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コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた 小型衛星・小型ロケットの技術戦略に関する研究会 報告書 平成 30 5

コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた …...図表 11:Planet の超小型衛星 .....13 図表 12:Spireの超小型衛星 .....14 図表 13:PlanetiQ

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コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた

小型衛星・小型ロケットの技術戦略に関する研究会

報告書

平成 30 年 5 月

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目次 1 はじめに .......................................................................................................................... 1

1.1 背景 .............................................................................................................................. 1 1.2 関連政策 ...................................................................................................................... 1

1.2.1 宇宙産業ビジョン 2030 .................................................................................... 2 1.2.2 未来投資戦略 2017 ........................................................................................... 3

1.3 本報告書における「小型衛星」の定義 ....................................................................... 4 2 小型衛星・小型ロケット分野の現状 .............................................................................. 9

2.1 小型衛星・小型ロケット分野の市場動向 ................................................................... 9 2.2 小型衛星コンステレーションビジネスの急速な拡大 ................................................11 2.3 小型ロケット事業者の台頭 ....................................................................................... 17 2.4 小型衛星・ロケット向け部品事業者の動向 .............................................................. 19 2.5 小型衛星・小型ロケットビジネスを支援する各国施策 ........................................... 25

3 コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた小型衛星・小型ロケットの技術戦

略のあり方に関する研究会 ........................................................................................... 32 3.1 研究会の目的 ............................................................................................................. 32 3.2 我が国コンステレーションビジネスの競争力強化における課題抽出と論点整理 ... 32 3.3 研究会における議論と取組の方向性......................................................................... 34

3.3.1 論点①:キーとなる部品・コンポーネントの特定 ........................................ 34 3.3.2 論点②:小型衛星・小型ロケットの生産技術・試験 .................................... 41 3.3.3 論点③:小型衛星・小型ロケット部品の販路拡大に当たっての課題 .......... 46 3.3.4 論点④:標準化・協調領域化の推進.............................................................. 48 3.3.5 その他の論点 .................................................................................................. 50

4 終わりに ........................................................................................................................ 52 【補足】コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた小型衛星・小型ロケットの技術

戦略に関する研究会の概要 ........................................................................................... 53

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図表目次

図表 1:我が国事業者が開発する小型衛星の例 ............................................................ 6 図表 2:国内の大学において開発された衛星の例 ........................................................ 6 図表 3:世界のコンステレーション計画の例(通信) ................................................. 7 図表 4:世界のコンステレーション計画の例(リモートセンシング) ....................... 7 図表 5:小型衛星(500kg 以下)市場における商業部門と公共部門の市場予測 ......... 9 図表 6:小型衛星(1-200kg)の打上げ数の推移 ....................................................... 10 図表 7:2013 年~2022 年の小型衛星のセクターごとの利用 .................................... 10 図表 8:世界のコンステレーション計画の例(通信)(再掲) ...................................11 図表 9:世界のコンステレーション計画の例(リモートセンシング)(再掲) ..........11 図表 10:Oneweb 衛星による通信事業 ....................................................................... 12 図表 11:Planet の超小型衛星 .................................................................................... 13 図表 12:Spire の超小型衛星 ...................................................................................... 14 図表 13:PlanetiQ の超小型衛星による大気観測....................................................... 15 図表 14:低コスト製造技術と COTS コンポーネントを使用している企業の動向 .... 16 図表 15:Oneweb 社の小型衛星製造工場 ................................................................... 16 図表 16:小型ロケットの例 ......................................................................................... 19 図表 17:Clyde Space 提供部品群 .............................................................................. 20 図表 18:SODERN 社のスタートラッカ .................................................................... 20 図表 19:SODERN 社のスタートラッカ「AURIGA」.............................................. 22 図表 20:ISIS 社製の部品 ........................................................................................... 23 図表 21:ISIS 社の EC サイト .................................................................................... 23 図表 22:MOOG 社の製品一覧 ................................................................................... 24 図表 23:NEWSPACE SYETEMS 社の製品例 .......................................................... 25 図表 24:QB50 プログラムのイメージ ....................................................................... 30 図表 25:Rutherford Appleton 研究所の衛星組立・試験施設 ................................... 31 図表 26:小型衛星・小型ロケット分野における課題抽出と論点の整理 ................... 33 図表 27:それぞれの論点に対応する施策の方向性に関する仮説 .............................. 33 図表 28:小型衛星向けコンポーネントメーカー例 .................................................... 35 図表 29:Oneweb における小型衛星の量産体制 ........................................................ 36 図表 30:小型ロケットの構造効率向上の取組例 ........................................................ 39 図表 31:低価格化に資する小型ロケット製造技術 (1) .............................................. 42 図表 32:低価格化に資する小型ロケット製造技術 (2) .............................................. 43

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1 はじめに 1.1 背景 昨今の宇宙ビジネスは、大きなパラダイムシフトのさなかにある。衛星から得られるデー

タの質・量が抜本的に向上しつつあり、宇宙データが“Connected Industries1”やビッグデー

タの一部として位置づけられ、他の様々な地上データと組み合わされるとともに、AI 等の

最新技術を活用して解析することで、様々な分野で従来にはなかった新たなサービス・価値

の創出が期待されている。また、宇宙ビジネスのプレイヤーという観点においても、これま

での衛星やロケット開発は大企業が中心となって行われてきたが、近年はベンチャー企業

の台頭が著しく、平成 30 年 3 月 20 日には、安倍首相からリスクマネー供給をはじめとす

る、宇宙ベンチャー育成のための新たな支援パッケージも発表された。 このような新たなソリューションやプレイヤーの登場を促す要因の一つとして、技術革

新による小型衛星の高性能化・低コスト化がある。安価な小型衛星生産の可能性を背景に、

小型衛星コンステレーションによる高頻度観測サービス等の新たなビジネスプレイヤーや

ビジネスモデルが急速に成長している。また、こうした小型衛星の打上げ需要の高まりか

ら、小型ロケットを開発し、低価格で衛星の打上げを行うビジネスモデルも登場している。 世界に目を向けると、コンステレーションビジネスの更なる発展を見据え、小型衛星・小

型ロケットの量産化の実現に向けた取組が加速しているところ、我が国においても世界の

潮流を踏まえた上で、データビジネスを支える小型衛星・小型ロケット事業の競争力強化の

ため、当該事業展開における課題は何かを議論し、それに対する取組の方向性の議論を深め

る必要がある。 そこで、平成 29 年 12 月に様々なステークホルダから構成される「コンステレーション

ビジネス時代の到来を見据えた小型衛星・小型ロケットの技術戦略に関する研究会」を立ち

上げ、小型衛星・小型ロケット分野における我が国の「勝ち筋」についての議論を重ねてき

た。本報告書は同研究会での議論の結果をとりまとめたものである。

1.2 関連政策 コンステレーションビジネスの急速な成長や、当該ビジネスを支える小型衛星・小型ロケ

ットの技術革新に関する政策文書を示す。いずれの政策文書においても、小型衛星コンステ

レーションのための量産化の進展に伴う宇宙利用ユーザの拡大に関連した、新たなビジネ

スの創出を支援する方針が示されており、小型衛星・小型ロケットの技術戦略の検討は我が

国の政策的にも重要な事項であることが分かる。

1 経済産業省が 2017 年 3 月に提唱した我が国の産業が目指すべき姿のこと。様々な業種、企業、人、機

械等がつながることにより、新たな価値創出を図り、顧客や社会の課題を解決するという、産業の未来

像を示す。

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1.2.1 宇宙産業ビジョン 2030 平成 29 年 5 月に公表された「宇宙産業ビジョン 2030」(宇宙政策委員会決定)は、宇宙

産業の振興を図り、他産業の成長や新産業の創出にもつなげるという考えのもと策定され

たビジョンである。宇宙産業全体の市場規模(現在 1.2 兆円)を 2030 年代早期に倍増させ

ることを目標とし、宇宙利用産業、宇宙機器産業、海外展開、新たな宇宙ビジネスを見据え

た環境整備の観点から課題と対応策をとりまとめたものである。 同ビジョンでは、宇宙利用産業の振興に向けた取組みとして、宇宙機器の国際競争力強化

等による成長の実現等が掲げられている。以下に関連部分を抜粋する。

1. 宇宙産業をめぐる内外の情勢

1.1 海外の宇宙産業の新たな動き/世界的なパラダイムチェンジ

(コスト低下による宇宙利用ユーザの広がり) 衛星の小型化、さらには小型衛星コンステレーションのための量産化に伴い、衛星製造に

も生産革命が起こりつつあるとともに、宇宙専用の部品以外の汎用品も活用することで、従

来の大型衛星とは桁違いに安価なコストで衛星が製造可能となる。また、ロケットの量産

化、再使用型ロケットの開発、ロケットそのものの小型化等、衛星の打上げコストも低価格

化への流れが強まっている。 2. 宇宙産業の方向性(日本の宇宙産業の成長の好循環に向けて)

2.1 成長を担う各分野の方向性

(新たなビジネスの創造と宇宙産業エコシステムの形成) 衛星データを活用したソリューションビジネスに加え、小型衛星コンステレーションに

よる高頻度観測サービス、軌道上サービス、宇宙資源開発など、いわゆる「ニュースペース」

と呼ばれるベンチャーを中心とした新たなビジネスプレイヤーやビジネスモデルが、急速

に成長しつつある。この国際的に新しいビジネス領域において、我が国の関連ベンチャーや

新規参入者等がその一角を占めるべく成長することで、我が国宇宙産業のさらなる成長の

一翼を担うことが期待される。リスクマネーの供給や関連制度整備等の事業環境整備を図

ることにより、これら新たなビジネスの発展を図っていく。 4.宇宙機器産業

4.2 宇宙機器産業の振興

4.2.2 国際競争力の確保(新型基幹ロケット(H3)、小型ロケット、部品・コンポーネン

ト戦略、調達制度、技術開発)

<民生部品を用いた安価な小型ロケットの開発> 超小型衛星を安価に打ち上げることが可能な小型ロケットを世界に先駆けて市場に投入

するため、民生部品を用いた安価な小型ロケット開発支援を継続する。加えて、飛行安全に

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要するコストの低減に向け、自律飛行安全技術の早期確立及びその安全基準の策定を進め

る。また、早期開発の実現に向け、リスクマネー供給等を通じた支援を行う。 <部品・コンポーネント技術戦略の推進> 我が国の宇宙活動においてキーとなる部品・コンポーネントを選定し、技術開発・実証

等を積極的に推進・拡大していく。2016 年 3 月に取りまとめられた「部品・コンポーネ

ント技術戦略」(内閣官房、内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省、防衛省)では、

自立性確保や実現可能性等の観点から開発・事業化を進めるべき部品・コンポーネント

(次世代半導体部品、HTS に必要な通信機器等)を特定し、それぞれについて、ロードマ

ップを策定し、外需・民需も見据えた開発目標を設定等している。本ロードマップに基づ

き、サプライチェーン確保の観点から必要がある場合には、部品・コンポーネントの国産

化に向けた研究開発を強化していく。加えて、大型/小型衛星に適した宇宙用部品や民生

部品の開発を強化し、開発した部品等を国産宇宙機器に使用する実証を拡大するととも

に、海外宇宙機関との相互認証の推進を図る等の取組の強化・拡大を図っていく。

4.2.3 新規参入者への支援(軌道上実証機会の充実、射場)

<軌道上実証機会の充実> 宇宙機器産業分野への新規参入を促すためには、実用化・商業化に求められる宇宙空間

での実績づくりの確保が重要である。このため、新規参入者や既存の事業者への軌道上実

証機会を充実させるべく、H-IIA ロケットの相乗りや ISS「きぼう」モジュールからの小

型衛星放出、ISS 等での曝露実験など、JAXA の様々な宇宙実証ツールの充実、複数の実

証ツールの一体運用(ワンストップサービス化)を図るとともに、対象となる衛星・部品

等の迅速な事業化、実用化が図られるよう、戦略的な運用を行う。

出所)宇宙産業ビジョン 2030(内閣府) http://www8.cao.go.jp/space/public_comment/vision2030.pdf

1.2.2 未来投資戦略 2017 平成29年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017 -Society 5.0の実現に向けた改革-」

は、日本経済再生本部の下、第4次産業革命に向け、成長戦略の司令塔として、「産業競

争力会議」及び「未来投資に向けた官民対話」を統合の上、設置した「未来投資会議」で

の検討内容をとりまとめたものである。第4次産業革命(IoT、ビッグデータ、人工知能、

ロボット)のイノベーションを産業や社会生活へ取り入れることで、Society 5.0の実現を

目指す政府施策となっている。

同戦略においても、以下に示すように、民間小型ロケット事業の競争力強化、小型衛星コ

ンステレーション企業等のベンチャー企業への支援強化、部品・コンポーネントの国産化支

援を行い、宇宙空間での実証事業の抜本強化を図ることが言及されている。

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• 「宇宙産業ビジョン 2030」(平成 29 年5月 29 日宇宙政策委員会取りまとめ)に基づ

き、民間事業者の積極的活用等により、宇宙の本格的なビジネス利用の推進及び宇宙機器

産業の国際競争力強化を図る。 • 宇宙機器開発について、市場ニーズに対応した衛星のシリーズ化を図るとともに「宇宙用

部品・コンポーネントに関する総合的な技術戦略」(平成 28 年3月 31 日内閣官房・内

閣府・総務省・文部科学省・経済産業省・防衛省取りまとめ)に基づき国産化支援等を行

い、宇宙空間での実証事業を促進する。 • 国際競争力強化を目指した H3ロケットの開発、民間小型ロケット事業の競争力強化、

民間打ち上げ射場の整備に向けたガイドラインの整備等、世界的に旺盛な小型衛星打ち

上げビジネス需要の我が国への取り込みを図る。 • 宇宙利用のフロンティア開拓を担う小型衛星を大量に運用する「コンステレーション企

業」等のベンチャー企業支援を強化するとともに、日本政策投資銀行等の政府系金融機関

等も活用したリスクマネーの供給や宇宙資源探査等ベンチャー企業の事業性を高めるた

めの制度整備の検討を進める。

出所)未来投資戦略 2017 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/miraitousi2017_t.pdf

1.3 本報告書における「小型衛星」の定義

現在、「小型衛星」の定義は必ずしも明確に定まっていない。各政策文書や調査会社等が

発行するレポート等においては、衛星の重量によって「小型衛星」や「超小型衛星」等を分

類することが多いが 2、発行者や発行時期によってそれらの範囲が異なっている 3。 1.1 章にも記載した通り、本報告書は小型衛星・小型ロケット分野における我が国の「勝

ち筋」についての議論のとりまとめである。したがって、本報告書においては、一般的な小

型衛星の定義の考え方も参考にした上で、我が国の小型衛星ビジネスの競争力強化の観点

から、我が国事業者が企画する小型衛星ビジネスを念頭に置きつつ、世界の市場や研究開発

動向も踏まえて「小型衛星」を定義する。 一般的な小型衛星の定義の考え方 上記の通り、重量による「小型衛星」の分類の統一的な定義は存在しない。しかしながら、

近年、小型衛星について言及する際、いわゆる従来の「大型衛星」と対比して、その低コス

2 欧米においては、minisat、microsat、nanosat、picosat のように、さらに細分化されることもある。 3 例えば、平成 21 年 6 月 2 日宇宙開発戦略本部決定「宇宙基本計画」においては、小型衛星を「100 キ

ログラムから 1 トン程度」の衛星、超小型衛星を「100 キログラム以下」の衛星と定義している(現行

の宇宙基本計画においては明確な定義無し。)。また、近年のレポートでは、Euroconsult が”Prospects for the Small Satellite Market 3rd edition (2017)”において Small Satellite を 500kg 以下の衛星とする

一方、Satellite Industry Association は“State of the Satellite Industry Market 2017”において、

Small Satellite を 1,200kg 以下の衛星、Very Small Satellite を 600kg 以下の衛星と定義している。

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ト化・開発期間の短期化等について着目することが一般的である。これは、政府ミッション

が主である従来の大型衛星が、多額の予算及び長期の開発期間を準備して、場合によっては

特定用途のために専用の部品・コンポーネントから開発をして衛星が作られるのに対して、

小型衛星は、ベンチャー事業者等の民間事業者が主となって開発を行い、低コスト・短期間

で衛星の価値を顧客に届けられるよう、一定程度のリスクを許容しながら、また、量産化も

見据えつつ、可能な限り民生品や従来に無い生産手法等を積極的に活用して衛星が作られ

ているからであり、この点が「小型衛星」の特徴の一つである 4。 我が国事業者が企画する小型衛星ビジネスと世界の市場・研究開発動向 上記を踏まえて、図表 1 に、現在我が国事業者が開発する小型衛星の例を記載する。この

表から分かるように、現在我が国で商業化に向け開発されている小型衛星は 50~150kg の

範囲のものが多い状況にある。また、上記の衛星よりもさらに小型な数 kg~数十 kg の衛

星については、これまでは商業ミッションというよりも大学等における教育目的であるも

のがほとんどであったものの、近年は技術実証および各種ミッションのために、国内におい

て多くの実用化が開始されている(図表 2)。このさらに小型な衛星は、例えば推進系を搭

載していなかったり、姿勢制御系の精度が限定的であったりするが、衛星全体の構造が簡素

なこと等から生産が比較的容易であることにより、さらに短期間・低コストで開発が可能で

ある。特に、同サイズにおいて 10×10×10 cm3の立方体を 1U という基本単位として、そ

の単体又は複数から構成される小型衛星はキューブサットと呼ばれ、1U をベースとしたコ

ンポーネントや放出機構のラインナップが豊富であることから、同サイズ小型衛星の主流

となっている。 4 国際宇宙航行アカデミー(International Academy of Astronautics)が 2018 年 1 月に発行した調査レポー

ト“Definition and Requirements of Small Satellites Seeking Low-Cost and Fast-Delivery”におい

ては、小型衛星を“Lean Satellite”と呼び、顧客に対して低コスト・短期間で価値を届けるために、

従来とは異なったリスク許容の開発・マネージメント手法をとる衛星と位置づけている。衛星サイズの

小型化は、それ自体が目的なのではなく、非宇宙用の民生品を多用することに伴うリスクを許容し、開

発体制の無駄を削ぎ落とすことで、低コスト・短納期を達成するための結果である旨が言及されてい

る。

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図表 1:我が国事業者が開発する小型衛星の例 出所)各社 HP 等より作成

製造会社 アクセルスペース アストロスケール ALE キヤノン電子 QPS 研究所

衛星名 GRUS ELSA-d - CE-SAT -

重量(kg) 100 130 約 50 65 100

ミッション 地球観測(光学) デブリ除去 人工流れ星 地球観測(光学) 地球観測(SAR)

外観

図表 2:国内の大学において開発された衛星の例 出所:UNISEC HP

図表 3 及び 4 には、現在企画されている世界の小型衛星コンステレーションの例を記載

する。これらの表から、世界的にも 50~200kg 弱の小型衛星を利用したコンステレーショ

ンビジネスを企画する例が多いことが分かる。 したがって、この領域の小型衛星の開発やそのビジネス展開を支援することが、我が国の

小型衛星ビジネスの競争力強化に寄与するとともに、また、部品・コンポーネントメーカー

にとっても、一定程度の市場規模がある部品・コンポーネントの開発を推進することが可能

となる。

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図表 3:世界のコンステレーション計画の例(通信) 出所)各社 HP 等より作成

企業名 周波数帯 機数 重量

(kg)

Oneweb(英) Ku, Ka 900 150

SpaceX(米) Ku, Ka 4,000 400

Laser Light Communications(米) Optical 8-12 -

LeoSat(米) Ka 108 -

図表 4:世界のコンステレーション計画の例(リモートセンシング)

出所)Satellite Industry Association, “State of Satellite Industry Report”, 2017 より作成

企業名 分解能

1m 未満 5

撮像頻度

1 回/日以上

センサ種類 機数 重量

(kg)

Astro Digital(米)

● Optical 30 20

Axelspace(日)

● Optical 50 95

BlackBridge (Planet)(米)

● Optical 5 150

BlackSky Global(米) ● ● Optical 60 50

Capella Space(米) ● ● Radar 30 TBD

XpressSAR(米)

Radar 4 TBD

GeoOptics(米) ● Radio occultation 24 115

HawkEye360(米) ● RF mapping 21+ TBD

Hera Systems(米) ● ● Optical 48 24

ICEYE(フィンランド)

● Radar 50 <100

PlanetiQ(米) ● Radio occultation 12 22

Planetary Resources(米)

● Optical 10 TBD

Planet(米) ● Optical 100+ 3

Satellogic(米) ● ● Optical 25+ 35

Spire Global(米) Radio occultation 50 3

Terra Bella (Planet)(米) ● ● Optical 24 120

その一方で、特に図表 4 からは、Astro Digital、PlanetiQ、Planet、Spire Global のよ

うに、3~20kg 程度のさらに小型な衛星によるコンステレーションビジネスも進展してい

ることが見て取れる。このような衛星は、上記の通り、近年の技術革新等により実行可能な

5 各社 HP の情報等に基づき、元の資料から修正を行った。

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ミッションの範囲も拡大しつつあり、欧米では商業ミッションにおいても利用され始めて

いる。そして、これらの衛星に用いられる部品・コンポーネントは、一部オンラインでも調

達が可能であり 6、上述の 50~200kg 級の小型衛星とは一線を画すエコシステムが形成さ

れつつある。そのため、現在開発中の小型衛星の多くは 50~200kg 級であるものの、それ

より小型の領域においても、今後の技術革新とも相まって利用される商業ミッションの広

がりによるさらなる市場拡大の可能性を秘めている。 以上から、本報告書の「小型衛星」の定義においては、従来の大型衛星と比較した設計・

生産方法等の違いに留意しつつ、現在開発の主流である衛星サイズに加えて、今後の市場拡

大する可能性があるさらなる小型の領域についても着目することが妥当であると考えられ

る。 したがって、本報告書においては、「小型衛星」及び「超小型衛星」を、以下の通り定義

する 7, 8。

小型衛星

200kg 程度以下の重量であり、従来の大型衛星とは異なり低コスト・短

期間で衛星の価値を顧客に届けられるよう、一定程度のリスクを許容し

ながら、また量産化も見据えつつ、可能な限り民生品や従来に無い生産

手法等を積極的に活用して作られる衛星。

超小型衛星 上記「小型衛星」のうち、50kg 程度以下の重量であり、一部機能(例え

ば、軌道制御系や推進系等)の制限・削減等を伴う構造の簡素化等によ

り、更なる開発期間や開発コストの抑制を追求した衛星。

6 例えば、ISIS(蘭)はキューブサット向け部品・コンポーネントを掲載する CubeSatShop.com を運営

している。我が国においても、経済産業省の委託事業により makesat.com を 2016 年度に立ち上げ

(キューブサット向け以外も含む。)、現在は(株)インフォステラが運営している。 7 なお、小型衛星・小型ロケット分野における我が国の「勝ち筋」について検討するという本報告書の目

的から外れることの無いよう、上記「小型衛星」・「超小型衛星」の定義を杓子定規に捉えず、状況に適

時に対応すべく柔軟性を持って解釈する。 8 文章のわかりやすさの観点から、あえて「小型衛星(超小型含む)」としている場合もある。

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2 小型衛星・小型ロケット分野の現状 2.1 小型衛星・小型ロケット分野の市場動向 世界の宇宙ビジネスにおいては、衛星から得られるデータの質と量が大幅に向上すると

ともに、衛星データを解析する AI の技術革新等が進展している。この質・量が向上した衛

星データの蓄積と解析技術の発展により、衛星データの利活用が急速に進み、様々な分野に

おいて新たなソリューションの提供が期待されている。衛星から得られるデータの量と質

が大幅に向上した要因の一つとして、技術発展に伴う衛星開発費やロケット打上げコスト

の低減による、小型衛星コンステレーション計画の登場が挙げられる。 ユーロコンサルの調査によると、図表 5 に示すように、小型衛星の製造・打上げ市場規模

は、商業(commercial)部門は 2006 年-2015 年から 2016 年-2025 年には約 11 倍にな

ると見込まれると報告されている。商業部門の市場は、コンステレーション用に量産される

Oneweb 等の小型衛星の製造・打上げによって飛躍的に伸びる見込みである。

図表 5:小型衛星(500kg 以下)市場における商業部門と公共部門の市場予測

出所:Science & Technology Policy Institute ”Global Trends in Small Satellite”, 2017 (情報ソースは Euroconsult, “Prospects for the Small Satellite Market”, 2016)

この市場の成長は、図表 6に示す 1-200kgの小型衛星の打上げ数の推移からも見て取れ、

2013 年より小型衛星の打上げ数が急激に増加している。また、別の調査によると、これま

での小型衛星の打上げの多くは、大学や政府ミッションによるものが多かったが、今後、コ

ンステレーションビジネスの発展等に伴い、商業ミッションが増加し、市場に大きな影響を

及ぼすとみられている(図表 7)。

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図表 6:小型衛星(1-200kg)の打上げ数の推移 出所:Science & Technology Policy Institute ”Global Trends in Small Satellite”, 2017

図表 7:2013 年~2022 年の小型衛星のセクターごとの利用

出所: SpaceWorks ”Nano/Micro Satellite Markets Forecast, 8th Edition”, 2018

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このように、小型衛星の商業利用が拡大するに伴い、打上げ需要も高まり、ロケット開発

も進むものと予測されている。中でも衛星コンステレーションを計画する事業者のニーズ

に対応することを目的とした、低価格で打上げが可能な小型衛星専用の小型ロケットビジ

ネスが台頭しつつある。

2.2 小型衛星コンステレーションビジネスの急速な拡大 下表は、リモートセンシング事業者における現在運用中もしくは開発計画中のリモーセ

ンシングプログラムの一覧である。コンステレーション計画が進行中のリモートセンシン

グプログラムの多くが、数十機から数百機単位での衛星を打ち上げ、大型衛星に比べて分解

能は低いながらも 24 時間以内の高頻度で画像データを提供可能な内容となっている。

図表 8:世界のコンステレーション計画の例(通信)(再掲) 出所)各社 HP 等より作成

企業名 周波数帯 機数 重量

(kg)

Oneweb(英) Ku, Ka 900 150

SpaceX(米) Ku, Ka 4,000 400

Laser Light Communications(米) Optical 8-12 -

LeoSat(米) Ka 108 -

図表 9:世界のコンステレーション計画の例(リモートセンシング)(再掲)

出所)Satellite Industry Association, “State of Satellite Industry Report”, 2017 より作成

企業名 分解能

1m 未満 9

撮像頻度

1 回/日以上

センサ種類 機数 重量

(kg)

Astro Digital(米)

● Optical 30 20

Axelspace(日)

● Optical 50 95

BlackBridge (Planet)(米)

● Optical 5 150

BlackSky Global(米) ● ● Optical 60 50

Capella Space(米) ● ● Radar 30 TBD

XpressSAR(米)

Radar 4 TBD

GeoOptics(米) ● Radio occultation 24 115

HawkEye360(米) ● RF mapping 21+ TBD

Hera Systems(米) ● ● Optical 48 24

9 各社 HP の情報等に基づき、元の資料から修正を行った。

Page 15: コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた …...図表 11:Planet の超小型衛星 .....13 図表 12:Spireの超小型衛星 .....14 図表 13:PlanetiQ

12

ICEYE(フィンランド)

● Radar 50 <100

PlanetiQ(米) ● Radio occultation 12 22

Planetary Resources(米)

● Optical 10 TBD

Planet(米) ● Optical 100+ 3

Satellogic(米) ● ● Optical 25+ 35

Spire Global(米) Radio occultation 50 3

Terra Bella (Planet)(米) ● ● Optical 24 120

以下では、小型衛星コンステレーションとして事業を実施又は計画中である Oneweb、

Planet、Spire Global、PlanetiQ について取り挙げる。

①Oneweb(米) ・会社概要/事業概要

Oneweb は 2012 年に設立された衛星コンステレーション事業者である。Oneweb 創設

者 Greg Wyler は、O3b を創設後に小型衛星によるブロードバンドコンステレーション企

業 WorldVu を創設後 2015 年に Oneweb に改名した。2015 年に Airbus と連携した生産

体制を構築するための合弁会社設立で合意しているほか、Virgin グループや Qualcommから 500M ドルの資金調達とともに Intelsat、Coka-Cola などと国際パートナーシップ

を発表、同時に Arianspace と 21 機、Virgin Galactic と 39 機の大量打上げ契約を締結

した。2016 年 12 月にはソフトバンクから 1,200M ドルを調達し、2017 年 2 月には

Intelsat と合弁することで合意がなされている。

図表 10:Oneweb 衛星による通信事業

出所:Airbus 社 HP

Page 16: コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた …...図表 11:Planet の超小型衛星 .....13 図表 12:Spireの超小型衛星 .....14 図表 13:PlanetiQ

13

②Planet(米) ・会社概要/事業概要

Planet は 2010 年に設立されたリモートセンシング専門の企業。同社は超小型衛星を

主として自ら観測衛星開発・製造を行っている。創業者は NASA の科学者である Will Marshall、Robbie Schneider である。2013 年に超小型衛星「Dove」打上げに成功し、

実績を築くことで超小型衛星開発分野におけるパイオニアとしての地位を確立してい

る。 資金調達状況は、2015 年 4 月のシリーズ C ラウンドまでにおいて 158M ドルの調

達、2015 年 1 月には Western Technology Investment から 25M ドルの借入調達、合計

183M ドルを調達。また、Rapid Eye のオペレーターである Black Bridge 社を買収、

2017 年 2 月には SkySat のオペレーターである Terra Bella を Google から買収。Dove衛星コンステレーション事業でカバーできない高分解能分野を SkySat で画像提供し、

広範囲エリアは Rapid Eye で画像提供している。

図表 11:Planet の超小型衛星

出所:Planet 社 HP

③Spire Global(米) ・会社概要/事業概要

Spire Global は 2012 年に設立された衛星開発・運営会社。創業者は NASA 出身の

Peter Platzer、Joel Spark、Jeroen Cappaert である。設立後は光学カメラに加えて 25個のセンサを搭載した「ArduSat」をクラウドファンディングによる資金調達などを行

った後、2013 年に ArduSat の実験に成功。資金調達状況は、2013 年には 1.5M ドル、

2014 年には 25M ドル、2015 年には 40M ドルを調達している。

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2016 年 10 月に自社で運営している Spire の超小型気象衛星を採用した衛星プログラ

ム「Lemur」を 17 機軌道上に配備した。Lemur プログラムとは、船舶の AIS が発する

電波を受信することができるとともに、GPS-RO (GPS Radio Occultation)センサを搭

載している。GPS-RO は水蒸気、温度、移動の 3D 気象画像をスーパーコンピュータで

モデル化する革新的な技術でスーパーコンピュータによるアルゴリズムやビッグデータ

処理で、より確度が高い長期の予報、予測を出すことができる。今後は 100 機超の超小

型衛星で地球全体をカバーすることであらゆる地域の気象情報を高頻度で提供できる体

制の構築を目指している。

図表 12:Spire の超小型衛星

出所:Spire Global 社 HP

⑤PlanetiQ(米) ・会社概要/事業概要

PlanetiQ は Moog と Millennium Engineering の出資で地球・宇宙気象観測データの

販売を目的に 2012 年に設立された企業。同社はデータを取得して地球気象や大気観測

では高度別の気圧、温度などの情報提供、宇宙気象では電子量情報、シンチレーション

計測結果、局所的エネルギー粒子分布などの情報提供サービスを行う事業を展開してい

る。資金調達状況として、2014 年米空軍の気象観測ホステッドペイロード担当企業に

選定され 50M ドルの契約を獲得している。 その後、2015 年に PlanetiQ はボルダーに科学・技術施設を開設した。ボルダーは世

界初の商業気象衛星コンステレーションに搭載する 12 Pyxis-RO センサ 12 機器を仕上

げるクリーンルームのある施設であり、衛星とセンサ製造を委託している Blue Canyon Technologies と共同で入居している。最初の 2 つの Pyxis-RO の実施で、Pyxis-RO セ

ンサで従来の 10 倍のデータが取得できるとしている。

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図表 13:PlanetiQ の超小型衛星による大気観測

出所:PlanetiQ 社 HP

⑥各事業者の生産技術動向

このような小型衛星を大量に生産してコンステレーションビジネスを計画する事業者

は、各社それぞれ衛星製造の量産化及び低コスト化に取り組んでいる(図表 14)。

例えば、SpaceX 及び Oneweb は衛星製造のための大規模工場を建設している。特に、

Oneweb は 2016 年 4 月に Airbus とのジョイントベンチャーOneWeb Satellites LLC を

設立し、フロリダ州の航空宇宙産業拠点 Exploration Park 内に、新しい小型衛星製造施

設を建設し(図表 15)、当該工場においては製造の一部自動化等を取り入れた小型衛星製

造の量産化技術を取り入れるとともに、衛星を量産に適応した設計とすることにより、週

に 15 機の小型衛星製造を可能としている。また、Spire においても毎週 1,2 機の超小型

衛星を製造するために取り組んでいると報告されている。 また、Science & Technology Policy Institute の調査においては、民生品(COTS 品)

の積極的利用等を通じた衛星製造の低価格化の取組についても報告されている(図表 14)。当該報告においては、アビオニクスとしてスマートフォンの利用(PhoneSat)や、民生

の通信技術の利用(Gomspace)、SAR システムへの COTS 品の利用(Iceye)等の事例

が挙げられている。

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図表 14:低コスト製造技術と COTS コンポーネントを使用している企業の動向 出所:Science & Technology Policy Institute ”Global Trends in Small Satellite”, 2017

図表 15:Oneweb 社の小型衛星製造工場

出所)Space News HP

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2.3 小型ロケット事業者の台頭 コンステレーションビジネスの拡大から、小型衛星の打上げ需要が激増していることを

背景に、オンデマンドで頻度高く自在に希望の場所に衛星を投入する小型ロケットの開発

が進んでいる。ターゲットにするペイロードのサイズは低軌道 50kg 級や極軌道 150kg 級

など各社それぞれが戦略を立てているが、いずれも高頻度で打上げることによりコスト競

争力を発揮する点で共通している。 以下では、小型ロケット開発を進める、RocketLab、Firefly Aerospace、Vector Space

Systems、Virgin Galactic について取り挙げる。

①RocketLab(米) ・企業概要/事業概要

2006 年に設立したニュージーランドとロサンゼルスに拠点を置くベンチャー企業であ

り、Electron という小型ロケットを開発している。Electron は全長約 16m、直径約 1.2mの 2 段式液体燃料ロケットであり、推進剤にはケロシンと液体酸素が用いられている。

打上げ能力は、LEO に約 400kg、SSO に約 100kg とされている。Electron は RocketLabが所有するニュージーランドの射場 Launch Complex 1 から打上げが実施される。本体

にはカーボン素材を採用し、部品の一部に 3D プリンタを活用するなどにより、部品・部

材の大量生産化、低コスト化、納期短縮が図られている。2018 年 1 月に実証打上げに成

功している。 ・射場整備

Rocket Lab は、民営で史上初となるロケット射場を整備している。場所は、衛星の海

上輸送のしやすさ、空輸などのロジスティクス面でのメリットや、過去に NASA がサブ

オービタルフライト用に活用していた場所という経済面でのメリット、そして、太陽同期

軌道で高い軌道傾斜角を持つ小型衛星の打上げに適した場所であることからニュージー

ランドである。完全民営化にすることで、ロケット組立作業の効率化、打上げオペレーシ

ョンの効率化、打上げに関わるハードウエア・ソフトウエアを含むシステムの最適化、ロ

ケット打上げ後の射点の修理・回収などの効率化をはかり、従来、数か月を必要としてい

た打ち上げ準備作業期間の短縮やコスト削減ができるとしている。 ②Firefly Aerospace(米) ・企業概要/事業概要

Firefly Aerospace は 2017 年 3 月に Firefly Space Systems Inc を再編し立ち上げたベ

ンチャー企業。投資家で EOS Launcher Inc 代表の Maxym Polyakov 氏が代表。 同社のロケットは Firefly αは「エアロスパイク」という呼ばれる旧来から存在する原

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理を活用したものであり、過去に開発が検討されながらも機体開発等を理由に中止され

ていたスパイクエンジンを活用するためのものであり、可変ノズル機構を不要とするな

ど、原理的に単純な構造を採ることで低価格性を実現している。 ③Vector Space Systems(米) ・企業概要/事業概要

2016 年に設立した同社は、現在、Vector-R および Vector-H という 2 種類のロケット

の開発を進めている。Vector-R は高度 250km の LEO に約 60kg 程度のペイロードを投

入する能力を有する予定である。Vector-H は R よりも大型であり、同様の軌道に約 160kg程度のペイロードを投入する能力を有する。打上げ価格は、Vector-R が 1.5M ドル程度、

Vector-H が 3.5M ドル程度とされている。また、それぞれ追加料金(1M ドル)を支払う

ことで、ロケットの第 3 段を追加することが可能である。 Vector ロケットは燃料にプロピレンが用いられていることが挙げられる。プロピレン

は密度がメタンより大きく、比推力はケロシンより大きいとされている。また、Rocket Lab 社と同じく、ロケットの部品の開発に 3D プリンタを用いたり、燃料タンクをカーボ

ン素材にするなどの取り組みも行っている。さらに、ロケットの第 1 段は、パラシュート

で回収することにより再利用し、コストの低減に繋げることを想定している。 ④Virgin Orbit(米国) ・企業概要/事業概要

Virgin Galactic から分社化した Virgin Oribit は、小型ロケット LauncherOne を開発

している。LauncherOne は再利用可能空中発射型ロケットであり、ボーイング 747 を開

発のベースとした発射母機の胴体下に衛星打上げ用のロケットを取り付け、高空まで輸

送した後に発射するシステムとなっている。 同ロケットの打上げ能力は、LEO に約 500kg、SSO に約 300kg とされている。また、

コスト低減のため打上げロケットは再利用可能とする予定。現在の開発状況としては、米

国国防省との間で LauncherOne のプロトタイプのテスト飛行を契約した段階となって

いる。また、Oneweb から 39 機の打上げ契約を獲得している。同テストの目的は同社の

低軌道への打上げ能力を調査するためとされており、初打上げは早くて 2019 年 1 月ごろ

を予定しているとされる。 以下の表は各社の小型ロケットの一覧である。

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図表 16:小型ロケットの例

出所)一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構「平成 28 年度実施事業(次世代宇宙システム及びその技術の開発事業)軌道上実証

拡大に関する調査業務(公開版)」をもとに作成。外観は各社 HPから。

機体 Electron Firefly α Vector R LauncherOne

国 米国 米国 米国 米国

製造会社 RocketLab Firefly

Aerospace

Vector Space

Systems

Virgin Orbit

ペイロード

(kg)

150 400 66 300

発射方式 垂直 垂直 垂直 水平・空中

エンジン 液体・固体 液体 液体 液体

スペース

ポート

ニュージーランド

フロリダ

未定 モハベ

アラスカ

アブダビ

ハワイ

外観

2.4 小型衛星・ロケット向け部品事業者の動向 これまでに見てきたように、衛星の小型化は近年のトレンドであるが、このように小型衛

星の実用化が進みつつあるのは、衛星用部品・コンポーネントの小型化・軽量化・高性能化

が大きく貢献をしている。今後の小型衛星の利用拡大に向けて、光学センサ、小型 SAR 等

の高性能・小型なミッション部による小型衛星の能力向上のほか、バス部においては、各種

部品が超小型衛星級に至るまでのシリーズ化、小型電気推進系やグリーン推進系、高性能電

力システム、プラグ&プレイなどの開発が急速に進行しており、その発展に伴い新しいビジ

ネスモデルが誕生するというサイクルが回り始めている。 以下では、小型衛星向け部品メーカーとして注目される、Clyde Space(各種コンポーネ

ント)、SODERN(スタートラッカ)、ISIS(磁気トルカ)、MOOG(推進系バルブ)、

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NEWSPACE SYETEMS(ADCS 統合ユニット)を取り挙げる。 ①Clyde Space(英・各種コンポーネント) ・企業概要/事業概要

Clyde Space は 2005 年に英国で創業。小型衛星専用のハードウェアを提供しており、

世界の小型衛星プロジェクトの約 40%にハードウェアを提供していると言われ、売上の

90%以上は英国外となっている。提供している部品は下記表の通りである。Clyde Spaceは Spire など小型衛星コンステレーションを計画している企業から大型受注しており、

プロダクションスピードを上げる製造が決定的になると予想される。

図表 17:Clyde Space 提供部品群 出所)Clyde Space 社 HP

Product Type Satellite Size Subsystems

Cube Sat 1U Platforms

Small Sat 3U Solar Panels

Ground Support 6U Electrical Power Systems

Equipment 12U Batteries

Custom ・Attitude & Orbital Control System

・On Board Computers

・Structures

・Communications Equipment

・Software

②SODERN(仏・スタートラッカ) ・企業概要/事業概要

SODERN は 1962 年に仏国で創業、Airbus グループの一社である。大型、中型、小型

衛星の部品を製造・販売しているが、特にスタートラッカの分野では世界販売のリーダー

である。 以下は、同社のスタートラッカラインナップの一部で、特に AURIGA は OneWeb 向

けに従来のスタートラッカをスペックダウンして量産化できるようにしたものである。

図表 18:SODERN 社のスタートラッカ

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出所)SODERN 社 HP

名称 概要 写真

AURIGA 最新世代のスタートラッカ、特別に生

産速度および技術的性能を高め、新た

な衛星星座市場のニーズとコスト削減

の目的を満たすように設計されてい

る。

HYDRA HYDRA は、光学ヘッドと電子ユニッ

トを備えたマルチヘッドスタートラッ

カ。

SED26 低地球軌道と深宇宙ミッションで用い

られるスタンドアロンのスタートラッ

カ。

SED20 2006 年からフランスの M51 弾道ミサ

イルで搭載されている。

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図表 19:SODERN 社のスタートラッカ「AURIGA」

出所)SODERN 社 HP

③ISIS(蘭・磁気トルカ等) ・企業概要/事業概要

ISIS は 2006 年にオランダで創業。現在は小型衛星部品の製造、販売のほか衛星プラ

ットフォーム、打上げのほか衛星画像の提供とアップストリームからダウンストリーム

まで幅広くサービスを展開している。同社は自社 EC サイトで小型衛星部品等を販売し

ている。

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図表 20:ISIS 社製の部品 出所)ISIS 社 HP

大分類 製品

SPACE Antenna systems

Attitude control systems

Command data handling systems

Communication systems

CubeSat structures

Solar panels

LAUNCH CubeSat deployers

GROUND Generic Engineering Model

Ground stations

Ground support equipment

図表 21:ISIS 社の EC サイト

出所)ISIS 社 HP

④MOOG Bradford(蘭・推進系バルブ) ・企業概要/事業概要

MOOG Bradford は 1984 年にオランダで創業。欧州の衛星や探査機に使用するバルブ

や推進系、アビオニクス及び熱制御等のサブシステム及びコンポーネントを販売してい

る。

Page 27: コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた …...図表 11:Planet の超小型衛星 .....13 図表 12:Spireの超小型衛星 .....14 図表 13:PlanetiQ

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図表 22:MOOG 社の製品一覧 出所)MOOG Bradford 社 HP

製品カテゴリ 製品群

ECAPS - Ecological Advanced Propulsion Systems

100mN HPGP 1N HPGP 1N GP 5N HPGP 22N HPGP 50N HPGP 200N HPGP

Propulsion Systems & Components Flow Control Unit Standard Accuracy Pressure Transducer Ultrasonic Flow Meter Xenon Loading Cart

Avionics, Thermal & Instruments Microgravity Workspaces & Payloads Mechanisms Mechanically Pumped Fluid Loop Heater Controlled Accumulator

AOCS Equipment Reaction Wheel Unit Fine Sun Sensors Mini Fine Sun Sensors Coarse Sun Sensor Cosine Sun Sensor Redundant Cosine Sun Sensor

⑤NEWSPACE SYETEMS(南アフリカ・ACS 統合ユニット) ・企業概要/事業概要

NEWSPACE SYETEMS は 2013 年に南アフリカの会社 SCS 宇宙航空研究開発グルー

プとオランダ SSBV グループとの合弁会社として南アフリカで創業。衛星部品やサブシ

ステム設計・製造しており、小型衛星向けの姿勢制御システムの分野で競合優位性がある

と言われている。 同社が超小型衛星向けに取り扱っている ACS(Attitude Control System)はスタート

ラッカ、リアクションホイール等を抱合したユニットである。同社は CubeSat 向けに

“Cubesat Sun Sensor”といったユニットを提供している。

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図表 23:NEWSPACE SYETEMS 社の製品例 出所)NEWSPACE SYETEMS 社 HP

2.5 小型衛星・小型ロケットビジネスを支援する各国施策 前項までは、小型衛星・小型ロケットにおける欧米の事業者の取組状況を述べてきたが、

ベンチャー企業を中心とする新たなプレイヤーの参入においては、各国政府も政策的にバ

ックアップしながら、既存の宇宙産業も含めて発展が図られているところである。

以下では、小型衛星・小型ロケットビジネスを支援する米国及び欧州の施策を取り挙げる。

①米国

(ア)Venture Class Launch Service (VCLS)10 本施策は、NASA による超小型衛星の打上げ機会の提供支援策である。2015 年 10 月、

NASA の Launch Services Program (LSP)は民間企業から超小型衛星打上げサービスを

購入する Venture Class Launch Service (VCLS)契約で小型ロケット開発企業 3 社を

選定した。Rocket Lab が 6.95M ドル、Firefly が 5.5M ドル、Virgin Galactic が 4.7M ド

ルの合計17.15Mドルの契約であり、3社はNASAのCubeSat Launch Initiative(CSLI)のもと 2018 年末までに 50 以上のキューブサットが打ち上げられる。NASA は小型衛星

打上げ機会の不足の解消のため、打上げサービスを先行して購入することにより民間企

10 出所:https://www.nasa.gov/press-release/nasa-awards-venture-class-launch-services-contracts-for-

cubesat-satellites

Page 29: コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた …...図表 11:Planet の超小型衛星 .....13 図表 12:Spireの超小型衛星 .....14 図表 13:PlanetiQ

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業の超小型衛星打ち上げシステムの開発を促進している。 (イ)米国防総省(DoD)の即応型宇宙システム計画 ORS(Operationally Responsive

Space)11 ORS は、軍民連携を図り、戦略的に小型衛星を利用した実証実験を実施するプログラ

ムである。宇宙で衛星システムが損傷を受けた場合、1 週間以内に衛星を製造し、数時間

または 24 時間内に衛星を打ち上げて配置することを目標としている。具体的には、従来

の衛星の問題点である長期の製造期間と高コストという欠点を克服するために、短期製

造、量産可能、低&中コストの即応型衛星システムを確立させ、比較的安価な調達価格で

政府が買い上げる TACSAT(Tactical Satellite)という取組である。 (ウ)University Nanosatellite Program12

空軍研究所、アメリカ航空宇宙学会等が主催する、大学により開発された超小型衛星の

実証プログラムである。宇宙専門家の養成と超小型衛星の研究開発及び軌道上実証を目

的としている。

(エ)National Science Foundation による支援 13 National Science Foundation(NSF)は 2008 年から平均年間予算$ 1.4M ドルを拠出

し、主にサイエンスミッションを対象とする超小型衛星開発プログラムを開始。2016 年

時点で 13 超小型衛星、8 つのミッションを成功させている。また、11 の超小型衛星を含

む別の 7 つのミッションは、2016 年時点において NSF プログラムにより開発が進めら

れている。 (オ)衛星試験拠点 米国においては、ケンタッキー州等の航空宇宙産業が集まる州において、メーカー等が

コンソーシアムを形成している。各コンソーシアムには衛星試験に必要な設備が拠点化

14されており、当該施設をコンソーシアムで共用することにより、試験の効率化を図って

いる。

11 出所:http://www.kirtland.af.mil/Units/ORS/ 12 出所:

http://mstl.atl.calpoly.edu/~bklofas/Presentations/DevelopersWorkshop2012/Alexander_UNP.pdf 13 出所:https://www.nsf.gov/geo/ags/uars/cubesat/nsf-nasa-annual-report-cubesat-2013.pdf 14 例えば、Morehead University においては、EMC 試験、振動試験、熱真空試験、電波試験に必要な設

備が整備されている。

Page 30: コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた …...図表 11:Planet の超小型衛星 .....13 図表 12:Spireの超小型衛星 .....14 図表 13:PlanetiQ

27

②欧州

EU、ESA ともに衛星利用のダウンストリーム拡大を重点視した商業宇宙政策を促進、ホ

ライズン 2020 や VC ファンドで新規参入を促進している。ESA は宇宙環境利用では Sierra Nevada のドリームチェイサーに投資を行う一方、Airbus とともに ISS にペイロードプラ

ットフォームを接続する計画を発表している。

(ア)ホライゾン 202015 2014 年に開始した、スマートな成長、持続可能な成長、包括的な成長の 3 つの成長を

プライオリティとして進められ、イノベーション、経済成長、雇用に繋げるプロジェクト。

2015 年 3 月には、Galileo/GNSS アプリケーションをテーマとした 105 提案から 25 プ

ロジェクトが選定され、欧州 GNSS 機関(GSA)は選定された 25 プロジェクトと総額

37,096,177 ユーロの契約を交わした。2015 年 10 月に 2016-2017 年ワークプログラムを

正式に採択したことを発表、当該 2 年間で欧州委員会はホライズン 2020 の EU の研究

及びイノベーション分野に対し、約 16B ユーロを投じることとした。 (イ)ESA Business Incubator (BIC)16

ESA の技術移転プログラムオフィスにより実施されているビジネスインキュベーシ

ョンセンター(BIC)では、宇宙技術の商業化やイノベーションの創出、宇宙分野以外へ適

用などを進め、新規雇用を生み出すことを目的として、企業に対して商業的及び技術的支

援を実施している。また、欧州の宇宙産業は EU(ホライズン 2020 の一部として)およ

び ESA が管理する複数の大型多国間研究開発プログラムを利用することができる。BIC はオランダ、ドイツ、イタリア、英国、ベルギー、仏国、スペイン、ポルトガル、スウェ

ーデンの 9 か国 12 か所に設置している。毎年欧州の 130 以上の企業、これまで 400 以上のスタートアップを支援してきた。BIC が各企業に支給するインセンティブの最高金

額は 5 万ユーロであり、インセンティブに加えて各企業は最高 5 万ユーロまでの融資を

受けることができる。Galileo/GNSS を用いた新たなベンダー企業に対して商品開発や企

業成長のサポートを行った実績がある。各国には、企業の開拓と宇宙技術の利用拡大を進

める技術移転ネットワーク(Technology Transfer Network:TTN)が置かれている。

15 出所:https://www.gsa.europa.eu/ 16 出所:

https://www.esa.int/Our_Activities/Space_Engineering_Technology/Business_Incubation/ESA_Business_Incubation_Centres12

Page 31: コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた …...図表 11:Planet の超小型衛星 .....13 図表 12:Spireの超小型衛星 .....14 図表 13:PlanetiQ

28

(ウ)ESA ベンチャーキャピタル 17 衛星利用のダウンストリーム市場の拡大に向けた政策を進めている ESA は、2015 年

7 月に英国のベンチャーファンド Seraphim Space & Special Situations Fund からの

116M ユーロで、英国宇宙機関、SA Catapult 協力のもとシリーズ A 向けに商業化を加速

する技術への投資を開始した。シリーズ A 向けではこれまでの最大規模のファンドで

ESA の ARTES プログラムにおけるプロジェクトを商業化する。また、ESA では 2015年 9 月、The European Global Navigation Satellite Systems Agency (GSA)は、EC Galileo のユーザ機器の開発を促進するため 110M ドルの Fundamental Elements ファ

ンドを設けた。Galileo と欧州の Egnos システムの機器開発に限られ、ダウンストリーム

拡大を目指す。ESA は通信、地球観測、測位の 3 つの衛星利用分野全体のバリューチェ

ーンを促進している。 (エ)SA Catapult18

2010 年、キャメロン首相は産学連携のもとにイノベーションを促進するためにビジネ

スイノベーション技能省(BIS)傘下の技術戦略委員会を通じて 4 年間に 200M ポンドの

予算をつけて技術イノベーションセンターのネットワークを構築するカタパルト計画を

発表した。高付加価値製造、細胞治療、オフショア再生エネルギー、衛星利用、コネクテ

ッドデジタルエコノミー、未来都市、輸送システムの 7 つのカタパルトがある。各カタパ

ルト設置は、(1)年に 1000M ポンド以上の世界市場、(2)世界的にリードしている研

究分野、(3)英国産業界が活用できる技術でバリューチェーンにおいて大きな占有率を

獲得、(4)多国籍企業の知識集約的活動の拠点を英国に留めて英国の持続的な冨の創造

に貢献、(5)英国の国家戦略上達成することが重要な優先分野であることが要件となっ

ている。 (オ)SpaceIGS19

英国では 2013 年に Space Innovation and Growth Strategy 2014(Space IGS)を発

表し、2030 年までに現在 6%の世界における衛星市場の英国占有率を 10%に引き上げ全

世界の衛星市場 400B ポンドのうちの 40B ポンド、現在の雇用 2 万 9 千人を 10 万人の

雇用に引き上げるため、規制緩和、輸出、中小企業への支援などによる宇宙産業の振興を

進めるための各種政策を打ち出している。現在 9B ポンドの英国の衛星市場のうち 1B ポ

17 出所:

https://www.esa.int/Our_Activities/Telecommunications_Integrated_Applications/Venture_capital_to_nurture_ESA_space_applications

18 https://sa.catapult.org.uk/ 19 http://www.ukspace.org/space-publications/space-igs/

Page 32: コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた …...図表 11:Planet の超小型衛星 .....13 図表 12:Spireの超小型衛星 .....14 図表 13:PlanetiQ

29

ンドが衛星製造機器産業で 8B ポンドが衛星サービスと利用の売上げであるが、2030 年

には衛星製造機器産業が 3B ポンド、衛星サービスと利用の売上げは 37B ポンドの合計

40B ポンドを目指している。 (カ)International Partnerships in Space Programme (IPSP)20

英国宇宙機関が進める International Partnerships in Space Programme (IPSP)はHorizon 2020 の位置づけで Space IGS を達成するために設置された政策で、2 年間に

32M ポンドの予算を付けた。Space IGS の目標達成には英国の法律で定められている

SME(Small Medium Enterprise)の成長や SME が拓く新たな市場、さらに海外への市場

の拡大に期待するところが大きい。IPSP は 50%のマッチング(IPSP プログラム資金

50%と自己資金 50%)が基本であるが SME のカテゴリによっては 30%や 40%の自己資

金比率なるケースもある。第1回 IPSP に Clyde Space と Outernet が実施するキューブ

サットのコンステレーションによるブロードバンドサービスの開発が選定された。 (キ)ESA の小型技術実証ミッションシリーズ (PROBA:PRoject for On-Board Autonomy)21

PROBA(搭載型自律システムプロジェクト)衛星は、ESA が将来の衛星技術の研究のた

めに打ち上げた技術実証衛星。32 ビット耐放射線マイクロプロセッサなどを搭載し、大

型衛星に使用する部品やソフトなどが宇宙空間で使用できるか実証実験を行っているほ

か、自動的に作業を進める衛星搭載ソフトの実験も行われている。 (ク)CNES の共通プラットフォーム(Proteus)22

CNES Proteus はフランスで開発された小型人工衛星に用いられる共通プラットフォ

ームであり、低コストかつ短納期で応用範囲の広い小型衛星プラットフォームの実現を

目指して 1996 年から開発が進められており、2001 年に打ち上げられた海洋観測衛星

JASON-1 に最初に使用その後、ESA が 2008 年に打ち上げたガリレオ計画の試験衛星 2号機 GIOVE-B も PROTEUS バスを元に製作されている。

(ケ)QB50 Program23

QB50 は CubeSat の国際ネットワークであり、この EU プロジェクトは、フォンカル

マン研究所(ベルギー)によって管理されている。プロジェクトの一つとして、技術実証

20 出所:https://www.gov.uk/government/collections/international-partnerships-in-space-programme-

ipsp 21 出所:https://www.esa.int/Our_Activities/Space_Engineering_Technology/Proba_Missions 22 出所:https://proteus.cnes.fr/en/PROTEUS/index.htm 23 出所:https://www.qb50.eu/index.php/project-description-obj.html

Page 33: コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた …...図表 11:Planet の超小型衛星 .....13 図表 12:Spireの超小型衛星 .....14 図表 13:PlanetiQ

30

のプラットフォームを提供している。技術実証の一つとして、超小型衛星の低コスト化を

進められており、欧州委員会が資金を提供している。下図は QB50 Program の概念図で

ある。

図表 24:QB50 プログラムのイメージ

出所:QB50 プログラム HP

(ク)英国における衛星試験施設拠点の整備 24 英国はハーウェルに宇宙クラスターを整備しており、同クラスターの Rutherford

Appleton 研究所において共用可能な試験設備を整備している。同研究所には、クリーン

ルーム、熱真空チャンバー、振動試験装置等、小型衛星試験に必要な設備の多くが備えら

れており、クラスターにおいて製造された小型衛星の試験拠点として使用可能となって

いる。また、同研究所は英国政府から 99M ユーロの支援を受け、国立衛星試験施設の整

備に着手している。同試験施設は 2020 年に運用が開始される予定である。

24 出所:https://www.ralspace.stfc.ac.uk/Pages/National-Satellite-Test-Facility.aspx、

https://www.ralspace.stfc.ac.uk/Pages/Space-Test-Facilities.aspx

Page 34: コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた …...図表 11:Planet の超小型衛星 .....13 図表 12:Spireの超小型衛星 .....14 図表 13:PlanetiQ

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図表 25:Rutherford Appleton 研究所の衛星組立・試験施設

出所)Rutherford Appleton 研究所 HP

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32

3 コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた小型衛星・小型ロケット

の技術戦略のあり方に関する研究会 3.1 研究会の目的 前章までに述べた通り、昨今世界的に小型衛星・小型ロケットを利用したビジネスモデル

が台頭してきており、宇宙データを利用した新たなソリューションの提供に向け、各国にお

いて官民が連携して技術開発や環境整備等が進められている。そうした状況の中、我が国に

おいてもベンチャー企業を中心に小型衛星・小型ロケットの開発及びビジネスの展開に向

けた研究開発が進められており、政府もビジネスの環境整備やリスクマネーの供給等に取

り組んできたところであるが、今後も拡大が予想されるコンステレーションビジネス市場

を世界で先行的に獲得するには、データビジネスを支える小型衛星・小型ロケットの競争力

を持続的に発展させるための技術革新が必要である。 こうした小型衛星・小型ロケットを取り巻く状況を踏まえ、平成 28 年度まで「部品・コ

ンポーネントに関する技術戦略に関する研究会」として開催してきた研究会のテーマ及び

構成員を抜本的に見直し、世界の潮流を踏まえた上で、競争力のある小型衛星・小型ロケッ

トの部品・コンポーネントの開発や、小型衛星・小型ロケットベンチャービジネス振興等の

観点から、日本としての“勝ち筋”を検討し、それをもとに小型衛星・小型ロケット分野に

おける新たな技術戦略を策定すべく、平成 29 年 12 月に「コンステレーションビジネス時

代の到来を見据えた小型衛星・小型ロケットの技術戦略のあり方に関する研究会」を立ち上

げた。

3.2 我が国コンステレーションビジネスの競争力強化における課題抽出と論点整理 技術戦略の策定に当たっては、研究会の開催に先立ち、研究会で議論すべき論点を整理す

るため、国内の小型衛星・小型ロケットを利用したビジネスを企画する事業者や、小型衛星

向けの部品・コンポーネントメーカー等にヒアリングを行うとともに、欧米の小型衛星・小

型ロケット分野における官民の取組と我が国の取組状況の比較等から課題抽出を行い、そ

れをもとに技術戦略の策定に向けた論点と、それぞれの論点に対応する施策の方向性に関

する仮説を下図の通り整理した。

Page 36: コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた …...図表 11:Planet の超小型衛星 .....13 図表 12:Spireの超小型衛星 .....14 図表 13:PlanetiQ

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図表 26:小型衛星・小型ロケット分野における課題抽出と論点の整理 出所:第 5 回研究会 中間とりまとめ(案)資料

図表 27:それぞれの論点に対応する施策の方向性に関する仮説

出所:第 5 回研究会 中間とりまとめ(案)資料

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3.3 研究会における議論と取組の方向性 研究会においては、上記に挙げた仮説を参考にしつつ、研究会に出席する各事業者が小型

衛星・小型ロケットビジネスを取り巻く課題や、求められる取組等についてプレゼンすると

ともに、研究会全体で議論することにより、各論点において求められる取組等の方向性を検

討した。以下にその議論の概要と取組の方向性を記載する。 なお、当該取組は、小型衛星・小型ロケット分野における我が国の「勝ち筋」を追求する

ものであるため、当該取組における支援の対象を決定する際には、1.1.3 章における「小型

衛星」の定義に加えて、ビジネスモデルの実現可能性、期待される市場規模、提供されるソ

リューションの先進性等も考慮しなければならず、また、小型衛星・小型ロケット分野にお

ける技術革新のスピードが非常に速いことから、常に国内外の市場動向にも留意する必要

がある。

3.3.1 論点①:キーとなる部品・コンポーネントの特定 <小型衛星分野におけるキーとなる部品・コンポーネント> 近年のコンステレーションビジネスの急速な成長の背景には、技術革新による小型衛星

の高性能化・低コスト化がある。小型衛星の部品・コンポーネントとして民生品を積極的に

活用することにより、小型衛星を安価に製造することが可能となっている。 我が国における宇宙用の部品・コンポーネントの技術戦略としては、平成 27 年度に「宇

宙用部品・コンポーネントに関する総合的な技術戦略」がとりまとめられたが、これは、我

が国の宇宙活動の自立性の確保及び宇宙産業基盤の維持・強化の観点から、主に政府衛星等

の大型衛星を対象として、宇宙システムの効率的、迅速、低コストな開発及び製造のために

目指すべき施策の方向性を策定したものであった。 他方、小型衛星は、従来の大型衛星とは設計や品質保証の思想が異なり、特にコンステレ

ーションビジネスにおいては、多数の小型衛星から構成されるシステム全体で冗長性を担

保するという思想のもと、必要な品質レベルを確保した上で、小型衛星を安く大量に生産す

ることが求められている。このことから、部品・コンポーネントに対する性能や品質等の要

求も大きく変わり得るため、大型衛星とは異なり、例えば、部品・コンポーネント自体が量

産化に適するかという観点や、量産化において我が国の強みを活かすことは可能かといっ

た観点等も踏まえつつ、小型衛星分野において我が国が重点的に研究開発を実施すべき部

品・コンポーネントとはどういったものであるのかを検討し、戦略的に技術開発を進めるべ

きなのではないか、また、小型ロケットにおいても世界的に打上げ価格の競争が激化してお

り、低価格でのロケット製造が必要とされていることから、同様の仮説に基づき、キーとな

る部品・コンポーネントの検討が必要なのではないかという仮説の下、研究会において議論

を行った。 現状、世界の小型衛星の商業ミッションとしては、地球観測、通信をはじめ、ADS-B・

Page 38: コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた …...図表 11:Planet の超小型衛星 .....13 図表 12:Spireの超小型衛星 .....14 図表 13:PlanetiQ

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AIS のような飛行機・船のトラッキング、気象、メタンガスの監視等、非常に多岐にわたっ

ており、様々なビジネスが立ち上がりつつある。そうした中、それらを取り巻く小型衛星向

け部品・コンポーネントメーカーも、大手企業、古参企業、ベンチャー等、多くのプレイヤ

ーがしのぎを削りながら、小型衛星コンステレーションのサプライチェーンに参入すべく

競争を繰り広げている。特に、研究会においては、小型衛星コンステレーションの代表例で

ある Oneweb が約 900 機の小型衛星製造を Airbus に委託しており、多大な購買力に基づ

く価格決定力により、各コンポーネントの値段が決まりつつある懸念が指摘された。 図表 28:小型衛星向けコンポーネントメーカー例

部品の種類 メーカー

スタートラッカ • SSTL(英) • SODERN(仏) • Blue Canyon(米) • New Space Systems(南ア) • Hyperion Technologies(蘭) 等

リアクションホイール • SSTL(英) • Clyde Space(米) • Blue Canyon(米) • Rockwell Collins(米) • Hyperion Technologies(蘭) 等

ADCS 統合ユニット • Adcole Maryland(米) • Blue Canyon(米) • New Space Systems(南ア) • Hyperion Technologies(蘭) 等

地磁気センサ • ZARM(独) • SSTL(英) • New Space Systems(南ア) 等

太陽センサ • ZARM(独) • New Space Systems(南ア) • Nano Avionics(リトアニア) 等

磁気トルカ • SSTL(英) • New Space Systems(南ア) • Nano Avionics(リトアニア) • Hyperion Technologies(蘭) 等

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図表 29:Oneweb における小型衛星の量産体制

出所:Oneweb 社 HP

「論点①:キーとなる部品・コンポーネントの特定」に係る委員等コメントまとめ

<欧米コンステレーション事業者の動向について> 通信のコンステレーションは数百から数千機単位の小型衛星でシステムを構築。欧米

の通信メガコンステレーションが小型衛星の量産体制の整備を進めており、部品・コン

ポーネントに対して圧倒的な購買力に基づく価格決定力を持っている。すでにサプラ

イヤーも決まりつつあり、そこへの参入は困難を極める。 今後、小型衛星バス向けの部品・コンポーネントはコモディティ化が進み、価格競争が

激化するだろう。 例えば、静止衛星向けに納入実績があるコンポーネントメーカーが、Oneweb 向けに自

社製品をスペックダウンし、月産数百個の量産が可能な体制を整備している事例もあ

る。

このような、小型衛星部品・コンポーネント分野において欧米事業者が需要家たるコンス

テレーション事業者のニーズを独占しているという状況に鑑み、研究会においては、我が国

の小型衛星部品・コンポーネントの研究開発における戦略の方向性は以下が示唆された。

魅力的なサービス提供に資するミッション部の研究開発の推進 小型衛星のバス用部品・コンポーネントは、量産化の進行に伴いコモディティ化していく

ことが予想されており、その結果、将来的には価格競争が激化し、大規模な需要家を捕まえ

ない限り、価格に基づく競争力で我が国部品・コンポーネントメーカーが太刀打ちするのは

厳しい状況にある。他方、ミッション部は事業ごとに異なるためコモディティ化による価格

競争の影響を受けにくい。また、小型衛星により得られるデータ品質やそれによるサービス

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の優位性に直接影響するため、優れたミッション部用の部品・コンポーネントの研究開発の

推進により、国内のコンステレーションビジネスの競争力も強化することが可能である。 したがって、イメージセンサ等の我が国が競争優位性を有しているミッション用部品・コ

ンポーネントの研究開発を推進することにより、我が国の部品・コンポーネント事業及びコ

ンステレーションビジネスの競争力を強化することが可能なのではないか。 長納期部品(例えば、バッテリ、太陽電池セル等)の低価格・短納期化 コモディティ化が予想されるバス用部品・コンポーネント分野において、我が国の部品・

コンポーネントメーカーが競争力を保持するための別の方策として、部品・コンポーネント

の価格以外の点での高付加価値化が挙げられる。将来的にバス用部品・コンポーネントがコ

モディティ化し、低価格化が進行したとしても、価格以外の点で魅力があれば、一定程度の

市場競争力を発揮することが可能である。 例えば、研究会においては宇宙分野における部品・コンポーネントには、リードタイムが

非常に長いものがあることが課題として挙げられた(例:バッテリ、太陽電池セル)。これ

らは現状、海外からの購入に依存していることが多く、代理店を経由して購入する際に、あ

る程度の注文数がたまらないと製造元への発注がかからないため、結果的に長納期化して

いるものもある。こうした輸入に頼っている長納期部品を国産化することが出来れば、国内

の小型衛星インテグレーターを納入先と想定した場合、仮にコスト面の競争力で欧米製品

に劣るとしても、短納期であるという付加価値により、十分な競争力を備えられるのではな

いか。まずは、上記のようなニーズがある国内事業者を納入先として生産・販売することを

通じ、更なる低コスト化を図り、価格面でも一定の競争力を得ることができれば、その後海

外への輸出を拡大していくことも可能ではないか。 事業化を見据えた工夫 従来の宇宙用部品・コンポーネントは、特定のミッションで使用することを前提に、一品

ものが研究開発され、事業化を前提としていないものが多かった。その結果、高性能な部

品・コンポーネントを開発しても、需要の少なさから高コスト化し、買い手の求める価格に

ミートしないという悪循環に陥っていた。また、設計面でも、事業化を見越した検討(製造

工数を減らすことができるような部品設計等)がなされていないケースが多かった。 他方で、小型衛星はコンステレーションとして複数機使用されることが多いため、その部

品・コンポーネントも同じものを採用するのが一般的である。また、小型衛星用部品は、従

来の大型衛星と比較して品質・性能要求のハードルが比較的高くなく、砂漠や南極等の地上

における極限環境で使用される部品と要求が近い可能性がある。 したがって、小型衛星用の部品・コンポーネントの研究開発においては、一品ものではな

く事業化をも見据えた工夫(量産化を見据えた設計、軌道上実績・認証の取得、地上用途と

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の併用等)が必要なのではないか。 「論点①:キーとなる部品・コンポーネントの特定」に係る委員等コメントまとめ

<我が国において重点的に研究開発すべき部品・コンポーネントについて> データドリブンの宇宙時代において、衛星データの価値に直結するものづくりが重宝

される。そういった観点では、センサ技術や通信技術等のミッション系の付加価値が非

常に重要ではないか。イメージセンサ等は我が国が強みを持っている分野であるので、

そういった分野を中心に研究開発を進めれば、国際競争力につながる。 メガコンステレーションに提供できないと数が出ないため、部品・コンポーネントの量

産化をなかなか進められないと理解。であれば、宇宙だけでなく地上でも使えるコンポ

ーネントを合わせて量産するのが良いのではないか。例えば、小型衛星用のバッテリ

は、電気自動車のバッテリとして、都市だけでなく南極でも砂漠のような悪環境の中で

も使えるようなものとうまく共通化できるのではないか。 他の製造業と比べて、宇宙業界は QCD が良くない。特にデリバリーは後回し。ただし、

これからは、小型衛星の量産化が始まって事業としての競争が激しくなってくる。そう

すると、スピードが重要になってくるので、長納期部品の納期を短縮できれば、衛星製

造事業者にとっては魅力的ではないか。特に、スラスタ、ソーラーセル、スタートラッ

カなどは、海外から買ってくることが多いので、国内に在庫を保有して、部品の供給タ

イミングを最適化して生産性を向上させるということが解決案の 1 つとしてあるので

はないか。 小型衛星は多くても数百から数千のスケール。これくらいのスケール感で勝負できる

部品・コンポーネントを特定し、戦略的に研究開発を推進するのが良いのではないか。

少量多品種という日本のものづくりの強みを活かすことが出来る。 現在は 150kg 衛星がメガコンステレーションの主流だが、将来的にはもっと小型な衛

星で同様のミッションができるようになる可能性もある。例えば、6U くらいの超小型

衛星による通信メガコンステレーションなどが出てくるかもしれないので、そこの市

場を取りに行くという考え方もあるのではないか。 現在、経済産業省の SERVIS 事業で部品・コンポーネントの研究開発補助が実施され

ているが、予算規模や開発期間が妥当であるか疑問。国内衛星ベンチャーが実施したい

ミッションのために部品・コンポーネントを研究開発するには予算額として不足して

いるのではないか。あるいは、事業のトータルの予算額は一緒でも、部品・コンポーネ

ントメーカーとベンチャーとをチーミングして、そこに補助事業として張っていくよ

うな形もあり得るのではないか。

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<小型ロケット分野におけるキーとなる部品・コンポーネント> 小型ロケットにおいても同様に、欧米におけるベンチャー企業を中心として、輸送サービ

ス事業の競争力強化に向け、小型ロケットの輸送能力向上に資する研究開発が進められて

いる。 小型ロケットの輸送能力は、主に、推進剤に由来する比推力と、ロケット本体の重量によ

り定まる構造効率に比例する。特に、部品・コンポーネントの観点では、ロケットの構造効

率向上に資する部品・コンポーネントの軽量化が各事業者において進められている。 例えばその一例として、CFRP 構造材によるタンクの製造が挙げられるが、研究会では、

常温で使用される CFRP タンクを製造する技術は国内に存在するものの、液体酸素等の極

低温燃料用に使用される CFRP タンクは、ライナーとの熱膨張率の際により剥離してしま

うために難しい技術であると言われており、これを製造可能なメーカーは我が国には見当

たらないとの報告があった。 また、アビオニクスの軽量化に関しては、旧式の半導体部品等を採用してしまうと、アビ

オニクスが大きくなってしまうので、出来るだけ最新の半導体部品を使うのが有効であり、

そのための研究開発が国内において不足しているとの指摘がなされた。 したがって、他国の小型ロケット事業者の研究開発動向も踏まえて、我が国においても、

競争力のある小型ロケットビジネスの実現のために、CFRP 構造材やアビオニクスの軽量

化等の、ロケットの構造効率を向上させ、小型ロケットビジネスの競争力強化に寄与する部

品・コンポーネントの研究開発が必要である。

図表 30:小型ロケットの構造効率向上の取組例

出所:第 3 回研究会 インターステラテクノロジズ資料

Page 43: コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた …...図表 11:Planet の超小型衛星 .....13 図表 12:Spireの超小型衛星 .....14 図表 13:PlanetiQ

40

「論点①:キーとなる部品・コンポーネントの特定」に係る委員等コメントまとめ

<小型ロケットの部品・コンポーネント関係> ロケット性能を向上させるには、打上げに必要な増速力をいかに減らせるかが鍵。その

ためには構造効率 の向上が重要であり、各ロケット事業者がロケットの軽量化に取り

組んでいる。 ロケットの構造効率に関しては、各国の小型ロケット事業者が CFRP 構造材の開発や

アビオニクスの軽量化に取り組んでいる。日本は欧米に対して遅れているので、重点的

に研究開発を進めるべきである。

<取組の方向性> 以上より、「論点①:キーとなる部品・コンポーネントの特定」においては、以下の方向

性を踏まえた取組が必要である。 なお、小型衛星・小型ロケットの部品・コンポーネントの研究開発においては、部品・コ

ンポーネントメーカー側(売り手側)の視点のみならず、小型衛星・小型ロケットシステム

側(買い手側)の視点も踏まえた顧客ニーズ(性能、価格、納期、長期供給コミットメント

等)の把握や、JAXA の有する基礎研究成果の活用や部品・コンポーネントメーカーと JAXAとの連携といった JAXA の知見等の活用等による研究開発効果の向上に努めるべきである

点にも留意が必要である。

将来的に衛星システムの小型化が更に進行する可能性を見据え、小型衛星(超小型含

む)・小型ロケットの部品・コンポーネントの研究開発を中心とした検討を行うべき。 価格競争となっているバス部に対し、今後のサービスモデルと直結するミッション部

については競争の余地があることから魅力的なサービス提供に資するミッション部

(例えば、センサ技術、通信技術等)、主に海外からの購入に依存している長納期部品

(例えば、バッテリ、太陽電池セル等)の低価格・短納期化に資する研究開発に注力す

べき。 従来のような一点物の開発ではなく、事業としての成立性までも加味した部品・コンポ

ーネント(例えば、量産化を見据えた設計、軌道上実績・認証の取得、地上用途との併

用等)の研究開発に注力すべき。 海外の技術動向を踏まえつつ、小型ロケットの構造効率向上等に貢献し、競争力強化に

資する研究開発(例えば、CFRP 構造材、慣性計測装置、自律飛行安全技術等)に注力

すべき。

Page 44: コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた …...図表 11:Planet の超小型衛星 .....13 図表 12:Spireの超小型衛星 .....14 図表 13:PlanetiQ

41

3.3.2 論点②:小型衛星・小型ロケットの生産技術・試験 <量産化技術の小型衛星・小型ロケットへの適用> 欧米においては小型衛星・小型ロケットの量産技術の強化や体制整備が進行中であり、民

生品の利用に加えて、生産効率の向上により、小型衛星・小型ロケットの更なる低コスト化

に取り組んでいるところである。 一方で、我が国に目を向けてみると、小型衛星・小型ロケットの生産効率向上に向け、3Dプリンティング等の新たな生産手法の検討等により、各事業者が小型衛星・小型ロケット又

はそれらに使用する部品・コンポーネントの生産性向上による低コスト化が追求されてい

るが、各社の事業が研究開発フェイズであること、充分な需要獲得の見込みがないこととか

ら、本格的な量産化までには至っておらず、このまま欧米における小型衛星・小型ロケット

の量産化が進行すると、小型衛星・小型ロケットやそれに用いられる部品・コンポーネント

は、圧倒的な価格競争力で市場を独占されることが懸念される。 他方、我が国の自動車産業等は、優れたものづくり技術等による高い国際競争力を有して

おり、安価で性能の良い自動車部品が数多く開発され製造されている。したがって、我が国

の民生分野における量産技術を宇宙分野に活用することが出来れば、量産化がキーとなる

小型衛星・小型ロケット分野においても、高い国際競争力を発揮することが期待される。 したがって、民生分野における量産化技術の転用等を踏まえた、我が国における小型衛

星・小型ロケットの生産効率の向上に取り組むべきではないかという仮説が示された。

研究会においては、国内においても、スラスタノズルやロケットの燃焼器の製造における

3D プリンティングの活用事例が示されたが、その中で、3D プリンティングを使いこなす

には、各種製品の生産に係るノウハウの蓄積が重要である点が指摘された。具体的には、3Dプリンティングに使用する材料や、材料の積層のひずみを抑制するためのガイドの配置等

が挙げられる。また、3D プリンティングは、加工が容易でない複雑形状の構造物を簡易に

作成可能であるという利点がある一方で、製品の表面精度が粗くなるために後工程が必要

である等、従来の加工方法と比較して製造コストが割高になる場合もある。したがって、3Dプリンティングを使用することが製品の低コスト化や生産効率向上につながる場面を見極

め、従来の加工方法との使い分けを最適化し、小型衛星・小型ロケットの生産効率向上を図

ることが重要である。また、民生における量産技術の宇宙分野への転用として、ロボットに

よるコンポーネントの製造事例も挙げられたが、当該製造手法においても、例えば、コンポ

ーネントの設計を当該手法に適合するよう見直す等、その製造手法が機能するためには一

定程度の知見が必要である。 前章にも述べた通り、欧米事業者においては、小型衛星・小型ロケットやその部品・コン

ポーネントの量産化を見据え、その製造手法についても量産化に適応するための取り組み

が進められているところ、我が国の小型衛星・小型ロケットやその部品・コンポーネントの

Page 45: コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた …...図表 11:Planet の超小型衛星 .....13 図表 12:Spireの超小型衛星 .....14 図表 13:PlanetiQ

42

生産においても、民生分野における量産技術の適用を推進していくことが重要であるが、そ

の際には、単なる設備導入で終わるのでなく、量産技術を効果的に活用するために、民生分

野において蓄積された知見等も含めた検討が必要であることに留意しなければならない。 また、小型ロケット分野においても、民生分野における量産化技術の活用が進展してお

り、特に欧米の小型ロケット事業者は、安価に小型ロケットを製造するために、民生の量産

技術等を積極的に活用し、自社の打上げサービスの低価格化に努めており、我が国において

も小型ロケット事業の競争力向上のために、小型ロケットの生産性向上・低コスト化に資す

る生産技術の導入に取り組むことが求められている。

図表 31:低価格化に資する小型ロケット製造技術 (1)

出所:第 3 回研究会 インターステラテクノロジズ資料

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図表 32:低価格化に資する小型ロケット製造技術 (2)

出所:第 3 回研究会 インターステラテクノロジズ資料

「論点②:小型衛星・小型ロケットの生産技術・試験」に係る委員等コメントまとめ

<量産化技術の小型衛星・小型ロケットへの適用> コスト削減のため、ロボットがものを作る生産工程の導入を進めているが、そういった

革新的な技術を衛星にも適用できるのではないかと考える。しかしながら、単に既存の

技術を適用すれば良いのではなく、例えば、生産をロボット化できるような部品の設計

変更や、ロボットが作業できるスペースの確保とか、ちょっとした工夫が必要である。 宇宙業界と他業界の生産技術の知見共有が出来ていない。生産の効率化のためには、部

品を図面から変えなければならないし、生産設備等も変えなければならない。メガコン

ステレーションにコンポーネントを納入する事業者は生産ラインから変えている。 3D プリンタの活用にはある程度テクニックが必要。機械工作でも同様だが、同じ機器

を持っていれば同じ精度のものが作れるかというと、そうではなくて、条件出し等が必

要。同じ 3D プリンタを持っていても、出来る製品の精度は大きく変わるようだ。した

がって、機械が1機、大学なり企業なりにあっても、相当なテクニシャンがずっといな

いと使いこなせなかったりする。 金属 3D プリンティングは量産に用いると製造コストが高価。切削や研削のような従来

の加工方法を含めて、3D プリンタの活きるところにはそれを使っていくのが良い。

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<小型衛星の試験の効率化・簡便化> 衛星やそれに用いられる部品・コンポーネントは、打上げ時のロケットの振動や宇宙空間

における熱・真空・放射線等の環境に耐え得るものでなければならないため、振動試験、熱

真空試験、放射線試験等の各種試験を行い、宇宙空間においても正常に動作し得るかの確認

がなされるのが一般的である。特に小型衛星は、政府衛星等の大型衛星よりも多くの機数が

生産されること、耐放射線性能が定かでない民生品が比較的多く使用されること等から、そ

れぞれの試験の頻度が高くなる傾向にある。仮に小型衛星の生産効率が格段に向上しても、

各試験をタイムリーに実施できなければ衛星を打ち上げることはできず、事業展開に影響

を及ぼしてしまうことが懸念される。したがって、小型衛星の量産化においては、生産効率

の向上のための生産手法のみならず、量産時における試験のあり方についても検討が必要

であると考えられる。 研究会においては、現在の我が国の小型衛星の試験における課題を洗い出し、それを踏ま

えた上で求められる取組の方向性について議論を行った。 我が国の小型衛星の試験に関して挙げられた主な課題は以下の通りである。

各試験施設が点在していることによる調整コスト 我が国の小型衛星事業者は、主に大学や公設の工業試験センター等の試験設備を利用す

ることが多い。小型衛星の試験に利用できる施設は国内に一定数存在しているものの、一カ

所で一連の試験を実施可能な施設は多くなく、また、各試験施設が国内に広く点在している

ため、試験ごとに衛星の試験施設への輸送が必要である。こうした課題に対して、国内では

例えば九州工業大学が小型衛星試験のワンストップ拠点として「超小型衛星試験センター」

を設立し、放射線試験以外の全ての環境試験を実施可能な体制を整備しているが、近年の小

型衛星ビジネスの拡大及び各大学における研究による試験需要増により、打上げ前の時期

等は希望通りに予約が出来ない状況となっている。 加えて、現在、国内に点在する試験施設を一覧化し、予約を一元管理できる仕組みが無い

ことから、小型衛星事業者が各試験施設を利用する場合、事業者自身が各試験施設と予約調

整をしており、また、衛星製造スケジュールに遅延等が生じた場合、後続の試験工程で利用

する施設と再調整が発生し、試験を実施するための調整に関して、各事業者において多大な

コストが生じている。このことから、試験施設情報や試験スケジュール調整のワンストップ

化等、その軽減のための方策が必要ではないか。また、各都道府県も独自の公設工業試験セ

ンターを有しており、産業振興の観点から利便性向上のための独自施策を講じることも想

定されることから、上記方策とうまく連携できるような仕組にすることが必要ではないか。

試験施設のユーザビリティ向上 前述の通り、各種試験施設が国内に点在しているため、スケジュール変更時のバックアッ

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プとして複数の試験施設を利用せざるを得ない場合があるが、試験設備のインターフェイ

スが施設間で必ずしも同一ではない。そして、インターフェイスが異なる場合は、専用の治

具等を用意する必要があるが、試験施設ごとに専用の治具をいくつも開発するのは非効率

的であるため、例えば、必要機器のシェアリングやリース等、既存の試験施設を小型衛星コ

ミュニティで最大限有効活用できるような取組が必要なのではないか。 なお、小型ロケット用部品の多くにおいても小型衛星部品と同様の試験が必要であるた

め、小型衛星用試験設備の取組が推進されることは、小型ロケット用部品の生産効率向上へ

の寄与も期待される。

「論点②:小型衛星・小型ロケットの生産技術・試験」に係る委員等コメントまとめ

<小型衛星の試験の効率化・簡便化関係> 単純に同じハードウェアを量産するためには、システムメーカーが力を付けることが

大事である。それと同時に、開発プロセスを迅速化するという意味では、小型衛星にと

って使いやすい環境試験設備等をワンストップで集積化し、それを国内の小型衛星コ

ミュニティの中でシェアする形ができれば、産業力強化につながるのではないか。 九州から東北に至るまで試験設備が点在しているため、試験場の予約、輸送、工程管理

等が必要になる。なかなか小型衛星を丸ごと試験できる施設というのは無いので、各試

験施設を転々と移動して試験をしなければならないというのが、我々が抱えている現

実。そして、開発段階にある衛星なので全てがうまくいくわけではない。その中で、試

験が遅れた場合、予約している試験設備以外のバックアップを用意しなければいけな

いが、試験設備が変わると機械的なインターフェイスが変わったりする。なので、専用

の治具を用意したりとか、手順を準備しなければいけなくなり、さらに負荷が増えてし

まう。 例えば、外部に設備が貸出し可能な大学、公設施設、私営の試験施設等をデータベース

のようなもので一括して、小型衛星製造者との間を仲介するようなプラットフォーム

があれば非常にありがたい。今後、小型衛星のベンチャーが増えれば、こうした需要は

さらに増えて、これもビジネスになるのではないか。 1~2m レベルの中型衛星ぐらいの試験設備が必要だが、そういったものはなかなか民

間でも設備がない。熱真空試験や音響試験等において、JAXA や既存の宇宙機メーカー

が所有している設備を、あまり高価でなく、一般利用出来る仕組みを広げて欲しい。 量産化に向けては、試験時間の短縮が鍵。そのためには、試験インターフェイスの標準

化や、センサを埋め込んだ治具の開発、センサのワイヤレス化等が考えられる。いずれ

にしても試験フローの自動化が重要。振動試験の試験機のスイッチを入れたら全部結

果が出てくるような形が望ましい。 衛星組み立てにかかる時間と試験にかかる時間を比べると、試験にかかる時間の方が

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圧倒的に大きい。ただし、機能試験を平行して行えるインフラを持つというのは、メー

カーにとってかなり負担。したがって、多品種のコンポーネント、衛星の試験に柔軟に

対応出来る汎用的な機能試験ベンチを貸し出す事業者があればいいのではないかと考

えている。いずれにしても、試験時間の短縮に向けて、衛星メーカーと試験する側の間

で知見を交換し合う場があった方が良い。それを通じた、試験をアウトソーシング出来

る事業者の育成が必要。

<取組の方向性> 以上より、「論点②:小型衛星・小型ロケットの生産技術・試験」においては、以下の方

向性を踏まえた取組が必要である。

<量産化技術の小型衛星・小型ロケットへの適用> 民生分野における量産化技術の小型衛星・小型ロケット分野への適用を推進するとと

もに、民生分野において蓄積された量産化に係る設計手法・ノウハウ等の小型衛星・小

型ロケット生産への活用を推進すべき。 <小型衛星の試験の効率化> 小型衛星製造における一連の試験実施のためのコスト低減のため、既存施設も活用し

つつ、試験施設の情報提供、施設利用のコーディネート・スケジュール調整、必要機器

の貸出等を含むワンストップサービス提供に向けた取組を推進すべき。その際、必要に

応じて新規試験機器導入の支援も検討すべき。

3.3.3 論点③:小型衛星・小型ロケット部品の販路拡大に当たっての課題

小型衛星等用の部品・コンポーネントの販売に当たっては、部品・コンポーネントの性能

が単に優れているというだけでは十分でなく、信頼性の観点から軌道上の運用実績を求め

られることが一般的である。現在、我が国における小型衛星等向け部品・コンポーネントの

軌道上実証機会としては、JAXA 革新的衛星技術実証プログラムがあるが、当該プログラム

は 2 年に 1 回程度の頻度であり、更新頻度が高い民生品を利用したコンポーネントの実証

機会としては、必ずしも十分な頻度ではなかった。この点については、部品・コンポーネン

トメーカーのみならず、小型衛星システムメーカーからも同様の意見があり、自社の小型衛

星で採用したい民生品等があっても、軌道上実証の機会が十分でないため、当該民生品採用

の判断を開発にあわせてタイムリーに行えていないという課題が報告された。 他国における小型衛星の部品・コンポーネントの軌道上実証は、前章にも述べた各種プロ

ジェクトがあり、政府等がその支援を行っている。対して我が国は、前述の通り JAXA が

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革新的衛星技術実証プログラムを通して軌道上実証を提供しているものの、当該プログラ

ムによる軌道上実証は 2 年に 1 度の予定であり、小型衛星に利用される民生品の更新頻度

を考慮すると、競争力のある部品・コンポーネントを適時に軌道上実証するには、基幹ロケ

ットの活用はもとより、国際宇宙ステーション(ISS)からの放出枠組みや、今後民間主体

で開発が進むことが予想される小型ロケットの活用等を通じたさらなる軌道上実証機会の

拡充が必要なのではないか。 また、民生部品の耐放射性試験や軌道上実証の実績については、九州工業大学の協力の下、

経済産業省が平成 29 年度に「民活衛星イニシアチブ」として超小型衛星搭載民生部品デー

タベースを開設した。当該データベースは大学衛星を中心に、超小型衛星に搭載された民生

品の軌道上での稼働情報等が集約されている。当該データベースは、これまで各超小型衛星

の製造者ごとに蓄積されていた民生品の軌道上の稼働状況等を協調領域化し、我が国全体

における超小型・小型衛星の生産性向上に貢献するものである。しかしながら、民生品の更

新サイクルは宇宙分野と比較して非常に早く、数年で更新されることも多い。したがって、

当該データベースに掲載された情報は、放っておくとすぐに陳腐化してしまうため、継続的

なアップデートが必要不可欠である。また、現在は大学衛星の軌道上実証結果が中心である

が、商用衛星となると、放射線量等を定量的に評価できなければ、自社衛星の品質管理の観

点から利用しにくい情報となってしまう。したがって、例えば政府が関与して軌道上実証を

行った部品・コンポーネントの実証結果を当該データベースに反映させる等、データベース

を構成する情報のアップグレードについても検討することが求められる。

「論点③:小型衛星・小型ロケット部品の販路拡大に当たっての課題」に係る委員等コメン

トまとめ

<軌道上実証機会の更なる拡充> 小型衛星の軌道上実証が少ないので、できれば、国内ロケットをベンチャーの小型衛星

に対しての打上げ機会の拡充に利用していただきたい。部品の宇宙実証というのも兼

ねて、機会を拡充して欲しい。 打上げ機会に関して 2 つ課題がある。1 つは軌道上の実証機会が少ないということ。実

証機会が少ないので、軌道上実績が無い部品等は、どうしても地上で全て試験をして、

完璧になってから打ち上げているが、実証のための打上げ機会があれば、動作確認がで

きるし、仮に故障したとしても、色々な原因が見えてくると思う。ISS などを活用して、

さらに実証機会を増やしていくのが必要なのではないか。もう 1 つの課題は、実証結

果を共有して発展させる仕組みがないこと。自社のシステムの開発の際には、類似性の

あるシステムを参考にする方が効率がよいので、その参考にする類似システムが公開

されていくと開発のスピードが早くなる。

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<民生品データベースの強化> 宇宙関係は、部品に対する要求が民生と比べて厳しいが、昨今の車載用電子部品は、機

械関係や熱環境について非常に厳しい品質で生産されているので、そういった分野の

民生品を宇宙分野で使うことは可能と考える。ただし、最大の問題として放射線耐性が

どうかというところが非常に重要なファクター。今現状としては、各事業者が自分たち

で評価したり、実績あるものを使ったりして対応しているが、欧米では研究機関等が地

道にデバイス評価をして、データ等をその国の企業にシェアするという形で役割分担

しているということも聞く。日本の中でのアクティビティーとしては、九州工業大学が

大学衛星の部品のデータベースを収集して開示していて、これはベンチャーなどにと

っては非常に重要なデータだが、電子部品は新しい世代がどんどん出てくるとともに、

古いものがどんどんディスコンになっていくので、データベースはメンテナンスし続

けないと、あっという間に陳腐化してしまう。また、大学衛星のデータであるため、軌

道上の実績を定量的に評価するのがなかなか難しい。産業用の衛星では、もう一段上の

データの品質が必要。放射線耐性をどうやってデータ蓄積していくかが課題。

<取組の方向性> 以上より、「論点③:小型衛星・小型ロケット部品の販路拡大に当たっての課題」におい

ては、以下の方向性を踏まえた取組が必要である。なお、軌道上実証においては、衛星・ロ

ケットの準備だけでなく、安全審査、周波数調整、軌道上での運用等も必要となる。したが

って、効果的な軌道上実証の実施のためには、実証衛星の運用が最後まで適切に行われるよ

うな仕組み作りにも留意する必要がある。

政府関与の下、市場で競争力がある部品・コンポーネントを搭載した超小型衛星を製造

し、国際宇宙ステーション(ISS)からの放出の枠組みも活用し、軌道上実証機会の更

なる拡充に取り組むべき。また、中長期的には、打上げ手段として我が国小型ロケット

の活用も視野に入れた検討を行うべき。 当該機会を利用して実証された部品・コンポーネントについては、その実証結果を超小

型衛星搭載民生部品データベースに反映し、継続的に情報を更新する仕組みを構築す

べき。

3.3.4 論点④:標準化・協調領域化の推進 小型衛星は、大型衛星と比較して品質要求がまったく異なるものであることは前述の通

りだが、衛星システムとして要求される品質レベルには、必ずしも統一的な規格等はまだ存

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在しておらず、各社が試行錯誤しながら、自身の事業を達成可能な範囲で衛星の品質・信頼

性とコストのバランスを模索しているところである。小型衛星に求められる品質レベルは、

各社の試行錯誤の末に、将来的にはコストとのバランスにより最適化されていくものと考

えられるが、国内の小型衛星の生産性向上の観点からは、各社に蓄積されている知見の内、

例えば、量産化を見据えた設計や、機能試験のあり方等、協調領域として共有できる領域を

事業者間で共有することにより、国内における小型衛星の品質レベルの最適化を効率的に

進めることが、ひいては我が国のコンステレーションビジネスの競争力強化につながるの

ではないか。

「論点④:標準化・協調領域化の推進」に係る委員等コメントまとめ

<衛星製造に係る標準化等関係> 小型衛星・小型ロケットの部品・コンポーネント開発においては、海外の動向を常に情

報入手して分析することが必要。特に、小型衛星バスは今後コモディティ化していくと

考えられるため、他国規格を分析しつつ、日本独自の強みをどう活かしていくかが重

要。 一般的に、標準化を推進することにより市場拡大・貿易促進が可能。これには認証・試

験といった規格が役に立ち、顧客が部品・コンポーネントの品質を安心して買える等の

効果が期待される。また、データ規格の標準化を進めることにより、互換性が確保でき

たり、衛星を上げた後の運用が簡単になったりする。何でも標準化すればいいというも

のではなくて、もちろん競争や独自性によって製品価値を高めないといけないが、業界

全体の発展のためには協調も必要であり、そのバランスが重要。 海外のコンステレーションプレーヤーが巨大な勢いで物量作戦に出てくる中で、例え

ば九工大と経済産業省がやっているような民生用部品のデータベースみたいなものが

オープンになっているが、それ以外にも、共通化出来るような情報が多くある。事業者

間のつながりが弱いよう思えるが、日本で共通で勝っていくためには、標準化・共通化

について議論するとともに、新規参入者がノウハウを共有してもらうことができて、リ

ーンスタートアップが可能となるような仕組みの整備が必要なのではないか。

<衛星の打上げに係る標準化関係> 打上げに係る文書を他国と共通化出来ると良い。例えば、JAXA 設備による打上げでも

英語の手順書を受け取ってくれるだけでもありがたい。海外で打ち上げることを視野

に入れていると、もともと提出文書も全て英語で用意するので、JAXA で打上げとなる

と、それを全部日本語化するという労力が発生してしまう。 安全要求・安全設計について、ロケット側でローカルな安全要求がありますと、衛星側

は別のロケットを探し、打ち上げ事業者が顧客を逃すきっかけになりかねない。したが

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って、安全要求は他国の水準と同程度にしておく必要がある。国内において小型衛星事

業者とロケット事業者とで安全要求について協議する場を設けてはどうか。

<取組の方向性> 「論点④:標準化・協調領域化の推進」においては、本研究会で委員間の意見交換がなさ

れたものの、取組の方向性を策定するには、技術的な観点も含めたさらなる議論の深化が必

要である。平成 30 年度から経済産業省は内閣府と連携して宇宙分野における知財戦略につ

いて議論することとしており、本論点における議論は、当該知財戦略に関する議論において

より深掘りした検討を行うこととする。 また、標準化・協調領域化の推進の検討においては、事業者同士や JAXA-事業者間等に

おける知見共有が重要であるが、平成 29 年度に立ち上げられた「宇宙産業分野における人

的基盤強化のための検討会」においても、宇宙分野における事業展開等に必要な技術や知見

の共有のあり方を含む検討がなされたため、同研究会においてとりまとめられた取組とも

連携して、当該知見共有のあり方の検討を行うこととする。

3.3.5 その他の論点 本研究会においては、上記4つの論点の他、主に以下に挙げる点も小型衛星・小型ロケッ

トビジネスの競争力強化における課題であるとの指摘があった。これらの点についても、引

き続き、官民が連携しつつ継続的な議論が必要である。 輸出入時等における各種手続きの簡略化 小型衛星・小型ロケット業界が持続的に発展するための仕組み作り

その他の論点に係る委員等コメントまとめ

<輸出入等の各種手続きの簡略化>

小型衛星を利用したビジネスを展開しようとすると、衛星を作って、打ち上げて、運用

してということが国内で全てクローズできないこともある。また、海外の衛星を日本に

持ってきて打ち上げるということもあり得る。そういった観点を踏まえると、宇宙機器

を海外に持ち出す、もしくは海外から持ち込むときに、通関や、使用機材の国内の安全

規定、例えば高圧ガス等の危険物の規定を全て満足しなければいけないということが

あり、一つ一つ問題点を衛星メーカーが潰していくのは、小さな会社にとっては対応が

難しい。そこで、例えば、海外の主要な射場のように、例えば宇宙特区のようなものを

作り、そこに持ち込む機材や物質等の行政への各種手続きを一本化できる仕組みがで

きれば、小型衛星・小型ロケット関係のものづくりがさらに活性化するのではないか。

Page 54: コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた …...図表 11:Planet の超小型衛星 .....13 図表 12:Spireの超小型衛星 .....14 図表 13:PlanetiQ

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海外の人たちに聞いても、日本の法手続は非常に複雑だと言われる。具体的なアイデア

は今は無いが、例えば、宇宙特区のような、通関手続だとか、税制措置、あるいは他の

レギュレーションを一定のレベルで緩和される仕組みを作って、日本全体として小型

衛星・小型ロケットの支援のスタンスを示すとか、そういうことを議論するためのニュ

ースペースの集まる場が作られると良い。

<小型衛星・小型ロケット業界が持続的に発展するための仕組み作り> 現在小型衛星・小型ロケット分野が盛り上がっているのは、一種のブームのようなもの

だという危機感を抱いている。小型衛星や小型ロケットに関する産業が、この先もサス

テナブルに存続し、持続的に発展していくために、継続的に議論を行っていく場を作

り、業界全体、あるいは官民一体となって盛り上げていくとともに、対外的にもその盛

り上がりを発信し続けていく必要があるのではないか。

Page 55: コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた …...図表 11:Planet の超小型衛星 .....13 図表 12:Spireの超小型衛星 .....14 図表 13:PlanetiQ

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4 終わりに 本報告書は、7 回にわたる「コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた小型衛

星・小型ロケットの技術戦略に関する研究会」での検討内容をとりまとめたものである。 現在、宇宙産業は転換期を迎えており、ビッグデータ化する宇宙由来のデータは、様々な

地上データや AI 等の解析技術と組み合わさり、幅広い分野において新たなソリューション

を提供し始めている。また、新規ベンチャーの登場や他分野からの新規参入等により、宇宙

産業の裾野が拡大され、それに牽引されて宇宙機器産業も小型衛星・小型ロケット分野を中

心に、世界中のプレイヤーが競争を激化させている。そして、我が国においても、ユニーク

なビジネスモデルを描くベンチャーが多く誕生し、事業の実現に向け、日夜、新たな研究開

発が進められているところである。 本研究会で議論された論点の多くは、小型衛星・小型ロケットの部品・コンポーネント又

は小型衛星・小型ロケットシステムの生産性や付加価値の向上に資する施策につながるも

のであるが、それらは、本研究会の場において、小型衛星メーカー、小型ロケットメーカー、

部品メーカー、商社等、異なる領域で活動する者が、その垣根を越えて自由闊達な議論・意

見交換がなされたことにより生まれたものである。その過程を踏まえると、我が国の小型衛

星・小型ロケットビジネスの持続的発展のためには、各領域の事業者が、お互いの競争領域

を尊重しつつも、協調領域として共有できる範囲において今後も継続的なコミュニケーシ

ョンが実施されることが非常に重要である。 本報告書において提言された各種取組は、小型衛星・小型ロケットの競争力強化のために

推し進められるべき施策であるが、それら施策の目的は小型衛星・小型ロケットを利用した

魅力的なサービス提供であるということを、施策に取り組むに当たって常に意識すべきで

ある。 本報告書を踏まえ、小型衛星・小型ロケット分野における各種施策が進められることによ

り、我が国の宇宙産業の発展とデータドリブン社会の構築につながっていくことを期待す

る。

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【補足】コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた小型衛星・小型ロケ

ットの技術戦略に関する研究会の概要 構成員一覧 ※所属・肩書きは委員就任時点のもの (有識者) 趙 孟佑(座長) 九州工業大学大学院工学部総合システム工学課教授 小泉 宏之 東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授 (関係企業・団体) 中村 友哉 株式会社アクセルスペース代表取締役社長 岡田 光信 株式会社アストロスケール CEO 大西 俊輔 株式会社 QPS 研究所代表取締役社長 岡島 礼奈 株式会社 ALE 代表取締役社長 袴田 武史 株式会社 ispace 代表取締役 CEO 熊谷 秀夫 多摩川精機株式会社常務取締役 浅井 直也 高砂電気工業株式会社代表取締役社長 大坪 正人 株式会社由紀精密代表取締役社長 阿部 耕三 キヤノン電子株式会社宇宙技術研究所長 稲川 貴大 インターステラテクノロジズ株式会社代表取締役社長 永崎 将利 Space BD 株式会社代表取締役社長 穴山 眞 株式会社日本政策投資銀行常務執行役員 土田 誠行 株式会社産業革新機構専務取締役 金山 秀樹 シー・エス・ピー・ジャパン株式会社代表取締役社長 今井 良一 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構理事 久木田 正次 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構理事(第1~5回) 渡邉 政嘉 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構理事(第6~7回) (オブザーバ) 一ノ瀬 宏昭 内閣官房内閣衛星情報センター技術部企画課長 山口 修治 内閣府宇宙開発戦略推進事務局参事官 翁長 久 総務省国際戦略局宇宙通信政策課長 谷 広太 文部科学省研究開発局宇宙開発利用課長 磯野 賀瑞夫 環境省地球環境局総務課研究調査室長補佐 萩原 祐史 防衛装備庁技術戦略部技術戦略課技術企画室長(第1~5回) 佐々木 秀明 防衛装備庁技術戦略部技術戦略課技術企画室長(第6~7回)

Page 57: コンステレーションビジネス時代の到来を見据えた …...図表 11:Planet の超小型衛星 .....13 図表 12:Spireの超小型衛星 .....14 図表 13:PlanetiQ

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開催実績

開催日 主な議題

第1回 平成29年 12月22日(金)

• 今年度の本研究会の進め方について(経済産業省) • 宇宙部品企業における国際動向(シー・エス・ピー・ジャパン) • 部品メーカーが取り組む宇宙事業(多摩川精機) • 小型衛星・ロケットの部品・コンポーネントにおける課題・求められる取

組について(アストロスケール)

第2回 平成29年 1月15日(月)

• 小型衛星部品・コンポに関する考察-小型衛星システムメーカーの視点か

ら-(アクセルスペース) • 小型SAR衛星コンステレーション事業から見た小型衛星の技術戦略(QPS

研究所) • 宇宙ベンチャーの衛星AITにおける課題の紹介(ALE)

第3回 平成30年 1月30日(火)

• 由紀精密の宇宙産業に関するこれまでの取り組みと、精密加工業から見た

今後の関わり方(由紀精密) • 国内中小部品メーカーの小型衛星ビジネス生き残り(高砂電気工業) • 小型ロケットの技術マップと産業上の戦略(インターステラテクノロジズ)

第4回 平成30年 2月27日(火)

• ispaceの取組(ispace) • 九州工業大学からの論点提供(九州工業大学) • 英国の宇宙産業振興について(JAXA)

第5回 平成30年 3月13日(火)

• 研究会中間とりまとめ案の提示(経済産業省)

第6回 平成30年 4月17日(火)

• 研究会最終とりまとめ案の提示(経済産業省)

第7回 平成30年 5月14日(月)

• 研究会最終とりまとめ(経済産業省)