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ライン型ロードヒーティングについて 東北技術事務所 技術課 前田 ○石川 (現磐城国道事務所)嶋津 君雄 1.はじめに 冬期の峠道でスリップし坂道を上れなくなる「スタ ック」の対策として、「全面ロードヒーティング」や 「定置式散布装置」等があるが、コストが高いことや 設備の設置工事が大規模になる等の理由により、十分 な対策が進んでいないのが実態である。 本検討では、大幅なコスト削減を目指したスタック 対策として「ライン型ロードヒーティング」の検討概 写真-1 スタック発生状況 要、検討結果について報告するものである。 写真-2 定置式散布装置 写真-3 全面ロードヒーティング 図-1 ライン型ロードヒーティング 2.検討概要 本検討は、平成21年度に実施したもので検討項目を以下に示す。 ・試験施工の実施に先立った試験施工計画の立案 ・試験施工に臨場し、施工状況の記録・把握 ・「全面ロードヒーティング」及び「定置式散布装置」との経済性の比較 ・試験施工による状況及び効果等について、下記調査項目を調査 ①融雪・融氷効果 ②スタックの発生状況 ③舗装の状況 ④充填材の状況 ・本検討の検討結果を踏まえ、技術指針(案)・標準図集の作成 3.検討結果 3.1 試験施工計画 試験施工位置は、右図に示 す東北地方整備局管内でも特 にスタックの発生が多い、一 般国道13号栗子峠の21.0kp ~21.1kp間の内L=46.5m(登坂 図-2 位置図 車線)とし、試験施工計画図は次に示すとおりとした。 福島県福島市飯坂町中野字二ッ小屋 地内

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ライン型ロードヒーティングについて

東北技術事務所 技術課 前田 隆

○石川 功

(現磐城国道事務所)嶋津 君雄

1.はじめに

冬期の峠道でスリップし坂道を上れなくなる「スタ

ック」の対策として、「全面ロードヒーティング」や

「定置式散布装置」等があるが、コストが高いことや

設備の設置工事が大規模になる等の理由により、十分

な対策が進んでいないのが実態である。

本検討では、大幅なコスト削減を目指したスタック

対策として「ライン型ロードヒーティング」の検討概 写真-1 スタック発生状況

要、検討結果について報告するものである。

写真-2 定置式散布装置 写真-3 全面ロードヒーティング 図-1 ライン型ロードヒーティング

2.検討概要

本検討は、平成21年度に実施したもので検討項目を以下に示す。

・試験施工の実施に先立った試験施工計画の立案

・試験施工に臨場し、施工状況の記録・把握

・「全面ロードヒーティング」及び「定置式散布装置」との経済性の比較

・試験施工による状況及び効果等について、下記調査項目を調査

①融雪・融氷効果 ②スタックの発生状況 ③舗装の状況 ④充填材の状況

・本検討の検討結果を踏まえ、技術指針(案)・標準図集の作成

3.検討結果

3.1 試験施工計画

試験施工位置は、右図に示

す東北地方整備局管内でも特

にスタックの発生が多い、一

般国道13号栗子峠の21.0kp

~21.1kp間の内L=46.5m(登坂 図-2 位置図

車線)とし、試験施工計画図は次に示すとおりとした。

福島県福島市飯坂町中野字二ッ小屋 地内

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図-3 施設配置平面図

図-4 電熱線敷設模式図

3.2 試験施工状況

試験施工状況は、下記の写真に示すとおり切削ラインの墨出し、路面切削(溝切

り)、圧搾空気による清掃、電熱線の敷設、切削部の充填、充填材の付着防止処理

の手順で実施した。なお、施工に要した時間は、概ね墨だし約100分、溝切り約2

00分、電熱線敷設30分、切削部の充填約5時間であった。

写真-4 切削ラインの墨出し 写真-5 路面切削(溝切り) 写真-6 圧搾空気による清掃

写真-7 電熱線の敷設 写真-8 切削部の充填 写真-9 充填材の付着防止処理

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3.3 融雪状況

平成22年1月16日15:00における融雪状況は、次の

写真に示すとおりで、それぞれの路面温度は、1本

区間-0.4℃、2本区間+0.8℃、3本区間が+2.8℃

となっており、3本区間の温度分布状況を下図に示

す。

なお、路面状態はシャーベットで外気温は-4.7℃

であった。 写真-10 1本区間の融雪状況

写真-11 2本区間 写真-12 3本区間 図-5 3本区間温度分布

3.4 路温状況

気象条件の厳しい時には、1本及び2本区間(10cm間隔)の路面温度が0℃以下ま

で低下している時間帯があった。ライン型ロードヒーティングの必要とされる実

用融雪能力は、降雪を完全に融かせなくてもシャーベット状態まで許容するとし

ているものの、路面温度が0℃以下まで低下した場合は凍結のリスクも想定される。

この結果から、1本及び2本区間(10cm間隔)の電熱線では明らかに能力不足の状

態になっていると判断されることから、ライン型ロードヒーティングにおける電

熱線の適用本数は3本以上(10cm間隔)での運用を基本とする。

3.5 コスト比較結果

15年間のトータルコストを比較した結果は下記のとおりである。

・標準型融雪施設と比較した場合73%のコスト縮減

・定置式散布装置と比較した場合65%のコスト縮減

表-2 トータルコスト比較(15年間) 単位:千円

対象規模 システム区分 イニシャルコ ランニング トータルコスト 標準型と 定置式と 適用

スト コスト の比較 の比較

幅員3.25m、延長105m 定置式 15,000 1,600 39,000 0.77 1.00 実績

(面積341m2) 薬剤散布装置

幅員3.25m、延長105m 標準型融雪施設 26,800 1,572 50,380 1.00 1.29 高圧

(面積341m2) (電熱線方式) 受電

幅員3.25m、延長105m ライン型ロードヒーティング 8,750 315 13,475 0.27 0.35 低圧

(面積74m2) (電熱線方式) 受電

※1 定置式薬剤散布装置のランニングコストは、薬剤(溶液)費用であり、平成20年度の値を採用。

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※2 標準型融雪施設のイニシャルコストは、電熱線敷設の他に、舗装の切削オーバーレイ(2層仕上げ)の費用も計上。

※3 標準型融雪施設及びライン型ロードヒーティングのイニシャルコストは、積算ベースの直接工事費に諸経費率60%

として工事費を算定。

3.6 スタック防止効果

過去5ヶ年の平均発生件数は16件/年になっているのに対し、試験施工後は2月

10日時点で試験施工箇所ではスタックは発生していない。

よって、スタック防止効果を確認できる。

上段:H15~H20冬期(11月~3月)の年平均発生件数

下段:試験期間(H21.12.14~H22.2.10)の発生件数

3.7 技術指針(案)・標準図集の作成

地域特性を考慮したライン型ロ-ドヒ-ティング普及に向けた、「省エネ型道

路融雪技術指針(案)」及び「設計施工標準図集」を作成した。

4.まとめ

①ライン型ロードヒーティングは、3本区間で融雪効果を確認した。

②試験施工によりスタック防止効果を確認した。

③15年間のトータルコストを比較した結果は下記のとおりである。

・標準型融雪施設と比較した場合73%のコスト縮減

・定置式散布装置と比較した場合65%のコスト縮減

5.さいごに

今後は、舗装及び充填剤の変状調査を引続き実施するとともに、交差点部に試験

施工した電熱線のコルゲーションに対する耐久性の調査を行う予定である。