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1 シミの原因となるメラニン色素が表皮細胞内で分解される現象を実証 美白有用成分「A エー M エム エー 」にメラニン色素分解促進効果を確認 平成 25 年 11 月 28 日 富士フイルム株式会社(社長:中嶋 成博)は、シミの原因となるメラニン色素を含むメラノソーム ※1 と呼ばれる 袋状の細胞内小器官が、表皮細胞(ケラチノサイト) ※2 内の消化器官「ライソソーム」 ※3 により分解される経時変化 を可視化して確認しました。また、ケラチノサイト内でのメラノソーム崩壊に、メラノソーム構造タンパク「gp100」 ※4 の減少が関係することも実証しました。さらに、メラニン色素がケラチノサイト内で分解される現象を実証。分解を 促進する成分の研究の中で、美白有用成分「AMA」にメラニン色素分解促進効果があることを確認しました。当社は、 これらの研究結果を、高い美白効果を有するスキンケア化粧品の開発に応用していきます。なお、この研究内容は 11 月 29 日に開催される「第 73 回日本化粧品技術者会(SCCJ)研究討論会」にて発表します。 研究の成果 1.ケラチノサイト内において、メラノソームが分解される経時変化を可視化 メラノサイトから抽出したメラノソームをケラチノサイトに取り込ませ、培養時間を追ってメラノソームの形態変化 を電子顕微鏡で確認しました。その結果、取り込まれたメラノソームが細胞内の消化器官であるライソソームによって 分解されることを明らかにしました。 500nm 6h メラノソーム ライソソーム メラノソームと ライソソームが融合 24h 120h メラノソームの分解が 完了したライソソーム メラノソームの外縁がぼやけ、縮小し、 ライソソームによるメラノソーム分解 が進行している。 メラノソームがほとんど観察されない ため、ライソソームによるメラノソーム 分解が完了していることがわかる。 【図 1】ケラチノサイト内におけるメラノソーム形態の経時変化  2.ケラチノサイト内でのメラノソーム崩壊とメラノソーム構造タンパク「gp100」の減少が関係することを実証 メラノソームは、「gp100」と呼ばれるタンパクが層状に重なり合って配列して構造を形成し、ラグビーボール状 の形態をなすことが知られています。このメラノソーム構造タンパク「gp100」が骨組みとなり、そこにメラニン 色素が沈着していきます(図 2)。メラノソームを取り込んだケラチノサイトの観察を続けたところ、18 時間が 経過した時点で、構造が崩壊したメラノソームが観測されました ( 図 3)。また「gp100」を免疫蛍光染色にて観察 したところ、時間の経過とともに「gp100」が減少していく様子が確認できました(図4)。 この結果から、ケラチノサイトに取り込まれたメラノソームは、「gp100」の減少によってその構造を崩壊させてい くことがわかりました。このメラノソームの構造の崩壊によってメラニン色素も分解されていくものと考えられます。 取り込み後 3h 取り込み後 18h 「gp100」 メラニン色素 【図 2】メラノソームの形態 メラノソーム構造タンパク「gp100」が骨格となって 構造を形成し、そこにメラニン色素が沈着している。 【図 3】メラノソームの構造が崩壊する様子(電子顕微鏡画像) 400nm 400nm

シミの原因となるメラニン色素が表皮細胞内で分解される現 …−1− シミの原因となるメラニン色素が表皮細胞内で分解される現象を実証

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Page 1: シミの原因となるメラニン色素が表皮細胞内で分解される現 …−1− シミの原因となるメラニン色素が表皮細胞内で分解される現象を実証

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シミの原因となるメラニン色素が表皮細胞内で分解される現象を実証美白有用成分「A

エー

Mエム

Aエー

」にメラニン色素分解促進効果を確認

平成 25 年 11 月 28 日

 富士フイルム株式会社(社長:中嶋 成博)は、シミの原因となるメラニン色素を含むメラノソーム ※1 と呼ばれる袋状の細胞内小器官が、表皮細胞(ケラチノサイト)※2 内の消化器官「ライソソーム」※3 により分解される経時変化を可視化して確認しました。また、ケラチノサイト内でのメラノソーム崩壊に、メラノソーム構造タンパク「gp100」※4

の減少が関係することも実証しました。さらに、メラニン色素がケラチノサイト内で分解される現象を実証。分解を促進する成分の研究の中で、美白有用成分「AMA」にメラニン色素分解促進効果があることを確認しました。当社は、これらの研究結果を、高い美白効果を有するスキンケア化粧品の開発に応用していきます。なお、この研究内容は 11 月 29 日に開催される「第 73 回日本化粧品技術者会(SCCJ)研究討論会」にて発表します。

研究の成果1.ケラチノサイト内において、メラノソームが分解される経時変化を可視化メラノサイトから抽出したメラノソームをケラチノサイトに取り込ませ、培養時間を追ってメラノソームの形態変化を電子顕微鏡で確認しました。その結果、取り込まれたメラノソームが細胞内の消化器官であるライソソームによって分解されることを明らかにしました。

500nm

核核

6h

メラノソーム

ライソソーム

メラノソームとライソソームが融合

核核

核核

24h 120h

メラノソームの分解が完了したライソソーム

メラノソームの外縁がぼやけ、縮小し、ライソソームによるメラノソーム分解が進行している。

メラノソームがほとんど観察されないため、ライソソームによるメラノソーム分解が完了していることがわかる。

【図1】ケラチノサイト内におけるメラノソーム形態の経時変化 

2.ケラチノサイト内でのメラノソーム崩壊とメラノソーム構造タンパク「gp100」の減少が関係することを実証 メラノソームは、「gp100」と呼ばれるタンパクが層状に重なり合って配列して構造を形成し、ラグビーボール状の形態をなすことが知られています。このメラノソーム構造タンパク「gp100」が骨組みとなり、そこにメラニン色素が沈着していきます(図 2)。メラノソームを取り込んだケラチノサイトの観察を続けたところ、18 時間が 経過した時点で、構造が崩壊したメラノソームが観測されました ( 図 3)。また「gp100」を免疫蛍光染色にて観察したところ、時間の経過とともに「gp100」が減少していく様子が確認できました(図 4)。 この結果から、ケラチノサイトに取り込まれたメラノソームは、「gp100」の減少によってその構造を崩壊させていくことがわかりました。このメラノソームの構造の崩壊によってメラニン色素も分解されていくものと考えられます。

取り込み後3h 取り込み後18h

「gp100」

メラニン色素

【図2】メラノソームの形態メラノソーム構造タンパク「gp100」が骨格となって構造を形成し、そこにメラニン色素が沈着している。

【図3】メラノソームの構造が崩壊する様子(電子顕微鏡画像)

400nm 400nm

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72h0h 24h 48h

緑色:gp100、青色:細胞核、赤色:ケラチノサイト

【図4】メラノソームを取り込んでいるケラチノサイトの経時変化(蛍光顕微鏡)メラノソームを取り込んだケラチノサイトを培養し、時間ごとに固定して蛍光染色した。

3.メラニン色素がケラチノサイト内で分解される現象と、美白有用成分「AMA」のメラニン色素分解促進作用を確認 メラノソームを取り込ませたケラチノサイト内のメラニン色素量を培養時間ごとに定量したところ、メラニン色素量の減少を確認(図 6)。これによりメラニン色素がケラチノサイト内で分解される現象を実証できました。また、メラニン色素分解促進成分の研究を進めたところ、美白有用成分「AMA」に、メラニン色素とメラノソーム構造 タンパク「gp100」の分解促進作用があることを確認しました(図 5、6)。

50%

60%

70%

80%

90%

100%

110%

120%

1 10 100 1000

AMA濃度(μg/mL)

gp100相対量

100%

84%77%

60%

80%

100%

120%

0μg/mL 50μg/mL

0h 24h

相対メラニン量

AMA添加量

添加後培養時間

■実験方法・ メラノソームを取り込ませたケラチノサイトに対して「AMA」を添加し培養。48 時間後に「gp100」を蛍光染色し、定量した。

・ 「AMA」無添加を 100% として 「gp100」 量の相対値を測定した。■実験結果  「AMA」添加量の増加に伴い、「gp100」の分解が促進

された。

■実験方法・ メラノソームを取り込ませたケラチノサイトに「AMA」

を添加し、24 時間培養。その後、メラニン量を定量した。・ 培養開始時(0 時間)を 100% としてメラニン量の相対

値を示した。■実験結果  24 時間後、「AMA」無添加の場合にはメラニン量が

16%減少したが、「AMA」を添加した場合にメラニン分解が促進され、23%減少した。

【図5】「AMA」のメラノソーム「gp100」分解促進作用 【図6】�ケラチノサイト内でのメラニン色素分解現象と、「AMA」の分解促進作用

研究の背景 シミや美白の研究において、「メラニン色素生成を促す因子」や「ケラチノサイトへのメラニン色素輸送を促す因子」に関する報告は多くみられますが、ケラチノサイト内のメラニン色素の蓄積や、メラニン色素の分解についての報告は多くありません。また、メラニン色素の分解については、細胞内の消化器官である「ライソソーム」の関与が示唆されてきましたが、その詳細は分かっていませんでした。 

研究方法① 皮膚と同じ状態で研究を行うために、メラニン色素ではなくメラノソームを抽出し、ケラチノサイトに取り込ませ、

培養時間を追って 6 時間、24 時間、120 時間後のケラチノサイト内での形態変化を電子顕微鏡で観察しました。また、メラニン色素量の経時変化も測定しました。

② 上記①と同様にメラノソームを取り込んだケラチノサイトに対し、「AMA」を添加して培養しました。24 時間~48 時間後に、蛍光染色した「gp100」とメラニン色素をそれぞれ定量しました。

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シミ部位でメラニン色素が蓄積している様子とケラチノサイト内でのメラニン色素分解の推定メカニズム

①メラノソーム

ケラチノサイト

角層

基底層

メラノサイト

取り込み

②ライソソームとの融合

③メラノソーム/メラニンの分解ライソソーム

ケラチノサイト

メラノソーム

表皮

真皮

シミができるメカニズム

基底膜

真皮層

表皮層

角質層①

④③

紫外線

情報伝達物質 メラニン

チロシナーゼ

チロシン ドーパ ドーパキノン メラニン

紫外線① 肌が紫外線を浴びるとケラチノサイトでメラニン色素の生成

指令となる情報伝達物質が発生する。② 生成情報伝達物質によって、表皮内でメラニン色素を生成する

色素細胞「メラノサイト」※ 5 が刺激を受け、メラニン色素を生成し、メラノソームと呼ばれる袋状の細胞内小器官に蓄積 される。

③ 紫外線によって、メラノサイトからケラチノサイトへのメラニン受け渡しの指令となる情報伝達物質が発生する。

④ メラノサイトからケラチノサイトにメラニン色素が取り込まれる。

⑤ 通常であればターンオーバーによって代謝されるメラニン 色素が、②において過剰に生成され、④で、ケラチノサイトに過剰に蓄積されることによってシミとなる。

AMAとは AMA は、せり科のハーブ植物「センテラアジアチカ」に含まれ、高い抗炎症作用を持つ 3 つの成分「アジア酸」、

「マデカッソ酸」、「アジアチコシド」を含む美白有用成分です。当社は、独自の「ナノユニット技術」により、このAMA を世界最小クラス 20 ナノメートルサイズまでナノ化した独自成分「ナノ AMA」を開発し、美白化粧品に 配合しています。

※ 1 メラノサイト(色素細胞)内に存在する細胞小器官。シミの原因となるメラニン色素はこのメラノソームに貯蔵されケラチノサイトへ移動する。

※ 2 皮膚を構成する細胞。角化細胞とも呼ばれ、何層にも重なった構造を示す。メラノサイトで生成されたメラニン色素を取り込む性質がある。

※ 3 細胞内に存在する消化器官。内部に多様な消化酵素を持ち、異物を取り込み消化する。リソソームとも呼ばれる。※ 4 メラノソーム内の構造タンパク質。「PMEL17」とも呼ばれる。※ 5 色素細胞。肌の基底層に存在し、メラニン色素を生成する細胞。樹木が枝を広げたような形をしており、メラニン色素は

枝状の突起から周囲の細胞(ケラチノサイト)に分配される。メラニン色素は紫外線から細胞を守る働きを担っているが、過剰に生成されることでシミの原因になる。

本件に関するお問い合わせは、下記にお願いいたします。

<報道関係>富士フイルム株式会社 コーポレートコミュニケーション部 TEL  03-6271-2000<商品、店舗に関するお問い合わせ>富士フイルム株式会社 ライフサイエンス事業部 PR TEL  03-6271-2252<お客様>株式会社 富士フイルムヘルスケアラボラトリーフリーダイヤル R0120-596-221富士フイルムヘルスケアラボラトリーウェブサイト http://h.fujifilm.jp