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キリンホールディングス株式会社 企業価値と長期的リターンの向上に向けて 20202本書は機関投資家のみが排他的に利用できるものであり、インディペンデント・フランチャイズ・パートナーズの明確な許可なく第三者に提供 してはならないものとします。

キリンホールディングス株式会社 · 2020-02-18 · キリンホールディングス株式会社 企業価値と長期的リターンの向上に向けて 2020年2月

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キリンホールディングス株式会社企業価値と長期的リターンの向上に向けて

2020年2月

本書は機関投資家のみが排他的に利用できるものであり、インディペンデント・フランチャイズ・パートナーズの明確な許可なく第三者に提供してはならないものとします。

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重要情報

本書に表明した見解は、キリンホールディングス株式会社(「キリン」)の株式を保有するインディペンデント・フランチャイズ・パートナーズLLPとその投資ビークル(総

称して、「フランチャイズ・パートナーズ」)の意見を表します。これらの見解は、公開されている情報に基づいています。フランチャイズ・パートナーズは、いつでも自らの意見を変更する権利を留保します。本書等で意見をアップデートしたか否か、または本書に記載された他の情報や意見がアップデートされたか否かについて、かかる変更を他者に通知する義務を負いません。

フランチャイズ・パートナーズは現在、キリンの株式を所有しています。この持分をいつでも、または随時変更する理由となる動向が、将来的に生じる可能性があります。これには、取引所等でキリン株式の保有分のすべてや一部について売却や処分を行う決定、または取引所や相対取引でキリン株式の追加購入を行う決定などが挙げられます。また、フランチャイズ・パートナーズは、キリンへの投資に関して、誰にも改めて通告することなく、あるいは本書の更新や変更を行うことなく、適切とみなした場合に何らかのアクションを講じる権利も留保します。

フランチャイズ・パートナーズは、ここに表明した見解を伝える情報をレビューして分析し、これが信頼に足ると考えていますが、その情報を検証しておらず、その正確性や完全性を保証いたしません。フランチャイズ・パートナーズは、キリンや言及されたその他の会社に関してなされた記述またはその他の書面や口頭によるコミュニケーションの正確性や完全性について、明示的にも黙示的にも表明や保証をせず、義務も責任も一切負いません。フランチャイズ・パートナーズは、その記述やコミュニケーション(またはその不正確性や漏れ)に関する責任を明示的に否認します。

本書は、証券投資や投資に関する税務、法務あるいは金融の助言、またはその他の種類の推奨、適切性に関する意見の提供、または証券や投資の売買の募集や勧誘を意図したものではなく、またはそのように解釈したり使用したりするものではありません。フランチャイズ・パートナーズは、本書をもとにいかなる勧誘もいたしませんし、株主やその他の人が本書に示された情報や表明された意見をもとに、またはそれを参照して行った決定に対して責任を負いません。

フランチャイズ・パートナーズは、株主に対して、その議決権を共同行使することを勧誘または要請いたしません。議決権を共同行使することに同意した株主は、日本における株式の大量保有の開示規則に基づき共同保有者としてみなされ、公示に関して日本の関連当局に合計の株式保有割合の報告書を届け出る必要があります。フランチャイズ・パートナーズは、本書を使って行う他の株主との対話など、見解や意見を表明する決定やその他の活動を行うことによって、日本の金融商品取引法(「FIEA」)に基づき他の株主との共同保有者として扱われる意図を有しておりません。

フランチャイズ・パートナーズはキリンの支配権を獲得したり統合したりするための手段を講じる意図は有しておらず、そのつもりもありません。また、フランチャイズ・パートナーズは、キリンの経営陣に向けて、他の株主と共に恒久的な共通方針の採用を希望しているわけではなく、そのつもりもありません。この情報の公開にあたり、フランチャイズ・パートナーズは誠意をもって、キリンの戦略的方向性に関して株主間での議論を活性化させること、キリンの株主価値の最大化という観点から見て、本書に言及した事項に関して株主によるキリンとの対話を促すこと、を目的としています。

フランチャイズ・パートナーズは、本書を閲覧する人物が所有することになりうるキリンに関連する株価に影響をもたらす非公開情報を通知するつもりはありません。

For Professional Investors only

3

目次

For Professional Investors only

»エグゼクティブサマリー

»インディペンデント・フランチャイズ・パートナーズの紹介

»背景:コングロマリット(複合企業)に待ち受ける困難

»近年の状況

»ビール:キリンのビジネスの主力事業

»当社の提案

»キリンのガバナンス強化の必要性

»結論:長期的リターン向上のチャンス

»付属書類

4

エグゼクティブサマリー(重要論点の整理)

»キリンは高いブランド力を誇り、ビール事業では魅力的な資産を有している。»国内ビール»オーストラリアのビール» ミャンマーのビール»フィリピンのビール

»…ところが、株価は過去10年間で大きく低迷。

»非主力領域事業への投資により、ビール事業の魅力が隠れてしまっている…

»協和キリン»ファンケル、栄養・ヘルスケアへの取り組み»国内清涼飲料事業»オーストラリアの乳製品・飲料事業

»当社は、キリンの「医と食をつなぐ」戦略で語られている成長のシナリオに納得できない。»主張しているシナジーの根拠が示されていない»過去のM&Aは失敗に終わっている

»ビール事業に集中してイノベーションを続けるほうが、資本を有効に活用でき、リスクも低く、魅力ある長期リターンが得られる。

For Professional Investors only

5

エグゼクティブサマリー(重要論点の整理) (続き)

»キリンは20年間、戦略やターゲットのさまざまな変更を試みてきた。

»中核事業に注力していた時期(2014-2017)は業績も好調で、市場もそれを評価。

»キリンの株式は、サム・オブ・ザ・パーツ分析による価値の約50%のディスカウントで取引されており、ビールにフォーカスした世界の競争相手と比べて大幅に割り引かれている。

»当社はキリンの経営陣に対して、本源的企業価値からの大幅なディスカウントを解消することを提案。

»よりバランスのとれた取締役会構成によるコーポレートガバナンスの向上、報酬制度の改善も必要。

»そうすることで、株主のために長期的な価値を創造できる体制となる。

For Professional Investors only

6

当社の提案

»中核でない事業はすべて手放す» 「医と食をつなぐ」戦略を中止する»その他の非主力資産を見直し、価値創造の機会を模索する:

»協和キリンの処分»ファンケル株式の処分»国内清涼飲料のこれからの方向性の選択肢の検討

»事業を手放すことで得た売却代金を使ってキリンの自己株式の取得と消却を行う

»マージンおよび運転資本を改善するために、広範囲にわたるプログラムを実施する

»配当性向を大幅に増やす

»中核事業に堅実な投資を行い、剰余金は株主に還元することを公約する

» 提案する内容はすべて経済的合理性がある

» すべて経営陣が掌握できるもの

» これらのアクションを総合的に実行することで、企業価値と長期的リターンを大幅に向上できる可能性

For Professional Investors only

7

インディペンデント・フランチャイズ・パートナーズの紹介

» 2009年に設立された、独立系ブティック型運用会社

» 1996年、モルガン・スタンレー所属時代に確立»主な顧客は機関投資家

»投資手法は集中的に、ロングターム、ロングポジション、バイ・アンド・ホールドで

»顕著な無形資産を保有する超優良企業に集中的に投資

»絶対的なバリュエーションへの規律あるアプローチ

»個別株の平均保有期間は10年近くに及ぶ

»投資先企業への積極的な関与 - アクティビストとは違う関わり方で

For Professional Investors only

8

» 2014年からキリンの株主である

»クライアントを代理して1,990万株保有(保有割合:約2%)

»キリンの経営陣とは2014年から11回に及ぶ会合

»キリンの経営陣に4通の書簡を送付

»注目が高まる中での期待が持てる進展(2014年~2017年)

» 2019年戦略面での変化への失望

インディペンデント・フランチャイズ・パートナーズの紹介 (続き)

For Professional Investors only

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背景:コングロマリット(複合企業)に待ち受ける困難

For Professional Investors only

10

»コングロマリットとは、1つの企業グループとして全く異なる業種に参入している複合企

業体のこと。企業形態として、親会社と、多くの持株会社や完全子会社で構成されることが多い。

»キリンの漠然とした「つなぐ戦略」は、コングロマリットの遠回しな表現。

コングロマリットとは?

For Professional Investors only

11

出典:Bloomberg。データは、基準時点を100として、2005年12月30日から2019年12月31日までの期間の株価リターンを米国ドル換算したもの。なお、過去の運用実績は将来の成果を保証するものではありません

代表的なコングロマリットの(基準時点を100とした)株価リターン(USドル)2019年12月31日までの15年間

MSCI世界株価指数

株式市場はコングロマリットを拒否し続けてきた

GE:航空、金融サービ

ス、デジタル、ヘルスケア、照明、電力、再生可能エネルギー

ティッセンクルップ:部品テクノロジー、エレベータテクノロジー、産業ソリューション、素材サービス、鉄鋼事業

日立グループ:通信、コンサルティング、電子部品、防衛、金属、鉄道、工機、プラント、ワークス

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100

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For Professional Investors only

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… しかもこれは決して新しい傾向ではなく、効率の悪い資本配分の代償は大きい

コングロマリット・ディスカウントは長期にわたって続く米国多角化企業のコングロマリット・ディスカウント(%)

「分析の結果、多角化した企業は…市場か

ら低く評価される傾向がある。また、ガバナンス・システムが弱い企業は経営者にもたらす規律が弱いため、多角化企業の経営者は非効率な事業継続という形をとりやすいことを示唆している」

「日本における多角化ディスカウントと企業ガバナンス」 牛島辰男財務省財務総合政策研究所(2015年7月、公共政策レビュー11号

多角化した企業が相対的に低く評価される顕著な要因が、資本配分の効率である。資本効率の良い配分とは、市場価値が資産価値を上回る魅力的な事業により多く投資している場合と、市場価値が資産価値を下回る魅力の少ない事業により少なく投資している場合がある。多角化した企業の投資パターンを、同じ産業の専業企業のそれと比較すると、2つのことが明らかとなった。すなわち、事業が多角的であるほど、資本配分の効率にマイナスの影響があること、そしてこの資本配分の効率の悪さが多角化企業の相対的な評価にマイナスの影響を及ぼしていることである」

“Invest wisely, Divest Strategically(賢く投資、戦略的に処分)” BCG、ライプツィヒ商科大学、2014年4月22日。強調箇所追加

平均

1990年代半ばまで大幅なディスカウント

1990年代後半:緩やかな

ディスカウント「ニューノーマル」

2000-2003:ITバ

ブル崩壊後、低めのディスカウント

2004-2007:

市場全体の高騰を受けてディスカウントも拡大

2008:

金融危機中はディスカウントも縮小

2009-現在:

ニューノーマルに戻る

出典: BCGおよびライプツィヒ商科大学による分析。注: 超過価値は多角化企業の市場評価額と同等の専業企業セットのインプライド・バリュエーション(予想時価総額)の差異により算定。マイナスの差異はディスカウントを示す。(調査方法の詳細な説明については付属資料を参照のこと)

For Professional Investors only

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世界的なコングロマリットは、分割または事業売却が進む

» 過去20年にわたり先進国市場のコングロマリットは、分割・解体を行い、より焦点を絞ったビジネスをするようになってきている

企業ロゴは各社のウェブサイトより引用。記載された有価証券の売買の推奨を示唆するものではありません。

For Professional Investors only

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» さらに、コングロマリットは、アクティビストや企業買収のターゲットになりやすい

企業の経営多角化が買収成功のリスクに与える影響1

Fortune 500 Firms, 1980 to 1990

無関係な経営多角化の頻度分布1

Fortune 500 Firms, 1980 and 1990

1. Source: The Decline and Fall of the Conglomerate Firm in the 1980s: The Deinstitutionalization of an Organizational Form Gerald F.

Davis; Kristina A. Diekmann; Catherine H. Tinsley American Sociological Review, Vol. 59, No. 4. (Aug., 1994), pp. 547-570.

#,コア産業以外のセグメント 1980

# 2-digit SIC industries in which firm operated

Perc

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ge o

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s

Multip

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of

the b

ase

takeover

rate

, 1980

-1990

世界的なコングロマリットは、分割または事業売却が進む (続き)

For Professional Investors only

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近年の状況

For Professional Investors only

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近年の状況

»キリンの株価は、2018年4月に3,194円。»当社のサム・オブ・ザ・パーツ分析によると、キリンの潜在価値は1株3,700円近いと推定。»ところが、現在の株価は2,532円1、この18ヶ月で21%下落し、国内外の同業他社と比べて低迷。» 2019年の特別損失を除いた営業利益予測は不変。»それなのに「なぜこれほど株価が落ちたのか?」

»この急落は、キリンが新規事業に利益を再投資するという戦略を発表したこと、しかもその事業に対して十分な専門知識もなく、競争的な優位性もなく、主力のビール事業と有意義なシナジーもないことに対して市場が懐疑的になっていることの現われ。»キリンの株価の下落は、協和キリンのバイオ事業の買収(2019年2月)およびファンケル社の株式33%の取得(2019年8月)に2,500億円超を支出した時期と一致。

» 2019年3月に、キリンはビール、清涼飲料、食品、バイオ/医薬領域を「つなぐ」新規事業を創出するとの戦略を発表。

»キリンが主張するシナジーには客観的な根拠もなく、この10年間のビール、清涼飲料、食品、医薬事業の実績に裏付けられたものでもない。

»こうした投資は資金の無駄遣いであると市場は確信しており、さらなる価値の低下を恐れ、キリンホールディングスの株価を割り引いて評価しているというのが当社の見解。

1. 出典:Bloomberg。2020年2月14日時点。

For Professional Investors only

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近年の状況 (続き)

»キリンの取締役会は戦略を客観的に見直し、他事業と共通点の無いビール、清涼飲料、食品、バイオ/医薬領域をつなぐシナジーによって新たな成長のきっかけが生まれるといった希望を諦めるべき。

»以下を考慮して、現実的な戦略を策定すべき:

»キリンの中核事業はビールであることを再認識する。世界規模ではないものの、キリンは日本では確固たる地位を築いており、オーストラリア、フィリピン、ミャンマーでも堅調である。

»協和キリン、協和発酵バイオ、ファンケルを含め、医薬/バイオ事業をすべて処分する。

»その他の食品/清涼飲料事業の売却を完了させるか、強化するための提携関係を結ぶ:ライオン乳飲料(売却完了)と国内清涼飲料事業が対象。

»中核事業に近い事業で、かつ然るべき期間内にROI目標が現実的に達成できる事業にのみキャッシュフローを再投入する。

For Professional Investors only

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キリンのトータル・シェアホルダーズ・リターン(TSR)は、世界の同業者に大きく立ち遅れ

» キリンのトータル・シェアホルダーズ・リターンは、この15年間で世界の同業者および業界のベンチマークに大きく差をつけられている

» キリンは、次に低調なメーカーと比べても約120%以上低い業績

出典:Bloomberg。データは、基準時点を100として、2020年1月31日までの15年間のトータルリターン(配当再投資)を日本円換算したもの。なお、過去の運用実績は将来の成果を保証するものではありません。

世界のビール会社グループのトータルリターン (日本円換算、配当再投資)2020年1月31日までの15年間

For Professional Investors only

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Jan-05 Jul-06 Jan-08 Jul-09 Jan-11 Jul-12 Jan-14 Jul-15 Jan-17 Jul-18 Jan-20

Carlsberg: +394%

ABI: +365%

Heineken: +335%

Asahi +389%

MSCI World

Beverages+392%

Kirin: +212%

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… そして、キリンの株価は、戦略変更に対する市場の見方が反映

» 新たなCEO就任以降3年間ほど持ち直したものの、直近の18ヶ月間では異業種を「つなぐ」という昨今の誤った戦略によりその大部分を失ってしまった

» 中核事業に注力した2015〜-2018年は、市場も前向きに反応した

» … しかし、先ごろの「つなぐ」戦略は好意的に受け止められていない

キリンの株価(日本円)当社が当初取得した時点(2014年9月11日)から2020年1月31日まで

For Professional Investors only

出典:Bloomberg。データは、2014年9月11日(Global Franchiseが当初取得した時点)から2020年1月31日までの期間のキリンの株価(日本円)の推移。なお、過去の運用実績は将来の成果を保証するものではありません。

1200

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2000

2400

2800

3200

2019年8月6日FANCLの株式取

2019年3月7日投資家デー

2019年2月5日

協和発酵バイオ買収

2019年11月7日FTの報道。1,000億

円を上限とする自社株買いを発表

2014年12月

磯崎氏が代表取締役に就任

2016年10月

コカ・コーラとの清涼飲料事業での資本業務提携に関する協議

2016年11月

豪州のワイン事業の売却

2017年2月

ブラジルのビール事業の売却

2015年3月

豪州のチーズ事業の一部売却

2018年9月

ライオン飲料事業の戦略的選択肢検討

キリンは20年間、戦略やターゲットの変更を繰り返してきた

» この歴史を見れば、現在の「つなぐ戦略」にも信頼がおけない

» キリンは中核のビール事業に集中するべき

1. 出典:各社事業報告書、インディペンデント・フランチャイズ・パートナーズ

20

発表年1 主なテーマ、目標、出来事

1998 • 「ビールおよび発泡酒事業の強化」

2000 • 「総合的な酒類事業」に集中

2004 • 「最先端の発酵技術を活かし、アジア・オセアニアでNo.1のアルコール飲料・ソフトドリンク企業になる」• 「サンミゲル、ライオンネイサンとのパートナーシップを中心に、全グループを挙げた総合的な酒類事業を築く」

2006 • 「総合的なアルコール飲料企業への着実な変身」• 2015年までに売上高・営業利益の海外比率30%を目標に、国内の人口減を補う• 協和発酵(2007年)、ナショナルフーズ(2007年)の買収

2009 • 「アルコール飲料、ソフトドリンク、医薬品を中核事業とし、アジア・オセアニアでNo.1の企業になる」• 海外での買収:ライオンネイサン(2009年)、サンミゲル(2009年)、フレイザー・アンド・ニーヴ(2010年)、CRE(2011年)、スキンカリオール(2011年)

2011 • 「収益性の向上を重視」• アジア・オセアニアに集中との発表にもかかわらず、ブラジルに約30億ドルを投資• キリングループの純利益35%減(2011年)

2012 • 「国内のビール事業は低迷。海外買収企業の本業の伸びはわずか。グループの統合戦略はまだ深みに達せず」• 「数値目標は未達」「再評価と明確化の必要あり」

2013 • M&Aの断念:「本業の成長を通じて企業価値を持続的に高める」。醸造技術を強みとする戦略の後退:2013年アニュアルレポート「カギは他と差別化されたブランド」

• 2015年目標:売上高3兆円、営業利益率10%、ROE10%以上。(2015年実績:売上高2.2兆円、ROEはマイナス)

2014 • 三宅社長から磯崎社長へ。2014年アニュアルレポート「グループを変身させる」

2015 • 初の年間赤字

2016-18 • 「キリンの再編・再生のための大胆な施策。収益性を重視」。日本とオーストラリアのビールが収益性のカギ

2017 • スキンカリオールをハイネケンに売却。損失は約20億ドル

2019 「つなぐ戦略」• 協和発酵のバイオ事業の買収• 「つなぐ戦略」の発表• ファンケルの株式33%の取得

投資専門家限定

TSRを改善する大きなポテンシャル

同業他社の企業価値評価およびサム・オブ・ザ・パーツ分析から、キリンの価値評価は実態より大幅に低い1…

EV/EBITDA倍率 (x)

株価収益率P/E (x)

ディスカウント(5)%

ディスカウント(23)%

ディスカウント(38)%

» キリンは世界的にももっとも魅力的に評価されている投資対象会社

» キリンは多くの点で実際の価値よりも大幅に低く評価されている

1. 出典:FactSet2020年度コンセンサス予想、2020年2月14日時点。 キリン(医薬事業除く)の株価収益率P/Eは、キリンEBITDAのうち協和発酵キリンによる15.2%を差し引いて計算したもの。

21

For Professional Investors only

11.4

12.7

11.3 11.811.2

ABI Heineken Carlsberg Average Kirin

16.6

21.7 22.220.2

15.6

12.5

ABI Heineken Carlsberg Average Kirin Kirin ex-Pharma(implied)

» 当社が提案する資本の配分と経営効率の改善により、このディスカウントは解消

1. 出典:各社事業報告書。2020年2月14日時点の株価を基にインディペンデント・フランチャイズ・パートナーズ予想 。数字は端数処理しているため合計は一致しない可能性があります。

22

サム・オブ・ザ・パーツ 1 価値 (百万円) 倍率・備考

国内ビール 884,367 9.0x EBITDA

国内清涼飲料 352,700 1x収益(コカ・コーラボトラーズ、サントリー食品、伊藤園の平均)

オーストラリアのビール 690,300 13x EBITDA(CUBは14.9xでアサヒに売却)

オーストラリア乳製品 89,740 0.7x収益

ミャンマーのビール 155,592 15x EBITDA、キャピタルゲイン課税30.62%

サンミゲル 570,608 18x EBITDA、出資割合48.55%、日本円でキャピタルゲイン課税 30.62%

協和キリン 817,379 現行株価で50.1%保有

FANCL 127,319 現行株価で30.3%保有

協和発酵バイオ 128,000 1.6x収益 (2019年2月時取得価格)

企業価値 3,816,005

マイナス純負債 (506,238) 2019年末時点純負債

株式価値 3,309,767または 1株あたり¥3,698 現レベルより46.1%高い

For Professional Investors only

TSRを改善する大きなポテンシャル (続き)

» 当社の調査では、キリンの企業価値の39%は非中核的資産によるもの

1. 出典:各社事業報告書。インディペンデント・フランチャイズ・パートナーズ予想。企業価値は、前ページのサム・オブ・ザ・パーツ分析をもとに算出。

23

主な分野ごとのキリンの企業価値

非中核的資産• 協和キリン• 協和発酵バイオ• ファンケル• オーストラリアの乳製品• 国内清涼飲料

TSRを改善する大きなポテンシャル (続き)

For Professional Investors only

23%

18%

15%

4%

9%

22%

4% 3% 2%

国内ビール

オーストラリアのビール

サンミゲル

ミャンマーのビール

国内清涼飲料

協和キリン

協和発酵バイオ

ファンケル

オーストラリアの乳製品

24

ビール:キリンのビジネスの主力事業

For Professional Investors only

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ビールは魅力的で景気変動の影響を受けにくいコンスタントな事業

» ビールはローカルな市場である。ブランドへの忠誠心や流通の仕組みから、新規参入は困難

» キリンは高度に統合された市場で事業を経営

» キリンは世界で有望な4カ国の市場で強力なマーケットシェア

» キリンのビール資産は、企業価値の中核

» この産業には利益を伸ばすためのチャンスがない、という結論付けには納得できない

2

4

6

8

10

12

14

15 20 25 30 35 40

平均リターン年(

(%)

ボラティリティ(標準偏差%)

タバコ

食品

炭酸飲料

医療機器

ビール

電子機器

保険自動車

繊維 船舶

製鉄

建設

石炭

不動産

石油

日用品

水道光熱

金融

出典:ダートマス大学ケネス・フレンチ、US Research Returns Dataライブラリより1926年7月〜2017年2月の期間の月々のウェイト付けした平均リターンを示す。ただし、炭酸飲料と金については1963年7月以降のデータに基づく

業界のボラティリティとリターンの関係 1926 - 2017

For Professional Investors only

26

キリンは複数の魅力的なビール事業を有する:1.日本

出典:Euromonitor

市場第2位の強力な地位2018年日本市場シェア

» 徹底したコスト抑制とイノベーションにより近年大幅に利益向上

» 『本麒麟』の成功により30年負け続けているアサヒとの差を縮めることができた

» 世界各国の市場と比べて日本ビールのプレミアム志向は大きなオポチュニティである

» 東京五輪2020は、全世界にキリンを知らしめるのに役立つ

» 消費税増税の経過措置は、ビールテイスト飲料にとって他のアルコール飲料よりも有利に作用する可能性

34%

30%

36% Asahi

Kirin

Others

出典:各社事業報告書

魅力的な利益成長率

7.4% 年平均成長率CAGR

EB

ITA

(¥10億)

For Professional Investors only

62.669.8 71.6

80.9 83.3

0

25

50

75

100

2015A 2016A 2017A 2018A 2019A

27

キリンは複数の魅力的なビール事業を有する: 2.オーストラリア

44%

32%

24%

Asahi

Kirin

Others

出典:Euromonitor

» 成熟した安定的な複占市場。メインの競合企業の高いレバレッジによりこの状態を維持

» キリンのポートフォリオ中100%所有のビール事業で最も高いマージンを実現

» キリンは、James

SquireおよびLittle

Creaturesに代表されるプレミアム価格帯のクラフトセグメントで成長が速くリード

市場第2位の強力な地位2018年オーストラリア市場シェア

2.6

3.23.5

3.9

4.5

5.2

2013 2014 2015 2016 2017 2018

さらにクラフトビールでシェア拡大中Little CreaturesとJames Squireを合わせた2013〜2018年のマーケットシェア

マーケットシェア(%)

James SquireおよびLittle Creaturesのブランド

出典:Euromonitor

For Professional Investors only

62%16%

22%

Kirin

Dagon

Others

28

キリンは複数の魅力的なビール事業を有する: 3.ミャンマー

出典:Euromonitor

2016A 2017A 2018A 2019A 年平均成長率

収益 257 311 340 452 20.7%

EBIT 101 120 131 179 21.0%

EBIT マージン 39.3% 38.6% 38.5% 39.6%

出典:各社事業報告書

出典:キリン2018年アニュアルレポート

成長の余地がある市場一人当たりビール消費量(リットル)

» 魅力的な構造の市場で急成長

» 一人当たりの消費量が低く、今後に大幅な成長が見込める

市場第1位の支配的な地位2018年ミャンマー市場シェア

収益、利益、マージンの伸びが期待できる(ミャンマーチャット建、単位:10億MMK)

43.6 42.8 41.4

19.515.8

6.0

Vietnam S. Korea Japan Thailand Philippines Myanmar

ミャンマーのブルワリーブランド

For Professional Investors only

29

キリンは複数の魅力的なビール事業を有する: 4.フィリピン

出典:Euromonitor

出典:各社事業報告書

出典:キリン2018年アニュアルレポート

成長の余地がある市場一人当たりビール消費量(リットル)

» 同じく、急成長・高マージンの市場で一人当たりの消費量の増加も見込まれる

» 統合された世界の酒類業界において資産的に大きな価値がある

市場第1位の支配的な地位2018年フィリピン市場シェア

収益、利益、マージンの伸びが期待できる(単位:10億ペソ)

43.6 42.8 41.4

19.515.8

6.0

Vietnam S. Korea Japan Thailand Philippines Myanmar

San Miguelのブランド

ベトナムでのタイ・ビバレッジのSABECO事業およびフィリピンでの San Miguel

ブルワリーの2事業は、グ

ローバルな酒類メーカーにまだ支配されていない、同地域でもっとも魅力のあるビール資産である。

サンフォード・バーンスタイン、2019/4/18

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94%

6%

San Miguel

Others

2014 2015 2016 2017 2018 2019 年平均成長率

収益 79.0 82.4 97.2 113.2 129.2 139.8 12.1%

EBIT 22.1 22.6 27.2 31.2 35.3 37.6 11.2%

EBIT マージン

27.9% 27.5% 28.0% 27.5% 27.3% 26.9%

30

当社の提案

For Professional Investors only

31

賢明な経営アクションによりアンダーパフォーマンスを是正できると確信

»中核でない医薬事業を手放す

» 「医と食をつなぐ」という戦略を中止し、協和キリンおよびファンケル株式を処分する

»国内清涼飲料のその他の非主力資産を評価し、価値創造の機会を模索する

»事業を手放すことで得た売却代金を使ってキリンの自己株式の取得と消却を行う

»マージンおよび運転資本を改善するために、広範囲にわたるプログラムを実施する

»配当性向を大幅に増やす

»剰余金は株主に還元することを公約する

» 提案する内容はすべて経済的合理性がある

» すべて経営陣が掌握できるものである

» これらのアクションを総合的に実行することで、株主収益を大幅に向上できる可能性がある

For Professional Investors only

32

» 多くの生活必需品企業がノンコア資産の処分・分割を実施している

» その多くが株主のために多くの価値を創出した

» キリンも企業価値を向上するために同様のアプローチを取る必要がある

これまでに多くの生活必需品企業がノンコア資産を処分

»当社が着目している生活必需品企業における戦略変更・売却処分の事例:

会社名 アクション

1989年に英国、欧州、アジアの食品事業と米国の加工食品事業を、1990年11月に米国のケーブルテレビ会社の株式、1999年3月に海外のたばこ部門、同年6月に米国のたばこ部門をそれぞれ売却

1998年9月に金融サービス事業を売却

2008年5月にドクター・ペッパーの飲料事業をスピンアウト

2009年8月に医薬品事業を売却

2011年5月にゴルフ事業を売却、その後同年10月に酒類部門(ビーム)と家庭用品関連部門(FBHS)を分離

2019年5月にスキンケア部門を売却

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33

主要な資産による対策:1.協和キリンを処分する

会社名 2020年度株価収益率

協和発酵キリン 33.1x

キリンホールディングス 15.6x

キリン(医薬事業を除く)1 12.5x

出典:FactSetコンセンサス予想、インディペンデント・フランチャイズ・パートナーズ予想

キリン酒造 協和キリン

統合された業界 √ X

高マージン √ X

R&Dのリスクが低い √ X

グローバル展開 √ X

» キリンの経営陣は主力でない医薬事業を売却すべきである

» 協和キリンは主力の酒類事業とシナジーがない

» 持分維持契約は2017年10月に満了。キリンが所有権を維持する論理的理由はない

» 日本の税制改正は有利に作用。当社が受けた助言によれば、キリンが協和キリンの持分を税効率上有利に処分する方法がある

高く評価されており、親会社との評価ギャップが広がっている

協和キリンは酒類部門の構造的利点を共有できない

注1:キリン(医薬事業除く)の株価収益率P/Eは、キリンEPSのうち協和発酵キリンによる15.2.%を差し引いて計算したもの。 2020年2月14日時点の価格に基づく。

» 協和キリンは競合他社より比較的規模が小さく、グローバルスケールではない

» 小規模であるため、医薬品パイプラインの変動に影響を受けやすく、キリンの株主を不要な不安定性にさらしている

» 合併から10年にも関わらず、キリンにとっても協和キリンにとっても有益な製品ができたという兆しが見られない

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34

» キリンの経営陣は、協和キリンが成長を導くための手段であると主張するが・・・

» 市場は、売上増そのものよりも、使用資本に対するリターンの成績を評価する

市場は企業の利益成長率よりも使用資本利益率 (ROCE) を評価している1

主要な資産による対策:1.協和キリンを処分する (続き)

Traditional P/E vs. Earnings Growth HOLT Value-to-Cost vs CFROI

Notes:

1. Source: HOLT ValueSearch. Data as at 22 October 2019 for Japanese companies $10bn +

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35

» 当社の推定では、キリンのビール事業は、協和キリンの2倍以上の使用資本利益率 (ROCE) がある

» 協和キリンの今までの実績は、これからの成長の見込みの根拠にはならない

現金収益の成長の根拠はない:

Kyowa Kirin Co EBITDA Dec 2012 – Dec 2019 (10億円)1

Notes:

1. Source company filings, FactSet

主要な資産による対策:1.協和キリンを処分する (続き)

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85.4 84.9

72.9

80.2

67.3

84.280.9

73.5

2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

CAGR 2012-2019:

(2.1%)

36

主要な資産による対策: 2.食品・飲料・健康に対する取り組みを廃止する

» 食品・飲料に関する取り組みは中核事業を損なう 経緯及び認識されているメリット 当社の見解

» 2019年2月:協和発酵キリンより協和発酵バイオの95%を取得したことを発表。発表当日、キリンの株価は¥2,720だった。

» キリンはこの取得により「ライフサイエンスとテクノロジーの進歩を追求し、新しい価値の創造により、世界の人々の健康と豊かさに貢献」すると主張。しかし、具体的数値を欠くあいまいで高望みな目標やターゲット設定。

» キリンはこの取り組みについて経験もなく、成功するという主張を裏付ける根拠もない。キリンよりも規模も大きく実績もあり、主力事業との重複も多い何社ものFMCG〈日用消費財)企業が同じような事業を試みて失敗している。

» 資本配分のミスと、2019年8月6日にパーソナルケア企業ファンケルの30%を驚愕の1,290億円で取得するとの発表が重なり、予想P/Eは >35x、キリンのP/Eの実に3倍となった。

影響 当社のご提案

» 協和発酵バイオ取得発表の前日から、キリンの株価は日本円ベースで4%下落した。もっとも近い同業企業であるアサヒは13%アップ、MSCIグローバル指数は18%アップしている1。

» キリンは、市場での処分またはロレアルのような戦略的な買手への売却により直ちにファンケルの株式を手放し、その分を主力の酒類部門に再び戻すべきである。

1.出典:Bloomberg, 2019年2月4日〜 2019年12月31日。トータル・リターンを反映。

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37

出典:サンフォード・バーンスタイン、2019年8月8日

キリンが化粧品会社ファンケルの過半数未満の株式を取得したことは、近年主力事業に再び集中し株主還元が改善されてきた状況から道を外した動きであり懸念される。これによりキリンは、事業フォーカスの希薄化と一層企業価値を破壊する可能性のあるM&Aを反映して、酒類を専業とする同業他社と比べて割り引いて評価されるべきと考える。

当初のシナジーはかなり限定的に見える。ファンケルの最大の強みであり、ファンケルの利益の約80%を担う無添加スキンケア事業をキリンがどのようにレバレッジしていくのかが以前不透明である。

出典:モーニングスター、2019年8月7日

ファンケルの株式の取得は、、、取得の価値、持分、具体的な施策およびメリットという点で正当化することが難しいようだ。

出典:モルガンスタンレーMUFG、2019年8月6日

主要な資産による対策: 2.食品・飲料・健康に対する取り組みを廃止する (続き)

» 市場参加者はこの戦略をきっぱりと拒絶した

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38

主要な資産による対策: 3.非中核資産を手放す

24%

19%

10%10%8%

36%Coca Cola

Suntory

Ito En

Asahi

Kirin

Others

出典:Euromonitor

出典:各社事業報告書

1.国内清涼飲料事業

» 日本の清涼飲料メーカーではトップから大きく離れた第5位で、主力のビールフランチャイズとシナジーを欠く

» 断片的な市場構造は、より連結的な地域と比べてマージンもリターンも低いことを意味する

» 10月16日のコカ・コーラとの協議、業界内で良い産業構造の可能性について認識しているという好ましい証拠

» キリンの経営陣は、清涼飲料ポートフォリオから得られる価値を最大化する戦略を実行すべきである

断片的な市場でマーケットシェアも低い2018年日本清涼飲料市場シェア

38.5

28.7 27.3

21.617.3

8.2

3.5

Myanmar beer Australia beer Philippines beer Japan beer KHK Pharma Japan soft drinks Australia dairy &drinks

その結果、マージンの低い事業になっている2018年EBITマージン(%)によるキリンの事業のランキング

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39

» ライオンネイサンのビール、スピリッツ&ワインのEBITAマージンは30%近い。ライオン飲料事業(乳製品&飲料)のマージンは3.5%。

» ライオン飲料事業は一次産品という低マージンのカテゴリーで営業している。主たる流通チャネルが複占状態であることもあり、良いリターンを実現することは困難。

» ライオンネイサンの旧経営陣もライオン飲料事業は他のビジネスとマッチしないことを認めた。

» 最近のサプート及び中国蒙牛乳業の売却は称賛されるべきで、これからすすむべき正しい方向を示している

“マレーは、2007年および2008年のナショナル・フースとデイリー・ファーマーズ39億ドルの買収について「率直に言って自殺行為」であったと評して、その酷評をキリンに引き継げたことを喜んでいる”

“「本当のことを言えば、これらの事業を一緒にすることになんら論理的な根拠はないが、対応しなければならないレガシーの問題だった」”

出典:ライオンネイサン元CEOロブ・マレーへのインタンビュー、The Australian誌 2012年10月20日

2.オーストラリアの酒類以外の飲料事業(ライオン飲料事業)

» キリンの経営陣は、ミスマッチを認識して2018年9

月の戦略レビューを発表したことについて評価されるべきである

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主要な資産による対策: 3.非中核資産を手放す(続き)

40

キリンのガバナンス強化の必要性

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41

キリンのガバナンス強化の必要性

キーポイント

» 「医と食をつなぐ」という戦略を策定すること、及びこの戦略を資本市場に有効的に説明することは、キリンの取締役会の責任である。

»キリンの現在の取締役会構成を以下のようにすれば、明らかにメリットがある:»独立性をもって判断ができるようにする»性別や国籍などの多様性を高める»事業分野や金融の専門性を高める

» CEO/取締役の報酬政策を以下によって強化できる:»全体的な情報開示を徹底する»役員報酬の構成(固定報酬と業績連動報酬の混合)を改善する

»賞与及びインセンティブ報酬としての株式報酬において、キリンの戦略とよりリンクしたパフォーマンス指標を選択する

»賞与は複数のパフォーマンス指標をもとに判断する

»株式報酬は、より長期的なパフォーマンス目標を基準とし、最低限のパフォーマンス目標に達しなければ報酬はゼロとする

1. 出典:Japan Board Index, Spencer Stuart, 2018

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42

出典:キリンホールディングス、「医と食をつなぐ」事業について、投資家説明会プレゼンテーション、2019年3月

» 取締役会の第一の役割は、日本のコーポレートガバナンス・コード(JCGC)原則4-1に従って、会社の戦略的方向性を定めること

» キリンの取締役会と経営陣は、「つなぐ」戦略が中期戦略の核であるにもかかわらず、それを説得力をもって説明できていない。これはJCGC原則3-1の精神にそぐわない

» 取締役会が該当分野の経験や専門性を備えていない状態で、株主は、経営陣が「つなぐ」戦略を実行できることを期待するしかない

1. キリンの取締役会は戦略の策定・説明に最終責任を負う

「医と食をつなぐ」

「キリンの国内ビール事業の戦略的動向や、SAP導入の中期的影響について、我々は引き続きプラスの見方をしているが、(今年発表された)『健康・食品領域をつなぐ』という戦略は構想が甘く、漠然としすぎており、短中期的に価値を損なう可能性が高いと考える」

出典:アライアンス・バーンスタイン、2019年8月8日

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4%6%

17%

25%

2016 2017 2018 2019

43

2. 取締役会の独立した判断を強化すれば、すべての株主の利益になる

» 日本の市場慣行とはいえ、キリンの取締役会の独立性は、支配株主がいない大手企業にしては、グローバルなガバナンス基準を下回る

» 森正勝氏が取締役会議長を務めているが、その権限・責任が株主には不明確

» 株主の反対が前年に比べて大きく増えたにもかかわらず、非独立社外取締役の永易克典氏が再任され、これについてJCGC原則1-1①に従った取締役会の対応もない

» CEO/社長を含む2人のエグゼクティブが、指名・報酬諮問委員会に加わっている

» 日本の市場慣行とはいえ、監査役会に2人の社内取締役が加わっている

取締役会の独立性(%)

出典:MSCI ESG Research、ISS、Spencer Stuart Board Index(日本、米、英)

33.3% 35%

54%58% 60%

66%

85%

Kirin Topix 100(Japan)

Beverages(MSCI ACWI)

CAC 40 (France) DAX 70(Germany)

FTSE 150 (UK) S&P 500 (USA)

HOYA、ソニー、武田、エーザイ、オリンパスなどの企業は、取締役会の過半数が独立取締役

永易克典氏の再任に対する強い反対…だが取締役会から明確な反応はなし

株主の反対(%)

出典:キリンウェブサイト

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44

3. グローバル企業にしては多様性のない取締役会 ― スキルや経験にギャップ

» JCGC原則2-4は、取締役会における「異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観」を明確に推奨している

» キリンは3つの中核的な価値観のひとつに「多様性」をかかげながら、組織のトップである取締役会にはそれが反映されていない

» 女性取締役はゼロ…一方、TOPIX100企業の約66%、日経225企業の約56% 1(アサヒを含む)は女性取締役を置いている

» 日本人でない取締役はゼロ…一方、TOPIX100企業の約31%、日経225企業の約21% 1(アサヒを含む)は外国人取締役を置いている

» キリン自体の取締役会スキルマトリックスを見ても、業界での経験や金融関連の経験にギャップが目立つ

1. 出典:Japan Board Index, Spencer Stuart, 2018

キリンの取締役会スキルマトリックス(BSM)

出典:キリン2019年アニュアルレポート、p.64

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取締役会の

独立性

33.3%

女性取締役

0%

外国人取締役

0%

平均年齢

66直接業界

での経験のある社外取締役

0

45

3. グローバル企業にしては多様性のない取締役会 ― スキルや経験にギャップ (続き)

» 社外取締役も監査役も、食品・飲料業界や医薬品業界における直接の経験がない

» そのため、経営陣による「つなぐ」戦略の実行を監視する能力が大きく制限されている

» スキルや経験のギャップは、グローバルな調査会社にも指摘されている

出典:2019 Kirin Glass Lewis Report, p.8

出典:2019 Kirin MSCI ESG Ratings Report, p.11

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46

4. 報酬政策が戦略や業績と十分リンクしていない

»報酬額は問題ないが、CEO/取締役の報酬政策が株主の利益と十分リンクしていない

»情報開示が不十分なため、業績に応じた報酬という原則が維持されているかどうかを、我々株主は確認できない

»指名・報酬諮問委員会は独立性を欠くように思われる

»固定報酬と業績連動報酬の比率はおよそ50:501。これでは高業績をめざすインセンティブとして不十分ではないか?

»インセンティブのために選定された業績指標は戦略を反映していない» 「シェアードバリュー創出」の原則が伴っていない

»賞与は単一の指標(連結事業利益)に基づいている。競合他社は売上高の伸び、フリーキャッシュフロー、個人の目標など、複数の指標を用いている

»パフォーマンスに基づく譲渡制限付株式の利用は歓迎するが、»ROICとEPSの実績は1年間しか測定されていない»設定目標が開示されていない»目標が未達でも報酬の3分の1は付与されるようだ1

»自社株買いの影響を考慮に入れ、戦略との整合性をさらに高めるため、EPSの妥当性について検討すべき

出典:キリン2019年アニュアルレポート、p.66

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47

結論:長期的リターン向上のチャンス

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48

マージンと運転資本を改善する大きな余地

» マージンと運転資本の分析から、広範囲にわたる改善プログラムを実施する必要があると思われる

» 医薬事業は利益の幅をせばめ、運転資本を著しく消費してしまう

出典:各社事業報告書、FactSet

マージンおよび運転資本比率は、長期的なポテンシャルに満ちている:

2018 EBITDAマージン(%) 2018 運転資本/売上高(%)

32.6

24.222.2

26.3

13.8

A-B InBev Heineken Carlsberg Big 3 Average Kirin

-8.7

5.9

-6.9-3.2

25.6

A-B InBev Heineken Carlsberg Big 3 Average Kirin

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資本配分を改善する大きな余地

» 配当性向があまりにも低すぎる

» 株価に大幅な資本配分ディスカウントが織り込まれている

» 投資家は今後の現金の使いかたについて明確なシグナルを求めている

» キリンは配当性向を大幅に増やしてすべての剰余金を株主に還元することを公約すべきである

世界的なFMCG企業やビール業界のピア企業のほとんどが50%超の配当性向を実現

出典:FactSetコンセンサス予想、2020年1月10日時点

FMCGピア企業配当性向(2019年度)(%)

89.0

78.8

65.961.3 60.5

49.644.7

38.0

61.0

43.2

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50

周辺的な資産を売却することで、主力事業に再投下できる時間と資金が生まれる

» 多くの生活必需品企業がこの好循環を有利に活用できる

» コスト削減により販売やマーケティングに充てる資金が増え、ブランドを成長させて価格決定力や価格・商品ミックスを向上させることができる

純売上高の増加

潜在的な総利益/マージンの増加

間接費の引き締め

ブランド構築を展開

イノベーションの推進

価格・商品ミックスの改善

持続的な成長

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結論:長期的なTSRを向上する絶好の機会

»キリンは主力の酒類アセットにより魅力的なポートフォリオを有しており、以下の施策により高い株主価値を創出することができる:

»主力以外の資産を処分する

»主力事業の業績向上に注力する

»当社が提案したアクションはすべて、

»経営陣が支配掌握できるもの

»ROEおよび日本のコーポレート・ガバナンス・コードの遵守を重視したもの

»ソニー、オリンパス、日立等、日本のグローバル企業の前例があり、成功裏に実施できるものであること

»キリンの株価低迷を解消すべく、経営陣に協力していきたい。

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フランチャイズ・パートナーズはキリンに対して、重要な推奨事項を実行に移すため、3つの株主提案を提出

»非中核事業の売却資金を使った、6,000億円の自己株式取得

»株主への資本還元に用いる資金を得るため、非中核事業の売却時期を調整し、売却すべき資産を選択することについて、キリンの経営陣に柔軟性を与えている。

»取締役のインセンティブ報酬の比重の増加

»投下資本利益率(ROIC)を最大化するという株主の利益と、取締役の報酬を整合させるもの。

»独立取締役としての適格性が高い候補者 2名の推薦

»現在のキリンの取締役会に欠けている、独立性および業界への深い見識を追加。新たな独立取締役2名を選任することにより、より経験豊富でより独立性を持った取締役会となる。

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付属書類

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