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2009/12/21 1 マネジメント・コントロール・ システム概論 企業価値を高めるMCS何をすることかについて マーチャント教科書を中心に Chap 1MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji マネジメントの問題点 ビジネススクールの教授 たちは、スキルとしてのマネ ジメント手法は精緻化できて 体系としてのマネジメント 体系としてのマネジメント は提示しえていない。しかし、 まず経営に必要とされるも のは、スキルとしてのマネジ メントではなく、体系としての マネジメントの方である。 (画像引用) http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/contribute/e/01/ (文章引用) 週刊ダイヤモンド 2009815日・22日合併号 下線は著者による。 MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji 「失われたピース」は実行フェイズ? 経営サイド 計画・意思決定フェイズ 経営理念・経営戦略 など 現場サイド 実行フェイズ MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji MCSが答え? 経営サイド 計画・意思決定フェイズ 現場サイド 実行フェイズ MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji 本講義の構成 1回 イントロと概略説明 2回 マネジメント・コントロールの具体策 3回 マネジメント・コントロール・システム(その1) 4回 マネジメント・コントロール・システム(その2) 5回 事例研究(企画中) MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji 世界を揺るがした金融危機・不況 リーマン・ブラザース GM MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

マネジメント・コントロール・ システム概論2009/12/21 5 本講義の構成 第1回イントロと概略説明 第2回マネジメント・コントロールの具体策

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2009/12/21

1

マネジメント・コントロール・システム概論

企業価値を高めるMCSは何をすることかについて

マーチャント教科書を中心に

(Chap 1)MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

マネジメントの問題点

ビジネススクールの教授たちは、スキルとしてのマネジメント手法は精緻化できても 体系としてのマネジメントも、体系としてのマネジメントは提示しえていない。しかし、まず経営に必要とされるものは、スキルとしてのマネジメントではなく、体系としてのマネジメントの方である。

(画像引用)http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/contribute/e/01/ (文章引用)

週刊ダイヤモンド 2009年8月15日・22日合併号下線は著者による。MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

「失われたピース」は実行フェイズ?

経営サイド = 計画・意思決定フェイズ

経営理念・経営戦略など

現場サイド = 実行フェイズ

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

MCSが答え?

経営サイド = 計画・意思決定フェイズ

現場サイド = 実行フェイズ

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

本講義の構成

第1回 イントロと概略説明

第2回 マネジメント・コントロールの具体策

第3回 マネジメント・コントロール・システム(その1)

第4回 マネジメント・コントロール・システム(その2)

第5回 事例研究(企画中)

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

世界を揺るがした金融危機・不況

↑ リーマン・ブラザース ↑ GMMCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

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2009/12/21

2

企業が目指すべき方向性?

売上

利益

(日経ヴェリタス誌8月2日号をもとに筆者作成)MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

発想の転換→ 経営戦略

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

企業の成果を左右する要因

○ 企業の成果 = 計画・意思決定(経営戦略)+ 実行(現場オペレーション)

○ 企業の成果が思わしくない場合

経営戦略が稚拙・ 経営戦略が稚拙

経営戦略を改善(戦略コントロール)

・ 経営戦略の実行が不適切

現場マネジメントを改善(マネジメント・コントロール)

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

コントロールとは

○ コントロール

「望む成果」を得るため、 PDCAのサイクルを回してプロセスを改善すること

○ 戦略コントロール

「望む成果」を得るため経営戦略

目標:成果の姿、役割分担、里程標

計画:執るべき措置、収支計算

など

を改善することMCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

MC・MCSとは

○ マネジメント・コントロール(MC)

従業員が組織にとってベストな行動をとるよう促す活動を行うこと、及び その活動を改善すること及び、その活動を改善すること

○ MCS

マネジメント・コントロールを適切、確実、効果的、そして効率的に行うための仕組み

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

MCSに関する教科書(例)

マーチャント教授他による教科書 アンソニー教授他による教科書

(画像引用)http://www.amazon.co.jp

(画像引用)http://www.amazon.co.jp

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3

現場とマネジメントの関係

マネジメントの本質:

・ 従業員の働きを適正化 効率化する

現場の働き:付加価値の源泉

適正化・効率化する・ 同じ働きで得られる成果を増加させる

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

なぜ人々は望ましく振る舞わないか

×権利に固執?

×楽をしたいから?

反抗心があるから?

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知らないことが主因

・ どんな振る舞いが望ましいのか

どんな行動が望ましい・ どんな行動が望ましい結果に繋がるか

を、知らないから。

・ 望ましい振る舞いへの障害があるから。

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

なぜ語られても分からないのか?

経営戦略目標計画予算

○ 経営戦略

・ コンセプト・目標・計画・予算等

→ 抽象的・間接的な言葉

現場マネジメント

○ 現場が必要とするマネジメント

・ 指示、インセンティブ、励まし等

→ 具体的な言葉

直接的な働きかけ

(注)「現場マネジメント」のことをアンソニーは「オペレーション・コントロール」と呼んでいる

「言葉の違い」が原因

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

○ マネジメント ントロ ル

現場オペと経営戦略を結ぶMC

経営戦略目標計画予算

○ 経営戦略

・ コンセプト・目標・計画・予算等

→ 抽象的・間接的な言葉

○ マネジメント・コントロール・ 抽象的・間接的な言葉を、

具体的・直接的に変換マネジメント・コントロール

現場マネジメント

○ 現場が必要とするマネジメント

・ 指示、インセンティブ、励まし等

→ 具体的な言葉

直接的な働きかけ(注)「現場マネジメント」のことをアンソニーは「オペレーション・コントロール」と呼んでいる

? ?※

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

企業内での戦略展開

経営理念経営戦略(コンセプト)

○ マネジメントの各分野に細分化

○ 戦略計画や資本予算、実行予算・実行計画に展開

戦略計画

資本予算

実行予算・

実行計画

マーケティング

研究

・開

購買

管理

生産

管理

資金・資産マネジメント

HR

M

現場で働く人々

実行予算・実行計画に展開

?○ しかし、現場での実践は

困難

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

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4

蝶番機能が必要

経営理念経営戦略(コンセプト)

○ 経営理念・経営戦略を作業手順や優先順位等の具体的指示や働きかけに

戦略計画

資本予算

実行予算・

実行計画

作業手順 指 示優先順位 働きかけ

マーケティング

研究

・開発

購買

管理

生産

管理

HR

M

現場で働く人々蝶番

転換

資金・資産マネジメント

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

具体的指示や働きかけとは

経営理念経営戦略(コンセプト)

○ 具体的指示や働きかけ

・ アクション・コントロール・ リザルト・コントロール

戦略計画

資本予算

実行予算・

実行計画ピープル・コントロール

リザルト・コントロール

アクション・コントロールマーケティング

研究

・開発

購買

管理

生産

管理

HR

M

現場で働く人々蝶番

・ リザルト・コントロール・ ピープル・コントロール

資金・資産マネジメント

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

マネジメント・コントロール具体策

○ アクション・コントロール組織に役立つ活動を規定して強制、若しくは有害な活動を

規定して禁止する

○ ザ○ リザルト・コントロール望ましい成果が得られたときには報酬を与え、望ましくな

い結果が生じたときには罰を与える

○ ピープル・コントロールとは個人若しくはグループとしての性行に働きかけて、組織に

望ましい活動を行い、成果が得られるように働きかける

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

マネジメント・コントロール・システム

① MC実施主体者の設置

② MC実施主体者へ適切に情報

伝達する仕組み

.

③ 実施主体者のパフォーマンスを

フィードバックする仕組み

④ 各部門を連携させる仕組み

⑤ 間接部門からのバックアップを

改善する仕組み

④ ⑤

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

本講義の構成

第1回 イントロと概略説明

第2回 マネジメント・コントロールの具体策

アクション、リザルト、ピープルの各コントロール

第3回 マネジメント・コントロール・システム(その1)

実施主体者を中心としたシステム

第4回 マネジメント・コントロール・システム(その2)

連携やバックアップの改善を目指すシステム

第5回 事例研究(企画中)MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

マネジメント・コントロール・システム概論

企業価値を高めるMCSについて

マーチャント教科書を中心に

(Chap 2)

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本講義の構成

第1回 イントロと概略説明

第2回 マネジメント・コントロールの具体策

アクション、リザルト、ピープルの各コントロール

第3回 マネジメント・コントロール・システム(その1)

どんなシステムを構築するか

第4回 マネジメント・コントロール・システム(その2)

どのようにシステムを運用するか

第5回 (企画中)MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

マネジメント・コントロールとは(復習)

○ 企業の成果 = 計画・意思決定(経営戦略)+ 実行(現場オペレーション)

○ 企業の成果が思わしくない場合

計画 意思決定 イズ・ 計画・意思決定フェイズ

経営戦略を改善(戦略コントロール)

・ 実行フェイズ

現場マネジメントを改善(マネジメント・コントロール)

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○ マネジメント ントロ ル

現場オペと経営戦略を結ぶMC(復習)

経営戦略目標計画予算

○ 経営戦略

・ コンセプト・目標・計画・予算等

→ 抽象的・間接的な言葉

○ マネジメント・コントロール・ 抽象的・間接的な言葉を、

具体的・直接的に変換マネジメント・コントロール

現場マネジメント

○ 現場が必要とするマネジメント

・ 指示、インセンティブ、励まし等

→ 具体的な言葉

直接的な働きかけ(注)「現場マネジメント」のことをアンソニーは「オペレーション・コントロール」と呼んでいる

※ ※

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蝶番機能としてのMC(復習)

経営理念経営戦略(コンセプト)

○ 経営陣の抽象的言葉を現場に活かすべく変換

○ 指示や働きかけアクシ ン ントロ ル

戦略計画

資本予算

実行予算・

実行計画ピープル・コントロール

リザルト・コントロール

アクション・コントロール

マーケティング

研究

・開

購買

管理

生産

管理

HR

M

現場で働く人々蝶番

・ アクション・コントロール・ リザルト・コントロール・ ピープル・コントロール

資金

・資

産マネジメント

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

マネジメント・コントロール具体策

○ アクション・コントロール組織に役立つ活動を規定して強制、若しくは有害な活動を

規定して禁止する

○ ザ○ リザルト・コントロール望ましい成果が得られたときには報酬を与え、望ましくな

い結果が生じたときには罰を与える

○ ピープル・コントロールとは個人若しくはグループとしての性行に働きかけて、組織に

望ましい活動を行い、成果が得られるように働きかける

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

アクション・コントロールとは

○ 行動(アクション)をもとにしたコントロール

「こんな行動を取れば、企業トップの考えを実現できる」と具体的に教え、実行を促す。

○ 実施方法

・ 行動責任(Action accountability・ 行動制限(Behavioral constraints)・ 事前レビュー(Preaction review)

・ 冗長性(Redundancy)MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

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アクション・コントロールの具体策

○ 行動責任(Action accountability)

・ 「やるべきこと」を示し強制、もしくは「やってはならないこと」を示して禁止

・ その実行に責任を負わせる

○ 事前レビュー(Preaction review)

・ レビューとは、妥当性検証

(例:不良品の原因はネジ止め工程が妥当でなかった)

・ それを事前に行うこと

○ 行動制限(Behavioral constraints)

・ 「やるべきことができる」もしくは「やってはならないことはできない」体制を作る

・ それを事前に行うこと

(例:新製品量産時にネジ止め

個所を特定し、徹底を促す)

○ 冗長性(Redundancy)

・ 最低限必要以上を準備(例:検査要員)

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アクション・コントロールの長所・短所

<長所>

○ 最もダイレクトなコントロールで、効果もダイレクトに生まれる

組織智を文書 する ド

<短所>

○ 適用できる業務が限られる・ 望ましいアクションを定義可能・ 行動を組織が認識可能

○ 組織智を文書化するトレンドに合致している

○ 人々が協力して作業する場合、効率性に寄与(例)各作業員の行動が予見しやすくなり、協力するための情報交換が最低限に抑えられる

○ 創造性・イノベーション等を疎外

○ 決められたこと以外に不注意

○ 消極的な態度を喚起(例:自己実現できないから)

○ 時として非常にコストがかかる

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リザルト・コントロールとは

○ 結果(リザルト)をもとにしたコントロール

「こんな成果を生み出せば、企業トップの考えを実現したことになる」と伝え、人々にエンパワーし、成果を基準に賞罰することにより、実現を促す。

○ 実施のステップ

・ 方向性の決定(成果範囲の定義)

・ 測定対象と測定方法の決定

・ 目標値の設定・責任主体の決定

・ 賞罰のルール化MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

リザルト・コントロールの実施ステップ

○ 方向性の決定(成果範囲の定義)

・ 経営戦略等の実現如何を計測

・ 手段や経路等を表現

○ 目標値の設定・責任主体の決定

・ 自主的行動・創意工夫の動機

・ フィードバックの原動力

・ 階層ごとに目標をブレークダウン

○ 測定対象と測定方法の決定

・ 会計指標(例:経常利益、ROI)

・ マーケット指標(例:シェア、株価)

・ その他の指標(例:生産効率、

不良率)

・ 階層ごとに目標をブレークダウン

しながら主体を割り当てる

○ 賞罰のルール化

・ 経済的・非経済的・内的報酬

・ 組織に最も適するルールを模索

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<短所>

○ 適用できる業務が限られる・ 望ましい成果を定義可能・ 従業員が成果実現に影響力・ 成果を組織が測定可能

リザルト・コントロールの長所・短所

<長所>

○ 人々の自律的な働きを促す・ 決められたこと以外にも注意・ 創造性、イノベーションを発揮

成果を組織が測定可能

○ ACより実効性や即効性に劣る

○ 従業員へリスクを押しつける(コントロール不能リスク)

○ コンフリクトが発生する(例)高すぎるターゲットがモチ

ベーションを低下させる。

○ コミットメント・モチベーション・ インセンティブによる・ 内的報酬(達成感)による

○ あまり費用がかからない・ 規定・教育等が必要最低限・ 必要なら従業員自身が実施

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ピープル・コントロールとは

○ 人々の性格や特性に働きかけるコントロール

仕事や職場環境、上司からの働きかけなどを工夫して、戦略目標の実現に資する活動を自然に実行するよう、若しくは障害となる活動を自然に行わなくなるよう促す。

○ 実施方法

・ パーソナル・コントロール

・ カルチャー・コントロール

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パーソナル・コントロール○ 適材適所

適した仕事を与えて、創意工夫や頑張りに期待

○ ジョブデザイン・ 仕事の内容を明確に定めること(例) 「営業 を 販売目的 顧客と接触(例) 「営業」を、 △ 販売目的で顧客と接触

△ 注文品の届け△ メンテナンスや定期的な訪問△ 顧客ニーズのくみ取りと社内提案

○ 教育訓練・ 仕事に必要な知識・技術・技能等の習得・ 潜在能力の顕在化・ プロとしての自覚MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

カルチャー・コントロール○ 行動規範

・ 企業理念、ビジョン、経営哲学、マニュアル、規則など

○ グループ形成・活動に関する措置

・ グループがまとまるオフィス(物理的アレンジメント)

・ 服装の統一(物理的アレンジメント)

・ グループ単位を明示する名称(社会的アレンジメント)

・ グループ内で通用する用語(社会的アレンジメント)

○ グループ単位での評価・報酬とは

・ 連携や矛盾などに配慮を促す

○ トップの言動

・ 率先垂範 MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

PCのメリット・デメリット○ メリット

・ 望ましい行動・成果に関する知識等が不要

・ 高パフォーマンス企業の多くが採用

・ 金銭的負担があまりかからない

・ 弊害があまりない・ 弊害があまりない

○ デメリット

・ 個人やグループ、企業等により有効性が異なる

・ 作用や効果が間接的

・ 専門的知識等が必要な場合は効果が薄い

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マネジメント・コントロールのコスト○ 直接のコスト

(例)ボーナス、検査・監査要員等に係る費用。

○ 間接のコスト(副作用・望まない効果)・ 外れた効果(例 目的の無理解により 望まない結果)(例:目的の無理解により、望まない結果)

・ ゲームズマンシップ(Gamesmanship)(例:無価値な開発で「年間開発品目数」目標を達成)

・ オペレーションの遅れ(例:プリアクション・レビューするために時間がかかる)

・ 消極的な態度(例:熟練工への詳細な指示、合意のない目標等が原因)

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3つのコントロールの選択各コントロールは得意・不得意があるので、最適なものを選択

○ 仕事の性格や期待する成果の方向性

(例)・ 原子力関係作業員には厳格なAC(安全性の高い手順を徹底遵守)(安 性 高 順を徹 )

・ 工程改善を目指すPC組付作業員にはRC(効率的作業手順や製品設計への提案を期待)

○ 組織の性格・目的・Strategy(例)・ ベンチャー企業はRCやPCで個人の活躍を期待

・ 巨大成熟企業はACで組織の統一感を維持

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3つのコントロールの関係

○ 3つのコントロールは併用できる

○ 相互間の整合性を保つのが原則

(例)ACで他部門との連絡を手順化しても、RCで各人単位の評価 報酬とするなら 連携は進まない価・報酬とするなら、連携は進まない。

○ 矛盾する目標等に対応するため組み合わせて使う

(例)高品質、効率性、更なる改善を求める場合

・ 定められた手順の遵守を求めるAC・ 効率化を目指してもらうRC・ 活発な自己研鑽や討論を促すPC

組み合わせ利用により矛盾する目標等を同時達成

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本講義の構成

第1回 イントロと概略説明

第2回 マネジメント・コントロールの具体策

アクション、リザルト、ピープルの各コントロール

第3回 マネジメント・コントロール・システム(その1)

どんなシステムを構築するか

第4回 マネジメント・コントロール・システム(その2)

どのようにシステムを運用するか

第5回 (企画中)MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

マネジメント・コントロール・システム概論

企業価値を高めるMCSについて

マーチャント教科書を中心に

(Chap 3)

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

本講義の構成

第1回 イントロと概略説明

第2回 マネジメント・コントロールの具体策

アクション、リザルト、ピープルの各コントロール

第3回 マネジメント・コントロール・システム(その1)

どんなシステムを構築するか

第4回 マネジメント・コントロール・システム(その2)

どのようにシステムを運用するか

第5回 (企画中)MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

蝶番機能としてのMC(復習)

経営理念経営戦略(コンセプト)

○ 経営陣の抽象的言葉を現場に活かすべく変換

○ 指示や働きかけアクシ ン ントロ ル

戦略計画

資本予算

実行予算・

実行計画ピープル・コントロール

リザルト・コントロール

アクション・コントロール

マーケティング

研究

・開

購買

管理

生産

管理

HR

M

現場で働く人々蝶番

・ アクション・コントロール・ リザルト・コントロール・ ピープル・コントロール

資金

・資

産マネジメント

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

マネジメント・コントロール具体策(復習)

○ アクション・コントロール組織に役立つ活動を規定して強制、若しくは有害な活動を

規定して禁止する

○ ザ○ リザルト・コントロール望ましい成果が得られたときには報酬を与え、望ましくな

い結果が生じたときには罰を与える

○ ピープル・コントロールとは個人若しくはグループとしての性行に働きかけて、組織に

望ましい活動を行い、成果が得られるように働きかける

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

マネジメント・コントロール・システム

① 財務責任センターを設置・ Revenue Center・ Cost center・ Profit center・ Investment center

② 財務責任センターに対するコントロール、働きかけ

③ 財務責任センターが現場をコントロール(説明済)

④ 移転価格の決定(財務責任センター間の調整等)

Action ControlResult ControlPeople Control

(注)教科書でいうFinancial Results Control SystemMCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

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財務責任センターの役割

経営理念経営戦略(コンセプト)

○ MC実施の実施者(抽象的言葉を具体的指示や働きかけに変換)

戦略計画

資本予算

実行予算・

実行計画ピープル・コントロール

リザルト・コントロール

アクション・コントロール

マーケティング

研究

・開発

購買

管理

生産

管理

HR

M

現場で働く人々

財務責任センター

○ AC・RC・PCを、PDCAサイクルを回して改善

資金・資産マネジメント

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財務責任センターのタイプ(責任範囲)

収入センター(Revenue Center)(例)販売部門

費用センター(Cost Center)

RC CC PC IC

損益計算書

売上 ○ ○ ○

売上原価 ○ ○ ○

売上総利益 ○ ○

広告宣伝費 ○ ○ ○

特定の財務指標(財務諸表の特定部分)について責任を負う

・ パフォーマンス測定が容易

(例)製造/卸/人事

・ パフォーマンス測定が困難

(例)R&D/PR

利益センター(Profit Center)・ 売上極大化

・ コスト削減

投資センター(Investment center)・ 資源への投資を決定、回収に責任

広告宣伝費 ○ ○ ○

研究開発費 ○ ○ ○

税引き前利益 ○ ○

支払税金 ○ ○

税引き後利益 ○ ○

貸借対照表

売掛金 ○

在庫 ○

固定資産 ○

買掛金 ○

負債 ○MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

財務責任センターへのコントロール

① 計画・予算コントロール

・ 経営陣と財務責任センターが

計画を共有し予算を合意する

ことによる意思疎通① ②

疎通

② 財務的成果コントロール

(Financial Result Control)・ ミッション・経営戦略に基づく

成果をベースに評価

・ モチベーションを高め、弊害を

防止する報酬システムMCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

計画・予算コントロール

計画・予算のサイクル

① 戦略計画

・ ミッションやゴール・戦略等

・ 経営陣からのメッセージ

② 資本予算(Capital Budgeting)・ 数年タームで特定プロジェクトの収支を確認

・ 具体的アクション・資源等を特定

フィ ジビリティ スタディ(1)ビジョン・ミッション・目的

(2)現在のポジション

(3)全体戦略

(4)ビジネスユニットの戦略

(5)戦略計画

(6)モニターと更新

計画・予算をブレークダウン・フィードバックするプロセスで経営陣と現場が意思疎通・合意(資本予算が融合の場)

・ フィージビリティ・スタディ

③ 実行計画・予算

・ 単年度の計画・予算

・ これをもとに現場が実行

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財務的成果コントロール

財務(非財務)指標で表現される成果をもとに評価・報酬

① 目標(指標で表現される成果)<インフォメーション>・ 組織が追求する成果・ 優先順位

② 評価・ 何を評価するか・ どのような基準で評価するか・ どんな重み付けで評価するか優先順位

<モチベーション>・ 報酬される仕事を熱心に

<その他の目的>・ 税務対策など

どんな重み付けで評価するか

③ 報酬(インセンティブ)・ 何に対して報酬するか・ 何を与えるか・ どれだけ与えるか

・ 目標の明確化、評価・報酬のルール化によりメッセージ性が高まる・ いずれのフェイズも弊害を回避する措置が必要→次回で説明

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目標③ 効果的な設定方法= 経営陣と現場が合意(Top-down / bottom-upが融合)・ 優先順位及び制約・ 企業の収益・リスク→ 両者の意見が反映

① 目標のタイプ

・ モデルベース、歴史的、交渉による

・ 固定、変動

・ 内部基準、外部基準 などについて

→ 両者が納得しコミットメント→ 効果的な情報共有

<問題点>・ 弛み(slack)・ 偏向(bias)・ 保守主義(conservatism)・ 無経験(lack of budgeting

experience)

② 適切な目標

= 挑戦的だが達成し得る

・ マネジメント機能を最大限引出す

(近視眼的対応を駆逐)

・ マネジャーのコミットメント

・ 組織の干渉によるコストを減じる

・ 不当な楽観を抑える

・ 積極的雰囲気を惹起MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

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評価① 何を評価するか

・ 会計側面

→ 最終利益(税引き後利益)

→ プロセス(粗利益)

→ パフォーマンス(ROI)

② 何を基準に評価するか

・ 社内測定値

→ 前年度実績

→ WACC

社外測定値

・ 市場側面

→ シェア、順位

・ オペレーション

→ 生産個数

→ 不良率

・ 社外測定値

→ 同業他社

→ ベストパフォーマンス

(ベンチマーキング)

・ 戦略的目標値

→ 損益分岐点

→ 開始3年以内の単年度黒字

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報酬

① 報酬(インセンティブ)

・ 昇給

・ ボーナス

・ 手当

、・ ストック・オプション

③ 報酬をルールとして示す

・ モチベーション向上策として機能

・ 評価と報酬の関係を示す

④ 逆効果にならな 配慮、 ストック オプション

・ 休暇

② 報酬の決定基準・ 従業員が認める価値

・ インパクトを与えられる大きさ

・ タイムリーであること

・ 記憶に残りモチベーションが持続

・ 業績が悪化時には元に戻せる

・ コストに見合う以上の効果

④ 逆効果にならない配慮

・ 目標達成後に力を抜くのを防ぐ

Mostly, the link between rewards and results is linear, but over a restricted performance range only.

Re

wa

rds

($)

Results (profit)

MAX

ZERO80%ofbudgettarget

150%ofbudgettarget

LOW HIGH100%ofbudgettarget

MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

移転価格(Transfer Pricing)

① 市場価格(Market-based prices)・ 市場(企業外)で課される価格・ 他企業製品も選択肢とする価格

② 限界価格(Marginal cost prices)・ 再生産に最低限必要なコスト再生産に最低限必要なコスト(固定費・利益を除外)

・ 買い手側に有利な価格

③ フルコスト価格(Full-cost prices)・ コストを全て積み上げた価格

④ フルコスト+利益価格(Full-cost + Mark Up prices)・ 市場に同種製品がない場合

・ 売り手側に有利な価格

プロフィット・センター間の原材料・製品等の取引価格

各PCのコスト・利益の測定等企業全体の方向性決定等

に重要MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

MCSの特徴・優位点(優位点)

・ 継続的利用に耐えうるPDCAサイクルを回すなど、継続

運用が可能で、メリットが得られる

(特徴)

○ 包括的システムである単一システムで企業全体を取扱う

○ システム的整合性を備える・ 汎用性がある

大企業も中小企業も利用可

・ 実効性がある部分同士が矛盾する場合も使え、

解決に導くツールとなる

・ 実用性がある比較的正確で客観的、かかる

コストも少ない

・ MCを行う財務責任センター・ 財務責任センターへの働きかけと役割分離して整合的なシステム(経営陣は間接的作用に徹する)

○ 基準とプロセスを標準化する→ 期待値、実現のための具体策、予算等の規定と、差異分析による調整を行う公式プロセス

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次回の内容

第1回 イントロと概略説明

第2回 マネジメント・コントロールの具体策

アクション、リザルト、ピープルの各コントロール

第3回 マネジメント・コントロール・システム(その1)

どんなシステムを構築するか

第4回 マネジメント・コントロール・システム(その2)

どのようにシステムを運用するか

第5回 (企画中)MCS勉強会資料 Copyright Nobuo Ochifuji

マネジメント・コントロール・システム概論

企業価値を高めるMCSについて

マーチャント教科書を中心に

(Chap 4)

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2009/12/21

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本講義の構成

第1回 イントロと概略説明

第2回 マネジメント・コントロールの具体策

アクション、リザルト、ピープルの各コントロール

第3回 マネジメント・コントロール・システム(その1)

どんなシステムを構築するか

第4回 マネジメント・コントロール・システム(その2)

どのようにシステムを運用するか

第5回 ケース

蝶番機能としてのMC(復習)

経営理念経営戦略(コンセプト)

○ 経営陣の抽象的言葉を現場に活かすべく変換

○ 指示や働きかけアクシ ン ントロ ル

戦略計画

資本予算

実行予算・

実行計画ピープル・コントロール

リザルト・コントロール

アクション・コントロールマーケティング

研究

・開発

購買

管理

生産

管理

HR

M

現場で働く人々蝶番

・ アクション・コントロール・ リザルト・コントロール・ ピープル・コントロール

資金・資産マネジメント

マネジメント・コントロール・システム(復習)

① 財務責任センターを設置・ Revenue Center・ Cost center・ Profit center・ Investment center

② 財務責任センターに対するコントロール、働きかけ

③ 財務責任センターが現場をコントロール(説明済)

④ 移転価格の決定(財務責任センター間の調整等)

Action ControlResult ControlPeople Control

(注)教科書でいうFinancial Results Control System

財務責任Cへのコントロール(復習)

① 計画・予算コントロール

・ 経営陣と財務責任センターが

計画を共有し予算を合意する

ことによる意思疎通① ②

疎通

② 財務的成果コントロール

(Financial Result Control)・ ミッション・経営戦略に基づく

成果をベースに評価

・ モチベーションを高め、弊害を

防止する報酬システム

財務的成果コントロール(復習)

財務(非財務)指標で表現される成果をもとに評価・報酬

① 目標(指標で表現される成果)<インフォメーション>・ 組織が追求する成果・ 優先順位

② 評価・ 何を評価するか・ どのような基準で評価するか・ どんな重み付けで評価するか優先順位

<モチベーション>・ 報酬される仕事を熱心に

<その他の目的>・ 税務対策など

どんな重み付けで評価するか

③ 報酬(インセンティブ)・ 何に対して報酬するか・ 何を与えるか・ どれだけ与えるか

・ 目標の明確化、評価・報酬のルール化によりメッセージ性が高まる・ いずれのフェイズも弊害を回避する措置が必要→今回説明

マネジメント・コントロールのコスト(復習)

○ 直接のコスト(例)ボーナス、検査・監査要員等に係る費用。

○ 間接のコスト(副作用・望まない効果)

・ 外れた効果(例:目的の無理解等により望まない結果が現れる可能性)

・ ゲームズマンシップ(Gamesmanship)(例:年間開発目標を達成するため無価値な開発を頻発)

・ オペレーションの遅れ(例:プリアクション・レビューするために時間がかかる)

・ 消極的な態度(例:合意なく実現性の乏しい目標が提示された場合)

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外れた効果(Behavioral Displacement)

MCが組織の目的・戦略に反する行動をもたらすこと

(例)

○ リザルト・コントロールによるもの

・ 売上目標達成のため、値が張り利幅の小さい商品に注力

○ アクション・コントロールによるもの

・ コールセンターが応対時間短縮目標達成のため、わざと電話を切る

○ ピープル・コントロールによるもの

・ 技能労働の職場をグループ化して相互の高め合いを期待したら、非熟練者に合わせて全体の技能水準が低下した

ゲームズマンシップ(Gamesmanship)

ゲームに勝つためには何をしても良いとの態度のもと、

経済効果がないのに指標だけを改善しようとする行為

例(例)

○ 必要資源の過剰見積り(Slack)・ 担当者能力を低く見積り必要以上の人員を確保

○ データ操作

・ 架空売上、押込み販売など(粉飾決算)

外れた効果の原因・対策 コントロールの目的・望ましい成果への理解不足

例:売上目標は利益増大が目的対応時間短縮は簡潔な説明が目的

数量的成果のこだわり(非数量的成果の無視)(例:会計数字が出るまで、現場の「やる気」のなさに無頓着)

を無視

(例:会計数字が出るまで、現場の やる気」のなさに無頓着)

過剰なコントロール(例:厚いマニュアルは無視され、無難な行動に終始しがち)

仕事・環境に適さないコントロール(例:専門知識や技能を要する仕事の改善は、PCだけでは困難な場合がある)

原因を知り、現場マネジメンの強化、コントロールの改善等を実施

問題への対応方針

(対応方針)

コントロールが、向かせたい方向性に人々を動機付けるように工夫

(根本原因)

人々に向かせたい方向性と、コントロールが人々に動機付ける方向性に乖離がある

人々は計測・評価されるものに向く

注意を向けてデータをとるという行為そのものが、価値を加える。データをとられることは 重視されたことを示すは、重視されたことを示す。

・・・データをとることは、価値を定め、目標を定めることに等しい。・・・データをとることが、ビジョンを生み出す。

(画像引用)http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/contribute/e/01/ (文章引用)

PFドラッカー「マネジメント-課題、責任、実践」

FRCにおける測定

○ 何を測定するか

→ パフォーマンスを多面的に捉る必要性

・ 財務的指標:パフォーマンスは最終的に財務に帰結

・ 市場的指標:企業は市場で競争しながら活動

・ オペレーション指標:企業は、インプットをもとにアウトプッオ レ ション指標:企業は、インプットをもとにアウトプットを生産する有機体

○ どうやって測定するか

→ パフォーマンスの側面にマッチした測定方法

・ 財務分析手法:税引き後利益、粗利益、ROIなど

・ 市場分析手法:マーケットシェア、市場内順位など

・ 現場分析手法:単位時間当り生産個数、不良率など

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測定で生じがちな問題点(近視眼問題)

短期的成果に集中して将来をないがしろにする

→ 企業価値は下がるが、指標は向上し報酬される

○ 投資面での近視眼(Investment Myopia)ROIを改善するためには 投資を抑えればよい・ ROIを改善するためには、投資を抑えればよい。

→ R&Dや設備更新を怠り、将来の可能性をつぶす

○ オペレーションでの近視眼(Operating Myopia)・ ROIを改善するためには、売上実績をあげればよい。

→ 希望に合わない商品を売りつけ、顧客を逃がす

→ 架空売上、押込み販売等、不正な(ぎりぎりの)数字

操作を行う場合も

近視眼問題への対応方針

① 適切な指標を選択する

② 指標をミックスして用いる

・ 現象を知る・本質を知る指標の併用(例:欠勤率、意識アンケート)

・ 短期的観点・長期的観点の指標の併用(例:当期利益、設備経過年数)

・ 株価の利用(我が社の将来性を外部が予測して指標化したもの)

③ 展望を持って測定する(仮説思考)

→ 潜在的可能性や隠れて起きている事象に関する仮説を持ち、それが事実ならば現れるはずの現象を測定する(例:「ハット」ミスの測定)

→ 将来に何が起きるかについての仮説を持ち、それが起きるとすれば今あるはずの萌芽を測定する(例:異業種他社のベンチマーク値)

④ 「指標→成果システム」のブラッシュアップ(差異分析)

・ 「指標測定と、それをもとにしたコントロールが成果につながらないのは、測定した対象がコントロールできない要素だったから」との考え方

・ 予定と結果の差異を測定・分析してシステムをブラッシュアップする

適切な指標の選択○ 目的に即した指標

(例)市場からの退出を避けるため採算を度外視したキャンペーン

× 売上高(額、対前年増加率)

○ シェア、市場内順位

○ ROI(Return on Investment)○ ROI(Return on Investment)(なぜ最右翼なのか)

・ 収益と投資という基本パフォーマンスを同時に考慮

・ 分解すると企業経営の枢要な指標を網羅(DuPontモデル)

(どのように用いるか)

・ 企業全体・投資センターの数値目標に掲げる

・ DuPontモデルによる分解で、各分野(部門)別に、取組むべき措置の方向性が得られる

DuPontモデル

(図引用)http://www.amazon.co.jp/Management-Control-Systems

-Performance-Measurement/dp/0273708015/

指標のミックス○ 多面的なパフォーマンス指標を測定

・ 財務的指標:パフォーマンスは最終的に財務に帰結

・ 市場的指標:企業は市場で競争しながら活動

・ オペレーション指標:企業は、インプット→アウトプットする有機体

○ 企業の活動・構成要素・関係者等に対応した指標を測定○ 企業の活動・構成要素・関係者等に対応した指標を測定

・ ヒト(従業員、顧客、株主、取引先など)

・ モノ(製造設備、商品、社屋など)

・ カネ(運転資金、設備資金、運用資金など)

・ 情報(社内データ、社外・市場データなど)

・ ノウハウ(製造・販売・取引先関係維持・データ処理・意思決定方法等)

○ バランス・スコア・カード

どの分野に係る指標を導入すべきかのフレーム(個別指標は企業判断)

バランス・スコア・カード<ステップ>

4つの分野毎に、戦略等に基づいて、企業全体の測定指標を決定

全体指標の改善に資する要素を各部門で選定、その実現を確認できる指標と目標値を設定

<方法論>

4つの分野で企業(現場)を分析

財務

顧客

ビジネス・プロセス

学習と成長<マネジメント・コントロール上の効果>

4つの分野で目標(指標値)を設定して、特定パフォーマンスへの偏りや、短期的成果の追求などの近視眼問題を防止

全体戦略が現場の言葉に置き換えられ、日々の仕事に落とし込まれる

同じ目標を元にすることで、複数の財務責任センター間の方向性に統一がとれ、シナジー創造につながる

学習と成長

→ 財務だけでなく顧客、内部プロセス、イノベーション、改善活動も測定対象にするよう促す

各分野について、企業(現場)を

分析する最適な指標を選択する

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BSC(戦略マップ)

(図引用)「キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード」

「指標→成果システム」のブラッシュアップ

○ 近視眼問題へのアプローチ(指標→成果システム)

・ 近視眼問題とは、「指標測定をもとにコントロールし、成果に繋げるシステム(指標→成果システム)」の機能不全

・ 予定と結果の差異を分析して、指標→成果につながらない原因を探る。

○ 差異分析のステップ

・ ある指標をもとにしたコントロールによる期待値(生産個数、品質基準、予算)等を想定

・ コントロールを実施して得た現実の結果と、期待値との乖離を明確化

・ どのようなメカニズムで、なぜ乖離したかを追究。

差異分析による「指標→成果システム」改善

○ 差異分析の着眼点・ 指標の計測と、それにもとづくコントロールが成果につながらないのは、指標が示すファクターがコントロール不可能だから

○ コントロール不能なファクターとは・ 経済や競合他社による要因・ 自然現象・ 相互依存関係(誤解等。例:同一用語で法律的・会計的意味が異なる)

○ コントローラビリティの原則(Controllability Principle)・ 従業員は概ね、リスク回避型(Risk Averse)・ 従業員にリスクに係る責任を負わせるにはコストがかかる。→ 明示的に責任を負わせるにはリスクプレミアムが必要→ 経験のない従業員が議論に時間を浪費するなどの対処コスト→ 多くの従業員は対応能力がなく、失敗するコストの可能性

コントロール不能への対策

○ コントロール不能なファクターの細分化・ コントロール可能なものと、コントロール不可能ものとに分けて識別

○ コントロール可能なファクターへの対処・ コントロールの度合いを強化(例:誰が責任を負うべきかを明確化)

○ コントロール不可能なファクターへの対処○ コントロ ル不可能なファクタ への対処・ 原則、マネジメントサイドがリスク負担例:コントロール不能なファクターによる目標未達成は不問

・ マネジメントサイドに立つ人へのリザルト・コントロール製造部長などの上級マネジャーに、相応の責任・権限・報酬を与えてコントロール不可能なファクターにも対処させる

・ その他の手立ての利用(例:保険によるリスク分散)

近視眼問題以外のコントロール不可能なファクターにも応用できる

コントロール不能な問題への対処

コントロール不能な問題

(経営サイドの関与)

・ 直接指揮して責任をとる

・ 保険等のリスク分散

など

コントロールできない問題は、コントロール可能な部分と、どうしても

コントロールできない部分に細分化。それぞれに最適な措置を実施。

コントロール不能な問題

コントロール可能な問題

(MCの強化)

・ 目標の細分化(部門毎、短い期間)

・ 責任者の明確化

など

差異分析による継続的改善

フィードバック

実施

目標と実績が乖離

→ コントロール不能問題と考え

→ 対処法を検討

・ 現場と経営サイドの責任の割り振り

・ 目標設定方法の変更(細分化)

・ 責任者の明確化など管理方法の改善

・ リスク分散方法(保険)等の見直し

→ 目標も再設定

目標と実績の乖離

対処法と目標の再設定

目標と実績の乖離

対処法と目標の再設定

目標と実績の乖離

対処法と目標の再設定

1回目 2回目 3回目 ・ ・ ・目標と実績が乖離

→ コントロール不能問題と考え

→ 対処法を再度、検討

→ 目標も再設定

このプロセスを何度も繰り返し

実績を目標に近づけてゆく

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本講義の構成

第1回 イントロと概略説明

第2回 マネジメント・コントロールの具体策

アクション、リザルト、ピープルの各コントロール

第3回 マネジメント・コントロール・システム(その1)

どんなシステムを構築するか

第4回 マネジメント・コントロール・システム(その2)

どのようにシステムを運用するか

第5回 ケース