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■テクニカルイラストの作成 本解説集で説明する「テクニカルイラスト」とは、保守マニュアルやパーツリストなどで、おもに機械 (またはパーツ)の形状や構成・配置などを図示するものです。 「アイソメ」 (アイソメトリック図の略)または「等角投影図」とも呼びます。 製図ペン+楕円定規で紙に描くのではなく、PC 上で Adobe Illustrator を用いて作成します。 3D-CAD ソフトから、Illustrator で編集できる形式のイラストを出力して使用することが多いですが、 支給された 3D-CAD ファイルでパーツが不足している場合があります。 そのような場合、パーツの平面図からイラストを描き起こしたり、製品を実測して描く、 または写真を撮影してトレスすることになります。 そのため基本的な描き方をマスターする必要があります。 以降、Illustrator のサンプル画面は CS2(Ver. 12.0.0)を用いています。 〔 目次 〕 章 テクニカルイラストの基本 -.単純な立体 --.立方体 --2.円柱と寸法指定 -2.線のメリハリ -3.箱 -3-.Illustrator の環境設定 -3-2.箱 -4.三面図(または実測)から描く -4-.面図の整理 -4-2.変形 -4-3.組み立て -5.写真をトレスする -5-.カメラで撮影する -5-2.フラットベッドスキャナーを使う 2 章 3D-CAD の書き出し 2-.XVL 形式・IGES 形式 2--.展開 2--2.スナップショット機能 2--3.書き出し 2-2.Stp 形式 3 章 分解図 3-.タッチアップ 3-2.連絡線・ASSY 囲み 3-3. ビスなどの配置 3-4. 合番 3-5.重なり 3-5-.パーツ同士の重なり 3-5-2.連絡線の重なり 3-6.スプリング・ケーブルなど 3-7.複数枚の分解図

テクニカルイラストの作成製図ペン+楕円定規で紙に描くのではなく、PC上で Adobe Illustrator を用いて作成します。3D-CAD ソフトから、Illustrator

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■テクニカルイラストの作成

本解説集で説明する「テクニカルイラスト」とは、保守マニュアルやパーツリストなどで、おもに機械 (またはパーツ)の形状や構成・配置などを図示するものです。「アイソメ」(アイソメトリック図の略)または「等角投影図」とも呼びます。製図ペン+楕円定規で紙に描くのではなく、PC 上で Adobe Illustrator を用いて作成します。3D-CAD ソフトから、Illustrator で編集できる形式のイラストを出力して使用することが多いですが、 支給された 3D-CAD ファイルでパーツが不足している場合があります。そのような場合、パーツの平面図からイラストを描き起こしたり、製品を実測して描く、 または写真を撮影してトレスすることになります。そのため基本的な描き方をマスターする必要があります。

以降、Illustrator のサンプル画面は CS2(Ver. 12.0.0)を用いています。*

〔 目次 〕

� 章 テクニカルイラストの基本

�-�.単純な立体

�-�-�.立方体

�-�-2.円柱と寸法指定

�-2.線のメリハリ

�-3.箱

�-3-�.Illustrator の環境設定

�-3-2.箱

�-4.三面図(または実測)から描く

�-4-�.面図の整理

�-4-2.変形

�-4-3.組み立て

�-5.写真をトレスする

�-5-�.カメラで撮影する

�-5-2.フラットベッドスキャナーを使う

2 章 3D-CAD の書き出し

2-�.XVL 形式・IGES 形式

2-�-�.展開

2-�-2.スナップショット機能

2-�-3.書き出し

2-2.Stp 形式

3 章 分解図

3-�.タッチアップ

3-2.連絡線・ASSY 囲み

3-3. ビスなどの配置

3-4. 合番

3-5.重なり

3-5-�.パーツ同士の重なり

3-5-2.連絡線の重なり

3-6.スプリング・ケーブルなど

3-7.複数枚の分解図

2

� 章 テクニカルイラストの基本

�-�.単純な立体

�-�-�.立方体

まず Illustrator で同じ大きさの正方形を、3つ作成します。(図はわかりやすいように、面の名称を入れています。)

• 天面天面にする正方形を、垂直方向のみ「86.602%」へ縮小します。

シアーツールで水平方向に「30°」傾けます。

右へ「30°」回転させます。(入力する数値は「-30」)

 ➡ 

3

• 正面正面にする正方形を、水平方向のみ「86.602%」へ縮小します。

シアーツールで垂直方向に「30°」傾けます。

 ➡ 

• 右側面右側面にする正方形を、水平方向のみ「86.602%」へ縮小します。

シアーツールで垂直方向に「-30°」傾けます。

 ➡ 

4

以上の変形は、テクニカルイラストでは多用するので、アクションに登録してワンキーで実行 できるようにします。上記の天面(水平面)は、右方向へ傾けていますが、実際には左方向へ傾ける変形も多用します。

(シアー:水平方向「-30°」、回転:左「30°」)これら4種類の変形を、ファンクションキー「F9」〜「F�2」へ登録すると便利です。

• 組み立て変形させた各面を下図のように、スナップさせて配置します。立方体には見えますが、線にメリハリを付けるなどの仕上げが必要です。

( 『�-2.線のメリハリ』を参照)

本解説集では左手前の面を「正面」、右手前を「右側面」、また各裏側の面を「背面」「左側面」と 記述します。 また登録したアクションは、水平面で右方向へ傾ける変形を「水平右変形」、水平面で左方向へ傾ける変形を「水平左変形」、正面・背面側の変形を「側面左変形」、左右側面側の変形を「側面右変形」と 記述します。

本項は面の作り方の基本と、アクションの登録を理解していただく事を目的としました。 立方体(または角柱)の作図は、実際には次項(『�-�-2.円柱と寸法指定』を参照)の最後の手順のほうが簡単です。

5

�-�-2.円柱と寸法指定

水平断面が 直径 �0mm、高さ �5mm の円柱を描いてみます。

直径 �0mm の正円を描き、「オブジェクト」メニューの「パス → アンカーポイントの追加」を実行します。

前項『�-�-�.立方体』の『天面』(水平面)で登録したアクション(正円は右方向・左方向、どちら側へ傾けても結果は同じ)を実行します。

楕円の下半分をカット&前面へペーストして、その下半分を垂直下方へ �5mm 移動させます。

左右各端点のアンカーポイント同士を連結させて、もう一度楕円の下半分を前面へペーストすれば円柱になります。

15mm

10mmではないので注意

10mm

6

等角投影図では水平面・正面・右側面とも同じ寸法なので、垂直方向で描いてから �20°単位で回転させると、各方向の図形として使用できます。なお、垂直軸に対して 45°などに傾斜した図を描く場合に、垂直方向で描いた図を中間の 60°に回転させても誤りなので流用できません。

120°

60°

120°

120°

水平面

45°傾斜した図とするのは誤り正面 側面

傾斜した面の作図が多い場合は、下図のようなテンプレートを作成しておくと便利です。

10°0°

20°

30°

40°

45°

50°

60°

70°

80°

90° 楕円テンプレートの例

前項の立方体(または角柱)も、実際には本項の手順で作図したほうが簡単です。

➡ ➡ ➡

コピー&ペーストする

7

�-2.線のメリハリ

【テクニカルイラストにおける線のメリハリの基本ルール】• 輪郭線、および宙に浮いた線を太くする。接する2面が見える線は細くする。• 太線は細線の2倍の太さにする。

この線が接する 2面のうち、片方(水色)の面が見えない ↓宙に浮いている(輪郭線と同じ) ↓太線

この線が接する 2面が見える ↓宙に浮いていない ↓細線

前項『�-�-2.円柱と寸法指定』で作図した円柱は、天面手前の半円を細線、他(輪郭線)を太線とします。

天面手前の半円(細線)の塗りを「なし」にしないと、端部(他の線との接点)に不具合が生じます。 基本的に多くの塗りは「なし」が便利です。

不具合不具合不具合不具合

塗りが「なし」の場合塗りが「白」の場合

8

また線端とコーナーの形状は基本的に「 丸型 」が便利です。「 丸型 」はコーナーのシャープさが損なわれますが、パスが連結していなくても見かけ上は 1 本のパスと変わらないので、連結する手間が省けます。また鋭角コーナーの「 角の比率 」による不自然さも防げます。

連結していない線

鋭角コーナー(連結)

バット線端

マイター結合角の比率:4

丸型線端

マイター結合角の比率:12

ラウンド(丸型)結合(角の比率設定なし)

グラフィックスタイルに前記の基本設定(太線・細線)を登録しておきます。登録する際、線の色設定をクライアントの指定にしておくことを忘れずに。塗りは「なし」が基本です。

円柱、角柱がそれぞれパイプ状の場合のメリハリは、下図となります。

9

�-3.箱

�-3-�.Illustrator の環境設定本項以降を実践する前に Illustrator 環境設定の「スマートガイド」の角度を、等角投影図用に下図のように設定します。

角度

フリーな曲線パスを描く際には、スマートガイドを OFF にします。また通常、グリッドは使用せず、「ポイントにスナップ」を使用したほうが便利です。

�-3-2.箱製品の梱包仕様図用の一般的な段ボール箱(幅:500mm, 高さ:300mm, 奥行:600mm, 下展開図を参照)を描いてみます。梱包仕様図は配置が解ればよいので、通常は紙の厚さは表現しません。底面のフラップは閉じた状態、天面のフラップは垂直よりも開いた状態にします。

左側面のりしろ

正面

展開図(外面)

右側面

天面側

背面

外フラップ 内フラップ 外フラップ 内フラップ

外フラップ 内フラップ 外フラップ 外フラップ

底面側

500mm50mm

300mm

250mm

600mm

�0

実寸で作図してから縮小してもかまいませんが、A4 サイズなどのドキュメントで作業しやすいように、1 / 10 サイズで作図します。まず『�-�-2.円柱と寸法指定』項最後の角柱の描き方を参考にして、立方体を描きます。線のメリハリは、箱全体の作画の最後にします。

天面のフラップ 4 枚を描きます。正面および側面と同じ幅(変形前)の方形をそれぞれ作り、下辺を削除します。高さは適当でかまいません。正面サイズの方形を側面左変形、側面サイズの方形を側面右変形させます。

50mm 60mm

直径 50mm の正円を描き、側面左変形させ、中心を立方体の下図2箇所のコーナーへスナップさせます。

側面用に変形させたフラップの端点を、下図の2箇所のコーナーへスナップさせます。 下図ではフラップの高さが正確(25mm)なため、フラップのコーナーが楕円のパスと重なっていますが、この段階で重ねる必要はありません。

��

フラップのパスのコーナーアンカー2点を選択して、楕円のパス上に重ねます。楕円は各フラップのコーナーを回転させたときの軌道を示しているので、重なっていればどこでも間違いではありませんが、箱を開けた状態らしく見える角度にフラップを傾けます。

楕円をリフレクトさせてから、下図のように配置します。側面側のフラップと同様の手順で、前面・背面側のフラップを配置して角度を付けます。または楕円を使用せずに、側面側の2つのフラップを垂直リフレクトでコピーさせてから、幅を前面・背面に合わせてもよいでしょう。そのほうが左右の角度が揃ってバランスよく見えます。

外側の線をコピーするなどして、内面の線を配置します。作例では底面のフラップの線1本(赤い部分)が見えるので、楕円を使用して配置します。

�2

隠れる線を切断、または縮めるなどして不要な線を消します。幅 5mm の「のりしろ」を側面左変形させて、配置してから重なって不要な線を削除します。

のりしろ

線のメリハリを設定して、全体をグループ化すれば完成です。

�3

�-4.三面図(または実測)から描く3D-CAD ファイルが支給されず、三面図(正面・平面・側面の投影図、設計図面)からアイソメを描き起こす場合があります。また製品実物のみが支給されて、それを計測して描くこともありまが、その場合もいったん、簡略な三面図を作成すると楽なので、三面図からアイソメを描き起こす基本的な方法を説明します。

(実物が無く三面図のみの場合、立体化するためには図面を正しく読み取ることが必要です。)

�-4-�.面図の整理三面図(正投影図)の多くは平面 CAD で作成され、PDF や DXF 形式ファイルで支給される場合が多いので、Illustrator で開いてパスを利用できます。CAD ソフト専用のファイル形式で支給されて Illustrator で直接開くことができない場合は、CAD ソフトで変換(書き出し)をします。Illustrator で開いたら、まず図形の形状線を残して、不要な線(図面枠・寸法線・中心線など)やテキストを削除します。

正面図

A’A”断面

B’B”断面

A’ B’A”

B”

平面図

側面図

�-4-2.変形整理した三面図(または実測から作図した三面図)の、「平面図」を「水平右変形」、「正面図」を「側面左変形」、「側面図」を「側面右変形」させます。

�4

�-4-3.組み立て平面図を変形させた天面図をベースとして、正面図・側面図を利用してラインを上下に移動、またはコピー・部分削除などをして作図します。形状により正面図、または側面図をベースとしたほうが作図しやすい場合があります。その場合はその面を上方へ向くように、全体を 60°単位で回転させてから作図します。

(下図が回転させた例。組み立て後に元の向きに戻します。)

作図しやすいように120°回転

不要な線を削除、または書き足すなどして、立体を描きます。(作例の場合は、下辺に角丸の部分があるので、少し手間がかかります。)

断面は内面の作画に使用する

移動した線(後に削除)

新たに引いた線

角を丸くする

�5

角丸の峰を1本で表現する場合は離して、長さを適当にする

この長さを使って内側を描く(実際には最下部は 見えないので不要)

線のメリハリを設定グループ化する

回転して完成

�6

�-5.写真をトレスする�-5-�.カメラで撮影する

3D-CAD ファイルも三面図も支給されず、実物のみが支給された場合、実測図を作成して前項のようにアイソメを描くことができますが、写真をトレスして描くこともあります。

Illustrator で、写真を下絵として配置してトレスしますが、アイソメ角度の写真を撮影する場合は、なるべくアイソメ角度に合うように注意します。また、なるべく望遠で撮影して、パースを少なくします。

トレペなどでアイソメ角度のガイドを作りカメラの LCDへ貼ると便利

写真は Adobe Photoshop のレベル補正などで暗部を見やすく調整します。トレス時は、写真を配置したレイヤーのオプションで「画像の表示濃度」を調整し、別(手前の)レイヤーでトレスしますが、そのレイヤーは「アートワーク」モード表示で作業することをお薦めします。

プレビューのチェックを外す → アートワークモード表示

下絵写真の表示濃度を調整する

�7

�-5-2.フラットベッドスキャナーを使う角度を付けず平面的な撮影をして、トレスして三面図を作り、それを変形させてアイソメにする(『�-4.

三面図(または実測)から描く』を参照)方法もあります。その場合は、フラットベッドスキャナーを利用すると歪まないので便利です。ただし、スキャナーのガラス面から離れた部分の画像はズレているので注意します。

フラットベッドスキャナーでスキャンして下絵とする

必要な部分をトレスする

�8

変形させる

組み立てて整形

�9

2 章 3D-CAD の書き出し

3D-CAD ファイルが支給される場合は、そこから Illustrator で編集できるベクトルパスのイラストを書き出して、分解図を作成します。本解説集では「XVL 形式・IGES 形式」「Stp 形式」の書き出しについて説明します。

(書き出し後の作業については『3 章 分解図』を参照)

2-�.XVL 形式・IGES 形式ラティス・テクノロジー株式会社 XVL Studio Basic Ver.9.2b による展開と、同社 Lattice3D

Outliner Ver.2.0 を使った書き出しを説明します。XVL Studio Basic Ver.9.2b は XVL 形式以外に、IGES 形式のファイルを開くことができます。

2-�-�.展開分解図用に支給される 3D-CAD ファイルは、基本的には製品同様にパーツのオブジェクトが組み立てられています。場合により一部のパーツが欠けていたり、可動する同一パーツが角度違いで複数配置されている、同じ名称のパーツでも形状違い(別モデル用)が含まれている場合などがあります。それらを整理しながら、分解図用に展開(移動)させます。

アイソメ角度の表示例

パーツリスト用の分解図は、パーツ点数が多い場合、実際に製品を分解する手順におおよそ合わせて、イラストを複数枚に分割します。クライアントにより異なりますが、1枚のイラストに対して、リストは 50 点程度までとする場合が多いようです。点数が多くなると、イラストの中から目視で合番を探すのが困難になるためです。

1枚のイラストにリストは 50点程度まで

大幅に超過しそうな場合は、イラストの分割を再検討します。実際には支給されたパーツリストを整理・ソートして、1枚分のパーツリストの点数を確認・調整します。イラストを分割する範囲と手順に合わせて、3D-CAD のパーツを以下の点に注意しながら展開(移動)させます。

20

移動は組む位置を解りやすくするために、なるべく垂直・水平のどちらか一方向へ動かすようにします。サービス単位の変更などにより、組んだ状態に戻す場合があるので、正確に戻せるように、移動ダイアログの数値は 10 単位などで入力します。

元に戻しやすい数値を入力する

分解図でパーツ同士を重ねて配置する場合でも、3D-CAD からの書き出し時は重ねずに離します。重なった状態で書き出すと、後から配置を調整するのが困難です。(『3-5-�.パーツ同士の重なり』参照)

書き出しはウィンドウに表示されている範囲が1枚のイラストとして出力されます。パーツの表示サイズが大きい方がイラストのクオリティが良いので、必要以上にパーツ間を離さないようにします。

パーツ間を離すと書き出し時のサイズが小さくなる

パーツ間はなるべく離さない

2�

3D-CAD から書き出したビスのイラストは識別しにくい場合が多いので、通常はイラストを差し換えます(『3-3.ビスなどの配置』参照)。ただし、ビスの位置や員数を間違えないために、3D-CAD 上では隠さずに展開して残します。また同じパーツを留めるビスの移動量は、なるべく同じに揃えます。

同じ移動量なら同じ長さの線でネジ穴の位置がわかる

別モデル用などの不要なオブジェクトが重なって表示されている場合があります。それらは書き出し前になるべく隠します。

不要なオブジェクトを隠す

2-�-2.スナップショット機能パーツの展開(移動)と書き出しには、実際には「構造パネル」内の「スナップショット」機能を利用します。「スナップショット」とはオブジェクトの配置・表示の有無などを記憶させて、後にワンタッチで再現させる機能です。1つのファイル内に複数の配置を記録できるので便利です。

展開前の全体が組まれた状態で、スナップショットを追加して、『梱包図用』などの名称にします。

スナップショットを登録

22

分解図用に展開させたら、スナップショットを追加して『本体部』などの名称で記憶させます。

展開が大きく拡がって、イラスト全体を1ファイルに書き出すとパーツの表示が小さくなり、イラストのクオリティが悪くなる場合があります。その場合は何枚かに分割して書き出します。分割時の各スナップショットの表示サイズを揃え、さらにパーツを 1 部重複させると1枚にまとめる際に楽です。各パーツは必ずいずれかのファイルに全体が収まるように配置します。

2分割させた例「構造ツリー」パネルを閉じてウィンドウを広くしている

23

2-�-3.書き出しラティス・テクノロジー株式会社 XVL Studio Basic Ver.9.2b、と同 Lattice3D Outliner Ver.2.0 はどちらも展開と書き出しができますが、展開は XVL Studio Basic のほうが操作しやすく、書き出しは Lattice3D Outliner のほうがイラストのクオリティが良いので使い分けます。

(2015/10/26 現在:Lattice3D Outliner は日本国内では販売終了。Studio Basic シリーズの新バージョンは、書き出しイラストのクオリティが向上との事。)

Lattice3D Outliner Ver.2.0 の書き出しの設定例を下図に示します。

太線

細線

線のメリハリは自動的に付きますが、細線にするべき箇所が太線になる場合が多いので、書き出し後に修正します。(『3-�.タッチアップ』を参照) 「アウトライン」は無くてもよいのですが、パーツ同士を重ねる場合に白塗りの設定をしたり(『3-5-�.

パーツ同士の重なり』を参照)、その他の色塗りをする場合などに便利です。

24

2-2.Stp 形式XVL Studio Basic Ver.9.2b は、Stp 形式のファイルを直接開くことができません。Adobe Acrobat 3D Toolkit Ver.8.�.0 は、Stp 形式を開き展開させ、Illustrator で編集できるイラストを書き出すことができます。

パーツの展開と分割基準などは、前項『2-�.XVL 形式・IGES 形式』の場合と変わりません。スナップショット機能や、線のメリハリを自動で付ける機能はありません。

Acrobat 3D Toolkit による展開例

Acrobat 3D Toolkit の書き出しダイアログ

25

3 章 分解図

XVL 形式の 3D-CAD から書き出したイラスト(前章を参照)を使用して、保守マニュアル用分解図の仕上げ方を説明します。

3-�.タッチアップ1枚の分解図用イラストを、複数枚に分割して書き出したもの(「2-�-2.スナップショット機能」を参照)を、1枚にまとめます。実際には、書き出したイラストファイルを Illustrator で開いたら、まず全体を選択してから複合パスを解除します。パーツの一部分が枠でトリミングされている場合は、全体が枠でマスクされているので、これも解除します。全体のグループを解除してから、パーツ単位でグループ化して扱いやすくします。コピー&ペーストで1枚にまとめ、重複している部分は削除して整理します。

複数の書き出しファイルを、パーツが重複しないようにまとめる

マスク枠は削除

各パーツ単位でグループ化する

26

分解図用のテンプレートがあれば、そのパーツ用のレイヤーへペーストします。書き出した状態よりも、さらにパーツ間を離し(または重ね)たり、分解図へ盛り込む内容などを考慮して、全体サイズを調整・レイアウトします。後から再調整する場合もあります。(パーツ同士を重ねる場合の処理は『3-5-�.

パーツ同士の重なり』を参照)

長い引き出し線を配置して、コピーして使うと便利

大まかにレイアウトする

テンプレートのガイドライン

色設定と線幅を確認しておきます。特に支給された PDF 図面を利用する場合などは注意します。

3D-CAD から書き出したイラストは、手作業で描き起こしたイラストに比べ、一般的に余計な線やアンカーポイントが多くなります(書き出しの設定により変わります)。クライアントから「そのまま使用して手間をかけない」と指示される場合がありますが、それでも線が多過ぎて見にくい部分などは、間引くなどの整理をすることもあります。

線を整理する(1)

27

基板上のコンデンサやコネクタなどは、太線で出力される部分が多く、修正手間も多くなります。ルールどおりに修正すると長時間を要したり、修正しても線がうるさい場合もあり、大きなパーツだけを残すなど見やすくなるように処理します。3D-CAD 上で不要なパーツを隠して、再度書き出して差し換えることもあります。複雑な形の基板上のパーツが、単純な立方体になっている場合もあります。そのままにするか、描き直すかを判断します。

線を整理する(2)

ケーブル類などは、3D-CAD ファイルに入っていない場合が多いので描きます。コネクタは多くの場合、細部を描かずに、単純な立方体で表します。繰り返し使用されそうなコネクタ類は、ストックしておくと重宝します。

ケーブル類を描く

ストックする

3D-CAD ファイルにないパーツを新規に描いて、3D-CAD から書き出したイラストに加える場合。サイズを実寸、または 1/2、1/10 などに縮小して描きます。製品サンプルがあれば大きめのパーツを実測し、追加するイラストと同じ縮尺で矩形を作成・変形させます。追加するイラストと矩形を一緒に縮小・拡大させて、矩形を大き目のパーツのイラストにフィットさせて縮尺を合わせます。

実寸で描いたパーツ

縮尺を合わせる

基板の実測サイズを変形

28

隠れたビス穴を示すなど、隠れた面の一部を隠線(破線)で描く場合があります。3D-CAD の書き出しの設定で「隠線」をチェックすると、下図のように透視したイラストになるので、これを一時的に背面に配置して隠線を描くと正確です。

隠線

隠れたビス穴やコネクタなどを描く

29

3-2.連絡線・ASSY 囲みビス穴や、パーツの組み合わせを示す「連絡線」(接続線・フローラインとも呼ぶ)を引きます。一点鎖線の細線にします。パーツのイラストとは別に、手前のレイヤーに配置する場合が多いです。

 レイヤー分けの例

1つのパーツで同じ方向に入る同種類のビスはまとめる(ビス1本を残して他を消し、連絡線をつなぐ)のが一般的ですが、クライアントにより、まとめない指定をされる場合もあります。まとめる場合は、ビス穴からアンカーポイントまでの連絡線の長さを同じにし、複数のビスが最初に入るパーツから先へは、まとめた1本のビスの連絡線だけを延長させます。

同じ長さにする(赤線部)

残したビスの連絡線を延長する

連絡線はパーツには接触させず、少し離すようにします。ネジ穴へ入る連絡線も、仕上げ段階で加える重なり用の白線(『3-5-2.連絡線の重なり』を参照)を考慮して、少し離しておきます。パーツに隠れる連絡線(隠線(破線の細線))も、パーツの輪郭やネジ穴からは少し離します。3D-CAD から書き出したビスは、後にイラストを差し換えますが(『3-3.ビスなどの配置』を参照)、その際にビスの位置を調整すればよいので、最初は連絡線と接していてかまいません。連絡線を切る・隠線にするなどの処理は、配置確定後(重なり線の処理(『3-5-2.連絡線の重なり』を参照)よりは先)に行うようにします。

離す

30

接続先が離れていて連絡線を結ぶのが困難な場合などは、途中の線を省略します(「飛ばす」と呼びま す)。同一のイラスト内で連絡線を飛ばす場合は、互いに向かい合わせの矢印と符号などで接続先を探しやすくします。また、ビスなど機構的なものと、ケーブルなど電気的なものの2種類で、記号を使い分けます。

A

A

A

連絡線を飛ばす例

A

B

B

別のイラストへ飛ばす場合は、パーツ名称・コネクタ番号などを記します。

別のイラストへ飛ばす例

DVD Mechanism ASSY CN4001

3�

複数の部材で構成された ASSY パーツ(親)と、その中のパーツ(子)の両方をサービスパーツとして示す場合は、子のパーツを展開して、ASSY パーツ全体を線で囲み、囲み線に親パーツの番号を振りま す。この ASSY 囲み線は、連絡線よりも背後へ配置します。

A

A

ASSY囲みの例

以上の連絡線(隠線を含む)・ASSY 囲み線などは、パーツリスト用の合番号などを配置するスペースを考慮しながら引くようにします。必要に応じて、パーツの配置も調整します。

3-3. ビスなどの配置3D-CAD ファイル内のビスは、形状が簡略化されていたり、正確な縮尺のビスのイラストでは小さく解かりにくい場合があります。そのため、ビスは通常、実際より大きく、判別しやすいイラストに差し換えます。長さ・太さ・向き・頭の形状の違うものをまとめてストックしておきます。

3D-CADから書き出したビスを置換する

結束バンドも、向き・曲げ方の違うものをストックしておくと重宝します。

ビスなどのイラストを差し換えたら、連絡線から少し離すようにします。

A

A

離す

離す

32

3-4. 合番パーツリスト用合番号の振り方、およびその引き出し線の引き方は、クライアントにより様々です。

〔引き出し線がパーツ輪郭線に接するルールで、かつ引き出し線が他の線と交差する場合の処理〕

A

A

この処理

引き出し線のパスの方向性を、番号側からパーツ側(始点:番号側、終点:パーツ側)にします。番号と方向性を合わせた引き出し線をセットで保存しておくと便利です。

A

A

パスの方向性

合番号と引き出し線を配置して、引き出し線のみをコピー&背面へペーストします。そのパスを選択したまま、カラーを重なり処理用の白線(『3-5-2.連絡線の重なり』を参照)にします。他の線(連絡線など)との交差部は正しく処理されますが、パーツ輪郭線の接合部も隠れてしまいます。白線を選択したまま、パーツ近辺をハサミツールで切断すると、パスの終点側(パーツ側)のみが選択された状態になるので、そのまま削除すればパーツ輪郭線の隠れた箇所が見えるようになります。

引き出し線を背面へペーストして白線にする

白線を切断するとパスの終点側が選択される

削除すれば完了

切断

パスの方向性を反転させたい場合は、属性パレットの方向性を逆にしますが、通常はこの設定ができません。パスを複合パス(1本でも)にすることにより、設定が可能になります。

パスの方向性のコントロール

33

3-5.重なり3-5-�.パーツ同士の重なり

パーツ同士を重ねる場合は、上になるパーツの色設定を変更します。この場合は、3D-CAD の書き出しダイアログで『アウトライン』にチェックを付けておきます。アウトラインのパスは、グループ化したパーツの最前面にあります。これを選択して「塗り」を「白」

に設定して、背面へ送ります。

アウトライン

塗りを「白」、背面へ送る窓を開ける場合は複合パスにする

34

3-5-2.連絡線の重なり連絡線を含む全体の配置が確定後に、連絡線の重なり(交差を含む)部分の処理をします。手前になる連絡線をコピー&背面へペーストして、「線」を「実線」の「白」で連絡線の6倍以上の太さに設定します。グラフィックスタイルへ登録する場合は、線端形状は通常は「丸型」でよいですが、場合に応じて「バッ

ト線端」を使います。ビス穴へ入る白線の線端は「丸型」でよいですが、穴のエッジの手前側に重ねないように注意します。

A

A

連絡線の重なり処理(例)

手前の線へ白線を重ねない

35

3-6.スプリング・ケーブルなど3D-CAD から書き出したスプリングは、黒く潰れていることが多いので、なるべく描き直します。

3D-CADから書き出したスプリング または

上図・右下の場合や、束ねたケーブルなどを描く場合は、基本ルールどおりだと太線が多くなってしまうので、輪郭だけが太くなるように処理します。

束ねたケーブルの例

3-7.複数枚の分解図パーツ点数が多く、分解図を複数枚に分割する場合の参照のさせ方、イラスト処理も、クライアントにより様々です。下に例を示します。

A

A

A

A

B

B

“4.3 フロント部” 参照