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パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜 および演奏に関する諸問題」に関して 国立音楽大学大学院研究年報第十四輯抜刷 平成14年3月31日発行

パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

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パウルバドゥーラースコダ『ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜

および演奏に関する諸問題」に関して

今 井 顕

音 樂 研 究国立音楽大学大学院研究年報第十四輯抜刷

平成14年3月31日発行

パウルバドゥーラースコダ「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

演奏に関する諸問題(1)』に関して

井 顕今

以下はドイツで発行され現在は廃刊となってしまったくピアノ年報Piano-Jahrbuch第3巻>に筆者の恩師であるオーストリアのピアニストパウルバドゥーラースコダPaulBadura=Skoda(2)が寄稿したベートーヴェンのピアノ協奏曲に関する論文の邦訳であるウィーンを代表するピアニストのひとりで来日経験も多いバドゥーラースコダは音楽研究者としても著名でありその著作の一部は邦訳され日本でも出版されている(3)ベートーヴェンのピアノ協奏曲はピアニストにとって重要なレパートリーであ

るにもかかわらず長らく原典版が出版されていなかったようやくここ数年来ヘンレ社やくーレンライター社より原典版が入手できるようになったものの一般の楽譜店で販売されている汎用版では校訂報告が不十分だったりベートーヴェンのオリジナルにもかかわらず自作のカデンツが別冊になっているものがあるなど使用者にとって必ずしも使いやすい楽譜とは言い切れないバドウーラースコダの論文が執筆された1983年当時誰でも入手しやすい上に

水準以上の完成度を誇っていたオイレンブルク社のミニチュアスコアはピアニストにとっても必携の楽譜であり2台ピアノ用として編纂されたものの中ではう

(1)PaulBadura=Skoda亜皿一《ノノ2噸rααoSploel2ideゾ幻αWeノkoZBeeriolesPiano-JahrbuchBand3Piano-VerlagRecklinghausen1983(2)パウルバドウーラースコダは1927年にウィーンで生まれたピアノをウィーンのヴィオラテルンViolaThemおよびルッェルンのエトヴィンフィッシャーEdwinFischerに就いて習う数多くの賞を受賞したバドウーラースコダは数十年前から世界の全大陸にて演奏会を行っているモーツァルトベートーヴェンおよびショパンをはじめとした学術的な業績も数多い詳細はPio-aノrdquocノiBd2(1981)139145ページを参照[本論文に掲載された執筆者紹介より](3)『モーツァルト演奏法と解釈j(エファバドゥーラースコダとの共著渡辺護訳音楽之友社)や『ベートーヴェン全ピアノ作品の演奏法と解釈j(カールチェルニー著古荘隆保訳全音楽譜出版社)への注釈『ベートーヴェンピアノソナタ演奏法と解釈」(高辻知義岡村梨影共訳音楽之友社)など

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ランツクラクが編纂しニューヨークのシャーマー社より出版されたものがベストだったこれらの楽譜は現在も入手可能で貴重な情報を我々に与えてくれるが全く問題がないわけではないこれらの諸問題を指摘した本稿の内容がその後出版された最新の原典版楽譜

においてどのような形で解決されているかに関しては別の機会に論じることとしここではまずバドウーラースコダによる論文全文を紹介する単なるエディション批判の見地からのコメント以外にも貴重な情報が多く含まれておりベートーヴェンのピアノ協奏曲を演奏する上でピアニストはもとより指揮者への参考にもなれば幸いであるなお楽譜上における個別の問題点に関してはオイレンブルク社のスコアに記

載されている小節番号によってその位置を特定している特に協奏曲第5番においては楽譜によって2~3楽章を通しの小節番号あるいは3楽章から新しく小節番号をふりなおすという異なった表示方法が存在するので注意力泌要である本稿は前者の方式の小節番号となっているまた日本語として読みやすくするためにバドウーラースコダの承認を得た上で若干の編集を行った

紫幸

少し前のことになるが誰にも気づかれないまま記念すべき年が過ぎ去ったルートヴイヒヴァンベートーヴェンのピアノ協奏曲における最新の優れた楽

譜が出版されてからすでに百年という年月が経過したのである[訳注本稿が執筆されたのが1983年であることに留意]188182年にフランツクラクFranzKullakによる厳密な注解と詳細なコメン

トを掲載した楽譜がシュタイングレーバー社SteingriberVerlagから出版された力44)信じがたいことにその後出版された楽譜の内容はどれもこのレベルに達しなかったもしこの楽譜にまだ不十分な点があるとすればそれはクラクカ覗在われわれが閲覧できるすべての費料を使用できなかったことそしてどんなに優秀であっても二台ピアノ用に編纂された楽譜がオーケストラスコアの代用にはなり得ないという理由による

(4)この楽譜は現在では入手困難であるコメントを英訳したリプリント版がニューヨークのシヤーマー社GSchirmerlncより発行されているがいくつかの音符の誤植と誤った英訳が含まれている

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新モーツァルト全集に掲載されているモーツァルトの全ピアノ協奏曲に比較してベートーヴェンのピアノ協奏曲に関してわれわれはずっと不利な状況におかれているベートーヴェンに関してはまだ原典版が出版されていないのだ[訳注現在ではヘンレ社よりスコアおよび二台ピアノ用に編纂された原典版が出版されている]私が多くの出版社へ行ったこの点に関する問題解決への提言は四半世紀ものあいだ黙殺されてきた(5)そのような状況下最低限でも現在入手できる楽譜に含まれている誤りを正し加えて淡奏に|典Iするいくつかの観点を提供するのが本稿の目的である一冊の分厚い本にも匹敵する内容すべてを網羅することはできないしたとえそのような著作を上梓しようとしても世の出版社は新しい楽譜を出版するより醒めた興味しか示さないだろうなお本稿を読む際の参照用楽譜として今日までに出版されたものの中では比

較的良質で小節番号がふってあるため位置確認が容易なオイレンブルク社EmsiEulenbuIgLtd出版のスコアを使用した

ベートーヴェンのピアノ協奏曲からは通奏低音の慣習から始まり後にはそれより完全に脱却したピアノソロパート成立までの歴史と経緯が見てとれる今日一般的な意味での指揮者はまだ存在せずコンサートマスターがオーケス

トラのまとめ役を受け持っていたピアノ協奏曲の演奏にあたってはコンサートマスターとソリスト(多くの場合は作曲者自身だった)という二重の指揮体系が並立しておりどちらに主導権があるかは確定されていなかったモーツァルト風のトウッテイの時にもオーケストラの和声をピアノで重奏す

る方式はベートーヴェンが若い時代にも行われていたと推測される彼のピアノ協奏曲第1番のオリジナルエディション(6)に通奏低音用の数字がもれなく印刷されている理由はそれ以外に考えられないその後遅くとも第3番に至ってゆるやかな変化が見てとれるベートーヴェ

(5)ボンのベートーヴエン資料館BeethovenArchivとミュンヘンのヘンレ社Henle-Verlagの共同作業による新ベートーヴェン全集編纂プランにはピアノ協奏IIIIが含まれているもののその編纂作業は遅々として進まずこの速度では20世紀中に全曲出版されるかさえ危倶されるまたすでに発行されている作品に関しても多くのものは注解がついていないばかりか楽譜そのものにも誤りが散見される[バドウーラスコダ注]rarr1985年にピアノ協奏曲第1番~第3番が出版された(6)ベートーヴェン自身が目を通した上で出版された初版楽譜のこと

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ンは最後3曲のピアノ協奏曲においてオーケストラパートの低声部や重要な主

題に関連する音などを[オリジナルエディションの]ピアノパートに印刷させたカミこれはソリストのオリエンテーションのための機能を持った音列(Dhktionsstimme)へと変化していった

私が知る限り音楽史上初めて出現したスタイルはピアノ協奏曲第4番の第2楽章であるここに記されたピアノソロパートはオーケストラのトゥッティの際も完壁に沈黙を守るべく考えられそのように楽譜が整えられているそれに対して前後の楽章および第5番のピアノ協奏曲では伝統的な記譜法が採用されており状況によってピアノがオーケストラと重奏すべきかどうかはソリストの判断に委ねられている(7)ベートーヴェンのピアノ協奏曲における指揮が実際にどのような形態だったか

はイグナツザイフリートIgnazSeyiTiedの伝える以下の逸話に述べられている

<ベートーヴェンは新作のピアノ協奏曲を演奏したが最初のトゥッティから自分がソリストであることを忘れて立ち上がり我流で指揮を始めたベートーヴェンは最初のスフォルツアートで腕を大きく振り広げたためピアノの譜面台に置かれていた左右の燭台を床になぎたおしてしまった聴衆は笑いベートーヴェンはこの出来事で莊然自失となってオーケストラの演奏は停止し初めからもう一回演奏しなおさなければならなかったザイフリートは同じ場所でまた同じ事が起こるのではと心配し合唱団の男子二人をベートーヴェンの横に立たせしかるべき

(7)ピアノ協奏曲第5番の手稿とオリジナルエディションのピアノパートには数字つきバスと並行してメロディーや和声補充音が瞥き込まれているこれらはその後出版されたどの楽譜にも反映されていないがたとえば第2楽章の第53~54小節その他にベートーヴェンによって丹念に普き込まれた数字はトウッテイの部分でもピアニストが重奏すべきことを示唆しているこの楽章の第13~15小節でベートーヴェンはソロピアノの左手にヴイオラパートの音を書き込んだのに加えてtastosoloつまり和声の補充音なしでこの音列を単独でオーケストラと重奏するよう指示しているこのtastosoloの指示および通奏低音処理に準じた重奏を行わせないためにベートーヴェンが楽譜に書き込んだ休符(第34小節左手など)はベートーヴェン時代の演奏習慣が現代とまったく異なったものだったことを示している

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場所がきたら燭台を手に持つよう言いつけたひとりは無邪気にベートーヴェンの近くに寄り一緒にピアノの楽譜をのぞき込んでいたそのためくだんのスフォルッアートの箇所ではベートーヴェンの右手で平手打ちをくらいあまりの驚きから燭台を床に落としてしまったもう一人の注意深い男の子はベートーヴェンの一挙一動をこわごわと観察していたためかがんでベートーヴェンの平手打ちからは逃れられたさっき笑ったばかりの聴衆が今度は大沸きに沸いたベートーヴェンは怒り心頭に発し最初の和音で半ダースほどの弦を切ってしまったもうどんな方法をもってしても音楽ファンたちの静寂と注意を求めるのは不可能だった協奏曲の最初のアレグロ[訳注第1楽章]はこうして聴衆全員にとって失われたも同然だったこの事件後ベートーヴェンは二度と演奏会をやりたがらなかったという>(8)

ベートーヴェンのピアノ協奏曲における多くの記譜上の問題は19世紀になって2台ピアノ用の楽譜が出版された際にこれら通奏低音その他の記載がソロパートから削除されてしまったことに由来しているそのためオーケストラのトゥッティにピアノソロが続く部分でしばしば誤解が生じている本来のソロパートに属さない音符が印刷されたり編集者がソロパート冒頭の和音をオーケストラの音だと誤解して削除してしまったりしたこのような混乱が含まれているパートを厳粛な顔でくそまじめに演奏したりソロパートに必要不可欠なバスなのに印刷楽譜を盲信するあまり弾こうとしないピアニストの姿はまるで不可思議な演劇を見ている感がするソロパートにつけられてしまった不要な音列の例はピアノ協奏曲第3番第1

(8)LouisSpohrSどめogノαルieCassclun(IG61tingen1860Bd1S200シユポーアがザイフリートより聞いたものとして瞥かれている1808年12月22日のコンサートMuSikalischeAkademieにおける逸話でベートーヴェンの第5番と第6番の交騨曲ピアノ協奏曲第4番およびピアノ合唱とオーケストラのためのく合唱幻想曲>作品80が演奏されたこの逸話は事実と創作の入り交じったものだがベートーヴェンがピアノ協奏曲を指揮する姿をうかがい知ることができるベートーヴェンが演奏をやり直した本当の原因はなぎ倒された燭台ではなく合唱幻想曲の最終楽章で間違えたクラリネットにあった(Thayer-Deilers-RiemannL(fwiglαBeeiル01esLebeLeipzigl923Bd3S110~112および1809年1月7日付けのベートーヴエンからブライトコップフヘルテル社BreitkopfampHartelに宛てた手紙を参照)

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楽章の第140小節見受けられる

終わりから7小節および第2楽章の第80小節く譜例labgtに

呈 出 色 一 か

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烏1嘆霊 A Je 今立 = 丑臣 = - 並 ざ 宗

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<譜例lagtピアノ協奏IIII第3番のオリジナルエディション(第2楽章T77~終結部)

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<譜例 l b gtピアノ協奏曲第3番第2楽章T78~80

- 6 -

誤って削除されほとんどの印刷楽譜で休符となっているソロパートの開始音はピアノ協奏曲第4番第1楽章第253小節く譜例2agtおよび第3楽章の第402小節く譜例3agtに見受けられる

252

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<譜例2agtピアノ協奏曲第4番第1楽章T252~254

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<譜例2bgtピアノ協奏曲第4番第1楽章T253~256(オリジナルエディション)

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<譜例3agtピアノ協奏曲第4番第3楽章T400~403

オリジナルエディション印刷用に制作されベートーヴェン自身による書き込みがある協奏曲第4番の筆写譜(9)<譜例3bgtを参照するとここに誤解の余地

(9)ベートーヴエンは協奏曲第4稀の初版識を出版する際にベートーヴエン自身が作成したのではない筆写譜を使用しここに自雛で変更酬項を記入したこれらベートーヴェン自身の筆跡による補足の中にはオリジナルエディション出版後になってから記入されたと推測されるものも含まれている現在はウィーン楽友協会の賓料館ArchivderGesellschaftderMusikfreundeinWiellに所蔵されている

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戸面口

はないことがわかるオリジナルエディションではこの音符そのものは正確に刻印されているが0ISoloの単語が不注意から本来より右寄りに印刷されてしまったく譜例3cgtこのためそれ以降の時代の楽譜編纂者は何の検証も行わないまま単に冒頭のバス音を削除しバスなしの不完全な属七和音が生じることになった今日に至るまでこの不完全な音響がほとんどのピアニストによって律儀に踏襲されているのである

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<譜例3bgtピアノ協奏曲第4番第3楽章T401~404(錘写譜)

一口一口一峰》一一志内 山 『国1畠A皐室

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<譜例3cgtピアノ協奏llll第4番第3楽章T396~405(オリジナルエディション)

近年の印刷楽譜ではベートーヴェンのペダル指示に関しても誤った解釈力端行している1803年頃までウィーンのピアノに足のつま先で操作するペダルはついておらず

膝レバーを押し上げる方式によって得られるペダル効果が一般的だったしたがってベートーヴェンは開放弦の響きを要求する際に6lPedalとの単語を使用できずsenzasordino(あるいはsordini)とconsordino(同)という表現を使用せざるを得なかったほとんどの印刷楽譜でこのsenzaSordini(ダンパーなしで)という記述はconPedaleということばに置き換えられている6conPedの厳密な意味

は「自由にペダルを使い必要に応じて踏み変えるように」ということである

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ベートーヴェンの意図は明らかに異なっており「ペダルを踏み変えずあえて混然とした音響を作り出す」ことにあるベートーヴェンに師事していたカールチェルニーCarlCzemyが伝えるように(10ベートーヴェンのピアノ作品は基本

的に「ペダルを使用して」演奏すべきであり「特別なペダル用法が必要な場合」のみベートーヴェンはそれを楽譜に普き込んだのである

各ピアノ協奏曲における異稿一覧

訳注「T」はTakI(小節)の略である「ピアノ(上)」「ピアノ(下)」はピアノパートの大譜表における上の段下の段を示す単に「削除」と指示されているものはそれが原典漬料に含まれていないことを意味しバドシーラースコダの演奏家としての個人的趣味に帰するものではない「補充」「付加」に関しても同様だが[]つきの指示(強弱記号など)は「典拠資料には含まれていないが音楽的見地から推測して補充されるべきもの」を意味する

ピアノ協奏曲第1番作品15

第1楽章AlleOroconbrioT11第1ヴァイオリン初版譜に八分音符として印刷されている前打音は短く奏されるべきだろうすでに初期の作品において長く弾かれるべき前打音をベートーヴェンは普通の大きさの音符で記しているT118~119122~123ピアノ(下)低音部の音列は通奏低音を意味しオーケストラと重奏しなくても良いT187ピアノ(上)最初の音符に$[sfP]を補充すべきであるT192194etc第1と第2ヴァイオリントリルの終結に後打音を付加(T196と198の管楽器と同様に[sfZ]も補充すべきだろう)

T212ピアノ4拍目にsfを付加

(10「[ベートーヴェンは]自作の出版譜に瞥き込まれたものよりかなり多くペダルを使っていました」(カールツェルニー『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法」(パウルバドゥーラースコダ編注釈古荘隆保訳全音楽譜出版社34頁)より原著はCarlCzernydecgeVoノ8dejscβノィβldquoノノi0lescノどKノaWenlerkeherausgegebenundkommcnlierIvonPaulBadura=SkodaUniversalEdition133401963WienS22)

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T235ピアノいかなる原典資料にもトリルの前打音は記載されていないT292~306管楽器すべての連打音[訳注3拍目と4拍目の四分音符]にはポルタートを補充すべきである[くさび形のスタッカートを点のスタッカートに変更しスラーを加える]T72~75のオーボエとファゴットを参照T318~319(T327)ピアノ(下)手稿における左手の音型はT317と同じであるオリジナルエディションに印刷されているものはミスプリントの可能性が大きいT327も同様T335~346ピアノconPedではなくPedでありペダルは踏み変えない特にT340~345の間でペダルを踏み続けることが大切であるT334~335ピアノオクターブのグリッサンドはベートーヴェンによるもの手の小さい人はチェルニーの『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法』(前掲書原著105頁和書148頁)で紹介されている単音のグリッサンドでも術わないいずれにせよオーケストラも含めた音楽全体を支えるフォルテのバス音となるT345の1Gは省略してはならないT391~393ピアノ(下)左手のバス音は通奏低音の残津であり音価の違い(四分音符と八分音符)に意味はないT418ピアノdimを削除T451ピアノ(下)ほとんど演奏不可能に近いバス音glは削除カデンツクラクはカデンツの編纂用底本として筆写譜しか使用できなかったので今日ではベートーヴェン新全集(BeethovenWerkeAbteilungVIIBand7KadenzenzuKlavierkonzertenHenle-VerlagMUnchen)を優先すべきだが(1Dクラクの編纂は大筋で賞賛に値する最初の未完のカデンツは独創的ふたつめはその短さから協奏曲に一番なじみやすく三つめはアイデアにあふれているものの長すぎる-時間的に長いというよりはT100[オイレンブルクP118の2段目目頭]にあるd2のトリル(ハ長調の属調として機能する)からかなり稚拙にカデンツ終結部を支配するト長調で提示される主題に連結されるもののその後

⑪興味のある人へチューリヒのオイレンブルク社VerlagEulenburgよりクルトオイレンブルクKurtEulenburg[オイレンブルク社創始者エルンストの息子父を継いで社の単独所有者となる]生誕百年を記念して1979年にベートーヴェンの全カデンツのファクシミリ版が出版された

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の秩序が整っていないこのような手法は出版されたベートーヴェンの作品中にほとんど見受けられないこの未公開のカデンツはベートーヴェンがおおむね自分用の覚え書きとして脳裏に浮かび指のおもむくままに即興したアイデアを紙に記しておいたものだろうこれを出版するとなればベートーヴェンは上述の問題点を含めてさらに推敲し改良したと考えられるクラクの提案する短縮案はベートーヴェンが行ったと想像される作業に沿ったものとして真蟄に評価されるべきであるT467469管楽器sf 直後に[p]を補充すべきだろう

第2楽章LarqoT5ピアノ括弧に入れられているcrescは削除T6ピアノ(上)小節冒頭にある三つの三十二分音符からなる前打音はオリジナルエディションに印刷されているものの手稿には含まれていないため省略可能であるT19~26管楽器と弦楽器ポルタートに使用されるのは点のスタッカートでくさび形ではないT26の第2ヴァイオリンパートにあるポルタートはミスプリントで2個目から4個目の八分音符につけられる[訳注T25の第1ヴァイオリンを参照]T27全楽器Iffはすべての楽器においてふたつ目の八分音符からとなるT30~31第1クラリネット小節後半の八分音符はポルタートでなく最後ふたつの八分音符がレガートとなるそれ以外の管楽器は[第2クラリネットも含めて]3音ともポルタート(点のスタッカートにレガート)であるT33ピアノ(上)トリルは後打音とともに終結されるべきだろうT35ピアノ(上)ターンはオリジナルエディションのみに印刷されており手稿に含まれていないこのような装飾音はベートーヴェン初期のスタイルになじまないT50ピアノ小節後半のペダルはconPedではなくPedでありT52の最後まで踏み変えてはならない(現代のピアノでも魅力的な音響となる)T54ピアノ(上)八分音符の前打音as】をこのように旧弊な方法で記譜するのは驚きに値する(オリジナルエディション制作の際の誤りとも考えられる)T55ピアノ(上)3拍目の音は四分音符blで[八分音符glは]ミスプ

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リントであるT57ピアノ(上)T5と同様の内声を補充するがこの小節では四分音符となるT60~74チェロとコントラバスオーケストラのバスを担うこのパートはオイレンブルク社のスコアにおいて正しく印刷されている鯖ltべきことにこのパートはベートーヴェン旧全集において欠落しているため旧全集をもとに作られたほとんどのオーケストラ用パート譜セットでも同様に欠落しており是非とも補充されなければならないT67~73ピアノ(下)ibassibenmarcatoの指示を補充T68ピアノ(上)小節最後のふたつの八分音符es(三連音符)の代わりにこの拍は八分休符ひとつと三連音符ではない通常の八分音符eSlが[旋律のアウフタクトとして]弾かれるT78~79ピアノ(下)2拍目と4拍目のレガートは三連音符最初のふたつの八分音符のみにつけられる

T84コントラバス小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T87~88管楽器小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T91ピアノ(下)ポルタートを付加またconPedをPedに変更[訳注2小節間ペダルを踏み変えない]T93~95クラリネットとファゴット反復される同じ高さの音はポルタートでありスタッカートではないT100~101ピアノ(上)手稿では2拍目にあるターンつき四分音符の代わりに複付点のリズム(該当小節のクラリネット4拍目を参照)となっている(この方がオリジナルエディションに印刷されているターンより美しく群くdeg)

T103~106ピアノピアノパートにはl0colbasso[continuo]の指示があるここで通奏低音の指示にしたがって重奏するのは良好な結果をもたらすT116ピアノdconPedではなくd6Pedであり楽章最後までペダルは踏み変えられない

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第3楽章Alleqroscherzandoテンポ指示のうち66scherzandoはオリジナルエディションに印刷されており信頼すべき表記である

T91517ピアノ括弧に入れられている==二二と=を削除T59~64ピアノすべての強弱記号を削除T73ピアノamppを削除]T77~81ピアノ4crescと$Ifを削除T88ピアノmf を削除T92ピアノ(下)冒頭のバス音はもちろんIBの誤りであるT96ピアノ(上)冒頭のes2は四分音符となるべきだろうT148~151ピアノT148の0lconPedはPedでありT151三つ目の八分音符まで踏み変えないT166~170ピアノcrescとfを削除[T226ピアノlを削除]T232~236ピアノ印刷されている賊弱記号を削除T248第1オーボエふたつ目の八分音符hlの前に括弧入りの臨時記号フラット[b]を補充MT354ピアノampfを削除]T355~367ヒアノすべての06sfを削除T372~378ピアノpidfとIlff を削除T393ピアノcIescを削除T397ピアノffを削除T485ピアノオイレンブルク社のスコアに掲載されているカデンツはベートーヴェンのものではなく演奏すべきではないT558~559ピアノ(上)手稿にある表記く譜例4gtが好ましい印刷されている表記を受け入れる場合でもレガートは小節冒頭の最初のふたつの十六分音符e3-d3だけにつけられるべきだろう

圭倉合坐奪渭558ハ

毎 一 周

首<譜例4>-13-

ピアノ協奏曲第2番作品19

1801年4月22日にベートーヴェンはライプツイヒの出版社ホフマイスターFAHoffmeisterへ以下の書簡を書いている

<私の所有物がいつもきちんと整理整頓されていないことはおそらく

私が恥じるべき唯一のこととはいえ他人にはかわってもらえないのですたとえばいつもの手順に従ったせいで総譜にはピアノパー1がまだ書き込まれておらずそれは今やっと私が書きあげ急いだので乱筆の楽譜ですがこの手紙に添えてお届けします>

ベートーヴェンの書簡の内容には何の誇張もない手稿の総譜ピアノパートはスケッチのような楽想が記入されているのみなどおそるべき状態にある書簡で述べられている自筆のピアノパート譜は長いこと閲覧できなかったがほぼ四半世紀前よりボンのベートーヴェンハウスに所蔵されるようになったしかし当館の研究者と私以外まだ誰もこの貴重な資料を調査した者はいないようだこのパート譜にもオーケストラのトウッテイの声部がピアニストのオリエンテーションのために書き込まれている(Direktionsstimme)

第1楽章AlleOroconbrioT99ピアノlcrescはベートーヴェンによるT101ピアノ最後の和音にくさび形のスタッカートを補充T114ピアノ0pianoを補充T131第2ヴァイオリンfpを削除T134第2ヴァイオリン四つ目の八分音符はClであるT142ピアノ(下)左手の小節冒頭の八分音符ふたつを削除し四分休符に変更するT145ピアノ(上)前打音e2は四分音符であるT149ピアノ手稿ではここでppとなっているoT147のppは再現部T331と比較して誤りと思われるT199チェロとコントラバス最後の音はf音であるT218ピアノ小節の中央部[3拍目あたり]にcresc9を補充

-14-

T222ピアノ[dim]を補充T237ピアノ(上)小節冒頭のeSlはスタッカートであるT262264ピアノひとつ目と五つめの八分音符は譜尾が独立して記されているT263ピアノ(上)小節冒頭の八分音符は譜尾が独立して記されているT275ピアノ(下)三つ目の四分音符はスタッカートである[T276も同様]T281ピアノペダルはT285の最初の音まで踏み変えないT285ピアノ(下)小節冒頭にはバス音Bが書かれているT321ピアノ(上)スラーは次の小節冒頭の四分音符C2まで延長されるT329ピアノ(上)ここのトリルに前打音は書かれていないT337ピアノ=二二を補充T339~340ピアノ(下)すべてのスラーを削除T368~369ピアノ左手の四分音符にスタッカートはつけられていないT370以|朧はすべての四分音符にくさび形のスタッカートがつけられているカデンツベートーヴェンハウスに所蔵されている手稿は[協奏llll本体よりも]ずっと後の時点において創作されたものであるスケッチ風に書かれており各所において以下に挙げるリズムの整術と強弱の補充が必要である⑫

T43984拍目は付点のリズムになる(T8402を参照)T5399(上)右手の開始部に[flを補充]T6400(上)4拍目に[p]を補充T10404(上)上声部冒頭に[l1を補充T13407(上)ふたつ目の音符g2にはbがつけられている(geS2音が弾かれる)これは新全集でも欠落しているT24418小節後半のふたつの和音にはくさび形のスタッカートがつけられるT28422(上)スラーは2拍目から開始されるT35~36429~430(上)T35429よりT36430冒頭の八分音符までスラーを補充

⑫訳注カデンツ冒頭からと第1楽章を通じての小節番号を併記した

-15-

T46440(下)冒頭の音は複付点になっており続く音dlは十六分音符となるT49443(下)すべてを付点リズムで弾くべきである

第2楽章AdaqioT10第1ヴァイオリン冒頭のスラーはふたつ目の三十二分音符から開始されている2拍目のスラーは第2バイオリンとともにalまでしか架けられていない

T16~17ピアノピアノソロの最後はT17冒頭の音も含めてpで演奏されるT17の左手は四分音符で書かれているが右手もそれに合わせるべきだろう手稿においてT17のピアノパート[右手]には八分音符2拍目より第1バイオリンの音がtuttiと0fとともに[ピアニストのオリエンテーション用声部Di=Iktionsslimmeとして]記入されているがこれはもちろんオーケストラのものであるT27ピアノ(下)スラーは存在しない[T29~30のように]小節全体に架かるものを補充すべきだろうT30ピアノ(上)小節冒頭の前打音は三十二分音符fのみであるb2はオリジナルエディションを制作した職人の独断によるものに違いないT32~33チェロとコントラバス2拍目はヴィオラと同じ三十二分音符の音列が演奏される[タイの後に同じ音を再度弾く]T37ピアノ(上)2拍目の和音から小節最後までのスラーを補充T40ピアノ(上)2拍目の右手はb2からeS2までスラーが架けられるT47ピアノ(上)小節冒頭の音への装飾音の書法は誤りでT39と同様のものが考えられていたに違いないT56ピアノ(上)2拍目以降の十六分音符に架けられるレガートはd2からとなるT58ピアノcrescは左手の八分音符につけられているT60ピアノ(下)3拍目冒頭に八分休符を補充しかし左手最後の和音は論理的にはチェロコントラバスと同時に弾かれるべきでピアノパートの誤りと考えられる

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T63ピアノ2拍目付近に[cresc]が補充されるべきであるT65ピアノ(上)1拍目ふたつ目から六つ目の十六分音符にはスラーなしのくさび形スタッカートがつけられているしたがってこの小節の1拍目には[flが補充されるべきだろう

T76~80ピアノベートーヴェンはこの小節を誤って八分の三拍子つまり通常の半分の音価の音符で誉いてしまったオリジナルエディション制作の際職人がこの誤りを修正したものの2拍目の三十二分音符だけはそのままにしてしまったもちろんこの音も十六分音符として演奏されるべきである手稿く譜例5>を参照

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<譜例5>ピアノ協奏llil第2番第2楽章T73~84(手稿)

T82ピアノ(上)2拍目の音符につけられている前打音のうち2番目の音es2を削除手稿にはオクターブ下blの前打音しか書かれていない現代のピアノでもT74からT83までペダルが踏み続けられる

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T84ピアノconsordinoの指示はベートーヴェンによって後に加えられたものだが思い違いとも考えられる[これ如何によってT83にconsordino(Rダルを離す)の指示を補充すべきかの判断が必要となる]ひょっとすると[T74から踏み続けられている]ペダルはT86の最後まで保持されるべきなのかも知れない

第3楽章Alleqromolto (これがオリジナルの語順である)Tl~ピアノ冒頭は楽譜通りでT8にcrescは書かれていないT27ピアノ(上)手稿もこのように書かれているがT199と比較せよT55ピアノ(上)小節後半のフレージングをT51と同じに修正T139ピアノ(上)四分音符にくさび形のスタッカートを補充T142ピアノ(上)4番目と5番目の八分音符にくさび形のスタッカートを補充T143ピアノ(上)T141と同じフレージングが補充されるべきであるT165ピアノ小節冒頭の音は左右ともスタッカートT199ピアノ(下)冒頭に四分音符fとそれに続く八分休符を補充T205ピアノ(下)冒頭に四分音符のバスesを補充T278ピアノ(上)冒頭のblはオーケストラを示した音符(DilektionsStimme)の可能性がある(手稿ではここに休符が書かれている)T293~297ピアノパー1にはくさび形のスタッカートがつけられているが手稿によればヴィオラチェロとコントラバスはその限りではないピアノパートヘの対比としてベートーヴェンはおそらく弦楽器にはレガートを考えていたのだろうT316ピアノ手稿ではすでにこの小節にppがありさらにT317にも4Gppが書かれている

ピアノ協奏曲第3番作品37

衆知の通りこの協奏曲が完成するまでには長い時間が饗やされている最初のコンセプトが考えられたのは1797年頃だがその後1804年に出版されるまでの間にはベートーヴェンの作曲スタイルが大きな変貌をとげたと同時に楽器その

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ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

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T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

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<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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<譜例7>

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カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

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次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

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壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

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両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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<譜例12gt

多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

hellipIU eSp r e s s o胸 口 3 3 = a ) =(

<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

畢葬犀E醗酵ldquoハ

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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-40-

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<譜例15cgt

レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

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奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 2: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

パウルバドゥーラースコダ「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

演奏に関する諸問題(1)』に関して

井 顕今

以下はドイツで発行され現在は廃刊となってしまったくピアノ年報Piano-Jahrbuch第3巻>に筆者の恩師であるオーストリアのピアニストパウルバドゥーラースコダPaulBadura=Skoda(2)が寄稿したベートーヴェンのピアノ協奏曲に関する論文の邦訳であるウィーンを代表するピアニストのひとりで来日経験も多いバドゥーラースコダは音楽研究者としても著名でありその著作の一部は邦訳され日本でも出版されている(3)ベートーヴェンのピアノ協奏曲はピアニストにとって重要なレパートリーであ

るにもかかわらず長らく原典版が出版されていなかったようやくここ数年来ヘンレ社やくーレンライター社より原典版が入手できるようになったものの一般の楽譜店で販売されている汎用版では校訂報告が不十分だったりベートーヴェンのオリジナルにもかかわらず自作のカデンツが別冊になっているものがあるなど使用者にとって必ずしも使いやすい楽譜とは言い切れないバドウーラースコダの論文が執筆された1983年当時誰でも入手しやすい上に

水準以上の完成度を誇っていたオイレンブルク社のミニチュアスコアはピアニストにとっても必携の楽譜であり2台ピアノ用として編纂されたものの中ではう

(1)PaulBadura=Skoda亜皿一《ノノ2噸rααoSploel2ideゾ幻αWeノkoZBeeriolesPiano-JahrbuchBand3Piano-VerlagRecklinghausen1983(2)パウルバドウーラースコダは1927年にウィーンで生まれたピアノをウィーンのヴィオラテルンViolaThemおよびルッェルンのエトヴィンフィッシャーEdwinFischerに就いて習う数多くの賞を受賞したバドウーラースコダは数十年前から世界の全大陸にて演奏会を行っているモーツァルトベートーヴェンおよびショパンをはじめとした学術的な業績も数多い詳細はPio-aノrdquocノiBd2(1981)139145ページを参照[本論文に掲載された執筆者紹介より](3)『モーツァルト演奏法と解釈j(エファバドゥーラースコダとの共著渡辺護訳音楽之友社)や『ベートーヴェン全ピアノ作品の演奏法と解釈j(カールチェルニー著古荘隆保訳全音楽譜出版社)への注釈『ベートーヴェンピアノソナタ演奏法と解釈」(高辻知義岡村梨影共訳音楽之友社)など

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ランツクラクが編纂しニューヨークのシャーマー社より出版されたものがベストだったこれらの楽譜は現在も入手可能で貴重な情報を我々に与えてくれるが全く問題がないわけではないこれらの諸問題を指摘した本稿の内容がその後出版された最新の原典版楽譜

においてどのような形で解決されているかに関しては別の機会に論じることとしここではまずバドウーラースコダによる論文全文を紹介する単なるエディション批判の見地からのコメント以外にも貴重な情報が多く含まれておりベートーヴェンのピアノ協奏曲を演奏する上でピアニストはもとより指揮者への参考にもなれば幸いであるなお楽譜上における個別の問題点に関してはオイレンブルク社のスコアに記

載されている小節番号によってその位置を特定している特に協奏曲第5番においては楽譜によって2~3楽章を通しの小節番号あるいは3楽章から新しく小節番号をふりなおすという異なった表示方法が存在するので注意力泌要である本稿は前者の方式の小節番号となっているまた日本語として読みやすくするためにバドウーラースコダの承認を得た上で若干の編集を行った

紫幸

少し前のことになるが誰にも気づかれないまま記念すべき年が過ぎ去ったルートヴイヒヴァンベートーヴェンのピアノ協奏曲における最新の優れた楽

譜が出版されてからすでに百年という年月が経過したのである[訳注本稿が執筆されたのが1983年であることに留意]188182年にフランツクラクFranzKullakによる厳密な注解と詳細なコメン

トを掲載した楽譜がシュタイングレーバー社SteingriberVerlagから出版された力44)信じがたいことにその後出版された楽譜の内容はどれもこのレベルに達しなかったもしこの楽譜にまだ不十分な点があるとすればそれはクラクカ覗在われわれが閲覧できるすべての費料を使用できなかったことそしてどんなに優秀であっても二台ピアノ用に編纂された楽譜がオーケストラスコアの代用にはなり得ないという理由による

(4)この楽譜は現在では入手困難であるコメントを英訳したリプリント版がニューヨークのシヤーマー社GSchirmerlncより発行されているがいくつかの音符の誤植と誤った英訳が含まれている

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新モーツァルト全集に掲載されているモーツァルトの全ピアノ協奏曲に比較してベートーヴェンのピアノ協奏曲に関してわれわれはずっと不利な状況におかれているベートーヴェンに関してはまだ原典版が出版されていないのだ[訳注現在ではヘンレ社よりスコアおよび二台ピアノ用に編纂された原典版が出版されている]私が多くの出版社へ行ったこの点に関する問題解決への提言は四半世紀ものあいだ黙殺されてきた(5)そのような状況下最低限でも現在入手できる楽譜に含まれている誤りを正し加えて淡奏に|典Iするいくつかの観点を提供するのが本稿の目的である一冊の分厚い本にも匹敵する内容すべてを網羅することはできないしたとえそのような著作を上梓しようとしても世の出版社は新しい楽譜を出版するより醒めた興味しか示さないだろうなお本稿を読む際の参照用楽譜として今日までに出版されたものの中では比

較的良質で小節番号がふってあるため位置確認が容易なオイレンブルク社EmsiEulenbuIgLtd出版のスコアを使用した

ベートーヴェンのピアノ協奏曲からは通奏低音の慣習から始まり後にはそれより完全に脱却したピアノソロパート成立までの歴史と経緯が見てとれる今日一般的な意味での指揮者はまだ存在せずコンサートマスターがオーケス

トラのまとめ役を受け持っていたピアノ協奏曲の演奏にあたってはコンサートマスターとソリスト(多くの場合は作曲者自身だった)という二重の指揮体系が並立しておりどちらに主導権があるかは確定されていなかったモーツァルト風のトウッテイの時にもオーケストラの和声をピアノで重奏す

る方式はベートーヴェンが若い時代にも行われていたと推測される彼のピアノ協奏曲第1番のオリジナルエディション(6)に通奏低音用の数字がもれなく印刷されている理由はそれ以外に考えられないその後遅くとも第3番に至ってゆるやかな変化が見てとれるベートーヴェ

(5)ボンのベートーヴエン資料館BeethovenArchivとミュンヘンのヘンレ社Henle-Verlagの共同作業による新ベートーヴェン全集編纂プランにはピアノ協奏IIIIが含まれているもののその編纂作業は遅々として進まずこの速度では20世紀中に全曲出版されるかさえ危倶されるまたすでに発行されている作品に関しても多くのものは注解がついていないばかりか楽譜そのものにも誤りが散見される[バドウーラスコダ注]rarr1985年にピアノ協奏曲第1番~第3番が出版された(6)ベートーヴェン自身が目を通した上で出版された初版楽譜のこと

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ンは最後3曲のピアノ協奏曲においてオーケストラパートの低声部や重要な主

題に関連する音などを[オリジナルエディションの]ピアノパートに印刷させたカミこれはソリストのオリエンテーションのための機能を持った音列(Dhktionsstimme)へと変化していった

私が知る限り音楽史上初めて出現したスタイルはピアノ協奏曲第4番の第2楽章であるここに記されたピアノソロパートはオーケストラのトゥッティの際も完壁に沈黙を守るべく考えられそのように楽譜が整えられているそれに対して前後の楽章および第5番のピアノ協奏曲では伝統的な記譜法が採用されており状況によってピアノがオーケストラと重奏すべきかどうかはソリストの判断に委ねられている(7)ベートーヴェンのピアノ協奏曲における指揮が実際にどのような形態だったか

はイグナツザイフリートIgnazSeyiTiedの伝える以下の逸話に述べられている

<ベートーヴェンは新作のピアノ協奏曲を演奏したが最初のトゥッティから自分がソリストであることを忘れて立ち上がり我流で指揮を始めたベートーヴェンは最初のスフォルツアートで腕を大きく振り広げたためピアノの譜面台に置かれていた左右の燭台を床になぎたおしてしまった聴衆は笑いベートーヴェンはこの出来事で莊然自失となってオーケストラの演奏は停止し初めからもう一回演奏しなおさなければならなかったザイフリートは同じ場所でまた同じ事が起こるのではと心配し合唱団の男子二人をベートーヴェンの横に立たせしかるべき

(7)ピアノ協奏曲第5番の手稿とオリジナルエディションのピアノパートには数字つきバスと並行してメロディーや和声補充音が瞥き込まれているこれらはその後出版されたどの楽譜にも反映されていないがたとえば第2楽章の第53~54小節その他にベートーヴェンによって丹念に普き込まれた数字はトウッテイの部分でもピアニストが重奏すべきことを示唆しているこの楽章の第13~15小節でベートーヴェンはソロピアノの左手にヴイオラパートの音を書き込んだのに加えてtastosoloつまり和声の補充音なしでこの音列を単独でオーケストラと重奏するよう指示しているこのtastosoloの指示および通奏低音処理に準じた重奏を行わせないためにベートーヴェンが楽譜に書き込んだ休符(第34小節左手など)はベートーヴェン時代の演奏習慣が現代とまったく異なったものだったことを示している

- 4 -

場所がきたら燭台を手に持つよう言いつけたひとりは無邪気にベートーヴェンの近くに寄り一緒にピアノの楽譜をのぞき込んでいたそのためくだんのスフォルッアートの箇所ではベートーヴェンの右手で平手打ちをくらいあまりの驚きから燭台を床に落としてしまったもう一人の注意深い男の子はベートーヴェンの一挙一動をこわごわと観察していたためかがんでベートーヴェンの平手打ちからは逃れられたさっき笑ったばかりの聴衆が今度は大沸きに沸いたベートーヴェンは怒り心頭に発し最初の和音で半ダースほどの弦を切ってしまったもうどんな方法をもってしても音楽ファンたちの静寂と注意を求めるのは不可能だった協奏曲の最初のアレグロ[訳注第1楽章]はこうして聴衆全員にとって失われたも同然だったこの事件後ベートーヴェンは二度と演奏会をやりたがらなかったという>(8)

ベートーヴェンのピアノ協奏曲における多くの記譜上の問題は19世紀になって2台ピアノ用の楽譜が出版された際にこれら通奏低音その他の記載がソロパートから削除されてしまったことに由来しているそのためオーケストラのトゥッティにピアノソロが続く部分でしばしば誤解が生じている本来のソロパートに属さない音符が印刷されたり編集者がソロパート冒頭の和音をオーケストラの音だと誤解して削除してしまったりしたこのような混乱が含まれているパートを厳粛な顔でくそまじめに演奏したりソロパートに必要不可欠なバスなのに印刷楽譜を盲信するあまり弾こうとしないピアニストの姿はまるで不可思議な演劇を見ている感がするソロパートにつけられてしまった不要な音列の例はピアノ協奏曲第3番第1

(8)LouisSpohrSどめogノαルieCassclun(IG61tingen1860Bd1S200シユポーアがザイフリートより聞いたものとして瞥かれている1808年12月22日のコンサートMuSikalischeAkademieにおける逸話でベートーヴェンの第5番と第6番の交騨曲ピアノ協奏曲第4番およびピアノ合唱とオーケストラのためのく合唱幻想曲>作品80が演奏されたこの逸話は事実と創作の入り交じったものだがベートーヴェンがピアノ協奏曲を指揮する姿をうかがい知ることができるベートーヴェンが演奏をやり直した本当の原因はなぎ倒された燭台ではなく合唱幻想曲の最終楽章で間違えたクラリネットにあった(Thayer-Deilers-RiemannL(fwiglαBeeiル01esLebeLeipzigl923Bd3S110~112および1809年1月7日付けのベートーヴエンからブライトコップフヘルテル社BreitkopfampHartelに宛てた手紙を参照)

-5 -

楽章の第140小節見受けられる

終わりから7小節および第2楽章の第80小節く譜例labgtに

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<譜例lagtピアノ協奏IIII第3番のオリジナルエディション(第2楽章T77~終結部)

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<譜例 l b gtピアノ協奏曲第3番第2楽章T78~80

- 6 -

誤って削除されほとんどの印刷楽譜で休符となっているソロパートの開始音はピアノ協奏曲第4番第1楽章第253小節く譜例2agtおよび第3楽章の第402小節く譜例3agtに見受けられる

252

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<譜例2agtピアノ協奏曲第4番第1楽章T252~254

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<譜例2bgtピアノ協奏曲第4番第1楽章T253~256(オリジナルエディション)

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<譜例3agtピアノ協奏曲第4番第3楽章T400~403

オリジナルエディション印刷用に制作されベートーヴェン自身による書き込みがある協奏曲第4番の筆写譜(9)<譜例3bgtを参照するとここに誤解の余地

(9)ベートーヴエンは協奏曲第4稀の初版識を出版する際にベートーヴエン自身が作成したのではない筆写譜を使用しここに自雛で変更酬項を記入したこれらベートーヴェン自身の筆跡による補足の中にはオリジナルエディション出版後になってから記入されたと推測されるものも含まれている現在はウィーン楽友協会の賓料館ArchivderGesellschaftderMusikfreundeinWiellに所蔵されている

- 7 -

戸面口

はないことがわかるオリジナルエディションではこの音符そのものは正確に刻印されているが0ISoloの単語が不注意から本来より右寄りに印刷されてしまったく譜例3cgtこのためそれ以降の時代の楽譜編纂者は何の検証も行わないまま単に冒頭のバス音を削除しバスなしの不完全な属七和音が生じることになった今日に至るまでこの不完全な音響がほとんどのピアニストによって律儀に踏襲されているのである

窪一一一一一一堰 一垂一一 堂

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臺菫鬘 = 三ロg

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<譜例3bgtピアノ協奏曲第4番第3楽章T401~404(錘写譜)

一口一口一峰》一一志内 山 『国1畠A皐室

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<譜例3cgtピアノ協奏llll第4番第3楽章T396~405(オリジナルエディション)

近年の印刷楽譜ではベートーヴェンのペダル指示に関しても誤った解釈力端行している1803年頃までウィーンのピアノに足のつま先で操作するペダルはついておらず

膝レバーを押し上げる方式によって得られるペダル効果が一般的だったしたがってベートーヴェンは開放弦の響きを要求する際に6lPedalとの単語を使用できずsenzasordino(あるいはsordini)とconsordino(同)という表現を使用せざるを得なかったほとんどの印刷楽譜でこのsenzaSordini(ダンパーなしで)という記述はconPedaleということばに置き換えられている6conPedの厳密な意味

は「自由にペダルを使い必要に応じて踏み変えるように」ということである

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ベートーヴェンの意図は明らかに異なっており「ペダルを踏み変えずあえて混然とした音響を作り出す」ことにあるベートーヴェンに師事していたカールチェルニーCarlCzemyが伝えるように(10ベートーヴェンのピアノ作品は基本

的に「ペダルを使用して」演奏すべきであり「特別なペダル用法が必要な場合」のみベートーヴェンはそれを楽譜に普き込んだのである

各ピアノ協奏曲における異稿一覧

訳注「T」はTakI(小節)の略である「ピアノ(上)」「ピアノ(下)」はピアノパートの大譜表における上の段下の段を示す単に「削除」と指示されているものはそれが原典漬料に含まれていないことを意味しバドシーラースコダの演奏家としての個人的趣味に帰するものではない「補充」「付加」に関しても同様だが[]つきの指示(強弱記号など)は「典拠資料には含まれていないが音楽的見地から推測して補充されるべきもの」を意味する

ピアノ協奏曲第1番作品15

第1楽章AlleOroconbrioT11第1ヴァイオリン初版譜に八分音符として印刷されている前打音は短く奏されるべきだろうすでに初期の作品において長く弾かれるべき前打音をベートーヴェンは普通の大きさの音符で記しているT118~119122~123ピアノ(下)低音部の音列は通奏低音を意味しオーケストラと重奏しなくても良いT187ピアノ(上)最初の音符に$[sfP]を補充すべきであるT192194etc第1と第2ヴァイオリントリルの終結に後打音を付加(T196と198の管楽器と同様に[sfZ]も補充すべきだろう)

T212ピアノ4拍目にsfを付加

(10「[ベートーヴェンは]自作の出版譜に瞥き込まれたものよりかなり多くペダルを使っていました」(カールツェルニー『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法」(パウルバドゥーラースコダ編注釈古荘隆保訳全音楽譜出版社34頁)より原著はCarlCzernydecgeVoノ8dejscβノィβldquoノノi0lescノどKノaWenlerkeherausgegebenundkommcnlierIvonPaulBadura=SkodaUniversalEdition133401963WienS22)

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T235ピアノいかなる原典資料にもトリルの前打音は記載されていないT292~306管楽器すべての連打音[訳注3拍目と4拍目の四分音符]にはポルタートを補充すべきである[くさび形のスタッカートを点のスタッカートに変更しスラーを加える]T72~75のオーボエとファゴットを参照T318~319(T327)ピアノ(下)手稿における左手の音型はT317と同じであるオリジナルエディションに印刷されているものはミスプリントの可能性が大きいT327も同様T335~346ピアノconPedではなくPedでありペダルは踏み変えない特にT340~345の間でペダルを踏み続けることが大切であるT334~335ピアノオクターブのグリッサンドはベートーヴェンによるもの手の小さい人はチェルニーの『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法』(前掲書原著105頁和書148頁)で紹介されている単音のグリッサンドでも術わないいずれにせよオーケストラも含めた音楽全体を支えるフォルテのバス音となるT345の1Gは省略してはならないT391~393ピアノ(下)左手のバス音は通奏低音の残津であり音価の違い(四分音符と八分音符)に意味はないT418ピアノdimを削除T451ピアノ(下)ほとんど演奏不可能に近いバス音glは削除カデンツクラクはカデンツの編纂用底本として筆写譜しか使用できなかったので今日ではベートーヴェン新全集(BeethovenWerkeAbteilungVIIBand7KadenzenzuKlavierkonzertenHenle-VerlagMUnchen)を優先すべきだが(1Dクラクの編纂は大筋で賞賛に値する最初の未完のカデンツは独創的ふたつめはその短さから協奏曲に一番なじみやすく三つめはアイデアにあふれているものの長すぎる-時間的に長いというよりはT100[オイレンブルクP118の2段目目頭]にあるd2のトリル(ハ長調の属調として機能する)からかなり稚拙にカデンツ終結部を支配するト長調で提示される主題に連結されるもののその後

⑪興味のある人へチューリヒのオイレンブルク社VerlagEulenburgよりクルトオイレンブルクKurtEulenburg[オイレンブルク社創始者エルンストの息子父を継いで社の単独所有者となる]生誕百年を記念して1979年にベートーヴェンの全カデンツのファクシミリ版が出版された

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の秩序が整っていないこのような手法は出版されたベートーヴェンの作品中にほとんど見受けられないこの未公開のカデンツはベートーヴェンがおおむね自分用の覚え書きとして脳裏に浮かび指のおもむくままに即興したアイデアを紙に記しておいたものだろうこれを出版するとなればベートーヴェンは上述の問題点を含めてさらに推敲し改良したと考えられるクラクの提案する短縮案はベートーヴェンが行ったと想像される作業に沿ったものとして真蟄に評価されるべきであるT467469管楽器sf 直後に[p]を補充すべきだろう

第2楽章LarqoT5ピアノ括弧に入れられているcrescは削除T6ピアノ(上)小節冒頭にある三つの三十二分音符からなる前打音はオリジナルエディションに印刷されているものの手稿には含まれていないため省略可能であるT19~26管楽器と弦楽器ポルタートに使用されるのは点のスタッカートでくさび形ではないT26の第2ヴァイオリンパートにあるポルタートはミスプリントで2個目から4個目の八分音符につけられる[訳注T25の第1ヴァイオリンを参照]T27全楽器Iffはすべての楽器においてふたつ目の八分音符からとなるT30~31第1クラリネット小節後半の八分音符はポルタートでなく最後ふたつの八分音符がレガートとなるそれ以外の管楽器は[第2クラリネットも含めて]3音ともポルタート(点のスタッカートにレガート)であるT33ピアノ(上)トリルは後打音とともに終結されるべきだろうT35ピアノ(上)ターンはオリジナルエディションのみに印刷されており手稿に含まれていないこのような装飾音はベートーヴェン初期のスタイルになじまないT50ピアノ小節後半のペダルはconPedではなくPedでありT52の最後まで踏み変えてはならない(現代のピアノでも魅力的な音響となる)T54ピアノ(上)八分音符の前打音as】をこのように旧弊な方法で記譜するのは驚きに値する(オリジナルエディション制作の際の誤りとも考えられる)T55ピアノ(上)3拍目の音は四分音符blで[八分音符glは]ミスプ

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リントであるT57ピアノ(上)T5と同様の内声を補充するがこの小節では四分音符となるT60~74チェロとコントラバスオーケストラのバスを担うこのパートはオイレンブルク社のスコアにおいて正しく印刷されている鯖ltべきことにこのパートはベートーヴェン旧全集において欠落しているため旧全集をもとに作られたほとんどのオーケストラ用パート譜セットでも同様に欠落しており是非とも補充されなければならないT67~73ピアノ(下)ibassibenmarcatoの指示を補充T68ピアノ(上)小節最後のふたつの八分音符es(三連音符)の代わりにこの拍は八分休符ひとつと三連音符ではない通常の八分音符eSlが[旋律のアウフタクトとして]弾かれるT78~79ピアノ(下)2拍目と4拍目のレガートは三連音符最初のふたつの八分音符のみにつけられる

T84コントラバス小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T87~88管楽器小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T91ピアノ(下)ポルタートを付加またconPedをPedに変更[訳注2小節間ペダルを踏み変えない]T93~95クラリネットとファゴット反復される同じ高さの音はポルタートでありスタッカートではないT100~101ピアノ(上)手稿では2拍目にあるターンつき四分音符の代わりに複付点のリズム(該当小節のクラリネット4拍目を参照)となっている(この方がオリジナルエディションに印刷されているターンより美しく群くdeg)

T103~106ピアノピアノパートにはl0colbasso[continuo]の指示があるここで通奏低音の指示にしたがって重奏するのは良好な結果をもたらすT116ピアノdconPedではなくd6Pedであり楽章最後までペダルは踏み変えられない

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第3楽章Alleqroscherzandoテンポ指示のうち66scherzandoはオリジナルエディションに印刷されており信頼すべき表記である

T91517ピアノ括弧に入れられている==二二と=を削除T59~64ピアノすべての強弱記号を削除T73ピアノamppを削除]T77~81ピアノ4crescと$Ifを削除T88ピアノmf を削除T92ピアノ(下)冒頭のバス音はもちろんIBの誤りであるT96ピアノ(上)冒頭のes2は四分音符となるべきだろうT148~151ピアノT148の0lconPedはPedでありT151三つ目の八分音符まで踏み変えないT166~170ピアノcrescとfを削除[T226ピアノlを削除]T232~236ピアノ印刷されている賊弱記号を削除T248第1オーボエふたつ目の八分音符hlの前に括弧入りの臨時記号フラット[b]を補充MT354ピアノampfを削除]T355~367ヒアノすべての06sfを削除T372~378ピアノpidfとIlff を削除T393ピアノcIescを削除T397ピアノffを削除T485ピアノオイレンブルク社のスコアに掲載されているカデンツはベートーヴェンのものではなく演奏すべきではないT558~559ピアノ(上)手稿にある表記く譜例4gtが好ましい印刷されている表記を受け入れる場合でもレガートは小節冒頭の最初のふたつの十六分音符e3-d3だけにつけられるべきだろう

圭倉合坐奪渭558ハ

毎 一 周

首<譜例4>-13-

ピアノ協奏曲第2番作品19

1801年4月22日にベートーヴェンはライプツイヒの出版社ホフマイスターFAHoffmeisterへ以下の書簡を書いている

<私の所有物がいつもきちんと整理整頓されていないことはおそらく

私が恥じるべき唯一のこととはいえ他人にはかわってもらえないのですたとえばいつもの手順に従ったせいで総譜にはピアノパー1がまだ書き込まれておらずそれは今やっと私が書きあげ急いだので乱筆の楽譜ですがこの手紙に添えてお届けします>

ベートーヴェンの書簡の内容には何の誇張もない手稿の総譜ピアノパートはスケッチのような楽想が記入されているのみなどおそるべき状態にある書簡で述べられている自筆のピアノパート譜は長いこと閲覧できなかったがほぼ四半世紀前よりボンのベートーヴェンハウスに所蔵されるようになったしかし当館の研究者と私以外まだ誰もこの貴重な資料を調査した者はいないようだこのパート譜にもオーケストラのトウッテイの声部がピアニストのオリエンテーションのために書き込まれている(Direktionsstimme)

第1楽章AlleOroconbrioT99ピアノlcrescはベートーヴェンによるT101ピアノ最後の和音にくさび形のスタッカートを補充T114ピアノ0pianoを補充T131第2ヴァイオリンfpを削除T134第2ヴァイオリン四つ目の八分音符はClであるT142ピアノ(下)左手の小節冒頭の八分音符ふたつを削除し四分休符に変更するT145ピアノ(上)前打音e2は四分音符であるT149ピアノ手稿ではここでppとなっているoT147のppは再現部T331と比較して誤りと思われるT199チェロとコントラバス最後の音はf音であるT218ピアノ小節の中央部[3拍目あたり]にcresc9を補充

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T222ピアノ[dim]を補充T237ピアノ(上)小節冒頭のeSlはスタッカートであるT262264ピアノひとつ目と五つめの八分音符は譜尾が独立して記されているT263ピアノ(上)小節冒頭の八分音符は譜尾が独立して記されているT275ピアノ(下)三つ目の四分音符はスタッカートである[T276も同様]T281ピアノペダルはT285の最初の音まで踏み変えないT285ピアノ(下)小節冒頭にはバス音Bが書かれているT321ピアノ(上)スラーは次の小節冒頭の四分音符C2まで延長されるT329ピアノ(上)ここのトリルに前打音は書かれていないT337ピアノ=二二を補充T339~340ピアノ(下)すべてのスラーを削除T368~369ピアノ左手の四分音符にスタッカートはつけられていないT370以|朧はすべての四分音符にくさび形のスタッカートがつけられているカデンツベートーヴェンハウスに所蔵されている手稿は[協奏llll本体よりも]ずっと後の時点において創作されたものであるスケッチ風に書かれており各所において以下に挙げるリズムの整術と強弱の補充が必要である⑫

T43984拍目は付点のリズムになる(T8402を参照)T5399(上)右手の開始部に[flを補充]T6400(上)4拍目に[p]を補充T10404(上)上声部冒頭に[l1を補充T13407(上)ふたつ目の音符g2にはbがつけられている(geS2音が弾かれる)これは新全集でも欠落しているT24418小節後半のふたつの和音にはくさび形のスタッカートがつけられるT28422(上)スラーは2拍目から開始されるT35~36429~430(上)T35429よりT36430冒頭の八分音符までスラーを補充

⑫訳注カデンツ冒頭からと第1楽章を通じての小節番号を併記した

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T46440(下)冒頭の音は複付点になっており続く音dlは十六分音符となるT49443(下)すべてを付点リズムで弾くべきである

第2楽章AdaqioT10第1ヴァイオリン冒頭のスラーはふたつ目の三十二分音符から開始されている2拍目のスラーは第2バイオリンとともにalまでしか架けられていない

T16~17ピアノピアノソロの最後はT17冒頭の音も含めてpで演奏されるT17の左手は四分音符で書かれているが右手もそれに合わせるべきだろう手稿においてT17のピアノパート[右手]には八分音符2拍目より第1バイオリンの音がtuttiと0fとともに[ピアニストのオリエンテーション用声部Di=Iktionsslimmeとして]記入されているがこれはもちろんオーケストラのものであるT27ピアノ(下)スラーは存在しない[T29~30のように]小節全体に架かるものを補充すべきだろうT30ピアノ(上)小節冒頭の前打音は三十二分音符fのみであるb2はオリジナルエディションを制作した職人の独断によるものに違いないT32~33チェロとコントラバス2拍目はヴィオラと同じ三十二分音符の音列が演奏される[タイの後に同じ音を再度弾く]T37ピアノ(上)2拍目の和音から小節最後までのスラーを補充T40ピアノ(上)2拍目の右手はb2からeS2までスラーが架けられるT47ピアノ(上)小節冒頭の音への装飾音の書法は誤りでT39と同様のものが考えられていたに違いないT56ピアノ(上)2拍目以降の十六分音符に架けられるレガートはd2からとなるT58ピアノcrescは左手の八分音符につけられているT60ピアノ(下)3拍目冒頭に八分休符を補充しかし左手最後の和音は論理的にはチェロコントラバスと同時に弾かれるべきでピアノパートの誤りと考えられる

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T63ピアノ2拍目付近に[cresc]が補充されるべきであるT65ピアノ(上)1拍目ふたつ目から六つ目の十六分音符にはスラーなしのくさび形スタッカートがつけられているしたがってこの小節の1拍目には[flが補充されるべきだろう

T76~80ピアノベートーヴェンはこの小節を誤って八分の三拍子つまり通常の半分の音価の音符で誉いてしまったオリジナルエディション制作の際職人がこの誤りを修正したものの2拍目の三十二分音符だけはそのままにしてしまったもちろんこの音も十六分音符として演奏されるべきである手稿く譜例5>を参照

〆rsquo 一 一 一L壁ご江豐r_トーニーとエユーー

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<譜例5>ピアノ協奏llil第2番第2楽章T73~84(手稿)

T82ピアノ(上)2拍目の音符につけられている前打音のうち2番目の音es2を削除手稿にはオクターブ下blの前打音しか書かれていない現代のピアノでもT74からT83までペダルが踏み続けられる

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T84ピアノconsordinoの指示はベートーヴェンによって後に加えられたものだが思い違いとも考えられる[これ如何によってT83にconsordino(Rダルを離す)の指示を補充すべきかの判断が必要となる]ひょっとすると[T74から踏み続けられている]ペダルはT86の最後まで保持されるべきなのかも知れない

第3楽章Alleqromolto (これがオリジナルの語順である)Tl~ピアノ冒頭は楽譜通りでT8にcrescは書かれていないT27ピアノ(上)手稿もこのように書かれているがT199と比較せよT55ピアノ(上)小節後半のフレージングをT51と同じに修正T139ピアノ(上)四分音符にくさび形のスタッカートを補充T142ピアノ(上)4番目と5番目の八分音符にくさび形のスタッカートを補充T143ピアノ(上)T141と同じフレージングが補充されるべきであるT165ピアノ小節冒頭の音は左右ともスタッカートT199ピアノ(下)冒頭に四分音符fとそれに続く八分休符を補充T205ピアノ(下)冒頭に四分音符のバスesを補充T278ピアノ(上)冒頭のblはオーケストラを示した音符(DilektionsStimme)の可能性がある(手稿ではここに休符が書かれている)T293~297ピアノパー1にはくさび形のスタッカートがつけられているが手稿によればヴィオラチェロとコントラバスはその限りではないピアノパートヘの対比としてベートーヴェンはおそらく弦楽器にはレガートを考えていたのだろうT316ピアノ手稿ではすでにこの小節にppがありさらにT317にも4Gppが書かれている

ピアノ協奏曲第3番作品37

衆知の通りこの協奏曲が完成するまでには長い時間が饗やされている最初のコンセプトが考えられたのは1797年頃だがその後1804年に出版されるまでの間にはベートーヴェンの作曲スタイルが大きな変貌をとげたと同時に楽器その

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ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

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T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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<譜例7>

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カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

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次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

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1L一一一 手 一

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壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

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両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

一一

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 3: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

ランツクラクが編纂しニューヨークのシャーマー社より出版されたものがベストだったこれらの楽譜は現在も入手可能で貴重な情報を我々に与えてくれるが全く問題がないわけではないこれらの諸問題を指摘した本稿の内容がその後出版された最新の原典版楽譜

においてどのような形で解決されているかに関しては別の機会に論じることとしここではまずバドウーラースコダによる論文全文を紹介する単なるエディション批判の見地からのコメント以外にも貴重な情報が多く含まれておりベートーヴェンのピアノ協奏曲を演奏する上でピアニストはもとより指揮者への参考にもなれば幸いであるなお楽譜上における個別の問題点に関してはオイレンブルク社のスコアに記

載されている小節番号によってその位置を特定している特に協奏曲第5番においては楽譜によって2~3楽章を通しの小節番号あるいは3楽章から新しく小節番号をふりなおすという異なった表示方法が存在するので注意力泌要である本稿は前者の方式の小節番号となっているまた日本語として読みやすくするためにバドウーラースコダの承認を得た上で若干の編集を行った

紫幸

少し前のことになるが誰にも気づかれないまま記念すべき年が過ぎ去ったルートヴイヒヴァンベートーヴェンのピアノ協奏曲における最新の優れた楽

譜が出版されてからすでに百年という年月が経過したのである[訳注本稿が執筆されたのが1983年であることに留意]188182年にフランツクラクFranzKullakによる厳密な注解と詳細なコメン

トを掲載した楽譜がシュタイングレーバー社SteingriberVerlagから出版された力44)信じがたいことにその後出版された楽譜の内容はどれもこのレベルに達しなかったもしこの楽譜にまだ不十分な点があるとすればそれはクラクカ覗在われわれが閲覧できるすべての費料を使用できなかったことそしてどんなに優秀であっても二台ピアノ用に編纂された楽譜がオーケストラスコアの代用にはなり得ないという理由による

(4)この楽譜は現在では入手困難であるコメントを英訳したリプリント版がニューヨークのシヤーマー社GSchirmerlncより発行されているがいくつかの音符の誤植と誤った英訳が含まれている

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新モーツァルト全集に掲載されているモーツァルトの全ピアノ協奏曲に比較してベートーヴェンのピアノ協奏曲に関してわれわれはずっと不利な状況におかれているベートーヴェンに関してはまだ原典版が出版されていないのだ[訳注現在ではヘンレ社よりスコアおよび二台ピアノ用に編纂された原典版が出版されている]私が多くの出版社へ行ったこの点に関する問題解決への提言は四半世紀ものあいだ黙殺されてきた(5)そのような状況下最低限でも現在入手できる楽譜に含まれている誤りを正し加えて淡奏に|典Iするいくつかの観点を提供するのが本稿の目的である一冊の分厚い本にも匹敵する内容すべてを網羅することはできないしたとえそのような著作を上梓しようとしても世の出版社は新しい楽譜を出版するより醒めた興味しか示さないだろうなお本稿を読む際の参照用楽譜として今日までに出版されたものの中では比

較的良質で小節番号がふってあるため位置確認が容易なオイレンブルク社EmsiEulenbuIgLtd出版のスコアを使用した

ベートーヴェンのピアノ協奏曲からは通奏低音の慣習から始まり後にはそれより完全に脱却したピアノソロパート成立までの歴史と経緯が見てとれる今日一般的な意味での指揮者はまだ存在せずコンサートマスターがオーケス

トラのまとめ役を受け持っていたピアノ協奏曲の演奏にあたってはコンサートマスターとソリスト(多くの場合は作曲者自身だった)という二重の指揮体系が並立しておりどちらに主導権があるかは確定されていなかったモーツァルト風のトウッテイの時にもオーケストラの和声をピアノで重奏す

る方式はベートーヴェンが若い時代にも行われていたと推測される彼のピアノ協奏曲第1番のオリジナルエディション(6)に通奏低音用の数字がもれなく印刷されている理由はそれ以外に考えられないその後遅くとも第3番に至ってゆるやかな変化が見てとれるベートーヴェ

(5)ボンのベートーヴエン資料館BeethovenArchivとミュンヘンのヘンレ社Henle-Verlagの共同作業による新ベートーヴェン全集編纂プランにはピアノ協奏IIIIが含まれているもののその編纂作業は遅々として進まずこの速度では20世紀中に全曲出版されるかさえ危倶されるまたすでに発行されている作品に関しても多くのものは注解がついていないばかりか楽譜そのものにも誤りが散見される[バドウーラスコダ注]rarr1985年にピアノ協奏曲第1番~第3番が出版された(6)ベートーヴェン自身が目を通した上で出版された初版楽譜のこと

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ンは最後3曲のピアノ協奏曲においてオーケストラパートの低声部や重要な主

題に関連する音などを[オリジナルエディションの]ピアノパートに印刷させたカミこれはソリストのオリエンテーションのための機能を持った音列(Dhktionsstimme)へと変化していった

私が知る限り音楽史上初めて出現したスタイルはピアノ協奏曲第4番の第2楽章であるここに記されたピアノソロパートはオーケストラのトゥッティの際も完壁に沈黙を守るべく考えられそのように楽譜が整えられているそれに対して前後の楽章および第5番のピアノ協奏曲では伝統的な記譜法が採用されており状況によってピアノがオーケストラと重奏すべきかどうかはソリストの判断に委ねられている(7)ベートーヴェンのピアノ協奏曲における指揮が実際にどのような形態だったか

はイグナツザイフリートIgnazSeyiTiedの伝える以下の逸話に述べられている

<ベートーヴェンは新作のピアノ協奏曲を演奏したが最初のトゥッティから自分がソリストであることを忘れて立ち上がり我流で指揮を始めたベートーヴェンは最初のスフォルツアートで腕を大きく振り広げたためピアノの譜面台に置かれていた左右の燭台を床になぎたおしてしまった聴衆は笑いベートーヴェンはこの出来事で莊然自失となってオーケストラの演奏は停止し初めからもう一回演奏しなおさなければならなかったザイフリートは同じ場所でまた同じ事が起こるのではと心配し合唱団の男子二人をベートーヴェンの横に立たせしかるべき

(7)ピアノ協奏曲第5番の手稿とオリジナルエディションのピアノパートには数字つきバスと並行してメロディーや和声補充音が瞥き込まれているこれらはその後出版されたどの楽譜にも反映されていないがたとえば第2楽章の第53~54小節その他にベートーヴェンによって丹念に普き込まれた数字はトウッテイの部分でもピアニストが重奏すべきことを示唆しているこの楽章の第13~15小節でベートーヴェンはソロピアノの左手にヴイオラパートの音を書き込んだのに加えてtastosoloつまり和声の補充音なしでこの音列を単独でオーケストラと重奏するよう指示しているこのtastosoloの指示および通奏低音処理に準じた重奏を行わせないためにベートーヴェンが楽譜に書き込んだ休符(第34小節左手など)はベートーヴェン時代の演奏習慣が現代とまったく異なったものだったことを示している

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場所がきたら燭台を手に持つよう言いつけたひとりは無邪気にベートーヴェンの近くに寄り一緒にピアノの楽譜をのぞき込んでいたそのためくだんのスフォルッアートの箇所ではベートーヴェンの右手で平手打ちをくらいあまりの驚きから燭台を床に落としてしまったもう一人の注意深い男の子はベートーヴェンの一挙一動をこわごわと観察していたためかがんでベートーヴェンの平手打ちからは逃れられたさっき笑ったばかりの聴衆が今度は大沸きに沸いたベートーヴェンは怒り心頭に発し最初の和音で半ダースほどの弦を切ってしまったもうどんな方法をもってしても音楽ファンたちの静寂と注意を求めるのは不可能だった協奏曲の最初のアレグロ[訳注第1楽章]はこうして聴衆全員にとって失われたも同然だったこの事件後ベートーヴェンは二度と演奏会をやりたがらなかったという>(8)

ベートーヴェンのピアノ協奏曲における多くの記譜上の問題は19世紀になって2台ピアノ用の楽譜が出版された際にこれら通奏低音その他の記載がソロパートから削除されてしまったことに由来しているそのためオーケストラのトゥッティにピアノソロが続く部分でしばしば誤解が生じている本来のソロパートに属さない音符が印刷されたり編集者がソロパート冒頭の和音をオーケストラの音だと誤解して削除してしまったりしたこのような混乱が含まれているパートを厳粛な顔でくそまじめに演奏したりソロパートに必要不可欠なバスなのに印刷楽譜を盲信するあまり弾こうとしないピアニストの姿はまるで不可思議な演劇を見ている感がするソロパートにつけられてしまった不要な音列の例はピアノ協奏曲第3番第1

(8)LouisSpohrSどめogノαルieCassclun(IG61tingen1860Bd1S200シユポーアがザイフリートより聞いたものとして瞥かれている1808年12月22日のコンサートMuSikalischeAkademieにおける逸話でベートーヴェンの第5番と第6番の交騨曲ピアノ協奏曲第4番およびピアノ合唱とオーケストラのためのく合唱幻想曲>作品80が演奏されたこの逸話は事実と創作の入り交じったものだがベートーヴェンがピアノ協奏曲を指揮する姿をうかがい知ることができるベートーヴェンが演奏をやり直した本当の原因はなぎ倒された燭台ではなく合唱幻想曲の最終楽章で間違えたクラリネットにあった(Thayer-Deilers-RiemannL(fwiglαBeeiル01esLebeLeipzigl923Bd3S110~112および1809年1月7日付けのベートーヴエンからブライトコップフヘルテル社BreitkopfampHartelに宛てた手紙を参照)

-5 -

楽章の第140小節見受けられる

終わりから7小節および第2楽章の第80小節く譜例labgtに

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<譜例lagtピアノ協奏IIII第3番のオリジナルエディション(第2楽章T77~終結部)

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<譜例 l b gtピアノ協奏曲第3番第2楽章T78~80

- 6 -

誤って削除されほとんどの印刷楽譜で休符となっているソロパートの開始音はピアノ協奏曲第4番第1楽章第253小節く譜例2agtおよび第3楽章の第402小節く譜例3agtに見受けられる

252

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<譜例2agtピアノ協奏曲第4番第1楽章T252~254

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<譜例2bgtピアノ協奏曲第4番第1楽章T253~256(オリジナルエディション)

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<譜例3agtピアノ協奏曲第4番第3楽章T400~403

オリジナルエディション印刷用に制作されベートーヴェン自身による書き込みがある協奏曲第4番の筆写譜(9)<譜例3bgtを参照するとここに誤解の余地

(9)ベートーヴエンは協奏曲第4稀の初版識を出版する際にベートーヴエン自身が作成したのではない筆写譜を使用しここに自雛で変更酬項を記入したこれらベートーヴェン自身の筆跡による補足の中にはオリジナルエディション出版後になってから記入されたと推測されるものも含まれている現在はウィーン楽友協会の賓料館ArchivderGesellschaftderMusikfreundeinWiellに所蔵されている

- 7 -

戸面口

はないことがわかるオリジナルエディションではこの音符そのものは正確に刻印されているが0ISoloの単語が不注意から本来より右寄りに印刷されてしまったく譜例3cgtこのためそれ以降の時代の楽譜編纂者は何の検証も行わないまま単に冒頭のバス音を削除しバスなしの不完全な属七和音が生じることになった今日に至るまでこの不完全な音響がほとんどのピアニストによって律儀に踏襲されているのである

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<譜例3bgtピアノ協奏曲第4番第3楽章T401~404(錘写譜)

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<譜例3cgtピアノ協奏llll第4番第3楽章T396~405(オリジナルエディション)

近年の印刷楽譜ではベートーヴェンのペダル指示に関しても誤った解釈力端行している1803年頃までウィーンのピアノに足のつま先で操作するペダルはついておらず

膝レバーを押し上げる方式によって得られるペダル効果が一般的だったしたがってベートーヴェンは開放弦の響きを要求する際に6lPedalとの単語を使用できずsenzasordino(あるいはsordini)とconsordino(同)という表現を使用せざるを得なかったほとんどの印刷楽譜でこのsenzaSordini(ダンパーなしで)という記述はconPedaleということばに置き換えられている6conPedの厳密な意味

は「自由にペダルを使い必要に応じて踏み変えるように」ということである

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ベートーヴェンの意図は明らかに異なっており「ペダルを踏み変えずあえて混然とした音響を作り出す」ことにあるベートーヴェンに師事していたカールチェルニーCarlCzemyが伝えるように(10ベートーヴェンのピアノ作品は基本

的に「ペダルを使用して」演奏すべきであり「特別なペダル用法が必要な場合」のみベートーヴェンはそれを楽譜に普き込んだのである

各ピアノ協奏曲における異稿一覧

訳注「T」はTakI(小節)の略である「ピアノ(上)」「ピアノ(下)」はピアノパートの大譜表における上の段下の段を示す単に「削除」と指示されているものはそれが原典漬料に含まれていないことを意味しバドシーラースコダの演奏家としての個人的趣味に帰するものではない「補充」「付加」に関しても同様だが[]つきの指示(強弱記号など)は「典拠資料には含まれていないが音楽的見地から推測して補充されるべきもの」を意味する

ピアノ協奏曲第1番作品15

第1楽章AlleOroconbrioT11第1ヴァイオリン初版譜に八分音符として印刷されている前打音は短く奏されるべきだろうすでに初期の作品において長く弾かれるべき前打音をベートーヴェンは普通の大きさの音符で記しているT118~119122~123ピアノ(下)低音部の音列は通奏低音を意味しオーケストラと重奏しなくても良いT187ピアノ(上)最初の音符に$[sfP]を補充すべきであるT192194etc第1と第2ヴァイオリントリルの終結に後打音を付加(T196と198の管楽器と同様に[sfZ]も補充すべきだろう)

T212ピアノ4拍目にsfを付加

(10「[ベートーヴェンは]自作の出版譜に瞥き込まれたものよりかなり多くペダルを使っていました」(カールツェルニー『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法」(パウルバドゥーラースコダ編注釈古荘隆保訳全音楽譜出版社34頁)より原著はCarlCzernydecgeVoノ8dejscβノィβldquoノノi0lescノどKノaWenlerkeherausgegebenundkommcnlierIvonPaulBadura=SkodaUniversalEdition133401963WienS22)

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T235ピアノいかなる原典資料にもトリルの前打音は記載されていないT292~306管楽器すべての連打音[訳注3拍目と4拍目の四分音符]にはポルタートを補充すべきである[くさび形のスタッカートを点のスタッカートに変更しスラーを加える]T72~75のオーボエとファゴットを参照T318~319(T327)ピアノ(下)手稿における左手の音型はT317と同じであるオリジナルエディションに印刷されているものはミスプリントの可能性が大きいT327も同様T335~346ピアノconPedではなくPedでありペダルは踏み変えない特にT340~345の間でペダルを踏み続けることが大切であるT334~335ピアノオクターブのグリッサンドはベートーヴェンによるもの手の小さい人はチェルニーの『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法』(前掲書原著105頁和書148頁)で紹介されている単音のグリッサンドでも術わないいずれにせよオーケストラも含めた音楽全体を支えるフォルテのバス音となるT345の1Gは省略してはならないT391~393ピアノ(下)左手のバス音は通奏低音の残津であり音価の違い(四分音符と八分音符)に意味はないT418ピアノdimを削除T451ピアノ(下)ほとんど演奏不可能に近いバス音glは削除カデンツクラクはカデンツの編纂用底本として筆写譜しか使用できなかったので今日ではベートーヴェン新全集(BeethovenWerkeAbteilungVIIBand7KadenzenzuKlavierkonzertenHenle-VerlagMUnchen)を優先すべきだが(1Dクラクの編纂は大筋で賞賛に値する最初の未完のカデンツは独創的ふたつめはその短さから協奏曲に一番なじみやすく三つめはアイデアにあふれているものの長すぎる-時間的に長いというよりはT100[オイレンブルクP118の2段目目頭]にあるd2のトリル(ハ長調の属調として機能する)からかなり稚拙にカデンツ終結部を支配するト長調で提示される主題に連結されるもののその後

⑪興味のある人へチューリヒのオイレンブルク社VerlagEulenburgよりクルトオイレンブルクKurtEulenburg[オイレンブルク社創始者エルンストの息子父を継いで社の単独所有者となる]生誕百年を記念して1979年にベートーヴェンの全カデンツのファクシミリ版が出版された

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の秩序が整っていないこのような手法は出版されたベートーヴェンの作品中にほとんど見受けられないこの未公開のカデンツはベートーヴェンがおおむね自分用の覚え書きとして脳裏に浮かび指のおもむくままに即興したアイデアを紙に記しておいたものだろうこれを出版するとなればベートーヴェンは上述の問題点を含めてさらに推敲し改良したと考えられるクラクの提案する短縮案はベートーヴェンが行ったと想像される作業に沿ったものとして真蟄に評価されるべきであるT467469管楽器sf 直後に[p]を補充すべきだろう

第2楽章LarqoT5ピアノ括弧に入れられているcrescは削除T6ピアノ(上)小節冒頭にある三つの三十二分音符からなる前打音はオリジナルエディションに印刷されているものの手稿には含まれていないため省略可能であるT19~26管楽器と弦楽器ポルタートに使用されるのは点のスタッカートでくさび形ではないT26の第2ヴァイオリンパートにあるポルタートはミスプリントで2個目から4個目の八分音符につけられる[訳注T25の第1ヴァイオリンを参照]T27全楽器Iffはすべての楽器においてふたつ目の八分音符からとなるT30~31第1クラリネット小節後半の八分音符はポルタートでなく最後ふたつの八分音符がレガートとなるそれ以外の管楽器は[第2クラリネットも含めて]3音ともポルタート(点のスタッカートにレガート)であるT33ピアノ(上)トリルは後打音とともに終結されるべきだろうT35ピアノ(上)ターンはオリジナルエディションのみに印刷されており手稿に含まれていないこのような装飾音はベートーヴェン初期のスタイルになじまないT50ピアノ小節後半のペダルはconPedではなくPedでありT52の最後まで踏み変えてはならない(現代のピアノでも魅力的な音響となる)T54ピアノ(上)八分音符の前打音as】をこのように旧弊な方法で記譜するのは驚きに値する(オリジナルエディション制作の際の誤りとも考えられる)T55ピアノ(上)3拍目の音は四分音符blで[八分音符glは]ミスプ

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リントであるT57ピアノ(上)T5と同様の内声を補充するがこの小節では四分音符となるT60~74チェロとコントラバスオーケストラのバスを担うこのパートはオイレンブルク社のスコアにおいて正しく印刷されている鯖ltべきことにこのパートはベートーヴェン旧全集において欠落しているため旧全集をもとに作られたほとんどのオーケストラ用パート譜セットでも同様に欠落しており是非とも補充されなければならないT67~73ピアノ(下)ibassibenmarcatoの指示を補充T68ピアノ(上)小節最後のふたつの八分音符es(三連音符)の代わりにこの拍は八分休符ひとつと三連音符ではない通常の八分音符eSlが[旋律のアウフタクトとして]弾かれるT78~79ピアノ(下)2拍目と4拍目のレガートは三連音符最初のふたつの八分音符のみにつけられる

T84コントラバス小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T87~88管楽器小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T91ピアノ(下)ポルタートを付加またconPedをPedに変更[訳注2小節間ペダルを踏み変えない]T93~95クラリネットとファゴット反復される同じ高さの音はポルタートでありスタッカートではないT100~101ピアノ(上)手稿では2拍目にあるターンつき四分音符の代わりに複付点のリズム(該当小節のクラリネット4拍目を参照)となっている(この方がオリジナルエディションに印刷されているターンより美しく群くdeg)

T103~106ピアノピアノパートにはl0colbasso[continuo]の指示があるここで通奏低音の指示にしたがって重奏するのは良好な結果をもたらすT116ピアノdconPedではなくd6Pedであり楽章最後までペダルは踏み変えられない

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第3楽章Alleqroscherzandoテンポ指示のうち66scherzandoはオリジナルエディションに印刷されており信頼すべき表記である

T91517ピアノ括弧に入れられている==二二と=を削除T59~64ピアノすべての強弱記号を削除T73ピアノamppを削除]T77~81ピアノ4crescと$Ifを削除T88ピアノmf を削除T92ピアノ(下)冒頭のバス音はもちろんIBの誤りであるT96ピアノ(上)冒頭のes2は四分音符となるべきだろうT148~151ピアノT148の0lconPedはPedでありT151三つ目の八分音符まで踏み変えないT166~170ピアノcrescとfを削除[T226ピアノlを削除]T232~236ピアノ印刷されている賊弱記号を削除T248第1オーボエふたつ目の八分音符hlの前に括弧入りの臨時記号フラット[b]を補充MT354ピアノampfを削除]T355~367ヒアノすべての06sfを削除T372~378ピアノpidfとIlff を削除T393ピアノcIescを削除T397ピアノffを削除T485ピアノオイレンブルク社のスコアに掲載されているカデンツはベートーヴェンのものではなく演奏すべきではないT558~559ピアノ(上)手稿にある表記く譜例4gtが好ましい印刷されている表記を受け入れる場合でもレガートは小節冒頭の最初のふたつの十六分音符e3-d3だけにつけられるべきだろう

圭倉合坐奪渭558ハ

毎 一 周

首<譜例4>-13-

ピアノ協奏曲第2番作品19

1801年4月22日にベートーヴェンはライプツイヒの出版社ホフマイスターFAHoffmeisterへ以下の書簡を書いている

<私の所有物がいつもきちんと整理整頓されていないことはおそらく

私が恥じるべき唯一のこととはいえ他人にはかわってもらえないのですたとえばいつもの手順に従ったせいで総譜にはピアノパー1がまだ書き込まれておらずそれは今やっと私が書きあげ急いだので乱筆の楽譜ですがこの手紙に添えてお届けします>

ベートーヴェンの書簡の内容には何の誇張もない手稿の総譜ピアノパートはスケッチのような楽想が記入されているのみなどおそるべき状態にある書簡で述べられている自筆のピアノパート譜は長いこと閲覧できなかったがほぼ四半世紀前よりボンのベートーヴェンハウスに所蔵されるようになったしかし当館の研究者と私以外まだ誰もこの貴重な資料を調査した者はいないようだこのパート譜にもオーケストラのトウッテイの声部がピアニストのオリエンテーションのために書き込まれている(Direktionsstimme)

第1楽章AlleOroconbrioT99ピアノlcrescはベートーヴェンによるT101ピアノ最後の和音にくさび形のスタッカートを補充T114ピアノ0pianoを補充T131第2ヴァイオリンfpを削除T134第2ヴァイオリン四つ目の八分音符はClであるT142ピアノ(下)左手の小節冒頭の八分音符ふたつを削除し四分休符に変更するT145ピアノ(上)前打音e2は四分音符であるT149ピアノ手稿ではここでppとなっているoT147のppは再現部T331と比較して誤りと思われるT199チェロとコントラバス最後の音はf音であるT218ピアノ小節の中央部[3拍目あたり]にcresc9を補充

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T222ピアノ[dim]を補充T237ピアノ(上)小節冒頭のeSlはスタッカートであるT262264ピアノひとつ目と五つめの八分音符は譜尾が独立して記されているT263ピアノ(上)小節冒頭の八分音符は譜尾が独立して記されているT275ピアノ(下)三つ目の四分音符はスタッカートである[T276も同様]T281ピアノペダルはT285の最初の音まで踏み変えないT285ピアノ(下)小節冒頭にはバス音Bが書かれているT321ピアノ(上)スラーは次の小節冒頭の四分音符C2まで延長されるT329ピアノ(上)ここのトリルに前打音は書かれていないT337ピアノ=二二を補充T339~340ピアノ(下)すべてのスラーを削除T368~369ピアノ左手の四分音符にスタッカートはつけられていないT370以|朧はすべての四分音符にくさび形のスタッカートがつけられているカデンツベートーヴェンハウスに所蔵されている手稿は[協奏llll本体よりも]ずっと後の時点において創作されたものであるスケッチ風に書かれており各所において以下に挙げるリズムの整術と強弱の補充が必要である⑫

T43984拍目は付点のリズムになる(T8402を参照)T5399(上)右手の開始部に[flを補充]T6400(上)4拍目に[p]を補充T10404(上)上声部冒頭に[l1を補充T13407(上)ふたつ目の音符g2にはbがつけられている(geS2音が弾かれる)これは新全集でも欠落しているT24418小節後半のふたつの和音にはくさび形のスタッカートがつけられるT28422(上)スラーは2拍目から開始されるT35~36429~430(上)T35429よりT36430冒頭の八分音符までスラーを補充

⑫訳注カデンツ冒頭からと第1楽章を通じての小節番号を併記した

-15-

T46440(下)冒頭の音は複付点になっており続く音dlは十六分音符となるT49443(下)すべてを付点リズムで弾くべきである

第2楽章AdaqioT10第1ヴァイオリン冒頭のスラーはふたつ目の三十二分音符から開始されている2拍目のスラーは第2バイオリンとともにalまでしか架けられていない

T16~17ピアノピアノソロの最後はT17冒頭の音も含めてpで演奏されるT17の左手は四分音符で書かれているが右手もそれに合わせるべきだろう手稿においてT17のピアノパート[右手]には八分音符2拍目より第1バイオリンの音がtuttiと0fとともに[ピアニストのオリエンテーション用声部Di=Iktionsslimmeとして]記入されているがこれはもちろんオーケストラのものであるT27ピアノ(下)スラーは存在しない[T29~30のように]小節全体に架かるものを補充すべきだろうT30ピアノ(上)小節冒頭の前打音は三十二分音符fのみであるb2はオリジナルエディションを制作した職人の独断によるものに違いないT32~33チェロとコントラバス2拍目はヴィオラと同じ三十二分音符の音列が演奏される[タイの後に同じ音を再度弾く]T37ピアノ(上)2拍目の和音から小節最後までのスラーを補充T40ピアノ(上)2拍目の右手はb2からeS2までスラーが架けられるT47ピアノ(上)小節冒頭の音への装飾音の書法は誤りでT39と同様のものが考えられていたに違いないT56ピアノ(上)2拍目以降の十六分音符に架けられるレガートはd2からとなるT58ピアノcrescは左手の八分音符につけられているT60ピアノ(下)3拍目冒頭に八分休符を補充しかし左手最後の和音は論理的にはチェロコントラバスと同時に弾かれるべきでピアノパートの誤りと考えられる

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T63ピアノ2拍目付近に[cresc]が補充されるべきであるT65ピアノ(上)1拍目ふたつ目から六つ目の十六分音符にはスラーなしのくさび形スタッカートがつけられているしたがってこの小節の1拍目には[flが補充されるべきだろう

T76~80ピアノベートーヴェンはこの小節を誤って八分の三拍子つまり通常の半分の音価の音符で誉いてしまったオリジナルエディション制作の際職人がこの誤りを修正したものの2拍目の三十二分音符だけはそのままにしてしまったもちろんこの音も十六分音符として演奏されるべきである手稿く譜例5>を参照

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<譜例5>ピアノ協奏llil第2番第2楽章T73~84(手稿)

T82ピアノ(上)2拍目の音符につけられている前打音のうち2番目の音es2を削除手稿にはオクターブ下blの前打音しか書かれていない現代のピアノでもT74からT83までペダルが踏み続けられる

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T84ピアノconsordinoの指示はベートーヴェンによって後に加えられたものだが思い違いとも考えられる[これ如何によってT83にconsordino(Rダルを離す)の指示を補充すべきかの判断が必要となる]ひょっとすると[T74から踏み続けられている]ペダルはT86の最後まで保持されるべきなのかも知れない

第3楽章Alleqromolto (これがオリジナルの語順である)Tl~ピアノ冒頭は楽譜通りでT8にcrescは書かれていないT27ピアノ(上)手稿もこのように書かれているがT199と比較せよT55ピアノ(上)小節後半のフレージングをT51と同じに修正T139ピアノ(上)四分音符にくさび形のスタッカートを補充T142ピアノ(上)4番目と5番目の八分音符にくさび形のスタッカートを補充T143ピアノ(上)T141と同じフレージングが補充されるべきであるT165ピアノ小節冒頭の音は左右ともスタッカートT199ピアノ(下)冒頭に四分音符fとそれに続く八分休符を補充T205ピアノ(下)冒頭に四分音符のバスesを補充T278ピアノ(上)冒頭のblはオーケストラを示した音符(DilektionsStimme)の可能性がある(手稿ではここに休符が書かれている)T293~297ピアノパー1にはくさび形のスタッカートがつけられているが手稿によればヴィオラチェロとコントラバスはその限りではないピアノパートヘの対比としてベートーヴェンはおそらく弦楽器にはレガートを考えていたのだろうT316ピアノ手稿ではすでにこの小節にppがありさらにT317にも4Gppが書かれている

ピアノ協奏曲第3番作品37

衆知の通りこの協奏曲が完成するまでには長い時間が饗やされている最初のコンセプトが考えられたのは1797年頃だがその後1804年に出版されるまでの間にはベートーヴェンの作曲スタイルが大きな変貌をとげたと同時に楽器その

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ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

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T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

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<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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<譜例7>

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カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

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次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

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壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

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両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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<譜例12gt

多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

hellipIU eSp r e s s o胸 口 3 3 = a ) =(

<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

畢葬犀E醗酵ldquoハ

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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<譜例15agt

演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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<譜例15bgt

-40-

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<譜例15cgt

レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

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奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 4: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

新モーツァルト全集に掲載されているモーツァルトの全ピアノ協奏曲に比較してベートーヴェンのピアノ協奏曲に関してわれわれはずっと不利な状況におかれているベートーヴェンに関してはまだ原典版が出版されていないのだ[訳注現在ではヘンレ社よりスコアおよび二台ピアノ用に編纂された原典版が出版されている]私が多くの出版社へ行ったこの点に関する問題解決への提言は四半世紀ものあいだ黙殺されてきた(5)そのような状況下最低限でも現在入手できる楽譜に含まれている誤りを正し加えて淡奏に|典Iするいくつかの観点を提供するのが本稿の目的である一冊の分厚い本にも匹敵する内容すべてを網羅することはできないしたとえそのような著作を上梓しようとしても世の出版社は新しい楽譜を出版するより醒めた興味しか示さないだろうなお本稿を読む際の参照用楽譜として今日までに出版されたものの中では比

較的良質で小節番号がふってあるため位置確認が容易なオイレンブルク社EmsiEulenbuIgLtd出版のスコアを使用した

ベートーヴェンのピアノ協奏曲からは通奏低音の慣習から始まり後にはそれより完全に脱却したピアノソロパート成立までの歴史と経緯が見てとれる今日一般的な意味での指揮者はまだ存在せずコンサートマスターがオーケス

トラのまとめ役を受け持っていたピアノ協奏曲の演奏にあたってはコンサートマスターとソリスト(多くの場合は作曲者自身だった)という二重の指揮体系が並立しておりどちらに主導権があるかは確定されていなかったモーツァルト風のトウッテイの時にもオーケストラの和声をピアノで重奏す

る方式はベートーヴェンが若い時代にも行われていたと推測される彼のピアノ協奏曲第1番のオリジナルエディション(6)に通奏低音用の数字がもれなく印刷されている理由はそれ以外に考えられないその後遅くとも第3番に至ってゆるやかな変化が見てとれるベートーヴェ

(5)ボンのベートーヴエン資料館BeethovenArchivとミュンヘンのヘンレ社Henle-Verlagの共同作業による新ベートーヴェン全集編纂プランにはピアノ協奏IIIIが含まれているもののその編纂作業は遅々として進まずこの速度では20世紀中に全曲出版されるかさえ危倶されるまたすでに発行されている作品に関しても多くのものは注解がついていないばかりか楽譜そのものにも誤りが散見される[バドウーラスコダ注]rarr1985年にピアノ協奏曲第1番~第3番が出版された(6)ベートーヴェン自身が目を通した上で出版された初版楽譜のこと

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ンは最後3曲のピアノ協奏曲においてオーケストラパートの低声部や重要な主

題に関連する音などを[オリジナルエディションの]ピアノパートに印刷させたカミこれはソリストのオリエンテーションのための機能を持った音列(Dhktionsstimme)へと変化していった

私が知る限り音楽史上初めて出現したスタイルはピアノ協奏曲第4番の第2楽章であるここに記されたピアノソロパートはオーケストラのトゥッティの際も完壁に沈黙を守るべく考えられそのように楽譜が整えられているそれに対して前後の楽章および第5番のピアノ協奏曲では伝統的な記譜法が採用されており状況によってピアノがオーケストラと重奏すべきかどうかはソリストの判断に委ねられている(7)ベートーヴェンのピアノ協奏曲における指揮が実際にどのような形態だったか

はイグナツザイフリートIgnazSeyiTiedの伝える以下の逸話に述べられている

<ベートーヴェンは新作のピアノ協奏曲を演奏したが最初のトゥッティから自分がソリストであることを忘れて立ち上がり我流で指揮を始めたベートーヴェンは最初のスフォルツアートで腕を大きく振り広げたためピアノの譜面台に置かれていた左右の燭台を床になぎたおしてしまった聴衆は笑いベートーヴェンはこの出来事で莊然自失となってオーケストラの演奏は停止し初めからもう一回演奏しなおさなければならなかったザイフリートは同じ場所でまた同じ事が起こるのではと心配し合唱団の男子二人をベートーヴェンの横に立たせしかるべき

(7)ピアノ協奏曲第5番の手稿とオリジナルエディションのピアノパートには数字つきバスと並行してメロディーや和声補充音が瞥き込まれているこれらはその後出版されたどの楽譜にも反映されていないがたとえば第2楽章の第53~54小節その他にベートーヴェンによって丹念に普き込まれた数字はトウッテイの部分でもピアニストが重奏すべきことを示唆しているこの楽章の第13~15小節でベートーヴェンはソロピアノの左手にヴイオラパートの音を書き込んだのに加えてtastosoloつまり和声の補充音なしでこの音列を単独でオーケストラと重奏するよう指示しているこのtastosoloの指示および通奏低音処理に準じた重奏を行わせないためにベートーヴェンが楽譜に書き込んだ休符(第34小節左手など)はベートーヴェン時代の演奏習慣が現代とまったく異なったものだったことを示している

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場所がきたら燭台を手に持つよう言いつけたひとりは無邪気にベートーヴェンの近くに寄り一緒にピアノの楽譜をのぞき込んでいたそのためくだんのスフォルッアートの箇所ではベートーヴェンの右手で平手打ちをくらいあまりの驚きから燭台を床に落としてしまったもう一人の注意深い男の子はベートーヴェンの一挙一動をこわごわと観察していたためかがんでベートーヴェンの平手打ちからは逃れられたさっき笑ったばかりの聴衆が今度は大沸きに沸いたベートーヴェンは怒り心頭に発し最初の和音で半ダースほどの弦を切ってしまったもうどんな方法をもってしても音楽ファンたちの静寂と注意を求めるのは不可能だった協奏曲の最初のアレグロ[訳注第1楽章]はこうして聴衆全員にとって失われたも同然だったこの事件後ベートーヴェンは二度と演奏会をやりたがらなかったという>(8)

ベートーヴェンのピアノ協奏曲における多くの記譜上の問題は19世紀になって2台ピアノ用の楽譜が出版された際にこれら通奏低音その他の記載がソロパートから削除されてしまったことに由来しているそのためオーケストラのトゥッティにピアノソロが続く部分でしばしば誤解が生じている本来のソロパートに属さない音符が印刷されたり編集者がソロパート冒頭の和音をオーケストラの音だと誤解して削除してしまったりしたこのような混乱が含まれているパートを厳粛な顔でくそまじめに演奏したりソロパートに必要不可欠なバスなのに印刷楽譜を盲信するあまり弾こうとしないピアニストの姿はまるで不可思議な演劇を見ている感がするソロパートにつけられてしまった不要な音列の例はピアノ協奏曲第3番第1

(8)LouisSpohrSどめogノαルieCassclun(IG61tingen1860Bd1S200シユポーアがザイフリートより聞いたものとして瞥かれている1808年12月22日のコンサートMuSikalischeAkademieにおける逸話でベートーヴェンの第5番と第6番の交騨曲ピアノ協奏曲第4番およびピアノ合唱とオーケストラのためのく合唱幻想曲>作品80が演奏されたこの逸話は事実と創作の入り交じったものだがベートーヴェンがピアノ協奏曲を指揮する姿をうかがい知ることができるベートーヴェンが演奏をやり直した本当の原因はなぎ倒された燭台ではなく合唱幻想曲の最終楽章で間違えたクラリネットにあった(Thayer-Deilers-RiemannL(fwiglαBeeiル01esLebeLeipzigl923Bd3S110~112および1809年1月7日付けのベートーヴエンからブライトコップフヘルテル社BreitkopfampHartelに宛てた手紙を参照)

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楽章の第140小節見受けられる

終わりから7小節および第2楽章の第80小節く譜例labgtに

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<譜例lagtピアノ協奏IIII第3番のオリジナルエディション(第2楽章T77~終結部)

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<譜例 l b gtピアノ協奏曲第3番第2楽章T78~80

- 6 -

誤って削除されほとんどの印刷楽譜で休符となっているソロパートの開始音はピアノ協奏曲第4番第1楽章第253小節く譜例2agtおよび第3楽章の第402小節く譜例3agtに見受けられる

252

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<譜例2agtピアノ協奏曲第4番第1楽章T252~254

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<譜例2bgtピアノ協奏曲第4番第1楽章T253~256(オリジナルエディション)

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<譜例3agtピアノ協奏曲第4番第3楽章T400~403

オリジナルエディション印刷用に制作されベートーヴェン自身による書き込みがある協奏曲第4番の筆写譜(9)<譜例3bgtを参照するとここに誤解の余地

(9)ベートーヴエンは協奏曲第4稀の初版識を出版する際にベートーヴエン自身が作成したのではない筆写譜を使用しここに自雛で変更酬項を記入したこれらベートーヴェン自身の筆跡による補足の中にはオリジナルエディション出版後になってから記入されたと推測されるものも含まれている現在はウィーン楽友協会の賓料館ArchivderGesellschaftderMusikfreundeinWiellに所蔵されている

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戸面口

はないことがわかるオリジナルエディションではこの音符そのものは正確に刻印されているが0ISoloの単語が不注意から本来より右寄りに印刷されてしまったく譜例3cgtこのためそれ以降の時代の楽譜編纂者は何の検証も行わないまま単に冒頭のバス音を削除しバスなしの不完全な属七和音が生じることになった今日に至るまでこの不完全な音響がほとんどのピアニストによって律儀に踏襲されているのである

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<譜例3bgtピアノ協奏曲第4番第3楽章T401~404(錘写譜)

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<譜例3cgtピアノ協奏llll第4番第3楽章T396~405(オリジナルエディション)

近年の印刷楽譜ではベートーヴェンのペダル指示に関しても誤った解釈力端行している1803年頃までウィーンのピアノに足のつま先で操作するペダルはついておらず

膝レバーを押し上げる方式によって得られるペダル効果が一般的だったしたがってベートーヴェンは開放弦の響きを要求する際に6lPedalとの単語を使用できずsenzasordino(あるいはsordini)とconsordino(同)という表現を使用せざるを得なかったほとんどの印刷楽譜でこのsenzaSordini(ダンパーなしで)という記述はconPedaleということばに置き換えられている6conPedの厳密な意味

は「自由にペダルを使い必要に応じて踏み変えるように」ということである

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ベートーヴェンの意図は明らかに異なっており「ペダルを踏み変えずあえて混然とした音響を作り出す」ことにあるベートーヴェンに師事していたカールチェルニーCarlCzemyが伝えるように(10ベートーヴェンのピアノ作品は基本

的に「ペダルを使用して」演奏すべきであり「特別なペダル用法が必要な場合」のみベートーヴェンはそれを楽譜に普き込んだのである

各ピアノ協奏曲における異稿一覧

訳注「T」はTakI(小節)の略である「ピアノ(上)」「ピアノ(下)」はピアノパートの大譜表における上の段下の段を示す単に「削除」と指示されているものはそれが原典漬料に含まれていないことを意味しバドシーラースコダの演奏家としての個人的趣味に帰するものではない「補充」「付加」に関しても同様だが[]つきの指示(強弱記号など)は「典拠資料には含まれていないが音楽的見地から推測して補充されるべきもの」を意味する

ピアノ協奏曲第1番作品15

第1楽章AlleOroconbrioT11第1ヴァイオリン初版譜に八分音符として印刷されている前打音は短く奏されるべきだろうすでに初期の作品において長く弾かれるべき前打音をベートーヴェンは普通の大きさの音符で記しているT118~119122~123ピアノ(下)低音部の音列は通奏低音を意味しオーケストラと重奏しなくても良いT187ピアノ(上)最初の音符に$[sfP]を補充すべきであるT192194etc第1と第2ヴァイオリントリルの終結に後打音を付加(T196と198の管楽器と同様に[sfZ]も補充すべきだろう)

T212ピアノ4拍目にsfを付加

(10「[ベートーヴェンは]自作の出版譜に瞥き込まれたものよりかなり多くペダルを使っていました」(カールツェルニー『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法」(パウルバドゥーラースコダ編注釈古荘隆保訳全音楽譜出版社34頁)より原著はCarlCzernydecgeVoノ8dejscβノィβldquoノノi0lescノどKノaWenlerkeherausgegebenundkommcnlierIvonPaulBadura=SkodaUniversalEdition133401963WienS22)

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T235ピアノいかなる原典資料にもトリルの前打音は記載されていないT292~306管楽器すべての連打音[訳注3拍目と4拍目の四分音符]にはポルタートを補充すべきである[くさび形のスタッカートを点のスタッカートに変更しスラーを加える]T72~75のオーボエとファゴットを参照T318~319(T327)ピアノ(下)手稿における左手の音型はT317と同じであるオリジナルエディションに印刷されているものはミスプリントの可能性が大きいT327も同様T335~346ピアノconPedではなくPedでありペダルは踏み変えない特にT340~345の間でペダルを踏み続けることが大切であるT334~335ピアノオクターブのグリッサンドはベートーヴェンによるもの手の小さい人はチェルニーの『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法』(前掲書原著105頁和書148頁)で紹介されている単音のグリッサンドでも術わないいずれにせよオーケストラも含めた音楽全体を支えるフォルテのバス音となるT345の1Gは省略してはならないT391~393ピアノ(下)左手のバス音は通奏低音の残津であり音価の違い(四分音符と八分音符)に意味はないT418ピアノdimを削除T451ピアノ(下)ほとんど演奏不可能に近いバス音glは削除カデンツクラクはカデンツの編纂用底本として筆写譜しか使用できなかったので今日ではベートーヴェン新全集(BeethovenWerkeAbteilungVIIBand7KadenzenzuKlavierkonzertenHenle-VerlagMUnchen)を優先すべきだが(1Dクラクの編纂は大筋で賞賛に値する最初の未完のカデンツは独創的ふたつめはその短さから協奏曲に一番なじみやすく三つめはアイデアにあふれているものの長すぎる-時間的に長いというよりはT100[オイレンブルクP118の2段目目頭]にあるd2のトリル(ハ長調の属調として機能する)からかなり稚拙にカデンツ終結部を支配するト長調で提示される主題に連結されるもののその後

⑪興味のある人へチューリヒのオイレンブルク社VerlagEulenburgよりクルトオイレンブルクKurtEulenburg[オイレンブルク社創始者エルンストの息子父を継いで社の単独所有者となる]生誕百年を記念して1979年にベートーヴェンの全カデンツのファクシミリ版が出版された

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の秩序が整っていないこのような手法は出版されたベートーヴェンの作品中にほとんど見受けられないこの未公開のカデンツはベートーヴェンがおおむね自分用の覚え書きとして脳裏に浮かび指のおもむくままに即興したアイデアを紙に記しておいたものだろうこれを出版するとなればベートーヴェンは上述の問題点を含めてさらに推敲し改良したと考えられるクラクの提案する短縮案はベートーヴェンが行ったと想像される作業に沿ったものとして真蟄に評価されるべきであるT467469管楽器sf 直後に[p]を補充すべきだろう

第2楽章LarqoT5ピアノ括弧に入れられているcrescは削除T6ピアノ(上)小節冒頭にある三つの三十二分音符からなる前打音はオリジナルエディションに印刷されているものの手稿には含まれていないため省略可能であるT19~26管楽器と弦楽器ポルタートに使用されるのは点のスタッカートでくさび形ではないT26の第2ヴァイオリンパートにあるポルタートはミスプリントで2個目から4個目の八分音符につけられる[訳注T25の第1ヴァイオリンを参照]T27全楽器Iffはすべての楽器においてふたつ目の八分音符からとなるT30~31第1クラリネット小節後半の八分音符はポルタートでなく最後ふたつの八分音符がレガートとなるそれ以外の管楽器は[第2クラリネットも含めて]3音ともポルタート(点のスタッカートにレガート)であるT33ピアノ(上)トリルは後打音とともに終結されるべきだろうT35ピアノ(上)ターンはオリジナルエディションのみに印刷されており手稿に含まれていないこのような装飾音はベートーヴェン初期のスタイルになじまないT50ピアノ小節後半のペダルはconPedではなくPedでありT52の最後まで踏み変えてはならない(現代のピアノでも魅力的な音響となる)T54ピアノ(上)八分音符の前打音as】をこのように旧弊な方法で記譜するのは驚きに値する(オリジナルエディション制作の際の誤りとも考えられる)T55ピアノ(上)3拍目の音は四分音符blで[八分音符glは]ミスプ

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リントであるT57ピアノ(上)T5と同様の内声を補充するがこの小節では四分音符となるT60~74チェロとコントラバスオーケストラのバスを担うこのパートはオイレンブルク社のスコアにおいて正しく印刷されている鯖ltべきことにこのパートはベートーヴェン旧全集において欠落しているため旧全集をもとに作られたほとんどのオーケストラ用パート譜セットでも同様に欠落しており是非とも補充されなければならないT67~73ピアノ(下)ibassibenmarcatoの指示を補充T68ピアノ(上)小節最後のふたつの八分音符es(三連音符)の代わりにこの拍は八分休符ひとつと三連音符ではない通常の八分音符eSlが[旋律のアウフタクトとして]弾かれるT78~79ピアノ(下)2拍目と4拍目のレガートは三連音符最初のふたつの八分音符のみにつけられる

T84コントラバス小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T87~88管楽器小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T91ピアノ(下)ポルタートを付加またconPedをPedに変更[訳注2小節間ペダルを踏み変えない]T93~95クラリネットとファゴット反復される同じ高さの音はポルタートでありスタッカートではないT100~101ピアノ(上)手稿では2拍目にあるターンつき四分音符の代わりに複付点のリズム(該当小節のクラリネット4拍目を参照)となっている(この方がオリジナルエディションに印刷されているターンより美しく群くdeg)

T103~106ピアノピアノパートにはl0colbasso[continuo]の指示があるここで通奏低音の指示にしたがって重奏するのは良好な結果をもたらすT116ピアノdconPedではなくd6Pedであり楽章最後までペダルは踏み変えられない

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第3楽章Alleqroscherzandoテンポ指示のうち66scherzandoはオリジナルエディションに印刷されており信頼すべき表記である

T91517ピアノ括弧に入れられている==二二と=を削除T59~64ピアノすべての強弱記号を削除T73ピアノamppを削除]T77~81ピアノ4crescと$Ifを削除T88ピアノmf を削除T92ピアノ(下)冒頭のバス音はもちろんIBの誤りであるT96ピアノ(上)冒頭のes2は四分音符となるべきだろうT148~151ピアノT148の0lconPedはPedでありT151三つ目の八分音符まで踏み変えないT166~170ピアノcrescとfを削除[T226ピアノlを削除]T232~236ピアノ印刷されている賊弱記号を削除T248第1オーボエふたつ目の八分音符hlの前に括弧入りの臨時記号フラット[b]を補充MT354ピアノampfを削除]T355~367ヒアノすべての06sfを削除T372~378ピアノpidfとIlff を削除T393ピアノcIescを削除T397ピアノffを削除T485ピアノオイレンブルク社のスコアに掲載されているカデンツはベートーヴェンのものではなく演奏すべきではないT558~559ピアノ(上)手稿にある表記く譜例4gtが好ましい印刷されている表記を受け入れる場合でもレガートは小節冒頭の最初のふたつの十六分音符e3-d3だけにつけられるべきだろう

圭倉合坐奪渭558ハ

毎 一 周

首<譜例4>-13-

ピアノ協奏曲第2番作品19

1801年4月22日にベートーヴェンはライプツイヒの出版社ホフマイスターFAHoffmeisterへ以下の書簡を書いている

<私の所有物がいつもきちんと整理整頓されていないことはおそらく

私が恥じるべき唯一のこととはいえ他人にはかわってもらえないのですたとえばいつもの手順に従ったせいで総譜にはピアノパー1がまだ書き込まれておらずそれは今やっと私が書きあげ急いだので乱筆の楽譜ですがこの手紙に添えてお届けします>

ベートーヴェンの書簡の内容には何の誇張もない手稿の総譜ピアノパートはスケッチのような楽想が記入されているのみなどおそるべき状態にある書簡で述べられている自筆のピアノパート譜は長いこと閲覧できなかったがほぼ四半世紀前よりボンのベートーヴェンハウスに所蔵されるようになったしかし当館の研究者と私以外まだ誰もこの貴重な資料を調査した者はいないようだこのパート譜にもオーケストラのトウッテイの声部がピアニストのオリエンテーションのために書き込まれている(Direktionsstimme)

第1楽章AlleOroconbrioT99ピアノlcrescはベートーヴェンによるT101ピアノ最後の和音にくさび形のスタッカートを補充T114ピアノ0pianoを補充T131第2ヴァイオリンfpを削除T134第2ヴァイオリン四つ目の八分音符はClであるT142ピアノ(下)左手の小節冒頭の八分音符ふたつを削除し四分休符に変更するT145ピアノ(上)前打音e2は四分音符であるT149ピアノ手稿ではここでppとなっているoT147のppは再現部T331と比較して誤りと思われるT199チェロとコントラバス最後の音はf音であるT218ピアノ小節の中央部[3拍目あたり]にcresc9を補充

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T222ピアノ[dim]を補充T237ピアノ(上)小節冒頭のeSlはスタッカートであるT262264ピアノひとつ目と五つめの八分音符は譜尾が独立して記されているT263ピアノ(上)小節冒頭の八分音符は譜尾が独立して記されているT275ピアノ(下)三つ目の四分音符はスタッカートである[T276も同様]T281ピアノペダルはT285の最初の音まで踏み変えないT285ピアノ(下)小節冒頭にはバス音Bが書かれているT321ピアノ(上)スラーは次の小節冒頭の四分音符C2まで延長されるT329ピアノ(上)ここのトリルに前打音は書かれていないT337ピアノ=二二を補充T339~340ピアノ(下)すべてのスラーを削除T368~369ピアノ左手の四分音符にスタッカートはつけられていないT370以|朧はすべての四分音符にくさび形のスタッカートがつけられているカデンツベートーヴェンハウスに所蔵されている手稿は[協奏llll本体よりも]ずっと後の時点において創作されたものであるスケッチ風に書かれており各所において以下に挙げるリズムの整術と強弱の補充が必要である⑫

T43984拍目は付点のリズムになる(T8402を参照)T5399(上)右手の開始部に[flを補充]T6400(上)4拍目に[p]を補充T10404(上)上声部冒頭に[l1を補充T13407(上)ふたつ目の音符g2にはbがつけられている(geS2音が弾かれる)これは新全集でも欠落しているT24418小節後半のふたつの和音にはくさび形のスタッカートがつけられるT28422(上)スラーは2拍目から開始されるT35~36429~430(上)T35429よりT36430冒頭の八分音符までスラーを補充

⑫訳注カデンツ冒頭からと第1楽章を通じての小節番号を併記した

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T46440(下)冒頭の音は複付点になっており続く音dlは十六分音符となるT49443(下)すべてを付点リズムで弾くべきである

第2楽章AdaqioT10第1ヴァイオリン冒頭のスラーはふたつ目の三十二分音符から開始されている2拍目のスラーは第2バイオリンとともにalまでしか架けられていない

T16~17ピアノピアノソロの最後はT17冒頭の音も含めてpで演奏されるT17の左手は四分音符で書かれているが右手もそれに合わせるべきだろう手稿においてT17のピアノパート[右手]には八分音符2拍目より第1バイオリンの音がtuttiと0fとともに[ピアニストのオリエンテーション用声部Di=Iktionsslimmeとして]記入されているがこれはもちろんオーケストラのものであるT27ピアノ(下)スラーは存在しない[T29~30のように]小節全体に架かるものを補充すべきだろうT30ピアノ(上)小節冒頭の前打音は三十二分音符fのみであるb2はオリジナルエディションを制作した職人の独断によるものに違いないT32~33チェロとコントラバス2拍目はヴィオラと同じ三十二分音符の音列が演奏される[タイの後に同じ音を再度弾く]T37ピアノ(上)2拍目の和音から小節最後までのスラーを補充T40ピアノ(上)2拍目の右手はb2からeS2までスラーが架けられるT47ピアノ(上)小節冒頭の音への装飾音の書法は誤りでT39と同様のものが考えられていたに違いないT56ピアノ(上)2拍目以降の十六分音符に架けられるレガートはd2からとなるT58ピアノcrescは左手の八分音符につけられているT60ピアノ(下)3拍目冒頭に八分休符を補充しかし左手最後の和音は論理的にはチェロコントラバスと同時に弾かれるべきでピアノパートの誤りと考えられる

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T63ピアノ2拍目付近に[cresc]が補充されるべきであるT65ピアノ(上)1拍目ふたつ目から六つ目の十六分音符にはスラーなしのくさび形スタッカートがつけられているしたがってこの小節の1拍目には[flが補充されるべきだろう

T76~80ピアノベートーヴェンはこの小節を誤って八分の三拍子つまり通常の半分の音価の音符で誉いてしまったオリジナルエディション制作の際職人がこの誤りを修正したものの2拍目の三十二分音符だけはそのままにしてしまったもちろんこの音も十六分音符として演奏されるべきである手稿く譜例5>を参照

〆rsquo 一 一 一L壁ご江豐r_トーニーとエユーー

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9画6一睡岬一ケ一一幸一一一一一一一

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<譜例5>ピアノ協奏llil第2番第2楽章T73~84(手稿)

T82ピアノ(上)2拍目の音符につけられている前打音のうち2番目の音es2を削除手稿にはオクターブ下blの前打音しか書かれていない現代のピアノでもT74からT83までペダルが踏み続けられる

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T84ピアノconsordinoの指示はベートーヴェンによって後に加えられたものだが思い違いとも考えられる[これ如何によってT83にconsordino(Rダルを離す)の指示を補充すべきかの判断が必要となる]ひょっとすると[T74から踏み続けられている]ペダルはT86の最後まで保持されるべきなのかも知れない

第3楽章Alleqromolto (これがオリジナルの語順である)Tl~ピアノ冒頭は楽譜通りでT8にcrescは書かれていないT27ピアノ(上)手稿もこのように書かれているがT199と比較せよT55ピアノ(上)小節後半のフレージングをT51と同じに修正T139ピアノ(上)四分音符にくさび形のスタッカートを補充T142ピアノ(上)4番目と5番目の八分音符にくさび形のスタッカートを補充T143ピアノ(上)T141と同じフレージングが補充されるべきであるT165ピアノ小節冒頭の音は左右ともスタッカートT199ピアノ(下)冒頭に四分音符fとそれに続く八分休符を補充T205ピアノ(下)冒頭に四分音符のバスesを補充T278ピアノ(上)冒頭のblはオーケストラを示した音符(DilektionsStimme)の可能性がある(手稿ではここに休符が書かれている)T293~297ピアノパー1にはくさび形のスタッカートがつけられているが手稿によればヴィオラチェロとコントラバスはその限りではないピアノパートヘの対比としてベートーヴェンはおそらく弦楽器にはレガートを考えていたのだろうT316ピアノ手稿ではすでにこの小節にppがありさらにT317にも4Gppが書かれている

ピアノ協奏曲第3番作品37

衆知の通りこの協奏曲が完成するまでには長い時間が饗やされている最初のコンセプトが考えられたのは1797年頃だがその後1804年に出版されるまでの間にはベートーヴェンの作曲スタイルが大きな変貌をとげたと同時に楽器その

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ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

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T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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一一一妾一一一一一一一一

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<譜例7>

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カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

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次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

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1L一一一 手 一

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-

壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

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両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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<譜例15agt

演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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<譜例15bgt

-40-

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<譜例15cgt

レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

一一

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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Q j0ローローロー一---一一ローーーーー

<譜例17agt

塁8--- - - - - - -ニーーーーニ- - - - - - rsquo

<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 5: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

ンは最後3曲のピアノ協奏曲においてオーケストラパートの低声部や重要な主

題に関連する音などを[オリジナルエディションの]ピアノパートに印刷させたカミこれはソリストのオリエンテーションのための機能を持った音列(Dhktionsstimme)へと変化していった

私が知る限り音楽史上初めて出現したスタイルはピアノ協奏曲第4番の第2楽章であるここに記されたピアノソロパートはオーケストラのトゥッティの際も完壁に沈黙を守るべく考えられそのように楽譜が整えられているそれに対して前後の楽章および第5番のピアノ協奏曲では伝統的な記譜法が採用されており状況によってピアノがオーケストラと重奏すべきかどうかはソリストの判断に委ねられている(7)ベートーヴェンのピアノ協奏曲における指揮が実際にどのような形態だったか

はイグナツザイフリートIgnazSeyiTiedの伝える以下の逸話に述べられている

<ベートーヴェンは新作のピアノ協奏曲を演奏したが最初のトゥッティから自分がソリストであることを忘れて立ち上がり我流で指揮を始めたベートーヴェンは最初のスフォルツアートで腕を大きく振り広げたためピアノの譜面台に置かれていた左右の燭台を床になぎたおしてしまった聴衆は笑いベートーヴェンはこの出来事で莊然自失となってオーケストラの演奏は停止し初めからもう一回演奏しなおさなければならなかったザイフリートは同じ場所でまた同じ事が起こるのではと心配し合唱団の男子二人をベートーヴェンの横に立たせしかるべき

(7)ピアノ協奏曲第5番の手稿とオリジナルエディションのピアノパートには数字つきバスと並行してメロディーや和声補充音が瞥き込まれているこれらはその後出版されたどの楽譜にも反映されていないがたとえば第2楽章の第53~54小節その他にベートーヴェンによって丹念に普き込まれた数字はトウッテイの部分でもピアニストが重奏すべきことを示唆しているこの楽章の第13~15小節でベートーヴェンはソロピアノの左手にヴイオラパートの音を書き込んだのに加えてtastosoloつまり和声の補充音なしでこの音列を単独でオーケストラと重奏するよう指示しているこのtastosoloの指示および通奏低音処理に準じた重奏を行わせないためにベートーヴェンが楽譜に書き込んだ休符(第34小節左手など)はベートーヴェン時代の演奏習慣が現代とまったく異なったものだったことを示している

- 4 -

場所がきたら燭台を手に持つよう言いつけたひとりは無邪気にベートーヴェンの近くに寄り一緒にピアノの楽譜をのぞき込んでいたそのためくだんのスフォルッアートの箇所ではベートーヴェンの右手で平手打ちをくらいあまりの驚きから燭台を床に落としてしまったもう一人の注意深い男の子はベートーヴェンの一挙一動をこわごわと観察していたためかがんでベートーヴェンの平手打ちからは逃れられたさっき笑ったばかりの聴衆が今度は大沸きに沸いたベートーヴェンは怒り心頭に発し最初の和音で半ダースほどの弦を切ってしまったもうどんな方法をもってしても音楽ファンたちの静寂と注意を求めるのは不可能だった協奏曲の最初のアレグロ[訳注第1楽章]はこうして聴衆全員にとって失われたも同然だったこの事件後ベートーヴェンは二度と演奏会をやりたがらなかったという>(8)

ベートーヴェンのピアノ協奏曲における多くの記譜上の問題は19世紀になって2台ピアノ用の楽譜が出版された際にこれら通奏低音その他の記載がソロパートから削除されてしまったことに由来しているそのためオーケストラのトゥッティにピアノソロが続く部分でしばしば誤解が生じている本来のソロパートに属さない音符が印刷されたり編集者がソロパート冒頭の和音をオーケストラの音だと誤解して削除してしまったりしたこのような混乱が含まれているパートを厳粛な顔でくそまじめに演奏したりソロパートに必要不可欠なバスなのに印刷楽譜を盲信するあまり弾こうとしないピアニストの姿はまるで不可思議な演劇を見ている感がするソロパートにつけられてしまった不要な音列の例はピアノ協奏曲第3番第1

(8)LouisSpohrSどめogノαルieCassclun(IG61tingen1860Bd1S200シユポーアがザイフリートより聞いたものとして瞥かれている1808年12月22日のコンサートMuSikalischeAkademieにおける逸話でベートーヴェンの第5番と第6番の交騨曲ピアノ協奏曲第4番およびピアノ合唱とオーケストラのためのく合唱幻想曲>作品80が演奏されたこの逸話は事実と創作の入り交じったものだがベートーヴェンがピアノ協奏曲を指揮する姿をうかがい知ることができるベートーヴェンが演奏をやり直した本当の原因はなぎ倒された燭台ではなく合唱幻想曲の最終楽章で間違えたクラリネットにあった(Thayer-Deilers-RiemannL(fwiglαBeeiル01esLebeLeipzigl923Bd3S110~112および1809年1月7日付けのベートーヴエンからブライトコップフヘルテル社BreitkopfampHartelに宛てた手紙を参照)

-5 -

楽章の第140小節見受けられる

終わりから7小節および第2楽章の第80小節く譜例labgtに

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<譜例lagtピアノ協奏IIII第3番のオリジナルエディション(第2楽章T77~終結部)

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<譜例 l b gtピアノ協奏曲第3番第2楽章T78~80

- 6 -

誤って削除されほとんどの印刷楽譜で休符となっているソロパートの開始音はピアノ協奏曲第4番第1楽章第253小節く譜例2agtおよび第3楽章の第402小節く譜例3agtに見受けられる

252

鮭 d尋悪君君(

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<譜例2agtピアノ協奏曲第4番第1楽章T252~254

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<譜例2bgtピアノ協奏曲第4番第1楽章T253~256(オリジナルエディション)

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<譜例3agtピアノ協奏曲第4番第3楽章T400~403

オリジナルエディション印刷用に制作されベートーヴェン自身による書き込みがある協奏曲第4番の筆写譜(9)<譜例3bgtを参照するとここに誤解の余地

(9)ベートーヴエンは協奏曲第4稀の初版識を出版する際にベートーヴエン自身が作成したのではない筆写譜を使用しここに自雛で変更酬項を記入したこれらベートーヴェン自身の筆跡による補足の中にはオリジナルエディション出版後になってから記入されたと推測されるものも含まれている現在はウィーン楽友協会の賓料館ArchivderGesellschaftderMusikfreundeinWiellに所蔵されている

- 7 -

戸面口

はないことがわかるオリジナルエディションではこの音符そのものは正確に刻印されているが0ISoloの単語が不注意から本来より右寄りに印刷されてしまったく譜例3cgtこのためそれ以降の時代の楽譜編纂者は何の検証も行わないまま単に冒頭のバス音を削除しバスなしの不完全な属七和音が生じることになった今日に至るまでこの不完全な音響がほとんどのピアニストによって律儀に踏襲されているのである

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<譜例3bgtピアノ協奏曲第4番第3楽章T401~404(錘写譜)

一口一口一峰》一一志内 山 『国1畠A皐室

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<譜例3cgtピアノ協奏llll第4番第3楽章T396~405(オリジナルエディション)

近年の印刷楽譜ではベートーヴェンのペダル指示に関しても誤った解釈力端行している1803年頃までウィーンのピアノに足のつま先で操作するペダルはついておらず

膝レバーを押し上げる方式によって得られるペダル効果が一般的だったしたがってベートーヴェンは開放弦の響きを要求する際に6lPedalとの単語を使用できずsenzasordino(あるいはsordini)とconsordino(同)という表現を使用せざるを得なかったほとんどの印刷楽譜でこのsenzaSordini(ダンパーなしで)という記述はconPedaleということばに置き換えられている6conPedの厳密な意味

は「自由にペダルを使い必要に応じて踏み変えるように」ということである

- 8 -

ベートーヴェンの意図は明らかに異なっており「ペダルを踏み変えずあえて混然とした音響を作り出す」ことにあるベートーヴェンに師事していたカールチェルニーCarlCzemyが伝えるように(10ベートーヴェンのピアノ作品は基本

的に「ペダルを使用して」演奏すべきであり「特別なペダル用法が必要な場合」のみベートーヴェンはそれを楽譜に普き込んだのである

各ピアノ協奏曲における異稿一覧

訳注「T」はTakI(小節)の略である「ピアノ(上)」「ピアノ(下)」はピアノパートの大譜表における上の段下の段を示す単に「削除」と指示されているものはそれが原典漬料に含まれていないことを意味しバドシーラースコダの演奏家としての個人的趣味に帰するものではない「補充」「付加」に関しても同様だが[]つきの指示(強弱記号など)は「典拠資料には含まれていないが音楽的見地から推測して補充されるべきもの」を意味する

ピアノ協奏曲第1番作品15

第1楽章AlleOroconbrioT11第1ヴァイオリン初版譜に八分音符として印刷されている前打音は短く奏されるべきだろうすでに初期の作品において長く弾かれるべき前打音をベートーヴェンは普通の大きさの音符で記しているT118~119122~123ピアノ(下)低音部の音列は通奏低音を意味しオーケストラと重奏しなくても良いT187ピアノ(上)最初の音符に$[sfP]を補充すべきであるT192194etc第1と第2ヴァイオリントリルの終結に後打音を付加(T196と198の管楽器と同様に[sfZ]も補充すべきだろう)

T212ピアノ4拍目にsfを付加

(10「[ベートーヴェンは]自作の出版譜に瞥き込まれたものよりかなり多くペダルを使っていました」(カールツェルニー『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法」(パウルバドゥーラースコダ編注釈古荘隆保訳全音楽譜出版社34頁)より原著はCarlCzernydecgeVoノ8dejscβノィβldquoノノi0lescノどKノaWenlerkeherausgegebenundkommcnlierIvonPaulBadura=SkodaUniversalEdition133401963WienS22)

- 9 -

T235ピアノいかなる原典資料にもトリルの前打音は記載されていないT292~306管楽器すべての連打音[訳注3拍目と4拍目の四分音符]にはポルタートを補充すべきである[くさび形のスタッカートを点のスタッカートに変更しスラーを加える]T72~75のオーボエとファゴットを参照T318~319(T327)ピアノ(下)手稿における左手の音型はT317と同じであるオリジナルエディションに印刷されているものはミスプリントの可能性が大きいT327も同様T335~346ピアノconPedではなくPedでありペダルは踏み変えない特にT340~345の間でペダルを踏み続けることが大切であるT334~335ピアノオクターブのグリッサンドはベートーヴェンによるもの手の小さい人はチェルニーの『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法』(前掲書原著105頁和書148頁)で紹介されている単音のグリッサンドでも術わないいずれにせよオーケストラも含めた音楽全体を支えるフォルテのバス音となるT345の1Gは省略してはならないT391~393ピアノ(下)左手のバス音は通奏低音の残津であり音価の違い(四分音符と八分音符)に意味はないT418ピアノdimを削除T451ピアノ(下)ほとんど演奏不可能に近いバス音glは削除カデンツクラクはカデンツの編纂用底本として筆写譜しか使用できなかったので今日ではベートーヴェン新全集(BeethovenWerkeAbteilungVIIBand7KadenzenzuKlavierkonzertenHenle-VerlagMUnchen)を優先すべきだが(1Dクラクの編纂は大筋で賞賛に値する最初の未完のカデンツは独創的ふたつめはその短さから協奏曲に一番なじみやすく三つめはアイデアにあふれているものの長すぎる-時間的に長いというよりはT100[オイレンブルクP118の2段目目頭]にあるd2のトリル(ハ長調の属調として機能する)からかなり稚拙にカデンツ終結部を支配するト長調で提示される主題に連結されるもののその後

⑪興味のある人へチューリヒのオイレンブルク社VerlagEulenburgよりクルトオイレンブルクKurtEulenburg[オイレンブルク社創始者エルンストの息子父を継いで社の単独所有者となる]生誕百年を記念して1979年にベートーヴェンの全カデンツのファクシミリ版が出版された

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の秩序が整っていないこのような手法は出版されたベートーヴェンの作品中にほとんど見受けられないこの未公開のカデンツはベートーヴェンがおおむね自分用の覚え書きとして脳裏に浮かび指のおもむくままに即興したアイデアを紙に記しておいたものだろうこれを出版するとなればベートーヴェンは上述の問題点を含めてさらに推敲し改良したと考えられるクラクの提案する短縮案はベートーヴェンが行ったと想像される作業に沿ったものとして真蟄に評価されるべきであるT467469管楽器sf 直後に[p]を補充すべきだろう

第2楽章LarqoT5ピアノ括弧に入れられているcrescは削除T6ピアノ(上)小節冒頭にある三つの三十二分音符からなる前打音はオリジナルエディションに印刷されているものの手稿には含まれていないため省略可能であるT19~26管楽器と弦楽器ポルタートに使用されるのは点のスタッカートでくさび形ではないT26の第2ヴァイオリンパートにあるポルタートはミスプリントで2個目から4個目の八分音符につけられる[訳注T25の第1ヴァイオリンを参照]T27全楽器Iffはすべての楽器においてふたつ目の八分音符からとなるT30~31第1クラリネット小節後半の八分音符はポルタートでなく最後ふたつの八分音符がレガートとなるそれ以外の管楽器は[第2クラリネットも含めて]3音ともポルタート(点のスタッカートにレガート)であるT33ピアノ(上)トリルは後打音とともに終結されるべきだろうT35ピアノ(上)ターンはオリジナルエディションのみに印刷されており手稿に含まれていないこのような装飾音はベートーヴェン初期のスタイルになじまないT50ピアノ小節後半のペダルはconPedではなくPedでありT52の最後まで踏み変えてはならない(現代のピアノでも魅力的な音響となる)T54ピアノ(上)八分音符の前打音as】をこのように旧弊な方法で記譜するのは驚きに値する(オリジナルエディション制作の際の誤りとも考えられる)T55ピアノ(上)3拍目の音は四分音符blで[八分音符glは]ミスプ

- 1 1 -

リントであるT57ピアノ(上)T5と同様の内声を補充するがこの小節では四分音符となるT60~74チェロとコントラバスオーケストラのバスを担うこのパートはオイレンブルク社のスコアにおいて正しく印刷されている鯖ltべきことにこのパートはベートーヴェン旧全集において欠落しているため旧全集をもとに作られたほとんどのオーケストラ用パート譜セットでも同様に欠落しており是非とも補充されなければならないT67~73ピアノ(下)ibassibenmarcatoの指示を補充T68ピアノ(上)小節最後のふたつの八分音符es(三連音符)の代わりにこの拍は八分休符ひとつと三連音符ではない通常の八分音符eSlが[旋律のアウフタクトとして]弾かれるT78~79ピアノ(下)2拍目と4拍目のレガートは三連音符最初のふたつの八分音符のみにつけられる

T84コントラバス小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T87~88管楽器小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T91ピアノ(下)ポルタートを付加またconPedをPedに変更[訳注2小節間ペダルを踏み変えない]T93~95クラリネットとファゴット反復される同じ高さの音はポルタートでありスタッカートではないT100~101ピアノ(上)手稿では2拍目にあるターンつき四分音符の代わりに複付点のリズム(該当小節のクラリネット4拍目を参照)となっている(この方がオリジナルエディションに印刷されているターンより美しく群くdeg)

T103~106ピアノピアノパートにはl0colbasso[continuo]の指示があるここで通奏低音の指示にしたがって重奏するのは良好な結果をもたらすT116ピアノdconPedではなくd6Pedであり楽章最後までペダルは踏み変えられない

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第3楽章Alleqroscherzandoテンポ指示のうち66scherzandoはオリジナルエディションに印刷されており信頼すべき表記である

T91517ピアノ括弧に入れられている==二二と=を削除T59~64ピアノすべての強弱記号を削除T73ピアノamppを削除]T77~81ピアノ4crescと$Ifを削除T88ピアノmf を削除T92ピアノ(下)冒頭のバス音はもちろんIBの誤りであるT96ピアノ(上)冒頭のes2は四分音符となるべきだろうT148~151ピアノT148の0lconPedはPedでありT151三つ目の八分音符まで踏み変えないT166~170ピアノcrescとfを削除[T226ピアノlを削除]T232~236ピアノ印刷されている賊弱記号を削除T248第1オーボエふたつ目の八分音符hlの前に括弧入りの臨時記号フラット[b]を補充MT354ピアノampfを削除]T355~367ヒアノすべての06sfを削除T372~378ピアノpidfとIlff を削除T393ピアノcIescを削除T397ピアノffを削除T485ピアノオイレンブルク社のスコアに掲載されているカデンツはベートーヴェンのものではなく演奏すべきではないT558~559ピアノ(上)手稿にある表記く譜例4gtが好ましい印刷されている表記を受け入れる場合でもレガートは小節冒頭の最初のふたつの十六分音符e3-d3だけにつけられるべきだろう

圭倉合坐奪渭558ハ

毎 一 周

首<譜例4>-13-

ピアノ協奏曲第2番作品19

1801年4月22日にベートーヴェンはライプツイヒの出版社ホフマイスターFAHoffmeisterへ以下の書簡を書いている

<私の所有物がいつもきちんと整理整頓されていないことはおそらく

私が恥じるべき唯一のこととはいえ他人にはかわってもらえないのですたとえばいつもの手順に従ったせいで総譜にはピアノパー1がまだ書き込まれておらずそれは今やっと私が書きあげ急いだので乱筆の楽譜ですがこの手紙に添えてお届けします>

ベートーヴェンの書簡の内容には何の誇張もない手稿の総譜ピアノパートはスケッチのような楽想が記入されているのみなどおそるべき状態にある書簡で述べられている自筆のピアノパート譜は長いこと閲覧できなかったがほぼ四半世紀前よりボンのベートーヴェンハウスに所蔵されるようになったしかし当館の研究者と私以外まだ誰もこの貴重な資料を調査した者はいないようだこのパート譜にもオーケストラのトウッテイの声部がピアニストのオリエンテーションのために書き込まれている(Direktionsstimme)

第1楽章AlleOroconbrioT99ピアノlcrescはベートーヴェンによるT101ピアノ最後の和音にくさび形のスタッカートを補充T114ピアノ0pianoを補充T131第2ヴァイオリンfpを削除T134第2ヴァイオリン四つ目の八分音符はClであるT142ピアノ(下)左手の小節冒頭の八分音符ふたつを削除し四分休符に変更するT145ピアノ(上)前打音e2は四分音符であるT149ピアノ手稿ではここでppとなっているoT147のppは再現部T331と比較して誤りと思われるT199チェロとコントラバス最後の音はf音であるT218ピアノ小節の中央部[3拍目あたり]にcresc9を補充

-14-

T222ピアノ[dim]を補充T237ピアノ(上)小節冒頭のeSlはスタッカートであるT262264ピアノひとつ目と五つめの八分音符は譜尾が独立して記されているT263ピアノ(上)小節冒頭の八分音符は譜尾が独立して記されているT275ピアノ(下)三つ目の四分音符はスタッカートである[T276も同様]T281ピアノペダルはT285の最初の音まで踏み変えないT285ピアノ(下)小節冒頭にはバス音Bが書かれているT321ピアノ(上)スラーは次の小節冒頭の四分音符C2まで延長されるT329ピアノ(上)ここのトリルに前打音は書かれていないT337ピアノ=二二を補充T339~340ピアノ(下)すべてのスラーを削除T368~369ピアノ左手の四分音符にスタッカートはつけられていないT370以|朧はすべての四分音符にくさび形のスタッカートがつけられているカデンツベートーヴェンハウスに所蔵されている手稿は[協奏llll本体よりも]ずっと後の時点において創作されたものであるスケッチ風に書かれており各所において以下に挙げるリズムの整術と強弱の補充が必要である⑫

T43984拍目は付点のリズムになる(T8402を参照)T5399(上)右手の開始部に[flを補充]T6400(上)4拍目に[p]を補充T10404(上)上声部冒頭に[l1を補充T13407(上)ふたつ目の音符g2にはbがつけられている(geS2音が弾かれる)これは新全集でも欠落しているT24418小節後半のふたつの和音にはくさび形のスタッカートがつけられるT28422(上)スラーは2拍目から開始されるT35~36429~430(上)T35429よりT36430冒頭の八分音符までスラーを補充

⑫訳注カデンツ冒頭からと第1楽章を通じての小節番号を併記した

-15-

T46440(下)冒頭の音は複付点になっており続く音dlは十六分音符となるT49443(下)すべてを付点リズムで弾くべきである

第2楽章AdaqioT10第1ヴァイオリン冒頭のスラーはふたつ目の三十二分音符から開始されている2拍目のスラーは第2バイオリンとともにalまでしか架けられていない

T16~17ピアノピアノソロの最後はT17冒頭の音も含めてpで演奏されるT17の左手は四分音符で書かれているが右手もそれに合わせるべきだろう手稿においてT17のピアノパート[右手]には八分音符2拍目より第1バイオリンの音がtuttiと0fとともに[ピアニストのオリエンテーション用声部Di=Iktionsslimmeとして]記入されているがこれはもちろんオーケストラのものであるT27ピアノ(下)スラーは存在しない[T29~30のように]小節全体に架かるものを補充すべきだろうT30ピアノ(上)小節冒頭の前打音は三十二分音符fのみであるb2はオリジナルエディションを制作した職人の独断によるものに違いないT32~33チェロとコントラバス2拍目はヴィオラと同じ三十二分音符の音列が演奏される[タイの後に同じ音を再度弾く]T37ピアノ(上)2拍目の和音から小節最後までのスラーを補充T40ピアノ(上)2拍目の右手はb2からeS2までスラーが架けられるT47ピアノ(上)小節冒頭の音への装飾音の書法は誤りでT39と同様のものが考えられていたに違いないT56ピアノ(上)2拍目以降の十六分音符に架けられるレガートはd2からとなるT58ピアノcrescは左手の八分音符につけられているT60ピアノ(下)3拍目冒頭に八分休符を補充しかし左手最後の和音は論理的にはチェロコントラバスと同時に弾かれるべきでピアノパートの誤りと考えられる

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T63ピアノ2拍目付近に[cresc]が補充されるべきであるT65ピアノ(上)1拍目ふたつ目から六つ目の十六分音符にはスラーなしのくさび形スタッカートがつけられているしたがってこの小節の1拍目には[flが補充されるべきだろう

T76~80ピアノベートーヴェンはこの小節を誤って八分の三拍子つまり通常の半分の音価の音符で誉いてしまったオリジナルエディション制作の際職人がこの誤りを修正したものの2拍目の三十二分音符だけはそのままにしてしまったもちろんこの音も十六分音符として演奏されるべきである手稿く譜例5>を参照

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<譜例5>ピアノ協奏llil第2番第2楽章T73~84(手稿)

T82ピアノ(上)2拍目の音符につけられている前打音のうち2番目の音es2を削除手稿にはオクターブ下blの前打音しか書かれていない現代のピアノでもT74からT83までペダルが踏み続けられる

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T84ピアノconsordinoの指示はベートーヴェンによって後に加えられたものだが思い違いとも考えられる[これ如何によってT83にconsordino(Rダルを離す)の指示を補充すべきかの判断が必要となる]ひょっとすると[T74から踏み続けられている]ペダルはT86の最後まで保持されるべきなのかも知れない

第3楽章Alleqromolto (これがオリジナルの語順である)Tl~ピアノ冒頭は楽譜通りでT8にcrescは書かれていないT27ピアノ(上)手稿もこのように書かれているがT199と比較せよT55ピアノ(上)小節後半のフレージングをT51と同じに修正T139ピアノ(上)四分音符にくさび形のスタッカートを補充T142ピアノ(上)4番目と5番目の八分音符にくさび形のスタッカートを補充T143ピアノ(上)T141と同じフレージングが補充されるべきであるT165ピアノ小節冒頭の音は左右ともスタッカートT199ピアノ(下)冒頭に四分音符fとそれに続く八分休符を補充T205ピアノ(下)冒頭に四分音符のバスesを補充T278ピアノ(上)冒頭のblはオーケストラを示した音符(DilektionsStimme)の可能性がある(手稿ではここに休符が書かれている)T293~297ピアノパー1にはくさび形のスタッカートがつけられているが手稿によればヴィオラチェロとコントラバスはその限りではないピアノパートヘの対比としてベートーヴェンはおそらく弦楽器にはレガートを考えていたのだろうT316ピアノ手稿ではすでにこの小節にppがありさらにT317にも4Gppが書かれている

ピアノ協奏曲第3番作品37

衆知の通りこの協奏曲が完成するまでには長い時間が饗やされている最初のコンセプトが考えられたのは1797年頃だがその後1804年に出版されるまでの間にはベートーヴェンの作曲スタイルが大きな変貌をとげたと同時に楽器その

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ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

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T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

瀞5含鼻盧農_今屡雲需{ 一

一一一妾一一一一一一一一

一一雪一一一一戸一一戸一一一一一1

<譜例7>

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カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

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一一口rsquorsquo一一口〆 1

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(一一一一一) GU9DR9bTe《UaBp9口ⅡU凸Ⅱ905凸一一一I

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

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次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

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1L一一一 手 一

|金-4

-

壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

-42-

以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

-43-

Page 6: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

場所がきたら燭台を手に持つよう言いつけたひとりは無邪気にベートーヴェンの近くに寄り一緒にピアノの楽譜をのぞき込んでいたそのためくだんのスフォルッアートの箇所ではベートーヴェンの右手で平手打ちをくらいあまりの驚きから燭台を床に落としてしまったもう一人の注意深い男の子はベートーヴェンの一挙一動をこわごわと観察していたためかがんでベートーヴェンの平手打ちからは逃れられたさっき笑ったばかりの聴衆が今度は大沸きに沸いたベートーヴェンは怒り心頭に発し最初の和音で半ダースほどの弦を切ってしまったもうどんな方法をもってしても音楽ファンたちの静寂と注意を求めるのは不可能だった協奏曲の最初のアレグロ[訳注第1楽章]はこうして聴衆全員にとって失われたも同然だったこの事件後ベートーヴェンは二度と演奏会をやりたがらなかったという>(8)

ベートーヴェンのピアノ協奏曲における多くの記譜上の問題は19世紀になって2台ピアノ用の楽譜が出版された際にこれら通奏低音その他の記載がソロパートから削除されてしまったことに由来しているそのためオーケストラのトゥッティにピアノソロが続く部分でしばしば誤解が生じている本来のソロパートに属さない音符が印刷されたり編集者がソロパート冒頭の和音をオーケストラの音だと誤解して削除してしまったりしたこのような混乱が含まれているパートを厳粛な顔でくそまじめに演奏したりソロパートに必要不可欠なバスなのに印刷楽譜を盲信するあまり弾こうとしないピアニストの姿はまるで不可思議な演劇を見ている感がするソロパートにつけられてしまった不要な音列の例はピアノ協奏曲第3番第1

(8)LouisSpohrSどめogノαルieCassclun(IG61tingen1860Bd1S200シユポーアがザイフリートより聞いたものとして瞥かれている1808年12月22日のコンサートMuSikalischeAkademieにおける逸話でベートーヴェンの第5番と第6番の交騨曲ピアノ協奏曲第4番およびピアノ合唱とオーケストラのためのく合唱幻想曲>作品80が演奏されたこの逸話は事実と創作の入り交じったものだがベートーヴェンがピアノ協奏曲を指揮する姿をうかがい知ることができるベートーヴェンが演奏をやり直した本当の原因はなぎ倒された燭台ではなく合唱幻想曲の最終楽章で間違えたクラリネットにあった(Thayer-Deilers-RiemannL(fwiglαBeeiル01esLebeLeipzigl923Bd3S110~112および1809年1月7日付けのベートーヴエンからブライトコップフヘルテル社BreitkopfampHartelに宛てた手紙を参照)

-5 -

楽章の第140小節見受けられる

終わりから7小節および第2楽章の第80小節く譜例labgtに

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<譜例lagtピアノ協奏IIII第3番のオリジナルエディション(第2楽章T77~終結部)

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<譜例 l b gtピアノ協奏曲第3番第2楽章T78~80

- 6 -

誤って削除されほとんどの印刷楽譜で休符となっているソロパートの開始音はピアノ協奏曲第4番第1楽章第253小節く譜例2agtおよび第3楽章の第402小節く譜例3agtに見受けられる

252

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<譜例2agtピアノ協奏曲第4番第1楽章T252~254

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<譜例2bgtピアノ協奏曲第4番第1楽章T253~256(オリジナルエディション)

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<譜例3agtピアノ協奏曲第4番第3楽章T400~403

オリジナルエディション印刷用に制作されベートーヴェン自身による書き込みがある協奏曲第4番の筆写譜(9)<譜例3bgtを参照するとここに誤解の余地

(9)ベートーヴエンは協奏曲第4稀の初版識を出版する際にベートーヴエン自身が作成したのではない筆写譜を使用しここに自雛で変更酬項を記入したこれらベートーヴェン自身の筆跡による補足の中にはオリジナルエディション出版後になってから記入されたと推測されるものも含まれている現在はウィーン楽友協会の賓料館ArchivderGesellschaftderMusikfreundeinWiellに所蔵されている

- 7 -

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はないことがわかるオリジナルエディションではこの音符そのものは正確に刻印されているが0ISoloの単語が不注意から本来より右寄りに印刷されてしまったく譜例3cgtこのためそれ以降の時代の楽譜編纂者は何の検証も行わないまま単に冒頭のバス音を削除しバスなしの不完全な属七和音が生じることになった今日に至るまでこの不完全な音響がほとんどのピアニストによって律儀に踏襲されているのである

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<譜例3bgtピアノ協奏曲第4番第3楽章T401~404(錘写譜)

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<譜例3cgtピアノ協奏llll第4番第3楽章T396~405(オリジナルエディション)

近年の印刷楽譜ではベートーヴェンのペダル指示に関しても誤った解釈力端行している1803年頃までウィーンのピアノに足のつま先で操作するペダルはついておらず

膝レバーを押し上げる方式によって得られるペダル効果が一般的だったしたがってベートーヴェンは開放弦の響きを要求する際に6lPedalとの単語を使用できずsenzasordino(あるいはsordini)とconsordino(同)という表現を使用せざるを得なかったほとんどの印刷楽譜でこのsenzaSordini(ダンパーなしで)という記述はconPedaleということばに置き換えられている6conPedの厳密な意味

は「自由にペダルを使い必要に応じて踏み変えるように」ということである

- 8 -

ベートーヴェンの意図は明らかに異なっており「ペダルを踏み変えずあえて混然とした音響を作り出す」ことにあるベートーヴェンに師事していたカールチェルニーCarlCzemyが伝えるように(10ベートーヴェンのピアノ作品は基本

的に「ペダルを使用して」演奏すべきであり「特別なペダル用法が必要な場合」のみベートーヴェンはそれを楽譜に普き込んだのである

各ピアノ協奏曲における異稿一覧

訳注「T」はTakI(小節)の略である「ピアノ(上)」「ピアノ(下)」はピアノパートの大譜表における上の段下の段を示す単に「削除」と指示されているものはそれが原典漬料に含まれていないことを意味しバドシーラースコダの演奏家としての個人的趣味に帰するものではない「補充」「付加」に関しても同様だが[]つきの指示(強弱記号など)は「典拠資料には含まれていないが音楽的見地から推測して補充されるべきもの」を意味する

ピアノ協奏曲第1番作品15

第1楽章AlleOroconbrioT11第1ヴァイオリン初版譜に八分音符として印刷されている前打音は短く奏されるべきだろうすでに初期の作品において長く弾かれるべき前打音をベートーヴェンは普通の大きさの音符で記しているT118~119122~123ピアノ(下)低音部の音列は通奏低音を意味しオーケストラと重奏しなくても良いT187ピアノ(上)最初の音符に$[sfP]を補充すべきであるT192194etc第1と第2ヴァイオリントリルの終結に後打音を付加(T196と198の管楽器と同様に[sfZ]も補充すべきだろう)

T212ピアノ4拍目にsfを付加

(10「[ベートーヴェンは]自作の出版譜に瞥き込まれたものよりかなり多くペダルを使っていました」(カールツェルニー『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法」(パウルバドゥーラースコダ編注釈古荘隆保訳全音楽譜出版社34頁)より原著はCarlCzernydecgeVoノ8dejscβノィβldquoノノi0lescノどKノaWenlerkeherausgegebenundkommcnlierIvonPaulBadura=SkodaUniversalEdition133401963WienS22)

- 9 -

T235ピアノいかなる原典資料にもトリルの前打音は記載されていないT292~306管楽器すべての連打音[訳注3拍目と4拍目の四分音符]にはポルタートを補充すべきである[くさび形のスタッカートを点のスタッカートに変更しスラーを加える]T72~75のオーボエとファゴットを参照T318~319(T327)ピアノ(下)手稿における左手の音型はT317と同じであるオリジナルエディションに印刷されているものはミスプリントの可能性が大きいT327も同様T335~346ピアノconPedではなくPedでありペダルは踏み変えない特にT340~345の間でペダルを踏み続けることが大切であるT334~335ピアノオクターブのグリッサンドはベートーヴェンによるもの手の小さい人はチェルニーの『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法』(前掲書原著105頁和書148頁)で紹介されている単音のグリッサンドでも術わないいずれにせよオーケストラも含めた音楽全体を支えるフォルテのバス音となるT345の1Gは省略してはならないT391~393ピアノ(下)左手のバス音は通奏低音の残津であり音価の違い(四分音符と八分音符)に意味はないT418ピアノdimを削除T451ピアノ(下)ほとんど演奏不可能に近いバス音glは削除カデンツクラクはカデンツの編纂用底本として筆写譜しか使用できなかったので今日ではベートーヴェン新全集(BeethovenWerkeAbteilungVIIBand7KadenzenzuKlavierkonzertenHenle-VerlagMUnchen)を優先すべきだが(1Dクラクの編纂は大筋で賞賛に値する最初の未完のカデンツは独創的ふたつめはその短さから協奏曲に一番なじみやすく三つめはアイデアにあふれているものの長すぎる-時間的に長いというよりはT100[オイレンブルクP118の2段目目頭]にあるd2のトリル(ハ長調の属調として機能する)からかなり稚拙にカデンツ終結部を支配するト長調で提示される主題に連結されるもののその後

⑪興味のある人へチューリヒのオイレンブルク社VerlagEulenburgよりクルトオイレンブルクKurtEulenburg[オイレンブルク社創始者エルンストの息子父を継いで社の単独所有者となる]生誕百年を記念して1979年にベートーヴェンの全カデンツのファクシミリ版が出版された

- 10 -

の秩序が整っていないこのような手法は出版されたベートーヴェンの作品中にほとんど見受けられないこの未公開のカデンツはベートーヴェンがおおむね自分用の覚え書きとして脳裏に浮かび指のおもむくままに即興したアイデアを紙に記しておいたものだろうこれを出版するとなればベートーヴェンは上述の問題点を含めてさらに推敲し改良したと考えられるクラクの提案する短縮案はベートーヴェンが行ったと想像される作業に沿ったものとして真蟄に評価されるべきであるT467469管楽器sf 直後に[p]を補充すべきだろう

第2楽章LarqoT5ピアノ括弧に入れられているcrescは削除T6ピアノ(上)小節冒頭にある三つの三十二分音符からなる前打音はオリジナルエディションに印刷されているものの手稿には含まれていないため省略可能であるT19~26管楽器と弦楽器ポルタートに使用されるのは点のスタッカートでくさび形ではないT26の第2ヴァイオリンパートにあるポルタートはミスプリントで2個目から4個目の八分音符につけられる[訳注T25の第1ヴァイオリンを参照]T27全楽器Iffはすべての楽器においてふたつ目の八分音符からとなるT30~31第1クラリネット小節後半の八分音符はポルタートでなく最後ふたつの八分音符がレガートとなるそれ以外の管楽器は[第2クラリネットも含めて]3音ともポルタート(点のスタッカートにレガート)であるT33ピアノ(上)トリルは後打音とともに終結されるべきだろうT35ピアノ(上)ターンはオリジナルエディションのみに印刷されており手稿に含まれていないこのような装飾音はベートーヴェン初期のスタイルになじまないT50ピアノ小節後半のペダルはconPedではなくPedでありT52の最後まで踏み変えてはならない(現代のピアノでも魅力的な音響となる)T54ピアノ(上)八分音符の前打音as】をこのように旧弊な方法で記譜するのは驚きに値する(オリジナルエディション制作の際の誤りとも考えられる)T55ピアノ(上)3拍目の音は四分音符blで[八分音符glは]ミスプ

- 1 1 -

リントであるT57ピアノ(上)T5と同様の内声を補充するがこの小節では四分音符となるT60~74チェロとコントラバスオーケストラのバスを担うこのパートはオイレンブルク社のスコアにおいて正しく印刷されている鯖ltべきことにこのパートはベートーヴェン旧全集において欠落しているため旧全集をもとに作られたほとんどのオーケストラ用パート譜セットでも同様に欠落しており是非とも補充されなければならないT67~73ピアノ(下)ibassibenmarcatoの指示を補充T68ピアノ(上)小節最後のふたつの八分音符es(三連音符)の代わりにこの拍は八分休符ひとつと三連音符ではない通常の八分音符eSlが[旋律のアウフタクトとして]弾かれるT78~79ピアノ(下)2拍目と4拍目のレガートは三連音符最初のふたつの八分音符のみにつけられる

T84コントラバス小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T87~88管楽器小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T91ピアノ(下)ポルタートを付加またconPedをPedに変更[訳注2小節間ペダルを踏み変えない]T93~95クラリネットとファゴット反復される同じ高さの音はポルタートでありスタッカートではないT100~101ピアノ(上)手稿では2拍目にあるターンつき四分音符の代わりに複付点のリズム(該当小節のクラリネット4拍目を参照)となっている(この方がオリジナルエディションに印刷されているターンより美しく群くdeg)

T103~106ピアノピアノパートにはl0colbasso[continuo]の指示があるここで通奏低音の指示にしたがって重奏するのは良好な結果をもたらすT116ピアノdconPedではなくd6Pedであり楽章最後までペダルは踏み変えられない

- 12 -

第3楽章Alleqroscherzandoテンポ指示のうち66scherzandoはオリジナルエディションに印刷されており信頼すべき表記である

T91517ピアノ括弧に入れられている==二二と=を削除T59~64ピアノすべての強弱記号を削除T73ピアノamppを削除]T77~81ピアノ4crescと$Ifを削除T88ピアノmf を削除T92ピアノ(下)冒頭のバス音はもちろんIBの誤りであるT96ピアノ(上)冒頭のes2は四分音符となるべきだろうT148~151ピアノT148の0lconPedはPedでありT151三つ目の八分音符まで踏み変えないT166~170ピアノcrescとfを削除[T226ピアノlを削除]T232~236ピアノ印刷されている賊弱記号を削除T248第1オーボエふたつ目の八分音符hlの前に括弧入りの臨時記号フラット[b]を補充MT354ピアノampfを削除]T355~367ヒアノすべての06sfを削除T372~378ピアノpidfとIlff を削除T393ピアノcIescを削除T397ピアノffを削除T485ピアノオイレンブルク社のスコアに掲載されているカデンツはベートーヴェンのものではなく演奏すべきではないT558~559ピアノ(上)手稿にある表記く譜例4gtが好ましい印刷されている表記を受け入れる場合でもレガートは小節冒頭の最初のふたつの十六分音符e3-d3だけにつけられるべきだろう

圭倉合坐奪渭558ハ

毎 一 周

首<譜例4>-13-

ピアノ協奏曲第2番作品19

1801年4月22日にベートーヴェンはライプツイヒの出版社ホフマイスターFAHoffmeisterへ以下の書簡を書いている

<私の所有物がいつもきちんと整理整頓されていないことはおそらく

私が恥じるべき唯一のこととはいえ他人にはかわってもらえないのですたとえばいつもの手順に従ったせいで総譜にはピアノパー1がまだ書き込まれておらずそれは今やっと私が書きあげ急いだので乱筆の楽譜ですがこの手紙に添えてお届けします>

ベートーヴェンの書簡の内容には何の誇張もない手稿の総譜ピアノパートはスケッチのような楽想が記入されているのみなどおそるべき状態にある書簡で述べられている自筆のピアノパート譜は長いこと閲覧できなかったがほぼ四半世紀前よりボンのベートーヴェンハウスに所蔵されるようになったしかし当館の研究者と私以外まだ誰もこの貴重な資料を調査した者はいないようだこのパート譜にもオーケストラのトウッテイの声部がピアニストのオリエンテーションのために書き込まれている(Direktionsstimme)

第1楽章AlleOroconbrioT99ピアノlcrescはベートーヴェンによるT101ピアノ最後の和音にくさび形のスタッカートを補充T114ピアノ0pianoを補充T131第2ヴァイオリンfpを削除T134第2ヴァイオリン四つ目の八分音符はClであるT142ピアノ(下)左手の小節冒頭の八分音符ふたつを削除し四分休符に変更するT145ピアノ(上)前打音e2は四分音符であるT149ピアノ手稿ではここでppとなっているoT147のppは再現部T331と比較して誤りと思われるT199チェロとコントラバス最後の音はf音であるT218ピアノ小節の中央部[3拍目あたり]にcresc9を補充

-14-

T222ピアノ[dim]を補充T237ピアノ(上)小節冒頭のeSlはスタッカートであるT262264ピアノひとつ目と五つめの八分音符は譜尾が独立して記されているT263ピアノ(上)小節冒頭の八分音符は譜尾が独立して記されているT275ピアノ(下)三つ目の四分音符はスタッカートである[T276も同様]T281ピアノペダルはT285の最初の音まで踏み変えないT285ピアノ(下)小節冒頭にはバス音Bが書かれているT321ピアノ(上)スラーは次の小節冒頭の四分音符C2まで延長されるT329ピアノ(上)ここのトリルに前打音は書かれていないT337ピアノ=二二を補充T339~340ピアノ(下)すべてのスラーを削除T368~369ピアノ左手の四分音符にスタッカートはつけられていないT370以|朧はすべての四分音符にくさび形のスタッカートがつけられているカデンツベートーヴェンハウスに所蔵されている手稿は[協奏llll本体よりも]ずっと後の時点において創作されたものであるスケッチ風に書かれており各所において以下に挙げるリズムの整術と強弱の補充が必要である⑫

T43984拍目は付点のリズムになる(T8402を参照)T5399(上)右手の開始部に[flを補充]T6400(上)4拍目に[p]を補充T10404(上)上声部冒頭に[l1を補充T13407(上)ふたつ目の音符g2にはbがつけられている(geS2音が弾かれる)これは新全集でも欠落しているT24418小節後半のふたつの和音にはくさび形のスタッカートがつけられるT28422(上)スラーは2拍目から開始されるT35~36429~430(上)T35429よりT36430冒頭の八分音符までスラーを補充

⑫訳注カデンツ冒頭からと第1楽章を通じての小節番号を併記した

-15-

T46440(下)冒頭の音は複付点になっており続く音dlは十六分音符となるT49443(下)すべてを付点リズムで弾くべきである

第2楽章AdaqioT10第1ヴァイオリン冒頭のスラーはふたつ目の三十二分音符から開始されている2拍目のスラーは第2バイオリンとともにalまでしか架けられていない

T16~17ピアノピアノソロの最後はT17冒頭の音も含めてpで演奏されるT17の左手は四分音符で書かれているが右手もそれに合わせるべきだろう手稿においてT17のピアノパート[右手]には八分音符2拍目より第1バイオリンの音がtuttiと0fとともに[ピアニストのオリエンテーション用声部Di=Iktionsslimmeとして]記入されているがこれはもちろんオーケストラのものであるT27ピアノ(下)スラーは存在しない[T29~30のように]小節全体に架かるものを補充すべきだろうT30ピアノ(上)小節冒頭の前打音は三十二分音符fのみであるb2はオリジナルエディションを制作した職人の独断によるものに違いないT32~33チェロとコントラバス2拍目はヴィオラと同じ三十二分音符の音列が演奏される[タイの後に同じ音を再度弾く]T37ピアノ(上)2拍目の和音から小節最後までのスラーを補充T40ピアノ(上)2拍目の右手はb2からeS2までスラーが架けられるT47ピアノ(上)小節冒頭の音への装飾音の書法は誤りでT39と同様のものが考えられていたに違いないT56ピアノ(上)2拍目以降の十六分音符に架けられるレガートはd2からとなるT58ピアノcrescは左手の八分音符につけられているT60ピアノ(下)3拍目冒頭に八分休符を補充しかし左手最後の和音は論理的にはチェロコントラバスと同時に弾かれるべきでピアノパートの誤りと考えられる

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T63ピアノ2拍目付近に[cresc]が補充されるべきであるT65ピアノ(上)1拍目ふたつ目から六つ目の十六分音符にはスラーなしのくさび形スタッカートがつけられているしたがってこの小節の1拍目には[flが補充されるべきだろう

T76~80ピアノベートーヴェンはこの小節を誤って八分の三拍子つまり通常の半分の音価の音符で誉いてしまったオリジナルエディション制作の際職人がこの誤りを修正したものの2拍目の三十二分音符だけはそのままにしてしまったもちろんこの音も十六分音符として演奏されるべきである手稿く譜例5>を参照

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<譜例5>ピアノ協奏llil第2番第2楽章T73~84(手稿)

T82ピアノ(上)2拍目の音符につけられている前打音のうち2番目の音es2を削除手稿にはオクターブ下blの前打音しか書かれていない現代のピアノでもT74からT83までペダルが踏み続けられる

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T84ピアノconsordinoの指示はベートーヴェンによって後に加えられたものだが思い違いとも考えられる[これ如何によってT83にconsordino(Rダルを離す)の指示を補充すべきかの判断が必要となる]ひょっとすると[T74から踏み続けられている]ペダルはT86の最後まで保持されるべきなのかも知れない

第3楽章Alleqromolto (これがオリジナルの語順である)Tl~ピアノ冒頭は楽譜通りでT8にcrescは書かれていないT27ピアノ(上)手稿もこのように書かれているがT199と比較せよT55ピアノ(上)小節後半のフレージングをT51と同じに修正T139ピアノ(上)四分音符にくさび形のスタッカートを補充T142ピアノ(上)4番目と5番目の八分音符にくさび形のスタッカートを補充T143ピアノ(上)T141と同じフレージングが補充されるべきであるT165ピアノ小節冒頭の音は左右ともスタッカートT199ピアノ(下)冒頭に四分音符fとそれに続く八分休符を補充T205ピアノ(下)冒頭に四分音符のバスesを補充T278ピアノ(上)冒頭のblはオーケストラを示した音符(DilektionsStimme)の可能性がある(手稿ではここに休符が書かれている)T293~297ピアノパー1にはくさび形のスタッカートがつけられているが手稿によればヴィオラチェロとコントラバスはその限りではないピアノパートヘの対比としてベートーヴェンはおそらく弦楽器にはレガートを考えていたのだろうT316ピアノ手稿ではすでにこの小節にppがありさらにT317にも4Gppが書かれている

ピアノ協奏曲第3番作品37

衆知の通りこの協奏曲が完成するまでには長い時間が饗やされている最初のコンセプトが考えられたのは1797年頃だがその後1804年に出版されるまでの間にはベートーヴェンの作曲スタイルが大きな変貌をとげたと同時に楽器その

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ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

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T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

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<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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<譜例7>

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カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

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次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

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壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

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<譜例lOcgt

アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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$唾一lsquo廟喬払是 屋童酉 L-』一 芸等= 寺室 中

<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

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両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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<譜例12gt

多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

hellipIU eSp r e s s o胸 口 3 3 = a ) =(

<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

畢葬犀E醗酵ldquoハ

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

丑二に畠il 口 凸 L - l - - 各 戸 ー - 憲斎憲号一

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<譜例15agt

演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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<譜例15bgt

-40-

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<譜例15cgt

レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

一一

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

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奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17agt

塁8--- - - - - - -ニーーーーニ- - - - - - rsquo

<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 7: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

楽章の第140小節見受けられる

終わりから7小節および第2楽章の第80小節く譜例labgtに

呈 出 色 一 か

一 言 弓

烏1嘆霊 A Je 今立 = 丑臣 = - 並 ざ 宗

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<譜例lagtピアノ協奏IIII第3番のオリジナルエディション(第2楽章T77~終結部)

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<譜例 l b gtピアノ協奏曲第3番第2楽章T78~80

- 6 -

誤って削除されほとんどの印刷楽譜で休符となっているソロパートの開始音はピアノ協奏曲第4番第1楽章第253小節く譜例2agtおよび第3楽章の第402小節く譜例3agtに見受けられる

252

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<譜例2agtピアノ協奏曲第4番第1楽章T252~254

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<譜例2bgtピアノ協奏曲第4番第1楽章T253~256(オリジナルエディション)

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<譜例3agtピアノ協奏曲第4番第3楽章T400~403

オリジナルエディション印刷用に制作されベートーヴェン自身による書き込みがある協奏曲第4番の筆写譜(9)<譜例3bgtを参照するとここに誤解の余地

(9)ベートーヴエンは協奏曲第4稀の初版識を出版する際にベートーヴエン自身が作成したのではない筆写譜を使用しここに自雛で変更酬項を記入したこれらベートーヴェン自身の筆跡による補足の中にはオリジナルエディション出版後になってから記入されたと推測されるものも含まれている現在はウィーン楽友協会の賓料館ArchivderGesellschaftderMusikfreundeinWiellに所蔵されている

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戸面口

はないことがわかるオリジナルエディションではこの音符そのものは正確に刻印されているが0ISoloの単語が不注意から本来より右寄りに印刷されてしまったく譜例3cgtこのためそれ以降の時代の楽譜編纂者は何の検証も行わないまま単に冒頭のバス音を削除しバスなしの不完全な属七和音が生じることになった今日に至るまでこの不完全な音響がほとんどのピアニストによって律儀に踏襲されているのである

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<譜例3bgtピアノ協奏曲第4番第3楽章T401~404(錘写譜)

一口一口一峰》一一志内 山 『国1畠A皐室

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<譜例3cgtピアノ協奏llll第4番第3楽章T396~405(オリジナルエディション)

近年の印刷楽譜ではベートーヴェンのペダル指示に関しても誤った解釈力端行している1803年頃までウィーンのピアノに足のつま先で操作するペダルはついておらず

膝レバーを押し上げる方式によって得られるペダル効果が一般的だったしたがってベートーヴェンは開放弦の響きを要求する際に6lPedalとの単語を使用できずsenzasordino(あるいはsordini)とconsordino(同)という表現を使用せざるを得なかったほとんどの印刷楽譜でこのsenzaSordini(ダンパーなしで)という記述はconPedaleということばに置き換えられている6conPedの厳密な意味

は「自由にペダルを使い必要に応じて踏み変えるように」ということである

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ベートーヴェンの意図は明らかに異なっており「ペダルを踏み変えずあえて混然とした音響を作り出す」ことにあるベートーヴェンに師事していたカールチェルニーCarlCzemyが伝えるように(10ベートーヴェンのピアノ作品は基本

的に「ペダルを使用して」演奏すべきであり「特別なペダル用法が必要な場合」のみベートーヴェンはそれを楽譜に普き込んだのである

各ピアノ協奏曲における異稿一覧

訳注「T」はTakI(小節)の略である「ピアノ(上)」「ピアノ(下)」はピアノパートの大譜表における上の段下の段を示す単に「削除」と指示されているものはそれが原典漬料に含まれていないことを意味しバドシーラースコダの演奏家としての個人的趣味に帰するものではない「補充」「付加」に関しても同様だが[]つきの指示(強弱記号など)は「典拠資料には含まれていないが音楽的見地から推測して補充されるべきもの」を意味する

ピアノ協奏曲第1番作品15

第1楽章AlleOroconbrioT11第1ヴァイオリン初版譜に八分音符として印刷されている前打音は短く奏されるべきだろうすでに初期の作品において長く弾かれるべき前打音をベートーヴェンは普通の大きさの音符で記しているT118~119122~123ピアノ(下)低音部の音列は通奏低音を意味しオーケストラと重奏しなくても良いT187ピアノ(上)最初の音符に$[sfP]を補充すべきであるT192194etc第1と第2ヴァイオリントリルの終結に後打音を付加(T196と198の管楽器と同様に[sfZ]も補充すべきだろう)

T212ピアノ4拍目にsfを付加

(10「[ベートーヴェンは]自作の出版譜に瞥き込まれたものよりかなり多くペダルを使っていました」(カールツェルニー『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法」(パウルバドゥーラースコダ編注釈古荘隆保訳全音楽譜出版社34頁)より原著はCarlCzernydecgeVoノ8dejscβノィβldquoノノi0lescノどKノaWenlerkeherausgegebenundkommcnlierIvonPaulBadura=SkodaUniversalEdition133401963WienS22)

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T235ピアノいかなる原典資料にもトリルの前打音は記載されていないT292~306管楽器すべての連打音[訳注3拍目と4拍目の四分音符]にはポルタートを補充すべきである[くさび形のスタッカートを点のスタッカートに変更しスラーを加える]T72~75のオーボエとファゴットを参照T318~319(T327)ピアノ(下)手稿における左手の音型はT317と同じであるオリジナルエディションに印刷されているものはミスプリントの可能性が大きいT327も同様T335~346ピアノconPedではなくPedでありペダルは踏み変えない特にT340~345の間でペダルを踏み続けることが大切であるT334~335ピアノオクターブのグリッサンドはベートーヴェンによるもの手の小さい人はチェルニーの『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法』(前掲書原著105頁和書148頁)で紹介されている単音のグリッサンドでも術わないいずれにせよオーケストラも含めた音楽全体を支えるフォルテのバス音となるT345の1Gは省略してはならないT391~393ピアノ(下)左手のバス音は通奏低音の残津であり音価の違い(四分音符と八分音符)に意味はないT418ピアノdimを削除T451ピアノ(下)ほとんど演奏不可能に近いバス音glは削除カデンツクラクはカデンツの編纂用底本として筆写譜しか使用できなかったので今日ではベートーヴェン新全集(BeethovenWerkeAbteilungVIIBand7KadenzenzuKlavierkonzertenHenle-VerlagMUnchen)を優先すべきだが(1Dクラクの編纂は大筋で賞賛に値する最初の未完のカデンツは独創的ふたつめはその短さから協奏曲に一番なじみやすく三つめはアイデアにあふれているものの長すぎる-時間的に長いというよりはT100[オイレンブルクP118の2段目目頭]にあるd2のトリル(ハ長調の属調として機能する)からかなり稚拙にカデンツ終結部を支配するト長調で提示される主題に連結されるもののその後

⑪興味のある人へチューリヒのオイレンブルク社VerlagEulenburgよりクルトオイレンブルクKurtEulenburg[オイレンブルク社創始者エルンストの息子父を継いで社の単独所有者となる]生誕百年を記念して1979年にベートーヴェンの全カデンツのファクシミリ版が出版された

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の秩序が整っていないこのような手法は出版されたベートーヴェンの作品中にほとんど見受けられないこの未公開のカデンツはベートーヴェンがおおむね自分用の覚え書きとして脳裏に浮かび指のおもむくままに即興したアイデアを紙に記しておいたものだろうこれを出版するとなればベートーヴェンは上述の問題点を含めてさらに推敲し改良したと考えられるクラクの提案する短縮案はベートーヴェンが行ったと想像される作業に沿ったものとして真蟄に評価されるべきであるT467469管楽器sf 直後に[p]を補充すべきだろう

第2楽章LarqoT5ピアノ括弧に入れられているcrescは削除T6ピアノ(上)小節冒頭にある三つの三十二分音符からなる前打音はオリジナルエディションに印刷されているものの手稿には含まれていないため省略可能であるT19~26管楽器と弦楽器ポルタートに使用されるのは点のスタッカートでくさび形ではないT26の第2ヴァイオリンパートにあるポルタートはミスプリントで2個目から4個目の八分音符につけられる[訳注T25の第1ヴァイオリンを参照]T27全楽器Iffはすべての楽器においてふたつ目の八分音符からとなるT30~31第1クラリネット小節後半の八分音符はポルタートでなく最後ふたつの八分音符がレガートとなるそれ以外の管楽器は[第2クラリネットも含めて]3音ともポルタート(点のスタッカートにレガート)であるT33ピアノ(上)トリルは後打音とともに終結されるべきだろうT35ピアノ(上)ターンはオリジナルエディションのみに印刷されており手稿に含まれていないこのような装飾音はベートーヴェン初期のスタイルになじまないT50ピアノ小節後半のペダルはconPedではなくPedでありT52の最後まで踏み変えてはならない(現代のピアノでも魅力的な音響となる)T54ピアノ(上)八分音符の前打音as】をこのように旧弊な方法で記譜するのは驚きに値する(オリジナルエディション制作の際の誤りとも考えられる)T55ピアノ(上)3拍目の音は四分音符blで[八分音符glは]ミスプ

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リントであるT57ピアノ(上)T5と同様の内声を補充するがこの小節では四分音符となるT60~74チェロとコントラバスオーケストラのバスを担うこのパートはオイレンブルク社のスコアにおいて正しく印刷されている鯖ltべきことにこのパートはベートーヴェン旧全集において欠落しているため旧全集をもとに作られたほとんどのオーケストラ用パート譜セットでも同様に欠落しており是非とも補充されなければならないT67~73ピアノ(下)ibassibenmarcatoの指示を補充T68ピアノ(上)小節最後のふたつの八分音符es(三連音符)の代わりにこの拍は八分休符ひとつと三連音符ではない通常の八分音符eSlが[旋律のアウフタクトとして]弾かれるT78~79ピアノ(下)2拍目と4拍目のレガートは三連音符最初のふたつの八分音符のみにつけられる

T84コントラバス小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T87~88管楽器小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T91ピアノ(下)ポルタートを付加またconPedをPedに変更[訳注2小節間ペダルを踏み変えない]T93~95クラリネットとファゴット反復される同じ高さの音はポルタートでありスタッカートではないT100~101ピアノ(上)手稿では2拍目にあるターンつき四分音符の代わりに複付点のリズム(該当小節のクラリネット4拍目を参照)となっている(この方がオリジナルエディションに印刷されているターンより美しく群くdeg)

T103~106ピアノピアノパートにはl0colbasso[continuo]の指示があるここで通奏低音の指示にしたがって重奏するのは良好な結果をもたらすT116ピアノdconPedではなくd6Pedであり楽章最後までペダルは踏み変えられない

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第3楽章Alleqroscherzandoテンポ指示のうち66scherzandoはオリジナルエディションに印刷されており信頼すべき表記である

T91517ピアノ括弧に入れられている==二二と=を削除T59~64ピアノすべての強弱記号を削除T73ピアノamppを削除]T77~81ピアノ4crescと$Ifを削除T88ピアノmf を削除T92ピアノ(下)冒頭のバス音はもちろんIBの誤りであるT96ピアノ(上)冒頭のes2は四分音符となるべきだろうT148~151ピアノT148の0lconPedはPedでありT151三つ目の八分音符まで踏み変えないT166~170ピアノcrescとfを削除[T226ピアノlを削除]T232~236ピアノ印刷されている賊弱記号を削除T248第1オーボエふたつ目の八分音符hlの前に括弧入りの臨時記号フラット[b]を補充MT354ピアノampfを削除]T355~367ヒアノすべての06sfを削除T372~378ピアノpidfとIlff を削除T393ピアノcIescを削除T397ピアノffを削除T485ピアノオイレンブルク社のスコアに掲載されているカデンツはベートーヴェンのものではなく演奏すべきではないT558~559ピアノ(上)手稿にある表記く譜例4gtが好ましい印刷されている表記を受け入れる場合でもレガートは小節冒頭の最初のふたつの十六分音符e3-d3だけにつけられるべきだろう

圭倉合坐奪渭558ハ

毎 一 周

首<譜例4>-13-

ピアノ協奏曲第2番作品19

1801年4月22日にベートーヴェンはライプツイヒの出版社ホフマイスターFAHoffmeisterへ以下の書簡を書いている

<私の所有物がいつもきちんと整理整頓されていないことはおそらく

私が恥じるべき唯一のこととはいえ他人にはかわってもらえないのですたとえばいつもの手順に従ったせいで総譜にはピアノパー1がまだ書き込まれておらずそれは今やっと私が書きあげ急いだので乱筆の楽譜ですがこの手紙に添えてお届けします>

ベートーヴェンの書簡の内容には何の誇張もない手稿の総譜ピアノパートはスケッチのような楽想が記入されているのみなどおそるべき状態にある書簡で述べられている自筆のピアノパート譜は長いこと閲覧できなかったがほぼ四半世紀前よりボンのベートーヴェンハウスに所蔵されるようになったしかし当館の研究者と私以外まだ誰もこの貴重な資料を調査した者はいないようだこのパート譜にもオーケストラのトウッテイの声部がピアニストのオリエンテーションのために書き込まれている(Direktionsstimme)

第1楽章AlleOroconbrioT99ピアノlcrescはベートーヴェンによるT101ピアノ最後の和音にくさび形のスタッカートを補充T114ピアノ0pianoを補充T131第2ヴァイオリンfpを削除T134第2ヴァイオリン四つ目の八分音符はClであるT142ピアノ(下)左手の小節冒頭の八分音符ふたつを削除し四分休符に変更するT145ピアノ(上)前打音e2は四分音符であるT149ピアノ手稿ではここでppとなっているoT147のppは再現部T331と比較して誤りと思われるT199チェロとコントラバス最後の音はf音であるT218ピアノ小節の中央部[3拍目あたり]にcresc9を補充

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T222ピアノ[dim]を補充T237ピアノ(上)小節冒頭のeSlはスタッカートであるT262264ピアノひとつ目と五つめの八分音符は譜尾が独立して記されているT263ピアノ(上)小節冒頭の八分音符は譜尾が独立して記されているT275ピアノ(下)三つ目の四分音符はスタッカートである[T276も同様]T281ピアノペダルはT285の最初の音まで踏み変えないT285ピアノ(下)小節冒頭にはバス音Bが書かれているT321ピアノ(上)スラーは次の小節冒頭の四分音符C2まで延長されるT329ピアノ(上)ここのトリルに前打音は書かれていないT337ピアノ=二二を補充T339~340ピアノ(下)すべてのスラーを削除T368~369ピアノ左手の四分音符にスタッカートはつけられていないT370以|朧はすべての四分音符にくさび形のスタッカートがつけられているカデンツベートーヴェンハウスに所蔵されている手稿は[協奏llll本体よりも]ずっと後の時点において創作されたものであるスケッチ風に書かれており各所において以下に挙げるリズムの整術と強弱の補充が必要である⑫

T43984拍目は付点のリズムになる(T8402を参照)T5399(上)右手の開始部に[flを補充]T6400(上)4拍目に[p]を補充T10404(上)上声部冒頭に[l1を補充T13407(上)ふたつ目の音符g2にはbがつけられている(geS2音が弾かれる)これは新全集でも欠落しているT24418小節後半のふたつの和音にはくさび形のスタッカートがつけられるT28422(上)スラーは2拍目から開始されるT35~36429~430(上)T35429よりT36430冒頭の八分音符までスラーを補充

⑫訳注カデンツ冒頭からと第1楽章を通じての小節番号を併記した

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T46440(下)冒頭の音は複付点になっており続く音dlは十六分音符となるT49443(下)すべてを付点リズムで弾くべきである

第2楽章AdaqioT10第1ヴァイオリン冒頭のスラーはふたつ目の三十二分音符から開始されている2拍目のスラーは第2バイオリンとともにalまでしか架けられていない

T16~17ピアノピアノソロの最後はT17冒頭の音も含めてpで演奏されるT17の左手は四分音符で書かれているが右手もそれに合わせるべきだろう手稿においてT17のピアノパート[右手]には八分音符2拍目より第1バイオリンの音がtuttiと0fとともに[ピアニストのオリエンテーション用声部Di=Iktionsslimmeとして]記入されているがこれはもちろんオーケストラのものであるT27ピアノ(下)スラーは存在しない[T29~30のように]小節全体に架かるものを補充すべきだろうT30ピアノ(上)小節冒頭の前打音は三十二分音符fのみであるb2はオリジナルエディションを制作した職人の独断によるものに違いないT32~33チェロとコントラバス2拍目はヴィオラと同じ三十二分音符の音列が演奏される[タイの後に同じ音を再度弾く]T37ピアノ(上)2拍目の和音から小節最後までのスラーを補充T40ピアノ(上)2拍目の右手はb2からeS2までスラーが架けられるT47ピアノ(上)小節冒頭の音への装飾音の書法は誤りでT39と同様のものが考えられていたに違いないT56ピアノ(上)2拍目以降の十六分音符に架けられるレガートはd2からとなるT58ピアノcrescは左手の八分音符につけられているT60ピアノ(下)3拍目冒頭に八分休符を補充しかし左手最後の和音は論理的にはチェロコントラバスと同時に弾かれるべきでピアノパートの誤りと考えられる

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T63ピアノ2拍目付近に[cresc]が補充されるべきであるT65ピアノ(上)1拍目ふたつ目から六つ目の十六分音符にはスラーなしのくさび形スタッカートがつけられているしたがってこの小節の1拍目には[flが補充されるべきだろう

T76~80ピアノベートーヴェンはこの小節を誤って八分の三拍子つまり通常の半分の音価の音符で誉いてしまったオリジナルエディション制作の際職人がこの誤りを修正したものの2拍目の三十二分音符だけはそのままにしてしまったもちろんこの音も十六分音符として演奏されるべきである手稿く譜例5>を参照

〆rsquo 一 一 一L壁ご江豐r_トーニーとエユーー

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9画6一睡岬一ケ一一幸一一一一一一一

一一一一一 I

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<譜例5>ピアノ協奏llil第2番第2楽章T73~84(手稿)

T82ピアノ(上)2拍目の音符につけられている前打音のうち2番目の音es2を削除手稿にはオクターブ下blの前打音しか書かれていない現代のピアノでもT74からT83までペダルが踏み続けられる

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T84ピアノconsordinoの指示はベートーヴェンによって後に加えられたものだが思い違いとも考えられる[これ如何によってT83にconsordino(Rダルを離す)の指示を補充すべきかの判断が必要となる]ひょっとすると[T74から踏み続けられている]ペダルはT86の最後まで保持されるべきなのかも知れない

第3楽章Alleqromolto (これがオリジナルの語順である)Tl~ピアノ冒頭は楽譜通りでT8にcrescは書かれていないT27ピアノ(上)手稿もこのように書かれているがT199と比較せよT55ピアノ(上)小節後半のフレージングをT51と同じに修正T139ピアノ(上)四分音符にくさび形のスタッカートを補充T142ピアノ(上)4番目と5番目の八分音符にくさび形のスタッカートを補充T143ピアノ(上)T141と同じフレージングが補充されるべきであるT165ピアノ小節冒頭の音は左右ともスタッカートT199ピアノ(下)冒頭に四分音符fとそれに続く八分休符を補充T205ピアノ(下)冒頭に四分音符のバスesを補充T278ピアノ(上)冒頭のblはオーケストラを示した音符(DilektionsStimme)の可能性がある(手稿ではここに休符が書かれている)T293~297ピアノパー1にはくさび形のスタッカートがつけられているが手稿によればヴィオラチェロとコントラバスはその限りではないピアノパートヘの対比としてベートーヴェンはおそらく弦楽器にはレガートを考えていたのだろうT316ピアノ手稿ではすでにこの小節にppがありさらにT317にも4Gppが書かれている

ピアノ協奏曲第3番作品37

衆知の通りこの協奏曲が完成するまでには長い時間が饗やされている最初のコンセプトが考えられたのは1797年頃だがその後1804年に出版されるまでの間にはベートーヴェンの作曲スタイルが大きな変貌をとげたと同時に楽器その

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ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

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T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

瀞5含鼻盧農_今屡雲需{ 一

一一一妾一一一一一一一一

一一雪一一一一戸一一戸一一一一一1

<譜例7>

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カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

-29-

1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

-32-

次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

-33-

第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

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ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

-36-

<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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<譜例15cgt

レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17agt

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 8: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

誤って削除されほとんどの印刷楽譜で休符となっているソロパートの開始音はピアノ協奏曲第4番第1楽章第253小節く譜例2agtおよび第3楽章の第402小節く譜例3agtに見受けられる

252

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<譜例2agtピアノ協奏曲第4番第1楽章T252~254

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<譜例2bgtピアノ協奏曲第4番第1楽章T253~256(オリジナルエディション)

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<譜例3agtピアノ協奏曲第4番第3楽章T400~403

オリジナルエディション印刷用に制作されベートーヴェン自身による書き込みがある協奏曲第4番の筆写譜(9)<譜例3bgtを参照するとここに誤解の余地

(9)ベートーヴエンは協奏曲第4稀の初版識を出版する際にベートーヴエン自身が作成したのではない筆写譜を使用しここに自雛で変更酬項を記入したこれらベートーヴェン自身の筆跡による補足の中にはオリジナルエディション出版後になってから記入されたと推測されるものも含まれている現在はウィーン楽友協会の賓料館ArchivderGesellschaftderMusikfreundeinWiellに所蔵されている

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戸面口

はないことがわかるオリジナルエディションではこの音符そのものは正確に刻印されているが0ISoloの単語が不注意から本来より右寄りに印刷されてしまったく譜例3cgtこのためそれ以降の時代の楽譜編纂者は何の検証も行わないまま単に冒頭のバス音を削除しバスなしの不完全な属七和音が生じることになった今日に至るまでこの不完全な音響がほとんどのピアニストによって律儀に踏襲されているのである

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<譜例3bgtピアノ協奏曲第4番第3楽章T401~404(錘写譜)

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<譜例3cgtピアノ協奏llll第4番第3楽章T396~405(オリジナルエディション)

近年の印刷楽譜ではベートーヴェンのペダル指示に関しても誤った解釈力端行している1803年頃までウィーンのピアノに足のつま先で操作するペダルはついておらず

膝レバーを押し上げる方式によって得られるペダル効果が一般的だったしたがってベートーヴェンは開放弦の響きを要求する際に6lPedalとの単語を使用できずsenzasordino(あるいはsordini)とconsordino(同)という表現を使用せざるを得なかったほとんどの印刷楽譜でこのsenzaSordini(ダンパーなしで)という記述はconPedaleということばに置き換えられている6conPedの厳密な意味

は「自由にペダルを使い必要に応じて踏み変えるように」ということである

- 8 -

ベートーヴェンの意図は明らかに異なっており「ペダルを踏み変えずあえて混然とした音響を作り出す」ことにあるベートーヴェンに師事していたカールチェルニーCarlCzemyが伝えるように(10ベートーヴェンのピアノ作品は基本

的に「ペダルを使用して」演奏すべきであり「特別なペダル用法が必要な場合」のみベートーヴェンはそれを楽譜に普き込んだのである

各ピアノ協奏曲における異稿一覧

訳注「T」はTakI(小節)の略である「ピアノ(上)」「ピアノ(下)」はピアノパートの大譜表における上の段下の段を示す単に「削除」と指示されているものはそれが原典漬料に含まれていないことを意味しバドシーラースコダの演奏家としての個人的趣味に帰するものではない「補充」「付加」に関しても同様だが[]つきの指示(強弱記号など)は「典拠資料には含まれていないが音楽的見地から推測して補充されるべきもの」を意味する

ピアノ協奏曲第1番作品15

第1楽章AlleOroconbrioT11第1ヴァイオリン初版譜に八分音符として印刷されている前打音は短く奏されるべきだろうすでに初期の作品において長く弾かれるべき前打音をベートーヴェンは普通の大きさの音符で記しているT118~119122~123ピアノ(下)低音部の音列は通奏低音を意味しオーケストラと重奏しなくても良いT187ピアノ(上)最初の音符に$[sfP]を補充すべきであるT192194etc第1と第2ヴァイオリントリルの終結に後打音を付加(T196と198の管楽器と同様に[sfZ]も補充すべきだろう)

T212ピアノ4拍目にsfを付加

(10「[ベートーヴェンは]自作の出版譜に瞥き込まれたものよりかなり多くペダルを使っていました」(カールツェルニー『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法」(パウルバドゥーラースコダ編注釈古荘隆保訳全音楽譜出版社34頁)より原著はCarlCzernydecgeVoノ8dejscβノィβldquoノノi0lescノどKノaWenlerkeherausgegebenundkommcnlierIvonPaulBadura=SkodaUniversalEdition133401963WienS22)

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T235ピアノいかなる原典資料にもトリルの前打音は記載されていないT292~306管楽器すべての連打音[訳注3拍目と4拍目の四分音符]にはポルタートを補充すべきである[くさび形のスタッカートを点のスタッカートに変更しスラーを加える]T72~75のオーボエとファゴットを参照T318~319(T327)ピアノ(下)手稿における左手の音型はT317と同じであるオリジナルエディションに印刷されているものはミスプリントの可能性が大きいT327も同様T335~346ピアノconPedではなくPedでありペダルは踏み変えない特にT340~345の間でペダルを踏み続けることが大切であるT334~335ピアノオクターブのグリッサンドはベートーヴェンによるもの手の小さい人はチェルニーの『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法』(前掲書原著105頁和書148頁)で紹介されている単音のグリッサンドでも術わないいずれにせよオーケストラも含めた音楽全体を支えるフォルテのバス音となるT345の1Gは省略してはならないT391~393ピアノ(下)左手のバス音は通奏低音の残津であり音価の違い(四分音符と八分音符)に意味はないT418ピアノdimを削除T451ピアノ(下)ほとんど演奏不可能に近いバス音glは削除カデンツクラクはカデンツの編纂用底本として筆写譜しか使用できなかったので今日ではベートーヴェン新全集(BeethovenWerkeAbteilungVIIBand7KadenzenzuKlavierkonzertenHenle-VerlagMUnchen)を優先すべきだが(1Dクラクの編纂は大筋で賞賛に値する最初の未完のカデンツは独創的ふたつめはその短さから協奏曲に一番なじみやすく三つめはアイデアにあふれているものの長すぎる-時間的に長いというよりはT100[オイレンブルクP118の2段目目頭]にあるd2のトリル(ハ長調の属調として機能する)からかなり稚拙にカデンツ終結部を支配するト長調で提示される主題に連結されるもののその後

⑪興味のある人へチューリヒのオイレンブルク社VerlagEulenburgよりクルトオイレンブルクKurtEulenburg[オイレンブルク社創始者エルンストの息子父を継いで社の単独所有者となる]生誕百年を記念して1979年にベートーヴェンの全カデンツのファクシミリ版が出版された

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の秩序が整っていないこのような手法は出版されたベートーヴェンの作品中にほとんど見受けられないこの未公開のカデンツはベートーヴェンがおおむね自分用の覚え書きとして脳裏に浮かび指のおもむくままに即興したアイデアを紙に記しておいたものだろうこれを出版するとなればベートーヴェンは上述の問題点を含めてさらに推敲し改良したと考えられるクラクの提案する短縮案はベートーヴェンが行ったと想像される作業に沿ったものとして真蟄に評価されるべきであるT467469管楽器sf 直後に[p]を補充すべきだろう

第2楽章LarqoT5ピアノ括弧に入れられているcrescは削除T6ピアノ(上)小節冒頭にある三つの三十二分音符からなる前打音はオリジナルエディションに印刷されているものの手稿には含まれていないため省略可能であるT19~26管楽器と弦楽器ポルタートに使用されるのは点のスタッカートでくさび形ではないT26の第2ヴァイオリンパートにあるポルタートはミスプリントで2個目から4個目の八分音符につけられる[訳注T25の第1ヴァイオリンを参照]T27全楽器Iffはすべての楽器においてふたつ目の八分音符からとなるT30~31第1クラリネット小節後半の八分音符はポルタートでなく最後ふたつの八分音符がレガートとなるそれ以外の管楽器は[第2クラリネットも含めて]3音ともポルタート(点のスタッカートにレガート)であるT33ピアノ(上)トリルは後打音とともに終結されるべきだろうT35ピアノ(上)ターンはオリジナルエディションのみに印刷されており手稿に含まれていないこのような装飾音はベートーヴェン初期のスタイルになじまないT50ピアノ小節後半のペダルはconPedではなくPedでありT52の最後まで踏み変えてはならない(現代のピアノでも魅力的な音響となる)T54ピアノ(上)八分音符の前打音as】をこのように旧弊な方法で記譜するのは驚きに値する(オリジナルエディション制作の際の誤りとも考えられる)T55ピアノ(上)3拍目の音は四分音符blで[八分音符glは]ミスプ

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リントであるT57ピアノ(上)T5と同様の内声を補充するがこの小節では四分音符となるT60~74チェロとコントラバスオーケストラのバスを担うこのパートはオイレンブルク社のスコアにおいて正しく印刷されている鯖ltべきことにこのパートはベートーヴェン旧全集において欠落しているため旧全集をもとに作られたほとんどのオーケストラ用パート譜セットでも同様に欠落しており是非とも補充されなければならないT67~73ピアノ(下)ibassibenmarcatoの指示を補充T68ピアノ(上)小節最後のふたつの八分音符es(三連音符)の代わりにこの拍は八分休符ひとつと三連音符ではない通常の八分音符eSlが[旋律のアウフタクトとして]弾かれるT78~79ピアノ(下)2拍目と4拍目のレガートは三連音符最初のふたつの八分音符のみにつけられる

T84コントラバス小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T87~88管楽器小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T91ピアノ(下)ポルタートを付加またconPedをPedに変更[訳注2小節間ペダルを踏み変えない]T93~95クラリネットとファゴット反復される同じ高さの音はポルタートでありスタッカートではないT100~101ピアノ(上)手稿では2拍目にあるターンつき四分音符の代わりに複付点のリズム(該当小節のクラリネット4拍目を参照)となっている(この方がオリジナルエディションに印刷されているターンより美しく群くdeg)

T103~106ピアノピアノパートにはl0colbasso[continuo]の指示があるここで通奏低音の指示にしたがって重奏するのは良好な結果をもたらすT116ピアノdconPedではなくd6Pedであり楽章最後までペダルは踏み変えられない

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第3楽章Alleqroscherzandoテンポ指示のうち66scherzandoはオリジナルエディションに印刷されており信頼すべき表記である

T91517ピアノ括弧に入れられている==二二と=を削除T59~64ピアノすべての強弱記号を削除T73ピアノamppを削除]T77~81ピアノ4crescと$Ifを削除T88ピアノmf を削除T92ピアノ(下)冒頭のバス音はもちろんIBの誤りであるT96ピアノ(上)冒頭のes2は四分音符となるべきだろうT148~151ピアノT148の0lconPedはPedでありT151三つ目の八分音符まで踏み変えないT166~170ピアノcrescとfを削除[T226ピアノlを削除]T232~236ピアノ印刷されている賊弱記号を削除T248第1オーボエふたつ目の八分音符hlの前に括弧入りの臨時記号フラット[b]を補充MT354ピアノampfを削除]T355~367ヒアノすべての06sfを削除T372~378ピアノpidfとIlff を削除T393ピアノcIescを削除T397ピアノffを削除T485ピアノオイレンブルク社のスコアに掲載されているカデンツはベートーヴェンのものではなく演奏すべきではないT558~559ピアノ(上)手稿にある表記く譜例4gtが好ましい印刷されている表記を受け入れる場合でもレガートは小節冒頭の最初のふたつの十六分音符e3-d3だけにつけられるべきだろう

圭倉合坐奪渭558ハ

毎 一 周

首<譜例4>-13-

ピアノ協奏曲第2番作品19

1801年4月22日にベートーヴェンはライプツイヒの出版社ホフマイスターFAHoffmeisterへ以下の書簡を書いている

<私の所有物がいつもきちんと整理整頓されていないことはおそらく

私が恥じるべき唯一のこととはいえ他人にはかわってもらえないのですたとえばいつもの手順に従ったせいで総譜にはピアノパー1がまだ書き込まれておらずそれは今やっと私が書きあげ急いだので乱筆の楽譜ですがこの手紙に添えてお届けします>

ベートーヴェンの書簡の内容には何の誇張もない手稿の総譜ピアノパートはスケッチのような楽想が記入されているのみなどおそるべき状態にある書簡で述べられている自筆のピアノパート譜は長いこと閲覧できなかったがほぼ四半世紀前よりボンのベートーヴェンハウスに所蔵されるようになったしかし当館の研究者と私以外まだ誰もこの貴重な資料を調査した者はいないようだこのパート譜にもオーケストラのトウッテイの声部がピアニストのオリエンテーションのために書き込まれている(Direktionsstimme)

第1楽章AlleOroconbrioT99ピアノlcrescはベートーヴェンによるT101ピアノ最後の和音にくさび形のスタッカートを補充T114ピアノ0pianoを補充T131第2ヴァイオリンfpを削除T134第2ヴァイオリン四つ目の八分音符はClであるT142ピアノ(下)左手の小節冒頭の八分音符ふたつを削除し四分休符に変更するT145ピアノ(上)前打音e2は四分音符であるT149ピアノ手稿ではここでppとなっているoT147のppは再現部T331と比較して誤りと思われるT199チェロとコントラバス最後の音はf音であるT218ピアノ小節の中央部[3拍目あたり]にcresc9を補充

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T222ピアノ[dim]を補充T237ピアノ(上)小節冒頭のeSlはスタッカートであるT262264ピアノひとつ目と五つめの八分音符は譜尾が独立して記されているT263ピアノ(上)小節冒頭の八分音符は譜尾が独立して記されているT275ピアノ(下)三つ目の四分音符はスタッカートである[T276も同様]T281ピアノペダルはT285の最初の音まで踏み変えないT285ピアノ(下)小節冒頭にはバス音Bが書かれているT321ピアノ(上)スラーは次の小節冒頭の四分音符C2まで延長されるT329ピアノ(上)ここのトリルに前打音は書かれていないT337ピアノ=二二を補充T339~340ピアノ(下)すべてのスラーを削除T368~369ピアノ左手の四分音符にスタッカートはつけられていないT370以|朧はすべての四分音符にくさび形のスタッカートがつけられているカデンツベートーヴェンハウスに所蔵されている手稿は[協奏llll本体よりも]ずっと後の時点において創作されたものであるスケッチ風に書かれており各所において以下に挙げるリズムの整術と強弱の補充が必要である⑫

T43984拍目は付点のリズムになる(T8402を参照)T5399(上)右手の開始部に[flを補充]T6400(上)4拍目に[p]を補充T10404(上)上声部冒頭に[l1を補充T13407(上)ふたつ目の音符g2にはbがつけられている(geS2音が弾かれる)これは新全集でも欠落しているT24418小節後半のふたつの和音にはくさび形のスタッカートがつけられるT28422(上)スラーは2拍目から開始されるT35~36429~430(上)T35429よりT36430冒頭の八分音符までスラーを補充

⑫訳注カデンツ冒頭からと第1楽章を通じての小節番号を併記した

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T46440(下)冒頭の音は複付点になっており続く音dlは十六分音符となるT49443(下)すべてを付点リズムで弾くべきである

第2楽章AdaqioT10第1ヴァイオリン冒頭のスラーはふたつ目の三十二分音符から開始されている2拍目のスラーは第2バイオリンとともにalまでしか架けられていない

T16~17ピアノピアノソロの最後はT17冒頭の音も含めてpで演奏されるT17の左手は四分音符で書かれているが右手もそれに合わせるべきだろう手稿においてT17のピアノパート[右手]には八分音符2拍目より第1バイオリンの音がtuttiと0fとともに[ピアニストのオリエンテーション用声部Di=Iktionsslimmeとして]記入されているがこれはもちろんオーケストラのものであるT27ピアノ(下)スラーは存在しない[T29~30のように]小節全体に架かるものを補充すべきだろうT30ピアノ(上)小節冒頭の前打音は三十二分音符fのみであるb2はオリジナルエディションを制作した職人の独断によるものに違いないT32~33チェロとコントラバス2拍目はヴィオラと同じ三十二分音符の音列が演奏される[タイの後に同じ音を再度弾く]T37ピアノ(上)2拍目の和音から小節最後までのスラーを補充T40ピアノ(上)2拍目の右手はb2からeS2までスラーが架けられるT47ピアノ(上)小節冒頭の音への装飾音の書法は誤りでT39と同様のものが考えられていたに違いないT56ピアノ(上)2拍目以降の十六分音符に架けられるレガートはd2からとなるT58ピアノcrescは左手の八分音符につけられているT60ピアノ(下)3拍目冒頭に八分休符を補充しかし左手最後の和音は論理的にはチェロコントラバスと同時に弾かれるべきでピアノパートの誤りと考えられる

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T63ピアノ2拍目付近に[cresc]が補充されるべきであるT65ピアノ(上)1拍目ふたつ目から六つ目の十六分音符にはスラーなしのくさび形スタッカートがつけられているしたがってこの小節の1拍目には[flが補充されるべきだろう

T76~80ピアノベートーヴェンはこの小節を誤って八分の三拍子つまり通常の半分の音価の音符で誉いてしまったオリジナルエディション制作の際職人がこの誤りを修正したものの2拍目の三十二分音符だけはそのままにしてしまったもちろんこの音も十六分音符として演奏されるべきである手稿く譜例5>を参照

〆rsquo 一 一 一L壁ご江豐r_トーニーとエユーー

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9画6一睡岬一ケ一一幸一一一一一一一

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<譜例5>ピアノ協奏llil第2番第2楽章T73~84(手稿)

T82ピアノ(上)2拍目の音符につけられている前打音のうち2番目の音es2を削除手稿にはオクターブ下blの前打音しか書かれていない現代のピアノでもT74からT83までペダルが踏み続けられる

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T84ピアノconsordinoの指示はベートーヴェンによって後に加えられたものだが思い違いとも考えられる[これ如何によってT83にconsordino(Rダルを離す)の指示を補充すべきかの判断が必要となる]ひょっとすると[T74から踏み続けられている]ペダルはT86の最後まで保持されるべきなのかも知れない

第3楽章Alleqromolto (これがオリジナルの語順である)Tl~ピアノ冒頭は楽譜通りでT8にcrescは書かれていないT27ピアノ(上)手稿もこのように書かれているがT199と比較せよT55ピアノ(上)小節後半のフレージングをT51と同じに修正T139ピアノ(上)四分音符にくさび形のスタッカートを補充T142ピアノ(上)4番目と5番目の八分音符にくさび形のスタッカートを補充T143ピアノ(上)T141と同じフレージングが補充されるべきであるT165ピアノ小節冒頭の音は左右ともスタッカートT199ピアノ(下)冒頭に四分音符fとそれに続く八分休符を補充T205ピアノ(下)冒頭に四分音符のバスesを補充T278ピアノ(上)冒頭のblはオーケストラを示した音符(DilektionsStimme)の可能性がある(手稿ではここに休符が書かれている)T293~297ピアノパー1にはくさび形のスタッカートがつけられているが手稿によればヴィオラチェロとコントラバスはその限りではないピアノパートヘの対比としてベートーヴェンはおそらく弦楽器にはレガートを考えていたのだろうT316ピアノ手稿ではすでにこの小節にppがありさらにT317にも4Gppが書かれている

ピアノ協奏曲第3番作品37

衆知の通りこの協奏曲が完成するまでには長い時間が饗やされている最初のコンセプトが考えられたのは1797年頃だがその後1804年に出版されるまでの間にはベートーヴェンの作曲スタイルが大きな変貌をとげたと同時に楽器その

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ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

-27-

T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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<譜例7>

-28-

カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

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次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

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壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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<譜例lOcgt

アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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<譜例12gt

多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

hellipIU eSp r e s s o胸 口 3 3 = a ) =(

<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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<譜例15agt

演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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<譜例15bgt

-40-

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<譜例15cgt

レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

一一

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

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奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17agt

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 9: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

はないことがわかるオリジナルエディションではこの音符そのものは正確に刻印されているが0ISoloの単語が不注意から本来より右寄りに印刷されてしまったく譜例3cgtこのためそれ以降の時代の楽譜編纂者は何の検証も行わないまま単に冒頭のバス音を削除しバスなしの不完全な属七和音が生じることになった今日に至るまでこの不完全な音響がほとんどのピアニストによって律儀に踏襲されているのである

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<譜例3bgtピアノ協奏曲第4番第3楽章T401~404(錘写譜)

一口一口一峰》一一志内 山 『国1畠A皐室

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<譜例3cgtピアノ協奏llll第4番第3楽章T396~405(オリジナルエディション)

近年の印刷楽譜ではベートーヴェンのペダル指示に関しても誤った解釈力端行している1803年頃までウィーンのピアノに足のつま先で操作するペダルはついておらず

膝レバーを押し上げる方式によって得られるペダル効果が一般的だったしたがってベートーヴェンは開放弦の響きを要求する際に6lPedalとの単語を使用できずsenzasordino(あるいはsordini)とconsordino(同)という表現を使用せざるを得なかったほとんどの印刷楽譜でこのsenzaSordini(ダンパーなしで)という記述はconPedaleということばに置き換えられている6conPedの厳密な意味

は「自由にペダルを使い必要に応じて踏み変えるように」ということである

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ベートーヴェンの意図は明らかに異なっており「ペダルを踏み変えずあえて混然とした音響を作り出す」ことにあるベートーヴェンに師事していたカールチェルニーCarlCzemyが伝えるように(10ベートーヴェンのピアノ作品は基本

的に「ペダルを使用して」演奏すべきであり「特別なペダル用法が必要な場合」のみベートーヴェンはそれを楽譜に普き込んだのである

各ピアノ協奏曲における異稿一覧

訳注「T」はTakI(小節)の略である「ピアノ(上)」「ピアノ(下)」はピアノパートの大譜表における上の段下の段を示す単に「削除」と指示されているものはそれが原典漬料に含まれていないことを意味しバドシーラースコダの演奏家としての個人的趣味に帰するものではない「補充」「付加」に関しても同様だが[]つきの指示(強弱記号など)は「典拠資料には含まれていないが音楽的見地から推測して補充されるべきもの」を意味する

ピアノ協奏曲第1番作品15

第1楽章AlleOroconbrioT11第1ヴァイオリン初版譜に八分音符として印刷されている前打音は短く奏されるべきだろうすでに初期の作品において長く弾かれるべき前打音をベートーヴェンは普通の大きさの音符で記しているT118~119122~123ピアノ(下)低音部の音列は通奏低音を意味しオーケストラと重奏しなくても良いT187ピアノ(上)最初の音符に$[sfP]を補充すべきであるT192194etc第1と第2ヴァイオリントリルの終結に後打音を付加(T196と198の管楽器と同様に[sfZ]も補充すべきだろう)

T212ピアノ4拍目にsfを付加

(10「[ベートーヴェンは]自作の出版譜に瞥き込まれたものよりかなり多くペダルを使っていました」(カールツェルニー『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法」(パウルバドゥーラースコダ編注釈古荘隆保訳全音楽譜出版社34頁)より原著はCarlCzernydecgeVoノ8dejscβノィβldquoノノi0lescノどKノaWenlerkeherausgegebenundkommcnlierIvonPaulBadura=SkodaUniversalEdition133401963WienS22)

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T235ピアノいかなる原典資料にもトリルの前打音は記載されていないT292~306管楽器すべての連打音[訳注3拍目と4拍目の四分音符]にはポルタートを補充すべきである[くさび形のスタッカートを点のスタッカートに変更しスラーを加える]T72~75のオーボエとファゴットを参照T318~319(T327)ピアノ(下)手稿における左手の音型はT317と同じであるオリジナルエディションに印刷されているものはミスプリントの可能性が大きいT327も同様T335~346ピアノconPedではなくPedでありペダルは踏み変えない特にT340~345の間でペダルを踏み続けることが大切であるT334~335ピアノオクターブのグリッサンドはベートーヴェンによるもの手の小さい人はチェルニーの『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法』(前掲書原著105頁和書148頁)で紹介されている単音のグリッサンドでも術わないいずれにせよオーケストラも含めた音楽全体を支えるフォルテのバス音となるT345の1Gは省略してはならないT391~393ピアノ(下)左手のバス音は通奏低音の残津であり音価の違い(四分音符と八分音符)に意味はないT418ピアノdimを削除T451ピアノ(下)ほとんど演奏不可能に近いバス音glは削除カデンツクラクはカデンツの編纂用底本として筆写譜しか使用できなかったので今日ではベートーヴェン新全集(BeethovenWerkeAbteilungVIIBand7KadenzenzuKlavierkonzertenHenle-VerlagMUnchen)を優先すべきだが(1Dクラクの編纂は大筋で賞賛に値する最初の未完のカデンツは独創的ふたつめはその短さから協奏曲に一番なじみやすく三つめはアイデアにあふれているものの長すぎる-時間的に長いというよりはT100[オイレンブルクP118の2段目目頭]にあるd2のトリル(ハ長調の属調として機能する)からかなり稚拙にカデンツ終結部を支配するト長調で提示される主題に連結されるもののその後

⑪興味のある人へチューリヒのオイレンブルク社VerlagEulenburgよりクルトオイレンブルクKurtEulenburg[オイレンブルク社創始者エルンストの息子父を継いで社の単独所有者となる]生誕百年を記念して1979年にベートーヴェンの全カデンツのファクシミリ版が出版された

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の秩序が整っていないこのような手法は出版されたベートーヴェンの作品中にほとんど見受けられないこの未公開のカデンツはベートーヴェンがおおむね自分用の覚え書きとして脳裏に浮かび指のおもむくままに即興したアイデアを紙に記しておいたものだろうこれを出版するとなればベートーヴェンは上述の問題点を含めてさらに推敲し改良したと考えられるクラクの提案する短縮案はベートーヴェンが行ったと想像される作業に沿ったものとして真蟄に評価されるべきであるT467469管楽器sf 直後に[p]を補充すべきだろう

第2楽章LarqoT5ピアノ括弧に入れられているcrescは削除T6ピアノ(上)小節冒頭にある三つの三十二分音符からなる前打音はオリジナルエディションに印刷されているものの手稿には含まれていないため省略可能であるT19~26管楽器と弦楽器ポルタートに使用されるのは点のスタッカートでくさび形ではないT26の第2ヴァイオリンパートにあるポルタートはミスプリントで2個目から4個目の八分音符につけられる[訳注T25の第1ヴァイオリンを参照]T27全楽器Iffはすべての楽器においてふたつ目の八分音符からとなるT30~31第1クラリネット小節後半の八分音符はポルタートでなく最後ふたつの八分音符がレガートとなるそれ以外の管楽器は[第2クラリネットも含めて]3音ともポルタート(点のスタッカートにレガート)であるT33ピアノ(上)トリルは後打音とともに終結されるべきだろうT35ピアノ(上)ターンはオリジナルエディションのみに印刷されており手稿に含まれていないこのような装飾音はベートーヴェン初期のスタイルになじまないT50ピアノ小節後半のペダルはconPedではなくPedでありT52の最後まで踏み変えてはならない(現代のピアノでも魅力的な音響となる)T54ピアノ(上)八分音符の前打音as】をこのように旧弊な方法で記譜するのは驚きに値する(オリジナルエディション制作の際の誤りとも考えられる)T55ピアノ(上)3拍目の音は四分音符blで[八分音符glは]ミスプ

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リントであるT57ピアノ(上)T5と同様の内声を補充するがこの小節では四分音符となるT60~74チェロとコントラバスオーケストラのバスを担うこのパートはオイレンブルク社のスコアにおいて正しく印刷されている鯖ltべきことにこのパートはベートーヴェン旧全集において欠落しているため旧全集をもとに作られたほとんどのオーケストラ用パート譜セットでも同様に欠落しており是非とも補充されなければならないT67~73ピアノ(下)ibassibenmarcatoの指示を補充T68ピアノ(上)小節最後のふたつの八分音符es(三連音符)の代わりにこの拍は八分休符ひとつと三連音符ではない通常の八分音符eSlが[旋律のアウフタクトとして]弾かれるT78~79ピアノ(下)2拍目と4拍目のレガートは三連音符最初のふたつの八分音符のみにつけられる

T84コントラバス小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T87~88管楽器小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T91ピアノ(下)ポルタートを付加またconPedをPedに変更[訳注2小節間ペダルを踏み変えない]T93~95クラリネットとファゴット反復される同じ高さの音はポルタートでありスタッカートではないT100~101ピアノ(上)手稿では2拍目にあるターンつき四分音符の代わりに複付点のリズム(該当小節のクラリネット4拍目を参照)となっている(この方がオリジナルエディションに印刷されているターンより美しく群くdeg)

T103~106ピアノピアノパートにはl0colbasso[continuo]の指示があるここで通奏低音の指示にしたがって重奏するのは良好な結果をもたらすT116ピアノdconPedではなくd6Pedであり楽章最後までペダルは踏み変えられない

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第3楽章Alleqroscherzandoテンポ指示のうち66scherzandoはオリジナルエディションに印刷されており信頼すべき表記である

T91517ピアノ括弧に入れられている==二二と=を削除T59~64ピアノすべての強弱記号を削除T73ピアノamppを削除]T77~81ピアノ4crescと$Ifを削除T88ピアノmf を削除T92ピアノ(下)冒頭のバス音はもちろんIBの誤りであるT96ピアノ(上)冒頭のes2は四分音符となるべきだろうT148~151ピアノT148の0lconPedはPedでありT151三つ目の八分音符まで踏み変えないT166~170ピアノcrescとfを削除[T226ピアノlを削除]T232~236ピアノ印刷されている賊弱記号を削除T248第1オーボエふたつ目の八分音符hlの前に括弧入りの臨時記号フラット[b]を補充MT354ピアノampfを削除]T355~367ヒアノすべての06sfを削除T372~378ピアノpidfとIlff を削除T393ピアノcIescを削除T397ピアノffを削除T485ピアノオイレンブルク社のスコアに掲載されているカデンツはベートーヴェンのものではなく演奏すべきではないT558~559ピアノ(上)手稿にある表記く譜例4gtが好ましい印刷されている表記を受け入れる場合でもレガートは小節冒頭の最初のふたつの十六分音符e3-d3だけにつけられるべきだろう

圭倉合坐奪渭558ハ

毎 一 周

首<譜例4>-13-

ピアノ協奏曲第2番作品19

1801年4月22日にベートーヴェンはライプツイヒの出版社ホフマイスターFAHoffmeisterへ以下の書簡を書いている

<私の所有物がいつもきちんと整理整頓されていないことはおそらく

私が恥じるべき唯一のこととはいえ他人にはかわってもらえないのですたとえばいつもの手順に従ったせいで総譜にはピアノパー1がまだ書き込まれておらずそれは今やっと私が書きあげ急いだので乱筆の楽譜ですがこの手紙に添えてお届けします>

ベートーヴェンの書簡の内容には何の誇張もない手稿の総譜ピアノパートはスケッチのような楽想が記入されているのみなどおそるべき状態にある書簡で述べられている自筆のピアノパート譜は長いこと閲覧できなかったがほぼ四半世紀前よりボンのベートーヴェンハウスに所蔵されるようになったしかし当館の研究者と私以外まだ誰もこの貴重な資料を調査した者はいないようだこのパート譜にもオーケストラのトウッテイの声部がピアニストのオリエンテーションのために書き込まれている(Direktionsstimme)

第1楽章AlleOroconbrioT99ピアノlcrescはベートーヴェンによるT101ピアノ最後の和音にくさび形のスタッカートを補充T114ピアノ0pianoを補充T131第2ヴァイオリンfpを削除T134第2ヴァイオリン四つ目の八分音符はClであるT142ピアノ(下)左手の小節冒頭の八分音符ふたつを削除し四分休符に変更するT145ピアノ(上)前打音e2は四分音符であるT149ピアノ手稿ではここでppとなっているoT147のppは再現部T331と比較して誤りと思われるT199チェロとコントラバス最後の音はf音であるT218ピアノ小節の中央部[3拍目あたり]にcresc9を補充

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T222ピアノ[dim]を補充T237ピアノ(上)小節冒頭のeSlはスタッカートであるT262264ピアノひとつ目と五つめの八分音符は譜尾が独立して記されているT263ピアノ(上)小節冒頭の八分音符は譜尾が独立して記されているT275ピアノ(下)三つ目の四分音符はスタッカートである[T276も同様]T281ピアノペダルはT285の最初の音まで踏み変えないT285ピアノ(下)小節冒頭にはバス音Bが書かれているT321ピアノ(上)スラーは次の小節冒頭の四分音符C2まで延長されるT329ピアノ(上)ここのトリルに前打音は書かれていないT337ピアノ=二二を補充T339~340ピアノ(下)すべてのスラーを削除T368~369ピアノ左手の四分音符にスタッカートはつけられていないT370以|朧はすべての四分音符にくさび形のスタッカートがつけられているカデンツベートーヴェンハウスに所蔵されている手稿は[協奏llll本体よりも]ずっと後の時点において創作されたものであるスケッチ風に書かれており各所において以下に挙げるリズムの整術と強弱の補充が必要である⑫

T43984拍目は付点のリズムになる(T8402を参照)T5399(上)右手の開始部に[flを補充]T6400(上)4拍目に[p]を補充T10404(上)上声部冒頭に[l1を補充T13407(上)ふたつ目の音符g2にはbがつけられている(geS2音が弾かれる)これは新全集でも欠落しているT24418小節後半のふたつの和音にはくさび形のスタッカートがつけられるT28422(上)スラーは2拍目から開始されるT35~36429~430(上)T35429よりT36430冒頭の八分音符までスラーを補充

⑫訳注カデンツ冒頭からと第1楽章を通じての小節番号を併記した

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T46440(下)冒頭の音は複付点になっており続く音dlは十六分音符となるT49443(下)すべてを付点リズムで弾くべきである

第2楽章AdaqioT10第1ヴァイオリン冒頭のスラーはふたつ目の三十二分音符から開始されている2拍目のスラーは第2バイオリンとともにalまでしか架けられていない

T16~17ピアノピアノソロの最後はT17冒頭の音も含めてpで演奏されるT17の左手は四分音符で書かれているが右手もそれに合わせるべきだろう手稿においてT17のピアノパート[右手]には八分音符2拍目より第1バイオリンの音がtuttiと0fとともに[ピアニストのオリエンテーション用声部Di=Iktionsslimmeとして]記入されているがこれはもちろんオーケストラのものであるT27ピアノ(下)スラーは存在しない[T29~30のように]小節全体に架かるものを補充すべきだろうT30ピアノ(上)小節冒頭の前打音は三十二分音符fのみであるb2はオリジナルエディションを制作した職人の独断によるものに違いないT32~33チェロとコントラバス2拍目はヴィオラと同じ三十二分音符の音列が演奏される[タイの後に同じ音を再度弾く]T37ピアノ(上)2拍目の和音から小節最後までのスラーを補充T40ピアノ(上)2拍目の右手はb2からeS2までスラーが架けられるT47ピアノ(上)小節冒頭の音への装飾音の書法は誤りでT39と同様のものが考えられていたに違いないT56ピアノ(上)2拍目以降の十六分音符に架けられるレガートはd2からとなるT58ピアノcrescは左手の八分音符につけられているT60ピアノ(下)3拍目冒頭に八分休符を補充しかし左手最後の和音は論理的にはチェロコントラバスと同時に弾かれるべきでピアノパートの誤りと考えられる

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T63ピアノ2拍目付近に[cresc]が補充されるべきであるT65ピアノ(上)1拍目ふたつ目から六つ目の十六分音符にはスラーなしのくさび形スタッカートがつけられているしたがってこの小節の1拍目には[flが補充されるべきだろう

T76~80ピアノベートーヴェンはこの小節を誤って八分の三拍子つまり通常の半分の音価の音符で誉いてしまったオリジナルエディション制作の際職人がこの誤りを修正したものの2拍目の三十二分音符だけはそのままにしてしまったもちろんこの音も十六分音符として演奏されるべきである手稿く譜例5>を参照

〆rsquo 一 一 一L壁ご江豐r_トーニーとエユーー

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9画6一睡岬一ケ一一幸一一一一一一一

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<譜例5>ピアノ協奏llil第2番第2楽章T73~84(手稿)

T82ピアノ(上)2拍目の音符につけられている前打音のうち2番目の音es2を削除手稿にはオクターブ下blの前打音しか書かれていない現代のピアノでもT74からT83までペダルが踏み続けられる

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T84ピアノconsordinoの指示はベートーヴェンによって後に加えられたものだが思い違いとも考えられる[これ如何によってT83にconsordino(Rダルを離す)の指示を補充すべきかの判断が必要となる]ひょっとすると[T74から踏み続けられている]ペダルはT86の最後まで保持されるべきなのかも知れない

第3楽章Alleqromolto (これがオリジナルの語順である)Tl~ピアノ冒頭は楽譜通りでT8にcrescは書かれていないT27ピアノ(上)手稿もこのように書かれているがT199と比較せよT55ピアノ(上)小節後半のフレージングをT51と同じに修正T139ピアノ(上)四分音符にくさび形のスタッカートを補充T142ピアノ(上)4番目と5番目の八分音符にくさび形のスタッカートを補充T143ピアノ(上)T141と同じフレージングが補充されるべきであるT165ピアノ小節冒頭の音は左右ともスタッカートT199ピアノ(下)冒頭に四分音符fとそれに続く八分休符を補充T205ピアノ(下)冒頭に四分音符のバスesを補充T278ピアノ(上)冒頭のblはオーケストラを示した音符(DilektionsStimme)の可能性がある(手稿ではここに休符が書かれている)T293~297ピアノパー1にはくさび形のスタッカートがつけられているが手稿によればヴィオラチェロとコントラバスはその限りではないピアノパートヘの対比としてベートーヴェンはおそらく弦楽器にはレガートを考えていたのだろうT316ピアノ手稿ではすでにこの小節にppがありさらにT317にも4Gppが書かれている

ピアノ協奏曲第3番作品37

衆知の通りこの協奏曲が完成するまでには長い時間が饗やされている最初のコンセプトが考えられたのは1797年頃だがその後1804年に出版されるまでの間にはベートーヴェンの作曲スタイルが大きな変貌をとげたと同時に楽器その

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ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

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T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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<譜例7>

-28-

カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

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次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

1L一一一 手 一

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-

壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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<譜例lOcgt

アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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<譜例15agt

演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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<譜例15bgt

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<譜例15cgt

レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

一一

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

- F 雨 ロ 1 1 』 I I

L 1 夕 U I I ロ 廿 ロ ロ p I

Q j0ローローロー一---一一ローーーーー

<譜例17agt

塁8--- - - - - - -ニーーーーニ- - - - - - rsquo

<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 10: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

ベートーヴェンの意図は明らかに異なっており「ペダルを踏み変えずあえて混然とした音響を作り出す」ことにあるベートーヴェンに師事していたカールチェルニーCarlCzemyが伝えるように(10ベートーヴェンのピアノ作品は基本

的に「ペダルを使用して」演奏すべきであり「特別なペダル用法が必要な場合」のみベートーヴェンはそれを楽譜に普き込んだのである

各ピアノ協奏曲における異稿一覧

訳注「T」はTakI(小節)の略である「ピアノ(上)」「ピアノ(下)」はピアノパートの大譜表における上の段下の段を示す単に「削除」と指示されているものはそれが原典漬料に含まれていないことを意味しバドシーラースコダの演奏家としての個人的趣味に帰するものではない「補充」「付加」に関しても同様だが[]つきの指示(強弱記号など)は「典拠資料には含まれていないが音楽的見地から推測して補充されるべきもの」を意味する

ピアノ協奏曲第1番作品15

第1楽章AlleOroconbrioT11第1ヴァイオリン初版譜に八分音符として印刷されている前打音は短く奏されるべきだろうすでに初期の作品において長く弾かれるべき前打音をベートーヴェンは普通の大きさの音符で記しているT118~119122~123ピアノ(下)低音部の音列は通奏低音を意味しオーケストラと重奏しなくても良いT187ピアノ(上)最初の音符に$[sfP]を補充すべきであるT192194etc第1と第2ヴァイオリントリルの終結に後打音を付加(T196と198の管楽器と同様に[sfZ]も補充すべきだろう)

T212ピアノ4拍目にsfを付加

(10「[ベートーヴェンは]自作の出版譜に瞥き込まれたものよりかなり多くペダルを使っていました」(カールツェルニー『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法」(パウルバドゥーラースコダ編注釈古荘隆保訳全音楽譜出版社34頁)より原著はCarlCzernydecgeVoノ8dejscβノィβldquoノノi0lescノどKノaWenlerkeherausgegebenundkommcnlierIvonPaulBadura=SkodaUniversalEdition133401963WienS22)

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T235ピアノいかなる原典資料にもトリルの前打音は記載されていないT292~306管楽器すべての連打音[訳注3拍目と4拍目の四分音符]にはポルタートを補充すべきである[くさび形のスタッカートを点のスタッカートに変更しスラーを加える]T72~75のオーボエとファゴットを参照T318~319(T327)ピアノ(下)手稿における左手の音型はT317と同じであるオリジナルエディションに印刷されているものはミスプリントの可能性が大きいT327も同様T335~346ピアノconPedではなくPedでありペダルは踏み変えない特にT340~345の間でペダルを踏み続けることが大切であるT334~335ピアノオクターブのグリッサンドはベートーヴェンによるもの手の小さい人はチェルニーの『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法』(前掲書原著105頁和書148頁)で紹介されている単音のグリッサンドでも術わないいずれにせよオーケストラも含めた音楽全体を支えるフォルテのバス音となるT345の1Gは省略してはならないT391~393ピアノ(下)左手のバス音は通奏低音の残津であり音価の違い(四分音符と八分音符)に意味はないT418ピアノdimを削除T451ピアノ(下)ほとんど演奏不可能に近いバス音glは削除カデンツクラクはカデンツの編纂用底本として筆写譜しか使用できなかったので今日ではベートーヴェン新全集(BeethovenWerkeAbteilungVIIBand7KadenzenzuKlavierkonzertenHenle-VerlagMUnchen)を優先すべきだが(1Dクラクの編纂は大筋で賞賛に値する最初の未完のカデンツは独創的ふたつめはその短さから協奏曲に一番なじみやすく三つめはアイデアにあふれているものの長すぎる-時間的に長いというよりはT100[オイレンブルクP118の2段目目頭]にあるd2のトリル(ハ長調の属調として機能する)からかなり稚拙にカデンツ終結部を支配するト長調で提示される主題に連結されるもののその後

⑪興味のある人へチューリヒのオイレンブルク社VerlagEulenburgよりクルトオイレンブルクKurtEulenburg[オイレンブルク社創始者エルンストの息子父を継いで社の単独所有者となる]生誕百年を記念して1979年にベートーヴェンの全カデンツのファクシミリ版が出版された

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の秩序が整っていないこのような手法は出版されたベートーヴェンの作品中にほとんど見受けられないこの未公開のカデンツはベートーヴェンがおおむね自分用の覚え書きとして脳裏に浮かび指のおもむくままに即興したアイデアを紙に記しておいたものだろうこれを出版するとなればベートーヴェンは上述の問題点を含めてさらに推敲し改良したと考えられるクラクの提案する短縮案はベートーヴェンが行ったと想像される作業に沿ったものとして真蟄に評価されるべきであるT467469管楽器sf 直後に[p]を補充すべきだろう

第2楽章LarqoT5ピアノ括弧に入れられているcrescは削除T6ピアノ(上)小節冒頭にある三つの三十二分音符からなる前打音はオリジナルエディションに印刷されているものの手稿には含まれていないため省略可能であるT19~26管楽器と弦楽器ポルタートに使用されるのは点のスタッカートでくさび形ではないT26の第2ヴァイオリンパートにあるポルタートはミスプリントで2個目から4個目の八分音符につけられる[訳注T25の第1ヴァイオリンを参照]T27全楽器Iffはすべての楽器においてふたつ目の八分音符からとなるT30~31第1クラリネット小節後半の八分音符はポルタートでなく最後ふたつの八分音符がレガートとなるそれ以外の管楽器は[第2クラリネットも含めて]3音ともポルタート(点のスタッカートにレガート)であるT33ピアノ(上)トリルは後打音とともに終結されるべきだろうT35ピアノ(上)ターンはオリジナルエディションのみに印刷されており手稿に含まれていないこのような装飾音はベートーヴェン初期のスタイルになじまないT50ピアノ小節後半のペダルはconPedではなくPedでありT52の最後まで踏み変えてはならない(現代のピアノでも魅力的な音響となる)T54ピアノ(上)八分音符の前打音as】をこのように旧弊な方法で記譜するのは驚きに値する(オリジナルエディション制作の際の誤りとも考えられる)T55ピアノ(上)3拍目の音は四分音符blで[八分音符glは]ミスプ

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リントであるT57ピアノ(上)T5と同様の内声を補充するがこの小節では四分音符となるT60~74チェロとコントラバスオーケストラのバスを担うこのパートはオイレンブルク社のスコアにおいて正しく印刷されている鯖ltべきことにこのパートはベートーヴェン旧全集において欠落しているため旧全集をもとに作られたほとんどのオーケストラ用パート譜セットでも同様に欠落しており是非とも補充されなければならないT67~73ピアノ(下)ibassibenmarcatoの指示を補充T68ピアノ(上)小節最後のふたつの八分音符es(三連音符)の代わりにこの拍は八分休符ひとつと三連音符ではない通常の八分音符eSlが[旋律のアウフタクトとして]弾かれるT78~79ピアノ(下)2拍目と4拍目のレガートは三連音符最初のふたつの八分音符のみにつけられる

T84コントラバス小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T87~88管楽器小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T91ピアノ(下)ポルタートを付加またconPedをPedに変更[訳注2小節間ペダルを踏み変えない]T93~95クラリネットとファゴット反復される同じ高さの音はポルタートでありスタッカートではないT100~101ピアノ(上)手稿では2拍目にあるターンつき四分音符の代わりに複付点のリズム(該当小節のクラリネット4拍目を参照)となっている(この方がオリジナルエディションに印刷されているターンより美しく群くdeg)

T103~106ピアノピアノパートにはl0colbasso[continuo]の指示があるここで通奏低音の指示にしたがって重奏するのは良好な結果をもたらすT116ピアノdconPedではなくd6Pedであり楽章最後までペダルは踏み変えられない

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第3楽章Alleqroscherzandoテンポ指示のうち66scherzandoはオリジナルエディションに印刷されており信頼すべき表記である

T91517ピアノ括弧に入れられている==二二と=を削除T59~64ピアノすべての強弱記号を削除T73ピアノamppを削除]T77~81ピアノ4crescと$Ifを削除T88ピアノmf を削除T92ピアノ(下)冒頭のバス音はもちろんIBの誤りであるT96ピアノ(上)冒頭のes2は四分音符となるべきだろうT148~151ピアノT148の0lconPedはPedでありT151三つ目の八分音符まで踏み変えないT166~170ピアノcrescとfを削除[T226ピアノlを削除]T232~236ピアノ印刷されている賊弱記号を削除T248第1オーボエふたつ目の八分音符hlの前に括弧入りの臨時記号フラット[b]を補充MT354ピアノampfを削除]T355~367ヒアノすべての06sfを削除T372~378ピアノpidfとIlff を削除T393ピアノcIescを削除T397ピアノffを削除T485ピアノオイレンブルク社のスコアに掲載されているカデンツはベートーヴェンのものではなく演奏すべきではないT558~559ピアノ(上)手稿にある表記く譜例4gtが好ましい印刷されている表記を受け入れる場合でもレガートは小節冒頭の最初のふたつの十六分音符e3-d3だけにつけられるべきだろう

圭倉合坐奪渭558ハ

毎 一 周

首<譜例4>-13-

ピアノ協奏曲第2番作品19

1801年4月22日にベートーヴェンはライプツイヒの出版社ホフマイスターFAHoffmeisterへ以下の書簡を書いている

<私の所有物がいつもきちんと整理整頓されていないことはおそらく

私が恥じるべき唯一のこととはいえ他人にはかわってもらえないのですたとえばいつもの手順に従ったせいで総譜にはピアノパー1がまだ書き込まれておらずそれは今やっと私が書きあげ急いだので乱筆の楽譜ですがこの手紙に添えてお届けします>

ベートーヴェンの書簡の内容には何の誇張もない手稿の総譜ピアノパートはスケッチのような楽想が記入されているのみなどおそるべき状態にある書簡で述べられている自筆のピアノパート譜は長いこと閲覧できなかったがほぼ四半世紀前よりボンのベートーヴェンハウスに所蔵されるようになったしかし当館の研究者と私以外まだ誰もこの貴重な資料を調査した者はいないようだこのパート譜にもオーケストラのトウッテイの声部がピアニストのオリエンテーションのために書き込まれている(Direktionsstimme)

第1楽章AlleOroconbrioT99ピアノlcrescはベートーヴェンによるT101ピアノ最後の和音にくさび形のスタッカートを補充T114ピアノ0pianoを補充T131第2ヴァイオリンfpを削除T134第2ヴァイオリン四つ目の八分音符はClであるT142ピアノ(下)左手の小節冒頭の八分音符ふたつを削除し四分休符に変更するT145ピアノ(上)前打音e2は四分音符であるT149ピアノ手稿ではここでppとなっているoT147のppは再現部T331と比較して誤りと思われるT199チェロとコントラバス最後の音はf音であるT218ピアノ小節の中央部[3拍目あたり]にcresc9を補充

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T222ピアノ[dim]を補充T237ピアノ(上)小節冒頭のeSlはスタッカートであるT262264ピアノひとつ目と五つめの八分音符は譜尾が独立して記されているT263ピアノ(上)小節冒頭の八分音符は譜尾が独立して記されているT275ピアノ(下)三つ目の四分音符はスタッカートである[T276も同様]T281ピアノペダルはT285の最初の音まで踏み変えないT285ピアノ(下)小節冒頭にはバス音Bが書かれているT321ピアノ(上)スラーは次の小節冒頭の四分音符C2まで延長されるT329ピアノ(上)ここのトリルに前打音は書かれていないT337ピアノ=二二を補充T339~340ピアノ(下)すべてのスラーを削除T368~369ピアノ左手の四分音符にスタッカートはつけられていないT370以|朧はすべての四分音符にくさび形のスタッカートがつけられているカデンツベートーヴェンハウスに所蔵されている手稿は[協奏llll本体よりも]ずっと後の時点において創作されたものであるスケッチ風に書かれており各所において以下に挙げるリズムの整術と強弱の補充が必要である⑫

T43984拍目は付点のリズムになる(T8402を参照)T5399(上)右手の開始部に[flを補充]T6400(上)4拍目に[p]を補充T10404(上)上声部冒頭に[l1を補充T13407(上)ふたつ目の音符g2にはbがつけられている(geS2音が弾かれる)これは新全集でも欠落しているT24418小節後半のふたつの和音にはくさび形のスタッカートがつけられるT28422(上)スラーは2拍目から開始されるT35~36429~430(上)T35429よりT36430冒頭の八分音符までスラーを補充

⑫訳注カデンツ冒頭からと第1楽章を通じての小節番号を併記した

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T46440(下)冒頭の音は複付点になっており続く音dlは十六分音符となるT49443(下)すべてを付点リズムで弾くべきである

第2楽章AdaqioT10第1ヴァイオリン冒頭のスラーはふたつ目の三十二分音符から開始されている2拍目のスラーは第2バイオリンとともにalまでしか架けられていない

T16~17ピアノピアノソロの最後はT17冒頭の音も含めてpで演奏されるT17の左手は四分音符で書かれているが右手もそれに合わせるべきだろう手稿においてT17のピアノパート[右手]には八分音符2拍目より第1バイオリンの音がtuttiと0fとともに[ピアニストのオリエンテーション用声部Di=Iktionsslimmeとして]記入されているがこれはもちろんオーケストラのものであるT27ピアノ(下)スラーは存在しない[T29~30のように]小節全体に架かるものを補充すべきだろうT30ピアノ(上)小節冒頭の前打音は三十二分音符fのみであるb2はオリジナルエディションを制作した職人の独断によるものに違いないT32~33チェロとコントラバス2拍目はヴィオラと同じ三十二分音符の音列が演奏される[タイの後に同じ音を再度弾く]T37ピアノ(上)2拍目の和音から小節最後までのスラーを補充T40ピアノ(上)2拍目の右手はb2からeS2までスラーが架けられるT47ピアノ(上)小節冒頭の音への装飾音の書法は誤りでT39と同様のものが考えられていたに違いないT56ピアノ(上)2拍目以降の十六分音符に架けられるレガートはd2からとなるT58ピアノcrescは左手の八分音符につけられているT60ピアノ(下)3拍目冒頭に八分休符を補充しかし左手最後の和音は論理的にはチェロコントラバスと同時に弾かれるべきでピアノパートの誤りと考えられる

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T63ピアノ2拍目付近に[cresc]が補充されるべきであるT65ピアノ(上)1拍目ふたつ目から六つ目の十六分音符にはスラーなしのくさび形スタッカートがつけられているしたがってこの小節の1拍目には[flが補充されるべきだろう

T76~80ピアノベートーヴェンはこの小節を誤って八分の三拍子つまり通常の半分の音価の音符で誉いてしまったオリジナルエディション制作の際職人がこの誤りを修正したものの2拍目の三十二分音符だけはそのままにしてしまったもちろんこの音も十六分音符として演奏されるべきである手稿く譜例5>を参照

〆rsquo 一 一 一L壁ご江豐r_トーニーとエユーー

ー壼壼壼壼妄=一 一 暖 =

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9画6一睡岬一ケ一一幸一一一一一一一

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larr 1 巳 - - 4 甲 一 deg

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<譜例5>ピアノ協奏llil第2番第2楽章T73~84(手稿)

T82ピアノ(上)2拍目の音符につけられている前打音のうち2番目の音es2を削除手稿にはオクターブ下blの前打音しか書かれていない現代のピアノでもT74からT83までペダルが踏み続けられる

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T84ピアノconsordinoの指示はベートーヴェンによって後に加えられたものだが思い違いとも考えられる[これ如何によってT83にconsordino(Rダルを離す)の指示を補充すべきかの判断が必要となる]ひょっとすると[T74から踏み続けられている]ペダルはT86の最後まで保持されるべきなのかも知れない

第3楽章Alleqromolto (これがオリジナルの語順である)Tl~ピアノ冒頭は楽譜通りでT8にcrescは書かれていないT27ピアノ(上)手稿もこのように書かれているがT199と比較せよT55ピアノ(上)小節後半のフレージングをT51と同じに修正T139ピアノ(上)四分音符にくさび形のスタッカートを補充T142ピアノ(上)4番目と5番目の八分音符にくさび形のスタッカートを補充T143ピアノ(上)T141と同じフレージングが補充されるべきであるT165ピアノ小節冒頭の音は左右ともスタッカートT199ピアノ(下)冒頭に四分音符fとそれに続く八分休符を補充T205ピアノ(下)冒頭に四分音符のバスesを補充T278ピアノ(上)冒頭のblはオーケストラを示した音符(DilektionsStimme)の可能性がある(手稿ではここに休符が書かれている)T293~297ピアノパー1にはくさび形のスタッカートがつけられているが手稿によればヴィオラチェロとコントラバスはその限りではないピアノパートヘの対比としてベートーヴェンはおそらく弦楽器にはレガートを考えていたのだろうT316ピアノ手稿ではすでにこの小節にppがありさらにT317にも4Gppが書かれている

ピアノ協奏曲第3番作品37

衆知の通りこの協奏曲が完成するまでには長い時間が饗やされている最初のコンセプトが考えられたのは1797年頃だがその後1804年に出版されるまでの間にはベートーヴェンの作曲スタイルが大きな変貌をとげたと同時に楽器その

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ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

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T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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<譜例7>

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カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

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次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

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壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

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両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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-40-

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

一一

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 11: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

T235ピアノいかなる原典資料にもトリルの前打音は記載されていないT292~306管楽器すべての連打音[訳注3拍目と4拍目の四分音符]にはポルタートを補充すべきである[くさび形のスタッカートを点のスタッカートに変更しスラーを加える]T72~75のオーボエとファゴットを参照T318~319(T327)ピアノ(下)手稿における左手の音型はT317と同じであるオリジナルエディションに印刷されているものはミスプリントの可能性が大きいT327も同様T335~346ピアノconPedではなくPedでありペダルは踏み変えない特にT340~345の間でペダルを踏み続けることが大切であるT334~335ピアノオクターブのグリッサンドはベートーヴェンによるもの手の小さい人はチェルニーの『ベートーヴェン全ピアノ作品の正しい奏法』(前掲書原著105頁和書148頁)で紹介されている単音のグリッサンドでも術わないいずれにせよオーケストラも含めた音楽全体を支えるフォルテのバス音となるT345の1Gは省略してはならないT391~393ピアノ(下)左手のバス音は通奏低音の残津であり音価の違い(四分音符と八分音符)に意味はないT418ピアノdimを削除T451ピアノ(下)ほとんど演奏不可能に近いバス音glは削除カデンツクラクはカデンツの編纂用底本として筆写譜しか使用できなかったので今日ではベートーヴェン新全集(BeethovenWerkeAbteilungVIIBand7KadenzenzuKlavierkonzertenHenle-VerlagMUnchen)を優先すべきだが(1Dクラクの編纂は大筋で賞賛に値する最初の未完のカデンツは独創的ふたつめはその短さから協奏曲に一番なじみやすく三つめはアイデアにあふれているものの長すぎる-時間的に長いというよりはT100[オイレンブルクP118の2段目目頭]にあるd2のトリル(ハ長調の属調として機能する)からかなり稚拙にカデンツ終結部を支配するト長調で提示される主題に連結されるもののその後

⑪興味のある人へチューリヒのオイレンブルク社VerlagEulenburgよりクルトオイレンブルクKurtEulenburg[オイレンブルク社創始者エルンストの息子父を継いで社の単独所有者となる]生誕百年を記念して1979年にベートーヴェンの全カデンツのファクシミリ版が出版された

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の秩序が整っていないこのような手法は出版されたベートーヴェンの作品中にほとんど見受けられないこの未公開のカデンツはベートーヴェンがおおむね自分用の覚え書きとして脳裏に浮かび指のおもむくままに即興したアイデアを紙に記しておいたものだろうこれを出版するとなればベートーヴェンは上述の問題点を含めてさらに推敲し改良したと考えられるクラクの提案する短縮案はベートーヴェンが行ったと想像される作業に沿ったものとして真蟄に評価されるべきであるT467469管楽器sf 直後に[p]を補充すべきだろう

第2楽章LarqoT5ピアノ括弧に入れられているcrescは削除T6ピアノ(上)小節冒頭にある三つの三十二分音符からなる前打音はオリジナルエディションに印刷されているものの手稿には含まれていないため省略可能であるT19~26管楽器と弦楽器ポルタートに使用されるのは点のスタッカートでくさび形ではないT26の第2ヴァイオリンパートにあるポルタートはミスプリントで2個目から4個目の八分音符につけられる[訳注T25の第1ヴァイオリンを参照]T27全楽器Iffはすべての楽器においてふたつ目の八分音符からとなるT30~31第1クラリネット小節後半の八分音符はポルタートでなく最後ふたつの八分音符がレガートとなるそれ以外の管楽器は[第2クラリネットも含めて]3音ともポルタート(点のスタッカートにレガート)であるT33ピアノ(上)トリルは後打音とともに終結されるべきだろうT35ピアノ(上)ターンはオリジナルエディションのみに印刷されており手稿に含まれていないこのような装飾音はベートーヴェン初期のスタイルになじまないT50ピアノ小節後半のペダルはconPedではなくPedでありT52の最後まで踏み変えてはならない(現代のピアノでも魅力的な音響となる)T54ピアノ(上)八分音符の前打音as】をこのように旧弊な方法で記譜するのは驚きに値する(オリジナルエディション制作の際の誤りとも考えられる)T55ピアノ(上)3拍目の音は四分音符blで[八分音符glは]ミスプ

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リントであるT57ピアノ(上)T5と同様の内声を補充するがこの小節では四分音符となるT60~74チェロとコントラバスオーケストラのバスを担うこのパートはオイレンブルク社のスコアにおいて正しく印刷されている鯖ltべきことにこのパートはベートーヴェン旧全集において欠落しているため旧全集をもとに作られたほとんどのオーケストラ用パート譜セットでも同様に欠落しており是非とも補充されなければならないT67~73ピアノ(下)ibassibenmarcatoの指示を補充T68ピアノ(上)小節最後のふたつの八分音符es(三連音符)の代わりにこの拍は八分休符ひとつと三連音符ではない通常の八分音符eSlが[旋律のアウフタクトとして]弾かれるT78~79ピアノ(下)2拍目と4拍目のレガートは三連音符最初のふたつの八分音符のみにつけられる

T84コントラバス小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T87~88管楽器小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T91ピアノ(下)ポルタートを付加またconPedをPedに変更[訳注2小節間ペダルを踏み変えない]T93~95クラリネットとファゴット反復される同じ高さの音はポルタートでありスタッカートではないT100~101ピアノ(上)手稿では2拍目にあるターンつき四分音符の代わりに複付点のリズム(該当小節のクラリネット4拍目を参照)となっている(この方がオリジナルエディションに印刷されているターンより美しく群くdeg)

T103~106ピアノピアノパートにはl0colbasso[continuo]の指示があるここで通奏低音の指示にしたがって重奏するのは良好な結果をもたらすT116ピアノdconPedではなくd6Pedであり楽章最後までペダルは踏み変えられない

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第3楽章Alleqroscherzandoテンポ指示のうち66scherzandoはオリジナルエディションに印刷されており信頼すべき表記である

T91517ピアノ括弧に入れられている==二二と=を削除T59~64ピアノすべての強弱記号を削除T73ピアノamppを削除]T77~81ピアノ4crescと$Ifを削除T88ピアノmf を削除T92ピアノ(下)冒頭のバス音はもちろんIBの誤りであるT96ピアノ(上)冒頭のes2は四分音符となるべきだろうT148~151ピアノT148の0lconPedはPedでありT151三つ目の八分音符まで踏み変えないT166~170ピアノcrescとfを削除[T226ピアノlを削除]T232~236ピアノ印刷されている賊弱記号を削除T248第1オーボエふたつ目の八分音符hlの前に括弧入りの臨時記号フラット[b]を補充MT354ピアノampfを削除]T355~367ヒアノすべての06sfを削除T372~378ピアノpidfとIlff を削除T393ピアノcIescを削除T397ピアノffを削除T485ピアノオイレンブルク社のスコアに掲載されているカデンツはベートーヴェンのものではなく演奏すべきではないT558~559ピアノ(上)手稿にある表記く譜例4gtが好ましい印刷されている表記を受け入れる場合でもレガートは小節冒頭の最初のふたつの十六分音符e3-d3だけにつけられるべきだろう

圭倉合坐奪渭558ハ

毎 一 周

首<譜例4>-13-

ピアノ協奏曲第2番作品19

1801年4月22日にベートーヴェンはライプツイヒの出版社ホフマイスターFAHoffmeisterへ以下の書簡を書いている

<私の所有物がいつもきちんと整理整頓されていないことはおそらく

私が恥じるべき唯一のこととはいえ他人にはかわってもらえないのですたとえばいつもの手順に従ったせいで総譜にはピアノパー1がまだ書き込まれておらずそれは今やっと私が書きあげ急いだので乱筆の楽譜ですがこの手紙に添えてお届けします>

ベートーヴェンの書簡の内容には何の誇張もない手稿の総譜ピアノパートはスケッチのような楽想が記入されているのみなどおそるべき状態にある書簡で述べられている自筆のピアノパート譜は長いこと閲覧できなかったがほぼ四半世紀前よりボンのベートーヴェンハウスに所蔵されるようになったしかし当館の研究者と私以外まだ誰もこの貴重な資料を調査した者はいないようだこのパート譜にもオーケストラのトウッテイの声部がピアニストのオリエンテーションのために書き込まれている(Direktionsstimme)

第1楽章AlleOroconbrioT99ピアノlcrescはベートーヴェンによるT101ピアノ最後の和音にくさび形のスタッカートを補充T114ピアノ0pianoを補充T131第2ヴァイオリンfpを削除T134第2ヴァイオリン四つ目の八分音符はClであるT142ピアノ(下)左手の小節冒頭の八分音符ふたつを削除し四分休符に変更するT145ピアノ(上)前打音e2は四分音符であるT149ピアノ手稿ではここでppとなっているoT147のppは再現部T331と比較して誤りと思われるT199チェロとコントラバス最後の音はf音であるT218ピアノ小節の中央部[3拍目あたり]にcresc9を補充

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T222ピアノ[dim]を補充T237ピアノ(上)小節冒頭のeSlはスタッカートであるT262264ピアノひとつ目と五つめの八分音符は譜尾が独立して記されているT263ピアノ(上)小節冒頭の八分音符は譜尾が独立して記されているT275ピアノ(下)三つ目の四分音符はスタッカートである[T276も同様]T281ピアノペダルはT285の最初の音まで踏み変えないT285ピアノ(下)小節冒頭にはバス音Bが書かれているT321ピアノ(上)スラーは次の小節冒頭の四分音符C2まで延長されるT329ピアノ(上)ここのトリルに前打音は書かれていないT337ピアノ=二二を補充T339~340ピアノ(下)すべてのスラーを削除T368~369ピアノ左手の四分音符にスタッカートはつけられていないT370以|朧はすべての四分音符にくさび形のスタッカートがつけられているカデンツベートーヴェンハウスに所蔵されている手稿は[協奏llll本体よりも]ずっと後の時点において創作されたものであるスケッチ風に書かれており各所において以下に挙げるリズムの整術と強弱の補充が必要である⑫

T43984拍目は付点のリズムになる(T8402を参照)T5399(上)右手の開始部に[flを補充]T6400(上)4拍目に[p]を補充T10404(上)上声部冒頭に[l1を補充T13407(上)ふたつ目の音符g2にはbがつけられている(geS2音が弾かれる)これは新全集でも欠落しているT24418小節後半のふたつの和音にはくさび形のスタッカートがつけられるT28422(上)スラーは2拍目から開始されるT35~36429~430(上)T35429よりT36430冒頭の八分音符までスラーを補充

⑫訳注カデンツ冒頭からと第1楽章を通じての小節番号を併記した

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T46440(下)冒頭の音は複付点になっており続く音dlは十六分音符となるT49443(下)すべてを付点リズムで弾くべきである

第2楽章AdaqioT10第1ヴァイオリン冒頭のスラーはふたつ目の三十二分音符から開始されている2拍目のスラーは第2バイオリンとともにalまでしか架けられていない

T16~17ピアノピアノソロの最後はT17冒頭の音も含めてpで演奏されるT17の左手は四分音符で書かれているが右手もそれに合わせるべきだろう手稿においてT17のピアノパート[右手]には八分音符2拍目より第1バイオリンの音がtuttiと0fとともに[ピアニストのオリエンテーション用声部Di=Iktionsslimmeとして]記入されているがこれはもちろんオーケストラのものであるT27ピアノ(下)スラーは存在しない[T29~30のように]小節全体に架かるものを補充すべきだろうT30ピアノ(上)小節冒頭の前打音は三十二分音符fのみであるb2はオリジナルエディションを制作した職人の独断によるものに違いないT32~33チェロとコントラバス2拍目はヴィオラと同じ三十二分音符の音列が演奏される[タイの後に同じ音を再度弾く]T37ピアノ(上)2拍目の和音から小節最後までのスラーを補充T40ピアノ(上)2拍目の右手はb2からeS2までスラーが架けられるT47ピアノ(上)小節冒頭の音への装飾音の書法は誤りでT39と同様のものが考えられていたに違いないT56ピアノ(上)2拍目以降の十六分音符に架けられるレガートはd2からとなるT58ピアノcrescは左手の八分音符につけられているT60ピアノ(下)3拍目冒頭に八分休符を補充しかし左手最後の和音は論理的にはチェロコントラバスと同時に弾かれるべきでピアノパートの誤りと考えられる

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T63ピアノ2拍目付近に[cresc]が補充されるべきであるT65ピアノ(上)1拍目ふたつ目から六つ目の十六分音符にはスラーなしのくさび形スタッカートがつけられているしたがってこの小節の1拍目には[flが補充されるべきだろう

T76~80ピアノベートーヴェンはこの小節を誤って八分の三拍子つまり通常の半分の音価の音符で誉いてしまったオリジナルエディション制作の際職人がこの誤りを修正したものの2拍目の三十二分音符だけはそのままにしてしまったもちろんこの音も十六分音符として演奏されるべきである手稿く譜例5>を参照

〆rsquo 一 一 一L壁ご江豐r_トーニーとエユーー

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<譜例5>ピアノ協奏llil第2番第2楽章T73~84(手稿)

T82ピアノ(上)2拍目の音符につけられている前打音のうち2番目の音es2を削除手稿にはオクターブ下blの前打音しか書かれていない現代のピアノでもT74からT83までペダルが踏み続けられる

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T84ピアノconsordinoの指示はベートーヴェンによって後に加えられたものだが思い違いとも考えられる[これ如何によってT83にconsordino(Rダルを離す)の指示を補充すべきかの判断が必要となる]ひょっとすると[T74から踏み続けられている]ペダルはT86の最後まで保持されるべきなのかも知れない

第3楽章Alleqromolto (これがオリジナルの語順である)Tl~ピアノ冒頭は楽譜通りでT8にcrescは書かれていないT27ピアノ(上)手稿もこのように書かれているがT199と比較せよT55ピアノ(上)小節後半のフレージングをT51と同じに修正T139ピアノ(上)四分音符にくさび形のスタッカートを補充T142ピアノ(上)4番目と5番目の八分音符にくさび形のスタッカートを補充T143ピアノ(上)T141と同じフレージングが補充されるべきであるT165ピアノ小節冒頭の音は左右ともスタッカートT199ピアノ(下)冒頭に四分音符fとそれに続く八分休符を補充T205ピアノ(下)冒頭に四分音符のバスesを補充T278ピアノ(上)冒頭のblはオーケストラを示した音符(DilektionsStimme)の可能性がある(手稿ではここに休符が書かれている)T293~297ピアノパー1にはくさび形のスタッカートがつけられているが手稿によればヴィオラチェロとコントラバスはその限りではないピアノパートヘの対比としてベートーヴェンはおそらく弦楽器にはレガートを考えていたのだろうT316ピアノ手稿ではすでにこの小節にppがありさらにT317にも4Gppが書かれている

ピアノ協奏曲第3番作品37

衆知の通りこの協奏曲が完成するまでには長い時間が饗やされている最初のコンセプトが考えられたのは1797年頃だがその後1804年に出版されるまでの間にはベートーヴェンの作曲スタイルが大きな変貌をとげたと同時に楽器その

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ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

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T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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一一一妾一一一一一一一一

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<譜例7>

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カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

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次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

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1L一一一 手 一

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-

壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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<譜例lOcgt

アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

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両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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<譜例12gt

多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

hellipIU eSp r e s s o胸 口 3 3 = a ) =(

<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

畢葬犀E醗酵ldquoハ

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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<譜例15agt

演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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<譜例15bgt

-40-

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<譜例15cgt

レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

一一

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

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奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

- F 雨 ロ 1 1 』 I I

L 1 夕 U I I ロ 廿 ロ ロ p I

Q j0ローローロー一---一一ローーーーー

<譜例17agt

塁8--- - - - - - -ニーーーーニ- - - - - - rsquo

<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 12: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

の秩序が整っていないこのような手法は出版されたベートーヴェンの作品中にほとんど見受けられないこの未公開のカデンツはベートーヴェンがおおむね自分用の覚え書きとして脳裏に浮かび指のおもむくままに即興したアイデアを紙に記しておいたものだろうこれを出版するとなればベートーヴェンは上述の問題点を含めてさらに推敲し改良したと考えられるクラクの提案する短縮案はベートーヴェンが行ったと想像される作業に沿ったものとして真蟄に評価されるべきであるT467469管楽器sf 直後に[p]を補充すべきだろう

第2楽章LarqoT5ピアノ括弧に入れられているcrescは削除T6ピアノ(上)小節冒頭にある三つの三十二分音符からなる前打音はオリジナルエディションに印刷されているものの手稿には含まれていないため省略可能であるT19~26管楽器と弦楽器ポルタートに使用されるのは点のスタッカートでくさび形ではないT26の第2ヴァイオリンパートにあるポルタートはミスプリントで2個目から4個目の八分音符につけられる[訳注T25の第1ヴァイオリンを参照]T27全楽器Iffはすべての楽器においてふたつ目の八分音符からとなるT30~31第1クラリネット小節後半の八分音符はポルタートでなく最後ふたつの八分音符がレガートとなるそれ以外の管楽器は[第2クラリネットも含めて]3音ともポルタート(点のスタッカートにレガート)であるT33ピアノ(上)トリルは後打音とともに終結されるべきだろうT35ピアノ(上)ターンはオリジナルエディションのみに印刷されており手稿に含まれていないこのような装飾音はベートーヴェン初期のスタイルになじまないT50ピアノ小節後半のペダルはconPedではなくPedでありT52の最後まで踏み変えてはならない(現代のピアノでも魅力的な音響となる)T54ピアノ(上)八分音符の前打音as】をこのように旧弊な方法で記譜するのは驚きに値する(オリジナルエディション制作の際の誤りとも考えられる)T55ピアノ(上)3拍目の音は四分音符blで[八分音符glは]ミスプ

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リントであるT57ピアノ(上)T5と同様の内声を補充するがこの小節では四分音符となるT60~74チェロとコントラバスオーケストラのバスを担うこのパートはオイレンブルク社のスコアにおいて正しく印刷されている鯖ltべきことにこのパートはベートーヴェン旧全集において欠落しているため旧全集をもとに作られたほとんどのオーケストラ用パート譜セットでも同様に欠落しており是非とも補充されなければならないT67~73ピアノ(下)ibassibenmarcatoの指示を補充T68ピアノ(上)小節最後のふたつの八分音符es(三連音符)の代わりにこの拍は八分休符ひとつと三連音符ではない通常の八分音符eSlが[旋律のアウフタクトとして]弾かれるT78~79ピアノ(下)2拍目と4拍目のレガートは三連音符最初のふたつの八分音符のみにつけられる

T84コントラバス小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T87~88管楽器小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T91ピアノ(下)ポルタートを付加またconPedをPedに変更[訳注2小節間ペダルを踏み変えない]T93~95クラリネットとファゴット反復される同じ高さの音はポルタートでありスタッカートではないT100~101ピアノ(上)手稿では2拍目にあるターンつき四分音符の代わりに複付点のリズム(該当小節のクラリネット4拍目を参照)となっている(この方がオリジナルエディションに印刷されているターンより美しく群くdeg)

T103~106ピアノピアノパートにはl0colbasso[continuo]の指示があるここで通奏低音の指示にしたがって重奏するのは良好な結果をもたらすT116ピアノdconPedではなくd6Pedであり楽章最後までペダルは踏み変えられない

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第3楽章Alleqroscherzandoテンポ指示のうち66scherzandoはオリジナルエディションに印刷されており信頼すべき表記である

T91517ピアノ括弧に入れられている==二二と=を削除T59~64ピアノすべての強弱記号を削除T73ピアノamppを削除]T77~81ピアノ4crescと$Ifを削除T88ピアノmf を削除T92ピアノ(下)冒頭のバス音はもちろんIBの誤りであるT96ピアノ(上)冒頭のes2は四分音符となるべきだろうT148~151ピアノT148の0lconPedはPedでありT151三つ目の八分音符まで踏み変えないT166~170ピアノcrescとfを削除[T226ピアノlを削除]T232~236ピアノ印刷されている賊弱記号を削除T248第1オーボエふたつ目の八分音符hlの前に括弧入りの臨時記号フラット[b]を補充MT354ピアノampfを削除]T355~367ヒアノすべての06sfを削除T372~378ピアノpidfとIlff を削除T393ピアノcIescを削除T397ピアノffを削除T485ピアノオイレンブルク社のスコアに掲載されているカデンツはベートーヴェンのものではなく演奏すべきではないT558~559ピアノ(上)手稿にある表記く譜例4gtが好ましい印刷されている表記を受け入れる場合でもレガートは小節冒頭の最初のふたつの十六分音符e3-d3だけにつけられるべきだろう

圭倉合坐奪渭558ハ

毎 一 周

首<譜例4>-13-

ピアノ協奏曲第2番作品19

1801年4月22日にベートーヴェンはライプツイヒの出版社ホフマイスターFAHoffmeisterへ以下の書簡を書いている

<私の所有物がいつもきちんと整理整頓されていないことはおそらく

私が恥じるべき唯一のこととはいえ他人にはかわってもらえないのですたとえばいつもの手順に従ったせいで総譜にはピアノパー1がまだ書き込まれておらずそれは今やっと私が書きあげ急いだので乱筆の楽譜ですがこの手紙に添えてお届けします>

ベートーヴェンの書簡の内容には何の誇張もない手稿の総譜ピアノパートはスケッチのような楽想が記入されているのみなどおそるべき状態にある書簡で述べられている自筆のピアノパート譜は長いこと閲覧できなかったがほぼ四半世紀前よりボンのベートーヴェンハウスに所蔵されるようになったしかし当館の研究者と私以外まだ誰もこの貴重な資料を調査した者はいないようだこのパート譜にもオーケストラのトウッテイの声部がピアニストのオリエンテーションのために書き込まれている(Direktionsstimme)

第1楽章AlleOroconbrioT99ピアノlcrescはベートーヴェンによるT101ピアノ最後の和音にくさび形のスタッカートを補充T114ピアノ0pianoを補充T131第2ヴァイオリンfpを削除T134第2ヴァイオリン四つ目の八分音符はClであるT142ピアノ(下)左手の小節冒頭の八分音符ふたつを削除し四分休符に変更するT145ピアノ(上)前打音e2は四分音符であるT149ピアノ手稿ではここでppとなっているoT147のppは再現部T331と比較して誤りと思われるT199チェロとコントラバス最後の音はf音であるT218ピアノ小節の中央部[3拍目あたり]にcresc9を補充

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T222ピアノ[dim]を補充T237ピアノ(上)小節冒頭のeSlはスタッカートであるT262264ピアノひとつ目と五つめの八分音符は譜尾が独立して記されているT263ピアノ(上)小節冒頭の八分音符は譜尾が独立して記されているT275ピアノ(下)三つ目の四分音符はスタッカートである[T276も同様]T281ピアノペダルはT285の最初の音まで踏み変えないT285ピアノ(下)小節冒頭にはバス音Bが書かれているT321ピアノ(上)スラーは次の小節冒頭の四分音符C2まで延長されるT329ピアノ(上)ここのトリルに前打音は書かれていないT337ピアノ=二二を補充T339~340ピアノ(下)すべてのスラーを削除T368~369ピアノ左手の四分音符にスタッカートはつけられていないT370以|朧はすべての四分音符にくさび形のスタッカートがつけられているカデンツベートーヴェンハウスに所蔵されている手稿は[協奏llll本体よりも]ずっと後の時点において創作されたものであるスケッチ風に書かれており各所において以下に挙げるリズムの整術と強弱の補充が必要である⑫

T43984拍目は付点のリズムになる(T8402を参照)T5399(上)右手の開始部に[flを補充]T6400(上)4拍目に[p]を補充T10404(上)上声部冒頭に[l1を補充T13407(上)ふたつ目の音符g2にはbがつけられている(geS2音が弾かれる)これは新全集でも欠落しているT24418小節後半のふたつの和音にはくさび形のスタッカートがつけられるT28422(上)スラーは2拍目から開始されるT35~36429~430(上)T35429よりT36430冒頭の八分音符までスラーを補充

⑫訳注カデンツ冒頭からと第1楽章を通じての小節番号を併記した

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T46440(下)冒頭の音は複付点になっており続く音dlは十六分音符となるT49443(下)すべてを付点リズムで弾くべきである

第2楽章AdaqioT10第1ヴァイオリン冒頭のスラーはふたつ目の三十二分音符から開始されている2拍目のスラーは第2バイオリンとともにalまでしか架けられていない

T16~17ピアノピアノソロの最後はT17冒頭の音も含めてpで演奏されるT17の左手は四分音符で書かれているが右手もそれに合わせるべきだろう手稿においてT17のピアノパート[右手]には八分音符2拍目より第1バイオリンの音がtuttiと0fとともに[ピアニストのオリエンテーション用声部Di=Iktionsslimmeとして]記入されているがこれはもちろんオーケストラのものであるT27ピアノ(下)スラーは存在しない[T29~30のように]小節全体に架かるものを補充すべきだろうT30ピアノ(上)小節冒頭の前打音は三十二分音符fのみであるb2はオリジナルエディションを制作した職人の独断によるものに違いないT32~33チェロとコントラバス2拍目はヴィオラと同じ三十二分音符の音列が演奏される[タイの後に同じ音を再度弾く]T37ピアノ(上)2拍目の和音から小節最後までのスラーを補充T40ピアノ(上)2拍目の右手はb2からeS2までスラーが架けられるT47ピアノ(上)小節冒頭の音への装飾音の書法は誤りでT39と同様のものが考えられていたに違いないT56ピアノ(上)2拍目以降の十六分音符に架けられるレガートはd2からとなるT58ピアノcrescは左手の八分音符につけられているT60ピアノ(下)3拍目冒頭に八分休符を補充しかし左手最後の和音は論理的にはチェロコントラバスと同時に弾かれるべきでピアノパートの誤りと考えられる

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T63ピアノ2拍目付近に[cresc]が補充されるべきであるT65ピアノ(上)1拍目ふたつ目から六つ目の十六分音符にはスラーなしのくさび形スタッカートがつけられているしたがってこの小節の1拍目には[flが補充されるべきだろう

T76~80ピアノベートーヴェンはこの小節を誤って八分の三拍子つまり通常の半分の音価の音符で誉いてしまったオリジナルエディション制作の際職人がこの誤りを修正したものの2拍目の三十二分音符だけはそのままにしてしまったもちろんこの音も十六分音符として演奏されるべきである手稿く譜例5>を参照

〆rsquo 一 一 一L壁ご江豐r_トーニーとエユーー

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<譜例5>ピアノ協奏llil第2番第2楽章T73~84(手稿)

T82ピアノ(上)2拍目の音符につけられている前打音のうち2番目の音es2を削除手稿にはオクターブ下blの前打音しか書かれていない現代のピアノでもT74からT83までペダルが踏み続けられる

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T84ピアノconsordinoの指示はベートーヴェンによって後に加えられたものだが思い違いとも考えられる[これ如何によってT83にconsordino(Rダルを離す)の指示を補充すべきかの判断が必要となる]ひょっとすると[T74から踏み続けられている]ペダルはT86の最後まで保持されるべきなのかも知れない

第3楽章Alleqromolto (これがオリジナルの語順である)Tl~ピアノ冒頭は楽譜通りでT8にcrescは書かれていないT27ピアノ(上)手稿もこのように書かれているがT199と比較せよT55ピアノ(上)小節後半のフレージングをT51と同じに修正T139ピアノ(上)四分音符にくさび形のスタッカートを補充T142ピアノ(上)4番目と5番目の八分音符にくさび形のスタッカートを補充T143ピアノ(上)T141と同じフレージングが補充されるべきであるT165ピアノ小節冒頭の音は左右ともスタッカートT199ピアノ(下)冒頭に四分音符fとそれに続く八分休符を補充T205ピアノ(下)冒頭に四分音符のバスesを補充T278ピアノ(上)冒頭のblはオーケストラを示した音符(DilektionsStimme)の可能性がある(手稿ではここに休符が書かれている)T293~297ピアノパー1にはくさび形のスタッカートがつけられているが手稿によればヴィオラチェロとコントラバスはその限りではないピアノパートヘの対比としてベートーヴェンはおそらく弦楽器にはレガートを考えていたのだろうT316ピアノ手稿ではすでにこの小節にppがありさらにT317にも4Gppが書かれている

ピアノ協奏曲第3番作品37

衆知の通りこの協奏曲が完成するまでには長い時間が饗やされている最初のコンセプトが考えられたのは1797年頃だがその後1804年に出版されるまでの間にはベートーヴェンの作曲スタイルが大きな変貌をとげたと同時に楽器その

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ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

-27-

T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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<譜例7>

-28-

カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

-29-

1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

-30-

けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

-32-

次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

-33-

第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

1L一一一 手 一

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-

壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

-35-

演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

-36-

<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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<譜例12gt

多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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<譜例15agt

演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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<譜例15bgt

-40-

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<譜例15cgt

レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

一一

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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L 1 夕 U I I ロ 廿 ロ ロ p I

Q j0ローローロー一---一一ローーーーー

<譜例17agt

塁8--- - - - - - -ニーーーーニ- - - - - - rsquo

<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

-42-

以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

-43-

Page 13: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

リントであるT57ピアノ(上)T5と同様の内声を補充するがこの小節では四分音符となるT60~74チェロとコントラバスオーケストラのバスを担うこのパートはオイレンブルク社のスコアにおいて正しく印刷されている鯖ltべきことにこのパートはベートーヴェン旧全集において欠落しているため旧全集をもとに作られたほとんどのオーケストラ用パート譜セットでも同様に欠落しており是非とも補充されなければならないT67~73ピアノ(下)ibassibenmarcatoの指示を補充T68ピアノ(上)小節最後のふたつの八分音符es(三連音符)の代わりにこの拍は八分休符ひとつと三連音符ではない通常の八分音符eSlが[旋律のアウフタクトとして]弾かれるT78~79ピアノ(下)2拍目と4拍目のレガートは三連音符最初のふたつの八分音符のみにつけられる

T84コントラバス小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T87~88管楽器小節前半の三連音符のうち2個目から6個目の八分音符にポルタートを付加T91ピアノ(下)ポルタートを付加またconPedをPedに変更[訳注2小節間ペダルを踏み変えない]T93~95クラリネットとファゴット反復される同じ高さの音はポルタートでありスタッカートではないT100~101ピアノ(上)手稿では2拍目にあるターンつき四分音符の代わりに複付点のリズム(該当小節のクラリネット4拍目を参照)となっている(この方がオリジナルエディションに印刷されているターンより美しく群くdeg)

T103~106ピアノピアノパートにはl0colbasso[continuo]の指示があるここで通奏低音の指示にしたがって重奏するのは良好な結果をもたらすT116ピアノdconPedではなくd6Pedであり楽章最後までペダルは踏み変えられない

- 12 -

第3楽章Alleqroscherzandoテンポ指示のうち66scherzandoはオリジナルエディションに印刷されており信頼すべき表記である

T91517ピアノ括弧に入れられている==二二と=を削除T59~64ピアノすべての強弱記号を削除T73ピアノamppを削除]T77~81ピアノ4crescと$Ifを削除T88ピアノmf を削除T92ピアノ(下)冒頭のバス音はもちろんIBの誤りであるT96ピアノ(上)冒頭のes2は四分音符となるべきだろうT148~151ピアノT148の0lconPedはPedでありT151三つ目の八分音符まで踏み変えないT166~170ピアノcrescとfを削除[T226ピアノlを削除]T232~236ピアノ印刷されている賊弱記号を削除T248第1オーボエふたつ目の八分音符hlの前に括弧入りの臨時記号フラット[b]を補充MT354ピアノampfを削除]T355~367ヒアノすべての06sfを削除T372~378ピアノpidfとIlff を削除T393ピアノcIescを削除T397ピアノffを削除T485ピアノオイレンブルク社のスコアに掲載されているカデンツはベートーヴェンのものではなく演奏すべきではないT558~559ピアノ(上)手稿にある表記く譜例4gtが好ましい印刷されている表記を受け入れる場合でもレガートは小節冒頭の最初のふたつの十六分音符e3-d3だけにつけられるべきだろう

圭倉合坐奪渭558ハ

毎 一 周

首<譜例4>-13-

ピアノ協奏曲第2番作品19

1801年4月22日にベートーヴェンはライプツイヒの出版社ホフマイスターFAHoffmeisterへ以下の書簡を書いている

<私の所有物がいつもきちんと整理整頓されていないことはおそらく

私が恥じるべき唯一のこととはいえ他人にはかわってもらえないのですたとえばいつもの手順に従ったせいで総譜にはピアノパー1がまだ書き込まれておらずそれは今やっと私が書きあげ急いだので乱筆の楽譜ですがこの手紙に添えてお届けします>

ベートーヴェンの書簡の内容には何の誇張もない手稿の総譜ピアノパートはスケッチのような楽想が記入されているのみなどおそるべき状態にある書簡で述べられている自筆のピアノパート譜は長いこと閲覧できなかったがほぼ四半世紀前よりボンのベートーヴェンハウスに所蔵されるようになったしかし当館の研究者と私以外まだ誰もこの貴重な資料を調査した者はいないようだこのパート譜にもオーケストラのトウッテイの声部がピアニストのオリエンテーションのために書き込まれている(Direktionsstimme)

第1楽章AlleOroconbrioT99ピアノlcrescはベートーヴェンによるT101ピアノ最後の和音にくさび形のスタッカートを補充T114ピアノ0pianoを補充T131第2ヴァイオリンfpを削除T134第2ヴァイオリン四つ目の八分音符はClであるT142ピアノ(下)左手の小節冒頭の八分音符ふたつを削除し四分休符に変更するT145ピアノ(上)前打音e2は四分音符であるT149ピアノ手稿ではここでppとなっているoT147のppは再現部T331と比較して誤りと思われるT199チェロとコントラバス最後の音はf音であるT218ピアノ小節の中央部[3拍目あたり]にcresc9を補充

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T222ピアノ[dim]を補充T237ピアノ(上)小節冒頭のeSlはスタッカートであるT262264ピアノひとつ目と五つめの八分音符は譜尾が独立して記されているT263ピアノ(上)小節冒頭の八分音符は譜尾が独立して記されているT275ピアノ(下)三つ目の四分音符はスタッカートである[T276も同様]T281ピアノペダルはT285の最初の音まで踏み変えないT285ピアノ(下)小節冒頭にはバス音Bが書かれているT321ピアノ(上)スラーは次の小節冒頭の四分音符C2まで延長されるT329ピアノ(上)ここのトリルに前打音は書かれていないT337ピアノ=二二を補充T339~340ピアノ(下)すべてのスラーを削除T368~369ピアノ左手の四分音符にスタッカートはつけられていないT370以|朧はすべての四分音符にくさび形のスタッカートがつけられているカデンツベートーヴェンハウスに所蔵されている手稿は[協奏llll本体よりも]ずっと後の時点において創作されたものであるスケッチ風に書かれており各所において以下に挙げるリズムの整術と強弱の補充が必要である⑫

T43984拍目は付点のリズムになる(T8402を参照)T5399(上)右手の開始部に[flを補充]T6400(上)4拍目に[p]を補充T10404(上)上声部冒頭に[l1を補充T13407(上)ふたつ目の音符g2にはbがつけられている(geS2音が弾かれる)これは新全集でも欠落しているT24418小節後半のふたつの和音にはくさび形のスタッカートがつけられるT28422(上)スラーは2拍目から開始されるT35~36429~430(上)T35429よりT36430冒頭の八分音符までスラーを補充

⑫訳注カデンツ冒頭からと第1楽章を通じての小節番号を併記した

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T46440(下)冒頭の音は複付点になっており続く音dlは十六分音符となるT49443(下)すべてを付点リズムで弾くべきである

第2楽章AdaqioT10第1ヴァイオリン冒頭のスラーはふたつ目の三十二分音符から開始されている2拍目のスラーは第2バイオリンとともにalまでしか架けられていない

T16~17ピアノピアノソロの最後はT17冒頭の音も含めてpで演奏されるT17の左手は四分音符で書かれているが右手もそれに合わせるべきだろう手稿においてT17のピアノパート[右手]には八分音符2拍目より第1バイオリンの音がtuttiと0fとともに[ピアニストのオリエンテーション用声部Di=Iktionsslimmeとして]記入されているがこれはもちろんオーケストラのものであるT27ピアノ(下)スラーは存在しない[T29~30のように]小節全体に架かるものを補充すべきだろうT30ピアノ(上)小節冒頭の前打音は三十二分音符fのみであるb2はオリジナルエディションを制作した職人の独断によるものに違いないT32~33チェロとコントラバス2拍目はヴィオラと同じ三十二分音符の音列が演奏される[タイの後に同じ音を再度弾く]T37ピアノ(上)2拍目の和音から小節最後までのスラーを補充T40ピアノ(上)2拍目の右手はb2からeS2までスラーが架けられるT47ピアノ(上)小節冒頭の音への装飾音の書法は誤りでT39と同様のものが考えられていたに違いないT56ピアノ(上)2拍目以降の十六分音符に架けられるレガートはd2からとなるT58ピアノcrescは左手の八分音符につけられているT60ピアノ(下)3拍目冒頭に八分休符を補充しかし左手最後の和音は論理的にはチェロコントラバスと同時に弾かれるべきでピアノパートの誤りと考えられる

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T63ピアノ2拍目付近に[cresc]が補充されるべきであるT65ピアノ(上)1拍目ふたつ目から六つ目の十六分音符にはスラーなしのくさび形スタッカートがつけられているしたがってこの小節の1拍目には[flが補充されるべきだろう

T76~80ピアノベートーヴェンはこの小節を誤って八分の三拍子つまり通常の半分の音価の音符で誉いてしまったオリジナルエディション制作の際職人がこの誤りを修正したものの2拍目の三十二分音符だけはそのままにしてしまったもちろんこの音も十六分音符として演奏されるべきである手稿く譜例5>を参照

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<譜例5>ピアノ協奏llil第2番第2楽章T73~84(手稿)

T82ピアノ(上)2拍目の音符につけられている前打音のうち2番目の音es2を削除手稿にはオクターブ下blの前打音しか書かれていない現代のピアノでもT74からT83までペダルが踏み続けられる

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T84ピアノconsordinoの指示はベートーヴェンによって後に加えられたものだが思い違いとも考えられる[これ如何によってT83にconsordino(Rダルを離す)の指示を補充すべきかの判断が必要となる]ひょっとすると[T74から踏み続けられている]ペダルはT86の最後まで保持されるべきなのかも知れない

第3楽章Alleqromolto (これがオリジナルの語順である)Tl~ピアノ冒頭は楽譜通りでT8にcrescは書かれていないT27ピアノ(上)手稿もこのように書かれているがT199と比較せよT55ピアノ(上)小節後半のフレージングをT51と同じに修正T139ピアノ(上)四分音符にくさび形のスタッカートを補充T142ピアノ(上)4番目と5番目の八分音符にくさび形のスタッカートを補充T143ピアノ(上)T141と同じフレージングが補充されるべきであるT165ピアノ小節冒頭の音は左右ともスタッカートT199ピアノ(下)冒頭に四分音符fとそれに続く八分休符を補充T205ピアノ(下)冒頭に四分音符のバスesを補充T278ピアノ(上)冒頭のblはオーケストラを示した音符(DilektionsStimme)の可能性がある(手稿ではここに休符が書かれている)T293~297ピアノパー1にはくさび形のスタッカートがつけられているが手稿によればヴィオラチェロとコントラバスはその限りではないピアノパートヘの対比としてベートーヴェンはおそらく弦楽器にはレガートを考えていたのだろうT316ピアノ手稿ではすでにこの小節にppがありさらにT317にも4Gppが書かれている

ピアノ協奏曲第3番作品37

衆知の通りこの協奏曲が完成するまでには長い時間が饗やされている最初のコンセプトが考えられたのは1797年頃だがその後1804年に出版されるまでの間にはベートーヴェンの作曲スタイルが大きな変貌をとげたと同時に楽器その

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ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

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T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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一一一妾一一一一一一一一

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<譜例7>

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カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

-30-

けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

-32-

次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

-33-

第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

1L一一一 手 一

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壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

-35-

演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

-36-

<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

一一

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17agt

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

-42-

以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

-43-

Page 14: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

第3楽章Alleqroscherzandoテンポ指示のうち66scherzandoはオリジナルエディションに印刷されており信頼すべき表記である

T91517ピアノ括弧に入れられている==二二と=を削除T59~64ピアノすべての強弱記号を削除T73ピアノamppを削除]T77~81ピアノ4crescと$Ifを削除T88ピアノmf を削除T92ピアノ(下)冒頭のバス音はもちろんIBの誤りであるT96ピアノ(上)冒頭のes2は四分音符となるべきだろうT148~151ピアノT148の0lconPedはPedでありT151三つ目の八分音符まで踏み変えないT166~170ピアノcrescとfを削除[T226ピアノlを削除]T232~236ピアノ印刷されている賊弱記号を削除T248第1オーボエふたつ目の八分音符hlの前に括弧入りの臨時記号フラット[b]を補充MT354ピアノampfを削除]T355~367ヒアノすべての06sfを削除T372~378ピアノpidfとIlff を削除T393ピアノcIescを削除T397ピアノffを削除T485ピアノオイレンブルク社のスコアに掲載されているカデンツはベートーヴェンのものではなく演奏すべきではないT558~559ピアノ(上)手稿にある表記く譜例4gtが好ましい印刷されている表記を受け入れる場合でもレガートは小節冒頭の最初のふたつの十六分音符e3-d3だけにつけられるべきだろう

圭倉合坐奪渭558ハ

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首<譜例4>-13-

ピアノ協奏曲第2番作品19

1801年4月22日にベートーヴェンはライプツイヒの出版社ホフマイスターFAHoffmeisterへ以下の書簡を書いている

<私の所有物がいつもきちんと整理整頓されていないことはおそらく

私が恥じるべき唯一のこととはいえ他人にはかわってもらえないのですたとえばいつもの手順に従ったせいで総譜にはピアノパー1がまだ書き込まれておらずそれは今やっと私が書きあげ急いだので乱筆の楽譜ですがこの手紙に添えてお届けします>

ベートーヴェンの書簡の内容には何の誇張もない手稿の総譜ピアノパートはスケッチのような楽想が記入されているのみなどおそるべき状態にある書簡で述べられている自筆のピアノパート譜は長いこと閲覧できなかったがほぼ四半世紀前よりボンのベートーヴェンハウスに所蔵されるようになったしかし当館の研究者と私以外まだ誰もこの貴重な資料を調査した者はいないようだこのパート譜にもオーケストラのトウッテイの声部がピアニストのオリエンテーションのために書き込まれている(Direktionsstimme)

第1楽章AlleOroconbrioT99ピアノlcrescはベートーヴェンによるT101ピアノ最後の和音にくさび形のスタッカートを補充T114ピアノ0pianoを補充T131第2ヴァイオリンfpを削除T134第2ヴァイオリン四つ目の八分音符はClであるT142ピアノ(下)左手の小節冒頭の八分音符ふたつを削除し四分休符に変更するT145ピアノ(上)前打音e2は四分音符であるT149ピアノ手稿ではここでppとなっているoT147のppは再現部T331と比較して誤りと思われるT199チェロとコントラバス最後の音はf音であるT218ピアノ小節の中央部[3拍目あたり]にcresc9を補充

-14-

T222ピアノ[dim]を補充T237ピアノ(上)小節冒頭のeSlはスタッカートであるT262264ピアノひとつ目と五つめの八分音符は譜尾が独立して記されているT263ピアノ(上)小節冒頭の八分音符は譜尾が独立して記されているT275ピアノ(下)三つ目の四分音符はスタッカートである[T276も同様]T281ピアノペダルはT285の最初の音まで踏み変えないT285ピアノ(下)小節冒頭にはバス音Bが書かれているT321ピアノ(上)スラーは次の小節冒頭の四分音符C2まで延長されるT329ピアノ(上)ここのトリルに前打音は書かれていないT337ピアノ=二二を補充T339~340ピアノ(下)すべてのスラーを削除T368~369ピアノ左手の四分音符にスタッカートはつけられていないT370以|朧はすべての四分音符にくさび形のスタッカートがつけられているカデンツベートーヴェンハウスに所蔵されている手稿は[協奏llll本体よりも]ずっと後の時点において創作されたものであるスケッチ風に書かれており各所において以下に挙げるリズムの整術と強弱の補充が必要である⑫

T43984拍目は付点のリズムになる(T8402を参照)T5399(上)右手の開始部に[flを補充]T6400(上)4拍目に[p]を補充T10404(上)上声部冒頭に[l1を補充T13407(上)ふたつ目の音符g2にはbがつけられている(geS2音が弾かれる)これは新全集でも欠落しているT24418小節後半のふたつの和音にはくさび形のスタッカートがつけられるT28422(上)スラーは2拍目から開始されるT35~36429~430(上)T35429よりT36430冒頭の八分音符までスラーを補充

⑫訳注カデンツ冒頭からと第1楽章を通じての小節番号を併記した

-15-

T46440(下)冒頭の音は複付点になっており続く音dlは十六分音符となるT49443(下)すべてを付点リズムで弾くべきである

第2楽章AdaqioT10第1ヴァイオリン冒頭のスラーはふたつ目の三十二分音符から開始されている2拍目のスラーは第2バイオリンとともにalまでしか架けられていない

T16~17ピアノピアノソロの最後はT17冒頭の音も含めてpで演奏されるT17の左手は四分音符で書かれているが右手もそれに合わせるべきだろう手稿においてT17のピアノパート[右手]には八分音符2拍目より第1バイオリンの音がtuttiと0fとともに[ピアニストのオリエンテーション用声部Di=Iktionsslimmeとして]記入されているがこれはもちろんオーケストラのものであるT27ピアノ(下)スラーは存在しない[T29~30のように]小節全体に架かるものを補充すべきだろうT30ピアノ(上)小節冒頭の前打音は三十二分音符fのみであるb2はオリジナルエディションを制作した職人の独断によるものに違いないT32~33チェロとコントラバス2拍目はヴィオラと同じ三十二分音符の音列が演奏される[タイの後に同じ音を再度弾く]T37ピアノ(上)2拍目の和音から小節最後までのスラーを補充T40ピアノ(上)2拍目の右手はb2からeS2までスラーが架けられるT47ピアノ(上)小節冒頭の音への装飾音の書法は誤りでT39と同様のものが考えられていたに違いないT56ピアノ(上)2拍目以降の十六分音符に架けられるレガートはd2からとなるT58ピアノcrescは左手の八分音符につけられているT60ピアノ(下)3拍目冒頭に八分休符を補充しかし左手最後の和音は論理的にはチェロコントラバスと同時に弾かれるべきでピアノパートの誤りと考えられる

-16 -

T63ピアノ2拍目付近に[cresc]が補充されるべきであるT65ピアノ(上)1拍目ふたつ目から六つ目の十六分音符にはスラーなしのくさび形スタッカートがつけられているしたがってこの小節の1拍目には[flが補充されるべきだろう

T76~80ピアノベートーヴェンはこの小節を誤って八分の三拍子つまり通常の半分の音価の音符で誉いてしまったオリジナルエディション制作の際職人がこの誤りを修正したものの2拍目の三十二分音符だけはそのままにしてしまったもちろんこの音も十六分音符として演奏されるべきである手稿く譜例5>を参照

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<譜例5>ピアノ協奏llil第2番第2楽章T73~84(手稿)

T82ピアノ(上)2拍目の音符につけられている前打音のうち2番目の音es2を削除手稿にはオクターブ下blの前打音しか書かれていない現代のピアノでもT74からT83までペダルが踏み続けられる

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T84ピアノconsordinoの指示はベートーヴェンによって後に加えられたものだが思い違いとも考えられる[これ如何によってT83にconsordino(Rダルを離す)の指示を補充すべきかの判断が必要となる]ひょっとすると[T74から踏み続けられている]ペダルはT86の最後まで保持されるべきなのかも知れない

第3楽章Alleqromolto (これがオリジナルの語順である)Tl~ピアノ冒頭は楽譜通りでT8にcrescは書かれていないT27ピアノ(上)手稿もこのように書かれているがT199と比較せよT55ピアノ(上)小節後半のフレージングをT51と同じに修正T139ピアノ(上)四分音符にくさび形のスタッカートを補充T142ピアノ(上)4番目と5番目の八分音符にくさび形のスタッカートを補充T143ピアノ(上)T141と同じフレージングが補充されるべきであるT165ピアノ小節冒頭の音は左右ともスタッカートT199ピアノ(下)冒頭に四分音符fとそれに続く八分休符を補充T205ピアノ(下)冒頭に四分音符のバスesを補充T278ピアノ(上)冒頭のblはオーケストラを示した音符(DilektionsStimme)の可能性がある(手稿ではここに休符が書かれている)T293~297ピアノパー1にはくさび形のスタッカートがつけられているが手稿によればヴィオラチェロとコントラバスはその限りではないピアノパートヘの対比としてベートーヴェンはおそらく弦楽器にはレガートを考えていたのだろうT316ピアノ手稿ではすでにこの小節にppがありさらにT317にも4Gppが書かれている

ピアノ協奏曲第3番作品37

衆知の通りこの協奏曲が完成するまでには長い時間が饗やされている最初のコンセプトが考えられたのは1797年頃だがその後1804年に出版されるまでの間にはベートーヴェンの作曲スタイルが大きな変貌をとげたと同時に楽器その

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ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

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T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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一一一妾一一一一一一一一

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<譜例7>

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カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

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次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

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壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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-40-

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 15: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

ピアノ協奏曲第2番作品19

1801年4月22日にベートーヴェンはライプツイヒの出版社ホフマイスターFAHoffmeisterへ以下の書簡を書いている

<私の所有物がいつもきちんと整理整頓されていないことはおそらく

私が恥じるべき唯一のこととはいえ他人にはかわってもらえないのですたとえばいつもの手順に従ったせいで総譜にはピアノパー1がまだ書き込まれておらずそれは今やっと私が書きあげ急いだので乱筆の楽譜ですがこの手紙に添えてお届けします>

ベートーヴェンの書簡の内容には何の誇張もない手稿の総譜ピアノパートはスケッチのような楽想が記入されているのみなどおそるべき状態にある書簡で述べられている自筆のピアノパート譜は長いこと閲覧できなかったがほぼ四半世紀前よりボンのベートーヴェンハウスに所蔵されるようになったしかし当館の研究者と私以外まだ誰もこの貴重な資料を調査した者はいないようだこのパート譜にもオーケストラのトウッテイの声部がピアニストのオリエンテーションのために書き込まれている(Direktionsstimme)

第1楽章AlleOroconbrioT99ピアノlcrescはベートーヴェンによるT101ピアノ最後の和音にくさび形のスタッカートを補充T114ピアノ0pianoを補充T131第2ヴァイオリンfpを削除T134第2ヴァイオリン四つ目の八分音符はClであるT142ピアノ(下)左手の小節冒頭の八分音符ふたつを削除し四分休符に変更するT145ピアノ(上)前打音e2は四分音符であるT149ピアノ手稿ではここでppとなっているoT147のppは再現部T331と比較して誤りと思われるT199チェロとコントラバス最後の音はf音であるT218ピアノ小節の中央部[3拍目あたり]にcresc9を補充

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T222ピアノ[dim]を補充T237ピアノ(上)小節冒頭のeSlはスタッカートであるT262264ピアノひとつ目と五つめの八分音符は譜尾が独立して記されているT263ピアノ(上)小節冒頭の八分音符は譜尾が独立して記されているT275ピアノ(下)三つ目の四分音符はスタッカートである[T276も同様]T281ピアノペダルはT285の最初の音まで踏み変えないT285ピアノ(下)小節冒頭にはバス音Bが書かれているT321ピアノ(上)スラーは次の小節冒頭の四分音符C2まで延長されるT329ピアノ(上)ここのトリルに前打音は書かれていないT337ピアノ=二二を補充T339~340ピアノ(下)すべてのスラーを削除T368~369ピアノ左手の四分音符にスタッカートはつけられていないT370以|朧はすべての四分音符にくさび形のスタッカートがつけられているカデンツベートーヴェンハウスに所蔵されている手稿は[協奏llll本体よりも]ずっと後の時点において創作されたものであるスケッチ風に書かれており各所において以下に挙げるリズムの整術と強弱の補充が必要である⑫

T43984拍目は付点のリズムになる(T8402を参照)T5399(上)右手の開始部に[flを補充]T6400(上)4拍目に[p]を補充T10404(上)上声部冒頭に[l1を補充T13407(上)ふたつ目の音符g2にはbがつけられている(geS2音が弾かれる)これは新全集でも欠落しているT24418小節後半のふたつの和音にはくさび形のスタッカートがつけられるT28422(上)スラーは2拍目から開始されるT35~36429~430(上)T35429よりT36430冒頭の八分音符までスラーを補充

⑫訳注カデンツ冒頭からと第1楽章を通じての小節番号を併記した

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T46440(下)冒頭の音は複付点になっており続く音dlは十六分音符となるT49443(下)すべてを付点リズムで弾くべきである

第2楽章AdaqioT10第1ヴァイオリン冒頭のスラーはふたつ目の三十二分音符から開始されている2拍目のスラーは第2バイオリンとともにalまでしか架けられていない

T16~17ピアノピアノソロの最後はT17冒頭の音も含めてpで演奏されるT17の左手は四分音符で書かれているが右手もそれに合わせるべきだろう手稿においてT17のピアノパート[右手]には八分音符2拍目より第1バイオリンの音がtuttiと0fとともに[ピアニストのオリエンテーション用声部Di=Iktionsslimmeとして]記入されているがこれはもちろんオーケストラのものであるT27ピアノ(下)スラーは存在しない[T29~30のように]小節全体に架かるものを補充すべきだろうT30ピアノ(上)小節冒頭の前打音は三十二分音符fのみであるb2はオリジナルエディションを制作した職人の独断によるものに違いないT32~33チェロとコントラバス2拍目はヴィオラと同じ三十二分音符の音列が演奏される[タイの後に同じ音を再度弾く]T37ピアノ(上)2拍目の和音から小節最後までのスラーを補充T40ピアノ(上)2拍目の右手はb2からeS2までスラーが架けられるT47ピアノ(上)小節冒頭の音への装飾音の書法は誤りでT39と同様のものが考えられていたに違いないT56ピアノ(上)2拍目以降の十六分音符に架けられるレガートはd2からとなるT58ピアノcrescは左手の八分音符につけられているT60ピアノ(下)3拍目冒頭に八分休符を補充しかし左手最後の和音は論理的にはチェロコントラバスと同時に弾かれるべきでピアノパートの誤りと考えられる

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T63ピアノ2拍目付近に[cresc]が補充されるべきであるT65ピアノ(上)1拍目ふたつ目から六つ目の十六分音符にはスラーなしのくさび形スタッカートがつけられているしたがってこの小節の1拍目には[flが補充されるべきだろう

T76~80ピアノベートーヴェンはこの小節を誤って八分の三拍子つまり通常の半分の音価の音符で誉いてしまったオリジナルエディション制作の際職人がこの誤りを修正したものの2拍目の三十二分音符だけはそのままにしてしまったもちろんこの音も十六分音符として演奏されるべきである手稿く譜例5>を参照

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<譜例5>ピアノ協奏llil第2番第2楽章T73~84(手稿)

T82ピアノ(上)2拍目の音符につけられている前打音のうち2番目の音es2を削除手稿にはオクターブ下blの前打音しか書かれていない現代のピアノでもT74からT83までペダルが踏み続けられる

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T84ピアノconsordinoの指示はベートーヴェンによって後に加えられたものだが思い違いとも考えられる[これ如何によってT83にconsordino(Rダルを離す)の指示を補充すべきかの判断が必要となる]ひょっとすると[T74から踏み続けられている]ペダルはT86の最後まで保持されるべきなのかも知れない

第3楽章Alleqromolto (これがオリジナルの語順である)Tl~ピアノ冒頭は楽譜通りでT8にcrescは書かれていないT27ピアノ(上)手稿もこのように書かれているがT199と比較せよT55ピアノ(上)小節後半のフレージングをT51と同じに修正T139ピアノ(上)四分音符にくさび形のスタッカートを補充T142ピアノ(上)4番目と5番目の八分音符にくさび形のスタッカートを補充T143ピアノ(上)T141と同じフレージングが補充されるべきであるT165ピアノ小節冒頭の音は左右ともスタッカートT199ピアノ(下)冒頭に四分音符fとそれに続く八分休符を補充T205ピアノ(下)冒頭に四分音符のバスesを補充T278ピアノ(上)冒頭のblはオーケストラを示した音符(DilektionsStimme)の可能性がある(手稿ではここに休符が書かれている)T293~297ピアノパー1にはくさび形のスタッカートがつけられているが手稿によればヴィオラチェロとコントラバスはその限りではないピアノパートヘの対比としてベートーヴェンはおそらく弦楽器にはレガートを考えていたのだろうT316ピアノ手稿ではすでにこの小節にppがありさらにT317にも4Gppが書かれている

ピアノ協奏曲第3番作品37

衆知の通りこの協奏曲が完成するまでには長い時間が饗やされている最初のコンセプトが考えられたのは1797年頃だがその後1804年に出版されるまでの間にはベートーヴェンの作曲スタイルが大きな変貌をとげたと同時に楽器その

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ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

- 2 1 -

T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

-22-

ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

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T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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一一一妾一一一一一一一一

一一雪一一一一戸一一戸一一一一一1

<譜例7>

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カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

-32-

次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

1L一一一 手 一

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-

壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

-36-

<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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<譜例15cgt

レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

一一

rsquo

<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

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奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

- F 雨 ロ 1 1 』 I I

L 1 夕 U I I ロ 廿 ロ ロ p I

Q j0ローローロー一---一一ローーーーー

<譜例17agt

塁8--- - - - - - -ニーーーーニ- - - - - - rsquo

<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 16: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

T222ピアノ[dim]を補充T237ピアノ(上)小節冒頭のeSlはスタッカートであるT262264ピアノひとつ目と五つめの八分音符は譜尾が独立して記されているT263ピアノ(上)小節冒頭の八分音符は譜尾が独立して記されているT275ピアノ(下)三つ目の四分音符はスタッカートである[T276も同様]T281ピアノペダルはT285の最初の音まで踏み変えないT285ピアノ(下)小節冒頭にはバス音Bが書かれているT321ピアノ(上)スラーは次の小節冒頭の四分音符C2まで延長されるT329ピアノ(上)ここのトリルに前打音は書かれていないT337ピアノ=二二を補充T339~340ピアノ(下)すべてのスラーを削除T368~369ピアノ左手の四分音符にスタッカートはつけられていないT370以|朧はすべての四分音符にくさび形のスタッカートがつけられているカデンツベートーヴェンハウスに所蔵されている手稿は[協奏llll本体よりも]ずっと後の時点において創作されたものであるスケッチ風に書かれており各所において以下に挙げるリズムの整術と強弱の補充が必要である⑫

T43984拍目は付点のリズムになる(T8402を参照)T5399(上)右手の開始部に[flを補充]T6400(上)4拍目に[p]を補充T10404(上)上声部冒頭に[l1を補充T13407(上)ふたつ目の音符g2にはbがつけられている(geS2音が弾かれる)これは新全集でも欠落しているT24418小節後半のふたつの和音にはくさび形のスタッカートがつけられるT28422(上)スラーは2拍目から開始されるT35~36429~430(上)T35429よりT36430冒頭の八分音符までスラーを補充

⑫訳注カデンツ冒頭からと第1楽章を通じての小節番号を併記した

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T46440(下)冒頭の音は複付点になっており続く音dlは十六分音符となるT49443(下)すべてを付点リズムで弾くべきである

第2楽章AdaqioT10第1ヴァイオリン冒頭のスラーはふたつ目の三十二分音符から開始されている2拍目のスラーは第2バイオリンとともにalまでしか架けられていない

T16~17ピアノピアノソロの最後はT17冒頭の音も含めてpで演奏されるT17の左手は四分音符で書かれているが右手もそれに合わせるべきだろう手稿においてT17のピアノパート[右手]には八分音符2拍目より第1バイオリンの音がtuttiと0fとともに[ピアニストのオリエンテーション用声部Di=Iktionsslimmeとして]記入されているがこれはもちろんオーケストラのものであるT27ピアノ(下)スラーは存在しない[T29~30のように]小節全体に架かるものを補充すべきだろうT30ピアノ(上)小節冒頭の前打音は三十二分音符fのみであるb2はオリジナルエディションを制作した職人の独断によるものに違いないT32~33チェロとコントラバス2拍目はヴィオラと同じ三十二分音符の音列が演奏される[タイの後に同じ音を再度弾く]T37ピアノ(上)2拍目の和音から小節最後までのスラーを補充T40ピアノ(上)2拍目の右手はb2からeS2までスラーが架けられるT47ピアノ(上)小節冒頭の音への装飾音の書法は誤りでT39と同様のものが考えられていたに違いないT56ピアノ(上)2拍目以降の十六分音符に架けられるレガートはd2からとなるT58ピアノcrescは左手の八分音符につけられているT60ピアノ(下)3拍目冒頭に八分休符を補充しかし左手最後の和音は論理的にはチェロコントラバスと同時に弾かれるべきでピアノパートの誤りと考えられる

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T63ピアノ2拍目付近に[cresc]が補充されるべきであるT65ピアノ(上)1拍目ふたつ目から六つ目の十六分音符にはスラーなしのくさび形スタッカートがつけられているしたがってこの小節の1拍目には[flが補充されるべきだろう

T76~80ピアノベートーヴェンはこの小節を誤って八分の三拍子つまり通常の半分の音価の音符で誉いてしまったオリジナルエディション制作の際職人がこの誤りを修正したものの2拍目の三十二分音符だけはそのままにしてしまったもちろんこの音も十六分音符として演奏されるべきである手稿く譜例5>を参照

〆rsquo 一 一 一L壁ご江豐r_トーニーとエユーー

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9画6一睡岬一ケ一一幸一一一一一一一

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<譜例5>ピアノ協奏llil第2番第2楽章T73~84(手稿)

T82ピアノ(上)2拍目の音符につけられている前打音のうち2番目の音es2を削除手稿にはオクターブ下blの前打音しか書かれていない現代のピアノでもT74からT83までペダルが踏み続けられる

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T84ピアノconsordinoの指示はベートーヴェンによって後に加えられたものだが思い違いとも考えられる[これ如何によってT83にconsordino(Rダルを離す)の指示を補充すべきかの判断が必要となる]ひょっとすると[T74から踏み続けられている]ペダルはT86の最後まで保持されるべきなのかも知れない

第3楽章Alleqromolto (これがオリジナルの語順である)Tl~ピアノ冒頭は楽譜通りでT8にcrescは書かれていないT27ピアノ(上)手稿もこのように書かれているがT199と比較せよT55ピアノ(上)小節後半のフレージングをT51と同じに修正T139ピアノ(上)四分音符にくさび形のスタッカートを補充T142ピアノ(上)4番目と5番目の八分音符にくさび形のスタッカートを補充T143ピアノ(上)T141と同じフレージングが補充されるべきであるT165ピアノ小節冒頭の音は左右ともスタッカートT199ピアノ(下)冒頭に四分音符fとそれに続く八分休符を補充T205ピアノ(下)冒頭に四分音符のバスesを補充T278ピアノ(上)冒頭のblはオーケストラを示した音符(DilektionsStimme)の可能性がある(手稿ではここに休符が書かれている)T293~297ピアノパー1にはくさび形のスタッカートがつけられているが手稿によればヴィオラチェロとコントラバスはその限りではないピアノパートヘの対比としてベートーヴェンはおそらく弦楽器にはレガートを考えていたのだろうT316ピアノ手稿ではすでにこの小節にppがありさらにT317にも4Gppが書かれている

ピアノ協奏曲第3番作品37

衆知の通りこの協奏曲が完成するまでには長い時間が饗やされている最初のコンセプトが考えられたのは1797年頃だがその後1804年に出版されるまでの間にはベートーヴェンの作曲スタイルが大きな変貌をとげたと同時に楽器その

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ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

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T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

瀞5含鼻盧農_今屡雲需{ 一

一一一妾一一一一一一一一

一一雪一一一一戸一一戸一一一一一1

<譜例7>

-28-

カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

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次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

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ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

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両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

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奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 17: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

T46440(下)冒頭の音は複付点になっており続く音dlは十六分音符となるT49443(下)すべてを付点リズムで弾くべきである

第2楽章AdaqioT10第1ヴァイオリン冒頭のスラーはふたつ目の三十二分音符から開始されている2拍目のスラーは第2バイオリンとともにalまでしか架けられていない

T16~17ピアノピアノソロの最後はT17冒頭の音も含めてpで演奏されるT17の左手は四分音符で書かれているが右手もそれに合わせるべきだろう手稿においてT17のピアノパート[右手]には八分音符2拍目より第1バイオリンの音がtuttiと0fとともに[ピアニストのオリエンテーション用声部Di=Iktionsslimmeとして]記入されているがこれはもちろんオーケストラのものであるT27ピアノ(下)スラーは存在しない[T29~30のように]小節全体に架かるものを補充すべきだろうT30ピアノ(上)小節冒頭の前打音は三十二分音符fのみであるb2はオリジナルエディションを制作した職人の独断によるものに違いないT32~33チェロとコントラバス2拍目はヴィオラと同じ三十二分音符の音列が演奏される[タイの後に同じ音を再度弾く]T37ピアノ(上)2拍目の和音から小節最後までのスラーを補充T40ピアノ(上)2拍目の右手はb2からeS2までスラーが架けられるT47ピアノ(上)小節冒頭の音への装飾音の書法は誤りでT39と同様のものが考えられていたに違いないT56ピアノ(上)2拍目以降の十六分音符に架けられるレガートはd2からとなるT58ピアノcrescは左手の八分音符につけられているT60ピアノ(下)3拍目冒頭に八分休符を補充しかし左手最後の和音は論理的にはチェロコントラバスと同時に弾かれるべきでピアノパートの誤りと考えられる

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T63ピアノ2拍目付近に[cresc]が補充されるべきであるT65ピアノ(上)1拍目ふたつ目から六つ目の十六分音符にはスラーなしのくさび形スタッカートがつけられているしたがってこの小節の1拍目には[flが補充されるべきだろう

T76~80ピアノベートーヴェンはこの小節を誤って八分の三拍子つまり通常の半分の音価の音符で誉いてしまったオリジナルエディション制作の際職人がこの誤りを修正したものの2拍目の三十二分音符だけはそのままにしてしまったもちろんこの音も十六分音符として演奏されるべきである手稿く譜例5>を参照

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<譜例5>ピアノ協奏llil第2番第2楽章T73~84(手稿)

T82ピアノ(上)2拍目の音符につけられている前打音のうち2番目の音es2を削除手稿にはオクターブ下blの前打音しか書かれていない現代のピアノでもT74からT83までペダルが踏み続けられる

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T84ピアノconsordinoの指示はベートーヴェンによって後に加えられたものだが思い違いとも考えられる[これ如何によってT83にconsordino(Rダルを離す)の指示を補充すべきかの判断が必要となる]ひょっとすると[T74から踏み続けられている]ペダルはT86の最後まで保持されるべきなのかも知れない

第3楽章Alleqromolto (これがオリジナルの語順である)Tl~ピアノ冒頭は楽譜通りでT8にcrescは書かれていないT27ピアノ(上)手稿もこのように書かれているがT199と比較せよT55ピアノ(上)小節後半のフレージングをT51と同じに修正T139ピアノ(上)四分音符にくさび形のスタッカートを補充T142ピアノ(上)4番目と5番目の八分音符にくさび形のスタッカートを補充T143ピアノ(上)T141と同じフレージングが補充されるべきであるT165ピアノ小節冒頭の音は左右ともスタッカートT199ピアノ(下)冒頭に四分音符fとそれに続く八分休符を補充T205ピアノ(下)冒頭に四分音符のバスesを補充T278ピアノ(上)冒頭のblはオーケストラを示した音符(DilektionsStimme)の可能性がある(手稿ではここに休符が書かれている)T293~297ピアノパー1にはくさび形のスタッカートがつけられているが手稿によればヴィオラチェロとコントラバスはその限りではないピアノパートヘの対比としてベートーヴェンはおそらく弦楽器にはレガートを考えていたのだろうT316ピアノ手稿ではすでにこの小節にppがありさらにT317にも4Gppが書かれている

ピアノ協奏曲第3番作品37

衆知の通りこの協奏曲が完成するまでには長い時間が饗やされている最初のコンセプトが考えられたのは1797年頃だがその後1804年に出版されるまでの間にはベートーヴェンの作曲スタイルが大きな変貌をとげたと同時に楽器その

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ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

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T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

瀞5含鼻盧農_今屡雲需{ 一

一一一妾一一一一一一一一

一一雪一一一一戸一一戸一一一一一1

<譜例7>

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カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

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一一口rsquorsquo一一口〆 1

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

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次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

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1L一一一 手 一

|金-4

-

壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

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両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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<譜例13gt

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

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奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 18: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

T63ピアノ2拍目付近に[cresc]が補充されるべきであるT65ピアノ(上)1拍目ふたつ目から六つ目の十六分音符にはスラーなしのくさび形スタッカートがつけられているしたがってこの小節の1拍目には[flが補充されるべきだろう

T76~80ピアノベートーヴェンはこの小節を誤って八分の三拍子つまり通常の半分の音価の音符で誉いてしまったオリジナルエディション制作の際職人がこの誤りを修正したものの2拍目の三十二分音符だけはそのままにしてしまったもちろんこの音も十六分音符として演奏されるべきである手稿く譜例5>を参照

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<譜例5>ピアノ協奏llil第2番第2楽章T73~84(手稿)

T82ピアノ(上)2拍目の音符につけられている前打音のうち2番目の音es2を削除手稿にはオクターブ下blの前打音しか書かれていない現代のピアノでもT74からT83までペダルが踏み続けられる

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T84ピアノconsordinoの指示はベートーヴェンによって後に加えられたものだが思い違いとも考えられる[これ如何によってT83にconsordino(Rダルを離す)の指示を補充すべきかの判断が必要となる]ひょっとすると[T74から踏み続けられている]ペダルはT86の最後まで保持されるべきなのかも知れない

第3楽章Alleqromolto (これがオリジナルの語順である)Tl~ピアノ冒頭は楽譜通りでT8にcrescは書かれていないT27ピアノ(上)手稿もこのように書かれているがT199と比較せよT55ピアノ(上)小節後半のフレージングをT51と同じに修正T139ピアノ(上)四分音符にくさび形のスタッカートを補充T142ピアノ(上)4番目と5番目の八分音符にくさび形のスタッカートを補充T143ピアノ(上)T141と同じフレージングが補充されるべきであるT165ピアノ小節冒頭の音は左右ともスタッカートT199ピアノ(下)冒頭に四分音符fとそれに続く八分休符を補充T205ピアノ(下)冒頭に四分音符のバスesを補充T278ピアノ(上)冒頭のblはオーケストラを示した音符(DilektionsStimme)の可能性がある(手稿ではここに休符が書かれている)T293~297ピアノパー1にはくさび形のスタッカートがつけられているが手稿によればヴィオラチェロとコントラバスはその限りではないピアノパートヘの対比としてベートーヴェンはおそらく弦楽器にはレガートを考えていたのだろうT316ピアノ手稿ではすでにこの小節にppがありさらにT317にも4Gppが書かれている

ピアノ協奏曲第3番作品37

衆知の通りこの協奏曲が完成するまでには長い時間が饗やされている最初のコンセプトが考えられたのは1797年頃だがその後1804年に出版されるまでの間にはベートーヴェンの作曲スタイルが大きな変貌をとげたと同時に楽器その

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ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

-27-

T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

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<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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<譜例7>

-28-

カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

-32-

次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

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壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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<譜例15cgt

レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

一一

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

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奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17agt

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 19: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

T84ピアノconsordinoの指示はベートーヴェンによって後に加えられたものだが思い違いとも考えられる[これ如何によってT83にconsordino(Rダルを離す)の指示を補充すべきかの判断が必要となる]ひょっとすると[T74から踏み続けられている]ペダルはT86の最後まで保持されるべきなのかも知れない

第3楽章Alleqromolto (これがオリジナルの語順である)Tl~ピアノ冒頭は楽譜通りでT8にcrescは書かれていないT27ピアノ(上)手稿もこのように書かれているがT199と比較せよT55ピアノ(上)小節後半のフレージングをT51と同じに修正T139ピアノ(上)四分音符にくさび形のスタッカートを補充T142ピアノ(上)4番目と5番目の八分音符にくさび形のスタッカートを補充T143ピアノ(上)T141と同じフレージングが補充されるべきであるT165ピアノ小節冒頭の音は左右ともスタッカートT199ピアノ(下)冒頭に四分音符fとそれに続く八分休符を補充T205ピアノ(下)冒頭に四分音符のバスesを補充T278ピアノ(上)冒頭のblはオーケストラを示した音符(DilektionsStimme)の可能性がある(手稿ではここに休符が書かれている)T293~297ピアノパー1にはくさび形のスタッカートがつけられているが手稿によればヴィオラチェロとコントラバスはその限りではないピアノパートヘの対比としてベートーヴェンはおそらく弦楽器にはレガートを考えていたのだろうT316ピアノ手稿ではすでにこの小節にppがありさらにT317にも4Gppが書かれている

ピアノ協奏曲第3番作品37

衆知の通りこの協奏曲が完成するまでには長い時間が饗やされている最初のコンセプトが考えられたのは1797年頃だがその後1804年に出版されるまでの間にはベートーヴェンの作曲スタイルが大きな変貌をとげたと同時に楽器その

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ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

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T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

瀞5含鼻盧農_今屡雲需{ 一

一一一妾一一一一一一一一

一一雪一一一一戸一一戸一一一一一1

<譜例7>

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カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

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一一口rsquorsquo一一口〆 1

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

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次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

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1L一一一 手 一

|金-4

-

壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

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両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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-40-

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<譜例15cgt

レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

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奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 20: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

ものもさらに力強く大型になったそれまで数十年間変化がなかったlFからfまでの音域のうちウィーンのピアノの最低音はその後1820年頃までlFのままだったものの最高音がまずa3へその直後C4まで拡張されたこれらの変化はこの協奏曲におけるベートーヴェンの華跡に反映されている

オリジナルエディションに印刷されている本来のピアノパートは「従来の音域」であるfまでにおさめられているがC4まで演奏可能な「新型」楽器の幸せな所有者のための異稿もピアノパート上方に小さな音符で印刷されている現代の楽譜に狭い音域用のバージョンが印刷されていないのは当然のことだろうしかしベートーヴェンがどれほどピアノの音域制限に対して苦慮していたかを理解するにはこの[狭い音域内で処理された]パート譜も一見の価値があるベートーヴェンの死後数年して出版されたハスリンガー版Haslinger-Ausgabe

では音域がflまで拡張されているがこのバージョンがベートーヴェンの手によるものでないことは確実であるここに掲載されているパッセージでは表面的なヴイルトゥオーゾ効果が目立つばかりでなく部分的には通常テンポでの演奏が不可能であるオイレンブルク社のスコアでは残念ながら数々の部分でこの[ベートーヴェン

のあずかり知らぬ]楽譜において変更された強弱記号が取り入れられているたとえばオリジナルエディション第1楽章のT121~T127には何の強弱指示もないまたオイレンブルク版では欠落しているがT129の右手ふたつめの音(92)にはベートーヴェン自身によってsfがつけられているさらにT150154および155の強弱記号はベートーヴェンのものではない

第1楽章Alleqroconbriolsquo(アラブレーヴェ)でありC(四分の四拍子)ではないT67オーケストラT68へのアウフタクト[T67の股後の八分音符]に[f]を補充[T121~T127ピアノすべての強弱記号を削除]RT129ピアノ(上)右手ふたつめの音fにsrを補充]T150154~155ピアノすべての強弱記号を削除]T157ピアノ(上)2番目の和音のうちC2に明確にsectがつけられているT160~162ピアノ強弱記号はベートーヴェンの手によるものではない

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T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

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T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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一一一妾一一一一一一一一

一一雪一一一一戸一一戸一一一一一1

<譜例7>

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カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

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次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

1L一一一 手 一

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壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

hellipIU eSp r e s s o胸 口 3 3 = a ) =(

<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

畢葬犀E醗酵ldquoハ

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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-40-

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

一一

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

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奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

- F 雨 ロ 1 1 』 I I

L 1 夕 U I I ロ 廿 ロ ロ p I

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<譜例17agt

塁8--- - - - - - -ニーーーーニ- - - - - - rsquo

<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 21: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

T167ピアノ(上)アクセントを削除T182~184ピアノclSC90およびsfを削除T188ピアノ$0fを削除T189~195ピアノ強弱記号を削除T197ピアノcrescを削除T203ピアノ=二を削除T205~207ピアノ(上)[T205後半からT207口頭の十六分音符b2まで]ベートーヴェンが音域の広いピアノのための拡張処理(8vaの指示)を書き忘れているのは明らかであるT205~209ピアノ(下)すべてのアクセントを削除T209ピアノ(上)右手2番目の音はf音であるべきだろうT211ピアノ典拠資料にldquoげrsquoは存在しないT217~219ピアノ強弱記号を削除T224ピアノ(下)最後の2音は再現部[T400]の形と同じようにd2_blとなるべきだろうT225~227ピアノT225冒頭からT227最初の音までペダルを踏み続ける(当時のペダル指示であるsenzasordinoが書かれている)

T295ピアノ2拍目からの[p]を補充T305~308ピアノcrescは典拠資料に存在するがT307のffとT308のsfはベートーヴェンの手によるものではないT308ピアノここにもT225と同様のペダル指示が補充されるべきだろうT318ピアノ[pp]を補充T322ピアノcrescはベートーヴェンの手によるものではないT336ピアノ1拍目につけられているsfを削除T358~365ピアノ強弱記号を削除T382~384ピアノ強弱記号を削除T393ピアノ4dimを削除T398~401ピアノ強弱記号を削除T400ピアノ(下)最後から3番目の音は提示部[T224]に合わせて92の代わりにfであるべきだろうT401~402ピアノPedrdquoを補充(senzasordino)

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カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

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T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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<譜例7>

-28-

カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

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次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

1L一一一 手 一

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-

壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

一一

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 22: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

カデンツ(T417~480)カデンツの手稿は今日も存在するカデンツには本来新しい小節番号をふるべきだが簡便のためにカデンツの最初の小節がT417となるオイレンブルク版の小節番号を使用して以下に問題点を列挙する

T428(上)右手の2番目と4番目の十六分音符はC2ではなくfとなるべきであるT436(上)楽章主部においてと同様に最初の音は和音ではないと思われるおそらくべートーヴェンの誤りだろうT468(下)手稿には1拍目にlG2拍目にGが四分音符ではっきりと書かれているT480(カデンツの最終小節)最後から2番目のトリルとの関連から後打音dis2を補充すべきだろう

T482~488ピアノsenzasordinoepianissimoと記入されているのでペダルは切らずに踏み続けられる

T497~498ピアノlsfはそれぞれのグループ2番目の八分音符につけられるT501~楽章最後ピアノlsenzasordinoはこの楽章最後の7小節の間オーケストラに休符があろうともペダルを踏み続けていることを意味するT501ピアノ(下)ベートーヴェンは拍目も両手で[左手は右手のオクターブ下の音]弾くように考えていたと思われる

第2楽章LarqoT1~3ピアノこの3小節の上方にsenzasodinoepianissimoと書かれているのはこれらの小節が混沌としたペダルの響きのなかで弾かれるべきことを意味しているT4610などにあるconsordinoの指示はベートーヴェンによるチェルニーによるとベートーヴェンはこの協奏曲初減の際にペダルを踏み変えなかったが状況に応じてペダルを踏み変えることも念頭に世いていたことがうかがえるT2ピアノ(上)旧全集に印刷されているリズム分割がベートーヴエンの意図を正しく再現していると思われるベートーヴェンが計算に強ければ冒頭のふたつの音に架けられている譜尾が十六分音符ではなく冒頭の音が付点三十二分音符として書かれるべき事に気づいたに違いない

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T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

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T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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一一一妾一一一一一一一一

一一雪一一一一戸一一戸一一一一一1

<譜例7>

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カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

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次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

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1L一一一 手 一

|金-4

-

壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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<譜例15cgt

レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 23: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

T25オリジナルエディションに印刷されているターンに臨時記号はつけられていないT25~28ピアノペダル指示はベートーヴェンによるものではないT28ピアノ=は括弧[]に入れられるべきである[推奨される表情だがベートーヴェンによるものではない]T29ピアノオーケストラと同様に[p]を補充すべきであるT30ピアノオリジナルエディションではすべての六連音符にレガートが架けられているT50ピアノ強弱記号を削除しPed(オリジナルはsenzasordino)を補充T52ピアノ(上)小節最後三つの和音にはくさび形のスタッカートがついているT63ピアノ(上)3番目の音g3はオリジナルエディションにおいて明らかに十六分音符ではなく八分音符であるそれに続く下降形の音階は3拍目(左手の小節最後からふたつ目の音のグループ)とともに百二十八分音符で演奏されるT66第1フルート第1ヴァイオリンの1オクターブ上の音が吹かれる[3拍目はヴァイオリン同様に付点のリズムになる]T78~79ピアノ[ベートーヴェンのものではない]=ニを括弧[]に入れるT79~80ピアノ(下)左手の音はオーケストラを示す声部(Direktionsstimme)なので削除するカデンツ冒頭の1リルの後打音は小さな音符で印刷されるべきであるオリジナルエディションではpのところにsenzasordinoの指示がありここよりオーケストラが入ってくるまでペダルが踏み続けられる同様のsenzasordino指示は楽章最後から数えて6小節および4小節前にも記入されている最後から2小節前にあるペダル記号とともにペダルは離され楽章最後はオーケストラのみの音響で幕を閉じる

第3楽章RondoAlleqroT1ピアノ(上)ピアノとオーボエ(T8~9)の間にあるフレージングの差はベートーヴェンの意図したものと思われる楽章冒頭に強弱記号は書かれ

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ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

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135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

-27-

T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

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<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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<譜例7>

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カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

-30-

けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

-32-

次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

1L一一一 手 一

|金-4

-

壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

-35-

演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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<譜例lOcgt

アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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Fg一 三- rP =菫1 戸 三 F _ 里 一 1 P F P =

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$唾一lsquo廟喬払是 屋童酉 L-』一 芸等= 寺室 中

<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

盲一道嘩曇g菅-蔦恥80ハu

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<譜例12gt

多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

hellipIU eSp r e s s o胸 口 3 3 = a ) =(

<譜例13gt

-39-

- 一 一 言WF戸奪 た

トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

畢葬犀E醗酵ldquoハ

I一一》一}一 〆 f 夕

<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

丑二に畠il 口 凸 L - l - - 各 戸 ー - 憲斎憲号一

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s醜αノZ鞭伽一一-6 - - - - - r 一 一 け 6

<譜例15agt

演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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<譜例15bgt

-40-

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<譜例15cgt

レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

一一

rsquo

<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

- F 雨 ロ 1 1 』 I I

L 1 夕 U I I ロ 廿 ロ ロ p I

Q j0ローローロー一---一一ローーーーー

<譜例17agt

塁8--- - - - - - -ニーーーーニ- - - - - - rsquo

<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 24: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

ていないが[冒頭のmfは削除]pで開始されるべきだろうT56~60オーケストラトランペットとテインパニはフォルテその他の楽器にはfbrtissimoと書かれているT83~89ピアノ強弱記号はベートーヴェンによるものではない当然フォルテで弾かれるべきだろうT182クラリネットJespressの指示はベートーヴェンによるものではないものの音楽的には推奨されるべき指示であるT 190~192 2 04~205 = =は括弧[ ]に入れるT211227ピアノ(上)ベートーヴェンは音域の広いピアノへの対応を書き忘れたに違いないそうでなければベートーヴェンは小節冒頭を四分音符fにしてそこに0ltrを書いたと推察されるT261ピアノsempreppの指示はこの小節にあるべきものと思われるconPedの指示は誤りでsenzasordinoが正しい[ペダルは踏み変えられな

I]

T286ピアノcrescrdquoを削除T 290ピアノ f f は括弧[ ]に入れるT319~T56以降のコメントを参照T403~406テインパニテインパニのロールは十六分音符で三十二分音符ではないT407ピアノソロの開始部分にあるオクターブのバス音G-Gを削除T415~423テインパニ明確にfと指示されているT456テインパニ他のオーケストラ楽器はピアノだがテインパニのみにはfと指示されているT457~楽章最後ピアノパートには大きな音符でオーケストラで弾かれる音が書かれているしたがってピアニストが終結部分をオーケストラと一緒に演奏することは正しいと思われる

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ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

-25-

135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

-27-

T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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一一一妾一一一一一一一一

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<譜例7>

-28-

カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

-32-

次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

-33-

第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

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壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

-36-

<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 25: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

ピアノ協奏曲第4番作品58個

第1楽章AlleqromoderatoT32ファゴットレガートのスラーを付加T41管楽器ここの木管楽器群は弦楽器と同様にppで演奏されるべきだろうT89第1ヴァイオリンa1Oは小節後半の八分音符からT94ピアノ(上)括弧内の=ニニニーーは半小節後方に移動されニニーー記号はT95になってから行われるべきであろうT110ピアノ冒頭のsfはベートーヴェンの手によるものであり括弧[]を削除左手4拍目につけられている=はアクセントではなくデイミヌエンドである

T111~112管楽器第1オーボエのレガートは[双方の小節において]最初の四分音符から次の八分音符へのみであるT111の第1ファゴットも同じように処理されるT146ピアノ(上)最後からふたつ目の十六分音符C3につけられたを削除したがってT147の右手ふたつ目の十六分音符につけられているsectも不要となるT152~154ピアノ(下)各小節最後[四つ目]のsfを削除T172~173筆写譜[注9参照]にはここに[ベートーヴェンの筆跡で]ri-tar-dan-doとあるが出版後に加筆されたものと考えられる再現部ではritが提

示部より3小節早くT336に追加されているT173右手冒頭にはT340と同様にa2の前打音がつけられるべきかも知れない[提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われるT340を参照]T202~203ピアノT202のampsfを削除T203にクレシェンドはないT204~214ピアノ2小節ごとに印刷されているfはそれぞれの小節の左手の最初の音につけられるT210においてはこのfを補充したがって

⑬冒頭でも述べたように本稿では重要な間速いと問題点のみに触れることしかできないこの協奏曲に関するさらに詳細な情報は1958年に発行された「oeeicliscノleMsiAzEルノ伽10Hefl1958S418-427jに掲戦された私の論文を参照されたい

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右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

-25-

135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

-26-

llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

-27-

T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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<譜例7>

-28-

カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

-29-

1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

-30-

けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

-32-

次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

-33-

第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

1L一一一 手 一

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壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

-35-

演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

-36-

<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

hellipIU eSp r e s s o胸 口 3 3 = a ) =(

<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

畢葬犀E醗酵ldquoハ

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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<譜例15agt

演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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-40-

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<譜例15cgt

レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

一一

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

- F 雨 ロ 1 1 』 I I

L 1 夕 U I I ロ 廿 ロ ロ p I

Q j0ローローロー一---一一ローーーーー

<譜例17agt

塁8--- - - - - - -ニーーーーニ- - - - - - rsquo

<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 26: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

右手がフォルテで弾かれるのはT216からとなるT231筆写譜には文字間にたっぷり広くスペースをとりながらritardando(ママ)と記載されているがこれも後になってから[オリジナルエディション出版後に]加筆されたことは明らかであるT236ここにベートーヴェンはatempoと加筆しているT249ピアノcrescを追加T253ピアノ冒頭の休符の代わりに0lffおよび左手はlGとGのオクターブ(八分音符)右手はその補強として同じく八分音符のgを演奏する<譜例2bgtを参照T265ピアノ(下)左手の最初の和音の柵成音fis2の代わりに最後から二番目の和音のようにa2を含めた和音[c2+d2+a2]が弾かれるべきかも知れない(ベートーヴェンの書き誤りか)T277ピアノ(上)冒頭の装飾音の最初の音はb2ではなくh2であると推察されるT281284弦楽器弦楽器で構成される和音はT117のようにフォルテであるべきだろうT300ピアノ(上)ossiaバージョンを削除T309ピアノT142に準じて[pp]を付加T314ピアノ(上)小節前半の右手の音列にレガートを付加T318ピアノ(上)ベートーヴェン旧全集におけるT151に準じたこの部分の音列の変更は歓迎されるT324~329ピアノこの部分の音列も提示部に準じて変更することを推奨するT330第1ヴァイオリン第2ヴァイオリンとヴィオラここのリズムはベートーヴェンの晋き誤りと思われるT163を参照T340ピアノ(上)3拍目と4拍目に装飾音はついていない提示部T173にあるターンもベートーヴェンによるものではないと思われる第1カデンツ

オイレンブルク版135ページ冒頭には$[p]が付加されるべきだろう135ページ1段目最後の小節(上)内声のfislからelにかけてレガートを付加

-25-

135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

-26-

llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

-27-

T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

8hellip------一三丘一一lsquo参-------ー一一一一一lsquo--- - lsquolsquo一旬

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<譜例7>

-28-

カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

-29-

1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

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けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

-32-

次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

-33-

第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

1L一一一 手 一

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壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

-36-

<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

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両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

畢葬犀E醗酵ldquoハ

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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-40-

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

一一

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

- F 雨 ロ 1 1 』 I I

L 1 夕 U I I ロ 廿 ロ ロ p I

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<譜例17agt

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 27: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

135ページ2段目第2~3小節(上)2小節目内声部の付点四分音符elから次の小節の同音へおよび3小節目上声部付点四分音符flから次の八分音符の同音へタイを付加136ページ2段目第2小節(上)小節冒頭b】の前に手稿に書かれている短い前打音[たすき掛けの八分音符]82を補充136ページ4段目第1小節(上)トリルの後打音はh-c2となるべきである136ページ4段目第4小節と5段目第1小節(上)e2の前[11番目と8稀目の十六分音符]に括弧に入れたフラット[b]を補充することが望ましい137ページ6段目第3小節[ff]力輔充されるべきである137ページ最後の段第1と第4小節(下)三拍目と四拍目それぞれに2音ごとのレガートを付加138ページ4段目第2小節(上)3拍目の直前にも小節冒頭と同じg2の前打音を補充138ページ最後の段第1小節(上)冒頭全音符の上にq6trとldquosectrdquoを補充カデンツ終結部分にある十六分音符3個のグループは7回ではなく8回反復されるべきでありその後に1小節分a2のトリルを演奏した後にオーケストラが入る

第2カデンツ140ページ1段目第2小節ふたつ目の八分音符の和音のところに[ff]を補充140ページ2段目7つ目の三十二分音符のグループはもう一回反復されそれに続く四つの音[cis-fis-a-fis]は三十二分音符ではなく十六分音符である

T365~370ピアノT365にあるPedrdquoの指示にしたがってT370の楽章終結までT369にあるオーケストラの休符に関係なくペダルが踏み続けられる

第2楽章Andanteconmotounacordaはカデンツを除く第2楽章全体への指示であるこの楽章は常に制御された音量でありながら濃厚な感情を持って(moltocantabileおよび

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llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

-27-

T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

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ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

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<譜例7>

-28-

カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

-29-

1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

-30-

けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

-32-

次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

-33-

第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

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ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

-36-

<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17agt

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 28: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

llmoltoespressivoに留意)演奏されなければならないしたがってT1928

3133344043にある強弱記号は不要なものとして削除するなお削除されるのはppあるいはpの記号のみで==二二=で表示されているクレシェンドとディミヌエンドはベートーヴェンの手によるものであるT31弦楽器小節冒頭の四分音符を八分音符と八分休符に変更(T33と34冒頭の音は四分音符である)T54ピアノ(上)内声部冒頭の音は八分音符elであり多くの楽譜に印刷されているようにふたつの十六分音符fis-9ではないT62~63ベートーヴェンはペダルの長さを正確に指示するために小節後半の四分休符を八分休符ひとつと十六分休符ふたつに変更し最後の十六分休符の下にペダルを離す記号[]を記入したT68~69第1ヴァイオリンT68に二==を補充しT69のpを削除

第3楽章RondoVivaceT468弦楽器T46の八分音符およびr8の最後の音(八分音符)はすべてスタッカートなしT35第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン第1ヴァイオリンのe3のみにくさび形のスタッカートがつけられているが誤りと思われるちなみにT3739および後出のT194と196にスタッカートは記入されていないT95~96第2ヴァイオリンタイを補充T100チェロとコントラバス冒頭にtuttiを付加T107第1ヴァイオリンsfはふたつ目の八分音符につけられるT159ピアノ音階の前[フェルマータの後]にペダルを離す記号[]を補充する筆写譜でこのスケールはa3音から開始されているがどちらのバージョンがベートーヴェンの望んだものかは判断が微妙である私は93音から開始する方を推薦するT252253弦楽器pを補充T319チェロとコントラバスここからまたチェロとコントラバス全員が演奏すべきだろう[」[tui]を補充]T376~377チェロタイを削除T379~382チェロ1オクターブ下で演奏されるべきか

-27-

T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

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<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

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<譜例7>

-28-

カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

-30-

けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

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1PG-ifⅡⅡ

<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

-32-

次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

-33-

第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

1L一一一 手 一

|金-4

-

壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

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<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

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<譜例lObgt

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

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両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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<譜例12gt

多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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<譜例15agt

演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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<譜例15bgt

-40-

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<譜例15cgt

レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17agt

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 29: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

T383ピアノ(上)オクターブ記号はふたつ目の十六分音符fからとなるT402ピアノlt譜例6gtのように小節冒頭の和音を補充しペダル記号の位置を変更する

IcJ番 ー-J

ケー ミー フy一 ヅー -

<譜例6>

T451~452ピアノ筆写譜にはベートーヴェンの筆跡で三連音符の最初の八分音符はスタッカート残りの2音はレガートというアーティキュレーションが書き込まれているT477481ピアノ小節冒頭の音は四分音符であるオリジナルエディションではT477のみが八分音符となっているが誤りと思われる

T486~491ピアノ筆写譜には後になって加筆が行われているT486ふたつ目の十六分音符より両手ともrsquoオクターブ上になりT487~490の四小節は

右手d4左手d3音のトリルそしてT491にはトリルの終結音93(右手)と92(左手)が書かれているトリルの終結には後打音cis4-d4(左手はcis3-d3)が弾かれるべきだろうく譜例7>このベートーヴェンの素晴らしいアイデアを見過ごしてはならない

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<譜例7>

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カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

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1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

-30-

けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

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次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

-33-

第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

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壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

-36-

<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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<譜例12gt

多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

丑二に畠il 口 凸 L - l - - 各 戸 ー - 憲斎憲号一

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

-42-

以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

-43-

Page 30: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

カデンツ(オイレンブルク版141ページ)3段目第3小節pを補充4段目第3小節Pedを補充5段目第1小節小節冒頭にペダルを離す記号[]を補充

T535~536ピアノ(下)タイは真正のものではないので削除T566~567ピアノ(上)筆写譜に書き込まれたくートーヴェンのossiaバージョンによるとT566の和音はd4+f3h3+93d+f3h3+93T567の和音f+g3dl+h3l」+g3d4+h3となっているT568ピアノ(上)印刷楽譜にossiaバージョンとして追加記入された和音はe3+93+C4+e4となっている

ピアノ協奏曲第5番作品73(l1)

この協奏曲におけるクラク版のピアノパートはほぼ完壁といえる数少ないミスプリントのひとつは第1楽章第4小節のピアノソロにおいて右手最初の三連音

符の冒頭cが左手4つめの十六分音符ASと同時に弾かれなければならないという点であるまた[シヤーマー社より発行されているリプリント版(注4を参照)]55ページ1段目第3~4小節にはそれぞれの小節冒頭にあるべきPedの指示

[とペダルを離す記号]が欠落している[58ページ最下段と比較せよ]したがって本稿の重心はオーケストラパートにベートーヴェン時代から訂正さ

れずに残されている誤謬の指摘に置ltベートーヴェン自身もオリジナルエディションに不満を抱きそれらのミスプリントを無批判に受け入れたのではないことはブライトコップフヘルテル社に宛てた以下の手紙が証明してくれる

(14)訳注2000年にオイレンブルク社よりバドウーラースコダと錐者の共同編纂による新しいスコア(シリーズ番号は同じNo706だがプレート番号がEE6862になっている)が発行されたが本稿の参照元となっている楽譜はアルトマンWilhelmAltmann校訂による旧版(プレート番号EE3806)である新版と旧版では第3楽章の小節番号の振り方に差があるので注意が必要である本稿の小節番号は旧版(アルトマン版)に準じている

-29-

1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

-30-

けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

-32-

次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

-33-

第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

1L一一一 手 一

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-

壽篝rsquo<譜例9>

ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

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演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

-36-

<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

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-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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<譜例13gt

-39-

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

畢葬犀E醗酵ldquoハ

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

-42-

以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

-43-

Page 31: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

1811年5月2日頃ltK[協奏曲Konzerlの略]にはかなり多くのミスがある>

1811年5月6日くミスに次ぐミスあなた自身が間違いそのものだ>

当時の出版社の名番のために智き添えておくと重版の際に使用された印刷原盤のピアノパートには多くの訂正が行われたもののオーケストラパートへの訂正は為されなかったようである

第1楽章Alleqro(オーケストラ)T64第1ヴァイオリン八分音符es2+esにくさび形のスタッカートを付加T81第1ヴァイオリン小節後半のふたつの四分音符のスタッカートを削除T140第1ファゴット同様の部分と比較するとベートーヴェンは八分音符の最後ふたつだけにスタッカートをつけるつもりだったと推察される(この小節にある初めの六つの八分音符につけられたスタッカートは誤りと思われる)T141第1オーボエ小節最後のふたつの八分音符にスタッカートを付加(T142のフルートにも同様の処理が行われるべきである)

T207フルートとオーボエ強弱記号[pp]を付加[pを[pp]に変更]

T245第1ヴァイオリンヴィオラ小節後半にあるふたつの四分音符bl[ヴィオラはb]のスタッカートを削除T290~291第1ファゴッI同じ小節のオーボエと同じフレージングに変更T291からT292小節へのスラーは削除[T292の四つの四分音符がひとつのスラーでまとめられる]T312~ベートーヴェン時代に比較して現代ピアノの音量は大幅に増加しているためこの部分におけるオーケストラ伴奏の強弱記号はpではなく少なくともmfに変更されるべきだろうT337ヴィオラ小節前半のスラーは二番目の音[三連音符の初めの音]からつ

-30-

けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

-31 -

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

-32-

次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

-33-

第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

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ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

-35-

演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

-36-

<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

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そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

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奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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Page 32: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

けられるT338第1クラリネットベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入しているT343オーボエベートーヴェンはこのパートに明瞭にSoloと記入している

T344オーボエ他の管楽器と同じ強弱記号を補充しT345のcantabileは削除T400~401第1クラリネットと第2クラリネットそれぞれの小節の最後ふたつの八分音符がスタッカートであるT424チェロ四分休符の代わりに四分音符Aを補充し小節冒頭のAS音とレガートで連結するT432チェロとコントラバスSoIoの指示を削除T518ホルン2拍目の四分音符は次の小節2拍目と同様の5度の和音[d2+g]であるT526チェロとコントラバス小節最後ふたつの八分音符につけられたスタッカートを削除し小節後半全体にレガートのスラーを付加T526チェロとコントラバス第1第2ヴァイオリンと同様にスラーは小節全体にかけられる]T540~542オーボエクラリネットとファゴツトT540冒頭からT542最後の音まで1本のスラーに変更

(オーケストラ)第2楽章Adaqiounpocomoto楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT80弦楽器小節冒頭の四分音符はarcoでありピツイカートは小節最後の八分音符からとなる(151lt譜例8gt

(13この貴重な助言を与えてくれたルドルフゼルキンRudolfSerkin氏に謝辞を捧げる

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

第3楽章RondoAllegromanontroppo (オーケスlラ)T139ファゴット手稿にはlSoIoと記入されているT142クラリネット手稿にはSoIoと記入されているT205弦楽器小節冒頭の四分音符のスタッカートを削除T236ヴィオラ強弱記号はldquoであるT270オーボエとファゴット付点のリズムは含まれず均等な六つの八分音符で奏されるT357第1ヴァイオリン小節後半にある付点八分音符にスタッカーIを補充T360~361チェロとコントラバスすべてスタッカートで奏されるT451第1ファゴットこのメロディーにSoloおよびdolceを付記し小節最後のふたつの音につけられたスタッカートを削除

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次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

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第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

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ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

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-35-

演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

-36-

<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

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そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

-42-

以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

-43-

Page 33: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

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<譜例8>ピアノ協奏曲第5番第2楽章(手稿)

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-32-

次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

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-33-

第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

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ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

-35-

演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

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られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

-36-

<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

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-38-

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

一一

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

-42-

以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

-43-

Page 34: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

次に[オイレンブルク版の]ピアノパートにある重要なミスプリントを提示する

第1楽章Alleqro(ピアノパート)T162強弱記号pを削除手稿にあるPedがオリジナルエディション制作の際に誤読されたT1801拍目に強弱記号fを補充T221(下)左手の最初の音はlFでありFESやGESではないT292~303T570と同様に1拍目と3拍目最初の十六分音符にスタッカートを付加するT332~333(上)T332最後の音とT333最初の音は本来fis4とgll[を含むオクターブ]だった当時のピアノにこの音の鍵盤がなかったためベートーヴエンはこれらの音を割愛したが今日では本来の形で演奏すべきである

T349(上)三つ目の八分音符に括弧つきのアクセント[gt]を付加するT3722拍目に当たる八分音符の三連音符には左右ともスタッカートを付加T420強弱記号pを削除T444~(上)この小節およびr448の1拍目と3拍目そしてT449の1拍目はレガートで奏されるT454(上)小節最後の三つの八分音符にスタッカートを付加[T465小節冒頭に46Pedを付加]T491494ペダルは[休符も含めて]小節最後まで踏み続けられるT504(下)六つの八分音符はスタッカートでベートーヴェンにより121241の指使いが記入されているT509右手はスタッカートだが左手はスタッカートなしの八分音符T517以降にはレガートを補充すべきだろうT570~573くさび形のスタツカー|が使用されているT577小節目頭にPedをili充T578手稿にはsemprePedとPedが重複して書き込まれているT580ここにも再度semprePedと記載されているペダルは楽章の最後まで踏み続けられるべきである

-33-

第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

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ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

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-35-

演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

-36-

<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

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-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

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トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

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そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

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- 4 1 -

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覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

-42-

以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

-43-

Page 35: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

第2楽章Adagiounpocomoto (ピアノパート)楽章のリズムはcではなくアラブレーヴェ(lsquo)であるT20~22(上)2拍目の3連音符につくスラーは最初の2音のみであるT28(上)T16と同じく4拍目の三連音符の最初の音にアクセントが付加されるT32(上)小節最後の音にスタッカートを付加T45(上)スラーは2拍目から4拍目の三つの四分音符のみにかけられる]T49(上)3拍目にレガートを付加T50(上)2拍目の付点八分音符より3拍目の十六分音符までスラーを付加T81~82右手3拍目の三十二分音符にスラーを付加楽章最後にあるペダルを離す記号[]は削除

第3楽章Allegromanontroppo (ピアノパート)小節冒頭にあるテンポ指示のうちmanontroppoは改訂されたオリジナルエディション第二刷にて追加された

T94(上)三つ目の八分音符にスタッカートを付加T95(下)mitNaclldmckの指示を補充T135137小節の最初から最後にかけて=を補充T140142左右両手すべての和音それぞれにアルペジオ記号を付加ペダルを離す記号[]は小節末尾に移動(手稿ではこの場所にペダルの指示が欠落しているがT387389に記入されている)T177八分音符2拍目へのsfは手稿ではこの小節と後のハ長調の部分にしか見受けられないT178以降の音符は手稿においてcomeprimaの指示によって省略されているT221~223ここにあるsfはベートーヴェンの手によるものであるHT224semprefbITeを補充]T226強弱記号pはPedrdquoを誤読して印刷されたものなので削除く譜例9gt[T228強弱記号$rを小節冒頭に補充]

-34-

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-35-

演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

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的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

-36-

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切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

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-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

-42-

以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

-43-

Page 36: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

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ピアノ協奏曲第5番第3楽章T226~228(手稿)

T243~244(上)[アウフタクトの八分音符を含め旋律に]dolceを補充T250(下)ふたつ目の音符はClであるT302306強弱記号ffは左手のバスにつけられるT329333T329およびT333のsfは括弧[]に入れるT336(下)mitNachdmckを補充T380382===二を小節最後まで延長T383==二二を削除T387389ペダルを離す記号[]を小節末尾に移動T430手稿にある強弱記号pおよび左手へのmitNachdruckを補充T480強弱記号fを削除T484486強弱記号pを削除し代わりに[f]を補充T500ペダルを離す記号[]をT501との小節線のところまで移動

-35-

演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

る」=88(ハースリンガー版にもそのように印刷されている)は充分演奏可能だしベートーヴェンが弦楽四重奏曲や交響曲にも指示することのある快速なテンポと同類のものとして理解できるチェルニーの述べている協奏曲のテンポに関し私が20年前に表明した「速すぎる」というコメントは今日では協奏曲第1番第2楽章のみに限定したいそしてこの楽章へは」=54を中軸とした冒頭は落ち着きながらもT67以降は少し前進するテンポを提案するピアノ協奏曲第1番の第2楽章は「単一のテンポに固執すると満足な結果が得

られない」という観点から見て興味深い一例である[この楽章を単一不変のテンポで処理すると]前半が速すぎ後半が遅すぎてしまう不安定なリズムよりは厳格すぎるテンポ保持の方がまだましでフェルデイナ

ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

-36-

<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

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-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

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ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

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覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

-42-

以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

-43-

Page 37: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

演奏への助言

テンポの問題

ベートーヴェン自身によるピアノ協奏曲へのメトロノーム指示は伝承されておらずベートーヴェンのレッスンを受講したり実際に演奏を聴いたことのあるカールチェルニーの記述(前掲書)に価値を見いだすことができる協奏曲第1番第1楽章のテンポは多くの場合遅すぎるチェルニーの指示であ

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ン卜リースFerdinandRiesの「ベートーヴェンは自作品を演奏する際にテンポを厳格に守った」という伝承は正しいに違いないしかし[実際には変動している]テンポの微妙な変化を聴き手に感じさせない繊細な処理はそれが正しい場所で行われたとすればベートーヴェンの演奏スタイルに含まれるベートーヴェン自身も第4番の協奏曲において主調からもっとも距離のある嬰ハ長調に転調したところにuritardandoを記入しているまた私は今まで第5番の第1楽章T111~115において明らかに遅めのテンポで演奏せぬピアニストに出会ったことがないそれで良いのだチェルニーによるベートーヴェンのピアノトリオ作品1の3へのコメントrdquoは

的を射ている

(10原著(前掲書)95ページ邦訳(前掲書)132ページ

-36-

<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

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両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

-42-

以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

-43-

Page 38: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

<ひじように重要と思う一般論を申し上げますがそれは旋律的なところの奏法についてです落ち着いてほんの少しだけ気づかれない程度にテンポをおさえるまるで前と変わらずに一貫して流れていく感を与えるように知っているのは奏者とメトロノームだけくらいの程度はっきり「おそくなったな」とわからせてはゆきすぎですから微妙な表現には違いありませんがはっきりしたテンポの違いはpi(ilentoli1など作IIII者が指示したところだけに許されるのです[古荘|職保刷lt]gt

これに該当するのは協奏曲第1番第1楽章T216~222協奏曲第2番第1楽T149~156協奏曲第4番第1楽章では上述のリタルダンドの場所以外にT110~110275~280の部分である特に協奏曲第4番と第5番の中間楽章においてはベートーヴェンが流れを大

切にした演奏を指示しているにもかかわらず(conmotoやunpocomosso)それを無視しひきずったテンポの演奏が多いチェルニーによる協奏曲第4番へのコメント(j=84)はよい手がかりとなるベートーヴェン自身は協奏曲第5番を演奏しなかったがチェルニーのテンポ指示はやはり速すぎるだろう私は」=50を中軸としたテンポで演奏しているが(チェルニーは60)好結果を生んでいる

装飾法

しばしば「ベートーヴェンの前打音はアウフタクトとして拍の前に出すのではなく拍と同時に弾かなければならない」と主張されるがこれは他愛のないおとぎ話でしかない実際にはさまざまなケースが存在する拍の上に弾かれるものの例としては協奏曲第2番第2楽章T15lt譜例10agt

18lt諮例10bgtおよび47小節く譜例lOcgtを挙げられる

⑰私はこの楽章をもう少し速く(j=92)自由に演奏する

-37-

-ハI 一 一 ~ 1 5 辱 き ー 一 一 一

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<譜例10agt

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<譜例lObgt

I澤卜犀鼻47ハI

曇 =一 一 一

<譜例lOcgt

アウフタクトとして拍の前に弾かれるものは協奏曲第5番第1楽章のT276以降く譜例11gtに見受けられるここで第2ヴァイオリンの前打音が大きな十六分音符で書かれた管楽器の音とずれたのではとんでもない響きになってしまう

ClAI- -

Fg一 三- rP =菫1 戸 三 F _ 里 一 1 P F P =

戸 一

Q 」 1 -ー

$唾一lsquo廟喬払是 屋童酉 L-』一 芸等= 寺室 中

<辮例11gtピアノ協奏曲第5将第1楽章T276~277

-38-

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

盲一道嘩曇g菅-蔦恥80ハu

= = g ー 一 一 一 一 一 - - - 雪長

I 一一一-

01

rdquoんe

=H多宇一三菫= 弄 一 丘 オ ロ 『 画 lsquo L 一 旦 冒 弓

協 = = = = = ー 一 旦 一 一

ソ廷一一

一 一劃

ー づが蝿

也筥一道犀逹塁gYYEER 象=生胤

I9 - -

<譜例12gt

多くの場合双方を混合した解決方法が役に立つエトヴインフイッシャーEdwinFischelは協奏曲第5番第2楽章のピアノソロ冒頭く譜例13gtでまず右手の前打音次に左手のバス音そして最後に右手のメロディー音HS3を打鍵するという美しい方法を採用していたなお類似の箇所ではほとんどの場合ソフトペダルが使用されるが決して推奨されるべき奏法ではない高音部における「ピアニッシモカンタービレ」の感覚は足のつま先より手の指先に宿るべきものである

hellipIU eSp r e s s o胸 口 3 3 = a ) =(

<譜例13gt

-39-

- 一 一 言WF戸奪 た

トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

畢葬犀E醗酵ldquoハ

I一一》一}一 〆 f 夕

<譜例14gt

他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

丑二に畠il 口 凸 L - l - - 各 戸 ー - 憲斎憲号一

0J

s醜αノZ鞭伽一一-6 - - - - - r 一 一 け 6

<譜例15agt

演奏法は以下のようになりく譜例15bgt

I -

Q」

コー

<譜例15bgt

-40-

P ー - ロ q U 当 ロ ロ 1 1 1 L rarr

Qノ

レ停会 か か つ一

一一]-

日叩可

r6

FF

qq一一一

④《

【+p一

T 豆 一 一 一 一 一 一 一 一 一

-

一一一一ゴ ー

こうではないく譜例15cgt

一叫八

IQ」 rsquorsquo一一一

ハ H =

JQ j

<譜例15cgt

レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

一一

rsquo

<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

- F 雨 ロ 1 1 』 I I

L 1 夕 U I I ロ 廿 ロ ロ p I

Q j0ローローロー一---一一ローーーーー

<譜例17agt

塁8--- - - - - - -ニーーーーニ- - - - - - rsquo

<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

-42-

以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

-43-

Page 39: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

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他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

-42-

以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

-43-

Page 40: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

両方が混在している例としては協奏曲第4番第3楽章のT80~92lt譜例12gtを挙げられるT82とT90の前打音は[拍上で]アクセントをつけずそれに対しT85のものはアウフタクトとして小節線の前に弾かれる

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奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

-42-

以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

-43-

Page 41: パウル・バドゥーラースコダ 『ベートーヴェンの5 …atwien.com/mwbhpwp/wp-content/uploads/02PBS_Beethoven...パウル。バドゥーラースコダ 「ベートーヴェンの5曲のピアノ協奏曲の楽譜および

トリルにおいても一般的なルールには何の価値もない協奏曲第2番第1楽章のT135T197およびT255とりわけ第2楽章のT22lt譜例14gtおよびr68のトリルは上方隣接音から開始される

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他のトリルたとえば協奏曲第2番第1楽章T382や協奏曲第5番の鎖になったトリル(第1楽章のT381~382や第2楽章のT39~44)が主音から開始されるのに対し[協奏IIII第5番]第3楽章のT316およびT318のものは当然のことながら上方隣接音から開始されなければならない主音から開始される1リルに関する「証拠」は数多く存在する私にとって協

奏曲第4番第2楽章にある長いIリルはその論拠のひとつとなるものであるT59の終わりから始まるトリル<譜例15agtにおいてベートーヴェンは反進行音によって形成される音響を期待していたに違いない

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レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

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ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

- 4 1 -

奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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こうではないく譜例15cgt

一叫八

IQ」 rsquorsquo一一一

ハ H =

JQ j

<譜例15cgt

レジェルメンテleggiermenteの指示に関して

ベートーヴェンが多用しているこの指示がスラーと並行して使用されるケースは存在せず私の知る限りではペダルも組み合わされていない結論は単純でありベートーヴェンは「ノンレガート」でしかも「ペダルなし」の奏法を考えていたのであるこうした$Cleggiermenteの例としては協奏IIII第4番第1楽章のT97とT351

そして協奏曲第5番第1楽章のT151lt譜例16gtおよびr409が挙げられエトヴインフイッシャーはこれらの部分をほとんどスタッカートのクリスタルのような音質で演奏していた(協奏曲第5番第1楽章のT152154および155の最後のメロディー音[右手の小節股後ふたつの八分音符]とT44のトウッテイに準じてペダルが踏まれるT154の和音は除lt)

一一

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<譜例16>ピアノ協奏曲第5番T151~154

ベートーヴェン以降の時代におけるピアノ構造の変貌

この命題に関してはすでに数多くの文献が存在するベートーヴェン以降ピアノは音色音質および音域そしてアクションの構造において大きく変化し今日こうした変貌を遂げた現代の楽器でベートーヴェンのピアノ作品を妥当に演

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奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

- F 雨 ロ 1 1 』 I I

L 1 夕 U I I ロ 廿 ロ ロ p I

Q j0ローローロー一---一一ローーーーー

<譜例17agt

塁8--- - - - - - -ニーーーーニ- - - - - - rsquo

<譜例17bgt

19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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奏できるのは奇跡に近いようにも思える音量がずっと小さかったベートーヴェンの楽器のためにベートーヴェンはH

のピアノパートを伴奏するオーケストラにpの指示を書かざるを得なかったが今日それをそのまま再現するのは論外であるしかるべく「オーケストラの音量を大幅に増加させる」べき箇所はたとえば協奏曲第3番[第1楽章]T199216および再現部T375~392協奏曲第5番[第1楽章]T181~200312~326439~460第3楽章T228~235282~289T294~311などだろうベートーヴェン時代の楽器における音域の制限に関してはそれによって生じ

た制約を現代の楽器でも尊重すべきだとの黙約が存在する私自身はもしベートーヴェンが今日生きていればこの禁欲的行為に納得するはずはないと想像する私個人としては以下のように不自然な音列く譜例17abgtを現代の楽器でそのまま演奏することに意味があるとは思えない

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19世紀においてピアノの音域拡張に関する行為力瀧端に走りすぎベートーヴェンが「災いを転じて福となす」とばかりに音域を変えて音列の194797成を工夫しそれによって新しい意味を持つに至ったもの(作品106や110などで)まで変更されてしまったことは確かである比較的早い時代に創作されているピアノ協奏曲においてもベートーヴェンは感

覚的に美しい音響を求めていたヴァイオリン協奏曲作品61をピアノ用に編曲する際に[ピアノの音域の制約は]切迫した現実問題となったがベートーヴェンは部分的に不自然な処理を行わざるを得なかったこれでは「福に転じぬ災い」のままであるこのようなケースにおいて今日ではヴァイオリンバージョンに対応させた音を演奏すべきだろう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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以上の考察によって硬直していた見識に疑問を抱き提起された問題点に|對して論議を行うきっかけになるならば本稿の目的は完遂されたものといえよう

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