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日本言語文化研究会論集 2010 年第 6 【特定課題研究報告】 アゼルバイジャン人中・上級日本語学習者に見られる「は」と「が」の 誤用に関する考察 ―バクー国立大学日本語学習者を対象に― イブラヒモフ,ヤシャ―ル 要旨 バクー国立大学アゼルバイジャン語母語話者、中・上級レベルの学習者に「は」と「が」 の意味用法のうち習得しにくいものを明らかにする穴埋めテストと翻訳テスト、使い分けの 判断の基準を尋ねるアンケート調査を行った。分析した結果以下のことが明らかになった。 学習者が習得しにくく、判断基準の説明の割合が低かった項目は、①述部に、前に出てき た名詞と同じ名詞がある時、主語に付ける「が」、②思いがけないことが起こった時の「が」、 ③「~は~が~です。」の形で名詞の性質を表す「は」及び「が」、④多数の主語の中から一 つを選ばせる質問とその答えの「が」、⑤従属節の中で使われる「が」である。また、学習者 は「主題」、「述部の前」、「文型」、「主語」、「対比」に関連するキーワードにより「は」と「が」 を理解していることが分かった。この中で正答と結び付いたものは「対比」、「文型」であっ た。正答とあまり結び付いていないカテゴリーは、「主題」、「主語」、「述部の前」であること が明らかになった。 〔キーワード〕助詞、「は」と「が」、誤用、適切な説明、正答率 1.背景 バクー国立大学日本語講座(筆者の所属校)では、日本語と日本文学を専攻する学習者を 対象に、初級から上級レベルまでの日本語教育が行われている。学習カリキュラムは教材を 基にして作られており、初級レベルでは『みんなの日本語 I II』を主教材として文型を中 心にした授業が行われている。そして、中級レベルでは『テーマ別中級から学ぶ日本語』、上 級レベルでは『テーマ別上級で学ぶ日本語』を主教材にして、読解を中心にした授業が行わ れている。総学習時間数は 4 年間で 1320 時間で、2010 8 月現在、1 年生から 4 年生まで 35 人の学習者がいる。 筆者は、これまで授業を担当した中で、学習者が中・上級になっても、十分に習得できな い初級レベルの文法項目があることに気付いた。それは、結果残存の「~ている」、助詞の「は」 と「が」の使い分け、受け身の「~られる」、使役受け身の「~させられる」などである。こ の中で、学習者がよく質問する文法項目は「は」と「が」である。 アゼルバイジャン語には日本語と同じように格マーカーがあるものの、主題を表す「は」

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日本言語文化研究会論集 2010年第 6号 【特定課題研究報告】

アゼルバイジャン人中・上級日本語学習者に見られる「は」と「が」の

誤用に関する考察

―バクー国立大学日本語学習者を対象に―

イブラヒモフ,ヤシャ―ル

要旨

バクー国立大学アゼルバイジャン語母語話者、中・上級レベルの学習者に「は」と「が」

の意味用法のうち習得しにくいものを明らかにする穴埋めテストと翻訳テスト、使い分けの

判断の基準を尋ねるアンケート調査を行った。分析した結果以下のことが明らかになった。

学習者が習得しにくく、判断基準の説明の割合が低かった項目は、①述部に、前に出てき

た名詞と同じ名詞がある時、主語に付ける「が」、②思いがけないことが起こった時の「が」、

③「~は~が~です。」の形で名詞の性質を表す「は」及び「が」、④多数の主語の中から一

つを選ばせる質問とその答えの「が」、⑤従属節の中で使われる「が」である。また、学習者

は「主題」、「述部の前」、「文型」、「主語」、「対比」に関連するキーワードにより「は」と「が」

を理解していることが分かった。この中で正答と結び付いたものは「対比」、「文型」であっ

た。正答とあまり結び付いていないカテゴリーは、「主題」、「主語」、「述部の前」であること

が明らかになった。

〔キーワード〕助詞、「は」と「が」、誤用、適切な説明、正答率

1.背景

バクー国立大学日本語講座(筆者の所属校)では、日本語と日本文学を専攻する学習者を

対象に、初級から上級レベルまでの日本語教育が行われている。学習カリキュラムは教材を

基にして作られており、初級レベルでは『みんなの日本語 I、II』を主教材として文型を中

心にした授業が行われている。そして、中級レベルでは『テーマ別中級から学ぶ日本語』、上

級レベルでは『テーマ別上級で学ぶ日本語』を主教材にして、読解を中心にした授業が行わ

れている。総学習時間数は 4年間で 1320時間で、2010年 8月現在、1年生から 4年生まで

35人の学習者がいる。

筆者は、これまで授業を担当した中で、学習者が中・上級になっても、十分に習得できな

い初級レベルの文法項目があることに気付いた。それは、結果残存の「~ている」、助詞の「は」

と「が」の使い分け、受け身の「~られる」、使役受け身の「~させられる」などである。こ

の中で、学習者がよく質問する文法項目は「は」と「が」である。

アゼルバイジャン語には日本語と同じように格マーカーがあるものの、主題を表す「は」

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と主語を表す「が」のようなマーカーがないため、「は」と「が」の区別が意識しにくいので

はないかと考えられる。

中・上級学習者の誤用は「は」と「が」の様々な意味機能に見られるが、筆者の経験から

言うと、特に誤用が多いのは、「あの人は考え方が古い」のような「~は~が~です」の形で

名詞の性質を表す用法、従属節の中で使われる「が」の用法などである。とくに、従属節の

中の「が」については、中級、上級になって文構造が複雑になるため、書いたり、話したり

する時、従属節の構文に気づかない学習者が少なくないと考えられる。しかし、学習者の誤

用の傾向は筆者の経験から感じていることであり、学習者が従属節だけではなく、「は」と「が」

の様々な意味機能の中で、どの機能の習得が困難なのかは明確には分からない。

授業で「は」と「が」の指導がどのように行なわれているかを概観すると、初級レベルで

は『みんなの日本語』にある文法解説に基づいて、主に文レベルで文型として学んでいる。

中級になってからは、主に読解教材を通して文章レベルで様々な「は」と「が」の意味機能

に接している。しかし、中・上級の教科書には、「は」と「が」の使い分けについて説明がな

いため、教室では明示的な指導は行われていない。また、その中で、学習者がどのような文

法規則を立てて「は」と「が」について理解しているのかは分かっていない。

このような現状を踏まえると、中・上級レベルの学習者の「は」と「が」に見られる問題

を解決するには、中・上級レベルの学習者が誤用しやすい項目を明らかにすること、そして、

学習者が「は」と「が」の使い方について、どのような判断基準を用いているかを知る必要

があると思われる。

2.先行研究

文法項目の学習過程の改善のために行われた横断的な研究としては、生田・久保田(1997)

があり、上級レベルの学習者を対象に格助詞の「を」、「に」、「で」の意味機能を細かく分類

した穴埋めテストの調査によって、学習者の習得しにくい項目を明らかにしている。

日本語学習者の「は」と「が」の習得や誤用を調べたものに、田村(1993)がある。田村

は、上級学習者 19名(国籍や母語は明記されていない)を対象に、「は」と「が」の意味機

能を 4つに分類した穴埋めテストを作成し、誤用率の高いものを明らかにするための調査を

行った。田村(1993)の調査によって得られた正答率の結果は、以下の通りである。

① 疑問詞疑問文:80.7%、②主語の選択、述部の選択:70.2%、③既知、未知:69.2%、④行

為、出来事の単発性、習慣性:60.5%

また、坂本(1997)は 1996 年までの研究結果をまとめ、「は」と「が」について以下の 2

つのことを述べている。

(1)全て「は」の意味機能のほうが「が」の意味機能より正答率が高い。

(2)機能別の正用順序は研究によって多少異なるが、初級から上級までの学習者を概観する

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と、習得難易度は次のように大きく 3つの階層に分けられる。

① 学習者にとってやさしい:主題の「は」、状態述語の目的語の「が」、② どちらとも言え

ない:中立叙述の「が」、③学習者にとって難しい:総記の「が」、対照の「は」、従属節内の

「が」。

坂本(1997)の研究では、異なる学習者に対しての結果をまとめているため、その信憑性

は定かではない。また、「は」と「が」の意味機能の分類もそれほど細かく分類されていない。

「は」と「が」の意味と用法を細かく分けて、習得順序や正用順序について、とくに中国

語母語話者と韓国語母語話者の「は」と「が」の使い分けについて、比較しながら研究した

ものに謝・金城(2005)がある。この研究では、中・上級日本語の授業を受講している中国

語母語話者(C)34名と韓国語母語話者(K)20名の留学生を対象者に、「は」と「が」の

誤用率を明らかにするために、穴埋めテストを使って、調査を行った。CとKで誤用率の高

い上位 10位に入っている項目について検討した結果、CとKの両方とも誤用率の高い項目は、

以下の 3項目だけであることを明らかにした。①思いがけない出来事・驚いた出来事の「が」、

② 名詞を修飾する節の主語と主文の主語が同じ時の「は」、③疑問補文「~か」で使われる

「が」。

また、花田(1998)は、中級日本語学習者 39名を対象に「は」と「が」の穴埋めテストと、

「は」と「が」の使い分けの判断基準を尋ねるアンケートを行った。アンケートでは、学習

者が「は」か「が」を選んだ理由を、キーワードで記入させた。その結果、学習者は様々な

キーワードで「は」と「が」を判断しているが、圧倒的に「主語」のキーワードが多かった。

次に多かったのが「主題」、3番目に多かったのは「従属節」であった。

上に述べたように、「は」と「が」の習得についてのこれまでの先行研究の中では、様々な

言語を母語にする学習者を対象に研究が行われてきたが、アゼルバイジャン語を母語とする

学習者を対象にした研究はない。そこで、本研究では、「は」と「が」の意味機能を細かく分

類し、誤用の傾向や学習者の判断の基準を探りたいと考えた。

3.研究目的と研究課題

本研究の研究目的は、バクー国立大学のアゼルバイジャン語母語話者、中・上級レベルの

学習者の「は」と「が」の習得上の問題点を明らかにすることである。具体的には、次の 2

点を研究課題とする。

課題 1:学習者にとって「は」と「が」の意味用法のうち、習得が困難なものは何か。

課題 2:学習者は、「は」と「が」の使い分けに、どのような判断基準を用いているか。

4.研究の方法

4.1 対象者

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調査の対象者はアゼルバイジャン語を母語とする日本語学習者 17名で、その内訳は以下の

通りである。① バクー国立大学で勉強している中級レベルの学習者、3年生 7名(学習時間

は 780時間)、② バクー国立大学の上級レベル学習者、4年生 6名(学習時間は 1140時間)。

③ バクー大学での 3年間の学習を経て、日本で 7か月の日本語の研修を受けている上級レベ

ルの学習者、4名(学習時間は 1250時間)。

4.2 内容

まず、野田(1985)、庵・高梨・中西・山田(2000)、モモサン(2004)から、「は」と「が」

の意味用法の中で、学習者が誤用を起こしやすいと予測される例文を 25文選んだ。そのうち

21が談話レベル、4が文レベルである。次に、例文を、学習者の理解可能な語彙と文型にな

るように書き換え、野田(1985)と庵・高梨・中西・山田(2000)を参考に用法を分類した。

ただし、初級レベルの中で使われる「が」は筆者独自の分類である。その結果、それらの例

文を 15項目に分類し、問題を作成した。そして、次の 3つの調査を実施した。

① 文章中の空欄に助詞を埋める問題(穴埋めテスト)

② 学習者に対するアンケート(アンケート調査)

③ アゼルバイジャン語から日本語に翻訳するテスト(翻訳テスト)

「は」と「が」の項目の分類と、それぞれの問題の件数は表 1の通りである。

表 1.「は」と「が」の項目別の問題の件数

4.2.1 穴埋めテスト

「は」と「が」の意味用法 15項目中から 14項目を対象に、15例文を用いて問題を作成し

た。15例文のうち 13例文は談話レベル、2例文は文レベルである。これらの例文の問題とな

る「は」と「が」の箇所を空欄にし、そこに適当な助詞を入れさせる穴埋めテストを作成し

た。空欄を作るときは、正答として「は」と「が」以外の助詞が入る可能性を避けるように

配慮したが、正答が 2つある問題も生じてしまった。これは「~は~が~です」の形で名詞

番号 「が」の用法項目

問題の件数

穴埋めテスト アンケート 翻訳テスト

1 新出の名詞に付く「が」 2 2 1

2 従属節の中で使われる「が」 8 6 2

3 疑問詞の後に来る「が」 1 1 3

4 初級レベルの文型の中で使われる「が」 6 5 1

5 「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「が」 2 2 1

6 述部に、前に出てきた名詞と同じ名詞がある時、主語に付ける「が」 2 1 X

7 多数の主語の中から一つ選ばせる質問とその答えの「が」 3 2 X

8 思いがけないことが起こった時の「が」 1 1 X

「は」の用法項目

1 既出の名詞に付く「は」 4 1 2

2 対比を表す「は」 4 2 2

3 疑問詞の前に来る「は」とその答えの「は」 4 4 5

4 「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「は」 1 1 1

5 従属節と主節の主語が同じ場合と違っている場合の「は」 2 2 X

6 「からだ」、「ためだ」を使った文の事実を述べる部分の後ろにつく「は」 1 X X

7 主語についての説明の時の「は」 X X 1

合計 41 30 19

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の性質を表す用法(「が」の用法項目の 5、「は」の用法項目の 4)である。これについては、

今回の調査の目的が「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す用法を調べることであるた

め、学習者が「~の~は~です」と回答した場合、「~は~が~です」だけを正答として扱う

ことにした。また、「は」と「が」以外の個所にも空欄を設け錯乱肢とした。穴埋めテストは

選択肢なしで自由に記入してもらう方式にした(資料1‐1参照)。

問題件数は全部で 50件で、そのうち「は」と「が」の問題件数は 41件で、9件は他の格

助詞が入る問題である。

4.2.2 アンケート調査

アンケートは、学習者が穴埋めテストで助詞を入れた後、その助詞を選んだ理由を説明す

るものである。説明ができない場合は、予め準備した「a.まだ習っていない」、「b.習っ

たが、忘れた」、「c.何となく正しいと思う」の中から当てはまる答えを一つ選んで、記号

を書くようにした(資料 1‐2参照)。穴埋めテストとアンケートは一つにまとめ、同時に行

った。それは、学習者に忘れないうちに説明してもらうためである。

穴埋めテストで対象にした 41件の「は」と「が」のうち、アンケート調査の対象にしたの

は、学習者にとって誤用しやすいと思われる 13項目、30件である。

4.2.3 翻訳テスト

翻訳テストは、アゼルバイジャン語から日本語に翻訳するテストである。翻訳テストの対

象にしたのは、15項目の「は」と「が」の意味用法から 10項目、10例文である。そのうち

8例文を談話レベル、2例文を文レベルにした。例文を選ぶ時、アゼルバイジャン語から目標

となる「は」と「が」の構文が正しく産出できるようなものだけを選び、「は」と「が」を正

しく産出できないと予測した項目は入れていない(資料 2参照)。

4.3 分析方法

まず、穴埋めテストの分析を行い、学習者の「は」と「が」に対するそれぞれの問題箇所

の回答の正答率を算出した。そして、表 1の分類にしたがって、それぞれの項目の平均正答

率を計算した。また、誤答として選ばれた助詞の傾向を知るために、助詞別に答えを集計し

た。

次に、翻訳テストの分析を行うために、穴埋めテストと同じ定義にしたがって、「は」と「が」

を項目別に分類した。各項目の正答率を明らかにして、穴埋めテストの結果と比較した。こ

こでは、学習者が穴埋めテストにある「は」と「が」の意味用法と同じような誤用を犯すか

どうかを検討した。

アンケート調査結果については、まず、何人の学習者が「は」と「が」の使い分けにどの

ような判断基準を用いて説明しているのか、その説明は適切か不適切か、説明できない学習

者が何人いるか、学習者の回答が正しいかどうかについて分析を行った。次に説明した学習

者の記述からキーワードを選び、それをカテゴリー化して、項目別に集計した。これは学習

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者がどのように「は」と「が」の用法に理解しているかを明らかにするためである。

5.結果

5.「は」と「が」の習得の難易度

この節では、「は」と「が」の意味用法のうち、習得が困難なもの(研究課題 1)を穴埋め

テストと翻訳テストの結果から明らかにする。

5.1.1 穴埋めテストから分かる難易度

表 2は、穴埋めテストの結果を「は」と「が」の項目別に分類し、正答率及び誤答として

選ばれた助詞の割合を示す。

表 2.「は」と「が」の正答・誤答の割合(%)

*太字(数字)は、正答率が70%未満であることを示す。

(1)「が」について

表 2の「が」の 8項目の中で平均正答率が高く(70%以上)、比較的習得が容易であると考

えられるものは、3項目である。それは、「昨日パーティーの会場で知らない男性が声をかけ

てきた。」のように新出の名詞につく「が」(71%)、「仕事やスキーで、7、8 回行ったことが

あります。」のように初級レベルの文型の中で使われる「が」(95%)、「A:だれが次の社長に

なるんですか。B:副社長の山田さんだと思います。」のように疑問詞の後に来る「が」(94%)

である。

一方、8 つの項目の中で平均正答率が比較的低く(70%未満)、学習者にとって習得しにく

いと思われる項目は、次の 5つである。この 5つの項目については、5.1.2で例文を挙げて

説明を行う。

① 述部に、前に出てきた名詞と同じ名詞がある時、主語に付ける「が」(平均正答率は 15%)

② 思いがけないことが起こった時の「が」(正答率は 18%)

③ 「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「が」(平均正答率は 41%)

番号 「が」の用法項目

問題数

平均正答率

誤答に選ばれた助詞

が は の で に を も X へ 1 新出の名詞に付く「が」 2 71% 12% 11% 0 6% 0 0 0 0 2 従属節の中で使われる「が」 8 65% 26% 1% 0 2% 3% 0 3% 0 3 疑問詞の後に来る「が」とその答え 1 94% 6% 0 0 0 0 0 0 0 4 初級レベルの文型の中で使われる「が」 6 95% 2% 0 0 0 2% 0 1% 0 5 「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「が」 2 41% 53% 0 0 3% 0 0 3% 0 6 述部に、前に出てきた名詞と同じ名詞がある時、主語に付け

る「が」 2 15% 85% 0 0 0 0 0 0 0

7 多数の主語の中から一つ選ばせる質問とその答えの「が」 3 45% 47% 0 0 0 0 8% 0 0 8 思いがけないことが起こった時の「が」 1 18% 29% 0 47% 6% 0 0 0 0 「は」の用法項目 は が の で に を も X へ 1 既出の名詞に付く「は」 4 82% 16% 0 0 0 0 0 2% 0 2 対比を表す「は」 4 85% 10% 0 0 0 3% 0 2% 0 3 疑問詞の前に来る「は」とその答えの「は」 4 92% 8% 0 0 0 0 0 0 0

4 「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「は」 1 35% 0 59% 0 6% 0 0 0 0 5 従属節と主節の主語が同じ場合と違っている場合の「は」 2 97% 3% 0 0 0 0 0 0 0 6 「からだ」、「ためだ」を使った文の事実を述べる部分の後ろ

につく「は」 1

58% 12% 0 12% 12% 0 0 6% 0

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④ 多数の主語の中から一つを選ばせる質問とその答えの「が」(平均正答率は 45 %)

⑤ 従属節の中で使われる「が」(正答率は 65%)

(2)「は」について

表 2の「は」の 6項目の中で平均正答率が高く、比較的習得が容易であると考えられるも

のは、4 項目である。それは、「話を聞いてみると、その男性は友人の教え子だった。」のよ

うに既出の名詞につく「は」(82%)、「A:田んぼの中に立っているあの人形は何ですか。B:

あれはかかしです」のように疑問詞の前に来る「は」とその答えの「は」(92%)、「ぼくはア

ルバイトがあるから、すぐ帰らなければならないんだ。」のように従属節と主節の主語が同じ

場合と違っている場合の「は」(97%)、「キリンはいますが、ゾウはいません。」のように

対比を表す「は」(85%)である。

一方、6 項目の中で平均正答率が低く、習得しにくいと思われる項目は、以下の 2 項目で

ある。この 2項目についても、5.1.2で例文を挙げて説明を行う。

① 「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「は」(正答率は 35%)

② 「からだ」、「ためだ」を使った文の事実を述べる部分の後ろにつく「は」(正答率は 58%)

習得しにくいと思われる項目の内容については 5.1.2で例文を挙げて述べる。

5.1.2 翻訳テストから分かる難易度

翻訳テストの結果を「は」と「が」の項目別に分類し、正答率及び誤答として選ばれた助

詞の割合を表 3にまとめた。

表 3.「は」と「が」の平均正答・誤答の割合(%)

*太字(数字)は、正答率が70%未満のものであることを示す。

(1)「が」について

表 3の「が」の 5項目の中で正答率が高い(70%以上)のは、新出の名詞につく「が」(82%)

と初級レベルの文型の中で使われる「が」(76%)で、この 2つは比較的習得がしやすいと考

えられる。

一方、5 つの項目の中で正答率が比較的低く(70%未満)、学習者にとって習得しにくいと

号 「が」の用法項目 問題の件数

平均正答率 誤答に選ばれた助詞

が は X で を に の

1 新出の名詞に付く「が」 1 82% 12% 6% 0 0 0 0

2 従属節の中で使われる「が」 2 35% 30% 35% 0 0 0 0

3 疑問詞の後に来る「が」とその答え 3 63% 25% 6% 2% 2% 2% 0

4 初級レベルの文型の中で使われる「が」 1 76% 0 6% 0 18% 0 0

5 「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「が」 1 59% 35% 6% 0 0 0 0

「は」の用法項目 は が X で を に の

1 既出の名詞に付く「は」 2 79% 6% 15% 0 0 0 0

2 対比を表す「は」 2 39% 6% 9% 0 46% 0 0

3 疑問詞の前に来る「は」とその答えの「は」 5 87% 1% 10% 0 0 2% 0

4 「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「は」 1 41% 0 0 35% 0 6% 18%

7 主語についての説明の時の「は」 1 88% 6% 6% 0 0 0 0

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思われる項目は、次の 3つである。

① 従属節の中で使われる「が」(平均正答率は 35%)

② 「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「が」(平均正答率は 59%)

③ 疑問詞の後に来る「が」とその答えの「が」(平均正答率は 63%)

この結果を穴埋めテストの結果と比較すると、従属節の中で使われる「が」と「~は~が

~です」の形で名詞の性質を表す「が」は、穴埋めテストでも翻訳テストでも平均正答率が

低く、同じ傾向にある。疑問詞の後に来る「が」とその答えの「が」の平均正答率は翻訳テ

ストのほうが低い(穴埋めテスト 94%、翻訳テスト 63%)。

(2)「は」について

「は」について 5項目の中で比較的習得が容易であると考えられるものは、既出の名詞に

つく「は」(79%)、疑問詞の前に来る「は」とその答えの「は」(87%)、主語についての説明

の時の「は」(88%)である。

一方、5 項目の中で平均正答率が低く、習得しにくいと思われる項目は、以下の 2 つであ

る。

① 対比を表す「は」(平均正答率は 39%)

② 「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「は」(平均正答率は 41%)

翻訳テストの結果を穴埋めテストの結果と比較すると、「~は~が~です」の形で名詞の性

質を表す「は」は、両方とも平均正答率が低くて、学習者にとって習得しにくいと考えられ

る。対比を表す「は」の場合、穴埋めテストでは平均正答率が高い(85%)が、翻訳テストの

平均正答率は低い(39%)。

穴埋めテスト(5.1.1)と翻訳テスト(5.1.2)の両方の結果から、学習者にとって「は」

と「が」の項目の中で、習得に問題があると思われる項目は以下の通りである。

① 述部に、前に出てきた名詞と同じ名詞がある時、主語に付ける「が」(穴埋めテスト 15%)

② 多数の主語の中から一つを選ばせる質問とその答えの「が」(穴埋めテスト 45%)

③ 従属節の中で使われる「が」(穴埋めテスト 65%、翻訳テスト 35%)

④ 「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「は」と「が」(穴埋めテスト「は」35%、「が」

41%、翻訳テスト「は」41%、「が」59%)

⑤ 思いがけないことが起こった時の「が」(穴埋めテスト 18%)

5.1.3 「は」と「が」の習得で困難な項目

5.1.1 と 5.1.2 で明らかになった「は」と「が」の習得が困難な項目について、穴埋めテ

ストと翻訳テストの例文を見て検討する。

(1)述部に、前に出てきた名詞と同じ名詞がある時、主語に付ける「が」

穴埋めテストの問題件数は 2つである。翻訳テストでこの項目についての問題はない。

例文は次の通りである。穴埋めテストで説明を求めた問題には 1、2、3のような番号を入れ、

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説明を求めない問題には 1-1、1-2、5-1などのような番号を入れた。太字は、その項目で問

題になる箇所であることを示す。

正答率及び誤答に選ばれた助詞の割合は表 4の通りである。

表 4.述部に、前に出てきた名詞と同じ名詞がある時、主語に付ける「が」

問題の番号 1‐1 2 平均正答率

正答率「が」 12% 18% 15%

助詞「は」 88% 82% 85%

この例文は、旧情報の場合は「は」を、新情報の場合は「が」を選ぶという問題である。

問題 1-1も 2も、正答率が非常に低いため、この問題のように、述部の名詞が先行する文に

現れ「旧情報」になった時、その文の主語が新情報になり、「が」をつけるという判断は学習

者にとって簡単ではないことが分かる。旧情報と新情報という観点から「は」と「が」を判

断する観点がないと考えられる。表 4が示すように、誤答に選ばれた助詞は「は」だけであ

る。

(2)多数の主語の中から一つを選ばせる質問とその答えの「が」

穴埋めテストの問題件数は 3つである。翻訳テストでこの項目についての問題はない。

例文は次の通りである。

正答率及び誤答に選ばれた助詞の割合は表 5の通りである。

表 5.多数の主語の中から一つを選ばせる質問とその答えの「が」

問題 10、10-1の正答率が低いことから、「多数の主語の中から一つを選ばせる質問」の用

法に対する判断は学習者にとって困難であることが分かる。

この結果を、疑問詞の前に来る「が」(正答率は 94%、例文:「だれが次の社長になるんで

すか」)と比べると、学習者にとっては、疑問詞を含む疑問文の「が」のほうが、疑問詞が入

っていない疑問文の「が」より容易であることが分かる。誤答で選ばれた助詞は「は」だけ

である。問題 11は「多数の主語から一つを選ばせる質問に対する答え」で、質問の場合より

正答率が高い。

(3)従属節の中で使われる「が」

穴埋めテストに問題件数は 8つあり、翻訳テストに問題件数は 2つある。

まず、穴埋めテストを分析する。正答率及び誤答に選ばれた助詞の割合は表 6の通りであ

A: 「ここから私の大学(1)見えますよ。」

B: 「あの古い建物(1-1)あなたの大学ですか。」

A: いいえ、あれ(1-2)大学ではありません。むこうの白い建物(2)大学です。

A: 「コーヒー(10)いいですか、こうちゃ(10-1)いいですか。」

B: 「そうですね、こうちゃ(11)いいです。

問題の番号 10 10‐1 11 平均正答率

正答率「が」 35% 35% 65% 45%

助詞「は」 53% 53% 35% 47%

助詞「も」 12% 12% 8%

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る。

表 6.従属節の中で使われる「が」①

表 6から、穴埋めテストの「従属節の中で使われる『が』」は、正答率によって次の 3つの

グループに分けることができる。1グループは正答率 40%未満(問題 24)、2グループは正答

率 40%以上-70%未満(問題 12、27-2、20)、3グループは正答率 70%以上(問題 25-1、25、

23、21)である。次に、正答率の低い順に検討する。

まず、正答率が低い 1グループの問題 24の例文は次の通りである。

堀さん(24)新しいマンションにひっこしたの(24-1)、子供(25)大きくなったからです。

問題 24に入る助詞は、名詞節の中に位置し、表 6から分かるように正答率が 18%で、「が」

の代わりに誤答として選ばれた助詞は「は」しかない。

次は、正答率が中程度の 2グループについて検討する。問題 12、20、27-2の例文は以下の

通りである。

問題 12に入る「が」は副詞節の中に位置し、正答率は 41%で、誤答として選ばれた助詞は問

題 24と同じく「は」だけである。このことから考えると、学習者は文頭に現れる名詞を「主

題」として認め、「は」を付ける傾向があると思われる(問題 19で「は」の正答率は 94%、

問題 27-1で「は」の正答率は 88%)。問題 24と問題 12を比べると、問題 24のほうが正答率

が低い。学習者にとって難しいのは、24が形式名詞「の」にかかる連体修飾節に位置してい

る「が」であり、また「~は~からです」という比較的に複雑な構文であるためではないか

と考えられる。

問題 20の従属節は名詞節で、問題 27-2の従属節は副詞節である。問題 20(59%)と問題

27-2(53%)は、問題 24(18%)や問題 12(41%)とは、例文の構造が違い、従属節が文中に

位置している。このような従属節の中に使われている「が」の選択は、文頭に来る従属節の

名詞の場合に「が」を選ぶよりは容易であると考えられる。表 6から分かるように、問題 24

と問題 12の場合は、誤答に選ばれたのは「は」だけであるが、問題 20と問題 27-2の場合は、

「に」、「の」、「を」や「X」など様々な助詞が誤答に選ばれた。このことから、文中に出てく

る名詞句は格関係が把握しにくいのではないかと考えられる。

問題の番号 12 20 21 23 24 25 25-1 27-2 平均正答率

正答率「が」 41% 59% 94% 88% 18% 88% 76% 53% 65%

助詞「は」 59% 23% 82% 12% 18% 17% 26%

助詞「の」 6% 1%

助詞「に」 6% 12% 2%

助詞「を」 6% 6% 12% 3%

無助詞「X」 6% 6% 6% 6% 3%

今の社長(12)やめたら、だれ(13)次の社長になるんですか。

お母さん(19)ケーキを作って、子供たち(20)学校から帰ってくるのを待っていました。

A: 「田んぼの中に立っているあの人形(26)何ですか。」

B: 「あれ(27)かかしです。かかし(27-1)鳥(27-2)米を食べにこないようにするために立ててあるんです。」

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次は、正答率が比較的高い 3グループについて検討する。問題 21、23、25、25-1の例文は

以下の通りである。

問題 21、23、25、25-1は全て副詞節で、問題 21(94%)と問題 23(88%)の場合は、「が」の

代わりに「に」を選択した 1人の学習者を除くと、同じような正答率になる。問題 21は従属

節が文頭、問題 23は文中にあり、構造が違うにもかかわらず両者ともに正答率が高い。この

理由として、従属節の述部に位置している動詞の「終わる」と「ある」の影響が考えられる。

つまり、学習者は従属節の位置にかかわらず、述部の影響で「が」を選択したのではないか

と考えられる。述部による選択の基準については、5.2.3(2)で改めて分析する。

問題 25(88%)と問題 25-1(76%)は従属節が文頭に位置していないため、学習者にとって

「は」より「が」を選択しやすいと考えられる。両方の問題の正答率及び誤答に選ばれた助

詞がほぼ同じなのは、両方の問題が入っている従属節の構文が同じためであろう。

次に、翻訳テストから分かる誤用の傾向を分析する。学習者に翻訳してもらった従属節の

問題は、問題 7と問題 17の 2つで、例文は以下の通りである。

正答率と誤答に使われた助詞の割合は表 7の通りである。

表 7.従属節の中で使われる「が」②

問題の番号 7 17 平均正答率

正答率「が」 18% 52% 35%

助詞「は」 35% 24% 30%

無助詞「X」 47% 24% 35%

問題 7も問題 17も従属節が例文の文頭に位置している。誤答に使われた助詞は「は」だけで

あるが、助詞を使わない学習者もいた。「は」を使う誤用の傾向は、穴埋めテストと同じであ

る。翻訳テストの結果からも、学習者のほとんどは従属節の形式をあまり認識できないと考

えられるが、問題 17の正答率(52%)は問題 7(18%)に比べて高い。問題 7の場合は、無助

詞で翻訳した学習者が問題 17の場合より多いことから、「みんなが遊んでいる」より「みん

な遊んでいる」のほうが言いやすいことが考えられる。また、問題 17の場合は「~が~たい」

という文型に引きずられているのではないかと考えられる。

(4)「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「は」と「が」

穴埋めテストに問題件数は 3つあり、翻訳テストに問題件数は 2つある。

A: 「今日、試験(21)終わったあと、一緒にのみに行かない。」

B: 「ぼく(22)アルバイト(23)あるから、すぐ帰らなければならないんだ。」

堀さん(24)新しいマンションにひっこしたのは、子供(25)大きくなって、家(25-1)狭くなったからです。

Hamı oynayıb-əylənən vaxt, Cəmil dərs oxuyur.

みんな(7)遊んでいる時、ジャミルさんは勉強していました

A: Yoşida san, sabah axşam kinoya baxmağa gedəcəksən?

B: Uşaqlar getmək istəsələr mən də gedəcəyəm.

A: 「吉田さん、明日の晩のぼんおどりに行きますか。」

B: 「子供(17)行きたいといったら、私もいきます。」

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まず、穴埋めテストの結果を分析する。正答率及び誤答に選ばれた助詞の割合は表 8の通

りである。

表 8.「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「は」と「が」①

問題の番号 28 問題番号 29 30 平均正答率

正答率「は」 35% 正答率「が」 71% 12% 42%

助詞「の」 59% 助詞「は」 29% 76% 52%

助詞「に」 6% 助詞「に」 6% 3%

無助詞「X」 6% 3%

問題は 3問で、例文は以下の通りである。

問題 28と問題 29を一緒に見ると、いずれも「あのあたりは環境がいいです」と答えたの

は 17人のうち 6人、「あのあたりの環境はいいです」と答えたのは 17人のうち 5人である。

問題 29(71%)と問題 30(12%)は同じ用法であるにもかかわらず正答率の差がとても大きい。

この理由は、後者の文脈では「あのあたりは」という言葉が省略されているが、それに気づ

かないためと考えられる。また、問題 30は「は」(76%)も許容となることが正答率の低さに

影響してしまったと考えられる。

問題 28では、選ばれた助詞は「の」が一番多い。アゼルバイジャン語では、「このあたり

は環境がいいです」の構造を持つ文の場合は「は」の代わりに「の」が使われることが、学

習者の助詞の選択に影響を与えたと考えられる。

次は、翻訳テストから分かる誤用の傾向を分析する。例文は以下の通りである。

正答率及び誤答に選ばれた助詞の割合は表 9の通りである。

表 9.「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「は」と「が」②

翻訳テストを穴埋めテストと比べると、概ね同じ傾向が見られる。問題 14と問題 15を一

緒に見ると、「この町は物価が安いです」と翻訳したのは 17人のうち 7人、「この町の物価は

安いです」と翻訳したのは 17人のうち 2人である。問題 14で「で」、「の」、「に」を使った

理由は、アゼルバイジャン語では、「この町は物価が安くていいです」の場合は「は」の代わ

りに場所を表す場合は「で」と「に」、所有格を表す場合は「の」が使われるためだと考えら

れる。

今度、山中町に引っ越すことにしました。

あのあたり(28)環境(29)いいですし、アパートの家賃も安いですから。

ただ、交通が不便なの(30)問題ですが。

Bu şəhərdə qiymətlər ucuz ve sərfəlidir.

この町(14)物価(15)安くていいですね。

問題の番号 14 問題番号 15

正答率「は」 41% 正答率「が」 59%

助詞「の」 18% 助詞「は」 35%

助詞「で」 35% 無助詞「X」 6%

助詞「に」 6%

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(5)思いがけないことが起きた時の「が」

穴埋めテストの問題件数は1つである。翻訳テストでこの項目についての問題はない。例

文は次の通りである。

A: 「おい、たいへんだ。事務所(14)火事だ。すぐ消防車を呼んでくれ。」

正答率及び誤答に選ばれた助詞の割合は表 10の通りである。

表 10.思いがけないことが起きた時の「が」

問題 14は思いがけないことが起きた時や何か発見したことを述べる文である。「が」の代

わりに選択された「で」の(47%)回答から、学習者は「思いがけないことが起きた時や何

か発見したときの『が』」の用法を「場所で動作が起こっている時の『で』」の用法と認識し

たと考えられる。また、アゼルバイジャン語ではこのような文脈でいつも「で」が使われて

いるため、学習者が「で」を選んだのではないかと思われる。「が」の代わりに「は」(29%)

を選んだ理由としては、文頭に位置している主語の場合は、学習者が「は」を選びやすいの

ではないかと考えられる。

5.2 「は」と「が」を選ぶ学習者の判断基準

この節では、学習者が「は」と「が」の使い分けに、どのように判断基準を用いているか

(研究課題 2)を検討する。まず、「は」と「が」について学習者がどの程度適切な説明でき

るか、また、それが正答とどう関係しているかを見る。次に、学習者が「は」と「が」をど

ういう判断基準で選んでいるかを分析する。最初の問題に答えるために、添付資料 5から、

アンケートの回答を「は」と「が」の項目別に、「説明がある」場合と「説明がない」場合に

分類した。そして「説明がある」場合は、筆者の基準で「適切な説明」と「不適切な説明」

に分け、それぞれについて、正答率・誤答率を求めた。「説明がない」場合も正答率・誤答率

求めた(資料 3参照)。そして、それを「が」については表 11に、「は」については表 12に

項目別にまとめた。以下に、それぞれ分析する。

5.2.1「が」についての説明

まず、全体的な傾向を明らかにするために、、平均値を見る。「答えが正しい」場合、学習

者が適切に説明をしている割合は 13%、不適切な説明をしている割合は 5%、説明がない割合

は 57%である。この数値から、適切な説明ができた学習者は大変少ないことが分かる。「説明

がない」学習者のうち、多くは「何となく正しいと思う」(62%)という回答を選び、「まだ習

っていない」(1%)、「習ったが、忘れた」(5%)と答えた学習者は少ない(資料 3参照)。

問題の番号 14

正答率「が」 18%

助詞「で」 47%

助詞「は」 29%

助詞「に」 6%

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表 11.「が」についての適切な説明の割合

番号

「が」の用法項目

答えが正しい 正答率

誤答率 適切な説明 不適切な説明 説明がない

1 新出の名詞に付く「が」 0% 15% 56% 71% 29% 2 従属節の中で使われる「が」 4% 12% 49% 65% 35% 3 疑問詞の後に来る「が」 24% 0% 70% 94% 6% 4 初級レベルの文型の中で使われる「が」 46% 9% 39% 94% 6% 5 「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す

「が」 6% 6% 29% 41% 59%

6 述部に、前に出てきた名詞と同じ名詞がある時、主語に付く「が」

6% 0% 12% 18% 82%

7 多数の主語の中から一つを選ばせる質問とその答え

11% 0% 40% 51% 49%

8 思いがけないことが起こった時の「が」 6% 0% 12% 18% 82%

平均 13% 5% 38% 57% 43%

*太字(数字)は、適切な説明の割合が20%未満であることを示す。

次に、項目別に違いを見ると、次の 4つのグループに分けられる。ここでは、基準として、

正答率の 70%以上を高い、適切な説明の 20%以上を比較的高いと判断した。

(1)適切な説明の割合も正答率も比較的高い項目

3「疑問詞の後に来る『が』」(24%)、4「初級レベルの文型の中で使われる『が』」(46%)は、

正答率はいずれも高く(94%)、説明もできている。初級レベルで使われる『みんなの日本語

I,II』に両方の項目についての指導があり、学習者によく使われる項目であるため、他の項

目と比べるとよくできたと考えられる。

(2)適切な説明の割合が低いが、正答率は高い項目

1「新出の名詞に付く『が』」は、適切な説明の割合が 0%であるにもかかわらず正答率が高

い(71%)。適切な説明ができなくても「が」を選んだことから、学習者が暗示的な知識を持

っているのではないかと考えることができる。

(3)適切な説明の割合が低いが、正答率がそれほど低くない項目

2「従属節の中で使われる『が』」(4%)、5「『~は~が~です』の形で名詞の性質を表

す『が』」(6%)、7「多数の主語の中から一つを選ばせる質問とその答えの『が』」(11%)

の 3項目は適切な説明はできないが、正答率はそれほど低くないことから、学習者は説明で

きなくても、助詞を選ぶことができたことが分かる。ここでも、学習者がある程度暗示的な

知識を持っているのではないかと考えられる。

(4)適切な説明も、正答率も低い項目

8「思いがけないことが起こった時の『が』」(6%)、6「述部に、前に出てきた名詞と同じ名

詞がある時、主語につく『が』」(6%)で適切な説明もできず、正答率はいずれも低い(18%)。

この 2項目について説明も助詞の選択も学習者にとって簡単ではなかったことが分かる。

最後に、適切な説明及び正答率が低い項目を低い順番に並べると次の通りである。①従属

節の中で使われる「が」(4%)、②思いがけないことが起こった時の「が」(6%)、③述部に、

前に出てきた名詞と同じ名詞がある時、主語につく「が」(6%)、④「~は~が~です」の形

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で名詞の性質を表す「が」(6%)、⑤多数の主語の中から一つを選ばせる質問とその答えの

「が」(11%)

5.2.2 「は」についての説明

全体的な傾向として、「答えが正しい」場合、学習者が適切な説明をしている割合は 26%、

不適切な説明をしている割合は 9%、説明がない割合は 45%である。この数値から、「は」の場

合も、適切な説明ができた学習者は「説明がない」学習者より少ないことが分かる。また、

この結果を「が」の場合と比較すると、全体的に説明の適切さは「は」のほうが高いことか

ら、学習者にとって「が」より「は」のほうが説明しやすいと考えられる。「説明がない」学

習者のうち多くが「何となく正しいと思う」(57%)という回答を選び、「まだ習っていない」

(0.2%)、「習ったが、忘れた」(3%)を選んだ学習者は少ない(資料 3参照)。

表 12.「は」についての適切な説明の割合

「は」の用法項目 答えが正しい 正答率 誤答率

適切な説明 不適切な説明 説明がない 1 既出の名詞に付く「は」 35% 0% 53% 88% 12%

2 対比を表す「は」 32% 9% 44% 85% 15% 3 疑問詞の前に来る「は」とその答えの「は」 26% 14% 53% 93% 7%

4 「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「は」 18% 6% 12% 36% 64% 5 従属節と主節の主語が同じ場合と違っている場

合の「は」

20%

15%

62% 97% 3%

平均 26% 9% 45% 80% 20%

*太字(数字)は、適切な説明の割合が20%未満であることを示す。

次に、項目別に違いを見ると、次の 3グループに分けられる。ここでも、基準として、正

答率の 70%以上を高い、適切な説明の 20%以上を比較的高いと判断した。

(1)適切な説明の割合も正答率も高い項目

1「既出の名詞に付く『は』」(35%)、2「対比を表す『は』」(32%)、3「疑問詞の前に

来る「は」とその答えの『は』」(26%)は、いずれも比較的説明ができており、正答率が高

い。この 3つの項目の説明と答えは学習者にとってそれほど難しくなかったと言える。学習

者は、この 3項目についてある程度明示的な知識を持っていると考えられる。

(2)適切な説明の割合がそれほど低くないが、正答率が高い項目

5「従属節と主節の主語が同じ場合と違っている場合の『は』」(20%)は、適切な説明の

割合がそれほど低くないが、正答率が高かった。この項目については明示的な知識を持って

いない学習者がほとんどだが、暗示的な知識によって正答を得たものと考えられる。

(3)適切な説明の割合も正答率も低い項目

4「『~は~が~です』の形で名詞の性質を表す『は』は、適切な説明(18%)も、正答率も

(36%)低い。この項目の説明の内容をアンケートから調べてみると、学習者は「~は~が~

です」の形式を認識しておらず、「は」を選択した学習者の場合も、文頭に位置している名

詞を「主題だから」と説明していることが分かった。

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5.2.3学習者の「は」と「が」の理解

ここでは、学習者が「は」と「が」の用法をどのような言葉を使って説明しているかを検

討する。カテゴリー化する過程で花田(1998)を参考にしたが、アンケート調査の回答から

学習者の説明をキーワード化し、さらに、そのキーワードをカテゴリー化した時の分類は筆

者の視点による。

表 13は、「は」と「が」の項目別に、学習者が用いた「は」と「が」の説明のカテゴリー

を添付資料 4からまとめたものである。

表 13.学習者の用いた「は」と「が」の説明のカテゴリー

*太字(数字)は、学習者に多く用いたカテゴリーを示す。

項目によってアンケートで回答を求めた問題数が異なるため、厳密な比較はできないが、

表 13から、文法説明に多く使われているカテゴリーとそうでないものがあることが分かる。

学習者に多く使われたキーワードのカテゴリーは、次の 5つである。

① 主題:47件、②述部の前:32件、③文型:27件、④主語:19件、⑤対比:12件

そこで、この 5つのカテゴリーについて、「は」と「が」のどの項目で、どのように用い

られているかについて検討を行った。

(1)主題

表 14は、「主題」のカテゴリーを使って説明した「は」と「が」の項目をまとめたもので

ある。「主題」のカテゴリーに入っているキーワードは、「主題」、「テーマ」、「話題」、「知

っている情報」、「情報の繰り返し」、「『あれは~です』フォーム」である。

カテゴリー

項目

主題

主語

新情報

対比

述部の前

従属節

現象文

強調

選択疑問

は+疑問詞

~は~が~です

目的語

疑問詞+が

文型

名詞修飾

説明の合計

「が」の用法項目

1 新出の名詞に付く「が」 1 4 1 6

2 従属節の中で使われる「が」 9 3 9 4 1 2 28

3 疑問詞の後に来る「が」 4 4

4 初級レベルの文型の中で使われる「が」 22 2 21 1 46

5 「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「が」 3 1 1 1 1 7

6 述部に、前に出てきた名詞と同じ名詞がある時、主

語に付ける「が」

3 2 1 2 8

7 多数の主語の中から一つ選ばせる質問とその答え

の「が」

1 6 7

8 思いがけないことが起こった時の「が」 1 1 2

「は」の用法項目

1 既出の名詞に付く「は」 7 7

2 対比を表す「は」 1 2 10 2 15

3 疑問詞の前に来る「は」とその答えの「は」 15 7 1 2 2 27

4 「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「は」 2 1 1 1 5

5 従属節と主節の主語が同じ場合と違っている場合

の「は」

6 4 1 1 13

カテゴリーの合計 47 19 2 12 32 5 4 5 6 2 2 4 4 27 3

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表 14.カテゴリー「主題」の理解

学習者が「主題」を使って説明した 9項目のうち 5項目は「は」の用法で、4つは「が」

の用法である。このことから「主題」というカテゴリーは「は」と「が」の項目に関わらず、

広い範囲で使われていることが分かる。

また、回答を調べると、「主題」というカテゴリーで説明した学習者のほとんどは回答に

「は」を選んでいることが分かった。ここから学習者の「主題」=「は」という理解の仕方

が分かる。従属節の場合も、従属節の構造が認識できず、文頭の名詞句を「主題」として「は」

を選んだ学習者が多いと考えられる。「が」の 4項目の 7つの例文を調べると、文の頭部に

位置している名詞句を、学習者は「主題」と判断し、助詞の「は」を選ぶ傾向が見られた。

(2)述部の前

表 15は、「述部の前」のカテゴリーを使って説明した「は」と「が」の項目をまとめたも

のである。このカテゴリーに入っているキーワードは、「『見る』の前」、「動詞の可能形の

前」、「『ある/いる』の前」、「『終わる』の前」、「自動詞の前」、「『大きい』の前」である。

表 15.カテゴリー「述部の前」の理解 番号 項目 使用回数 正答 誤答 正答率

2 従属節の中で使われる「が」 9 9 0 65%

4 初級レベルの文型の中で使われる「が」 22 22 0 94%

5 「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「が」 1 1 0 41%

表 15から、多くの学習者が述部に位置している動詞や形容詞を手掛かりにして「が」を選

択したことが分かる。アンケート調査の結果を調べると、ほとんどの学習者は、助詞を述部

に位置している「終わる」、「ある」、「大きい」「いい」などの影響で選ぶことが明らかになっ

た。アンケートの回答を見ると「『終わる』は『が』を求める」、「『ある』は『が』を求

める」などと書かれている(資料 5参照)。また、従属節の中で使われる「が」の説明にも、

「述部の前」という説明が見られることから、従属節の中の助詞の選択も述部の表現を頼り

に判断している学習者が少なくないことが分かる。例えば、正答率が高い従属節の「今日、

試験(が)終わったあと、一緒にのみに行かない。」では、学習者の 24%が述部に位置して

いる「終わる」の影響で「が」を選んでいたことがアンケートから分かった。

(3)文型

表 16は、「文型」のカテゴリーを使って説明した「は」と「が」の項目をまとめたもので

番号 項目 使用回数 正答 誤答 正答率

「が」の用法項目 1 新出の名詞に付く「が」 1 0 1 71% 2 従属節の中で使われる「が」 9 1 8 65% 5 「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「が」 3 0 3 41% 6 述部に、前に出てきた名詞と同じ名詞がある時、主語に付く「が」 3 0 3 18% 「は」の用法項目 1 既出の名詞に付く「は」 7 6 1 88% 2 対比を表す「は」 1 1 0 85% 3 疑問詞の前に来る「は」とその答えの「は」 15 14 1 93% 4 「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「は」 2 2 0 36% 5 従属節と主節の主語が同じ場合と違っている場合の「は」 6 6 0 97%

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ある。「文型」のカテゴリーに入っているキーワードは、「~たことがある」、「~のほうが

~です」、「特別なルールがある」、「~に~が~ある」、「は+疑問詞」である。

表 16.カテゴリー「文型」の理解 番号 項目 使用回数 正答 誤答 正答率

「が」の用法項目

2 従属節の中で使われる「が」 2 1 1 65%

4 初級レベルの文型の中で使われる「が」 21 21 0 94%

「は」の用法項目

2 対比を表す「は」 2 1 1 85%

3 疑問詞の前に来る「は」とその答えの「は」 2 2 0 93%

表 16から、「文型」という判断で、助詞を選んだ学習者のほとんどは正答を得たことが分

かる。学習者の答えの中で一番多く、正答に繋がった項目は「初級レベルの文型の中で使わ

れる『が』」の項目である。ここから、学習者は初級レベルの文型では「は」と「が」の個

別の意味用法を理解しているのではなく、形として覚えていることが明らかである。例えば、

「この動物園にはゾウやキリン(が)いますか」のような例文では、「『~に~がいます』

フォーム」があるという理由で「が」を選択したことがアンケートから明らかになった。

(4)主語

表 17は、「主語」のカテゴリーを使って説明した「は」と「が」の項目をまとめたもので

ある。このカテゴリーに入っているキーワードは、「サブジェクト」、「主語」である。

表 17.カテゴリー「主語」の理解 番号 項目 使用回数 正答 誤答 正答率

「が」の用法項目

2 従属節の中で使われる「が」 3 0 3 65%

6 述部に、前に出てきた名詞と同じ名詞がある時、主語に付ける「が」 2 0 2 18%

「は」の用法項目

2 対比を表す「は」 2 2 0 85%

3 疑問詞の前に来る「は」とその答えの「は」 7 7 0 93%

4 「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「は」 1 1 0 36%

5 従属節と主節の主語が同じ場合と違っている場合の「は」 4 4 0 97%

表 17から、学習者が使用した 6項目の内容を調べると、4項目は「は」、2項目は「が」

である。「主語」のカテゴリーは、「主題」のカテゴリーと同じように広い範囲で使われた

ことが分かる。学習者の回答を調べると、「主語」というカテゴリーで選択された助詞は「は」

だけであった。このことから、学習者は「主語」=「は」と意識しているのではないかと考

えられる。そのため、「従属節の中で使われる『が』」の場合は、「主語」であることが分

かっていても「は」を選択することに繋がったのではないかと思われる。例えば、「堀さん

(が)新しいマンションに引っ越したのは、子供が大きくなったからです」という例文で、

ある学習者は「堀さんは主語だから」と説明したにもかかわらず「は」を選んでいた。

(5)対比

表 18は「対比」のカテゴリーを使って説明した「は」と「が」の項目をまとめたものであ

る。このカテゴリーに入っているキーワードは、「比較」、「対比」、「二つのものを比べる」

である。

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表 18.カテゴリー「対比」の理解

番号 項目 使用回数 正答 誤答 正答率

「が」の用法項目

6 述部に、前に出てきた名詞と同じ名詞がある時、主語に付く「が」 2 0 2 18

「は」の用法項目

2 対比を表す「は」 10 10 0 85%

表 18から、「対比」を表す「は」の項目を、対比というカテゴリーで説明した学習者は、

全て正答だったことが分かる。学習者は「対比を表す『は』」の構文を認識し、対比の関係

を「は」で表すことができたと言える。

その一方、「対比」という概念は「が」の項目の説明でも使われており、学習者の答えを

調べると、助詞は「は」になっている。例文は「A:あの古い建物(が)あなたの大学ですか。

B:いいえ、あれは大学ではありません。むこうの白い建物(が)大学です」である。ここで

は、学習者が「古い建物」と「白い建物」は対比されていると思ったためと考えられる。

6.まとめと今後の課題

課題 1 への回答として、「は」と「が」の意味用法のうち、学習者にとって習得しにくい

ものは以下の通りである。①述部に、前に出てきた名詞と同じ名詞がある時、主語に付ける

「が」、②思いがけないことが起こった時の「が」、③「~は~が~です」の形で名詞の性質

を表す「が」、④多数の主語の中から一つを選ばせる質問とその答えの「が」、⑤従属節の中

で使われる「が」。

課題 2への回答として、まず、①全体的に自分の答えを説明した学習者のほうが説明しな

い学習者より少ないこと、②答えが正しい学習者のうち適切な説明ができた学習者は説明が

できない学習者より少ないこと、③「は」の項目の適切な説明のほうが「が」より多かった

こと、④適切な説明の割合も正答率も低い項目は課題 1 と同じ項目であることが分かった。

また、学習者は「主題」、「述部の前」、「文型」、「主語」、「対比」に関係あるキーワードを

多く用いて「は」と「が」を理解していることが分かった。そして、学習者に多く使われた

説明のカテゴリーの中で正答と結び付いたものは「対比」、「文型」であった。それに対して、

「主題」、「主語」、「述部の前」のカテゴリーは、正答とあまり結び付いていなかった。

学習者にとって習得困難な項目の分析を通して、学習者は従属節の主語を「が」でマーク

するという明示的知識がないことや従属節の構造をあまり認識できないことが分かった。従

属節の主語に「が」をつけることについては、明示的な指導を行えば、効果が出る可能性が

ある。今後の課題として、明示的な説明が効果的であるかどうかを検証する必要がある。

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参考文献

(1)生田守・久保田美子(1997)「上級学習者における格助詞『を』『に』『で』習得上の問題点」

『日本語国際センター紀要』7号、国際交流基金日本語国際センター、17-34.

(2)庵功雄・高梨信乃・中西久美子・山田敏弘(2000)『初級を教える人のための日本語文法ハ

ンドブック』スリーエーネットワーク

(3)庵功雄・高梨信乃・中西久美子・山田敏弘(2001)『中上級を教える人のための日本語文法

ハンドブック』スリーエーネットワーク

(4)坂本正(1997)「第二言語習得研究と日本語教育―助詞『は』と『が』について―」真紀・

ハバード、坂本正、ジェームス・ディーヴィス編『日本語教育:異文化の懸け橋<三浦昭先

生古稀記念論>』アルク、175-183.

(5)謝 副台・金城 尚美(2005)「日本語学習者の『は』」と『が』の使い分けに関するー考察

―中国語母語話者と韓国語母語話者の場合―」『琉球大学留学生センター紀要』2号、留学

生教育、41-59.

(6)野田尚史(1985)『セルフマスターシリーズ 1はとが』くろしお出版

(7)野田尚史(1996)『新日本語文法選書 1はとが』くろしお出版

(8)花田敦子(1998)「学習者の『は』と『が』の使い分けの意識―キーワードによる分析―」『九

州大学留学生センター紀要』9号、65-84.

(9)モモサン(2004))「ミヤンマー人日本語学習者『は』『が』の学習上の問題点と指導上の留

意点について」『日本語教育指導者養成プログラム論集』3号、159-96.

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添付資料 1‐1

<穴埋めテストの例>

問1. A: 「ここから私の大学(1)見えますよ。」

B: 「あの古い建物(1‐1)あなたの大学ですか。」

A: いいえ、あれ(1‐2)大学ではありません。むこうの白い建物(2)大学です。

問2. A:「アイリンさん(3)何回ぐらい北海道へ行ったことがありますか。」

B:「仕事やスキーで、7、8回行ったこと(4)あります。」

問3. A:「川口さん(5)日曜日(5‐1)いつもどんなことをしていますか。」

B:「そうですね、そうじをしたり、せんたくをしたり、新宿しんじゅく

や渋谷しぶや

に遊び(5‐2)行ったりしています。」

A:「新宿と渋谷とどちらへよく行きますか。」

B:「そうですね、新宿へよく行きます。」

A:「新宿のほう(6)家から近いんですか。」

B:「そうです。」

問4. A:「この動物園(6‐1)はゾウやキリン(7)いますか。」

B:「キリン(8)いますが、ゾウ(8‐1)いません。」

問5. 昨日から 雪(9)降り始めた。雪(9‐1)今朝も降り続き、30smも積もった。

問6. A:「コーヒー(10)いいですか、こうちゃ(10‐1)いいですか。」

B:「そうですね、こうちゃ(11)いいです。こうちゃ(11‐1)お願いします。」

問7. A:「今の社長(12)やめたら、だれ(13)次の社長になるんですか。」

B:「副社長(13‐1)山田さんだと思います。」 問8. A:「おい、たいへんだ。事務所(14)火事だ。すぐ消防車を呼んでくれ。」

B:「えっ、火事?119番(14‐1)電話します。

問9. 昨日パーティーの会場で知らない男性(15)声をかけてきた。

話を聞いてみると、その男性(16)友人の教え子だった。

問10. 私(17)肉(17‐1)好きですが、兄(17‐2)魚(18)好きです。

問11. お母さん(19)ケーキ(19‐1)作って、子供たち(20)学校から帰ってくるの(20‐1)待って

いました。

問12. A:「今日、試験(21)終わったあと、一緒にのみに行かない。」

B:「ぼく(22)アルバイト(23)あるから、すぐ帰らなければならないんだ。」

問13. 堀さん(24)新しいマンション(24‐1)ひっこしたの(24‐2)、子供(25)大きくなって、

家(25‐1)狭くなったからです。

問14. A:「田んぼの中に立っているあの人形(26)何ですか。」

B:「あれ(27)かかしです。かかし(27‐1)鳥(27‐2)米を食べにこないようにするために

立ててあるんです。」

問15. 今度、山中町に引っ越すことにしました。あのあたり(28)環境(29)いいですし、アパートの 家賃も安いですから。ただ、交通が不便なの(30)問題ですが。

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添付資料 1‐2

<アンケートの例> Köməkçi sözləri tapıb tapşırıqda buraxılmış yerlərə yazdıqdan sonra hər bir tapşırığın altinda verilmiş anketin suallarını

cavablandırın.

(次の文の( )に適当な助詞を入れてください。それに各問題の下に載せてあるアンケートの質問にも答えて

ください。)

問1. A: 「ここから私の大学(1)見えますよ。」

B: 「あの古い建物( )あなたの大学ですか。」

A: いいえ、あれ( )大学ではありません。むこうの白い建物(2)大学です。

Anket

◆ (1) ve (2) -yə seçdiyiniz köməkçi sözlərin seçilmə səbəbini izah edin. İzah edə bilmirsinizsə, a,b,c,d içərisindən uyğun

gələn cavablardan birini seçib müvafiq nömrənin qabağına yazın.

((1)と(2)の助詞を選んだ理由を説明してください。説明ができない場合は、下のa,b,c,dの中から当ては

まる答えを一つ選んで、記号を書いてください。)

(1)

(2)

a) Hələ öyrənməmişəm (まだ習っていません)

b) Öyrənmişdim amma yadımdan çıxıb (習いましたが、忘れました)

c) İzah edə bilməsəm də təbii olaraq cavabı müəyyənləşdirə bilirəm.(何となく正しいと思います)

d)Başqa bir səbəb varsa özünüz sərbəst şəkildə yazın.(他の理由があれば、自由に書いてください)

添付資料 2

<翻訳テストの例> Aşağıda verilmiş mətnləri yapon dilinə tərcümə edin.

(下に書いてある文脈を日本語に翻訳してください。)

問1. Qədim zamanlarda bir baba və nənə vardı.

Günlərin bir günü həmin baba dağa ot biçməyə, nənə isə çaya paltar yumağa getmişdi.

(昔々、あるところに、おじいさんとおばあさん(が)いました。ある日、おじさん(は)山へ芝刈りに、

おばあさん(は)川へ洗濯に行きました。)

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添付資料 3.「が」についてのアンケート調査からの説明の結果①

  適切な説明 不適切な説明

正答 誤答 正答 誤答何となく正

しいと思う

習った

が忘れた

まだ習って

いない 正答  誤答

0 0 5 0 12 0 0 11 10% 0% 30% 0% 70% 0% 0% 64% 6%

0 0 0 5 10 2 0 8 40% 0% 0% 30% 58% 12% 0% 47% 23%

1 0 0 7 7 1 1 2 76% 0% 0% 41% 41% 6% 6% 12% 41%

  1-12 1 0 0 14 0 0 5 9

11% 6% 0% 0% 82% 0% 0% 29% 53%

 10-12 1 0 1 13 0 0 9 4

11% 6% 0% 6% 76% 0% 0% 52% 23%

1 0 0 4 12 0 0 6 66% 0% 0% 24% 70% 0% 0% 35% 35%

2 0 1 1 12 1 0 7 612% 0% 6% 6% 70% 6% 0% 41% 35%

1 0 4 0 11 1 0 11 16% 0% 23% 0% 65% 6% 0% 65% 6%

0 0 5 1 10 1 0 10 10% 0% 29% 6% 59% 6% 0% 59% 6%

0 0 1 6 9 1 0 2 80% 0% 6% 35% 53% 6% 0% 12% 47%

0 0 1 1 13 2 0 14 10% 0% 6% 6% 76% 12% 0% 82% 6%

 25‐1 27‐2

4 0 0 0 13 0 0 12 124% 0% 0% 0% 76% 0% 0% 70% 6%

8 0 3 0 5 1 0 5 047% 0% 18% 0% 29% 6% 0% 35% 0%

9 0 2 0 6 0 0 5 153% 0% 12% 0% 35% 0% 0% 29% 6%

7 0 1 0 8 1 0 8 141% 0% 6% 0% 47% 6% 0% 47% 6%

6 0 1 1 9 0 0 7 235% 0% 6% 6% 53% 0% 0% 41% 12%

9 0 0 0 8 0 0 8 053% 0% 0% 0% 47% 0% 0% 47% 0%

 17‐12 1 1 0 11 2 0 9 4

12% 6% 6% 0% 64% 12% 0% 53% 23%

0 0 1 3 11 1 1 1 120% 0% 6% 18% 64% 6% 6% 6% 70%

1 1 0 2 11 2 0 2 116% 6% 0% 12% 64% 12% 0% 12% 64%

70%

70%70%30%9

「が」の用法項目 問題番号

  説明がある

1018% 82% 82%

2

データなし53%53%

1124% 76% 76%

データなし

2024% 76% 76%

30% 70% 70%12

2335% 65% 65%

2129% 71% 71%

12% 88% 88%25

2441% 59% 59%

データなしデータなし

35%

35%

1324% 76% 76%

4

1

65%

65% 35%

35%

53%53%47%

30

29

18

7

6

47%47%53%

47% 53% 53%

76%76%24%

データなし

1424% 76% 76%

24% 76% 76%

51%

65%

94%

94%

41%

18%

2.述部に、前に出てきた名詞と

同じ名詞がある時、主語につ「が」

1.新出の名詞につく「が」

 説明がない正答率

71%

18%47%

1530% 70%

8.思いがけないことが起こった

時の『が』

7.「~は~が~です」の形で

名詞の性質を表す「が」

6.初級レベルの文型の中で

使われる「が」

5.疑問詞の後に来る『が』

4.従属節の中で使われる「が」

3.多数の主語の中から一つを

選ばせる質問とその答え

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添付資料 3.「は」についてのアンケート調査からの説明の結果②

  適切な説明 不適切な説明

正答 誤答 正答 誤答何となく正

しいと思う習った

が忘れた

まだ習って

いない  正答   誤答

6 1 0 0 10 0 0 9 135% 6% 0% 0% 59% 0% 0% 53% 6%

 1‐2 1‐2 9‐1 27‐1

2「からだ」「ためだ」を使った文の事

実を述べる部分の後ろにつく「は」 24‐1

6 0 1 1 9 0 0 5 435% 0% 6% 6% 53% 0% 0% 29% 24%

5 0 2 0 10 0 0 10 029% 0% 12% 0% 59% 0% 0% 59% 0%

 8‐1 17‐2

6 0 3 0 8 0 0 8 0

35% 0% 18% 0% 47% 0% 0% 47% 0%

3 0 3 1 8 2 0 7 318% 0% 18% 5% 47% 12% 0% 41% 18%

6 0 0 0 11 0 0 11 035% 0% 0% 0% 65% 0% 0% 65% 0%

3 0 3 0 11 0 0 10 118% 0% 17% 0% 65% 0% 0% 59% 6%

3 0 1 2 10 1 0 2 918% 0% 6% 11% 59% 6% 0% 12% 53%

3 0 3 0 10 1 0 10 118% 0% 17% 0% 59% 6% 0% 59% 6%

4 0 2 0 10 1 0 11 023% 0% 12% 0% 59% 6% 0% 65% 0%

16

「は」の用法項目 問題番号

1.既出の名詞に付く「は」

59%

 説明がない

データなし41% 59%

  説明がある

データなし

データなしデータなしデータなし

26

27

41% 59% 59%

53% 53%47%

5

3

59%41%

53% 47% 47%

3.対比を表す「は」

データなし

データなし

17

8

65% 65%

4.疑問詞の前に来る「は」とその

答えの「は」

35% 65% 65%

35% 65% 65%

59%

22

196.従属節と主節の主語が同じ

場合と違っている場合の「は」

5.「~は~が~です」の形で名詞の

性質を表す「は」28

35%

65%65%35%

65% 65%35%

正答率

88%

85%

93%

36%

97%

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添付資料 4.「が」についてのアンケート調査からのキーワー

調

昨日から 雪(が)降り始めた。雪は今日も降り続き、

30cmも積もった9 4 1

昨日パーティーの会場で知らない男性( が )声をか

けてきた15 1

2.述部に、前に出てきた名詞と同

じ名詞がある時、主語につく「が」

いいえ、あれは大学ではありません。むこうの白い建

物は(が)大学です2 3 2 1 2

A:コーヒー(が)いいですか,紅茶(が)いいですか。

B:そうですね、こうちゃがいいです10 6

A:コーヒー(が)いいですか,紅茶(が)いいですか。

B:そうですね、こうちゃがいいです11 1

「今の社長(が)やめたら、だれが次の社長になるん

ですか」12 3 1 1

お母さんはケーキを作って、子供たち( が)学校から

帰ってくるのを待っていました20 2 2

「今日、試験(が)終わったあと、一緒にのみに行かな

い」21 4 1

「ぼくはアルバイト( が )あるから、すぐ帰らなければ

ならないんだ」23 4 1

堀さん(が)新しいマンション(に)ひっこしたのは、子

供が大きくなったからです24 3 2 1 1

堀さんが新しいマンション(に)ひっこしたのは、子供

(が)大きくなったからです25 1 1

5.疑問詞の後に来る『が』今の社長がやめたら、だれ(が)次の社長になるんで

すか13 4

A: 「ここから私の大学(が)見えますよ」 1 10 1

B:仕事やスキーで、7,8回行ったこと(が)あります 4 2 9B:そうですね、新宿へよく行きます

A: 「新宿のほう(が)家から近いんですか」6 6 1

A:「この動物園にはゾウや

キリン(が)いますか」7 2 1 5

私は肉(が)好きですが、兄は」魚(が)好きです 18 8 1あのあたりは環境(が)いいですし、アパートの家賃も

安いですから29 1 1 1 1

あのあたりは環境はいいですし、アパートの家賃も安

いですから。ただ、交通が不便なの(が)問題ですが30 2 1

8.思いがけないことが起こった時

の『が』

A: 「おい、たいへんだ。事務所( が )火事だ。すぐ消

防車を呼んでくれ」14 1 1

「は」の用法項目

1.既出の名詞に付く「は」 話を聞いてみると、その男(は)友人の教え子だった 16 7

2.対比を表す「は」 B: 「キリン(は)いますが、ゾウ(は)いません。」 8 6 2

私(は)肉が好きですが、兄(は)魚が好きです 17 1 2 4

 A:「アイリンさん(は)何回

ぐらい北海道へ行ったことがありますか」3 5 2 1

A: 「川口さん(は)日曜日に

いつもどんなことをしていますか」5 4 3

A:田んぼの中に立っているあの人形(は)何ですか 26 4 2 B:「あれ(は)かかしです」 27 2 2 2

4.「~は~が~です」の形で名

詞の性質を表す「は」

あのあたり(は)環境がいいですし、アパートの家賃も

安いですから28 2 1 1 1

お母さん(は)ケーキを作って、子供たちが学校から

帰ってくるのを待っていました19 3 2 1

「ぼく(は)アルバイトがあるから、すぐ帰らなければ

ならないんだ」22 3 2 1

47 19 2 12 32 5 4 5 6 2 2 4 4 27 3

5.従属節と主節の主語が同じ場

合と違っている場合の「は」

3.疑問詞の前に来る「は」とその

答えの「は」

合計

3.多数の主語の中から一つを選

ばせる質問とその答え

4.従属節の中で使われる「が」

6.初級レベルの文型の中で使わ

れる「が」

7.「~は~が~です」の形で名

詞の性質を表す「が」

  学習者の説明のキーワード

  「が」の用法項目         例文

1.新出の名詞につく「が」

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添付資料5 アンケートの回答と翻訳① (a.まだ習っていない、b.習ったが、忘れた、c.何となく正しいと思う)

                   新出の名詞述部に前に出た名詞と同じ名詞がある時の「が」

問題番号 9 15 2

1 が(c) の(名詞修飾) は (動詞が主題になっているから)

2 が(雪、雨が降る文で「が」が使われますMin) が(c) は(対比的な文ですから)

3 が(自然についての情報ですから) は(主題) が(新情報ですから)

4 が(「雪」は主語ではなくて、目的語である) に(c) は(「白い建物」は主語ですから「は」を使った)

5 が(人間の自信にかかわらず自然的である) が(b) は(二つのものを比較する時「は」が使う)

6 が(c) が(c) は(c)

7 が(c) が(c) は(c)

8 が(c) の(c) は(c)

9 が(c) が(c) は(c)

10 は(c) が(b) が(b)

11 が(c) に(「声をかける」は「に」を求めるから) は(c)

12 が(c) が(c) が(a)

13 が(c) は(c) は(主題)

14 が(c) が(c) は(c)

15 が(c) は(c) は(c)

16 が(雨や雪について時「が」を使います) の(声は誰の声と表現されている) は(「建物」はテーマなので)

17 が(c) の(属性を表す) は(主語ですから)

正答率 94% 47% 18%

昨日パーティーの会場で知らない

男性(15)声をかけてきた

いいえ、あれは大学では

ありません。むこうの白い

建物(2)大学です

「は」と

「が」の用

法項目

  例文

習者の数

と説明

昨日から 雪(9)降り始めた。雪は

今日も降り続き、30cmも積もった

    多数の主語の中から一つを選ばせる質問とその答え 従属節の中に使われる「が」

10 11 12

は(二つから選択が求められている) が(決定されたものですから) は(主題)

は(勧められているから) が(c) が(c)

が(同じようなもの繰り返して質問する文ですから) は(二つの中から一つを選ぶ時) が(「~たら」の文で主語は「が」で表される)

が(c) は(「紅茶」は強調されている) は(主語ですから)

は(c) が(二つの中から一つを選ぶ時) は(c)

は(c) が(c) は(c)

が(c) が(c) が(c)

は(c) は(c) が(c)

は(c) が(c) は(c)

は(c) が(c) は(c)

が(c) は(c) は(みんな知っている人についての話)

が(c) が(c) が(c)

は(c) は(c) は(c)

も(c) が(c) は(c)

は(c) は(c) が(c)

が(c) が(c) は(テーマ)

も(c) が(c) が(c)

35% 65% 41%

A:コーヒーがいいですか,紅茶がいい

ですか

B:そうですね、こうちゃ(11 )いいです

A:コーヒー(10)いいですか,紅茶

( )いいですか

B:そうですね、こうちゃがいいです

今の社長(12)やめたら、

だれが次の社長になるんですか

20 21 23

が(c) が(「終わる」いつも「が」を求める) が(「ある」は「が」と使われている)

が(「子供たち。。。」従属節ですから) が(たぶん「終わる」いつも「が」を求める) が(「が」ある、いるMinna no Nihongo)

は(二つの主題の並びです) が(時間を表す従属節の中の「が」) X(「は」、「が」両方使われます)

が(「子供」は従属節の中に入るから) が(自動詞の前に「が」が使われる) が(c)

が(b) が(c) が(c)

が(c) が(c) が(c)

を(c) が(c) に(c)

が(c) が(c) が(c)

が(c) が(c) が(c)

が(c) が(b) が(b)

は(c) が(c) が(c)

が(c) が(c) が(c)

X(c) X(b) が(c)

は(c) が(c) が(ルールが決まっているから)

は(c) が(c) が(c)

の(c) が(終わる,始まるいつも「が」を求める) が(「ある」の目的語ですから)

が(話題) が(c) が(「ある」は「が」を求める)

59% 94% 88%

ぼくはアルバイト(23)ある

から、すぐ帰らなければならない

従属節の中で使われる「が」

お母さんはケーキを作って、子供たち

(20)学校から帰ってくるのを待っていま

した

今日、試験(21)終わった後、

一緒に飲みに行かない

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添付資料5 アンケートの回答と翻訳② (a.まだ習っていない、b.習ったが、忘れた、c.何となく正しいと思う)

    疑問詞+「が」

24 25 13

は(主題) が(「大きい」殆ど「が」と使われている) が(c)

が(「新しいマンショ ンに引越したの」はアクセントで言) が(c) が(「だれ+が」 Minna no Nihongo)

は(主題) は(主題) が(疑問詞+がですから)

は(主語) が(d) が(疑問詞+がですから)

が(b) が(b) が(x)

は(c) が(c) が(c)

は(c) が(c) が(c)

は(c) が(c) は(c)

は(c) が(c) が(c)

は(c) が(c) が(c)

は(c) が(c) が(知らない人についての話)

が(c) が(c) が(c)

は(c) が(c) が(c)

は(ルールが決まっているから) は(c) が(c)

は(c) が(c) が(c)

は(テーマ) が(c) が(c)

は(主語ですから) が(c) が(c)

18% 88% 94%

堀さん(24)新しいマンションに

ひっこうしたのは、子供が大きく

なったからです

堀さんが新しいマンションにひっこした

のは、子供(25)大きくなったからです

         従属節の中で使われる「が」

今の社長がやめたら、だれ(13)

次の社長になるんですか

 思いがけないことが起こった時 の「が」

14 29 30

は(b) が(「いい」は「がを求める」) は(c)

が(「火事」はアクセントで言われるから) が(あたりの環境はいい=あたりは環境がいいMinna ) は(c)

は(大事や新情報の時、「は」が使われます) が(名詞の修飾です) は(主題)

で(場所でイ ベントが行う時「で」が使う) が(c) が(目でき語)

は(c) が(b) は(c)

で(c) は(c) は(c)

に(c) が(c) X(c)

で(c) が(c) は(c)

は(c) は(c) は(c)

は(b) が(b) は(b)

で(c) は(c) は(な形容詞は名詞になるから)

が(c) が(c) が(a)

で(c) が(c) に(c)

で(c) が(c) は(c)

で(c) は(c) は(c)

が(c) は(テーマ) は(テーマ)

で(動作が行われるとき「で」が使われる) が(c) は(c)

18% 71% 12%

    「~は~が~です」の形で名詞の性質を表す「が」

おい、大変だ。事務所(14 )

火事だ。すぐ消防車を呼んでくれ

あのあたりは環境がいいです。ただ、

交通が不便なの(30)問題ですが

あのあたりは環境(29)いいです

ただ、交通が不便なのが問題ですが

4 6 1

が(「動詞+たことがある」使われている) が(「~ほうが~」使われている) が (可能性の動詞ですから)

が(「~たことがある、ない」Minna no Ni) が(「~のほうが~」Minna no Nihongo) が(見える、聞こえると「が」が使われますMi)

が(「~たことがある、ない」は一般です) が(情報の修飾は「が」で知らせる「~が近い」) が(見える、聞こえると「が」が使われます)

が(「動詞+たことがある」使われている) が(c) が(見える、聞こえると「が」が使われます)

が(「動詞+たことがある」使われている) が(「~ほうが~」使われている) が(~が見えるですから)

を(c) を(b) が(c)

が(「~たことがある、ない」は一般です) が(「~ほうが+形容詞」は意見を表す) が(見える、聞こえると「が」が使われます)

が(c) が(c) が(c)

が(c) が(c) が(c)

が(c) が(c) が(b)

が(c) が(c) が (可能性の動詞ですから)

が(「あります」の時「が」を使う) が(c) が (c)

が(「動詞+たことがある」使われている) が(「~ほうが~」使われている) が(見える、聞こえると「が」が使われます)

が(ある、いるの時、いつも「が」を使う) が(c) が(特別なルールがあります)

が(c) が(c) が(c)

が(「~たことがある」のフォ ームがある) が(2つの名詞から選ぶ「のほうが~です」) が(「見える」があるから「大学」は主語になる)

が(「~たことがある」のフォ ームがある) が(「~ほうが~」使われている) が(見える、聞こえると「が」が使われます)

94% 94% 100%

仕事やスキーで、7、8回

行ったこと(4)あります

A:そうですね、新宿へよく行きます

B:新宿のほう(6)家から近いんですかここから私の大学(1)見えますよ

  初級レベルの文型の中に使われる「が」

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添付資料5 アンケートの回答と翻訳③ (a.まだ習っていない、b.習ったが、忘れた、c.何となく正しいと思う

既出の名詞に付く「は」『~は~が』の形で名詞の性質を表す「は」

7 18 16 28

が(いる、ある殆ど「が」を求める) が(「好きだ」いつも「が」を求める) は(主題) は(主題)

が(いる、あるは「が」を求めるMinna no) が(「好きだ」いつも「が」を求めるMin ) は(c) は(あたりの環境はいい=あたりは環境がいい)

X(Minnaで「が」が使われ、日常生活で「は」) が(「~が好き」名詞に「が」で繋がる) は(情報の繰り返しです) は(主題)

が(「象やキリン」は目的語であるから「が」) が(対象であるから) は(話題になる) は(主語)

が(「~に~がいます」であるから) が(「好きだ」いつも「が」を求める) は(話題) の(修飾の「の」)

が(c) が(c) は(c) の(c)

が(「~に~がいます」であるから) が(「好きだ」いつも「が」を求める) は(c) の(c)

が(c) が(c) は(c) は(c)

が(c) が(c) は(c) の(c)

が(c) が(c) は(c) の(b)

が(x) が(c) は(話題になったから) の(c)

は(c) が(「好き」はいつも「が」を求める) は(c) は(c)

が(c) が(c) X(c) の(c)

が(c) が(c) は(c) の(c)

は(c) が(c) は(c) の(c)

が(「~がある/いる」)フォ ームがあるから が(好き、嫌いなどの述語の時「が」) は(テーマだから) の(属性を表す)

が(「~がある/いる」)フォ ームがあるから が(「好き」の場合は「が」です) が(話題) に(c)

82% 100% 88% 35%

あのあたり(28)環境がいいです

ただ、交通が不便なのが問題ですが

この動物園にはゾウや

キリン(7)いますか

私は肉( )好きです

が兄は魚(18)好きです

その男性(16)友達の

教え子だった

初級レベルの文型の中で使われる「が」

3 5 26 27

は(具体的に人を指定する) が(b) は(主題) が(c)

は(「アイ リン」はアクセントで言う) が(c) は(質問されているから) は(「あれ」についての説明)

は(アイ リンは主題ですから) は(川口は文の主題です) は(主題です、しかも「は+疑問視」) は(古い情報を繰り返す)

は(主語) は(「川口」は主語、そして対象である) は(話題) は(主語ですから)

は(c) が(川口のすること話題なので「が」) は(c) は(c)

は(c) は(b) は(c) は(c)

は(c) は(c) は は(c)

は(c) は(c) は(c) は(c)

は(c) が(c) は(c) は(c)

は(c) は(c) は(c) は(c)

は(「アイ リン」は話題になっているから) は(c) は(c) は(c)

は(「アイ リン」はサブジェ クトだから) は(「川口」はサブジェ クトだから) は(c) は(c)

は(主題) は(主題) は(c) は(c)

は(c) は(c) は(c) は(ルールが決まっているから)

は(c) は(c) は(c) は(c)

は(テーマ) は(テーマ) は(テーマ) は(「あれは~です」のフォ ームがあるから)

は(話題を表す「アイ リン」は主語ですから) は(主語ですから) は(話題を表す) は(主語ですから)

100% 76% 100% 94%

アイリンさん(3)何回ぐらい北

海道へ行ったことがありますか

川口さん(5)日曜日に

いつもどんなことをし

てかていますか

田んぼの中にあるあの人形(26)

何ですか

A:田んぼの中にあるあの人形は

何ですか

B:「あれ(27)かかしです

  は+疑問詞とその答えの「は」

従属節と主節の主語同じ場合と違っている場合

従属節と主節の主語同じ場合と違っている場合

22 17 8 19

は(主題) は(前者と後者は対比的である) は(前者は肯定、後者は否定から) は(主題)

は(「僕」はアクセントで言われる) は(対比的な文ですから) は(対比的な文ですからMinna no Nihongo) は(「お母~を作った」普通の文ですから)

は(主題) は(対比的な文ですから) は(前者と後者は対比的である) は(二つの主題の並びです)

は(主語) は(主語) は(対比的な文ですから) は(主語)

は(c) は(二つのものを比較される) は(二つのものを比較する時「は」が使う) は(b)

は(c) は(c) を(c) は(c)

は(c) は(c) が(c) は(c)

は(c) は(c) が(c) は(c)

は(c) は(c) は(c) は(c)

は(b) は(c) は(c) は(c)

は(c) は(c) は(c) は(c)

は(c) は(c) が(c) は(c)

は(c) は(c) は(c) が(c)

は(c) は(c) は(ルールが決まっているから) は(c)

は は(c) は(c) は(c)

は(テーマ) は(テーマ) は(対比的な文ですから) は(テーマ)

は(主語ですから) は(主語ですから) が(「~がある/いる」)フォ ームがあるから は(主語ですから)

100% 100% 71% 94%

この動物園にはゾウや

キリンがいますか?キリン( )

いますが、ゾウ(8)いません

ぼく(22)アルバイトがある

から、すぐ帰らなければならない

んだ

お母さん(19)ケーキを作って、

子供が学校から帰ってくるのを待って

いました

私(17)肉が好きです

が兄( )魚が好きで

  対比を表す「は」