの独立した変数、つまり任意のリンクの角度位置が機構全体の位置を説明するからです。ヒンジの設計によっては、ヒンジピンが局所的な剛体モーション、たとえばピンの軸を中心とした回転および/またはピンの軸に沿った移動、を持つ場合もあります。

図29:任意のリンクの角度位置が機構全体の位置を定義します。この機構は1つの剛体モーシ

ョンを持ちます。

剛体モーションの存在によりオブジェクトは

メカニズム(機構)と分類されます。

振動のモードを調べるには、モーション シミュレーションではなくFEAを使った解析が

必要です。

モーション シミュレーションを理解する 13

モーション シミュレーションを理解する 14

図に示した3つのメカニズム(機構)はいずれも、変形により生じた動きによる自由度をもつ場合もあります。これらは「弾性モード」と呼ばれます。たとえば4本リンクは動くと同時に振動が生じるかもしれません。振動モードはモーション シミュレーションではなくFEAを使った解析が必要です。

付録2:モーション シミュレーションとFEAの比較

モーション シミュレーションとFEAは互いに補完しあう関係にあり、図のようにその領域は重なる部分もあります。

問題の種類 FEA モーション シミュレーション

構造体の解析 (変形可能な対象物)

はい いいえ*

メカニズム(機構)の解析 いいえ はい

変形と応力の解析 はい いいえ

振動の解析 はい いいえ**

剛体モーションを持つモデルの解析

いいえ*** はい

解析モデルにはメッシュを生成しなければならない

はい いいえ

解析モデルはCADで準備する はい はい

* モーション シミュレーションでは、ばねやフレキシブルジョイント等一部の変形可能な部品を使うこともできます。

解析に衝撃を伴うモーションが含まれる場合、ユーザーは衝突するボディの弾性を定義します。

** モーション シミュレーションでは、モデルにばねのような弾性部品が含まれる場合、振動を解析することもできます。

このような振動解析はこれらの弾性部品の変形による振動に限られ、他の機構部品(リンク)は剛体のままです。

*** ソフトスプリングや慣性リリーフをFEAに追加するなどの特殊なモデリングテクニックを使うことによって、剛体モーショ

ンを意図的に排除し、剛体モーションを含む構造もFEAで解析できるようにすることが可能です。

まとめ

エンジニアはFEAを使って構造特性を調べることに加えて、新製品のキネマティクスやダイナミクスを試作品を作成する前に調査しなければなりません。またシミュレーションの範囲をFEA以外に拡大しなければならないというプレッシャーにも直面しています。モーション シミュレーションはこれらの問題を解決するためのシミュレーションによるアプローチを提供します。モーション シミュレーションを実行するのに必要な全ての情報はCADアセンブリ モデルに既に定義されているため、モーション シミュレーションの結果は時間的コストを追加することなく得ることができます。

機構の解析に加えて、製品開発者はモーション シミュレーションにより得られた軌跡をCADジオメトリに変換し、新しい部品を作成してメカニズム (機構)を統合することもできます。モーション シミュレーションによる解析終了後、変形および/または応力解析を機構を構成する部品に対して行いたい場合、選択した部品にFEAを適用して構造解析を行う必要があります。モーション シミュレーションの結果は、FEAで行う構造解析に必要な入力データを提供します。

モーション シミュレーションのデータを手動で FEA に移すこともできますが、モーション シミュレーションソフトウェアが結果をFEAに自動的にエクスポートできれば最高の結果が保証されます。SolidWorksにはSolidWorks Simulation および SolidWorks Motion ソフトウェアが完全に統合されており、そのような環境が提供されています。これらのSolidWorks ソリューションをあわせて使用することにより、新製品のより完全なシミュレーションが可能になり、試作品数の削減に役立ちます。

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