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どうなる?こんなトラブル!
パート・アルバイト、派遣社員、契約社員で働く方のためのQ&A
1
東京都労働相談情報センターには、「給料や残業代がもらえな
い」、「明日から来なくていいと突然言われた」、「セクハラやパワ
ハラを受けている」など、職場で起こるさまざまな問題について、
多くの相談が寄せられています。
中でも、近年は、パート・アルバイト、派遣社員、契約社員な
どいわゆる正社員以外の働き方をしている方が、全労働者の3分の
1を超えており、これらの雇用形態に関するトラブルが増加傾向に
あります。
しかし、非正社員は「自由に解雇ができる」、「有給休暇がない」、
「社会保険の被保険者にならない」などという誤解も一部にあるよ
うで、労働法についての知識があれば、トラブルにならずに済ん
だのではと思われるものも少なくありません。
そこで、労働相談情報センターでは、桐蔭横浜大学の勝亦啓文
准教授にご協力いただき、非正社員の方が働いている職場で起こ
りがちなトラブル事例をもとに、労働法上のルール、トラブルに
あったときの対処方法などを、小冊子にまとめました。
本冊子が、広く活用され、トラブルの未然防止、早期解決、そ
して働きやすい職場づくりの一助となれば幸いです。
平成23年11月
東京都労働相談情報センター
はじめに
2
1 正社員とパート・アルバイト、派遣社員、契約社員って何が違うの・・・・・・・・・・・・ 4
2 性別・年齢などの採用基準・・・・・・・・・・・ 6
3 労働契約って何ですか・・・・・・・・・・・・・ 8
4 労働条件が変わるとき・・・・・・・・・・・・・ 10
5 採用の時には労働条件通知書の確認を・・・・・・ 12
6 予定していた仕事ができなくなったら・・・・・・ 16
7 労働時間の決まりってどうなってるの・・・・・・ 18
8 仕事中は休憩時間も必要・・・・・・・・・・・・・ 20
9 パートタイマー・アルバイト等も有給休暇が取れる・・ 22
10 有給休暇ってどうやって取るの・・・・・・・・・ 24
11 家庭生活と休暇、休業・・・・・・・・・・・・・ 26
12 割増賃金ってどんなときにもらえるの・・・・・・ 30
13 正社員とパートで処遇が異なる・・・・・・・・・ 32
14 パートタイマーも健康診断を受けられる・・・・・ 34
15 懲戒処分のルール・・・・・・・・・・・・・・・ 36
16 会社の物を壊したら弁償しなければいけないの・・ 38
17 給料からは何が引かれるの・・・・・・・・・・・ 40
目次
3
18 仕事中に怪我をしたら労災で補償される・・・・・ 42
19 仕事を辞めたらハローワークへ・・・・・・・・・ 44
20 パートタイマーも健康保険に入れる・・・・・・・ 46
21 厚生年金は国民年金のプラスアルファ・・・・・・ 48
22 仕事を辞めたくなったら①(雇われる期間が決まっている場合) ・・・・・・ 50
23 仕事を辞めたくなったら②(雇われる期間が決まっていない場合) ・・・・・ 52
24 仕事を辞めてほしいといわれたら①(雇われる期間が決まっている場合) ・・・・・・ 54
25 仕事を辞めてほしいといわれたら②(雇われる期間が決まっていない場合) ・・・・・ 56
26 ハラスメントへの対応・・・・・・・・・・・・・ 58
27 派遣先から中途解約を告げられた・・・・・・・・ 60
28 派遣先から契約以外の仕事を指示された・・・・・ 62
29 派遣社員から正社員になれる制度ってあるの・・・ 64
30 パートや派遣社員も労働組合に入れるの?・・・・ 66
資料 労働契約法条文 ほか・・・・・・・・・・・・・ 68
巻末 困ったときの相談窓口 ・・・・・・・・・・・・ 78
どうなる?こんなトラブル!
4
「正社員」募集の広告を見て面接に行ったところ、1年ごとの契約になると言われました。求人情報では、正社員、パート・アルバイト、派遣社員、契約社員など、いろいろな名称で募集がでていますが、どこが、どう違うのでしょうか?
正社員とパート・アルバイト、派遣社員、契約社員って何が違うの
これらの名称は、法律上のことばではなく、会社ごとに意味や内容が異なります。正社員は、定年までフルタイムで勤めることを前提とした雇用形態として使われることが多いです。それ以外の形態は、まとめて、非正社員や非正規雇用などといわれることがあります。
■ いろいろな働き方正社員、パート・アルバイト、派遣社員、契約社員などの名称は、法律上のも
のではないので、それだけで、どのような働き方になるかははっきりしません。
これらの名称は、一応の目安と考えて、求人内容をきちんと理解することが大切
です。わからないことがあれば、採用担当者に尋ねるなどして、仕事の内容、契
約期間、給料、勤務時間、休日といった労働条件を確認する必要があります。
もっとも、“こういった区分をしている会社が多い”という意味で特徴をまと
めると、次のようになるでしょう。
●正社員
フルタイム勤務で、雇われる期間を決めずに働く労働者を指す。
できるだけ長く働いてもらうことが期待されているため、最初に試用期間を設
けている会社が多い。
他の働き方と比べると、勤務日数や勤務時間、仕事上の責任などで拘束が多い
が、かわりに、昇進・昇給のチャンスもある。
ボーナスや退職金などの支給が予定されていて、定年まで雇われることが多い。
これがルール!
1
●パート
1日または1週間の所定労働時間が、正社員よりも短い労働者をいう。
フルタイムで働くことが難しい主婦や学生などが、数か月や1年など、雇われ
る期間を決めて働くことが一般的。
最初に決めた期間が終わったら仕事がなくなることもあるが、再び期間を区切
って契約が繰り返されることもある。
正社員の業務を補助する仕事や定型的な仕事をすることが多いが、正社員と変
わらない仕事をしている人もいる。
給料は、時給制や日給制の場合が多く、ボーナスや退職金制度はないことが多
い。
●アルバイト
パートと同じく、所定労働時間が正社員よりも短い労働者の意味で使われるこ
とが多い。また、雇われる期間が短い場合が多い。
小売業やサービス業などでは、学生・フリーター=アルバイト、主婦=パート
と呼んで使い分けているところもある。
また、パートは、正社員の労働時間・勤務日数で働くことを意味する「フルタ
イム」に対応する呼び方なので、正社員よりも働く時間が短いが、アルバイトの
場合は、正社員と同じ時間働くフルタイムのアルバイトも存在する。
●派遣社員
人材派遣会社(派遣元)の社員になり、派遣元が労働者派遣契約を結んだ会社
(派遣先)の指示を受けて働く。雇われる会社(派遣元)と仕事をする会社(派
遣先)が違うのが特徴。仕事の内容や給料の決め方はいろいろある。
また、派遣期間が終わった後、その働きぶりによって派遣先が直接雇うことを
予定した「紹介予定派遣」もある(65ページ参照)。
●契約社員
フルタイム勤務で、いつからいつまでと、雇われる期間を決めて働く労働者を
いう。
パートと同様に契約期間が終了すると、仕事がなくなることもあるが、再び契
約を結んで、仕事を続けることもある。
仕事の内容は、正社員と同じか、同じような仕事が多く、専門性の高い仕事を
することもある。
月給制の場合が多いが、ボーナスや退職金制度はないことが多い。
5
採用面接に応募したいと思う会社をいくつか見付けたのですが、募集案内を見ると「男性限定」、「25歳まで」などと記載されていて、要件を満たしていないため困っています。
どうなる?こんなトラブル!
■ 募集と採用のルール雇い主が労働者を採用する際に、どのような人をどのような条件で採用するか
は、基本的には経営の自由、契約の自由として、尊重されています。
しかし、すべての募集・採用基準を雇い主の自由に委ねると、雇用機会の不平
等が生じる恐れがあります。
また、公平・公正な募集・採用基準を通じた優秀な人材の確保は、多くの会社
や労働者が望んでいます。
このため、一定の理由で、応募者を募集・採用から排除することは、法律に違
反する差別として禁止されています。
■ 性差別の禁止募集・採用の際、次のような差別的取り扱いは、男女雇用機会均等法違反とな
ります。
①募集または採用にあたって、その対象から男女のいずれかを排除すること。
例)「ウエイター」・「ウエイトレス」、「営業マン」・「セールスレディ」な
ど男女のいずれかを表わす職種の名称を用いること。また、「男性歓迎」、
「女性向きの職種」などの表示を行うこと。
②募集または採用の条件を男女で異なるものにすること。
例)女性についてのみ、未婚者であること、子を有していないこと、自宅から
通勤すること、容姿端麗、語学堪能などを条件とすること。
6
性別・年齢などの採用基準
募集、採用の基準をどうするかは、基本的には雇い主が自由に決められますが、性別や年齢などにより基準を設定することは、原則として違法な差別として法律で禁止されています。
これがルール!
2
③採用選考において、能力や資質を判断する場合に、その方法や基準について男
女で異なる取り扱いをすること。
例)男女で異なる採用試験を実施すること。
例)採用試験の合格基準を、男女で異なるものにすること。
④募集または採用において、男女のいずれかを優先すること。
例)男女別採用予定人数を設定し、これを明示して、募集すること。また、設
定した人数に従って採用すること。
⑤求人の内容の説明等、募集または採用に係る情報の提供について、男女で異な
る取り扱いをすること。
例)求人の内容等に関する説明会を実施するにあたり、対象を男女いずれかの
みとし、または実施する時期を男女で異なるものとすること。
⑥合理的な理由がないのに、身長・体重・体力の条件を付け、または、コース別
採用で転勤に応じることを条件としてつけること。
例)営業職や事務職の募集にあたって、一定の身長以上であることを採用条件
にすること。
例)実際は転勤が行われていない職種の募集にあたって、転勤に応じることを
採用条件にすること。
■ 年齢差別の禁止募集・採用にあたっては、原則として年齢を不問としなければなりません。
年齢制限の禁止は、ハローワークを利用する場合をはじめ、民間の職業紹介事
業者、求人広告などを通じて募集・採用をする場合や、雇い主が直接募集・採用
する場合を含め、広く適用されます。
ただし、長期勤続によるキャリア形成を図る観点から正社員を募集・採用する
場合など、一定の場合については、例外的に年齢制限が認められます。
なお、例外的に年齢制限を設ける場合であっても、求職者、職業紹介事業者等
に対して、制限を設ける理由を提示することが会社に義務づけられています。
年齢不問として募集・採用を行うためには、会社は、労働者に求められる能力、
経験、技能の程度などの事項をできるだけ明示する必要があります。
■ このほかの禁止される差別このほか、労働組合に入っていることや、労働組合の正当な活動を理由として
不利益に取り扱うことは、労働組合法で禁止されています。
また、法律で明確に禁止されていない場合でも、基本的人権を傷つけ、社会常
識の上で相当とはいえないような差別をすれば、損害賠償責任が発生することが
あります。7
採用が決まるというのは、法律的には会社と労働契約を結ぶことです。契約で決めたことは、雇い主も、労働者も守らなければなりません。契約内容の変更をしない限り、採用の際に決めた出勤日・勤務時間が適用されることになります。
採用の時に、担当者から説明されたシフトと違う日の勤務を、配属先の責任者から指示されたのですが、従わなければいけないのでしょうか?
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
■ 契約は大事な基本ルール私たちが、他の誰かと物やサービスを取引するときには、それをいくらで、ど
んな条件で取引するのかという約束をします。この約束が「契約」です。契約書
を作らずに、こうしよう、ああしようと口約束をしただけでも、契約は成立しま
す。
契約が成立すれば、お互いにその内容を守らなければなりません。もし、相手
が契約に違反したら、きちんと守るように求めたり、違反によって発生した損害
の賠償を請求したりすることができます。
逆に、自分が違反すれば、相手から契約を守るよう求められたり、損害賠償を
請求されたりします。
ですから、契約で何が決まっていたかということは、自分が相手に対して何を
要求できるか、あるいは自分が何をしなければならないのかを決めるための、大
事な基準となるのです。
■「労働契約」ってどんなもの?さて、働いて給料をもらうという約束も、やっぱり契約です。他人の指揮の下
で働き、それによって賃金を得る契約を「労働契約」といいます。労働契約を結
ぶと労働者として法律による特別な保護を受けることができるようになります。
ここで、注意していただきたいのが、「業務請負契約」や「業務委託契約」な
8
労働契約って何ですか3
どです。
これらは、個人事業主となって、他人の指揮を受けずに仕事をする内容の契約
で、労働契約にあたりません。ですから、労働者を保護する法律の適用はありま
せん。
このため、後になって、「自分では労働者だと思っていたのだけど、雇い主か
ら『あなたは、個人事業主だから、雇用保険・健康保険・厚生年金に入れないし、
解雇の際の保護もないよ』と言われた」といったトラブルが多発しています。
なお、契約書など会社からもらった書類に「請負」や「委託」と表示されてい
たとしても、他人の指揮の下で働いていれば、「労働契約」になりますが、証明
することが難しいケースもあるので注意が必要です。
採用の際には、自分が結ぶ契約がどのような種類のものなのか、会社から渡さ
れる書類にはどのように記載されているのかを、必ず確認しましょう。
■ 契約内容を変更するにはいったん労働契約が成立したら、その内容を勝手に変えることはできません。
労働契約で、給料の額や出勤日・出勤時間、担当する仕事、働く期間などの労
働条件が決まっていれば、労働者も雇い主も、その条件を一方的に変えることは
できないのが原則です。
もし、労働契約で決められている労働条件を変更したければ、相手にお願いし
て、契約内容を変更することに同意してもらわなければなりません。同意がなけ
れば、従前の労働条件で仕事をすることになります。
ですから、働き始めた後で、労働条件について、労働者と雇い主で意見の違い
やトラブルが発生したときには、労働契約でどう決まっていたかということが、
とても重要になるのです。
最初の契約で勤務日が決められていたのであれば、変更する必要が会社側にあ
るからといって、勝手に変えられるものではありません。
契約と違う指示を労働者が拒否しても、契約に違反しているわけではないため、
懲戒処分や解雇をする理由になりません。最初の契約を変更する必要があるので
あれば、担当者は労働者の事情も考慮しつつ、変更を受け入れてもらえるよう十
分話し合うとともに、変更できなければ、他の方法で必要な人員を確保すること
を検討すべきでしょう。
9
契約の更新のときに、『次回の契約から時給を下げる!』と言われました。拒否したらもう働けませんか?
新しく契約を締結するときに、新しい労働条件を改めて決めることは原則として許されますが、実質的に継続更新することが期待されている契約について、合理的な理由なしに一方的に不利益な変更をすることはできないとする裁判例もあります。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
■ 基本は合意で労働契約でいったん決められた労働条件は、雇い主だからといって、一方的に
変更することはできません。労働契約が続く間は、雇い主も、働く人も、最初に
定めた条件に従って契約を実行する義務があります。
ただし、相手に労働契約で決められた条件を変えてくれるよう申し入れて、相
手がこれを受け入れたならば、変更できます。
しかし、相手が契約の変更に応じなかったからといって、不利益を与えること
はできません。労働者からの労働条件の変更の申し入れを雇い主が聞き入れてく
れなかったからといって、労働者が契約に違反したり、一方的に辞めたりできる
わけではないのとまったく同じように、雇い主も、変更の申し入れを労働者が受
け入れてくれなかったからといって、懲戒処分したり、解雇したりできるわけで
はないのです。
■ 合意がなくても労働条件が変わる例外的な場合正社員、パート・アルバイトなどの採用区分に関係なく、10人以上の労働者
を常に雇用している事業場では、「就業規則」を作成し、常時見られるようにし
ておくことが義務付けられています。就業規則とは、会社が労働条件や職場の規
律などについて統一的に定めたルールブックで、次の事項を決めておかなければ
なりません。
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労働条件が変わるとき4
①始業・終業の時刻、休憩時間、休日・休暇、交替制勤務をさせる場合の就業
時転換に関する事項
②賃金の決定・計算・支払方法・締め切り・支払時期・昇給に関する事項
③解雇の事由を含む退職についての事項
④退職手当、臨時の賃金、最低賃金、食費・作業用品などの費用負担、安全衛
生、職業訓練、災害補償や業務外傷病の扶助、表彰と制裁、労働者全員に適
用される事項があればその事項
就業規則の中に、労働契約の労働条件より有利なものが定められているときは、
就業規則の基準が適用されます。逆に、労働契約で決められている有利な労働条
件を、就業規則で引き下げることはできません。
パートやアルバイトには、正社員を対象とした就業規則の全部あるいはその一
部を適用しないと定めている会社も多いのですが、就業規則がパートやアルバイ
トにも適用される場合や、別途、パートやアルバイトを対象に就業規則が定めら
れている場合は、労働契約よりも有利な基準があれば、それに従った扱いを求め
ることができます。
また、労働組合と会社が、組合員の労働条件について取り決めた「労働協約」
がある場合、原則として組合員には、労働契約に優先して労働協約で決められた
基準が適用されます。
■ 契約の更新時の注意点原則として、労働契約を一方的に変更することはできませんが、現在の契約の
期間が満了した後で新しく契約を結ぶときは、新しい条件を改めて決めることが
できます。
このために、新しく提示された条件について合意できないと、契約が結ばれず、
結果として雇用が終了することになります。
また、実際に何回も契約を更新して、次の契約も当然結ばれると期待できる状
況の中で働いてきたのに、突然前より不利な労働条件を提示されたために雇用を
失うことは、実質的には解雇であると評価できることもあります。
採用の時や以前の更新の時に会社から受けた説明の内容、更新の状況、同僚に
対する扱い、会社が労働条件を変更しなければならない理由などを総合的に判断
していくことになります。
11
■ 書面は大事な証拠!8ページで説明したように、労働契約は、書面を作っていなくても有効ですし、
いったん定められた労働契約は、雇い主も労働者も守らなければなりません。
しかし、どんな契約を結んだのかをしっかりと目に見える形にしておかないと、
お互いの思い違いや、後になって言った・言わないといったトラブルが起こった
りします。また、お互いの言い分が違うと、裁判所や行政機関も、トラブルを解
決するための正確な判断をしにくくなってしまいます。
そのため、雇い主にとっても、労働者にとっても、労働契約の内容を書面にし
て残しておくことは、後のトラブルを防止し、あるいはトラブルが起こったとき
に正しい解決をするために、とても重要なことなのです。
■ 労働条件の明示は雇い主の義務!こういったトラブルを回避するため、会社は採用のときに、次の事項について
記載した書面を、労働者に交付しなければならないことになっています。この義
務に違反した雇い主には、最高で30万円以下の罰金が科せられます。
①契約期間
②仕事をする場所、仕事の内容
③始業・終業の時刻、休憩時間、休日・休暇、交替制勤務をさせる場合の就業
時転換に関する事項
④賃金の決定・計算・支払方法・締切り・支払時期
12
採用のときに、『労働条件が記載されている書類がほしい』と言ったのですが、もらえませんでした。
採用の時には労働条件通知書の確認を
労働契約を結ぶときに、会社は一定の労働条件が記載された書面を労働者に交付しなければなりません。トラブル防止のため、採用のときに書面を交付してもらうのを忘れないようにしましょう。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
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⑤解雇の事由を含む退職についての事項
これに加えて、パート・アルバイト、契約社員などの名称にかかわらず、正社
員よりも所定勤務時間の短い労働者を採用する際には、昇給の「有無」、退職手
当の「有無」、賞与の「有無」も明示することが義務づけられています。これに
違反した雇い主には、10万円以下の過料が課せられます。
■ 渡された書面はしっかりと保管会社が、労働者に交付する労働条件が記載された書面は、特に決められた様式
があるわけではありませんが、厚生労働省は、労働条件通知書として、14ペー
ジのようなモデルを公表しています。
採用のときには、労働条件が記載されている書面をもらうのを忘れないように
しましょう。また、書面は後でトラブルになったときに、大事な証拠となること
がありますから、働き始めた後も、しっかりと保管しておきましょう。
■ 契約期間を決めて働く場合期間を決めて働く有期労働契約については、契約期間終了時に、更新をめぐる
トラブルが多く発生しています。
そこで、会社は有期契約労働者に対して、契約締結時に、①更新の有無、②更
新することがある場合の判断基準を明示しなければならないことになっています
(76ページ「有期労働契約の締結及び更新・雇止めに関する基準」参照)。
これらの明示事項についても、トラブル防止のため、書面でもらっておくよう
にしましょう。
13
14
労働条件通知書�
殿 �事業場名称・所在地�使 用 者 職 氏 名 �
年 月 日�
契約期間� 期間の定めなし、期間の定めあり(※)( 年 月 日~ 年 月 日)�
1 始業・終業の時刻等� (1)始業( 時 分) 終業( 時 分)� 【以下のような制度が労働者に適用される場合】� (2)変形労働時間制等;( )単位の変形労働時間制・交替制として、次の勤務時間の� 組み合わせによる。� 始業( 時 分) 終業( 時 分)(適用日 )� 始業( 時 分) 終業( 時 分)(適用日 )� 始業( 時 分) 終業( 時 分)(適用日 )� (3)フレックスタイム制;始業及び終業の時刻は労働者の決定に委ねる。� (ただし、フレキシフ ル゙タイム(始業) 時 分から 時 分、� (終業) 時 分から 時 分、� コアタイム 時 分から 時 分)� (4)事業場外みなし労働時間制;始業( 時 分)終業( 時 分)� (5)裁量労働制;始業( 時 分)終業( 時 分)を基本とし、労働者の決定に委ね� る。�○詳細は、就業規則第 条~第 条、第 条~第 条、第 条~第 条�2 休憩時間( )分�3 所定時間外労働の有無� ( 有 (1週 時間,1か月 時間,1年 時間),無 )�4 休日労働( 有 (1か月 日,1年 日), 無 )�
・定例日;毎週 曜日、国民の祝日、その他( )�・非定例日;週・月当たり 日、その他( )�・1年単位の変形労働時間制の場合―年間 日� (勤務日)�毎週( )、その他( )�○詳細は、就業規則第 条~第 条、第 条~第 条�1 年次有給休暇;6か月継続勤務した場合 → 日� 継続勤務6か月以内の年次有給休暇 ( 有・無 )� → か月経過で 日� 時間単位年休(有・無)�2 代替休暇(有・無)�3 その他の休暇 有給( )� 無給( )�○詳細は、就業規則第 条~第 条、第 条~第 条�
就業の場所�
休 日 �及び�
勤 務 日 �
休 暇 �
従事すべき�業務の内容�
始業、終業の時刻、休憩時間、就業時転換((1)~(5)のうち該当す�るもの一つに○をつけること。)、所定時間外労働の有無に関する事�項�
(短時間労働者・派遣労働者用;常用、有期雇用型)�
(次頁に続く)�
15
賃 金 �
退職に関す�る事項�
そ の 他 �
更新の有無�
1 基本賃金 イ 月給( 円)、 ロ 日給( 円)� ハ 時間給( 円)、� ニ 出来高給(基本単価 円、保障給 円)� ホ その他( 円)� ヘ 就業規則に規定されている賃金等級等����2 諸手当の額又は計算方法� イ( 手当 円 /計算方法: )� ロ( 手当 円 /計算方法: )� ハ( 手当 円 /計算方法: )� ニ( 手当 円 /計算方法: )�3 所定時間外、休日又は深夜労働に対して支払われる割増賃金率� イ 所定時間外、法定超 月60時間以内( )%� 月60時間超 ( )%� 所定超 ( )%� ロ 休日 法定休日( )%、法定外休日( )%� ハ 深夜( )%�4 賃金締切日( )―毎月 日、( )―毎月 日�5 賃金支払日( )―毎月 日、( )―毎月 日�6 賃金の支払方法( )� 7 労使協定に基づく賃金支払時の控除( 無 , 有( ))� 8 昇給( 有(時期、金額等 ) , 無 )� 9 賞与( 有(時期、金額等 ) , 無 )� 10 退職金( 有(時期、金額等 ) , 無 )�
1 定年制 ( 有 ( 歳) , 無 )�2 継続雇用制度( 有( 歳まで) , 無 )�3 自己都合退職の手続(退職する 日以上前に届け出ること)�4 解雇の事由及び手続���○詳細は、就業規則第 条~第 条、第 条~第 条�
・社会保険の加入状況( 厚生年金 健康保険 厚生年金基金 その他( ))�・雇用保険の適用( 有 , 無 )�・その他���・具体的に適用される就業規則名( )�
1 契約の更新の有無� [自動的に更新する・ 更新する場合があり得る・ 契約の更新はしない・その他( )]�2 契約の更新は次により判断する。� ・契約期間満了時の業務量 ・勤務成績、態度 ・能力� ・会社の経営状況 ・従事している業務の進捗状況� ・その他( )�
※ 「契約期間」について「期間の定めあり」とした場合に記入�
※ 以上のほかは、当社就業規則による。�※ 短時間労働者の場合、本通知書の交付は、労働基準法第15条に基づく労働条件の明示及び短時間労働者 の雇用管理の改善等に関する法律第6条に基づく文書の交付を兼ねるものであること。�※ 登録型派遣労働者に対し、本通知書と就業条件明示書を同時に交付する場合、両者の記載事項のうち一致 事項について、一方を省略して差し支えないこと。�
・店長が毎月作成するシフト表に従ってパートで働いてきたのですが、最近、シフトを入れてもらえなくなりました。・不況の影響で、会社が一時操業停止になりました。自宅待機を命じら れたのですが、給料はどうなるのでしょうか?
・勤務日数について、どのような定めがあったかによりますが、合理的 な理由なしにシフトから外されたのであれば、損害賠償を請求できる 可能性があります。・会社側の責任といえる休業の場合、少なくとも平均賃金の60%を労 働者に支払うことが義務付けられています。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
■ 勤務日数が明確に決まっていないと勤務日や勤務時間は、労働契約で決められていることが原則ですし、12ペー
ジで説明したように、雇い主が採用の時にあらかじめ明示しておくべき労働条件
の一つです。
しかし、月ごとや週ごとに、会社と労働者が話し合ったうえで勤務日や時間を
決めることも、許されないわけではありません。
このため、毎月シフトを組んで勤務予定を立てる勤務形態の場合、基準となる
明確な勤務日数が、はっきりと決められないことがあります。
勤務日数の基準が決められていたのであれば、少なくともその日数分は勤務で
きるはずですから、労働者の責任で勤務させることができないのでなければ、勤
務を割り当てないことは、契約違反にあたります。
この場合、労働者は、本来なら勤務することで得られたはずの利益について、
損害賠償を請求できる場合があります。
不当な嫌がらせや差別的理由でシフトに配置しなかったというのであれば、精
神的損害に対する賠償を請求できることもあります。
もっともこれは、一定の勤務日数が予定されていることが前提ですから、もと
16
予定していた仕事ができなくなったら6
もと勤務日数が確定されていないと、損害額の算定が難しくなってしまいます。
自分の都合に合わせて勤務日を決めたいという場合以外は、労働者の側も、自分
の勤務日やシフト配置がどうなるかについて、少なくとも原則的な基準をあらか
じめ確認しておく必要があるでしょう。
■ 休業への手当労働基準法は、もともと勤務が予定されていた日に、何らかの理由で就労でき
ず休業になったときは、その日の休業の理由が会社側の責任と評価できるのなら、
最低でも平均賃金の60%以上の休業手当を支払うことを義務づけています。
この休業手当は、あらかじめ決められていた勤務日が、休業となったときに払
われるべきものです。いったん決まった勤務日を、会社側の都合で一方的に休日
とすることはできませんが、当初は勤務日とされていた日が、契約や就業規則に
基づいて例外的に入れ替えられて休日となったり、お互いが合意のうえで休日と
なったりした日について、休業手当の支払い義務はありません。
■ 休業手当の支払いが必要となる場合会社の判断で、休業となることを回避できる可能性があったのに、休業せざる
を得なくなくなったときは、会社に責任があるとされています。
たとえば、不況のため操業を減らす、資材や取引先の都合で操業できない、お
客が少ないため営業を中止するといった理由で、本来の勤務日となっていた日を
休業にすることは、経営上の判断が招いた結果といえますから、休業手当を支払
う必要があります。
逆に、会社の判断で回避しようのない理由、たとえば突然の天災や地震により
操業が不可能になった、法令に基づいて会社の行動とは関係ない理由で休業を命
じられたなどの理由による休業については、会社に責任はないとされています。
ただし、震災による休業も、その会社の施設や設備自体に損害がなく、取引先
の被災などの間接的な影響で休業するときは、会社が営業を継続するための通常
の努力をしてもなお休業せざるを得ない場合に限り、責任がないものとされます。
このような場合、雇用保険からの給付が受けられることがありますので、ハロ
ーワークに相談してください。
また、新型インフルエンザに関して、感染した従業員が多くて会社が一時操業
停止を行うときや、家族が感染したことを理由に休業を命じるときなどで、客観
的に休業させることが不可欠であると言えない場合は、休業手当の支払いが必要
になるでしょう。
17
・毎日、夜中まで残業続きです。これって法律違反じゃないの?・始業時間前に開かれるミーティングに出席するように言われているのですが、参加してもその時間分の給料が支払われません。・指定された作業着で仕事をすることになっています。着替えに必要な時間は、労働時間に含まれるのでしょうか?
・雇い主は、労働者を1週間に40時間、または、1日8時間を超えて働かせてはいけないのが原則です。・ミーティングへの出席や作業着での仕事が義務づけられていれば、労働時間となり、その分の賃金を請求することができます。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
■ 労働時間を守るのは雇い主の義務!雇い主は、労働者を1週間に40時間、または1日に8時間を超えて働かせて
はいけないのが原則です(法定労働時間)。
労働時間が1日8時間を超えなくても、ある週の通算労働時間が40時間を超
えれば、労働基準法違反になります。たとえば、1日7時間で毎日働いていると、
6日目の5時間で40時間になりますから、それを超えて労働者に仕事をさせるこ
とは原則としてできません(次ページの例外参照)。
労働基準法違反の労働をさせた雇い主や現場の責任者は、罰せられることにな
っています。労働時間を正確に把握することは雇い主の義務であり、「把握して
いなかった」という言い訳は認められません。
■「労働時間」はどこからどこまで?労働時間としてカウントされるのは、雇い主の指揮・命令の下に置かれている
時間です。
そして、どのような場合に指揮命令下に置かれているかは、個々のケースごと
に考える必要があります。
なお、下記の時間は、労働時間にあたると考えられています。
18
労働時間の決まりってどうなっているの7
①作業と作業の間の手待時間(昼休みの電話当番で電話を受けていない時間など)
②作業開始前のミーティング、交代制勤務の場合の引継ぎ時間
③作業服への着替え時間(業務の準備行為として行うことが義務づけられている
場合)
④作業前の準備、作業後の後始末・掃除(使用者の指示がある場合)
⑤仮眠時間(警報や電話等の対応があるなどその場での労働から離れることが保
障されていない場合)
⑥研修への参加時間(不参加による不利益取り扱いがあり、出席が強制されてい
る場合)
■ 意外とある?いろいろな例外1週40時間、1日8時間の原則について、労働基準法は次のような例外を認
めています。
自分の労働時間の扱われ方がおかしいのではないかと思ったときは、就業規則
で社内の取り扱いを確認するなどしてから、労働相談情報センターや労働基準監
督署などにお問い合わせください。(78ページ参照。)
●例外①
物品の販売、配給、保管もしくは賃貸または理容/製作を除く映画、演劇その
他興業/治療、看護、その他保健衛生/旅館、料理店、飲食店、接客業または娯
楽業で、常時10人に満たない人しか働いていない事業場では、1週あたりの上
限が44時間となっています。
●例外②
変形労働時間制、フレックスタイム制という特別な労働時間制度が導入されて
いる事業場や、事業場外労働や裁量労働のみなし制と呼ばれる制度が導入されて
いる一部の事業、職種では、1日あるいは1週の上限が原則どおりでないことが
あります。
●例外③
労働契約や就業規則などに、「業務上必要なときは、労働者に時間外・休日労
働義務が発生する」旨の規定があり、労使協定(36協定)が結ばれ、労働基準
監督署に届け出られているときは、労使協定の定める限度で、時間外・休日労働
をさせることが許されています。一般的に残業と呼ばれているのは、これに該当
します。
●例外④
監督・管理の地位にある労働者(名称で判断せず、実質的な管理・監督者)は
1週40時間、1日8時間の原則が適用されません。
19
・早く帰りたいので、『休憩時間はいらない』と言ったのですが、会社に聞いてもらえません。・一応、休憩時間は決まっているけど、お客さんの対応でしっかり休め ません。
・雇い主は、6時間を超えて労働者を使用する場合、途中に休憩時間を与えなければなりません。たとえ、労働者がいらないと言っている場合であっても同様です。・休憩時間中に仕事をして休憩できなかった場合、その時間は労働時間 として扱われます。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
■ 休憩時間、ちゃんと取られている?休憩時間とは、労働者が労働義務から解放される時間のことをいいます。雇い
主は、1日の労働時間が6時間を超える場合には、その途中に少なくとも45分
間の休憩時間を、8時間を超える場合には、少なくとも1時間の休憩時間を、労
働者に与えなければなりません。
1日の労働時間が6時間以下なら、雇い主は労働者に休憩時間を与える義務は
ありません。もっとも、与える義務がないというだけですから、雇い主の判断で、
休憩を与えても構いません。
また、労働時間が6時間超の場合は45分、8時間超の場合は1時間というのは、
最低限与えなければならない時間ですから、雇い主の判断で、それを超える休憩
時間を与えることもできます。
休憩時間は、労働時間の途中であれば、どこで与えてもいいですし、分割して
与えることもできます。60分の休憩時間を45分と15分に分割したり、30分を
2回分けたりできます。ただし、5分間の休憩時間を細切れに与えるなど、実質
上休憩時間といえないような分割は、休憩の趣旨を失わせるので許されません。
休憩は、労働者の心身の負担を緩和するためだけでなく、その後の業務を能率
的に実行できるようにする目的もあります。法律上の最低限の休憩時間は、たと
20
仕事中は休憩時間も必要8
え労働者がいらないといっても、付与しなければ、会社は法違反の責任を問われ
ます。
■ 休憩は全員一斉に休憩時間は、そこで働く人に対して、一斉に与えるのが原則です。
ただし、雇い主が一定の手続きを取った場合と、運輸交通、旅館、商業、飲食
娯楽などのサービス業では、全員一斉ではなく、交替で休憩時間を与えることも
認められています。
■ 休憩時間は自由に利用を休憩時間中は、児童養護施設などのごく一部の業務を除いて、労働者が完全に
仕事から解放されることが保障されなければなりません。
ですから、休憩時間とされている時間でも、お昼休みの電話当番のように、そ
の時間にお客さんから電話があれば対応しなければならない場合などは、結果と
して仕事をせずに済んだとしても、休憩を与えたことにはなりません。その時間
は、労働時間となり、雇い主は給料を支払わなければなりません。
また、休憩時間中は移動の自由も保障されていますから、外出を禁止すること
もできません。
ただし、労働者が、雇い主の管理する施設の中で休憩するときに、雇い主が、
使ってもいい場所を指定したり、守らなければならない施設利用上のルールを定
めたり、外出するときに届出をさせたり、連絡がとれるよう求めることは、法律
には違反しないとされています。
休憩時間中とはいえ、守らなければならない社内のルールを破ると、懲戒処分
の対象となることもありますから、注意してください。
21
有給休暇を取りたいと伝えたら、店長に『アルバイトに有給休暇はない!』と言われました。
アルバイトでも、一定の割合以上欠勤せず、6か月間継続して勤務すれば年次有給休暇が取得できます。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
■ たまにはゆっくり有給休暇仕事を休んでも、その日の給料が保障されるお休みのことを、「年次有給休暇」
といいます。これを略して、「有休」とか「年休」と呼ぶこともあります。
年次有給休暇を使って休んだ日は、原則として、その日に働いたならもらえる
はずの給料または、平均的な給料が支給されることになっています。欠勤した日
の分の給料を月額から差し引いていく月給制では、休んだ日の給料が差し引かれ
ない、ということになります。
年次有給休暇は、正社員だけの制度ではありません。正社員、パート・アルバ
イト、派遣社員、契約社員などに関係なく、労働者であれば、取得することがで
きます。
また、労働基準法に基づく権利ですから、社内に年次有給休暇を取得した人が
いなかったり、年次有給休暇についての社内のルールがなかったりしても、取得
することができます。
雇い主が年次有給休暇の取得を認めないことは、違法となります。また、労働
者が取得しようとしたことや、実際に取得したことを理由に、不利益な取り扱い
をすることも違法になります。
22
パートタイマー・アルバイト等も有給休暇が取れる
9
■ しっかり働いて6か月6か月間継続して勤務し、勤務が予定された日のうちの8割以上出勤した場合
には、下の表に記載された日数の年次有給休暇が法律上当然に付与されます。
また、就業規則などで、これよりも労働者にとって有利な制度を設けていれば、
そちらが適用されます。
なお、年次有給休暇は、雇い主にお金を払わせるためにあるわけではなく、労
働者が、本当は働かなければならない日に、安心して休むことができるようにす
るための権利です。
ですから、もともと休みになっている日を、年次有給休暇として給料の支払い
を求めたり、使わなかった分を買い取ってくれるよう、雇い主に求めたりする権
利が保障されているわけではありません。
23
週 所 定�
労働時間�
週 所 定�
労働日数�
1年間の�所 定�労働日数�
勤 続 期 間 �
6か月�1 年�6か月�
2 年�6か月�
3 年�6か月�
4 年�6か月�
5 年�6か月�
6 年�6か月以上�
11日�10日�30時間以上�
30時間未満�
12日�14日�16日�18日�20日�
8日�7日�
5日以上� 217日以上�
4日� 169~216日�
3日� 121~168日�
2日� 73~120日�
1日� 48~72日�
9日� 10日�12日�13日�15日�
6日�5日� 8日� 9日�10日�11日�
4日�3日� 5日� 6日�
2日�1日� 3日�
7日�
年次有給休暇の付与日数表�
・上司に有給休暇を取りたいと言ったら、『この忙しいのにダメだ!』と言われました。・昨日、事情があって欠勤したのですが、有給休暇の扱いにしてもらいたいと上司に頼んだところ、『無断欠勤だからダメだ!』と言われました。
・付与された年次有給休暇をいつ取得するかは、労働者の申し出によって決まるのが原則です。ただし、雇い主は事業の正常な運営に支障が 出る場合に、他の日に変更するよう労働者に求めることができます。・休んでしまった日を、後から年次有給休暇にすることは、雇い主が認めない限りできません。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
■ 年休の利用目的は自由年次有給休暇をどんな理由で取得するのかは、労働者の自由です。また、雇い
主は、労働者の年次有給休暇の利用目的に、干渉してはいけないことになってい
ます。
■ 休む日は自分で指定付与された年次有給休暇をいつ取得するのかは、雇い主は決められず、労働者
の申し出によって決まるのが原則です。
このため、年次有給休暇を取得するには、雇い主に取得する日を伝える必要が
あります。
また、年次有給休暇は、付与されてから2年経つと、原則として時効により権
利が消滅してしまうので注意してください。
■ 年休はどうやって取る?年次有給休暇を取得したいときは、原則として、取得を希望する日を1日単位
で指定し、あらかじめ雇い主や上司に申し出ておく必要があります。
時間単位の休暇は、労使協定に定めがあれば年5日分を限度に取得できます。
24
有給休暇ってどうやって取るの10
なお、年次有給休暇取得の申し出の期限や方法は、法律上の決まりはありませ
んが、取得希望日の前日の終業時刻までに会社に申し出ればいいとされています。
ただ、一般的には就業規則などで決められており、取得したい日までに時間的
余裕があるときは、なるべく早めに、その手続きに従って申し出ておくことが望
ましいでしょう。
雇い主は、労働者から年次有給休暇の取得希望日の申し出を受けた場合、その
日の休暇取得を拒否できません。
ただし、事業の正常な運営に支障がでる場合には、他の日に変更するよう労働
者に求めることができます。
なお、ここでいう「事業の正常な運営に支障がでる場合」というのは、誰が見
てもそのとき休まれたら、会社が正常に運営できないという具体的な事情のある
ときです。ですから、単に忙しいからという理由で、労働者が休みたい日に休ま
せないということはできません。
■ 当日に休暇をとる場合年次有給休暇の取得希望日の連絡は、事前にしなければならないのが原則です
から、始業時刻を過ぎてから連絡した場合は、当然にその日が年次有給休暇にな
るわけではありません。
会社が事後の請求として、年次有給休暇と認めてくれればいいのですが、認め
てくれなければ無断欠勤扱いになることもありますので、注意してください(年
次有給休暇ではなく、26ページで説明する看護休暇であれば、当日の取得申し
出が認められています)。
■ 退職直前の取得に注意退職直前に、残った年休を指定した場合、会社は他の日に変更できる勤務日が
無いと、指定を拒否できなくなります。このような取得方法も認められてはいま
すが、事前の調整なしにこのような取得をすると、業務の引き継ぎ等をめぐり、
会社とトラブルが起こりがちです。あらかじめ会社と調整するか、できるだけ余
裕を持って取得した方が望ましいでしょう。
25
・子供が急に熱を出したため、勤め先に休むと連絡したところ、『突然の欠勤にはペナルティーがある!』と言われました。仕方がないのでしょうか?・育児休業を取った後、『自宅から通えない職場に配置する!』と言わ れました。これって違法な「育休切り」じゃないのでしょうか?
・パートタイマーでも、原則として年5日間の看護休暇がとれます。・育児介護休業を取得しようとしたことや、取得したことを理由に不利益な取り扱いをすることは禁止されています。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
26
家庭生活と休暇、休業
■ 家族の看護のための短期休暇育児・介護休業法は、小学校入学以前の子供を育てる労働者や、家族を介護す
る労働者が、年間5日(その対象者が2人以上いる場合は10日)の範囲で、看病
や通院などの看護、介護のために必要な休暇(ただし、従業員100人以下の企
業の場合、平成24年6月末まで「介護休暇」は義務付けられていません)を取
得できるようにしています。
この休暇は法律で認められた権利ですから、たとえその会社で取得の前例がな
い、制度をまだ整備していないという場合でも、取得できます。
なお、この看護休暇は、24ページの年次有給休暇と違って、取得した日を有
給にすることは義務づけられていませんが、当日の申し出でも取得できます。
会社は、看護休暇を取ろうとしたことや、実際に取ったことを理由に、労働者
を解雇したり、不利益な取り扱いをしたりすることが禁止されています。
ただし、次の方は看護休暇・介護休暇を取得できる対象から除外されています。
①日々雇用される方
②会社があらかじめ一定の手続をとっていた場合で
・引き続き雇用された期間が6ヶ月に満たない方
・週所定労働日数が2日以下の方
11
■ 育児、介護のための長期休業また育児・介護休業法は、原則として子供が1歳になるまでの育児のための休
業(一定の事由がある場合には、延長できます)と、一定の範囲の家族を介護す
るための累計93日間の休業を取ることを認めています。
労働者は、育児休業については取得したい日の原則1か月前までに、介護休業
は原則2週間前までに、書面で、連続した1回の休業期間を指定することとなっ
ています。
■ 有期契約者の育児・介護休業育児休業と介護休業は、期間を定めて雇用される労働者(1日単位で雇用され
る場合を除きます)も取得できますが、1年以上引き続いて雇用されていて、下
記のような条件を満たすときに限られています。
ただし、勤務継続の見込みがあるかは、契約期間によって形式的に判断するの
ではなく、実質的な更新の可能性によって判断します。
ただし、次の方は取得できる対象から除外されます。
①日々雇用される方
②有期契約ではない場合でも、会社があらかじめ一定の手続をとっていた場合で
・引き続き雇用された期間が1年に満たない方
・申出日から1年(介護休業は93日)以内に雇用関係が終了することが明ら
かな方
・1週間の所定労働日数が2日以下の方
27
育児休業 雇用された期間が1年以上ある�
出生� 1歳� 2歳�
育児休業ができる期間� 勤務継続の見込み�これ以降の勤務がないことが�確実ではない��
介護休業 雇用された期間が1年以上ある�
休業開始� 93日� 93日+1年�
介護休業ができる期間� 勤務継続の見込み�これ以降の勤務がないことが�確実ではない��
育児休業と介護休業も、休業中の給与保障は義務づけられていませんが、雇用
保険の加入者で、一定の条件を満たしている方には、休業前賃金の50%の育児
休業給付金(暫定)、40%の介護休業給付金が支給されます。
■ 不利益取扱いは禁止会社は、育児休業や介護休業を取得しようとしたことや、実際に取得したこと
を理由に、労働者を解雇したり、不利益な取り扱いをしたりすることが禁止され
ています。
また、労働者が休業から復帰した後の扱いを、できるだけ明らかにするよう努
力すべきものとされています。
育児・介護休業法は、業務の都合も考慮して、休業後、労働者を以前の職場や
業務に必ず配置することまでは義務付けていませんが、新しい配置にあたり、そ
うすべき業務上の理由が客観的にないにも関わらず、遠隔地に配置するようなこ
とは、実質的な不利益取り扱いとなり、違法と判断される可能性があります。
このほか育児・介護休業法は、勤務時間の短縮や時間外・深夜労働の免除制度
など、仕事と家庭生活のバランスを取るための措置を実施するよう会社に求めて
います。
育児や介護と仕事の両立をめぐるトラブルについては、労働相談情報センター
や東京労働局の雇用均等室などに相談してください。
28
パートタイム労働者にも最低賃金法は適用されます
事業主は、最低賃金法に基づいて定められた地域別・産業別の最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません。これは、パート・アルバイトなどの雇用形態にかかわらず、全ての労働者に適用されます。最低賃金額は、毎年改定されています。最低賃金には、都内の全産業に適用される「東京都最低賃金」と、特
定の産業に適用される「特定(産業別)最低賃金」があります。
29
最低賃金の名称� 備考欄�時間額�効力発生日�
地域別�
特定(産業別)最低賃金�
東京都最低賃金�
《最低賃金は毎年改定されますので、詳しくは東京労働局 労働基準部 賃金課 03-3512-1614 または、� 最寄りの労働基準監督署までお問合せください。》�
★次のものは最低賃金額に算入されません。� ① 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当� ② 時間外労働、休日労働及び深夜労働に対して支払われる手当� ③ 臨時に支払われる賃金� ④ 賞与など、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金�
837円�
鉄鋼業� 846円�
はん用機械器具、�生産用機械器具製造業�
業務用機械器具、電気機械器具、�情報通信機械器具、時計・同部分�品、眼鏡製造業�
自動車・同附属品製造業、船舶製�造・修理業、舶用機関製造業、�航空機・同附属品製造業�
出版業�
832円�
837円�
H23.10.1
H22.12.31
都内の事業場で働くすべての労働者に適用されます。ただし、下記の特定(産業別)最低賃金も適用される労働者には、いずれか高いほうの最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。�
次の労働者には左の最低賃金は適用されず、東京都最低賃金が適用されます。�・18歳未満又は65歳以 上の者�・雇入れ後6月未満の者で あって技能修得中の者�・清掃または片付けの業 務に主として従事する者�・業務用機械器具、電気 機械器具、情報通信機 械器具、時計・同部分 品、眼鏡製造業の一部 の作業に従事する者�
※時間額欄の金額下欄に 地 を付したものは、地域別最低賃金額が当該特定(産業別)最低賃金額を上回っており、地域別最低賃金が適用されることになります。�
地�
827円�
837円�地�↓�
↓�
832円�
837円�地�↓�
829円�
837円�地�↓�
■ こんな場合は割増を①法定労働時間を超えて働いたときは、原則として(時間外労働)通常の賃金
の25%以上(*)、②法定休日に働いたときは(休日労働)通常の賃金の35%
以上、③午後10時から午前5時までの深夜に働いたときは(深夜労働)通常の
賃金の25%以上を受け取ることができます。
■ 割増賃金の理由が重なる場合は①時間外労働と深夜労働が重なった場合は、両者を合わせて50%以上、②休
日労働と深夜労働が重なった場合は、両者を合わせて60%以上、③時間外労働
と休日労働が重なった場合は、休日労働は時間外労働の概念を含んでいるので、
休日労働に関する規制のみを及ぼして35%以上の割増率になります(次のペー
ジで説明する*の場合、さらに加算されます)。
■ サービス残業はダメ!割増賃金は、法律に基づいて必ず支払われるものですから、採用のときに、割
増賃金はないという約束をしていたとしても、そのような約束は無効になります。
また、労働時間を正確に把握することは、雇い主の義務です。労働者が法定労働
時間を超える残業をしているのを知りながら放置することも違法ですし、割増賃
金も当然に支払わなければなりません。
30
私の勤め先は、残業をしても残業代がまったく支払われません。みんな長く勤めたいので、我慢しています。
割増賃金ってどんなときにもらえるの
①法定労働時間を超えて働いたとき、②法定休日に働いたとき、③午後10時から午前5時までの深夜に働いたときは、割増賃金を受け取ることができます。割増賃金を支払わない雇い主には、罰則もあります。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
12
労働時間の計算は原則として分単位で行います。月ごとの労働時間を合計して
清算するときの端数処理はできますが(30分未満を切り捨て、30分以上を切り
上げる)、1日30分未満の勤務時間を切り捨てるというような、時間計算をする
ことは許されません。
残業したのに、賃金や割増賃金が支払われない不払い残業(サービス残業)は
労働基準法違反です。これを放置しているような雇い主には、労働基準監督署も
厳しい対処をしています。
■ ちょっとだけ注意、「所定外」と「法定外」少しだけややこしい話ですが、あらかじめ決められていた所定の労働時間を超
えて働いたら、必ず割増賃金を受け取れるという訳ではありません。
法律上、割増賃金を受け取れるのは、法定労働時間を超えて働いた時間や、法
定休日に働いた時間に限られます。
たとえば、労働時間の規制の原則どおりの1日8時間が法定労働時間となって
いる事業場で、1日5時間という約束で働いている場合を想定してください。こ
の約束で決めた働く時間は、所定労働時間と呼ばれています。
ある日、1日5時間を超えて働いたとします。その日の労働時間が8時間を超
えたなら、8時間を超えた時間は、法定労働時間を超えているので25%以上の
割増賃金を受け取る権利があります。
しかし、5時間~8時間の残業部分は、所定労働時間を超えていますが法定労
働時間以内です。この時間について、会社は通常の賃金は支払わなければなりま
せんが、25%以上の割増部分については支払わなくてもいいとされています。
労働者は、労働契約や就業規則によって所定労働時間内でも割増賃金を払うと決
められていれば、基準に従って請求できますが、そうでなければ割増賃金を請求
できません。
法定休日(毎週少なくとも1回の休日)と法定外休日の関係についても同様で
す。法定休日に働いた分は、割増賃金を受け取る権利がありますが、法定外休日
に働いた分の割増賃金は、労働契約や就業規則などの基準がどうなっているかに
よって決まります。
*①一定の限度(月45時間など)を超えた時間外労働に25%を超える割増率を
定めるよう努力すること、②月60時間以上の時間外労働の割増率を50%以上
とすることが義務付けられます(②は中小企業には当面適用されません)。
なお、一定の手続をとった場合にこの増額分を有給の休暇として与えることが
できます。
31
現在の職場にパートタイマーとして7年間勤めています。仕事の内容は正社員と変わらないにもかかわらず、『あなたはパートだから!』という理由で、ボーナス・退職金、教育訓練、リフレッシュ休暇などが与えられていません。
①仕事の内容と責任が正社員と同じ、②人事異動の有無や範囲が正社員と同じ、③契約期間に定めがない、の3つの要件を満たせば、パートタイム労働者であっても、賃金、教育訓練、福利厚生などの待遇において、正社員と同じ取り扱いをしなければなりません。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
■ パートの労働条件格差正社員と同じ仕事をしているのに、労働条件や福利厚生に差があれば、不満を
感じるのももっともです。
そこで、パートタイム労働法は、パートタイムで働く人たちの労働条件に格差
をつけることを一定の範囲で禁止し、あるいは正社員と同じ扱いをするよう努力
することを求めています。
■ 正社員と同じ待遇を受けることができる要件パートタイム労働法が適用されるのは、正社員よりも労働時間が短い労働者で
す。「パート」として採用されている場合だけではなく、契約社員やアルバイト
といった採用区分でも、労働時間が正社員より短ければ、この法律の対象になり
ます。
そして、改正パートタイム労働法により、次の3つの要件を満たす場合、パー
トタイム労働者であっても、正社員と同じ取り扱いをしなければなりません。
①職務(仕事の内容と責任)が正社員と同じ
②人材活用の仕組み(人事異動の有無とその範囲)が正社員と同じ
③契約期間を決めず働いている(契約更新を繰り返し、実質的に契約期間を決
めていないのと同じ状態になっている場合も含む)
32
正社員とパートで処遇が異なる13
■ 賃金・教育訓練・福利厚生前記の3つの要件をすべて満たさない場合であっても、賃金・教育訓練・福利
厚生については、できるだけ同じ取り扱いにするよう、会社には一定の努力義務
が課されています。
●賃金
会社は、パート労働者の賃金について、正社員との均衡を考慮し、職務の内容、
成果、意欲、能力、経験等を勘案して決定する努力をしなければなりません。
また、正社員と比較して、パート労働者の職務の内容と一定期間の人材活用の
仕組みや運用などが同じ場合、その期間について、賃金を正社員と同一の方法で
決定するよう努力しなければなりません。
●教育訓練
会社は、パート労働者と正社員の職務の内容が同じ場合、職務を遂行するため
に正社員に実施している教育訓練を、パート労働者にも実施しなければなりませ
ん。
また、上記以外の訓練(キャリアアップのための訓練など)についても、職務
の内容の違いにかかわらず、パート労働者の職務の内容、成果、意欲、能力及び
経験などに応じて実施するよう努力しなければなりません。
●福利厚生
会社は、「給食施設」、「休憩室」、「更衣室」について、パート労働者に利用の
機会を提供するよう配慮しなければなりません。
■ 正社員への転換会社は、パート労働者から正社員への転換を進めるための措置を講じなければ
なりません。
例)正社員を募集するときは、現在雇っているパート労働者に募集内容を知ら
せる。
例)正社員のポストを社内公募するときは、現在雇っているパート労働者に応
募する機会を与える。
例)パート労働者が正社員となるための試験制度を設けるなど、転換制度を導
入する。
33
パートで働いているのですが、正社員には実施されている年1回の健康診断が、パートには実施されていません。
1年以上の雇用継続が見込まれ、所定労働時間が正社員の4分の3以上勤務していれば、正社員と同じように健康診断を受けられます。また、所定労働時間が正社員の2分の1以上の場合は、健康診断を実施することが望ましいとされています。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
■ パートタイム労働者と健康診断会社は、常時使用するパートタイム労働者に対し、労働安全衛生法に定めると
ころにより、健康診断を実施しなければなりません。
そして、「常時使用するパートタイム労働者」とは次の2つの要件を満たすも
のとされています。
①期間を定めないで採用されたか、期間を定めて採用されたときでも1年(深
夜業を含む業務、一定の有害業務に従事する者は6か月)以上引き続き使用
(または使用を予定)されていること。
②1週間の所定労働時間が同種の業務に従事する正社員の4分の3以上である
こと。
また、1週間の所定労働時間が正社員の4分の3未満のパートタイム労働者で
あっても、上記①の要件に該当し、1週間の所定労働時間が正社員の2分の1以
上であれば、健康診断を実施することが望ましいとされています。
なお、実施しなければならない健康診断は次のとおりです。
①常時使用するパートに対しては、雇入れの際に行う健康診断及び1年に1回、
定期に行う健康診断。
②深夜業に常時従事するパートに対しては、当該業務への配置替えの際に行う
健康診断及び6か月に1回、定期に行う健康診断。
③一定の有害な業務に常時従事するパートに対し、採用、その業務への配置替
34
パートタイマーも健康診断を受けられる14
えの際と、その後に定期で行う特別の項目についての健康診断。
④その他必要な健康診断。
■ 健康診断の費用法律によって定められた健康診断は、実施することが会社に義務づけられたい
わば会社の業務ですから、その費用は会社が負担することになります。
これに対し、法律上義務づけられていない健康診断を希望者に実施する場合の
費用負担については、労働契約や就業規則などによって決まることになります。
なお、健康診断を受けてから3か月を経過していない者を採用する場合で、当
該健康診断の結果を提出したときは、会社は健康診断を省略できることになって
います。このため、会社から、採用前に自分で健康診断を受け、その結果を提出
するよう求められることがあります。この費用も、必ず会社が費用負担すべきと
まではいえません。
■ 健康診断とプライバシー会社は、健康診断を実施した際に、結果を従業員に通知する義務があり、その
結果に基づいて、従業員の健康管理や適切な配置転換などの措置を講じなければ
なりません。また、健康診断に関する情報は重要な個人情報であることから、そ
の取り扱いは慎重にし外部に漏れないようにしなければなりません。
なお、勤め先に自分の健康に関する情報を知られたくないため、会社が実施す
る健康診断を受けたくない人もいるかと思います。
この場合は、自分で必要な事項の健康診断を受け、その結果を提出することも
できます。ただし、費用については本人負担にしてもよいとされています。
35
アルバイト先の店長は、『遅刻1回につき日給を半額没収、月3回遅刻をしたら懲戒解雇して、その月の給料を没収する!』と言っています。こういうことって許されるのですか?
労働者の都合で働かなかった分について、給料が支払われないことは仕方ありませんが、就労しなかった程度を超えて減額することや、給料を没収したりすることは許されません。また、懲戒処分として減給する場合も、あらかじめ決められた懲戒規定に従って、適正かつ妥当な範囲で行わなければなりません。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
36
懲戒処分のルール
■ ルール違反の責任と限度遅刻や無断欠勤は非難されるべきことですし、法律的にも、契約上の義務を果
たさなかったことへの責任が発生します。だからといって、会社は何をしてもい
いという訳でもありません。
遅刻や欠勤が会社の責任によるものでない以上、会社はその時間について、給
料を支払う義務はありません。ですから、所定労働時間のうち、働かなかった時
間に応じて、労働契約や就業規則の定めに従って、その分の賃金が減らされるこ
とは仕方がありません。
しかし、遅刻した後で、実際に働いた時間に対応する賃金を減らしたり、没収し
たりすることは、後で説明する懲戒処分として行われる場合を除いてできません。
働かなかった時間に対応する額を超えて給料を減額することは、実質的には労
働基準法が禁止する損害賠償予定にあたると考えられます。あらかじめ労働者が
支払う損害賠償額を決めておいても無効ですし、このような定めをした雇い主に
は、最高で6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられます。
加えて、既に働いた分の給料を支払わないこと自体に、同様に罰則(30万円
以下の罰金)があります。
税金や社会保険料の控除や、会社が労働基準法の定める一定の手続をあらかじ
めとっていた場合を除けば、労働者の意思に反して給料を払わないことはできま
せん。没収するなどの行動は、当然に違法です。
15
■ 懲戒処分のルール多くの企業では、労働者がルール違反をした場合に、就業規則で譴責あるいは
戒告、減給、出勤停止、懲戒解雇などの懲戒処分制度を設けています。
懲戒事由の主なものとしては、業務命令違反、職務懈怠、無断欠勤、信用失墜
行為、職務外非行などがあります。遅刻も、このような制度が対象とするルール
違反行為であると言えるでしょう。
しかし、会社が懲戒処分をするときは、あらかじめ処分の事由、内容と程度を就
業規則や契約に定めておいて、それを労働者に事前に知らせておくことが必要です。
そして処分は、その規定に従って、本人に弁明の機会を与えるなど適正な手続
にのっとって行う必要があります。
さらに、それらの条件を満たす処分でも、不当な目的で行われたり、労働者の
行為と比べて処分の内容が重すぎたりすると、無効とされます。
遅刻は確かに悪いことですが、会社が改善のための指導や警告をしないまま、
数回程度の遅刻という結果だけで懲戒解雇することは、社会的な相当性を超える
と判断されるでしょう。
■ 懲戒処分で減給できる限度懲戒処分として減給を行うことには、労働基準法で上限額が制限されています。
①1回の減給額が平均賃金の1日分の半額を超え、②総額が一賃金支払期(月給
制なら1か月となります)における賃金総額の1/10を超えてはならないとされ
ています。
また、たとえ懲戒解雇されてもやむを得ないような場合でも、既に働いた分の
給料を不支給とすることはできません。たとえ事前に決めてあったとしても、没
収はできないのです。
ただし、退職金については、懲戒解雇のときに支給しないことが就業規則など
で定めてあって、退職金を不支給とするのに十分な非行が労働者にあった場合に
は、支給しないこともできます。
37
労働者に過失がある場合、会社が労働者に損害賠償を求めること自体は違法ではありません。ただし、会社は労働者の働きによって利益をあげており、業務上のリスクを労働者のみに負わせるのは不公平なので、判例では、労働者への責任追及が制限されるケースも多いです。また、損害賠償が認められる場合でも、給料から差し引くことは禁止されています。
アルバイト中に、勤務先のお店の備品を壊してしまいました。お店のルールでは、備品を壊すと1回5,000円が「弁償代」として、給料から差し引かれることになっています。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
■ 全額賠償とは限らない労働者が、故意や過失によって、会社に損害を与えた場合は、損害賠償責任が
発生します。
物を壊すなど、財産上の損害だけでなく、名誉や信用といった形のない利益に
対する損害や、お客さんに損害を与えたために会社が損害賠償をした場合も含ま
れます。
もっとも、会社は労働者の働きによって利益をあげており、危機管理の義務も
あることから、業務上のリスクをすべて労働者に負わせるのは不公平です。
そこで、判例では、多くのケースで損害の全額を労働者に負担させることはで
きないとしています。
具体的には、労働者本人の責任の程度、違法性の程度、会社が教育訓練や保険
に加入するなどの損害を防止するための措置をとっていたかなどの事情を考慮し
て、労働者が負担すべき賠償額が判断されます。
■ 研修費用の返還仕事に必要な研修を受けた労働者が、一定期間内に退職した場合に、その費用
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会社の物を壊したら弁償しなければいけないの
16
の賠償を求めることや、返還すべきことを決めておくのは、原則として、労働基
準法が禁止する損害賠償予定にあたります。このような定めをすることは禁止さ
れていますし、あらかじめ定めてあっても無効です。
ただし、裁判所は、例外的に、海外留学などの仕事に直接結びつかない研修の
費用について、会社がその費用を貸しただけであって、返還を求めることが労働
者の退職の自由を奪わないといえる場合であれば、返還について定めておいても
よいとしています。
■ 給料からの天引きはダメ労働者が、会社に損害賠償責任を負う場合であっても、会社は、一方的に賠償金
の分を差し引いて、給料を支給することは、労働基準法により禁止されています。
したがって、会社は給料を規定どおりにきちんと支払い、その上で労働者に損
害賠償を請求する必要があります。
また、労働契約を結ぶ際に、「備品の破損は1回5,000円を労働者が弁償する」
とするなど、労働者が会社に与えた損害について、あらかじめ賠償額を決めてお
くことも労働基準法違反となります。
■ 懲戒処分のルール前述の損害賠償責任とは別に、会社の秩序に違反する行為については、会社か
ら懲戒処分として、減給の制裁を受けることがあります。
この場合、36ページで説明したように、適正に処分が行われる必要があるこ
とに加えて、減給制裁の場合には、①1回の減給額が平均賃金の1日分の半額を
超え、②総額が一賃金支払期(月給制なら1か月となります)における賃金総額
の1/10を超えてはならないとされています。
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40
・税金や社会保険料は、会社が給料から差し引いて払うことが義務付け られています。その額は、その人の家庭の状況等によって異なります。・交通費は原則として税金がかかりませんが、社会保険料の計算には算 入されます。
・同じ給料額なのに、毎月引かれる税金の額が同僚と違うのはなぜ?・交通費にも税金がかかるの?
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
■ 給料から差し引いて良いもの給料や賞与から、会社が一方的に控除をすることは、禁止されています。あら
かじめ同意があれば控除することもできますが、会社が、従業員の代表者と、控
除を認める協定を結んでいることも必要です。
ただし、これには例外があって、税金と社会保険料については、会社がその額
を給料から控除して納めることが義務づけられているため、従業員が望んだとし
ても、控除しないことはできません。
■ 控除される税金と社会保険料の種類給料から控除される税金は、この後に説明する「所得税」と「住民税」です。
また、社会保険料として控除されるものは、「雇用保険」、「健康保険」、「厚生
年金」の保険料です。
社会保険料は、所定労働時間が一定以上の被保険者になると控除されます。
「雇用保険」については44ページを、「健康保険」については46ページを、
「厚生年金」については48ページを参照してください。
■ 所得税その年の1月1日~12月31日の間に、その人が得た「所得」の合計に応じて、
給料からは何が引かれるの17
41
5%~40%の所得税が徴収されます。
「所得」とは、額面上の収入から一定の控除を引いた後の額をいい、額面上の総
収入額が年間103万円以下の場合は、所得がゼロとなるため(基本的な控除だけ
を使う場合)、所得税はかかりません。
また、扶養している家族がいる場合など、さらに控除を受けられるため、同じ収
入でも、その人の家庭状況によって、税額が異なることがあります。
所得税がかかる収入には様々な種類がありますが、毎月の給料については、会社
が給料の支払い時に社会保険料等の控除後の金額を基に「税額表」で定められた税
金額を控除して納付します(これを「源泉徴収」といいます)。
その1年間に1社だけから給料を受け取っていた人は、年末に、その年の所得税
額の過不足を調整することになっていますが、年の途中で退職したときや、2か所
以上の会社で働いているとき、給料の他にも収入があるとき、税金を減らせる事情
があるときなどは、自分で「確定申告」をして、過不足を調整することになってい
ます。
毎年あるいは会社を辞めたときに渡される「源泉徴収票」は、確定申告のときに
必要となる大事な書類です。
なお、通勤手当には原則として所得税はかかりませんが、通勤に必要な額を超え
て支給されているものや、月10万円を超える部分には、所得税がかかります。
所得税について詳しく知りたいときは、国税庁のホームページを参照するか
(http://www.nta.go.jp/shiraberu/index.htm)、最寄りの税務署に相談してくだ
さい。
■ 住民税住民税は、所得税と違って、「その前年」の所得に対して、原則10%(都道府
県民税6%+市町村<特別区>税4%)+αで計算される税金を支払うことにな
っています。
この「+α」は、住んでいる市町村、特別区ごとに、若干異なります。継続的
に給料を支払っている会社は、従業員の給料から住民税を控除して納めることに
なっています(「特別徴収」といいます。確定申告のときに、自分で納める「普
通徴収」を選ぶこともできます)。
住民税は、所得が一定額以下の人にはかからないほか、その人の住んでいる市町
村、特別区の税額(その年の1月1日の住所地です。会社の所在地ではないことに
注意してください)、扶養している家族の状況などで、個人ごとに異なります。
住民税について詳しく知りたいときは、お住まいの市町村または特別区の住民
税担当部署に、相談してください。
配達のアルバイトをしているのですが、配達中、トラックに追突され足を骨折しました。治るまで仕事ができず、収入がなくなってしまい困っています。
仕事中の怪我については、労災保険で、無料の治療や、働けなかった分の給料の約8割相当の保険給付などを受けられます。労災保険は、アルバイトや日雇いの方も含め、どのような雇用形態であっても、労働者であれば適用され、保険料は全額会社が負担します。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
■ 労災保険とは労災保険は、労働者が仕事の上で怪我をしたり、病気にかかったり、不幸にも
死亡したり(業務災害)、また、通勤の途中で事故等にあって怪我をした時(通
勤災害)などに、国が事業主に代わって、必要な給付を行う保険です。
パートや日雇いなどの雇用形態にかかわらず、労働者を一人でも雇用していれ
ば加入が義務付けられ、保険料は全額会社が負担します。会社が加入手続きを怠
っている場合でも、労災保険から保険給付を受けることができます。
この保険は、事業主や労働者の意思にかかわらず、また保険料を納付している
か否かにかかわらず、強制的に加入する制度となっています。
ですから、「うちは労災に入っていない」ということはありません。このよう
なケースは、事業主が本来支払うべき保険料を納付していないというだけですか
ら、過去の保険料の不払いについて事業主が責任を負うことはありますが、労働
者は労働基準監督署で手続を取れば、通常通り保険からの給付を受けられます。
■ 業務災害にあたるかどうかの判断「会社が労災を認めない」といわれることがありますが、労災にあたるかどうか
は、労働基準監督署長が判断するのであって、会社が決めることではありません。
申請時に会社も労災と認めていると事後の手続きがスムーズになりますが、会
42
仕事中に怪我をしたら労災で補償される18
社が証明を拒否しても、申請後に、監督署が事情を確認して判断します。
そして、業務災害として労災認定をするには、次の2つの要件を満たす必要が
あります。
①業務遂行性
労働者が労働契約に基づいた事業主の支配下にある状態(作業中だけでな
く、作業の準備行為・後始末行為、休憩時間中、出張中などの場合にも「業
務」とみなします)において、発生した負傷・疾病等であること。
②業務起因性
業務と傷病等との間に一定の因果関係が存在すること。
業務が原因で発症した疾病であるかどうかの判断が難しいものもあるの
で、業務上の疾病(職業病)の範囲は法令で定められています。
■ 仕事上の病気や怪我について受けられる補償治療にかかる費用は、労災保険から支給されます。
病院の窓口で、仕事中の怪我であることを伝えたうえで、治療を受けてくださ
い。治療を受けた病院が、労災指定病院なら、病院から労働基準監督署に直接、
治療費の請求が行われるので、窓口での支払いは不要です。労災指定病院でなけ
れば、いったん全額を負担した後、領収証などを添付して労働基準監督署に費用
償還の手続きをします。
労災保険の手続きは会社で行うケースが多いと思いますが、会社を通さずに労
働者本人が労働基準監督署に行き、申請手続きをすることもできます。
次に、休業補償として働けなかった日数分の給料の約8割が支給されます。
ただし、働けなくなった日から4日目以降の休業が支給の対象で、最初の3日
間の休業については、労災保険は適用されません。この部分については、会社が
平均賃金の6割以上を補償することになっています。
労災保険による給付を受ける権利は、原則として、業務や通勤による事故によ
って治療を受けた日や休んだ日から2年間(後遺障害や死亡の場合の給付につい
ては5年間となる場合もあります)以
内に申請しないと、時効で消滅して
しまうので、注意してください。
43
■ 雇用保険の失業給付とは雇用保険の失業給付とは、雇用保険の被保険者が、倒産、定年、自己都合等に
より離職し、失業中の生活を心配しないで、新しい仕事を探し、1日も早く再就
職するために支給されるものです。
なお、雇用保険の給付の中には、育児・介護休業中に賃金がもらえない場合に
支給される「育児休業給付」、「介護休業給付」や厚生労働省が指定する教育訓練
を受けた場合に費用の一部が支給される「教育訓練給付」など、失業しなくても
受けられるものがあります。
■ 失業給付を受けるためにはパート・アルバイト、契約社員、派遣社員などの雇用形態にかかわらず、1週
間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用されることが見込ま
れていれば、原則として雇用保険の被保険者になります。
そして、雇用保険の被保険者が失業給付を受給するには、次の2つの要件を満
たす必要があります。
①ハローワークに行って、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意
思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワ
44
パートの勤務時間を増やしたら、「雇用保険料」が毎月給料から天引きされるようになりました。パートでも仕事を辞めたら「失業給付」がもらえるのかなあ?
仕事を辞めたらハローワークへ
次の要件を満たせば、会社や労働者の意思にかかわらず、原則として雇用保険に入ることになります。①1週間の所定労働時間が20時間以上であること②31日以上引き続き雇用されることが見込まれること雇用保険に入っていると、ハローワークで手続きすることで「失業給付(基本手当)」その他のいろいろな手当がもらえます。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
19
ークの努力によっても就職できない「失業」の状態にあること。
②離職前の2年間に、11日以上働いた月が12か月(会社側の理由により離職
した場合、会社側の都合またはやむを得ない理由で契約の更新がされなかっ
た場合は、離職前1年間に11日以上働いた月が6か月)以上あること
これらの要件を満たせば、およそ給料の5割~8割が支給されます。
支給される期間は、被保険者期間、年齢、離職理由、障害の有無などにより異
なり90日~360日となっています。
■ 離職したら住所地のハローワークへ失業給付の手続きは、勤めていた会社がしてくれるものではなく、本人が行い
ます。
仕事を辞めたら、会社から渡された雇用保険被保険者証、離職票などの必要書
類を持って、あなたの住所を管轄しているハローワークに行きましょう。受給要
件、受給金額、受給期間などには細かいルールがあるので、わからないことや疑
問点は、ハローワークの窓口で相談してください。
また、被保険者の要件を満たしているのに、会社が雇用保険に加入させておら
ず、被保険者になっていなかったといったトラブルがしばしば起こっています。
このような場合、被保険者の要件を満たしている証拠があれば、遡って雇用保
険が適用される制度があります。こちらも、詳しいことはハローワークに相談し
てみてください。
45
■ いざというときの備えすべての人が安心して医療サービスを受けられるように、日本国内に住む人は、
必ず公的な医療保険に入ることになっています。
病院などで診察や治療を受けると、実際にはかなりの費用がかかります。
しかし、窓口で保険証を提示すると、本来払うべき費用の3割で済みます。残
りの7割は病院などが保険機関に請求します。
また、健康保険の給付に「傷病手当金」と「出産手当金」の支給があります。
傷病手当金は、病気やケガのため仕事を休んで、その結果、賃金が得られなか
ったときに、4日目から最大1年半の間、給料のおよそ3分の2が支給される制
度です(なお、仕事上の病気や怪我、通勤途中の怪我は、労災保険で扱うことに
なっています)。
出産手当金は、出産のために仕事を休んだ場合に、予定日の6週前から出産日
の8週後まで、給料のおよそ3分の2が支給される制度です。
これらの制度は、同じ公的医療保険でも、主に自営業者が加入する「国民健康
保険」にはないので、健康保険の特徴の1つといっていいでしょう。
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1日6時間、週4日のパートで働いています。店長に、健康保険に加入できるかを尋ねたら、『うちの会社では、正社員だけだ!』と言われました。
パートタイマーも健康保険に入れる
次の要件を満たせば、原則として、会社や労働者の意思にかかわらず、健康保険に入ることになります。①1日または1週間の所定労働時間が、おおむね正社員の4分の3以上 であること。②1か月の所定労働日数が、おおむね正社員の4分の3以上であること。健康保険の給付には、傷病手当金や出産手当金など、国民健康保険にはない給付制度もあります。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
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■ 健康保険の被保険者国民健康保険は、主に自営業者が加入するのに対し、健康保険は、勤め人が加
入する保険です。
健康保険は、勤め人であって、1日または1週間の所定労働時間及び1か月の
所定労働日数が、正社員のおおむね4分の3以上であれば、パート・アルバイト、
派遣社員、契約社員などの雇用形態にかかわらず、加入することになります。
この要件を満たした者については、会社や労働者の意思に関係なく、会社が加
入手続きを取る義務があります。労働者が入りたくないからといって入らないと
いうことも認められません。
ただし、従業員5人以下の個人事業所で働く場合や、契約期間が2か月以下で
更新しなかった場合など、一定の場合に加入できないこともあります。
■ 上記の要件を満たさない場合この場合、年収が130万円以上であれば、原則として国民健康保険の被保険
者になります。
年収が130万円未満の場合は、家族が健康保険に加入していれば、原則とし
て健康保険の被扶養者となります。家族が健康保険に加入していなければ、国民
健康保険の被保険者になります。
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■ 20歳になったら国民年金日本国内に住んでいる20歳~60歳の人は、国民年金の被保険者になっています。
国民年金は、老後の生活だけでなく、身体に障害が生じた場合の生活や、本人が
死亡した後に残された家族の生活を保障するために、一定の生活費が支給される
公的な制度です。
国民年金の保険料を納めていないと、自分の身にもしものことが起こっても、
年金が支給されなかったり、減額されたりします。
経済的な事情などで保険料を払えないときは、保険料の免除や減額、延納の制
度もあります。この手続きをしておけば、払っていない期間があっても、年金の
減額などの不利益が小さくなります。住んでいる場所の市(区)町村役場の国民
年金担当窓口で申請をしてください。
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パートですが、ほとんど毎日フルタイムで働いているので、店長に『会社の厚生年金に入りたい』と言ったところ、『保険料が控除されるので損だ!』と言われました。
厚生年金は国民年金のプラスアルファ
次の要件を満たせば、原則として、会社や労働者の意思にかかわらず、厚生年金に入ることになります。①1日または1週間の所定労働時間が、おおむね正社員の4分の3以上 であること。②1か月の所定労働日数がおおむね正社員の4分の3以上であること。厚生年金は、国民年金にプラスアルファの保障をする公的な年金制度です。保険料は会社が半分負担することになっており、国民年金より厚い保障を受けることができます。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
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■ もっと有利に厚生年金勤め人の場合、国民年金の上乗せ部分としてプラスアルファの保障を受けるこ
とができる厚生年金の制度があります。
厚生年金は、1日または1週間の所定労働時間及び、1か月の所定労働日数が
正社員のおおむね4分の3以上であれば、パート・アルバイト、派遣社員、契約
社員などの雇用形態にかかわらず、加入することになります。会社や労働者の意
思は関係ありません。
ただし、従業員5人以下の個人事業所で働く場合や、契約期間が2か月以下で
更新しなかった場合など、一定の場合に加入できないこともあります。
これらの要件は、前述の健康保険の加入要件と同じです。
要件を満たした者については、会社や労働者の意思に関係なく、会社が加入手
続きを取る義務があります。労働者が入りたくないからといって、入らないとい
うことも認められません。
厚生年金に一定期間加入していると、①原則として65歳から支給される老齢
給付、②病気や事故によって障害が残った場合に支給される障害給付、③その人
が死亡したときに扶養していた妻、18歳未満の子、一定範囲の親族に支給され
る遺族給付といった年金が、支払った保険料に応じて支給されます。
このため、いざというときには、国民年金だけの場合よりも有利な年金を受け
取ることができます。
■ 保険料は会社が半分負担厚生年金の保険料は、給料(標準報酬月額及び標準賞与額)の16.412%を会
社と労働者で半分ずつ負担します(保険料率は平成24年8月分までの数値で、
その後平成29年まで毎年0.354%引き上げられることになっています)。保険
料は、国民年金の保険料分も含まれています。
例えば、月給が100,000円の方ですと、労働者が負担する保険料は月8,200
円程度になります。
国民年金の保険料は15,020円(平成23年度)ですが、その半額程度の保険
料で、国民年金の分と厚生年金のプラスアルファの分の給付を受けることができ
ます。
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■ 約束は守ろう!今結んでいる労働契約に、雇われる期間があらかじめ決められている場合、そ
の期間は仕事を続けなければならないのが原則です。
契約期間が満了した時に辞めることは契約違反になりませんが、契約期間の途
中で辞めてしまうことは、契約違反にあたります。使用者も、労働者も、契約違
反によって相手に損害を与えると、賠償責任を負うのです。
契約期間の途中でも、「やむを得ない事由」で辞めること自体はできるのです
が、その「やむを得ない事由」が本人の過失による場合には、相手に対して損害
賠償責任を負うものとされています。
病気で働けなくなった、家族の介護をしなければならなくなった、配偶者の転
勤により転居しなければならなくなったなど、本人の意思で避けることのできな
い理由で働けなくなった場合は、通常「やむを得ない事由」として本人に過失は
ないと評価できるでしょう。しかし、他の就職先が見つかった、仕事が自分に向
いていない等の理由で辞めることは、もっぱら本人の責任によるものですから、
一方的に辞めれば責任を負うケースも生じるでしょう。
上記のトラブルの事例ですと、「仕事がきつい」という理由が「やむを得ない
事由」であり、労働者に過失がないかどうかを判断することになります。
仕事はどのようなものでもきついものですから、ただ、きついといった漠然と
した理由でなく、どのようにきついのかが判断する際に重要になります。例えば、
このまま仕事を続ければ、健康に支障をきたすとかいった事由があれば、責任は
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契約期間の途中ですが、『仕事がきついので辞めたい』と言ったところ、『辞めたら損害賠償を請求する!』と言われました。
仕事を辞めたくなったら①(雇われる期間が決まっている場合)
やむを得ない事由があれば、契約期間の途中であっても退職できます。ただし、その事由が労働者の一方的な過失によって生じた場合は、損害賠償を請求される可能性があります。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
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発生しないといえるでしょう。
■ 誠意をもって話し合いもし「仕事がきつい」から辞めるということが、労働者側の責任によるもので
ある場合には、雇い主から損害賠償を請求されることがあります。
仕事がきついとか、自分に向いていないとか、給料の額に不満があるとかいっ
た理由による退職は、とかくトラブルが起こりがちです。
しかし、このような労働者の事情で仕事を辞める場合であっても、誠意をもっ
て話し合えば、雇い主は、損害賠償をせずに退職を認めてくれることもあります。
ですから、一方的に辞めると伝えて辞めてしまうのではなく、なるべく早いう
ちに雇い主に相談し、自分の退職の時期、条件などについてよく話し合って、納
得してもらって退職した方がよいでしょう。
■ 契約期間が1年を超える場合労働基準法では、専門的労働者等の一部の例外を除いて3年を超えて労働契約
を結んではならないとされています。
なお、1年を超えて3年以内の労働契約を結んだ場合は、当面の間、働き始め
てから1年が経過していれば、会社に申し出ることにより、いつでも退職できる
こととなっています。この場合、契約期間の途中での退職であっても「やむを得
ない事由」は必要ありません。
■ あらかじめ明示された労働条件と違う場合あらかじめ明示された労働条件と、実際の労働条件が違うときは、いつでも退
職することができます。
このような場合、労働者は仕事を辞めないで、明示された労働条件どおりの扱
いをするよう、雇い主に要求することもできますが、損害賠償責任を負わずに、
すぐに仕事を辞めることもできます。
51
■ 基本はいつでもできる、ただし予告をあらかじめ働く期間が決められている場合と違って、働く期間が特に決まって
いない場合は、どのような理由であっても、自由に会社を辞めることができます。
辞めたいという人を、無理やり働き続けさせれば、雇い主は罰せられます。辞め
させないということは、法律上できません。
ただし、辞めたいという申し出は、原則として辞める日の2週間前まで(月給
制の場合は前月の前半まで)に雇い主にしなければならないと民法で決められて
います。もし、この規定に違反すると、それによって損害が生じた場合に、雇い
主から損害賠償を請求される可能性があります。
退職の申し出は、口頭でも有効ですが、トラブル防止のため、できれば「退職
届」などの書面でした方がいいでしょう。
なお、雇い主の事情で辞めざるをえなくなったとき、または、あらかじめ明示
された労働条件と、実際の労働条件が違うときは、損害賠償責任を負わずにすぐ
に辞めることができます。
■ 目指そう、円満退職会社によっては、就業規則や労働契約の中で、辞める場合に民法の定める期間
よりも長い期間を指定して、予告することを義務づけていることがあります。
しかし、このような定めがあっても、民法のルールに従って退職を申し出れば、
退職の効果は発生します。民法の規定は労働者に退職の自由を保障しているため、
52
契約期間を決めずに働いています。他社への転職が決まり、今の会社をすぐに辞めたいと考えています。いつでも辞めることができますか?
仕事を辞めたくなったら②(雇われる期間が決まっていない場合)
雇い主が認めれば、すぐに退職することができます。雇い主が認めなければ、原則、退職の申し出から2週間経過後に退職が成立します。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
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労働契約や就業規則の規定にかかわらず、民法の規定が優先して適用されると考
えられるからです。民法の規定を超える期間の予告をしなかったからといって、
労働者に損害を請求することは認められないでしょう。
ただし、賃金や退職金の関係では、その会社で定められているルールに従わな
いと、支給条件を満たさないなどの理由で一定の手当が支払われなくなることが
あります。可能ならば、就業規則や労働契約に従って、なるべく早めに、辞める
ことを伝えた方がいいでしょう。
なお、労働者と雇い主が話し合ったうえで、お互いが納得して辞めるのであれ
ば、上記で説明した法律や社内のルールにかかわらず、合意した方法、時期に辞
めることができます。雇い主が応じるようならば、できるだけ話し合って、退職
の条件を決めましょう。
■ 定年と高年齢者の働き方雇われる期間を決めずに働く場合も、多くの会社では定年制を採用しており、
一定の年齢に達すると自動的に退職扱いとなるのが一般的です。
そして、定年制を設ける場合、60歳未満の年齢を定年年齢にすることはでき
ないことになっています。
また、65歳未満の定年制を設けている会社は、①定年の引上げ、②継続雇用
制度の導入、③定年の定めの廃止のいずれかの措置を講じて、高年齢者の雇用を
確保しなければならないことになっています。
なお、②の継続雇用制度とは、現に雇用している高齢者が希望するときは、定
年後も引き続いて雇用する制度をいいます。
継続雇用制度には、定年年齢に到達した者を退職させることなく引き続き雇用
する「勤務延長制度」と、定年年齢に達した者をいったん退職させた後、再び雇
用する「再雇用制度」があり、必ずしも、定年年齢到達時の労働条件をそのまま
維持すべきものとはされていません。
53
■ 契約期間中の打ち切りはダメ雇われる期間があらかじめ決まっている場合は、雇い主も、労働者も、その期
間中、一方的に契約を打ち切ることはできないのが、原則です。
しかし、「やむを得ない事由」がある場合は、契約の期間の途中でも、お互い
に直ちに契約を打ち切ることができます。
あらかじめ定められた期間の途中で一方的に契約を打ち切ることが、雇い主側
の都合でされた場合には、労働者は、働けなくなったことによる損害賠償を請求
できます。
なお、雇い主から、「できれば辞めてもらいたい」と頼まれたのに対して、労
働者が「はい、わかりました」と承諾してしまうと、解雇ではなく合意退職とし
て扱われてしまうことがあります。辞めさせられる理由がないと思うときは、退
職の働きかけに応じないことが重要です。
■ 解雇とはちょっと違う、契約期間の終了契約期間を決めて働いている人に、契約期間終了後、次の契約を結ばないこと
を「雇止め」とか、「更新拒絶」といって、解雇と区別しています。
労働契約に期間を定めているということは、採用時に、契約期間がすぎれば、
54
・契約期間の途中なのに、経営が悪化したという理由で解雇されました。経営が赤字になったら仕方がないのでしょうか?・1年間の契約で働き始めました。私は、ずっと働こうと思っていたのに、雇い主は『次の契約はしない!』と言っています。次の契約を結 んでくれなかったら、解雇になるのですか?
仕事を辞めてほしいと言われたら①(雇われる期間が決まっている場合)
・原則として、契約の期間中に辞めさせられることはありません。・契約が終了した後に、次の契約が結ばれないことは、解雇ではありません。ただし、一定の場合に、会社は解雇に準じた規制を受けることがあります。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
24
自動的に契約が終了することを雇い主と労働者が合意していたということです。
そのため、雇止め、更新拒絶には解雇に関する規制は、原則として適用されま
せん。
ただし、契約更新を何度も繰り返し、「期間の定めのない契約と実質的に異な
らない」状態や、「雇用関係はある程度の継続が期待されている」状態に至った
場合は、解雇に関する規制が、類推適用されます。
このような場合、客観的に合理的な理由に基づき社会通念上相当であると認め
られる場合でなければ、雇い主は、雇止め、更新拒絶をすることはできません。
有期労働契約の締結、更新、雇止めに関しては、トラブルが多いことから、こ
れらの防止や解決を図るため、厚生労働省は雇い主に対し次のような指導をして
います。
①契約を結ぶときに更新があるかないか、ある場合には更新の基準を明示する
こと。
<3回以上更新された契約や1年を超えて継続勤務している労働者について>
②契約終了の30日以上前に更新しないことを伝えること。
③労働者から雇止めの理由についての証明書を請求された場合は、証明書を交
付しなければならないこと。
④労働者の希望に応じてできるだけ長い契約期間を定めるよう努力すること。
■ 納得できなかったら早めに相談を契約期間満了後の「雇止め」ができるかどうかは、一律の基準があるわけでは
なく、採用時の説明、更新の状況、会社と労働者本人の事情などを総合的に考慮
するものとされています。
「雇止め」の通告に納得できないときは、早めに、労働相談情報センターや労
働組合などに相談しましょう。
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■「解雇」と「合意退職」は違う雇い主が、労働者との間の契約関係を一方的に打ち切ることを、「解雇」とい
います。
これに対して、雇い主から「できれば辞めてもらいたい」と頼まれ、それを受
け入れてしまうと、解雇ではなく、合意退職となってしまいます。
解雇は、合理的な理由がなければ無効になりますが、合意退職は本人が同意し
たうえでの退職なので、合理的な理由はなくとも有効になってしまいます。
辞めさせられる理由がない、あるいは辞める気がないならば、そのことを雇い
主に伝え、撤回を求めてください。それで解決できないならば、労働相談情報セ
ンターなどに相談しましょう。
■ 確かめよう、解雇の理由「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当」でなければ、解雇は無
効と法律で定められています。
たとえば、労働者が重大な業務命令違反や職場規律違反をした、心身の故障な
どによって働けなくなった(業務災害を除く)などの事情は、合理的な解雇理由
になるといえます。
これに対し、事実に反する理由や、本人に責任のない理由は客観的に合理的な理
由とはいえません。また、些細なミスを理由とする解雇や、能力不足で猶予や改善
措置をとらずに解雇することも、社会通念上相当といえず、無効になります。
56
契約期間を決めずに働いています。仕事でちょっとしたミスをし、お客さんを怒らせてしまいました。上司から『責任を取って辞めろ!』と言われました。
仕事を辞めてほしいと言われたら②(雇われる期間が決まっていない場合)
客観的に合理的な理由のない解雇は無効となり、職場復帰を求めることができます。また、無効な解雇によって働けなかった期間の給料や損害賠償などを、雇い主に請求できます。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
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また、会社の経営悪化によって人を減らさなければならないときも、一定の条
件がなければ解雇はできません。
そのほか、仕事が原因の怪我や病気により休んでいる期間と復職後30日間の
解雇、産前産後休業の期間と復職後30日間の解雇、女性であることや組合員で
あることなどを理由とする解雇なども法律によって禁止されています。
解雇が無効であれば、職場復帰を求めることはもちろんのこと、無効な解雇に
よって働けなかった期間の給料や損害賠償などを、雇い主に請求できます。
■ いきなり解雇は問題あり客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当で、その他の法律違反がなく、
解雇が有効になる場合であっても、解雇をするには一定の手続が必要です。
雇い主は、解雇する日の30日以上前に、あらかじめ労働者に対して、解雇す
ることを伝えなければなりません。30日に足りない場合は、その日数分平均賃
金を支払わなければなりません(解雇予告手当)。
ただし、天災などによる事業の廃止や、労働者にすぐに解雇されても仕方のな
い理由があると労働基準監督署長が認めた場合と、一定の範囲の人(*)は、解
雇予告の対象から除外されます。
このほか、労働者が解雇の理由が記載された証明書を請求した場合、雇い主は
遅滞なく交付しなければならず、労働者が賃金の支払いや自分の金品の返還を請
求した場合、雇い主は7日以内に引き渡さなければならないことになっています。
*次の人は、解雇予告の対象から除外されます。
①1日単位で雇われる人(1か月を超えて継続して勤務している場合を除く)
②2か月以内の期間を定めて雇われている人(その期間を超えて継続して勤務
している場合を除く)
③季節的業務に4か月以内の期間を定めて雇われている人(その期間を超えて
継続して勤務している場合を除く)
④試用期間中の人(14日間を超えて継続して勤務している場合を除く)
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■ セクシュアルハラスメント雇用機会均等法は、職場の中でセクシュアルハラスメントの被害が発生しない
よう、事業主が、積極的に予防措置と事後対応を取ることを義務づけています。
防止すべきものとされているセクシュアルハラスメントは、性的な要求を拒否
したことを理由に、職場で不利益な取り扱いをする「対価型」だけでなく、加害
者の利益に関係なく、性的な言動によって職場環境を悪くする「環境型」のハラ
スメントも含まれています。
事業主は、労働者にあらかじめ被害への対応方針や相談窓口を設置して知らせ
るとともに、被害の申し出があった場合は、事実を調査して今後の被害を防止し、
加害者・被害者に対する適切な対応を取ることが求められています。
職場でのセクシュアルハラスメントは、「個人の問題」ではすまない問題です。
適切な対応を怠った事業主に対しては、国の行政機関(労働局)による助言・指
導等が行われます。
また、被害者は加害者に損害賠償を請求できるだけではなく、雇い主に対して
も、加害者の使用者として、あるいは被害者本人への適切な環境整備を怠った義
務違反として、損害賠償を請求することができます。
セクシュアルハラスメント問題で悩んだときは、労働相談情報センターや東京
労働局の雇用均等室などに相談してください。
上司から仕事の配分で差別されたり、大声で怒鳴られたりして、精神的に参っています。どこに相談したらよいのでしょうか。
ハラスメントへの対応
性差別以外のハラスメントでも、職場での不適切な言動について、会社は被害の発生を防止する義務がありますし、被害が生じたときは、損害賠償責任を負います。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
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■ パワーハラスメント性的な嫌がらせや、労働組合活動への会社からの嫌がらせなどについては、被
害防止と救済のための制度が法律上定められていますが、いわゆる「パワーハラ
スメント」については、なにか特別な法律があるわけではありません。
しかし、社会通念上許される範囲を超えて、相手の人格や尊厳を傷つける言動
をすることは違法であり、被害者への損害賠償責任が生じます。
職場では、業務上の指示や指導のうえで、やや厳しい言動がされることはあり
ますし、労働者本人が不快に感じたからといって全部が違法になるわけではない
のですが、その行動の目的と手段から見て、会社の中で通常行われる範囲を逸脱
した業務上の指示や対応であれば、違法なハラスメントになります。
部下や同僚を業務上の必要性がないのに、あるいは退職に追い込むなどの不当
な目的をもって継続的に叱責したりすることは、社会通念上許されないでしょう。
その言動自体は業務の範囲といえるものでも、嫌がらせや見せしめなどの目的で、
業務上の権限を使うことも許されません。裁判例には、一人だけ炎天下の作業を
命じたり、差別的に業務配分をしたりすることを違法としたケースがあります。
さらに目的が正当であっても、暴力を振るうことはどんな場合でも違法ですし、
言葉のうえでの対応も、社会的に許される範囲を超えて、著しく労働者の人格や
尊厳を傷つけるものは違法になります。
■ 違法なハラスメントに対する対応職場で違法なハラスメントを受けた被害者は、セクシュアルハラスメントと同
様に、加害者本人や雇い主に対する損害賠償請求ができます。
また、これによって健康被害が生じた場合は、業務災害として、労災保険から
の給付が受けられます。
社内でのハラスメント被害を止めるためには、抗議できるならば本人に中止を
求めるとともに、一人だと対応が難しいようであれば、まずは上司や同僚、労働
組合など、社内の信頼できる方に相談してください。
社内の対応が難しいときには、労働相談情報センター、東京労働局などの行政
機関や、個人で加入できる労働組合(合同労組)に相談するのもよいでしょう。
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派遣先から中途解約を告げられた
■ 派遣社員とは派遣社員は正社員、契約社員、パート・アルバイトなどの働き方と違って、実
際に仕事をする会社(派遣先)と労働契約を結ぶのではなく、人材派遣会社(派
遣元)と労働契約を結びます。
仕事の指示は直接派遣先から受けますが、労働契約は雇い主である派遣元と結
んでいるので、給料の支払い、社会保険・雇用保険の加入などもすべて派遣元か
らということになります。
派遣先は、派遣元と労働者派遣契約を結び、派遣社員から労務の提供を受け、
その対価として派遣元に派遣料金を支払います。派遣元は、派遣料金の中から派
遣社員に給料を支払います。
たとえ、派遣先が派遣料金の支払を滞納している場合であっても、派遣元は、
雇い主として派遣社員に給料を支払わなければなりません。
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派遣社員ですが、派遣先から『もう来なくていい!』と言われました。仕事を辞めなければならないのでしょうか。
派遣社員と派遣先の間に、労働契約の関係はありません。したがって、派遣先が派遣社員を解雇することはありえません。また、派遣元と派遣先の労働者派遣契約が中途解約になった場合でも、派遣元と派遣社員との労働契約は存続します。
派 遣 元�(人材派遣会社)�
派 遣 社 員�
派 遣 先�(仕事をする会社)�
�
労働者派遣契約��
派遣料金�労務の提供�
指揮命令関係�
給料�
労働契約�
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
27
■ 派遣先は派遣社員を解雇できない解雇は、雇い主による一方的な労働契約解除の意思表示ですので、労働契約が
あることが前提になります。
しかし、派遣社員は派遣元と労働契約を結んでいるのであって、派遣先とは労
働契約関係にありません。
ですから、派遣先は派遣社員を解雇することはありえません。派遣社員が解雇
されてもやむを得ないような問題を派遣先で起こした場合は、派遣元が解雇する
ことになります。
また、派遣社員に解雇されてもやむを得ないような事由がない場合でも、派遣
先の都合(経営状況の悪化、事業の終了など)で、派遣先と派遣元の労働者派遣
契約が中途解約されることがあります。
このような場合でも、派遣元と派遣社員の労働契約は続いています。結果的に
それまでの派遣先で仕事をできなくなったからといって、派遣元がその派遣労働
者を当然に解雇できるわけではありませんから、別の派遣先の就労を確保しなけ
ればなりませんし、仕事がないため休業となるなら、「休業手当」(16ページ参
照)を支払わなければなりません。
なお、厚生労働省の指針は、派遣社員の雇用を安定させるため「新たな就業機
会の確保を図ること」を派遣元、派遣先の双方に求めています。
■ 就業条件明示書の確認を派遣元は、派遣社員が派遣就業を開始する前に、仕事の内容や労働条件につい
て記載された書面を、派遣社員に交付しなければなりません。この書面は「就業
条件明示書」(63ページ参照)と呼ばれていますが、前述の労働条件通知書
(14ページ参照)と一体にしたものを交付されることもあります。
書面には、「労働者派遣契約が解除になった場合の措置」について記載があり
ます。派遣契約が解除になったら、そちらの記載内容に従うのが原則です。
ただし、労働条件の最低限度を定めた労働基準法の基準を下回る記載は、無効
になります。
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■ 契約内容と実際の業務が違ったら派遣元は、派遣社員が派遣就業を開始する前に、就業条件明示書を交付して、
派遣先での就業条件を明示しなければなりません。派遣先は、就業条件明示書に示された業務内容の範囲を超えて指示を出すこと
はできません。派遣社員は、就業条件明示書で示された業務内容以外の仕事を命じられても、これに従う義務はありません。派遣社員は、契約内容と実際の労働条件が異なっていたときには、即時に派遣
元との労働契約を解除することができますが、解約しないで働き続けたいという場合には、派遣先に就業条件明示書で示された契約内容を守ってもらえるように、派遣元責任者を通じて派遣先へ申し入れてもらうとよいでしょう。
■ 苦情は誰に聞いてもらえる?派遣労働は、雇い主と労務の提供先が異なるため、トラブルが生じることが少
なくないことから、派遣元、派遣先双方に苦情処理担当者を置くことになっています。そして、派遣社員から苦情の申し出を受けた場合、派遣元と派遣先は密接に連携をとり、誠意をもって速やかに対応しなければなりません。苦情処理担当者が誰であるかは、就業条件明示書により確認できますので、ト
ラブルや疑問点があれば、まず聞いてみてください。それでも、解決が難しければ、労働相談情報センターや東京労働局の需給調整
事業部、個人で加入できる労働組合などに相談してみましょう。
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派遣社員ですが、派遣先から契約内容以外の仕事を指示されます。派遣元に伝えても、『派遣先はお客さんだから…。』と言って取り合ってもらえません。
派遣先から契約以外の仕事を指示された
派遣社員は、就業条件明示書などで示された業務内容以外の仕事を命じられても、これに従う義務はありません。また、派遣中の労働者からの苦情・相談は、派遣元の責任者、派遣先の責任者の両方が対応しなければならないことになっています。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
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就業条件明示書�
事業所、部署名�
所在地(電話番号 )�
就業日�
就業時間 時 分 から 時 分 まで�
(うち休憩時間 時 分 から 時 分 まで)�
時間外労働(無/有)→(1日 時間/週 時間/月 時間)�
休日労働(無/有)→(1月 回)�
申出先 派遣元:職名 氏名 (電話番号 )�
派遣先:職名 氏名 (電話番号 )�
平成 年 月 日 から 平成 年 月 日 まで�
職名 氏名�
職名 氏名 (電話番号 )�
職名 氏名 (電話番号 )�
殿�
平成 年 月 日 �
事業所 名 称�
所在地�
使用者 職氏名 印�
次の条件で労働者派遣を行います。�
業 務 内 容 �
就 業 場 所 �
指 揮 命 令 者 �
派 遣 期 間 �
安 全 及 び 衛 生 �
派 遣 元 責 任 者 �
派 遣 先 責 任 者 �
備 考 �
就業日及び就業時間�
時間外労働及び休日労働�
福利厚生施設の利用等�
苦情の処理・申出先�
派遣契約解除の場合の措置�
(派遣先が派遣受入期間の制限に抵触する日)平成 年 月 日�
�
■ 派遣労働でできる仕事とできない仕事派遣労働は、平成16年の法改正により、原則自由になりました。現在では、
営業や販売も含めて、ほとんどの仕事で派遣労働が可能になっています。
ただし、次の仕事は、派遣労働ができない業務になっています。
①港湾運送業務
②建設業務
③警備業務
④病院等における医療関係業務
(ただし、紹介予定派遣・産休等代替・へき地の医師を除く)
⑤弁護士・税理士等のいわゆる「士」業務(一部例外あり)
■ 派遣受入期間の制限のある業務は最長3年まで派遣労働でできる仕事は、派遣先における派遣社員の受入期間に制限のある業
務と、派遣先における派遣社員の受入期間に制限のない業務とがあります。
そして、派遣受入期間の制限のある業務では、派遣社員の受入期間は、原則と
して1年、最長で3年となっています。
派遣先は、この期間を超えて派遣社員を使うことはできません。異なる派遣社
員を使ってもダメです。もし、それ以降も従業員が必要なら、派遣社員ではなく
直接雇わなければなりません。
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派遣社員として働いて、数か月の契約を繰り返し更新しています。将来は正社員になりたいけど、そういう制度ってあるのかなあ?
派遣社員から正社員になれる制度ってあるの
派遣受入期間の制限のない業務については、3年間継続して働くと、派遣先に直接雇用される制度があります。また、派遣先に直接雇われることを前提に、一定期間派遣社員として勤務する紹介予定派遣の制度もあります。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
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派遣受入期間の制限のある業務は、下記の派遣受入期間の制限のない業務以外
の業務になります。
派遣受入期間に制限のない業務
①専門的知識・技術が必要な業務、特別の雇用管理を必要とする業務で、政令
に定められた26種類の業務
②事業の開始、転換、拡大、縮小、廃止のために必要な業務で、3年以内に終
了することが予定されている業務
③1か月間の勤務日数が正社員の半分以下で、かつ10日以下である業務
④産前産後・育児・介護休業を取得する社員の代わりとして行う業務
■ 派遣受入期間の制限のない業務を3年続けると直接雇用も上の派遣受入期間に制限のない業務については、派遣先は派遣社員を継続的に
使用することができます。
ただし、3年を超えて継続勤務している派遣社員がいて、同じ仕事をさせるた
めに別の労働者を直接雇おうとする場合、派遣先は、まず、その派遣社員に雇用
申し込みをしなければならないことになっています。
そして、派遣先からの雇用申し込みを受けた派遣社員は、希望すれば直接雇用
されることになります。ただし、必ずしも正社員になるとは限らず、契約社員や
パート・アルバイトといった雇用形態になることもあります。
■ 紹介予定派遣から直接雇用へ紹介予定派遣とは、派遣期間終了後に派遣先の会社に直接雇われることを前提
にした派遣スタイルです。
紹介予定派遣の派遣期間は最長6か月です。派遣期間終了時に、派遣社員が直
接雇われることを希望し、派遣先が直接雇うことを希望すれば、その後、派遣社
員は派遣先の社員となります。
ただし、正社員として直接雇用されるとは限らず、契約社員やアルバイトとし
て直接雇用されることもあります。
紹介予定派遣を活用することによって、派遣社員は派遣先の仕事の内容や会社
の雰囲気を理解した上で就職することができ、派遣先は、派遣社員の適性、能力
をじっくり見極めたうえで、その派遣社員を直接雇用するかどうかを判断するこ
とができるというメリットがあります。
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■ 労働組合の役割労働組合は、労働者が自分たちで労働条件を維持し、改善するために結成する
団体です。労働組合を作り、労働条件に関して、雇い主に交渉・要求する権利は、
憲法の基本的人権のひとつとして認められていますし、労働組合法などの法律に
よって、特別な保護を受けています。
■ 組合活動を理由とする不利益な取り扱いはできない労働組合を作ろうとしたこと、加入したこと、あるいは組合に入って正当な活
動をしたこと等を理由に、雇い主が、組合員に解雇や懲戒、仕事の上での嫌がら
せなどの不利益な取り扱いをすることは違法です。
そのほか、雇い主が、一定の組合だけを差別したり、特定の労働組合に入らな
いよう呼び掛け、あるいは脱退するよう求めたりすること、脱退しないと不利益
があることを告げることも違法です。労働者には、労働組合への加入やその活動
について、会社から干渉を受けない自由があります。
そうはいっても、ストライキなどの争議行為を行っているときを除けば、会社
の敷地内の行動や、就業時間中の行動の規制については、原則として会社の決定
が優先しますので、注意してください。許可なく敷地内でビラを配布したり、就
業時間中に組合活動を行ったりすると、懲戒処分の対象となることがあります。
パートや派遣社員も労働組合に入れるの?
勤め先で事業再編が計画されているらしいのですが、私たちパートには何の情報もなく、どうなるか不安です。労働組合は、私たちの声も聞いてくれるのでしょうか?
社内の労働組合に加入できないのであれば、新たに自分たちで労働組合を作ったり、社外の労働組合に加入したりすることもできます。
どうなる?こんなトラブル!
これがルール!
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■ 話し合いは使用者の義務労働者の所属している労働組合が、労働条件について交渉を求めた場合、雇い
主や、雇い主と同じ権限を持っている者(派遣先など)は、正当な理由なしに、
その交渉を拒否することができません。
労働組合はこの交渉を通じて、雇い主と合意できれば、労働協約と呼ばれる合
意を結んで問題の解決を図ります。労働者にとって、自分に味方してくれる労働
組合があることは、心強い後ろ盾になるのです。
■ 労働組合を助ける特別な制度雇い主から、組合活動に関して不当な取り扱いを受けた組合員や、交渉を正当
な理由なく拒否されたり、活動への介入を受けたりした労働組合は、そのような
行動をとった雇い主に対し、裁判を通じて受けた損害の回復を求めることができ
ます。同時に、「都道府県労働委員会」に申し出て、違法な取り扱いをやめるよ
う、あるいは違法な取り扱いが起こる前の状態に戻すよう命令してもらうことも
できます。労働委員会は、申出があると、当事者の言い分を聞き、調査したうえ
で、理由があると認めたときに、雇い主に対する「不当労働行為救済命令」を出
します。
労働委員会は、組合の設立全般についての窓口となっているほか、雇い主と労
働組合の間で起こった紛争の解決を手伝っています。
■ 組合に入るにはある労働組合が一定範囲しか組合員にしないとすることも、基本的にはその組
合の自由ですから、既存の労働組合に当然入る権利があるわけではありません。
ただし、日本の多くの企業では、正社員で作った組合が社内にひとつだけ存在
することが多いものの、新たに労働組合を作ることや、企業の外で活動している
労働組合に入ることが法律上禁止されているわけではありませんし、どの労働組
合も平等にあります。
労働組合に入るということは、その組織の一員になるということです。組合全
体の決定に従ったり、組合費を納めたりする義務が発生します。また、労働組合
の方針は、それぞれの組合によって違いますから、自分の考え方にあった労働組
合に加入することが大事でしょう。
労働組合と使用者の間のトラブルは、東京都労働委員会が扱っていますが、労
働相談情報センターでも相談を受け付けています。
(目的)第1条 この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。
(定義)第2条 この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。2 この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう。
(労働契約の原則)第3条 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。2 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。4 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それ
を濫用することがあってはならない。(労働契約の内容の理解の促進)第4条 使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。2 労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。
(労働者の安全への配慮)第5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
(労働契約の成立)第6条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。第7条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。
(労働契約の内容の変更)第8条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労
68
労働契約法(抄) 平成20年3月1日施行
働条件を変更することができる。(就業規則による労働契約の内容の変更)第9条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。第10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。
第11条(略)
(就業規則違反の労働契約)第12条 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。
(法令及び労働協約と就業規則との関係)第13条 就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部
分については、第七条、第十条及び前条の規定は、当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については、適用しない。
第14条(略)
(懲戒)第15条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
(解雇)第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
第17条 使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。2 使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。
第18条、第19条(略)
附則(略)
69
(目的)第1条 この法律は、我が国における少子高齢化の進展、就業構造の変化等の社会経済情勢の変化に伴い、短時間労働者の果たす役割の重要性が増大していることにかんがみ、短時間労働者について、その適正な労働条件の確保、雇用管理の改善、通常の労働者への転換の推進、職業能力の開発及び向上等に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを通じて短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、もってその福祉の増進を図り、あわせて経済及び社会の発展に寄与することを目的とする。
(定義)第2条 この法律において「短時間労働者」とは、一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者(当該事業所に雇用される通常の労働者と同種の業務に従事する当該事業所に雇用される労働者にあっては、厚生労働省令で定める場合を除き、当該労働者と同種の業務に従事する当該通常の労働者)の一週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう。
(事業主等の責務)第3条 事業主は、その雇用する短時
間労働者について、その就業の実態等を考慮して、適正な労働条件の確保、教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善及び通常の労働者への転換(短時間労働者が雇用される事業所において通常の労働者として雇い入れられることをいう。以下同じ。)の推進(以下「雇用管理の改善等」という。)に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図り、当該短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるように努めるものとする。2(略)
第4条、第5条(略)
(労働条件に関する文書の交付等)第6条 事業主は、短時間労働者を雇い入れたときは、速やかに、当該短時間労働者に対して、労働条件に関する事項のうち労働基準法(昭和22年法律第49号)第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものであって厚生労働省令で定めるもの(次項において「特定事項」という。)を文書の交付その他厚生労働省令で定める方法(次項において「文書の交付等」という。)により明示しなければならない。2 事業主は、前項の規定に基づき特定事項を明示するときは、労働条件
70
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号)
パートタイム労働法(抄) 平成20年4月1日施行
に関する事項のうち特定事項及び労働基準法第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項以外のものについても、文書の交付等により明示するように努めるものとする。
(就業規則の作成の手続)第7条 事業主は、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする。
(通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止)第8条 事業主は、業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)が当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者(以下「職務内容同一短時間労働者」という。)であって、当該事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているもののうち、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの(以下「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。)については、短時間労働者であることを理由として、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別
的取扱いをしてはならない。2 前項の期間の定めのない労働契約には、反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約を含むものとする。
(賃金)第9条 事業主は、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間労働者(通常の労働者と同視すべき短時間労働者を除く。次条第2項及び第11条において同じ。)の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案し、その賃金(通勤手当、退職手当その他の厚生労働省令で定めるものを除く。次項において同じ。)を決定するように努めるものとする。2 事業主は、前項の規定にかかわらず、職務内容同一短時間労働者(通常の労働者と同視すべき短時間労働者を除く。次条第1項において同じ。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主に雇用される期間のうちの少なくとも一定の期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるものについては、当該変更が行われる期間においては、通常の労働者と同一の方法により賃金を決定するように努めるものとする。
71
(教育訓練)第10条 事業主は、通常の労働者に対して実施する教育訓練であって、当該通常の労働者が従事する職務の遂行に必要な能力を付与するためのものについては、職務内容同一短時間労働者が既に当該職務に必要な能力を有している場合その他の厚生労働省令で定める場合を除き、職務内容同一短時間労働者に対しても、これを実施しなければならない。2 事業主は、前項に定めるもののほか、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力及び経験等に応じ、当該短時間労働者に対して教育訓練を実施するように努めるものとする。
(福利厚生施設)第11条 事業主は、通常の労働者に対して利用の機会を与える福利厚生施設であって、健康の保持又は業務の円滑な遂行に資するものとして厚生労働省令で定めるものについては、その雇用する短時間労働者に対しても、利用の機会を与えるように配慮しなければならない。
(通常の労働者への転換)第12条 事業主は、通常の労働者への転換を推進するため、その雇用する短時間労働者について、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない。一 通常の労働者の募集を行う場合において、当該募集に係る事業所に掲
示すること等により、その者が従事すべき業務の内容、賃金、労働時間その他の当該募集に係る事項を当該事業所において雇用する短時間労働者に周知すること。二 通常の労働者の配置を新たに行う場合において、当該配置の希望を申し出る機会を当該配置に係る事業所において雇用する短時間労働者に対して与えること。三 一定の資格を有する短時間労働者を対象とした通常の労働者への転換のための試験制度を設けることその他の通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずること。2 国は、通常の労働者への転換を推進するため、前項各号に掲げる措置を講ずる事業主に対する援助等必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(待遇の決定に当たって考慮した事項の説明)第13条 事業主は、その雇用する短時間労働者から求めがあったときは、第6条から第11条まで及び前条第1項の規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間労働者に説明しなければならない。
(指針)第14条 厚生労働大臣は、第6条から第11条まで、第12条第1項及び前条に定めるもののほか、第3条第1項の事業主が講ずべき雇用管理の改善
72
等に関する措置等に関し、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この節において「指針」という。)を定めるものとする。2(略)
(短時間雇用管理者)第15条 事業主は、常時厚生労働省令で定める数以上の短時間労働者を雇用する事業所ごとに厚生労働省令で定めるところにより、指針に定める事項その他の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項を管理させるため、短時間雇用管理者を選任するように努めるもめとする。
(報告の徴収並びに助言、指導及び勧告)第16条 厚生労働大臣は、短時間労働者の雇用管理の改善等を図るため必要があると認めるときは、短時間労働者を雇用する事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。2(略)
第17条、第18条(略)
(苦情の自主的解決)第19条 事業主は、第6条第1項、第8条第1項、第10条第1項、第11条、第12条第1項及び第13条に定める事項に関し、短時間労働者から苦情の申出を受けたときは、苦情処理機関(事業主を代表する者及び当該事業所の労働者を代表する者を構成員とする当該事業所の労働者の苦情を処理するための機関をいう。)に対し
当該苦情の処理をゆだねる等その自主的な解決を図るように努めるものとする。
第20条(略)
(紛争の解決の援助)第21条 都道府県労働局長は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。2 事業主は、短時間労働者が前項の援助を求めたことを理由として、当該短時間労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
(調停の委任)第22条 都道府県労働局長は、第20条に規定する紛争について、当該紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第6条第1項の紛争調整委員会に調停を行わせるものとする。2 前条第2項の規定は、短時間労働者が前項の申請をした場合について準用する。
第23条一第46条(略)
(罰則)第47条 第6条第1項の規定に違反した者は、10万円以下の過料に処する。
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第1 趣 旨この指針は、短時間労働者の雇用管理等に関する法律(以下「短時間労働者法」という。)第3条第1項の事業主が講ずべき適正な労働条件の確保、教育訓練の実施、福利厚生の充実その他雇用管理の改善及び通常の労働者への転換の推進 (以下「雇用管理の改善等」という。)に関する措置等に関し、その適切かつ有効な実施を図るため、短時間労働者法第6条から第11条まで、第12条第1項及び第13条に定めるもののほかに必要な事項を定めたものである。
第2 事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるに当たっての基本的考え方事業主は、短時間労働者の雇用管
理の改善等に関する措置等を講ずるに当たって、次の事項を踏まえるべきである。1 労働基準法(昭和22年法律第49号)、最低賃金法(昭和34年法律第137号)、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)、雇用保険法(昭和49年法律第116号)等の労働者保護法令は短時間労働者についても適用があることを認識しこれを遵守しなければならないこと。
2 短時間労働者法第6条から第11条まで、第12条第1項及び第13条の規定に従い、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるとともに、多様な就業実態を踏まえ、その職務の内容、職務の成果、意欲、能力及び経験等に応じた待遇に係る措置を講ずるように努めるものとすること。
3 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるに際して、その雇用する通常の労働者その他の労働者の労働条件を合理的な理由なく一方的に不利益に変更することは法的に許されないこと、また、所定労働時間が通常の労働者と同一の有期契約労働者については、短時間労働者法第2条に規定する短時間労働者に該当しないが、短時間労働者法の趣旨が考慮されるべきであることに留意すること。
第3 事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等事業主は、第2の基本的考え方に
基づき、特に、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
1 短時間労働者の雇用管理の改善等(1)労働時間イ 事業主は、短時間労働者の労働時間及び労働日を定め、又は変更するに当たっては、当該短時間労働者の事情を十分考慮するように努めるものとする。
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事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針
ロ 事業主は、短時間労働者について、できるだけ所定労働時間を超えて、又は所定労働日以外の日に労働させないように努めるものとする。
(2)退職手当その他の手当事業主は、短時間労働者法第8条
及び第9条に定めるもののほか、短時間労働者の退職手当、通勤手当その他の職務の内容に密接に関連して支払われるもの以外の手当についても、その就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して定めるように努めるものとする。
(3)福利厚生事業主は、短時間労働者法第8条
及び第11条に定めるもののほか、医療、教養、文化、体育、レクリエーション等を目的とした福利厚生施設の利用及び事業主が行うその他の福利厚生の措置についても、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮した取扱いをするように努めるものとする。
2 労使の話合いの促進(1)事業主は、短時間労働者を雇い入れた後、当該短時間労働者から求めがあったときは、短時間労働者法第13条に定める事項以外の、当該短時間労働者の待遇に係る事項についても、説明するように努めるものとする。
(2)事業主は、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮して雇用管理の改善等に関する措置等を講ずるに当たっては、当該事業所における関係労使の十分な話合
いの機会を提供する等短時間労働者の意見を聴く機会を設けるための適当な方法を工夫するように努めるものとする。
(3)事業主は、短時間労働者法第19条に定める事項以外の、短時間労働者の就業の実態、通常の労働者との均衡等を考慮した待遇に係る事項についても、短時間労働者から苦情の申出を受けたときは、当該事業所における苦情処理の仕組みを活用する等その自主的な解決を図るように努めるものとする。
3 不利益取扱いの禁止(1)事業主は、短時間労働者が、短時間労働者法第7条に定める過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにするものとする。
(2)事業主は、短時間労働者が、短時間労働者法第13条に定める待遇の決定に当たって考慮した事項の説明を求めたことを理由として不利益な取扱いをしないようにするものとする。
4 短時間雇用管理者の氏名の周知事業主は、短時間雇用管理者を選
任したときは、当該短時間雇用管理者の氏名を事業所の見やすい場所に掲示する等により、その雇用する短時間労働者に周知させるよう努めるものとする。
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■ 有期労働契約の締結及び更新・雇止めに関する基準 ■平成15年厚生労働省告示
(平成20年3月1日一部改正)1 趣旨有期契約労働者について適切な労働条件を確保するとともに、有期労働契約が労使双方にとって良好な雇
用形態として活用されるようにするためには、有期労働契約の締結、更新及び雇止めに際して発生するトラブルを防止し、その迅速な解決が図られるようにすることが必要であることから、厚生労働大臣が「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」を定めることとし、当該基準に関し、行政官庁が必要な助言及び指導を行うことができることとしたものであること。
2 内容
1. 本条により明示しなければならないこととされる「更新の有無」及び「判断の基準」の内容は、有期労働契約を締結する労働者が、契約期間満了後の自らの雇用継続の可能性について一定程度予見することが可能となるものであることを要するものであること。たとえば、「更新の有無」については、○ 自動的に更新する○ 更新する場合があり得る○ 契約の更新はしない
等を明示することが考えられるものであること。また、「判断の基準」については、
○ 契約期間満了時の業務量により判断する○ 労働者の勤務成績、態度により判断する○ 労働者の能力により判断する○ 会社の経営状況により判断する○ 従事している業務の進捗状況により判断する
等を明示することが考えられるものであること。
2. なお、これらの事項については、トラブルを未然に防止する観点から、使用者から労働者に対して書面を交付することにより明示されることが望ましいものであること。
3. 本条第3項については、使用者が労働契約締結時に行った「更新の有無」及び「判断の基準」に係る意思表示の内容を変更する場合に、当該労働契約を締結した労働者に対して、速やかにその変更した意思表示の内容を明示しなければならないものであること。
1. 本条の対象となる有期労働契約は、○ 有期労働契約が3回以上更新されている場合○ 1年以下の契約期間の労働契約が更新又は反復更新され、当該労働契約を締結した使用者 との雇用関係が初回の契約締結時から継続して通算1年を超える場合
○ 1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合
であること。
76
(契約締結時の明示事項等)第1条使用者は、期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)の締結に際し、労働者に対して、当該契約の期間の満了後における当該契約に係る更新の有無を明示しなければならない。2 前項の場合において、使用者が当該契約を更新する場合がある旨明示したときは、使用者は、労働者に対して当該契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければならない。3 使用者は、有期労働契約の締結後に前2項に規定する事項に関して変更する場合には、当該契約を締結した労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければならない。
(雇止めの予告)第2条使用者は、有期労働契約(当該契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続
勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。次条第2項において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない。
2. なお、30日未満の契約期間の労働契約を3回以上更新した場合又は当該労働契約の更新を繰り返して1年を超えた場合の雇止めに関しては、30日前までにその予告をするのが不可能な場合であっても、本条の趣旨に照らし、使用者は、できる限り速やかにその予告をしなければならないものであること。
・ 「更新しないこととする理由」及び「更新しなかった理由」は、契約期間の満了とは別の理由を明示することを要するものであること。例えば、○ 前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため○ 契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約は当該上限に係るものであるため○ 担当していた業務が終了・中止したため○ 事業縮小のため○ 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため○ 職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたこと等勤務不良のため
等を明示することが考えられるものであること。
・ 本条における「労働契約の実態」とは、例えば、有期労働契約の反復更新を繰り返した後、雇止めをした場合であっても、裁判において当該雇止めが有効とされる場合のように、業務の都合上、必然的に労働契約の期間が一定の期間に限定され、それ以上の長期の期間では契約を締結できないような実態を指すものであること。
3 その他の留意事項
1. 有期労働契約の雇止めに関する裁判例を見ると、契約の形式が有期労働契約であっても、○ 反復更新の実態や契約締結時の経緯等により、実質的には期間の定めのない契約と異ならないものと認められた事案
○ 実質的に期間の定めのない契約とは認められないものの契約更新についての労働者の期待が合理的なものと認められた事案
○ 格別の意思表示や特段の支障がない限り当然更新されることを前提として契約が締結されていると認められ、実質上雇用継続の特約が存在するといいうる事案
があり、使用者は、こうした事案では解雇に関する法理の類推適用等により雇止めが認められなかった事案も少なくないことに留意しつつ、法令及び雇止めに関する基準に定められた各事項を遵守すべきものであること。
2. 雇止めに関する基準は、有期労働契約の契約期間の満了に伴う雇止めの法的効力に影響を及ぼすものではないこと。
77
(雇止めの理由の明示)第3条前条の場合において、使用者は、労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、
遅滞なくこれを交付しなければならない。2 有期労働契約が更新されなかった場合において、使用者は、労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。
(契約期間についての配慮)第4条使用者は、有期労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継
続勤務している者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。
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公共職業安定所(ハローワーク)�事 務 所 � 電 話 番 号 �所 在 地 �
港区港南2-5-12 品川NBSビル�03(3450)8625�03(3450)8609
品 川 �(六本木庁舎)�
品 川 �(品川庁舎)�
港区六本木3-2-21�六本木ジョブパーク� 03(3588)8609
文京区後楽1-9-20飯 田 橋 � 03(3812)8609
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■雇�■職�
三 田 �港区芝5-35-1 産業安全会館3階� 03(3452)5473
品 川 �品川区上大崎3-13-26 03(3443)5742
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労働条件、仕事中のけがや病気、労災保険に関することは�
労働基準監督署�
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上 野 �台東区池之端1-2-22 上野合同庁舎7階� 03(3828)6711
事 務 所 � 電 話 番 号 �所 在 地 �
豊島区東池袋3-1-1�サンシャイン60ビル3階�
北区王子6-1-17
事 務 所 � 電 話 番 号 �所 在 地 �
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足 立 �
墨 田 �
木 場 �
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町 田 �
府 中 �
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健康保険・厚生年金の加入や保険料の納付および年金全般に関することは�
年金事務所�事 務 所 � 電 話 番 号 �所 在 地 �
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中 央 �
池 袋 �(サンシャイン庁舎)�
港�
中央区銀座7-13-8�第2丸高ビル1・2階�
港区浜松町1-10-14�住友東新橋ビル3号館1~3階�
新宿区大久保2-12-1 4・5階�新 宿 �
千代田区三番町22千 代 田 � 03(3265)4381
03(3543)1411
03(5401)3211
03(5285)8611
療養費・傷病手当金・出産手当金など健康保険の給付ならびに任意継続被保険者に関することは�
※東京支部では、「各年金事務所」に臨時窓口を設置し、協会けんぽの給付関係の手続きの受付を行っています。�
全国健康保険協会�事 務 所 � 電 話 番 号 �所 在 地 �
品川区大崎5-1-5 高徳ビル4階�全国健康保険協会�(協会けんぽ)東京支部 03(5759)8025
■雇雇用保険給付課 ■職 職業相談�
■雇�■職�
03(5669)8609�
03(3870)8609��
03(3643)8609�
042(648)8609�
0422(47)8609
042(732)8609
042(336)8609
渋谷区神南1-3-5��
新宿区歌舞伎町2-42-10
渋 谷 �
新宿区西新宿1-6-1�新宿エルタワービル23階�
新 宿 �(西新宿庁舎)�
新 宿 �(歌舞伎町庁舎)�
03(3200)8609
豊島区東池袋3-5-13池 袋 �(池袋庁舎)�
03(3987)8609
大田区大森北4-16-7��大 森 �
03(3476)860903(5493)8609��
�
03(5325)9580�03(5325)9593
■雇�■職�
80
81
男女雇用機会均等法や育児・介護休業法に関することは�雇用均等室�事 務 所 � 電 話 番 号 �所 在 地 �
千代田区九段南1-2-1�九段第三合同庁舎14階�
東 京 労 働 局 �雇 用 均 等 室 �
03(3512)1611
派遣労働に関することは�需給調整事業部�事 務 所 � 電 話 番 号 �所 在 地 �
港区海岸3-9-45東 京 労 働 局 �需給調整事業部�
03(3452)1472
事 務 所 � 電 話 番 号 �所 在 地 �
江戸川区中央3-4-24江 戸 川 � 03(3652)5106
品川区大崎5-1-5 高徳ビル2階�品 川 � 03(3494)7831
大田区蒲田4-25-2��大 田 � 03(3733)4141
渋谷区神南1-12-1��渋 谷 � 03(3462)1241
目黒区上目黒1-12-4��目 黒 � 03(3770)6421
世田谷区世田谷1-30-12世 田 谷 � 03(3429)0111
豊島区南池袋2-17-2池 袋 � 03(3988)6011
北区上十条1-1-10北� 03(3905)1011
板橋区板橋1-47-4��板 橋 � 03(3962)1481
練馬区石神井町4-27-37練 馬 � 03(3904)5491
足立区綾瀬2-17-9��足 立 � 03(3604)0111
荒川区東尾久5-11-6��荒 川 � 03(3800)9151
葛飾区立石3-7-3��葛 飾 � 03(3695)2181
立川市錦町2-12-10立 川 � 042(523)0352
青梅市新町3-3-1 宇源ビル3・4階�青 梅 � 0428(30)3410
八王子市南新町4-1��八 王 子 � 042(626)3511
武蔵野市吉祥寺北町4-12-18武 蔵 野 � 0422(56)1411
府中市府中町2-12-2府 中 � 042(361)1011
杉並区高円寺南2-54-9��杉 並 �
中野区中野2-4-25中 野 �
台東区池之端1-2-18 MG池之端ビル�上 野 �
03(3312)1511
03(3380)6111
03(3824)2511文京区千石1-6-15文 京 �
墨田区立川3-8-12墨 田 �
江東区亀戸5-16-9��江 東 �
03(3945)1141
03(3631)3111
03(3683)1231
MEMO
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登録番号(23)26平成23年11月発行
パート・アルバイト、派遣社員、契約社員で働く方のための Q & A
どうなる?こんなトラブル!
編集・発行 東京都労働相談情報センター千代田区飯田橋3丁目10番3号東京しごとセンター9階電話 03(5211)2345
印刷・製本 株式会社アイフィス
100古紙パルプ配合率100%再生紙を使用しています。�