22
1 プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF モデルによる予測結果と の比較 東北大学 環境科学研究科 教授 明日香 壽川研究室 からの研究受託報告書 2019 11 1 河 野 (兵庫県立大学名誉教授・工学博士)

プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

1

プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション

からの排ガス拡散予測と CALPUFF モデルによる予測結果と

の比較

東北大学 環境科学研究科 教授 明日香 壽川研究室

からの研究受託報告書

2019 年 11 月 1 日

河 野 仁

(兵庫県立大学名誉教授・工学博士)

Page 2: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

2

要旨

Myllyvirta と Cuwah(2018)が CALPUFF モデルを使って、仙台パワーステーションからの排

ガス拡散予測を行っている。CALPUFF モデルは、アメリカの California Air Resources Board

がスポンサーになり、Sigma Research Corporation が開発したモデルであり、化学反応性物質

を含むガスや微粒子 PM2.5 の大気拡散を予測できる。「CALPUFF ユーザーガイド」(Scire et

al., 2000)によると、このモデルによる濃度予測範囲は発生源から数十メートルから数百キロ

メートルの範囲である。CALPUFF モデルは、南イタリアの都市ブリンディジにある石炭火

力発電所の排ガスによる市内(1~50km の近距離)の PM2.5 濃度予測と大気汚染による住

民の死亡率計算に使われている(Mangia et al., 2015)。また、アメリカのイリノイ州の 9 個の

火力発電所の排ガスの環境影響評価(法規制)を目的として、シカゴを含む領域1辺 750km

四方範囲の PM2.5 濃度予測にも使われている(Levy et al., 2002)。

本研究は、日本で環境影響評価に一般的に使われているプリューム・パフモデルを使っ

て、同一の発生源に対して排ガス拡散予測を行い、Myllyvirta と Cuwah(2018)による

CALPUFF モデルを使った予測結果との比較を行うことにより、CALPUFF モデルの計算値

の特徴やモデルによる予測値の差を調べることを目的とする。ここで使用したガウス型プ

リュームモデルは、経済産業省の低煙源工場拡散モデル METI-LIS ver. 3.3.1 という一般

に公開されているプログラムを使って計算している。それ故、入力データ、使用パラメー

タにこのモデル固有の制約があるために、CALPUFF との計算条件に 100%合わせる事はで

きていないが、今回の目的 CALPUFF モデルと一般的なガウス型プリューム・パフモデル

の比較という条件はおおよそ満たしていると考えている。比較は PM2.5 の 1 次粒子年平

均濃度と SO2 年平均濃度について行った。二つモデルの濃度分布パターンはよく似て

いる。年平均 SO2と PM2.5(1次粒子)最大着地濃度は CALPUFF が METI-LIS 予測

値の 1.7 倍となった。その理由は、CALPUFF の計算では、市街地において都市域用の

拡散幅を使っている。これに対して、METI-LIS は郊外の平坦地の地上源からの拡散幅

を使って計算するモデルであり、都市の拡散条件を与える事が出来ない。その為に生じ

る濃度差であり、CALPUFF モデルによる大気拡散予測結果は日本で使われているガウス

型プリューム・パフモデルによる予測結果と比べて、ほぼ同レベルの予測精度であると考

える。

また、CALPUFF モデルは、化学反応によって二酸化硫黄と窒素酸化物のガス状物質が

大気中で粒子状物質に変わることもモデルに組み込んでおり、その結果、最大着地濃度地

点における PM2.5 予測濃度は化学反応を入れない 1 次粒子の濃度の 1.9 倍となっている。

METI-LIS は化学反応モデルを含んでいないので、CALPUFF モデルの化学反応モデルの予

測精度評価はここでは行っていない。

また、METI-LIS を使って大気安定度による最大着地濃度の変化を検討し、その結果、

大気が不安定な場合に、着地濃度が最大となることを得た。

Page 3: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

3

1.はじめに

Myllyvirta と Cuwah(2018)が CALPUFF モデルを使って、仙台パワーステーションから

の排ガス拡散予測を行っている。CALPUFF モデルは、アメリカの California Air Resources

Board がスポンサーになり、Sigma Research Corporation が開発したモデルであり、化学反応

性物質を含むガスや微粒子 PM2.5 の大気拡散を予測できる。このモデルによる濃度予測範

囲は「CALPUFF ユーザーガイド」(Scire et al., 2000)によると発生源から数十メートルから

数百キロメートルの範囲である。CALPUFF モデルは、南イタリアの都市ブリンディジにあ

る石炭火力発電所の排ガスによる市内(1~50km の近距離)の PM2.5 濃度予測と大気汚染

による死亡率計算に使われている(Mangia et al., 2015)。また、アメリカのイリノイ州の 9 個

の火力発電所の排ガスの環境影響評価(法規制)を目的として、シカゴを含む領域1辺 750km

四方範囲の PM2.5 濃度予測にも使われている(Levy et al., 2002)。

本研究は東北大学東北アジア研究センターの明日香壽川教授からの依頼に基づき、日本

で環境影響評価に一般に使われているプリューム・パフモデルを使って、仙台パワーステ

ーションからの排ガス拡散予測を行い、Myllyvirta と Cuwah(2018)による CALPUFF モ

デルを使った予測結果との比較を行うことにより、CALPUFF モデルの計算値の特徴を調べ

ることを目的とする。ここで使用したプリューム・パフモデルは、経済産業省の低煙源工

場拡散モデル METI-LIS ver. 3.3.1 であり、一般に公開されている。

また、ガウス型プリュームモデルを使って、大気安定度によって 1 時間平均最大着地

濃度がどのように変化するかの検討を行う。

2.方法

METI-LIS は固定発生源から排出される大気汚染物質の大気中濃度を予測する。化学

反応は含まないので、微小粒子状物質 PM2.5 と不活性ガス(二酸化硫黄 SO2, 窒素酸化

物 NOx)の大気拡散予測を行う。NOx は一酸化窒素 NO と二酸化窒素 NO2の混合物を

指す。拡散モデルはガウス型プリューム・パフモデルである。プリューム・パフモデル

とあるが、このモデルは風速 0.4m/s 以上ではプリュームモデルを使い、風速 0.3m/s

以下ではパフモデルを使っている。年間で風速が 0.3m/s 以下の頻度はわずかであり、

年平均濃度の大部分はプリュームモデルで計算されているので、実質的にはプリューム

モデルの予測結果と CALPUFF モデルの予測結果を比較することになる。

2.1 拡散モデル

2.1.1 モデル式

METI-LIS で使用しているガウス型プリュームモデルの概念図とその式(1)を示す。

Page 4: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

4

2.1.2 パスキル大気安定度と拡散幅

煙の広がり幅(拡散幅)はガウス分布の標準偏差σy, σz で与えられ、煙源からの風

下距離 x とパスキルの大気安定度の関数として、図2で与えられる。図2の

Pasquill-Gifford の拡散幅は 10 分間の平均濃度に対応しており、1 時間の平均濃度を予

測する場合にはσy に関して、1.43 倍の時間補正を行う。σz は図2の値を使用する。

図 2 Pasquill-Gifford の水平拡散幅σy 及び鉛直拡散幅σz(A~F は大気安定度階級)

Page 5: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

5

METI-LIS では、表 1 に示すように、日中は地上風速と日射量から、夜間は地上風

速からパスキルの大気安定度階級を求める。また、日射量は日照率の観測値から計算す

る。

表1 パスキル大気安定度階級と気象条件

地上風速

u (m/s)

日中 夜間

日射量 = 0 日射量 Q (0.01kW/m2)

Q > 60 30~59 15~29 1~14

u < 2.0 A A-B B D F

2.0~2.9 A-B B C D E

3.0~3.9 B B-C C D D

4.0~5.9 C C-D D D D

u > 6.0 C D D D D

A: 強不安定、B: 不安定、C: 弱不安定、D: 中立、E: 弱安定、F: 安定

A-B: A と B の中間の安定度、 B-C: B と C の中間の安定度、C-D : C と D の中間

の安定度

仙台管区気象台では年間の無風時(風速 0.3m/s 以下)の時間数が 3%と少なく、年

平均濃度に対する無風時の寄与は小さいので、パフモデル式の記載は省略する。パフモ

デル式の詳細は通産省立地公害局編、産業公害防止協会(現・産業環境管理協会)昭和

60 年 3 月発行「産業公害総合事前調査における大気に係る環境濃度予測手法マニュア

ル」、または、環境庁大気保全局大気規制課編、窒素酸化物総量規制マニュアルを参照

の事。

Page 6: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

6

有効煙突高度は CONCAWE の式(2)を使って計算する。

(ダウンウオッシュ)

建物が作る渦による煙の巻き込み(ダウンウオッシュ)は煙突高さ hs が建物高さ Hb

の 2.5 倍以下の場合には考慮する。しかし、仙台パワーステーションの煙突高さ hs =

80m であり, また、敷地内の建物高さは Hb < 20m と考え、建物によるダウンウオッシ

ュは計算に入れていない。

2.2 濃度計算領域、発生源及び濃度計算点

濃度計算領域は、仙台平野を中心に東西 32.5km, 南北 21.9km の範囲とした(図 7)。

座標の原点(0, 0)は図 7 の計算領域の左下角であり、X 軸は原点から東西に東方向を正

にとり、Y軸は原点から南北に北方向を正にとる。濃度計算点は東西南北それぞれ 250m

間隔の格子点上、地上高 0 m とした。なお、地上高 0 m は地上高 1.5 m の高さの濃度

とほぼ同じと見なした。濃度は計算領域の全格子点について計算している。

発生源は仙台パワーステーション(仙台 PS と略)の煙突の位置とした。その(X, Y)

座標は(19.573, 5.281)km である。

2.3 年間平均濃度の計算方法

METI-LIS では、1 時間毎に煙源の排出量、及び、風向、風速、大気安定度の気象デ

ータを与えて、ガウス型プリュームモデル(風速 0.4m/s 以上)またはパフモデル(風

He

He : 有効煙突高さ (m)

(2)

Page 7: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

7

速 0.3m/s 以下)を使って 1 時間平均濃度を年間時間数について計算し、その算術平均

値を年平均濃度とする。

2.4 発生源データ

計算に使った仙台 PS の煙突や排ガス量のデータを表 2 に、大気汚染物質排出量を表

3 に示す。いずれも Myllyvirta と Cuwah(2018)と同じ値を使った。

PM2.5、SO2、NOx については年平均濃度予測、PM2.5 と NOx について特定の気象

条件における 1 時間平均濃度の予測を行った。

表2 仙台 PS の煙突に関するデータ

煙突高さ

(m)

煙突内径

(m)

排ガス速度

(m/s)

排ガス温度

(K)

排ガス量

(m3 / h)

80 2.75 21.1 325 451,000

出典:煙突高さ、排ガス速度、排ガス温度は仙台 PS 公表値から。煙突内径は

Myllyvirta と Cuwah(2018)による推定値。

表3 仙台 PS からの大気汚染物質排出量

大気汚染物質 SO2

協定値

NO NO2 NOx ばいじん

協定値

PM2.5

(ばいじんの 30%)

排出量 (t / y) 937 401 21.1 422 158 47.4

2.5 計算に使った気象データ

2.5.1 風向風速

計算には仙台管区気象台の 1996 年の風向風速データを使った。風向風速の測定点高

さは、地上高 53m である。Myllyvirta と Cuwah(2018)の濃度計算では 2014 年の気象

データが使われている。同じ年の気象データで計算した方が簡明で良かった。しかし、

年平均濃度を予測する場合には、通常、年平均の気象条件の年による変動は小さく、気

象データの年の違いによる濃度予測値の変化は幾らかあるものの、他の誤差と比べて影

響は小さいと考えている。ちなみに、1996 年と 2014 年の平均風速差は、3%と小さく,

全天雲量差は 1.5%, 全天日射量差は 13%、日照時間差は 13%である。風向分布に大き

な差はない。(末尾、参考資料参照)

集計した風向頻度を表 4 と図 3 に、風速ランク別の頻度を表 5 と図 4 に示す。

Page 8: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

8

表4 風向頻度(仙台管区気象台) 図3 風配図(仙台管区気象台)1996 年

表5 風速頻度(仙台管区気象台) 図4 風速頻度分布(仙台管区気象台 z=53m)

年平均風速は 3.3m/s である。0.3m/s 以下の calm や、風速 8m/s 以上の頻度は少な

い。風向は南東と西北西から北の方向が多い。南東風は日中の海風が、西北西から北の

風は夜間の陸風が影響している。

2.5.2 パスキル大気安定度

仙台管区気象台の風速(地上高 53m)から冪乗則で地上高 10m の風速を推定した。

日射量は METI-LIS のマニュアルにより仙台管区気象台の日照率から推定した。この

% n 1996年仙台 53m

N 11.5 969NNE 4.2 357NE 2.9 243ENE 1.9 158E 1.9 162ESE 5.2 443SE 11.3 957SSE 7.7 649S 5.4 457SSW 3.7 313SW 3.3 281WSW 3.1 258W 6.9 585WNW 11.1 935NW 11.0 931NNW 12.7 1075calm 0.1 10

100 8783

年平均風速(m/s) 3.3

0

2

4

6

8

10

12

14N

NNE

NE

ENE

E

ESE

SE

SSE

S

SSW

SW

WSW

W

WNW

NW

NNW

calm 0.1%

1996年風速頻度分布

Page 9: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

9

気象条件を使って、表1のパスキル大気安定度階級分類に従って、仙台のパスキル大気

安定度を求めた。

計算で求めたパスキル大気安定度分布を表6と図5に示す。ここで、中間の大気安定度

階級 A-B は A に、B-C は B に、C-D は C に集約している。

3.予測計算結果

3.1 有効煙突高さ計算結果

CONCAWE 式を使って有効煙突高さを計算した。結果を表7と図6に示す。

CONCAWE 式の風速は、実煙突高さ(地上 80m)の風速を与えた。その値は、仙台管区

気象台の風速(地上 53m)から、前述の冪乗則を使って推定した。排出熱量は仙台 PS の

データから与えた。

表7 有効煙突高さ He(m) 図6 有効煙突高さ He(m)

表6 METI-LIS年間大気安定度分布 1996年 仙台

% nA 5.1 449

B 8.9 777C 12.2 1073D 38.5 3383E 11.1 978F 24.1 2117

合計 100.0 8777

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

A B C D E F

図5 仙台年間大気安定度分布 1996年%

Page 10: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

10

計算結果から、有効煙突高さ He は風速 1m/s で 290m、風速 5m/s で 143m であり、

大部分のデータはこの範囲に入る。さらに風速が強くなると He = 100m となる。

3.2 濃度計算結果

METI-LIS モデルを使って計算した濃度を図 7~図 9、図 11~図 13 に示す。濃度表

示は格子点の濃度を内挿して、等濃度線と等濃度領域で表している。

(1) PM2.5 年平均濃度

PM2.5 年平均濃度計算結果を図7に示す。図中の同心円は仙台 PS を中心に、半径 1

km, 2 km, 3 km, 5 km, 10 km, 15 km, 20 km の円を示す。最大着地濃度は仙台 PS か

ら北西方向 1 km の地点で、濃度は 0.096μg / m3である。

煙源条件hs= 80 (m)Ts= 52 ℃Q= 125 (m3N/s)QH= 1,438,232 (cal/s)

排ガス速度 Vs= 21.1 (m/s)煙突内径 D= 2.75 (m/s)

風速 有効煙突高さu(m/s) He(m)

1 2902 2053 1724 1545 1436 1357 1298 1249 120

10 11712 11314 10916 10618 10420 102

注)煙突のダウンウオッシュは今回の計算に入れていない。煙突のダウンウオッシュが起きる条件は、U > Vs / 1.5 = 14 m/sであり、頻度がきわめて小さいため。U: 風速、Vs: 煙突の排出速度

0

50

100

150

200

250

300

350

0 5 10 15 20 25

he(m)

u(m/s)

He(m)

Page 11: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

11

図7 PM2.5 年平均濃度計算結果 (μg / m3)(協定値)

(2) SO2年平均濃度

SO2年平均濃度計算結果を図 8 に示す。最大着地濃度は仙台 PS から北西方向 1 km

の地点で、濃度は 1.91μg / m3である。

図 8 SO2年平均濃度計算結果 (μg / m3)(協定値)

Page 12: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

12

(3) NOx 年平均濃度

NOx 年平均濃度計算結果を図 9-1 に(μg / m3)単位で、図 9-2 に ppb 単位で示す。

図 9-1 NOx 年平均濃度計算結果(μg / m3)

図 9-2 NOx 年平均濃度計算結果 (ppb)

Page 13: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

13

NOx 最大着地濃度は仙台 PS から北西方向 1km の地点で、濃度はそれぞれ 0.86μg /

m3と 0.45ppb である。

(4) 大気安定度別濃度計算結果

最大着地濃度が出る風下距離は鉛直方向の煙の広がり幅σz と有効煙突高さ He によ

って変化する。煙の広がり幅σz は大気安定度によって変化するので、煙の中心軸直下

の地上濃度を大気安定度別に計算した。σz は Pasquill-Gifford の拡散幅を使った。そ

の結果を図 10 に示す。ここで、有効煙突高さは年平均風速 3.4m/s における値 He =

168m を与え、排出量が Q = 1 g / s、風速が 1 m / s に相当する基準化された濃度 u・C

/ Q をガウス型プリュームモデルで計算した。

発電所から最大着地濃度地点までの距離は大気安定度が不安定になるほど小さくな

り、強不安定 A では 0.5 km, B では 1.3 km である。中立の安定度 D では 7 km, 安定

度 E(弱安定)では 20 km となる。また、最大着地濃度は不安定になるほど大きくな

り、安定度 A の場合に最大となる。

図 10 大気安定度別の煙中心軸直下地上濃度

(5) 大気安定度 B(不安定)の場合の PM2.5 の 1 時間平均濃度

風向が南東で大気が不安定 B の場合の PM2.5 の 1 時間平均濃度を図 11 に示す。風

速は 2m/s である。大気安定度 B の場合は、年平均の最大着地濃度地点と近い位置に最

大着地濃度がでるので、この場合の 1 時間平均濃度を計算した。最大着地濃度は 1.67

μg/m3であり、年平均の最大着地濃度の 17 倍の値である。

Page 14: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

14

図 11 風向が南東、大気安定度 B の場合の PM2.5 1 時間平均濃度(風速 2m/s)

(6)大気安定度 D(中立)の場合の PM2.5 の 1 時間平均濃度

風向が南南東、大気安定度 D(中立)、風速 3m/s の場合の PM2.5 の 1 時間平均着地濃

度を図 12 に示す。大気安定度 D は最も出現頻度が高い安定度なので、その濃度を示し

た。最大着地濃度地点は発電所から 5~10km 離れた場所で、0.58μg/m3である。

図 12 風向が南南東、大気安定度D(中立)の場合のPM2.5 1時間平均濃度(風速 3m/s)

Page 15: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

15

(7) 風向が南東、大気安定度 B(不安定)の場合の NOx 1 時間平均着地濃度

風向が南東、大気安定度 B(不安定)、風速 2m/s の場合の NOx 1 時間平均着地濃度を図

13 に示す。最大着地濃度地点は発電所から 1~2km 離れたところで、7.7ppb であり、

年平均最大着地濃度の 17 倍の値である。

図 13 風向が南東、大気安定度 B(不安定)の場合の NOx 1 時間平均濃度(風速 2m/s)

Page 16: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

16

4.METI-LIS による予測濃度と CALPUFF 及び仙台 PS 公表値との比較

PM2.5 及び SPM の濃度分布について、METI-LIS による予測濃度と CALPUFF、

および仙台 PS㈱による予測値との比較した結果を図 14 に示す。仙台 PS㈱による予測

は環境省の窒素酸化物総量規制マニュアル方式であり、有風時のガウス型プリュームモ

デルと弱風時のパフモデルの組み合わせであり、基本的な予測式は METI-LIS とほぼ

同じである。

3つの拡散モデルによる

濃度分布予測値はいずれも

北西~北北西と南東を中心

とする2方向に濃度の高い

領域が広がる分布を示して

いる。また、最大着地濃度を

示す地点はどのモデルも仙

台 PS の北東 1~2km にあり、

ほぼ同じ濃度分布と見なせ

る。

図 14 3 つの拡散モデルによる PM2.5 と浮遊粒子状物質の年平均濃度分布比較

浮遊粒子状

物質濃度

PM2.5濃度METI-LIS

CALPUFF

NOx総量規制マニュアル方式 仙台PS㈱

Page 17: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

17

表 8 3 つの拡散モデルによる最大着地濃度予測値の比較

表 8のCALPUFFモデルによる PM 2.5 と PM2.5 の 1次粒子についての年平均最大着

地濃度予測値と発電所から最大着地濃度地点までの距離は Myllyvirta からの提供によ

る。

図 15 Pasquill-Gifford と Briggs(都市域用)拡散幅σz の比較

Page 18: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

18

PM2.5及びSO2の年平均最大着地濃度とその地点について、METI-LISとCALPUFF

及び NOx 総量規制マニュアル方式(仙台 PS㈱)による予測濃度を比較した結果を表 8

に示す。

表 8 の PM2.5 の 1 次粒子と SO2濃度予測値に関して、CALPUFF モデルによる予測

値は METI-LIS による予測値と比べて、最大着地濃度が 1.7 倍大きい。その理由を以

下に示す。CALPUFF モデルは市街地では Briggs の都市域用の拡散幅(Briggs urban)

を使い、METI-LIS は Pasquill-Gifford の拡散幅を使っている。図 15 は平坦な草地に

適用される Pasquill-Gifford の拡散幅σzとBriggs の都市域用の拡散幅σzを比較した

ものである。都市では草地と比べて建物によって発生する乱流の影響で、同じ大気安定

度であっても、煙の広がり幅 σz が大きい。σy についても同様である(図は省略)。

図15でBriggs urbanの安定度Dランクのσzの値は、x=1000mで Pasquill-Gifford

の安定度 B ランクのσz の値に近い。一般に、同じパスキル大気安定度で、Briggs の

都市域用の拡散幅(Briggs Urban)はPasquill-Giffordの拡散幅よりも大きな値を示して

いる。図 15 と図 10 を対比すると、最大着地濃度は CALPUFF モデルの市街地の予測

値(Briggs urban)が METI-LIS による予測値(Pasquill-Gifford)よりも大きくなること

を示している。

表 8 の CALPUFF の PM2.5 濃度予測値 0.32(μg/m3)は、PM2.5 の 1 次粒子予測

値 0.166(μg/m3)の 1.9 倍ある。これは大気中で SO2ガスや NOx ガス等が化学反応

によって、固体の粒子状物資、硫酸塩、硝酸塩に変わり、その分(2次粒子)が加算さ

れたためである。

表 8 の METI-LIS 予測値と仙台 PS㈱による予測値は、元々、同じプリュウム・パフ

モデルを使っているので計算条件の設定の細かな違いはあるものの、PM2.5 の 1 次粒

子、SO2共に、両モデルでほぼ同じような濃度を示している。

5.考察とまとめ

CALPUFF モデルを使った仙台 PS からの排ガスの濃度予測値の評価を目的として、

ガウス型プリューム・パフ拡散モデル(経済産業省の低煙源工場拡散モデル METI-LIS

ver. 3.3.1)のプログラムを使って計算した。入力データ、使用パラメータにこのモデル固

有の制約があるために、CALPUFF モデルの計算条件に 100%合わせる事はできていないが、

今回の目的 CALPUFF モデルと一般的なプリューム・パフモデルの比較という条件はおお

よそ満たしていると考えている。(気象データの入力年度の違いはあるが、経験的に年平均

濃度の予測には大きな差は与えていないと考えている。なお、1996 年と 2014 年の年平均

風速、風向分布、雲量、日射量、日照時間の比較は行い、両者に大差はないことを確認し

ている。)

METI-LIS モデルを使って同じ排出量条件で濃度予測を行い、両者の比較を行った。

比較は PM2.5 の 1 次粒子年平均濃度と SO2 年平均濃度について行った。なお、

Page 19: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

19

METI-LIS モデルで NOx 濃度予測を行ったが、NO2 濃度の予測は行っていない。

CALPUFF モデルでは化学反応を入れて NO2 濃度を予測した結果を示しているが、

NOx濃度は表示していない。そのため、両モデルによるNOx濃度比較は行っていない。

図14に示されている濃度予測範囲は、CALPUFFモデルが東西150km×南北150km

で、宮城県全域と山形市まで含むのに対して、METI-LIS モデルが東西約 33km×南北

約 22km、仙台市とその周辺市であり、濃度予測範囲にかなり差がある。仙台市の中で

は風向はほぼ一定と見なせるが、150km の領域になると風向が場所により変化する。

ガウス型プリュームモデルは「拡散領域で風向風速が一定」の仮定を置いたモデルであ

るのに対して、パフモデルは風向風速の変化をモデルに取り込めるので、CALPUFF

モデルは宮城県全体の広域の濃度を予測している。しかしながら、仙台市とその周辺市

に限定すると、風向の場所による変化は小さく、それ故、両者の濃度分布は良く似てい

る。同一の拡散パラメータ、同一の風向風速、同一の排出量であれば、元来、パフモデ

ルによる拡散濃度予測値は風向、風速が一定の領域ではプリュームモデルによる濃度予

測値と完全に一致するものであり、仙台市内において両方のモデルの予測濃度分布が似

ているのは、この事を裏付けている。

年平均 SO2と PM2.5(1次粒子)最大着地濃度は CALPUFF が METI-LIS 予測値の

1.7 倍となったが、これは CALPUFF の計算では、都市域での拡散条件を加味し、市街

地で Briggs urban 拡散幅を使っている事が最も影響したと考えられる。METI-LIS は

郊外の平坦地の地上源からの拡散幅 (Pasquill-Gifford の拡散幅)を使って計算するモ

デルであり、都市の拡散条件を与える事が出来ない。その為に生じた濃度差であり、

CALPUFF モデルによる大気拡散予測結果は日本で使われているガウス型プリューム・パフ

モデルによる予測結果と比べて、ほぼ同レベルの予測精度であると考える。

なお、高煙突からの排ガス拡散幅については地上源からの排ガスの拡散幅と少し異な

るということもわかっており、より高精度を追求する場合にはこの点も考慮する必要が

ある(河野、2000)。

なお、CALPUFF モデルは、化学反応によって二酸化硫黄と窒素酸化物のガス状物質が

大気中で粒子状物質に変わることも予測モデルに組み込んでおり、その結果、最大着地濃

度地点の PM2.5 予測濃度は化学反応を入れない 1 次粒子の濃度の 1.9 倍となっている。

また、METI-LIS モデルを使って大気安定度による 1 時間平均着地濃度の変化を調べ

た結果、不安定な場合に着地濃度が最大となり、大気安定度 B、風速 2m/s の場合の最

大着地濃度は年平均濃度の 17 倍の値となった。

文献

Andretta et al., 2006, Application of the ISCST3 model to an industrial area: comparison

between predicted and observed concentrations, WIT Transactions on Ecology and the

Environment, Vol 91, Risk Analysis V: Simulation and Hazard Mitigation, p.187-195.

Page 20: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

20

環境庁大気保全局大気規制課編、窒素酸化物総量規制マニュアル、1981, 公害研究対策

センター.

気象庁編集、1996年アメダス観測年報 CD 、発行 財)気象業務支援センター.

経済産業省、「経済産業省―低煙源工場拡散モデル METI-LIS ver. 3.3.1 取扱い説明

書」、2017 年8月.

経済産業省、「有害大気汚染物質に係る発生源周辺における環境影響評価予測手法マニ

ュアル、(経済産業省―低煙源工場拡散モデル METI-LIS ver. 3.0.2)」2012.3.

河野 仁、2000、欧米における大気拡散モデル―新世代の近距離大気拡散モデルについて、大気

環境学会誌 35(3), 133-143.

Lauri Myllyvirta 、Clifford Cuwah、翻訳 明日香 壽川、2018、仙台パワーステーション稼働に

よる大気汚染および健康影響の評価.

Levy, I. Jonathan et al., 2002, Using CALPUFF to evaluate the impacts of power plant

emissions in Illinois: model sensitivity and implications, Atmospheric Environment 36, 1063–

1075.

Mangia, C. et al., 2015, Secondary Particulate Matter Originating from an Industrial Source and

Its Impact on Population Health, Int. J. Environ. Res. Public Health 2015, 12, 7667-7681.

中西準子、花井荘輔、東野晴行、吉門 洋、吉田喜久雄、リスク評価の知恵袋シリーズ

1 大気拡散から暴露まで、ADMER / METI-LIS, p.123-248, 丸善株式会社、2007 年.

Scire, Joseph S. et al. 2000, A user’s guide for the CALPUFF dispersion model (ver. 5), Earth

Tech, Inc.

仙台パワーステーション㈱、仙台パワーステーションの事業計画について、2017 年 3

月 8 日地域住民説明会資料.

通産省立地公害局編、産業公害防止協会(現・産業環境管理協会)昭和 60 年 3 月発行

「産業公害総合事前調査における大気に係る環境濃度予測手法マニュアル」

Page 21: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

21

(参考資料 1)仙台管区気象台における 1996 年と 2014 年の平均風速、風向分布、

雲量、全天日射量、日照時間観測値

1996 年 2014 年 (1996 年-2014 年) / 2014 年

%

平均風速 (m/s) 3.3 3.2 -3.0

平均雲量 (10 分比) 6.7 6.8 -1.5

平均全天日射量 (MJ/m2) 11.9 13.7 -13.1

日照時間 (h) 1818 2093 -13.1

% n 1996年仙台 53m

N 11.5 969NNE 4.2 357NE 2.9 243ENE 1.9 158E 1.9 162ESE 5.2 443SE 11.3 957SSE 7.7 649S 5.4 457SSW 3.7 313SW 3.3 281WSW 3.1 258W 6.9 585WNW 11.1 935NW 11.0 931NNW 12.7 1075calm 0.1 10

100 8783

年平均風速(m/s) 3.3

0

2

4

6

8

10

12

14N

NNE

NE

ENE

E

ESE

SE

SSE

S

SSW

SW

WSW

W

WNW

NW

NNW

calm 0.1%

% n 2014年 仙台 53mN 8.9 779NNE 4.2 369NE 2.2 195ENE 2.0 171E 3.0 267ESE 5.5 485SE 10.3 902SSE 7.8 681S 5.6 495SSW 3.5 306SW 2.9 252WSW 3.4 296W 6.7 591WNW 11.0 966NW 9.6 841NNW 13.1 1151calm 0.1 12

100 8759

年平均風速(m/s) 3.2

02468

101214

NNNE

NE

ENE

E

ESE

SE

SSES

SSW

SW

WSW

W

WNW

NW

NNW

calm 0.1 %

風向分布

Page 22: プリューム・パフモデルを使った仙台パワーステーション からの排ガス拡散予測と CALPUFF … · 3 1.はじめに MyllyvirtaとCuwah(2018)がCALPUFFモデルを使って、仙台パワーステーションから

22

(参考資料 2)

METI-LISによる拡散計算の気象入力データのサンプル(1996年1月1日のデータ)

年 月 日 時

風向(北から時計回りに計った角度(°))

風速(m/s)パスキル大気安定度ランク

左の数字大気安定度ランクの意味

1996 1 1 1 202.5 5 8 中立D1996 1 1 2 202.5 5 8 中立D1996 1 1 3 337.5 4 8 中立D1996 1 1 4 315 5 8 中立D1996 1 1 5 360 4 8 中立D1996 1 1 6 360 3 9 中立D1996 1 1 7 315 2 8 中立D1996 1 1 8 292.5 7 7 中立D1996 1 1 9 292.5 10 7 中立D1996 1 1 10 292.5 10 7 中立D1996 1 1 11 270 12 7 中立D1996 1 1 12 270 10 7 中立D1996 1 1 13 292.5 6 7 中立D1996 1 1 14 292.5 11 7 中立D1996 1 1 15 292.5 4 7 中立D1996 1 1 16 292.5 11 8 中立D1996 1 1 17 292.5 9 8 中立D1996 1 1 18 270 6 8 中立D1996 1 1 19 292.5 4 8 中立D1996 1 1 20 315 6 8 中立D1996 1 1 21 315 8 8 中立D1996 1 1 22 315 5 8 中立D1996 1 1 23 292.5 7 8 中立D1996 1 1 24 315 7 8 中立D