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1
演習用プリント
第2回 ニューロンと興奮の伝導・伝達
2
【1】
神経系の構成単位はニューロンであり,図 1 は,髄鞘をもつニューロンの模式図である。
(a)~(h)にあてはまる語句を答えなさい。
3
4
【2】
Ⅰ 細胞の興奮に関する以下の文章中の 1 ~ 10 に最も適切なもの,あるいはその
組み合わせを解答群から選べ。ただし,異なる番号の に同じものを繰り返し選
んでもよい。
問 1 細胞の内外でさまざまなイオン濃度を比べると,異なっていることが多い。静止状
態の細胞においては 1 のはたらきにより, 2 は細胞外に運ばれ,細胞内に 3
が取り込まれる。 1 では 4 のエネルギーを使って 2 と 3 が 5 輸送さ
れる。一方, 2 を選択的に透過させるチャネルや 3 を選択的に透過させるチャ
ネルを介した輸送では, 4 のエネルギーを消費せず, 2 や 3 はそれぞれ濃
度差にしたがって 6 輸送される。
1 ~ 6 に対する解答群 ① ナトリウムポンプ ② ランビエ絞輪 ③ シナプス ④ 髄 鞘
⑤ Ca2+ ⑥ Na+ ⑦ Mg2+ ⑧ Cl-
⑨ K+ ◯0 OH- ◯a ATP ◯b グルコース
◯c タンパク質 ◯d 脂 質 ◯e 能 動 ◯f 受 動
◯g 促 進 ◯h 抑 制 ◯i 受容体 ◯j ホルモン
問 2 神経細胞などの興奮は,細胞内外のイオンの濃度が変化することによっておこる。
図 1 は,神経細胞の一部に閾値を超える電気刺激を 1 回与えたとき,軸索でみられる
典型的な電位変化を示している。なお,電気刺激は図 1 のイで示す時点で与え,神経
細胞の外液を基準とし電位変化を測定した。
図 1
5
図 1 で活動電位の大きさは 7 で,静止電位の大きさは 8 で示される。また,一
般的に活動電位は,図 1 の時点イで刺激後,約 9 秒の間に大きく変化する。
7 ~ 9 に対する解答群 ① A ② B ③ C ④ D ⑤ 1
⑥ 101 ⑦
1001 ⑧
10001 ⑨
100001
問 3 図 1 の時点ア,ウ,エにおける細胞内外のイオンの動きを図 2 の(ⅰ),(ⅱ),(ⅲ)に
示した。図 1 の時点ア,時点ウおよび時点エと,図 2 の(ⅰ),(ⅱ),(ⅲ)との正しい組
み合わせは 10 である。なお,図 2 の模式図では静止電位状態にある神経細胞で開
いている一部の 3 チャネルは示していない。また,図 2 中の白丸(○)および黒丸(●)は異なったイオンを示している。
10 に対する解答群
図 2
6
Ⅱ
図は刺激を受けた神経細胞内の膜電位の変化を模式的に示したものである。①~④のそ
れぞれの時点で起こっている現象を,次の選択肢(ア)~(カ)の中から選び,記号で答えよ。
同じ記号を何回選んでもよい。なお,漏えいチャネルとは常に開いているチャネルを指し,
電位依存性チャネルとは膜電位の変化に反応して開くチャネルを指す。
〔選択肢〕
(ア) 電位依存性 Na+チャネルが開いて細胞外から細胞内へ Na+が流入する。
(イ) 電位依存性 Na+チャネルが開いて細胞内から細胞外へ Na+が流出する。
(ウ) 電位依存性 Na+チャネルが閉じ,電位依存性 K+チャネルが開いて細胞外から細胞内
へ K+が流入する。
(エ) 電位依存性 Na+チャネルが閉じ,電位依存性 K+チャネルが開いて細胞内から細胞外
へ K+が流出する。
(オ) ナトリウムポンプが K+を細胞外に排出し,Na+を細胞内に取り込む。細胞内の Na+
は
Na+漏えいチャネルを通って細胞外へ出ていく。
(カ) ナトリウムポンプが Na+を細胞外に排出し,K+を細胞内に取り込む。細胞内の K+は
K+漏えいチャネルを通って細胞外へ出ていく。
7
8
【3】
問 1 イカの巨大神経繊維を刺激電極で電気的に刺激して活動電位すなわち興奮を発生さ
せると,興奮部の活動電位と隣接する静止部の静止電位との間で活動電流が流れ,そ
の刺激によって隣接部に興奮を伝導する。このときの活動電流の方向について最も適
当なものを,次の①~⑥から 1 つ選べ。
① 活動電流は,神経繊維(軸索)の外側では静止部から興奮部の方向へ流れ,神経
繊維(軸索)の内部では興奮部から静止部の方向へ流れる。
② 活動電流は,神経繊維(軸索)の外側だけを静止部から興奮部の方向へ流れる。
③ 活動電流は,神経繊維(軸索)の内部だけを静止部から興奮部の方向へ流れる。
④ 活動電流は,神経繊維(軸索)の内部だけを興奮部から静止部の方向へ流れる。
⑤ 活動電流は,神経繊維(軸索)の外側だけを興奮部から静止部の方向へ流れる。
⑥ 活動電流は,神経繊維(軸索)の外側では興奮部から静止部の方向へ流れ,神経
繊維(軸索)の内部では静止部から興奮部の方向へ流れる。
問 2 前問の文中の説明のようにして興奮の伝導が起こったとき,最初に刺激されて活動
電位を発生した興奮部は静止電位に戻るが,いったん静止電位に戻った最初の興奮部
に再び活動電位を発生することはない。その説明として最も適当なものを,次の①~
④から 1 つ選べ。
① 静止電位に戻った最初の興奮部と,隣接部に発生した新たな活動電位との間には
活動電流が流れないから。
② 最初の興奮部の静止電位の回復が十分ではなく,活動電流の強さが閾値に達しな
いから。
③ 最初の興奮部は,興奮が終わったあと,きわめて短い不応期があり,活動電流に
より刺激されても反応しないから。
④ 活動電流の流れる方向は決まっていて,最初の興奮部から遠ざかる方向にしか流
れないから。
9
問 3 軸索に関する最も適切な記述を下の選択肢から 2 つ選べ。
① 軸索の一部が刺激されると,興奮は神経末端側の一方向に伝導する。
② 軸索の一部が刺激されると,興奮は両方向に伝導する。
③ 無髄神経繊維では,軸索が太くなると,情報を運ぶ速度が速くなる。
④ 無髄神経繊維とは,軸索が神経鞘に包まれていない神経繊維をいう。
⑤ 1 本の軸索に刺激を与えるとき,刺激を強くするにしたがって活動電位の大きさ
は大きくなる。
問 4 有髄神経繊維は,無髄神経繊維に比べ興奮の伝導が速い。その理由を簡潔に記せ。
獨協医科大学(改)
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【4】 神経の伝達に関する次の文章を読み,下の問いに答えよ。
下図はニューロン間の興奮の伝達の模式図である。活動電位がシナプス前細胞の神経終
末まで伝導すると,( ア )依存性( イ )チャネルが開き(図①),( イ )イ
オンが神経終末内部に流入する(図②)。( イ )イオンが流入すると,シナプス前細
胞のシナプス間隙と接する膜(シナプス前膜)に( ウ )が融合し(図③),その内部
の神経伝達物質がシナプス間隙に放出される(図④)。シナプス後細胞のシナプス間隙と
接する膜(シナプス後膜)には,神経伝達物質と特異的に結合する受容体が存在している。
イオンチャネル受容体は,受容体自体にチャネルをもつ( エ )依存性イオンチャネル
であり,( エ )の結合により直接チャネルの開閉が調節される(図⑤,⑥)。チャネ
ルが開いて,( オ )イオンが通過すると(図⑤),隣の細胞に活動電位が生じる。こ
うしてシナプスを介して情報が伝えられる。
問 1 文中( ア )~( オ )にあてはまる語句を答えなさい。
問 2 下線部において,下記(1)~(3)の神経が興奮した場合,その末端から主に分泌される
伝達物質は何か。最も適切なものを,次の A~E のうちから 1 つずつ選べ。ただし,
同じ選択肢を何度使用してもよい。
(1) 交感神経 (2) 副交感神経 (3) 運動神経
A.グルタミン酸 B.アセチルコリン C.ノルアドレナリン
D.グリシン E.γ -アミノ酪酸(GABA)
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【5】 シナプスを介する興奮の伝わり方を調べるため,6 個の同じ種類のニューロンを次
図に示すような状態で連結させ,神経系のネットワークのモデルを作り,実験を行っ
た。なお,図中の黒丸(●)の部分にはシナプスが形成されているとする。
問 図中の白い矢印 X の部分をこのニューロンの 閾い き
値を超える強さで刺激し,黒い矢印 a~g の各点で活動電位の測定を行ったところ,点 c では下のグラフの「イ」のパターン
で電位が記録された。このとき,その他の 6 つの点(a,b,d~g)で記録された電位は,
下のグラフのどのパターンになると考えられるか。ア~キの中から 1 つずつ選び,記号
で答えよ。なお,同じ記号を何回選んでもよい。
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【6】
Ⅰ
問 1 ニューロンに伝達される刺激が弱いとニューロンは興奮しないが,ある一定の強さ
以上の刺激が伝わると,ニューロンは興奮する。しかし,刺激が一定の大きさを超え
た場合,刺激がいくら大きくなっても興奮の大きさは変わらない。
(1) 上記での文章で述べられている性質を何の法則というか。
(2) ニューロンの興奮を引き起こす最小の刺激の大きさを何というか。
問 2 ニューロンに与える刺激を強くすると活動電位はどのように変化するか。弱い刺激
のときの反応を下図の a としたとき,強い刺激を受けたときの反応を図の b~f から 1
つ選べ。ただし,これらの図の縦軸は電位の,横軸は時間の同一の尺度で表してある。
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Ⅱ
感覚神経などの末梢神経は,軸索に直接刺激を与えることで興奮を引き起こすことがで
きる。1 本のニューロン(神経細胞)に与えた刺激が小さいうちは全く興奮が生じないが,
一定以上の刺激を与えると一定の大きさの興奮を生じ,刺激を大きくしても興奮の大きさ
は変わらない。
問 下線部に関して,1 本のニューロンのときとは異なり,ニューロンの束は刺激の強さ
の違いを伝えることができる。はじめにニューロンの束にある大きさの刺激 S を加え
たところ,一部のニューロンが興奮した。そこから連続的に刺激の大きさを大きくし
ていくと,次の(あ)~(う)はどのように変化するか。その組合せとして最も適当なもの
を,下の①~⑥のうちから一つ選びなさい。
(あ) 刺激 S を加えたときに興奮した 1 本のニューロンにおける活動電位の大きさ
(い) 刺激 S を加えたときに興奮した 1 本のニューロンにおける活動電位の発生頻度
(う) 活動電位を発生するニューロンの数
(あ) (い) (う)
① 変化しない 増加する 増加する
② 変化しない 増加する 変化しない
③ 変化しない 変化しない 増加する
④ 大きくなる 増加する 変化しない
⑤ 大きくなる 変化しない 増加する
⑥ 大きくなる 変化しない 変化しない
獨協医科大学(改)
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【7】 ヤリイカの神経繊維を用いて次のような実験を行った。
[実験 1] 図 1 のように電極 a を神経繊維の細胞内に挿入し,電極 b を細胞表面に置き,2
つの電極間の電位差を測定した。
[実験 2] 図 2 のように電極 a と b をいずれも神経繊維の細胞表面に約 2.5cm 離して置い
て 2 つの電極間の電位差を測定した。
問 1 実験 1 の条件で,神経繊維の左側(細胞体側)から興奮が伝わってきたとき,電極 b
を基準としたときの電極 a に現れる電位変化として正しいものを,次ページの図(ア)~
(コ)の中から 1 つ選べ。
問 2 実験 2 の条件で,神経繊維の右側(末端側)から興奮が伝わってきたとき,電極 b
を基準としたときの電極 a に現れる電位変化として正しいものを,次ページの図(ア)~
(コ)の中から 1 つ選べ。
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問 3 実験 2 の条件で,神経繊維の左側(細胞体側)から興奮が伝わってきたとき,電極 b を
基準としたときの電極 a に現れる電位変化として正しいものを,次ページの図(ア)~(コ)
の中から 1 つ選べ。
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【発展問題1】
Ⅰ 次の文を読み,問 1 から問 5 に答えよ。
中枢神経系のニューロン(神経細胞)は,他のニューロンからの数千にも及ぶ入力を受
けている。このためニューロンの細胞体や樹状突起は,図 1 のようにシナプスで覆われる
格好になっている。これらのシナプスにはニューロンを興奮させるものに加え,ニューロ
ンの興奮を抑制するものも含まれている。
興奮性シナプスでは,1 回の神経伝達物質の放出によって,受け手側の細胞膜に小さな脱
分極(膜電位の負の値が小さくなることを脱分極という)が引き起こされる。これを興奮
性シナプス後電位(興奮性 PSP)と呼ぶ(図 2)。しかし個々の興奮性 PSP は小さすぎる
ため,それらは単独では受け手側のニューロンに活動電位を発生させることができない。
それでは受け手側のニューロンでは,どのようにして活動電位を発生させているのだろう
か? そこでは数多くの興奮性 PSP が細胞体で加重され(図 3),その結果ある大きさ(閾
値)を越えた脱分極が(注)軸索小丘に生じた場合,活動電位が発生することになる。
(注) 軸索小丘とは,細胞体から軸索へ移行する部分を指す。活動電位は軸索小丘で発生し,それ以
外の細胞体領域,樹状突起では発生しない。
図 1 中枢神経系のニューロンとシナプスの模式図
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図 2 興奮性 PSP 図 3 興奮性 PSP の加重の例
問 1 活動電位は,ニューロンに生じる脱分極の大きさが閾値を越えないと発生しない。
またいくらニューロンに与える刺激を強くしても活動電位の大きさは一定で変わらな
い。これを何と呼ぶか記せ。
問 2 閾値をわずかに越える脱分極が引き起こされた場合と,閾値を大きく越える脱分極
が引き起こされた場合とでは,活動電位の発生にどのような違いが生じるか述べよ。
問 3 軸索小丘で発生した活動電位は,軸索を伝わっていく。有髄神経の軸索において活
動電位を生じる部分の名称を記せ。
問 4 受け手側のニューロンに対して,複数の興奮性入力がどのような形で加えられたと
きに興奮性 PSP が加重されるか。考えられる可能性について述べよ。
問 5 抑制性神経伝達物質の受容体の大部分は,塩素イオンを通過させるチャネルである。
このチャネルを通じて塩素イオンが細胞外から細胞内へと流入することによってニュ
ーロンの興奮は抑制される。こうした塩素イオンの動きがなぜニューロンの興奮を抑
制することになるのか。考えられる理由を述べよ。
浜松医科大学 医学部
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Ⅱ 文を読んで,問いに答えよ。
神経系の機能単位は神経細胞(ニューロン)で,1 本の軸索と多数の樹状突起をもつ。ニ
ューロン相互の接合部はシナプスとよばれ,狭い隙間がある。シナプス前ニューロンの電
気信号が軸索末端に到達すると,その終末部にある ア が開き, イ が流入する。こ
れが引き金となって神経伝達物質が放出される。
シナプス後ニューロンの表面には,特定の神経伝達物質とのみ結合できる受容体が存在
する。興奮性シナプスではシナプス前ニューロンの終末部から,たとえば,興奮性の神経
伝達物質としてアセチルコリンが放出される。放出されたアセチルコリンとシナプス後ニ
ューロンのアセチルコリン受容体とが結合することで, ウ が開き, エ が流入する。
その結果,シナプス近傍の局所では静止電位から オ の方向へ電位が変化する(興奮性
シナプス後電位)。一方,抑制性シナプスでは,放出された抑制性神経伝達物質は Cl-チ
ャネルを開く。その結果,シナプス近傍の局所では静止電位から負の方向へ電位が変化す
る(抑制性シナプス後電位)。
シナプス後ニューロンにおいて,多数のシナプス近傍の局所で発生した興奮性シナプス
後電位と抑制性シナプス後電位は加算されて電気的に軸索丘(軸索の基部)へ伝えられ,
加算結果が閾値よりも高いと活動電位の発生につながる(下図)。
図 シナプス後ニューロンの軸索丘での活動電位の発生の様子
問 1 文中の ア ~ オ に入る語として最も適当なものを①~⑨のなかから 1 つずつ
選べ。
① 正 ② 負 ③ K+
④ Na+ ⑤ Ca2+ ⑥ K+チャネル
⑦ Na+チャネル ⑧ Ca2+チャネル ⑨ ナトリウムポンプ
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問 2 図 A~C に示した膜電位の変化は,次の(1)~(3)のどの結果と考えられるか。組み合
わせとして最も適当なものを①~⑥のなかから 1 つ選べ。
(1) 単一の興奮性ニューロン(興奮性神経伝達物質を放出するシナプス前ニューロ
ン)から連続して刺激が入力された。
(2) 複数の興奮性ニューロンから同時に刺激が入力された。
(3) 予め抑制性ニューロン(抑制性神経伝達物質を放出するシナプス前ニューロン)
から刺激が入力されていて,その後,単一の興奮性ニューロンから通常より多く連
続して刺激が入力された。
A B C ① (1) (2) (3)
② (1) (3) (2)
③ (2) (1) (3)
④ (2) (3) (1)
⑤ (3) (1) (2)
⑥ (3) (2) (1)
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【発展問題2】 次の文章を読み,以下の問に答えよ。
ニューロンでは電気的信号によって興奮の伝導が行われている。ニューロンの細胞膜の
外側と内側ではイオン組成が異なる。あるほ乳類で測定すると,細胞外と細胞内のナトリ
ウムイオン(Na+)の濃度はそれぞれおよそ 8.2g/l と 0.9g/l,カリウムイオン(K+)の濃度はそ
れぞれおよそ 0.6g/l と 10.4g/l であった。この濃度差は,おもにエネルギーを使う 1 に
よって生じる。一方,ニューロンでは 1 の他に受動輸送も行われている。ニューロン
が興奮していない状態では,おもに K+が受動輸送され,他のイオンの受動輸送はほとんど
ない。
このニューロンに微小電極を挿入して細胞内外の電位差を測定したところ,(a)細胞内が
細胞外に対しておよそ-70mVの電位に保たれていた。この電位を 2 という。このニ
ューロンに電気刺激を与えても,刺激が小さいうちは活動電位が生じない。(b)しかし,刺
激の大きさが 3 を超えると,刺激した部分の細胞膜の Na+に対する透過性が急激に高
まり,濃度勾配と電位勾配にしたがって Na+が細胞内に流れ込む。このような陽イオンの
移動によって,細胞内の電位はおよそ+50mVまで急速に上昇した。この電位変化は一時
的なもので,1~2ミリ秒でもとの状態に戻った。また,同じイオン濃度のもとでは,刺
激の強さにかかわらず一定であった。このことから,神経興奮はデジタル信号であると考
えられる。すなわち,刺激の強さの情報は活動電位の大きさではなく,その発生の頻度と
して伝えられる。刺激によってニューロンの一部で生じた興奮は軸索中を伝導する。(c)神経
繊維には有髄神経繊維と無髄神経繊維があり,興奮が伝導する速度は両者で大きく異なる。
問1 空欄 1 ~ 3 にあてはまる最も適切な語を記せ。
問2 ニューロンが興奮していない状態で.細胞外の溶液に KCl を加えることにより細胞
外の K+濃度を 10.4g/l にすると,細胞内の電位はどのように変化すると予想されるか。
次のア~オから最も適切なものを1つ選び,記号で記せ。ただし,浸透圧と Cl-の影響
は考慮しないものとする。
ア.-90mVまで低下する。 イ.-70mVのまま変化しない。
ウ.-20mVまで上昇する。 エ.0mVまで上昇する。
オ.+20mVまで上昇する。
問3 下線部(a)のような細胞内電位が生じる原因として受動輸送が関係すると考えられる
が,細胞内の電位がマイナス(負)になる理由を 80 字以内で説明せよ。
21
問4 細胞外の溶液からNaClを減らすことにより細胞外のNa+濃度を 4.1g/lにしたとき,
神経を興奮させるのに十分な電気刺激を行うと,どのような電位変化が予想されるか。
下線部(b)の結果を参考にして,次のア~カから最も適切なものを1つ選び,記号で記せ。
ただし,浸透圧と Cl-の影響は考慮しないものとする。
問5 下線部(c)で,伝導速度が速いのはどちらの種類の神経繊維か,解答欄に記せ。また,
その神経繊維の伝導速度が速い理由を 30 字以内で説明せよ。