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まずリスク因子とそのメカニズムを知る コンタミ-固形微粒子-について LUBRICATION MANAGEMENT: Vol.002 前回は、機械の血液である「潤滑油」について取り上げました。 今回のテーマは、その潤滑油が汚染されるリスク因子とそのメカニズムについてです。 ヒトに置き換えて考えた場合、長生きするには健康でなくてはなりません。そのために、健康 を害するもしくは健康維持に好ましくない習慣や行動を認識し、それらがどう健康に害を及ぼ すのかを正しく理解した上で、改善・対策することが必須となります。 機械も同様で、オイルの汚染におけるリスク因子とメカニズムを正確に把握し、そこに適切な 対策を講じ、延命に有効となる管理をすること(=コンタミネーションコントロール)が重要 と言えます。 油圧システムの故障の約80%は、コンタミに起因すると言われています。 故障の最大リスクとなるコンタミをいかに排除するかが、機械やオイルの延命に最も重要です。 機械やオイルにとって、最大のリスクはコンタミ コンタミとは、コンタミナント(汚染要因物)とコンタミネーション(汚染)を意味します。 オイル中の固形微粒子・水分・空気など、いずれもオイル中に混入するオイルとは異なる物質 で、機械とその構成要素に悪影響を与えるもの、またはこれらの物質に汚染された状態をいい ます。 コンタミとは

コンタミ-固形微粒子-についてLUBRICATION MANAGEMENT: 固形微粒子について Vol.002 前述「コンタミの種類」で挙げたもののうち、まずは「固形微粒子」にフォーカスをあて、

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Page 1: コンタミ-固形微粒子-についてLUBRICATION MANAGEMENT: 固形微粒子について Vol.002 前述「コンタミの種類」で挙げたもののうち、まずは「固形微粒子」にフォーカスをあて、

まずリスク因子とそのメカニズムを知る

コンタミ-固形微粒子-についてLUBRICATION MANAGEMENT:

Vol.002

前回は、機械の血液である「潤滑油」について取り上げました。今回のテーマは、その潤滑油が汚染されるリスク因子とそのメカニズムについてです。

ヒトに置き換えて考えた場合、長生きするには健康でなくてはなりません。そのために、健康を害するもしくは健康維持に好ましくない習慣や行動を認識し、それらがどう健康に害を及ぼすのかを正しく理解した上で、改善・対策することが必須となります。

機械も同様で、オイルの汚染におけるリスク因子とメカニズムを正確に把握し、そこに適切な対策を講じ、延命に有効となる管理をすること(=コンタミネーションコントロール)が重要と言えます。

油圧システムの故障の約80%は、コンタミに起因すると言われています。故障の最大リスクとなるコンタミをいかに排除するかが、機械やオイルの延命に最も重要です。

機械やオイルにとって、最大のリスクはコンタミ

コンタミとは、コンタミナント(汚染要因物)とコンタミネーション(汚染)を意味します。オイル中の固形微粒子・水分・空気など、いずれもオイル中に混入するオイルとは異なる物質で、機械とその構成要素に悪影響を与えるもの、またはこれらの物質に汚染された状態をいいます。

コンタミとは

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LUBRICATION MANAGEMENT:Vol.002

実際の油圧システムにおいて、据付け時や稼働中に様々なポイントからコンタミが混入しています。その混入経路は、「侵入」「持込」「発塵」「堆積」と大きく4つに分類することができます。これらへの対策が、コンタミネーションコントロールの4原則となります。

コンタミによる汚染のメカニズム

コンタミネーションコントロール4原則

侵入させない

持ち込ませない

発塵させない

04

03

02

01

堆積させない

コンタミの種類

コンタミには、固体・液体・気体の形態のものがあり、その主要となる物は右図の通りです。

この他に、バクテリアや熱・放射線・電気・電磁波などエネルギーも含めて定義する場合もあります。

給油・更油の際に、クリーンオイルでないことによる

固形微粒子の 持込

油圧システムの開口部から固形微粒子の 侵入

摩耗による 発塵シール損傷による大気中から固形微粒子の 侵入

クーラーの結露による水分の 侵入

外気から水分・固形微粒子の 侵入

水分・固形微粒子の 堆積

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LUBRICATION MANAGEMENT:Vol.002

固形微粒子について

前述「コンタミの種類」で挙げたもののうち、まずは「固形微粒子」にフォーカスをあて、その詳細や及ぼす影響を見てみましょう。

具体的に固形微粒子とは、砂・埃・摩耗紛・金属片・シール劣化物・錆・溶接屑・切り粉・繊維・ペンキ片などを含む固体のものです。

では、これらが機械やオイルに対し、どのような悪い影響をもたらすのでしょうか。

固形微粒子は「摩耗」の原因となり、油圧機器における回転・摺動部の動作不良を引き起こします。これにより、機械稼働が不安定になったり故障するということは、生産ストップを意味しており、いわば生産設備の「心臓」が停止するというリスクに繋がります。

油圧機器における具体的なトラブル例は下記の通りです。

▪ポンプ・吸い込み不良 … キャビテーションによるポンプ異音・吐出量の減少 … 圧力低下やオイル漏れ・ポンプモータの停止 … モータの焼き付き

▪バルブスプールへの異物の噛み込みによる動作不良

▪シリンダ摺動面からのオイル漏れ

混 入 経 路 コンタミ(固形微粒子) 発 生 源

外部から入り込むもの 侵入・持込 砂・埃 シール部・エアブリーザ・給油口

稼働中に内部で発生するもの 発塵 摩耗粉・金属片・シール劣化物アクチュエーター・バルブ・配管内ポンプ・オイルフィルタ・タンク

据付け時に既に存在するもの 堆積 砂・埃・錆・溶接屑・切り粉・繊維・ペンキ片 配管内・タンク

コンタミ汚染 摩耗発生 機械振動 機械故障

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摩耗についてLUBRICATION MANAGEMENT:

Vol.002

摩耗の連鎖

摩耗とは、オイル中のコンタミ(固形微粒子)が、摩擦に伴って固体の表面を少しずつ継続的に減量させる現象であり、下記は代表的な摩耗の分類です。また、粒子の大きさや硬度によって摩耗の速度に差が生じます。

05シルティング

流体によってシステムの特定の場所に運ばれた細かな汚染粒子の蓄積

01アブレッシブ摩耗

やすりで削りとられていくような摩耗形態

02凝着摩耗

表面がモチのように粘着して剥がれ取れていく摩耗形態

03疲労摩耗

何度もこすられているうちに表面が劣化し、脱落・欠損していくという摩耗形態

04エロ―ジョン

流体もしくは浮遊する微粒子の衝突または噴流によって表面いに生ずる摩耗形態

摩耗により生まれたコンタミは、重要なパーツのクリアランスに入り込み、パーツ自身の表面を削りすり減らしながら、新たなコンタミを生み出します。それらが、さらに砕かれて削るという摩耗を繰り返し、コンタミは雪だるま式に増え続ける・・・これを「摩耗の連鎖」と言います。

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RMFジャパン株式会社 〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-10-3 TEL:03-6804-6585 FAX:03-6804-6596

LUBRICATION MANAGEMENT:Vol.002

粒子の大きさ

下記は油圧機器における主要パーツ毎のクリアランスサイズです。ここに入り込んでしまうサイズのコンタミを取り除かなければ、摩耗を止めることはできません。

粒子の硬度

コンタミの硬度も摩耗に大きな影響を及ぼします。機器のパーツより硬度が高いコンタミほどより多く削ってしまうので、注意が必要です。

クリアランス(µm)

ギヤとサイドプレート 0.5~5

歯先とケーシング 0.5~5

ベーン先端とケーシング 0.5~1

ベーン側面 5~13

ピストンとシリンダ 5~40(半径)

バルブプレートとシリンダ 0.5~5

オリフィス 130~450

フラッパとノズル 18~63

スプールとスリーブ 1~4(半径)

ベアリング 50~250

摩耗防止ベアリング 1~23

すべり軸受 0.5~(半径)

油圧機器 主要パーツ

ギアポンプ

ベーンポンプ

ピストンポンプ

サーボバルブ

アクチュエーター

固形微粒子への対策で摩耗を低減

固形微粒子は主に摩耗を引き起こし、機械故障の大きな原因となります。このメカニズムを正確に理解することから、的確な改善・対策が可能となり、本質的なコンタミネーションコントロールへの実現に、近づくことができるでしょう。

本資料に記載する一切の情報を当社の許可なくして使用または転用・複写することを固く禁じます。

粒子の種類 密 度 モース硬度

土砂(シリカ) 2~6 7

鋳物砂 2.65 7

アルミナ(砥石) 3.6~3.95 9

切削屑 6~9 3~7

塵埃 1~5 2~8

赤錆 2.4~3.6 5~6

黒錆 4~5.2 5~6

工具鋼 7~8 6~7

鋳鉄 6.7~7.9 3~5

アルミ合金 2.5~3 1~3