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1 ホログラムによる機械加工面の ワンショット形状検査 宇都宮大学 オプティクス教育研究センター 教授 谷田貝豊彦 コーディネータ 小野明 工学研究科 助教 茨田大輔

ホログラムによる機械加工面の ワンショット形状検 …2 本技術の目的 機械加工で作られた 湾曲した面の形状精度検査 特に多量の製品の形状検査を短時間に行う

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Page 1: ホログラムによる機械加工面の ワンショット形状検 …2 本技術の目的 機械加工で作られた 湾曲した面の形状精度検査 特に多量の製品の形状検査を短時間に行う

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ホログラムによる機械加工面の ワンショット形状検査

宇都宮大学 オプティクス教育研究センター 教授 谷田貝豊彦 コーディネータ 小野明 工学研究科 助教 茨田大輔

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本技術の目的 機械加工で作られた 湾曲した面の形状精度検査 特に多量の製品の形状検査を短時間に行う 例:歯車、タービンフレード、金型等

サンドビック・コロマント社HPより

タービンブレード面

歯車の歯面

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従来技術とその問題点 1 座標式三次元形状測定器 :一点一点の座標測定で多大な時間が かかる。多量検査に適さない。

パルステック社 アームシステム

ミツトヨ社 三次元測定機

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従来技術とその問題点 2

Zygo社レーザ干渉計

参照光

物体光

干渉計 精度は高いが、鏡面しか測定できない。

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レーザ光源 カメラ

プリズム

被検査面 参照面(標準面)

従来技術とその問題点 3

特開2008-32690号公報

粗面(ざらざらの面)に斜めから光を当てると正反射(鏡面反射)光が得られる。

入射光 散乱光 正反射光

斜入射干渉計: 機械加工面等の粗面を干渉計測により高精度形状検査 が出来るが、被検査面は平面のみ

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レーザ

回折格子

被検サンプル

CCDカメラ

コンピュータ

表示装置

計算機ホログラム

移動機構(位相シフト)

ピンホール

直進光(参照光)

回折光 反射光(物体光)

干渉光

再生光 +反射光

本発明の光学システム 斜入射干渉計の原理を応用した。湾曲した機械加工面も検査できるように、計算機ホログラムを導入した。また、散乱光を除去するために、ピンホールを置いた。

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光学原理 1 計算機ホログラムの役割

サンプル表面の 傾斜により進む 方向が変わる

回折格子を透過した直進光

設計どおり作られた 加工サンプル

物体光

回折格子による回折光

ホログラムにより作られる参照光

上記物体光と 同じ方向に進む

物体光と参照光を干渉させる。

サンプルと設計値との形状差に応じた位相差が生ずる。 干渉縞が現れる。

ホログラムをシフトさせると参照光の位相が変わる

位相検出法によりサブミクロン測定精度が得られる。

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光学原理 2 参照光 - 物体光位相差計算

ホログラム 回折格子

⊿h の窪みがあるときと、無いときの光路長差 ⊿L=(CD+DG)-CF は ⊿L= 2 ⊿h cosθ となる。 位相差 ⊿δ = 2π ⊿L/λとなる。 参照光が⊿δの位相を持つようにホログラムを作る。 サンプル面の窪みが⊿hから変化すると干渉縞変化に現る。

回折格子によって2つの光に分ける。 片方は直接ホログラムに入射させる。ホログラムで回折し、参照光となる。このときの光波面は被検サンプルの設計値から算出された位相を持つ。 他方は被検サンプル表面で反射し、ホログラムを透過し物体光となる。 参照光と物体光は干渉して干渉縞を形成する。

物体光

参照光

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基準となる計算機ホログラムの作成手順

被検査物設計データ

物体光と参照光の光路差を計算計算

光路長から位相差を計算

位相からホログラム図を計算

EB描画機でホログラムをガラス板に描画

エッチング等の現像をしてホログラム完成

計算機ホログラム

直進光

被検サンプル

反射光(物体光)

再生光(参照光)

計算機ホログラム模式図 実際に作成したホログラム

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製作したホログラム

電子ビーム描画装置で作成したホログラム

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実験機

レーザ光源

被検サンプル

ホログラム

回折格子

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サンプルは緩やかな放物面

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本特許の変形例 1 被検サンプルが湾曲が大きいときの特許変形例 1 湾曲が凹面のとき、凹レンズを用いる。

凹レンズ 凹レンズ

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本特許の変形例 2

被検サンプルが湾曲が大きいときの特許変形例 2 一般曲面で湾曲率が比較的大きいとき、ホログラムを2枚用いる。

ホログラム 1 ホログラム 2 ホログラム 1

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本特許の変形例 3

計算機ホログラム

直進光

被検サンプル

反射光のホログラムによる回折光(物体光)

直進光(参照光)

CCDカメラ

被検サンプルからの反射光のホログラムによる回折光を物体光に、直進光をそのまま参照光とする。 (特許本文では直進光のホログラムによる回折光を参照光として用いた。) メリット: 干渉縞が単純になり、解析易くなる。

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新技術の特徴・従来技術との比較

• いままで、曲面を持つ光学表面は干渉計で検査されていた。しかし、表面が球面に近いこと、機械加工部品等の粗面は散乱光が障害となって検査できなかった。

• 平面の検査用では斜入射干渉計があったが、曲面は検査できない。

• 本技術の適用により、緩やかな曲面を持つ機械加工部品の形状を瞬間に検査することができる。

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想定される用途

• 本技術の特徴を生かす用途は、切削加工面、研削加工面等、鏡面ではないが、高精度が要求される加工面の形状検査に適用することでる。サブミクロンの精度も可能である。

• 特に、歯車の歯面、タービンブレード等緩やかな曲面の形状検査に威力を発揮する。

• また、斜めから光を入射させるので、比較的大面積の検査にも適している。

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実用化に向けた課題 • 現在、JST事業A-Step探索タイプの研究補助金によって原理確認が終了した。被検サンプルは平面近いものであった。しかし、どの程度の曲率を持つ平面まで測定可能かを確認していない。

• 機械加工面の検査が可能であるが、どの程度の表面面粗さを持つ面まで検査可能か確認していない。

• 表面形状が複雑なとき、被検サンプルとホログラムの相対位置を調整する方法を工夫する必要が生ずる。

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企業への期待

• 様々な業界において今、思いつかないニーズがある可能性がある。広く聞きたい。

• また、ニーズがあったとき、実現性の確認実験を行うために、そのサンプルと計算機ホログラムを製作するための設計データが必要となる。協力いただきたい。

• 有望なニーズについて共同研究を立ち上げたい。

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本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :形状検査装置 • 出願番号 :特願2011-111306 • 出願人 :宇都宮大学 • 発明者 :谷田貝豊彦、茨田大輔、 小野明

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お問い合わせ先

宇都宮大学

オプティクス教育研究センター

コーディネーター 小野明

TEL 028-689 - 7078

FAX 028-689 - 7075

e-mail akira-ono@cc.utsunomiya-u.ac.jp

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ご清聴ありがとうございました。