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グレープフルーツジュースおよび健康食品中のフラノクマリン 類含有量調査 誌名 誌名 食品衛生学雑誌 ISSN ISSN 00156426 巻/号 巻/号 494 掲載ページ 掲載ページ p. 326-331 発行年月 発行年月 2008年8月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

グレープフルーツジュースおよび健康食品中のフラ …been isolated from grapefruit juice. FCs, i.e. , bergamottin (BG), bergapten (BP), bergaptol (BT) and

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グレープフルーツジュースおよび健康食品中のフラノクマリン類含有量調査

誌名誌名 食品衛生学雑誌

ISSNISSN 00156426

巻/号巻/号 494

掲載ページ掲載ページ p. 326-331

発行年月発行年月 2008年8月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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326 食衛誌 Vol. 49, No.4

調査・資料

グレープフルーツジュースおよび健康食品中の

フラノクマリン類含有量調査

(平成 20年 1月28日受理)

坂牧成恵1.*

萩野 賀世l

中里光男2

平田恵子l

松本ひろ子l

牛山博文l

Contents of Furanocoumarins in Grapefruit Juice and Health Foods

Narue SAKAMAKl1. *, Mitsuo NAKAZAT02, Hiroko MATSUMOT01,

Kayo HAGIN01, Keiko HIRATA1 and Hirofumi USHIYAMA1

1Tama Branch Institute, Tokyo Metropolitan Institute of Public Health: 3-16-25 Shibasaki-cho, Tachikawa, Tokyo 190-0023, Japan;

2Tokyo Metropolitan Institute of Public Health: 3-24-1 Hyakunin-cho, Shinjuku-ku, Tokyo 169-0073, Japan

Interactions between grapefruit juice and medications have long been recognized. In recent years, several furanocoumarins (FCs) that inhibit P450 activity in intestinal microsomes have been isolated from grapefruit juice. FCs, i.e., bergamottin (BG), bergapten (BP), bergaptol (BT) and 6',7'-dihydroxybergamottin (DHB), in samples was extracted with acetonitrile, and separated on a Phenyl column using 0.1 % phosphoric acid-acetonitrile gradient as a mobile phase, with monitor-ing at 311 nm. The recoveries of BG, BP, BT and DHB from lemon juice spiked at the level of 5.0 μg/g were 103::!:0.7%, 99.5::!:0.2%, 96.5::!:0.2% and 90.1 ::!:0.2%, respectively. The quantification limits were 1.0μg/g in samples. The contents of BG, BP and DHB in grapefruit juice (n= 13), citrus fruit of 20 species and health food (n= 16) were measured. Th巴contentsof BG were 0-16μg/g,O-16μg/g and 0-5.6μg/g, BT were 0-39μg/g,0-13μg/g and 0-28μg/g, DHB were 0-10 μg/g,0-35 /.l.g/g and 0-6.2μg/g, respectively. BP was not detected. These results suggest that patients prescribed calcium antagonists or antiallergic agents should be cautions about their intake of FCs from grapefruit juice, citrus and health foods.

(Received January 28, 2008)

Key words: フラノクマリン furanocoumarins;ベルガモチン bergamottin;6',7'ージヒドロキシベル

ガモチン 6',7'-dihydroxybergamottin; グレープフルーツジュース grapefruitjuice;健康食品

health food;かんきつ citrusfruit;薬物相互作用 druginteraction;高速液体クロマト グラフィ -

HPLC

はじめに

グレープフルーツジュースはある種の降圧剤や抗アレル

ギー薬など臨床的に汎用される数多くの薬物と相互作用を

有することが知られている 1)-5) その薬物相互作用物質と

してベルガモチン (BG),6',7'ージヒドロキシベルガ、モチン

(DHB)などのフラノクマリン (FC)類が報告1)-3)されてい

る.これらは小腸の主要薬物代謝酵素であるチトクローム

P450 3A4 (CYP3A4)に結合することにより,その活性を

長期間消失させ,薬剤の種類によってはグレープフルーツ

本連絡先

l 東京都健康安全研究セ ンタ ー多摩支所食品衛生研究科:

干190-0023東京都立川市柴崎町 3-16-252東京都健康安全研究センター: 干169-0073東京都新宿区百

人町 3-24-1

ジュ ースを飲用した後に起こる血紫中濃度上昇作用が 3-

4日程度持続する 1)-3) このグレープフルーツと薬との相

互作用については,臨床上広く認識されており,服薬指導

時にグレープフルーツジュースの飲用を禁止される例も多

く,薬剤の添付文書判~料中にも投与時にはグレープフ

ルーツジュースとの併用注意ということで,摂取を控える

よう注意喚起がなされている.一方, DHBに脂肪細胞か

らのアディポネクチンの分泌を高める作用があること判

が最近報告され,血管の炎症や動脈硬化を抑制する効果が

*1 http://www.bayer.co.jp/hv /tenpu/data/aU.html 料 http://med.astrazeneca.co.jp/product/PI/SPL]Ipdf判 http://med2.astellas.jp/med/jp/basic/details/prg-5/att・

ached/tenpu-prg-5.pdf *4黒柳 ら,日本栄養 ・食糧学会総会講演要旨集,Vol. 59, p.

287.2005

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5. 試験溶液の調製

1) グレープフルーツジュースおよび生かんきつ類から

の抽出:植沢らの方法6) に準じて行 った.すなわち,

ジュースは混和し,かんきつは可食部を細切後 10gをス

テンレス製ホモジナイザーカップにとり,アセトニトリル

30 mLを加えて 10分間ホモジナイズした後, 50 mLに

メスアップしたものを振とう抽出した.その一部を採り

14,000 Xgにて 10分間遠心分離を行い,上澄液を HPLC

試験溶液とした.

2) キャンディおよび頼粒タイプの製品からの抽出:試

料は粉砕,混和した後 10gを採り,少量の水で溶解した

後,以下ジュース類と同様に抽出操作を行い, HPLC試

験溶液を調製した.

なお,操作には褐色のガラス器具を用い,遮光条件下で

抽出を行った.

6. 検量線

FC類混合標準原液をアセトニトリルで希釈し, 0.2,

0.5, 1.0, 2.0, 5.0, 10.0, 20.0および 50.0μg/mLのFC類

混合標準溶液を調製し,その 20μLをHPLC装置に付し,

ピーク面積法により検量線を作成した.

327

その

グレープフルーツンユースおよび健康食品中のフラノクマリン類含有量調査August 2008

期待できることから, DHBが機能性素材として注目され

ており,健康食品の原材料にも用いられている.これら健

康食品はス ーパーマーケットやドラッグストア,通信販売

で容易に入手でき,多くの人に喫食されている. しかし,

食品中の FC類含有量については, 一部のかんきつ類果汁

中あるいはグレープフルーツ果肉中での報告6)-1めはある

が,これらを素材とする市販飲料や健康食品中の含有実態

は明らかとなっていない.そこで,市販のグレープフルー

ツジュース類および各種の生かんきつ類について BGの関

連成分であるベルガプテン (BP)とベルカープト ール (BT)を

加えた FC類の分析を行った.また,製品の原材料表示に

グレープフルーツ果汁末 ・エキスなどと記載されている頼

粒やゼリー飲料,カ プセルタイプなど、の健康食品について

も,これら FC類の分析を行い,含有実態を調査し,

結果から実際の一日当たりの摂取量を推定した.

結果および考察

1. HPLC条件の検討

FC類の HPLC分析は,フェニルカラムを用い uv検

出により行った6). FC類の uvスベクトルを Fig.1に示

したが,それぞれ極大吸収は 220~260 nmの聞に 2から

3個と 311nm付近にあった.短波長域の 240nmにおい

てはきょう雑ピークが多く存在し HPLCクロマ 卜上妨害

となったが, 311 nmにおいては妨害が少なく感度も十分

に得られたことから,分析波長は 311nmとした.植沢

らの方法的では分析対象が BG,DHBおよび BTの3成分

であり,その HPLC条件ではアセトニトリルと 0.1%リン

酸水溶液 (4:6)を5分間流し,その後 30分でアセトニト

リル 100%とするグラジエントを用いている. BPを対象

としない場合は本条件で良好な分離が得られるが, BPも

対象とする場合は, BPとDHBが Iピークとなりクロマ

DHB

ωUEmw』LO的』〈

350

350

BG

300

300

250

250

200

200

350

200 350

300

300

250

250

200

実験方法

1.試料

平成 17年 11月~平成 19年 1月に東京都内の小売庖

および通信販売によって入手した夕、レープフルーツジュー

ス類(以下,グレープフルーツジュースと略記)13検体

および健康食品 16検体を試料として用いた.また,生の

グレープフルーツ,オロブランコ(別名スイーティ),オ

レンジ,ぶんたん,夏みかん,いよかん,デコポンおよび

レモンなどのかんきつ類 20種 25検体についても都内小

売屈で入手したものを試料とした.

2. 試薬

FC類標準原液:BG (EXTRASYNTHESE S. A社

製), BP . (EXTRASYNTHESE S. A社製)および BT

(EXTRASYNTHESE S.A.社製)はそれぞれ 10.0mgを

精密にはかり,アセトニトリノレに溶解して全量を各 50

mLとした.また, DHB (Ultrafine Chemicals社製)は

4.0 mgを精密にはかり,アセトニトリルに溶解して全量

を20mLとした. これらの標準原液 1mLはBG,BP,BT

および DHBをそれぞれ 200μg含む.

FC類混合標準原液 FC類標準原液をそれぞれ 5mL

採り,アセトニトリルで 20mLとした.

リン酸は特級を,その他の試薬は HPLC用を用いた.

3. 装置

高速液体クロマトグラフ AgilentTechnologies社製

11 00 series,送液ポンプ,デガッサー,恒温槽,オート

サンプラー,フォトダイオードアレイ検出器およびデータ

処理装置から構成するシステムを用いた.

4. HPLC測定条件

カラム CAPCELL PAK SG-Phenyl (5μm, 4.6 mm

i.d. X 150 mm,資生堂(株)製),移動相:Aアセトニ トリ

ル, B 0.1 % リン酸, グラジ エ ント条件 0~5 分 (A: B

=50・50)→20分 (80:20),流速1.0mL/min,カラム

温度:40oC,検出波長 311nm,注入量 20μL Wavelength (nm)

UV spectra of standard BG, DHB, BT and BP Fig.1.

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328

(8-2)

u 10 15 10 15 0 10 15

Retention time {min}

Fig. 2. HPLC chromatograms of BG, DHB, BT and BP in sample extracts

(A) Standard: 1.0 μg/mL, (B-l) lemon juice: control, (B-2) lemon juice: furanocoumarins added (5.0μg/g) Operating conditions: CAPCELL PAK SG-Phenyl (5μm, 4.6 mm i.d.X 150 mm) column, mobile phase (a) acetonitrile (b) 0.1 % phosphoric acid,

gradient elution a/b=50・50(0-5 min)→a/b=80 ・20 (20 min), column temperature 400C, flow rate 1.0 mL/min, detection wavelength UV 311 nm, injection volume 20μL

ト上での分離ができなかった.そこで,グラジエント条件

を検討したところ,アセトニトリルー0.1% リン酸水溶液

(5・5)からスター 卜する グラジエント条件に変更すること

により. BG, BP, BTおよび DHBの4成分を良好に分

離 ・検出することができた.Fig.2に標準品およびレモ ン

ジュースを用いた場合の試験溶液の HPLCクロマト グラ

ムを示した.検量線は 0.2-50μg/mLの範囲で良好な直

線性を示した (r= 0.9999). 本法の定量限界はいずれも試

料あたり1.0μg/gであった.

2. 添加回収試験

レモンを搾ったジュースに BT,DHB, BPおよび BG5.0

μg/gに相当する量をそれぞれ添加し,本法に従って添加

回収試験を行った.その結果,回収率(平均値±標準偏

差.n = 5)は BT96.5::t 0.2%, DHB 90.1 ::t 0.2%, BP

99.5::tO.2%. BG 103::tO.7%であっ た.また,タブレッ ト

タイプの健康食品の分析を想定して,市販のラムネ菓子を

用いて同様に添加回収試験を実施したところ,回収率(平

均値±標準偏差.n=5)はBT98.7::t8.1%, DHB 103::t

5.6%, BP 99.5::t4.3%. BG 98.2::t4.3%であり,いずれも

90%以上の良好な結果が得られた.

3. 市販グレープフルーツジュース・健康食品中の FC

類含有量および一日摂取量調査

市販のグレープフルーツジュース 13製品および健康食

品 16製品について FC類の分析を行った結果を Table1

に示した. ジュ ースについては,すべての製品から FC類

を検出し,その平均含有量は BG7.7μg/g. DHB 3.7μg/

g. BT 8.8μg/gであり.BPはいずれの製品からも検出

されなかった.濃縮還元タイプで果汁 100% と表示のあ

るジュースが 13製品中 8製品 (a-h)あり,これらの BG

含有量は 0-7.2μg/g. DHB含有量は 0-11μg/g.BT

含有量は 0-12μg/gの範囲にあっ た.また,果汁 200%

の濃縮果汁 (i)では BG含有量は 16μg/gであり. BGに

食衛誌 Vol. 49, NO.4

Table 1. Contents of furanocoumarins in grapefruit juice and health foods

Sample

Grapefruit luice a reconstituted fruit juice b reconsti tu ted frui t j uice c reconsti tu ted frui t j uice d reconstituted fruit juice e reconsti tu ted frui t j uice f reconstituted fruit juice g reconstituted fruit juice h reconstituted fruit juice

reconstituted fruit juice (200%) 30% fruit juice beverage

k mix fruit juice 1 straight fruit juice

m straight fruit juice Health Food

1 jelly drink 2 jelly drink 3 jelly drink 4 jelly drink 5 tablet 6 tablet 7 capsule 8 granule 9 granule 10 granule 11 drink 12 drink 13 drink 14 candy 15 jelly candy 16 biscuit

ND: not detected *: BP was not detected

Analytical result (μg/g)本

BG DHB BT

5.1 3.4 4.9 ND 3.7 2.5 6.6 10 3.0 5.1 5.1 ND 5目l 5.5 2.3 7目2 ND 6.8 6.2 11 6.8 4.5 ND 12 16 ND 26 ND ND 3.1 4.8 ND 5.5 32 2.0 39 7.4 7.9 2.9

ND ND ND ND ND ND ND ND 2.6 ND ND ND 3.1 6.2 1.7 ND 2.9 3.4 ND ND' ND 5.6 ND 28 ND ND ND ND ND ND ND ND ND ND ND ND ND ND ND ND 3.5 ND ND ND ND ND ND ND

ついては分析したジュース中最も高い含有量であったが,

この製品か らDHBは検出されなか った一方,果汁

30% の飲料 (j)からは BGおよ びDHBは検出されなかっ

たが. BTのみ 3.1μg/gが検出さ れた.グレープフルー

ツと数種の果汁を混合した ジュース 1製品 (k)からは BG

が4.8g/g. BTが 5.5μg/g検出されたが. DHBは検出さ

れなか った. ス トレート ジュース 2銘柄については,国

産製品 (m)では含有量がそれぞれ BG7.4μg/g, DHB 7.9

μg/g. BT 2.9μg/gであっ たが,オーストラリア産の製品

(1)では BG カ~ 32 g/g, DHB カ~ 2.0μg/g,BTカ主39μg/g

であり,他のジュースに比し BGは2倍以上. BTは1.5

倍以上の高い含有量であった.グレープフルーツにはさま

ざまな品種があるが, ピンクやルビ一種よりも白色種のほ

うに FC類含有量が多いこと 10).14) が示されている.

ジュースの原材料として用いられたその品種,産地により

FC類の量に差異が生じたことも考え られる.植沢ら6)は

国産グレープフルーツジュース 7製品を分析したところ,

いずれの製品からも BGおよび DHBを検出したと報告し

ている.今回の結果は. 100%グレープフルーツジュ ース

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August 2008 グレープフルーツジュ ースおよび健康食品中のフラ ノクマ リン類含有量調査 329

でない i-kと外国産の lを除いた国産 9製品中,ジュー

スbで BGが,ジュ ースfとhの2製品で DHBが不検出

であ ったが,それ以外の 6製品 (a,C, d, e, g, m)ではこの

報告と同様に BGおよび DHBを検出した.

さらにジ ュースをコ ップ I杯 200mLの量を一日あた

りに飲用するとして推定した FC類摂取量を Table2に示

した. FC類の一 日摂取量は, BGが 0-6.4mg, DHBが

0-2.2 mg, BTが 0-7.8mgであり,製品によりは‘らつ

きは見られた.薬物相互作用を誘発させる可能性の闇値は

それぞれのケースごと(薬物,個体差やその摂取のタイミ

ングなど)に応じて違いがあるため,一概に数値を示すこ

とは難しい.カルシウム桔抗剤とグレープフルーツジ ュー

スとの相互作用の臨床試験では,フェロジピンの場合,単

回グレープフルーツジュース 200-250mL飲用時に,7)<

飲用に比較してフェ ロジピン最高血中濃度は +70-+

225%と大きな上昇率が示されている41 今回の結果では,

100%グレープフルーツジュース a-hとlおよび m の

10製品 200mLの飲用により,薬物相互作用物質と考え

られている FC類を数 mg-l0mg程度摂取する可能性が

あることが示唆された

健康食品については 16製品を分析したところ, 11製

品で不検出であり, 2製品で BGを最大 5.6μg/g,3製品

で DHBを最大 6.2μg/g,4製品で BTを最大 28μg/g検

出したが, BPについてはいずれの製品からも検出されな

かった.今回分析対象とした健康食品は製品の原材料表示

にグレープフルー γ果汁末 ・エキスなどと記載されたもの

であるが,健康食品では FC類不検出の製品が 7害IJと多

く,また検出した製品についてもその含有量は少なか っ

た.これは原材料に占めるグレーフルーツの割合が少量で

あっ たためと考え られ,果汁を濃縮したエキ スタイプの健

康食品が分析対象になかったためと推察される.包装に記

載された量あるいは Iパッケ ージを喫食するとして推定

した一 日あたりの FC類摂取量を Table2に示した.グ

レープフルーツジュースを 200mL飲用する場合と比較

するとその 1/20以下の低いレベルで、あっ た.今回調査し

た健康食品については,グレープフルーツジュースに比し

て, FC類含有量は低値であ った.しかし,グレープフ

ルーツジュースを濃縮して製造された健康食品が販売され

た場合には, FC類が高濃度に含まれる可能性があるた

め,薬物相互作用の点からは,グレープフルーツジュース

と同様の注意が必要と考えられる.

4. 生かんきつ類中の FC類含有量

グレープフルーツ,スイーティ(オ ロブラン コ),ぶん

たん,オレンジ,夏みかん,いよかん,デコポン, レモン

など 20種の生かんきつ類について分析した結果を Table

3に示した.グレープフルーツホワイ 卜種,同ルビ一種,

スイーティ,メロ ーゴールドおよびぶんたんの一種である

晩白柚(ばんぺいゆ)からは DHB,BGが検出された.

グレープフルーツではその品種により FC類の含有量が異

なり, De Castroらの報告10)ならびに Fukudaらの報

Table 2. Daily intakes of BG, DHB and BT in grapefruit juice and health foods

Furanocoumarins (mg/day) Sample

BG DHB BT

Grapefruit juice* a reconstituted fruit juice 1.0 0.68 0.98 b reconstituted fruit juice ND 0.74 0.50 c reconstituted fruit juice 1.3 2.0 0.60 d reconstituted fruit juice 1.0 1.0 ND e reconstituted fruit juice 1.0 1.1 0.46 f reconstituted fruit juice 1.4 ND 1.4 g reconstituted fruit juice 1.2 2.2 1.4 h reconstituted fruit juice 0.90 ND 2.4

reconstituted fruit juice (200%) 3.2 ND 5.2 30% fruit juice beverage ND ND 0.62

k mix fruit juice 0.96 ND 1.1 1 straight fruit juice 6.4 0.40 7.8

m straight fruit juice 1.5 1.6 0.58 Health food柿 (dailyintake)

1 jelly drink (180 g) ND ND ND 2 jelly drink (180 g) ND ND ND 3 jelly drink (130 g) ND ND 0.34 4 jelly drink (150 g) ND ND ND 5 tablet (4 g) 0.012 0.025 0.0068 6 tablet (38 g) ND 0.11 0.13 7 capsule (2.1 g) ND ND ND 8 granule (4 g) 0.022 ND 0.11 9 granule (8 g) ND ND ND 10 granule (4 g) ND ND ND 11 drink (120 g) ND ND ND 12 drink. powder (12 g) ND ND ND 13 drink (150 g) ND ND ND 14 candy (30 g) ND 0.11 ND 15 jelly candy (31 g) ND ND ND 16 biscuit (80 g) ND ND ND

ND: not detected *・ Toestimate the daily intakes. it was assumed that a person takes 200 mL of grapefruit juice in a day 神 Toestimate the daily intakモs.it was assumed that a p巴rsontakes one package or the recommended serving size per day as shown on a package

告14)と同様,ルビー種よりホワイト種で高い傾向を示し

た.また, グレープフルー ツとポメ ロ (ぶんたん)の交配

種であるメローゴールドからは高いレベルの FC類が検出

された. しかし,オレンジ,夏みかん,いよかん,デコポ

ンおよびレモンなど他のかんきつ類から FC類は検出され

なかった. Saitaら15)は固相酵素免疫検定法により 15種

のかん きつ類の試験を実施し, red pummelo,スイー

ティ,メローゴールド,晩白柚,はっさく,だいだい,ラ

イムおよび夏だいだいの 8種にフラノクマリン類に対す

る反応性が観察されたとしている.分析方法および対象品

種が異なるが,今回分析したかんきつ類ではスイーティ,

メローゴールド,晩白柚について Saitaらの報告15)と同様

にFC類が検出された.

FC類が検出 されたかんきつ類は, グレ ープフルー ツ

ジュース 200mLを飲用する場合と比較すると,生グ

レープフルーツ果実では 200gでほぼ閉じ量の FC類を摂

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Vol. 49, NO.4 食衛誌330

Table 3. Quantitative comparison of furanocoumarins in grapefruit and other citrus fruits

Analytical result (μg/g)

BT

DD3DDDDDDDDDDDDDDDDDD

NNlNNNNNNNNNNNNNNNNNN

DHB

n

u

n

y

7DD45DDDDDDDDDDDDDDDD

&NNZ3NNNNNNNNNNNNNNNN

qo

内。

BG

tnud

t

741465DDDDDDDDDDDDDDD

aL

I

-

-3NNNNNNNNNNNNNNN

6

4

3

No. of samples

つ臼つム

IA

ワfH'A'A1ATA--1A1i1A1A1A

ワム

1A1A'i'A1iTi

Grapefruit (white) Grapefruit (ruby) Grapefruit (white), Canned in light syrup Oroblanco Melogold Banpeiyu pummelo Akunebuntan pummelo

Suishobuntan pummelo Tosabuntan pummelo Iyokan

Satsuma mandarins Kumquats Setoka Sweet spring Dekopon tangor

Natsumikan Hassaku Pearl-kan Hyuganatsu Ponkan Lemons

一日あたり O~最大 0.34 mgのFC類が摂取されるものと

推定された.今回分析した健康食品については FC類を含

有する製品が少なかったが,グレープフルー ツ果汁を濃縮

した健康食品が販売された場合,その喫食が投薬効果に影

響を与える可能性があると考えられた.さらに生かんきつ

類 20種について分析を行ったところ,グレープフルーツ

では赤肉種より白色種に FC類含有量が高く,品種により

差異が認められた.また,グレープフルーツ以外でも,ス

イーティ,メローゴールドおよび晩白柚などのかんきつ類

から FC類を検出した.

なお,本報告の一部は日本食品衛生学会第 92回学術講

演会 (2006年 11月,愛知)において発表した

ND: not detected

取するものと推定された.グレープフルーツ 200gは果

実 1個分の可食部に相当するため,グレ ープフルーツ 1

個の喫食でジュース一杯とほぼ等量となる.また,スイー

ティでは 200g,晩白柚果実では 400gの喫食量で同様に

摂取するものと推定された.

病院でカルシウム措抗剤や抗アレルギー薬などの薬剤を

投薬されている場合,グレープフルーツジュースの摂取を

避けるよう注意を払っていても,スイーティや晩白柚など

他のかんきつ類の喫食により,グレープフルー ツを摂取し

たときと同じ量の FC類が体内に入ってしまうことがわ

かっ fこ.

文献

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飲食物 ・I啓好品と医薬品の相互作用研究班編.改訂3版

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(ISBN 4-621-07548-9)

2)

3)

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5)

まと め

市販グレープフルーツジュース類 13製品および健康食

品 16製品について, FC類の分析を行い,製品中の含有

量を調査し,一日摂取量を推定した. ジュースはアセトニ

トリルを用いて抽出を行い, 14,000 Xgで遠心分離して得

られた上澄液を HPLC試験溶液とした. FC類はフェニル

カラムで分離した後,検出波長 311nmによ り測定した.

その結果,すべてのグレープフルーツジュース類から FC

類を検出し,その含有量は BG0~32μg/g, DHB 0~11

μg/g, BT 0~39 g/gであった. 100%グレープフルーツ

ジュース 200mL の飲用により,数 mg~10 mg程度の

FC類を摂取することが明らかとなった.また製品の原材

料表示にグレープフルーツ果汁末・エキスなどと記載され

ていた健康食品中の含有量は BG0~5.6μg/g, DHB O~

6.2μg/g, BT 0~28μg/g の範囲にあり, 11製品か らは

全く検出されなかった.それぞれの製品を喫食した場合,

Page 7: グレープフルーツジュースおよび健康食品中のフラ …been isolated from grapefruit juice. FCs, i.e. , bergamottin (BG), bergapten (BP), bergaptol (BT) and

August 2008 グレープフルーツジュースおよび健康食品中のフラノクマリン類含有量調査 331

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