30
第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢 9-1-1 排泄ケア(1) 排便コントロール ~ツボ押しを試みて~ 長島中央病院 もり あや ○森 綾(看護師),坂本 静香,小林 真弓 [ はじめに ] 近年、経管栄養剤の内容が改良され、下痢を起こしにくくなっている。当院では、長期臥床で経管栄養を使用 している患者の多くが 便秘で、大腸刺激性下剤を使用し排便を促しているが、その影響で水様便を排出され ることが多く患者に負担がかかっている状態であった。そこで今回、下剤使用回数減少や、自然排便を促せな いかと考え、ツボ押しを試みた。 [ 期間 ] 平成26年11月16日~27年4月15日 [ 対象者 ] 日常生活自立度c2経管栄養の6名 [ 方法 ] 主にオムツ交換を行っている介護士にブリストルスケールを用いた記録を依頼。看護師にツボ部位、 指圧方法についてのマニュアル作成し、実施方法を指導。毎日9時30分に施行し、患者の様子も記録表に記 入。ツボ部位にシールを貼り、全スタッフの指圧部位の統一を図った。ツボ押し施行前後の下剤使用回数と便 の形状、回数のデータを比較。  [ 結果 ] 5名は何らかの結果を得た。実施中に腹鳴を認め、下剤使用後の排便量、回数が増加した。1名は下 剤を使用せず、自然排便を認めた。 [ 考察 ] 長期臥床者は活動量の減少、全身の筋力低下により弛緩性便秘となり、多くの患者は直腸性便秘も合 わせ持っている。ツボ押しは自立神経中枢に働きかけ、消化器に対し、直接又は反射的に作用し胃腸の機能を 整える。ツボを押すことで腸蠕動が促され、自然排便を認め、排便まで至らない時は大腸刺激下剤が 直腸に 作用し排便を認めたと考えられる。 [ 結論 ] ツボ押しは、腸蠕動が促され、自然排便につながる効果があった。直腸性便秘がある場合はツボ押し だけでは効果がないが大腸刺激下剤と併用する事で効果を認めたが、水様便になりやすい為、患者への負担が ある。 高齢者における排便コントロールは、大事な日常ケアのひとつであり、便秘の種類を見極め、浣腸や摘便、ツ ボ押し等を取り入れ、上手にコントロールしていくことが重要である。

排便コントロール ~ツボ押しを試みて~ · 長期療養患者の排便コントロールの重要性 京都南西病院 看護部 あきなが なな 秋永 奈々(看護師),若井

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-1-1 排泄ケア(1)排便コントロール ~ツボ押しを試みて~

長島中央病院

もり あや

○森 綾(看護師),坂本 静香,小林 真弓

[ はじめに ]近年、経管栄養剤の内容が改良され、下痢を起こしにくくなっている。当院では、長期臥床で経管栄養を使用している患者の多くが 便秘で、大腸刺激性下剤を使用し排便を促しているが、その影響で水様便を排出されることが多く患者に負担がかかっている状態であった。そこで今回、下剤使用回数減少や、自然排便を促せないかと考え、ツボ押しを試みた。[ 期間 ] 平成26年11月16日~27年4月15日[ 対象者 ] 日常生活自立度c2経管栄養の6名[ 方法 ] 主にオムツ交換を行っている介護士にブリストルスケールを用いた記録を依頼。看護師にツボ部位、指圧方法についてのマニュアル作成し、実施方法を指導。毎日9時30分に施行し、患者の様子も記録表に記入。ツボ部位にシールを貼り、全スタッフの指圧部位の統一を図った。ツボ押し施行前後の下剤使用回数と便の形状、回数のデータを比較。 [ 結果 ] 5名は何らかの結果を得た。実施中に腹鳴を認め、下剤使用後の排便量、回数が増加した。1名は下剤を使用せず、自然排便を認めた。[ 考察 ] 長期臥床者は活動量の減少、全身の筋力低下により弛緩性便秘となり、多くの患者は直腸性便秘も合わせ持っている。ツボ押しは自立神経中枢に働きかけ、消化器に対し、直接又は反射的に作用し胃腸の機能を整える。ツボを押すことで腸蠕動が促され、自然排便を認め、排便まで至らない時は大腸刺激下剤が 直腸に作用し排便を認めたと考えられる。[ 結論 ] ツボ押しは、腸蠕動が促され、自然排便につながる効果があった。直腸性便秘がある場合はツボ押しだけでは効果がないが大腸刺激下剤と併用する事で効果を認めたが、水様便になりやすい為、患者への負担がある。高齢者における排便コントロールは、大事な日常ケアのひとつであり、便秘の種類を見極め、浣腸や摘便、ツボ押し等を取り入れ、上手にコントロールしていくことが重要である。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-1-2 排泄ケア(1)長期療養患者の排便コントロールの重要性

京都南西病院 看護部

あきなが なな

○秋永 奈々(看護師),若井 ともえ,井上 美佳子

【はじめに】 当病棟は 59 床の介護療養病棟 ( 療養機能強化型 A) で、患者の平均要介護は 4.8、経管栄養の患者は約 71%、寝たきり度 C2 の患者は約 9 割を占める。多くの高齢者は加齢に伴う様々な機能の低下がみられ、その 1 つに排便障害がある。当病棟では排便コントロールを目的とした下剤や浣腸の使用頻度が高い。それらが日常化していく中で下剤の常用により、下剤依存症を引き起こすことがある。 そこで今回排便障害の 1 つである便秘に着目し、下剤や浣腸に頼らず自然排便を促す方法はないかと考え、2つのアプローチを検証してみることとした。

【方法】1.対象:研究前 2 ヶ月間の排泄状況をもとに、下剤や浣腸に依存している経管栄養の患者 8 名。 A 氏…86 歳 女性 心源性脳塞栓症 B 氏…74 歳 女性 脳梗塞後遺症 C 氏…74 歳 女性 ピック病 D 氏…79 歳 男性 多発性脳梗塞 E 氏…87 歳 女性 高血圧性脳内出血 F 氏…82 歳 女性 クモ膜下出血後遺症 G 氏…85 歳 女性 認知症 H 氏…83 歳 男性 多発性脳梗塞2.方法:①腹部マッサージ 4 名 (A ~ D 氏 )②端坐位保持 10 分間 4 名 (E ~ H 氏 )・日勤帯の朝の環境整備後に実施する。・各対象者の排便チェックをし、2 週間ごとの評価を行い、スタッフ間でカンファレンスを実施する。

【結果】取り組みの結果、腹部マッサージを行った患者は早期から排便習慣の変化を認め、下剤や浣腸の使用頻度が減少した。端坐位保持を行った患者は早期からの変化は認めなかったが、日々継続することにより排便習慣の変化を認めるようになった。またスタッフ同士で排便について考える時間が増え、意識改革にもつながった。

【考察】 長期療養患者で加齢による機能の低下があっても、薬剤を常用せず直接人の手でアプローチを加えることにより、事例によるが自然排便を促すことができると考える。 今回は研究のため対象患者は少なかったが、今後は対象患者を広げると共に、更なる実施内容の改善と工夫を加え継続していきたいと思う。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-1-3 排泄ケア(1)排便コントロールの為の排泄チェック表の見直し ~ブリストルスケールの導入~

山の上病院 北館 2 階病棟

くぼた りな

○窪田 莉那(看護師),宇土 紀代美

1.はじめに 当病棟は 32 床の療養病床である。便秘の患者が多く、緩下剤や腸整剤などでコントロールをしている。おむつ交換は、介護職が主に施行しており、チェック表の項目に回数のみ記載しているのが現状である。排便の 1回量も統一性がなく性状を記入する欄もないため、排泄状況が把握できない問題が生じている。今回、ブリストルスケールを導入したことで、排便に関するスタッフの意識が高まり、排便コントロールが行いやすくなったのでここに報告する。2.方法 排便に対する意識調査(看護職員8名、介護職員 8 名) ブリストンルケールのサンプル作成 便の性状・量・色を把握する。3.結果 ブリストルスケールを導入し、職員の意識が改善されたことで情報の共有が出来るようになった。結果、スキントラブルの発生率も低下した。看護職員は排便困難による患者の苦痛や下剤使用の評価ができ、早期に排便コントロールが出来るようになった。介護職員は便の性状やオムツコストを意識するようになった。4.考察 統一した排便コントロールが出来なかった要因として、排便コントロールに必要な情報が得られない表を使用していることであると考えていた。しかし、アンケートの結果で排便に対する知識不足が意識の低さに繋がっていることが明らかとなった。個別の排便コントロールを行うには、安易な薬剤使用に頼らず、食事内容や水分管理など必要なケアが実施されることが必要であると考える。知識や技術の向上、維持のためにも、日々のカンファレンスや研修会が必須であると考える。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-1-4 排泄ケア(1)療養患者の排泄自立に向けた在宅移行への取り組み ー FIM を用いた評価表の作成と看護介入ー

立川中央病院

ふきや みわこ

○吹谷 美和子(看護師),内出 ゆかり

立川中央病院吹谷 美和子 内出 ゆかり

【目的】 当院療養病棟に入院中の患者84.4% が75歳以上である現状を踏まえ、エンドオブライフケアの観点からも重要である排泄に焦点をあて、FIM に基づいた排泄評価表を作成し、看護介入による ADL の維持向上が在宅移行につながるかを明らかにする。

【方法】リハビリ介入中で残存能力がある患者に対し、FIM に基づき排泄評価表を作成。開始日から2週間後点数の低い項目について排泄自立の看護計画を立案、具体的介入を行い1ヶ月後、2ヶ月後合計点数を比較し評価した。評価者は看護師とケアワーカー各1名とした。

【結果】平成27年10月1日~11月30日の間4例の患者に実施した。2週間後の評価で 4 例共に移動・トイレ移乗 • トイレ動作の点数が低く、ケアワーカーと連携し具体的介入を行った。2ヶ月後合計点数で4例中1例は変化なし。1例は肺炎の再燃と共に ADL が低下し病状との相関を認めた。上昇した2例は日中繰り返し排泄を誘導したことで移動の項目が上昇した。このうち 1 例は在宅移行という明確な目標があり、日中は尿意や便意を訴え、排泄動作が見守りで出来るようになり全項目上昇した。その様子を見て主介護者が在宅療養への自信を持ち自宅退院となった。

【考察】対象患者の病状変化と点数が相関していた。中でも上昇した2例は車椅子で食事摂取していたことが共通しており、排泄と離床の関連性が明らかとなった。このうち1例は在宅移行を目標に入院時から介入し、ADL の変化を目の当たりにした主介護者が自宅に連れて帰りたいという気持ちにつなぐことが出来た。入院時から排泄動作への取り組みは在宅移行に有効であると言えるが、対象者が少なく妥当性までは示せなかった。今後も看護師・ケアワーカーと協働し、社会と切れ目のない看護を提供していく必要がある。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-1-5 排泄ケア(1)尿道留置カテーテル使用の現状調査を実施して-第 2 報-

芳珠記念病院 看護局

きた みゆき

○北 みゆき(看護師)

【目的】第 1 報で、当院における尿道留置カテーテル(以下カテーテル)使用の現状について調査した結果、調査期間中にカテーテルを挿入していた患者の 16% が留置期間が 14 日間を超えていることが明らかとなった。カテーテルを長期間留置することは尿路感染のリスクを高め、高齢者においては廃用性萎縮をきたしカテーテル抜去を困難にすることにつながる。期間中カテーテルを使用していた全例の実態を把握し留置期間に影響を与えている要因の検討を目的とした。

【方法】2016 年 3 月 1 日~ 31 日に全病棟でカテーテルが挿入されていた入院患者 116 名のうち、入院前からカテーテルが挿入されていた 11 名を除く 105 名を対象とした。留置期間を 14 日間以内と 15 日間以上に分け、年齢、性差、疾患および治療、既往歴、入院前 ADL の状況、入院後の身体可動性の状況、カテーテルの挿入理由について相対リスク比を算出し比較検討した。

【結果】男性 48 名、女性 57 名、年齢の中央値は 77 歳、カテーテル留置期間の中央値は 5 日間、平均 27.9( ±68.9)日間だった。相対リスク比は入院前の ADL の状況で「全介助」が「自立」の 7.9 倍、「一部介助」が「自立」の 4 倍だった。また入院後の患者の状態で「寝たきり」が「寝たきり以外」の 4.3 倍、排泄援助を「要する」が「要しない」の 4.9 倍だった。カテーテル挿入理由では腰部・臀部に生じた「褥瘡」が 4.1 倍と比較的高かった。

【結論】カテーテル留置期間の長期化に影響する要因として「ADL 介助」「寝たきり状態」「排泄援助を必要としている」が考えられた。これらの要因を入院後、早期の段階からアセスメントしカテーテル抜去に向けて多職種で検討することで留置期間を短縮し尿路感染の予防、更には円滑な退院調整につながると考える。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-1-6 排泄ケア(1)下剤に頼らない排便コントロールへの取り組み

ヴィラ四日市

なかがわ いくえ

○中川 育恵(介護福祉士),前田 奈津帆,佐々木 千菜月,戸田 圭伊子,萩原 由美,福井 英広

[はじめに]当施設における入居者の多くに、嚥下障害や頻尿を理由に自ら水分を控える傾向がみられる。機能的にも運動が出来ない方が殆どであり、そうした生活習慣が慢性的な便秘を引き起こし、下剤を定期的に処方される。2・3 日では排便に至らず、臨時処方のラキソベロンで排便へ至る。その使用頻度は高く、オムツ内に留まらない水様便となり対応に追われる。入居者には苦痛が伴い、食事量のムラや情緒不安定を招く。これらの改善が出来ないか取り組んでみた。

[方法]オリゴ糖が腸内細菌の善玉菌を増殖させ便秘を改善するというのが文献にあった為、実際に投与を試みた。投与の条件として、現病歴に糖尿病がなく、アルブミンが常に 3.1 ~ 3.3 g / dlと低めで付加食を摂取、毎食のお茶を摂取される方とし、2 名をセレクトした。2 名とも 4・5 日は必ず排便がない方で、A氏は乳製品と野菜が嫌いな方であり、B氏は時折食事量のムラがみられた。方法は 150ml のお茶に 5 gのオリゴ糖を入れ、1日 3 回の投与を行った。

[結果]A氏は投与後 4 日で硬い便が少しずつ出るなど効果が表れた。B氏は 1 日量 5 gで効果はなく、8 gで硬い便が出るようになった。便の硬さの調整にA氏は 1 回量 8 g、B氏は 1 回量 10 gと増量し、3 ヶ月後には 2 名ともラキソベロンを使用せず普通便が出せるという結果となった。

[考察]A氏は乳製品と野菜が嫌いという食生活面での問題も大きいと考えられオリゴ糖の投与により腸内環境の改善がよく表れたと考える。また排泄の失敗に追われることなく『トイレで排泄が完了する』尊厳も守れた。今回

『便秘を解消しよう』という管理栄養士との共通認識が取り組みのきっかけである。同職種のみならず他職種とも共通認識を持つ事が大切であり、オリゴ糖をきっかけとし水分補給・運動の重要性にも意識を持ち、食事~排泄に対して自立に向けた尊厳のある援助に繋げたい。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-2-1 排泄ケア(2)センナ茶を使った排便改善~自然排便へ近づける取り組み~

グループホーム北淡

たかた とみひろ

○高田 富弘(介護福祉士),山口 卓也,西尾 知里,永田 美恵,沖代 仁美,鈴記 聖子,北河 宏之

[はじめに]高齢になると腹筋周りの筋力の低下により腸の働きを弱め腸の機能が衰え便が運ばれず、便秘になりやすくなります。そのため便秘時には、下剤を処方される事が多くあります。しかし下剤を使用すると下痢や便失禁による入居者様の精神的負担が大きい為、今回大腸の蠕動運動を高め便通をうながす作用のある市販のセンナ茶を入居者様に提供し自然な排便に近づける試みを発表します。

[方法]1 ユニット 9 名(女性 5 名、男性 4 名)そのうち毎日排便がなく下剤を使用することで排便がある女性 1 名、男性 1 名を対象としました。男性 1 名と女性 1 名は、朝食後と夕食後にセンナ茶 200ml を提供しました。センナ茶を提供する前と後で排便の間隔平均、下剤の使用量、便性状を調べました。

[結果]A 様女性 年齢 78 歳 要介護度 3 リハビリパンツ使用 一部介助 センナ茶を提供する前と後で、排便間隔平均 1.2 日に 1 回から 1 日に 1 回に、下剤使用量は 1 日平均 18 滴服用から 1 日平均 3 滴服用に、便性状は普通便が 8%、軟便が 32%、下痢便が 60% から普通便が 50%、軟便が43%、下痢便が 6% になりました。B 様男性 年齢 87 歳 要介護度 1 一般下着使用 独歩センナ茶を提供する前と後で、排便間隔平均 1 日に 1 回から 0.73 日に 1 回に、下剤使用量は 1 日平均 16 滴服用から 1 日平均 1 滴服用に、便性状は普通便が 17%、軟便が 40%、下痢便が 43% から普通便が 22%、軟便が46%、下痢便が 32% になりました。

[考察]A 様は、すべての項目の改善が見られますが、B 様は、便性状の改善はあまりみられませんでしたが下剤を使用することはほぼなくなりました。B 様の場合、昼間は 2 回、夜間は 1 回、排便があった場合センナ茶を中止して調節を行い普通便の割合を増やしていく対応をしています。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-2-2 排泄ケア(2)トイレでの排泄介助への取り組み ~ 109 歳からのメッセージ~

介護老人保健施設 ケアホーム山口

やまさき みほこ

○山﨑 美帆子(介護福祉士),黒田 健吾,森近 なおみ,五十崎 朋子,寺本 かおる,岩田 淳,西冨 賢一,美野 眞悟

[はじめに]当施設では、終日オムツ使用で入所された方でも、トイレ排泄の可能性を検討している。平成 27 年 9 月頃、当時 108 歳の I 氏 ( 女性 ) から、聞き取り不明の発語が多くみられた。よく傾聴すると、「おしっこ」と聞き取れ、職員からも「I 氏がトイレに行きたがっています。」と報告があった。そこで、トイレ介助の可能性を検討したのでここに報告する。

[方法]実施内容:① I 氏のトイレ排泄介助方法の検討・実施 ②職員の意識改革 対象:全職員 実施期間:平成 27 年 9 月 24 日~平成 28 年 3 月 2 日

[結果]検討の際に「立位が不安定なので介助が不安」「高齢ではあるしリスクを負ってまで行く必要があるのか?」「職員の自己満足にすぎないのでは?」等さまざまな意見があがった。また実際に実施していく中で、I氏が肩関節の痛みを訴るなどのリスクもあった。可能な排泄介助方法を検討しリハビリ部門の協力を得て、I 氏の介助方法を決定した。

[考察]リスクを最小限にする介助を検討しスタッフへの指導を行うことで、どの職員にも納得のいく安全な排泄介助が可能となった。また、職員間で検討・実施を行い共通認識を深めることで、意識改革へ繋がった。以前は、I氏が何か訴えていても職員が理解することができなかったが、今では本人のトイレのサインを把握できるようになった。I氏も「わかったもらえる」という安心感からか、調子の良い時の発語が多くなり、排泄後に「ありがとう」と笑顔が見られるようになった。I 氏は平成 28 年 1 月で 109 歳となり現在もトイレでの排泄介助が継続できている。今後も積極的に排泄行動の再確認を行い、他入所者にも満足のいく介護ができるよう取り組みたい。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-2-3 排泄ケア(2)水分摂取と運動による QOL の向上

福井リハビリテーション病院 看護科

かわしま としえ

○川島 利恵(介護福祉士),三上 摩実

【はじめに】患者に対して水分摂取を促し、 簡単な運動を実施したことで、ADL の改善が見られたのでこれを報告する。【目的】1、介護職員の水分摂取への意識づけをする。 2、患者の生活リズムを整える(睡眠の向上と日中の覚醒)。【方法】水分摂取の制限のない患者に対し、100ml 単位で目盛りをつけた配茶用タッパーを 10 時 15 時に配茶し、回収したタッパーから飲んだ量をノートに記録し、水分摂取を促した。また、対象者女性 3 名については、夕方 5 ~ 10 分程度の立位や歩行練習を行い、運動量を増やした。【結果】男性 1 名はお茶を意識的に飲まれるようになり介護度も5から3へ変更。オムツから紙パンツとなりトイレでの排泄となる。女性 A さんは自ら全量摂取される。食事後トイレ誘導を行い排便見られるようになる。夜間は傾眠から熟睡となる。女性 B さんは勧めても半分程度の飲茶であったが、歩行練習をすることで夜間不眠を解消できた。女性 C さんは排便があると不快を感じて不潔行為をする方であったが、坐薬使用せずにトイレで排泄できたことも時々あった。歩行練習を行うことにより睡眠時間は長くなった。【まとめ】高齢者は脱水症になりやすいという知識はあっても積極的に飲茶を促すことまではしていなかった。今回の取り組みにより患者はトイレでの排泄が可能となり、QOLが向上した。この成功体験を通し、職員は水分摂取の重要性への意識づけができ、根拠に基づいてケアする事の大事さを実感できた。また、今回一部の対象者に対し、夕方軽く運動を行うことで睡眠の時間を増やすことができより職員のモチベーションアップにもつながった。【おわりに】水分摂取を行い排泄につなげることにより、患者が改善していく様子を見ることで職員のやりがいにもつながった。今後も一つひとつの業務に根拠を見つけてやりがいのある介護を行うことが介護の質の向上につなげることができると考える。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-2-4 排泄ケア(2)排便表から見えてきた排泄パターンへの介入 ~ブリストル便性状スケールを使用して~

おおやま病院 看護科

やまね せつこ

○山根 摂子(介護福祉士),林 千鶴,前田 唯,若林 佑圭,窪喜 昌恵

【はじめに】 私たち介護職にとって、排泄ケアは自信を持って関わるべき日常介護である。これまではオムツ交換=排泄ケアと捉えて排便の有無・回数ばかりを重視していたが便の性状にも注目し、排便パターンを把握することで患者それぞれに合った排泄に導くことができないかと考えた。 便の性状・時間・量の指標統一を図り排便表を見直した。その結果、より良い個別介護に繋がったことを報告する。

【研究方法】対象:医療病棟48床 介護職員12名期間:H 27.10 月~H 27.12月(3ヶ月間)方法:ブリストル便性状スケールを用いた排便表を活用し、患者の排泄パーターンを把握することで個 々に応じた排泄介助を行い、実施後にアンケート調査を行った。

【結果】 具体的な事例としては、「下剤与薬に対して個々に応じた時間に排便確認を実施することができた」

「座薬で排便を促している患者の排便パターンを知ることでトイレ誘導を行い自然排便につなぐことができた」などが挙げられた。 アンケートで、職員全員が「便の性状」「性状が患者へ及ぼす影響」を意識するようになったと回答した。また、排便表から今までの画一的な介護から患者に応じた介護へと変化したなどといった意見も多くみられた。 自由記述において、「患者個人の排泄について詳しく知りたいと思うようになった」「トイレでの排泄が可能な患者は、皮膚トラブルを防ぐためにもできる限りトイレ誘導したい」などがあった。

「ブリストル便性状スケールの判断が難しい」という記載もあった。

【考察】 新しい排便表を活用していくうちに個別介護に繋がり、それによって自身の排泄ケアの見直しとなった。タイミング良くトイレでの自然排便を促すことで患者から笑顔を引き出すことができ、介護職員の意欲も向上した。 下剤に対する反応便の性状について何か問題を感じたら、介護職員のみならず看護職とも考えを共有できるように連携を取っていきたい。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-2-5 排泄ケア(2)さようならオムツくん!ありがとうパンツくん! ~海の見えるお家に帰ろう~

呉記念病院

はまだ まさこ

○浜田 昌子(介護福祉士),水口 章代

はじめに)「排泄での自信が明るい表情を作る」と、言われている。当院でも、オムツを使用している患者様は少なくない。今回、下着の評価や環境の調整をすることで、オムツからポータブルトイレで排泄自立となりその結果、退院先が施設から自宅へと変わった事例を報告する。

(事例紹介)A 氏 80 代男性 入院期間 96 日診断名:脳出血後遺症、心不全、認知症症状:右片麻痺、失語症家族の希望:排泄などの介助が必要であれば施設入所を希望入院時の排泄状況:オムツ使用 

(経過)入院時、失語症がありコミュニケーションがとれず、1 日中ベッド上にて脱衣による失禁を繰り返していた。車椅子の移乗が可能になり 2 週間が過ぎた頃、突然スタッフの顔を見て「シッコ!」と訴えがあった。尿意がある事に気づき脱衣はトイレに行きたいという欲求かも知れないと思った。試しにトイレに行くとそこで排泄が出来、トイレ誘導を開始した。認知症による混乱を避ける為に 1 日中ポータブルトイレ介助となった。排泄動作獲得の為、紙パンツに変更し排泄動作はスムーズになったが間に合わず失敗はあった。そこで穿き慣れた本人の布パンツに変更した。失敗は週 1 回未満になりポータブルトイレ自立となる。コミュニケーションもゆっくりだがとれるようになった。退院日は家族の車で自宅に帰られた。

(まとめ) 本人の希望に沿った介助を行いたいと思いトイレ誘導を行った。リハビリで動作がスムーズになり尿便意も戻り、オムツから布パンツになり自立して排泄が行えるまでになった。排泄動作の向上に伴い黙ったまま 1 日中ベッド上で過ごしていたA氏が、退院前にはカラオケが歌えるまでになった。排泄介助は生活の中で本人の自尊心に関わる大切な介助であり、排泄動作の獲得がその人の生活の質(QOL)の向上に繋がることを実感した。排泄介助に於いて患者様の自尊心について配慮できているか改めて考えるようになった。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-3-1 排泄ケア(3)寝たきり患者における便秘への援助~アロマトリートメントの効果~

原三信病院 香椎原病院 看護部

ほんだ きよみ

○本田 清美(看護師),赤澤 由佳,吉田 恭子

【はじめに】 A 病棟では排便処置として坐薬、下剤を用いる患者がほとんどである。そこで、自然排便を促し便秘症を改善することはできないかと考えた。先行研究では腹部アロマトリートメントが便秘改善に有効であることが報告されているが、寝たきりの患者を対象にした研究は少ない。今回、寝たきり患者に腹部アロマトリートメントを取り入れ、排便処置を行うことなく排便ができるかを明らかにしたためここに報告する。

【研究方法】対象:排便処置を使用している寝たきり患者 12 名研究期間:H28 年 1 月 4 日~ 3 月 27 日就寝前 5 分間腹部アロマトリートメント施行。実施前・中・後の排便回数、便の硬さ、排便処置回数を各 4 週間データ収集する。倫理的配慮:本研究は、A 病院倫理委員会の承認を得て実施した。

【結果】「排便回数」「便の硬さ」「排便処置回数」について、一元配置分散分析を行い、実施前・中・後を比較した結果、全て有意差は見られなかった。各個人の結果を分析した結果、明らかに排便回数の増加・排便処置回数の減少がみられた一群がいた。そのため、対象者を「排便回数増群」5 名と「不変群」7 名に分け比較したところ、年齢が比較的若い傾向にあった。

【考察】対象者全員でみた結果、排便回数の増加、排便処置回数の減少には至らなかったが、比較的年齢が若い患者に効果が出やすいことが示唆された。排便処置を完全になくすことは出来なかったが、便の観察・アセスメントとアロマトリートメントを行うことで、わずかながら排便処置回数の減少につながった。今回、手技において約 20 名のスタッフで実施を行ったため個人差が生じ、同じ条件下で手技の提供ができたとは言い難い。実施期間が 1 ~ 3 月であり感染症の流行時期であったため対象者の体調不良が研究結果に影響した可能性が考えられる。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-3-2 排泄ケア(3)ビフィズス菌末を使用した排便コントロールを調査して

セントラル病院 看護科

くろかわ みわ

○黒川 美和(看護師),川野 加代子

【はじめに】排便させることを目的とした腸刺激性下剤や浣腸の乱用は、患者への負担や苦痛も大きい。近年、便秘改善には、腸内フローラのバランスを改善することが大切と言われている。そのバランスを改善するには

「プロバイオティクス」( 乳酸菌やビフィズス菌を直接体内に取り入れる事 ) が重要な働きをしている。今回、ビフィズス菌末を服用し、その効果を検証したので報告する。

【方法】下剤・浣腸により排便コントロールを行っている、経管栄養患者2名、経口摂取患者2名に、1ヵ月間ビフィズス菌末 BB536 を毎日服用し、服用前後での排便状況、下剤・浣腸使用量の変化を比較する。

【結果】A氏(経管):開始から2週間頃から、水様~泥状便が1日2回でるようになったため、ピコスルファートを減量し、泥状便が1日1回出る状態となった。B氏(経管):開始から1週間頃から、泥状便が水様便へと変化したため、ピコスルファートを減量した。5滴に減量した時点で排便がなかったため、グリセリン浣腸を使用した。C氏(経口):開始 10 日間はグリセリン浣腸を使用。1週間の外泊あり。外泊前は普通便~やや軟らかい便が、外泊後は、やや軟らかい便~泥状便へ変化。グリセリン浣腸は2回使用と変化なし。D氏(経口):開始前、グリセリン浣腸3回が開始後6回と使用量増。1泊の外泊が2回あった。

【考察】経管栄養の2名は、開始から2週間程で、下剤の量に変化がでてきており、効果があったと考える。経口摂取の2名は、食事や水分摂取量が一定ではないこと、外泊で生活のリズムが変わったことなどで、はっきりした結果に結びつかなかったと考える。短期間でも経管栄養患者には、もビフィズス菌末の摂取は、排便コントロールするうえで、有用な方法の1つであるということが確認できた。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-3-3 排泄ケア(3)複雑性尿路感染症患者に対する自己導尿の再指導自尊心を損なうことなく援助するために

泉佐野優人会病院

つじ まさのり

○辻 正則(准看護師),南 奈保美,木原 佳子,加藤 寛

[はじめに]複雑性尿路感染症は、尿路経路に菌が潜在し再発を起こしやすいため患者自身が病態や清潔操作に対する理解を深める事が重要である。。今回、脳梗塞後も独居で過ごし、前立腺肥大、神経因性膀胱のため自己導尿を実施していたが、清潔操作の不十分から敗血症で倒れた男性に、セルフケアを再指導し退院援助することができたので報告する。

[方法]手技での問題部分を否定せず尿検査の客観的データをもとに理解を深めてもらう。導尿時間は本人の意向を尊重しながら、尿量に応じての導尿回数を施行。病棟全体で情報を共有し、出来た事上達した事には褒めて励まし皆で支えていることを示す。導尿に関する対応を同性の担当看護師に固定。

[結果]検査結果は一時悪化したがデータを示すとスタッフの意見を聞き入れるようになった。膀胱に溜まる尿量を 300cc までに抑えたいと説明し、1 日 4 ~ 5 回の導尿を勧めたが、頑なに拒否された。1 日 3 回の導尿を続けこれまでの生活リズムに合わせることで精神的な安定を優先した。スタッフの環境作りから意欲を引き出し前向きに取り組むことができた。同性のスタッフを担当にすることで、羞恥心の軽減を図ることができた。

[考察]再指導は変化する ADL を患者自身が正しく把握し QOL を維持するために必要な機会である。患者の個別の状況に配慮して患者が安心してセルフケアを継続できる体制を整える必要がある。導尿の再指導を受け入れてもらうために同性の担当スタッフを中心に羞恥心や自尊感情に配慮し、生活の延長線上で違和感なく手技を改善できるようにしたことで自発性を引き出すことができた。高齢であり、疲労感に配慮し、退院後も完全なセルフケアだけでなく医療のサポートを加える提案も出来たのではないかと考える。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-3-4 排泄ケア(3)尿道留置カテーテル使用の現状調査を実施して

1 芳珠記念病院 医療安全リスク管理室,2 芳珠記念病院 看護局

ふじもと よしこ

○藤本 淑子(看護師)1,北 みゆき 2

目的 不要な尿道カテーテル留置や長期間尿道カテーテル留置は、カテーテル関連尿路感染(以下 CAUTI)の原因となる。当院は日本病院会 QI プロジェクトの平均尿道留置カテーテル(以下カテーテル)の使用率に比べて高くはないが、長期留置患者が少ないとは言えない。CAUTI サーベイランスが未実施であることから、適切なサーベイランス開始を目的に全病棟のカテーテル留置状況調査し分析してみた。方法 1調査期間:2016 年 3 月 1 日~ 3 月 31 日 2 対象:全病棟入院患者 3調査方法:①全病棟入院延べ患者数・カテーテル使用日・感染件数を調査し感染率とカテーテル使用比を算出 全病棟から療養棟を除いた病棟について、NHSN の感染率・カテーテル使用比と比較②全病棟のカテーテル使用状況調査 挿入期間・挿入目的・科別留置期間をまとめてみた。結果 ①一般病棟・HCU 共に NHSN と比較し使用比は低いが、感染率は一般病棟では 50%ile 値を超えた。これは使用比が非常に低いことが関与したと推測②療養棟を含めた全病棟の分析では 66%が挿入 1 週間以内で抜去されており、その目的の殆どが周術期管理であった。2 週間以上の留置は全体の 16%で、中には 1 年以上の患者も存在し留置に至った経過が不明確であった。科別平均留置期間では外科・婦人科 3.2 日 整形 6.5 日 循環呼吸器脳血管疾患 9.9 日であった。結論 当院におけるカテーテル留置患者の 2/3 は 1 週間内に抜去されており妥当な期間と考えられる。しかし、循環器・呼吸器・脳血管患者は安静や尿側が必要な場合が多く周術期と比較すると長くなる傾向にある。今後は、当院における留置日数に影響する要因をより明確にし、抜去に関する標準指標を設けることで、留置期間短縮化を図り、CAUTI 防止・患者 QOL 向上に繋げたい。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-3-5 排泄ケア(3)車椅子生活でのバルンカテーテルトラブルを回避するために~バルンバックの作成に伴うスタッフの意識統一を図る~

特別養護老人ホーム淀川暖気の苑

やぎ みさ

○八木 美佐(看護師),槁本 恵,弘津 弥生,吉川 哲也,雁木 宏行,横井 美和,向井 順之輔

[はじめに]当施設に入所されている利用者様 106 名のうち膀胱留置カテーテルを挿入しながら生活をされている方は 4 名いる。畜尿バックは膀胱よりも下に設置し逆流を防止し強い力が加わる事で抜去してしまわないように扱う管理上の問題がある。これらの事から安全を配慮した畜尿バックを作成し職員がバルントラブルを意識した取り扱い」が出来る事を目的として実施する事にした。

[方法]畜尿バックと車椅子を計測して床に当たらず、バルンチューブを車椅子車輪等に当たる事がないようにバックを作成した。バックの素材は耐久性があり、汚れが落ちやすいナイロン製とした。移乗時等の使用感想をフロアスタッフへ確認しバックの設置場所を検討した。

[結果]設置場所を車椅子の座面とフットレストの間としたことで、バルンチューブを車椅子の車輪で巻き込んだり、強い力が加わる事が少なくなりバルンチューブの破損や抜去の危険を回避する事が可能となった。バック自体が足元にあり、バックが隠れることになったことで留置バルンカテーテルを使用していると見えず、利用者様が羞恥心を感じることが軽減できるという状況も発見できた。

[考察]留置バルンカテーテルの管理に関しては、医療的知識が必要である。なぜ尿が逆流してはいけないのか、なぜ強く力を加えてはならないのか。そのことをふまえた上で留置バルンカテーテルバックの設置場所を介護スタッフと共に検討、考察することでバルン管理についての理解をお互いに深めることができたと考える。介護スタッフが理解することにより利用者様の生活の安全、安心を提供できるものだと思われる。今後の施設利用者様の ADL を考えるに留置バルンカテーテル使用者が増えると考えられる為定期的にバルンカテーテルの取り扱いについての勉強会などを行いスタッフとの共通意識を持ち、バルントラブルを回避し安全、安心な施設生活を提供出来ればと思う。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-3-6 排泄ケア(3)FD 治療剤「アコファイド」は慢性期病棟における尿閉患者の経尿道カテーテル抜去への福音となる

1 堺温心会病院 泌尿器科,2 近畿大学医学部附属病院 泌尿器科,3 耳原総合病院 泌尿器科

あきやま たかひろ

○秋山 隆弘(医師)1,杉本 公一 2,清水 信貴 2,松村 直紀 3,秋山 幸太朗 1

背景:慢性期病棟入院患者の多くは、神経因性膀胱(前立腺肥大症合併含む)による多量残尿や慢性尿閉と溢流性尿失禁のため失禁パンツで管理され、一部症例は経尿道カテーテルを留置され、難治性尿路感染症は必発で時に腎機能障害を併発する。その改善のためにαブロッカーやコリン作動薬(ChE Inhibitor)ウブレチドが用いられるが、満足すべき改善効果は得られないのが実情である。目的:FD 治療剤 acotiamide hydrochloride hydrate( アコファイド ) は、消化管の蠕動促進作用を有する ChE Inhibitor として上梓された。本剤は消化管平滑筋より膀胱平滑筋への親和性と組織内濃度が高いという動物実験データに我々は注目し、アコファイドの排尿機能改善効果を検討した。対象・方法:①ウブレチド 5mg/day 投与中の神経因性膀胱症例 19 例を対象に、アコファイド 300mg/day に切り替えて残尿の推移を見た。②同様症例 26 例に対し、アコファイド同量を add on して残尿の推移を見た。③神経因性膀胱(前立腺肥大症合併含む)による慢性尿閉で経尿道カテーテル留置中で、αブロッカー・ウブレチド投与でカテーテル抜去をなし得なかった 12 例に対し、αブロッカー・ウブレチド・アコファイド 3 剤投与でのカテーテル抜去を試みた。結果:①残尿量は 161.4 ± 90.0ml から 116.3 ± 63.1ml に減少した(P 0.006)。②残尿量は 184 ± 87ml から 85± 51ml に著減した(P<0.05)。③全例でカテーテル抜去に成功し、抜去後の残尿量 87.1ml、残尿率 30.4% であった。後日カテーテル再留置を要したのは1例のみだった。結語:アコファイドの膀胱平滑筋収縮作用はウブレチドを上回り、併用が推奨されることも判明し、慢性期病棟から経尿道留置カテーテルを追放するための福音となることが期待される。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-3-7 排泄ケア(3)

「お知らせ機能付き自動排尿記録装置」の実使用試験から ~医療療養病棟と認知症治療病棟での使用~

1 北九州古賀病院 看護部,2 北九州古賀病院 内科,3 北九州八幡東病院 看護部,4 花王株式会社 パーソナルヘルスケア研究所

すえいし かずひろ

○居石 和弘(看護師)1,中野 明子 1,永沼 眞由美 1,北川 光恵 1,武田 成彰 2,志方 弘子 3,大橋 一男 4,御所脇 秀子 4,仁木 佳文 4

【はじめに】おむつ着用者の自立支援と皮膚かぶれや褥瘡、尿路感染などを避けるために大切なおむつはずしの取り組みには、(1) 膀胱機能、(2) 尿意伝達能力、(3)ADL 能力の判定が必要である。(1) の判定のため当院では 24 時間排尿記録管理表を用いた 1 時間毎のおむつ排尿チェックを行ってきたが、①患者は 1 時間毎におむつをチェックされることに不安やストレスがあり、睡眠が妨げられ、②スタッフは 1 時間毎の労力と時間に追われる精神的負担という課題があった。排尿時にナースコールが知らせてくれる花王㈱開発「お知らせ機能付き自動排尿記録装置」を用いることで①②の課題をほぼ解消できることを介護療養病棟で検証し前回報告した。今回、本装置が医療療養病棟と認知症治療病棟でも有用であることがわかった。

【対象・期間・方法】対象者:入院患者 20 名、期間:H28 年 4-6 月、方法:1 日 24 時間センサー付き尿とりパッドを使用し、排尿量 200g 以上でナースコールが鳴るように設定。コールが鳴った時におむつ交換を行い、天秤で計測したパッド内排尿量とゆりりんで計測した残尿量を記録する。センサー付き尿とりパッドに接続した計測器の排尿情報はタブレット PC に無線で送信。タブレット PC は医療療養病棟では患者病室のベッド近傍に設置し、認知症治療病棟では詰所に設置した。取り組み終了毎に病棟スタッフにアンケートを施行した。

【結果・考察】スタッフから、患者が夜間穏やかに休んでいる、スタッフはチェックの時刻を気にしなくてもよい、患者一人ひとりに合った排尿ケアを考えやすくなりおむつはずしへのモチベーションが上がったとの意見が聞かれた。医療療養病棟と認知症治療病棟でも本装置により膀胱機能評価判定に活用できる排尿回数・総排尿量・平均排尿量の計測が可能であることがわかった。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-4-1 排泄ケア(4)介護療養型医療施設におけるコンチネンスケアの取り組みと作業療法士の関わり ~トイレでの排泄を目指して~

1 大久野病院 リハビリテーション部,2 大久野病院 看護部

きしの よしあき

○木住野 善章(作業療法士)1,岸下 結花 2,藤原 さとみ 2,稗田 孝子 2,川久保 翼 2,中野 善喜 2,栗原 心 2,大西 祐子 2

【はじめに】  当院の介護療養型医療施設ではコンチネンスケアとして看護師、介護士、作業療法士が連携してトイレでの排泄を目指す取り組みを行っている。作業療法士は日常生活動作の評価、認知・高次脳機能評価、環境調整の面から介入し他職種と連携して一定の成果が得られたため以下に報告する。

【対象者】 コンチネンスケアカンファレンス(以下、カンファレンス)においてトイレ誘導可能と判断された 2 名を対象とした。  A 氏:70 歳代男性 両下肢切断 糖尿病  B 氏:70 歳代女性 脳出血後遺症 左片麻痺 【介入方法】  看護師 3 名、介護士 4 名、作業療法士 1 名によるカンファレンスを実施。初回カンファレンスにて作業療法評価をもとに他職種と情報交換後、トイレ誘導の対象者を決める。トイレ誘導は看護師、介護士、作業療法士が共同で実施。各職種で排泄状況、介助量、排泄環境を確認。定期的にカンファレンス開催して問題点、進行状況の情報共有を行った。 【結果】  A 氏は肘掛け着脱可能なポータブルトイレなら誘導可能と判断。介入当初は排便がなかったが、介入 1 週間後に排便がみられその後、ポータブルトイレでの排便が定着した。  B 氏はオムツに依存的でありトイレでの排泄を拒否。尿便意の有無と本人の意思を確認しながらトイレ誘導する。トイレで排泄みられた際に「出来てよかった。」と発言。その後、自ら尿便意を訴えるようになりトイレでの排泄が定着した。

【考察】  今回、他職種がカンファレンスでの情報共有をもとに連携して積極的にトイレ誘導を行ったことで症例が排泄の成功体験を積むことができ、トイレでの排泄が定着、より適切なコンチネンスケアに繋がった。他職種共同の中で作業療法士による作業療法評価に基づいた介助方法の提案、福祉用具や環境調整等の介入がトイレ誘導を継続して行う上で一役となったと考える。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-4-2 排泄ケア(4)骨盤底筋挙上率と腹圧性尿失禁の関連性

多摩川病院

ふじい しなの

○藤井 信濃(理学療法士)

[はじめに]20 歳以上の米国地域在住女性における尿失禁罹患率は 25%であり、失禁の割合としては腹圧性尿失禁が全体の約 50%を占める。2013 年に発表された女性下部尿路症状診療ガイドラインでは腹圧性尿失禁に対する理学療法として、骨盤底筋トレーニングが推奨グレード A とされており、重要性が示唆されている。本研究では、腹圧性尿失禁経験者と未経験者における骨盤底筋の随意的な収縮力に有意差があるのかを検証したので以下に報告する。

[方法]健常女性を対象としたアンケート調査にて尿失禁ありと回答した 6 名、失禁なしと回答した 15 名に対して行った。超音波診断システムを用いてプローブ下縁を恥骨部に触れるようにし、プローブの中心と恥骨結合が直線で結べる位置にて 60°傾けた状態で行った。骨盤内膜から、左右両端の骨盤と膀胱との境界を結ぶ線までの高さを収縮前後で測定し、挙上の割合を算出した。被検者の肢位は背臥位、膝屈曲位とした。分析には対応のないt検定を用い、有意水準は 5%に設定した。ヘルシンキ宣言に基づき対象者に説明し同意を得た。

[結果]失禁経験者の平均値は 1.66%± 0.98、失禁未経験者は 3.28%± 4.49 であり、失禁未経験者の方が高値であったが有意差はなかった。また失禁未経験者では挙上割合の個人差が示された。

[考察]骨盤底筋の挙上率に有意差が出なかったことから、尿自制に必要な要素として、骨盤底筋単独での随意的な収縮の強さは関連性が弱いと考えられる。体幹深層筋は協調して働くことから、重力下でインナーユニットが持続的に収縮した状態で、急激に腹圧がかかった際に瞬発的に収縮ができるかが日常生活において重要となると考える。また、骨盤底筋は体幹の深層にあり、収縮が自覚しづらい。そのため、口頭指示での収縮感覚の理解が困難であり、体幹表層筋が優位に働いた結果、失禁なし群での個人差が表れたのではないかと考える。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-4-3 排泄ケア(4)認知症患者に対する排尿管理へのアプローチ~大腿部装着型簡易ハルンパックを導入した一症例~

印西総合病院

ほり あさみ

○堀 安紗美(理学療法士),葛西 真也,佐藤 翔

[はじめに]排泄は生命維持機構にとって非常に重要であり、その障害はリハビリテーションの阻害因子となるだけでなく、身体的にも精神的にも悪影響を与え、生活をする上で直接的な QOL 低下に繋がることが示唆される。今回、認知症患者に対する排尿管理へのアプローチとして大腿部装着型簡易ハルンパックを導入し、排尿動作を含むADL が向上した症例について報告する。

【基本情報】80 代男性、尿路感染症、腎盂腎炎、前立腺肥大による尿閉によりバルーン留置となった。既往歴に脳梗塞があり、失語症と認知症を呈している。症状としては、喚語困難、全般性注意低下を認める。入院時FIM:82/126、BBS:46/56、退院時 FIM:90/126、BBS:54/56。病棟内動作は監視~修正自立にて可。

[方法]入院初期より、動作時のハルンパックの持ち忘れや、ハルンパックを床面に置いてしまう動作が多く見受けられていたため、大腿部装着型の簡易の導入を実施した。リハビリテーションでは、環境設定へのアプローチ、トイレ動作訓練を中心に排尿動作機能向上に努めた。

[結果]トイレ動作訓練での排尿に対する意識の向上や生活動作の中での時間帯破棄など、排泄時の自己管理能力は大きな向上を認めた。また排泄動作能力向上に伴い、導入後は病棟内での活動場面が多く見受けられ、FIM での排泄動作、歩行項目においても向上を認めた。

[考察]大腿部装着型簡易的ハルンの特徴として、通常のハルンパックより容量が少ないことでハルンパックへ目が向きやすいこと、また破棄方法が簡易的なことから、症例自身も受け入れやすく、成功体験が実用性に繋がったと考える。バルーン留置の定義として、早期抜去での自尿訓練の必要性が多く示唆されている。だが症例のパーソナリティーや生活場面、リズム、背景を考慮し、症例自身に合わせた環境を提供することが重要である。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-4-4 排泄ケア(4)当院入院患者の便秘症に対する排便訓練の効果~排便回数、QOL に着目して~

西宮回生病院

のはら ようへい

○野原 洋平(理学療法士),久保 佐知子,仲井 祐衣,野中 敦子,大脇 毅,畑中 仁志,井上 馨

[はじめに]高齢者では、長期臥床による腸管蠕動運動や腹圧の低下、心理・感情的変化により慢性便秘になりやすく、便秘が生じた時には肉体的苦痛だけではなく、精神・社会的にも著しく障害が起こる。そこで便秘症状を有する患者に、短期間での症状軽減、QOL の向上を目的として排便訓練を実施し、その効果判定を行った。本研究は当院の倫理規定に則り、十分に内容を説明し、同意を得て実施した。

[方法]対象者は当院入院患者のうち、便秘症状を呈し、座位・腹圧トレーニングが可能な 22 名とした。評価方法は日本語版便秘尺度(CAS)、Gastrointestinal Symptoms Rating Scale(GSRS)による QOL 評価、排便回数とした。排便訓練は毎日午前中に腹部マッサージ、腹筋運動を自動または他動的に実施し、2 週間後に効果判定を行った。判定方法はウィルコクソン検定(p < 0.05)を使用した。(R2.8.1 使用 )

[結果]CAS では効果量は中等度、p=0.02 で有意差があり、中央値は 4.5 点から 4 点へと便秘症状が軽減した。GSRSでは効果量は中等度、p=0.13 で有意差はなかったが、中央値は 17 点から 12 点へと QOL の向上が認められた。排便回数では、ほとんど効果がなく、p=0.82 で有意差は無かった。

[考察]結果として、短期間でも排便訓練を行うことで便秘症状改善され、QOL 向上となった。有意差が出なかった原因として、先行研究より、短時間の運動よりも日中の活動性向上が一般的に便秘に有功とされている。その為、排便訓練も行い、日中の活動性向上に対してもアプローチする必要があったと考えられる。今後、更なる効果を期待するには、継続した治療や骨盤底筋群へのアプローチ、食事面や生活環境、精神面のサポートの検討も必要と考えられ、多職種との関わりも必要であり、今後も検討していきたい。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-4-5 排泄ケア(4)トイレ動作の介助場面と所要時間に関する意識調査

1 浜寺中央病院,2 平成リハビリテーション専門学校

まつむら りゅうせい

○松村 竜誠(理学療法士)1,中村 建介 2,阪本 峰 2,新島 剛 2,川口 全美 2,畑中 良太 2,武久 洋三 1

【目的】排泄は健常人の ADL の価値観として、重視度が高いと研究されている。我々の研究の結果ではトイレ動作自立者に比べ、介助を要する者は下衣を上げる動作、下衣を下げる動作に有意に介助が必要であり、尿意に問題があった。所要時間では下衣を上げる動作時間、清拭時間、排尿時間は有意に時間を要しているという結果が得られている。そこで、トイレ動作の介助場面と所要時間について、リハビリテーションスタッフの認識を調査した。

【方法】病院または施設で従事するリハビリテーションスタッフ 200 名(職種:理学療法士 147 名、作業療法士 33 名、言語聴覚士 19 名、未記入 1 名、男女比:2:1、年齢:30.7 歳± 6.1、経験年数:4.7 年目± 3.6)に対し、アンケート調査を行った。アンケートへの回答は研究の同意とした。トイレ動作を細分化し、介助が必要なことが多いと考える場面の順位付けと時間を要すると考える場面の順位付けを行った。

【結果】介助場面では下衣を上げる動作、下衣を下げる動作は順位付けが高く、認識が高い結果が得られた。尿意の訴えに関しては着目する順位が低かった。所要時間では下衣を上げる時間の順位付けが高く、認識が高い結果が得られた。清拭動作時間は順位にばらつきがあり、排尿時間は順位付けが低かった。日常業務の中で、排泄について意識しているかの問いでは 59.6%が十分意識していると回答した。

【考察】下衣を上げる動作は介助場面・所要時間ともに認識が高い結果となったが、尿意の訴え・排尿時間は順位付けが低く、認識が低い結果となった。トイレ動作訓練に当てられている時間が少ないとの研究や、膀胱訓練時間を増やすことで、排泄のみならずADL全般の向上が図れたとの研究もある。尿意の訴えや排尿時間に意識して、トイレ動作訓練を進める必要があると考える。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-4-6 排泄ケア(4)患者様とふれあう時間を作ろう。~患者様と職員が笑顔で過ごすために~

本山リハビリテーション病院 4 階病棟

ひぐち まゆみ

○樋口 真弓(看護助手),菅本 佳代,上山 優理,中島 綾子

【はじめに】当病棟は、重度肢体不自由者、重度意識障害者、神経難病患者様の医療・看護・リハビリを行う病棟であり、寝たきりの方やトイレでの排泄が困難な患者様が多く、ほとんどの方がオムツを利用されている。私達は日々患者様とふれあいたいと考えているが、時間がとれないのが現状である。そこでオムツ業務を見直し、患者様とふれあう時間を作りたいと思い取り組んだ結果を報告する。

【方法】1 日に ( 日勤帯 8 時間 ) かかったオムツ業務時間を計測した。1 日の 45%をオムツ業務で費やしている現状がわかり、ふれあう時間をつくるため業務の見直しを行った。

【対策】①患者様に合ったオムツのサイズ・質の見直し。②オムツの種類の一覧表の活用と一覧表の保管場所の統一。③オムツに関しての勉強会の開催。④オムツの片付け方法の見直し。

【考察・まとめ】オムツ業務の見直しを行ったことで、肉体的負担が軽減した。更に、患者様とふれあう事で精神的な負担の軽減、信頼関係に繋がると考えられる。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-5-1 排泄ケア(5)排泄委員会の役割

出水郡医師会立第二病院 看護部

やまぐち さちえ

○山口 幸恵(看護師),堀口 真美子

Ⅰ . はじめに 排泄は生命維持に不可欠である。適切な排泄を促しサポートする排泄ケアは、患者の生命維持とともに個人の尊厳を守るためにも重要である。療養病床では排泄を自律的に行える患者が少なく、排泄ケアの必要性を痛感し排泄委員会を立ち上げた。これまでの排泄委員会の活動を振り返り、今後の課題を検討した。

Ⅱ . 対象 ・ 検討事項【対象】 排泄ケア導入前より勤務している職員 38 名

【検討事項】 ① 排泄委員会の立ち上げの経緯と取り組み内容の検討 ② 排泄委員会立ち上げ直後と 5 年後の職員アンケート調査の比較 ・ 検討

Ⅲ . 結果 ① 当院は入院患者の 98%がオムツを使用されている。5 年前は下剤で排便を促し水様便が出ても疑問視しないなどの状況で 1 日に 5 ~ 7 回のオムツ交換を実施していた。当院での排泄ケアに疑問を感じ平成 22 年に排泄委員会を立ち上げた。オムツの統一化を図りオムツ交換を 2 回に削減、便の性状の観察にブリストルスケールを導入、困難事例を多職種で検討するなど排泄ケアの充実を図ってきた。 ② 排泄委員会立ち上げ直後の職員アンケート調査では、排泄ケアを考える機会となった、オムツ交換の回数が削減されたことでケア全体に余裕ができた、スタッフの負担が軽減したなどの意見が聞かれた。5 年後のアンケート調査では、意識が薄れてきている、看護計画へ反映されていない、看護計画評価の際に排泄ケアの評価も行うべきなどの意見がみられた。アンケートの結果では個別ケアを進められるようになったとの項目が57%→ 63%、ケアの時間に余裕ができたかの項目が 49%→ 55%だった。

Ⅳ . 考察 排泄委員会を立ち上げたことで、排便コントロールや便の性状の観察など排泄に対する意識が変化し個別ケアが実施できるようになってきた。今後の課題は、自律性を促す個別ケアへの取り組みである。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-5-2 排泄ケア(5)当介護病棟におけるコンチネンスケアの取り組み~尊厳ある日常生活の提供を目指して~

1 大久野病院 看護科,2 大久野病院

ふじわら さとみ

○藤原 さとみ(看護師)1,林 文月 1,稗田 孝子 1,岸下 結花 1,滝島 恵津子 1,森松 靜 2,進藤 晃 2

【はじめに】当院介護療養病棟において、在宅へ復帰できない患者の排泄問題は入院生活を送る上で生活の質に大きく影響する。私たちは患者の尊厳を重視し、おむつ着用が最小限となるような取り組みを行ってきた。しかし、重症度割合 70%、処置実施割合 70%、ターミナルケア 15%と介護度が高く、限られたマンパワーでのトイレ誘導は失敗も多く、患者職員双方に疲弊感を招く恐れがある。そこで患者個々をアセスメントし、適切なトイレ誘導方法を行うことで、患者の排泄と QOL の向上の足掛かりとなったので報告する。【方法】1)コンチネンスケアの勉強会の開催 2) 個々の排泄パターンの分析とトイレ誘導方法の選択 3) 職員の排泄ケアの統一化 4)OT との合同カンファレンスの開催 5) コンチネンスケア取り組み前後の排泄成功率の比較【結果、考察】排尿介助に関しては、患者個々の排尿パターンに応じてトイレ誘導方法を変え、トイレでの排尿を習慣化していくことでトイレにおける排泄成功率が上がった。また、成功率が上がったことで、職員に達成感が生まれやる気にもつながった。排便に関しては、個人の排便周期を確立するまでに至らず、今後の課題である。今までおむつを着用し失禁のあった患者が、トイレで排泄できるようになったことは、コンチネンスケアに取り組んだことの成果であり、患者の尊厳を重視する取り組みに繋がったと考える。【おわりに】おむつの着用は人の尊厳を著しく傷つけ、患者の QOL を大きく左右する。今回は、排尿に関する自立支援に取り組んだが、今後は排便についての自立支援にも取り組んでいきたい。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-5-3 排泄ケア(5)経管栄養患者の排泄コントロール取り組み

照葉の里 箕面病院 看護部

つぼい さちこ

○坪井 幸子(看護師),上田 智晴,本多 玲子

【はじめに】当病棟は医療療養病棟であり、医療区分 2,3 の割合が 80% 以上を占め、高齢の寝たきりで経管栄養に頼らざるおえない患者や、医療依存度の高い患者が入院を余儀なくされている。当病棟では 3 ~ 5 日間排便がない患者に対して緩下剤投与や浣腸を施行し、毎日 10 名程度の排便処置をおこなっており排便処置による下痢便で患者の不快感や苦痛表情が見られていた。今回、入院患者の 2 割を占める経管栄養患者に焦点をあて、グァーム分解物(PHGG)含有の流動食を使用しコントロールができたのでここに報告する。

【目的】流動食を変更し腸内環境を整わせることで、患者に苦痛のない排便コントロールができる。

【方法】対象:当院入院中の経管栄養実施中患者 3 名期間:平成 25 年 5 月~平成 26 年 3 月方法:摂取カロリー・水分量は変えず、アイソカルサポートに変更評価:①便の性状②下剤滴数③排便周期等について評価したうえで下剤の使用量、排便状況と観察結果を比較・検討する

【結果】①下剤使用量:90%減量が 2 名、70%減量が 1 名②便性状:2 名がブリストルスケール 7 の出現が見られるようになった③排便量:2 名で少量便が減少 中量以上が増加し 1 回の排便で出し切れるようになった

【考察】グァーム分解物(PHGG)含有の流動食に変更したことで腸内環境が整い、便性状や排便量が変化し下剤の減量をスムーズにおこなうことができた。またこの取り組みをおこなうことで医師の理解と協力を得ることができ、職員間の排便コントロールの意識にも変化が見られ、ブリストルスケールでの便性状評価を導入することができた。一方で、緩下剤の量や滴便をするケースも皆無ではなく今後の課題である。患者の病状や季節が排便状況に影響されるため、今後も個々の排便状況の把握と適切なケアで排便コントロールが出来るように継続した取り組みを続けていきたい。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-5-4 排泄ケア(5)慢性期における尿道留置カテーテルの抜去基準 ~抜去のタイミングを見逃すな~

大浜第二病院 看護部

ほかま こずえ

○外間 こずえ(看護師),金城 より子

1. はじめに重度意識障害の患者や神経難病の患者は、排泄機能障害を合併していることが多い。そのため、急性期治療の段階から尿道留置カテーテル(以下バルーンとする)が挿入され、慢性期病棟へ転院後も留置が長期に渡るケースが見られる。今回、慢性期病棟の特徴を踏まえた「尿道留置カテーテル抜去アセスメントシート」(以下アセスメントシート)を作成した。バルーンの定期交換時や閉塞等で交換の必要が生じた際に使用することで長期のバルーン留置患者が減少したので報告する。2. 研究目的アセスメントシートを活用し適切なバルーン抜去のタイミングを確立し、長期のバルーン留置による合併症を予防する。 3. 方法データ収集期間:平成 28 年 2 月 1 日~ 5 月 31 日対象:バルーン留置している A 病棟入院患者①定期交換時に基準をクリアしていたら抜去する②抜去後は一週間尿測し抜去によるトラブルがないか観察4. 倫理的配慮個人情報の保護および対象への説明・同意を得て実施した。5. 結果対象患者は 19 人でその内 9 人が抜去できた。抜去による効果として皮膚状態の改善がみられた。6. 考察アセスメントシートを使用することにより抜去の基準が明確になったと考えられる。これまでは、バルーンの“ 交換日 ” としてルーチン化されていたが、抜去の可能性を検討する機会に繋がったと考えられる。また、以前は抜去が可能ではないかと検討している間に、状態が変化しバルーン抜去のタイミングを逃してしまう原因となっていた。しかし、アセスメントシートを使用することにより、自信をもって医師へ報告し抜去することができるようになったと考えられる。 7. おわりにアセスメントシートを使用することにより不必要な留置を減らすことができた。今後は、カテーテル関連尿路感染など合併症の予防に向けて、留置前に使用するアセスメントシートの作成を行い必要最小限の留置と早期の抜去を目指していきたい。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-5-5 排泄ケア(5)統一化した表記による排泄のコントロール ~適切な下剤調整~

友愛記念病院 看護科

もり まこと

○森 真琴(介護福祉士)

【はじめに】当院は認知症治療病棟・医療療養病棟・介護保険病棟の 212 床を有する病院である。業務の中で排泄ケアを占める割合は少なくない。排便の分類や量、記入方法が各病棟独自の表記であったため、統一して欲しいとの声が多かった。そこで院内研修を繰り返し行い、表記を統一化した結果、下剤の調整がスムーズにいき、患者様の不快の軽減につながったので、ここに報告する。

【方法】1. 期間 2015 年 3 月 1 日~ 2016 年 3 月 31 日 2. 対象 看護師・看護助手 3. 方法  1)排便の分類・量について統一した記入方法(便の分類・量のサンプル作成) 2)排泄表の統一記入後アンケート実施 3)患者様の下剤使用状況と排便の調査 4)薬剤師による下剤についての院内研修 5)紙おむつスキルアップ講習

【結果】アンケート結果で排便の分類・量について統一記入で排泄表が見やすくなったとの意見が多かった。又誰が見ても理解し易いようにサンプルを作成し各病棟に配布したことにより適切な下剤調整ができた。結果、外もれが少なくなり病衣やシーツ交換が減り、皮膚トラブルの軽減にもつながった。またリハビリやレクレーションに最後まで参加することができ、表情も豊かになった。職員同士、共通認識を持ち情報を共有することで意識も向上した。便秘時における下剤与薬に対する的確な対応策を見つける手助けとなった。今後、より良い介護が継続出来るように情報を共有し合い、連携を図っていきたいと思う。

第 24 回日本慢性期医療学会 in 金沢9-5-6 排泄ケア(5)1 つの介助方法がもたらす複数の影響 ~ 残存機能に着目して ~

介護老人福祉施設 緑風苑

くらもと ふみよ

○倉本 二三代(介護福祉士),田又 清吾,濱口 詔子,西本 智子,北谷 英里

[ はじめに ]日中、夜間と排便回数が多く、臀部に褥瘡のある入居者に対し、短時間での立位保持が可能であることから、スタッフ全員で統一した介助方法を考案した。結果、PWC での排泄が可能となったので報告する。

< 対象 >80 歳 男性 要介護度 5 自立度 B2 認知症度 II疾患名 : 脳梗塞後遺症 ( 左方麻痺 ) 混合性認知症排泄動作能力 : オムツ全介助 尿便意なし 昼夜問わず排便が多い 頻繁に褥瘡再発、治癒を繰り返している。

[ 方法 ](1) 対象者本人の残存能力を生かした支援方法をスタッフ全員で考案する。(2) その中から支援方法を選択・実施。(3) 支援開始から 3 ヶ月、6 ケ月を目途に評価を行い、比較検討する。

[ 結果 ]居室のベッドサイドレールを利用した立位保持を行い、車椅子と PWC を差し替えて使用し、日中リハビリパンツに変更した。使用開始すぐに PWC での排便が多量に見られるようになり、昼夜の排便回数が減った。無理なく行うためにも朝食後から開始し、便がない時は午後にも使用した。PWC での排便が習慣化し臀部の状態が良くなり、3 ヶ月後には褥瘡治癒となる。本人様からも「トイレに行きたい」と訴えが見られるようになり、会話が増え、余暇活動にも喜んで参加されるようになり、夜間の良眠に繋がった。

[ 考察 ]便汚染が減少したことで皮膚状態が安定し、褥瘡が軽減した。又、PWC を使用することで下肢筋力がアップし ADL が向上。結果、介護度が 5 から 4 になった。他職種との連携がとれたことで早期の治癒にも繋がったと考えられる。PWC に座ることで皮膚状態のみならずさまざまな効果がある。現在、他の入居者様も PWC、トイレの利用が増え、パットの使用量も減少している。入居者様を知り、入居者様に合ったケアを改めて感じることができた。今後も PWC、トイレでの排泄を促していくと共にやりがいやコスト削減に向けて取り組んでいきたい。