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(2) 2008.3 金属資源レポート 105 821オーストラリアのウラン鉱床(2) はじめに オーストラリアでは、角礫岩複合タイプ、不整合関連タイプ、砂岩タイプ、表成タイプ、交代岩タイプ、変成岩タ イプ、火山岩タイプ、貫入岩タイプ、鉱脈タイプ、石英・円礫・礫岩タイプなどのウラン鉱化作用が知られているが、 これら異なるタイプのウラン鉱化作用(鉱床)は、地域的に大きな偏りがある。資源量としてもっとも大きな割合を 占める角礫岩複合タイプや鉱石を採掘せずに原位置でのウラン回収(In-situ Leaching)が可能な砂岩タイプは、南 オーストラリア州南部 Gawler Craton 地域に多く分布している。一方、現在、オーストラリア国内でウラン生産量が 最大の Ranger 鉱山など不整合タイプは、北部準州北部の Alligator Rivers 地域に多く分布している。また、表成タ イプ(カルクリート)は西オーストラリア州に、交代岩・変成岩に伴うタイプはクィーンズランド州 Mount Isa 地域 周辺に多く分布している。 本稿では、オーストラリアの代表的なウラン鉱床地域について地質・鉱床とこれまでの探査状況について紹介する。 第 3 章 オーストラリアの代表的なウラン鉱床地域 シドニー事務所 副所長 [email protected] 久保田 博志 1. 南オーストラリア州 (1)Gawler Craton地域 (2)Mount Painter地域 (3)Eyre半島地域 (4)Frome Embayment地域 (5)Eucla Basin地域 (Eyre半島地域) 2. 北部準州 (6)Alligator Rivers地域 (7)Rum Jungle地域 (8)South Alligator Valley地域 (9)Tennant Creek地域 (10)Amadeus Basin地域 (11)Ngalia Basin地域 (12)Westmoreland Pandanus Creek地域 3. 西オーストラリア州 (13)Rudall Complex地域 (14)Turee Creek地域 (15)Canning Basin地域 (16)Kimbery Basin地域 (17)Gunbarrel Basin地域 (18)Carnarvon Basin地域 (19)Yilgarn Craton地域 (20)Hamersley Basin地域 (21)Pilbara Craton地域 4. クィーンズランド州 (22)Mount Isa地域 (23)Mary Kathleen地域 (24)Georgetown-Townsville地域 5. その他の地域 (25)LachlanFold Belts地域 (26)New England Fold Belts地域 (7) (16) (15) (6) (8) (12) (9) (11) (10) (20) (21) (18) (14) (13) (19) (17) (22) (23) (24) (2) (1) (4) (26) (5) (3) (25) 図1 オーストラリアの主要ウラン鉱床地域

オーストラリアのウラン鉱床(2)mric.jogmec.go.jp/wp-content/old_uploads/reports/... · Acropolis、Wirrda Well、Oak Dam、 Emmie Bluff、Alford鉱床*3 (2)Mount

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レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート 105(821)

オーストラリアのウラン鉱床(2)

はじめにオーストラリアでは、角礫岩複合タイプ、不整合関連タイプ、砂岩タイプ、表成タイプ、交代岩タイプ、変成岩タ

イプ、火山岩タイプ、貫入岩タイプ、鉱脈タイプ、石英・円礫・礫岩タイプなどのウラン鉱化作用が知られているが、

これら異なるタイプのウラン鉱化作用(鉱床)は、地域的に大きな偏りがある。資源量としてもっとも大きな割合を

占める角礫岩複合タイプや鉱石を採掘せずに原位置でのウラン回収(In-situ Leaching)が可能な砂岩タイプは、南

オーストラリア州南部Gawler Craton 地域に多く分布している。一方、現在、オーストラリア国内でウラン生産量が

最大の Ranger 鉱山など不整合タイプは、北部準州北部の Alligator Rivers 地域に多く分布している。また、表成タ

イプ(カルクリート)は西オーストラリア州に、交代岩・変成岩に伴うタイプはクィーンズランド州Mount Isa 地域

周辺に多く分布している。

本稿では、オーストラリアの代表的なウラン鉱床地域について地質・鉱床とこれまでの探査状況について紹介する。

第 3章 オーストラリアの代表的なウラン鉱床地域

シドニー事務所 副所長[email protected] 久保田 博志

1. 南オーストラリア州 (1)Gawler Craton地域 (2)Mount Painter地域 (3)Eyre半島地域 (4)Frome Embayment地域 (5)Eucla Basin地域 (Eyre半島地域) 2. 北部準州 (6)Alligator Rivers地域 (7)Rum Jungle地域 (8)South Alligator Valley地域 (9)Tennant Creek地域 (10)Amadeus Basin地域 (11)Ngalia Basin地域 (12)Westmoreland ―Pandanus Creek地域 3. 西オーストラリア州 (13)Rudall Complex地域 (14)Turee Creek地域 (15)Canning Basin地域 (16)Kimbery Basin地域 (17)Gunbarrel Basin地域 (18)Carnarvon Basin地域 (19)Yilgarn Craton地域 (20)Hamersley Basin地域 (21)Pilbara Craton地域 4. クィーンズランド州 (22)Mount Isa地域 (23)Mary Kathleen地域 (24)Georgetown-Townsville地域 5. その他の地域 (25)LachlanFold Belts地域 (26)New England Fold Belts地域

(7)

(16)

(15)

(6)

(8)

(12) (9)

(11)

(10) (20) (21)

(18) (14) (13)

(19)

(17)

(22) (23) (24)

(2)

(1) (4) (26)

(5) (3) (25)

図1 オーストラリアの主要ウラン鉱床地域

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1. 南オーストラリア州1)角礫岩複合タイプ(Breccia complex)(1)Gawler Craton 地域地質・鉱化:始生代~原生代中期の堆積岩起源の変成

岩類と花崗岩類からなる Gawler Craton

を、原生代後期~カンブリア紀の変形を

受けていない海成堆積岩等からなる

Stuart Shelf が不整合に被覆する。同地

域の東縁(A d e l a d e 地向斜)は、

Torrens Hinge 帯が境界となっている。

原生代初期の変成岩起源の堆積岩類・花

崗岩類には原生代中期のHiltaba Suite 花

崗岩体が貫入している。

Olympic Dam地域では、Hiltaba Suite 花

崗岩体の一部である Burgoyne バソリス

が Sturat Shelf の下位に存在し、Roxby

Downs 花崗岩類はその一部である。

Olympic Dam 鉱床は、Roxby Downs 花

崗岩類中(1588 ± 4Ma)の赤鉄鉱に富む

Olympic Dam角礫複合岩体に胚胎し、生

成時期は同花崗岩類と同じと考えられて

いる。*1

探査の経緯:1975 年、同地域を代表する Olympic

Dam 鉱床をWestern Mining Corporation

Ltd.(WMC)が発見。同社は、角礫化し

た玄武岩から銅元素が供給され、地下水

によって移動、堆積岩の環境によって還

元・沈殿するとのモデルに基づき、堆積

性の銅鉱床探査を行っていた。同地域を

選定した理由として、①重力異常と磁気

異常の双方が認められること(深部に玄

武岩が存在することを示唆する)、②鉱液

の通路となる断裂系(主要テクトニック

構造)が存在することをあげている。

1975 年、ボーリングにより、深さ 353 ~

391m、幅 38m、銅品位 1.0 %の銅鉱化を

捕捉。

1976 年、ボーリングにより、幅 170m、

銅品位 2 . 1 %の銅鉱化とウラン品位

0.06 % U3O8のウラン鉱化を捕捉。

1988 年、生産開始(WMC 社 51 %、

British Petroleum Ltd. 49 %)。

1993 年、WMC社が BP 社の権益 49 %を

315 百万A$にて取得。

1995 年、Rudy Gomez 氏が Carrapateena

鉱区を取得。

2001 年、Minotaur Exploration Ltd. が、

Prominent Hill 銅―金鉱床を発見。

2004 年、Oxiana Ltd. が Prominent Hill

プロジェクトを取得。

2005 年、南オーストラリア州政府のボー

リング補助制度 PACE(The Plan for

Accelerating Exploration)を利用したボ

ーリングでCarrapateena銅・金鉱床を発見

(469-543m@Cu 3.03 %・Au 0.4g/t)。*2

2005 年、Teck Cominco Ltd.が参入

(RMG Services Pty Ltd. 権益 100 %)。

2005 年、BHP Billiton 社がWMC社を買

収。

2009 ~ 2013 年、拡張工事、生産開始予

定。

代表的な鉱床:Olympic Dam、 Prominent Hill、

Acropolis、Wirrda Well、Oak Dam、

Emmie Bluff、Alford 鉱床 *3

(2)Mount Painter 地域地質・鉱化:Mount Painter Inlier 地域では、原生代

初期の泥質片岩・珪岩などからなる

Padium Creek 変成岩に、原生代中期に 2

回の花崗岩類の貫入、火山岩類、堆積岩

類が見られ、カンブリア~オルドビス紀

にも花崗岩類の貫入があった。

同地域の南~中央部には、花崗岩質角礫

岩・赤鉄鉱質角礫岩・緑泥石質角礫岩か

らなる Radium Ridge 角礫岩類が主要断

層系と関連して分布(7km2)。

Radium Ridge 角礫岩類は、古生代初期

の熱水作用と堆積作用によって形成され

た。

ウラン―トリウム鉱化作用は、Mount

Painter 花崗岩中にあり、多くは角礫部に

濃集している。ウランに富む花崗岩の生

成年代は 1575 ~ 1555Ma と見積もられて

いる。*4

探査の経緯:1910 ~ 1932 年、Radium Ridge 地区で

鉱脈中の二次ウラン鉱物を小規模採掘。

1944 ~ 1950 年、南オーストラリア州政

府(South Australian Department of

Mines)が、幾つかのウラン―レアアース

鉱床を確認。

1968 ~ 1971 年、Exoil-Transoil が、ボー

リング等探査を実施し、幾つかのウラン

鉱床を確認。

1990 ~ 1994 年、CRA Exploration Ltd.

が、空中磁気・放射能探査、沢砂地化学

探査、ボーリング調査を Mount Gee-

Mount Painter で実施し、ウラン鉱化を

確認。*5

代表的な鉱床:Mount Gee、Mount Gee East、Radium

R i d g e、A rm c h a i r - S t r e i t b e r g、

Hodgkinson、East Painter 鉱床 *3

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート106(822)

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レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート 107(823)

出典:A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia, “Australia's Uranium resources, geology and development of deposits”,p40

図2 Gawler Craton地域(南オーストラリア州)

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レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート108(824)

図 3 Gawler Graton 地域 IOCG鉱床ポテンシャル図(南オーストラリア州)

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2)不整合関連タイプ(Unconformity-related deposits)(1)Eyre 半島地域地質・鉱化:半島の西半分は、始生代のグラニュライ

ト相片麻岩からなる Sleaford 複合岩体、

東半分は、原生代初期の堆積岩起源の変

成岩からなる Hutchison 累層と花崗岩類

からなる Lincoln 複合岩体で構成されて

いる。

鉱化作用は、Hutchison 累層の角閃岩・

層状鉄鉱床・カルク―珪酸塩質岩中にあ

る。*6

探査の経緯:過去に銅鉱床として採掘された鉱床があ

る。

1970 年代~ 1980 年代、Cleve 周辺で不整

合タイプのウラン鉱床探査が行われた。*6

代表的な鉱床:Ben Boy 鉱徴地 *3

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート 109(825)

出典:A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia, “Australia's Uranium resources, geology and development of deposits”, p98

図4 Eyre半島地域(南オーストラリア州)

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3)砂岩タイプ(Sandstone deposits)(1)Frome Embayment 地域地質・鉱化:Frome Embayment 地域は、Callabonna

盆地(Lake Eyre 盆地の Sub basin)の

突起部にあたり、第三紀の浅水性の堆積

物が堆積している。小規模・鉱染状ウラ

ン鉱床を含むプレカンブリア~カンブリ

ア 紀 の 変 成 岩 ・ 堆 積 岩 か ら な る

Flinders ・ Olary ・ Barrier Ranges が湾

状の地形を形成している。

Honeymoon、East Kalkaroo、Yarramba、

Goulds Dam の各鉱床は、Eyre 累層(暁

新世~始新世)中の砂岩層に、Beverley

鉱床は、Namba 累層(中新世)の砂岩層

に胚胎する。*7

探査の経緯:1960 年代、Oilmin NL 社が、Flinders

Range 北部の古生代の地層を中心にウラ

ン探査を実施。

1969 年、Beverley ウラン鉱床の鉱徴を

Oilmin-Transoil-Petromin グループが捕

捉。

1970 年、Beverley ウラン鉱床でボーリン

グ実施。

1970 年代、Beverley ウラン鉱床により、

同地域でのウラン探査が活発化。

1971 ~ 1972 年、Carpentaria Exploration

Company 社が、Yarramba 古河川におい

て、第三紀の砂岩タイプのウラン鉱床を

捕捉。

1972 年、Honeymoon 鉱床発見。1981 年

までにボーリング 286 孔実施。

1978 ~ 1982 年、Honeymoon 鉱床の北

65km で、Marathon Petroleum 社が、

Oban bore ・ Berber Dam でウラン探査

実施。

1996 年、ISL 技術の改善と「3 鉱山政策」

破棄により、同地域のウラン探査が活発

化。

1997 年、Honeymoon 鉱床でリーチング

試験完了。*8

2005 年、Four Mile 鉱床が Alliance

Resources Ltd.と Quasar Resources Ltd.

の JV によって発見。

2007 年、Four Mile 鉱床が、資源量 3.9

百万 t ・品位 0.37 % U3O8(酸化ウラン

15,000 t U3O8を獲得。*9

代表的な鉱床:Beverley、Honeymoon、East Kalkaroo、

Yarramba、 Gould Dam、 Paralana、

Oban 鉱床 *3

(2)Eucla Basin 地域(Eyre 半島地域)地質・鉱化:Eucla 盆地の基底堆積物が、始生代・原

生代の花崗岩・片麻岩、Gawler Craton

の火山岩類を覆っている。

ウラン鉱化は、Eyre 半島地域の始新世の

古河川中に胚胎しており、低品位のウラ

ン鉱化が、Warrior 古河川・Wynbring

古河川中に分布している。更に、南には

Narlaby 古河川、Yanninee 古河川でもウ

ラン鉱化作用が知られている。*10

探査の経緯:1993 ~ 1982 年、PNC Exploration Pty

Ltd. が、Warrior 地区でボーリング調査

を実施(514 孔、コアボーリング 29 孔)。

Wynbring 古河川においても探査を実施。

1979~1982 年、Carpentaria Exploration

Company 社が、Eyre 半島北部の始新世

の古河川において探査を実施。Narlaby

鉱床、Yaninee 鉱床を確認。*11

代表的な鉱床:Warrior、Wynbring、Yarranna 鉱床 *3

4)貫入岩タイプ(Intrusive deposits)(1)Olary 地域地質・鉱化:ウラン鉱床は、Olary 地域の原生代中期

のWillyama Inlier の花崗岩類中に胚胎す

る。

原生代初期のWillyama Supergropu の堆

積岩・火山岩起源の変成岩が南オースト

ラリア州東部・ニューサウスウェルズ州

西部の Inlier の地層を形成し、Olary 地

域の Willyama 変成岩(堆積岩・火山岩

起源)は、複雑な変形・変成作用(最も

強い変成作用は角閃岩相、1600 ± 8Ma)

を受けている。

Olary 地域には、変形作用と同時期~後

の花崗岩類(S タイプ、Crocker Well :

1579 ± 2M、Triangle Hill : 1590Ma な

ど)が広く分布している。これら広域的

な花崗岩類は、Olary 地域の変形・変成

作用やHiltaba Suite-Gawler Range 火山

岩類(1 5 9 5 - 1 5 8 5M a)と同時期で

Olympic Damタイプの鉱化作用に関係し

ている。*12

探査の経緯:1906 年、Radium Hill 鉱床発見。

1910 年、ウラン物質が Radium Ridge で

発見される。

~ 1934 年、Radium Hill 鉱山でラジウム

が採掘される。

1944 ~ 1945 年、連邦政府と南オースト

ラリア州政府がRadium Hill 鉱床を評価。

1954 ~ 1961 年、南オーストラリア州政

府が、Radium Hill 鉱山を操業。

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート110(826)

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レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート 111(827)

出典:A .D. M ckay, Y. M iezitis, G eoscience A ustralia, “A ustralia's U ranium resources,geology and developm ent of deposits”,p87

図5 Frome Embayment地域(南オーストラリア)

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1968 年、Rare Earth Corporation of

Australia Ltd. が、Port Pirie の施設でレ

アアースを分離。

1951 年、南オーストラリア州政府が、

Crocker Well 地区周辺で予備的な空中放

射能探査を実施。

1953 年、南オーストラリア州政府が、広

域地質図を作成。Crocker Well と Mount

Victoria 地区で放射能異常を得る。

1968 ~ 1982 年、Esso Exploration and

Production Incorporated 社(Esso 社)

などが Olary 地域、Mount Painter 地域

でボーリング等探査を実施(Crocker

Well 地区を中心に)。

1977 ~ 1978 年、Esso 社によるボーリン

グは、25,000mに及ぶ。*13

代表的な鉱床:Radium Hill、Mount Victoria、Crocker

Well、Crocker Well East、Spring Hill、

Thackaringa 鉱床 *3

5)鉱脈タイプ(Vein)(1)Lincoln/Barossa Complex、Denison Block/Peak変成岩類

地質・鉱化:Port Lincoln 付近では、原生代初期の石

英―長石―普通角閃石片麻岩・角閃岩から

なる Lincoln 複合岩体中に数か所小規模

なウラン鉱徴地(鉱染状の瀝青ウラン鉱)

が分布。原生代初期の Barossa 複合岩体

中にもウラン鉱化作用が見られる。*14

探査の経緯:1950 年代半、南オーストラリア州政府が

Myponga 地区で探査を実施。

1957 ~ 1958 年、Port Pirie で酸化ウラン

(0.99t U3O8)を生産。*14

代表的な鉱床:Lincoln Complex、Haugton、Myponga、

Last Chance の各地区で小規模な鉱徴地

が分布。*3

2. 北部準州1)不整合関連タイプ(Unconformity-related deposits)(1)Alligator Rivers 地域地質・鉱化:同地域は、Pine Creek Inlier の北東に位

置し、広域変成作用(角閃岩相)と変形

作用を受けている。西部は、原生代初期

の変成岩が始生代~原生代初期の花崗岩

類からなる Namabu 複合岩体(2500Ma)

を覆っている。北東部は、Myra Falls 変

成岩がトーナル岩・ミグマタイトからな

る原生代初期のNimbuwah 複合岩体(角

閃岩相)に隣接している(1870-1855Ma

の変成作用を受ける)。

Ranger 1、Jabiluka、Koongarra 鉱床は、

Namabu 複合岩体に隣接する原生代初期

下部の炭酸塩質変成岩・雲母片岩・緑泥

石―長石―石英片岩、石英片岩からなる

Cahill 累層中に、Nabarlek 鉱床は、Myra

Falls 変成岩類に胚胎する。

ウラン鉱化作用の年代は、Ranger 鉱床が

1737 ± 20Ma、Jabiluka 鉱床が 1437 ±

40Ma、Koongarra 鉱床が 1600-1650Ma。

同地域では、不整合タイプのほかに、地

表付近でのウラン濃集、砂岩層に関係し

たウラン鉱化作用がある。*15

探査の経緯:1967 年、政府(BMR)は、地質図(1:

500,000)作成により、始生代の地層にウ

ラン鉱化作用が存在する可能性を認識。

1969 年、Ranger 1 鉱床が、空中放射能探

査によって確認される。

1970 年、Koongarra 鉱床発見。

Nabarlek 鉱床、空中放射能探査によって

確認される。

1971 年、Jabiluka 1 鉱床が、地表放射能

探査異常に基づき発見される。

1973 年、Jabiluka 2 鉱床が、ボーリング

調査によって発見される。*16

代表的な鉱床:Ranger(No.1、No.3、Anomaly 2、4、9)、

Jabiluka(1、2)、Koongarra(1、2)、

Nabarlek、Ranger 68、Hades Flat、

Ca r ama l、Au s t a t om、Bea t r i c e、

Garrunghar、Mordijimuk、Arrarra、

Dam、Twin、7J 鉱床 *3

(2)Rum Jungle 地域地質・鉱化:同地域は、原生代初期の堆積岩起源の変

成岩(緑泥石片岩相)が始生代の花崗岩

体を覆っている Pine Creel Inlier 西部に

位置している。

ウラン・ベースメタル鉱化作用は、

Whites 累層の石墨質・緑泥石質黄鉄鉱質

泥質岩が下位のドロマイト・マグネサイ

トからなるCoomalie ドロマイト層との接

触部にある。ウラン鉱化作用は、不整合

との空間的関係がある。*17

探査の経緯:1949 年、Rum Jungle ウラン鉱床地域が

発見される。

~ 1951 年、Whites、Dyson’s 鉱床発見。

1952 年、連邦政府・英国・米国による

Rum Jungle 鉱床探査に関する議論が行

われる。

1953 年、Consolidated Zinc Pty Ltd. の子

会社 Territory Enterprises Pty Ltd. が

Whites 鉱床探査を連邦政府に代わって実

施するために設立される。

1954 年、Whites、Dyson’s 鉱床でウラン

の生産を開始(生産能力: 180t U3O8/

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート112(828)

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レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート 113(829)

出典:Jh Lally, Zu Bajwah, Northern Territory Geological Survey(November 2006), Report 20,“Uranium Deposits of The Northern Territory” p22

図6 Alligator Rivers地域(北部準州)

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年・品位 0.23 ~ 0.35 % U3O8)。

1954 ~ 1971 年、Rum Jungle 処理施設で

3,530tU3O8の酸化ウラン生産。

1968 年、Rum Jungle Creek South、

Mount Burton、Mount Fitch 鉱床が確認

される。

~ 1963 年、Rum Jungle Creek South 鉱

山でのウラン鉱石生産終了。

~ 1971 年、Rum Jungle Creek South 施

設でのウラン鉱石処理終了。

1971 ~ 1983 年、Kylie、Southeast Kylie

鉱床が、Uranerz Australia Pty Ltd. によ

って発見される。*18

代表的な鉱床:Dyson’s、Whites、Rum Jungle Creek

South、Whites East、Mount Burton、

Mount Fitch、Kylie、Southeast Kylie、

Mount Fitch North、Dolerite Ridge、Rum

Jungle Creek、Area 55、Waterhouse、

Brodribb、Ella Creek 鉱床 *3

(3)South Alligator Valley 地域地質・鉱化:同地域は、原生代初期の堆積岩起源の変

成岩(緑泥石片岩相)が露出した South

Alligator Valley の北西系の褶曲・断層帯

に位置している。地層は、下位から Pine

Creek Inlier、El Sherana 層群、Edith

River 層群、Kombolgie Subgroup の各層

がそれぞれ不整合関係で重なっている。

ウラン鉱床は、Coronation 砂岩層(El

Sherana 層群)と Koolpin 累層(Pine

Creek Inlier の South Alligator 層群)の

間の不整合面近くに分布する。鉱床はシ

ルト岩中の断裂系や断層(Kombolgie

Subgroup、Koolpin 層群、Rockhole-El

Sherara-Palette 断層系など)に伴うこと

が多い。

ウラン・ベースメタル鉱化作用は、

Whites 累層の石墨質・緑泥石質黄鉄鉱質

泥質岩が下位のドロマイト・マグネサイ

トからなるCoomalie ドロマイト層との接

触部に見られる。ウラン鉱化作用は、不

整合との空間的関係がある。

ウラン元素は、Coronation 砂岩層の珪長質

火山岩類からウラン元素が溶出され、酸

化的環境の地下水中を移動、炭素物質に

富む砂岩層とは断層で接する Koolpin 累

層において沈殿したと考えられている。*19

探査の経緯:1953 年、Coronation Hill 鉱床が政府

(BMR)により発見される。

後に、小規模ウラン鉱床 13 か所、ウラン

鉱徴地 15 か所が発見される。

1956 ~ 1964 年、ウラン鉱石 874tU3O8が

小規模ウラン鉱床 14 か所から採掘され、

英国―米国共同事業体(C om b i n e d

Development Authority)と英国原子力

エネルギー局(United Kingdom Atomic

Energy Authority)へ販売。

1970 年代前半、同地区でウラン鉱床探査

が継続されるが、新規に有望鉱床の発見

はなかった。

1984 ~ 1989 年、Coronation Hill JV

(BHP Goldmines Ltd. -Pioneer Minerals

(Gold)Pty Ltd. -Norgold Ltd.)が探査を

実施。金―白金―パラジウム鉱床を発見。

1987 ~ 1990 年、政府(BMR)が、構造

地質調査・広域沢砂地化学探査・岩石地

化学探査、鉱床ポテンシャル評価などを

実施。

1991 年、Kakadu 国立公園につながる保

護区域での探査が禁止される。*20

代表的な鉱床:El Sherana Hill、El Sherana Hill、

Rockhole 1、2、O’Dwyer、Sterrits、

Palette、Saddle Ridge、Coronation Hill、

Scinto 5、6、Koolpin Creek、Skull、

Sleisbeck 鉱床 *3

(4)Pine Creek のその他の地域(Woolner 花崗岩類、脈状鉱床)

地質・鉱化:Woolner 花崗岩類(2675 ± 15Ma)は、

花崗岩質片岩~片麻岩質花崗岩からなり、

2 つのドーム構造を呈している。同花崗

岩中のジルコンはウランに富んでいる

(1 %)が、花崗岩類そのものは、平均的

な花崗岩よりもウラン含有量が低い

(2.8ppm)ことから、結晶化作用後の変

質作用(酸化作用)によりウラン元素が

失われたと考えられている。そのため、

この花崗岩をウランの起源とした不整合

タイプのウラン鉱床の可能性は低いと考

えられている(始生代の花崗岩からのウ

ラン元素供給の可能性はある)。

脈状鉱床は、原生代初期の砂岩層に覆わ

れていた地域に分布している。鉱床を胚

胎する母岩は火山岩類を挟んだ砂岩層で、

その中に様々なかたちでウラン鉱床が胚

胎する。ウラン鉱床は、原生代初期の砂

岩層中の酸化的環境で金属元素に富んだ

鉱液が母岩と反応してウランを母岩中に

沈殿し、その後、母岩を覆っていた砂岩

層が侵食されたことによって生成された

と考えられている。*21

探査の経緯:1954 ~ 1956 年、Adelaide River(鉱石

3,681t ・品位 0.5 % U3O8)、George Creek

(鉱石 118t ・品位 0.12 % U3O8)、Feleur

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート114(830)

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レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート 115(831)

出典:Jh Lally, Zu Bajwah, Northern Territory Geological Survey(November 2006), Report 20,“Uranium Deposits of The Northern Territory”, p52

図7 Rum Jungle地域(北部準州)

de Lys 鉱床(鉱石 122t ・品位 0.22 %

U3O8)でウラン鉱石を生産。

1987 ~ 1989 年、Woolner 花崗岩類地域

では、PNC Exploration (Australia)

Pty Ltd. が、Rum Jungle スタイルの鉱

化モデルに基づき、地表磁気・重力探査、

SIROTEM、ボーリング調査を実施する

が、熱水変質、炭素を含む地層の存在が

認められず、鉱区を放棄した。*21

代表的な鉱床:Adelaide River ・ Feleur de Lys ・

George Creek ・ Twins ・ Dam鉱床(何

れも脈状鉱床)*3

(5)その他地域その他地域には、Tanami Inlier 地域(代表的な鉱床

には、Killi No.1、No2、Mount Junction ・ Don、

Mount Mansbridge、Birrindudu No.2、Jaimani、

Oracle 鉱床)、Tennant Creek 地域(代表的な鉱床:

Edna Berly、North Star、Muindagee 鉱床)がある。*3

2)砂岩タイプ(Sandstone deposits)(1)Amadeus Basin 地域地質・鉱化:Amadeus Basin は、原生代後期~石炭紀

の堆積物が堆積している。ウラン鉱床は、

Amadeus Basin で最も新しいBrewer 礫

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レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート116(832)

出典:A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia, “Australia's Uranium resources, geology anddevelopment of deposits”,p44

図8 South Alligator Valley地域(北部準州)

岩層の粗粒の石質砂岩・中~粗粒の石質

アルコース質砂岩からなる Undandia 部

層に胚胎する。U n d a n d i a 部層は

MacDonell Range の南で Brewer 礫岩層

と指交しており、これら堆積層の厚さは

最大 3,000m に及ぶ。堆積物は、酸化され

ており、縁を形づくっている部分は還元

的な砂岩となっている *22

探査の経緯:1972 年、Uranerz Australia Pty Ltd. は、

空中放射能探査をAlice Springs の南で実

施。地表放射能探査で異常を確認。

1973 ~ 1974 年、トレンチとボーリング

調査により鉱化作用を確認。

1975 ~ 1979 年、主鉱体のAngela I 鉱床

の下部で幾つかの鉱化(III ~ V)を確認。

1980 ~ 1981 年、鉱化作用が走向方向に

5.7km 続き、西方向に延長していること

がわかる。

1989 年、Uranerz Australia Pty Ltd. が

MIM 社との JV により、資源量 11,500t

U3O8品位 0.13 %を公表。

1991 年、Uranerz Australia 社撤退。

2007 年~、「3 鉱山政策」により鉱区は放

置される。Uranium Australia NL 社

(Black Range Minerals NL 社が社名変

更)が探鉱権の回復を申請するが、認め

られず。北部準州政府は入札を実施する

予定。*22、23

代表的な鉱床:Angela、Pamela 鉱床 *3

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レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート 117(833)

(2)Ngalia Basin 地域地質・鉱化:Ngalia Basin は、原生代後期~古生代の

地層で構成されている。基盤岩は強く変

形作用をうけた変成岩・花崗岩類・原生

代初期の Arunta ブロックの堆積岩類か

らなり、原生代後期・カンブリア紀・オ

ルドビス紀・デボン紀・石炭紀の陸成・

海成の地層が、11 層、最大 7,500m 堆積

している。

ウラン鉱化作用は、デボン紀後期~石炭

紀後期の Mount Eclipse 砂岩に見られ、

母岩は、中~粗粒の炭酸塩を含む長石質

砂岩からなる。*24

探査の経緯:1970 年、Ngalia Basin の隣接地域で、

Central Pacific Minerals NL社が、Arunta

複合岩体に隣接する花崗岩中の石英脈中

に放射性のゴッサン状の物質を発見。*23

1973 年、Bigrlyi 鉱床が、地表放射能探査

と横断的なボーリング調査によって発見

される。

1973 年 、 Ngalia Basin の 南 部 の

anternary、Recent カルクリートでウラ

ン鉱化が発見される。*24

代表的な鉱床:Bigrlyi、 Walbiri、 Dingo’s Rest、

Sunberg、Coonega、Karin 鉱床 *3

(3)Westmoreland-Pandanus Creek 地域地質・鉱化:同 地 域 は 、 原 生 代 初 期 ~ 中 期 の

McAurther Basin の南東部、クィーンズ

ランド州と北部準州の州境に位置している。

出典:Jh Lally, Zu Bajwah, Northern Territory Geological Survey(November 2006), Report 20, “Uranium Deposits of The Northern Territory”, p73

図9 Amadeus Basin地域(北部準州)

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南部は、Murphy 変成岩類(最下層が北

部準州側に延長している)・ Cliffdate 火

山岩類・ Nicholson 花崗岩複合岩体から

なる原生代初期のMurphy Inlier の基盤

岩に重なっている。

Cliffdate 火山岩類(1870Ma)の酸性火山

岩類とイブニングライト(Igningrites)

が変成岩類を不整合に覆っている。基底

部にあたるWestmoreland 礫岩層は、厚

さ 1,200m 以上、アルコース・礫岩・石英

アレナイトなどの沖積性堆積物からなり、

Westmoreland 礫岩層の上を Seigal 火山

岩類の玄武岩質溶岩が覆っている。

ウラン鉱化作用は、多孔質・粗粒砂岩・

礫岩層(厚さ 8 0 ~ 9 0m)からなる

Westmoreland 礫岩層の上部ユニット

(Pte4 unit)に胚胎する。

ドレライト岩脈が、北東系の断層・断裂

系に沿ってWestmoreland 礫岩層に貫入

している(Red t r e e ~ No r t h - e a s t

Westmoreland dyke zone)。この岩脈帯

は長さ 15km 以上、岩脈の幅は 20m 程度

である。

ウラン鉱床(Redtree、Junnagunna、

Huarabagoo 鉱床)は、Redtree dyke 帯

に沿って分布している。

鉱化作用は、堆積岩からウラン元素が溶

出され、火山岩活動及びそれに伴う熱水

循環によりウラン元素が再移動し、塩基

性火山岩類からなる岩脈の貫入によって、

塩基性火山岩活動に伴って二価鉄が還元

剤として作用し、ウランが沈殿したと考

えられている。Westmoreland 地域のウラ

ン鉱化作用は 812 ± 55Ma、Pandanus 地

域は 850Maと考えられている。*25

探査の経緯:1956 年、個人探査家(Prospector)がガ

イガーカウンターを用いて鉱化を発見。

鉱 物 資 源 局 ( Bureau of Mineral

Resources)が空中シンチレーション計測

により露頭の異常を確認。

Mount Isa Mines Ltd. (MIM 社)と

Conzinc Riotinto of Australia Ltd.

(CRA 社)の JV による調査でウラン鉱

化のある礫岩露頭を発見。ボーリング等

を実施する。

1967 年、Queensland Mines Pty Ltd. が、

MIM 社― CRA 社の鉱区の周囲を探査、

Redtree と Huarabagoo 鉱床を発見。

1976 ~ 1983 年、Urangesellschaft 社は、

Junnagunna 鉱床を発見。

1990 年、CRA Exploration Pty Ltd.

(CRA社)が JVに参加。

1997 年、CRA 社が権益 100 %を取得す

る。

2000 年、CRA社は、プレ FS を完了して

いたが、鉱区を放棄。

2004 年、Laramide Resources Ltd. が取

得。

主要鉱床は、Redtree、Junnagunna、

Huarabagoo鉱床で、699孔、その他の鉱床

で 857 孔のボーリングが実施された。*25、26

代表的な鉱床:Redtree、Junnagunna、Huarabagoo、

Outcamp、Sue、Mageera 鉱床 *3

3. 西オーストラリア州1)不整合関連タイプ(Unconformity-related deposits)(1)Rudall Complex 地域地質・鉱化:同地域は、Paterson Orogen の北西部に

位置し、重力異常としてその形が現れて

いる(幅 100km、長さ 2,000km)。北西部

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート118(834)

出典:Jh Lally, Zu Bajwah, Northern Territory Geological Survey(November 2006), Report 20,“Uranium Deposits of The Northern Territory”, p9

図10 Ngalia Basin地域(北部準州)

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レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート 119(835)

出典:Jh Lally, Zu Bajwah, Northern Territory Geological Survey(November 2006), Report 20,“Uranium Deposits of The Northern Territory”, p8

図11 Westmoreland-Pandanus Creek地域(北部準州 /クィーンズランド州)

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は造山帯の結晶質岩とその上を原生代後

期の Lamil ・ Throssell ・ Tarcunyah 層

群が覆っている。砂岩・頁岩・炭酸塩質

岩からなる Throssell 層群(678Ma ~)

は、Rudall 複合岩体と不整合関係にあり、

同層群中の基底部にあたる Coolbro 砂岩

層(部層)は、厚さ 4km、砂岩・礫岩層

に炭酸塩質の泥岩・頁岩を挟んでいる。

これら砂岩層と不整合面は、Miles ~

Paterson 造山運動によって褶曲・断層を

生じている。Rudall 複合岩体には、少な

くとも 2回の花崗岩活動があった。

同地域の代表的な鉱床であるKintyre 鉱床

は、Coolbro 砂岩に不整合に接するRudall

複合岩体のYandgooge 累層中の堆積岩を

起源とする変成岩中に胚胎する。*27

探査の経緯:(Kintyre 鉱床探査の経緯)

1982 年、CRA Exploration Pty Ltd. が、

ダイアモンド探査のために空中放射能探

査及び空中磁気探査を実施。

1985 年、空中放射能異常に対して、ヘリ

コプターによる調査等によりウランの二

次鉱化帯を発見。ボーリング調査を開始。

1994 年、西オーストラリア州政府は

Kintyre 地区を含む 15,100ha の地区を

Rudall River 国立公園から除外。

1997 年、探鉱開発はスローダウン、1998

年にメンテナンス状態に入る。

2002 年、廃棄・修復に取りかかる。*28

代表的な鉱床:Kintyre、Tracy、Lead Hills、Mount

Cotton 鉱床 *3

(2)Turee Creek 地域地質・鉱化:同地域は、Ashburton Basin と Bresnahan

Basin の境界に位置する。Wyloo 層群

(Ashburton Basin)の堆積岩は、非変成

のアレナイト質砕屑岩からなる原生代中

期の Bresnahan 層群を不整合に覆ってい

る。

Angelo River 鉱徴地に近いWyloo 層群

は、Mount McGrath 層群のグレイワッ

ケ・頁岩・ドロマイト・炭酸塩質岩からな

り、Ashburton 層群の Duck Creek ドロ

マイト層が重なっている。

Angelo River 鉱徴は、Mount McGrath

層群上部から Bresnahan 層群上部の砂岩

層中に、Noranda 鉱徴は、Bresnahan 層

群のアルコース中に胚胎する *29

探査の経緯:1972 年、Noranda Australia Ltd. が、空

中放射能探査を実施、Bresnahan Basin

においてウラン二次鉱物に基づく放射能

異常を確認。

1973 ~ 1981 年、空中放射能探査異常に

対する調査により、Pancont inenta l

Mining NL 社 ・ PNC Exploration

(Australia) Ltd. ・ Minatome Australia

Pty Ltd. JV が、Angelo River 地区にお

いてウラン鉱化を発見する。*30

代表的な鉱床:Angelo River、Noranda 鉱徴地 *3

(3)その他地域その他地域には、不整合タイプのウラン鉱床を対象

に、Kimbery 部層の堆積岩と Lamboon 複合岩体の変

形作用を受けた基盤との間の不整合付近で探査が行わ

れ た Halls Creek 地 域 ( 代 表 的 な 鉱 床 は 、

Amphiitheare、Mad Gap 鉱徴地)がある。*31

2)砂岩タイプ(Sandstone deposits)(1)Gunbarrel Basin 地域地質・鉱化:Mulga Rock 古河川は、Gunbarrel Basin

南西部の石炭紀~二畳紀の Paterson 累層

の泥質岩が侵食されて形成したもの。

Paterson 累層は、西は始生代の Yilgarn

ブロック、東は原生代の Albany-Fraser

Province の花崗岩類・変成岩類を不整合

に覆っている。古河川は第三紀堆積岩の

下を 100km の長さで分布している。堆積

物は、白亜紀~第三紀の砂・シルト・砂

礫で、厚さ最大 140m、Paterson 累層の

泥質岩を不整合に覆っている。

鉱化作用は、第三紀の風化作用によって

Yi lgarn ブロック・ Albany -Fraser

Province の花崗岩類・変成岩類からウラ

ンが溶出され、酸化環境の地下水によっ

て古河川の堆積物中を移動、ピート層の

有機物と接触し、還元されて堆積したと

考えられている。

Mulga Rock 鉱床は、古河川の広くなっ

た屈曲部外側に形成されている。*32

探査の経緯:1978 年、PNC Exploration (Australia)

Pty Ltd. が、二畳紀~白亜紀の砂岩タイ

プのウラン鉱床を対象にして、Gunbarrel

Basin 地域の広範囲にわたって予察的な

ボーリング調査を実施。

1979 年、ウラン鉱化作用を確認。

1980 ~ 1988 年 、 Mulga Rock 鉱 床

(Shogun ・ Emperor ・ Ambassador 鉱

体)が、始新世の古河川堆積層中に胚胎

することを確認。(1978 年から、ボーリ

ング 2,041 孔、調査範囲 2,500km2 に達す

る)

1983 年、露天採掘を実施して、原位置で

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート120(836)

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レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート 121(837)

図12 Rudall Complex地域(西オーストラリア州) 出典:A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia, “Australia's Uranium resources, geology and development of deposits”,p79

Page 18: オーストラリアのウラン鉱床(2)mric.jogmec.go.jp/wp-content/old_uploads/reports/... · Acropolis、Wirrda Well、Oak Dam、 Emmie Bluff、Alford鉱床*3 (2)Mount

のリーチング試験を実施。

2000 年、Eaglefield Holdings Pty Ltd. 参

入、プレ FS調査を実施。

2006 年、Energy & Minerals Australia

Ltd. が権益取得。*32、*33

代 表 的 な 鉱 床 : Mulga Rock 鉱 床

(Shogun ・ Emperor ・ Ambassador 鉱体)*3

(2)Carnarvon Basin 地域地質・鉱化:同地域の基盤岩は始生代~中期原生代の

変成岩類・花崗岩類からなる。基盤岩と

Carnarvon Basin との間には不整合面が

あり、古河川中の基底礫岩の上に白亜紀

の浅海性の Birdrong 砂岩が、更に、海成

の頁岩・ラジオライトが堆積している。

ウラン鉱化作用は、古河川の砂岩中にあ

り、新生代の石灰質シルト岩・粘土・砂

礫が白亜紀の地層を覆っている。*34

探査の経緯:1972 ~ 1975 年、Minatome Australia

Pty Ltd.(Minatome 社)が、Gascoyne

ブロックを探査。原生代の花崗岩類がウ

ランに富むことを確認。

1973 ~ 1974 年、Minatome 社が空中放射

能探査を実施。

1974 年、ボーリング調査、孔内放射能測

定を実施。

1980 年代、Total Mining Australia Pty

Ltd. 、Minatome 社・ Aquitaine 社の権

益を取得。ウラン原位置回収(In Situ

Leaching)の試験実施を決定。

1985 年、ウラン原位置回収試験を実施。

480kgU3O8を生成。

1998 年、Paladine Resources Ltd. が参入。

Manyingee 鉱床探査を継続。*35

代表的な鉱床:Manyingee、Bennetts Well 鉱床 *3

(3)Canning Basin 地域地質・鉱化:同地域は、Halls Creek - King Leopold 造

山帯の岩石が侵食され、同時にウランも

ベーズンにデボン紀初期~二畳紀初期に

かけて運搬された。ベーズンには 5 つの

古流路があり、Yampi 湾のみウラン鉱化

が確認されている。他の古流路では酸化

還元環境がウランの沈殿・保存に適して

いなかったと考えられている。*36

探査の経緯:1978 ~ 1983 年、Afmeco Pty Ltd. が砂岩

タイプのウラン鉱床を対象に探査(磁気、

重力、地下水、ボーリング等)を実施。

1 9 8 0 年、ボーリング調査により、

Oobagooma 鉱床発見。1983 年末までに

ボーリング 57,000mが実施される。

1998 年、Paladin Resources Ltd. が権益

を取得。*37

代表的な鉱床:Oobagooma 鉱床 *3

3)表成タイプ(Surficial deposits)(1)Yilgarn Craton 地域地質・鉱化:カルクリートは、カルシウム・マグネシ

ウム・炭酸塩が地表付近で第三紀の排水

系の作用により、半乾燥~乾燥気候の下

で形成される。カルクリート中のウラン

は、Yilgarn Craton 北部の花崗岩類から

供給されている。カルクリートタイプの

ウラン鉱床は、西のMeckering Line と

南の Menzies Line に沿って分布(長さ

100km、幅 5km)している。

カルクリートタイプのウラン鉱床には、

谷タイプ(Valley Type)、プラーヤ

(Playa Type)・タイプ、テラス・タイ

プ(Terrace Type)がある。*38

探査の経緯:1969 年、Western Mining Corporation

Ltd.(WMC 社)が、砂岩タイプのウラ

ン鉱床を対象に探査を開始。

1970 年、政府(BMR)が 25 万分の 1 の

地質図を発表。予備的な空中磁気・放射

能探査を実施、砂岩層下の(古)流路を

特定。

1972 年、Yeelirrie 鉱床が、WMC社によ

って発見される。

1978 年、Esso 社が FS 調査の費用負担を

条件に参入。

1982 年、Esso 社撤退。

2005 年、BHP Billiton がWMC社の買収

に伴い権益を取得する。*38、*39

代表的な鉱床:Yeelirrie、Lake Way、Lake Maitland、

Centipede(Abercrombie、Millipede)、

Hinkler Well、Dawson Well、Nowthana、

Lake Austin、Thatcher Soak、Lake

Mason、Lake Raeside、Windimurra、

Cogla Downs 鉱床 *3

(2)その他地域Yilgarn Craton 地域以外では、Gascoyne 複合岩体に

小規模なカルクリートタイプのウラン鉱床が知られて

いる。代表的な鉱床には、Jailor Bore、Lamil Hills、

Minindi Creek、Napperby、Currinya 鉱床がある。*3、*40

4)貫入岩タイプ(Intrusive deposits)(1)Gascoyne Complex 地域地質・鉱化:同地域のウラン鉱床は、原生代初期の広

範囲にわたってミグマタイト化した

Morrissey 変成岩類のペグマタイトに胚

胎する。*40

探査の経緯:1974 年、Agip Nucleare Australia Pty

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート122(838)

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レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート 123(839)

Ltd.(Agip 社)が、Mortimer Hill でペ

グマタイト中のウラン鉱化を発見。

1974 ~ 1978 年、Agip 社が放射能探査、

ボーリング調査を実施。

1998 年、Acclaim Uranium NL 社が、

Mortimer Hill の南に鉱区を取得、探査を

実施。*40

代表的な鉱床:Mortimer Hill 鉱床 *40

5)石英・円礫・礫岩タイプ(Quartz-pebble con-glomerate deposits)

(1)Hamersley Basin 地域地質・鉱化:低品位ウラン鉱化作用は、始生代の

Hamersley Basin の最下底の Fortescue

層群の石英・円礫・礫岩層中にある。

Fortescue 層群下部のウラン鉱化を含む

石英・円礫・礫岩層は、Hardey 砂岩層と

Kylena 玄武岩の上の礫岩―砂岩層中にあ

る。*41

探査の経緯:Nullafine Sub-Basin、Marble Bar Sub-

Basin、West Pilbara Sub-Basin を中心に

探査が行われた。*41

代表的な鉱床:Bonnie Creek、Shady Camp Well、

Warralong Creek、Limestone Well、

Coorbeelie River 鉱床 *41

(2)その他地域その他地域には、Yerrida Basin 地域(Peak Hill 変

成岩に低品位ウラン鉱化)、Halls Creek 地域

(Saunders Creek 層群に幾つかの低品位ウラン鉱化)、

Pilbara Craton 地域(Lalla Rookh 砂岩層、Mosquito

層群(Pilbara Craton 地域)に幾つかの低品位ウラン

鉱化)、Kimberley Basin 地域(King Leopold 砂岩層に

ウラン鉱化)がある。*42

図13 Yilgarn Craton地域(西オーストラリア州)

出典:A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia, “Australia's Uranium resources, geology and development of deposits”,p119

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4. クィーンズランド州1)砂岩タイプ(Sandstone deposits)(1)Westmoreland-Pandanus Creek 地域(北部準州の項を参照)

(2)その他地域その他地域には、Drummond Basin 地域(石炭紀初

期の Bulliwallah 累層中に不規則な低品位のウラン鉱

床)、Carpentalia Basin 地域・ North-Western

Eromanga Basin 地域(原生代中期の変成岩類・花崗

岩類からウランが供給されたと考えられている)、

Boulia Shelf 地域(PNC Exploration Pty Ltd. が調査し

た)などがある。*43

2)交代岩タイプ(Metasomatite deposits)(1)Mount Isa 地域地質・鉱化:同地域は、南北走向の断層系によって、

Western Succession ・ Kalkadoon-

Leichhardt Belt ・ Eastern Succession の

3 帯に分かれる。これらは、原生代初期

の堆積岩を起源とする変成岩類・火山岩

類・貫入岩で構成されている。

Mount Isa Inlier には、原生代初期~中期

の花崗岩バソリスが貫入している。

玄武岩と浅海性の岩石から構成され、褶

曲・断層・広域変成作用を受けている

Leichhardt Fault Troughは、107か所のウ

ラン鉱徴地が知られている。多くのウラン

鉱徴地は、Eastern Creek 火山岩類に分布

している。ウラン鉱徴の母岩は、凝灰岩

(Valhalla、Watta、Warwai 鉱床)、頁岩・

シルト岩(Valhalla、Skal 鉱床)、グレイ

ワッケ(Anderson’s Lode)、普通輝石―ア

ラナイト片岩(Spear Creek 地区の小規模

鉱徴)、玄武岩(Surprise)の 5種類。

また、107 か所のウラン鉱徴地のうち、

41 か所が主要鉱床地区 Spear Creek、

George Creek、Paroo Creek、Calton

Hills でのボーリング調査によって発見さ

れている。*44

探査の経緯:1954 年、同地域最初のウラン鉱床として

Skal 鉱床が発見される。

1967 ~ 1971 年 、 Mary Kathleen

Uranium Ltd. 、Queensland Mines Ltd.

が、Calton Hill ・ Paroo Creek ・ Spear

Creek 地区で探鉱実施。

1979 ~ 1982 年、Mary Kathleen Uranium

Ltd. が、Mary Kathleen 鉱床の鉱化範囲

を確認。

1974 ~ 1981 年、Agip Australia Pty Ltd.

が、Queensland Mines Ltd. から権益取

得、探査を継続。

1993 ~ 1999 年、Summit Resources NL

社が Resoulute Ltd. との JV で Valhalla

鉱床の鉱化範囲を確認。

1993 ~ 1995 年、North Ltd. が、Olympic

Dam タイプの鉱化を対象に Eastern

Creek 火山岩類~ Sybella 花崗岩類地域

を探査。

2006 年、Paladin Resources 社が Valhalla

Uranium Ltd. を買収。

2007 年、Paladin Resources 社が Summit

Resources Ltd. の買収を試みる(81.8 %

Areva 社(仏)は Summit 社の権益

10.5 %保有))))))))。*45、*46

代表的な鉱床:Valhalla、 Skal、 Anderson’s Lode、

Watta、Warwai、Turpentine、Folderol、

Ardmore East、Flat Tyre、Emancipation、

Miranda、Surprise、Citation 鉱床 *3

3)変成岩タイプ(Metamorphic deposits)(1)Mary Kathleen 地域地質・鉱化:同地域は、浅海性起源の堆積岩が、褶

曲・広域変成作用と花崗岩類の貫入と交

代変成作用とを受けている。原生代初期

の堆積岩起源の変成岩類は、幅 10 ~

20km、長さ 200km にわたって分布して

いる。

ウラン鉱床は、Corella 累層中の堆積岩起

源の変成岩類・スカルンに胚胎する。

Mary Kathleen鉱床が最大で、その他に約

40 か所の小規模な鉱徴地がある。ウラン

鉱徴は、Cloncurry の南でも見られる。*47

探査の経緯:1954 年、鉱床発見。Mount Isa Mines

Ltd. が空中シンチレーション計測を行っ

た。Rio Tinto Australia Exploration Pty

Ltd. もこの付近で空中物理探査を実施し

ている。

1967 ~ 1971 年、Mary Kathleen Uranium

Ltd. がボーリング調査を実施。

1979 ~ 1982 年、Mary Kathleen Uranium

Ltd. がMary Kathleen 鉱床の範囲を特定。

1974 ~ 1981 年、Agip Australia Pty Ltd.

がボーリングにより深部・走向方向の鉱

化延長を調査。

1993 ~ 1995 年、North Ltd. が Olympic

Dam タイプの鉱化を対象に Eastern

Creek 火山岩帯で調査を実施。*45、*46

代表的な鉱床:Mary Kathleen、Rita、Rary、Elaine、

Elizabeth-Anne 鉱床 *3

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート124(840)

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レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート 125(841)

図14 Mount Isa地域(クィーンズランド州)

出典:A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia, “Australia's Uranium resources, geology and development of deposits”,p125

(2)その他地域Mary Kathleen 地向斜におけるその他ウラン鉱化地

域には、1960 年代と 1979 ~ 1981 年にMary Kathleen

Uranium Ltd. が探査した Rita-Rary 地区、Elaine 鉱徴

地、Elizabeth-Anne 鉱徴地がある。*48

4)火山岩タイプ(Volcanic deposits)(1)Georgetown-Townsville 地域地質・鉱化:同地域の西部を Georgetown Inlier の原

生代の堆積岩起源及び火山岩起源の変成

岩類(雲母片岩・黒雲母片麻岩)・珪

岩・ペグマタイトが占めている。これら

を原生代の S-type 及びシルル紀~デボン

紀の I-Type 花崗岩類が貫入している。

古生代の酸性火山活動が、ウラン鉱化作

用に関係しており、複合岩体・環状岩

脈・花崗岩類などとして同地域内に広く

分布し、熱水変質作用に関係している。

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レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート126(842)

ウラン鉱化作用は、デボン紀後期~石炭

紀初期、石炭紀後期~二畳紀初期の 2 回

の火山活動(イグニンブライト・流紋岩

質)とマグマの貫入に関連しており、ウ

ラン鉱床は、酸性岩類と空間的にも対応

関係がある。*49

探査の経緯:1969 年、Central Coast Exploration NL

社が Georgetown 地区で探査開始。

1 9 7 1 年、空中放射能探査を実施、

Maureen 鉱床露頭が発見される。

1972 年、同地区で最初のボーリング実施。

1972 ~ 1979 年、同地区で盛んに探査が

実施される。

1975 年、空中放射能探査で Ben Lomond

鉱床が確認される。

1982 年、Minatome 社が Ben Lomond ウ

ラン鉱床のFS調査を実施。

1985 年、「3 鉱山政策」により開発計画は

不許可。

2007年、Mega Uranium社がBen Lomond

ウラン鉱床のプレFS調査開始。*50

代表的な鉱床:Ben Lomond、Maureen、Turtle Arm、

Dagworth、 Fiery Creek、Trident、

Phillips Well、 Laura Jean、 Oasis、

Lineament Group、Chinaman Creek、

Limkins、Mount Hogan、Werrington

Group、Kaiser Bill、Quest-End 鉱床 *3

5)鉱脈タイプ(Vein)Westmoreland-Pandanuas 地域内に、Pandanus

Creek、Cobar 2、El Hussen鉱徴地などが知られている。*51

6)その他燐灰土タイプのウラン鉱床としては、北西クィーン

ズランド州のDuchess 燐鉱床中にウランが含まれてい

ること(U3O8品位 0.0126 %)が知られている(ウラン

は未回収)。*52

5. ニューサウスウェルズ州・タスマニア州・ビクトリア州

1)貫入岩タイプ(Intrusive deposits)(1)Olary 地域Willyama Supergroup の原生代後期上部の堆積岩・

火山岩を起源とする変成岩類が、ニューサウスウェル

ズ州西部から南オーストラリア州東部に分布する。*53

(詳細は、南オーストラリア州の項を参照)

図15 Georgetown-Townsville地域(クィーンズランド州)

出典:A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia, “Australia's Uranium resources, geology and development of deposits”,p134

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2)鉱脈タイプ(Vein)ウラン鉱化は、多金属鉱脈鉱床(銅・鉛・錫・タン

グステン・モリブデン鉱化)や花崗岩類の周囲或は岩

体中の断裂系に伴っている。

ニューサウスウェルズ州内の Lachlan-New England

Fold Belts 地域(代表的な鉱徴地は、Blackfellows

Dam、Carcoar、Emmaville、Gilgai、Gordonbrook、

The Gulf、Torrington、Watsons Creek、Whipstick 鉱

徴地)にウラン鉱化作用が見られる。

タスマニア州内のLachlan Fold Belts 地域に錫鉱化作

用に伴うウラン鉱化がある(代表的な鉱徴地は、Royal

George ・ Chwalczy’s、Anchor、Heemskirk 鉱徴地)。

ビクトリア州内の Lachlan Fold Belts 地域の花崗岩

中に脈状に二次鉱化作用が見られる(代表的な鉱徴地

は、Mount Kooyoora、Lake Boga、Wycheproof、

Sunnyside Goldfield 鉱徴地)。*54

(2007.12.4)

〈参考文献等〉1.南オーストラリア州(Gawler Craton 地域)*1.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p39-41

*2.AusIMM, The AusIMM Adelade Newsletter,

No.07/2005-August, p4

*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

(Mount Painter 地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

*4.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p46

*5.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p45

(Eyre 半島地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

*6.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p85

(Frome Embayment 地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

*7.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p88

*8.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p87-88

*9.Australian Mining Australia’s Premier Mining

News Website

http://www.miningaustralia.com.au/articles/Alliance-shows-strong-results_z71410.htm

(Eucla Basin 地域(Eyre 半島地域))*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

* 10.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p97-98

* 11.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p99

(Olary 地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

* 12.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p140-141

* 13.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p140

(Lincoln/Barossa Complex、Denison Block/Peak 変成岩類)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

* 14.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p144

2.北部準州(Alligator Rivers 地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

* 15.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p48-53

* 16.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p48

(Rum Jungle 地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート 127(843)

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* 17.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p65-66

* 18.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p64-65

(South Alligator Valley 地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

* 19.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p69-71

* 20.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p67-69

(Pine Creek のその他の地域(Woolner 花崗岩類、脈状鉱床))*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

* 21.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p74-75

(その他地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

(Amadeus Basin 地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

* 22.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p106

* 23.Uranium Information Center Web サイト

http://www.uic.com.au/pmine.htm#angela(Ngalia Basin 地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

* 24.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p107

(Westmoreland ― Pandanus Creek 地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

* 25.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p101-102

* 26.Uranium Information Center Web サイト

http://www.uic.com.au/pmine.htm#westmor

3.西オーストラリア州(Rudall Complex 地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

* 27.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p76-77

* 28.Uranium Information Center Web サイト

http://www.uic.com.au/pmine.htm#kintyre(Turee Creek 地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

* 29.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p81-82

* 30.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p81

(その他地域)* 31.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p83-84

(Gunbarrel Basin 地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

* 32.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p110-111

* 33.Uranium Information Centre Web サイト

http://www.uic.com.au/pmine.htm#mulgarock(Carnarvon Basin 地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

* 34.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p112

* 35.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p111-112

(Canning Basin 地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

* 36.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p114-115

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート128(844)

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* 37.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p114

(Yilgarn Craton 地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

* 38.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p117-118

* 39.Uranium Information Centre Web サイト

http://www.uic.com.au/pmine.htm#yeelirrie(その他地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

* 40.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p122

(Gascoyne Complex 地域)* 40.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p143

(Hamersley Basin 地域)* 41.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p146

(その他地域)* 42.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p147

4.クィーンズランド州(その他地域)* 43.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p115-116

(Mount Isa 地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

* 44.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p124-125

* 45.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p124

* 46.Uranium Information Centre Web サイト

http://www.uic.com.au/pmine.htm#valhalla

(Mary Kathleen 地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

* 47.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p129

(その他地域)* 48.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p132

(Georgetown-Townsville 地域)*3.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p150-152

* 49.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p133-135

* 50.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p133

(鉱脈タイプ(Vein))* 51.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p145

(その他)* 52.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p35

5.ニューサウスウェルズ州・タスマニア州・ビクトリア州

(Olary 地域)* 53.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p140

(鉱脈タイプ(Vein))* 54.A.D. Mckay, Y. Miezitis, Geoscience Australia,

“Australia’s Uranium resources, geology and

development of deposits”, p144

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート 129(845)

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レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート130(846)

2005 年 8 月、Ian Macfarlen 連邦産業観光資源大臣によって企業・連邦政府・南オーストラリア州政府・北部準州

政府からなる Uranium Industry Framework : UIF(ウラン産業フレームワーク)が設立され、同年 11 月には、オ

ーストラリアのウラン産業における諸障害を解決するための 20 の提案を掲載した報告書が発表されている。

この報告書の提案の一つに、「JORC 規程の正しい理解や適用のための情報を提供する文書・資料を作成し、これ

にウラン採掘、特に ISL(原位置浸出)に関するケース・スタディーを含むこと」と記されている。UIF 実施グルー

プ(Uranium Industry Implementation Group)は、その作業を、オーストラリア地球科学機構(Geoscience

Australia)に JORC(共同鉱石資源委員会)との協議の上で行うことを任命した。

「JORC規程に基づく ISL(原位置浸出)プロジェクトのためのウラン資源評価に関する報告(原題:Reporting of

Uranium Resources for In Situ Leaching Projects Under the JORC Code)」と題する論文は、オーストラリア地球

科学機構 A.D. McKay、I.B. Lambert、AMC Consultants 社 P. Stoker、Ore Reserve Evaluation Services 社 K.F.

Bampton によって、大洋州鉱業冶金学会(AusIMM: Australasia Institute of Mining & Metallurgy)発行の雑誌

「AusIMM Bulletin」に 2007 年 12 月に発表された。本稿はその翻訳版である。

同論文は、JORC規程に基づく ISL法を用いたプロジェクトにおけるウラン資源評価に関して次のように述べている。

砂 岩 型 の ウ ラ ン 鉱 床 か ら の ウ ラ ン 回 収 方 法 と し て 、 In Situ Leaching : ISL( 原 位 置 浸

出法)が有効であり、米国、カザフスタンをはじめとして広く用いられるようになっている。オーストラリアでは、

Beverley 鉱山に続いて新たに同国 4番目のウラン鉱山として開発中のHoneymoon 鉱山(ともに南オーストラリア州)

でこの方法が採用されている。

ISL 法では、鉱体の原位置でアルカリ溶液或いは酸溶液によりウランを溶出して回収することから、資源量を評価

する際には、岩石(地層)中のウラン品位だけではなく水文地質学的な要素(回収率に影響)をも考慮する必要があ

るとしている。

また、1970 年代から用いられているガンマ線測定によるウラン鉱床(品位)評価では、比較的若い年代のロール

フロント型ウラン鉱床のように各核種が溶解と再沈殿を繰り返し、ウランとその核分裂で生じた親・娘核種が非平衡

状態(Disequilibrium)にある場合には、この方法の信頼性が疑問視されており、PFN: Prompt Fission Neutron(プ

ロンプト分裂中性子)を用いてウラン鉱石のU235 の核分裂から生じる中性子を直接算出してウラン品位を評価する方

法がより正確であるとする見解が多くなっている。*1

ウラン鉱床の資源量は、測定方法との関係において、1)ガンマ線測定のみで評価された場合には、その鉱床が非

平衡状態ではないとしても JORC 規程の予測鉱物資源量(Inferred Mineral Resource)、2)ガンマ線測定と非平衡

状態に PFN を用いたい場合が混在する場合は概測鉱物資源量(Indicated Mineral Resource)、3)較正を行った

PFNを用い、水文地質学的な検討が行われた場合は精測鉱物資源量(Measured Mineral Resource)のカテゴリに評

価されるとしている。また、ISL 法により数年間の操業実績がある場合や ISL 法のフィールド試験を行い良好な結果

が得られている場合には、精測鉱物資源量(Measured Mineral Resource)のカテゴリに評価されるとしている。*2

*1 U238 が、核分裂して行く過程で娘核種 Pb214 及び Bi214 に変化する際にガンマ線を発生する。このガンマ線を利用してウラン鉱化(品位)を計算で求めることができる。従来この方法で間接的にウラン鉱床の品位を算出してきた。しかし、若い堆積岩層では、地球化学的要因により親核種(ウラン)と娘核種が分離されて、非平衡状態が生じ、ガンマ線を検出できないことがある。この場合、ガンマ線のみをウラン品位の尺度として用いると、実際にはウラン鉱化があるのにそれを見落としてしまう可能性がある。

*2 鉱業会社は、鉱山開発の資金を銀行融資によって調達するが、その審査に合格するためには、埋蔵資源の全てまたは一部が確定鉱石埋蔵量であることが必要となる。従って、ISL 法を用いたウラン・プロジェクトを行う企業は、資源評価のカテゴリが概測資源量で、かつ、それを精測資源量に格上げ或いは埋蔵量カテゴリに転換できない場合、銀行からの資金調達が難しくなる。

第 4章 JORC規程に基づく ISL(原位置浸出)プロジェクトのためのウラン資源評価に関する報告-Reporting of Uranium Resources for In Situ Leaching

Projects Under the JORC Code -

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1. 序文UIF(ウラン産業枠組み)は、イアン・マクファーレ

ン(Ian Macfarlane)産業観光資源大臣によって 2005

年 8 月に確立されたものであり、 その運営グループ

(The Steering Group)は、オーストラリア連邦政府、

SA 州政府、北部準州政府、Northern Land Council

(北部土地評議会)の要職者達で、構成されている。

Macfarlane 大臣によって 2006 年 11 月に発表された

UIF 運営グループの報告書には、オーストラリアのウ

ラン産業での機会利用や障害の解決に関する 20 の提案

が記載されている。2007 年 1 月には UIF 運営グルー

プによる最終会議が行われ、マクファーレン大臣によ

って、提案の最良実施を検討する UIF 実施グループ

(UIF Implementation Group)が設立された。

報告書の Recommendation 4(提案 4)では、

「JORC 規程 3 の正しい理解や適用のための情報を提供

する文書/資料を作成し、これに、ウラン採鉱、特に

ISL(原位置浸出)に関するケース・スタディーを含む

こと」と、記されている。このような文書は、「ウラン

探鉱/採鉱会社に配布、または産業コンファレンスでの

活用のために作成されるべきもの」である。そして

UIF 実施グループは、報告書の提案の様々な要旨や責

任の所在を検討する上で、この文書(本稿)の作成の

監修を、JORC(共同鉱石資源委員会)との協議の上で

行うことを Geoscience Australia(オーストラリア地

球科学機構)に任命した。

JORC 規程は、オーストラリアでの探鉱結果

(Exploration Results)4、鉱物資源(Mineral Resources)、鉱石埋蔵量(Ore Reserves)の分類及び公的報告書における最低基準、提言、ガイドラインを定めるもので

あり、その性質は、指示的と言うよりも、原理に基づ

くものとなっている(付録 1参照)。本稿は、JORC 規

程の正式な付属資料ではなく、JORC 規程準拠の業務

に関する提案に過ぎないものである。3 “Joint Ore Resources Committee Australian Code for Reporting ofExploration Results, Mineral Resources and Ore Reserves(鉱物資源/埋蔵量探査結果の報告における、共同鉱石資源委員会豪州規程)”と呼ばれる。JORC 規程の 2004 年版は、大洋州鉱業冶金学会(AusIMM: Australasia Institute of Mining & Metallurgy)、オーストラリア地球科学学会(AIG : Australian Institute of Geoscientists)、オーストラリア鉱業協会(MCA : Mineral Council of Australia)のJORC(共同鉱石資源委員会)によって作成され、2004 年 12 月に施行となっている。4 JORC規程で定義される用語は、初出の際に米印(*)が付記されている(JORC 規程内では最初の文字が大文字で表記されている)。定義については、 wwwJorc.orv.参照のこと。

1-1. JORC規程とウランJORC 規程に基づくウラン資源の鉱量報告において

は、原則的には他の鉱物の報告とほぼ同様の規定が適

用されるが、以下の点への特別な留意が、必要ともな

る。●通常、放射性探測機または携帯装置が、鉱床の探測

及び評価に使用される―これらは、適切な較正及び

修正ファクターの適用が必要である。●ウランは、その娘同位体と非平衡状態の場合がある

ため、ガンマ線に基づくウラン品位探測では、非平

衡状態の程度を測定することが、必要となる。●サンプルの“確認調査”が必要である。

ウラン資源評価のカテゴリは、探測機の信頼性、測

定の数値や分布、確認調査の程度などによって決まる。

ウラン品位の報告に使用される単位は、明確なもので

なければならない。

本稿は、ISL(原位置浸出)5 が可能な砂岩タイプの

ウラン鉱床の鉱石埋蔵/鉱物資源の評価と報告に焦点を

当てている。最近では、JORC 規程が果たして ISL プ

ロジェクトのウラン資源評価に十分なものであるかと

の論議が起きているが、これは、オーストラリアでは

ISL プロジェクトの実施や資源評価があまり行われて

いないこと、評価や採鉱の行われている鉱床が研究に

公開されていないこと、鉱床が脆いために化学/物理的

測定のためのサンプルの採取が難しいことなどといっ

た理由によるものである。

JORC 規程の「透明性及び実体性」の原則を満たす

には、資源のトン数、平均品位、U3O8の含有量(トン)

をはじめとする資源評価のパラメーターの情報が提供

されていることが必要となる。第三次 JORC規程では、

「埋蔵量や資源量の評価は“有資格者(CompetentPerson)”によって行われなければならない」とされており、この有資格者に必要な条件や経験が定められ

ている。ISL プロジェクトの資源量評価を行う有資格

者は、放射性坑井データ及びそれらの採集における

QA/QC(品質保証/管理)、プロジェクトに影響を及ぼ

すような水文地質学的特性などに関する知識や経験を

備えていることが、非常に重要となる。

5 ISR(原位置回収)と呼ばれることもある。

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート 131(847)

ISL(原位置浸出)ウラン鉱床の資源評価及び JORC規程に基づく報告A.D. McKay *、P. Stoker ** 、K.F. Bampton *** & I.B. Lambert ****

* Geoscience Australia(オーストラリア地球科学機構)陸地エネルギー鉱物部門プロジェクトリーダー

** AMC Consultants 社 地質学者主事*** Ore Reserve Evaluation Services 会長**** Geoscience Australia(オーストラリア地球科学機構)陸地エ

ネルギー鉱物部門グループリーダー

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2. ISL プロジェクトウラン砂岩鉱床は、それがどのような場所にあるか

(palaeochannel(古川床)/峡谷、砂層など)や、統制

された構造のものであるか否かによって種類が異なり、

湾曲的なもの、水平に延びたロール・フロント、平板

状のもの、不規則形のものなど、様々である。そして、

地下水面で形成される鉱床においては、ISL(原位置浸

出)による資源評価が行われる。

ISL 式ウラン採鉱は 1970 年代の半ばにロシアや米国

で開発された。この方法は、水飽和の透水層に位置し、

従来法による採鉱技術が適さない典型的ロールフロン

ト鉱床からのウラン抽出のために考案されたものであ

る。商業規模の ISL 式ウラン採鉱は 1970 年代の半ばに

米国で始まり(出典: Underhill、1992 年)、その後、

東欧、中央アジアの多くの鉱床で使用されている(カ

ザフスタン共和国では 1990 年代初頭より、大型の ISL

採鉱が行われている)。一方、オーストラリアでの ISL

採鉱は、2001 年に生産が開始された Beverley 鉱山の

みとなっている( S A 州で開発の段階にある

Honeymoon 鉱床が 2番目の ISL 鉱山となる予定)。

図 16 では、ISL の一般的構造が図解されている。浸

出溶液は、鉱床の特徴によって酸性、アルカリ性のど

ちらが有効であるかが、決まる。まず、鉱化帯(多孔

質の飽和砂である)に浸出溶液が圧入され、ウランが

これに溶解する。ウラン(U3O8)鉱化は通常、0.2 %に

も満たない低品位で、回収率は 60 ~ 70 %である。各

抽出ユニットでは、母岩(砂岩)の透過性が、浸出で

の重要要素となる。その後、ウランを含有する浸出溶

液が地上に汲み上げられ、イオン交換や溶液抽出とい

った湿式製錬が施される。

現在、オーストラリアでの ISL 式ウラン採鉱プロジ

ェクトの資源評価とその報告に関しては、以下のよう

な 2点が論議の対象となっている。●ウラン品位の測定●ウラン資源の評価と報告

これらの論議には、オーストラリア及び米国でのケ

ース・スタディーが参考とされている。

3. ISL プロジェクトでのウラン品位測定ISL 式で資源の抽出されるウラン鉱床の放射性デー

タの評価は、以下のような坑井(下げ孔)検層技術で

行われる。●ガンマ線検層―ウラン 238 (U238)の同位体崩壊によ

って生じる放射性娘同位体から放射されるガンマ線

の測定である。この場合、ウランと娘同位体との自

然的非平衡状態によって、測定値の精度が低くなる

可能性がある。●PFN(即発中性子)検層―ウランの直接的な測定で

あり、自然的非平衡状態に左右されないといった特

長を持つ。

坑井検層による放射性データは、継続的な性質を持

つといった点から、飽和砂に含まれるウラン品位の完

全測定が可能であり、低パフォーマンスあるいは空井

戸といったリスクを伴うコア回収と一線を画している。

かつて坑井検層装置の測定結果は、グラフ表示(レ

ガシー・データ)に限られていたが、現在は放射性測

定の記録を電子的に行ってデジタル表示またはグラフ

表示することが可能となっている。

有資格者は、鉱化帯とその周辺の堆積物の地質学的

解釈、及び、砂岩ウラン鉱床の資源の概要に関する準

備を行わなくてはならない。これは、他の鉱物資源の

鉱床の評価と同様の方法で行われるが、放射性/電子検

層のグラフ表示が、坑井の鉱化や各坑井の相関の解釈

に、必要不可欠となる。

坑井検層は、開放孔のロータリー式泥水掘削(処理

が比較的迅速に行え、低コストである)と併用される

ことが多い。これは、従来の掘削方法(リバース・サ

ーキュレーション方式など)では、鉱床の母岩である

未固結の砂/砂利からサンプル(コアや岩石片)を採取

することが難しいが、ロータリー式泥水法を併用すれ

ば、柔らかい未固結砂への障害が最小限に食い止めら

れ、かつ、坑壁の泥被覆によって坑内での検層に十分

な時間が取れるためである。但し、この方法の掘削で

は、(サンプル採取に)遅延が生じ、正確な間隔でのサ

ンプル採取ができないため、サンプルカットの化学分

析による品位測定は行われず、坑井内での電子検層法

(抵抗率、誘導)によって岩石学的に正確な情報の採取

が行われることになる。

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート132(848)

Injection well -圧入井Recovery well -回収井Monitor well -モニター井Screened interval -スクリーン間隔Injected solution -圧入溶液Uranium enriched -濃縮ウラン注:本図は概略であるため、縮尺は無視されている。

出典:Heathgate Resources 社 1999 年資料

図 16 ISL 採鉱の概要

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3-1. ガンマ線検層坑井内でのウラン品位の測定に広く利用されている

のはガンマ線検層で、特に砂岩鉱床ではこれが非常に

多い。この方法は、ウランの放射線崩壊より生成され

る Bi214 や Pb21 から放射されるガンマ線(図 17 参照)

を測定し、この値に変換係数を適用させて、ウラン品

位(eU3O8)を算出するというものである。鉱脈の各

区間の放射性品位は、電子記録のデータの使用、また

は、旧式検層によるグラフ記録のデジタル化(片振幅

法や、デコンボリューション6 といった技術を使用する)

によって、測定される。

6 坑井内でのガンマ線データの精査技術。

3-1-1. 修正ファクター坑井内でのガンマ線検層から採取される放射性データ

は、以下のようなファクターによる修正が必要となる。●坑井のケーシング●坑井の直径●坑井内の水と空気●検層速度●探測機の特徴(例:作業待ち時間7、測定間隔など)

検層においては、使用された探測機の名前とモデル

番号、及び、各坑井の詳細を記録しておくことが望ま

しい。各探測機は、放射性測定値の修正において、個

別に較正することが必要となる。(分析の標準化8 のた

めに、各坑井ではKファクター9 が定められている。K

ファクターは、専用に設計された較正用坑井で決定さ

れる)放射線品位の確証(QA/QC)のためには、ウラ

ン回収が十分に達成できた掘削コアサンプルと、分析

との比較を行うことが望ましい。また、機器は、時間

を掛けた運転を繰り返すことが、その動向の監視にお

いて有効である。

但し、主要較正(primary calibration)のためにコ

ア分析結果を比較することは、以下のような理由から

望ましくないとされている。

a)サンプルのサイズの違い(誘導によって放射され

るガンマ線を探測機で測定する際の測定直径は 1m

であるが、コアサンプルの直径は通常、8~ 10cm

である)。

b)調査サンプルの(ウラン)品位の、自然的な可変

性。

c)調査サンプルの非平衡状態の、自然的な可変性。

較正は、特別に設計された坑井の中で、定期的間隔

をもって繰り返し行われなければならない。SA 州の

Frewville(アデレード市内)には、水陸地生物多様性

保護省(Department of Water, Land and Biodiversity

Conservation)の管轄による較正施設“AM

(アデレード・モデル)”があり、商業規模で

の実験に使用することが可能である。各検層

ユニットで測定されたウラン品位は、探測機

の較正が慎重に行われており、かつ、修正フ

ァクターが適用されて初めて、単一の資源評

価データベースとして統合されることが可能

となる。現在、オーストラリアではこのよう

な較正施設はこれ一基のみとなっており、海

外ではカナダのオタワと米国の G r a n d

Junction(コロラド州)にある。

ガンマ線探測機によって測定されたウラン

品位は、複数坑井の掘削を通じて実証される

ことが望ましい。坑井の化学分析によって測

定された品位は、それらの測定場所に相当す

る区間で放射計測定された品位と比較される。

従い、ウラン品位の測定においては、測定品

位が、放射計使用の品位と比較可能となるよ

うな技術が使用されていなければならない。

分析技術は、分析試験所との相談の上で決定される必

要がある。また、坑井では、電子検層(低効率及び誘

導)を裏付けるような、堆積層に関する岩石学的情報

の取得が可能となる。有資格者は、掘削によるサンプ

ル採集の困難さや、探測機によるガンマ線調査で使用

されるサンプルのサイズが大きいことを考慮に入れた

上で、修正結果の正確性を検討しなくてはならない。

コアサンプルは、ウラン資源のトン数の評価を目的

とした母岩密度の測定のためにも、鉱床全体を通して

採取されなければならない。全てのデータは、その情

報源(放射性データか化学的分析データか、コア掘削

によるものか泥水掘削によるものか、など)を、明確

にしなくてはならない。

坑井は、検層速度の最速化のために、通常は下から

上に向けて検層される。7 検層機のカウントが、特定の検層設定-機器、ケーブル(長さ)、アップホール・システムなど-の伝動/記録の“帯域幅”のために、記録されない時間。通常は、マイクロセカンド。カウント率が高い場合にのみ、重視される。8 詳細に関しては、2003 年 11 月 23 日に CIM Council に承認されたEstimation of Mineral Resources and Mineral Reserves Best PracticeGuidelines(鉱物資源及び鉱物埋蔵量評価におけるベスト・プラクティスのガイドライン- 2003 年 5月 30 日)を参照。

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート 133(849)

図 17 U238 の崩壊系列出典:Argonne National Laboratory 2005 年

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9 放射線品位の算出におけるガンマ線カウント率(作業待ち時間の修正済みであること)に適用される定数。探測機ごとに試験的に定められるもので、定期的な確認が必要とされる。

3-1-2. 非平衡状態崩壊系列において、放射性同位体は放射線放出と異

同位体への転換を行い、安定した非放射性の状態に達

するまでエネルギーを失い続ける。崩壊系列における

同位体は、“親同位体”の“娘同位体”と、表現される。

崩壊生成物の全てが、U238 に近い状態で百万年以上維

持されている場合、娘同位体と親同位体の間は平衡状

態となっている(出典:Bampton, Haines & Randell、

2001)。

しかしながら、ウランと娘同位体との可溶性の相違

や再沈殿、及び/または、ラドンガスの漏れなどによっ

て崩壊生成物が一つでも散在した場合、非平衡状態が

生じることになる。透過性砂岩を母岩とするウラン鉱

床(特に、ロール・フロントタイプの鉱床)は、鉱化

帯に地下水が湧いているため、非平衡状態である。

ガンマ線測定によって品位が評価される鉱床の場合、

非平衡状態に関する知識や修正が重要となる。非平衡

状態は、ウランの量が娘同位体よりも多い場合、正と

見なされる。これは、崩壊生成物が他の場所に移動さ

せられた場合、あるいは、ウランが二次富化などによ

って追加された場合などに起きる。正の非平衡状態は、

非平衡状態ファクターが 1 よりも大きい。娘同位体が

蓄積し、ウランが減少した場合、非平衡状態は、負で

あると見なされる。負の非平衡状態は、非平衡状態フ

ァクターが 0 よりも大きく、1 未満である。極端なケ

ースにおいては、ウランがほとんどあるいは全く存在

しないのに、娘同位体によって高ガンマ線が放射され

ることがある(“幽霊鉱石”と呼ばれる)。

非平衡状態は、同一サンプルの、化学分析によるウ

ラン品位と、“ガンマ線のみ”から測定された放射性品

位(実験室で測定される)との比較によって、決定さ

れる。但し、ウランサンプルの化学分析を、坑井のガ

ンマ線検層の値と比較することは、前者と後者の測定

規模が異なる(前者はコアまたは岩切片のウランサン

プルの平均品位が予測されるが、後者は、約 1m の直

径範囲での誘導によるガンマ線の反応が測定される)

ため、困難である。また、探測機の較正(及び/または

分析)のエラーが、非平衡状態として誤認されること

もある。

非平衡状態は通常、砂岩鉱床においては空間的に変

化し易く、鉱床内で修正ファクターが単一であること

は稀である。例えば、ロール・フロントの鉱床では、

非平衡状態の傾向はその先端部(nose)で最も強く

(娘同位体に対するウラン量が最も多い)、末尾部(tail)

で最も低い(娘同位体に対するウラン量が最も低い)

のが、通常である。Bever ley 鉱山(Heathgate

Resources 社 1998 年)では、岩石学的要素に基づく複

数の修正ファクターが使用されており、Honeymoon 鉱

床では品位に基づく修正ファクターが使用されている

(出典:Bampton, Haines & Randel、2001)。

非平衡状態は、坑井の同一区間内での、探測機によ

るガンマ線分析と PFNでの測定による品位の比較に基

づき予想される場合もあるが、これもやはりサンプル

サイズの大きな違いや、探測機の較正のエラーが非平

衡状態として誤認されるといった点から、正確性に欠

けることがある。

3-2. PFN(即発中性子)検層探測機PFN(即発中性子)探測機は、鉱石の U235 の核分裂

から生じる中性子を直接算出することによってウラン

品位を測定するものであるため、鉱石の非平衡状態に

は影響されない。PFN 探測機の技術に関しては、

Mutz による解説(2007 年)がある。PFN 探測機は高

価であり、現在のところ、その製造を行う業者は米国

企業の一社のみで、供給も遅れている。オーストラリ

アでは、Uranium One Australia 社と Heathgate

Resources 社が、この探査機を坑井での鉱物資源の測

定に使用している。この探測機で使用されるサンプル

の大きさは、直径約 0.5mである。

PFN探測機は、より信頼の置ける測定値を提供する

だけではなく、ISL の圧入坑井からのウラン回収率を

向上させる役割も持つ。これは、この探測機によって、

各坑井でのスクリーン10 が、ウラン濃度の高い場所に

設置されることが可能となるからである(すなわち、

ウランはほとんど存在しないが、ガンマ線の放出値が

高い場所へのスクリーン設置を防ぐことができる)。但

し、現在の Beverley 鉱山では、以下のような理由によ

って、大型直径の生産坑井での PFN探測機の使用の例

がないため、スクリーン設置には、やはりガンマ探測

機による分析結果が利用されている。●(PFN 探測機に)評価井掘削に匹敵するようなツー

ルが備わっていないため。●費用/利益が不確かであるため。●直径サイズの小さな較正用坑井で行わなければなら

ない評価量が大き過ぎる。

但し、生産坑井の多くは、PFNによる探測結果を備

えた各評価井の間にある。

PFN探測機は、専用の較正装置(タンク)を備えて

いることが望ましい(これらのタンクに装填される鉱

化砂と地下水は、実際の評価対象の鉱床から採取した

ものであること)。Uranium One Australia 社の

Honeymoon プロジェクトにおける較正装置には、アク

リルチューブを含む 1,000 リットルポリエチレンタン

ク 4 基(埋め込み型)が備わっている(出典:

Skidmore の 2006 年文献)。これらのタンクは、帯水層

から採取された砂と地下水(鉱化帯と似た多孔性と鉱

物性を持つ砂、及び、親帯水層と同様の塩分と地球科

学的特徴を持つ水である)の混合物が装填されている。

探測では、予め決められた分量のイエローケーキが砂

と混ぜられて、既知の平均品位での鉱化が行われる。

ピットは、様々なサイズの坑井での較正に適応するよ

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート134(850)

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うに設計されている。

Heathgate Resources 社も、上記と同様の装置を、

Beverley 鉱山で製作中である。PFN装置の較正は、コ

ンクリート製のガンマ較正施設の“AM(Adelaide

Model)”でも行われている(放射性品位ではなく、坑

内の物質の分析結果に基づき較正されている)。10 スクリーンは、浸出液の鉱化ゾーンへの出入り道を設けるために、設計されている(残りの坑井は全て、完全に密封される)。

4. ISL プロジェクトにおけるウラン資源の評価と報告ISL 式ウラン鉱床の資源量評価では、従来の採鉱法

(露天掘り、坑内掘り)では通常、必要とされない物理

的/化学的パラメーターが使用される。これらのパラメ

ーターには以下のようなものが含まれ、有資格者が鉱

床資源に経済的採取11 の確信を得る上で、必要とされ

る。●鉱化帯の透水性●鉱化帯での水文学的条件●ウランの弱酸性/アルカリ性溶液への溶解度

(上記のような)鉱物学的/水文学的情報は、有資格

者が、“経済的採取の試験の条件の有無”を判断する上

で、必要である。

ISL 式ウラン鉱床の資源評価は、通常、以下のよう

な 2通りの方法によって行われる。

(i)資源量(トン数)及び平均品位法

(ii)GT法(以下の説明参照)

上記の方法のいずれによる資源評価も、JORC 規程

に準拠していれば、公式の資源評価報告書として見な

される。

11 JORC規程第 19 条

4-1. 資源量(トン数)及び平均品位法資源量評価は、区画法(block modeling)、層法

(seam modeling)、断面法(cross-sectional methods)

のいずれかに基づき、行われる(各区画、層、断面で

算出された資源量が、鉱化砂の平均密度と掛け合せら

れ、鉱床全体の資源量が算出される)。品位の割り当て

は、従来のポリゴナル(polygonal)法(各坑井周辺地

に最も近いベースに品位を割り当てる)、power of

inverse distance 法、地球統計学法といった方法で行わ

れ、カット・オフ品位 (U3O8の比率)、最小鉱化帯層

厚、最大廃滓層厚などといったパラメーターが考慮さ

れなければならない。最小鉱化帯層厚が適用されない

場合、最小 GT とカット・オフ品位の低値が、鉱化幅

の狭い場所での資源評価に使用される。GT は、品位

(%U3O8)×実質層厚(m)で算出される。

資源量(トン数)及び平均品位を利用した資源量評価の例2006 年 8 月 29 日、SXR Uranium One 社は、トロン

ト証券取引所でのニュース・リリースに、Honeymoon

鉱床での以下のような資源量評価を、発表した。

Honeymoon Mineral Resource の報告は、資源量(ト

ン数)と質(品位)の情報の提供において JORC 規程

に準拠したものである。(数字には、JORC 規程準拠の

ための切り上げ、切り捨てがなされている)

資源評価には、各砂岩層の平均 GT 値が含まれてい

る。これらの値は、評価メソッドに基づき算出された

付加的情報であるが、区画選択の基準として使用され

るものであって、 評価可変数となるものではない。

資源量評価では、40m2 の鉱床で合計 236 の坑井が、

ロータリー泥水技術を使用して掘削され、鉱脈のU3O8

の品位が、PFN探測機で測定された。

資源量の評価は、5 つの砂層(水平方向に連続的に

伸びており、それぞれ、その堆積背景から異なる水文

学的特徴を持つ)を対象に行われた。以下は、SXR

Uranium One 社の 2007 年資料からの抜粋である。

「Eyre 塁層の基底砂層 EBS1 ~ EBS5 では、現在の掘

削プログラムに基づく電子検層(抵抗及び誘導を中心

とする)が行われた。検層では全て、第一切片のカッ

ト・オフが層厚 0.4 m で品位が 0.03 % U3O8(内部最大

希釈 1m)となっている。カット・オフ品位(0.03 %)

は、以下のような要素に基づき算出されている。

(i)以前のカット・オフ値 0.01 % (U3O8)の値は、

非現実的に低過ぎる。

(ii)PFN 探測機の限界測定値が(現在の検層速度と、

堆積区画を持ってすれば)、0.025 % (U3O8)で

ある(第三者による評価に基づく)」

全ての坑井の岩石学的記録は、同一の地質学者によ

って行われ、データセットも単一に統合されている。

坑井のデータベースは品質保証/管理(QA/QC)され

ており、砂堆積の透水層を特定するための詳細な堆積

学的調査も、完了している。以下は、SXR Uranium

One 社の 2007 年資料からの抜粋である。

「データベースは、5 つの Eyre 塁層の基底砂層の、

層厚が 0.4m 以上、U3O8の品位が 0.03 %以上の切片を

対象としたもので、最大 1m の内部希釈が考慮されて

いる。掘削坑井では、178 坑で上記の条件を満たす切

片が少なくとも一つは発見され、このうち 159 坑で

U3O8 0.05m %以上の切片が発見された。0.05m %未満

の GT は、それ以上の切片が存在している場合は無視

され、仮説確立のために GT 値の最も高い切片が、採

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート 135(851)

EBS5

EBS4

EBS3

EBS2

EBS1

合計

89,000

45,000

140,000

410,000

530,000

1,200,000

0.13

0.17

0.37

0.28

0.20

0.24

120

77

530

1,100

1,100

2,900

1.4

1.2

1.4

1.7

2.1

1.7

0.18

0.20

0.51

0.47

0.43

0.42

砂 層 鉱石 (t)

品位 U3O8(%)

(層厚) (m)

GT (品位-層厚) (m%U3O8)

U3O8 トン数

Honeymoonプロジェクト-概測資源量

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取された(但し、資源量には含まれない)。坑井内の同

一の砂層の中に、間隔を置いて存在するU3O8 0.05m %

以上の複数の切片は、介在廃石を考慮せずに一つの切

片として見なされている(13 例のみ)。従い、U3O8

0.05m %以上の(すなわち、プロジェクトのカット・

オフ品位以上の)切片の数は 313 と、一坑につき平均

二つ存在することになっている。」

上記の資源量は、(JORC 規程の)「予測資源量

(Indicated resources)」に分類されている。

4-2. 品位-層厚(GT)等高線法GT 法によるウラン鉱床の ISL 資源評価は、米国で

はワイオミング州、ネブラスカ州などで広く行われて

いる(但し、その詳細な公的報告は見当たらない)。一

方、オーストラリアでは、GT 法を使用した評価に関

する公的報告は全くない。Beverley 鉱山では、水資源

の多い土地の計画と ISL 操業の促進のために使用され

たことがあるが、これに関する報告書も存在しない。

この鉱山の公的な資源評価は全て、伝統的な区画法や

層法に基づくものである(出典:Ken Bampton 文献)。

米国で行われる資源評価は、U3O8の含有トン数や平

均 GT といった単純なものであることが多い(出典:

Catchpole、Kirchner 文献 1992 年)が、JORC 規程

に準拠するためには、前記のとおり、GTや U3O8含有

トン数に加え、鉱床内の他資源のトン数及び品位の報

告も行われなければならない。

GT 等高線法による資源評価は、掘削井の各鉱脈の

GT値(品位-層厚。単位はm%)に基づき行われる。

ISL 式の採鉱の GT カット・オフ品位の適用は、従来

方法の採鉱におけるカット・オフ品位の適用と、同様

の方法で行われる。

GT等高線法による資源評価GT 値の等高線マップは、坑井データをもとに作成

される。資源評価においては、鉱床の様々な等高線エ

リアまたは各坑井の周辺の関連エリア(これらは、各

坑井の間隔や鉱脈の水平方向への連続に基づく)の

GT値が、算出される。

GT 等高線法のパラメーターは、鉱床全体の密度と

関連させるといった点で、硬岩質の狭い鉱脈の二次元

的資源評価における“資源量(トン数)”に相当する。

これらの資源評価では、(資源の)集積量(ウラン資源

の評価では GT に相当する)の二次元的な評価、鉱脈

厚の個別評価、及び品位の逆算が行われ、エリアごと

の層厚と鉱床全体の密度に基づき資源量(t)が算出さ

れる。

ウラン鉱物資源に関する企業の公的言及において、

有資格者の作成する文書12 には、JORC規程への準拠の

ために以下のような情報が含まれていなければならな

い。●鉱床の場所●最小 GT (GTカット・オフ)

●平均 GT●鉱化帯全体の密度●U3O8A のトン数●GT(金鉱床の狭い鉱脈での資源集積量の評価に相当

する)の報告(U3O8の含有量)。●鉱床内のその他の資源のトン数と平均品位13。12 JORC 規程の定義する“文書(documentation)”とは、公的報告書(Public Report)の基本または資料として作成された組織内(社内)文書のことを指す。

13 JORC 規程第 25 条「資源における金属/鉱物の含有の報告は、それらのトン数や品位を必ず含むものでなければならない。」

4-3. 資源回収ファクターISL プロジェクトの資源回収は、鉱物の原位置浸出

による回収(坑内掘りの鉱物回収、すなわち、地表へ

の回収が可能な鉱物の比率と同等のものとされる)と、

製錬所での回収14 の合計である。回収率は、U3O8の含

有率とされ、以下のような条件に左右される。●ウランの非平衡状態(eU3O8が、資源評価に使用され

た場合)●近接の坑井との水文学的関連●鉱物学的条件(コフィナイト、ダビイド石など、ウ

ランを含有する岩石)●砂岩中のウランの浸出性●回収プラントのパフォーマンス(イオン交換、溶媒

抽出など)

回収率は、以下のような詳細な研究にも左右される。●コア掘削及び詳細分析と、ガンマ線探測または PFN

探測の結果との比較●岩石学的研究●大型サンプルのベンチスケール実験●坑井の圧入/汲み上げ試験

但し最近では、フィールド抽出試験が、より規模と

信頼性の高い回収実験であるとの認識が高まりつつあ

る。この試験では、鉱化帯の(母岩である)砂岩の水

文学的特徴及び透過性に関するデータ(これらは、鉱

物資源の評価において、重要なパラメーターとなる)

の取得も、可能である。

オーストラリアでは、ウラン鉱床での包括的なフィ

ールド抽出試験が、Beverly、Honeymoon で既に行わ

れており、2007 年後半にはOban(SA州)でも行われ

る予定である。(Beverly と Oban ではイオン交換技術、

Honeymoon では湿式製錬の技術が使用されている)

ISL でのウラン回収率は通常、60 ~ 70 %であるが、

カザフスタン共和国ではより高い回収率が報告されて

いる。これらの回収率は、関係者の公的報告の理解、

及び、報告の透明性のためにも、鉱石埋蔵量報告に記

載されることが必要である15。鉱物資源の報告書におけ

る回収ファクターの報告は、“鉱物処理の回収ファクタ

ーの評価に関する情報の非常な重要性16”からも奨励さ

れるべきものであり、有資格者の“鉱床の経済的採取

の可能性の判断”の理由に対する理解を促進するもの

でもある。

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート136(852)

Page 33: オーストラリアのウラン鉱床(2)mric.jogmec.go.jp/wp-content/old_uploads/reports/... · Acropolis、Wirrda Well、Oak Dam、 Emmie Bluff、Alford鉱床*3 (2)Mount

1970 ~ 1980 年代初頭に掛けてのウランの資源評価

は、単にU3O8の回収可能トン数のみを示すものであり、

JORC 規程に準拠したものではなかった(JORC 規程

が確立されたのは 1989 年)。

ISL 法では、資源の枯渇についての評価、すなわち、

残り資源の評価が難しい。これは、ISL による回収が、

採鉱と鉱石処理の両方でのウラン損失を含むものだか

らである。鉱石処理での損失は、製錬所での原鉱供給

量とウラン生産量(トン)から算出することが可能で

あるが、採鉱過程での損失を算出することは難しい。

残り資源の概算は、最初の資源評価から、毎年の生産

量を差し引くこといった方法で行われるが、均一でな

い ISR(原位置回収)―これは、残存資源の経済的可

採量、すなわち資源の継続的状況に影響を与える―を

考慮していない。14 製錬所での従来法による回収は通常、鉱石埋蔵量の修正ファクターには含まれない。

15 JORC規程第 5条16 JORC規程第 28 条

4-4. ISL 資源評価の資源カテゴリ有資格者は、資源評価における等級分けを JORC 規

程で定められるカテゴリに基づき行う必要があるが、

これは ISL のウラン資源評価についても同様である。

資源評価がどのカテゴリに属すかは、一連の地質学的/

水文学的要素、坑井間隔、品位測定の方法(ガンマ線

測定や PFN探測)や精度などを考慮の上、決定される。

最近の ISLプロジェクトのウラン資源評価のカテゴリ

分けでは、次のようなガイドラインが適用されている。

1. 較正精度の低いガンマ線データのみに基づくもの

で、かつ、非平衡性に関する修正も行われていな

い資源評価は、Inferred Resources(予測鉱物資

源量)以下のカテゴリに分類される。このような

ガンマ線データの利用においては、ガンマ線の痕

跡を示す岩石学的特徴の確認のために、コア坑井

(または切片)に基づくガンマ線データの調整が必

要である。

2. 過去一連のデータが較正精度の高い品位データ

(ガンマ線や PFN などによる測定)である場合の

資源評価は、Indicated Resources(概測鉱物資源

量)のカテゴリに分類される。(坑井間隔、地質学

的連続性、及び、ガンマ線測定の方法による場合

は、非平衡状態などが、決定要因となる)

3. 品位データが、較正精度が高く、連続性が実証済

みで、堆積の水文学的要素が十分に理解されてい

る PFNデータである場合、資源評価はMeasured

Resources(精測鉱物資源量)のカテゴリに分類さ

れる。但し実際には、オーストラリアで唯一、

PFN 探測機で掘削が完了しているウラン鉱床の資

源評価(Honeymoon 鉱床の 2006 年 8 月発表の評

価)は、Indicated Resources(概測鉱物資源量)

のカテゴリに分類されている。

Probable Reserves(推定鉱石埋蔵量)または

Proved Reserves(確定鉱石埋蔵量)への転用が可能

な資源量カテゴリは、概測鉱物資源量と精測鉱物資源

量のみである。資源量カテゴリから鉱石埋蔵量カテゴ

リへの転用は、経済や法制度などの条件を加味し、か

つ、希釈/回収のファクター(修正ファクター17)を適

用させて行われる。この際、修正ファクターは、回収

率18 の測定が困難であることからも確信的なものにな

り得ないこともあるが、ISL 鉱山の操業が数年を経て

いる、あるいは、ISL フィールド浸出試験の結果が良

好な場合、資源量と生産量との比較によって回収率が

明確となり、転用がより可能となることもある。

鉱業会社は、鉱山開発の資金を銀行融資によって調達

するが、その審査に合格するためには、埋蔵資源の全て

または一部が確定鉱石埋蔵量であることが必要となる。

従い、ISLのウランプロジェクトを行うジュニア企業は、

資源評価のカテゴリが概測資源量で、かつ、それを精測

資源量に格上げしたり埋蔵量カテゴリに転用したりでき

ない場合、銀行からの資金調達が難しくなる。17 JORC規程第 11 条18 この場合、ISL によるウラン回収率を指すが、その概念は、従来の採鉱法による回収率と同様である。

5. まとめ本稿は、ISL の適用される砂岩タイプのウラン鉱床

の鉱石埋蔵量及び鉱物資源の評価と報告が、JORC 規

程に準拠したものとなるための提言となっている。

ウラン品位は、探測機を通じて評価されることが多

いが、報告対象のウラン品位は、他の金属の資源評価

に適用されるものと同様の基準を満たしている必要が

ある。

地下水面下に存在する砂岩タイプの鉱床の採鉱には、

ISL 方式が適している。ウラン鉱床の品位は通常、鉱

化ゾーンの厚みによって異なる。従い、鉱床厚みと品

位の積である GT が、統計的プロセスにおける“相加

的変数”として、二次元的資源評価に使用される(有

資格者の判断に基づき、従来法または地球統計学的方

法のいずれかが使用される)。

資源評価は、資源評価パラメーター(資源のトン数、

平均品位、U3O8 のトン数、鉱床エリア、GT 平均値、

鉱化ゾーンの全体的密度、GT カット・オフなど)に

関する情報が提供されて、初めて JORC 規程(すなわ

ち、実体性、透明性、能力)に準拠したことになる。

有資格者は、資源評価に使用されたパラメーター、

及び使用データベースに関する制限事項の全てを記録

する義務を負い、このような情報が公的報告の理解に

必要とされる場合、それらを当該の報告書に含める必

要がある(これは、JORC 規程、すなわち評価の透明

性と実体性への準拠となる)。

ISL 方式による資源評価のカテゴリは、通常、

Inferred(予測)または Indicated(概測)に属するが、

鉱床の操業が数年間に及び、回収ファクターが定まっ

ている場合は、Measured(精測)のカテゴリに含める

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート 137(853)

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ことも、可能である。

有資格者は、ISL の操業またはフィールド浸出試験

によって回収データを取得していない限り、鉱物資源

量を鉱石埋蔵量に転用することが、難しい。だが、評

価鉱床の生産情報がない場合も、回収の信頼性や詳細

調査(これには、ISL 方式のフィールド試験を必ずし

も含まずとも良い)に基づき資源回収の予想を行うこ

とは、可能である(従い、ISL のフィールド浸出試験

が実施されていれば、資源量評価から埋蔵量評価への

変換は、非常に容易となる)。

6. 謝辞本稿作成において、専門知識を提供して下さった

Jerome Randabel 氏(Uranium Equities 社)、 Colin

Skidmore 氏(Uranium One Australia 社)、Mark

Randell 氏(Curnamona Energy社)、及び、草稿において

有意義なコメントを寄せて下さった Peter Morris 氏

(MCA)及び Pat Stephenson 氏(AMC Consultants

Pty Ltd.)に、謝辞を述べる。

7. 免責本稿の執筆は、JORC 会長の協力によるものである

が、本稿に記される見解は個人的なものであり、JORC

の見解を反映するものではない。

(2007.12.20)

〈参考資料〉Argonne National laboratory 2005 年: Human Health

Fact Sheet(人の健康白書)

http://www.ead.anl.gov/pub/doc/natural-decay-series.pdf

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ーストラリア鉱業冶金学会)会報 第 306 号 No 2、

17 ~ 27 ページ目

Catchpole & Kirchner 1992 年: The Crow Butte

ISL project ―A case history(Crow Butte ISL プロ

ジェクト―事例史)In Uranium in situ leaching,

Proceedings of International Atomic Energy

Agency technical meeting, Vienna, Oct. 1992(ウラ

ン ISL - IAEA の専門会議 1992 年 10 月ウィーン開

催の議事録) 81 ~ 94 ページ目

C IM(カナダ鉱業冶金石油研究所)2 0 0 3 年:

Estimation of mineral resources and mineral

reserves best practice guidelines prepared by the

Canadian Institute of Mining and Metallurgy and

Petroleum(CIM)led Estimation Best Practices

Committee(鉱物資源及び鉱物埋蔵量の評価におけ

るベスト・プラクティス: CIMのベスト・プラクテ

ィス委員会作成)

Curnamona Energy 社 2007 年: Assessing an ISL

Property(ISL 評価)

www.curnamona-energy.com.auDickson, BL, Fisher, NI 1980 年: Radiometric disequi-

librium analysis of the carnotite uranium deposit at

Yeelirrie, Western Australia(WA州Yeelirrie のカ

ーノット石ウラン鉱床の放射性の非平衡性分析)

AusIMM(オーストラリア鉱業冶金学会)会報第

273 号 13 ~ 19 ページ目

Heathgate Resources 社 1998 年: Beverley Uranium

Mine Environmental Impact Statement(Beverley

ウラン鉱山環境影響調査書 1998 年 6 月)

JORC 2004 年: The JORC Code 2004 Edition(JORC

規程 2004 年版) Australasian Code for Reporting

of Exploration Results, Mineral Resources and Ore

Reserves prepared by the Joint Ore Reserves

Committee of The Australasian Institute of Mining

and Metallurgy, Australian Institute of

Geoscientists and Minerals Council of Australia(大

洋州鉱業冶金学会(Aus IMM : Aus t r a l a s i a

Institute of Mining & Metallurgy)、オーストラリア

地球科学学会(AIG : Australian Institute of

Geoscientists)、オーストラリア鉱業協会(MCA:

Mineral Council of Australia)の JORC(共同鉱石資

源委員会)作成)

Mutz, P.R., 2007 年: Utilisation of Prompt fission neu-

tron technology in greenfields uranium exploration

(新規ウラン鉱床探鉱における即発中性子技術の利

用)2007 年 5 月 Australian Uranium Conference

(オーストラリアウラン会議)資料提供: AusIMM

(オーストラリア鉱業冶金学会)

Skidmore, C.P., 2006 年: 2006 年 7 月 アデレードに

てAusIMM主催のオーストラリアウランコンファレ

ンス「Honeymoon Uranium Project "Australia's

Fourth Uranium Mine"(Honeymoon ウランプロジ

ェクト“オーストラリアの第 4番目ウラン鉱山”)」

Southern Cross Resources Inc 2002 年: Annual

Information Form 2001(2001 年年次報告、トロン

ト証券取引所にて発表)

SXR Uranium One 社 2006 年: 2006 年 8 月 29 日ト

ロント証券取引所にて発表のニュース・リリース

Resource estimates for Honeymoon deposit

(Honeymoon 鉱床の資源評価)

SXR Uranium One 社 2007 年 Annual Information

Form 2006.(2006 年年次報告書トロント証券取引所

にて発表)

Underhill, D.H 1992 年 In situ leach uranium mining

in the United States of America: past, present and

future(米国の ISL 式ウラン採鉱-過去、現在、未

来)In Uranium in situ leaching Proceedings of

International Atomic Energy Agency technical

meeting(ウラン ISL - IAEA の専門会議 1992 年

10 月ウィーン開催の議事録)

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート138(854)

Page 35: オーストラリアのウラン鉱床(2)mric.jogmec.go.jp/wp-content/old_uploads/reports/... · Acropolis、Wirrda Well、Oak Dam、 Emmie Bluff、Alford鉱床*3 (2)Mount

付録 1JORC規程についてJORC 規程は、探鉱結果(Exploration Results)、鉱

物資源(Mineral Resources)、鉱石埋蔵量(Ore

Reserves)に関する公的報告書(Public Reports*)に、

それらを読む投資家及びそのアドバイザーが報告内容

にバランスの取れた判断を下す上で必要としている情

報が全て含まれることを目的に、定められたものであ

る。“公的報告書”という言葉の意味は広義であり、会

社の年次/四半期報告書、オーストラリアやニュージー

ランドの証券取引所への報告書、法律に基づき提出が

必要とされる報告書などが含まれる。また、JORC 規

程は、その他の企業公開情報(ウェブサイト、株主/証

券ブローカー/投資アナリストを対象とした報告書な

ど)や、環境調査書、情報備忘録(Informat ion

Memoranda)、専門報告書(Expert Report)、探鉱結

果/鉱物資源/鉱石埋蔵量に関する技術書などにも適用

されることがある。

JORC 規程は、数十年にわたり成功裏に適用され続

けており、1989 年からはオーストラリア証券取引所

(ASX)やニュージーランド証券取引所での上場規則

に採用され、オーストラリアの採鉱/探鉱企業の公的報

告の質を著しく向上させている。

特にASXでは、ASX Listing Rules(ASX上場規則)

で JORC 規程への準拠が定められて(第 8 条で、資源

及び埋蔵量の公開の承認を行う“有資格者”の必要条

件が定められている)おり、企業は、報告書に記載さ

れる情報の使用に関し、この“有資格者”の承認を得

なければならない。このことは、報告書の作成に携わ

る地質学者や鉱業関係者に重要かつ公的に明確な責任

を負わせることになっている。(但し)JORC 規程は、

有資格者が鉱物資源及び鉱石埋蔵量の評価/カテゴリ分

けを行う上での過程や、企業内部での資源/埋蔵量のカ

テゴリ分け/報告システムを統制するものではない。

オーストラリアでは、探鉱結果、鉱物資源、鉱石埋

蔵量の公開に関する法的責任は、上記のような ASX

上場規則だけではなく、資金調達/買収といった企業活

動に関する株主/投資家への情報の公開、及び Trade

Practices Act 1974(取引慣行法 1974 年)に基づく、

広義な会社法(Corporations Law)での規則にも適用

されている。これらの法律は、JORC 規程のような、

普及の行き届いている産業規程に深く関連している。

詳細情報に関しては、The Liability of Company

Directors and Competent Persons for

Resource/Reserve Disclosure(企業責任者、及び、資

源/埋蔵量公開に関する有資格者の責任)を参照のこと。

この文書には、企業責任者や鉱業関係者が、慣習法や

資源/埋蔵量報告関連の法規の下に法的責任を負う状況

についての説明がなされている。

レポート

オーストラリアのウラン鉱床(2)

2008.3 金属資源レポート 139(855)