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―11― 都内でのキウイフルーツの生産量は年間約350トンあり、多くの都民に喜ばれている果物の 一つです。栽培されている主な品種は、消費者に馴染みのある果肉が緑色の「ヘイワード」で すが、都内キウイフルーツ生産の一層の振興を図るため、果肉が黄色で、従来品種より糖度が 高い東京オリジナル品種「東京ゴールド」(写真1)の品種登録出願(第24322号)を行いまし た。本品種の特性、普及拡大に向けた取り組みを紹介します。 成果の概要 1 品種特性について 開花期は2月中旬で「ヘイワード」より約2週間早く、収穫期は11月上旬で「ヘイワード」 より約10日早く収穫が可能です。果肉色は黄色で平均果重は約90g、糖度が16.0%と高く、 酸度が低いため「ヘイワード」より食味が良好です(表1)。 2 普及拡大に向けた取り組み 普及拡大のため、平成23年2月に都内10市のキウイフルーツ生産者に対し、接ぎ木用穂木 の配布を行い、各生産者が接ぎ木を行いました(写真2)。栽培面積は257㎡(生産者数:29戸) となり、今後も拡大が見込まれています。また、17戸の生産者圃場において結実がみられ、 一部では販売も開始されました。また、農総研では、許諾契約を結んだ全国の果樹種苗会社 に穂木を有償譲渡し、平成24年秋から苗木の販売が始まりました。 3 果実肥大促進のための技術開発 大果生産を目的とした、ホルクロルフェニュロン (以下CPPU 商品名:フルメット液剤) 処理の効果を検討しました。満開30日後にCPPU浸漬処理を行った結果、処理濃度が高くな るに従い肥大率が高くなり、CPPU2.5ppmで約16%、同5ppmで約40%の肥大促進効果が得 られました(表2)。 4 今後の取り組み 栽培面積の拡大やブランド化に向けて関係機関との連携強化を図るほか、収量増、品質向 上のための技術開発を行っていきます。一日も早く皆様の食卓においしい「東京ゴールド」 をお届けできますよう、取組みを進めていきます。 (河野 章) キウイフルーツ新品種「東京ゴールド」が誕生 ~果肉が黄色く甘~いキウイフルーツ~ 農林総合研究センター園芸技術科 6 背景と目的 ※ 植物成長調整剤。ブドウ、ナシなどの果実肥大促進剤として利用されている。

キウイフルーツ新品種「東京ゴールド」が誕生...―11― 都内でのキウイフルーツの生産量は年間約350トンあり、多くの都民に喜ばれている果物の

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     都内でのキウイフルーツの生産量は年間約350トンあり、多くの都民に喜ばれている果物の一つです。栽培されている主な品種は、消費者に馴染みのある果肉が緑色の「ヘイワード」ですが、都内キウイフルーツ生産の一層の振興を図るため、果肉が黄色で、従来品種より糖度が高い東京オリジナル品種「東京ゴールド」(写真1)の品種登録出願(第24322号)を行いました。本品種の特性、普及拡大に向けた取り組みを紹介します。

    成果の概要1 品種特性について 開花期は2月中旬で「ヘイワード」より約2週間早く、収穫期は11月上旬で「ヘイワード」より約10日早く収穫が可能です。果肉色は黄色で平均果重は約90g、糖度が16.0%と高く、酸度が低いため「ヘイワード」より食味が良好です(表1)。2 普及拡大に向けた取り組み 普及拡大のため、平成23年2月に都内10市のキウイフルーツ生産者に対し、接ぎ木用穂木の配布を行い、各生産者が接ぎ木を行いました(写真2)。栽培面積は257㎡(生産者数:29戸)となり、今後も拡大が見込まれています。また、17戸の生産者圃場において結実がみられ、一部では販売も開始されました。また、農総研では、許諾契約を結んだ全国の果樹種苗会社に穂木を有償譲渡し、平成24年秋から苗木の販売が始まりました。3 果実肥大促進のための技術開発 大果生産を目的とした、ホルクロルフェニュロン※(以下CPPU 商品名:フルメット液剤)処理の効果を検討しました。満開30日後にCPPU浸漬処理を行った結果、処理濃度が高くなるに従い肥大率が高くなり、CPPU2.5ppmで約16%、同5ppmで約40%の肥大促進効果が得られました(表2)。4 今後の取り組み 栽培面積の拡大やブランド化に向けて関係機関との連携強化を図るほか、収量増、品質向上のための技術開発を行っていきます。一日も早く皆様の食卓においしい「東京ゴールド」をお届けできますよう、取組みを進めていきます。

    (河野 章)

    キウイフルーツ新品種「東京ゴールド」が誕生~果肉が黄色く甘~いキウイフルーツ~

    農林総合研究センター園芸技術科

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    背景と目的

    ※ 植物成長調整剤。ブドウ、ナシなどの果実肥大促進剤として利用されている。

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