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ロタウイルスワクチン  ~ロタリックスとロタテック~ ロタウイルスは、毎年冬から春にかけて乳幼児を中心に流行するウイルス性胃腸炎 の原因のひとつです。感染力が強く、保育園や幼稚園でも毎年多くのお子さんがかかり ます。このロタウイルスによる胃腸炎を防いだり、症状を軽くして重症化を防いでくれ るワクチンが、ロタリックスとロタテックです。 安全性は世界中で多くの調査が行われており、極めて高いとされています。そのため WHO(世界保健機関)はロタウイルスワクチンを子どもの最重要ワクチンの一つに指定 し、世界中の全ての子どもが使用するようにと指示をしています。 ●ワクチンでの必要性 感染力がとても強いウイルスなので、手洗いやアルコール消毒だけでは完全には感染 を予防できません。生後6ヶ月から2歳をピークに、5才までにほぼすべてのお子さんが ロタウイルスに感染し、胃腸炎にかかるとされています。ロタウイルスの胃腸炎は初め て感染するときの症状が最も重く、2回目以降は症状が軽くなります。ロタウイルスワ クチンは、この性質を応用して胃腸炎の重症化を防ぐことを目的としています。 ロタウイルス胃腸炎では他の胃腸炎より脱水になりやすく、点滴が必要になったり、 中には入院する必要があったりします。日本では脱水で命を落とす状態になることはま れですが、中にはけいれんを繰り返したり、脳炎・脳症などの重症の合併症を起こした りするお子さんもいるため、ワクチンで予防してあげたい病気のひとつです。 ●ワクチンでの必要性 ロタリックスとロタテック、どちらも注射ではなく飲むタイプの生ワクチンです。 どちらも重症化を防ぐ効果が90%以上認められており、有効性に差は無いと考えられてい ます。 ロタリックスはヒトロタウイルスから作られており、免疫がつきやすいとされています 。また一番流行して重症化しやすいG1P[8]という血清型のウイルスに対応していますが、 2回接種することでその他の型のロタウイルスにも対応できるようになります(交差免疫 とよびます)。また、接種回数が2回で早く済ませることができる、万が一接種後すぐに 大量に吐いた時には飲み直しができる、などのメリットもあります。 >>>裏面に続く

ロタウイルスワクチン ~ロタリックスとロタテック~ロタウイルスワクチン ~ロタリックスとロタテック~ ロタリックスはヒトロタウイルスから作られており、免疫がつきやすいとされています。また一番流行して重症化しやすいG1P[8]という血清型のウイルスに対応していますが

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Page 1: ロタウイルスワクチン ~ロタリックスとロタテック~ロタウイルスワクチン ~ロタリックスとロタテック~ ロタリックスはヒトロタウイルスから作られており、免疫がつきやすいとされています。また一番流行して重症化しやすいG1P[8]という血清型のウイルスに対応していますが

ロタウイルスワクチン ~ロタリックスとロタテック~

  ロタウイルスは、毎年冬から春にかけて乳幼児を中心に流行するウイルス性胃腸炎の原因のひとつです。感染力が強く、保育園や幼稚園でも毎年多くのお子さんがかかります。このロタウイルスによる胃腸炎を防いだり、症状を軽くして重症化を防いでくれるワクチンが、ロタリックスとロタテックです。 安全性は世界中で多くの調査が行われており、極めて高いとされています。そのためWHO(世界保健機関)はロタウイルスワクチンを子どもの最重要ワクチンの一つに指定し、世界中の全ての子どもが使用するようにと指示をしています。

●ワクチンでの必要性 感染力がとても強いウイルスなので、手洗いやアルコール消毒だけでは完全には感染を予防できません。生後6ヶ月から2歳をピークに、5才までにほぼすべてのお子さんがロタウイルスに感染し、胃腸炎にかかるとされています。ロタウイルスの胃腸炎は初めて感染するときの症状が最も重く、2回目以降は症状が軽くなります。ロタウイルスワクチンは、この性質を応用して胃腸炎の重症化を防ぐことを目的としています。 ロタウイルス胃腸炎では他の胃腸炎より脱水になりやすく、点滴が必要になったり、中には入院する必要があったりします。日本では脱水で命を落とす状態になることはまれですが、中にはけいれんを繰り返したり、脳炎・脳症などの重症の合併症を起こしたりするお子さんもいるため、ワクチンで予防してあげたい病気のひとつです。

●ワクチンでの必要性

 ロタリックスとロタテック、どちらも注射ではなく飲むタイプの生ワクチンです。どちらも重症化を防ぐ効果が90%以上認められており、有効性に差は無いと考えられています。

 ロタリックスはヒトロタウイルスから作られており、免疫がつきやすいとされています。また一番流行して重症化しやすいG1P[8]という血清型のウイルスに対応していますが、2回接種することでその他の型のロタウイルスにも対応できるようになります(交差免疫とよびます)。また、接種回数が2回で早く済ませることができる、万が一接種後すぐに大量に吐いた時には飲み直しができる、などのメリットもあります。

>>>裏面に続く

Page 2: ロタウイルスワクチン ~ロタリックスとロタテック~ロタウイルスワクチン ~ロタリックスとロタテック~ ロタリックスはヒトロタウイルスから作られており、免疫がつきやすいとされています。また一番流行して重症化しやすいG1P[8]という血清型のウイルスに対応していますが

ロタウイルスワクチン ~ロタリックスとロタテック~

ロタリックスはヒトロタウイルスから作られており、免疫がつきやすいとされています。また一番流行して重症化しやすいG1P[8]という血清型のウイルスに対応していますが、2回接種することでその他の型のロタウイルスにも対応できるようになります(交差免疫とよびます)。また、接種回数が2回で早く済ませることができる、万が一接種後すぐに大量に吐いた時には飲み直しができる、などのメリットもあります。

 ロタテックは、G1,G2,G3,G4,P1A[8]の5つの血清型のウイルスに対応しており、人に病原性を持つロタウイルスのほぼ全てをカバーします。初回接種からこの5つの型への免疫がつき、3回飲むことでより確実になります。ワクチン完了まではロタリックスより回数が1回多くなりますので、初回接種が遅く開始された場合など、状況によっては他のワクチンのスケジュールに影響することがあります。●副反応について

 ワクチン接種後に下痢、嘔吐、発熱などの症状が数%報告されています。ロタリックスでは不機嫌、むずがるなどの症状も報告されていますが、いずれも一時的で数日以内に回復しています。 重要な副反応として、非常にまれ(10万人中3‐4人)ですが、腸重積症(腸が腸の中に折り重なるように入り込み、腸閉塞を起こす病気)があります。本来はウイルス性腸炎などをきっかけに自然発症する病気ですが、ロタウイルスワクチンの接種後に腸重積になった報告があります。自然発生と比べて頻度が増加しているかどうか詳細はまだ不明ですが、初回接種が遅くなるほど頻度が上がる可能性も考えられており、できれば生後3ヶ月になる前に、遅くとも生後14週6日までには初回接種を済ませましょう。(当院では初回接種は原則生後14週6日までとさせていただいております。ご了承ください。)

●ワクチン接種後の注意

飲む生ワクチンですので、一部は便に排出されます。便に出てきたワクチンが原因で周囲の方が胃腸炎にかかる可能性は非常に低いとされていますが、おむつ交換後はしっかり手洗いをしましょう。 ワクチン接種後3週以内、特に1週以内に嘔吐を繰り返したり血便が出たりした場合は腸重積の可能性があります。治療を急ぐ病気ですので、迷ったらすぐに受診しましょう。

 2015年の時点では、ロタウイルスワクチンは任意接種で自己負担のあるワクチンですが、入院したり点滴を受けたりするような重症の胃腸炎を予防することによって、激しい嘔吐下痢でお子さんが苦しむ可能性が減るだけでなく、病院の受診回数も減り、入院になって親が仕事を休んだりする可能性も減ることになります。 経済的な負担が大きいワクチンですが、生後2ヶ月になったらヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンと共に接種することをお勧めします。また、ロタリックスとロタテック、どちらのワクチンでも有効性は高いと考えられています。当院ではどちらでも対応しておりますので、予約時や接種時にご相談ください。

南大沢メディカルプラザ2 小児科 〒192-0364

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医療法人社団めぐみ会

日本小児科学会認定小児科専門医 東洋医学会漢方専門医

藤井 泰志 医師ふじい やすし