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両国リバーセンタープロジェクト 審査講評 平成29年8月31日

両国リバーセンタープロジェクト 審査講評1 第1 プロジェクトの目的及び内容 1. プロジェクトの名称 両国リバーセンタープロジェクト※1(以下「本プロジェクト」という。)

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Page 1: 両国リバーセンタープロジェクト 審査講評1 第1 プロジェクトの目的及び内容 1. プロジェクトの名称 両国リバーセンタープロジェクト※1(以下「本プロジェクト」という。)

両国リバーセンタープロジェクト

審査講評

平成29年8月31日

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<目 次>

プロジェクトの目的及び内容 ........................................................ 1 第1

プロジェクトの名称 ................................................................ 1 1.

事業対象敷地 ...................................................................... 1 2.

両国リバーセンター事業※2及び本プロジェクトの目的 ................................. 1 3.

本プロジェクトの方向性 ............................................................ 2 4.

整備する施設 ...................................................................... 3 5.

本プロジェクトの進め方 ............................................................ 3 6.

事業スケジュール(予定) .......................................................... 4 7.

事業予定者の募集及び選定 .......................................................... 5 第2

募集及び選定の方法 ................................................................ 5 1.

募集の経緯 ........................................................................ 5 2.

審査の経緯 ........................................................................ 5 3.

審査結果 .......................................................................... 6 第3

提案書等の受付 .................................................................... 6 1.

審査結果 .......................................................................... 6 2.

応募者別の評価結果 ................................................................ 7 3.

事業予定者及び次点の決定 ......................................................... 11 4.

事業予定者の提案概要 ............................................................. 12 5.

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プロジェクトの目的及び内容 第1

プロジェクトの名称 1.

両国リバーセンタープロジェクト※1(以下「本プロジェクト」という。)

事業対象敷地 2.

所在地 :東京都墨田区横網一丁目2番 15号ほか

面積 :約 1,510㎡(区有地 約 1,040㎡、都有地 約 470㎡)

用途地域 :商業地域及び第一種住居地域

指定建ぺい率 :80%及び 60%

指定容積率 :500%及び 200%

その他地域地区:防火地域、最低限高度地区

両国リバーセンター事業※2 及び本プロジェクトの目的 3.

両国リバーセンター事業の目的 (1)

両国地区は、両国川開きや大相撲、葛飾北斎に代表される浮世絵など江戸時代の文化の発信地で

あり、かつての江戸のにぎわいの中心であった。現在では、両国国技館や江戸東京博物館、旧安田

庭園等の施設が立地し、平成 28年にはすみだ北斎美術館が開館、刀剣博物館の建設が開始されるな

ど、歴史・文化に関わる観光資源が集積する拠点としてのブランドを確立している。また、都心に

近接し、主要な幹線道路や複数の鉄道駅からのアクセスが容易であるとともに、隅田川と神田川の

交点に位置することから、水運と陸運とを結節する交通拠点としても高いポテンシャルを有してい

る。さらに、平成 32年の東京オリンピック・パラリンピックでは、両国国技館がボクシングの競技

会場として使用されることが決定している。

こうした地区の特徴や周辺動向を背景に、平成 26年 12月に東京都(以下「都」という。)が策定

した「東京都長期ビジョン」では、東京を訪れる人を魅了する新たなにぎわいの創出に向けた施策

として、隅田川の両国エリアをにぎわい誘導エリアとして位置付け、重点的な施策展開を進めてい

くことが示された。

また、都は、平成 28 年1月に策定した「防災船着場整備計画(改訂版)」において、災害時にお

ける隅田川と江東内部河川、神田川等へ結ぶ積み換え・乗り換え、物資輸送や移動経路ネットワー

クの拠点として、既存の両国船着場に新たにターミナル機能をもつ船着場を増設することとした。

災害時には防災船着場の中継拠点として両国船着場を使用予定である。

平成 25年に墨田区(以下「区」という。)は、「両国観光まちづくりグランドデザイン」を策定し、

両国にある観光資源を輝かせ、にぎわいを創出するとともに区内の回遊性を促すことを目指してい

る。さらに、平成 27 年4月に策定した「墨田区観光振興プラン」では、平成 32 年までに戦略的に

観光振興を特に図るべき拠点(戦略拠点)として、両国ゾーンを位置付け、戦略的・集中的な観光

振興事業の展開を示した。都及び区は、両国リバーセンター事業をきっかけに、防災性の向上を図

るとともに、両国地区の更なる魅力向上、ひいては世界中から訪れる人々を歓迎する都市・東京の

実現につなげていく。

※1 両国リバーセンタープロジェクト

本募集要項において公募・選定した民間事業者が、事業対象敷地を活用し、両国リバーセンター事

業の拠点となる複合拠点施設(以下、「本施設」という。)を整備・運営するプロジェクトをいう。

※2 両国リバーセンター事業

両国船着場整備、両国リバーセンタープロジェクト及び関連して整備する防潮堤のスーパー堤防化

等により、両国船着場と周辺地域との動線を強化する施策を展開する事業をいう。

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本プロジェクトの目的 (2)

本プロジェクトは、両国リバーセンター事業における都及び区の施策の方向性に基づき、両国地

区の事業対象敷地を活用し、観光地であること、また隅田川沿いであるという両国の地域特性を活

かし、地域との連携可能な民間プロジェクトを誘導することを目的とする。本プロジェクトの実施

により、事業対象敷地を含む隅田川周辺の親水性の高い快適な空間を整備し、水辺空間のにぎわい

創出や、隅田川テラスや舟運利用者の増加につながることを目指している。

本プロジェクトの方向性 4.

対象地区の地域特性や課題を踏まえ、地域資源を活かして人を呼び込み、地域の魅力を発信する

ための、事業対象敷地の効果的な活用の方向性を示す。

<事業目標>

地域に根付く歴史・文化を活かし、『水の都』東京の顔となる拠点の形成

防災性の向上 (1)

両国リバーセンター事業では、両国船着場における防災船着場の増設を行い、水上バスや小型船

舶を利用した帰宅困難者、緊急物資の輸送拠点とする予定である。本プロジェクトでは、民間事業

者の協力のもと、両国リバーセンターの拠点となる本施設において、帰宅困難者の一時待機機能を

確保する。

新たなにぎわい拠点の創出 (2)

ア 官民連携により事業対象敷地を活用することで、民間事業者の創意工夫によるにぎわいを創出

する。

イ 訪れる人々が水辺に滞留し憩えるカフェやレストラン等、にぎわい拠点にふさわしい民間施設

を導入することで人々が訪れたいと思う空間とし、水辺への新たな人の流れを創出する。

水辺とまちの動線強化 (3)

ア 水辺とまちのスムーズな動線に配慮した、待合機能や事務所の機能を有する都民利便施設(以

下、待合機能、事務所機能を合わせて「都民利便施設」という。)の配置など、スーパー堤防整

備に併せて、水辺と一体感ある本施設の整備による利便性の向上を図る。

イ 舟運事業者との連携により両国への観光船就航を促進する。

ウ 案内看板の設置等により、水辺とまちの案内性を改善する。

観光基点としての情報発信 (4)

待合機能や民間機能において、多様な媒体による水辺とまちの情報発信を行うことで、観光基点

としても活用し、両国船着場の認知度向上とともに周辺観光施設との結びつきを強化していく。

隅田川テラス等河川区域の活用 (5)

建物前面の隅田川テラス等河川区域において、民間事業者による水辺のにぎわい創出の提案を誘

導し、にぎわい拠点としての魅力向上を図る。

民間活力の活用・民間資金の調達による行政コスト縮減 (6)

一般公募型プロポーザル方式により本プロジェクトを実施する民間事業者(以下「選定事業者」

という。)を選定し、事業対象敷地を貸し付けた上で、民間事業者の負担により公共機能(都民利便

施設及び子育てひろば)を含む複合施設を建設することで、都及び区の費用負担の縮減を図る。

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整備する施設 5.

選定事業者は、事業対象敷地を賃借し、以下の「公共機能」、「民間機能」、「共用施設等」からな

る「本施設」を整備する。

現状、事業対象敷地内にある既存の両国待合所及び事務所、墨田区両国子育てひろば(以下「子

育てひろば」という。)については、都及び区で解体、仮移転、本移転を行う。

都は、本プロジェクトに併せ、事業対象敷地沿いの河川敷地において、両国船着場及びスーパー

堤防を整備する。

公共機能 (1)

ア 都民利便施設(都の機能)

・両国船着場管理等のための事務所機能及び舟運利用者の待合機能や舟運に関する情報を提供す

る。

イ 子育てひろば(区の機能)

・定期利用保育及び一時預かり事業の保育室及び子育て相談機能(ひろば事業)を備えた子育て

支援を行う。

民間機能 (2)

施設の用途については、選定事業者の提案によるが、「第1 4 本プロジェクトの方向性」を踏ま

えた上で適切な用途を提案すること。また、レストランやカフェ等の飲食機能を含むものとする。

共用施設等 (3)

ア 玄関、廊下、階段、エレベーター等

イ 機械設備、電気設備、消防設備、ごみ置場等

ウ 外構

エ サイン計画

本プロジェクトの進め方 6.

基本協定の締結 (1)

都及び区は、一般公募型プロポーザル方式により、本プロジェクトへの参加を希望する民間事業

者又は複数の企業から構成される民間事業者のグループ(以下「応募者」という。)から、最優秀提

案者を選定する(以下、プロポーザルにより最優秀提案者として選定された応募者を「事業予定者」

という。)。

都及び区は、事業予定者と具体的内容等に関して協議を行い、この協議結果に基づき事業実施に

係る基本協定を締結する。なお、事業予定者が複数の企業から構成される民間事業者のグループの

場合は代表企業と基本協定を締結する。基本協定締結以降は、事業予定者(民間事業者のグループ

の場合は代表企業)が選定事業者となる。

定期借地に関する契約の締結 (2)

都、区及び選定事業者は、事業用定期借地権設定のための覚書を締結し、既存施設の除却後、借

地借家法(平成3年法律第 90 号)第 23 条に定める事業用定期借地権設定契約を公正証書により、

締結する。

住民・利用者説明会 (3)

選定事業者は、近隣事業所、住民及び子育てひろば利用者等に対し、本プロジェクトが円滑に進

むように必要に応じて説明会を開催する。

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また、上記のほかに、都及び区が行う説明会に際しては、選定事業者は資料作成等の支援を行う。

既存施設の機能の仮移転等 (4)

都及び区は、既存施設の機能の仮移転計画を作成し、仮設棟の建設、仮設棟への仮移転、本施設

への本移転等を行う。

既存施設の解体・撤去・スーパー堤防の整備 (5)

都は、事業対象敷地の既存施設の除却及びスーパー堤防の整備を行う。なお、除却及びスーパー

堤防整備(盛土のみ)は、平成 30年9月末までに終了予定である。

本施設の整備 (6)

選定事業者は、創意工夫に基づき、本施設を自らの資金負担により企画、設計及び建設を行う。

選定事業者は、募集要項等に従い、公共機能部分について都及び区と協議し、設計を行う。

公共機能にかかる賃貸借契約の締結 (7)

都、区及び選定事業者は、公共機能部分について、賃貸借契約を締結する。

本施設の運営及び維持管理 (8)

選定事業者は、本施設を運営及び維持管理する期間を通じ、「第1 6 官民の役割分担」に基づき、

運営及び維持管理等を行う。

事業対象敷地の返還 (9)

選定事業者は、事業期間終了時に、事業対象敷地を更地とした上で、都及び区に返還する。

事業スケジュール(予定) 7.

本プロジェクトを含む両国リバーセンター事業のスケジュールは、以下を予定している。

H28年度 H29年度 H30年度 H31年度 H32年度

本施設整備等

事業者選定

設計

建設

既存施設移転

スーパー堤防整備(両国リバーセンター事業)

盛土の設計

盛土等

修景

防災船着場整備(両国リバーセンター事業)

設計

製作・設置

9月:基本協定

仮設設置・移転

10月:工事着手可能

解体等:9月末まで

移転:5月末まで 仮設施設解体

9月末まで

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事業予定者の募集及び選定 第2

募集及び選定の方法 1.

募集に当たっては、「一般公募型プロポーザル方式」を採用し、本プロジェクトへの参加を希望する応

募者を公募した。提案書等の審査は、外部有識者を含む両国リバーセンタープロジェクト審査委員会(以

下「審査委員会」という。)が匿名審査を行い、最優秀提案者及び次点を選定した。

都は、その選定結果を踏まえ、事業予定者及び次点を決定した。

募集の経緯 2.

応募者からの提案募集を、以下の通り行った。

平成 29年4月 10日(月) 募集要項の公表

平成 29年4月 10日(月)~7月 7日(金) 配付資料受取の受付

平成 29年4月 10日(月)~4月 20日(木) 質問書の受付

平成 29年5月 19日(金) 事業者募集要項等への質問回答書の公表

平成 29年5月 29日(月) 事業者募集要項等への質問回答書の公表

(後日回答分)

平成 29年5月 30日(火) 対面での質疑応答の実施

平成 29年 6月 2日(金)~6月 14日(水) 子育てひろば見学会の実施

平成 29年 6月 16日(金) 資格要件事前確認書の提出

平成 29年7月 10日(月) 提案書受付

審査の経緯 3.

審査体制 (1)

審査委員会の構成は以下のとおりである。(委員長以下五十音順、敬称略)

氏名 所属

委員長 岸井 隆幸 日本大学理工学部 教授

委 員 安藤 算浩 監査法人ナカチ 代表社員

委 員 小林 信夫 日本不動産研究所 常務理事

委 員 田中 正明 ※ 墨田区都市整備部長(第3回、第4回)

委 員 東野 寛 東京都建設局河川部長

※ 第1回、第2回は渡辺茂男(前墨田区都市整備部長)

審査の経緯 (2)

審査委員会は、以下の日程、内容で行った。

議事 開催日時

第 1 回 1.事業概要の説明

2.現地見学 等 平成 29年 2月 17日(金)

第 2 回 1.募集要項等の概要説明

2.審査基準の審議 等 平成 29年 3月 31日(金)

第 3 回

1.経過報告(適格要件の審査、審査方法確認)

2.提案概要の説明

3.提案内容の審議

4.ヒアリングの進め方について 等

平成 29年 7月 25日(火)

第 4 回

1.事業者ヒアリング 13:25~15:40

2.提案書の審議 15:50~16:20

3.評価点の決定

4.審査講評の審議 等 16:30~16:55

平成 29年 8月 4日(金)

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審査結果 第3

提案書等の受付 1.

平成 29 年 7 月 10 日に提案書等を受け付けたところ、2 グループから応募があった。

審査結果 2.

適格要件の審査 (1)

ア 資格要件の審査

参加資格要件に関する要件について、すべての応募者が満たしていることを確認した。

イ 基本的事項の適格審査

提案に係る基本的な条件について、すべての応募者が満たしていることを確認した。

性能及び提案価格審査 (2)

ア 事業計画の審査

①水辺空間のオープン化、にぎわい創出に関する計画・技術的な評価

各応募者の提案について、開発コンセプト、施設計画、工事計画、河川空間や舟運の利用者増加

のための取組について、技術的な視点から、加点方式により評価した。

②事業の運営・経営的な評価

各応募者の提案について、運営や維持管理計画、事業実施体制や安定化方策、財務計画について、

事業経営的な視点から、加点方式により評価した。

貸付料及び賃料の審査 (3)

選定事業者が都区に支払う土地の貸付料、及び都区が選定事業者に支払う施設の賃料について、

審査基準に示す計算式により評価した。

総合的な評価 (4)

上記の審査項目だけでは評価が十分にできない内容、事業全体での総合的な評価を対象とし、加

点方式により評価した。

審査委員会は、上記審査の結果、「グループ 1」を最優秀提案者、「グループ 2」を次点として選定し

た。

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応募者別の評価結果 3.

審査委員会による評価結果の概要を示す。

最優秀提案者 「グループ 1」 (1)

「グループ 1」の提案は、多彩な地域の魅力を発信し、回遊・滞在の拠点としてにぎわいを生み出し続

ける『すみだ両国にぎわいゲート』をコンセプトとしている。そのコンセプトを実現する 3 つのテーマ

として「地域の魅力を伝えるコンシェルジュとしての、地域と共に歩むホテル」「水辺とまちをつなぎ、

にぎわいと安心を生むゲート」「実績豊富な企業が協働するコンソーシアム」を掲げており、水辺とまち

に開き、地域の魅力と一体化してともに歩むホテル、水辺に新たなにぎわいを生み出すイベント誘致や

回遊拠点機能の強化、多機能防災空間等が提案されている。

ア 事業計画の審査

(ア)水辺空間のオープン化、にぎわい創出に関する計画・技術的な評価

①本事業敷地における開発コンセプトの評価

東京都・墨田区の上位計画を把握した上で、防災機能、水辺のにぎわい、舟運とまちをつなぐ交

通結節点機能、観光拠点、といった様々な目的を的確にとらえたコンセプトが提案されていると評

価された。

②施設計画の評価

大階段とエスカレーターによる幅の広い動線の確保や水辺の雰囲気をまちに取り込む大屋根の設

置が、水辺とまちを結ぶ魅力ある結節空間として評価された。

民間事業者としての防災備蓄倉庫に加え、東京都・墨田区が活用可能な防災備蓄倉庫の提供や、

民間施設での一時避難者の受け入れ、防災船着場と連携した緊急搬送対応スペースの確保等が評

価された。

バスや車の出入り口の安全性にやや懸念があり、今後、交通管理者等と十分調整していく必要が

あるとの指摘があった。

子育てひろばについては、部屋の間仕切り壁等に関して今後十分な調整を行う必要があるとの指

摘があった。

③工事計画の評価

埋蔵文化財調査やスーパー堤防工事との調整が必要であることを理解した上で、事前協議の実績

がある企業を構成員とした取り組み体制が評価された。

工期について、1か月前倒しの提案があったことが評価された。

前面道路にクレーンを設置し施工を行う点について、安全に留意して工事を行うこと、また、交

通管理者と十分調整していく必要があるとの指摘があった。

④河川空間や舟運の利用者増加、利用者の満足度や利便性向上の実現性、効果の評価

既存イベントへの参画・連携や、河川敷地を活用したにぎわいイベントの誘致、本施設内飲食店

による河川区域の活用など、河川空間に対する積極的な提案があったことが評価された。

観光に関しては、舟運利用の促進のため、浅草・押上エリアとの連携や、地元企業との連携によ

る観光ツアーの開発等、水辺を活かした観光や、回遊性の向上など多くの積極的な提案があった

ことが評価された。

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(イ)事業の運営・経営的な評価

①民間機能の運営及び維持管理計画の評価

「すみだ両国や隅田川の文化を感じるホテル」として、地域密着型のホテルコンセプトである点

が評価された。

広い客室と上質なサービス提供を行うホテルの提案であり、現在、両国にあるビジネスホテルと

は一線を画した運営を目指している点が評価された。

災害時の一時避難施設としての墨田区との協定提案など、災害時への協力体制が評価された。

様々な運営事業者との連携について、具体的に協議がなされており、実現性が高い点が評価され

た。

②事業の実施体制や安定化方策に関する評価

墨田区に本社がある設計会社、建設会社の構成員としての事業参加や、代表企業の安定した経営

状況や類似事業実績が評価された。

代表企業を中心とした適切なリスク管理体制が評価された。

様々な運営企業との連携を行うための協議・調整が行われている点が評価された。

③事業収支計画など財務的な評価

安定した経営状況にある代表企業による資金調達や、実績や見積もり等、妥当性の高い根拠に基

づいた収支予測が評価された。

イ 総合的な評価

本プロジェクトのコンセプトをよく理解した上で、意欲的な提案を行っており、特に、水辺とま

ちを繋ぐ意識が高く、水辺のにぎわい創出のため、様々な提案を行っている点が優れている。

防災の観点からは、施設・運営双方で、都や区との協力体制が提案されている点が優れている。

観光に関しては、舟運利用の促進のため、浅草・押上エリアとの連携や、地元企業との連携によ

る観光ツアーの開発等、水辺を活かした観光や、回遊性の向上など多くの積極的な提案が行われ

ている点が優れている。

長期にわたるホテル運営の安定化方策や地域との連携など、事業の運営・経営において提案の熟

度が高く、実現可能性の高い点が優れている。

一方で、

子育てひろば計画案については、やや使い勝手が悪いという指摘があった。

バスや車の出入り口の安全性にやや懸念があり、今後、交通管理者等と十分調整していく必要が

あるとの指摘があった。

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次点 「グループ 2」 (2)

「グループ 2」の提案は、両国が、江戸東の水運の入り口(門=「MON」)として栄えた歴史を踏ま

え、「集い・とどまり・愉しむ」にぎわい拠点「MON」をコンセプトとしている。

そのコンセプトの下、東京都・墨田区の上位計画との整合性の高い民間施設としてのホテル、地域

のにぎわい創出に貢献するミュージアム、トラベルラウンジ、ランニングステーション、防災拠点と

しても機能する大階段等が提案されている。

ア 事業計画の審査

(ア)水辺空間のオープン化、にぎわい創出に関する計画・技術的な評価

①本事業敷地における開発コンセプトの評価

東京都・墨田区の上位計画を把握した上で、両国の文化と歴史を感じられる外観デザイン、地域

の文化・観光資産を活用し発信するミュージアムなど、両国らしさを前面に押し出していると評価

された。

②施設計画の評価

大型バスのスムーズな動線が確保されている点が評価された。

スーパー堤防天端からフラットに入れるカフェ、水辺側へのオープンカフェスペースの確保など、

水辺とのつながりを意識した民間施設の設えがある点が評価された。

子育てひろばについて、部屋の配置や採光の確保等、使い勝手の良い計画案である点が評価され

た。

両国国技館の幟(のぼり)をモチーフとするなど、両国らしさを意識した外観デザインや、子育

てひろばへの入りやすさが評価された。

街と水辺空間をつなぐ動線としての大階段については、やや幅が狭いのではないかという指摘が

あった。

③工事計画の評価

工期について、3.5か月前倒しの提案があったことが評価された。

敷地内のみで施工を行う点が、周辺地域への安全性の確保という点で評価された。

④河川空間や舟運の利用者増加、利用者の満足度や利便性向上の実現性、効果の評価

舟運のチケット販売における、ホテル側での協力体制が評価された。

河川敷地を活用する提案がほとんどなかった点が、水辺のにぎわいというコンセプトとの合致と

いう点において不十分であるという指摘があった。

民間機能としては、ミュージアム、トラベルラウンジの設置、カフェレストラン内にランニング

ステーションの設置など、地域のにぎわい創出に資する提案があったが、ミュージアムの具体的

な運営者がまだ全く決まっていない等、実現性の点で懸念があるという指摘があった。

(イ)事業の運営・経営的な評価

①民間機能の運営及び維持管理計画の評価

運営事業者を構成員としており、実現可能なホテル提案であることが評価された。

災害時の一時避難施設として、民間機能を提供するなど、災害時への協力体制があることが評価

された。

ミュージアムの運営者が決定していないなど、様々な事業者との連携について必ずしも十分とは

言えない点があり、実現性の点でやや不透明であるという指摘があった。

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②事業の実施体制や安定化方策に関する評価

代表企業の安定した経営状況や、構成員の類似事業実績が評価された。

リスク対応方策については、基本的に保険での対応であり、リスクの事前予防、軽減への配慮が

あまり示されていないとの指摘があった。

③事業収支計画など財務的な評価

安定した経営状況にある代表企業による資金調達や、見積もり等に基づいた適切な収支予測が評

価された。

イ 総合的な評価

両国らしさを意識した外観デザインや、スムーズな大型バス動線、子育てひろばの使い勝手のよ

い計画などに関して優れた提案であった。

工期短縮への高い貢献や工事の安全への配慮などに関して優れた提案であった。

一方で、

河川敷地を活用する提案がほとんどなく、河川との連携に対する意識が薄いとの指摘があった。

ミュージアムについては意欲的な提案ではあるが、具体的な運営事業者が特定できておらず、実

現可能性に不透明さが残るという指摘があった。

総評 (3)

本プロジェクトは、隅田川沿い・防災船着場隣接という立地から、水辺を活かした新たなにぎわ

い拠点の創出、防災性の向上、水辺とまちの動線強化、観光基点としての情報発信を官民連携によ

り実現することを目的としている。

今回、2グループからの提案があったが、いずれの提案も、今後の両国地区における、発展への

寄与が期待できるものであり、熱意ある魅力的な提案であった。

募集要項の公表から、提案書の受付までの短い期間内に、このような提案をまとめ、より良い事

業の実施を目指した各グループに敬意と感謝を表したい。

特に、グループ1の提案は、水辺とまちを繋ぐ意識が高い点、水辺のにぎわい創出のために様々

な提案が行われている点、また、長期にわたるホテル運営の安定化方策や地域との連携など、事業

の運営・経営面の提案熟度が高い点で優れた内容となっていた。

今後、事業の具体化に向け、特に指摘があった点については、各管理者と十分に調整を図りつつ、

提案内容の検討を深度化し、必要に応じて改善を行うなど、より優れた事業の実施を期待する。

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事業予定者及び次点の決定 4.

都及び区は、審査委員会の選定結果を受けて、事業予定者と次点を次のとおり決定した。

今後、事業予定者と協議の上、基本協定及び事業用定期借地権設定契約を締結し、事業の目的の実現

を図っていく。

事業予定者 グループ 1 (1)

代表企業 ヒューリック株式会社

構成員 株式会社 佐藤総合計画

鉄建建設株式会社

坂田建設株式会社

次点 グループ 2 (2)

代表企業 大和ハウス工業株式会社東京本店

構成員 株式会社 久米設計

UDS 株式会社

※次点の取扱いについて、都及び区は、事業予定者との協議が調わない場合又は事業予定者が失格要件

に該当した場合、次点と協議することができるものとする。

Page 15: 両国リバーセンタープロジェクト 審査講評1 第1 プロジェクトの目的及び内容 1. プロジェクトの名称 両国リバーセンタープロジェクト※1(以下「本プロジェクト」という。)

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事業予定者の提案概要 5.

コンセプト (1)

多彩な地域の魅力を発信し、回遊・滞在の拠点としてにぎわいを生み出し続ける「すみだ両国に

ぎわいゲート」

※ゲート:地域回遊の拠点となる立体公共空間

主な提案内容 (2)

① 水辺とまちに開き、地域の魅力と一体化して共に歩むホテル

② 施設の顔となり地域回遊の基点となる大階段

③ 防災備蓄倉庫の設置や、ホテルレストランでの帰宅困難者受入等の防災機能

④ 浅草のホテルとの連携による舟運利用者の増加や、隅田川テラスへのイベント誘致

⑤ 利用実態を踏まえた安心安全で心地よい子育て環境

貸付料及び賃料 (3)

公共用地貸付料

5,250,000 円/月(うち、区有地 4,206,326 円/月 都有地 1,043,674 円/月)

事業者所有建物賃料(税込)

墨田区支払 4,128,840 円/月 東京都支払 1,023,840 円/月

施設の概要 (4)

用途 公共機能 子育てひろば、

都民利便施設(舟運利用者の待合スペース)

民間機能 ホテル、カフェレストラン、観光案内所

延床面積(容積率) 8,064 ㎡(473.4%)

高さ(階数) 35m(地上 9 階)

完成予想図 (5)

※提案時の内容であり、今後の協議等により変更になることがあります。

国技館通り側 隅田川側