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コンクリート舗装の損傷について
山形河川国道事務所 山形国道維持出張所 齋藤 勝
○遠藤 弘規
1. はじめに
山形国道維持出張所管内の一般国道13号において、平成27年7
月27日(月)にコンクリート舗装版(t=28cm)の隆起による
目地部の損傷が発生した。このため、当該箇所の安全かつ円滑な交通
確保を図るために、損傷箇所の補修対策や近接する同様のコンクリー
ト舗装区間における予防保全対策が喫緊の課題となっている。
本報告は、損傷状況及び現地状況を基に、損傷原因の特定と補修対
策について中間報告するものである。
2. 損傷箇所の概要
・損傷箇所 :一般国道13号(下り)77.67kp
(山形県上山市仙石 地内)
・車線数 :4車線(片側2車線)
・交通量 :34,046台/日(H22道路交通センサス)
・供用開始 :平成9年度(供用から18年経過)
図-1 損傷箇所位置図
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3. 損傷の状況
施工時点では切削溝(幅8mm、深さ70mm)に目地材が注入されていた
が、切削溝は無くコンクリート舗装版同士が完全に接触していた。また、目地
部から40cm程度、コンクリートが薄く剥がれ、通過車両による破損も見ら
れた。
図-2 施工時の目地断面図 写真-1 損傷状況(全体)
走行車線側の脆弱部を撤去し内部の損傷状況を確認した結果、舗装版内部
もコンクリートが粉砕し、メッシュ筋より上側部分が浮いている状況であっ
た。また、追越車線側においてもメッシュ筋より上側部分の浮きを確認、同
時にリーブ版がアプローチ版に2cm程度乗り上がり、リーブ版側に縦ひび
われが複数見られた。
写真-2 損傷状況(走行車線) 写真-3 損傷状況(追越車線)
4. その他の現地状況
損傷発生当日のリーブ版において、点検
ハンマーによる打音検査を実施し、その結
果目地部から5m程度の範囲内で浮いた音
を確認した。また、大型車両が通過する度
にコンクリート舗装版のたわみを目視で確
認した。
しかし、損傷発生から数日で浮いた音が
確認できる範囲は5mから3m程度まで縮
小し、コンクリート舗装版のたわみは確認
できなかった。
損傷箇所に近接する目地部では、設計値の8mmより大きく開いている(1
1mm)箇所もあり、また、目地材が劣化し遮水効果が無くなっている箇所や、
目地部に砂が詰まっている箇所なども見られた。
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5. 損傷原因の特定
通常、コンクリートの熱膨張による水平方
向の圧縮力は膨張目地で吸収される設計にな
っている。しかし、今回損傷した箇所におい
ては、目地材が経年劣化により十分にその機
能を有していなかった事により、膨張したコ
ンクリートの圧縮力に抗しきれず、コンクリ
ート舗装版同士が衝突し、圧壊(※1)及び
ブローアップ(※2)などの損傷が起きたと
考えられる。
特に、損傷発生前1週間の山形市の気温は
概ね30℃を超え、うち3日間は35℃を超える猛暑日を観測しており、コ
ンクリートの温度膨張がより顕著となっていたことがうかがえる。
※1:コンクリートが温度膨張による圧縮力により破壊される現象
※2:コンクリートが温度膨張による圧縮力により座屈し、目地部を中心
に持ち上がる現象
6. 損傷のメカニズム
損傷状況及び現地状況から、
今回の損傷は、温度膨張による
圧縮力によりリーブ版内部で圧
壊が起こり、圧壊によりリーブ
版のメッシュ筋より上側部分の
コンクリートが剥離し、舗装版
がブローアップしたもと考えら
れる。
7. 補修方法
7. 1 応急対策
現在、応急的な対策としてアスファルト合材による擦付けを実施している。
写真-5 応急復旧状況
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7.2 本復旧対策(案)
アスファルトで復旧した場合、既設コンクリート舗装とアスファルト舗装の
挙動の違いに起因する段差や隙間が生じやすくなり、新たな損傷の原因にもな
り得る。こういった事から、維持管理なども考慮しコンクリートによる補修が最
も適していると考える。
しかし、当該箇所は日交通量が約3万4千台と交通量が多いため、補修工事は
夜間(21:00~翌6:00)の施工となる。こういった施工上の制約がある
中で、コンクリートによる補修を実施する場合、養生期間の問題、それに伴う交
通への影響、補修規模(コンクリートボリューム)を考慮したコンクリート仕様
の検討、プレキャスト製品の活用などコスト面や施工面も含めた総合的な検討が
必要と考える。
図-5 補修方法案(目地部前後5mの範囲をコンクリートで補修)
8. まとめ
本稿では、山形国道維持出張所管内におけるコンクリート舗装版の損傷原因
の特定と補修対策(応急対策、本復旧案)について紹介した。
今回の損傷は、目地材の劣化等に高温日の連続が加わり、目地部においてコ
ンクリートの温度膨張を吸収できなくなったものである。
今後、このような損傷を予防しコンクリート舗装の長寿命化を図るためには、
劣化した目地材の補修、目地部の清掃、目地材の再注入などの経常的な維持作
業が必要である。また、高温日が連続し交通量が増加する夏期においては、道
路巡回の強化を図るなどソフト面での対策も必要と考える。
今回の損傷を踏まえて、メンテナンスフリーと思われがちなコンクリート舗
装であるが、実際はアスファルト舗装よりも入念な点検や維持管理(特に目地
部)を実施したうえで、長期的に性能が担保されるものであることが明らかと
なった。
最後に、現在応急復旧済みであり、補修対策(本復旧)を検討し本復旧を行
う予定である。