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ウェアラブルカメラを活用した工事監督について
酒田河川国道事務所 飽海出張所
柴田 敏明
○近藤 雅也
1.はじめに
山形県酒田市山寺地区では、地質調査結果より洪水時、河川水の浸透による
堤防の破堤が懸念されており堤防機能を確保すべく堤防浸透対策を実施してい
る。昨年度、浸透対策として矢板護岸工による工事を行っており、当該工事う
ち、監督職員の立会いが必要な矢板工にかかる確認行為において、「ウェアラ
ブルカメラを活用した遠隔監督」を試行したことから、その実施結果について
報告するものである。
2.試行概要と目的
通常、確認行為は監督職員が現場に臨場し直接出来形寸法等を確認するが、
本試行では工事受注者がカメラで撮影している映像をインターネットを通して
配信し、その映像を監督職員が机上のパソコン画面でリアルタイム視聴しなが
ら、確認したい箇所を指示し確認行為を実施するものである。これにより、監
督職員が現場への移動にかかる時間及び受注者が監督職員の到着を待つ時間等
を削減し、受注者、監督職員の業務の効率化が主な目的となっている。
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3.試行内容
1)現場・出張所位置
位置関係は、右図のとおり片道
約12㎞、通常の確認行為では約
15分程度の移動時間を要する箇
所であるが、今回、映像配信によ
り出張所でリアルタイム視聴する
ものとして実施した。
2)使用機器・システム
試行にあたり必要となる、①リアルタイム配信システム、②ウェアラブルカ
メラは、試行段階の取り組みで実際に運用した実績が無いことから、試行要領
(案)に明記されている項目を参考に、受注者と協議のうえ決定した。
【試行要領(案)からの抜粋】
・ウェアラブルカメラ等により撮影し、監督職員にライブ映像を配信し、撮
影場所を通信により指示・会話しながら確認し、映像と音声を記録(1コ
マ/秒以上)する。
・測定寸法がモニターで確認できる程度の画素数を確保すること。
・映像には、日時(分単位)も合わせて記録するものとする。
①リアルタイム配信システムについて
システム導入にあたっては、上記3方式を検討した。
検討結果より、①の動画共有サイトは使用するサイトによりタイムラグにバ
ラツキがあり、タイムラグが発生すると受発注者間のコミュニケーションの傷
害となり、円滑な遠隔監督が実施出来ないと考え、①は不採用とした。
②のSNSアプリによる配信は、アプリ自体が映像及び音声の記録に対応して
いない為、別途デスクトップ画面を記録するソフトが必要となることから、②
も不採用とした。
上記の結果、試行要領(案)の条件をすべて満足できる、③のWeb会議シス
テムが最適と考え導入する事とした。
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Web会議システムのイメージ
②ウェアラブルカメラについて
先に選定したWeb会議システムに対応するには、ウェアラブルカメラ本体に
システム専用アプリのインストールが必要となることから、オペレーティング
システム(Windows、macOS、Android、iOS)が搭載されている機種からの選定が条
件となる。そのため、本工事では下記の3機種から選定する事とした。
選定の結果、防塵・防水対応で、カメラを装着したときの死角が少ない機種
は②の「片眼 非シースルー ウェアラブルカメラ」であったことから、本工
事で採用した。
4.試行結果
①遠隔監督について
全12回の立会いに適用し、約6時間の移動時間削減ができている。また、
打合せ等が長引き、開始時刻が遅延した時があり、その際は移動を要せず立会
いを行うことができ、受注者の待ち時間を削減することもでき有効と感じた。
しかし、本現場は移動にそれ程時間を要する箇所ではなく、更に時間を要す
る現場であれば、更なる有効性や業務の効率化につながると思われる為、今後
も試行を行う場合は、上記現場等を対象にした方が良いと思われる。
②リアルタイム配信システム
今回導入したシステムは、ウェアラブルカメラの専用アプリのインストール
とネットワーク設定を行えば後はカメラ電源を入れるだけで、操作が簡単で
あったほか、監督員側も視聴用PCの操作も簡単で有効であった。
また、解像度に関してもVGA(640×480)程度の画質であったが、寸法値はミ
リ単位で確認することが可能であった。
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③ウェアラブルカメラ
今回採用したカメラは、ヘルメットへ装着し、片眼ディスプレイにて自撮影
画像を片目で確認しながら撮影でき、ハンズフリー化を図ることができている。
しかし、今回導入したシステム専用アプリによってカメラのズーム機能が使
用できなくなり、撮影に支障をきたす場面があり、この場合は、無理にウェア
ラブルカメラを使用するのでは無く、現場に応じてタブレット型PC又はスマ
ートフォンを活用した方が撮影しやすいといった受注者の意見があった。
5.今後の課題と活用について
・システムによりカメラ側の機能(ズーム機能等)が制限されるものもあるた
め、機能制限が無いシステムの構築が望まれる。
・モバイルネットワーク環境下では、配信映像にスムーズさが無い場合もある
ので、今後のモバイルネットワーク通信速度の高速化が望まれる。
・システムにより、発注者PCから外部サイトにアクセスできない場合があり別
途視聴用のPCが必要となるため、既存ASPの改良・活用の検討も必要と考える。
・工事によっては記録映像の容量が大きくなることから、記録映像の納品方法
も検討が必要と考える。
・各協議会組織単位等で「Web会議システム」を導入すれば、業者数に応じた
ライセンスを購入することで、複数工事で1つのシステムを共有でき、これに
より、各工事で監督員の確認行為に活用できるだけでなく、定例会議(工程会
議等)や、業者間の連絡調整に活用できる可能性がある。
・今後の展開にあたては、具体的な活用範囲(遠隔地の現場へ適用、適用する
立会い項目等)の検討が必要と考えられる。
6.まとめ
本技術は、受発注者双方の業務効率や経費の削減等、多方面での貢献が考え
られ本格運用が期待される。今後も日々進化する技術を積極的に取り入れ工事
監督を行っていきたい。