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11
スイッチング電源におけるノイズの抑制対策
2016年09月26日
群馬大学 客員教授
落合政司
22
序章 スイッチング電源について
1. ノイズの種類と発生源
2. スイッチング電源のノイズ発生源2.1 メインスイッチの電圧2.2 メインスイッチやダイオードによって発生する高周波の振動電圧2.3 スイッチングトランスのリーケージフラックス2.4 平滑コンデンサに生じるノイズ電圧やブリッジ整流ダイオードのノイズ2.5 出力コンデンサに生じるノイズ電圧(リプル電圧)<第1章,第2章 演習問題>
3. 伝導ノイズの対策方法3.1 共振形コンバータ3.2 スナバーの効果的な利用3.3 ソフトリカバリーダイオード及びショットキーバリアダイオード3.4 フェライトビーズ(ビーズコア)やπ形フィルターの活用3.5 スイッチングトランスの静特性3.6 スイッチングトランスのコアアース3.7 プリント配線板の配線等3.8 ラインフィルター回路3.9 ホットエンドの浮遊容量3.10 キャンセル法<第3章 演習問題>
内容
3
4. 輻射ノイズの対策方法4.1 基本的な対策4.2 共振形コンバータ4.3 メインスイッチへの並列コンデンサの追加4.4 出力ダイオードへの並列コンデンサの追加4.5 配線の短縮とシールド線・より線の利用4.6 フェライトビーズ(ビーズコア)の活用4.7 部品や匡体の電磁シールド<第4章 演習問題>
5. 参考文献・図書
付録1. EMCとは付録2. 電子機器のEMC体系図付録3. IECの審議体制付録4. EMC規格の種類と考え方付録5. EMCに関する国際規格と各国の規格付録6. テレビに関する高周波EMC規格付録7. スイッチング電源の原理と設計付録8. 対称波の高調波電圧付録9. スイッチングレギュレータの構成
内容
3
4
表0.1 シリーズレギュレータとスイッチング
レギュレータの比較序章:スイッチング電源について
シリーズレギュレータ スイッチングレギュレータ
効率 低い 30~80%程度 高い 85~97%程度
大きさ・重さ 大きい,重い 小型,軽い
部品点数 少ない 多い
安定度 良好 普通(シリーズレギュレータより劣ります)
変動率S 小さい シリーズレギュレータより大きい
ノイズ ない 大きい(放射ノイズ,伝導ノイズともに大きい)
出力電圧 入力電圧以下 入力電圧以上も可能
出力インピーダンス
小さい シリーズレギュレータより大きい
出力リプル電圧小(10mV以下) 大(大きさは出力電流と出力コンデンサのイン
ピーダンスで違ってきます)
過渡応答速度早い シリーズレギュレータより遅い(減衰時定数:降
圧形で200μs程度)
ワイドレンジ入力対応 困難 可能
信頼性 部品点数が少なく,高い 普通(部品点数が多い分シリーズレギュレータより劣る)
絶縁 困難(大きな電源トランスが必要になります) 容易
oi
o
ED
D
E
ES
2
42
1
Rh
R
E
ES
fei
o
42
1
Rh
rRZ
fe
o
o
o
o Z
R
r
D
E
ZZ 287.0
11 2
交流電源の内部抵抗:
0164.0
r
rZ
5
+
iB1出力電圧
Eo入力電圧
Ei
熱IO
Q1
vCE1
R1
R2
R3R4
Q2
vBE2
VZDZ
r
+
iB1出力電圧
Eo入力電圧
Ei
熱IO
Q1
vCE1
R1
R2
R3R4
Q2
vBE2
VZDZ
r
時間 t0
電圧
V
出力電圧Eo
入力電圧Ei
ここの部分はトランジスタの熱として捨てる。
この部分を負荷に供給する。)1.0()(
)(
ooi
oooic
IEE
IErIEP
・トランジスタの損失
図0.2 リシリーズレギュレータとその入出力電圧
序章:スイッチング電源について
6
rt ft
onToffT
t
T
QQ iv ,
rPonP fP
PI
QPVQV
PI
QP
00t
0
Qv
Qi
)2.0(6
2
onrmsQfPQPrPQ
onSWQ
RitIVtIVf
PPP
・スイッチの損失
図0.3 リンギングチョーク形コンバータの出力トランジスタ損失
序章:スイッチング電源について
7図0.4 降圧形コンバータにおける出力電圧の変動率S
帰還量
・降圧形コンバータ
タの変動率・シリーズレギュレー
:)4.0(/1
)3.0(0164.011200
36
22
42
1
ooooi
o
fei
o
ED
D
ERZD
D
E
ES
k
k
Rh
R
E
ES
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
0 20 40 60 80 100 120
β=0.1
β=0.2
Eo(V)
S 5.0D
7
0164.0S
シリーズレギュレータ
序章:スイッチング電源について
Ei EoEoC RoD
Q L
+
Io
スイッチのオン期間一周期間,
時比率,
::
,:,
on
on
TT
T
TDD
8
1.ノイズの種類と発生源
輻射ノイズ
ノイズ 伝導ノイズ ノーマルモードノイズ
コモンモードノイズ
ノーマルモードノイズ
コモンモードノイズ
・ノイズは伝搬経路によって伝導ノイズと輻射ノイズに分類できます。その内,伝導ノイズは主に商用電源線を伝わって伝導するノイズを,輻射ノイズは空中に電磁波として放出されるノイズをいいます。
・また,ノイズはノーマルモードノイズとコモンモードノイズに分けることでできます。伝導ノイズの場合,大地アースを基準としたときのAC両極間のノイズの差をノーマルモードノイズ,加算されたAC両極のノイズをコモンモードノイズといいます。
図1.1 ノイズの種類
9
V2
V1
Vb
Va
Vb
Va
V1
V2
大地アース
1.ノイズの種類と発生源
図1.2 ノーマルモードノイズとコモンモードノイズ(伝導ノイズ)
※実際にはノーマルモードノイズは を,コモンモードノイズはを測定しています。
2/1 ba VVV
2/2 ba VVV
ba VVV 1
ba VVV 2
V1:ノーマルモードノイズ,V2 :コモンモードノイズ,
10
1.ノイズの種類と発生源・輻射ノイズにもノーマルモードノイズとコモンモードノイズがあります。
・導体や金属に電流が流れると誘導電磁界を生じるほか,電磁波を輻射します。
・この内,導体や導線などからのノイズの輻射は導体や導線が基準電位(グラウンド)に対して電位を 持つ事によって発生します。このノイズをコモンモードノイズといい,ダイポールアンテナモデルからの輻射ノイズに相当します。
・基板に構成された回路に電流が流れるとループが構成されます。ここからもノイズが発生しますが,このノイズがノーマルモードのノイズになります。ノーマルモードのノイズは,ループアンテナモデルからの輻射ノイズに相当します。
cre )(
cI
E
nI
nre )(
E
(a) コモンモードノイズ (b) ノーマルモードノイズ
図の中で,ICはコモンモードのノイズ電流,e(r)Cはコモンモードのノイズ電圧(基準電位に対する電位),Inはノーマルモードのノイズ電流,e(r)nはノーマルモードのノイズ電圧,Eは放射された電磁波による電界の最大になる向きを意味しています。
図1.3 輻射(放射)ノイズ
11
2.スイッチング電源のノイズ発生源
2.1 メインスイッチの電圧・スイッチング電源においては,メインスイッチが高速でスイッチング動作(オン・オフ)をします。
その結果,
◆フライバック形コンバータなどの矩形波絶縁形コンバータではオフ期間にメインスイッチに矩形波のスイッチング電圧が,
◆また,トランスの二次側にも変圧された矩形波のスイッチング電圧が発生します。
・このとき,矩形波電圧に含まれているスイッチング周波数と同じ周波数の基本波と高調波電圧がノイズ源となります。
・図2.1 にフライバック形コンバータを,メインスイッチ電圧を含む動作波形を図2.2に示しています。
図2.1 フライバック形コンバータ
Eo
Ei
C Ro
DT
+
Io
Q
動作状態 1 2
Q on off
D off on
表2.1 フライバック形コンバータの動作状態
12
QPi
0
VG
VL
0
VQ
一次励磁電流
iQ
iD
0
0
0
o
off
L IT
TI
PI
2
0t 1t T0
t
i
off
QP ET
TV
nI L
nEi /
Pi
oE
2.スイッチング電源のノイズ発生源ゲート電圧
スイッチ電圧
トランス二次側電圧
スイッチ電流
ダイオード電流
図2.2 フライバック形コンバータの動作波形
LV
QV
※VQとVLの向き
onT:1 offT:2
PL
PLPV
13
2.スイッチング電源のノイズ発生源
クタンストランスの励磁インダ,トランスの巻線比,,
,時比率スイッチのオフ期間,スイッチのオン期間,
間,スイッチ動作の一周期出力電流,,スイッチのピーク電流
トランスの二次側電圧スイッチ電圧,出力電圧,入力電圧,
::
,:::
:::
::::
)4.2(21
1
2
)3.2(1
1
)2.2(1
)1.2(
2
1
1
2
P
off
on
offon
oQP
PLPQPoi
P
onio
P
onio
off
QP
ii
off
o
iQP
PLP
i i
off
i
off
on
ioiQP
i i
off
on
o
LN
Nnn
T
TD
T
TDDTT
TIi
VVEE
L
TE
n
I
DL
TE
n
I
T
Ti
n
E
Dn
E
T
TE
n
E
n
VV
D
EE
T
TE
T
TEnEEV
n
E
D
DE
T
T
N
NE
14
・スイッチがオフすると急激にスイッチ電圧VQが立ち上り,浮遊容量CSを通して接地線に電流ICSが流れ込みます。このときの電流ICSは式(2.5)となります。
・このノイズ電流は接地線から電源インピーダンス安定回路網LISNを通って電源回路に帰ります。図2.3を見てください。 ※LISN:Line Impedance Stabilization Network
・このときにLISNの測定端子(50Ω両端)の電圧がコモンモードの伝導ノイズとして測定されます。また,コモンモードのノイズとして輻射されます。
・したがって,ICSを少なくしノイズを減らすためには,以下のことが必要になります。①スイッチ電圧VQの波形を台形波にし,dVQ/dtを小さくする。②MOSFETのドレインと接地間の浮遊容量CSを少なくする。特に①は,VQに含まれる高調波電圧も減らすことができ非常に有利になります。
・なお,浮遊容量CSは,◆ MOSFETのケース-放熱器-接地線の間で形成される浮遊容量と,◆スイッチングトランスの一次巻線と二次巻線間の容量が主になります。使用するMOSFETやトランスの巻数やボビン構造等によって変わりますが数百pF程度になると推定されます。
2.スイッチング電源のノイズ発生源
です。ただし,32
121/1/1
1)5.2(
SS
SS
Q
SCSCC
CCdt
dVCIII
15
アクロスザライン・コンデンサ: Xコンデンサラインバイパス・コンデンサ:Yコンデンサ
:J55013のLISNも同じ。
a極
b極
++
250 H
21 F 21.0 F
250:
21
Ω測定時
ノイズk
)( networkionstabilizatimpedanceLineLISNCISPR
1SC
2SC
3SC
GroundFrame
1I 2IGC
CSI
図2.3 メインスイッチ電圧によるコモンモードノイズの発生メカニズム
※ノイズを測定するときは電源インピーダンス安定回路網の抵抗は50Ωに切り替えます。また,図において浮遊容量CG,CS,CS1,CS2には次の関係にあります。CG>>CS,CS1,CS2
なお,フレームグラウンドとは,電気・電子機器の金属アースやシャーシのグラウンドを意味します。
2.スイッチング電源のノイズ発生源
16
2.スイッチング電源のノイズ発生源・ここで,矩形波と台形波の高調波電圧を比較してみましょう。
・図2.4に示す矩形波電圧と台形波電圧を式(2.2)のようにおき,フーリエ展開すると式(2.3)と式(2.4)になります。
・また,このときの矩形波電圧と台形波電圧の高調波電圧の比Rnを求めると式(2.5)となります。なお,メインスイッチのノイズ電流は浮遊容量を通って流れるために,矩形波電圧と台形波電圧は交流として扱い以上の式を求めました。
T
2
PQV
offT
0
t
QV
2
T
QV
T
2
PQV
offT
0
t
2
T
図2.4 メインスイッチの電圧波形
17
ようになります。ーリエ展開すると次の同様に台形波電圧をフ
ます。は最終的に以下となりり,矩形波電圧が奇数のときだけであが存在するのは
いて求めます。る。先ず,矩形波につと置きフーリエ展開す
)7.2(12sin12
12
0sinsin
cos2
2cos
2
2
222
2
1coscos1
coscossin
2
2sin
2
2
)6.2(cossin
1
.Re
.Re
2
2
0
2
02
2
2
0
2
02
1
0
tnn
VV
Vna
n
tn
n
tn
T
Vtdtn
V
Ttdtn
V
Tb
n
V
n
V
n
n
n
n
T
V
n
tn
n
tn
T
Vtdtn
V
Ttdtn
V
Ta
tnbtnabV
n
QP
cQ
cQn
T
T
T
QPT
T
T
QPQP
n
QPQPQP
T
T
T
QPT
T
T
QPQP
n
n
nnQ
2.スイッチング電源のノイズ発生源
nT
n
2
nが奇数のとき、nが偶数のときはゼロになる。
18
はゼロになります。た,に以下となります。ま
は最終的となる。は奇数次だけであり,対称波であるために
ようになります。ーリエ展開すると次の同様に台形波電圧をフ
n
n
QPQP
T
T
QP
T
T
QP
T
QPQP
n
τT
T
QPT
T
QPτ τT
τ
QPQP
τT
T
T
τT
QPτT
τT
QPQP
τT
τT
QPτT
τ
QPQP
n
b
ann
n
nn
T
V
n
n
n
n
T
V
n
tn
T
V
n
tn
n
tnt
T
V
n
tn
T
V
n
tn
n
tnt
T
Va
tdtnT
Vtdtn
τ
t
T
Vtdtn
T
Vtdtn
τ
t
T
V
tdtntτ
V
Ttdtn
V
Tdtnt
τ
V
T
tdtntτ
V
Ttdtn
V
Ttdtnt
τ
V
Ta
2)11(1cos
1coscos2sincos4
cos
sincos2cossincos2
sinsin2
sinsin2
sin2
2sin
2
2sin
2
2
sin2
2sin
2
2sin
2
2
2
2
2
2
2
2
0
2
2
2
20
2
2
2 2
0
2
2
2
2.スイッチング電源のノイズ発生源
T
2
PQV
offT
0
t
2
TQV
2)(
Ttftf
対称波の定義
19
2.スイッチング電源のノイズ発生源
0sin
cossin2sincossin2
coscos2
coscos2
cos2
2cos
2
2cos
2
2
cos2
2cos
2
2cos
2
2
sin2sin
2
4sin4
cos4sincos4
2
2
2
2
2
0
2
2
2
20
2
2
2 2
0
2
2
2
222
2
T
T
QP
T
T
QP
T
QPQP
τT
T
QPT
T
QPτ τT
τ
QPQP
τT
T
T
τT
QPτT
τT
QPQP
τT
τT
QPτT
τ
QPQP
n
QPQPQP
QPQP
n
n
tn
T
V
n
tn
n
tnt
T
V
n
tn
T
V
n
tn
n
tnt
T
V
tdtnT
Vtdtn
τ
t
T
Vtdtn
T
Vtdtn
τ
t
T
V
tdtntτ
V
Ttdtn
V
Ttdtnt
τ
V
T
tdtntτ
V
Ttdtn
V
Ttdtnt
τ
V
Tb
n
nV
n
nV
n
n
T
V
n
n
T
V
n
n
n
n
T
Va
20
2.スイッチング電源のノイズ発生源
となります。
はと,その比矩形波電圧の比を取るここで,台形波電圧と
)9.2(12
12sin1
12
12sin2
1
12
12sin12sin2
)8.2(12
12sin12sin2
1
1
12
.Re
.
12.
n
n
PQn
PQ
cQ
TraQ
n
n
n
PQ
TraQ
n
n
n
tnVn
tnnV
V
VR
R
n
tnnVV
以上より,台形波のスイッチ電圧は式(2.8)になります。
・Rnの計算結果を図2.5に示しています。
・それらから,立ち上がり・立下り時間を大きくすると,矩形波に対する台形波の高調波電圧の発生比率を少なくすることができます。
・その比率は周波数が高くなるほど小さくなります。台形波にすることにより,特に高周波のノイズを低減することができます。
訂正
21
2.スイッチング電源のノイズ発生源
0.001
0.01
0.1
1
100 1000 10000 100000
τ=0.1μS τ=0.5μS
)(kHzf
nR
率
比
生
発
の点 2
図2.5 矩形波に対する台形波の高調波電圧の発生比率
22
2.スイッチング電源のノイズ発生源・スイッチングレギュレータはDC-DCコンバータと制御回路(基準電圧,比較回路,増幅回路,時比率制御回路もしくは周波数制御回路)から成り,DC-DCコンバータのスイッチQの時比率D,もしくは周波数を制御し出力電圧Eoを一定にします。
・これらはパルス幅制御方式及び周波数制御方式といいます。※周波数制御方式はスイッチング周波数制御方式やバルス周波数制御方式ともいいます。
※時比率D:オン期間の一周期間に対する比率,D=Ton/T,デューティレシオともいう 。
・パルス幅制御方式は周波数を一定にして,時比率Dを変化させることで出力電圧を一定になるように制御します。
・一方,周波数制御方式では周波数を変化させることにより,出力電圧を一定になるように制御します。
・スイッチングレギュレータ(スイッチングコンバータ)にはいろいろな方式があります。これらを表2.2に示しています。
図2.6 制御方式によるスイッチングレギュレータの分類
スイッングレギュレータ パルス幅制御方式(PWM(pulse width Modulation)方式)
周波数制御方式(FM(frequency modulation )方式)
22
23
スイッチ素子数
発振方式/
制御方式主な用途
非共振形(矩形波)コンバータ
チョッパ方式非絶縁形
降圧形(buck形,カレントステップアップ形)
一石式 他励式/PWM方式DC-DC
コンバータ昇圧形(boost形,ボルテージステップアップ形)
昇降圧形(buck-boos形,極性反転形)
絶縁形
リンギングチョーク形(RCC,自励式フライバック形)
一石式 自励式/FM方式
AC-DC
コンバータ
フライバック形(オンオフ形,他励式フライバック形) 一石式
他励式/PWM方式フォワード形(オンオン形)
プッシュプル形(センタータップ形)
多石式ハーフブリッジ形
フルブリッジ形
共振形コンバータ
絶縁形
電流共振形 多石式他励式/ FM方式 AC-DC
コンバータ電圧共振形 一石式
部分共振形 一石式 自励式/ FM方式
2.スイッチング電源のノイズ発生源
表2.2 スイッチングコンバータの代表的な回路方
出展:落合政司,「スイッチング電源の原理と設計」,オーム社,2015年
24
2.スイッチング電源のノイズ発生源・表2.2の中で周波数制御(FM)方式であるリンギングチョーク形コンバータや電流
共振形コンバータは,出力電力や入力電圧が変動すると動作周波数が変化するために,ノイズの周波数も変化します。
・ノイズを評価するときは,ノイズが最大になる条件で行うように注意してください。
+
R8
T
R7
R6
R5
R4
R3
R2
D4
D3
D2
Q3
Q2
Q
C1
C2
R1
D
RoC+
Eo
Ei
Io
図2.7 リンギングチョーク形コンバータ
・自励式で発振器がない。・周波数制御により出力電圧を一定にする。・動作電流が三角波⇒必ず臨界モードで
動作するために電流不連続現象は発生しない。
・ 負荷で周波数が変動する。・ Eiが変化するとEoを一定にするようD
が変化する。
基準電圧,比較器誤差増幅,ドライブ回路
25
図2.8 リンギングチョーク形コンバータの動作波形
T
Q
D
RoC+
Eo
Ei
Io
LV
QV
※VQとVLの向き
2.スイッチング電源のノイズ発生源
1 2
Q on off
D off on
表2.3 リンギングチョーク形コンバータの動作状態
P
oni
QPL
TEi
PL
)10.2(1
2
n
E
D
DE
T
T
N
NE i
i
off
on
o
26
2.スイッチング電源のノイズ発生源・式(2.10)はリンギングチョーク形コンバータの出力電圧を,また,式(2.11)は動作
周波数を示したものです。
)(:
:
:
:
:::
)11.2(222
1
)10.2(1
2
1
222
o
o
2
o
o
1
2
WP
HL
N
Nnn
T
TDDEE
PL
DηE
EnE
EnE
PLEnE
nE
IL
E
Tf
n
E
D
DE
T
T
N
NE
o
P
on
io
oP
i
i
i
oPi
i
oP
i i
off
on
o
出力電力
の電力変換効率,スイッチングトランス
,の励磁インダクタンススイッチングトランス
,トランスの巻線比,
,時比率,入力電圧,出力電圧,
ます。下のことを意味していただし,それぞれは以
27
2.スイッチング電源のノイズ発生源
図2.9 リンギングチョーク形コンバータでの出力電力と動作周波数
)(kHzf
)(WPo
※リンギングチョーク形コンバータでは出力電力が増加するとそれに反比例して動作周波数が低下します。
・式(2.11)において,出力電力が変化すると動作周波数は図2.9のように変化し,出力電力が減ると動作周波数が高くなり,ノイズの周波数も高くなります。
・同様に,入力電圧が高くなると,動作周波数は高くなりノイズの周波数も高くなります。
28
PI
PI
onT
onT
T T
00t 1t T
Pi
t
2.スイッチング電源のノイズ発生源
図2.10 出力電力が増加したときの一次巻線電流iPとオン期間およびオフ期間
)12.2(122
1
0D
nIEnIE
T
TdtiE
TP
L
TnE
L
TEI
PoT
Pooff
soo
P
offo
P
oni
P
off
・出力電力が増加すると,増加した電力を供給するために,トランスの一次巻線電流iPのピーク値IPが比例して増加します。
・入力電圧Eoと出力電圧Eiが一定であれば,IPとオン期間およびオフ期間は比例関係にあり,したがって出力電力Poに比例してオン期間とオフ期間が伸び,動作周波数が低下することになります。
2929
Ci:電流共振コンデンサ,Cv:電圧共振コンデンサ
・ハーフブリッジ構成・電流共振コンデンサと電圧共振コンデンサが付いている。・二次側は全波整流。・Q1とQ2が交互にDuty50%でオンオフする。・出力電流(励磁電流)が共振し正弦波になる・Q1,Q2はZVS動作している。 ZVS : Zero Voltage Switching・出力電圧はFM制御。・効率が比較的に良く,ノイズも少ない。
図2.11 電流共振形コンバータの構成
2.スイッチング電源のノイズ発生源
30
1 2 3 4 5 6
Q1 on on off off off off
Q2 off off off on on off
D1 on off off off off off
D2 off off off on off off
表2.4 電流共振形コンバータの動作状態
2.スイッチング電源のノイズ発生源
31
2.スイッチング電源のノイズ発生源
2t0t 1t 3t T
0
0
0
0
0
Ei / 2
0
0
VG1
VG2
VCi
VLP
ie+iD/n
iD=iD1+iD2
VDS1
VDS2
Ei
Ei
4t 5t
1 2 3 4 5 6
ゲート電圧
電流共振コンデンサ電圧
トランス一次側電圧
トランス電流
ダイオード電流
スイッチ電圧
図2.12 電流共振形コンバータの動作波形
ZCSしている。
T
Ro
+Eo
Ei
C
D2
Io
Q1
D1
Q2
Ci
Cv
※VCi,VLPの向き
ZVSしている。
1Di
スイッチの損失とノイズが少なくなる。
ダイオードの損失とノイズが少なくなる。
3232
・トランスの一次巻線には0~T/2 期間はEi/2 が,T/2~T 期間は−Ei/2 が加わっており,この電圧が入力電圧になります。この矩形波電圧をフーリエ展開して基本波を取り出すと,振幅が2Ei/π の交流電圧になります。
・このように矩形波電圧を交流に変換し,交流に対する等価回路から昇降圧比を近似する方法を交流近似解析といいます。
図2.13 入力電圧の交流への変換
0
2
iE
T
iV
i
im
EV
2
2/T
)13.2(sin2
sin
5sin5
13sin
3
1sin
25sin
5
13sin
3
1sin
4
2
tE
tVV
tttE
tttE
V
i
imi
iii
ります。,入力電圧は以下とな基本波だけを考えると
。ます展開でき以下のようにフーリエな矩形波電圧とすると図のよう下入力電圧を
電流共振コンデンサを無限大としたときの入力電圧
2.スイッチング電源のノイズ発生源
33
2.スイッチング電源のノイズ発生源・図2.14は電流共振形コンバータの交流近似解析における等価回路を示したものです。
PL
1SL
iC
ACoR
iV
oV
12 SS LL
iC
ACoR
iV
oV
SL
PL
図2.14 電流共振形コンバータの交流近似解析における等価回路
交流出力抵抗
クタンス二次リーケージインダ
一次側換算の
クタンス一次リーケージインダ
共振コンデンサ
励磁インダクタンス
交流出力電圧
交流入力電圧
:
:
:
:
:
:
:
AC-
2
1
o
S
S
i
P
o
i
R
L
L
C
L
V
V
)15.2(
)14.2(
1
1
1
1
1
SP
SP
PP
SP
SP
SS
LL
LLLL
LL
LLLL
(a) 等価回路1 (b) 等価回路2
34
2.スイッチング電源のノイズ発生源
)18.2(
)17.2(2
1
::
)16.2(
111
1
0
20
2
2
2
2
22
S
i
ACo
iS
P
S
o
L
CRQ
CLf
L
LK
f
fyff
yy
Qy
KK
G
,動作周波数,共振周波数,
ます。下のことを意味していただし,それぞれは以
入力電圧
出力電圧
・図2.14(b)の等価回路2における昇降比Gは式(2.16)で与えられ,周波数に対して図2.15のように変化します。
・したがって,入力電圧が高くなると出力電圧を一定にするために動作周波数は高くなります。このときにはノイズの周波数も高くなります。
・出力電力が減ると同様に動作周波数は高くなり,ノイズの周波数も高くなります。
35
2.スイッチング電源のノイズ発生源
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 1.1 1.2
G
f / f0
Q=100
Q=20
Q=10
Q=9
Q=8
Q=7
Q=6
Q=5
Q=4
Q=3
Q=2
Q=1
図2.15 電流共振形コンバータの出力特性(Ls1/LP=0.2の場合)
実際の使用領域
36
2.スイッチング電源のノイズ発生源
2.2 メインスイッチやダイオードによって発生する高周波の振動電圧・フライバック形コンバータなどにおいて,メインスイッチであるMOSFETが高速でオン・オフすると急激な電圧・電流の変化に伴いサージ電圧やサージ電流が発生し,これらがノイズの発生源になります。
・スイッチがターンオンするときには,スイッチに並列に接続されたコンデンサの放電等によりサージ電流が流れます。ターンオフするときには,トランスのリーケージインダクタンスや配線のインダクタンスによりサージ電圧が発生します。
T
rt ft0t
t
QQ iv ,
0
Qv
Qi
onToffT
サージ電圧(リンギング電圧)
サージ電流
図2.16 メインスイッチ(MOSFET)に発生するサージ電圧・電流
Eo
Ei
C Ro
DT
+
Io
Q
37
2.スイッチング電源のノイズ発生源
・また,出力ダイオードのリカバリ特性によってもノイズが発生します。PNジャンクションダイオードはリカバリタイムがあり,これがノイズを発生する原因になっています。
・フライバック形コンバータなどでは出力ダイオードの順方向に電流が流れている状態でスイッチをオンし,出力ダイオードに逆バイアスをかけてオフさせます。このとき,出力ダイオードに蓄積された電荷がすぐに消滅せず,図2.17に示しているように時刻t0以降も短時間は逆方向に電流が流れます。
・その後,時刻t2に達すると出力ダイオードがオフし逆方向電流は急激にゼロに向かいます。このときに回路の寄生インダクタンスに逆起電力が発生し浮遊容量などと共振し振動します。これがノイズ源になります。
・寄生インダクタンスに発生する逆起電力は時刻t2以降の逆方向電流の時間に対する傾斜di/dtに比例するために,di/dtの大きいハードリカバリダイオードではリンギング電圧も大きくノイズも大きくなります。
・一方,ソフトリカバリダイオードではdi/dtが小さく臨界制動の状態になっており,リンギング電圧は発生しにくくなります。
・また,ショットキーバリアダイオードはキャリアの蓄積効果がないために,振動はなくリカバリノイズを非常に少なくすることができます。
38
2.スイッチング電源のノイズ発生源
図2.17 出力ダイオードのリカバリ特性
逆電流
ストレージ期間 オフ期間(逆電流阻止期間)
① ソフトリカバリタイム
② ハードリカバリタイム
0
iD
0t 1t t
①
②
ソフトリカバリ
ハードリカバリ
2t
rrt
rrt
rI
rI1.0
Eo
Ei
C Ro
DT
+
Io
Q
VD 0
39
2.スイッチング電源のノイズ発生源・以上はフライバック形コンバータでの動作ですが,同じ矩形波絶縁形コンバータのリンギングチョーク形コンバータでは動作が違ってきます。
・リンギングチョーク形コンバータは電流臨界モードで動作しているために,出力電流がゼロになってからスイッチがオンし次の動作に移ります。したがつて,リカバリ期間がほとんどなくノイズも少なくなります。
KPIP2
onT offT
00t 1t T
0
IP1
IP2
図2.18 リンギングチョーク形コンバータとフライバック形コンバータの励磁電流波形
(a) リンギングチョーク形コンバータ
(b) フライバック形コンバータ
・電流共振形コンバータでは二次側ダイオードはオンするときとオフするときにZCS(zero
current switch)しており,したがって,ダイオードノイズは少なくなります。
onQR
i
I
i
CvC
offQR
iE
Cv
i L
C
40
I:オン期間にスイッチに流れる電流,ここでは励磁インダクタンスが大きく定電流とします。C:ノイズ防止用等のためにスイッチに並列に接続されたコンデンサ,VQ:オフ時にスイッチに加わる定常電圧L:リーケージインダクタンスなどのインダクタンス,出力ダイオードが導通しトランスが短絡されている
ために励磁インダクタンスは入りません。RQ-on:スイッチがターンオンするときのスイッチの等価抵抗,高抵抗からゼロまで急激に変化しますが
ここでは複雑となるために一定値として扱います。RQ-off:スイッチがターンオフするときのスイッチの等価抵抗,ゼロから高抵抗まで急激に変化しますが
ここでは複雑となるために一定値として扱います。
2.スイッチング電源のノイズ発生源・メインスイッチがオフ・オンしたときとダイオードがオフするときの等価回路とそのときに発生
するサージ電圧・電流の理論式を求めましょう。
(a)ターンオン時 (b)ターンオフ時
図2.19 スイッチのターンオン・オフ時の等価回路
40
i
iE
L
CQ
QVQV
41
2.スイッチング電源のノイズ発生源・先ず,ターンオンするときについて求めます。スイッチがターンオンするとコンデンサCに
蓄えられているエネルギーがスイッチを通して放出され大きなサージ電流が流れます。図2.19(a)において次式が成り立ちます。
)0(1
)0(
)0()0()(
ConQ
onQ
onQC
ConQConQ
onQ
onQC
CCCC
onQC
C
CvRs
IRCsRsV
CvRssVCRs
IRRsIsV
CvsCsVs
IvssVC
s
IsI
s
IsI
iRv
dt
dvCIiIi
す。これを下式に代入しま
変換をして求めます。
られます。ラプラスチを流れる電流が求めに加わる電圧とスイッ等式を解くとスイッチ
(2.19)
onQR
i
I
i
CvC
図2.19(a)
42
2.スイッチング電源のノイズ発生源
)22.2(
0
)21.2(110
)20.2(110
/1
)0(
/1
11
)0(/1
1)0(
/1
11
onQ
Q
onQ
C
P
P
CR
t
CR
t
onQ
QCR
t
CR
t
onQ
C
onQ
C
CR
t
onQ
CR
t
Q
CR
t
onQ
CR
t
CC
PonQ
C
onQ
onQ
C
PonQ
ConQ
onQ
PonQonQ
C
R
V
R
vi
i
eIeR
VeIe
R
v
R
vi
eIReVeIRevv
CRs
v
CRssIR
vCs
I
CRsCvR
s
IR
CRsCRsV
onQonQonQonQ
onQonQonQonQ
は以下となります。ク電流また,このときのピー
43
2.スイッチング電源のノイズ発生源
t
iI
Pi
0
図2.20 スイッチオン時のサージ電流
・次にスイッチがターンオフときに発生するサージ電圧を求めます。
・スイッチがオンしている期間はインダクタンスLにはLI2/2なる電磁エネルギーが蓄えられています。スイッチがオフするとこのエネルギーが並列コンデンサCを充電し,スイッチ両端に高周波の振動電圧が発生しこれがサージ電圧になります。図2.19(b)において次式が成り立ちます。
offQR
iE
Cv
i L
C
44
2.スイッチング電源のノイズ発生源
offQ
C
C
Q
C
C
offQ
C
CC
Q
C
CP
offQ
CC
QC
R
sVsCsVsI
s
VsVIssIL
vIi
R
sVvssVCsI
s
VsVissIL
iv
R
v
dt
dvCi
Vvdt
diL
ます。を入れると以下となり,初期条件,
を求めます。とこれらより,
0)0()0(
0
0(b)ターンオフ時
図2.19 スイッチのターンオン・オフ時の等価回路
QV
45
2.スイッチング電源のノイズ発生源
とおきます。
,
として,ここで,
す。これを前式に代入しま
LCR
CL
LCCRLC
LCCRLCCR
CLR
CRLCCRsLC
LIsV
LCs
CRsLC
LIsVsV
LIs
V
LCs
CRsLCsVs
R
LLCssV
s
VsVLI
R
sVsCsVLs
tofftofftofftoff
offQ
PoffQoffQ
Q
offQ
Q
C
Q
offQ
C
offQ
C
Q
C
offQ
C
C
1
2
/1
1
2
11
1
2
11
2
1
2
2
11
2
111
111
222
22
2
22
46
2.スイッチング電源のノイズ発生源
です。,ただし,
を代入します。,ここで,
QoffQ
Q
QoffQQm
Q
t
m
QQoffQQ
QoffQ
tt
QC
offQ
QttQ
tttQ
C
C
VIR
VVIRVV
VteV
VtVIRV
VIRttVv
RCLC
VLIt
LCt
V
LC
tLI
LCtt
V
LCv
s
LI
LCs
s
s
V
LCsLC
LIsVsV
2tan2)(
)23.2()sin(
)sin(2)(
2sincos1
211
sin1
cos11
sin1
sincos11
111
1222
222
22
2222
22
22222222
47
2.スイッチング電源のノイズ発生源
)25.2(
1
)24.2(cossin2
cossinsin
2
tan 1
Q
m
P
offQ
Qt
m
offQ
t
m
t
m
t
m
offQ
Q
t
mC
offQ
C
VeV
V
R
VteCVt
R
eV
teCVteCVR
VteV
dt
dvC
R
vi
下となります。また,ピーク電圧は以
t
Cv
iE
PV
0
図2.21 スイッチオフ時のサージ電圧
QV
48
2.スイッチング電源のノイズ発生源・出力ダイオードは図2.17に示しているように時刻t2でオフし逆電流阻止状態になります。
・このときの等価回路は図2.22のようになります。
・逆方向電流により回路のインダクタンスLに蓄えられたエネルギーは,ダイオード容量とノイズ対策等で並列に接続されたコンデンサの容量Cを充電します。
・このときに電圧・電流は共振により振動的になります。それらを求めると以下のようになります。ただし,それぞれを以下のように定義します。
VR:逆方向電圧,IR:時刻t2における逆方向ピーク電流L:リーケージインダクタンスなどのインダクタンス,スイッチがオンしトランスが短絡されているために
励磁インダクタンスは入りません。C:ダイオードの容量とノイズ防止用等のためにスイッチに並列に接続されたコンデンサの容量RD-off:ダイオードがターンオフするときのスイッチの等価抵抗,ゼロから高抵抗まで急激に変化します
がここでは複雑となるために一定値として扱います。
図2.22 出力ダイオードオフ後の等価回路
Cv
L
C
RV
i
offDR
iDi
DvRV
L
C CvD
49
2.スイッチング電源のノイズ発生源
RRoffD
R
offDoffD
RRoffDRm
offD
Rt
m
offD
t
m
t
m
t
m
offD
R
t
mC
offD
C
R
t
mC
CRi
VIR
V
R
CL
LCCR
VIRVV
V
R
VteCVt
R
eV
teCVteCVR
VteV
dt
dvC
R
vi
i
VteVv
vVE
-
--
-
,
。は以下で与えられます,,,なお,
が求められます。これより
が得られます。に置き換えると,をにおいて,式
2tan
2
/1
1
2
1
)2(
)27.2(cossin2
cossinsin
)26.2(sin
)23.2(
1
2
222
)23.2()sin( i
t
mC EteVv
50
2.スイッチング電源のノイズ発生源
図のようになります。はvと電圧i以上で
2
DD 下求めたダイオード電流。の条件は満足されます
くなるために上記般的にはオフ抵抗が高として求めました。一ただし, D- CLR off
Di
0t
RI
Dv
RV
t0
図2.23 出力ダイオードのリカバリ期間における電流・電圧波形
ダイオード電流iDはわかりやすくするために図2.22や式(2.27)の電流iを逆方向にしたものです。同様な理由により,ダイオード電圧vDも図2.22や式(2.26)の電圧vCを逆方向にした電圧を意味しています。
i
Di
DvCvCD
51
2.スイッチング電源のノイズ発生源
2.3 スイッチングトランスのリーケージフラックス・トランスの一次巻線を流れる電流によって発生した磁束の一部は,リーケージフラックスと
して空中に放射され輻射ノイズとなります。
・また,ほかの部品に誘導したりします。他の巻線部品も同様にリーケージフラックスによってノイズを発生します。
・一次巻線に電流iを流すと磁束が発生します。ほとんどの磁束はフェライトコアを通り二次巻線と鎖交しますが,一部は二次巻線とは鎖交せず,外部の閉回路を通り一次巻線に帰ります。これがリーケージフラックスとなります。図2.24はフェライトコアと一次巻線の断面を見た図ですが,もともとコアを通らず巻線とコアの間を通る磁束がリーケージフラックスになります。
1
1´
2
2´
i
コア
巻線
漏洩磁束
i
図2.24 スイッチングトランスのリーケージフラックス
52
2.スイッチング電源のノイズ発生源
2.4 平滑コンデンサに生じるノイズ電圧やブリッジ整流ダイオードのノイズ
・ブリッジ整流回路の平滑コンデンサには電解コンデンサが使われますが,容量のほかに等価直列抵抗(ESR)やインダクタンス成分を含んでいます。 このため,
①スイッチがターンオンし平滑コンデンサに放電電流が流れると,ESRとインダクタンスにノイズ電圧が発生し,ブリッジ整流ダイオードが導通するとこれがAC電源間に現れます。
② また,整流ダイオードがターンオフするとスパイク電圧が発生し,逆方向にバイアスされたダイオー ドのPN接合容量を通してAC両極間にノイズ電圧として現れます。
・これらは一般的にノーマルモードのノイズとなります。図2.25において, e(c)n1,e(C)n2がこれらのノイズです。
・また,図2.26はメインスイッチがターンオンするときの等価回路であり,スイッチがターンオンするときには,rとLCに図2.27に示すノイズが発生します。 LCには,ターンオフするときにも,同様に同図に示すノイズが発生します。
53
2.スイッチング電源のノイズ発生源
:J55013のLISNも同じ。
a極
b極
++
250 H
21 F 21.0 F
250:
21
Ω測定時
ノイズk
)( networkionstabilizatimpedanceLineLISNCISPR
1SC
2SC
3SC
GroundFrame
GC
CSI
放電電流
2)( nce
1)( nce
※e(c)n1,e(C)n2は伝導ノイズ(conduction noise)のノーマルモードノイズを意味しています。
図2.25 平滑コンデンサやブリッジ整流ダイオードのノイズ
54
2.スイッチング電源のノイズ発生源
図2.26 メインスイッチターンオン時の等価回路
図2.27 平滑コンデンサのESR及びインダクタに発生するノイズ電圧
Cv
iIi
rrV
LV
onQR
CL
Ir
t
onT offT0
0 r
onCLr
t
ILV
f
onCLf
t
ILV
1t T0t
LV
rV
T
rI
55
2.スイッチング電源のノイズ発生源
・メーカによって異なりますが,160V680μF~1000μFのESRとインダクタンスは表2.5に示す値になっています。
・また,図2.28はブリッジ整流ダイオードのリカバリ特性の一例を示したものです。
・このようなリカバリ電流が流れると平滑コンデンサのESRとインダクタンスには図2.29に示す電圧が発生し,これがノーマルモードのノイズ源になります。
表2.5 平滑コンデンサのESRとインダクタンス
データ 備考
ESRf=10kHz 35~40mΩ
f=100kHz 30~35mΩ
インダクタンスLC 10~20nH
56
2.スイッチング電源のノイズ発生源
Ir=100mA
100mA
0
divst /2
Di
0t 1t 2t
rV
0
0LV
1t 2t0t
t
※上図はtrrの測定条件におけるリカバリ特性で,実機での動作波形ではありません。整流ダイオード:RM2A,IF/VRM:1.2A/600V
図2.28 ブリッジ整流ダイオードのリカバリ特性
図2.29 ブリッジ整流ダイオードがターンオフするときに発生する電圧(ノイズ)
57
2.スイッチング電源のノイズ発生源
2.5 出力コンデンサに生じるノイズ電圧(リプル電圧)
・一般的に出力コンデンサには電解コンデンサが使われますが,ブリッジ整流平滑コンデンサと同様に容量のほかに等価直列抵抗(ESR)やインダクタンス成分を含んでいます。
・このために,スイッチング電流が急激に変化すると,ノイズのもとになる高周波のリプル電圧が発生します。
・図2.30に示しているように,周波数が50kHzを超え500kHzくらいまでの領域ではコンデンサのインピーダンスZは等価直列抵抗r(ESR)にほぼ等しく,容量に発生するリプル電圧Δecが非常に小さいと考えると,リプル電圧の大きさは流れる電流のp-p値Ip-pにrを乗じた値のリプル電圧Δerになります。
)28.2(rIeeee PPrrCo
0.01
0.1
1
10
0.01 0.1 1 10 100 1000
Z
E S R
)(kHzf
ESRZ ,
2.スイッチング電源のノイズ発生源
図2.30 電解コンデンサのインピーダンスおよびESRの周波数特性470μF/250Vの20℃における周波数特性です。
テキストP217
図8.19を参照してください。
58
59
1.( )の中を埋めなさい。
(1) ノイズは伝搬経路によって伝導ノイズと輻射ノイズに分類できます。その内,伝導ノイズは主に( ① )を伝わって伝導するノイズを,輻射ノイズは空中に( ② )して放出されるノイズをいいます。
(2) スイッチの電圧を台形波にすることにより,特に( ③ )のノイズを低減することができます。
(3) ( ④ )方式のリンギングチョーク形コンバータや電流共振形コンバータでは,出力電力や( ⑤ )によって動作周波数が変化する。スイッチ電圧によるノイズの周波数は,出力電力が少なく, ( ⑤ )が高いときに高くなる。
(4) スイッチがターンオンするときには,スイッチに並列に接続されたコンデンサの放電等により( ⑥ )が流れます。ターンオフするときには,トランスのリーケージインダクタンスや配線のインダクタンスにより( ⑦ )が発生します。
(5) リンギングチョーク形コンバータや電流共振形コンバータでは,フライバック形コンバータに比べて出力ダイオードのノイズが少ない。これは出力ダイオードが( ⑧ )しているためである。
1章,2章演習問題
60
1.( )の中を埋めなさい。
(6) トランスの一次巻線を流れる電流によって発生した磁束の一部は,( ⑨ )として空中に放射され輻射ノイズとなります。
(7)スイッチがターンオンし平滑コンデンサに放電電流が流れると,( ⑩ )と( ⑪ )にノイズ電圧が発生し,ブリッジ整流ダイオードが導通するとこれがAC電源間に現れます。
1章,2章演習問題
61
3.伝導のノイズの対策方法3.1 共振形コンバータ
・共振形コンバータではメインスイッチがターンオン・オフする際にLCの共振を利用し,ス
イッチがZVS (zero voltage switching) するように動作させます。
・このため,ターンオン時のサージ電流はなくなり,ターンオフ時もスイッチの電圧が一定の
傾きで上昇するために高周波のサージ電圧(振動電圧)は出にくく,ノイズの発生は少なく
なります。
・図3.1(a)は電圧共振フライバック形コンバータのスイッチ電圧波形を示しています。スイッ
チ電圧VQは正弦波になっており,高周波の振動電圧はありません。
・また,図3.1(b)は電流共振形のスイッチ電圧波形ですが,高周波の振動電圧はなく,波形
が台形波に近くなるので高調波の発生も少なくなります。
・電流共振形コンバータでは出力ダイオードがZCS (zero current switching)しており,ター
ンオフする際のリカバリーノイズが少ない。
・電圧共振フライバック形コンバータでも,出力ダイオードがター ンオフする際のリカバリーノイズが少ない。
62
2QTon:1QTon:
図3.1 共振形コンバータのスイッチ電圧波形
(a) 電圧共振フライバック形コンバータ (b) 電流共振形コンバータ
3,6のデッドタイム期間中は電圧共振しており,Q1,Q2ともにターンオン時,ターンオフ時ZVS動作しています。
VQ
iE
0t 1t0
T
QPV
ZVS
ZVS
3.伝導のノイズの対策方法
63
・ Lr:共振コイル(インダクタンス),トランスのリーケージを使うのが一般的。・ Cr:共振コンデンサ・ スイッチ両端に発生する共振電圧を二次側でピーク整流する。・ オン期間を変え,FM制御する。・ スイッチはターンオン・オフ時ZVS(Zero Voltage Switching)動作をする。・ 高耐圧のスイッチ素子が必要になる。高耐圧のスイッチ素子が
できれば有効な回路です。・ CRTテレビの高圧発生回路に使われていた。
1 2 3 4
Q/DQ off off on on
D off on on off
表3.1 電圧共振フライバック形コンバータの動作状態
注)2:共振期間
図3.2 電圧共振フライバック形コンバータの構成
3.伝導のノイズの対策方法
64図3.3 電圧共振フライバック形コンバータの動作波形
GV
LV
Cri
Qi
Di
QCr VV QPV
oi nEE
oE
nEi /
PI
PI
■動作状態1スイッチがオフしており,Crが励磁電流(ほぼ定電流)で充電される。
■動作状態2
二次側ダイオードがオンする。トランス(LP)は短絡状態で,LrとCrが共振する。
■動作状態3
スイッチ(DQ)がオンし,Crが短絡される。
■動作状態4
二次側ダイオードがオフし,ほぼ定電流がトランスに流れる。
LV
QD
3.伝導のノイズの対策方法
65
o
o
o
o
o
o
o
i
o
i
o
rr
r
r
RnI
En
I
ER
R
E
nE
E
EG
f
CLff
C
LZ
2
2
'
00
:
:G
:
2
1:
一次側換算の負荷抵抗
昇降圧比,
動作周波数
共振周波数,
・動作周波数を下げるとオン期間が長くなり,出力電圧が上昇する。・負荷が大きくなると動作周波数が低下し,小さくなると高くなる。
図3.4 電圧共振フライバック形コンバータの出力特性
3.伝導のノイズの対策方法
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
0ff
G
)1.3(
11sin2
1
2
2
'
'
1
'0
ZG
R
R
ZG
ZG
R
ZG
RG
f
f
o
o
oo
66
ZVSTurn on
Turn off
ZCSTurn on
Turn off
on
電流
電圧
0
off
電流
電圧
0
off
電圧
電流
0
少々の損失が発生する。スイッチの電圧が一定の傾きで上昇するために高周波の振動電圧は出にくくなる。
少々の損失が発生する。スイッチ電流が一定の傾きで上昇するために高周波の振動電流は発生しにくくなる。
損失は発生しない。ZCSしており,ノイズの発生量は少なくなる。
on
電圧
電流
0
損失は発生しない。ZVSしており,サージ電流はなくなります。
図3.5 ZVSとZCSにおけるターンオン・オフ時のスイッチ電圧と電流
3.伝導のノイズの対策方法
6767
+
+
Q3
Q4
R2
Eo
T
R7
R3 R5
R4
R3D9
D8
D2
Q1
C2
C2
Ei
D10
RoLS
C4
C4
C3
P
D10
D11
R2
R6R4
R7QCr
R1
C
C/D
Amp
D3
D4
R5
D
・部分共振形コンバータコンバータでもターンオン時のサージ電流を少なくし,ノイズを減らす
ことができます。
0t
1 2 3
1t T
0
0
0
0
0
0
PP Ii
VL
VCr=VQ
一次励磁電流
iQ
iD
VG
oI
t
QPi
iI
nI L
nEi /
oE
QPV
2t
図3.6 部分共振形コンバータの構成と動作波形
3.伝導のノイズの対策方法
基準電圧,誤差増幅器(Amp)
コントロール・ドライブ回路(C/D)
6868
動作状態1 動作状態2 動作状態3
Q on off off
D off on off
表3.2 部分共振形コンバータの動作状態
構成は基本的にRCCに同じすが,スイッチと並列に新たに共振コンデンサCrを設けてい
る。出力のダイオードがオフした後,スイッチを直ぐにオンさせずトランスの一次巻線インダクタンスL1と共振コンデンサCrで共振させる。その結果,メインスイッチの電圧VQが共
振により徐々に低下し,最低値になったところでスイッチのゲート信号を供給しオンさせる。この動作により,スイッチング損失が少なくなり,効率が上がります。また,ノイズが少なくなります。しかし,ゲート信号を遅らせる回路が必要になり,その分部品点数が多くなります。
3.伝導のノイズの対策方法
69
3.伝導のノイズの対策方法
・まったく同一条件ではありませんが,フライバック形コンバータとZVS動作している電流共振形コンバータの交流電源の両極に現れる伝導ノイズを比較して図3.6に示します。
・なお,測定時の動作状態とラインフィルター回路の定数は表3.3のようになっています。
AC電圧(V)
出力電力(W)
動作周波数(kHz)
ラインフィルター回路の定数 CY´(pF)CX1(μF) CX2(μF) CY2(pF)
フライバック形 100 100 67 0.22 0.22 1000 1000
電流共振形 100 100 100 0.22 0.22 1000 1000
※表中の記号は以下を意味しています。なお,ラインフィルターは同じではありません。
CY2
CY2
CX2CX1
L
CY´
二次アース
表3.3 伝導ノイズの測定条件
70
3.伝導のノイズの対策方法
図3.7 フライバック形と電流共振形の伝導ノイズの比較
なくなっている。
(a) フライバック形コンバータ
(b) 電流共振形コンバータ
ノイズ電圧
(dBμV)
ノイズ電圧
(dBμV)
3.5MHz付近と20~25MHz
付近にピークがある。
※Limitが準尖頭値,Limit2が平均値の限度値を,また,VaがAC
電源のa極のノイズ,Vbがb極のノイズを意味しています。
71
3.伝導のノイズの対策方法3.2 スナバーの効果的な利用・スイッチがターンオフするときにはトランスのリーケージインダクタンスや配線のインダクタ
ンスによりサージ電圧,高周波の振動電圧が発生します。
・スナバー回路を接続しサージ電圧を効果的に吸収するようにすれば,スイッチに加わる電圧を低減させると共にノイズを少なくすることができます。
・主なスナバー回路を図3.8に示しています。
・フライバック形コンバータ等では一般的に(b) CRスナバー と(d) ダイオードスナバー を組み合わせて使います。
・(b)CRスナバーでは,MOSFETがオフしたときにトランスのリーケージインダクタンスとコンデンサの共振による振動が残るので,この振動が速やかに減衰するようR2/4≧L /Cの関係が成立つ定数にC1とR1の値を設定します。
・また,(d)ダイオードスナバーはダイオード(D1)によってどの程度ドレイン電圧を下げるのかをMOSFETの耐圧から決めます。R1を変化させ,予定の電圧になるようにR1の値を決め,次にロスを計算します。
・フォワード形コンバータでは(e) スイッチスナバー と(f) トランススナバー が良く使われます。
72
・フォワード形コンバータでは,オフ期間にスイッチに加わるピーク電圧はトランスのキックバック電圧が加算されために高い電圧となります。キックバック電圧とはスイッチがオフ期間にトランスの逆起電力により生じる電圧で,トランスのインダクタンスと分布容量が共振することにより発生します。そのときの電圧波形は図3.9のようになります。
・VQPの大きさはスナバー回路で変化し特定できませんが,スイッチスナバー(アクティブスナバーともいう)を使用したときが最も低くなり,式(3.2)の値になります。トランススナバーを使ったときも同じくらいに低くすることができます。
・(e)スイッチスナバーでは,スイッチQのほかにもう一つのスイッチQ1が付いています。スイッチQがオフするとスイッチQには大きなキックバック電圧が発生しますが,これをQ1の寄生ダイオードとコンデンサC1で吸収し,後半にはQ1がオンしQ1を通してコンデンサC1の電圧をエネルギーとしてトランスに回生しています。この動作によりスイッチQに加わる電圧を制限します。
・(f)はトランススナバーです。三次巻線N3に発生する電圧が-Eiを超えるとダイオードD1が導通し,三次巻線に発生する電圧の大きさを入力電圧と同じに抑えます。その結果,スイッチの電圧は式(3.3)の値にすることができます。
3.伝導のノイズの対策方法
となります。なら
トランススナバーでの
スイッチスナバーでの
iQP
iiQPQP
i
off
QPQP
EVNN
EN
NEVV
ET
TVV
2
)3.3(*
)2.3(*
13
3
1
73
3.伝導のノイズの対策方法
Ei
T
QR1
C1
Ei
T
QR1
C1
D1
Ei
T
Q
C1
D1
D2
L1
Ei
T
Q
C1
R1 D1
-
D1Ei
T
Q
N1
N3
+
i
Ei
T
Q
C1
Q1
(a) CRDスナバー (b) CRスナバー (c) LCスナバー
(d) ダイオードスナバー (e) スイッチスナバー (f) トランススナバー
図3.8 主なスナバー回路
i
off
on ET
T
74
3.伝導のノイズの対策方法
図3.9 フォワード形コンバータにおいてスイッチに加わるピーク電圧VQP
①トランスの二次巻線の巻数が少なく,一次-二次巻線の結合が悪く,リーケージインダクタンスが大きいとき。②トランスの二次巻線の巻数がある程度多く,一次-二次巻線の結合が良く,リーケージインダクタンスが小さいとき。③トランススナバー使用時④スイッチスナバー使用時
③トランススナバー使用時
④スイッチスナバー使用時
i
off
ET
T
iE
0
offT
QPV
iE2
t
①リーケージインダクタンスが大きいとき
②リーケージインダクタンスが小さいとき
onT
75
・図3.10はフォワード形コンバータと電流の流れを,図3.11はその動作波形を示したものです。
・フォワード形コンバータの動作はスイッチQがオンしている動作状態1とオフしている動作状態2の二つに分けることができます。
・動作状態1の期間はスイッチQ がオンし,Dを通して二次側に電力が供給されます。動作状態2の期間はスイッチQ がオフし,フライホイールダイ オードDfとLを通して電流が流れます。
・動作状態1から2に至る期間に,DとDfの両方が導通しているわずかな期間が存在し,このためにキックバック電圧はリーケージインダクタンスが大きいほど大きくなります(図3.9)。
3.伝導のノイズの対策方法
動作状態 1 2
Q on off
D on off
Df off on
表3.4 フォワード形コンバータの動作状態
図3.10 フォワード形コンバータと動作電流の流れ
Eo
Ei
C Ro
D
T
+
Io
Q
L
Df
動作状態1の電流
動作状態2の電流
76
iE
0
VG
VL
0
VQ
iL
iQ
iDf
0
0
0
LiPI
1 2
0t 1t T0
t
QPi
QPV
oL II
oE nEi /
oi EnE /
3.伝導のノイズの対策方法
図3.11 フォワード形コンバータの動作波形
ゲート電圧
スイッチ電圧
コイルの電圧
コイルの電流
スイッチ電流
ダイオードDf電流
Eo
Ei
C Ro
D
T
+
Io
Q
L
Df
QV
LV※VQとVLの向き
77
3.伝導のノイズの対策方法3.3 ソフトリカバリーダイオード及びショットキーバリアダイオード・フライバック形コンバータにおいて出力ダイオードなどにソフトリカバリダイオードを使用することにより,リカバリノイズを少なくすることができます。
・図2.17において時刻t2に達すると,ダイオードがオフし逆方向電流は急激にゼロに向かいます。このときに回路の寄生インダクタンスに逆起電力が発生し浮遊容量などと共振し振動します。
・ソフトリカバリダイオードではこのときの電流変化di/dtが小さく臨界制動の状態になっていために,リンギング電圧は発生しにくくなります。
・また,ショットキーバリアダイオードでもノイズを低減することができます。ショットキーバリアダイオードはキャリアの蓄積効果がないために,振動はなくリカバリノイズを非常に少なくすることができます。
・ショットキーバリアダイオードには,
①リカバリ電流がほとんどなく,リカバリ損失は無視できる。②順方向電圧降下が小さい。
などの長所があります。一方,③漏洩電流が大きく,それによる損失が無視できません。④耐圧が低い。⑤最大ジャンクション温度(Tjmax)が150℃で低い。
などの欠点があります。あまり,逆方向電圧が大きい回路には使うことが出来ません。
78
3.伝導のノイズの対策方法
3.4 フェライトビーズ(ビーズコア)やπ形フィルターの活用・ビーズコアは高周波で抵抗値が高くなる特性があるので,高周波ノイズを熱に変えて吸収する働きがあります。したがって,ノイズ発生源に直列に挿入するとノイズを低減することができます。
・例えば,出力ダイオードに直列に入れるとリカバリノイズを抑えることができます。使用例を図3.13に示します。また,出力ダイオードの出力端にコイルと電解コンデンサによりπ形フィルターを構成し,ノイズ電圧(リプル電圧)を減衰させるのも有効です。
図3.12 チップビーズの周波数特性
※チップビーズ:シリーズ名/HF30ACB,タイプ名/201209Type
79
3.伝導のノイズの対策方法
++
π形フィルター
※ がビーズコアを意味しています。
図3.13 ビーズコアによるノイズ低減回路とπ形フィルター
052.039478.0001089.0
033.0
)10210502(001089.0
033.0
052.0250)10(3310/4700
)4.3(
263
22
ができます。電圧を小さくすることンダクタンスでリプルとなります。僅かなイ
とすると減衰率は,,℃,μ HLkHzftmZVFC
LZ
Z
C
C
C
図3.13にπ形フィルターを示していますが,後段のフィルターの減衰率は下式で与えられます。
80
3.伝導のノイズの対策方法
3.5 スイッチングトランスの静特性・リーケージインダクタンスを減らし,電磁波として空中に輻射されるノイズを少なくします。
・また,一次-二次間の分布容量が大きいと,一次側に発生したノイズが二次側に伝導し,コモンモードのノイズとなるために分布容量をできるだけ少なくすることが必要です。
コア(鉄心)
d2 d1
N1N2
h
δ
コア(鉄心)
一次巻線二次巻線
※N1,N2は一次巻線数及び二次巻線数,δは巻線間間隔の平均値,d1とd2はそれぞれの巻線の巻厚の平均値(漏れ磁束と直角の寸法),hは両巻線の巻幅(漏れ磁束と同じ方向の寸法)を意味しています。
図3.14 同心巻き(層巻き)の漏れ磁束と寸法図
81
3.伝導のノイズの対策方法・同心巻き(層巻き)の場合のリーケージフラックスは前図のように主としてコアの軸方向に通
ります。
・このときの一次-二次巻線間のリーケージインダクタンスは両巻線を流れる電流の作る空間磁界のエネルギーを積分することにより求められ,以下の式で与えられます。ここで,M
を1ターンの平均巻回長(m),kRをロゴスキー係数とするとkRは
)5.3(3
121
1
210
2
21
dd
h
MNL
khh
h
ddk
l
R
R
となります。タンスは簡易的に以下
でリーケージインダクならが十分に大きくで与えられます。
・式(3.5)からリーケージインダクタンスに関して以下のことがいえます。
①線の巻き幅hに反比例してリーケージインダクタンスが減ります。
②巻数Nの自乗に比例してリーケージインダクタンスが増加します。
③1ターンの平均巻回長Mに比例してリーケージインダクタンスが増加します。
④巻線間間隔δとそれぞれの巻線厚d1とd2が増加するとリーケージインダクタンスが
増加します。
※出典:電気工学ハンドブック,P668,「3.3 巻線配置と漏れインダクタンス」,電気学会,S63年初版
82。巻数を少なくできます
線の度で設計すると一次巻できるだけ高い磁束密コアの飽和を考慮し
以下の式が成り立つ。
しないためには,トランスのコアが飽和
:一次巻線の巻数:励磁電流の最大値,,:励磁インダクタンス
,:コアの実効断面積,最大磁束密度:コア材の使用できる
,
)6.3(
)()/(
max
maxmax
1
1
max
max
11
1max
22
max
e
ePeP
eP
e
eP
e
P
eP
e
AB
iLiLN
N
iLAB
iLNdt
diL
dt
dNe
NiL
mAorTeslamWbB
3.伝導のノイズの対策方法・以上のことより,同心巻きの場合は巻き幅を広げ結合を良くするとリーケージインダクタンス
を少なくすることができます。
・また,巻数Nを下げるとリーケージインダクタンスを効果的に下げることができます。ただし,式(3.6)に示すように,巻数を減らすためにはコアの磁束密度を上げることが必要です。コアの飽和を考慮し,できるだけ高い磁束密度で設計することが必要です。
dt
diLe
iになったとき
dt
dNe
ファラデーの法則 コイルのインダクタンス
導体を貫く磁束が変化したときにその磁束を打ち消す方向に誘起起電力が発生する。
83
3.伝導のノイズの対策方法・もう一つの手段として断面積の大きなコアを使用する方法があります。
・リンギングチョーク形コンバータやフライバック形コンバータでは,トランスにエアーギャップを挿入するために以下に説明する内容は当てはまりません。しかし,フォワード形コンバータ用のトランスなど,ギャップがないときには有効です。
・図3.15のようにコアの断面積を2倍にします。そうすると,磁気抵抗が半分になりコアを通る磁束が2倍になります。その結果1ターン当たりの電圧2倍になるために
◆ターン数が0.5倍になります。◆巻厚も0.5倍となり,
その分リーケージインダクタンスを少なくすることができます。
コア
一次巻線
二次巻線
※コアの断面積を2倍にすると,巻数と巻厚が1/2になりリーケージインダクタンスが減少します。
図3.15 コアの工夫による漏洩インダクタンスの削減
84
3.伝導のノイズの対策方法
・巻線長も0.707倍(1/1.414=0.707)となるために巻線抵抗も0.707倍になります。
・その結果,◆銅損は0.707倍に減ります。◆鉄損はコア体積が増える分増えてしまいますが,鉄損の増加分と銅損の減少分とが同じ
とすると,リーケージインダクタンスが減る分小形化が可能となります。
・リーケージインダクタンスはターン数と巻線長による分だけでも0.177倍(0.52×0.707)に減少します。
・ただし,逆にターン数が少なすぎてもリーケージインダクタンスが増えてしまいます。フォワード形コンバータにおいて,出力電圧が5Vなどで低いときは二次巻線数が2ターン程度と少なくなり,結合が悪化しリーケージインダクタンスが増えてしまいますので注意してください。
倍になる。倍になり、抵抗も巻線の長さが
倍になる。が巻数
倍になる。が平均巻回長倍にする。断面積を
2/12/1
2/1
2M2
N
MNLl 2
85
3.伝導のノイズの対策方法また,巻線をサンドイッチ巻きにするとリーケージインダクタンスを小さくすることができます。図3.16では一次巻線を3分割し,その間に2分割した二次巻線を入れています。 一次巻線と二次巻線が隣り合う部分が4箇所ありますから,図3.14の構造に焼きなおすと,
・ターン数が同じで巻き幅が4hの巻線と等価になります。・または,ターン数が1/4で巻き幅がhの巻線が4個直列になったのと等価になります。
このことより,リーケージインダクタンスは1/4になります。しかし,この場合は巻き幅が等価的に4倍になるために,一次巻線と二次巻線間の分布容量が4倍になりコモンモードのノイズが増えてしまいます。これらを考慮し,実用的には一次巻線-二次巻線-一次巻線のような3層構造が最も多く使われます。
一次巻線
二次巻線
図3.16 コアの工夫による漏洩インダクタンスの削減
86
3.伝導のノイズの対策方法・図3.16の構造ではサンドイッチ巻きのリーケージインダクタンスLl´は下式にように同心巻き(層巻き)のリーケージインダクタンスLlの1/4になります。
4
44/
44
2
2
l
ll
l
ll
L
N
NLL
L
h
hLL
(3.7)
・分布容量はトランスのボビンによって変わります。ボビンには以下に示すようなものがありますが,その中で分割巻きボビンが一次-二次間の分布容量が最も少なくなります。表3.5に層巻きボビン,分割巻きボビン,多重ボビンの特徴を示します。
N1
N2
N3
N1
N2
N3
N1 N2 N3
(a) 層巻きボビン (b) 分割巻きボビン (c) 多重ボビン
図3.17 ボビンの種類
87
3.伝導のノイズの対策方法
表3.5 ボビンの特徴
層巻きボビン 分割巻きボビン 多重ボビン
用 途 一般的なボビンで,広く使われています。
主に,共振コンバータ用トランス, 高絶縁で小さい浮遊容量が必要とされる測定器などのコンバータトランス,一次-二次間高耐圧トランスなど
結合度 ◎良い × 良くありません。結合面積が小さいので層巻きボビンより悪い。
△ あまり良くありません結合面積が広いので分割ボビンより良いはずですがN1とN2の距離があると悪くなります。
一次-二次間容量
△ やや多い ◎最も少ない ○ 少なくすることができます容量になる面積が分割ボビンより広いがN1
とN2の距離によって少なくなります。
ばらつき △~○巻幅が狭いと片側に偏り,結合度が変わります。
○ 少ない ○ 少ないボビンの構造によっては大きい場合があります。特に位置決めがしっかりしていないとばらつきます。
形状 ○ 小さい △ 中 × 大きい
8888
(a) 密着巻き (b) スペース巻き (c) 集中巻き
※スペース巻き,集中巻きは二次巻線の巻数が少ないときの巻き方です。
図3.18 二次巻線の巻き方
・密着巻き
普通の巻き方です。最も電線の密度が高くなります。
・スペース巻き
ターン数が少ないときに結合を良くするために幅広く巻く方法です。銅線を1ターン巻き,次の1ターンを巻くときに隙間を空け巻く巻き方です。
・集中巻き
ターン数が少ないときに,1個所に密着して巻く巻き方です。巻線の位置によって結合が変化し,スペース巻きに比べ結合が悪くなります。リーケージインダクタンスが大きく,漏洩磁束が他の 部品に誘導 したり,放射ノイズとして空中に放出され,ノイズが増加することにもなる。ただし,巻線の位置によって結合を調整することができます。
3.伝導のノイズの対策方法二次巻線の巻き方によってもノイズに差が生じます。
一次巻線 二次巻線
8989
3.伝導のノイズの対策方法・バイファイラ巻きにするとリーケージインダクタンスを非常に小さくすることができ,放射
ノイズを最も少なくすることが出来ます。
図3.19 バイファィラ巻き
・バイファイラ巻きとは2本の絶縁銅線を一緒に 隣り合せにして巻き込む巻き方です。
・巻数の同じ2つのコイルが出来上がります。
・同じ銅線を使った場合は,バイファイラ巻きで巻いた2つの巻線のインダクタンスと抵抗は同じになり,結合も良く,リーケージインダクタンスは非常に小さくすることができる。
・リーケージインダクタンスを極力少なくするときに使われます。
・ 2つの巻線間には絶縁紙を入れられないので,巻線間の耐圧に注意する必要があります。(3重絶縁電線を使えば耐圧については問題がなくなります)また,巻線間の分布容量(寄生容量)が大幅に増えてしまうので,コモンモードのノイズ対策を十分に取ることが必要になります。
90
3.伝導のノイズの対策方法
コア
二次巻線
一次巻線
絶縁紙
巻き始め
コア
二次巻線
一次巻線
絶縁紙
巻き始め
※図示していませんが一次巻線と二次巻線の間に補助巻線を入れると一次側から出るノイズを吸収する役目
も果します。しかし,補助巻線の分,1次-2次間の距離が増えるのでその分少し結合が悪くなります。
(a) C字巻き(一般的な巻き方) (b) Z字巻き
・一次巻線をZ字巻きにすると,一次-二次間の分布容量を少なくすることができます。
図3.20 C字巻きとZ字巻き
・ここで,C字巻きとZ字巻きの分布容量に付いて比較します。
91。に比例することになる
倍した値になり,に量ターン当たりの分布容はつまり,分布容量
=
なる。めると,以下にように
を求価分布容量に等しくとたときの等ターンの電圧る電圧を巻線ここで,加えられてい
倍になる。はになるために電荷,分布容量は電圧はターン巻かれたときの
成立つ。これらの間には次式が
とすると,に蓄えられる電荷を,,分布容量をターンでの電圧をトランスの巻線
2
2
2
2
0
2
2
0
0
2
2
1
)10.3(
1
)9.3(
)8.3(
1
V
Vn
V
VnCC
CV
VCn
V
QC
CV
VCnnVnCQ
nQnCCnVVn
VCQ
QCCV
SS
SSS
S
SS
SS
S
SS
3.伝導のノイズの対策方法
92
VVVVVVVVV
VVVVVVVVV 181614121086420
VVVVVVVVV
(a) C字巻線
(b) Z字巻線
図3.22 巻線間の電圧92
VVVVVVVVV
VVVVVVVVV
VVVVVVVVVV 9999999999
3.伝導のノイズの対策方法987654321 CCCCCCCCC
191817161514131211 CCCCCCCCC
30292827262524232221 CCCCCCCCCC
図3.21 巻線間の分布容量
93くなる。分布容量が少な字巻線の方が約ターンの場合,層当たりの巻数が
◆比較
となる。量はターン当たりの分布容
トータル容量は~
となる。トータル容量は~~
字巻線◆
となる。量はターン当たりの分布容
となる。
以下同様に
となる。トータル容量は~~
とする。の分布容量をターン当たりの端子間
字巻線◆
てみました。のときについて比較し
%5.2891
2.109
8281
82881018
810910:
18:,
3.149
11581
1158324256196144100643616418
324,256,196,144,100,64
,36,1644
,422
,0
18:,
1
9
02
0
2
000
00
2
3021
0191191
02
0
2
00000000000
030029028027026025
02400
2
0
2
2300
2
0
2
2221
0191191
0
Z
CC
n
C
CCCC
CCCCC
CCCCCC
Z
CC
n
C
CCCCCCCCCCCC
CCCCCCCCCCCC
CCCCCV
VCCCC
V
VCC
CCCCCC
C
C
tn
3.伝導のノイズの対策方法
94
66.7 69.6 71.15 71.5
0
24
68
10
1214
1618
20
2 3 4 5 6 7 8 9 10
0
1020
3040
50
6070
8090
100
(a)C字巻線 (b)Z字巻線 比率=(b/a×100)%
94
0C
t巻数
%
比率
分布容量
図3.23 巻き方による分布容量の比較
3.伝導のノイズの対策方法
95
3.6 スイッチングトランスのコアアース
・コアを一次アースに接続し接地することにより,周波数でいうと中域領域から下側のノイズを落とすことができます。
・図3.24はセンター脚ギャップのスイッチングトランスでコアアースを取ったときの効果を示したものですが,コアアースを取ることにより5MHz以下の領域の伝導ノイズが減少しています。
・特に500KHz付近のノイズは約15dB良くなっています。詳細は図3.24を見てください。
・なお,この対策を実施するときはいろいろな関連する特許が出されている可能性がありますので,調査してからご使用ください。
3.7 プリント配線板の配線等
・ノイズを発生源の近傍で最短でループを作り短絡し,ノイズ電流を接地線に流さないようにします。場合によっては,最短距離のところにパスコンデンサを入れる方法も有効です。
3.伝導のノイズの対策方法
96
ノイズ電圧
(dBμV)
ノイズ電圧
(dBμV)
3.伝導のノイズの対策方法(a) コアアースなし
(b) コアアース付き10dB以上少なくなっている。
5MHz以下のノイズが大きい。
※Limitが準尖頭値,Limit2が平均値の限度値を,また,VaがAC電源のa極のノイズ,Vbがb極のノイズを意味しています。
図3.24 コアアースによる伝導ノイズの低減効果
97
3.伝導のノイズの対策方法3.8 ラインフィルター回路・スイッチング電源で発生したノイズがACラインや接地線にそのまま出てしまわないように,
ラインフィルターを挿入し,伝導ノイズを減衰させています。
・図3.25と図3.26は一般的なラインフィルター回路の構成とコモンモードに対する等価回路を示したものです。また,図3.27はラインフィルターの働きを示したものです。
・ラインフィルターは,
◆ノーマルモードノイズに対してはラインフィルターの磁束は打ち消され,インダクタンスは
ゼロで単なる導体となります。
◆コモンモードノイズに対して磁束は加算されるので,インダクタンスとして働きます。
・CXはアクロスザライン・コンデンサ(別名:Xコンデンサ)と呼ばれ,ノーマルモードのノイズを
除去します。特に低周波数,150kHz~1MHzまでの領域のノイズに対して効果的です。
・CYはラインバイバス・コンデンサ(別名:Yコンデンサ)といい,コモンモードのノイズ電流を
分流する役割を果たしています。特に15MHz付近までの高周波数のノイズに対して効果
的です。
98
3.伝導のノイズの対策方法
CY
CY
CXCX
L
Ln
Ln
低周波数の150kHz~1MHzの領域のノーマルモードノイズに効果的
15MHz以下領域の高周波数のコモンモードノイズに効果的
※Lはコモンモードに対するインダクタンス,Lnはノーマルモードノイズに対するインダクタンス,CXはアクロスザライン・コンデンサ(別名:Xコンデンサ),CYはラインバイバス・コンデンサ(別名:Yコンデンサ)です。
図3.25 ラインフィルター回路
・図3.26はラインフィルターの等価回路を示したものですが,巻線には直列抵抗RSと並列に分布容量CPが存在します。そのために,インダクタンスLと分布容量CPが共振し,共振周波数でインピーダンスは最大になりますが,それ以上の周波数ではインピーダンスは容量性になりインダクタンスとしては働かなくなります。つまり,周波数が高いノイズほど通過し易くなってしまいます。
・図3.28にラインフィルターインピーダンスの周波数特性の一例を示しています。
99
3.伝導のノイズの対策方法
φ1
φ2
i1
i2
N1
N2
i1
i2
φ1
φ2
N1
N2
コアの磁気抵抗:
,
0
0
,
2
2121
21
2121
m
m
R
R
NL
iiiNNN
L
iiNN
図3.27 ラインフィルターの働き
L
CP
RS
図3.26 ラインフィルターのコモンモードノイズ対する等価回路
100
3.伝導のノイズの対策方法
)( kZ
1000
100
10
1
1000
100
10
1
0.1
0.01
0.1
0.01
1 10 100 1000 10000 100000)(kHzf
ZL
)(mHL
図3.28 ラインフィルターインピーダンスの周波数特性例
101
3.伝導のノイズの対策方法
)12.3(
1
)11.3(1
1
11
1
22
2
222
22
SP
SP
SP
SPS
r
SPP
SPPS
SP
S
S
P
RC
RCj
RC
RCjRZ
RCLC
RCjLCLjR
LjRCj
LjR
LjRCj
Z
・ここで,図3.26に示す等価回路をもとにラインフィターのインピーダンスZと共振周波数でのインピーダンスZrを求めてみます。
・インダクタンスが一定としたとき周波数に対するラインフィルターのインピーダンスZは以下のようになり,分布容量が大きくなると小さくなります。図3.29を参照してください。
・また,共振周波数でのインピーダンスZrも分布容量が大きくなると小さくなります。
0
Z
PC
図3.29 ラインフィルターの分布容量とインピーダンス
102
3.伝導のノイズの対策方法・以上のことよりラインフィルターの分布容量は極力少なくしなければなりませんが,この場合
はセクション巻等を使うと少なくすることができます。
・一個のラインフィルターでノイズを除去できないときは,2個に分割し,一個はインダクタンス
の大きく周波数の低い領域のノイズ対策用,もう一つは分割巻きにして周波数の高い領域のノイズ対策用にするものも一つの方法です。
・また,図3.30のようにラインフィルターの巻線を折り返して巻くと.分布容量を減らしインピ
ーダンスの周波数特性を良くすることができます。そのときのインピーダンスの周波数特性を通常の巻き方と比較して図3.31に示します。
※折り返して巻くことにより分布容量を 少なくすることができます。
図3.30 ラインフィルターの分布容量を減らす巻き方
103
3.伝導のノイズの対策方法
1.E+00
1.E+01
1.E+02
1.E+03
1.E+04
1.E+05
1.E+06
1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 1.E+08
イン
ピー
ダン
ス(Ω
)
周波数(Hz)
通常巻き φ0.6-45t
折り返し巻き φ0.6-42t
図3.31 巻き方によるラインフィルターのインピーダンス周波数特性の改善
104
3.伝導のノイズの対策方法・ラインフィルターのパターンは入出力間が近づき分布容量が大きくならないように考慮しなければなりません。ラインフィルターの入出力ラインがリード線で飛んでいるときもリード線同士を近づけてはいけません。
・これらの関係を図3.32と図3.33に示します。
d
W
※パターン間隔dが狭く,パターン幅Wが広い ※間隔dが広く,パターン幅Wが狭い
(a) 悪い例(CPが大きい) (b) 良い例(CPが小さい)
図3.32 ラインフィルター入出力パターンの良い例,悪い例
105
3.伝導のノイズの対策方法
図3.33 ラインフィルター入出力リード線の引き回し(悪い例)
・ラインフィルターを通った後のAC電源側に誘導することがあり,ラインフィルターは電源から見て最後尾のACコードに繋がるところに配置することも必要です。
・場合によっては,ACコードの中にラインフィルターを入れることも必要になります。
(a) 悪い例 (b) 良い例
図3.34 ラインフィルターの配置
106
3.伝導のノイズの対策方法・ラインフィルターは磁束による誘導を受け易い。したがって,スイッチングトランス等の近くにラインフィルターを置くときは,スイッチングトランスのある方にシールド板を立てるなどの配慮が必要となる場合があります。
・次にXコンデンサとYコンデンサの効果について説明します。
・ラインフィルター回路の構成を図3.35のようにしたとき,AC電源側とスイッチング電源側のX
コンデンサとYコンデンサをそれぞれ変化させたときの伝導ノイズの減衰量を以下に示します。
CY2
CY2
CX2CX1
L
CY1
CY1
※初期値は以下となっています。CX1=0.1μF,CX2=0.22μF,CY1=1nF,CY2=3.3nF,L=8.6mH
図3.35 ラインフィルター回路の構成
107
減衰量δ
f
3.伝導のノイズの対策方法
f
減衰量δ
(a) CX1を変化させたときの減衰量
(b) CX2を変化させたときの減衰量
図3.36 Xコンデンサとノーマルモードノイズの減衰量
108
3.伝導のノイズの対策方法
f
減衰量δ
※CY1とCY2を同時に変化させたときの減衰量。容量:1nF,2.2nF,3.3nF,4.7nF,組合せ:10通り
図3.37 Yコンデンサとノーマルモードノイズの減衰量
109
3.伝導のノイズの対策方法CY1の容量大
f
減衰量δ
(a) CY1を変化させたときの減衰量
(b) CY2を変化させたときの減衰量
CY2の容量大
f
減衰量δ
※CY1の容量を1nF,2.2nF,3.3nF,4.7nFと変化させたときの減衰量です。
※CY2の容量を1nF,2.2nF,3.3nF,4.7nFと変化させたときの減衰量です。
図3.38 Yコンデンサとコモンモードノイズの減衰量
110
3.伝導のノイズの対策方法
・以上で図示しましたように,
①Xコンデンサは1MHz以下の周波数領域のノーマルモードノイズに対して効果的です。
②Yコンデンサは300kHz~15MHz付近のコモンモードノイズに対して効果的ですが,
400kHz~15MHz付近のノーマルモードのノイズにも効いています。
・よりわかり易くするために,フライバック形コンバータにおいて,初期状態とXコンデンサと
Yコンデンサを別々に開放したときの伝導ノイズの測定結果を図3.39に示します。
①Xコンデンサ(CX1,CX2)を開放すると3MHz以下のノイズ電圧が非常に増えています。
②Yコンデンサ(CY2×2)を開放すると,18-30MHzの領域と3.2MHZ付近のピーク及び
300kHz以下の領域のノイズ電圧が増加します。特に18-30MHzの領域と300kHz以
下の領域の増加が顕著に確認することができます。
111
※動作状態及びラインフィルター回路の定数は表3.1に同じです。CY2=1000pF×2,CY´=1000pF,CX1=0.22μF
CX2=0.22μFでCY1は付いていません。
(a) 初期状態
3.伝導のノイズの対策方法
図3.39 フライバック形コンバータにおけるX・Yコンデンサの伝導ノイズ低減効果
112
3.伝導のノイズの対策方法
※CX1=0.22μF及びCX2=0.22を開放にした状態です。
(b) Xコンデンサ解放状態
①Xコンデンサ(CX1,CX2)を開放すると3MHz以下のノイズ電圧が非常に増えています。
図3.39 フライバック形コンバータにおけるX・Yコンデンサの伝導ノイズ低減効果
113
3.伝導のノイズの対策方法
図3.39 フライバック形コンバータにおけるX・Yコンデンサの伝導ノイズ低減効果
フライバック形
ノ
イ
ズ電
圧(dBμV)
※CY2=1000pF×2を開放にした状態です。CY´=1000pFはそのままです。
(c) Yコンデンサ解放状態
②Yコンデンサ(CY2×2)を開放すると,18-30MHzの領域と3.2MHZ付近のピーク及び300kHz以下の領域のノイズ電圧が増加します。特に18-30MHzの領域と300kHz以下の領域の増加が顕著に確認することができます。
113
114
3.伝導のノイズの対策方法
3.9 ホットエンドの分布容量
・高周波電圧の重畳された回路をホットエンド,重畳されていない回路をコールドエンドとい
いますが,コモンモードの伝導ノイズの大きさはホットエンドと接地線間の浮遊容量CS1,
CS2,CS3が大きく影響しています。
・コールドエンドと接地線間にも浮遊容量CS4,CS5,CS6 ,CS7がありますが,これらはあまり
影響していません。
・式(2.5)に示すように,ノイズ電流ICSを減らすためには,このホットエンドと接地線間の浮
遊容量をできるだけ少なくする必要があります。
・スイッチングトランスが同心巻き(層巻き)の場合,ホットエンド間の容量CHを減らすために
は,図3.42に示すようにホットエンド間の距離が遠くなるように巻線を配置する必要があり
ます。
です。ただし,32
121/1/1
1)5.2(
SS
SS
Q
SCSCC
CCdt
dVCIII
115
3.伝導のノイズの対策方法
6SC 7SC4SC
5SC
:J55013のLISNも同じ。
a極
b極
++
250 H
21 F 21.0 F
250:
21
Ω測定時
ノイズk
)( networkionstabilizatimpedanceLineLISNCISPR
1SC
2SC
3SC
GroundFrame
1I 2IGC
CSI
図3.40 ホットエンドと接地線間の浮遊容量及びコモンモードのノイズ電流
116
3.伝導のノイズの対策方法
+
ホットエンド
コールドエンド
CCHC
図3.41 ホットエンドとコールドエンド間の浮遊容量
一次巻線
二次巻線
コールドエンド
ホットエンド
コールドエンド
ホットエンド
コア
図3.42 ホットエンド間の浮遊容量を下げるための巻線の配置
117
3.伝導のノイズの対策方法・また,下図のようにトランスの一次巻線と二次巻線の間に静電シールド板を挿入するのも効
果的であり,シールド板は厚さ25μm程度の銅箔が良く用いられます。
・フライバック形コンバータにおいて,AC電圧100V,動作周波数100kHz,出力21Wで25μm
の銅箔によるシールド効果を確認した結果,主に低域の伝導ノイズが改善されました。
・表3.6に伝導ノイズの最大点f=199kHzでの改善効果を示しています。
一次巻線
二次巻線
コールドエンド
ホットエンド
コールドエンド
ホットエンド
コア
静電シールド板
例:銅箔,厚さ25μm
リード線でアース端子へ
接続する。
図3.43 静電シールド板の利用
118
3.伝導のノイズの対策方法
シールド板なし シールド板付き 効果
準尖頭値(dB)
平均値(dB)
準尖頭値(dB)
平均値(dB)
準尖頭値(dB)
平均値(dB)
a極 59.6 47.5 57.8 43.7 1.8 3.8
b極 58.7 47.4 56.4 43.2 2.3 4.2
表3.6 フライバック形コンバータでのシールド板の伝導ノイズ抑制効果(伝導ノイズの最大点f=199kHzでの伝導ノイズの改善効果)
119
3.伝導のノイズの対策方法
+
+
ホットエンド
コールドエンド
接地線
(静電シールド)
図3.44 ホットエンドの接地線に対するシールド
・ホットエンドと接地線間の浮遊容量を減らすことができないときは,ホットエンドの導電部品と接地線間にコールドエンドの導体を入れて静電シールドし,接地線に高周波のノイズ電流が流れないようにすると伝導ノイズを減らすことができます。
・図3.44にこの方法を図示しています。
120
3.伝導のノイズの対策方法3.10 キャンセル法
・図3.45は臨界モード動作の昇圧形PFC回路(アクティブフィルタ)とその動作説明図です。
・交流電圧を整流した脈動波電圧を,数十kHz以上の周波数で全周期に渡って入力電流の平均値が正弦波状に流れるようにスイッチします。この動作により,力率が上がり高調波電流が減少します。
D1~D4
L
Q+
C
D
e
r
Eo
iL
i
t
e
e , i
0
i
iL
図3.45 昇圧形PFC回路と動作波形
121
・図3.46はキャンセル法を昇圧形PFC回路に適用した例です。・コイルに二次巻線を設け,ここに発生する電圧を新たに追加したコンデンサCCを通して放熱フィンに加えます。
・これによりドレイン-放熱フィン間及び放熱フィン-接地線間の浮遊容量を通して流れているコモンモードのノイズを相殺し,減らすことができます。
3.伝導のノイズの対策方法
)13.3(
39.3
112
12
SC
i
CNCN
ii
です。に設定することが必要になるよう以下のようにおいて,図
2SC
1SCCC
フレームグランド
放熱フィン
Q C
D
D1~D4
e
r
T
R
2N
1N
1i
2i
※CS1はドレイン-放熱フィン間の浮遊容量,CS2は放熱フィン-接地線間の浮遊容量です。
図3.46 キャンセル法の昇圧形PFC回路への適用例
122
3.伝導のノイズの対策方法
・また,図3.47はフライバック形コンバータにキャンセル法を適用した例です。
・巻線N3とコンデンサCCを通して帰還する量は最適値があり,巻数N3にもよりますが実験した結果ですと10pF程度が最適でした。
1N
3NCC
+Eo
Ei
C Ro
DT
Io
Q
図3.47 キャンセル法のフライバック形コンバータへの適用例
123
3章演習問題1.共振形コンバータを使うことに伝導ノイズを減らすことが出来る。その理由を説明しなさい。
2.スイッチがターンオフするときに発生するサージ電圧を吸収するのにはスナバーが有効である。以下のコンバータではどのようなスナバーが使われているか説明しなさい。①フライバック形コンバータ②フォワード形コンバータ
3.出力ダイオードのノイズ対策としてショットキーダイオードを使うときに注意しなければならない点は何か説明しなさい。
4. π形フィルターの減衰率の式を示しなさい。
5.トランス巻線の巻き方,層巻きと分割巻きによって静特性(リーケージインダクタンスと一次-二次間の分布容量)に差が生じます。この差について説明しなさい。
6.( )の中を埋めなさい。
(1) コアアースをとると,( ① )MHz以下の領域の伝導ノイズが減少しています。特に500KHz
付近のノイズは約15dB良くなっています。①5
124
(2) ラインフィルターは,( ② )モードノイズに対してはラインフィルターの磁束は打ち消され,インダクタンスはゼロで単なる導体となります。 ( ③)モードノイズに対して磁束は加算されるので,インダクタンスとして働きます。
(3) CXはアクロスザライン・コンデンサ(別名:Xコンデンサ)と呼ばれ, ( ④ )モードのノイズを除去します。特に低周波数,150kHz~1MHzまでの領域のノイズに対して効果的です。CYはラインバイバス・コンデンサ(別名:Yコンデンサ)といい, ( ⑤ )モードのノイズ電流を分流する役割を果たしています。特に15MHz付近までの高周波数のノイズに対して効果的ですが,。400kHz~15MHz付近の( ⑥ )モードのノイズにも効いています。
(4) 一個のラインフィルターでノイズを除去できないときは,2個に分割し,一個はインダクタンスの大きい( ⑦ )領域のノイズ対策用,もう一つは分割巻きにして( ⑧)領域のノイズ対策用にするものも一つの方法です。
(5) コモンモードの伝導ノイズの大きさを減らすためには( ⑨)と接地線間の浮遊容量を減らす必要があります。
3章演習問題
125
4.輻射のノイズの対策方法4.1 基本的な対策・ここでは基本的な対策について説明します。
・コモンモードノイズの輻射ノイズはダイポールアンテナモデルからの輻射ノイズに相当し,このときに輻射される電磁波の電界強度は式(4.1)で表され,アンテナとなる導体・導線の長さとここを流れるノイズ電流の大きさ及び周波数に比例します。
電流分布
2/L
i i
図4.1 ダイポールアンテナ
126
4.輻射のノイズの対策方法
・したがって,ノイズのエネルギー(電界強度)を減らすためには以下のことが必要になります。
①ノイズ電流が流れているパターンやケーブルの長さを減らします。
②抵抗やインダクタンスにより電流を制限し,ノイズ電流を減らします。
③輻射ノイズを受ける部品や導体をノイズ電流が流れているパターンやケーブルを遠ざけ
ます。
④ノイズ源(ノイズ電流)の周波数を下げます。
)(:
)(:
)(:
)(:
)1.4()/(10257.1 6
md
mL
Hzf
AI
mVd
fLIE
c
c
離導体又は導線からの距
アンテナの長さ
ノイズ電流の周波数
電流コモンモードのノイズ
意味しています。それぞれ以下のことをただし,式中の記号は
※式(4.1)出展:EMC概論,P440-441,Crayton Paul著,佐藤三郎監修,三松株式会社,1996年発行
・また、この電磁波の電磁界中に導体(金属体)を置くと,アンテナとして動作し起電力を生じます。
127
4.輻射のノイズの対策方法・起電力の大きさは式(4.2)となり,もともと受信アンテナに伝導ノイズが流れているとこの起電
力が加算されノイズが増えることになります。
・したがって,誘導を受ける印刷配線板のパターンやリード線もできるだけ短くすることが必要です。短くできないときは,コンデンサで最短でバイパスさせるのも良い方法です。
です。は受信アンテナの長さ,は起電力ただし, )()()2.4()( mLVvVLEv
・ノーマルモードのノイズは,ループアンテナモデルからの輻射(放射)ノイズに相当します。
・このときに輻射される電磁波の電界強度は式(4.3)で表され,アンテナとなるループ導体の面積とここを流れるノイズ電流の大きさに比例します。
)(:
)(:)(:
)()377(:)(:
)(:
)3.4()/(10316.1
2
2
14
2
md
mSHzf
Zm
AI
mVd
SfIZ
d
SIE
n
nn
距離ループ導体中心からの
ループ導体の面積,ノイズ電流の周波数
ピーダンス自由空間での波動イン,ノイズ電流の波長
ズ電流ノーマルモードのノイ
意味しています。それぞれ以下のことをただし,式中の記号は
※式(4.3)出展:EMC概論,P440-441,Crayton Paul著,佐藤三郎監修,三松株式会社,1996年発行
128
4.輻射のノイズの対策方法・したがって,ノーマルモードのノイズのエネルギー(電界強度)を減らすためには以下のこと
が必要になります。
①パターンを極力短くし,電流が流れるループの面積を減らします。短くできないときは
コンデンサにより最短コースで短絡しバイパスさせます。
②抵抗やインダクタンスにより電流を制限し,ノイズ電流を減らします。
③輻射ノイズを受ける部品や導体をノイズ電流が流れているループを遠ざけます。
④ノイズ源(ノイズ電流)の周波数を下げます。
・以上より,共通する対策は以下となります。
①ノイズ電流を少なくします。つまり,伝導ノイズを少なくすることが輻射ノイズの対策にも
なります。
②アンテナとなるリード線やパターンを短くします。
③輻射ノイズを受ける部品や導体をノイズ電流が流れているパターンやケーブルを遠ざけ
ます。
④ノイズ源(ノイズ電流)の周波数を下げます。
129
4.輻射のノイズの対策方法
4.2 共振形コンバータ
・共振形コンバータを採用し急峻なスイッチングを避けます。伝導ノイズと同様に輻射ノイズ
を少なくできます。
・フライバック形コンバータとZVS動作をしている電流共振形コンバータの輻射ノイズを図4.2
に示します。
・測定したときの条件は,表3.1に示している伝導ノイズの測定条件に同じです。
・出力電力は100Wで同じですが,動作周波数はフライバック形コンバータが67kHz,電流共
振形コンバータが100kHzと異なっています。まったく同一条件での比較ではありません。
・図4.2よりフライバック形コンバータでは電流共振形コンバータに比べて全体的に輻射ノイ
ズが大きく,特に丸印を付けてあるところが大幅に増えています。このように,電流共振形
コンバータにすると高域の輻射ノイズを大幅に低減することができます。
130
4.輻射のノイズの対策方法
フライバック形:スイッチ並列コンデンサなし
(a) フライバック形コンバータ
図4.2 フライバック形と電流共振形の輻射ノイズの比較
・フライバック形コンバータでは電流共振形コンバータに比べて全体的に輻射ノイズが大きく,特に丸印を付けてあるところが大幅に増えています。
131
4.輻射のノイズの対策方法
(b) 電流共振形コンバータ
図4.2 フライバック形と電流共振形の輻射ノイズの比較
電流共振形
・電流共振形コンバータにすると高域の輻射ノイズを大幅に低減することができます。
132
4.輻射のノイズの対策方法
4.3 メインスイッチへの並列コンデンサの追加
・メインスイッチ(MOSFET)に並列にコンデンサを追加すると以下の効果が得られます。①ドレイン-ソース間の電圧波形の傾きが緩やかになり,波形が台形波に近づきます。
そのために高調波電圧の発生量が減少し,回路を流れる高調波電流も少なくなります。②かつ,スイッチオフ時に発生するサージ電圧・電流の振動周波数が低くなり,サージ
電圧も小さくなります。これにより,輻射ノイズを小さくできます。
・図4.3は並列にコンデンサを追加したときの輻射ノイズ特性を示したものですが,何もない場合に対して1000pFをつけた場合の輻射ノイズは大幅に低減されています。
・特に丸印を付けています100MHz以上の広域で輻射ノイズが非常に小さくなっています。
・これは,波形が台形波になったことにより高調波電圧・電流が少なくなり改善されたためです。なお,並列コンデンサが1000pFと2000pFとでは大きな差は見られませんでした。
・①の効果については1章で説明しました。
・ここで,②の効果について計算してみましょう。MOSFETのドレイン-ソース間の寄生容量を200pFとして,並列コンデンサの容量を0,1000pF,2200pFと変化させたときのスイッチオフ時のサージ電圧(スイッチ両端電圧)VQとサージ電流iを求めると図4.4及び表4.1のようになります。
133
4.輻射のノイズの対策方法
フライバック形:スイッチ並列コンデンサなし
(a) 並列コンデンサなし
図4.3 メインスイッチの並列コンデンサの輻射ノイズ抑制効果
※HOR.は水平偏波,VER.は垂直偏波を意味しています。両方とも限度値以下にすることが義務付けられています。なお,測定条件は伝導ノイズの測定条件に同じです。
134
4.輻射のノイズの対策方法
フライバック形:スイッチ並列コンデンサ1000PF
(b) 並列コンデンサ 1000PF
図4.3 メインスイッチの並列コンデンサの輻射ノイズ抑制効果
※HOR.は水平偏波,VER.は垂直偏波を意味しています。両方とも限度値以下にすることが義務付けられています。なお,測定条件は伝導ノイズの測定条件に同じです。
135
4.輻射のノイズの対策方法
(c) 並列コンデンサ 2000PF
図4.3 メインスイッチの並列コンデンサの輻射ノイズ抑制効果
フライバック形:スイッチ並列コンデンサ2000PF
※HOR.は水平偏波,VER.は垂直偏波を意味しています。両方とも限度値以下にすることが義務付けられています。なお,測定条件は伝導ノイズの測定条件に同じです。
136136
(A)50.9970cos758.9970sin2980
/cos2/sin
.7586.178049.0,5.0,298.0300)/(26.1782
)(150.9970sin6.178)sin(
2.57997.0548.1tan15053002034.0
150tan
2tan
6.1786.938922500)15053002(034.01502)(
034.0104.20/10694.0
049.0101
102400,00167.0
2
1
)(1025.3,)/(104.20102400101
11
10694.01024003002
1
2
1
2400
300,5,1,150,200,1200,2400
66
6
106940106940
10694.0
111
222222
66
6
12
66
126
6
12
.ωte.ωte.
REteCVRteVi
CVR
E
R
V
VteEteVv
radEIR
E
VEIREV
L
CC
RC
HzfsradLC
CR
pFC
RAIHLVEpFpFpFC
t.t.
Qoffi
t
mQoff
t
m
m
Qoff
i
Qoff
m
t
i
t
mC
iQoff
i
iQoffim
Qoff
Qoff
P
Qoffi
=
の場合①
求める。ジ電圧とサージ電流をてターンオフ時のサーを以下のように仮定しここで,それぞれの値
136
4.輻射のノイズの対策方法
137137
5.083.0cos03.783.0sin339.0
cossin2
.037,5.0,339.03002/2.2032/
)(15083.0sin2.203)sin(
6.4783.0094.1tan150530020481.0
150tan
2tan
2.203
297.1879222500)15053002(0481.01502)(
0481.01087.28/10389.1
0346.0101
101200,00167.0
2
1
)(10597.4,)/(1087.28101200101
11
10389.11012003002
1
2
1
1200
6
6
10389.1
10389.1
111
222222
66
6
12
66
126
6
12
tete
R
EteCVt
R
eVi
CVR
ERV
VteEteVv
radEIR
E
V
EIREV
L
CC
RC
HzfsradLC
CR
pFC
tt
Qoff
it
m
Qoff
t
m
m
Qoff
i
Qoffm
t
i
t
mC
iQoff
i
iQoffim
Qoff
Qoff
=
の場合②
4.輻射のノイズの対策方法
138138
5.042.0cos2.542.0sin613.0
cossin2
.25,5.0,613.03002/0.3682/
)(15042.0sin0.368)sin(
1.2442.04464.0tan150530021179.0
150tan
2tan
0.368
08.11290622500)15053002(1179.01502)(
1179.01071.70/10333.8
01414.0101
10200,00167.0
2
1
)(1026.11,)/(1071.7010200101
11
10333.8102003002
1
2
1
200
66
6
10333.810333.8
10333.8
111
222222
66
6
12
66
126
6
12
tete
R
EteCVt
R
eVi
CVR
ERV
VteEteVv
radEIR
E
V
EIREV
L
CC
RC
HzfsradLC
CR
pFC
tt
Qoff
it
m
Qoff
t
m
m
Qoff
i
Qoffm
t
i
t
mC
iQoff
i
iQoffim
Qoff
Qoff
=
の場合③
4.輻射のノイズの対策方法
139
4.輻射のノイズの対策方法
※等価回路においてEi=150V,L=1μH,I=5A,RQ-off=300Ωとして計算しました。スナバーがない状態で計算していますので,実際よりは大きくなっています。
(a) サージ電圧(スイッチの両端電圧)VQ
図4.4 MOSFETと並列コンデンサの合成容量とメインスイッチオフ時のサージ電圧
及びサージ電流
-100
0
100
200
300
400
500
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
200PF 1200PF
2400PF
)(V
vV CQ
)( st
C
140
4.輻射のノイズの対策方法
※等価回路においてEi=150V,L=1μH,I=5A,RQ-off=300Ωとして計算しました。スナバーがない状態で計算していますので,実際よりは大きくなっています。
(b) サージ電流(コンデンサを流れる電流)
図4.4 MOSFETと並列コンデンサの合成容量とメインスイッチオフ時のサージ電圧
及びサージ電流
-8
-6
-4
-2
0
2
4
6
8
10
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
200PF 1200PF 2400PF
)( st
C
)(Ai
141
4.輻射のノイズの対策方法
C=200pF C=1200pF C=2400pF 備 考
周波数f(MHz) 11.26 4.597 3.25
比率 1 0.408 0.289
サージ電流i 8.16 12.54 16.0
(AP-P) 比率 1 1.54 1.96
サージ電圧vCP 493.3 336.9 310.2 vCP=vQP
(VP-P) 比率 1 0.68 0.63
i × f (A・MHz) 91.88 57.65 52 コモンモード輻射ノイズがi × fに比例します。比率 1 0.627 0.566
i × f2 (A・MHz2) 1034.6 265.0 169.0 ノーマルモード輻射ノイズがi × f2 に比例します。比率 1 0.256 0.1633
※vCPはサージ電圧,iはサージ電流,fは共振周波数(振動周波数)を意味しています。※等価回路においてEi=150V,L=1μH,I=5A,RQ-off=300Ωとして計算しました。 vQはスナバーがない状態で計算し
ていますので,実際よりは大きくなっています。
表4.1 スイッチオフ時のサージ電圧及びサージ電流の計算結果
-4.05dB
-11.8dB
-4.9dB
-15.7dB
142
4.輻射のノイズの対策方法
・並列コンデンサの容量を上げると,共振周波数(振動周波数)が低くになりサージ電圧の
振幅が小さくなります。一方,インダクタンスと並列コンデンサを流れる電流の振幅は大き
くなります。
・また,それらの変化はMOSFETと並列コンデンサの合成容量が200pFと1200pFでは大き
いですが,1200pFと2400pFではあまり顕著な差はありません。
・コモンモード輻射ノイズはノイズ電流(サージ電流)と周波数に比例します。また,ノーマル
モードノイズはノイズ電流と周波数の自乗に比例します。
・それらの比率を求めると表13.5のようになりますが,合成容量が200pFから1200pFになる
と,変数i×fが62.7%に,i×f2が25.6%に減っており,メインスイッチがオフしたときに生じる
サージ電流により発生する輻射ノイズが少なくなることが確認できます。
・なお,図4.5及び図4.6より並列コンデンサの容量はMOSFETの寄生容量も含めて1200pF
程度あれば十分であると判断します。それ以上の容量では効果が飽和気味であり,容量を
上げても期待する効果が得られません。また,MOSFETのスイッチング損失が増えてしま
い ますので1200pF程度に留めるのが良いと考えます。
143
0
50
100
0 1000 2000 3000
i×f(A
MH
z)
C(pF)
0
500
1000
1500
0 1000 2000 3000
i×f2
(AM
Hz
2)
C(pF)
0
5
10
15
20
0 1000 2000 3000
i(A
p-p
)
C(pF)
0
100
200
300
400
500
600
0 1000 2000 3000
Vcp(V
p-p
)
C(pF)
4.輻射のノイズの対策方法
図4.5 MOSFETと並列コンデンサの合成容量に対するサージ電圧及びサージ電流
図4.6 MOSFETと並列コンデンサの合成容量に対する変数(i×f及びi×f2)の変化143
144
4.輻射のノイズの対策方法
4.4 出力ダイオードへの並列コンデンサの追加・二次側の出力ダイオードに並列にコンデンサを追加した場合も前項の②と同様の効果が
得られます。ダイオードオフ時に発生するサージ電圧・電流の振動周波数が低くなり,サー
ジ電圧を小さくすることができます。
・ダイオードの寄生容量を含む並列コンデンサの容量を200pF,1200pF,2400pFのときの,
変化させたときのダイオードオフ時のサージ電圧vcとサージ電流iを求めると図4.7及び
表4.2のようになります。
・また,サージ電圧・電流と変数i×f及びi×f2の計算結果を表4.3と図4.8と図4.9に示して
います。変数i×f及びi×f2ともに減っており,ダイオードがオフしたときに生じるサージ電流
により発生する輻射ノイズが少なくなることが確認できます。
145145
)(24sin5.29
)(24.0cos23.3sin1475.0
23.3,24.0/,1475.02/
46.5495.03998.1tan24210020456.0
24tan
5.299.293576)2421002(0456.024
0456.0106.45/1008.2
1095.0102.0
102400,005.0
2
1
)(1026.7,)/(106.45102400102.0
11
1008.21024001002
1
2
1
2400
100,24,2,2.0,200,1200,2400
6
66
1008.2
1008.21008.2
11
222
66
6
12
66
126
6
12
Vtev
Atetei
AVCARVARV
rad
VV
L
CC
RC
HzfsradLC
CR
pFC
RVVAIHLpFpFpFC
t
C
tt
PDoffRDoffm
m
Doff
Doff
DoffRR
の場合①
電流を求める。てサージ電圧とサージを以下のように仮定しここで,それぞれの値
11.輻射ノイズの対策方法
146146
)(24sin1.34
)(24.0cos64.2sin1705.0
64.2,,24.0/,1705.02/
7.4478.09896.0tan24210020645.0
24tan
1.3416.588576)2421002(0645.024
0645.0105.64/1016.4
07743.0102.0
101200,005.0
2
1
)(10265.10,)/(105.64101200102.0
11
1016.41012001002
1
2
1
1200
6
66
1016.4
1016.41016.4
11
222
66
6
12
66
126
6
12
Vtev
Atetei
AVCARVARV
rad
VV
L
CC
RC
HzfsradLC
CR
pFC
t
C
tt
PDoffRDoffm
m
Doff
Doff
の場合②
11.輻射ノイズの対策方法
147147
)(24sin1.64
)(24.0cos026.2sin3205.0
026.2,24.0/,3205.02/
0.22384.04037.0tan24210021581.0
24tan
1.6478.3533576)2421002(1581.024
1581.0101.158/1025
0316.0102.0
10200,005.0
2
1
)(1018.25,)/(101.15810200102.0
11
1025102001002
1
2
1
200
6
66
1025
10251025
11
222
66
6
12
66
126
6
12
Vtev
Atetei
AVCARVARV
rad
VV
L
CC
RC
HzfsradCL
CR
pFC
t
CP
tt
PDoffRDoff
P
PP
Doff
P
PP
PDoff
P
の場合③
11.輻射ノイズの対策方法
148
-20
-10
0
10
20
30
40
50
60
70
80
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4
200PF 1200PF 2400PF)(V
vv DC
11.輻射ノイズの対策方法
(a) サージ電圧VC(=-vD)
図4.7 並列コンデンサの容量とダイオードオフ時のサージ電圧及びサージ電流
)( st
C
Cv
Dv
149149
)(A
ii D-
11.輻射ノイズの対策方法
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
4
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4
200PF
1200PF
2400PF
C
)( st
(b) サージ電流i(=-iD)
図4.7 並列コンデンサの容量とダイオードオフ時のサージ電圧及びサージ電流
iDi
150
C=200pF C=1200pF C=2400pF 備 考
周波数f(MHz) 46.5 10.265 7.26
比率 1 0.221 0.156
サージ電流i 3.0 4.56 5.7 i=-iD
(Ap-p) 比率 1 1.52 1.9
サージ電圧vcp 76.3 52.5 48.9 vcp=-vD
(Vp-p) 比率 1 0.69 0.64
i × f (A・MHz) 139.5 46.8 41.382 コモンモード輻射ノイズがi × fに比例します。
比率 1 0.335 0.297
i × f2 (A・MHz2) 6486.75 480.5 300.4 ノーマルモード輻射ノイズがi × f2 に比例します。
比率 1 0.074 0.046
表4.2 ダイオードオフ時のサージ電圧及びサージ電流の計算結果
※IR=2A,VR-24V,L=0.2μH,RD-off=100Ωで計算しました。
4.輻射のノイズの対策方法
-9.5dB
-22.6dB
-10.5dB
-26.7dB
151
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000
0 1000 2000 3000
i×f2
(AM
Hz2
)
Cp(pF)
0
20
40
60
80
100
120
140
160
0 1000 2000 3000
i×f(
AM
Hz)
Cp(pF)
0102030405060708090
0 1000 2000 3000
Vcp(
Vp-
p)
Cp(pF)
0
1
2
3
4
5
6
0 1000 2000 3000
i(A
p-p)
Cp(pF)
151
4.輻射ノイズの対策方法
図4.8 ダイオードと並列コンデンサの合成容量に対するサージ電圧及びサージ電流
図4.9 ダイオードと並列コンデンサの合成容量に対する変数(i×f及びi×f2)の変化
C(PF) C(PF)
C(PF) C(PF)
152
4.輻射のノイズの対策方法
4.5 配線の短縮とシールド線・より線の利用・コモンモードの輻射ノイズはアンテナとなるリード線やパターンが長いとこれに比例して大
きくなるために,極力配線などを短くする必要があります。
・より線(ツイストペア線)やシールド線を使うのも有効です。
電流i
磁界(ノイズ)
図4.10 ツイストペア線の効果
ノイズ電流による磁界は隣同士で反転しているので,打ち消し合い減少する。
(a) ノイズの発生
ノイズ(磁束)により電線に発生する電流(誘起起電力)は隣同士で逆向きであり,互いに打ち消し合う。
(b) 外来ノイズの影響
153
4.6 フェライトビーズ(ビーズコア)の活用・伝導ノイズと同じであり,ビーズコア等をノイズ源に直列に入れることにより輻射ノイズを少
なくすることができます。
・図4.11に出力ダイオードに直列にビーズコアを追加する前と追加した後の輻射ノイズを示
しています。追加した後は180~200MHzの輻射ノイズが低減されています。
4.輻射のノイズの対策方法
4.7 部品や匡体の電磁シールド・ノイズを発生する部品や筐体を電磁シールドし,外部に輻射されるノイズを少なくする。
ただし,コストが上がるために,必要なときにだけに使うようにしてください。
154
フライバック形:スイッチ並列コンデンサ1000PF
4.輻射のノイズの対策方法
(a) ビーズコアなし
図4.11 ビーズコアの輻射ノイズ抑制効果
※ビースコア:G5BT 3X3X1。HOR.は水平偏波,VER.は垂直偏波を意味しています。両方とも限度値以下にすることが義務付けられています。なお,.測定条件は伝導ノイズの測定条件に同じです。
155
4.輻射のノイズの対策方法
フライバック形:スイッチ並列コンデンサ1000PF,出力ダイオードにビーズコア追加
(b) ビーズコア付き
図4.11 ビーズコアの輻射ノイズ抑制効果
※ビースコア:G5BT 3X3X1。HOR.は水平偏波,VER.は垂直偏波を意味しています。両方とも限度値以下にすることが義務付けられています。なお,.測定条件は伝導ノイズの測定条件に同じです。
156
4章演習問題
1.コモンモードノイズの輻射ノイズとノーマルモードの輻射ノイズに共通する対策を4つ挙げて説明しなさい。
2.スイッチに並列に容量を追加するときは,MOSFETの寄生容量を含めた合成容量は何pF程度が良いか,答えなさい。
157
5.参考文献・図書
[1] Clayton.R.Pau著,佐藤三郎監訳, 「EMC概論」,P440-441,三松株式会社,1996年2月発行
[2] 電気学会,電気工学ハンドブック,P668,「3.3 巻線配置と漏れインダクタンス」,S63年初版
[3] 原田耕介,他:「スイッチングコンバータの基礎」,コロナ社,2007年
[4] パワエレ学会,2006年度,第21回専門講習会テキスト,パワーエレクトロニクス機器おける最新の
EMC関連技術「1-1.パワーエレクトロニクス機器おけるEMC規格の最新動向」,p.2
[5] (財)電気安全環境研究所,高調波問題検討委員会,高調波技術マニュアル,P24,2001年3月
[6] 落合政司,「スイッチング電源の原理と設計」,オーム社,2015年
[7] 落合政司,群馬大学 アナログ集積回路研究会講演会テキスト,2011年~2014年
①電源回路の基礎とスイッチングコンバータの原理
②EMC規格とスイッチング電源における抑制対策
③電源高調波ひずみの基礎と対策方法
[8] その他の関連資料,ホームページ
158158
以上で終わります。ご清聴ありがとうございました!
END
159159
n
Noise(妨害)
機器の電磁的感受性EMS
機器からの電磁妨害EMI
EMC(Electromagnetic Compatibility,電磁的両立性)とは?
注)EMI: Electromagnetic Interference,EMS: Electromagnetic Susceptibility
nNoiseを少なくする。
両立する。
Noise(妨害)
ここの領域で問題が発生する。
図A1.1 EMCの概念図
n:統計的分布,度数
機器を強くする。
付録1.EMCとは
160160
テレビジョン受像機を含む電子機器は,本体から出すノイズに関して(イ)エミッション性能と,外部から入ってくるノイズに関して(ロ)イミュニティ性能 が要求される。
イミュニティ性能電磁的感受性(EMS)
Noise
Noise
電子機器から出るノイズは電磁妨害(EMI:Electromagnetic Interference)と呼ばれており,障害波の伝搬経路によって輻射雑音(RN:Radiation Noise)と伝導雑音(CN:Conduction
Noise)に分類される。
輻射雑音は空中に電磁波として放出されるノイズであり,伝導雑音は主に商用電源線を伝わって伝導するノイズをいう。
図A2.1 電子機器に要求される性能
付録2.電子機器のEMC体系図
エミッション性能電磁妨害(EMI)
エミッション性能電磁妨害(EMI)
161161図A2.2 電子機器のEMC体系図
EMC
(Electromagnetic Compatibility)
電磁的両立性
EMI
(Electromagnetic Interference)
電磁妨害
エミッション(Emission) 性能
RN
(Radiation
Noise)
輻射雑音
CN
(Conduction
Noise)
伝導雑音
RS
(Radiated
Susceptibility)
電磁界感受性
CS
(Conducted
Susceptibility)
伝導感受性
イミュニティ(Immunity)性能
EMS
(Electromagnetic Susceptibility)
電磁的感受性
付録2.電子機器のEMC体系図
162162
付録3.IECの審議体制
低周波(9kHz以下) 高周波(9kHz超過)
エミッション SC77A CISPR
イミュニティ SC77A SC77B
IEC総会
IEC理事会
TC77(EMC)
SC77A(低周波EMC)
SC77B(高周波EMC)
TC22(パワエレ)
SC22E(安定化電源装置)
SC22H(無停電装置)
TC34(電球類関連機器)
TC59(家庭用電気機器の性能)
TC62(医用電気機器)
TC110(フラットパネルディスプレイ)
TC82(太陽光発電システム)
TC105(燃料電池)
TC(専門委員会):92,SC(分科会):79
CISPR運営委員会
SC-A(無線妨害波測定)
ACEC
(EMC諮問委員会)
SC-B(工業用設備,ISM装置等からの妨害)
SC-F(家庭用機器,照明等に関する妨害)
SC-H(無線業務の保護基準)
SC-I(情報技術装置,放送用受信機,マルチ
メディア機器に関するEMC)
SC-D(自動車等の電気・電子装備品に関す
る妨害)
CISPR総会 国際無線障害特別委員会
国際電気標準会議
図A3.1 IECの審議体制
IEC: International Electrotechnical Commission
TC: Technical Committee,SC: Sub Committee
ACEC: Advisory Committee on Electromagnetic Compatibility
162
ここでEMCを含めた製品規格を審議している。
いろいろな事を決定などをする際に,この委員会に意見を求める。
ISM装置:Industrial, Scientific and Medical equipment
P10へ戻る
163163
9kHz以下
TC77
EMC
SC77A
低周波現象
WG13一般EMC標準
(共通規格)およびIEC61000-2-5の
メンテナンス
WG15EMCおよび機能安全
SC77C高電磁界過渡現象
SC77B
高周波現象
WG6低周波イミュニティ
試験
WG2電圧変動および他の低周波妨害
WG1高調波および
他の低周波妨害
WG8電力供給網上の妨害
WG9電力品質測定方法
MT12過渡現象
イミュニティ試験
JTF REV( Reverberation
chambers )
JTF TEM( TEM Waveguides )
PT61000-4-24
2014年03月現在
9kHz超
図A3.2 IEC TC77の構成
JTF REV: Joint task force between CISPR/A
and SC77B on Reverberation chambers(残響室)
JTF TEM: Joint task force between CISPR/A and SC77B on TEM Waveguides
(Transverse electromagnetic cell, 導波路)
JTF FAR: Joint task force between CISPR/A
and SC77B on Fully anechoic rooms(全無響室)
MT: Maintenance team
WG10放射EMフィールドおよび伝導妨害
イミュニティ
PT61000-4-36
JTF FAR( TEM Waveguides )
Test methods for protective devicefor HEMP conducted disturbances
IEMI Immunity test methods forequipment and systems
Project Team
付録3.IECの審議体制
164164
付録4.EMC規格の種類と考え方
内容 規定項目例
基本規格 基本的な条件又は規則を規定しており,特定の製品(群)を対象としない。
用語,電磁環境の分類,両立性レベル,エミッション限度値に関する一般要求事項,イミュニティの推奨レベル,測定方法及び試験技術。
共通規格 明確な製品(群)規格が存在しない環境で動作する製品に適用する。基本的な試験方法。 (製品(群)規格がない製品が対象)
試験項目,エミッション限度値,最小イミュニティレベル,一般的な性能判定基準。
製品(群)規格
特定の製品(群)に適用する規格。基本的な考え方は基本規格と共通規格による。
EMC要求事項及び試験手順,試験方法,詳細な性能判定基準。
・製品規格が基本規格や共通規格よりも優先される。・製品規格がないときは共通規格を適用する。
表A4.1 EMC規格の種類
図A4.1 EMC規格の適用方法
出展:2006年度,パワエレ学会,第21回専門講習会テキスト,パワーエレクトロニクス機器おける最新のEMC関連技術「1-1.パワーエレクトロニクス機器おけるEMC規格の最新動向」,p.2
適用の優先順位
高い
低い
製品群規格
共通規格
基本規格
製品規格
165
CISPR
EMC (Electromagnetic Compatibility)
国際規格IEC61000-1、IEC61000-2
EMI(Electromagnetic Interference)
国際規格 各国の規格IEC61000-3-X 日本:電気用品安全法、JIS 規格、VCCI 技術基準IEC61000-4-X 欧州:EN61000-3-X、EN61000-4-X、EN61000-6-XIEC61000-6-X EN550XX、EN61204-3IEC61204-3 米国:FCC part15 subpart B、MIL Std.461E等CISPR 11,12,13,14-1,15,16,22等中国:GB 規格
EMS(Electromagnetic Susceptibility)
国際規格 各国の規格IEC61000-4-X 日本:JIS 規格、VCCI 技術基準IEC61000-6-X 欧州:EN61000-4-X、IEC61000-6-X、EN550XX、IEC61204-3 EN61204-3CISPR 14-2,20,24等 米国:MIL Std.461E等
中国:GB 規格
付録5.EMCに関する国際規格と各国の規格
図A5.1 EMCに関する国際規格と各国の規格
SC77A
SC22E
SC77A/77B
CISPR
TC77A/
WG13,他
低周波EMC 高周波EMC
エミッション:EMI SC77A CISPR
イミュニティ:EMS SC77A SC77B
SC22E
(共通規格)
EN
※EN61204-3:Low voltage power supplies, d. c. output-Part3:Product EMC standard
166166
略号 意味 日本語訳
IEC International Electro-technical Commission 国際電気標準会議
CISPR Comite international Special des Perturbations
Radioelectriques/Special International Committee
on Radio Interference
国際無線障害特別委員会
ACEC Advisory Committee on EMC 電磁的両立性諮問委員会
JIS Japanese Industrial Standards 日本工業標準
VCCI Voluntary Control Council for Information
Technology Equipment日本情報処理装置等電波障害自主規制協議会
EN European Norm 欧州規格。CENELECで審議,策定される。
CENELEC Comite Europeen de Normalisation
Electrotechnique
欧州電気標準化委員会
FCC Federal Communications Commission 米国連邦通信委員会
MIL-STD Military Standard 米軍が定めた軍用規格
GB Guo jia Biao zhun 中国国家標準
ARIB Association of Radio Industries Businesses (社)電波産業界
SAE Society of Automotive Engineer 米国自動車技術者協会
ITU-T International Telecommunication Union
Telecommunication Standardization Sector 国際電気通信連合 電気通信標準化部門
国家規格表A5.1 略号とその意味
166
付録5.EMCに関する国際規格と各国の規格国際規格 地区規格
167167
国際規格 日本 ヨーロッパ
名称 番号
基本
規格
・
製品群
規格
高調波電流発生限度値(16A/相以下) IEC61000-3-2JISC61000-3-2
EN61000-3-2
電圧変動・フリッカ限度値(16A/相以下) IEC61000-3-3 EN61000-3-3
電圧変動・フリッカ限度値(16A超75A/
相以下)IEC61000-3-11 EN61000-3-11
高調波電流発生限度値(16A超75A/相
以下)IEC61000-3-12 EN61000-3-12
高調波測定器及び測定方法 IEC61000-4-7 JISC61000-4-7 EN61000-4-7
表A5.2 低周波の電磁妨害波(EMI)に関する国際規格と各国の規格
※1.欧州規格の区分EN50000シリーズ:一般の欧州規格EN55000シリーズ:CISPR関連規格EN60000シリーズ:IEC関連規格
A5.1 EMIに関する国際規格と各国の規格
A5.1.1 低周波EMIに関する国際規格と各国の規格
(20A/相以下)
付録5.EMCに関する国際規格と各国の規格
168168
図A5.2 高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドラインとJIS C 61000-3-2の適用範囲
JIS C 61000-3-2「電磁両立性-第3-2部:限度値-高調波電流発生限度値(1相当たりの入力電流が20A以下の機器)」300V以下の商用電源系統に接続して使用する定格電流20A/相以下の電気・電子機器(電源電圧 単相/三相:100V/200V)
第1版/2003-12-20 (制定)第2版/2005-03-20 (改正)第3版/2011-02-21 (改正)
JIS C 61000-3-2準用品(JIS C 61000-3-2を準用して適合したもの)
高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン・6.6kVの系統から受電し,施設の等価容量の合計が50kVAを超える需要家
・22kV又は33kVの系統から受電し,等価容量の合計が300kVAを超える需要家
・66kV以上の系統から受電し,等価容量の合計が2000kVAを超える需要家
1994年6月制定
300V
20A
6.6kV 66kV
出典: 高調波技術マニュアル,P24,(財)電気安全環境研究所,高調波問題検討委員会,2001年3月
電圧
電流
日本の高調波電流の規制は「JIS C 61000-3-2」 と「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」との二本立てになっている。
単相100V:2KVA
三相200V:6.93KA
付録5.EMCに関する国際規格と各国の規格
169169
表A5.3 高周波の電磁妨害波(EMI)に関する国際規格と各国の規格
名称/製品カテゴリー 国際規格 日本 北米 欧州
共通規格
住宅,商業及び軽工業環境におけるEMI
IEC61000-6-3 EN61000-6-3(EN50081-1)
工業環境におけるEMI IEC61000-6-4 EN61000-6-4(EN50081-2)
製品群規格
ラジオ,テレビ,オーディオ,VTR
CISPR13 電気用品安全法 FCC Part15Subpart B
EN55013
情報技術装置:ITE(プリンタ,パソコン,ワープロ,ディスプレイ,複写機等)
CISPR22 電気用品安全法VCCI(自主規制)
FCC Part15Subpart B
EN55022
無線通信機 ITU-T 電波法ARIB(自主規制)
FCC Part15Subpart C
FCC Part22
ETS300シリーズ
家庭用機器・電動工具及びそれに属するもの
CISPR14 電気用品安全法 FCC Part15Subpart B
EN55014
工業用,科学用及び医療用機器(ISM機器),無線周波機器
CISPR11 電気用品安全法 FCC Part18 EN55011
蛍光灯,調光器 CISPR15 電気用品安全法 FCC part18 EN55015
点火装置(自動車,モーターボート等)
CISPR12 自動車規格(JASO)
SAE EN55012
A5.1.2 高周波EMIに関する国際規格と各国の規格
169
付録5.EMCに関する国際規格と各国の規格
注2)JASO: Japanese Automotive Standards Organization,社団法人日本自動車技術会
注1) ETSI: European
Telecommunications
Standards Institute,
欧州電気通信標準化機構
170170
製品カテゴリー 適用品目 規格番号
製品群規格
家庭用機器 冷蔵庫,エアコン CISPR14
電動工具 ドリル等 CISPR14
オーディオ,ビデオ機器 テレビ,ビデオ,アンプ等CISPR13CISPR14
情報技術装置,事務機器 パソコン,プリンタ,コピー機等 CISPR14CISPR22
表A5.4 高周波の電磁妨害波(EMI)に関する韓国の規格
規格番号 適用分野 参照規格
製品群規格
GB4824 ISM機器 CISPR11
GB14023 自動車,モータボート等の点火装置 CISPR12
GB13837 ラジオ,TV及び付帯機器 CISPR13
GB4343 家庭用機器,電動工具 CISPR14
GB17743 照明器具 CISPR15
GB9254 情報技術装置 CISPR22
表A5.5 高周波の電磁妨害波(EMI)に関する中国の規格
※)ISM機器(Industrial, Scientific and Medical equipment)
工業・科学及び医用分野での使用を目的に製造された機器。
付録5.EMCに関する国際規格と各国の規格
171171
規格番号 適用分野 参照規格
製品群規格
CNS13438 コピー機,ファックス,情報技術装置,プリンタ等 CISPR22
CNS13439 テレビ・ビデオ,オーディオ製品等 CISPR13
CNS13783-1 エアコン,冷蔵庫,洗濯機等 CISPR14
CNS13803 電子レンジ,電磁調理器等 CISPR11
CNS14115 照明機器等 CISPR15
表A5.6 高周波の電磁妨害波(EMI)に関する台湾の規格
付録5.EMCに関する国際規格と各国の規格
172172
国際規格 日本の規格JIS番号
ヨーロッパ規格EN番号名称 IEC番号
基本規格
イミュニティ概要 IEC61000-4-1 EN61000-4-1
静電気放電イミュニティ試験 IEC61000-4-2 JISC61000-4-2 EN61000-4-2
放射無線周波電磁界イミュニティ試験 IEC61000-4-3 JISC61000-4-3 EN61000-4-3
電気的ファーストトランジェント/バーストイミュニティ試験 IEC61000-4-4 JISC61000-4-4 EN61000-4-4
サージイミュニティ試験 IEC61000-4-5 JISC61000-4-5 EN61000-4-5
無線周波電磁界によって誘導された伝導妨害イミュニティ試験 IEC61000-4-6 JISC61000-4-6 EN61000-4-6
電源周波数磁界イミュニティ試験 IEC61000-4-8 JISC61000-4-8 EN61000-4-8
電圧ディップ,短時間停電及び電圧変化に対するイミュニティ試験(16A/相以下)
IEC61000-4-11 JISC61000-4-11 EN61000-4-11
ACポートにおける高調波イミュニティ試験 IEC61000-4-13 EN61000-4-13
電圧変動イミュニティ試験 IEC61000-4-14 JISC61000-4-14 EN61000-4-14
0Hz-150kHzの伝導性コモンモード妨害に対するイミュニティ試験 IEC61000-4-16 JISC61000-4-16 EN61000-4-16
DC入力ポートのリプルに対するイミュニティ試験 IEC61000-4-17 JISC61000-4-17 EN61000-4-17
電圧不平衡に対するイミュニティ試験 IEC61000-4-27 EN61000-4-27
商用周波数変動に対するイニュニテイ試験 IEC61000-4-28 EN61000-4-28
DCポートの電圧ディップイニュニテイ試験 IEC61000-4-29 EN61000-4-29
電圧ディップ,短時間停電及び電圧変化に対するイミュニティ試験(16A超75A/相以下)
IEC61000-4-34 JISC61000-4-34 EN61000-4-34
表5.7 イミュニティ(EMS)に関する国際規格と日本及び欧州規格(基本規格)
5.2 EMSに関する国際規格と各国の規格
172
低周波EMS
高周波EMS付録5.EMCに関する国際規格と各国の規格
173173
国際規格日本 ヨーロッパ
名称 番号
共通規格
住宅,商業及び軽工業環境におけるイミュニティ
IEC61000-6-1 JISC61000-6-1 EN61000-6-1(EN50082-1)
工業環境におけるイミュニティ IEC61000-6-2 JISC61000-6-2 EN61000-6-2(EN50082-2)
製品群
規格
家庭用機器・電動工具及びそれに属する機器用イミュニテイ規格
CISPR14-2 EN55014-2
放送用受信機用イミュニティ規格
(テレビ,ラジオ)
CISPR20 EN55020
情報技術機器用イミュニティ規格
(パソコン等)
CISPR24 EN55024
表5.8 イミュニティ(EMS)に関する国際規格と日本及び欧州規格(共通規格・製品群規格)
付録5.EMCに関する国際規格と各国の規格
174174
国際規格 日本での強制規格
北米での
強制規格
欧州での
強制規格
エミッション
EMI
CISPR13
電気用品安全法
電気用品の技術上の基準を定める
省令 第 1 項:別表第八の 3
第 2 項:J55013
FCC part15
Subpart B
EN55013
イミュニティ
EMS
CISPR20
規制なし 規制なし EN55020
表A6.1 テレビジョン受信機に関する高周波EMC規格
付録6.テレビに関する高周波EMC規格
表A6.2 電気用品の技術上の基準を定める省令に基づく基準で規定された伝導ノイズと輻射ノイズ
テレビジョン受信機は高周波EMCに関して表6.1に示す規格で限度値が決められている。尚,日本ではEMSに関する規格はなくEMIだけの規制となる。
電気用品の技術上の基準を定める省令第一項に基づく基準(別表第八の3)
電気用品の技術上の基準を定める省令第二項に基づく基準(J55013)
伝導ノイズ
526.5kHzから30MHz以下の電源端子に誘起される高周波電圧
150kHzから30MHz以下の電源端子に誘起される高周波電圧
30MHzを超え1,000 MHz以下のアンテナ端子に誘起される高周波電圧
30MHzを超え1,000 MHz以下のアンテナ端子に誘起される高周波電圧
輻射ノイズ30MHzを超え1,000 MHz以下の機器外に放射される雑音の電界強度
30MHzを超え1,000 MHz以下の機器外に放射される雑音の電界強度 174
175175
日本での強制規格国際規格
①従来からの規格(基準) ②国際整合規格
EMC
(EMI)
電気用品安全法
電気用品の技術上の基準を定める省令,別表第八
J55013
音声及びテレビジョン放送受信機並びに関連機器の無線妨害波特性の許容値及び測定法
CISPR13
安全
電気用品安全法
電気用品の技術上の基準を定める省令,別表第八
J60065
オーディオ,ビデオ及び類似の電気機器-安全要求事項
IEC60065
日本ではEMC規格と安全規格が抱き合わせになっており,①の組合せか,②の組合せの何れかを取得しなければならない。
表A6.3 日本のEMC規格と安全規格
付録6.テレビに関する高周波EMC規格
176176
省令第一項:別表第八の3 省令第二項:J55013
擬似電源回路網Δ結線150Ω
V結線50Ω-50μH
規格値 平衡電圧
526.5kHz~30MHz46dBμV(準尖頭値)
準尖頭値 平均値150kHz~500kHz:66~56dBμV 56~46dBμV500kHz~5MHz :56dBμV 46dBμV5MHz~30MHz :60BμV 50BμV
不平衡電圧
526.5kHz~30MHz52dBμV(準尖頭値)
表A6.4 電源端子に誘起される高周波電圧の許容値
V1
V2
V1:平衡ノイズ,ノーマルモードノイズ(ディファレンシャルモードノイズ)
V2:不平衡ノイズ,コモンモードノイズ
図A6.1 平衡(ノーマルモード)ノイズと不平衡(コモンモード)ノイズ
A6.1 電気用品安全法で規定された電源端子に誘起される高周波電圧の許容値(伝導ノイズ)
付録6.テレビに関する高周波EMC規格
177177
A6.2 電気用品安全法で規定された機器外に放射される雑音の電界強度の許容値
適用機器
項目
テレビジョン受信機,テレビジョン受信機用ブースター,携帯用テレビジョンカメラ 音声
受信機受信周波数が90MHz以上300MHz以下のもの
受信周波数が300MHzを越えるもの
30MHzを超え1,000MHz
以下の局部発信器の
基本周波数
57
ただし,標準映像中間周波数(58.75MHz)を使用する受信機については200MHz以上の周波数において
66
57
ただし,標準映像中間周波数(58.75MHz)を使用する受信機については
70
60
局部発信器の基本周波数以外の周波数
30MHzを超え300MHz以下
52
300MHzを超え1,000MHz
以下56
表A6.5 機器外に放射される雑音の電界強度の許容値 (省令第一項に基づく基準)(単位:dB)
※1.dBは1μVを0dBとして算出した値とする。2.許容値は受信機から3mの距離における電界強度を示す。3.局部発振周波数:チューナーで受信した高周波信号を中間周波信号に周波数変換する。このための高周波増幅
回路に組込まれた局部発振回路の発振周波数 177
(輻射ノイズ)
付録6.テレビに関する高周波EMC規格
178178
機器の型式 発生源 周波数
MHz
許容値dB (μV/m)
準尖頭値
300MHz未満のチャンネルで動作するテレビジョン放送受信機及びビデオレコーダ
局部発信器
その他
30~300
300~1000
121.5
243
基本波 66
高調波 52
高調波 56
40
47
300MHzから1GHzのチャンネルで動作するテレビジョン放送受信機及びビデオレコーダ
局部発信器
その他
300~1000
121.5
243
基本波 70
高調波 56
40
47
放送衛星局の行うテレビジョン放送受信機及び放送衛星局の行う音声放送受信機:第1中間周波数を受けるチューナーユニット
その他 121.5
243
40
47
周波数変調方式による音声放送受信機 局部発信器
30~300
300~1000
基本波 60
高調波 52
高調波 56
表A6.6 機器外に放射される雑音の電界強度の許容値 (省令第ニ項,J55013に基づく基準)
※1.dBは1μVを0dBとして算出した値とする。2.許容値は受信機から3mの距離における電界強度を示す。
(単位:dB)付録6.テレビに関する高周波EMC規格
179179
A6.3 電気用品安全法で規定されたアンテナ端子に誘起される高周波電圧の許容値
適用機器
項目
テレビジョン受信機音声
受信機受信周波数が90MHz以上300MHz以下のもの
受信周波数が300MHzを越えるもの
30MHzを超え1,000MHz
以下の局部発信器の基本周波数 50 50 60
局部発信器の基本周波数以外の周波数
30MHzを超え300MHz以下 50
50
300MHzを超え1,000MHz以下
52
表A6.7 アンテナ端子に誘起される高周波電圧の許容値 (省令第一項に基づく基準)(単位:dB)
※ 1.dBは1μVを0dBとして算出した値とする。2. アンテナインピーダンス75Ωの終端値。
(伝導ノイズ)
付録6.テレビに関する高周波EMC規格
180180
機器の型式 発生源 周波数
MHz
許容値dB (μV/m)
準尖頭値
300MHzから1GHzのチャンネルで動作するテレビジョン放送受信機及びビデオレコーダ
局部発信器
その他
30~950
950~2150
30~2150
基本波 46
高調波 46
高調波 54
46
放送衛星局の行うテレビジョン放送受信機及び放送衛星局の行う音声放送受信機:第1中間周波数を受けるチューナーユニット
局部発信器
その他
30~950
950~2150
30~2150
基本波 46
高調波 54
46
周波数変調方式による音声放送受信機 局部発信器
30~300
300~1000
30~1000
基本波 54
高調波 50
高調波 52
46
表A6.8 アンテナ端子に誘起される高周波電圧の許容値 (省令第ニ項,J55013に基づく基準)
※ 1.dBは1μVを0dBとして算出した値とする。2. アンテナインピーダンス75Ωの終端値。
(単位:dB)
付録6.テレビに関する高周波EMC規格
181181
・スイッチング電源の原理と設計・401頁・落合政司著・税込 4,968円・オーム社
付録7.スイッチング電源の原理と設計
182
◆第I 部スイッチング電源の原理第1章 電源回路の役目と構成第2章 定電圧回路第3章 スイッチングコンバータの代表的な回路方式第4章 チョッパ方式非絶縁形コンバータ4.1 降圧形コンバータ4.2 昇圧形コンバータ4.3 昇降圧形コンバータ4.4 3 種類のチョッパ方式非絶縁形コンバータのまとめ4.5 第4 章の演習問題.
第5章 非共振(矩形波)絶縁形コンバータ5.1 リンギングチョーク形コンバータ5.2 フライバック形コンバータ5.3 フォワード形コンバータ5.4 プッシュプル形コンバータ5.5 ハーフブリッジ形コンバータ5.6 フルブリッジ形コンバータ5.7 6 種類の非共振絶縁形コンバータのまとめ5.8 第5 章の演習問題
第6章 共振絶縁形コンバータ6.1 電圧共振フライバック形コンバータ6.2 電流共振形コンバータ6.3 部分共振形コンバータ6.4 第6 章の演習問題 182
付録7.スイッチング電源の原理と設計◆第II 部スイッチング電源の設計法第7章 降圧形コンバータの設計第8章 リンギングチョーク形コンバータの設計第9章 フライバック形コンバータの設計第10章 フォワード形コンバータの設計第11章 電流共振形コンバータの設計第12章 整流回路第13章 スイッチング電源におけるノイズの抑制対策
183
n 1 2 3 4 5
Cosnπ -1 1 -1 1 -1
表A8.1
付録8.対称波の高調波電圧
は奇数次だけとなる。でであるためにはつまり,
でが奇数のときは,
でが偶数のときは,
展開する。対称波電圧をフーリエ
nbTtiti
AtnbtnabTtinn
AtnbtnabTtinn
Antnbntnab
ntnntnbntnntnab
Tntn
Tntnb
Tntn
Tntnab
TtnbTtnabTtv
Atnbtnabtv
n
nn
n
nn
n
n
n
n
n
n
n
n
n
n
n
n
n
n
n
n
n
nn
0)2/()(
)4.8(cossin)2/(1cos
)3.8(cossin)2/(1cos
)2.8(coscoscossin
)sinsincos(cossincoscossin
2sinsin
2coscos
2sincos
2cossin
)2/(cos)2/(sin)2/(
)1.8(cossin)(
0
1
0
1
0
11
0
11
0
11
0
11
0
1
0
184
図A8.1 対称波の場合の高調波電圧
ωt0
π~2π期間に発生した2次高調波電圧
0~π期間に発生した3次高調波電圧
基本波
基本波
i
0
i
02sin2sin
2sin2cos2cos2sin2sin22sin2sin
2
222
ttV
tttVttVv
m
mm
tVttV
tttVttVv
mm
mm
3sin23sin3sin
3sin3cos3cos3sin3sin33sin3sin
33
333
0~π2期間とπ~2π期間に発生する3次高調波電圧は同相になる
0~π期間とπ~2π期間に発生する2次高調波電圧の位相は180°ずれる。
0~π期間に発生した2次高調波電圧
π~2π期間に発生した3次高調波電圧
2ππ
2ππ ωt
2次高調波電圧
3次高調波電圧
付録8.対称波の高調波電圧
IO
出力電圧Eo
入力電圧Ei
C Ro
図A9.1 スイッチングレギュレータの構成:降圧形(Buck形)コンバータ
D
Q L
+
比較回路誤差増幅器
基準電圧
時比率制御回路(V-PW変換器)
発振器
発振器及び制御回路
付録9. スイッチングレギュレータの構成
DC-DCコンバータ
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