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第9節:中性子星とその観測
1. 中性子星とは:性質とその起源
2. 中性子星の構造
3. 中性子星の観測
4. 中性子星はコンパクトか
5. 連星中性子星(次回)
1 中性子星とは
• 大質量星の進化の最後に超新星爆発が起こり、その後に形成される天体。
• 主に中性子からなる。• 半径10-15km、質量は典型的に太陽の
1.3-1.4倍と考えられている。• 質量は最大でも太陽の3倍程度と理論的に推定されている。
• 主に、電波パルサーとして観測される。• 磁場が強い。典型的には0.1ー10億テスラ。
大質量恒星の進化の最終段階
質量が太陽の約10倍以上の恒星の一生:
H He C+O Ne, Mg, Si, S Fe, Ni
という具合に中心で核融合反応を繰り返す。
Feまで到達すると核融合反応が終わる
鉄中心核の形成後核融合反応は起こらない⇒冷える一方
⇒鉄の中心核は重力収縮を始める
⇒密度と温度が上がる
⇒存在する光のエネルギーが上昇、電子の平均エネルギーも上昇
⇒光は鉄の一部を破壊し、電子は原子核に吸われる
圧力が減り、重力崩壊を始める
56 4264
1
Fe + 13 He + 4n
He+ 2H 2nZ ZA AQ e Q
γ
γ
ν− −
→
→ +
+ → +星の外へ
重力崩壊から超新星爆発へ
半径:約2000km質量:約1.5倍太陽質量 衝撃波
原始中性子星
爆発鉄の中心核
かにパルサー
かに星雲(超新星残骸)中に存在⇒ パルサー ⇒ 中性子星を示唆
かに星雲の観測
http://chandra.harvard.edu/photo/2002/0052/movies.html
中性子星 (Puppis A)
中性子星そのものが見えている(X線放射)
高速中性子星見つかる:Puppis Ahttp://chandra.harvard.edu/press/07_releases/press_112807.html
何故、中性子からなるのか?
• 主な構成要素:中性子(n)、陽子(p)、電子(e)• 自由中性子は崩壊する。つまり、
n p + e + νに対して不安定(半減期約880秒) 。中性子の方が陽子よりもわずかに重いため。
• しかし中性子星内部では、p + e n + ν
の反応で中性子になった方が安定
理由:電子が縮退しているから(つまり、電子のエネルギーが大きいから)
縮退とは
• 電子、陽子、中性子のようにスピン1/2のフェルミ粒子は高密度で縮退する。
• 縮退=2つの粒子が同じ量子状態を持てないため起こる。
⇒ 一箇所に押しこまれると反発する
(満員電車の押し合いを想像するとよい。)⇒ 圧力が生じる=縮退圧
• 質量の軽い粒子の方が、より低密度で縮退する ⇒ 電子が最も縮退しやすい。
高密度の場合に中性子星が出来る理由
電子 陽子 中性子 電子 陽子 中性子
中性子を増やし電子を減らした方が全体でエネルギーが下がる
エネルギー同数でも電子の方が縮退が強いので、大きなエネルギー
同数
3 中性子星の構造
中心密度は約10^15 g/cm^3
内核の構造は未解明
中性子星の質量と半径:いろいろな説あり
半径
質量
Lattimer & PrakashScience 304, 2004
クォーク星
何故、最大質量があるのか?• 一般相対論的重力の特徴=最大速度は光速• ニュートン重力には最大速度はない
2 2
2 2 2
2
~ ~
~ : ~
2 1
s s s
GM dP GM P GM Pr dr R R R
P GMc c c cR
GMRc
ρ ρρ
ρ
ε
= − → ⇒
= ≤
⇒ = <
。
次元解析
ここで 音速。ゆえ
この制限
天体のコンパ
はニュートン
クト
理論
さは1以下
にはない
つづき3 6 6 3
3 2 3 2 3 2
1/26 3
3 15 3
3 3 2 34 32 32
3 4.3 32 10 g/cm
M GM c cR Rc G M G M
cM MG
ερπ π π
ε ρπ ρ
−
= = =
⇒ = <
一方、
中性子星の密度は強い相互作用の性質で決まり約10^15g/cm^3。⇒ 質量に上限がある
(正確には太陽質量の3倍程度)
3 中性子星の観測
• 多くは電波パルサーとして観測される。• X線やγ線で観測されるものも、最近は多数発見されている。
パルサー:周期約10秒以下(典型的には0.1~1秒)で規則正しく電磁波を放射する天体
周期的に電磁波を観測
これまでに1700以上発見
表面磁場は典型的に0.1-10億テスラ
周期ー周期変化図
XはX線でも観測されたもの
短周期が中性子星であることを間接的に証明1/ 2 3/ 23
1/ 2 3/ 2
2 0.46 msec1.4 10km
0.76 sec1.4 2000km
r M rPGM M
M rM
π−
−
= =
=
回転周期の短い星はコンパクトでなければならない。
特に、周期が1秒以下の場合。白色矮星は速く回れない:
M=0.6Msun, r=8000 km ⇒ P=9 sec
最初の発見
• ベル(1967):PSR1919+21の発見。周期1.337秒のパルサーの発見
24歳のときに発見 ⇒ 指導教官がノーベル賞
現在の写真
4 中性子星はコンパクトか?
降着円盤からはX線輻射:中性子星近傍からの輻射を観測すれば、中性子星の大きさに制限が課される
• X線連星
X線放射
降着円盤の準周期的振動
1/ 2 1/ 2
1/ 2 3/ 23
0.371.4 15km
21.4 15km
0.84 msec
GM M rv cr M
r M rPGM M
π
−
−
= =
= =
中性子星近傍の特徴的周波数:f = 1/P = 1kHz強.
kHzの振動は中性子星がコンパクトであることの証拠となる
中性子星近傍のケプラー速度と回転周期
円盤の中に温度や密度のムラがあれば
観測すると周期的に強度が変化する
RXTE(Rossi-Xray Timing Explorer)
• 1995年打ち上げ(NASA)• 時間分解能に優れたX線検出衛星
RXTEによる準周期的振動の観測
中性子星が一般相対論的天体であることの証明。(ただし、振動の正確なメカニズムは未解明)
1kHz500Hz
中性子星の重力赤方偏移観測
中性子星=強重力
外に向かって光が伝播する間に波長が伸びる⇒伸び率を測ればε =2GM/Rc^2が分かる。
1/ 2
02
21 GMRc
λ λ−
= −
重力赤方偏移の観測:λ/λ0−1=0.35⇒ε∼0.4
Nature 420, 51 2002 波長
X線
5 連星中性子星
• 2つの中性子星からなる連星• 超新星爆発2回の結果、誕生する• 両方とも半径が小さいので、接近できる。近接連星は一般相対論的
⇒一般相対論の試験場
• しかしそう容易に誕生するわけではない⇒数が少ない
連星中性子星の形成
2つの大質量星から出発
重い方が先に超新星爆発
中性子星①形成質量損失は全質量に比べれば小さい⇒連星は維持
2度目の爆発系の質量の半分以上が失われる⇒連星は大抵解体
Aが進化して巨星になると、Bに質量を取られるAが爆発する頃には最初よりもはるかに軽い
大抵離散
何故、解体するのか?
• 連星の軌道:重力=遠心力で保持
• 片方の質量の多くが突然消散すれば、飛んでいってしまう。
遠心力重力
遠心力重力
円軌道にある連星が解体する条件2 2
2 21 1 2 2 1 2
1 2 1 2
2 11 2 3
1 2 1 2 1 2
; 2 2
,
, ,
02 2
M a M a GM MEr
M M M r a a
M M GMa r a rM M r
GM M GM M GM MEr r r
= Ω + Ω −
= + = +
= = Ω =
⇒ = − = − <
Ga1
M2
束縛されているM1
a2
つづき
( )
1 1 12 2
2 21 1 2 2 1 2
21 1 2 12
1 2 1 11 1
1 2 1 11 1 2
1 2 1 1 1 2
When
2 22
20
, / 1/ 2 , / 1/ 3
2, / /
M m Mm a M a Gm ME
rm M M MGM
r ME
M M m Mm M M M m MM M M
M M m M M M
→ <
= Ω + Ω −
− − +=
>
≤⇒ < = ≤+ ≤
解体の条件は、
質量が元の半分以下になると解体の可能性あり
速度は不変として、
これまでに見つかっている確実な連星中性子星(5つ+1候補)
1. B1913+16 0.323 7.0 0.617 2.828 1.387 1.441 2.45 2. B1534+12 0.421 11.2 0.274 2.678 1.333 1.345 22.53. B2127+11C 0.335 7.55 0.681 2.71 1.35 1.36 2.24. J0737-3039 0.102 4.26 0.088 2.59 1.24 1.35 0.855. J1906-0746 0.166 0.085 2.61 1.25 1.37 3.1
10万km 太陽質量 億年
PSR P(day) a sini e M M1 M2 Tgw
軌道速度~数100km/s⇒連星中性子星は一般相対論の試験場
• パルサー:中性子星の自転に合わせて、極めて規則正しくかつ安定に電磁波を放射。
• 例えば、PSR B1913+16の場合、パルス周期(約59ミリ秒)は12桁の精度で安定している。
• 公転していれば、公転の効果でパルスの受信周期が系統的に変化する。
• その効果を測定することによって、連星の軌道パラメータや質量を測定できる。
パルスタイミング測定による連星中性子星のパラメータの決定
アレシボ電波望遠鏡
重要となる相対論的効果
1. 公転運動に伴ったドップラー効果2. 重力赤方偏移3. 近星点移動
1:パルサーが近づいたり離れたりするので、受け取る電波の周期が規則正しく変化する。
2:2つの中性子星の重力で電波の波長が伸びる。
a1M2
M1 r
パルスの受信周期 Prec
rec recg
g
PP PP P P
=
1/ 21 2rec 2 1 1
2 2
23rec 1 1 2
2 2
1 , 1 1
12
g
g
PP GM v v nP rc P c c
P v n v GM O cP c c rc
−−
−
⋅ = − = − +
⋅ ≈ + + + +
重力赤方偏移 ドップラー効果
1次 2次 測定は困難
単位時間当たりのパルス数の時間変化
PSR B1913+16の場合公転周期
具体的に分かること ①
• ドップラー効果から:公転周期(P)、楕円軌道の離心率(e)、速度の視線方向の射影成分(vsini) ⇒質量関数が分かる
( ) ( )
( )
( ) ( )
32
1 22
3 3 21
1 232
3/ 23 3 221
2
sin
2 2 /
14 sin sin ; 2
M if M M M
Ma a MP a aM M
GM GM
K P ea i v if KGP G c
π π
ππ
≡ = +
= = =
−∴ = = =
∵
ドップラー効果の大きさ
質量関数の重要性
( )
( )
( )
32
2
3 32 2
22 31 2
1 2
1/ 322 1 1 2
2 2 1
sin & sin 1
sin
If is measured, is constrained
for e.g.
for
M if i
MM M f fM iM MM M
M fM M M
M f M M
≡ ≤
⇒ = = ≥+
≥
≥
恒星との連星の場合、M1は推定可能なので重要。
今の場合は測定不可能なので、別の手段が必要。
分かること ②:Prec/Pの2次の項
( )( )
( ) ( )
222 1 21 2
2 2 2 2 21
2 1/ 3 2 / 32 1 2
4 / 3 2
2| | 2 1
1 22 2
GM M M ev GMc rc M a e c
P e G M M M ePM c
β
βγ
π π
++ = =
−
− + ≡ =
2つの質量の組み合わせが求まる
a1:未決定 ⇒ 消去
分かること ③:近星点移動
• 一般相対論では近星点移動が存在:楕円軌道は閉じない (前節参照)
• 近星点移動角度
1. 太陽周りの水星: 43秒/100年2. PSRB1913+16: 4.22度/1年3. PSRJ0737-3039: 16度/1年• 連星中性子星なら容易に測定可能⇒全質量 M が分かる!(e, P測定済みだから)
( )( )
2 / 35 / 3
2 2
231GM
P e cπω = −
PSR B1913+16の質量( )( )
2 / 35 / 3
2 2
231GM
P e cπω = −
M1
γ
Taylor &Weisberg2004
M2
非常に精度良く質量が決まる
重力波放出反作用
• 重力波放射 エネルギー、角運動量を
持ち去る。
軌道半径が縮み、公転周期も短くなる。PSR1913+16の場合、一般相対論によれば
1年に約0.077ミリ秒の周期の短縮のはず。
一般相対論の予言と0.1%の精度で一致
一般相対論の検証
ハルス・テーラー中性子星連星の軌道変化
西暦
一般相対論の予言
点が観測データ
アレシボ望遠鏡の閉鎖時期
Taylor &Weisberg2004
1周のずれを積算した時間
Joseph Taylor:1993年に
ノーベル賞受賞
重力波の存在が間接的ながら、証明された