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パルスパワー発生装置の小型・軽量化 東谷大樹,須藤俊輔,佐竹輝,吉田康佑,秋山雅裕(一関工業高等専門学校) ・はじめに ・パルスパワー発生装置 パルスパワーとは、少ない電力で時間をかけて充電したエネルギーを 一度に取り出して、瞬間的に巨大電力を得る技術である。現在、このパ ルスパワーを利用した応用研究が、農業や食品、医療分野など、様々な 分野に広がっている。こうした背景を受けて、今後のパルスパワー発生 装置には、装置の小型・軽量化、高機能化、操作の簡易化が求められて いる。本研究では、これらの要求に応えるために、USB通信を用いてパソ コンからパルスパワーを制御するシステムの開発と、小型パルスパワー 発生装置の研究開発を行なっている。 キノコへのパルス印加 水中ストリーマ状放電プラズマの様子 パルスパワー発生装置は、実際に負荷へ放電する「MPC回路」、MPC回路 に充電する「充電器」、そして出力電圧等を決定する「FPGAコントローラ」から 構成される。 FPGAコントローラ FPGAの電源回路 FPGAを使うためのDC3.3V出力する電源回路を設計した。 右図のAC-DCモジュールで AC100VからDC±15Vに変換 している。さらにこのDC15V入力として、下の三端子レギュ レータを使用した回路で DC3.3Vを出力している。抵抗 100Ωは発熱防止のため、コン デンサ0.1uFは発信防止のため に使用している。 これらにより、AC100Vから DC3.3Vを安定して出力し、 FPGAの電源として使用できる 回路が作成できた。 本研究では、FPGAを用いたコントローラの研究開発を行った。パルスパワー発生 装置の制御にFPGAを用いたことで回路の小型化に成功し、仕様変更のために回路 を組み替える必要がなくなった。 USB通信システムは、制御プログラムによってUSB-IOの信号の長さを変えることに 成功した。今後、USB-IOFPGAを接続してPCFPGAの通信が実現すれば、更な る操作の簡易化ができ、応用分野開拓の近道が期待できる。 ・まとめ FPGA コントローラ MPC回路 充電器 AC100V 制御電圧 ~10V トリガ信号 異常制御 充電電圧 ~1.5kV パルスパワー発生装置 パルスパワー発生までの流れ FPGAの周波数の立ち上がりと同 時に充電禁止信号をOFFにする。 コントローラから制御電圧0~10V が出力され、充電器がMPC回路 に充電を開始する。 ② 充電禁止信号が再びONし、充電 器は充電を止める。 ③ ②から50μsの保護時間を開けて、 MPC回路にトリガ信号を入力する。 MPC回路のサイリスタがターンオ ンして、パルスパワー出力。 パルスパワー発生までの信号例 ・充電器とMPC回路 充電器 制御電圧0~10Vを受け て、最大1.5kVC0充電する。 正常に充電できなくなった 時に異常信号を返す。 MPC回路 トリガ信号を受けると、サイリスタがターンオンし、C0に充電された電圧がPT によって昇圧されて、C1に印加される。C1が最大電圧になると、SI1が飽和し、 負荷へ放電する。 ファンが止まった時と、電圧が高くなりすぎた時に異常信号を返す。 FPGAコントローラは、パルスパワー の出力設定と異常信号を受けた時の 制御をFPGAで行っている。 FPGAの利点 PICに比べて動作速度が速い ・低コストで開発環境が整う ・プログラムで回路を構成できる ロジックICを用いたコントローラ FPGAコントローラ 現在使用しているコントローラ は、FPGAの電源として直流電源 を使用している。又、パルスパ ワーの出力設定を変更するため に、FPGAのプログラムを書き換 える必要がある。そこで、FPGA 用の電源回路と、USBを用いた 通信システムを開発した。 AC-DCモジュール 電源回路の回路図 特に、プログラムで回路を構成 できることで、ロジックICを用いた 回路に比べてコンパクトな回路に できる。 USB通信システム FPGAPCの通信のために、USB-IOを使用する。USB-IOは、USBケーブル PCと接続できる入出力基盤で、PCからの入力により12個のポートから0V5Vの信号を出力できる。制御プログラムは、出力電圧、周波数、パルス回数、 繰り返しの有無を設定でき、値を選ぶとそれに対応して信号ONの長さを変える 仕様になっている。例えば、繰り返し有で100ms50%の電圧で200ms、周波 50pps250ms・・・と、各項目を順番に連続して信号を送る。 MPC回路の回路図 FPGA コントローラ デジタル出力 USB ケーブル 制御プログラム(PC) USB-IO FPGA

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Page 1: パルスパワー発生装置の小型・軽量化powerele-lab/japanese/img/akiyama/3.pdf · mpc回路にトリガ信号を入力する。 mpc回路のサイリスタがターンオ

パルスパワー発生装置の小型・軽量化

東谷大樹,須藤俊輔,佐竹輝,吉田康佑,秋山雅裕(一関工業高等専門学校)

・はじめに

・パルスパワー発生装置

パルスパワーとは、少ない電力で時間をかけて充電したエネルギーを一度に取り出して、瞬間的に巨大電力を得る技術である。現在、このパルスパワーを利用した応用研究が、農業や食品、医療分野など、様々な分野に広がっている。こうした背景を受けて、今後のパルスパワー発生装置には、装置の小型・軽量化、高機能化、操作の簡易化が求められている。本研究では、これらの要求に応えるために、USB通信を用いてパソコンからパルスパワーを制御するシステムの開発と、小型パルスパワー発生装置の研究開発を行なっている。

キノコへのパルス印加 水中ストリーマ状放電プラズマの様子

パルスパワー発生装置は、実際に負荷へ放電する「MPC回路」、MPC回路に充電する「充電器」、そして出力電圧等を決定する「FPGAコントローラ」から構成される。

・FPGAコントローラ

FPGAの電源回路

FPGAを使うためのDC3.3Vを出力する電源回路を設計した。

右図のAC-DCモジュールで

AC100VからDC±15Vに変換

している。さらにこのDC15Vを

入力として、下の三端子レギュ

レータを使用した回路で

DC3.3Vを出力している。抵抗

100Ωは発熱防止のため、コン

デンサ0.1uFは発信防止のために使用している。

これらにより、AC100VからDC3.3Vを安定して出力し、FPGAの電源として使用できる回路が作成できた。

本研究では、FPGAを用いたコントローラの研究開発を行った。パルスパワー発生装置の制御にFPGAを用いたことで回路の小型化に成功し、仕様変更のために回路を組み替える必要がなくなった。

USB通信システムは、制御プログラムによってUSB-IOの信号の長さを変えることに成功した。今後、USB-IOとFPGAを接続してPCとFPGAの通信が実現すれば、更なる操作の簡易化ができ、応用分野開拓の近道が期待できる。

・まとめ

FPGAコントローラ

MPC回路 充電器

AC100V

制御電圧

~10V トリガ信号

異常制御

充電電圧

~1.5kV

パルスパワー発生装置

放電

パルスパワー発生までの流れ

① FPGAの周波数の立ち上がりと同時に充電禁止信号をOFFにする。コントローラから制御電圧0~10V

が出力され、充電器がMPC回路に充電を開始する。

② 充電禁止信号が再びONし、充電器は充電を止める。

③ ②から50μsの保護時間を開けて、MPC回路にトリガ信号を入力する。MPC回路のサイリスタがターンオンして、パルスパワー出力。

パルスパワー発生までの信号例

・充電器とMPC回路

充電器 制御電圧0~10Vを受け

て、最大1.5kVをC0に

充電する。

正常に充電できなくなった

時に異常信号を返す。

MPC回路 トリガ信号を受けると、サイリスタがターンオンし、C0に充電された電圧がPT

によって昇圧されて、C1に印加される。C1が最大電圧になると、SI1が飽和し、

負荷へ放電する。

ファンが止まった時と、電圧が高くなりすぎた時に異常信号を返す。

FPGAコントローラは、パルスパワーの出力設定と異常信号を受けた時の

制御をFPGAで行っている。

FPGAの利点

・PICに比べて動作速度が速い

・低コストで開発環境が整う

・プログラムで回路を構成できる

ロジックICを用いたコントローラ

FPGAコントローラ

現在使用しているコントローラは、FPGAの電源として直流電源を使用している。又、パルスパワーの出力設定を変更するために、FPGAのプログラムを書き換える必要がある。そこで、FPGA

用の電源回路と、USBを用いた通信システムを開発した。

AC-DCモジュール

電源回路の回路図

特に、プログラムで回路を構成

できることで、ロジックICを用いた

回路に比べてコンパクトな回路に

できる。

USB通信システム

FPGAとPCの通信のために、USB-IOを使用する。USB-IOは、USBケーブルでPCと接続できる入出力基盤で、PCからの入力により12個のポートから0V又は5Vの信号を出力できる。制御プログラムは、出力電圧、周波数、パルス回数、繰り返しの有無を設定でき、値を選ぶとそれに対応して信号ONの長さを変える仕様になっている。例えば、繰り返し有で100ms、50%の電圧で200ms、周波数50ppsで250ms・・・と、各項目を順番に連続して信号を送る。

MPC回路の回路図

FPGAコントローラ

デジタル出力

USB

ケーブル

制御プログラム(PC)

USB-IO

FPGA