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欲求とオープンサイエンス~オープン化の好循環と価値観の衝突~
北本朝展(KITAMOTO Asanobu)ROIS-DS 人文学オープンデータ共同利用センター国立情報学研究所http://codh.rois.ac.jp/ @rois_codh
2018/12/13 I-URIC 2018 1
人文学オープンデータ共同利用センターCODH http://codh.rois.ac.jp/
•情報・システム研究機構データサイエンス共同利用基盤施設内に、2017年4月1日に正式に発足。センター長:北本朝展。
1. 情報学・統計学の技術を用いて、人文学の研究を革新する。
2. 人文学のデータを用いて、非人文学(情報学・理学等)の研究を革新する。
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CODHのオープンデータhttp://codh.rois.ac.jp/dataset/
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日本古典籍データセット
日本古典籍くずし字データセット
江戸料理レシピデータセット
武鑑全集
顔貌コレクション
歴史的行政区域データセットβ版
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機械
市民
研究者
多様化
深化 巨大化
「オープン」な考え方で三者をつなげ、知識の深化、巨大化、多様化を目指す。
KMNISTデータセットhttp://codh.rois.ac.jp/kmnist/
くずし字データセットを、機械学習研究で著名なMNISTデータセット互換形式で公開。
2018/12/13 I-URIC 2018 5
『KMNISTデータセット』(CODH作成)『日本古典籍くずし字データセット』(国文研ほか所蔵)を翻案 doi:10.20676/00000341
オープンデータの好循環
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オープン化で満たされる欲求•自分の成果が他者に喜んでもらえる。•自分の成果の上に他者の成果が積み重なる。•自分では(すぐに)できないことを他者が自主的にやってくれる。
•自分の成果が広く認められる(=承認欲求)
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1. オープン化によって研究が加速する。2. そこから得られた研究成果も共有されれば、オープン化の好循環が生まれる。
Second Workshop on Machine Learning for Creativity and Design
https://nips2018creativity.github.io/
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2018年12月8日@モントリオール、カナダ
ワークショップで大きな話題となったのが、AIアート作品の一件。
AIアート作品をめぐる騒動
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https://www.christies.com/features/A-collaboration-between-two-artists-one-human-one-a-machine-9332-1.aspx, 16 October 2018.
AIアート作品騒動の顛末1. フランスの学生若手3人グループ「Obvious」がAIアート作品「Edmond Belamy」を制作。
2. クリスティーズが予想価格10,000ドル弱で出品したところ、432,500ドルで落札。
3. 彼らの作品は、19歳のアーティスト&プログラマーRobbie Barrat氏による成果を流用したものではないか、という指摘が登場。
4. コード作者が十分なクレジットを受けていないのでは、という「人間らしい」議論が、Twitter等のネット上で展開した。
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AIアート作品の背景
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https://www.theverge.com/2018/10/23/18013190/ai-art-portrait-auction-christies-belamy-obvious-robbie-barrat-gans, 23 October 2018.
営利目的販売の禁止
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https://github.com/robbiebarrat/art-DCGAN
現代アートと仕掛け
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https://www.instagram.com/p/BomXijJhArX/?utm_source=ig_embed
サザビーズのオークションで、バンクシー作の絵画が、落札直後に切り刻まれた。これにより、さらに価値が上がったとの説も。
アーティストとコードの関係
1. ツール(絵筆、ピアノ等):作品に不可欠な存在だが、それ自体は能動的な動きはしない。
2. オーケストラ指揮者:アーティストはコードを指揮し、コードは構成要素として協調する。
3. 牧羊犬・庭師:アーティストは全体の流れを制御するが、コードの動き次第で、結果に予測不能性(創造性?)が生まれる。
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アーティストはコード作者をどうクレジットすべきか?学習対象のデータは?
参考:Second Workshop on Machine Learning for Creativity and Designでの議論
価値観の衝突1. オークションハウスが未熟な(?)AI作品を出品し高値となった=コミュニティ外部の権力による不当な(?)評価に対する不満。
2. 現代アートの出発点は、ミュージアムの「権力性」の可視化(デュシャン「泉」)。
3. コミュニティの価値観と無関係に「評価」され「歴史」を作られる=権力者による搾取?
4. オープン化によって搾取される不安=オープンサイエンスは、異なる価値観との衝突におけるセーフティーネットを作れるか?
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オープンサイエンス大戦
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オリジナルの出典不明
おわりに•オープン化の光:好循環によって自分の能力以上の仕事が達成でき、自らの欲求は満たされる。
•オープン化の影:異なる価値観の人々に利用されてしまい、自らの欲求は満たされない。
•価値観の衝突:異なる価値観が衝突する「大戦」では、全体の指揮官は、各地の戦線に固有の戦術や戦略を把握する必要がある。
• CODHの役割:人文学を取り巻く分野の個人やコミュニティの欲求をすくいあげ、オープン化がよい結果を生む戦術や戦略を考えたい。
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関連ウェブサイト• KMNISTデータセットの作成は、Tarin Clanuwat,
Mikel Bober-Irizar, Alex Lamb, Kazuaki Yamamoto, David Ha氏との共同研究に基づくものです。
•人文学オープンデータ共同利用センター• http://codh.rois.ac.jp/
• KMNISTデータセット• http://codh.rois.ac.jp/kmnist/
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