34
一国のマクロバランス式

一国のマクロバランス式 - Kyoto U-Gを政府貯蓄SGと定義し、一国全体の貯蓄をS=SP+SG と定義す ると、②-2式は、 CA=S-I ②-3 と表わされる。すなわち、一国の経常収支は、一国の貯蓄・投資バランスに等しい。

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  • 一国のマクロバランス式

  • 2

    日本のGDP(2010年)

  • 3

    日本の貯蓄投資バランス(2010年)

  • 4

    国民所得勘定と国際収支勘定

  • 5

    国際収支統計と国民経済計算(cont.) 一国のマクロ・バランス(総供給=総需要) Y=C+I+G+(X-M) ① Y:GDP、X-M:貿易・サービス収支(純輸出) Y=C+I+G+CA ② Y:GNP、CA:経常収支(ただし経常移転収支は無視) GDP:国内で生産された付加価値の合計 GNP(GNI*):日本人によって生産された付加価値の合計 →日本人の海外での生産活動は、日本人が外国から受け取る要素所得(A) →外国人の国内での生産活動は、外国人へ国内から支払われる要素所得(B) →純要素所得=A-B=所得収支 ∴GNP=GDP+純要素所得(所得収支) (日本のように外国への進出が多い国では GNP>GDP) *93SNAでは、「国民総生産」(GNP)を「国民総所得」(GNI)と呼ぶこととなり、国民

    経済計算からGNPの概念がなくなった。

  • 6

    国際収支統計と国民経済計算(cont.) 1.経常収支CAは、 CA=Y-(C+I+G) ②-1 経常黒字国=日本(CA>0):一国全体で生産以下しか支出していない国(Y>C+I+G) 経常赤字国=米国(CA<0):一国全体で生産以上に支出している国(Y<C+I+G) 2.また、民間貯蓄SPは、可処分所得Y-Tから消費Cを差し引いた残りの部分であるので、 SP=Y-T-C これをYについて解き、②-1’式に代入すると、 CA=(SP-I)+(T-G) ②-2 一国の経常収支CAは、民間部門の貯蓄・投資バランスSP-Iと、政府部門の財政収支

    T-Gに等しい。 3.さらに、財政収支T-Gを政府貯蓄SGと定義し、一国全体の貯蓄をS=SP+SGと定義す

    ると、②-2式は、 CA=S-I ②-3 と表わされる。すなわち、一国の経常収支は、一国の貯蓄・投資バランスに等しい。 経常黒字国=日本(CA>0):一国全体で貯蓄超過(S>I) 経常赤字国=米国(CA<0):一国全体で貯蓄不足(S<I)

  • 均衡予算乗数

  • 第3講:GDPの決定(第13章)

    失業が存在しているもとでは財市場の均衡はどのように達成されるか?

    乗数とは何か?

    総需要管理政策はいかにサポートされるか?

  • 3.2 GDPの決定(計算)(13-1)◎総需要は YD ≡ C+I+G☆ケインズ型消費関数(仮定③) について

    0C C cY= + 総供給(=総所得)限界消費性向0<c<1の定数所得の限界的増加による消費の限界的増加量

    独立(自律的・基礎)消費・・・・所得に依存しない

    生活に必要

    ☆投資で一定と仮定

    ☆政府支出で一定と仮定

    ◎総供給は YS ≡ Y

    ∴財市場の均衡条件: YS = YD ⇒

    0I I=

    0 0 0Y C cY I G= + + +

    0G G=

  • 3.7 乗数(政府が存在)(13-2・3)

    (2)政府が存在するモデル◎総需要は YD ≡ C+I+G☆ケインズ型消費関数 について

    可処分所得

    ☆投資で一定と仮定

    ◎総供給は YS ≡ Y

    ∴財市場の均衡条件: YS = YD ⇒

    0

    0 ( )dC C cY

    C c Y T= +

    = + −

    0I

    0 0 0( )Y C c Y T I G= + − + +

  • 3.7 乗数(13-2・3)外生変数の(「1」)変化による生産量の変化を表す倍数

    Y*=C0+I0+G0-cT......(財市場の)均衡GDP1-c

    「政府支出の増加」による効果(の大きさ)

    1 政府支出乗数(1以上!)1-c

    「増税」による効果(の大きさ)

    -c 租税乗数1-c

  • 3.7 乗数(13-2・3)

    ⊿G ⊿Y1(=⊿G)

    ⊿C1=c⊿Y1

    1-c c

    ⊿Y2=c⊿G

    =c⊿G1-c c

    ⊿C2=c⊿Y2=c×c⊿G⊿Y=⊿G(1+c+c×c+・・・)

    =⊿G×(1/(1-c))

  • 3.8 均衡予算乗数の定理(13-2・3)

    「増税」によって、「政府支出の増加」をすればどうなるか?

    「政府支出の増加」による乗数

    (政府支出乗数)は 1/(1-c1)「増税」による乗数(租税乗数)は

    -c1 /(1-c1)これら2つをたすと「1」となる。

    =増税(「1」)+公共支出増(「1」)により、=増税(「1」)+公共支出増(「1」)により、

    生産量は同じだけ(「1」)増加する生産量は同じだけ(「1」)増加する

    ⇒⇒ これを「均衡予算乗数の定理」という。これを「均衡予算乗数の定理」という。

  • 3.8 均衡予算乗数の定理(13-2・3)

    総需要

    消費

    財市場均衡条件

    均衡GDP

    乗数

    0C cY+

    0T

    0C I+ 0 0C I G+ +

    0 0( )C c Y T+ −

    (2) (一括税)(1)

    0 0 0 0( )Y C c Y T I G= + − + +0 0Y C cY I= + +

    0 0*1

    C IYc+

    =−

    0 0 0 0*1

    C I G cTYc

    + + −=

    cc−−

    1c−11

    c−11

    投資: 政府: 租税:

  • 3.8 均衡予算乗数の定理(13-2・3)

    mYMM +=tYTT +=

    )( TYcC −+tYTT +=

    GIC ++ )( MXGIC −+++)( TYcC −+

    (3) (所得税) (4)総需要

    消費

    輸入

    GItYTYcCY++

    −−+= )(mYMXGI

    tYTYcCY−−+++

    −−+= )(財市場均衡条件

    )1(1*

    tcTcGICY

    −−−++

    =mtc

    MXTcGICY+−−

    −+−++=

    )1(1*均衡

    国民所得

    )1(1 tcc−−

    −政府;租税;輸入)1(1

    1tc −−乗数 政府: 租税:

  • 一国のマネーフローと中央銀行

  • 9

    マネー・フロー(概念図)

  • 10

    貨幣(通貨)乗数

    • M=C+D (マネー・サプライの定義) • H=C+R (ハイパワード・マネーの定義) • α=R/D (預金準備率の定義) • β=C/D (現金・預金比率の定義) • μ=H/M (貨幣乗数)

    αββ++

    =++

    =++

    =1

    //1/

    DRDCDC

    RCDC

    HM

    βαβµ

    βαβ

    ++

    =∴++

    =∴11

        HM

  • 11

    日本銀行のバランスシート(1997年7月20日)

    (単位:千円)

    資産 負債および資本

    金地金 215,665,333 発行銀行券 43,972,031,290

    現金 376,402,604 金融機関預金 3,662,486,787

    割引手形 27,540,024 政府預金 519,949,756

    貸付金 802,237,500 その他預金 5,650,626

    買入手形 1,609,800,000 雑勘定 3,169,529,111

    国債 48,077,653,425 引当金勘定 2,465,842,539

    海外資産勘定 3,118,423,369 資本金 100,000

    預金保険機構貸付金 291,700,000 積立金 2,084,895,423

    代理店勘定 382,996,301

    雑勘定 978,066,975

    合計 55,880,485,534 合計 55,880,485,534

  • 12

    日本銀行のバランスシート(2006年1月10日)

    (単位:千円)

    資 産 負債および資本

    金地金 441,253,409 発行銀行券 76,932,912,490

    現金 190,852,918 当座預金 33,909,245,964

    買現先勘定 4,217,975,287 その他預金 461,553,993

    買入手形 44,089,900,000 政府預金 5,990,538,562

    国債 98,811,712,126 売現先勘定 28,206,474,798

    資産担保証券 105,995,263 売出手形 3,402,200,000

    金銭の信託(信託財産株式)

    1,945,312,294 雑勘定 862,903,863

    外国為替 4,739,725,334 引当金勘定 2,916,513,736

    代理店勘定 151,921 資本金 100,000

    雑勘定 666,771,730 準備金 2,527,206,875

    合計 155,209,650,285 合計 155,209,650,285

  • 資産バブルと高レバレッジ

  • 14

    バランス・シートの肥大化

  • 15

    高レバレッジ経営

    〈金融のグローバル化⇒?⇒資産バブル+高レバレッジ

    ⇒バランスシートの肥大化⇒貨幣経済の肥大化⇒? ⇒金融危機〉

  • 16

    バブルとその崩壊

  • 17

    レバレッジ(vs自己資本比率)

    レバレッジ効果 自己資本で経済活動をする際、他人資本を用いることに

    よって、利益率を高めること

    総資産=自己資本(出資金)+他人資本(借入金)

    ( )

    1

    8%

    = =

    ≈ =

    総資産レバレッジ

    自己資本 自己資本比率

    自己資本自己資本比率

    総資産

  • 18

    資産バブル⇒バブルの崩壊 レバレッジの拡大⇒レバレッジの解消

    右下のバランスシート:証券化商品の価格が4000億円に暴落したケース。このとき、借入金4900万円に対して資産価値は4000億円⇒900億円の債務超過⇒このままでは破綻。

    ①この金融機関が大きすぎて潰せない(too big to fail; TBTF)、あるいはシステム上重要な金融機関(Systemically Important Financial Institutions; SIFIs)の一つならば、破綻すれば金融危機に繋がる恐れがある。破綻を回避するには、損失額の1000億円に対して、自己資本は100億円しかないのだから、900億円の資本不足を、政府が資本注入して救済(bailout)するしかない。

    ②システム上重要な金融機関(SIFs)が破綻すると、どういうことになるだろうか。上記の金融機関は、4900億円の借入れを行っていたが、これが返済不能となると、貸出しをしていた複数の銀行も回収不能な不良債権を抱えることとなる。銀行間市場では、こうした銀行に短期で融資している銀行も多くあるので、そうした銀行も経営が危うくなる。こうなると、銀行間市場でのお金の貸し借りが困難となり、銀行間市場で流動性が不足すると、コールレート(銀行間市場での超短期の金利)が上昇し、金融システム全体が麻痺する。血流が悪くなって血圧が上がると思えばよい。これが金融危機。

  • 資産バブル⇒バブルの崩壊 レバレッジの拡大⇒レバレッジの解消

    • このとき登場するのが最後の貸し手(Lender of Last Resort; LLR)としての中央銀行であり、銀行間市場で不足している流動性を潤沢に供給する(先ほど述べた政府による税金を使った救済=資本注入とは別物)。

    • 金融危機が発生すれば、拡大を続けてきたレバレッジが一挙に解消に向かう(デレバレッジ)。銀行は資産を縮小させ、新しい貸出しを抑制(貸し渋り)するため、実体経済も縮小に向かう。民間の金融機関がリスクをとることに慎重になり、バランスシート調整が進む過程で、今度は非伝統的手段を用いてリスク資産まで買い入れ、マネーサプライを増やすことで、バランスシートを肥大化させてきたのが中央銀行(日銀、FRB、ECB等)なのである。

    19

  • 20

  • リーマンショック

  • 住宅ローン利用者

    融資

    モーゲージ・カンパニー 政府系住宅金融機関

    投 資 銀 行 債権売却

    債権売却 証券化

    証券化

    家 住宅ローンの証券化

    プライマリー・マーケット セカンダリー・マーケット

    22

  • 住宅ローンの証券化と国際資本市場への波及 • 地方のモーゲージ・カンパニーや銀行が、ハイリスク・ハイリター

    ンのサブプライムローンを拡大させていった背景は、その債権をウォール街の投資銀行に売却することによって、信用リスクも転売できたからである。

    • 投資銀行がサブプライムローンを買い取ったのは、それを住宅ローン担保証券([Residential] Mortgage Backed Security, [R]MBS)等に証券化することによって、リスクを分散化(多様なリスクを一つの証券に束ねることによって、大数の法則が働き、高リスクのサブプライムローンのリスクも軽減)し、この証券化商品をヘッジファンド等の世界中の投資家に販売できたからである。

    • アメリカの住宅ローン市場の規模は、2007年末の残高で10.5兆ドル(対GDP比76%)、そのうちの約6割は証券化されている(2割が投資銀行等による民間証券化であり、4割は、後述のように、政府系住宅金融機関によるエージェンシー証券化である)。

    23

  • 金融危機(2007) 住宅バブルの崩壊に伴うプライマリー・マーケットにおけるサ

    ブプライムローンの焦げ付きは、セカンダリー・マーケットである証券化市場に飛び火した。

    • 2007年6月22日、全米第5位の投資銀行ベアー・スターンズは、傘下のヘッジファンド2社の救済のため32億ドルを救出すると発表、7月10日には、格付け機関のムーディーズが、サブプライムローンを組み込んだMBSの399銘柄にのぼる大量格下げを発表。

    サブプライム問題は、局地的な住宅ローン市場の問題から、世界の資本市場の危機へと拡大。

    • RMBSは世界中の投資家に販売されていたので、8月にはフランスのBNPパリバ(パリ国立銀行とパリバが合併して誕生したユーロ圏で最大規模の金融グループ)が、傘下の3つのファンドを凍結、

    • 9月にはイギリスのノーザン・ロック銀行の取り付け騒ぎにまで発展。

    24

  • 2008年の金融危機(リーマン・ショック) • 2008年3月16日:全米第5位の投資銀行ベアー・スターンズ、経営危機 ⇒5月30日:JPモルガン・チェースに買収。 • 9月15日:第4位のリーマン・ブラザーズ、破綻 第3位のメリルリンチ、バンク・オブ・アメリカに買収。 • 9月16日:保険最大手のAIGに対し、FRBは最大850億ドル(9兆円)の公的融資を発表(国有化!)。⇒CDS問題が顕在化

    • 9月21日:ゴールドマン・サックス(第1位)、モルガン・スタンレー (同2位)、「銀行持株会社」(傘下に商業銀行を保有する持株会社)に移行

    ⇒全米5大投資銀行のうち、下位3つが破綻ないしは買収、上位2つは商業銀行化 • 9月29日:金融安定化法案、下院で否決! ⇒NYダウ$777ドル安(史上最大) ・10月3日:金融安定化法($700bn bailout plan for the US financial system Troubled Asset Relief Program:TARP) : 公的資金枠は最大7000億ドル(約70兆円)。2500億ドルは直ちに支出、緊急時は

    1000億ドル追加、残り3500億ドルは議会が支出を拒否できる。

    25

  • 26

    一国のマクロバランス式スライド番号 2日本の貯蓄投資バランス(2010年)スライド番号 4国際収支統計と国民経済計算(cont.)国際収支統計と国民経済計算(cont.)均衡予算乗数一国のマネーフローと中央銀行マネー・フロー(概念図)貨幣(通貨)乗数日本銀行のバランスシート(1997年7月20日)日本銀行のバランスシート(2006年1月10日)資産バブルと高レバレッジスライド番号 14スライド番号 15スライド番号 16レバレッジ(vs自己資本比率)資産バブル⇒バブルの崩壊�レバレッジの拡大⇒レバレッジの解消資産バブル⇒バブルの崩壊�レバレッジの拡大⇒レバレッジの解消スライド番号 20リーマンショックスライド番号 22 住宅ローンの証券化と国際資本市場への波及 金融危機(2007)2008年の金融危機(リーマン・ショック)スライド番号 26yanagihara06.pdf経済理論 I(マクロ経済学)第3講:GDPの決定(第13章)3.2 GDPの決定(計算)(13-1)3.7 乗数(政府が存在)(13-2・3)3.7 乗数(13-2・3)3.7 乗数(13-2・3)3.8 均衡予算乗数の定理(13-2・3)3.8 均衡予算乗数の定理(13-2・3)3.8 均衡予算乗数の定理(13-2・3)3.9 貯蓄・投資均衡(13-2)3.9 貯蓄・投資均衡(13-2)