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アドホックネットワークにおけるストロングビジートーンの
導入とバックオフアルゴリズムの修正の効果についての検討
080425105 鬼頭 充渡邊研究室
1. はじめにアドホックネットワークの課題として、隠れ端末問題に
よるパケット衝突がある。IEEE802.11では、この課題を解決するためにRTS(Request to send)/CTS(Clear to send)方式が採用されているが、パケットの衝突を完全に防ぐことができない。そこで、我々はストロングビジートーン (SBT:Strong
Busy Tone)[1]と呼ぶ特殊な制御信号を使用する解決方法と、CSMA/CAのバックオフアルゴリズムの修正により送信待ち時間を減少する方法を提案している。本稿では、シミュレーションによりこれらの解決方法の
効果を確認したので結果を示す。
2. 既存技術の課題RTS/CTS は、CSMA/CA によりデータ送信を行う前
に送信予約を行うためのシーケンスである。全てのノードがこのシーケンスを監視することにより、隠れ端末に対しても通信ノードの状態を知らせることができる。しかし、RTS/CTSが一種のパケットであることから、シーケンス自体が衝突する可能性がある。また、再送時のバックオフ時間は、スロットタイム (以
下:Δ t)と、CW(Contention Window)の範囲内で発生した乱数の値を掛け合わせたものである。CWの範囲は再送回数が増えると指数関数的に増加し、トラフィックが増加した時は送信を控え、さらにトラフィックが増加することを防ぐことができる。しかし、バックオフによる待ち時間が大きいとスループット低下の要因になる。
3. 提案方式提案方式では、RTS/CTSの送信と同時にストロングビ
ジートーン (以下:SBT)[1]と呼ぶ単一周波数の信号を広範囲に送信する。SBTは送信状況を瞬時に周辺端末に伝えることができる。周辺端末は SBT の受信を感知している間送信ができない。また、SBTは単一の周波数であることから、SBTどうしの衝突を考慮する必要がない。そのため、スループットを改善することができる。また、バックオフアルゴリズムの修正としてΔ tの値を
小さく変更することにより、スループットを改善することができる。IEEE802.11gでは、Δ tが 9.0µsと定義されているが、これには、無駄な時間が含まれている。SBTを適用した場合Δ tの値は伝搬時間とハードウェアの送受信切り替え時間のみを考慮すればよいため、3.0µs まで短縮することができる。
4. シミュレーションの結果と評価シミュレーションでは、提案方式で述べた SBTの効果
とバックオフアルゴリズム修正の効果を規則的に並べた端末で確かめた。シミュレーションの条件を表 1に示し、結果を図 1に示
す。表 2は衝突回数を示している。ここで、条件 1は RTS/CTSによる既存技術である。条
件 2は、条件 1に SBTを使用している。条件 3は、条件2に加えてΔ tの値を小さくしている。条件 4は衝突回数を減らすため条件 3の CWの値を大きくしたものである。また、このシミュレーションはアドホックネットワークを
使用し、ノード数を 37台、電波到達範囲を 100m、端末間距離を 90m、測定時間を 330秒、アクセス方式を IEEE802.11g、シミュレーション回数を 50回としている。
図 1 より、スループットは条件 1、条件 2、条件 4、条件 3の順によくなっていることがわかる。各条件について見ていくと、条件 2は条件 1よりもよくなっているがこれは、SBTを使用したことによってデータの衝突回数が減少したためである。条件 3は SBTを使用し更に、Δ tを小さくしたことによって待ち時間が減ったため条件 2よりもスループットが良くなっている。条件 4では、SBTを使用し、Δ tを小さくしさらに CWの値を小さくしたため衝突回数が大幅に減少している。しかし、CWを大きくしたため結果的に無駄な待ち時間が生じてしまい最終的には条件2と同じくらいになってしまっている。
表 1: シミュレーションの条件の値
Δ tの値 CWの値 SBT条件 1 9.0µs 15-1023 無条件 2 9.0µs 15-1023 有条件 3 3.0µs 15-1023 有条件 4 3.0µs 45-3069 有
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
5.5
6
0
1
0
2
0
3
0
4
0
5
0
6
0
7
0
8
0
9
0
1
0
0
1
1
0
1
2
0
1
3
0
1
4
0
1
5
0
1
6
0
1
7
0
1
8
0
1
9
0
2
0
0
2
1
0
2
2
0
2
3
0
2
4
0
2
5
0
2
6
0
2
7
0
2
8
0
2
9
0
3
0
0
3
1
0
3
2
0
ス
ル
ー
プ
ッ
ト
(
ス
ル
ー
プ
ッ
ト
(
ス
ル
ー
プ
ッ
ト
(
ス
ル
ー
プ
ッ
ト
(
M
b
p
s
))))
時間(秒)時間(秒)時間(秒)時間(秒)
条件4
条件3
条件2
条件1
図 1: シミュレーション結果
表 2: 衝突回数
条件 1 135462条件 2 13289条件 3 15268条件 4 5093
このことより、結論として SBTを使用し、CSAM/CAのバックオフアルゴリズムの修正を行った場合が一番スループットが良くなる。また、衝突回数を減少させるスループットを良くすることにつながるわけではない。
5. まとめアドホックネットワークの課題である隠れ端末問題を解
決するために、SBTを使用し、バックオフアルゴリズム修正を行いその効果についてシミュレーションを行った。今後の課題として、多数の条件に対してシミュレーショ
ンを行っていくことによってさまざまな状況でも対応できることについて確認しなくてはならない。
参考文献[1] アドホックネットワークにおけるストロングビジ-トーンの導入とその拡張方式の検討と評価マルチメディア、分散、協調とモバイル(DICOMO2012)シンポジウム論文集,Vol.2012,No.1,pp.1973-1980,Jul.2012.
渡邊研究室 B4
鬼頭充
1
無線LAN技術の普及が急速に進んでいる
無線端末間で通信を行うアドホックネットワークが注目されている
端末の増加に伴いパケット衝突によるスループットの低下が問題となっている
2
アドホックネットワーク ◦ アクセスポイントを必要としない無線で接続できる端末のみで構成されたネットワーク 電波が届かない端末はマルチホップ
◦ 問題点 : 隠れ端末問題が大きい
3
A
DATA
DATA
B
C
衝突
アドホックネットワーク 隠れ端末問題
RTS(Request to Send)/CTS(Clear to Send)方式 ◦ RTS/CTSによる送信予約によって隠れ端末問題を解決している
◦ 課題 : RTS/CTSもパケットなので衝突してしまう可能性がある
4
A
RTS
CTS
待機状態
C
B
A
RTS
RTS
衝突 C
B
RTS/CTS方式 RTS/CTS方式の課題
RTS/CTS方式の課題を解決するためにビジートーンを用いる技術がある
ビジートーンとは ◦ 単一周波数の制御信号 ◦ パケットではないので素早く伝わる ◦ 周波数帯域が狭いため電力消費が少ない ◦ ビジートーンを受信した端末は送信をできなくする
課題点 ◦ 隣接端末しか制御できないため隠れ端末問題を完全には解決できない
5
SBT (Strong Busy Tone)とは ◦ ビジートーンの電波到達範囲を拡大させた制御信号
SBTの適用 ◦ 各端末がRTSおよびCTSを送信するときに、電波強度を拡大したSBTを同時に送信することにより遠隔端末を制御する
6
RTS
CTS
DATA
A
B
C
D
待機状態
CSMA/CAのバックオフアルゴリズム ◦ バックオフ時間
衝突が発生し再送を行う際に発生
再送のタイミングをずらすための待機時間
バックオフ時間は以下のように計算できる ◦ Δt × randam(0,CW)
CW(Contention Window)
CWはデータが衝突し再送すると2倍づつ増加していく
7
Δt(スロットタイム) ◦ 発生した乱数が衝突しない値
現在は9.0μs
バックオフアルゴリズムの修正 ◦ Δtの値はSBTを使用することにより小さくすることができる
SBTはパケットではないため
◦ Δtの値は3.0μsとすることができる
8
SBTの適用とバックオフアルゴリズムの修正の効果を調べるためにシミュレーションを行った ◦ スループットの計測
◦ 衝突回数の計測
9
ネットワーク構成
試行回数 50回
アドホックネットワーク
台数 37台
電波到達範囲 100m
端末間距離 90m
測定端末
台数 2台
トランスポートプロトコル TCP
背景負荷端末
トランスポートプロトコル UDP
シミュレーション環境
10
2 3 4 1
8 7 9
11
5 6
12 13 14 15 10
16 17 18 19 20 21 22
28 27 26 25 24 23
29 33 32 31 30
34 35 36 37
90m
全てのシミュレーションの条件は以下のものになっている
測定条件 ◦ 条件1:既存のRTS/CTS方式
◦ 条件2:SBTの適用
◦ 条件3:SBTとΔtの最適化
◦ 条件4:SBTとΔtの最適化とCWの値の変更
SBT Δt(μs) CWmin/CWmax
条件1 無 9.0 15/1023
条件2 有 9.0 15/1023
条件3 有 3.0 15/1023
条件4 有 3.0 45/3069
11
SBT Δt(μs) CWmin/CWmax
条件1 無 9.0 15/1023
条件2 有 9.0 15/1023
条件3 有 3.0 15/1023
条件4 有 3.0 45/3069
条件 12
00.5
11.5
22.5
33.5
44.5
55.5
60
10
20
30
40
50
60
70
80
90
10
0
11
0
12
0
13
0
14
0
15
0
16
0
17
0
18
0
19
0
20
0
21
0
22
0
23
0
24
0
25
0
26
0
27
0
28
0
29
0
30
0
31
0
32
0
スループット(M
bps)
時間(秒)
衝突回数
条件1 135462
条件2 13289
条件3 15268
条件4 5093
条件3 条件2
条件1
条件4
13
2 3 4 1
8 7 9
11
5 6
12 13 14 15 10
16 17 18 19 20 21 22
28 27 26 25 24 23
29 33 32 31 30
34 35 36 37
50m 試行回数 50回
アドホックネットワーク
台数 37台
電波到達範囲 100m
端末間距離 50m
測定端末
台数 2台
トランスポートプロトコル TCP
背景負荷端末
トランスポートプロトコル UDP
ネットワーク構成 シミュレーション環境
14
SBT Δt(μs) CWmin/CWmax
条件1 無 9.0 15/1023
条件2 有 9.0 15/1023
条件3 有 3.0 15/1023
条件4 有 3.0 45/3069
衝突回数
条件1 128390
条件2 9289
条件3 10839
条件4 3216
条件
00.5
11.5
22.5
33.5
44.5
55.5
66.5
77.5
88.5
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
180
190
200
210
220
230
240
250
260
270
280
290
300
310
320
スループット(M
bps)
時間(秒)
条件1 条件2
条件4 条件3
15
90m
2 3 4 1
11
10
12
17
8 9
18
19
20
21
16
25
26
27
28
29
30
31
41
40
39
38
37
36
47
51
50
49
48
57
59
58
60
5 6 7
13
14
15
22
23
24
32
33
34
42
43
44
45
35
46
52
53
54
55
56
61
62
63
64
72
71
70
69
68
67
66
65
73
74
75
76
77
78
79
試行回数 10回
アドホックネットワーク
台数 79台
電波到達範囲 100m
端末間距離 90m
測定端末
台数 2台
トランスポートプロトコル TCP
背景負荷端末
トランスポートプロトコル UDP
ネットワーク構成 シミュレーション環境
16
SBT Δt(μs) CWmin/CWmax
条件1 無 9.0 15/1023
条件2 有 9.0 15/1023
条件3 有 3.0 15/1023
条件4 有 3.0 45/3069
条件
衝突回数
条件1 238081
条件2 113282
条件3 136872
条件4 73622
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
5.5
6
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
150
160
170
180
190
200
210
220
230
240
250
260
270
280
290
300
310
320
スループット
(Mbp
s)
時間(秒)
条件3 条件4
条件2
条件1
どの場合においてもSBTを適用しΔtを最適化した時が一番スループットに対して効果がある
CWの増加は衝突回数の減少につながるが、スループットはSBTを適用しΔtの値を最適化したほうが良い
17
SBTの適用とバックオフアルゴリズムの修正の効果を確かめるためにシミュレーションを行った ◦ Δtの値の最適化によるスループットの向上
◦ 衝突回数の減少よりも待ち時間の減少
SBTの適用とΔtの値の最適化がスループットの向上に対してどのような場合でも効果的
18
19
20
B
C
D
A
RTS
CTS
DATA
待機状態
最適化する前のΔtの値 ◦ 端末の状態判定時間:4.0μs
◦ 伝搬時間:1.0μs
◦ 送受信間往復時間:2.0μs
◦ MACの処理時間:2.0μs
合計の9.0μs
最適化した後のΔtの値 ◦ 伝搬時間:1.0μs
◦ 送受信間往復時間:2.0μs
合計の3.0μs
21
伝搬時間 ◦ SBTは100m先に対して0.3μs
3ホップ先に対して届かせるため1.0μs
送受信間往復時間 ◦ 端末の送信及び受信状態のスイッチに用いる時間
◦ 実装側に依存した値
22