Upload
others
View
1
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
セルブロック法の有用性の検討~各種方法の比較~
山田寛、塚本龍子、達摩知子、森藤哲史、柳田絵美衣、今川奈央子、伊藤智雄
神戸大学医学部附属病院 病理部
はじめに
セルブロックとは細胞診検体を何らかの方法で固化し、それを固定、包埋、薄切の工程を経て組織学的に観察する手法のことである。
近年、細胞診分野において細胞形態診断に加えて、免疫染色、In situ hybridization、FISHなど、様々な検索が必要に応じて求められてきている。
しかし細胞診では同一細胞で複数の染色を行うには限界がある。
そこで細胞診と組織診の中間的な方法であるセルブロックが注目される。
セルブロックの利点としては1)パラフィンブロックなので取り扱いが容易2)連続切片などで同一細胞の複数枚標本作製が可能3)半永久的保存が可能4)DNA抽出などにも使用可能
などがあげられる。
はじめに
しかし、このような利点がある半面、
1)試薬の調整が面倒2)手技が煩雑3)細胞が少数の場合は、回収率が悪い
などの理由から倦厭されて来たことも事実である。
今回我々は、文献などで一般的に紹介されている方法を実際に行って、その結果より、各種方法の欠点を考察。
それを基に、欠点と思われる部分に改良を加え、従来法と比較検討。
手順が簡単で、細胞保持の良い方法を数種紹介する。
方法
まずは文献などを参考に以下の方法を行った
1)コロジオンバッグ法 (和光純薬 5%コロジオン液)2)寒天法 (和光純薬 5%溶液)3)アガロース法 (BM Bio 1%溶液)4)アルギン酸ナトリウム法 (和光純薬 1%溶液)5)OTCコンパウンド法 (Tissue-Tek)6)グルコマンナン法 (アジア器材 HOLD GEL 110キット)
検討項目
(1)各セルブロック作製法における細胞損失率(%)の測定(2)細胞損失の原因の考察(3)原因に対する改良方法の検討(4)従来法との比較
方法
各種方法手順フローチャート
細胞診検体
バッグごと取り出す
寒天を添加
遠心して沈査を分離
固定(10%ホルマリン)
遠心、上清を除去
アガロースを添加
アルギン酸Naを添加
エタノールで脱水
アルコールで脱水
カセットに入れてVIPへ
固化 固化 遠心、沈査沈査にOTC混和
沈査にグルコマンナン添
加
1M塩化Caを滴下
遠心、沈査、冷ALを重層
メタノールに深沈
ゲル化 凝固 固化
コロジオン法 寒天法 アガロース法アルギン酸ナトリウム法
OTC
コンパウンド法 グルコマンナン法
コロジオン法 寒天法 アガロース法
アルギン酸ナトリウム法
OTC
コンパウンド法 グルコマンナン法
各種方法による細胞損失率
方法1)RBCが1200×10
4個/mlの溶液を作製
2)上記の溶液を用いて各種セルブロック法により、細胞固化を行う3)セルブロック作製時に用いた、機材(スピッツなど)を洗浄4)洗浄溶液の中に含まれている細胞数を測定5)これにより、作製工程における細胞損失率(%)を算出
方法コロジオン法
寒天法アガロース法
アルギン酸ナトリウム法
OTCコンパウンド
法
グルコマンナン法
損失率( )は回収率
0.8%(99.2%)
48%(52%)
52%(48%)
18%(82%)
0.6%(99.4%)
2.2%(97.8%)
損失の原因
コロジオン法およびOTCコンパウンド法が細胞損失が少なく優れていることが分かる。その他の方法では、グルコマンナン法以外は、2桁の細胞損失を出している。
原因として以下のことを考えた。
方法 原因
寒天法・アガロース法
1)スピッツから固化した細胞塊を回収する時、剥がれ難さによる寒天塊の破損による損失
2)凝固時の粘度調整の不備による損失
アルギン酸ナトリウム法
1)ピペット操作による取り残しによる損失2)スライドガラス上で行うための細胞の散逸
グルコマンナン法
1)ピペット操作による損失2)キットの凝固中のろ紙に付着するための損失
寒天法アガロース法
アルギン酸ナトリウム法
グルコマンナン法
損失原因に対する改良①1)スピッツから取り出し難いための損失
取り出しやすいスピッツを使えばいい
と言う訳で、我々は
【綿棒チューブ(アジア器材株式会社)】を用いて検討を行った
綿棒チューブ
チューブの特徴として
1)先が鋭角である。 2)材質が柔らかく、圧力が掛かると変形する。
この綿棒チューブを用いて、寒天法、アガロース法を行った。
1)遠心後の沈査の状態
先が鋭角な為、丸底に比べ、高い密度で細胞が集まっている。
2)アガロースを加えた状態
細胞密度が高いので、アガロースを加えても細胞が浮遊しないで残っている。
材質が柔らかいために、底の部分を軽く摘まんでやれば、簡単に剥がれ取り外しが簡単にできた。
ただし、細胞密度が高くなっているので、余りに細胞量が多いと寒天・アガロースが浸透していきにくく底の方の細胞が取り残されることがあった。
細胞量が多いと底の部分が固まりきらない。
しかし寒天・アガロースが固まらないような細胞量でも、グルコマンナンを用いた場合には固まること事が往々にして見られた。
損失の原因に対する改良②2)ピペット操作、細胞の取り残し、ろ紙への付着による損失
移し替えの回数減らして、ろ紙を使わなければいい
という訳で、我々は【オートスメア】使って検討した
アルギン酸ナトリウムは寒天などに比べて、粘度が低いので沈査に混ぜてから、オートスメアに掛けることができる。
サンドイッチ法
オートスメア法
サンドイッチ法に比べて、オートスメア法の方が、
1)細胞密度が高い。2)細胞が広がらず、ゲル状の中にほとんどの細胞が内包されている。
アルギン酸ナトリウム法
グルコマンナン法
グルコマンナンは粘度が高いのでアルギン酸ナトリウムのように、検体に混ぜることは出来ない
そこでオートスメアを掛けた後に上から掛けてみた。その後、固化させるためにメタノールに深沈させて様子を見た。
通常、キットだと6時間以上かかる凝固が、1時間余りで完了した。また細胞もほとんどがグルコマンナンの凝集会に包括されていた。