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中央大学理工学部情報工学科 卒業研究論文 レセプションアタックに着目した バレーボールの戦術提案 学籍番号 02D8101022J 柏木 達也 指導教員 田口 東 教授 2006 3

レセプションアタックに着目した バレーボールの戦 …...第2章 ゲーム理論 本章では,ブロックの戦術提案に用いるゲーム理論を戦略ゲームのはなし[1],ゲーム理

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Page 1: レセプションアタックに着目した バレーボールの戦 …...第2章 ゲーム理論 本章では,ブロックの戦術提案に用いるゲーム理論を戦略ゲームのはなし[1],ゲーム理

中央大学理工学部情報工学科

卒業研究論文

レセプションアタックに着目した

バレーボールの戦術提案

学籍番号 02D8101022J

柏木 達也

指導教員 田口 東 教授

2006年 3月

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あらまし

本研究ではバレーボールのレセプションアタックに着目し,ゲーム理論を用いてバレー

ボールの戦術提案を行なう.まず,バレーボールの試合をレセプションアタックに限定し

て,データを収集する.さらに,攻撃側のセッターがローテーションによって後衛にいる

時に限定し,攻撃側の前衛の動きとアタックを分析する.また,この攻撃に対する守備側

の各ブロックフォーメーションによるブロックの枚数とその評価を分析する.これらをゲ

ーム理論における戦術と見立て,各ブロックフォーメーションの最適な割合を求める.最

後に,実際に行われた試合に対し,ゲーム理論から得られた各ブロックフォーメーション

を用いる最適な割合を適用し,その効果を検証する. キーワード:バレーボール,レセプションアタック,ゲーム理論,ブロックフォーメーショ ン,ブロックの枚数

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目次 第 1章 はじめに.................................................................................................................. 1 第 2章 ゲーム理論 .............................................................................................................. 2

2.1 二人ゼロ和ゲーム ...............................................................................................................2 2.2 ミニマックス戦略 ...............................................................................................................2 2.3 優越される戦略 ..................................................................................................................3 2.4 混合戦略 .............................................................................................................................3

第 3章 使用データ .............................................................................................................. 6

3.1 データの概要 ......................................................................................................................6 3.2 データの収集方法 ...............................................................................................................6

3.2.1 データバレー ...............................................................................................................6 3.2.2 データビデオ ...............................................................................................................9

3.3 データの編集 ......................................................................................................................9 第 4章 試合分析................................................................................................................ 13

4.1 分析する試合の決定 .........................................................................................................13 4.2 分析する項目の決定 .........................................................................................................13

4.2.1 アタックの名称の簡略化............................................................................................13 4.2.2 分析する項目の決定...................................................................................................16

4.3 日本体育大学が行なった全試合の分析.............................................................................18 4.3.1 対戦チームの前衛の動きとアタック..........................................................................18 4.3.2 日本体育大学のブロックの枚数と評価 ......................................................................19

4.4 日本体育大学対嘉悦大学の分析 .......................................................................................22 4.4.1 嘉悦大学の前衛の動きとアタック .............................................................................22 4.4.2 日本体育大学のブロックの枚数と評価 ......................................................................23

4.5 日本体育大学対筑波大学の分析 .......................................................................................26 4.5.1 筑波大学の前衛の動きとアタック .............................................................................26 4.5.2 日本体育大学のブロックの枚数と評価 ......................................................................26

第 5章 ブロックの戦略提案 .............................................................................................. 30

5.1 ゲーム理論の適用 .............................................................................................................30 5.1.1 日本体育大学が行なった全試合 .................................................................................30 5.1.2 日本体育大学対嘉悦大学の試合 .................................................................................31

i

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5.1.3 日本体育大学対筑波大学の試合 .................................................................................32 5.2 ゲーム理論の適用によるブロックの枚数の変化 ..............................................................33

5.2.1 日本体育大学が行なった全試合 .................................................................................33 5.2.2 日本体育大学対嘉悦大学の試合 .................................................................................35 5.2.3 日本体育大学対筑波大学の試合 .................................................................................36

5.3 ゲーム理論の適用のまとめ...............................................................................................37 第 6章 おわりに................................................................................................................ 38

6.1 まとめ...............................................................................................................................38 6.2 今後の課題........................................................................................................................38

謝辞 ..................................................................................................................................... 39 参考文献 .............................................................................................................................. 39 付録 A バレーボール用語 付録 B 日本体育大学のブロックのコード

ii

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第1章 はじめに

2008年,北京にて第29回夏季オリンピックが行なわれる(日本オリンピック委員会[7]).夏季オリンピックでは,水泳,野球,サッカーなど様々な競技が行なわれる.バレーボー

ルも夏季オリンピックで行なわれる競技の 1 つである.このオリンピックに向けて,バレーボール戦術ソフトの開発が計画された.このバレーボール戦術ソフトは,リアルタイム

にデータを更新する機能をもつ.さらにこの戦術ソフトは,ゲーム理論を用いたアルゴリ

ズムにより戦術を提案する.この戦術提案ソフトには,既存のバレーボール戦術ソフトと

は異なる特徴がある.その特徴とは,セッターがトスを上げてから任意の選手がアタック

を打つまでの間,全選手がどのように動いたかを入力する機能をもつことである.この機

能により,チーム全体としての攻撃の戦術を分析できる. バレーボールはネットを挟んで自陣,敵陣に分かれるスポーツである.その為,攻撃と

守備を明確に分けられる.よって,攻撃,守備,それぞれの戦術を分析する.分析するプ

レーは,レセプションアタックとそれに対するブロックである. レセプションとは,サーブをレシーブすることであり,レセプションアタックとはレセ

プション直後のアタックである.レセプションにより,セッターへ正確に返球された時に

着目する.セッターへ正確にボールが返球されれば,クロスやフェイントなど様々な戦術

に合わせてトスを上げられると考えられる. 一方,ブロックは現代のバレーボールにおいて,選手のアタック技術の向上により重要

視されている.一般的に,アタックの速度が 55km/hを越えると,人間の反射速度では追いつけないといわれている.アタックの最高速度は,女子トップレベルで 65km/h,男子トップレベルで 100km/hを越える.よって,ブロックにより,ワンタッチでアタックの速度を落としたり,アタックコースを狭めたりすることで,レシーブを容易にする必要がある.

ブロックの枚数が増えれば,アタックのコースは狭くなり,ワンタッチの確率も増えると

考えられる(バレーボール上達法[2]).つまり,ブロックの枚数を増やすことが重要である.そこで,ブロックの枚数をできるだけ増やす戦術の提案を考える. 以上のことから,本研究では,この戦術提案ソフトを用いることを想定して,バレーボ

ールのレセプションアタックとそれに対するブロックを分析する.その後,分析によるレ

セプションアタックとそれに対するブロックのデータからブロックの戦術提案をする. 本論文中に出てくるバレーボール用語は基本から戦術までバレーボール[4],スポーツルール.com[5],バレーボールガイド[9]を参考にする.これを付録に示す.

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第2章 ゲーム理論 本章では,ブロックの戦術提案に用いるゲーム理論を戦略ゲームのはなし[1],ゲーム理論[3]にもとづいて述べる. 2.1 2人ゼロ和ゲーム ゲーム理論では,利害関係が同じである組織体を 1人とみなす.よってバレーボールは 2人ゲームである.さらにバレーボールは一方のチームが得点すると,もう一方のチームは

失点したと考えられる.このことからバレーボールは 2人ゼロ和ゲームである. 2.2 ミニマックス戦略 2人ゼロ和ゲームは,支払行列を基にして,それぞれの参加者が最適な選択をする.支払行列とは,参加者 A,参加者 Bの 2人が対戦した時の参加者 Aの受け取る金額を行列で表したものである.参加者 Aが選べる戦術が 通り,参加者 Bが選べる戦術がn通りあるとして,参加者 Aが i番目の戦術を選び,参加者 Bが 番目の戦術を選んだ時の参加者 Aの受け取る金額を とする.この時,支払行列は

mj

ija

⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥⎥

⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢⎢

=

mnmjmm

inijii

nj

nj

aaaa

aaaa

aaaaaaaa

A

LL

MMMM

LL

MMMM

LL

LL

21

21

222221

111211

(2.1)

である. 参加者 Aが i番目の戦術を選ぶ時には,参加者 Bがどの戦術を選ぼうが,参加者 Aは i行の最小金額

ijnja

≤≤1min (2.2)

を得られる.また,参加者 A はどの戦術も自由に選べるので,これら最小金額のうち最大のものを選べる.この最大金額は

ijnjmia

≤≤≤≤ 11minmax (2.3)

である.最小金額のうち最大のものを選ぶことを参加者 Aのミニマックス戦略という. 一方,参加者 Bが j番目の戦術を選んだ時には,参加者 Aがどの戦術を選ぼうが,参加

2

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者 Bは j行の最大金額

ijmia

≤≤1max (2.4)

以上支払うことはない.参加者 Bも参加者 Aと同様にどの戦術も自由に選べるので,これらの最大金額のうち最小のものを選べる.この最小金額は

ijminja

≤≤≤≤ 11maxmin (2.5)

である.このことは,参加者 Aが自分自身で

ijnjmia

≤≤≤≤ 11minmax

(2.6)

を得るように戦術を選べるが,参加者 Bによって

ijminja

≤≤≤≤ 11maxmin

(2.7)

以上得られないように妨げられていることを表している. つまり,

ijminjijnjmiaa

≤≤≤≤≤≤≤≤≤

1111maxminminmax (2.8)

という関係が成り立っている. 参加者 Aが得られる最小金額のうち最大のものと参加者 Bが支払う最大金額のうち最小のものが一致した時,つまり

ijminjijnjmiaa

≤≤≤≤≤≤≤≤=

1111maxminminmax (2.9)

となった時,2人ゼロ和ゲームの平衡状態が得られる.この時の組 ( )ji, は支払行列 Aの鞍点といい,この時の を鞍点の値という.また,このように特定の 1つの戦術を用いることを純粋戦略という.

ija

2.3 優越される戦略 支払行列では相手の選ぶ戦術とは関係なく,必ず他の戦術より損をする戦術が存在する

場合がある.このような場合は,必ず損をする戦術を前もって除いておく方が簡単である.

そのように必ず他の戦術より損をするような戦術を,優越される戦略という.優越される

戦略の削除によって,鞍点が簡単に見つけられる場合がある. 2.4 混合戦略 2人ゼロ和ゲームでは必ず鞍点が存在するわけではない.混合戦略とは,鞍点が存在せず,

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参加者 A,B は戦術を 1 つに決められない時,様々な戦術を混ぜて使う戦略である.混合戦略は,参加者 A,B が用いる戦術の割合を指定することにより,戦略を 1 つに定める.参加者 A の選べる戦術を 通りとする.それらの戦術を用いる確率を とした

時,これらの確率の集合

m mxxx ,,, 21 L

X は ( )mxxxX ,,, 21 L=

となる.これが参加者 Aの混合戦略である.これらの確率の集合 X は

∑=

=

=≤≤m

ii

i

x

mix

11

,,2,1,10 L

(2.10)

を満たす.同様に,参加者 B の選べる戦術をn通りとする.それらの戦略を用いる確率をとした時,これらの確率の集合Y は nyyy ,,, 21 L

( )nyyyY ,,, 21 L=

となる.これが参加者 Bの混合戦略である.これらの確率の集合 は Y

∑=

=

=≤≤n

jj

j

y

njy

11

,,2,1,10 L

(2.11)

を満たす. 参加者 A,Bがそれぞれの戦術を

( )( )n

m

yyyYxxxX

,,,,,,

21

21

L

L

==

の割合で用いる時,参加者 A の得る金額は一定ではなく,混合戦略により与えられる確率で得る金額が異なる.そこで,参加者 A の得る期待金額を考える.期待金額とは,各金額にその金額を得る確率を掛けたものを,すべての場合について加えたものである.参加者 Aがとる混合戦略を X ,参加者 Bがとる混合戦略をY とした時,参加者 Aの得る期待金額を

とすると ( YXE , )

( ) ∑∑= =

=m

i

n

jjiij yxaYXE

1 1

, (2.12)

となる. 混合戦略の場合も,純粋戦略と同様に,参加者 A が得られる最小の期待金額のうち最大のものを選べ,その期待金額は

( )jinjmiyxE ,minmax

11 ≤≤≤≤ (2.13)

である.同様に,参加者 Bが支払う最大の期待金額のうち最小のものは

( )jiminjyxE ,maxmin

11 ≤≤≤≤ (2.14)

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である. また,混合戦略において鞍点が存在する条件も純粋戦略と同様に

( ) ( )jiminjjinjmiyxEyxE ,maxmin,minmax

1111 ≤≤≤≤≤≤≤≤= (2.15)

である. 混合戦略まで考えれば,必ず鞍点が存在し,2人ゼロ和ゲームを解ける.

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第3章 使用データ 本章では,研究に使用するデータとソフトウェア,作成するデータの構造について述べ

る. 3.1 データの概要 本研究で使用するデータは,平成 16年度秋季関東大学バレーボールリーグ戦女子 1部の

全 40 試合中の 33 試合であり,日本体育大学の伊藤雅光氏,根本研氏からいただいた.関東大学バレーボールリーグは,全日本大学バレーボール連盟に加盟する関東の 107 大学を13部に分け,勝敗を競うリーグである.平成 16年度の秋季関東大学バレーボールリーグ戦女子 1 部は筑波大学,嘉悦大学,青山学院大学,東京女子体育大学,早稲田大学,東海大学,日本体育大学,日本女子体育大学の 8大学が所属する(全日本大学バレーボール連盟[6]).

3.2 データの収集方法 3.2.1 データバレー データバレーとは,イタリア製のスカウティングソフトであり,世界のナショナルチー

ムやクラブチーム,大学に幅広く使用されている.データバレーは,サーブの種類,アタ

ックの種類,コース,評価,スコアなど細かい情報を入力できる.データバレーは情報を

入力する際に,その内容をレグファイルというファイルに保存する(バレーボールアンリ

ミテッド[8]). 対戦したチームをチーム 1,チーム 2とする時,チーム 1の選手には背番号の数字(0から 50までの数字),チーム 2の選手には背番号に 50を加えた数字(50から 99までの数字)を割り当て,これらの数字を選手番号と定義する.データバレーのサーブ,レセプション

(サーブレシーブ),アタックのコードの読み方を説明する.サーブ,レセプション,アタ

ックのコードは,レグファイルから抽出したデータである.サーブのコードは,選手番号,

サーブの名称,サーブの評価,サーブ地点,レシーブ地点で構成される.サーブの名称,

サーブの評価,サーブ地点とレシーブ地点を表 3.1,表 3.3,図 3.1 に示す.レセプションのコードは,選手番号,レセプションの名称,レセプションの評価,サーブ地点,レシー

ブ地点で構成される.レセプションの名称,レセプションの評価,サーブ地点とレシーブ

地点を表 3.2,表 3.3,図 3.1 に示す.アタックのコードは選手番号,アタックのテンポ,アタックの評価,アタックの名称,ボールが相手選手又はコートに当たった場所で構成さ

れる.アタックのテンポと名称,アタックの評価,ボールが相手選手又はコートに当たっ

た場所を図 3.2,表 3.3,図 3.1に示す.図 3.1は,コートの半面を 9等分し,それぞれに

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番号を割り当てたものである.図 3.2におけるアタックの位置は,攻撃側から見た位置である.また,図 3.2 におけるアタックのテンポは,トスの滞空時間の長さを指す.図 3.3 に,これらを視覚的に示す.図 3.2におけるアタックのテンポは,テンポが AQである時のトスの滞空時間が最も短く,テンポが ALである時のトスの滞空時間が最も長い.必ずしもトスの最高点でアタックをするわけではないので,アタックのテンポは,アタックの高さでは

ない.また,図 3.2におけるアタックのテンポ AQのコート右にあるアタック PDとアタック PLの違いは,アタック PDが両足でジャンプし,アタック PLは片足でジャンプする点である.

表 3.1 サーブの名称

記号 サーブの名称 SQ ジャンプサーブ SM ジャンピングフローター SH フローター

表 3.2 レセプションの名称 記号 レセプションの名称

SQ ジャンプサーブに対するレセプション SM ジャンピングフローターに対するレセプション SH フローターに対するレセプション

表 3.3 各コードの評価 評価 アタック レセプション サーブ

# 成功 Aカット(セッターのいるところへ正確に返せた) サービスエース

+ 相手につなげられる Bカット(コンビは使えるがセッターが動いてし

まう) 相手がコンビを使えないサーブ

! なし Cカット(2段トス,オープンしか使えない) 相手に Bカットされる

‐ なし !と同様 !と同様

/ ブロックされる ダイレクトで相手に返る ダイレクトで相手に返る

= ミス ミス ミス

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1 6 5

図 3.1 コートの番号割り当て

図 3.2 アタックの名称

図 3.3 アタックテンポとアタック位置

9 8 7 2 3 4

AL 7 8 9 AL

AH P1 P2 P3 P4 P5 AH

AM PV PW PX PY PZ AM

AT PG PK PI PT PJ PK AT

AQ PB PA PC PO PR PD,PL AQ

L(コート左) C(コート中央) R(コート右)

アタック 方向

ネット

アタックのテンポ

アタック位置 L(コート左)

アタック位置 R(コート右)

トスの滞空時間が

アタックテンポ

アタック方向

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3.2.2 データビデオ データビデオとは,データバレーと同じくイタリア製のソフトウェアである.データビ

デオは,試合の映像をコンピュータのハードディスクに映像ファイルとして取り込み,デ

ータバレーで入力されたコードを元に,映像ファイルの編集と試合の分析を行なう.デー

タビデオは,第 1 セットの最初のサーブの瞬間と,データバレーに最初のサーブを入力した時刻を同期させ,それ以降のコードで表されるプレーが映像ファイルの何秒後に存在す

るかを計算する. データビデオによる試合の分析は,分析ウィンドウを用いる.分析ウィンドウは選手番

号,コードの種類,コードの評価などの項目から構成される.データビデオは,分析ウィ

ンドウに抽出したい項目を入力することにより,任意の試合中に行なわれた全プレーのコ

ードの中から該当するコードを抽出し映像を再生する(バレーボールアンリミテッド[8]). 3.3 データの編集 本研究では,レセプションの評価が#(セッターがいる位置へ正確に返球した)の時の

アタックに着目する.この段落で出てくる選手は全て攻撃側の選手である.レセプション

の評価が#の時のアタックに着目する理由は,セッターがいる位置へ正確に返球できた時,

セッターは狙った所にトスを上げられる為である.セッターへの返球が正確であった時,

前衛にいるアタッカーの戦術はクロスやフェイントなど様々な種類がある.逆に,セッタ

ーへの返球が乱れた時やセッター以外の選手がトスを上げた時は,レフトへのトスが多く

戦術の種類が少ない. データは対戦大学名と日付,サーブのコード,レセプションのコード,アタックのコー

ド,試合開始からの経過時間(試合開始は第 1 セットのサーブを打つ瞬間とし,その時間を 0時 0分 0秒とする),セット数,チーム 1のポイント数,チーム 2のポイント数,チーム 1 のセッターの位置,チーム 2 のセッターの位置,前衛の動き①,前衛の動き②,ブロックフォーメーション,ブロックの枚数,ブロックの評価で構成される. 試合開始からの経過時間は,第 1 セットの最初のサーブを打つ瞬間から各レセプションアタックを打つ瞬間までの経過時間である.チーム 1,チーム 2のセッターの位置は,ローテーションでセッターがどの位置にいるかを表す.前衛の動き①はアタックの際,攻撃側

の任意の選手がアタックを打つまでの,攻撃側の前衛にいる各選手の動きである.前衛の

動き IIIを図 3.3,前衛の動き XIを図 3.4,前衛の動き IXを図 3.5に示す.前衛の動き①は,攻撃側の前衛にいるアタッカーの動きを守備側から見た動きである.前衛の動き②の

コードは,アタックの際,コート内の位置 2,9,3,7,4 にいた全選手が,どのようなアタックを打とうとしたかを表す記号で,コート内の位置 2,9,3,7,4の順に 5文字の記号で構成される.使用する記号は図 3.2で示したアタックの名称を用いる.それ以外の記号

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として‘/’がある.これは,セッターがその位置にいた,もしくはその位置からの攻撃がなかったことを示す. ブロックフォーメーションは,攻撃側の前衛のアタッカーが助走をする直前における守

備側の前衛にいるブロッカーの配置である.以下,ブロックフォーメーションを説明する. スプレッドは,守備側の前衛にいるブロッカーの間隔を広く配置するフォーメーション

である.スプレッドを図 3.6に示す.スプレッドは,両サイドからの速い攻撃に遅れずに対応する為のフォーメーションである.ブロッカーの間隔が広い為,ブロッカーが 1 人しか反応できないことが多い.また,ブロッカーの間を狙った速いアタックに対応できない場

合がある. バンチは,守備側の前衛のブロッカーをコート中央付近に集めて配置するフォーメーシ

ョンである.バンチを図 3.7に示す.バンチは全ての攻撃に対し,ブロッカーの人数を増やす為のフォーメーションである.ブロッカーがコート中央に集まる為,コート左右の速い

攻撃に対応できない場合がある. デディケートは,ブロックを片寄らせて配置するフォーメーションである.デディケー

トを図 3.8 に示す.デディケートはアタックを打ちそうな選手や,アタックを打ちそうな

位置を予想し,それらを重点的にマークするフォーメーションである.ブロックを片寄ら

せる為,予想外のアタックに対応できない場合がある. 次に,ブロックの枚数を説明する.ブロックの枚数は,アタックに対し,ブロックが何

枚飛んだかを表す.ブロックの枚数は,0.0枚から 3.0枚までを 0.5枚刻みで表す.ブロックの枚数が 0.5枚とは,タイミングがずれてブロックが飛んだ場合や,片手でブロックが飛んだ場合を表す.バレーボール選手の一般的な感覚として,完全にコースを遮れない 0.5枚のブロックは,ブロッカーの人数によらず 0.5枚とみなされる.よって,ブロックが 2人とも 0.5枚である時は 0.5枚と評価する.ブロックの評価は,ブロックをした結果である. サーブのコード,レセプションのコード,アタックのコード,各プレーが行なわれた時

刻,セット数,チーム 1 のポイント数,チーム 2 のポイント数,チーム 1 のセッターの位置,チーム 2 のセッターの位置はデータバレーのレグファイルから抽出する.前衛の動き①,前衛の動き②,ブロックフォーメーション,ブロックの枚数,ブロックの評価はデー

タビデオを用いて独自に収集したデータであり,評価方法を以下に示す.実際に編集した

データを付録に示す.

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表 3.4 評価方法 項目 評価方法

前衛の動き① 1:III(レフト,センター,ライトがストレート) 2:XI(ライトとセンターがクロス) 3:IX(レフトとセンターがクロス) 4:その他

前衛の動き② アタックの名称と‘/’を用い,5文字の記号で構成する.ブロックフォーメーション 1:スプレッド(選手の間隔を広く配置する)

2:バンチ(選手をコート中央付近に集めて配置する) 3:デディケート(選手を片寄らせて配置する) 4:その他

ブロックの枚数 0.0枚から 3.0枚までを 0.5枚刻みで表す. ブロックの評価 1:ブロックポイント

2:味方のチャンスボール 3:相手に拾われる 4:攻撃できないくらい乱される 5:ブロックアウト 6:アタック成功 7:アタックミス,フェイント,ネットタッチなど

図 3.3 前衛の動き III 図 3.4 前衛の動き XI 図 3.5 前衛の動き IX

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アタッカー

セッター

図 3.6 スプレッド 図 3.7 バンチ 図 3.8 デディケート

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第4章 試合分析

本章では,分析する試合と分析する項目を決め,日本体育大学が対戦したチームの攻撃

と日本体育大学の守備を分析する.分析では,3.3節で述べた前衛の動き①(以下,前衛の動き),アタック,ブロックフォーメーションに着目する.日本体育大学が対戦したチーム

の攻撃を分析する目的は,前衛の動きによるアタックの特徴を考察することである.日本

体育大学の守備を分析する目的は,相手の攻撃による各ブロックフォーメーションの特徴

を考察することである. 4.1 分析する試合の決定

3章ではデータビデオを用いて,レセプションアタック,前衛の動き,ブロックフォーメーションなどで構成されるデータを作成した.このデータを用いて,データの提供元であ

る日本体育大学が行なった試合における,対戦チームの攻撃と日本体育大学の守備を分析

する. 分析する試合は,平成 16年度秋季関東大学バレーボールリーグ戦女子 1部において,日

本体育大学が行なった全試合である.日本体育大学が行なった全試合とは,筑波大学,嘉

悦大学,青山学院大学,東京女子体育大学,早稲田大学,東海大学,日本女子体育大学と

行なった 7 試合である.さらに,日本体育大学が行なった 7 試合のうち,ブロックの回数が多い日本体育大学対嘉悦大学,日本体育大学対筑波大学の 2 試合を個別に分析する.日本体育大学が行なった全試合を分析する目的は,平成 16年度秋季関東大学バレーボールリーグ戦女子 1 部に所属するチーム全体の攻撃の特徴と,これに対する日本体育大学の守備の特徴を考察することである.日本体育大学対嘉悦大学,日本体育大学対筑波大学の 2 試合を個別に分析する目的は,それぞれの試合における対戦チームの攻撃の特徴と,これら

に対する日本体育大学の守備の特徴を考察することである. 4.2 分析する項目の決定 4.2.1 アタックの名称の簡略化 アタックの名称は煩雑である為,アタックの名称を簡略化する.アタックの名称を表す

記号は,図 3.2で示した.これをわかりやすくするために,アタックテンポ ATからアタックテンポ ALまでに含まれるアタックは各アタックテンポに分けてまとめる.アタックテンポAQに含まれるアタックはコート中央とコート右に分けてまとめる.これを図4.1に示す. アタックテンポでまとめた記号により,日本体育大学が行なった全試合における対戦チ

13

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ームの攻撃を分析する.対戦チームのセッターの位置による各前衛の動きのアタックを図

4.2に示す.また,セッターの位置と各前衛の動きにおけるアタックの割合を表 4.1に示す.セッターが後衛である時,全ての前衛の動きにおいて,AMの割合は AQC,AQRの割合より多い.なお,ここでいうセッターの位置とは,ローテーションによる位置を指す.セッ

ターの位置が前衛である時の前衛の動き XIにおけるアタックは AQCの割合が 5.0%,AQRの割合が 70.0%である.一方,セッターの位置が後衛である時の前衛の動き XIにおけるアタックは AQCの割合が 31.6%,AQRの割合が 7.9%である.これらのことから,AMが攻撃の中心であることがわかる.また,前衛の動き XIにおけるアタックは,セッターの位置が前衛である時と後衛である時で,クロスする選手のどちらがアタックをするかが異なる

と考えられる.図 4.2におけるアタックテンポは AQC,AQR,AMの 3通りである.また,アタックテンポでまとめることにより,アタックテンポ ATからアタックテンポ ALまでのアタックテンポは,アタック位置の情報を含まない. そこで,アタックの名称をアタック位置でまとめる.これを図 4.3に示す.コート右,コート中央,コート左からのアタックを,アタック R,アタック C,アタック L とする.アタック位置でまとめた記号により,日本体育大学が行なった全試合における対戦チームの

攻撃を分析する.対戦チームのセッターの位置による各前衛の動きのアタックを図 4.4に示す.また,セッターの位置と各前衛の動きにおけるアタックの割合を表 4.2に示す.セッターが後衛である時の前衛の動き IIIの各アタックはほぼ同じ割合である.一方,セッターの位置が前衛である時の前衛の動き IIIの各アタックは,アタック Rの割合が少ない.セッターの位置が前衛である時の前衛の動き XIにおけるアタック Cの割合が 15.0%,アタック Rの割合が 70.0%である.一方,セッターの位置が後衛である時の前衛の動き XIにおけるアタックは AQCの割合が 47.4%,AQRの割合が 15.8%である.これらのことから,セッターの位置が前衛である時は,前衛の動き IIIのアタック C,アタック Lと,前衛の動き XIのアタック Rの割合が多い.また,前衛の動き XIにおけるアタックは,セッターが前衛にいる時と後衛にいる時で,クロスする選手のどちらがアタックをするかが異なる. 図 4.2と図 4.4を比較する.図 4.2において,アタックテンポ AMの割合が多いことがわ

かる.しかし,アタックテンポによる特徴は少ない.図 4.4において,前衛の動きとアタックの位置の特徴が表れている.これにより,各ポジションの選手のアタック回数が予測で

きる.よって,以後の分析において,アタックの名称はアタック位置により簡略化した名

称を用いる.

14

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0

5

10

15

20

25

30

AQC

AQR

AM

AQC

AQR

AM

AQC

AQR

AM

AQC

AQR

AM

AQC

AQR

AM

AQC

AQR

AM

III XI IX III XI IX

前衛 後衛

セッターの位置,前衛の動き,アタック

アタック回数[回]

図 4.1アタックテンポによりまとめたアタックの名称 図 4.2 日本体育大学が行なった全試合における対戦チームの攻撃(アタックテンポ)

表 4.1 対戦チームのセッターの位置と前衛の動きにおけるアタックの割合

(アタックテンポ) セッターの位置,前衛の動き AQC(%) AQR(%) AM(%)

前衛,III 42.9 7.1 50.0 前衛,XI 5.0 70.0 25.0 前衛,IX 66.7 0.0 33.3 後衛,III 25.6 14.0 60.5 後衛,XI 31.6 7.9 60.5 後衛,IX 27.3 0.0 72.7

AL AL AL

AH AH AH

AM AM AM

AT AT AT

AQ AQC AQR AQ

L(コート左) C(コート中央) R(コート右)

アタックのテンポ

15

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0

5

10

15

20

25

30

R C L R C L R C L R C L R C L R C L

III XI IX III XI IX

前衛 後衛

セッターの位置,前衛の動き,アタック

アタック回数[回]

図 4.3アタックテンポによりまとめたアタックの名称 図 4.4 日本体育大学が行なった全試合における対戦チームの攻撃(アタック位置)

表 4.2 対戦チームのセッターの位置と前衛の動きにおけるアタックの割合 (アタック位置)

セッターの位置,前衛の動き R(%) C(%) L(%) 前衛,III 7.1 42.9 50.0 前衛,XI 70.0 15.0 15.0 前衛,IX 0.0 66.7 33.3 後衛,III 30.2 34.9 34.9 後衛,XI 15.8 47.4 36.8 後衛,IX 54.5 45.5 0.0

4.2.2 分析する項目の決定

日本体育大学が対戦したチームの攻撃は,セッターの位置が後衛である時の前衛の動き

とアタックに限定する.各前衛の動きにおけるアタック R,アタック C,アタック L の割

AL AL

AH AH

AM AM

AT AT

AQ

アタック L アタック C アタック R

AQ

L(コート左) C(コート右) R(コート右)

アタックのテンポ

16

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合は,それぞれに特徴があると考えられる.初めに,日本体育大学が行なった全試合を分

析する.分析結果より,平成 16年度秋季関東大学バレーボールリーグ戦女子 1部に所属するチーム全体(日本体育大学を除く)における,各前衛の動きによるアタックの特徴を考

察する.なお,日本体育大学が行なった全試合とは,筑波大学,嘉悦大学,青山学院大学,

東京女子体育大学,早稲田大学,東海大学,日本女子体育大学と行なった 7 試合である.さらに,この日本体育大学が行なった 7 試合のうち,ブロックの回数が多い日本体育大学対嘉悦大学,日本体育大学対筑波大学の 2 試合を個別に分析する.分析結果より,各チームの各前衛の動きによるアタックの特徴を考察する. 日本体育大学が対戦したチームの攻撃は,攻撃側のセッターの位置が後衛である時に限

定する.この理由は 2つある.1つ目の理由は,攻撃側の前衛のアタッカーの人数と守備側の前衛のブロッカーの人数の差である.攻撃側のセッターの位置が前衛である時,攻撃側

の前衛のアタッカーは 2 人であるのに対し,守備側の前衛のブロッカーの人数は 3 人である.よって,守備側の前衛のブロッカーの人数が 1 人多い.一方,攻撃側のセッターが後衛である時,攻撃側の前衛のアタッカーは 3 人であり,攻撃側の前衛のアタッカーと守備側の前衛のブロッカーの人数が等しい.2つ目の理由は,攻撃側の前衛のアタッカーの人数による戦術の偏りである.攻撃側の前衛のアタッカーが 2 人である時は,攻撃側の前衛のアタッカーが 3 人である時より戦術の選択肢が少ない.つまり,攻撃側のセッターの位置が前衛である時は,戦術が偏りやすいと考えられる.一方,攻撃側のセッターの位置が後

衛である時は,攻撃側の前衛のアタッカーが 3 人なので,攻撃側の前衛のアタッカーが 2人である時より戦術の選択肢が多い.つまり,戦術が偏りにくいと考えられる. 日本体育大学の守備は,対戦チームのセッターが後衛である時の,各前衛の動きのアタ

ック R,アタック C,アタック L に対するブロックに限定する.また,これを各ブロックフォーメーションについて考察する.各ブロックフォーメーションによるブロックの枚数,

ブロックの評価は,対戦したチームの各前衛の動きのアタックにより,特徴があると考え

られる.初めに,日本体育大学が行なった全試合を分析する.分析結果より,平成 16年度秋季関東大学バレーボールリーグ戦女子 1部に所属するチーム全体(日本体育大学を除く)における,各前衛の動きによるアタック,ブロックフォーメーションによるブロックの枚

数とブロックの評価を考察する.なお,日本体育大学が行なった全試合とは,筑波大学,

嘉悦大学,青山学院大学,東京女子体育大学,早稲田大学,東海大学,日本女子体育大学

と行なった 7 試合である.さらに,この日本体育大学が行なった 7 試合のうち,ブロックの回数が多い日本体育大学対嘉悦大学,日本体育大学対筑波大学の 2 試合を個別に分析する.分析結果より,各前衛の動き,アタック,ブロックフォーメーションによるブロック

の枚数とブロックの評価を考察する.各チームの前衛の動きによるアタックの特徴を考察

する. ブロックフォーメーションは,デディケートを省く.この理由は,デディケートが他の

ブロックフォーメーションとは異なる特徴をもつ為である.スプレッドとバンチにおける

17

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前衛のブロッカーの配置の違いは,それらの選手の間隔である.一方,デディケートは,

アタックを打ちそうな選手や,アタックを打ちそうな位置に前衛のブロッカーを配置する.

つまり,デディケートは対戦相手のチームの傾向や,試合の状況によって配置する.この

配置の考え方が他のブロックフォーメーションと異なる点である.セッターの位置による

ブロックフォーメーションの割合を表 4.3に示す.日本体育大学が行なった全試合において,デディケートが多く用いられたのは,攻撃側のセッターが前衛の時である.今回は,攻撃

側のセッターが後衛の時に限定するので,ブロックフォーメーションがデディケートであ

る回数は少ない.よって,デディケートを省く.

表 4.3 セッターの位置におけるブロックフォーメーションの割合 セッターの位置 スプレッド(%) バンチ(%) デディケート(%)

前衛 27.8 27.8 44.4 後衛 42.4 44.6 13.0

4.3 日本体育大学が行なった全試合の分析 本節では,日本体育大学が行なった全試合における,対戦チームの各前衛の動きのアタ

ック,日本体育大学のブロックの枚数と評価を分析する.日本体育大学が行なった全試合

におけるブロックの枚数は 0.0枚から 2.0枚である.ブロックが 1.5枚である時は,少なくとも 2 人がブロックする為に飛んでいる.ブロッカーの人数が 1 人と 2 人では,対戦チームのアタッカーに与えるプレッシャーに差があると考えられる.そこで,ブロッカーの人

数が 2人である時,つまりブロックの枚数が 1.5枚以上である時に着目する.ここでいうブロッカーの人数 2 人とは,その中の少なくとも 1 人は,アタックのコースを遮っているものとする.また,ブロックが成功したか判定するために,3.3節で述べたブロックの評価を用いる.3.3節で述べたブロックの評価の 1(ブロックポイント),2(ワンタッチ),3(対戦相手に拾われる)をブロック成功とする.これらのことから,ブロックの枚数が 1.5枚以上である割合とブロックが成功する割合を用いて,対戦チームの前衛の動きとアタック,

日本体育大学のブロックの枚数と評価を分析する.これらの分析は,対戦チームのセッタ

ーの位置が後衛である時に限定する.同様に日本体育大学対嘉悦大学,日本体育大学対筑

波大学の試合における,対戦チームの前衛の動きとアタック,日本体育大学のブロックの

枚数の分析を 4.4節,4.5節で行なう.

4.3.1 対戦チームの前衛の動きとアタック 対戦チームの各前衛の動きのアタックを図 4.5に示す.対戦チームの攻撃の割合を表 4.4

18

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0

5

10

15

20

25

30

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

アタック回数[回]

に示す.前衛の動きが IIIの時,アタック Rが 30.2%,アタック Cが 34.9%,アタック Lが 34.9%である.つまり,セッターが後衛である時の前衛の動き IIIにおいて,全てのアタックをほぼ均等に用いている.前衛の動き XIの時,アタック Cの割合が 47.4%である.つまり,対戦チームの攻撃はライトとセンターがクロスし,ライトがアタック C を打つ割合が多い.また,前衛の動き III,前衛の動き XI において,レフトがアタックする割合は一定である.

図 4.5 日本体育大学と対戦したチームの前衛の動きにおけるアタックの回数

表 4.4 対戦チームの前衛の動きにおけるアタックの割合 前衛の動き R(%) C(%) L(%)

III 30.2 34.9 34.9 XI 15.8 47.4 36.8 IX 54.5 45.5 0.0

4.3.2 日本体育大学のブロックの枚数と評価 各フォーメーションのブロックの枚数が 1.5枚以上である割合と,ブロックの成功率を表

4.5に示す. まず,日本体育大学の全フォーメーションにおけるブロックの枚数と評価を図 4.6,図 4.7

に示す.日本体育大学の全フォーメーションにおけるブロックは,以下の特徴がある. 長所:前衛の動き III,前衛の動き XI のアタック Lに対し,ブロックの枚数が 1.5 枚以

上である割合は高く,ブロックの成功率も高い. 短所:前衛の動き IIIのアタック Rに対し,ブロックの枚数が 1.5枚以上である割合は高

いが,ブロックの成功率は低い. 以上より,日本体育大学の全フォーメーションにおけるブロックは,左右のアタックに

対しブロックの枚数が 1.5枚以上である割合は高いことがわかる.しかし,前衛の動き IIIのアタック Rは,ブロックの枚数が 1.5枚である割合は高いが,ブロックの成功率は低い.よって,前衛の動き IIIのアタック Rに対するブロックの成功率を上げる必要がある.

19

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次に,日本体育大学のブロックフォーメーションがスプレッドである時のブロックを図

4.8,図 4.9 に示す.日本体育大学のブロックフォーメーションがスプレッドである時のブロックは,以下の特徴がある. 長所:前衛の動き IIIのアタック Lに対し,ブロックの枚数が 1.5枚以上である割合が高

く,ブロックの成功率も高い. 短所:前衛の動き IIIのアタック Rに対し,ブロックの枚数が 1.5枚以上である割合は高

いが,ブロックは成功しない.前衛の動き IIIのアタック Cに対し,ブロックの枚数が 1.5枚以上である割合は低く,この時のブロックは成功しない.

以上により,日本体育大学のブロックフォーメーションがスプレッドである時のブロッ

クは,全フォーメーションにおけるブロックの時と同様に,2つの特徴があることがわかる.1つ目の特徴は,左右のアタックに対しブロックの枚数が 1.5枚以上である割合が高いことである.2 つ目の特徴は,前衛の動き III のアタック L に対するブロックの成功率は高く,前衛の動き IIIのアタック Rに対するブロックの成功率は低いことである.攻撃側が前衛の動き IIIのアタック L以外を多用してくる時は,スプレッドは有効な戦術ではないと考えられる. 最後に,日本体育大学のブロックフォーメーションがバンチである時のブロックを図

4.10,図 4.11 に示す.日本体育大学のブロックフォーメーションがバンチである時のブロックは,以下の特徴がある. 長所:前衛の動き III,前衛の動き XI のアタック Lに対し,ブロックの枚数が 1.5 枚以

上である割合が高く,ブロックの成功率も高い.前衛の動き IIIのアタック Cに対するブロックの成功率を,スプレッドである時と比較すると,バンチである時は

成功率が高い. 短所:前衛の動き XIのアタック Cに対し,ブロックの枚数が 1.5枚以上である割合が低

く,ブロックの成功率も低い. 以上より,日本体育大学のブロックフォーメーションがバンチである時のブロックは,

前衛の動き IIIのアタックに対し,スプレッドである時より成功率が高いことがわかる.しかし,前衛の動き XIのアタック Cに対し,ブロックの枚数が 1.5枚以上である割合が低く,この時のブロックの成功率も低い.よって,攻撃側が前衛の動き XIを多用してくる時の対策が必要である.

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表 4.5 前衛の動きとアタックにおける各フォーメーションでの ブロックの枚数が 1.5枚以上である割合とブロックの成功率 全フォーメーショ

ン スプレッド バンチ 前衛の動きと

アタック 1.5枚以上(%)

成功率

(%) 1.5枚以上(%)

成功率

(%)1.5枚以上(%)

成功率

(%) III,R 53.8 7.7 60.0 0.0 33.3 33.3 III,C 20.0 20.0 16.7 0.0 14.3 28.6 III,L 60.0 46.7 44.4 44.4 83.3 50.0 XI,R 33.3 16.7 100.0 0.0 20.0 20.0 XI,C 5.6 16.7 0.0 25.0 10.0 10.0 XI,L 78.6 57.1 75.0 50.0 80.0 40.0 IX,R 83.3 50.0 100.0 100.0 100.0 33.3 IX,C 60.0 20.0 33.3 33.3 100.0 0.0 IX,L - - - - - -

02468101214161820

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

ブロック回数[回]

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

02468101214161820

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

ブロック回数[回]

1 2 3 4 5 6 図 4.6 全フォーメーションにおける 図 4.7 全フォーメーションにおける

ブロックの枚数 ブロックの評価

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02468101214161820

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

02468101214161820

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

ブロック回数[回]

1 2 3 4 5 60 0.5 1 1.5 2 2.5 3

22

ブロック回数[回]

図 4.8 スプレッドにおけるブロック 図 4.9 スプレッドにおけるブロック

の枚数 の評価

02468101214161820

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

02468101214161820

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

ブロック回数[回]

1 2 3 4 5 60 0.5 1 1.5 2 2.5 3

ブロック回数[回]

図 4.10 バンチにおけるブロックの枚数 図 4.11 バンチにおけるブロックの評価

4.4 日本体育大学対嘉悦大学の分析 本節では,日本体育大学対嘉悦大学の試合における,嘉悦大学の前衛の動きとアタック,

日本体育大学のブロックの枚数と評価を分析する.

4.4.1 嘉悦大学の前衛の動きとアタック

嘉悦大学の前衛の動きとアタックを図 4.12に示す.嘉悦大学の攻撃の割合を表 4.6に示す.前衛の動き IIIが嘉悦大学の攻撃のほとんどを占めている.前衛の動き IIIの時,アタック Rの割合は 50.0%,アタック Cの割合は 18.8%,アタック Lの割合は 31.3%である.このことから,嘉悦大学の攻撃は,前衛の選手をクロスさせず,左右から攻撃するパター

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ンが多いことがわかる.

012

34567

8910

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

アタック回数[回]

図 4.12 嘉悦大学の前衛の動きにおけるアタックの回数

表 4.6 嘉悦大学の前衛の動きにおけるアタックの割合 前衛の動き R(%) C(%) L(%)

III 50.0 18.8 31.3 XI 0.0 50.0 50.0 IX 0.0 0.0 100.0

4.4.2 日本体育大学のブロックの枚数と評価 各フォーメーションにおけるブロックの枚数が 1.5枚以上である割合と,その時のブロッ

クの成功率を表 4.7に示す.この試合におけるブロックの枚数が 1.5枚以上である割合とブロックの成功率を,平成 16年度秋季関東大学バレーボールリーグ戦女子 1部の日本体育大学が行なった全試合と比較することによって分析する. まず,日本体育大学の全フォーメーションにおけるブロックの枚数と評価を図 4.13,図

4.14に示す.日本体育大学の全フォーメーションにおけるブロックは,以下の特徴がある. 長所:前衛の動き IIIのアタック Rに対し,ブロックの枚数が 1.5枚以上である割合は高

く,ブロックの成功率も高い. 短所:前衛の動き IIIのアタック C,アタック Lに対し,ブロックの枚数が 1.5枚以上で

ある割合は低く,ブロックの成功率も低い. 以上より,日本体育大学の全フォーメーションにおけるブロックは,前衛の動き IIIのアタック R に対し,ブロックの枚数が 1.5 枚以上である割合は高く,ブロックの成功率も高い.一方,前衛の動き IIIのアタック C,アタック Lに対し,ブロックの枚数が 1.5枚以上である割合は低く,ブロックの成功率も低い.つまり,この試合では前衛の動き IIIのアタック Rに対するブロックに比重を置いていると考えられる.その結果,前衛の動き IIIのアタック Rに対するブロックの成功率が高くなったと考えられる.

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次に,日本体育大学のブロックフォーメーションがスプレッドである時のブロックを図

4.15,図 4.16 に示す.日本体育大学のブロックフォーメーションがスプレッドである時のブロックは,以下の特徴がある. 長所:前衛の動き IIIのアタック Rに対し,ブロックの枚数が 1.5枚以上である割合は高

い. 短所:前衛の動き IIIのアタック Lに対し,ブロックの枚数が 1.5枚以上である割合は高

いが,ブロックの成功率は低い. 以上により,日本体育大学のブロックフォーメーションがスプレッドである時のブロッ

クは,左右のアタックに対し,ブロックの枚数が 1.5枚以上である割合が高いことがわかる.しかし,前衛の動き IIIのアタック Lに対し,ブロックの成功率は低い.つまり,前衛の動き IIIのアタック Rに対し,ブロックの比重を置いていると考えられる. 最後に,日本体育大学のブロックフォーメーションがバンチである時のブロックを図

4.17,図 4.18に示す.この時はブロックの回数が少なく,特徴がみられない.

表 4.7 前衛の動きとアタックにおける各フォーメーションでの ブロックの枚数が 1.5枚以上である割合とブロックの成功率

全体 スプレッド バンチ 前衛の動きと

アタック位置 1.5枚以上(%)

成功率

(%) 1.5枚以上(%)

成功率

(%)1.5枚以上(%)

成功率

(%) III,R 62.5 12.5 66.7 0.0 50.0 50.0 III,C 0.0 0.0 - - 0.0 0.0 III,L 40.0 20.0 50.0 25.0 0.0 0.0 XI,R - - - - - - XI,C 0.0 100.0 0.0 100.0 - - XI,L 100.0 100.0 100.0 100.0 - - IX,R - - - - - - IX,C 100.0 0.0 100.0 0.0 - - IX,L - - - - - -

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012345678910

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

ブロック回数[回]

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

012345678910

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

ブロック回数[回]

1 2 3 4 5 6 図 4.13 全フォーメーションにおける 図 4.14 全フォーメーションにおける

ブロックの枚数 ブロックの評価

012345678910

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

012345678910

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

ブロック回数[回]

1 2 3 4 5 60 0.5 1 1.5 2 2.5 3

25

ブロック回数[回]

図 4.15 スプレッドにおけるブロック 図 4.16 スプレッドにおけるブロック

の枚数 の評価

012345678910

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

ブロック回数[回]

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

012345678910

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

ブロック回数[回]

1 2 3 4 5 6

図 4.17 バンチにおけるブロックの枚数 図 4.18 バンチにおけるブロックの評価

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4.5 日本体育大学対筑波大学の分析 本節では,日本体育大学対筑波大学の試合における,筑波大学の前衛の動きとアタック,

日本体育大学のブロックの枚数と評価を分析する.

012345678910

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

アタック回数[回]

4.5.1 筑波大学の前衛の動きとアタック 筑波大学の前衛の動きとアタックを図 4.19に示す.筑波大学の攻撃の割合を表 4.8に示す.前衛の動きが IIIの時,アタック Rが 25.0%,アタック Cが 33.3%,アタック Lが 41.7%である.前衛の動きが XI の時,アタック Rが 33.3%,アタック Cが 50.0%,アタック Lが 16.7%である.よって,筑波大学の攻撃はライトとセンターがクロスし,ライトがアタック C を打つ割合が一番多い.また,前衛の動き III の時は,アタック L が攻撃の中心であることがわかる.

図 4.19 筑波大学の前衛の動きにおけるアタックの回数

表 4.8 筑波大学の前衛の動きにおけるアタックの割合 前衛の動き R(%) C(%) L(%)

III 25.0 33.3 41.7 XI 33.3 50.0 16.7 IX - - -

4.5.2 日本体育大学のブロックの枚数と評価 各フォーメーションにおけるブロックの枚数が 1.5枚以上である割合と,その時のブロッ

クの成功率を表 4.9に示す. まず,日本体育大学の全フォーメーションにおけるブロックの枚数と評価を図 4.20,図

4.21に示す.日本体育大学の全フォーメーションにおけるブロックは,以下の特徴がある.

26

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長所:前衛の動き III,前衛の動き XIのアタック Cに対し,ブロックの枚数が 1.5枚以上である割合は高い.前衛の動き XIのアタック Rに対し,ブロックの枚数が 1.5枚以上である割合は高く,ブロックの成功率も高い.

短所:前衛の動き IIIのアタック Lに対し,ブロックの枚数が 1.5枚以上の割合は低く,ブロックの成功率も低い.

以上により,日本体育大学の全フォーメーションにおけるブロックは,前衛の動き III,前衛の動き XIのアタック Cに対し,1.5枚数以上である割合が高い.つまり,コート中央の攻撃に対し,ブロックの比重を置いていると考えられる. 次に,日本体育大学のブロックフォーメーションがスプレッドである時のブロックを図

4.22,図 4.23に示す.日本体育大学のブロックフォーメーションがスプレッドである時は,以下の特徴がある. 長所:前衛の動き IIIのアタック Lに対し,ブロックの枚数が 1.5枚以上である割合は低

いが,ブロックの成功率は高い. 短所:前衛の動き IIIのアタック R,アタック Cに対し,ブロックの枚数が 1.5枚以上で

ある割合は低く,ブロックの成功しない. 以上により,日本体育大学のブロックフォーメーションがスプレッドである時のブロッ

クは,前衛の動き IIIのアタック Lに対し,成功率が高いことがわかる.一方,前衛の動きIIIのアタック R,アタック Cに対するブロックは 1.5枚以上である割合も,ブロックの成功率も低い.また,スプレッドはブロッカーの間隔が広いフォーメーションである.つま

り,前衛の動き IIIのアタック R,アタック Cによって,ブロッカーの間を狙われたと考えられる.よって,これらのアタックで攻撃された時の対応が必要である. 最後に,日本体育大学のブロックフォーメーションがバンチである時のブロックを図

4.24,図 4.25 に示す.日本体育大学のブロックフォーメーションがバンチである時のブロックは,以下の特徴がある. 長所:前衛の動き XIのアタック R,アタック C対し,ブロックの枚数が 1.5枚以上であ

る割合が高く,ブロックの成功率も高い. 短所:特に短所はみられない. 以上により,日本体育大学のブロックフォーメーションがバンチである時であるブロッ

クは,前衛の動き XIのアタック R,アタック Cに対し,成功率が高いことがわかる.

27

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表 4.9 前衛の動きとアタックにおける各フォーメーションでの ブロックの枚数が 1.5枚以上である割合とブロックの成功率

全体 スプレッド バンチ 前衛の動きと

アタック位置 1.5枚以上(%)

成功率

(%) 1.5枚以上(%)

成功率

(%)1.5枚以上(%)

成功率

(%) III,R 0.0 0.0 33.3 0.0 - - III,C 40.0 20.0 0.0 0.0 - - III,L 40.0 40.0 25.0 50.0 100.0 0.0 XI,R 50.0 25.0 100.0 0.0 33.3 33.3 XI,C 16.7 16.7 0.0 0.0 20.0 20.0 XI,L 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 IX,R - - - - - - IX,C - - - - - - IX,L - - - - - -

012345678910

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

ブロック回数[回]

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

012345678910

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

ブロック回数[回]

1 2 3 4 5 6 図 4.20 全フォーメーションにおける 図 4.21 全フォーメーションにおける

ブロックの枚数 ブロックの評価

28

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012345678910

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

012345678910

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

ブロック回数[回]

1 2 3 4 5 60 0.5 1 1.5 2 2.5 3

29

ブロック回数[回]

図 4.22 スプレッドにおけるブロック 図 4.23 スプレッドにおけるブロック

の枚数 の評価

012345678910

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

012345678910

R C L R C L R C L

III XI IX

前衛の動き,アタック

ブロック回数[回]

1 2 3 4 5 60 0.5 1 1.5 2 2.5 3

回]

ブロック回数[

図 4.24 バンチにおけるブロックの枚数 図 4.25 バンチにおけるブロックの評価

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第5章 ブロックの戦術提案

ブロックの戦術を提案する目的は,ブロックの枚数を増やすことである.本章では,4章で分析した攻撃側の前衛の動き,アタックと守備側のブロックフォーメーションによるブ

ロックの枚数のデータに対し,ゲーム理論を用いて最適なブロックの戦術を導く.最適な

ブロックの戦術とは,ブロックの枚数をできるだけ増やす戦術である.前衛の動き IXはブロックの回数が少ないので,ゲーム理論の適用前に削除する.そして,実際に試合で用い

られた戦術によるブロックの枚数とゲーム理論によって導かれた戦術によるブロックの枚

数を比較し,考察する. 5.1 ゲーム理論の適用 本節では,ゲーム理論を用いて,最適なブロックの戦術を導くことを考える.ゲーム理

論を適用する対象は,平成 16 年度秋季関東大学バレーボールリーグ戦女子 1 部において,日本体育大学が行なった全試合である.日本体育大学が行なった全試合とは,筑波大学,

嘉悦大学,青山学院大学,東京女子体育大学,早稲田大学,東海大学,日本女子体育大学

と行なった 7 試合である.さらに,日本体育大学が行なった 7 試合のうち,ブロックの回数が多い日本体育大学対嘉悦大学,日本体育大学対筑波大学の 2試合を個別に適用させる. 5.1.1 日本体育大学が行なった全試合

まず,セッターが後衛である時の前衛の動き III,前衛の動き XI のアタック R,アタック C,アタック L に対しブロックフォーメーションのスプレッド,バンチを用いた時のブロックの平均枚数を表 5.1に示す.攻撃側はブロックの枚数をできるだけ少なく,守備側はブロックの枚数をできるだけ多くしたいと考える. 次に,優越される戦略を削除し,不要な戦略を減らす.優越される戦略の削除とは,必

ず他の戦術より損をする戦略が存在する場合,その戦略を前もって除いておくことである.

表 5.1に対し,優越される戦略の削除を考える.攻撃側はブロックの平均枚数が少ない方が好ましい.つまり,攻撃側にとっての優越される戦術はブロックの平均枚数が多いアタッ

クである.優越される戦略を削除した結果を表 5.2に示す.優越される戦略の削除により,攻撃側の戦略は前衛の動き XI のアタック C,守備側の戦略はスプレッドが残る.よって,攻撃側の最適な戦術は,前衛の動き XIのアタック Cである.また,守備側の最適な戦略は,スプレッドである.前衛の動き XIのアタック C,スプレッドの組み合わせが,日本体育大学が行なった全試合における鞍点である.

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表 5.1 日本体育大学が行なった全試合におけるブロックの平均枚数 ブロックフォーメーション 前衛の動きと

アタックの種類 スプレッド(枚) バンチ(枚) III,R 1.25 1.17 III,C 1.00 1.07 III,L 1.33 1.75 XI,R 2.00 1.00 XI,C 1.00 0.90 XI,L 1.63 1.60

表 5.2 表 5.1における優越される戦略を削除した結果

ブロックフォーメーション 前衛の動きと アタックの種類 スプレッド(枚)

XI,C 1.00 5.1.2 日本体育大学対嘉悦大学の試合

まず,表 5.1と同様に,日本体育大学対嘉悦大学の試合におけるブロックの平均枚数を表

5.3に示す.優越される戦術を削除する前に,表 5.3からブロックの回数が 0回である項目を含む戦術を削除する.これを表 5.4に示す.ブロックの回数が 0回である項目を含む戦術は,前衛の動き IIIのアタック Cと,前衛の動き XIのアタック全てである.これらの戦術を削除する理由は,ブロックの枚数が 0 枚である時とブロックの回数が 0 回である時の混同を避ける為である.ブロックの枚数が 0 枚とは,ブロックの回数が 1 回以上であるが,飛ぶことができなかったことを指す.ブロックする回数が 0 回とは,そのアタックとブロックフォーメーションの組み合わせがないことを指す. 次に,優越される戦略を削除し,不要な戦術を減らす.これを表 5.5に示す.優越される

戦略を削除することにより,攻撃側の戦略は前衛の動き IIIのアタック R,守備側の戦略はスプレッドが残る.よって,攻撃側の最適な戦略は,前衛の動き IIIのアタック Rである.また,守備側の最適な戦略は,スプレッドである.(前衛の動き III のアタック R,スプレッド)の組み合わせが,日本体育大学対嘉悦大学の試合における鞍点である.

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表 5.3 日本体育大学対嘉悦大学の試合におけるブロックの平均枚数 ブロックフォーメーション 前衛の動きと

アタックの種類 スプレッド(枚) バンチ(枚) III,R 1.33 1.25 III,C 0.00 1.00 III,L 1.38 1.00 XI,R 0.00 0.00 XI,C 1.00 0.00 XI,L 1.50 0.00

表 5.4 表 5.3におけるブロックの回数 0回を含む戦略を削除した結果

ブロックフォーメーション 前衛の動きと アタックの種類 スプレッド(枚) バンチ(枚)

III,R 1.33 1.25 III,L 1.38 1.00

表 5.5 表 5.4における優越される戦略を削除した結果

ブロックフォーメーション 前衛の動きと アタックの種類 スプレッド(枚)

III,R 1.33 5.1.3 日本体育大学対筑波大学の試合

まず,表 5.1と同様に,日本体育大学対筑波大学の試合におけるブロックの平均枚数を表

5.6に示す.優越される戦術を削除する前に,ブロックする回数が 0回である項目を含む戦術を削除する.これを表 5.7に示す.ブロックする回数が 0回である項目を含む戦術は,前衛の動き IIIのアタック R,アタック Cである. 次に,優越される戦略を削除し,不要な戦術を減らす.これを表 5.8に示す.優越される

戦略の削除により,攻撃側は前衛の動き XIのアタック Cが残る.よって,攻撃側の最適な戦術は,前衛の動き XIのアタック Cである.一方,守備側は,どちらのフォーメーションでもブロックの平均枚数が 1.00枚となる.よって,どちらのブロックフォーメーションも最適な戦術であり,1つに決めることはできない.

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表 5.6 日本体育大学対筑波大学の試合におけるブロックの平均枚数 ブロックフォーメーション 前衛の動きと

アタックの種類 スプレッド(枚) バンチ(枚) III,R 1.00 0.00 III,C 0.67 0.00 III,L 1.13 2.00 XI,R 2.00 1.00 XI,C 1.00 1.00 XI,L 2.00 2.00

表 5.7 表 5.6におけるブロックの回数 0回を含む戦略を削除した結果

ブロックフォーメーション 前衛の動き アタックの種類 スプレッド(枚) バンチ(枚)

III,L 1.13 2.00 XI,R 2.00 1.00 XI,C 1.00 1.00 XI,L 2.00 2.00

表 5.8 表 5.7における優越される戦略を削除した結果

ブロックフォーメーション 前衛の動き アタックの種類 スプレッド(枚) バンチ(枚)

XI,C 1.00 1.00 5.2 ゲーム理論の適用によるブロックの枚数の変化 実際に試合で用いられたアタックの割合,ブロックフォーメーションの割合,ブロック

の平均枚数からの期待値を求める.次に,実際に試合で用いられたアタックの割合,ゲー

ム理論によって導かれたブロックフォーメーションの割合,ブロックの平均枚数から期待

値を求める.実際に行なわれた試合から求めた期待値とゲーム理論を適用して求めた期待

値を比較し,考察する. 5.2.1 日本体育大学が行なった全試合

まず,実際に試合で用いられた戦術におけるブロックの期待値を求める.表 5.1にアタックの割合を追加した表 5.9を作る.また,実際に試合で用いられたブロックフォーメーショ

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ンの割合を表 5.10 に示す.アタックの割合を ( )5,,1,0 K=iatri ,ブロックフォーメーショ

ンの割合を ,ブロックの平均枚数を( 1,0=jbfrj ) ( )1,0,5,,1,0 == jibavij K とする.式(2.12)にこれらの割合と数値を当てはめ期待値 Eを求める.この時,期待値 Eは

∑∑= =

××=5

0

1

0i jijji bavbfratrE (5.1)

である.式(5.1)に,実際に試合で用いられたアタックの割合,ブロックフォーメーションの割合,ブロックの平均枚数を代入し,期待値を求める.この時の期待値は 1.27枚である.

次に,ゲーム理論によって導かれた戦術におけるブロックの期待値を求める.ゲーム理

論によって導かれたブロックフォーメーションの割合を表 5.11に示す.式(5.1)に,実際に試合で用いられたアタックの割合,ゲーム理論によって導かれたブロックフォーメーシ

ョンの割合,ブロックの平均枚数を代入し,期待値を求める.この時の期待値は 1.28枚である.実際に試合で用いられたブロックフォーメーションの割合から,ゲーム理論によっ

て導かれたブロックフォーメーションの割合に変えることで,ブロックの枚数は 0.01枚増加する.つまり,ゲーム理論の適用によって最適な戦術を導くことができる. 表 5.9 日本体育大学が行なった全試合におけるブロックの平均枚数とアタックの割合

ブロックフォーメーション 前衛の動きと アタックの種類

アタックの割合

(%) スプレッド(枚) バンチ(枚)III,R 18.6 1.25 1.17III,C 18.6 1.00 1.07III,L 21.4 1.33 1.75XI,R 8.6 2.00 1.00XI,C 20.0 1.00 0.90XI,L 12.9 1.63 1.60

表 5.10 日本体育大学が行なった全試合におけるブロックフォーメーションの割合

(実際に行なわれた試合) ブロックフォーメーション スプレッド(%) バンチ(%)

実際に試合で用いられた割合 48.6 51.4

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表 5.11 日本体育大学が行なった全試合におけるブロックフォーメーションの割合 (ゲーム理論)

ブロックフォーメーション スプレッド(%) バンチ(%)

ゲーム理論で導いた割合 100.0 0.0

5.2.2 日本体育大学対嘉悦大学の試合

まず,実際に試合で用いられた戦術におけるブロックの期待値を求める.表 5.3にアタックの割合を追加した表 5.12を作る.また,実際に試合で用いられたブロックフォーメーションの割合を表 5.13に示す.式(5.1)に,実際に試合で用いられたアタックの割合,ブロックフォーメーションの割合,ブロックの平均枚数を代入し,期待値を求める.この時の

期待値は 1.08枚である. 次に,ゲーム理論によって導かれた戦術におけるブロックの期待値を求める.ゲーム理

論によって導かれたブロックフォーメーションの割合を表 5.14に示す.式(5.1)に,実際に試合で用いられたアタックの割合,ゲーム理論によって導かれたブロックフォーメーシ

ョンの割合,ブロックの平均枚数を代入し,期待値を求める.この時の期待値は 1.11 枚である.実際に試合で用いられたブロックフォーメーションの割合から,ゲーム理論によっ

て導かれたブロックフォーメーションの割合に変えることで,ブロックの枚数は 0.03枚増加する.つまり,この試合においても,ブロックの枚数を増加やせる. 表 5.12 日本体育大学対嘉悦大学の試合におけるブロックの平均枚数とアタックの割合

ブロックフォーメーション 前衛の動き アタックの種類

アタックの割合

(%) スプレッド(枚) バンチ(枚)III,R 44.4 1.33 1.25III,C 16.7 0.00 1.00III,L 27.8 1.38 1.00XI,R 0.0 0.00 0.00XI,C 5.6 1.00 0.00XI,L 5.6 1.50 0.00

表 5.13 日本体育大学対嘉悦大学の試合におけるブロックフォーメーションの割合

(実際に行なわれた試合) ブロックフォーメーション

スプレッド(%) バンチ(%) 実際に試合で用いられた割合 66.7 33.3

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表 5.14 日本体育大学対嘉悦大学の試合におけるブロックフォーメーションの割合 (ゲーム理論)

ブロックフォーメーション スプレッド(%) バンチ(%)

ゲーム理論で導いた割合 100.0 0.0 5.2.3 日本体育大学対筑波大学の試合

まず,実際に試合で用いられた戦術におけるブロックの期待値を求める.表 5.6にアタックの割合を追加した表 5.15を作る.また,実際に試合で用いられたブロックフォーメーションの割合を表 5.16に示す.式(5.1)に,実際に試合で用いられたアタックの割合,ブロックフォーメーションの割合,ブロックの平均枚数を代入し,期待値を求める.この時の

期待値は 1.16枚である. 次に,ゲーム理論によって導かれた戦術におけるブロックの期待値を求める.しかし,

日本体育大学対筑波大学の試合において,守備側は,どちらのフォーメーションを選んで

もブロックの平均枚数が 1枚である.つまり,1つのフォーメーションに決めることはできない.そこで,スプレッドを用いた時,バンチを用いた時の期待値を求める.スプレッド

を用いた時は,式(5.1)に,実際に試合で用いられたアタックの割合,ブロックフォーメーションがスプレッドの割合,ブロックの平均枚数を代入し,期待値を求める.この時の

期待値は 1.25枚である.バンチを用いた時は,式(5.1)に,実際に試合で用いられたアタックの割合,ブロックフォーメーションがバンチの割合,ブロックの平均枚数を代入し,

期待値を求める.この時の期待値は 1.04枚である. ゲーム理論で守備側の戦術を選ぶ時,ブロックフォーメーションはどちらも平均枚数が 1

枚なので,1つに決めることはできなかった.しかし,実際にスプレッドを用いた時のブロックの期待値とバンチを用いた時のブロックの期待値は 0.21枚の差がある. これは,攻撃側がミニマックス戦略による戦術を選んでいないことが原因だと考えられる.

表 5.15 日本体育大学対筑波大学の試合におけるブロックの平均枚数とアタック ブロックフォーメーション 前衛の動き

アタックの種類 アタックの割合

(%) スプレッド(枚) バンチ(枚)III,R 13 1.00 0.00III,C 13 0.67 0.00III,L 21.7 1.13 2.00XI,R 17.4 2.00 1.00XI,C 26.1 1.00 1.00XI,L 8.7 2.00 2.00

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表 5.16 日本体育大学対筑波大学の試合におけるブロックフォーメーションの割合 (実際に行なわれた試合)

ブロックフォーメーション スプレッド(%) バンチ(%)

実際に試合で用いられた割合 56.5 43.5 5.3 ゲーム理論の適用のまとめ

ゲーム理論の適用により,ブロックの枚数の期待値が増加した.しかし,日本体育大学

対筑波大学の試合において,優越される戦略の削除により残された攻撃側の戦術に対する

ブロックの平均枚数が同じであり,最適な戦術が選べなかった.この時,ブロックフォー

メーションのスプレッド,バンチを用いて得られたそれぞれの期待値は,等しくないこと

がわかった.これらのことから,ゲーム理論を用いて導くことにより,必ずしも最適な戦

術が提案できるわけではないことがわかった.

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第6章 おわりに

6.1 まとめ バレーボールの試合のレセプションアタックに限定して,データを収集した.さらに,

攻撃側のセッターが,ローテーションにより後衛にいる時の攻撃と,この攻撃に対する守

備側のブロックを分析した.これらの分析により,攻撃側の各前衛の動きのアタックに対

する各ブロックフォーメーションの関係と,各チームの戦術の違いをみることができた.

次に,攻撃側の各前衛の動きのアタックと,守備側のブロックフォーメーションをゲー

ム理論の 2 人ゼロ和ゲームにおける 2 人の参加者の戦略と見立てた.そして,各ブロックフォーメーションを用いる最適な割合を求めた.このブロックフォーメーションの最適な

割合と,実際に行なわれた試合での前衛の動きにおけるアタックの割合から,ブロックの

枚数の期待値を求めた.この時のブロックの期待値を,実際行なわれた試合でのブロック

の枚数の期待値と比較した.この結果,ゲーム理論の適用によりブロックの枚数を増やせ

た. また,日本体育大学対嘉悦大学の試合において,両チームがゲーム理論で導いた最適な

戦術を用いる時の期待値を求めた.攻撃側は最適な戦術を選んだが,この時の期待値は,

実際に試合で用いた戦略の割合から求めた期待値より増加した.つまり,ゲーム理論を用

いて導くことにより,必ずしも最適な戦術が提案できるわけではないことがわかった. 6.2 今後の課題 今後の課題を以下に示す.

アタックとブロックフォーメーションの関係をより細かく分析することによって,各

ブロックフォーメーションの特徴を表す要素を増やす. ゲーム理論で最適な戦術を求める際,ブロックの回数が 0回のアタックを削除したが,これに代わる手段を考える.

本研究では無視したセッターが前衛である時のアタックを分析して,全ローテーショ

ンにより戦術を立てる.

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謝辞

本研究を進めるにあたり,多くのご指導ご助言をいただいた中央大学理工学部情報工学

科の田口東教授に深く感謝いたします.また,多くの協力と助言をいただいた田口研究室

の鳥海重喜氏,小池光太郎氏をはじめとする大学院生の方々,学部生の皆様に深く感謝い

たします.そして,データのご提供,分析のご助言をいただいた日本体育大学の伊藤雅光

氏,根本研氏,数学モデルの適用のご助言をいただいた国立スポーツ科学センターの廣津

信義氏,データの収集にご協力をいただいた日本体育大学の山下裕之氏に深く感謝いたし

ます.

参考文献

[1] 大村平,戦略ゲームのはなし,日科技連出版社,東京,1995. [2] 郷守重蔵,栃堀申二,バレーボール上達法,スポーツ図書,成美堂出版,東京,1984. [3] 西田俊夫,ゲームの理論,ORライブラリー17,日科技連出版社,東京,1973. [4] 吉田清司,基本から戦術まで バレーボール,日東書院,東京,2002. [5] スポーツルール.com,2006年 1月,

http://www.sports-rule.com/. [6] 全日本大学バレーボール連盟,2006年 1月,

http://www.volleyball-u.com/. [7] 日本オリンピック委員会,2006年 1月,

http://www.joc.or.jp/. [8] バレーボール アンリミテッド,2006年 1月,

http://unlimited.volleyball.ne.jp/. [9] バレーボールガイド,2006年 1月,

http://www.volleyball.gr.jp/.

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付録 A

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表 A.1 バレーボール用語 用語 説明

アタッカー アタックをする選手のことである. アタック セッターが上げたトスに対し,ジャンプしてボールを打つ攻撃のこと

である. アタックテンポ トスを上げてからアタックするまでのボールの滞空時間の長さのこと

である. サーブ 1つのプレーを開始する為に、1人の選手が相手コートに向かってボー

ルを打つことである. 時間差 速攻によりブロックを引きつけて,その背後や別の位置にアタッカー

が回り込んで打つ攻撃のことである. ジャンピング フローター

ジャンプしながら打つフローターサーブのことである.通常のフロー

ターサーブよりも高い打点から打てるため,スピードと威力が増す.

ジャンプサーブ ボールを高く上げ、スパイクを打つ要領で強く打つサーブのことであ

る. スカウティング 敵,味方両方の戦力,戦術について調査,分析することである. スカウティング ソフト

スカウティングを行なうソフトウェアのことである.

スパイク セッターが上げたトスに対し,ジャンプしてボールを打つ攻撃のこと

である.アタックと同じ意味である. スプレッド ブロッカーが中央付近に集まって配置するフォーメーションのことで

ある. センター センターは前衛の中央に位置する選手で,ブロックの中心となるポジ

ションである.一般的に,前衛後衛に一人ずついる. セッター トスを上げることが仕事のポジションである.数ある攻撃パターンを

組み立ててトスを上げる,司令塔である. 速攻 トスを上げてから,スパイクを打つまでの時間が短い攻撃のことであ

る. タッチネット

ボールに触れるための一連の動作中に,ネット,もしくはアンテナに

触れる反則のことである.一連の動作とは、触る為の準備体勢、触れ

ている瞬間、触れた後の体勢などを指す. チャンスボール 攻撃側にとって攻撃しやすい状態のボールのことである. デディケート ブロッカーを片寄らせて配置するフォーメーションのことである. トス スパイクを打つ為に,ボールを上空にはじくプレーのことである.

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バックアタック プレーヤーが後衛の時にアタックラインの後ろから攻撃することであ

る. バンチ ブロッカーに広がりをもって配置するフォーメーションのことであ

る. フェイント 強いスパイクを打つと見せかけて緩く打つ攻撃のことである. フローター カーブなどの変化をさせるサーブのことである.相手コートに対し向

かいあうような姿勢から打つため,ボールのコントロールしやすい.

ブロッカー ブロックをする選手のことである. ブロック 前衛の選手が両手を上げてジャンプし,スパイクを跳ね返すように防

御することである. ブロックアウト ブロックにより失点することである. ブロックポイント ブロックにより得点することである. ライト ライトは特に得点能力の高い選手が入るポジションである.海外では

レフトと同じくアウトサイドヒッターという.昔はオールラウンドな

選手がこのポジションだったが,レフトがレシーブの要になった最近

ではとにかく得点を取れる選手が置かれる. レシーブ 相手から打ち込まれたボールなどを,手首のあたりでボールをはじく

ようにして上げるプレーのことである. レセプション サーブで打ち込まれたボールをレシーブすることである. レフト コートの左側から打つことの多いポジションである.レフトは日本独

特の呼び名であり,海外ではライトと同じくアウトサイドヒッターと

いう.一般的に,前衛後衛に 1人ずついる. ローテーション 6つのコートポジションを時計回りに1つずつ移動することである.

ローテーションは,サーブ権が移動した時に,サーブ権を得た方のチ

ームが行なう.

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付録 B

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表 B.1 日本体育大学のブロックのコード 前衛の動き② 日付と

対戦大学名

サーブ

のコード

レセプション

のコード

アタック

のコード

経過

時間

セット

日体大の

ポイント

対戦チーム

のポイント

日体大の

セッターの位置

対戦チームの

セッターの位置

前衛の

動き① 2 9 4 7 3

ブロック

フォーメーション

ブロック

の枚数

ブロック

の評価

040918嘉悦大 52SQ-61 08RQ#61 09AQ#PL9B 0:00:03 1 0 0 2 1 2 / / L / V 2 1.0 6

040918嘉悦大 67SQ-17 10RQ#17 13AM#PY4 0:02:30 1 3 4 1 6 1 Z / Y / W 2 2.0 5

040918嘉悦大 64SH-56 21RH#56 17AQ+PO8 0:03:20 1 4 5 6 5 1 Z / O / V 2 2.0 2

040918嘉悦大 68SQ-61 13RQ#61 17AQ+PB 0:04:58 1 6 8 4 3 1 / / B / V 2 1.5 2

040918嘉悦大 64SH-56 21RH#56 10AM+PV 0:09:16 1 10 14 6 5 2 Y / L / V 1 1.0 2

040918嘉悦大 64SH-55 08RH#55 13AM#PY4 0:09:51 1 10 15 6 5 1 Y / B / V 2 1.0 5

040918嘉悦大 68SQ-61 13RQ#61 08AM!PV2 0:11:14 1 12 17 4 3 2 / / L / V 2 2.0 3

040918嘉悦大 68SQ-61 10RQ#61 08AM#PV1 0:13:09 1 12 19 4 3 1 / / B / V 3 2.0 5

040918嘉悦大 68SQ-69 13RQ#69 17AQ#PD 0:24:39 2 8 4 4 3 2 / / D / V 1 1.0 6

040918嘉悦大 52SQ-69 08RQ#69 10AM+PV6C 0:27:09 2 11 7 2 1 2 / / O / V 2 1.5 6

040918嘉悦大 54SQ-68 13RQ#68 17AQ+PC 0:33:15 2 17 14 5 4 1 Z / C / V 2 1.5 2

040918嘉悦大 54SQ-69 10RQ#69 08AM#PV6C 0:33:38 2 17 15 5 4 2 Y / L / V 2 2.0 6

040918嘉悦大 68SQ-69 13RQ#69 17AQ#PD 0:34:22 2 18 16 4 3 2 / / D / V 1 1.0 6

040918嘉悦大 52SQ-68 12RQ#68 10AM+PV7A 0:36:47 2 21 18 2 1 2 / / L / V 2 1.5 6

040918嘉悦大 67SQ-18 10RQ#18 09AQ/PL9 0:39:05 2 22 21 1 6 1 L / C / V 2 1.5 1

040918嘉悦大 67SQ-16 08RQ#16 10AM+PV8D 0:39:35 2 22 22 1 6 2 Y / C / V 2 1.5 6

040918嘉悦大 64SH-55 08RH#55 10AM#PV5B 0:40:56 2 23 24 6 5 1 Z / B / V 2 1.5 6

040918嘉悦大 54SH-67 08RH#67 08AM#PV6A 0:41:38 2 24 25 5 4 1 L / C / V 1 2.0 6

040918嘉悦大 68SQ-68 10RQ#68 08AM#PV6A 0:42:45 2 25 26 4 3 1 / / B / V 3 2.0 5

040918嘉悦大 67SQ-18 10RQ#18 09AM+PX7 0:48:27 3 1 1 1 6 2 X / A / V 2 2.0 2

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040918嘉悦大 54SQ-67 21RQ#67 13AQ#PB9A 0:52:45 3 3 6 5 4 1 Z / B / V 2 1.0 6

040918嘉悦大 52SQ-11 08RQ#11 09AQ!PO4 0:56:17 3 7 11 2 1 2 / / O / V 2 1.5 3

040918嘉悦大 54SQ-66 13RQ#66 17AM!PZ4 1:00:12 3 11 16 5 4 2 Z / Y / V 1 1.0 3

040918嘉悦大 52SQ-16 21RQ#16 09AQ#PL8C 1:03:26 3 15 20 2 1 2 / / L / V 2 0.0 6

040918嘉悦大 62SM-68 13RM#68 10AM-PV2 1:05:36 3 17 22 6 5 1 / / A / V 1 1.5 2

040918嘉悦大 62SM-67 21RM#67 10AM/PV2 1:06:35 3 17 24 6 5 1 Z / C / V 1 1.5 1

040919東女体 88SH-55 21RH#55 17AQ#PD9D 0:02:45 1 4 4 4 2 2 / / D / V 2 1.0 6

040919東女体 65SQ-68 21RQ#68 09AQ#PL9B 0:13:02 1 16 16 2 6 2 / / L / V 2 1.0 6

040919東女体 54SH-11 12RH#11 13AM+PY8 0:14:42 1 18 18 6 4 2 Y / L / V 1 1.5 6

040919東女体 70SQ-68 13RQ#68 08AM+PV 0:19:19 1 21 22 5 3 2 Y / L / V 2 2.0 2

040919東女体 81SQ-55 12RQ#55 08AM+PV7 0:20:34 1 22 23 4 2 1 / / B / V 3 2.0 2

040919東女体 65SQ-68 21RQ#68 09AQ#PL5A 0:25:51 2 0 1 2 6 2 / / L / V 2 1.0 5

040919東女体 67SH-51 08RH#51 09AQ+PC 0:26:27 2 1 2 1 5 2 Y / C / V 2 0.5 4

040919東女体 54SH-16 08RH#16 13AQ#PB9A 0:27:34 2 3 3 6 4 2 L / B / V 2 1.5 6

040919東女体 70SQ-61 10RQ#61 17AQ#PC1A 0:28:58 2 4 6 5 3 2 Y / C / V 2 1.5 5

040919東女体 86SM-18 13RM#18 09AQ+PR3 0:31:01 2 7 9 3 1 2 / / R / V 2 1.0 6

040919東女体 86SM-18 13RM#18 08AM/PV4 0:32:45 2 7 11 3 1 1 / / A / V 2 2.0 1

040919東女体 86SM-17 10RM#17 02AM!PV2 0:33:16 2 7 12 3 1 2 / / L / V 2 2.0 3

040919東女体 65SQ-66 21RQ#66 09AQ#PL7C 0:35:00 2 9 14 2 6 2 / / L / V 2 1.0 6

040919東女体 67SM-58 02RM#58 10AM#PV2 0:36:07 2 10 16 1 5 2 Y / C / V 2 1.0 5

040919東女体 54SH-11 21RH#11 13AM+PY1 0:37:25 2 12 17 6 4 1 Y / B / W 2 1.0 2

040919東女体 88SH-58 21RH#58 17AM#PZ4 0:51:59 3 4 8 4 2 1 Z / / / V 1 1.0 5

040919東女体 65SQ-63 09RQ#63 02AM#PV9 0:54:34 3 8 10 2 6 2 / / L / V 2 2.0 5

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040919東女体 54SH-15 08RH#15 17AQ#PL7D 0:56:26 3 11 12 6 4 2 / / L / V 2 1.0 5

040919東女体 86SM-18 13RM#18 09AQ#PL7A 0:59:35 3 15 16 3 1 2 / / L / V 2 1.0 6

040925青学大 63SH-58 13RH#58 09AQ#PL5 0:00:47 1 1 1 1 1 1 L / Y / V 2 1.0 5

040925青学大 58SM-56 21RM#56 16AM+PV5 0:01:24 1 2 2 6 6 2 X / A / V 2 2.0 2

040925青学大 58SH-55 08RH#55 13AM+PX1 0:02:03 1 2 3 6 6 2 X / A / V 2 0.0 7

040925青学大 51SQ-18 13RQ#18 08AH+P11 0:05:22 1 4 8 5 5 1 / / / / 1 2 2.0 2

040925青学大 55SH-64 09RH#64 16AH+P14 0:08:31 1 7 11 2 2 1 / / / / 1 3 2.0 4

040925青学大 55SH-66 21RH#66 16AM=PV1B 0:09:36 1 7 13 2 2 2 / / L / V 2 1.5 1

040925青学大 55SH-54 09RH#54 16AM+PV9 0:09:57 1 7 14 2 2 2 / / L / V 2 2.0 2

040925青学大 55SH-66 13RH#66 09AQ+PL7B 0:11:28 1 7 16 2 2 2 / / L / V 2 1.0 2

040925青学大 55SH-66 21RH#66 08AL#P86 0:11:47 1 7 17 2 2 2 / 8 L / V 2 1.0 5

040925青学大 63SH-55 08RH#55 09AQ#PC8 0:13:04 1 8 19 1 1 2 Y / C / V 2 0.5 5

040925青学大 52SH-66 13RH#66 08AH+P13 0:16:07 1 12 23 3 3 2 / / L / 1 1 2.0 3

040925青学大 55SH-57 14RH#57 16AH#P16A 0:18:08 2 0 0 2 2 1 / / O / 1 2 2.0 5

040925青学大 58SM-51 21RM#51 16AM=PV1 0:22:36 2 2 3 6 6 1 Z / C / V 2 1.5 1

040925青学大 51SQ-16 01RQ#16 08AM#PV7C 0:24:51 2 3 7 5 5 2 / / L / V 2 2.0 6

040925青学大 59SQ-15 21RQ#15 17AQ#PL5A 0:25:36 2 4 8 4 4 2 / / L / V 1 1.0 6

040925青学大 53SH-68 14RH#68 09AQ#PL7D 0:26:17 2 5 9 3 3 2 / / L / V 1 1.0 6

040925青学大 55SH-68 14RH#68 08AL+P81 0:26:51 2 6 10 2 2 2 / 8 L / V 2 0.5 6

040925青学大 55SH-69 16RH#69 16AM#PV6A 0:27:24 2 6 11 2 2 1 / / A / V 3 2.0 5

040925青学大 63SH-16 14RH#16 09AQ#PA8B 0:28:43 2 7 13 1 1 2 Y / A / V 2 1.0 6

040925青学大 51SQ-16 14RQ#16 08AM/PV1 0:31:20 2 9 16 5 5 1 Z / R / V 2 2.0 1

040925青学大 59SQ-18 16RQ#18 08AM+PV7A 0:34:42 2 10 21 4 4 2 / / L / V 1 2.0 2

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040925青学大 65SH-51 08RH#51 16AM-PV1 0:37:08 2 13 24 2 2 1 / / B / V 3 1.0 2

040925青学大 63SH-11 08RH#11 14AM+PZ5 0:41:37 3 0 1 1 1 2 Z / C / V 2 0.5 6

040925青学大 65SH-66 21RH#66 02AM#PV6 0:47:42 3 5 10 2 2 2 / / R / V 2 2.0 4

040925青学大 51SQ-18 14RQ#18 08AM+PV7 0:50:15 3 8 14 5 5 1 / / A / V 2 2.0 2

040925青学大 59SQ-11 14RQ#11 17AQ-PL6 0:51:09 3 9 15 4 4 2 / / L / V 2 1.0 2

040925青学大 59SQ-16 15RQ#16 08AM+PV58 0:52:28 3 9 16 4 4 1 / / A / V 2 2.0 2

040925青学大 59SQ-16 02RQ#16 17AQ#PO8 0:54:39 3 9 19 4 4 2 / / O / V 2 1.0 5

040925青学大 54SH!65 02RH#65 08AM+PV9 0:55:30 3 10 20 3 3 2 / / O / V 2 2.0 2

040925青学大 60SH-66 21RH#66 09AQ#PR7A 0:57:26 3 13 21 2 2 2 / / R / V 2 1.0 5

040926筑波大 54SH-11 08RH#11 10AM+PV2A 0:00:50 1 1 1 1 6 1 Z / C / V 1 1.5 7

040926筑波大 51SQ-55 08RQ#55 10AM#PV6 0:02:44 1 3 3 6 5 1 Y / A / V 2 2.0 6

040926筑波大 65SH-16 10RH#16 08AM#PV7 0:04:30 1 5 6 4 3 1 / / C / V 2 2.0 6

040926筑波大 65SH-11C 13RH#11 17AQ+PO2 0:05:16 1 5 8 4 3 1 / / O / V 2 1.5 2

040926筑波大 65SH-11 13RH#11 08AM#PV3B 0:06:24 1 5 9 4 3 2 / / L / V 1 2.0 7

040926筑波大 60SM-16 21RM#16 09AQ#PL5A 0:07:59 1 7 11 2 1 2 / / L / V 1 1.0 5

040926筑波大 54SH-17C 21RH#17 09AM+PX5 0:08:49 1 8 12 1 6 2 X / A / V 3 2.5 2

040926筑波大 51SQ-16 13RQ#16 10AM+PV2A 0:09:58 1 9 14 6 5 2 X / L / V 2 1.5 7

040926筑波大 58SH-68A 13RH#68 17AQ#PB7B 0:11:08 1 10 16 5 4 1 Y / B / V 2 1.0 6

040926筑波大 57SM-51C 13RM#51 17AQ+PR8 0:12:03 1 11 17 4 3 2 / / R / V 2 1.0 6

040926筑波大 66SQ-16 13RQ#16 09AQ#PL7C 0:14:02 1 12 19 3 2 2 / / L / V 2 1.0 6

040926筑波大 60SM-18 21RM#18 10AM+PV5 0:15:33 1 15 20 2 1 2 / / L / V 1 2.0 2

040926筑波大 54SH-54 10RH#54 09AM+PZL 0:18:01 1 18 22 1 6 1 Z / C / V 2 1.0 2

040926筑波大 54SH-16 13RH#16 10AM#PVC 0:18:22 1 18 23 1 6 1 Z / A / V 1 2.0 5

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040926筑波大 51SQ-58 13RQ#58 10AM+PV9A 0:19:33 1 20 24 6 5 2 Y / L / V 2 1.5 7

040926筑波大 60SM-16C 13RM#16 10AM#PV1 0:23:26 2 0 0 2 1 1 / / A / V 2 2.0 6

040926筑波大 58SH-11 10RH#11 08AM#PV7 0:26:08 2 4 3 5 4 1 X / C / V 2 2.0 4

040926筑波大 65SH-18 10RH#18 17AQ#PB5A 0:27:17 2 5 5 4 3 1 / / B / V 3 1.0 6

040926筑波大 66SQ-16 13RQ#16 09AQ#PL8B 0:28:44 2 6 7 3 2 2 / / L / V 2 0.5 6

040926筑波大 54SH-18 13RH#18 10AM+PV9 0:30:46 2 9 9 1 6 1 X / L / V 1 1.0 7

040926筑波大 51SQ-55 08RQ#55 17AM+PX 0:31:40 2 10 10 6 5 1 X / A / V 2 2.0 3

040926筑波大 51SQ-55 08RQ#55 10AM#PV1D 0:32:37 2 10 12 6 5 1 Y / A / V 2 1.0 5

040926筑波大 58SH-51 10RH#51 08AM#PV1 0:33:11 2 11 13 5 4 1 Y / L / V 2 2.0 5

040926筑波大 60SM-58 13RM#58 10AM#PV9 0:35:27 2 14 16 2 1 2 / / R / V 2 1.5 5

040926筑波大 51SQ-58 13RQ#58 10AM#PV5B 0:40:46 2 21 18 6 5 1 X / A / V 2 1.5 6

040926筑波大 58SH-19 13RH#19 08AM+PV7C 0:41:38 2 23 19 5 4 2 X / L / V 1 2.0 6

040926筑波大 65SH-16 13RH#16 08AM/PV5 0:42:43 2 24 20 4 3 1 / / B / V 3 2.0 1

040926筑波大 65SH-11 13RH#11 17AQ#PC5B 0:43:40 2 24 21 4 3 1 / / C / V 2 1.5 6

040926筑波大 51SQ-56 13RQ#56 17AQ!PL4 0:47:48 3 1 2 6 5 2 X / L / V 2 1.5 3

040926筑波大 58SH-16 10RH#16 17AQ+PB 0:48:55 3 2 4 5 4 1 Y / B / V 2 1.5 3

040926筑波大 58SH-61 13RH#61 17AQ!PA3 0:49:18 3 2 5 5 4 2 X / A / V 1 2.0 3

040926筑波大 58SH-66 10RH#66 13AQ#PB8A 0:50:48 3 2 6 5 4 1 Y / B / V 2 1.0 6

040926筑波大 65SH-11 10RH#11 08AM/PV4 0:51:43 3 4 7 4 3 1 / / C / V 2 2.0 1

040926筑波大 65SH-19 13RH#19 17AQ#PA6 0:52:34 3 4 10 4 3 1 / / A / V 2 2.0 5

040926筑波大 66SQ-15 10RQ#15 08AM#PV8C 0:53:18 3 5 11 3 2 1 / / A / V 3 2.0 6

040926筑波大 60SM-18 21RM#18 09AQ+PO9C 0:54:37 3 7 12 2 1 1 / / O / V 2 1.5 6

040926筑波大 60SM-15 13RM#15 10AM+PV6D 0:55:05 3 7 13 2 1 1 / / B / V 3 2.0 2

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040926筑波大 60SM-18 21RM#18 09AQ!PL6 0:56:19 3 7 14 2 1 2 / / L / V 2 1.0 3

040926筑波大 60SM-18 10RM#18 09AQ+PL8 0:56:53 3 7 15 2 1 2 / / L / V 2 1.0 4

040926筑波大 51SQ-17 08RQ#17 08AH= 0:59:45 3 9 18 6 5 0.0 7

040926筑波大 51SQ-17 08RQ#17 10AM+PW6B 1:00:00 3 9 19 6 5 1 Z / B / W 1 2.0 4

040926筑波大 65SH-18 10RH#18 08AM#PV1D 1:04:05 3 14 24 4 3 2 / / L / V 1 2.0 5

040926筑波大 60SH-16 21RH#16 09AQ/PL6 1:07:45 4 0 0 2 1 2 / / L / V 1 1.5 1

040926 筑波大 51SQ-58 13RQ#58 17AQ+PA9 1:10:10 4 4 3 6 5 1 Y / A / V 2 1.0 6

040926 筑波大 58SH-59 10RH#59 08AM!PV1 1:12:32 4 5 5 5 4 1 L / A / V 2 2.0 3

040926 筑波大 60SH-15 08RH#15 09AQ#PL8A 1:15:11 4 8 9 2 1 2 / / L / V 2 1.5 5

040926 筑波大 54SH-55 13RH#55 09AM+PV 1:16:28 4 10 10 1 6 1 X / A / V 2 2.5 2

040926 筑波大 51SQ-55 13RQ#55 17AQ=PL3 1:17:18 4 11 11 6 5 2 X / L / V 2 1.5 7

040926 筑波大 51SQ-58 13RQ#58 10AM#PV6 1:18:53 4 11 13 6 5 1 Y / A / V 2 1.0 5

040926 筑波大 66SH-16 13RH#16 09AQ+PL6 1:24:48 4 14 20 3 2 2 / / L / V 1 1.0 2

040926 筑波大 60SH-59 08RH#59 09AQ=PL3 1:26:20 4 16 21 2 1 2 / / L / V 1 1.0 7

040926 筑波大 60SM-59 08RM#59 09AQ/PL8A 1:26:36 4 16 22 2 1 2 / / L / V 2 1.5 1

040926 筑波大 60SM-16 08RM#16 10AM-PV1 1:26:58 4 16 23 2 1 1 / / A / V 3 2.0 2

041002 東海大 58SH-59 21RH#59 13AM#PY8 0:01:14 1 2 1 1 6 1 Z / Y / V 2 1.0 6

041002 東海大 51SQ-55 21RQ#55 17AQ+PLL 0:05:49 1 8 4 5 4 1 L / B / V 2 1.0 2

041002 東海大 58SH-56 13RH#56 09AQ+PC1 0:10:18 1 13 9 1 6 2 Z / C / V 1 1.5 7

041002 東海大 58SH-51 08RH#51 10AM#PV2 0:10:37 1 13 10 1 6 1 Z / C / V 1 1.5 7

041002 東海大 57SH-16 13RH#16 17AQ/PA3 0:11:24 1 14 11 6 5 2 X / A / V 2 2.0 1

041002 東海大 57SH-18 13RH#18 10AM+PVD 0:12:25 1 14 14 6 5 1 Z / A / V 1 1.5 2

041002 東海大 51SQ-57 17RQ#57 08AM+PV6 0:14:00 1 16 16 5 4 1 Z / A / V 2 2.0 2

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041002 東海大 73SQ-16 10RQ#16 17AQ#PL9 0:16:28 1 17 19 4 3 2 / / L / V 1 1.0 6

041002 東海大 68SQ-11 21RQ#11 09AQ#PL7 0:18:22 1 18 21 3 2 2 / / L / V 2 1.0 6

041002 東海大 61SH-11 21RH#11 09AQ!PLL 0:19:58 1 20 23 2 1 2 / / L / V 2 1.0 3

041003 日女体 66SH-61 10RH#61 17AQ!PL3 0:01:33 1 2 3 5 5 2 L / X / V 2 1.0 3

041003 日女体 60SH-16 10RH#16 17AQ-PL4 0:03:01 1 4 5 4 4 2 / / L / V 1 1.0 4

041003 日女体 60SH-19 13RH#19 17AQ!PA3 0:03:28 1 4 6 4 4 1 / / A / V 1 1.0 3

041003 日女体 60SH-18 10RH#18A 08AM-PV1 0:04:33 1 4 7 4 4 1 / / C / V 1 2.0 4

041003 日女体 56SH-57 08RH#57 13AQ+PB 0:09:36 1 12 11 6 6 2 B / L / V 1 0.5 4

041003 日女体 66SH-66B 13RH#66 08AM+PX1C 0:10:36 1 13 12 5 5 3 Y / B / X 2 1.5 2

041003 日女体 66SH-61C 10RH#61 08AM#PV5B 0:11:05 1 13 13 5 5 1 C / B / V 1 2.0 7

041003 日女体 64SH-58 21RH#58 10AM#PV7D 0:24:06 2 0 2 2 2 2 / / L / V 1 2.0 6

041003 日女体 68SH-18 13RH#18 13AM=PY7D 0:24:45 2 1 3 1 1 2 Y / C / V 1 0.0 7

041003 日女体 56SH-57A 13RH#57 17AQ!PL4 0:26:51 2 2 6 6 6 2 / / L / V 1 1.0 3

041003 日女体 58SQ-65 21RQ#65 08AM#PV6B 0:48:45 3 7 5 5 5 2 C / B / V 2 2.0 5

041003 日女体 60SH-11C 10RH#11 08AM-PVA 0:50:38 3 8 8 4 4 2 / / L / V 2 2.0 2

041003 日女体 60SH-18 10RH#18 17AQ#PD5 0:51:00 3 8 9 4 4 1 / / D / V 2 1.0 6

041003 日女体 58SQ-59D 13RQ#59 08AM+PV7 0:59:05 3 20 14 5 5 1 Y / B / V 2 2.0 6

041003 日女体 58SQ-56 10RQ#56 17AQ/PL2 0:59:39 3 20 15 5 5 2 X / L / V 1 1.0 1

041003 日女体 60SH-19 16RH#19 08AH-P12 1:02:36 3 22 18 4 4 2 / / L / 1 1 2.0 2

041003 日女体 52SH-19 21RH#19 09AQ#PLD 1:03:29 3 23 19 3 3 2 / / L / V 1 1.0 5

041009 早稲田 58SH-65 08RH#65 17AQ+PB8 0:02:34 1 1 5 6 5 1 Z / B / V 2 1.0 6

041009 早稲田 55SH-58 13RH#58 09AQ#PLD 0:05:03 1 5 8 3 2 2 / / L / V 1 1.5 5

041009 早稲田 56SH-11 08RH#11 09AQ=PL4 0:06:11 1 7 9 2 1 2 / / L / V 1 1.0 7

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041009 早稲田 56SH-15 13RH#15 10AM#PV6 0:17:23 1 18 21 2 1 2 / / L / V 1 1.0 6