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味の素グループ 環境報告書2008 15 持続可能な地球・社会に貢献していくために、工場 やオフィスなど、直接の事業領域から発生する環境負 荷の極小化が不可欠です。 味の素グループでは、「味の素グループ・ゼロエミッ ション」05/10計画において、削減すべき環境負荷 項目と、2010年までに達成すべき数値目標を定め、 着実に取り組みを進めています。 こうした共通の目標のもと、地域ごとの事業所の立 地や規模、事業特性に応じて、 "マルチローカル" に、さ まざまな方法で徹底した負荷削減に取り組んでいます。 事業の環境負荷を徹底して削減する 生産系事業場(工場)で 地球温暖化の原因となるCO2やフロン などの温室効果ガス、排水負荷、廃棄物な どの削減のため、製造現場での省エネ・省 資源、廃棄物の再資源化の他、環境負荷を 低減する大型設備や新技術の導入、クリー ンエネルギーへの転換などに取り組んで います。 オフィスで クールビズや、こまめなパソコン電源 OFFや昼休みの消灯奨励など省エネ活動 に取り組む他、オフィス内で発生する廃棄 物の約70%を占める紙類の使用削減や、 食堂から出る食べ残しの削減や再資源化 の取り組みを進めています。従業員の環 境意識向上のため、環境啓発イベントなど も随時開催しています。 「味の素グループ・ゼロエミッション」05/10計画の主な項目 温室効果ガスの排出量削減 フロン保有量の削減 排水汚濁負荷の削減 廃棄物の削減 生産効率向上、再資源化推進、返品削減、 販売予測精度向上など 節水型プロセスの導入、微生物脱窒設備の導入など ノンフロン設備への転換、自然冷媒への切り替えなど クリーンエネルギー転換、省エネ技術・設備導入、 工程改善など 製 造 特集2 環境負荷の極小化 さまざまな場面でのゼロエミッション活動 各数値目標と達成状況はP27をご覧ください。

モジョケルト工場のゼロエミッション活動...17 味の素グループ 環境報告書2008 ジャカルタ モジョケルト モジョケルト工場 2007年度までのゼロエミッション計画達成状況

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Page 1: モジョケルト工場のゼロエミッション活動...17 味の素グループ 環境報告書2008 ジャカルタ モジョケルト モジョケルト工場 2007年度までのゼロエミッション計画達成状況

味の素グループ 環境報告書200815

 持続可能な地球・社会に貢献していくために、工場

やオフィスなど、直接の事業領域から発生する環境負

荷の極小化が不可欠です。

 味の素グループでは、「味の素グループ・ゼロエミッ

ション」05/10計画において、削減すべき環境負荷

項目と、2010年までに達成すべき数値目標を定め、

着実に取り組みを進めています。

 こうした共通の目標のもと、地域ごとの事業所の立

地や規模、事業特性に応じて、"マルチローカル" に、さ

まざまな方法で徹底した負荷削減に取り組んでいます。

事業の環境負荷を徹底して削減する

● 生産系事業場(工場)で

 地球温暖化の原因となるCO2やフロン

などの温室効果ガス、排水負荷、廃棄物な

どの削減のため、製造現場での省エネ・省

資源、廃棄物の再資源化の他、環境負荷を

低減する大型設備や新技術の導入、クリー

ンエネルギーへの転換などに取り組んで

います。

● オフィスで

 クールビズや、こまめなパソコン電源

OFFや昼休みの消灯奨励など省エネ活動

に取り組む他、オフィス内で発生する廃棄

物の約70%を占める紙類の使用削減や、

食堂から出る食べ残しの削減や再資源化

の取り組みを進めています。従業員の環

境意識向上のため、環境啓発イベントなど

も随時開催しています。

「味の素グループ・ゼロエミッション」05/10計画の主な項目

温室効果ガスの排出量削減

フロン保有量の削減

排水汚濁負荷の削減

廃棄物の削減● 生産効率向上、再資源化推進、返品削減、 販売予測精度向上など

● 節水型プロセスの導入、微生物脱窒設備の導入など

● ノンフロン設備への転換、自然冷媒への切り替えなど

● クリーンエネルギー転換、省エネ技術・設備導入、 工程改善など

製 造特集2

環境負荷の極小化

さまざまな場面でのゼロエミッション活動

➡各数値目標と達成状況はP27をご覧ください。

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味の素グループ 環境報告書2008 16

 タイの自然豊かな農業地域に立地し、 ‶Green Factory”

を目指すタイ味の素社のカンペンペット工場は既に、グ

ループのゼロエミッション目標を達成していますが、CO2

をさらに大幅に削減するために、重油の代わりにカーボン

ニュートラル※のもみ殻を燃料とする新設備、バイオマスボ

イラーの導入・建設を進めています。2008年12月から

稼動予定のこのもみ殻ボイラーの導入によって、同工場の

CO2排出量は半分程度に削減されると期待されています。

 米作の盛んなタイは世界で6番目の生産量を誇り、同工

場の立地はもみ殻を調達しやすい環境にあります。もみ殻

は、農業由来の未利用資源であり、バイオマスボイラーは、

その有効利用になるため、

一石二鳥。同工場は、地

域農業における発酵副生

物の利用も徹底しており、

関連する知識・技術の普

及もあわせて、資源循環

の地域センター的機能を

果たしています。

 環境負荷の中でも、CO2の削減は、とりわけ喫緊の課題です。大型省エネ・クリーンエネルギー設備の導入から、きめ細

かな省エネアイディアの積み重ねまで、国内外でさまざまな取り組みを進めています。特に、味の素グループの環境負荷の

およそ8割を排出するアミノ酸発酵製造関連の事業所、中でも、事業が拡大している海外工場での取り組みは重要です。

 九州事業所は国内のアミノ酸発酵生産拠点で、蒸気使用

量、排水量ともに多く、ゼロエミッション目標達成は容易

ではありません。こうした負荷の抜本的な削減のためには、

革新的なプロセス新技術の導入・設備増強が必要ですが、

同時に、小さな省エネの積み重ねも大切です。九州事業所

では、現場の従業員が主体的に省エネの観点からプロセス

を見直し、自分たちのできることをどんどん進めようとい

う「草の根活動」を積極的に展開しています。

 その結果、省エネ改善提案件数はなんと300件を越え、

2007年度は省蒸気の活動でCO2発生量原単位13%減を

達成しました。2008年度はこの活動を、エネルギー全般、

排水に展開しています。

温室効果ガス削減に向けたさまざまな取り組み

 味の素グループ総CO2排出量のおよそ1割を排出する

ブラジルでは、主要5工場のアミノ酸発酵製造工程に、高

い省エネ効果を持つ蒸気再圧縮型濃縮法(MVR)の導入

を進めてきました。これは、被濃縮液から出た蒸気を機

械的に圧縮し、濃縮加熱源に再び利用することによって、

省エネルギーを実現するプロセスです。2008年度のリメ

イラ工場への新MVR設

備完工により、ブラジル

の主要5工場すべてで導

入が完了。導入前に比

べ2割程度、年間およそ

5万トンにおよぶCO2の削減効果が見込まれています。

バルパライソ工場のMVR

ブラジル主要5工場 省エネプロセスMVR導入でCO2を2割削減へ

 味の素冷凍食品(株)グループ企業の(株)フレック関

東では、ボイラーの燃料の重油と、ハンバーグ焼き機の燃

料の液化石油ガス(LPG)を、液化天然ガス(LNG)に転

換しました。LNG転換により、CO2排出量が重油に比べ

約33%、LPGに比べ約21%削減することが可能で、 (株)

フレック関東では1年間で約600トンのCO2を削減でき

る見込みです。

食品工場でも

● (株)フレック関東   ~液化天然ガスへのエネルギー転換で   年間約600トンCO2削減~

● 味の素(株) 九州事業所  ~省エネアイディアの積み重ねで   CO2原単位13%削減~

タイ味の素社 カンペンペット工場 バイオマスボイラー導入でCO2を半減

※カーボンニュートラル:植物は光合成により、成長時にCO2を吸収することから、燃やした時にCO2が大気中に戻っても、全体として大気中のCO2は増減なし、という考え方。

国内発酵工場でも

もみ殻

http://www.ffa.ajinomoto.com/Web

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味の素グループ 環境報告書200817

ジャカルタモジョケルト

モジョケルト工場2007年度までのゼロエミッション計画達成状況

2010年度目標 2007年度実績

排水汚濁負荷濃度 BOD≦10ppmTN≦5ppm

BOD 6ppmTN 3.1ppm

排水量原単位 対生産量20%以上削減(対2002年度比) 67%削減

廃棄物削減 再資源化率99%以上 100%

CO2排出量原単位 対生産量20%削減(対2002年度比) 44%削減

 モジョケルト工場は、アミノ酸発酵製造と風味調味料な

どの食品製造、二つの異なる製造工程をあわせ持つ工場で

す。アミノ酸発酵製造工程からの廃水には、窒素分が多く

含まれるという特徴があるため、微生物脱窒(BDN)法と

いう、高度な廃水処理を行っています。BDN法の安定運

転のためには、高度な運転管理が必要です。

 また、食品製造の過程で廃水処理能力を低下させる最大

廃水処理の取り組み

モジョケルト工場のゼロエミッション活動

 うま味調味料「味の素®」や風味調味料「MASAKO®」

などを生産するインドネシアの基幹工場、モジョケルト工

場では、味の素グループのグローバルでのゼロエミッショ

ン計画が策定された2002年から本格的な環境負荷極小化

に向けた取り組みを始め、2007年度末にはCO2排出削減

や、廃棄物・排水削減において早くも2010年度の数値目

標をクリアしました。

 とりわけ、再資源化には徹底してこだわり、従業員が

地域のあらゆる利用先を探し、目標の99%を超える完全

100%再資源化を達成しました。

の要因は、食品原料由来の動植物性油脂で、廃水に油分が

多いのは原料を無駄にしている証拠ともいえます。モジョ

ケルト工場では、廃水処理部門が製造工程の廃水を詳細

に分析し、製造部門と密に連絡を取り合うことで、排水に

流出する油分の削減に徹底して取り組み、排水ゼロエミッ

ションを達成しました。

~徹底した再資源化へのこだわり~

 モジョケルト工場のCO2排出量は、味の素グループの

CO2排出量(236万トン)の約1割と、影響の大きな工場で

す。そこで、エネルギー効率を飛躍的に高めたコジェネレー

ションシステムを導入し、2007年4月から稼動を開始して

います。これは、廃熱回収ボイラーによってガスタービン

発電機の排熱を回収して蒸気を作り、蒸気タービンを回し

てさらに発電を行う効率の高いシステムで、蒸気は工場内

の生産設備のエネルギー源としても使われます。このコン

バインドシステムの導入により総合エネルギー効率は90%

にも及び、CO2の発生を約20%抑えることができます。

ガスタービン発電機(7,000kW級)

蒸気タービン発電設備

コジェネレーションシステムの導入CO2削減へ

排水負荷削減へ

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製 造特集2

味の素グループ 環境報告書2008 18

モジョケルト工場の廃棄物有効利用

食品系廃棄物

アミノ酸発酵系廃棄物

一般廃棄物

発酵副生液余剰汚泥 液肥「AMINA」

カルシウム塩 肥料原料/セメント原料

廃活性炭ヒューマス レンガ焼成原料

風味調味料包装時のこぼれなど

飼料原料牛脂・鶏皮・鶏足

食堂残飯

鶏油 場内乾燥燃料

落ち葉/刈草 推肥原料

紙類 焼却灰をレンガ原料へ

場外再利用

ダンボール

プラスチック

鉄くず

ガラス

 何より徹底しているのが、廃棄物の再資源化です。目標

の99%に満足せず、最後の1%までこだわり、ついに再資

源化率100%を達成しました。廃水中から回収する脂肪

分や余剰汚泥のほか、アミノ酸発酵生産プロセスから副生

されるカルシウム塩(サトウキビなどの原材料由来成分)、

廃活性炭に至るまで、さまざまな「未利用資源」を分析し、

すでに2004年度には99%を達成。残り1%にあたる、自

社内で焼却処分していた紙やプラスチックなどの一般ゴ

ミから、食堂から出る食べ残しまで従業員が徹底して分別。

価値ある資源としての用途を、地域の産業と連携して見出

すことで、再資源化率100%を達成しました。

徹底した再資源化で100%達成

 こうした成果は、工場従業員が自発的に、さまざまな副

生物の利用先を農業や地域社会の中で一つ一つ探し出すと

いった、地域に根ざした、インドネシア流の地道な取り組

みによるものです。今後も現地スタッフが先頭に立ち、ゼ

ロエミッション活動を続けていきます。

地域に根ざして

 ベトナム味の素社は、2008年6月5日にビエンホ

ア工場での環境活動が評価され、「グリーンBrand」

賞を受賞しました。この賞はベトナム科学技術協会

連合会の審査を経て授与されたものです。

 ベトナム味の素社では、常に環境対応の改善を実

施することで、企業活動と自然環境保護の調和を目

指し、それを通してより社会に貢献することを基本理

念にしています。現在は、ISO14001を基本に、味

の素グループ・ゼロエミッション計画の遂行に取り組

んでいます。

ベトナム味の素社Hung 副社長

T O P I C S

ベトナム味の素社の受賞

廃水処理設備の前で力を込める現地スタッフ

廃棄物ゼロ化へ