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BY ALEXANDRA WI TZE / I LLUSTRAT ION BY N IK S P E NCER 地球から太陽までの距離 = 1 天文単位 AU、1 億 5000 万 km) イオンエンジン フレーミング カメラ 可視光・赤外線 マッピング分光計 ガンマ線・ 中性子分光計 太陽電池パネル 2015 年 それぞれの旅路 950 km 2 機の探査機はほぼ同時期に打ち上げられたが、 これまでに進んだ距離は大きく異なる。 打ち上げ日:2007 年 9 月 27 日 目的地:小惑星帯 8.3m×2m のパネルが 2 枚 太陽から 1AU の距離での 発電電力は 10kW。 自転周期: 9 時間 表面:岩石質で、 おそらく下に 氷が埋もれている。 大気:薄く、 ところどころに 水蒸気がある。 温度: -140℃ から-70℃ 太陽 地球 木星 火星 ベスタ ケレス 520 km ケレス 小惑星・準惑星・衛星 長い旅路 南極に巨大な クレーターがある 岩石質小惑星。 探査機ドーン 直径 3474km ベスタ 小惑星ベスタの周回軌道: 2011 年 7 月 16 日~ 2012 年 9 月 5 日 準惑星ケレスの周回軌道: 2015 年 3 月 6 日に 重力圏に入った。 太陽系の内側で最大の未探査天体、 ベスタとケレスを調べる。 火星スイングバイ: 2009 年 地球 (1AU火星 打ち上げ速度: 5 万 8000km h -1 木星スイングバイ: 2007 年 2 月 28 日 小惑星帯 木星(5.2AU、8 億 km) 土星(9.5AU、14 億 km) ドーン 2007 年 ニュー ホライズンズ 2006 年 ケレスに関する重要事項: • 1801 年にジュゼッペ・ピアッツィが発見。 • 小惑星帯で最大の天体。 知りたいこと: • 水がどれほどあるか? • 生命が生育可能な環境はあったか? ドーンとニューホライズンズの旅 ドーンは、イオンエンジンによる加速と 慣性飛行を繰り返して小惑星帯に到 達。ニューホライズンズは、猛スピー ドでほぼ真っすぐに冥王星へ。 ケレスも冥王星も準惑星だが、一見、共通点 はほとんどないように思われる。 ニューホライズンズは、太陽の重力 を振り切って冥王星の彼方に向かう ため、木星スイングバイにより 1 万 4400km h -1 の加速を行った。 カロン 冥王星 望遠鏡 宇宙塵計数器 (学生が設計) 高エネルギー 粒子検出器 太陽風モニター 放射性同位体熱電気転換器 10.9kg の二酸化プルトニウム 238 の 放射性崩壊により発生する熱を利用して 電力を得る。 可視光 / 赤外線カメラ 紫外線分光計 打ち上げ日:2006 年 1 月 19 日 目的地:カイパーベルト 2320 km 1200 km 二重惑星 自転周期: 6.4 日 表面:メタン、 窒素、一酸化炭素の氷。 大気:希薄。 おそらく表面の氷が 昇華している。 温度: -240℃から-220℃。 大きさの比較 ミッションの費用 ドーン ニュー ホライズンズ 2 m 8.3m 冥王星 探査機ニューホライズンズ カロン 太陽系外縁天体に関するデータを収集する。 ニューホライズンズの 観測装置のスイッチが入る。 カイパー ベルトへ 天王星 (19.2 AU、29 億 km) 海王星 (30AU、45 億 km) 冥王星 / カロン (33AU、50 億 km) この地点から光速で送られる信号は 4.5 時間後に地球に到達する。 2015 年 冥王星に関する重要事項: • 1930 年にクライド・トンボーが発見。 • 最初に発見されたカイパーベルト天体。 知りたいこと: • 氷の表面はどんな様子? • 地質活動の痕跡はあるか? 4 億5000 万ドル (約 530 億円) 7 億ドル (約 820 億円) 冥王星の 最大の衛星 SOURCE: NASA/JPL/JHUAPL ドーンは火星と木星の間の小惑星帯にある準惑 星ケレスを、ニューホライズンズは海王星より外 側の軌道を運動する準惑星、冥王星を訪れる。 今回の観測で、研究者たちの予想を覆す小天体 の姿が映し出されると期待が高まっており、探査 結果いかんにより準惑星の定義が見直される可 能性もある。 2015 年は準惑星の年だ。NASA のドーンとニューホライズンズという 2 機の探査機が、太陽系で最大級の 2 つの岩石質小天体に初めて接近し、科学者にその姿を見せてくれるのだ。 冥王星 / カロン・フライバイ: 2015 年 7 月 14 日。 科学データを収集する時間は 24 時間しかない。 準惑星とは何か? 冥王星は数十年にわたり太陽系第 9 惑星と考えられていたが、 カイパーベルトで大きな天体が相次いで発見されたことがきっか けとなり、その扱いが疑問視されるようになった。2006 年に 国際天文学連合が惑星を再定義したとき、冥王星は軌道から他 の大型天体を重力的に一掃できていないことを理由に惑星から 格下げとなり、現在はケレスらとともに準惑星という新たな種類 の天体に分類されている。 カロンは冥王星の衛 星としては大きすぎ、 カロンが冥王星の周 囲を公転していると いうよりは、両者が 共通重心の周りを運 動している。

ドーンとニューホライズンズの旅 DWARF PLANETSDWARF PLANETS: 冥王星の 最大の衛星 SOURCE: NASA/JPL/JHUAPL ドーンは火星と木星の間の小惑星帯にある準惑

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Page 1: ドーンとニューホライズンズの旅 DWARF PLANETSDWARF PLANETS: 冥王星の 最大の衛星 SOURCE: NASA/JPL/JHUAPL ドーンは火星と木星の間の小惑星帯にある準惑

BY ALEXANDRA WITZE / ILLUSTRATION BY NIK SPENCER

地球から太陽までの距離 =1天文単位

(AU、1億 5000万 km)

イオンエンジン

フレーミングカメラ 可視光・赤外線

マッピング分光計

ガンマ線・中性子分光計

太陽電池パネル

2015年

それぞれの旅路

950 km

2 機の探査機はほぼ同時期に打ち上げられたが、これまでに進んだ距離は大きく異なる。

打ち上げ日:2007年 9月 27日目的地:小惑星帯

8.3m×2mのパネルが 2枚太陽から1AU の距離での発電電力は 10kW。

自転周期:9時間

表面:岩石質で、おそらく下に

氷が埋もれている。

大気:薄く、

ところどころに水蒸気がある。

温度:-140℃から-70℃

太陽 地球

木星

火星

ベスタ

ケレス

520 km

ケレス

小惑星・準惑星・衛星

長い旅路

南極に巨大なクレーターがある岩石質小惑星。

探査機ドーン

月直径 3474km

ベスタ

小惑星ベスタの周回軌道:2011 年 7月 16日~2012年 9月 5日

準惑星ケレスの周回軌道:2015 年 3月 6日に重力圏に入った。

太陽系の内側で最大の未探査天体、ベスタとケレスを調べる。

火星スイングバイ:2009年

地球(1AU)

火星

打ち上げ速度:5 万 8000km h-1

木星スイングバイ:2007 年 2月 28日

小惑星帯木星(5.2AU、8億 km) 土星(9.5AU、14億 km)

ドーン

2007 年

ニューホライズンズ

2006 年

ケレスに関する重要事項:• 1801 年にジュゼッペ・ピアッツィが発見。• 小惑星帯で最大の天体。

知りたいこと:• 水がどれほどあるか?• 生命が生育可能な環境はあったか?

ドーンとニューホライズンズの旅

ドーンは、イオンエンジンによる加速と慣性飛行を繰り返して小惑星帯に到達。ニューホライズンズは、猛スピードでほぼ真っすぐに冥王星へ。

ケレスも冥王星も準惑星だが、一見、共通点はほとんどないように思われる。

ニューホライズンズは、太陽の重力を振り切って冥王星の彼方に向かうため、木星スイングバイにより 1 万4400km h-1 の加速を行った。

カロン

冥王星

Ion thruster

Framingcamera Visible and infrared

spectrometer

Gamma ray and neutron detector

Solar array

205

DIFFERENT JOURNEYS

望遠鏡

宇宙塵計数器(学生が設計)

高エネルギー粒子検出器

太陽風モニター

放射性同位体熱電気転換器10.9kg の二酸化プルトニウム238の放射性崩壊により発生する熱を利用して電力を得る。

可視光 /赤外線カメラ

紫外線分光計

950 km

Dawn travelled using a mixture of thrusting and cruising on its way to the asteroid belt, whereas New Horizons blasted nearly directly outwards to Pluto.

Both Ceres and Pluto are dwarf planets, but

The probes have been in space for similar lengths of time, but have

LAUNCH: 27 SEPTEMBER 2007

TARGET: ASTEROID BELT

打ち上げ日:2006年 1月 19日目的地:カイパーベルト

Each 8.3 m x 2 m in size10 kilowatts of energy

2320 km

1200 km

二重惑星9 Earthhours

自転周期:6.4日

Surface: Rocky, probably with buried ice

表面:メタン、窒素、一酸化炭素の氷。

Atmosphere: Thin, sporadic,

watery

大気:希薄。おそらく表面の氷が昇華している。

Temperature:- 140 ºC to -70 ºC

温度:-240℃から-220℃。

Sun Earth

Jupiter

Mars

Vesta

Ceres

大きさの比較

ミッションの費用

ドーン

ニューホライズンズ

520 km

3,474 kmin diameter

2 m8.3 m

Ceres

BODIES OF INTEREST

GOING THE DISTANCE

A rocky asteroid with a huge crater at its south pole

冥王星

探査機ニューホライズンズ

カロンMoon Vesta

Vesta orbit:16 July 2011 - 5 Sep 2012

Ceres orbit: Enters gravitational pull

6 March 2015

NASA's probe will analyse the largest unexplored objects in

the inner Solar System.

太陽系外縁天体に関するデータを収集する。

:2009

Earth(1 AU)

Mars

28 February 2007Launch speed:58,000 km h-1

ニューホライズンズの観測装置のスイッチが入る。

カイパーベルトへ

Asteroidbelt Jupiter (5.2 AU, 0.8 billion km) Saturn (9.5 AU, 1.4 billion km)

天王星(19.2AU、29億 km)

海王星(30AU、45億 km)

冥王星 /カロン(33AU、50億 km)

この地点から光速で送られる信号は4.5 時間後に地球に到達する。

DAWN

2007

2015年

NEW HORIZONS

2006

a boost of 14,400 km h-1 from Jupiter to counter the gravitational pull of the Sun.

Key Ceres facts:• Discovered in 1801 by Giuseppe Piazzi• Largest object in the asteroid belt

Questions:• How much of it is water?• Was it once habitable?

冥王星に関する重要事項:• 1930 年にクライド・トンボーが発見。• 最初に発見されたカイパーベルト天体。

知りたいこと:• 氷の表面はどんな様子?• 地質活動の痕跡はあるか?

4億 5000万ドル(約 530億円)

7億ドル(約 820億円)

DWARF PLANETS:

冥王星の最大の衛星

SOURC

E: NAS

A/JP

L/JH

UAP

L

ドーンは火星と木星の間の小惑星帯にある準惑星ケレスを、ニューホライズンズは海王星より外側の軌道を運動する準惑星、冥王星を訪れる。今回の観測で、研究者たちの予想を覆す小天体の姿が映し出されると期待が高まっており、探査結果いかんにより準惑星の定義が見直される可能性もある。

2015 年は準惑星の年だ。NASA のドーンとニューホライズンズという2 機の探査機が、太陽系で最大級の2つの岩石質小天体に初めて接近し、科学者にその姿を見せてくれるのだ。

冥王星 /カロン・フライバイ:2015 年 7月 14日。科学データを収集する時間は24時間しかない。

準惑星とは何か?冥王星は数十年にわたり太陽系第 9 惑星と考えられていたが、カイパーベルトで大きな天体が相次いで発見されたことがきっかけとなり、その扱いが疑問視されるようになった。2006 年に国際天文学連合が惑星を再定義したとき、冥王星は軌道から他の大型天体を重力的に一掃できていないことを理由に惑星から格下げとなり、現在はケレスらとともに準惑星という新たな種類の天体に分類されている。

カロンは冥王星の衛星としては大きすぎ、カロンが冥王星の周囲を公転しているというよりは、両者が共通重心の周りを運動している。