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フロンティア・ラボ株式会社
渡辺 壱
モノマー ポリマー成形材料
成形品
高分子材料の各段階における解析課題
重合 成形
添加剤組成ブレンド組成
リサイクル利用
廃棄
熱分解(Py-)GC/MSシステムを用いた分析法
• 発生ガス分析 (試料全体の気化・熱分解熱特性)
• 熱脱着GC/MS (添加剤情報)
• 熱分解GC/MS (ポリマー情報)
• ダブルショットGC/MS (添加剤・ポリマー情報)
ポリマーの分子構造解析課題:成形品の高次構造
劣化・分解に伴う構造変化
1
Py-GC/MSシステムと各種分析法
発生ガス分析(EGA)-MS
(試料全体の気化・熱分解特性)
300ºC(一定)
ITFチューブ(固定相無し、3 m)
40030020010040 500 ºC
EGAプロファイル
添加剤などの揮発
ポリマーの熱分解
MSキャピラリー分離カラム
GC
熱脱着(TD)-GC/MS (添加剤情報)熱分解(Py)-GC/MS (ポリマー情報)ダブルショット(TD & Py)-GC/MS
2 4 6 8 10 12 14 min0
クロマトグラム、パイログラム
TD-GC/MS
Py-GC/MS
ダブルショット-GC/MS
縦型パイロライザーキャリヤーガス
(He)注入口
MS GC
2
Py-GC/MSを用いた不良品解析例
1.ポリビニルアルコール製造時の白濁
白濁品良品
HC/EGA-GC/MSによる解析
2.ポリ塩化ビニルの黄変
HC/EGA-GC/MSによる解析
テクニカルノート PYA3-021, PYA3-022
3.ポリアセタールの機械強度劣化
Py-GC/MSによる解析
テクニカルノート PYA1-088
4.黒色インクの速乾性劣化
HC/EGA-GC/MSによる解析
テクニカルノート PYA3-027
黄変面白色面
1 cm 1 cm
エアーポンプ
染料(Solvent Black 29)
など
3
本日のスライドは、以下のリンクよりダウンロードできます。2/28までにダウンロードをお願いいたします。
URL: www.frontier-lab.com/download/GCconf_190221.pdf
4
ポリビニルアルコール(PVA)の製造時に白濁が生じた。
原因としては、不純物の混入が考えられる。
白濁品透明品
5
前処理の簡便な熱分解(Py)-GC/MSシステムを用い、
PVA中の白濁成分の分析を試みた。
200 300 400 500 600 700 ºC
標準PVA
白濁PVA
×105
0.5
1.0
1.5
2.0
0.4
0.8
1.2
加熱炉温度 / ºC
TIC
(昇温速度20 ºC/min)
Zone A Zone B
Zone C Zone D
50 100 150 200 m/z
43
602977 10591
115 129 145
9143
105 129141 16577
55178
191202
29 215239 281252
115
100 20015050 250 m/z
Zone A
Zone B
50 100 150 200 m/z
43
60
29 77 10591115 129 145
91
11512977 165141
4355
178
20229 215
191
105
239252 281
100 20050 150 250 m/z
Zone C
Zone D
平均質量スペクトル
200 300 400 500 600 700 ºC
6
100
100
×105
700 ºC500300100
100
80
60
40
20
0
%
100
50
m/z
700 ºC500300100
100
80
60
40
20
0
%
150
100
50
m/z
700 ºC500300100
700 ºC500300100
(昇温速度20 ºC/min) (昇温速度20 ºC/min)
7
標準PVA 白濁PVA
標準PVA
白濁PVA
×107
0.5
1.0
1.5
0
0.5
1.0
0
保持時間 / min
Acetic a
cid
+
Cro
tonald
ehyd
e
Aceta
ldehyd
eA
ceto
ne
Benzald
ehyd
e
2,4
-Hexadie
nal
Tolu
ene
Unid
entified
TIC
2 4 6 8 10 min
8
装置構成
分離カラム
選択的試料導入装置
液体窒素
窒素ガス
マイクロジェット・クライオトラップ
MS GC
0
0.5
1.0
1.5
2.0
0.4
0.8
1.2
0
×105
200 300 400 500 600 700 ºC
TIC
加熱炉温度 / ºC
460 540
分画
標準PVA
白濁PVA
試料量: 11.7 mg
熱分解温度: 100-600ºC(分画温度範囲: 460-540ºC)
GC注入口温度: 320ºC
GCオーブン温度: 40(2 min保持)-320ºC(20 ºC/min,
10 min保持)分離カラム: 5%ジフェニル-95%ジメチルポリシロキサン長さ30 m, 内径0.25 mm, 膜厚0.25 µm
スプリット比: 1/20, カラム流量: 1 mL/min He
EGAサーモグラムを比較した結果、高沸点ピーク側に違いがあると推測された。そこで、ハートカット(HC)/EGA-GC/MS法による分画分析を試みた。
9
2018161412108642
100
80
60
40
20
0
F.S.:15536852
Tolu
ene
Xyle
nes
保持時間 / min
TIC%
10
F.S.:16246173
2018161412108642
100
80
60
40
20
0
Tolu
ene
Xyle
nes
保持時間 / min
TIC%
標準PVA
白濁PVA
2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 280
150000
300000
450000
0
160000
320000
2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 min
C16C18
C20C22
C24
保持時間 / min
保持時間 / min
10-18 min 15倍拡大
10-18 min 15倍拡大
標準PVA
白濁PVA
m/z 57
m/z 57
11
HC/EGA-GC/MS分析の結果から、混入した不純物は飽和炭化水素構造を含む高分子であることが推測された。
PVAの製造現場で使用していたエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)が白濁の原因として考えられる。
CH2 CH2 CH2 CH
O
O
CH3
m
n
12
13
高分子材料の黄変
高分子材料の劣化や黄変に伴う構造変化は、多くの場合微細
であり、構造変化に関する情報を観測できないことも多い。
黄変前の試料
黄変後の試料
一般的な分析手法
IR法 ・ ラマン分光法
各種クロマトグラフィーで分析
黄変前後のデータを比較
製品価値の大幅な低下
14
1. 瞬間熱分解GC/MS法 (Py-GC/MS)
2. 発生ガス分析MS法 (EGA-MS)
3. ハートカットEGA-GC/MS法 (HC/EGA-GC/MS)
IR法では明確に識別できなかったポリ塩化ビニル(PVC)シート
Py-GC/MSを用いた各種分析法により
黄変原因を解析
PVCシート
検討した分析法
黄変面白色面
1 cm1 cm
15
白色面
5 10 15 min10
1
2
×107
TIC
C26’C28’C24’
(滑剤由来)
黄変面Styrene
HClBenzene
Toluene
IndeneNaphthalene
2-Ethyl-
1-hexene
MMA
TIC試料量 0.1 mg
0
1
2
×107
5 10 15 min1
両者ともにPVCの熱分解生成物を観測した。
16
1. 白色面と比較して、黄変面のHClの脱離量が減少した。
2. 黄変面の耐熱性の低下を示唆している。
1
2
3
4
5
6
7
強度
×106
200 400 500 600 ºC100
(→ 20 ºC/min)
300
300ºC 308ºC
457ºC 457ºC
黄変面
白色面
200 300 400 500 600 ºC100
2
×106
4
強度
17
TIC
m/z 36(HCl)
立上り196ºC
立上り260ºC
HCl36
7844
38
[m/z]
強度
試料量 0.2 mg
91
41
[m/z]
55
79105141強
度
黄変面 白色面
白色面のみ、添加剤由来と推測される化合物のピークが観測された。
150
100
50
[m/z]
280 ºC260240220200180160140120100
(→ 20 ºC/min)
二次元マスクロマトグラム
300
200
100
[m/z]
280 ºC260240220200180160140120100
(→ 20 ºC/min)
二次元マスクロマトグラム
(→ 20 ºC/min)(→ 20 ºC/min)
Zone 1
(100-220ºC)Zone 2
(220-280ºC)
280 ºC260240220200180160140120100
TIC Zone 1
(100-220ºC)Zone 2
(220-280ºC)
280 ºC260240220200180160140120100
2-Ethylhexyl
mercaptoacetate
O
OSH
SnCl
Cl
Dichloro
dimethyltinStearic acid
TIC
C17H35 OH
O
TIC
×106
0
1
2
3
TIC
×106
0
1
2
3
18
熱安定剤 Dimethyltin bis(2-ethylhexyl
thioglycolate)の熱分解生成物●・・・
1. 黄変面のみHClを検出した。
2. 両者で熱安定剤の熱分解生成物の強度比が異なっていた。
3. 白色面では滑剤由来の高級アルコールを観測した。SnSO
OS
O
O
黄変面黄変面
白色面
2-Ethylhexyl
acetate
Dichloro
dimethyltinHCl
2-Ethylhexyl
mercaptoacetate C28H57-OH
●
●
●
●
●
2-Ethyl
hexanol
●
●
C24H49-OH
C26H53-OH
OH
SnCl
ClO
O
OO
SH
Stearic acidPalmitic acid
試料量0.45 mg
TIC
0
1
2
×107
3 5 7 9 11 13 15 17 min1
TIC
0
1
2
×107
3 5 7 9 11 13 15 17 min1
Zone
1Zone
2
280 ºC220100
TIC
HCl ?
19
白色面のみ、ステアリン酸・パルミチン酸のピークを観測した。
安定剤 ”金属セッケン” の存在を示唆している。
Ca-Zn系
C17H35
O
O
Ca2+
O
O
O
O
Zn2+
O
O
C17H35 C17H35 C17H35 C17H35
O
O
Ba2+
O
O
O
O
Zn2+
O
O
C17H35 C17H35 C17H35
Ba-Zn系
熱安定剤 Dimethyltin bis(2-ethylhexyl thioglycolate)の熱分解生成物
● ・・・
O
O
OO
SH
試料量0.45 mg
SnCl
Cl
HCl
Benzene
MMA
黄変面
白色面
Palmitic
acid
Stearic
acid
●
●● ●
2-Ethylhexyl
acetate
TIC
0
1
2
×107
3 5 7 9 11 13 15 17 19 min1
3 5 7 9 11 13 15 17 19 min1
TIC
0
1
2
×1072-Ethylhexyl
mercaptoacetateDichloro
dimethyltin
Zone
1Zone
2
280 ºC220100
TICSnS
O
OS
O
O
20
熱安定剤の劣化と減少の影響で
PVC骨格の脱HCl反応が起こる
PVC骨格に生成した
共役二重結合により、黄色に呈色
-HCl
黄色PVC骨格
熱安定剤
黄変面
熱安定剤の効果により、
脱HCl反応が抑制される
白色面
脱HClの抑制
Dimethyltin
bis(2-ethylhexyl thioglycolate) 金属セッケン(Ca-Zn系、Ba-Zn系)
Sn SO
OS
O
OC17H35
O
O
Ca2+
O
O
C17H35 C17H35
O
O
Zn2+
O
O
C17H35
21
多機能熱分解装置を用いた各分析法は、
高分子材料の劣化やそれに伴う黄変の原因の解析に有効である。
1. Py-GC/MS法
・ いくつかのピークに差異が認められたが、黄変との関連性は不明だった。
・ 試料の母材ポリマーを確認することができた。
2. EGA-MS法
・ 脱HClの温度をはじめ、黄変面と白色面の差が顕著に認められた。
3. HC/EGA-GC/MS法
・ 黄変面では熱安定剤の劣化が認められた。
・ PVC骨格の脱HCl反応が進行して黄変を生じたと推測できた。
PVCの黄変面と白色面について、
多機能熱分解装置を用いた各種分析を行い、黄変原因の解析を行った。
22
23
オキシメチレン単位の繰り返しから構成される高分子
強度、弾性率、耐衝撃性などの物性に優れるため機械部品の原材料として多用されている
ホモポリマーの強度性能などの機械的特性は、コポリマーと比較して優れているが、その長期耐熱性は低い
C O C
H
H
O
H
H
C
H
H
O C
H
H
O
ホモポリマー コポリマー
C O
H
H
C C
H
H
H
H
O
m n
24
アロマ拡散用エアポンプの特定のロットについて、短期間で故障が起きる不良品が発生していた。
使用されているPOM樹脂製機械部品に原因があると予想されたため、発生ガスMSと熱分解GC/MSによる分析を行い、原因について検討した。
25
正常に動作するアロマ拡散用エアポンプから取り外したPOM製部品(良品)
故障したエアポンプから取り外したPOM製部品(不良品)
分析試料をカッターナイフで薄片に切り出し、測定に供した。
ボディ
ラバー
駆動部品(分析試料)
26
良品・不良品のEGAプロファイル
0
×105
1.0
0.5
TIC
1.5
1.0
0.5
0
×104
0 50 100 m/z
29
45 73
Zone AZone A
330ºC
(昇温速度 20 ºC/min)
0
×105
2.0
1.0
TIC
1.5
1.0
0.5
0
×104
0 50 100 m/z
29
45
Zone B Zone B
250ºC
(昇温速度 20 ºC/min)
100 200 300 400 500 600 700 ºC
加熱炉温度 / ºC
100 200 300 400 500 600 700 ºC
加熱炉温度 / ºC
良品
不良品
27
OO
O
O
O
O
OO
O
I
II
III
20 30 40 50 60 70 80 90 m/z
73
44
30
45
20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 m/z
73
44
6131 10455
45
20 40 60 80 100 120 140 m/z
6131
9144
MW=74
MW=104
MW=120
28
不良品
OO
O
O
O
O
OO
O
良品
2 3 4 5 6 7 8 91 10 min
保持時間/ min
0
2
4
6
TIC
×104
0
2
4
6
TIC
×104
:POMの分解生成物およびオキシメチレン単位(-O-CH2-)を反映する化合物
良品の樹脂成分 ・・・ エチレンオキサイドとの共重合体不良品の樹脂成分 ・・・ POMホモポリマー
HCHO
:オキシエチレン単位(-O-C2H5-)を反映する化合物
29
アロマ拡散用エアポンプのPOM樹脂製機械部品についてPy-
GC/MSシステムを用いて分析を行った結果、良品試料のみにおいてオキシエチレン単位を含む化合物を検出した。
不良品となった原因は、高温度および(または)高湿度条件下での使用が最適では無い樹脂が使われたことが原因と推察される。
30
良品の樹脂 ・・・ エチレンオキサイドとの共重合体
不良品の樹脂・・・ POMホモポリマー
31
背景・目的
インク
溶媒
樹脂
着色剤染料
顔料
添加剤
Py-GC/MS法、発生ガス分析(EGA)- MS法およびハートカット(HC)- GC/MS法を併用し、合成染料の良品・不良品の異同識別を行う
など
32
試料
・黒色インク良品
・黒色インク不良品
インク(良品・不良品)の EGA-MS 測定
200 300 400 500 600 ºC
1
2
3
インク良品 (0.602 mg)
インク不良品 (0.571 mg)
x106
Zone #D Zone #EZone #CZone #A Zone #B
30
41
57
6985 115144
44
77115
143
196
211
100
20 ºC/min
43
5772
[m/z]
[m/z]
41
56
69
87
100
[m/z]
41
5669
87
115 144
[m/z]
[m/z]
33
インク Zone #AのHC-GC/MS クロマトグラム
Zone #A (100 - 160ºC)
5 10 min
6
2-Naphthol
x104
6
5 10 min
x104
Butylmethacrylate (BMA)
2-Ethylhexanol
Pyruvicaldehyde
2-Octanone
34
良品
不良品
(0.099 mg)
(0.102 mg)
インクの主成分と染料
材料 含有率 (%)
溶媒 75~<85
染料 2~<5
樹脂 5~<10
黒色インクの主成分
R
染料(Solvent Black 29)
染料(Lot #A)
染料(Lot #B)
35
染料(Solvent Black 29)の EGA-MS サーモグラム
200 300 400 500 600 ºC
1
2
x106
Zone #A Zone #B
200 300 400 500 600 ºC
1
2
3
x106
100
100
4155
69
83115 144 41
5569
83
97168
55
115128
144
[m/z][m/z][m/z]
20 ºC/min
20 ºC/min
43 72 89
115
144
Zone #A Zone #B
4155
69
83
97115 14455
115128
144
[m/z] [m/z] [m/z]
36
染料(Lot #A)
染料(Lot #B)
(0.542 mg)
(0.573 mg)
染料(Lot #A)の2次元サーモグラム
m/z 144
R
Solvent Black 29
2-Naphthol
(M+ 144)
m/z 128
Naphthalene
m/z 115
200 300 400 500 600100 700 [ºC]20 ºC/min
2-Naphthol
115
144
未反応の残留2-Naphtholを含むSolvent Black29の熱分解
Cr錯体として存在していたSovent Black29の熱分解
37
染料(Lot #B)の2次元サーモグラム
m/z 144
m/z 128m/z 115
200 300 400 500 600100 700 [ºC]20 ºC/min
2-Naphthol
Naphthalene
38
Zone #A(100 - 200ºC)
1
2
x107
5 10
2-Naphthol1
2
x107
5 10
約15倍
染料の HC-GC/MS クロマトグラム
[min]
[min]
39
染料(Lot #A)
染料(Lot #B)
(0.102 mg)
(0.108 mg)
Zone #B(400 - 600ºC)
1
x107
5 10
染料の HC-GC/MS クロマトグラム
[min]
1
x107
5 10 [min]
2-Naphthol
40
染料(Lot #A)
染料(Lot #B)
(0.102 mg)
(0.108 mg)
まとめ
1. インクの不良 (乾きにくい)品 には2-Naphtholが特異的に多く含有されていた。(因果関係を確定するためには、良品に2-Naphtholを添加して不良になることを確認する必要がある。)
2.染料を EGA-MS 法で分析したところ、サーモグラムの<200ºC領域では染料(Lot #A)
と比較して染料(Lot #B)は 2-Naphthol が多く観測された。
3.染料を HC-GC/MS 法で分析したところ、 Zone #A (100 - 200ºC) では未反応で残留
したと思われる 2-Naphthol が、染料(Lot #A)と比較して染料(Lot #B)では約15倍観
測された。
EGA-MS 法および HC-GC/MS 法を併用することで、インクの良品不良品の異同識別ができた。
また、その差はインク中の染料の成分の違いに由来することが分かった。
41
42