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1 添付資料-2 プレハブ建屋実証試験 プレハブ建屋による空調負荷低減確認試験報告書 中外商工株式会社 技術研究所 1. 目的 本試験は、放射率が 0.100.20 と極めて低い塗料であるサーモレジンSV600 をプレハブ建屋の屋根 裏面に厚さ 10μm 程度被覆し、室内への侵入熱量低減効果を確認するものである。 2. 試験条件 試験条件、本試験に使用した機器類を表 1 及び表 2 に、試験建屋の概要を図 1~図 3 に示す。 1 試験条件 試験場所 中外商工株式会社 屋外試験場 管理事務所内 所在地 滋賀県湖南市石部口 3 丁目 229-40 試験期間 2014 8 14 日~2014 9 19 日(延べ 15 日間) 建屋形状 折板屋根プレハブ建屋 建屋寸法 w9.2m×d5.7m×h3.6m 使用工法 サーモレジンSV工法 2 本試験に使用した機器 測定機器 型式及び製造会社 測定項目 測定箇所 長短波放射計 MR-60 英弘精機㈱ 日射量(短波長、長波長) 屋根上面 高さ 1m 熱流束計 HFM-201 京都電子工業㈱ 熱流束 屋根裏中心部 風向風速計 C-W800C ㈱小笠原計器製作所 風向及び風速 建屋から 15m、高さ 3m 温度センサー おんどとり Jr. T&D温度(建屋外側) 建屋外側壁面 T 熱電対 素線径 1.0mm 中外商工㈱ 温度(建屋内側) 建屋内側壁面・底面、屋根裏面、 温度ロガー メモリーハイロガー8423 日置電機㈱ 温度(建屋内側) T 熱電対に接続して記録。 ハイディロガーMC-3000 CHINO MR シリーズ CHINO サーモグラフィー G-120EX NEC Avio放射熱量 屋根裏面 熱中症チェッカー FUSO-8759D FUSO WBGT、気温 屋内 高さ 1m 1 試験建屋の概要図 2 試験建屋外部写真

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添付資料-2 プレハブ建屋実証試験

プレハブ建屋による空調負荷低減確認試験報告書

中外商工株式会社 技術研究所

1. 目的 本試験は、放射率が 0.10~0.20 と極めて低い塗料であるサーモレジンSV600 をプレハブ建屋の屋根

裏面に厚さ 10μm 程度被覆し、室内への侵入熱量低減効果を確認するものである。

2. 試験条件 試験条件、本試験に使用した機器類を表 1 及び表 2 に、試験建屋の概要を図 1~図 3 に示す。

表 1 試験条件

試験場所 中外商工株式会社 屋外試験場 管理事務所内

所在地 滋賀県湖南市石部口 3 丁目 229-40

試験期間 2014 年 8 月 14 日~2014 年 9 月 19 日(延べ 15 日間)

建屋形状 折板屋根プレハブ建屋

建屋寸法 w9.2m×d5.7m×h3.6m

使用工法 サーモレジンSV工法

表 2 本試験に使用した機器

測定機器 型式及び製造会社 測定項目 測定箇所 長短波放射計 MR-60 英弘精機㈱ 日射量(短波長、長波長) 屋根上面 高さ 1m 熱流束計 HFM-201 京都電子工業㈱ 熱流束 屋根裏中心部 風向風速計 C-W800C ㈱小笠原計器製作所 風向及び風速 建屋から 15m、高さ 3m

温度センサー おんどとり Jr. T&D㈱ 温度(建屋外側) 建屋外側壁面 T 熱電対 素線径 1.0mm 中外商工㈱ 温度(建屋内側) 建屋内側壁面・底面、屋根裏面、

温度ロガー メモリーハイロガー8423 日置電機㈱

温度(建屋内側) T 熱電対に接続して記録。 ハイディロガーMC-3000 ㈱CHINO MR シリーズ ㈱CHINO

サーモグラフィー G-120EX NEC Avio㈱ 放射熱量 屋根裏面 熱中症チェッカー FUSO-8759D ㈱FUSO WBGT、気温 屋内 高さ 1m

図 1 試験建屋の概要図

図 2 試験建屋外部写真

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図 3 プレハブ建屋の各方位

3. 試験結果

3.1. 侵入熱量測定結果

サーモレジンSV600 を被覆したもの(以下「SV施工」という。)及び被覆していないもの(以下

「未施工」という。)それぞれの屋根裏面の熱画像を図 4 に示す。SV施工は、未施工と比べて、屋根

からの放射伝熱が小さいことが確認できた。

図 4 サーモグラフィーによる熱画像及び放射温度(放射率を 1.00 と設定して測定)

また、熱流束計による屋根裏面からの侵入熱量の測定結果を図 5 に示す。SV施工は、未施工と比べ

て、屋根裏面からの侵入熱量が一日平均で約 40%少なかった。

図 5 熱流束計による侵入熱量測定結果

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3.2. 屋根表面・裏面及び底面の温度測定結果

図 6 に日中における屋根表面及び屋根裏面の温度推移を示す。 SV施工は、未施工と比べて、日中の屋根表面温度は平均 0.7℃上昇、日中の屋根裏面温度は平均 2.5℃

上昇した。 また、日中の表面と裏面の温度差の平均については、SV施工(2.5℃)は、未施工(4.2℃)よりも

小さく、屋根材の伝導伝熱が低下したことが確認された。

図 6 昼間における鋼板屋根表裏面の温度推移

図 7 に夜間における屋根表面及び屋根裏面の温度推移を示す。 SV施工は、未施工と比べて、夜間の屋根表面温度は平均 0.47℃低下、夜間の屋根裏面温度は平均

0.59℃低下した。 また、夜間の表面と裏面の温度差の平均については、SV施工(0.57℃)は、未施工(0.69℃)より

も小さく、夜間においても屋根材の伝導伝熱が低下したことが確認された。

図 7 夜間における鋼板屋根表裏面の温度推移

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図 8 に昼夜における底面温度の温度推移を示す。 SV施工は、未施工と比べて、一日を通じて底面温度が低く、最大 0.8℃低下していた。これは、本

技術を施工することで屋根裏面から底面への放射熱が抑えられたためと考えられる。

図 8 プレハブ建屋における底面温度推移

3.3. 屋内温度及び WBGT 測定結果

日中の屋内温度及び WBGT の推移を図 9(8 月 20 日)及び図 10(9 月 9 日)に示す。 8 月 20 日については、SV施工は、未施工と比べて、屋内温度が日中最大 2.9℃低く、WBGT が最

大 1.6℃低かった。9 月 9 日についても、SV施工は、未施工と比べて、屋内温度が日中最大 1.7℃低く、

WBGT が最大 1.0℃低かった。

図 9 屋内温度推移(8 月 20 日測定)

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図 10 屋内温度推移(9 月 9 日測定)

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4. 考察

4.1. 夏季の空調負荷低減効果の試算

屋根からの侵入熱量の測定結果をもとに、本試験に用いたプレハブ建屋を対象に夏季の空調消費電力

低減効果を試算したところ、SV施工は、未施工と比べ消費電力が 181.6kWh(36%)少なかった。(表 3)

なお、この計算にあたり、COP 及び冷房機器稼働時間は、「環境省環境技術実証事業 ヒートアイラ

ンド対策技術分野(建築物外皮による空調負荷低減等技術)実証試験要領」 [1]から引用した。

∆𝐸 =∆𝑄𝑟𝑟𝑟𝑟 ∙ 𝐴 ∙ 𝑇𝐶𝐶𝐶 ∙ 1000

表 3 空調消費電力量の試算結果 未施工 SV施工

屋根裏面の熱画像

屋根からの侵入熱量※

[W/m2] 92.3 59.1

屋根からの熱侵入相殺に 必要な空調消費電力量 [kWh/4 か月]

504.8 323.2

空調消費電力量の削減量 [kWh/4 か月]

- 181.6

空調消費電力量の削減率 - 36%

※屋根からの侵入熱量は、8 月 20 日 10:00~16:00 及び 9 月 9 日 8:00~17:00 の熱流束計測定値の平均値を採用

ここで ⊿E:侵入熱の相殺に必要な空調消費電力量[kWh/6 か月] ⊿Qroof:屋根からの侵入熱量[W/m2] A:施工対象面積[m2](26 m2) T:冷房機器稼働時間[hr](6~9 月、747hr) COP:冷房成績係数(3.55)

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4.2. 熱流束計による侵入熱量測定結果の妥当性の確認

4.2.1. 趣旨

本試験では、熱流束計によって屋根裏面からの侵入熱量を測定した。(3.1 節参照) 本節では、9 月 9 日日中及び夜間を対象として、プレハブ建屋内側の熱収支(図 11 参照)をもとに

屋根裏面からの侵入熱量を計算し、熱流束計による侵入熱量測定結果と比較することで、その妥当性を

確認する。

図 11 プレハブ建屋内部における熱収支概念図

4.2.2. 計算方法

屋根裏面からの侵入熱量 Q の計算方法は、以下のとおりである。 侵入熱量の計算には、資料-1~資料-4 のデータを用いる。

𝑅𝑠 = 𝜀𝜀�𝑇14 − 𝑇04� ------------------------- 式1 [2]

𝐶 = 2.28|𝑇1 − 𝑇2|1.25 ∙ �0.348 + 𝑤

0.348�0.5

------------------------- 式2 [2]

𝐿𝑖 = 𝐹𝑖 �𝜀𝑖𝜀�𝑇𝑖4 − 𝑇04� + (1 − 𝜀𝑖)�𝐿𝑗𝑖𝑗

� ------------------------- 式3 [3]

𝑄 = 𝑅𝑠 + (1 − 𝜀)�𝐿𝑖𝑖

+ 𝐶 ------------------------- 式4 [3]

ここで Rs:屋根裏面から屋内への放射熱[W/m2] C:屋根裏面から屋内への対流熱[W/m2] Li:プレハブ内面 i(屋根裏面を除く)から屋根裏面への輻射(他面からの反射を含む)[W/m2] Lji:プレハブ内面 j(屋根裏面を含む)からプレハブ内面 i への輻射(他面からの反射を含む)[W/m2] Q:屋根裏面からの侵入熱量[W/m2] ε, εi:屋根裏面の放射率、プレハブ内面 i の放射率(表 4 参照) σ:ステファン・ボルツマン定数(5.67×10-8[W/m2・K4]) T0:プレハブ建屋中心で地上高 1m の気温[K] T1:屋根裏面温度[K] T2:屋根裏から 45cm 下の気温[K] Ti:プレハブ内面 i(屋根裏面を除く)の表面温度[K] w:風速(ただし、ここでは 0m/s) Fi:プレハブ内面 i(屋根裏面を除く)から屋根裏面への形態係数(表 4 参照)

Q0:太陽光

Rs(SV):SV 屋根裏面からの放射熱

Rs(未):未施工屋根裏面からの放射熱

C(SV):SV 屋根裏面からの対流熱

C(未):未施工屋根裏からの対流熱

L(SV):SV屋根裏面への放射熱

L(未):未施工屋根裏への放射熱

Rs(SV) Rs(未)

Q0 太陽光

対流熱伝達

C(SV)

L(SV) L(未)

対流熱伝達

C(未)

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表 4 屋根裏面及び各内面の形態係数及び放射率 各面から屋根裏面への

形態係数※1 放射率

未施工側 SV施工側 屋根裏面 - 1.00 0.28※2 北面 0.227 1.00 1.00 南面 0.227 1.00 1.00 東面 0.231 0.10※3 1.00 西面 0.231 1.00 0.10※3 底面 0.264 1.00 1.00

※1:形態係数は、プレハブ建屋のSV施工区画・未施工区画の寸法(w3.7m×d5.7m×h3.6m)をも

とに文献 [3]により求めた。 ※2:SV施工側の屋根裏面の放射率は、資料-5 のサーモグラフィーの測定値から求めた。 ※3:未施工側の東面及びSV施工側の西面はアルミラミネートカーテンを設置。

4.2.3. 計算結果

侵入熱量について、4.2.2 節に示した方法により計算したものと熱流束計によるものを比較したもの

を表 5 から表 8 に示す。(各表の左側が計算値、右側が測定値)

表 5 日中・未施工での比較

測定時刻 屋根裏面から

屋内側への熱流束

[W/m2]

熱流束計による測定値 [W/m2]

8:00 22.2 26.2 8:50 65.5 83.8 10:10 125.0 115.0 11:08 150.1 133.1 12:10 131.7 111.7 13:06 149.1 124.8 13:56 129.9 113.3 15:10 96.1 75.5 16:00 43.5 26.2 17:00 -19.5 -16.3

表 6 日中・SV施工での比較

測定時刻 屋根裏面から

屋内側への熱流束

[W/m2]

熱流束計による測定値 [W/m2]

8:00 23.4 4.8 9:04 65.0 51.0 9:55 62.4 42.6 10:50 78.7 74.3 11:55 81.3 75.9 13:02 100.8 77.5 13:58 82.5 69.3 14:58 45.7 51.1 16:00 -23.1 8.2 17:00 -18.2 -9.8

表 7 夜間・未施工での比較

測定時刻 屋根裏面から

屋内側への熱流束

[W/m2]

熱流束計による測定値 [W/m2]

20:00 -24.2 -24.6 21:10 -23.8 -20.6 22:10 -26.7 -24.5 23:00 -14.7 -22.6 0:00 -17.1 -14.6 1:00 -20.6 -14.1 2:00 -12.3 -17.9 3:00 -14.0 -19.6 4:00 -20.2 -22.5 5:00 -21.7 -24.0

表 8 夜間・SV施工での比較

測定時刻 屋根裏面から

屋内側への熱流束

[W/m2]

熱流束計による測定値 [W/m2]

20:00 -12.1 -14.7 21:10 -7.7 -10.6 22:00 -11.1 -13.1 23:00 -4.5 -11.5 0:00 -8.9 -10.6 1:00 -10.6 -10.6 2:00 -5.8 -13.9 3:00 -7.4 -9.8 4:00 -14.1 -12.3 4:50 -13.7 -13.1

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表 5 及び表 6(日中)をグラフ化したものを図 12 に、表 7 及び表 8(夜間)をグラフ化したもの

を図 13 に示す。ともに計算値と熱流束計の測定値が、ほぼ同じ傾向を示している。

図 12 屋根裏面からの侵入熱量に係る計算値と測定値の比較(日中)

図 13 屋根裏面からの侵入熱量に係る計算値と測定値の比較(夜間)

なお、日中では未施工の方がSV施工と比較して屋内側への侵入熱量が大きい傾向にあるが、夜間で

は逆に屋外側への放熱が大きい結果となっており、本技術は、日中では日射熱が屋内に侵入するのを抑

制する効果が、夜間は屋外への放熱を抑制する効果があると示唆される。

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参考文献

[1] 環境省:環境省環境技術実証事業 ヒートアイランド対策技術分野(建築物外皮による空調負荷低

減等技術)実証試験要領, p30-33, 2014.

[2] JIS A 9501 : 2014 保温保冷工事施工標準.

[3] 日本機械学会:JSME テキストシリーズ 伝熱工学, 丸善, p113-117, 2013.